盗撮事件の示談は弁護士に依頼すべき?不起訴の可能性は?自首すべき場合は?弁護士が徹底網羅

このページでは,盗撮事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

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目次

盗撮事件で弁護士が必要となるタイミング

①現行犯で取り締まりを受けた後

盗撮事件が問題になるケースの大多数は,現行犯で発覚した場合です。被害者又は第三者が盗撮されていることを知り,その場で撮影者に問い質すなどする,という流れが非常に多く見られます。
そして,盗撮事件が現行犯で問題になると,多くはその場に警察官が駆け付けるなどして警察による取り締まりへ移行することになります。この点,警察による取り締まりは,まず被疑者となる人物を逮捕するかしないか,という判断から行われることになりやすく,漫然と対応をしていると逮捕をされてしまうリスクが高くなる傾向にもあります。

そのため,盗撮事件が現行犯で問題となり,あわせて警察による取り締まりを受けた場合には,その段階で弁護士選びの検討を早期に行うのが適切です。現行犯で問題になった場合は,警察の対応もスピーディーに進むことが多いため,少しでも早い弁護士選びが有力です。

ポイント
盗撮事件は大多数が現行犯で問題になる
現行犯の取り締まりは,逮捕するかしないかの判断が早期に生じる

②示談を試みたいとき

盗撮事件の刑事処分は,被害者との示談の成否によって決定的に左右されることが多く見られます。裏を返せば,盗撮事件で刑事処分の軽減を図るためには,示談の試みを検討することが不可欠と言えるでしょう。

この点,具体的に示談を試みる場合には,弁護士への依頼が不可欠です。示談の試みは,捜査機関へ申し入れを行い,捜査機関から被害者側に意思確認を行ってもらう必要がありますが,捜査機関が被害者側への取り次ぎを行うのは,被疑者(加害者)の方に弁護士が入っている場合のみです。
また,捜査機関が被害者に意思確認を行い,被害者の了承が得られた場合には,弁護士限りで被害者の連絡先が通知されるなどし,被害者と弁護士との間で連絡を取り合う流れになります。

示談交渉の流れ

この点,示談交渉が奏功するか,その条件面はどのようになるか,といった点は,被害者と弁護士との協議次第です。弁護士側の判断によっても,様々な結論があり得ます。
そのため,示談を試みるときには,示談の試みに適した弁護士選びを適切に行うことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
盗撮事件の刑事処分は,示談の成否に左右される
示談の試みは,弁護士を通じて行う必要がある

③出頭を求められたとき

盗撮事件で取り締まりを受ける場合,逮捕勾留といった身柄拘束をされる事件でなければ,警察や検察から出頭を求められ,警察署や検察庁で取り調べを受ける流れになることが通常です。そのため,盗撮事件に関して出頭を求められたときは,取り調べ対応について十分な事前準備を行うことが適切となります。

この点,盗撮事件における適切な取り調べ対応のためには,盗撮事件に精通した弁護士との間で事前に十分な打ち合わせを行い,取調べに臨むことが適切です。取調べ対応を誤った場合,不要な不利益を被ってしまう可能性もあり得るため,漫然と取調べに対応することはお勧めできません。
そのため,警察や検察から出頭を求められ,取調べの予定が具体的に設けられた段階で,速やかに弁護士選びを行うのが望ましいでしょう。弁護士選びに際しては,盗撮事件の取り調べ対応に専門的知見を持った弁護士への依頼を行うことで,より有益な準備が可能になります。

ポイント
出頭を求められるのは,取調べのため
取調べ対応に備えるため,弁護士選びを行うのが適切

④逮捕の直後

盗撮事件は,現行犯で問題になった後,そのまま逮捕されることも考えられる事件類型です。特に,加害者と被害者を物理的に切り離し,トラブルが深刻化してしまうことを避ける必要が大きいと判断された場合には,被害者保護のため逮捕されるケースが少なくありません。
そのため,逮捕前に弁護士選びを行うことが現実的に困難な場合も多く見られるところです。

この点,逮捕が避けられなかった場合には,逮捕後できるだけ速やかに,周囲の人による弁護士選びを進めることが有益です。盗撮事件は,逮捕直後に適切な対応を尽くすことができれば,早期に釈放され,損害を最小限に抑えることも十分にあり得る事件類型ということができます。そのため,早期に適切な弁護士選びを行い,弁護士と被疑者本人が協力体制を築くことによって,逮捕による不利益を可能な限り小さくし,早期釈放に結びつけることが可能になり得ます。

