傷害罪は、初犯であっても、事案の内容や経緯によっては罰金刑が科され、結果として前科が残る可能性がある犯罪です。「初犯であれば処分は軽い」と考えられることもありますが、被害の程度や行為態様、被害者との関係などを踏まえ、処分の重さは個別に判断されます。また、状況によっては逮捕や起訴に至るケースもあり、必ずしも軽微な事件として扱われるとは限りません。傷害罪の処分を検討するうえでは、刑法上の構成要件や法定刑だけでなく、捜査段階での対応や示談の成否が、その後の処分に影響することもあります。本記事では、傷害罪が初犯だった場合の処分の傾向、前科がつくかどうか、刑事手続の流れや示談の影響について、弁護士の立場から整理して解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害罪の初犯で逮捕・起訴されたらどうなる?

傷害罪の初犯で逮捕されても、直ちに起訴されたり、実刑になったりするわけではありません。逮捕は捜査のために身柄を拘束する手続であり、刑罰ではないためです。傷害罪の法定刑は15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金ですが、実際の処分は、けがの程度、暴行の態様、事件の経緯、示談の成否、反省状況などを踏まえて判断されます。

検察官が起訴する必要がないと判断すれば、不起訴処分となり、前科はつきません。一方、略式命令による罰金刑が確定した場合や、正式な裁判で有罪判決を受けた場合には、初犯でも前科がつきます。拘禁刑が言い渡されても、執行猶予が付けば刑務所への収容は回避できますが、有罪判決である以上、前科は残ります。したがって、前科を回避するには不起訴処分を目指す必要があり、実刑の回避とは分けて考えなければなりません。

前科がないことは、再犯可能性や更生可能性を判断する際に有利な事情となります。特に、傷害が比較的軽く、被害者との示談が成立し、具体的な再発防止策も整っている場合には、不起訴処分や罰金刑、執行猶予付き判決となる可能性が高まります。反対に、被害者に重傷を負わせた場合、凶器を使用した場合、一方的・執拗な暴行を加えた場合には、初犯でも正式起訴され、実刑判決を受ける可能性があります。

傷害罪が初犯だった場合の処分の傾向

傷害罪が初犯であった場合の処分は、事件の内容や経緯を踏まえて個別に判断されます。一般論としては、初犯であることは処分を検討するうえで考慮される事情の一つとされることが多いものの、それだけで必ず軽い結果になるとは限りません。

初犯の場合に多い処分のパターン

初犯の傷害事件では、被害の程度が比較的軽く、事件後の対応に問題がない場合には、不起訴処分や略式手続による罰金刑にとどまるケースが見られます。とくに、被害者との示談が成立している場合には、検察官が起訴を見送り、不起訴とする判断がなされることがあります。

また、不起訴とならず起訴された場合であっても、初犯であれば、略式命令による罰金刑が選択されることは少なくありません。この場合、公開の裁判は行われず、書面審理のみで処分が決まります。ただし、罰金刑であっても刑罰である以上、前科が付く可能性がある点には注意が必要です。

初犯でも軽い処分にとどまらないケース

一方で、傷害罪は法律上、比較的重い刑罰が予定されている犯罪であるため、初犯であっても、事案の内容によっては軽い処分にとどまらないことがあります。たとえば、被害者が長期間の治療を要する重傷を負った場合や、凶器を用いた行為により傷害を負わせた場合には、不起訴や略式手続にとどまらず、より重い処分が検討される可能性があります。

また、行為態様が悪質と評価される場合や、事件の経緯から再犯のおそれが否定できないと判断される場合には、初犯であることのみを理由に、処分を大きく軽減することが難しくなることもあります。

初犯であることが考慮される場面

初犯であることは、量刑判断の段階で考慮される事情の一つです。前科がないことや、反省の態度が見られること、再犯のおそれが低いと判断されることなどは、処分を検討するうえで有利に働く場合があります。ただし、これらの事情は、被害の程度や示談の有無などとあわせて、総合的に評価されます。このように、傷害罪が初犯だった場合には一定の傾向はあるものの、「初犯だから必ず罰金で済む」「必ず不起訴になる」といった一律の基準は存在しません。処分の見通しを判断するためには、事件の具体的な内容を踏まえて検討することが重要です。

