離婚を考えていても、「離婚後の生活費を確保できるか」「相手に何をいくら請求できるか」が分からず、不安を感じる方は少なくありません。離婚に伴うお金の問題は、現在の家計だけでなく、離婚後の住居費や子どもの養育費まで含めて考える必要があります。
離婚では、婚姻費用、財産分与、慰謝料、養育費、年金分割などを整理したうえで、夫婦の財産や収入を示す資料を確保し、離婚後の収支を具体的に計算します。生活費が不足する場合には、児童扶養手当などの公的支援も確認しておかなければなりません。
十分な準備をしないまま離婚届を提出すると、相手の財産を把握できなくなったり、養育費の支払いが滞ったりして、離婚後の生活が苦しくなるおそれがあります。離婚条件を決める前に、請求できるお金と必要な手続を整理しておくことが大切です。
この記事の監修者
藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
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離婚のお金問題で発生する費用と請求項目
別居中の生活費として請求できる婚姻費用
夫婦には、婚姻中の生活を同程度に維持するため、収入などに応じて生活費を分担する義務があります。別居後に一方の収入だけでは生活できない場合は、収入の多い配偶者に対して、自分と子どもの生活費に当たる婚姻費用を請求できます。金額は、双方の収入、子どもの人数・年齢などを基に、裁判所の算定表を参考にして決めるのが一般的です。
婚姻費用は、原則として離婚が成立するまでの生活費であり、離婚後の養育費とは対象期間が異なります。また、実務では請求の意思を明確にした時点以降の支払いが認められることが多いため、別居後に生活費を受け取れていない場合は、早い段階で書面や婚姻費用分担調停によって請求することが必要です。
夫婦で築いた財産を清算する財産分与
財産分与では、婚姻中に夫婦の協力によって築いた預貯金、不動産、保険の解約返戻金、有価証券、退職金などを分けます。名義が一方の配偶者だけになっていても、婚姻中の収入を原資として形成された財産であれば、夫婦の共有財産として分与の対象になるのが基本です。実務では、夫婦の寄与割合を原則として2分の1ずつとする扱いが一般的です。
一方、結婚前から保有していた財産や、相続・贈与によって取得した財産は、原則として対象になりません。住宅ローンなどの負債についても、財産の価値や借入れの目的を踏まえて整理します。令和8年4月1日以降に離婚した場合、財産分与を請求できる期間は原則として離婚から5年間であるため、対象財産と評価額を確認して期限内に請求することが必要です。
不貞やDVなどを理由に請求する慰謝料
慰謝料は、離婚しただけで当然に発生するものではありません。不貞行為、DV、悪意の遺棄など、相手の違法な行為によって婚姻関係が破綻し、精神的苦痛を受けた場合に請求します。請求の可否と金額は、行為の内容・期間・回数、婚姻期間、子どもの有無、離婚への影響などを踏まえて判断されます。
請求する場合は、不貞相手とのメッセージ、写真、録音、診断書、警察や相談機関への相談記録など、行為を裏付ける証拠が必要です。相手が責任を否定すると、証拠がなければ請求を維持することが難しくなります。慰謝料を検討している場合は、相手に問い詰めたり離婚条件に合意したりする前に、証拠の内容と請求根拠を確認しておくことが適切です。
離婚後の子どもの生活に必要となる養育費
養育費は、子どもの衣食住、教育、医療などに必要な費用です。子どもと離れて暮らす親も扶養義務を負うため、親権者でないことや子どもと交流していないことを理由に支払いを拒むことはできません。金額は、父母双方の収入、子どもの人数・年齢、監護状況などを基に、裁判所の算定表を参考にして決めるのが一般的です。
令和8年4月1日以降に離婚し、養育費の取決めをしていない場合には、子ども1人につき月額2万円の法定養育費を暫定的に請求できます。ただし、この金額が通常の養育費の適正額を意味するわけではありません。離婚前に適正額、支払期間、支払日、振込先、進学や医療に伴う臨時費用を話し合い、未払い時に回収できる形で取り決めておくことが必要です。
婚姻期間中の厚生年金記録を分ける年金分割
年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を夫婦間で分割する制度です。将来受け取る年金そのものを半分にする制度ではなく、婚姻期間中の標準報酬を分割して、それぞれの年金額に反映させる仕組みです。国民年金の基礎年金部分や、婚姻前・離婚後の厚生年金記録は分割の対象になりません。