なお,逮捕直後の弁護士選びは,よりスピーディーな動きが必要になりやすいという特徴もあります。逮捕を伴う事件(いわゆる身柄事件)は,法律上の時間制限が厳格に設けられており,手続が速やかに進んでいくため,その手続に後れを取らないよう,早期に弁護士を選ぶことが必要です

ポイント
盗撮事件は現行犯で逮捕される場合も多い
逮捕後速やかな弁護士選びにより,早期釈放も十分にあり得る

盗撮事件で弁護士に依頼するべきケース

①逮捕の回避を目指す場合

盗撮事件に際しては,逮捕されてしまうか逮捕を回避できるか,という点がその後の生活に決定的な影響を及ぼすことも少なくありません。逮捕が防げれば,刑事手続全体を通じて生活への影響が最小限に抑えられる可能性が低くありませんが,逮捕されてしまうと,最終的な処分が軽微になったとしても,逮捕の悪影響は残ってしまう,ということが大いにあり得るところです。

この点,盗撮事件では,弁護士を選んで適切な動きを取ることで,逮捕を回避できる場合も珍しくはありません。逮捕の回避を目指したい場合,具体的な対応を自分で判断することは難しいため,弁護士選びが必要と考えるのが適切でしょう。

②早期釈放を目指す場合

盗撮事件で逮捕などの身柄拘束を受けた場合,早期釈放を図る具体的な動きは弁護士に依頼せざるを得ません。具体的には,弁護士を通じて以下のような対応を行うことが適切です。

早期釈放を目指す対応

1.接見を行い,被疑者と方針を共有する
2.検察庁に釈放の判断を求める働きかけをする
3.裁判所に釈放の判断を求める働きかけをする
4.必要に応じて裁判所への法的な申立てを行う

上記の動きは,どれも弁護士に行ってもらう必要があります。盗撮事件では,弁護士が適切な動きを尽くすことで,現実に早期釈放が勝ち取れる場合も少なくありません。

③不起訴処分を実現したい場合

盗撮事件における被疑者の最終的な目標は,不起訴処分の獲得であることが通常です。不起訴処分となれば,刑罰を受けることなく,前科が付くことも防げるためです。

もっとも,不起訴処分を目指す具体的な方法は,事件の内容に応じた弁護士の判断や対応が不可欠です。認め事件の場合は,示談を試みるのが通常ですが,示談の試み自体が弁護士なしではできません。また,否認事件の場合は,個別事件の争点や証拠構造を踏まえ,弁護士が法的な主張を尽くすことが必要となります。

そのため,不起訴処分の獲得には弁護士選びが必要と考えるべきでしょう。

④余罪に関する対応を要する場合

盗撮事件は,類型的に余罪のあることが多い事件です。盗撮行為を一度だけ行った,というケースよりも,複数回行ったうちの一回が取り締まりの対象となった,ということが一般的であるためです。
そして,余罪に当たる事件も犯罪に該当する可能性が高いため,余罪もあわせて処罰されるとなれば,それだけ重い刑事処分の対象となる可能性があります。

そのため,盗撮事件の有益な解決のためには,余罪に対する適切な対応が不可欠です。そして,取調べに際してどのように話すのか,余罪の示談はどうするのかなど,余罪に関する様々な問題点を適切に判断するためには,弁護士の存在が必要となるでしょう。

余罪がある盗撮事件では,弁護士選びの必要がより大きいと考えるのが適切です。

盗撮事件で不起訴になる可能性

盗撮事件は,認め事件,否認事件のいずれについても,不起訴処分となる可能性が大いにある類型ということができます。特に,認め事件の場合,被害者との間で示談が成立していれば,不起訴処分となる可能性は飛躍的に上昇するでしょう。

盗撮事件が捜査・処分の対象となるのは,大多数が現行犯です。そして,現行犯の場合,犯罪事実が明らかであることが多く,類型的に認め事件が多い傾向にあります。
そのため,盗撮事件で不起訴になる可能性があるかは,盗撮事件で示談が成立する可能性があるか,という問題になりやすいところです。

