養育費の支払いが途絶えると、子どもの生活費や教育費をどう賄うか、不安を抱える方も多いでしょう。相手に連絡しても支払ってもらえない場合には、給与や預貯金などを差し押さえて回収する法的手続きが選択肢になります。ただし、差押えには条件があり、養育費の取り決め方や相手の財産によって、必要な書類や手続きが異なります。

本記事では、養育費の強制執行の条件、対象となる財産、回収までの流れと必要書類、費用、回収できない場合の対策を解説します。手続きを申し立てても、相手に差し押さえられる財産がなければ回収には至りません。未払いの期間が長くなると消滅時効も問題になるため、取り決めの内容と相手の収入・財産を踏まえて、回収方法を判断する必要があります。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

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養育費の強制執行とは?

養育費の強制執行とは、養育費が支払われないときに、裁判所の手続きを通じて相手の給与や預貯金などを差し押さえ、未払い分を回収する手続きです。相手の同意を得る必要はなく、給与であれば勤務先から、預貯金であれば銀行から支払いを受けます。ただし、養育費の未払いがあるだけで、相手の財産を自由に差し押さえられるわけではありません。

養育費の強制執行をするための条件

強制執行には、原則として養育費の支払義務を示す「債務名義」が必要です。具体的には、養育費の支払いを定めた調停調書、審判書、判決書などが該当します。公正証書の場合は、支払いを怠ったときに強制執行を受けてもよいと認める「強制執行認諾文言」が必要であり、公正証書を作成しているだけでは足りません。また、支払期限を過ぎても支払われていない養育費があることが前提です。

一方、2026年4月1日以降に発生する養育費には、子1人当たり月額8万円を上限とする先取特権による差押えが認められています。これは厳密には、債務名義に基づく強制執行とは異なる「担保権実行」という手続きです。養育費の合意を証明する文書などを提出することで、公正証書や調停調書がなくても申し立てられます。ただし、月額8万円を当然に請求できる制度ではありません。例えば、取り決めた養育費が月額5万円なら、先取特権の対象も月額5万円です。

養育費の取り決めがない場合でも、2026年4月1日以降に離婚し、離婚時から引き続き子どもを主として監護している親は、子1人当たり月額2万円の法定養育費を請求でき、先取特権による差押えも利用できます。これは正式な養育費を取り決めるまでの暫定的な制度であり、相手の収入などを踏まえて決める養育費の標準額ではありません。差押えの可否は、取り決めの有無、手元の書類、未払い分が発生した時期を区別して判断する必要があります。

強制執行に該当する財産

差押えの対象となる代表的な財産は、相手名義の預貯金、給与・賞与、不動産です。預貯金は銀行に対する払戻請求権を、給与は勤務先に対する支払請求権を差し押さえます。不動産の場合は、競売による売却代金から回収するため、給与や預貯金の差押えとは手続きが異なります。相手が経営する会社の財産や、相手の親・再婚相手の財産は、相手本人の財産ではないため、原則として対象にできません。

養育費を回収するための給与の差押えでは、原則として、税金や社会保険料などを控除した額の2分の1までが対象になります。例えば、差押えの計算上の手取り額が月額30万円なら、原則として月額15万円までです。手取り額が月額66万円を超える場合には、33万円を差し引いた部分が対象となります。ただし、差し押さえられる範囲の全額を必ず受け取れるわけではなく、未払い額や毎月の養育費額に応じて回収します。

強制執行に該当しない財産

相手の生活を維持するため、法律で差押えが禁止されている財産があります。生活に欠かせない衣服、寝具、家具などや、生活保護費・公的年金の受給権などが代表例です。給与も全額を差し押さえられるわけではなく、法律上保護される部分を残す必要があります。養育費の未払いがあっても、生活に必要な財産をすべて取り上げることはできません。

ただし、公的年金の受給権と、振込後の預金は区別されます。年金を受け取る権利自体は差押禁止でも、銀行口座に振り込まれた後は、原則として預金として差押えの対象になります。一方、差押えによって生活を維持できなくなる場合には、相手が裁判所に差押範囲の変更を申し立てることができます。回収方法を判断する際は、財産の種類だけでなく、差押えが認められる範囲まで確認する必要があります。

