離婚後も子どもと暮らしたいと考えていても、「父親が親権を取るのは難しいのではないか」「仕事を続けながら育てられると認めてもらえるのか」と不安を感じる方は少なくありません。親権を希望する父親にとって、これまでの育児への関与と、離婚後に子どもを育てる体制を具体的に示すことが準備の中心になります。

本記事では、父親が親権者となった統計上の割合、親権を決める際の判断基準、交渉に向けた対策、手続きの流れを解説します。親権者になることと子どもと同居することの違いも踏まえ、父親が子どもとの生活を続けるために必要な準備を整理します。

親権を求める気持ちが強くても、子どもを無理に連れ戻したり、父母のどちらを選ぶか迫ったりすると、子どもに負担をかけ、自分の養育姿勢への疑問を招きます。子どもの生活と意思を尊重した対応を心がけ、別居や離婚の話が進む段階から準備を始めることが大切です。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

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親権を父親が獲得するのは厳しい?

母親が主に育児を担い、別居後も子どもが母親と安定して暮らしている場合、父親が単独親権者となって子どもを引き取るのは容易ではありません。子どもの生活を変える以上、父親のもとで暮らすことが子どものためになる理由が求められるからです。ただし、父親であることだけを理由に親権を取得できないわけではありません。親権は、父母の性別や希望の強さではなく、子どもの利益を優先して決められます。

父親がこれまで日常の世話を継続して担い、離婚後も無理なく育児を続けられる場合には、父親が親権者となることを認めてもらう根拠になります。反対に、育児の大部分を母親に任せてきた場合、収入が高いことや子どもへの愛情だけを訴えても、日々の世話を担えるかという疑問は解消できません。これまでの養育実績と離婚後の養育体制の両方を、具体的に説明する必要があります。

また、2026年4月からは、離婚後も父母双方を親権者とする共同親権が選べる制度になっています。そのため、父親が親権者になる方法は、父親だけを親権者とする単独親権に限りません。ただし、共同親権になっても、子どもが父親と暮らすとは限りません。共同親権は父母双方が親権を持つ制度であり、子どもの同居先や日常の世話を誰が担うかは、別に決める必要があります。

子どもと暮らしながら育てることを希望するなら、協議や調停では、親権の希望に加えて、父親との同居と具体的な養育方法を示すことが大切です。例えば、平日の送迎や食事の準備を誰が担い、残業や子どもの急病にどう対応するかまで説明できれば、離婚後の生活を具体的に伝えられます。父親の希望を認めてもらうには、子どもと暮らしたいという気持ちを、実行できる養育計画に結び付けることが必要です。

子の年齢が低い場合は、特に母親が親権者になりやすい傾向にあるでしょう。一方、子が15歳以上の場合には子の意思が強く反映されやすいところです。

親権を父親が獲得できる確率は約8~11%

父親が単独で親権者となる割合は、約8~11%が一つの目安です。厚生労働省の人口動態統計月報(概数)(2026年4月分)に掲載された親権の種類別統計表によると、親が離婚した未成年の子のうち、父親のみが親権を行う子の割合は、次のとおりでした。

対象月父親のみが親権を行う子の割合
2026年2月10.9%
2026年3月10.8%
2026年4月7.8%

父親の単独親権が少数であることは、数字にも表れています。ただし、協議で合意したケースも含むため、親権争いでの勝率を示す数字ではありません。

一方、2026年4月には、共同親権となった子の割合は24.7%でした。共同親権でも父親は親権者になるため、施行後は「父親だけが親権者となる割合」と「共同親権を含めて父親が親権者となる割合」を区別する必要があります。2月・3月は施行前、4月は施行後の数字なので、4月の7.8%だけを見て、父親の親権取得が以前より難しくなったとはいえません。

また、統計上は少数でも、父親の養育実績や離婚後の体制によって、取得の見通しは変わります。すでに父親が日常の育児を担っている家庭と、母親がほぼすべてを担っている家庭とでは、判断の前提が異なります。約8~11%という数字だけで諦めず、自分の家庭の養育状況に即して見通しを立てることが大切です。

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なぜ父親は親権で不利になるのか?