この点,盗撮事件は,示談によってその後の接触を防ぐメリットが被害者側にも大きい事件類型と言えます。加害者による接触を法的に禁じることができる方法は示談だけであるため,被害者にとっても示談に応じる利益は無視できず,示談が成立する可能性は決して低くありません。
そのため,盗撮事件は示談による不起訴処分の可能性が大いにある事件と言えるでしょう。

ポイント
盗撮事件は不起訴処分の可能性が十分にある事件類型

盗撮事件で示談は必要か

盗撮事件は,基本的に示談が必要であると理解するのが適切です。
一般的な盗撮事件の場合,示談ができているかどうかによって処分が決まると言っても決して過言ではありません。

犯罪事実に争いのない盗撮事件では,特段の事情がなければ起訴されるのが通常です。起訴された場合,無罪でない限り刑罰を受けることになるため,刑罰を受けて前科が付くことになります。
一方,同じ事件で示談が成立した場合,特段の事情がなければ起訴されない方が通常の処理になりやすいです。被害者が起訴を希望していない場合,被害者の意向を押し切って起訴されることはあまりない事件が多い類型と言えるでしょう。

もちろん,示談をしても起訴を防げない事件はありますが,その場合でも示談をしていることによって処罰は一段軽くなるという理解をするのが一般的です。示談がなければ実刑判決の対象となる事件でも,示談があることによって実刑判決にならず済むことは決して珍しくありません。

盗撮事件の対応は,まず示談から検討することを強くお勧めします。

ポイント
盗撮事件は基本的に示談が必要
示談が成立していれば不起訴が見込まれやすい

盗撮事件における示談のメリット

盗撮事件は示談のメリットが非常に大きい事件類型です。具体的なメリットとしては,以下のような点が挙げられます。

①前科を防げる

刑事事件では,警察から事件の送致を受けた検察官が,被疑者を起訴するかどうか決めます。そして,検察官に起訴されると,刑罰を受けて前科が残ることになります。
この点,検察官が起訴するか不起訴どうかは,様々な事情を総合的に考慮の上で判断されますが,被害者がいる事件の場合,被害者の意向を反映させることが非常に多く見られます。

盗撮事件は被害者のいる事件類型のため,被害者が起訴を望むか不起訴を望むかという点が,検察官の判断を左右しやすい傾向にあります。そのため,不起訴を目指す場合の最も効果的な手段は,被害者に不起訴を希望してもらうことになるのです。

示談を行うことによって,被害者に不起訴を希望する意思を表明してもらうことができ,検察官の不起訴処分を獲得できる可能性が飛躍的に高くなります。不起訴処分となれば前科はつかないため,前科を防ぐための最も有力な手段は示談ということになるでしょう。

②早期釈放につながる

盗撮事件で逮捕・勾留されている場合,被害者との示談が成立すれば,その身柄拘束は早期に解かれる可能性が非常に高くなります。

そもそも,盗撮事件で逮捕・勾留といった身柄拘束をするのは,事件の捜査や処分(起訴・不起訴の判断)のために逮捕・勾留が必要であるからです。裏を返せば,捜査や処分を検討する必要がなくなれば,逮捕・勾留をしておく必要もなくなるため,早期に釈放されるということになります。

示談が成立した場合,被害者はそれ以上の捜査や加害者(被疑者)の刑事処罰を希望しなくなるため,捜査機関が捜査を続けたり刑事処罰を検討したりする必要は基本的になくなります。捜査機関の捜査は,被害者の協力がなければ困難なことも多いため,被害者が捜査を希望しないのに無理矢理捜査を続けることは難しい,という面もあります。

そうすると,示談が成立し,被害者が捜査や処罰を希望しないという希望を示せば,逮捕・勾留しておく必要もなくなります。その結果,不要な逮捕・勾留は終了し,早期釈放してもらうことが可能になりやすいでしょう。

③刑罰が軽減する

示談は,盗撮事件で起訴されることが防げない場合,刑罰を受けてしまう場合にも重要な効果を発揮します。

刑罰の重さを最終的に判断するのは裁判所ですが,裁判所が刑罰を判断する際に極めて重要視する事情に,被害者の処罰感情や被害者に対する被害の補填が挙げられます。

処罰感情とは,処罰を希望するかどうかという気持ちを言います。被害者の処罰感情が強いほど,刑罰は重くなる傾向にあります。
また,被害者に対する被害の補填は,被害者に生じた損害がどれだけ回復されているか,という意味で重要な判断要素になります。被害の補填は主に金銭で行われることが一般的ですが,事後的に被害が回復されていれば,その結果重い刑罰を科す必要はなくなる,という理解になるのが通常です。