養育費の支払は期間が非常に長くなりやすいため、途中で支払が滞るケースは多くなりがちです。

養育費に伴う強制執行のメリット

相手の同意がなくても未払いの養育費を回収できる

強制執行のメリットは、相手が支払いを拒んでいても、財産から回収できることです。電話やメッセージによる請求では、相手が応じなければ支払いを受けられません。これに対し、裁判所の差押命令が勤務先や銀行に届くと、差し押さえられた給与や預貯金を相手へ支払うことが禁止されます。取り立てができる時期を迎えれば、養育費を受け取る側が勤務先や銀行に支払いを求められるため、相手による振込みを待つ必要がありません。

例えば、未払いの養育費が30万円あり、差し押さえた口座に十分な残高があれば、その預貯金から未払い分を回収する方法を取れます。相手が連絡を無視していても、差押えの条件を満たし、対象財産を特定できれば手続きを進められます。ただし、差押命令が出ただけで裁判所が自動的に送金してくれるわけではありません。通常は、養育費を受け取る側が銀行などに連絡し、取立ての手続きを行います。

給与の差押えで将来の養育費も継続して回収できる

養育費の一部に未払いが生じた場合には、一定の条件の下で、給与などの定期的に支払われる債権に対し、まだ支払期限が来ていない将来分の養育費も差し押さえられます。通常の金銭債権とは異なり、養育費には継続的な支払いを確保するための特例があるためです。毎月の養育費が支払われなくなるたびに、同じ勤務先の給与について差押えを申し立て直す負担を抑えられます。

例えば、月額5万円の養育費について未払い分と将来分を給与から回収する差押えが認められれば、将来分は各月の支払期限に応じて勤務先から受け取ることになります。子どもが成長するまでの養育費を、直ちに一括で受け取れる制度ではありません。また、相手が退職すると、その勤務先から支払われる給与がなくなるため、転職先の給与を回収するには新たな差押えが必要です。継続的な回収を見込めるかは、相手の就労状況と、毎月差し押さえられる給与額によって決まります。

給与の差押えは、債務者の経済力にかかわらず執行できる点で、回収可能性の高い執行方法の一つといえます。

養育費に伴う強制執行のデメリット

手続きに費用と時間がかかる

強制執行には、申立手数料や郵便料、必要書類の取得費用がかかります。弁護士に依頼する場合には、弁護士費用も必要です。相手の勤務先や預貯金口座が分からなければ、財産を調べるための手続きにも費用がかかるため、差押えの申立費用だけで回収できるとは限りません。未払い額が少ない場合や、回収できる財産が限られている場合には、見込まれる回収額と費用を比較する必要があります。

また、申立てから実際の入金までには時間がかかります。必要書類をそろえた後も、裁判所による審査、差押命令の送達、勤務先や銀行への取立てという過程があるためです。書類に不備があれば補正が必要となり、相手の住所が不明で差押命令を送達できなければ、住所の調査なども必要になります。養育費が未払いだからといって、申し立てた直後に生活費を確保できるわけではありません。

相手に差し押さえられる財産がなければ回収できない

強制執行は、相手が持つ財産から養育費を回収する手続きであり、相手に財産がなければ、差押命令が出ても回収できません。例えば、預貯金口座を特定できても残高がなければ、その口座から支払いは受けられません。相手が無職で給与を受け取っておらず、ほかにも差し押さえられる財産がない場合には、直ちに回収することは困難です。未払いの養育費を裁判所や勤務先が立て替える制度でもありません。

財産があっても、未払い額の全額を回収できるとは限りません。預貯金の残高が未払い額を下回れば、回収できるのはその残高の範囲にとどまります。給与には差押えの上限があるため、未払い額が大きい場合には、複数月にわたって回収することになります。また、不動産に住宅ローンの抵当権が設定されている場合には、売却代金から優先する債権や手続費用を差し引くと、養育費の回収に充てる金額が残らないこともあります。財産の有無だけでなく、残高や収入額、ほかの債権者の優先権まで踏まえて、回収の見込みを判断する必要があります。

執行対象の財産を特定できるかどうかは、強制執行を目指す場合の非常に大きな問題です。

養育費の強制執行手続きの流れ5ステップ

①未払い額と差押えの条件を確認する

まず、取り決めた養育費の月額、支払期限、実際の入金額を照合し、何月分がいくら未払いになっているかを明らかにする必要があります。例えば、月額5万円の養育費が3か月支払われていなければ、未払いの元本は15万円です。一部の入金がある場合には、その金額を差し引きます。通帳や振込履歴と、調停調書・公正証書などの取り決めを示す書類が、未払い額を確認する資料になります。