母親が主に育児を担ってきた場合、養育実績に差がある

親権を決める際には、子どもをこれまで誰がどのように育ててきたかが重視されます。母親が食事や入浴、寝かしつけ、送迎、通院などを日常的に担ってきた場合、母親には養育を継続してきた実績があります。父親が休日に遊んだり、行事に参加したりしていても、それだけでは日々の生活全体を支えてきた母親と同程度の養育実績があるとは評価されにくいでしょう。

これは母親という性別を優先するという意味ではありません。子どもの体調や生活習慣を把握し、必要な世話を続けてきた親の方が、離婚後も養育を安定して担えると判断しやすいからです。父親が親権を求める場合には、自分が実際に担ってきた育児の内容と頻度を示す必要があります。

母親との生活が安定している場合、環境の変更が難しい

別居後、子どもが母親と暮らし、学校や家庭で落ち着いた生活を送っている場合、その生活を維持することが重視されます。父親のもとへ移ることで転校が必要になったり、友人や日常的に世話をしてくれる人との関係が変わったりすれば、子どもに負担が生じるためです。父親が同居を希望していても、安定した生活を変えるだけの理由がなければ、その希望は認められにくくなります。

ただし、母親と同居しているという事実だけで結論が決まるわけではありません。虐待や育児放棄がある場合には、現在の生活を続けること自体が子どもの不利益になります。判断されるのは単なる同居期間の長さではなく、現在の養育が子どもにとって適切か、変更によって生活がどうなるかという点です。

長時間勤務や出張が多いと、日常の世話を担いにくい

長時間勤務や頻繁な出張により自宅を空ける時間が長いと、父親が子どもの世話を継続して担えるかが問われます。例えば、保育園の迎えに間に合わない、夜間に子どもだけで過ごす時間が生じる、急病でも仕事を休めないという状態では、離婚後の日常生活を支える体制が不足していると評価されます。

仕事をしていること自体が不利なのではなく、仕事と育児を両立できる具体的な見通しがないことが問題です。「離婚後は何とかする」という説明だけでは、子どもの生活を任せられるか判断できません。勤務時間の調整や保育サービスの利用などにより、必要な時間帯に誰が子どもの世話をするかを明らかにする必要があります。

離婚後の育児を祖父母任せにする計画では不十分になりやすい

祖父母の協力は、父親の養育を支える事情になります。しかし、父親がこれまで育児をほとんど担っておらず、離婚後も日常の世話を全面的に祖父母へ任せる計画では、父親自身が養育を担えることの説明にはなりません。祖父母の支援があることと、父親に養育能力があることは別に評価されます。

また、祖父母の年齢や健康状態、仕事、住まいによって、実際に協力できる範囲は異なります。「両親が手伝ってくれる」と述べるだけでは、継続できる体制か分かりません。父親が担う育児を明確にしたうえで、祖父母がどの時間帯に何を補助できるかまで説明することが求められます。

収入の高さだけでは、養育面の不安を補えない

父親の収入が母親より高くても、それだけで父親が親権者に選ばれるわけではありません。子どもの生活には経済的な基盤が必要ですが、食事や健康管理、学校生活への対応など、日常の世話も欠かせません。収入が十分にあっても、これらを担う人が決まっていなければ、経済力だけで養育体制の不足を補うことはできません。

一方、母親の収入が低くても、養育費や公的給付などを含めて生活を維持できる場合には、収入差が親権の決め手にはなりません。父親が親権を求める際には、母親より多く稼いでいるという比較だけでなく、子どもの生活費を確保しながら、自分が日常の養育も担えることを示す必要があります。

養育実績の不足が、親権に不利益な影響を及ぼすケースは非常に多いです。

親権を父親が取るための判断基準

これまでの養育実績と子どもとの関係

父親が親権を求める際には、日常の育児をどの程度継続して担ってきたかが判断材料になります。食事や入浴の世話だけでなく、体調の変化に気付いて受診させる、学校からの連絡に対応する、生活習慣を整えるなど、子どもの生活を支えてきた内容が確認されます。単に一緒に過ごした時間の長さではなく、その時間に父親がどのような役割を果たしていたかが問われます。

子どもが父親に安心して相談できるか、困ったときに助けを求められるかという関係も考慮されます。例えば、父親が継続して通院や寝かしつけを担い、子どもの体調や不安に対応してきた場合には、養育実績と信頼関係の両面から、父親が養育を続ける根拠になります。協議や裁判所での説明では、「子どもと仲がよい」という評価だけでなく、日常の具体的な関わりを示すことが適切です。