被害者との間で示談が成立すれば,被害者に処罰感情がないことや,被害の補填がなされたことが明らかになります。そのため,示談は刑罰の軽減に直結する効果を持つということができます。

示談がなければ実刑判決が見込まれるケースでも,示談によって実刑判決を回避できる場合は珍しくありません。示談は,被害者がいる事件で刑罰を軽減するための最も有益な試みと理解してよいでしょう。

④被害者との法律関係が解決する

盗撮事件が起きた場合,被害者と加害者の間には,「被害者が加害者に損害賠償を請求できる」という法律関係が発生します。盗撮行為は,被害者に対する「不法行為」に該当するため,盗撮行為(=不法行為)の被害者は,加害者に対して金銭賠償を請求できる,という関係に立つのです。
しかも,この法律関係は,加害者が刑事処罰を受けたとしてもなくなったり負担が軽くなったりするものではありません。当事者間の法律関係と刑事処罰とは無関係であるためです。

この点,被害者との間で示談が成立した場合,被害者と加害者の間には示談の内容以外に法律関係がない(法律関係が解決した)という約束をすることになります。そのため,示談が成立すれば,その後に加えて被害者から金銭賠償を請求されることはなくなり,法律関係の面でも安心することができます。
なお,当事者間の法律関係が解決したことを約束する示談の条項を,「清算条項」と言います。示談に際して清算条項を盛り込んで解決することで,当事者間の法律関係は示談をもって終了することになります。

ポイント 示談のメリット
前科の回避につながる
身柄拘束からの釈放につながる
刑罰の軽減につながる
当事者間の法律関係が清算できる

盗撮事件の示談金相場

刑事事件で示談を行う場合,加害者(被疑者)から被害者へ示談金の支払を行うのが通常です。具体的な示談金の金額は当事者間の協議で定められることになりますが,事件類型ごとに大まかな目安はあります。

この点,盗撮事件の場合,概ね30万円ほどとされる例が多く見られる傾向にあります。
ただ,被害者側の意向によってはより大きな金額となることも多数あります。特に,2023年に「性的姿態撮影等処罰法」が施行され,盗撮事件がいわゆる「撮影罪」として厳罰化されたことは広く知られています。そのため,盗撮事件の厳罰傾向を踏まえた示談金額の検討を求められることも一定数あるところです。

被害者との交渉も踏まえた示談金額の目安としては,30~50万円ほどを想定するのが有力でしょう。
具体的な示談金額はこの目安を上回るケースもありますが,金額が変動する要因としては以下のような事項が挙げられます。

盗撮事件における示談金額の変動要因

1.盗撮の場所・方法
→自宅の浴室など,通常衣服をつけないプライベートな場所での撮影は,被害者の精神的苦痛が大きく示談金額の増額要因になります。

2.盗撮の期間・回数
→長期間,複数回の盗撮行為がある場合,示談金額の増額要因になります。

3.被害者の心身への支障
→精神疾患などの原因になっている場合,示談金の増額要因になります。

4.加害者の経済力
→経済力に限界のある場合,示談金の減額要因になります。

盗撮事件の示談内容・条項

【確認条項】

加害者が被害者へいくらの支払を行う必要(義務)があるかを,当事者間で確認する条項です。
当事者間で合意した示談金の金額を,支払う義務のある金額と定めることになります。

【給付条項】

確認された支払の義務をどのように果たす(給付する)のか,という点を定める条項です。
金銭の支払を内容とするのが通常ですが,支払方法が手渡しか振り込みか,手渡しであればいつどこで行うか,振り込みの場合はどの口座か,振込手数料は誰が負担するか(通常は加害者が負担),支払の期限はいつまでか,といった点を定めます。

【清算条項】

示談で定めた内容以外に,当事者間に債権債務関係(法律関係)がないことを確認する条項です。この条項を設けることで,加害者と被害者との法律関係は示談金の支払をもって終了することになります。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)とは「許し」を意味します。宥恕条項は,被害者が加害者を許すことを内容とする条項です。
加害者が示談金の支払を負担して示談を目指すのは,基本的にこの宥恕条項を獲得するためです。宥恕条項があることによって,捜査機関は被害者に処罰感情がないことを把握でき,不起訴処分の根拠とすることが可能になります。