そのうえで、債務名義による強制執行か、先取特権による担保権実行かを判断します。債務名義がある場合には、その書類に記載された支払義務に基づいて申し立てます。債務名義がない場合でも、合意を証明する文書などがあり、先取特権の対象となる養育費であれば、担保権実行を申し立てられます。利用する手続きによって、回収を求められる範囲と必要書類が異なります。

②差し押さえる相手の財産を特定する

差押えを申し立てるには、どの財産を対象にするかを特定することが必要です。給与なら勤務先の正式名称や所在地、預貯金なら銀行名や支店名などが手掛かりになります。「どこかに銀行口座があるはず」という情報だけでは、通常、預貯金の差押えは申し立てられません。過去の振込記録や、同居中に把握していた勤務先の情報などを確認することが、対象財産を探す出発点になります。

財産が分からない場合には、条件に応じて財産開示手続や第三者からの情報取得手続を利用できます。財産開示は相手本人に財産を明らかにさせる手続きで、第三者からの情報取得は金融機関などから預貯金や勤務先に関する情報を得る手続きです。養育費については、財産開示や勤務先情報の取得から、判明した給与の差押えにつなげるワンストップ執行手続もあります。ただし、いずれも申立要件があるため、手元の書類やこれまでの回収状況に応じた選択が必要です。

③申立書と必要書類を準備する

給与や預貯金の差押えでは、申立書に加え、当事者、請求する養育費、差し押さえる債権を記載した目録などを準備します。債務名義に基づく申立ての場合には、債務名義の正本や送達証明書が必要です。執行文や確定証明書が必要かどうかは債務名義の種類によって異なるため、すべての書類に同じ証明書が必要なわけではありません。

先取特権による申立てでは、養育費の合意を証明する文書など、先取特権の存在を証明する資料が必要になります。また、勤務先や銀行が法人の場合には、その登記事項証明書が必要となるのが通常です。取り決めをした時点から氏名や住所が変わっていれば、戸籍や住民票など、変更を確認できる資料も求められます。申立先の裁判所が案内する書式と必要書類に沿って準備することが適切です。

④裁判所に差押えを申し立てる

給与や預貯金の差押えは、原則として相手の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てます。申立書と添付書類を提出し、申立手数料や郵便料を納めると、裁判所が内容を審査します。記載や書類に不足があれば補正を求められるため、未払い額の計算と目録の記載が一致しているか、提出前に確認する必要があります。

申立てが認められると、裁判所は差押命令を相手と勤務先・銀行に送達します。勤務先や銀行に命令が届いた時点で、対象となる給与や預貯金を相手に支払うことが禁止されます。不動産の競売や動産の差押えは、申立先や必要書類、回収方法が異なるため、この給与・預貯金の差押えと同じ手順では進みません。

⑤差押命令の送達後に養育費を取り立てる

養育費については、原則として、差押命令が相手に送達されてから1週間を経過すると取立てが可能になります。裁判所から届く送達通知書で送達日を確認し、勤務先や銀行に連絡して支払いを求めます。給与を差し押さえた場合には、給与の支払日や養育費の支払期限に応じて回収するため、1週間が過ぎれば将来分まで直ちに受け取れるわけではありません。

銀行などから支払いを受けた後は、回収した金額を裁判所に届け出る手続きが必要です。また、勤務先や銀行が差し押さえられた金銭を供託した場合には、直接取り立てるのではなく、裁判所による配当などを通じて支払いを受けます。未払い分の回収が完了したか、将来分の給与差押えが続くかによって、その後の手続きも異なります。

滞っている支払がいつのものかは、具体的に特定できるよう整理しましょう。

養育費の強制執行にかかる費用

裁判所への申立手数料・郵便料

給与や預貯金の差押えにかかる申立手数料は、原則として4,000円です。債務名義に基づく強制執行では、債権者1人・債務者1人・債務名義1通の場合が基本となります。先取特権による担保権実行も、原則として4,000円です。ただし、複数の債務名義を用いる場合や、強制執行と担保権実行を併せて申し立てる場合などには、手数料が増えるため、利用する手続きに応じた確認が必要です。