現在の生活の安定と環境を変える影響

現在の養育状況については、子どもが安全に暮らしているか、学校生活や健康状態に支障がないかが確認されます。そのうえで、父親との生活へ移る場合には、転校の有無、通学時間、きょうだいとの関係、生活リズムの変化などが比較されます。現在の生活を維持する利益と、父親のもとで暮らす利益を、子どもの立場から判断するためです。

例えば、父親が従来の自宅で養育を続けられ、学校や友人関係も維持できる場合には、環境の変化を抑えられます。一方、転居や転校が必要でも、現在の家庭で十分な世話を受けられていない場合には、生活を変える必要性が高まります。環境を変えないことが常に優先されるわけではなく、変更の必要性と負担の両方が考慮されます。

父親自身の養育能力と周囲の支援体制

父親の養育能力は、子どもの年齢や健康状態に応じた世話を、継続して行えるかという観点から評価されます。勤務時間や収入、住居に加え、食事の準備、登下校への対応、急病時の看護などを実際に担えるかが問われます。平常時だけでなく、残業や子どもの急病にも対応できる体制があるかまで説明できることが望ましいでしょう。

祖父母などの支援については、協力する意思だけでなく、健康状態や居住地、協力できる時間帯も確認されます。例えば、父親が朝夕の世話を担い、迎えに間に合わない日に祖父母が補助するという計画なら、役割が明確です。父親自身が担う育児と、周囲が補助する範囲を具体化することで、無理なく続けられる養育体制かを判断しやすくなります。

子どもの年齢・発達状況・意向

子どもに必要な世話や支援は、年齢と発達状況によって異なります。乳幼児であれば日常的な世話と安心できる関係が、学齢期であれば学校生活への対応が、思春期であれば本人の考えや進路への配慮が求められます。年齢だけで父親・母親のどちらが適切か決まるのではなく、その子どもに必要な養育を誰が担えるかが判断されます。

子どもの意向も、年齢や理解力に応じて考慮されます。ただし、「父親と暮らしたい」という発言だけで結論が決まるわけではありません。その理由や発言の経緯、父母からの働きかけの有無も確認されます。裁判所の手続では、必要に応じて家庭裁判所調査官が子どもの気持ちを確認するため、父親が答えを誘導せず、子どもが自分の考えを話せる状態を保つことが大切です。

虐待・育児放棄・DVなど子どもの安全に関わる事情

虐待や育児放棄がある場合には、誰が子どもを安全に養育できるかが強く問われます。身体的な暴力だけでなく、必要な食事や医療を与えない、長時間放置するなどの行為も、養育の適否を判断する材料です。母親による行為を主張する場合には、子どもが受けた被害と、父親が安全を確保できる理由を具体的に示す必要があります。

DVについても、父母間の問題として切り離すことはできません。子どもの前での暴力は子どもの心身に負担を与え、父母が共同して親権を行えるかという判断にも関わります。父親自身に暴力や威圧的な言動があれば、父親の養育姿勢も問われます。行為の内容、頻度、子どもへの影響、今後の危険を踏まえて判断されるため、相手を「虐待する親」と非難するだけでなく、診療記録や相談記録などで事実を裏付けることが必要です。

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親権の交渉で父親が有利になる具体的な対策

これまでの育児への関与を客観的な資料で示す

父親が担ってきた育児は、具体的な資料で裏付けることが有効です。例えば、保育園の連絡帳や送迎に関するやり取りは、日常的な関与を示す資料になります。通院の記録や夫婦間のメッセージからも、誰が子どもの体調を把握し、受診や看護に対応していたかを確認できます。いつ、どのような世話を、どの程度継続して担ったかが伝わる資料をそろえることが望ましいでしょう。

資料は量を増やすよりも、説明したい事実と対応させる方が効果的です。「毎朝送っていた」「病気の際は仕事を休んで看護した」といった事実を時期ごとに整理し、それぞれを裏付ける記録を添えれば、養育実績が伝わりやすくなります。写真は子どもとの関係を示す資料になりますが、行事や休日の写真だけでは日々の育児分担までは分かりません。日常の世話を裏付ける記録を中心に、写真などを補足する形が適切です。