【行動の制約】

示談成立後に一定の行動をしないこと(又はすること)を約束するものです。多くの場合,被害者と加害者が接触しないことを確かにするため,両者を物理的に引き離す目的で盛り込むことが考えられます。

盗撮事件で設けられやすい行動制約の内容としては,以下のものが挙げられます。

盗撮事件における行動制約の例

1.盗撮画像,映像を削除する
2.盗撮に用いた機器を処分する
3.事件が起きた電車の利用をしない・制限する
4.事件が起きた駅の利用をしない・制限する
5.事件発生場所の近辺に立ち入らない
6.勤務先を退職する(職場内での事件など)

なお,示談の内容は「今後一切接触しない」ことを前提にすることが通常であるため,一切接触しないとの約束を補強する意味合いの条項と理解されます。

【違約金】

加害者が示談で定めた約束に違反した場合,約束違反のペナルティとして被害者に金銭(違約金)を支払うという条項です。
主に,行動制約を取り決めた場合に,これを遵守してくれるか被害者が不安である,というケースで設けることが考えられます。
違約金の金額は,特段のルールはありませんが,示談金額をベースに定めることが多く見られます。

この違約金条項は,実際に違約があり金銭を支払う,という形で活用されることはほとんどありません。現実的には,「違約金の約束をできるほど示談条件を守る気持ちが強い」という意思を表明する手段として用いられるものです。

【口外禁止】

事件の内容や示談の内容を,第三者に口外しないと約束する条項です。両当事者のプライバシーを守るために設けることが考えられます。
盗撮事件の場合,口外されてよいと考える加害者はほとんどいないため,弁護士からはほぼすべてのケースで被害者へ口外禁止条項の設定を依頼することになるでしょう。

その他,被害者が複数いて被害者間に交友関係がある場合,示談の内容が共有されてしまうと,他の被害者との示談に悪影響が生じかねないため,被害者間の情報共有を防ぐ目的で設けられることもあります。

余罪の示談について

盗撮事件の場合,現実に発覚し捜査されている事件以外にも,余罪が複数存在することが考えられます。そのため,余罪も含めて示談する必要があるのかは重要な問題になります。

この点,余罪をすべて示談することは決して必要ではありません。余罪が存在したとしても,そのすべてが捜査・処分の対象になるわけではないからです。

余罪がある場合の取り扱いは,基本的に以下のいずれかとなります。

余罪の取り扱い

1.余罪を別途捜査・処分の対象とする
2.余罪があることを踏まえて本罪の処分を判断する(余罪は情状のみの問題になる)

このうち,「1.余罪を別途捜査・処分の対象とする」ケースだと,余罪についても示談が必要となります。余罪の示談をしなければ余罪が起訴される可能性が高いためです。
しかし,「2.余罪があることを踏まえて本罪の処分を判断する(余罪は情状のみの問題になる)」ケースでは,不起訴のために余罪の示談が必要とはされません。余罪そのものを起訴したり不起訴にしたりするわけではないからですね。

この取り扱いの違いは,余罪について被害者が捜査・処分を求めているかによって変わるのが通常です。具体的には,事前に余罪の被害届が出ているかどうかによって左右される傾向にあります。
もっとも,盗撮事件の余罪について,事前に被害届が出ていることはあまりありません。盗撮行為の性質上,余罪が被害者に発覚している可能性が非常に低いため,余罪の被害者は事件を知らず,被害届も出ていないことが大多数です。

余罪に関しては,別途捜査の対象とされたことが分かってから,捜査の対象となった事件について行う方針が適切でしょう。

ポイント 余罪の示談
余罪が情状の問題にとどまるのであれば示談不要
余罪自体が捜査・処分の対象となる場合は示談が必要

盗撮事件の自首に関するポイント

盗撮事件で自首をするべき場合

①現行犯で被害者等に発覚した場合

自首は,被害者などが警察に被害申告を行うであろう場合に,先回りして自分から警察に申し出る,というケースで特に高い効果を発揮します。このようなケースでは,自首をしてもしなくても自分への捜査や処分が見込まれやすいところ,自首をした方が軽微な取り扱いで終わりやすいためです。