申立手数料とは別に、差押命令などを送るための郵便料もかかります。必要額は裁判所や送達先の数によって異なり、複数の銀行や勤務先を対象にすると、その分の郵便料も必要になります。なお、不動産の競売では、評価や売却などのために予納金が必要となるため、給与・預貯金の差押えと同程度の費用では進められません。

必要書類の取得や財産調査にかかる費用

申立てに必要な書類をそろえる際には、証明書の発行手数料や取寄せの郵便料がかかります。例えば、債務名義の正本、送達証明書、必要に応じた執行文・確定証明書、勤務先や銀行の登記事項証明書などです。氏名や住所の変更を証明するために、戸籍や住民票が必要になる場合もあります。手元にある書類と不足する書類によって、取得費用の合計は変わります。

相手の財産が分からず、裁判所の調査手続きを利用する場合には、差押えとは別の申立費用が必要です。財産開示手続の申立手数料は原則2,000円、給与債権に関する第三者からの情報取得手続は原則1,000円で、いずれも郵便料などが別途かかります。金融機関から預貯金情報を取得する場合も、申立手数料に加えて、照会先に応じた予納金などが必要です。勤務先や口座が既に判明している場合と、調査から始める場合とでは、費用が異なります。

弁護士に依頼する場合の費用

弁護士費用は、一般に着手金・報酬金・実費などで構成されます。着手金は依頼時に支払う費用、報酬金は回収などの成果に応じて支払う費用であり、実費には裁判所の手数料や書類取得費用などが含まれます。ただし、料金体系は事務所ごとに異なり、差押えだけを依頼するのか、財産調査や養育費の取り決めから依頼するのかによっても金額が変わります。

依頼前には、回収できなかった場合にも負担する費用と、回収できた場合の報酬額を確認することが適切です。将来分の養育費まで給与から回収する場合には、継続的な入金管理を依頼できるか、その費用をどう計算するかも確認事項になります。また、一定の収入・資産などの要件を満たせば、法テラスの弁護士費用等の立替制度を利用できる場合があります。立替えは原則として返済が必要なため、無料で依頼できる制度とは区別する必要があります。

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養育費の強制執行でお金が取れない時の原因と対策

相手が無職・生活保護・自己破産している場合

相手が無職で給与を受け取っていなければ、給与の差押えによる回収はできません。ただし、無職でも、預貯金や不動産などから回収できる場合があります。家賃収入など、給与以外の収入がある場合も同様です。相手から「収入がない」と説明されても、それだけで回収を諦める必要はありません。財産開示や第三者からの情報取得などを利用し、ほかに差し押さえられる財産がないか調べる方法があります。

生活保護を受けている場合には、生活保護費を受け取る権利や、既に支給された保護金品は差押えが禁止されています。ほかに対象財産がなければ、直ちに回収することは困難です。また、収入が減少した相手から養育費の減額を求められる場合もあります。ただし、通常の取り決めに基づく養育費は、失業や生活保護の受給だけで自動的に減額されるわけではありません。現在は回収できなくても、取り決めた支払義務まで当然になくなるものではないため、未払い額を記録しておくことが適切です。

相手が自己破産した場合でも、養育費の支払義務は免責されません。未払いの養育費も、免責許可決定によって当然になくなるものではありません。ただし、支払義務が残っていても、対象財産がなければ、その時点での回収は困難です。また、破産手続中は、財産や債権の発生時期によって強制執行の扱いが異なるため、申立ての前に破産手続の進行状況を確認する必要があります。就職後の給与などから回収できる可能性は残るため、未払い額の記録と時効への対応を続けることが大切です。

預貯金口座が残高不足・勤務先を退職した場合

預貯金の差押えでは、原則として銀行に差押命令が届いた時点の残高が回収対象になります。未払い額が30万円でも、対象口座の残高が3万円なら、その差押えで30万円全額を回収することはできません。また、通常の預貯金差押えでは、命令が届いた後に入金されたお金まで継続的に差し押さえることはできません。残高が不足していた場合には、別の口座や給与などを調べる方法があります。後日の入金が見込まれる口座について、改めて差押えを申し立てることも選択肢になります。