仕事と育児を両立できる具体的な養育体制を整える

離婚後の養育計画は、「勤務を調整する予定」「祖父母に頼むつもり」という段階から、実行できる状態に近づける必要があります。勤務時間の変更を希望するなら、会社と相談して利用できる制度や開始時期を確認しておくことが望ましいでしょう。保育園や学童保育を利用する場合も、受入れの可否や利用時間が分からなければ、仕事と育児を両立できる根拠としては不十分です。

平日の生活に加え、残業、出張、学校の長期休暇、子どもの急病にも対応できる計画が必要です。例えば、通常の送迎は父親が担い、残業の日は祖父母が迎えを担当し、急病時には父親が休暇を取るという形で役割を決めておけば、養育の見通しが明確になります。父親の勤務予定と子どもの生活時間を合わせた計画を作り、支援者とも協力できる範囲を確認しておくことが適切です。

親権の定め方と子どもの同居先・養育方法を具体的に提案する

交渉では、父親が単独親権を希望するのか、共同親権を希望するのかに加え、子どもがどこで暮らし、誰が日常の世話を担うのかを具体的に提案する必要があります。親権についての希望だけでは、離婚後の子どもの生活は決まりません。父親との同居を求めるなら、通学や通園を続けられる住まい、日々の養育体制、生活費の見通しまで示すことで、提案を比較・検討できる形にできます。

父親と暮らす場合の母親との親子交流についても、子どもの年齢や生活に合った案を示すことが望ましいでしょう。虐待やDVなどの危険がない場合には、母親との関係をどう保つかまで考えた提案が、子どもの生活を優先する姿勢を伝えます。一方、安全上の懸念がある場合には、第三者の関与などを含めて方法を調整する必要があります。合意できた内容は、親権者、同居先、養育の分担、親子交流の方法を明確にして書面に残すことが適切です。

子と母親との関係が芳しくない場合は、その事実を裏付ける事情をできるだけ具体的に指摘しましょう。

親権を確保するために父親が取るべき手続き3ステップ

①父母の協議で親権者と子どもの養育方法を話し合う

父母の話し合いで合意できれば、父親を単独親権者とすることも、父母双方を共同親権者とすることもできます。父親が子どもとの同居を希望する場合には、親権者の定め方に加え、同居先や日常の養育を誰が担うかも話し合う必要があります。共同親権への合意だけでは、父親と子どもの同居まで決まったことにはなりません。

協議では、父親が希望する養育方法と、その実現に必要な体制を示し、母親の意見との違いを整理することが適切です。合意した内容は離婚協議書などに残し、離婚届の親権者欄にも合意どおりの内容を記載します。意見が対立し、話し合いが進まない場合には、弁護士を通じた交渉や家庭裁判所の調停を利用することで、争点を整理しながら解決を目指せます。

②協議で合意できなければ離婚調停で解決を目指す

協議で親権について合意できない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる方法があります。調停では、調停委員を介して父母それぞれの意見を伝え、離婚の可否や親権、養育方法などを話し合います。父親は、養育実績を示す資料と離婚後の養育計画を提出し、自分の希望が子どもの生活に合っている理由を説明することになります。必要に応じて、家庭裁判所調査官による養育状況や子どもの意向の調査も行われます。

調停は合意による解決を目指す手続であり、父母の意見が一致しなければ、調停だけで親権者を決めることはできません。合意に至れば調停調書が作成されますが、合意できなければ原則として調停は不成立となります。離婚調停が不成立になっても、自動的に離婚訴訟へ移るわけではありません。裁判で離婚と親権の判断を求めるには、別途、訴訟を起こす必要があります。

③調停でも解決しなければ離婚訴訟で判断を求める

調停で解決できず、裁判による離婚を求める場合には、家庭裁判所に離婚訴訟を起こします。裁判所が離婚を認める場合には、子どもの利益を踏まえて親権者も定めます。父親が親権を求める際には、自分のもとで子どもを養育することが適切だと裏付ける事実と証拠を示す必要があります。共同親権か単独親権かについても、父母と子どもの関係や、父母が共同して親権を行える状況などを踏まえて判断されます。

ただし、別居中の子どもの養育や引渡しを争っている場合には、離婚訴訟の結論を待つ必要はありません。子どもと暮らして世話をする親を決める監護者指定や、子の引渡しの調停・審判を別に申し立てる方法があります。急いで子どもの安全を確保する必要がある場合には、審判前の保全処分も検討の対象です。これらは離婚後の親権を決める手続とは異なるため、子どもの現在の状況に応じて、離婚手続と並行して進めることが適切です。