この点,現行犯で被害者に見つかったがその場を逃れた,目撃者に声をかけられたがその場を離れたなど,現行犯で発覚している場合,被害者などが警察に被害申告をする可能性が非常に高いといえます。被害者としては,警察に被害申告をしなければ泣き寝入りとなってしまうため,警察に捜査をして犯人を見つけてもらう方が合理的な判断になりやすいでしょう。
そのため,現行犯で被害者や目撃者に発覚したケースでは,被害者などが被害申告を行う前に,先回りして自首をすることが非常に有力です。逮捕などの強制的な手続を回避するためには,自首の効果は極めて高いものになるでしょう。

ポイント
被害者や目撃者に見つかっている場合は,自首が有力
逮捕を回避する効果が非常に高くなる

②客観的証拠があると推測される場合

犯罪の客観的証拠が揃っており,捜査されれば自分が犯人であると容易に特定できるであろうと推測できる場合には,自首が有力な手段になります。

盗撮事件の場合,警察は,盗撮に用いられた撮影機器や撮影結果が残された映像や画像のデータを手に入れたいと考えることが多く見られます。もっとも,撮影機器や撮影データは,容易に処分することができてしまうため,被疑者を特定した段階で,捜索・差押えという方法で強制的に取り上げることも少なくありません。
そのため,盗撮事件で自首をしないまま自分が犯人と特定された場合,捜索差押えなどの強制捜査を受け,周囲に事件のことが知られてしまう可能性も低くはないのです。

この点,自分から自首をし,必要に応じて撮影機器や撮影データを提出することで,捜索差押えといった強制捜査を未然に防ぐ効果が期待できます。捜査をすれば自分にたどり着くであろう客観的証拠の存在が見込まれる場合は,自首の検討が有力でしょう。

なお,客観的証拠としては,現場や付近を撮影した防犯映像・画像,現場付近(駅など)の入退場記録,事件前後の足取りなどが挙げられます。

ポイント
自分を犯人と特定できる証拠がある場合,自首が有力
捜索差押えなどの強制捜査を防ぐ効果が期待できる

盗撮事件の自首は弁護士に依頼すべきか

盗撮事件の自首は,弁護士に依頼し,適切な方法で進めることが重要です。弁護士に依頼することのメリットとしては,以下のような点が挙げられます。

①自首が本当に有効な手段か分かる

自首は,自分から捜査機関に犯罪事実を申告する行為であるため,自首によってはじめて捜査機関が犯罪を知る,という結果になる恐れもあります。この場合,自首をしたばかりに捜査や処分を受けることにもなりかねず,自首は結果的に有効な手段ではなかったと言わざるを得ないでしょう。

この点,弁護士に依頼し,状況に応じた法的な評価をしてもらうことによって,自分のケースでは自首が本当に適切な手段であるか,という点を正確に判断できる可能性が非常に高くなります。
自分の中では自首しなければ手遅れになると思っていても,実際にはそうでない場合は珍しくありません。また,逆に,自分は自首するほどでもないと思っていても,実際は一刻も早く自首をするべき状況だった,という場合も少なからずあり得ます。

自首を検討するときには,一度立ち止まって,自首をすることが有効な状況なのかどうか,弁護士の専門的な意見を仰ぐことをお勧めします。

②適切な手順で自首ができる

実際に自首をする場合,どのような手順を踏んで,どのような方法で自首をするのかは,専門的な知識や経験なしには判断が困難です。自首の方法を誤った場合,手続が遠回りになった結果,自首が有効な期間を逃してしまい,自首の効果が半減してしまう恐れもあります。

弁護士に依頼をすることで,速やかに,適切な手順で自首を進めることができるため,せっかく決意した自首の効果が失われることなく,最大限の効果につながりやすくなるでしょう。

③自首後の弁護活動が円滑にできる

刑事事件は,自首をして終わりではありません。むしろ,自首は捜査のスタートラインであって,自首の内容を踏まえて捜査が開始されることになります。
そうすると,自首を行うときには,自首をした後に始まる捜査や,その後の最終的な処分のことも考えておかなければなりません。

この点,弁護士に依頼をすることで,自首の後迅速に弁護活動を始めてもらうことが可能になります。盗撮事件では,被害者との示談が非常に重要ですが,自首とともに示談の試みを開始することで,示談交渉という大切な弁護活動へとスムーズに移ることができます。
また,自首をすることで被害者の感情が和らげば,示談の成功率も高くなるため,自首のメリットがより大きくなっていくことになるでしょう。