年金分割には、夫婦の合意または裁判所の手続によって割合を決める合意分割と、一定の第3号被保険者期間について一方の請求だけで2分の1に分割できる3号分割があります。令和8年4月1日以降に離婚した場合の請求期限は原則として離婚から5年です。離婚前に年金事務所から情報通知書を取得し、対象期間と分割後の見込みを確認しておくことが必要です。
離婚手続・引越し・新生活にかかる費用
離婚では、相手に請求するお金だけでなく、自分が負担する費用も発生します。協議で解決できなければ、離婚調停や訴訟の申立費用、弁護士へ依頼する場合の費用などが必要です。別居や離婚に伴って転居する場合には、引越し代、敷金・礼金、家賃、家具・家電の購入費も準備しなければなりません。
離婚後は、住居費や光熱費を一人で負担する一方、相手からの婚姻費用は終了します。養育費や財産分与を受け取れる予定でも、支払時期が遅れたり、予定どおり支払われなかったりする事態も想定する必要があります。離婚届を提出する前に、初期費用と毎月の生活費を分けて計算し、当面の生活を維持できる資金を確保しておくことが必要です。
別居中の場合、婚姻費用の請求はできるだけ速やかに行うことをお勧めします。原則的に、請求時以降の婚姻費用しか支払義務が生じないためです。
離婚のお金問題で失敗しないための準備手順
離婚後に必要な生活費と見込める収入を計算する
離婚後の生活が成り立つかを判断するには、毎月必要となる支出の把握が欠かせません。家賃、食費、光熱費、通信費、保険料、税金、子どもの教育費に加え、転居後の通勤費や新たに生じる保育費も、離婚後の生活費を計算する際の対象となります。現在の家計だけを基準にすると、離婚後に増える負担を見落とすおそれがあります。
収入面では、自分の手取り収入のほか、養育費や児童手当などの受給見込みを確認する必要があります。ただし、財産分与や慰謝料などの一時金を毎月の収入として扱ったり、まだ合意していない養育費を確実に受け取れる前提にしたりするのは危険です。確実に得られる収入と毎月の支出との差額が、就職・転職や住居の見直しが必要かを判断する基準になります。
夫婦の財産と借金を漏れなく洗い出す
財産分与の対象を把握するには、預貯金、不動産、保険の解約返戻金、有価証券、退職金などの一覧化が必要です。財産の名義が相手だけになっていても、婚姻中に夫婦の協力によって形成されたものであれば、財産分与の対象となる共有財産に含まれるのが基本です。
対象財産の範囲は、夫婦の経済的な協力関係が終了した別居時を基準に確定することが一般的です。一方、財産の評価時点は、財産の種類や協議・裁判の経過によって別居時とは異なる場合があります。住宅ローンやカードローンなどについても、夫婦生活のための負債か、一方の個人的な負債かを借入れの目的や使途から区別する必要があります。
相手の収入や財産を裏付ける資料を確保する
養育費や婚姻費用の算定には、源泉徴収票、給与明細、確定申告書、課税証明書など、双方の収入を示す資料が必要です。財産分与では、通帳や取引履歴、保険証券、証券会社の残高報告書、不動産の登記事項証明書、住宅ローンの残高証明書などが、財産の存在と価額を裏付ける資料となります。
別居後は、相手名義の郵便物や自宅に保管された資料を確認することが難しくなります。もっとも、相手のインターネット口座へ無断でログインするなど、不正な方法による取得は避けなければなりません。手元で適法に確認できる資料を別居前に保存し、不足する資料については、弁護士会照会や裁判所による調査嘱託を利用できるかを確認する必要があります。
請求項目ごとの金額と希望条件・譲歩できる範囲を整理する
婚姻費用、財産分与、慰謝料、養育費、年金分割は、それぞれ算定方法や判断基準が異なります。財産分与では対象財産と評価額、慰謝料では違法行為の内容と証拠、養育費では双方の収入と子どもの人数・年齢が判断材料となります。交渉や調停で根拠を説明するためには、請求項目ごとの法的根拠と金額を対応させておく必要があります。
すべての希望が通るとは限らないため、譲れない条件と調整できる条件の区別も必要です。例えば、財産分与について一括払いを優先するのか、支払時期を延ばしてでも金額を確保するのかによって、受け入れられる条件は変わります。金額・支払方法・支払期限を一体として比較することが、離婚後の生活に適した条件を選ぶ基準になります。
離婚届を提出する前に合意内容を書面化して未払いに備える