親権が争いになる場合、結論が出るまでの間はできる限り子と同居し続けることが非常に重要です。

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親権争いで父親がやってはいけない注意点

子どもを強引に連れ去ったり連れ戻したりする

母親が子どもを連れて別居した場合でも、学校で突然子どもを連れ出したり、母親の住居に押しかけて力ずくで連れ戻したりすることは避けるべきです。子どもを怖がらせ、学校や家庭での生活を混乱させる行動は、父親が子どもの生活や気持ちに配慮できるかという判断で不利な事情になります。子どもを手元に連れてくれば親権を取得できる、というものではありません。

父親との同居を求める場合には、協議や監護者指定・子の引渡しの手続による解決が適切です。ただし、虐待などで子どもに差し迫った危険がある場合は、安全の確保を急ぐ必要があります。警察や児童相談所への相談、裁判所の保全処分なども含め、状況に合った対応を取ることが望ましいでしょう。子どもを危険から守るための保護と、親権争いを有利にするための強引な連れ出しは、目的や経緯を区別して考える必要があります。

母親の悪口を伝え、子どもに父親を選ぶよう迫る

母親の悪口を繰り返したり、「お父さんと暮らしたいと言ってほしい」と求めたりすると、子どもは父親を喜ばせるために本心とは違う答えをすることがあります。また、母親を選ぶと父親を傷つけると感じ、希望を話せなくなることもあります。子どもに父母のどちらかを選ぶよう迫る行動は、精神的な負担を与えるだけでなく、その発言が本人の意思によるものかという疑問も招きます。

子どもが希望や不安を話したときは、父親に都合のよい答えへ誘導せず、話を聞く姿勢が大切です。「お母さんと暮らしたい」と言われても、責めたり説得を重ねたりするべきではありません。子どもの意向は、年齢や理解力、その理由を踏まえて確認するものです。裁判所の手続では、調査官に気持ちを確認してもらう方法もあり、父親が繰り返し答えを求める必要はありません。

親権の条件が決まらないまま離婚届に署名する

「先に離婚して、親権は後で話し合う」という約束だけで離婚を進めることは避けるべきです。離婚届に署名して母親へ渡す前に、誰を親権者とする内容になっているかを確認する必要があります。共同親権に合意していても、子どもの同居先や養育の分担は別に決める事項です。父親が子どもと暮らすことを希望するなら、その条件も離婚前に明確にしておくことが望ましいでしょう。

離婚後の親権者変更には、原則として家庭裁判所の手続が必要です。「後で父親に変更する」と約束しても、父母の合意だけでは変更できず、裁判所が子どもの利益に照らして判断します。そのため、後から変更できると考えて、納得していない親権の条件を受け入れることは避けるべきです。すでに署名した離婚届を渡しており、現在は離婚に同意していない場合には、無断で提出されることを防ぐため、不受理申出を検討することが適切です。

親権は、原則として離婚時に決めることが必要です。親権の協議がまとまらないまま離婚届を作成することは避けましょう。

【まとめ】親権を父親が獲得するためには早期の準備と弁護士相談が鍵

父親が親権を取得するには、子どもと暮らしたいという希望に加え、これまでの養育実績と、離婚後も育児を続けられる体制を具体的に示す必要があります。収入の高さだけに頼らず、日常の世話を担ってきた記録を残し、勤務時間や周囲の支援を踏まえた養育計画を整えることが、交渉や裁判所での説明につながります。

また、共同親権を選ぶ場合でも、子どもの同居先や日常の養育方法は別に決める必要があります。父親が望む生活を実現するには、親権者になることと、子どもと暮らして育てることを分けて条件を詰めることが大切です。強引に子どもを連れ戻したり、父親を選ぶよう迫ったりせず、子どもの生活と気持ちに配慮して進めることが求められます。

弁護士に早期に相談すれば、現在の養育状況から親権取得の見通しを確認し、必要な資料や養育計画の不足を整理できます。すでに別居している場合には、離婚手続だけでなく、監護者指定や子の引渡しを申し立てる必要性も相談できます。別居や離婚の条件が固まる前に相談することが、状況に合った準備と手続を選ぶうえで有効です。

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藤垣圭介

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代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。