盗撮事件の弁護士を選ぶ基準

①盗撮事件の弁護活動経験

刑事事件は,同種事件の先例を踏まえ,先例の結論と矛盾しないように運用されることが通常です。例えば,同種の先例で被疑者が釈放されているのであれば,特段の事情がない限り今回も釈放する,同種の先例が不起訴であれば今回も不起訴処分とすることを念頭に検討する,といった具合です。

そのため,刑事事件の弁護活動は,同種事件の弁護を経験しているかどうかによって,活動内容や見通しの質が大きく変わりやすい傾向にあります。先例となる同種事件の経験があれば,経験を踏まえてより正確な判断をできることにもつながり,事件解決にとって非常に重要なポイントとなるでしょう。

弁護士選びにおいては,同種の盗撮事件に関する弁護活動の経験の有無を判断材料の一つにすることが有力です。

②迅速な対応の可否

盗撮事件の場合,特に現行犯逮捕された状況だと,対応が迅速であるかどうかによってその後の流れに大きな違いの生じる可能性があります。釈放されるかどうか,いつ釈放されるか,といった点は,弁護士の対応が迅速かどうかによって変わるケースも珍しくありません。

もっとも,弁護士がどのようなペースで,どのようなタイミングで対応をするか,という点には,明確なルールがないため,基本的にすべて弁護士の判断によることとなります。依頼者側が早期の動きを期待していたとしても,弁護士がゆったりと動く方針であればそれまでです。

そのため,弁護士が迅速な対応を約束してくれるかどうか,という点は重要な判断基準の一つとするべきでしょう。具体的には,まず最初の動き出しをいつしてくれるのか,という点を確認してみるとよいかもしれません。

動き出しの例

身柄事件の場合
最初の接見をいつ行うのか

在宅事件で示談を目指す場合
示談の申し入れをいつ行うのか

③示談交渉に長けているか

盗撮事件の解決は,示談の成否にかかっている場合が非常に多いところです。そのため,否認事件を除き,弁護士による示談交渉が不可欠となるケースが多数と言ってよいでしょう。
そのため,弁護士選びは,示談交渉の代行者選びという意味合いを持つと言っても過言ではありません。

弁護士選びに際しては,依頼した弁護士が示談交渉を行うことになる点を踏まえ,示談交渉に長けているかという基準を設けることが有力です。弁護士への相談段階で判断する方法としては,想定される示談の条件について,具体例を示すなどしながら詳細に案内してくれるか,という点を重視するのが一案でしょう。

また,示談交渉に際しては,被害者側の要望を毅然と断るべき局面もあります。弁護士によっては,被害者側の要望をすべて受け入れて依頼者である加害者に折れてもらえれば楽,という発想になりかねませんが,それでは加害者側にとって有益でないことは明らかです。
そのため,被害者側にも必要に応じて断る姿勢を示せる弁護士か,という判断基準も設けるとよいでしょう。

ポイント
弁護士選びは示談交渉の代行者選びでもある
示談条件の想定ができているか,毅然とした対応も取れるか,という点を重視する

④見通しの正確さ・詳細さ

弁護士の活動や案内は,刑事処分の見通しを踏まえて行うことになります。そのため,刑事処分の見通しが正しいことが,弁護活動の大前提となってきます。見通しが誤っていると,それを踏まえた弁護活動が適切なものと評価できる可能性は残念ながらないでしょう。
そのため,弁護士選びに際しては,その後の刑事手続や刑事処分の見通しが正確であるか,という基準を設けることが望ましいです。

もっとも,弁護士の見通しが正確であるかを依頼者側が判断することは現実的でありません。そのため,具体的には見通しをどれだけ詳細に示してくれるか,という点を重視することをお勧めします。
刑事手続や刑事処分の見通しには,確実に分かることから絶対に分からないことまであります。そして,見通せることと見通せないことが区別でき,その線引きが詳細であるほど,見通しは正確であると言ってよいでしょう。

弁護士による見通しが肝心な部分であやふやでないか,という点は大切な判断基準にすることをお勧めします。

ポイント
見通せることと見通せないことの線引きが詳細であるか

盗撮事件における弁護士選びの準備

①本罪の内容を説明する準備

まずは,現実に捜査の対象となっている事件の内容を正確に弁護士へ伝える準備が必要です。時系列に沿って,状況を漏れなく,簡潔に伝えられるよう,メモを作成するなどして整理することが有益でしょう。