給与を差し押さえた後に相手が退職しても、転職先の給与へ差押えの効力が自動的に及ぶことはありません。転職先の給与から回収するには、新しい勤務先を特定し、改めて差押えを申し立てる必要があります。一方、退職前の未払給与や退職金が残っていれば、差押命令の対象に含まれている範囲で回収できる場合があります。従前の勤務先から受け取れる金額を確認したうえで、不足分について転職先やほかの財産を調べることが適切です。

養育費の消滅時効(5年・10年)が成立している場合

毎月支払われる養育費は、通常、各月分の支払期限から5年で消滅時効が完成します。例えば、2026年10月末日が期限の養育費と、同年11月末日が期限の養育費では、それぞれ別に時効が進みます。公正証書を作成していても、それだけで時効期間が10年になるわけではありません。なお、2020年4月の民法改正前の取り決めなどについては、旧法が適用されるかどうかも確認が必要です。

確定判決などによって確定した未払い分には、10年の時効期間が適用される場合があります。ただし、判決確定時や調停成立時にまだ支払期限が来ていなかった将来分には、この特例は適用されません。「調停で決めた養育費だから、毎月の支払いすべてが10年」と考えるのは誤りです。調停などで確定した時点の未払い分と、その後に支払期限を迎える分では、時効期間が異なる点に注意が必要です。

時効期間が過ぎても、相手が時効を援用しなければ、裁判所が当然に時効を適用するわけではありません。また、途中で相手が支払義務を認めたり、裁判上の請求や強制執行を行ったりしていれば、時効の完成猶予・更新が認められることがあります。反対に、時効が完成し、相手が有効に援用した分は回収できません。期間が過ぎたように見える場合でも、支払履歴や相手とのやり取り、過去の手続きによって結論が変わるため、これらの資料を確認することが適切です。古い未払い分を回収できなくても、時効が完成していない分は別途請求できます。

養育費の強制執行に関するよくある質問(FAQ)

公正証書や調停調書がなくても差押えできますか?

A.養育費の取り決めを証明する文書などがあれば、先取特権による差押えを申し立てられます。対象は2026年4月1日以降に発生する養育費で、子1人当たり月額8万円が上限です。ただし、取り決めた額が月額5万円なら、対象も月額5万円となります。また、同日以降に養育費を取り決めずに離婚した場合には、要件を満たせば、子1人当たり月額2万円の法定養育費について差押えを申し立てられます。債務名義が必要かどうかは、請求する養育費の種類と金額によって異なります。

相手の勤務先や預貯金口座が分からない場合はどうすればよいですか?

A.一定の要件を満たせば、財産開示手続や第三者からの情報取得手続を利用できます。財産開示は相手本人に財産を明らかにさせる手続きで、第三者からの情報取得は金融機関や市区町村などから預貯金・勤務先の情報を得る手続きです。養育費には、財産開示や勤務先情報の取得から、判明した給与の差押えにつなげるワンストップ執行手続もあります。ただし、調査で財産が判明しても、預金残高や給与額が不足していれば全額を回収できるとは限りません。

養育費が何か月滞納されたら強制執行できますか?

A.「3か月以上」などの期間を待つ必要はなく、1か月分でも支払期限を過ぎて未払いになれば、差押えの条件を満たす限り申し立てられます。例えば、毎月末日払いの養育費が月末までに支払われなかった場合、その未払い分が対象になります。給与などの定期的な収入については、条件を満たせば将来分も併せて差し押さえられます。ただし、将来分を前倒しで一括回収できるわけではなく、それぞれの支払期限が来た後に回収する仕組みです。

【まとめ】養育費の未払いは強制執行で回収!不安な場合は弁護士へ無料相談

養育費が支払われない場合には、給与や預貯金などの差押えによる回収が選択肢になります。公正証書や調停調書がない場合でも、先取特権による差押えを利用できる場合があるため、書類がないという理由だけで諦める必要はありません。ただし、利用できる手続きは、取り決めの内容や未払い分の発生時期によって異なり、実際に回収できる金額は相手の収入・財産に左右されます。

弁護士に相談する際は、養育費の取り決めを示す書類、入金履歴、相手の勤務先など、手元にある資料を用意すると、差押えの可否と回収の見込みについて具体的な助言を受けやすくなります。財産が分からない場合の調査方法や、費用を踏まえた回収方針も相談できます。未払いを放置すると時効によって回収できなくなるおそれがあるため、対応に迷う場合は、無料相談を実施している弁護士事務所で、利用条件を確認したうえで相談することが適切です。

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代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。