財産分与、慰謝料、養育費などについて合意できた場合は、金額、支払期限、支払方法を具体的に書面へ残す必要があります。口頭の約束だけでは、後から合意内容を否定されたり、支払いが滞った際に約束を証明できなかったりするためです。特に養育費や分割払いの財産分与では、いつまでに、いくらを、どの方法で支払うかを明確にしなければなりません。
継続的または分割による金銭の支払いについて、強制執行認諾文言付き公正証書があれば、不払いの際に改めて訴訟や調停を経ることなく強制執行を申し立てられます。合意に至らない場合には離婚調停を利用し、成立した条件が調停調書に記載されます。合意の有無と支払方法に応じた書面を選ぶことが、合意内容の証明と未払いへの備えにつながります。
財産の特定は、離婚時の財産分与に際して非常に重要な問題となることが珍しくありません。できるだけ事前に、計画的に確認しておくことが望ましいでしょう。
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離婚後のお金問題に困ったときに使える公的給付金・手当
児童扶養手当・児童手当
児童扶養手当は、離婚などによってひとり親となり、子どもを養育している家庭の生活を支える制度です。支給額は、受給者の所得、扶養する子どもの人数などによって異なり、所得が基準を超えると一部支給または支給対象外となります。離婚しただけで自動的に支給されるものではなく、市区町村への申請が必要です。
児童手当は、ひとり親家庭に限らず、対象年齢の子どもを養育している人に支給されます。離婚や別居によって子どもと暮らす人が変わった場合は、従前の受給者から自動的に切り替わるとは限りません。子どもを実際に養育している人が受給できるよう、住所地の市区町村で受給者変更や認定請求が必要かを確認することが適切です。
医療費助成・就学援助
ひとり親家庭等医療費助成制度は、ひとり親とその子どもが医療機関を受診した際の自己負担額について、全部または一部の助成を受けられる制度です。実施主体は自治体であり、対象となる子どもの年齢、所得制限、自己負担の有無などは地域によって異なります。転居を伴う離婚では、転居先の自治体の制度内容を確認する必要があります。
就学援助は、経済的な理由で小中学校への就学が困難な家庭に対し、学用品費、給食費、修学旅行費などを援助する制度です。対象者や援助費目は市区町村が定めており、児童扶養手当を受給していても別途申請が必要な場合があります。高校生については就学援助ではなく、高等学校等就学支援金など別の制度が対象となるため、子どもの就学段階に応じた確認が必要です。
就職・資格取得を支援する給付金
自立支援教育訓練給付金は、ひとり親が就職や収入の向上につながる指定講座を受講した場合に、受講費用の一部を支給する制度です。雇用保険の教育訓練給付金を受けられる場合には、その支給額との差額が対象となることがあります。講座を受講した後では対象にならない場合があるため、受講を申し込む前に自治体の窓口で対象講座と支給要件を確認することが必要です。
高等職業訓練促進給付金は、看護師や保育士など就職に有利な資格の取得を目指し、一定期間以上養成機関で修業するひとり親の生活費を支援する制度です。児童扶養手当を受給しているか、これと同程度の所得水準にあることなどが支給要件となります。受講費用を補う制度と修業中の生活費を支える制度では目的が異なるため、取得する資格と通学期間に応じた制度の選択が必要です。
まとめ|離婚のお金問題は早めの準備と専門家への相談が解決の近道
離婚に伴うお金には、婚姻費用、財産分与、慰謝料、養育費、年金分割のほか、引越しや新生活にかかる費用があります。離婚後の生活を安定させるには、離婚届を提出する前に財産・負債・収入を把握し、必要な資料を確保することが欠かせません。
相手との合意内容は書面に残し、継続的または分割による支払いには公正証書の作成も選択肢となります。財産の開示を拒まれている場合や、請求額・離婚条件で争いがある場合は、合意する前に弁護士へ相談し、請求できる内容と解決手続を整理することが適切です。離婚後の収入が不足する場合には、児童扶養手当や医療費助成などの支援制度も併せて確認する必要があります。
離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。
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代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。