盗撮事件の場合,余罪に意識が集中してしまう場合が散見されますが,あくまで現段階のメインは本罪です。優先順位を誤ることなく,本罪の適切な解決を第一優先とするべきという点に留意しましょう。

②余罪について説明する準備

余罪がある場合,余罪についても必要十分な情報を弁護士に把握してもらう必要があります。具体的には,以下のような点を説明できることが望ましいでしょう。

盗撮事件の余罪について説明すべきこと

1.盗撮行為の時期・期間
2.盗撮行為の件数
3.盗撮行為の態様(本罪と同じか)
4.盗撮内容の保管状況
5.取り調べでどのように話しているか

③今後の方針を決める準備

盗撮事件の場合,犯罪を立証する客観的な証拠が不十分なケースもあり得ます。また,特に現行犯で問題になった場合だと,身に覚えのない盗撮の疑いをかけられてしまった,というケースもあり得るところです。

そのため,まずは犯罪の疑いを認めるか認めないか,という対応方針を決めることが適切でしょう。認めるか認めないかが明確になることで,初めて具体的な弁護活動や目指す解決方法が相談できるようになります。

また,条件次第で認めるか認めないかを判断したい,という場合は,その点を弁護士に相談する準備もできるようにしておくことが適切です。そうすることで,弁護士に認めた場合認めなかった場合それぞれのメリットデメリットを聞いた上で,より納得できる方針が立てられるでしょう。

④費用を支出する準備

弁護士への依頼には費用が発生しますが,弁護士費用は法律事務所によって異なり,同じ弁護士への依頼でも依頼内容によって異なります。当然ながら,弁護士への依頼内容が多いほど弁護士費用は高額になりやすく,逆もまた然りです。
また,示談を試みる場合には,弁護士費用に加えて示談金が経済的な負担となります。弁護士費用だけを支払えても,示談金が支払えないと示談はできないため,示談金の負担も事前の想定が必要です。

そのため,弁護士選びに際しては,あらかじめ予算の範囲を明確に決めておくのが有益でしょう。現在は,ホームページ上で詳細に弁護士費用を明示している法律事務所も少なくないため,ご自身なりに費用負担のイメージを持って弁護士選びを行うのも有力です。
また,現実の弁護士費用と予算との開きが限定的であれば,弁護士への依頼内容を一部削るなど,柔軟な依頼方法で開きを埋めることができる場合もあり得ます。個別のケースに関しては弁護士と十分に相談してみましょう。

盗撮事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①余罪がある場合の示談

余罪がある場合,本罪のみを示談するのでは,不起訴処分を獲得することができない場合があり得ます。現実に本罪のみの示談で不起訴処分となるかはケースによりますが,概ね以下のように整理できるでしょう。

余罪と不起訴の関係

1.具体的に捜査対象とされている余罪がない場合
→本罪の示談のみで不起訴処分が可能

2.具体的に捜査対象とされている余罪がある場合
→捜査対象とされた余罪についても示談が必要

もっとも,具体的な処分は,余罪の数や内容,事件の悪質性などによっても変わる可能性があります。余罪が多ければ多いほど,余罪の態様が悪質であればあるほど,処分の見通しは不明確になりやすいでしょう。

②余罪がある場合の否認

否認する場合,余罪捜査の引き金になる可能性には十分な注意が望ましいところです。

捜査機関は,否認された事件の証拠が乏しい場合に,証拠十分な余罪を捜査し,余罪で被疑者を逮捕することで,否認された事件についても自白を促すという手法を取ることがあります。こうなると,捜査処分の対象となる事件は,元々否認していた事件と後に捜査された余罪の両方となるため,初めから認めていた場合よりも不利益な結果になる可能性があり得るのです。

この点の具体的な見通しは,弁護士にも明確にすることが非常に困難と言わざるを得ないため,否認の場合のリスクの一つとして事前に踏まえておくことが適切でしょう。

③十分な情報共有の重要性

弁護士に示談交渉を依頼する場合,被害者との間で起きた出来事,特に自分に不利益な出来事は漏れなく弁護士に伝えておくようにしましょう。
弁護士が示談交渉を試みると,被害者から初めて聞かされる出来事も決して少なくありません。ただ,弁護士が事前に知らなかったことを被害者に把握されると,示談交渉に少なからず悪影響を及ぼすことになります。

弁護士は自分の代わりに示談交渉を行う人物であるため,自分が知っている情報は一通り共有するつもりで,弁護士へ十分に伝えることが重要です。

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