傷害罪の初犯で前科はつくのか

傷害罪が初犯だった場合でも、処分の内容によっては前科が付く可能性があります。前科が付くかどうかは、「初犯かどうか」ではなく、どのような刑事処分が下されたかによって決まります。

不起訴処分の場合

傷害事件について不起訴処分となった場合には、刑罰は科されないため、前科は付きません。不起訴には、証拠が不十分な場合のほか、被害者との示談が成立していることや、犯行の態様が比較的軽微であることなどを理由とするものも含まれます。

もっとも、不起訴となった場合でも、捜査を受けた事実そのものが完全に消えるわけではなく、いわゆる前歴として記録が残ることがあります。ただし、前歴は前科とは異なり、刑罰を受けた履歴ではありません。

罰金刑となった場合

傷害罪について罰金刑が科された場合には、初犯であっても前科が付くことになります。略式手続による罰金刑であっても、刑罰である以上、前科として扱われる点に違いはありません。

そのため、「裁判にならず罰金で済んだ」という場合であっても、法律上は有罪判決を受けたことになり、前科が付くことになります。この点は、一般的なイメージと異なることが多く、注意が必要です。

執行猶予付き判決の場合

傷害罪で執行猶予付きの判決が言い渡された場合にも、刑罰自体は言い渡されているため、前科は付きます。執行猶予は、一定期間、刑の執行を猶予する制度であり、無罪や処罰なしを意味するものではありません。

初犯であることと前科の関係

このように、前科が付くかどうかは、初犯か再犯かという点ではなく、最終的な処分の内容によって決まります。初犯であることは、不起訴や比較的軽い処分を検討する際に考慮される事情の一つではありますが、前科が付くかどうかを直接左右するものではありません。

前科の有無は、その後の生活や社会的評価に影響を及ぼす可能性があるため、処分の見通しを考えるうえで重要な要素です。傷害罪が初犯であっても、どのような処分が想定されるのかを正確に理解しておくことが大切です。

傷害罪で逮捕される際の流れ

逮捕から勾留決定まで(最大72時間)

傷害罪で逮捕されると、警察による取調べを受けた後、釈放される場合を除き、逮捕から48時間以内に身柄と事件が検察官へ送られます。送致を受けた検察官は、被疑者を取り調べたうえで、引き続き身柄を拘束する必要があるかを判断します。勾留が必要と判断した場合、検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内かつ逮捕時から72時間以内に、裁判官へ勾留を請求します。

裁判官は、被疑者に対する勾留質問を行い、犯罪の嫌疑に加えて、住居不定、証拠隠滅のおそれ又は逃亡のおそれがあるかを審査します。これらの要件や勾留の必要性が認められなければ、勾留請求は却下され、被疑者は釈放されます。初犯であることだけで勾留を回避できるわけではありませんが、定まった住所や勤務先があり、被害者に接触しないことを約束できる場合には、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いことを示す事情となります。

勾留捜査・取調べ(最大20日間)

裁判官が勾留を認めると、勾留請求の日から原則10日間、警察署の留置施設などで身柄を拘束されます。検察官の請求を受けた裁判官が、やむを得ない事由があると判断した場合には、勾留期間がさらに最大10日間延長されます。そのため、勾留による身柄拘束は最大20日間となり、逮捕後の最大72時間と合わせると、起訴前の身柄拘束は合計約23日間に及びます。

勾留中は、警察官や検察官による取調べ、関係者への事情聴取、診断書や防犯カメラ映像などの証拠収集が行われます。被疑者には黙秘権があり、供述調書の内容が事実と異なる場合には、署名・押印を拒むことができます。作成された供述調書は起訴・不起訴や裁判の証拠に用いられる可能性があるため、事実に反する供述や不正確な調書に応じないことが必要です。並行して、被害者との示談や被害弁償を進め、検察官による処分決定までに有利な事情を整えます。

起訴・不起訴の判断(約23日以内)

逮捕後に勾留が延長された身柄事件では、検察官は、通常、逮捕から約23日以内に起訴するか不起訴にするかを判断します。不起訴処分となった場合には釈放され、刑事裁判は開かれず、前科もつきません。処分保留で釈放され、在宅捜査を続けた後に起訴・不起訴が決められる場合もあります。

起訴には、主に略式起訴と正式起訴があります。略式起訴は、被疑者に異議がないことを確認したうえで、書面審理によって罰金刑を求める手続です。正式起訴された場合には公開の法廷で審理が行われ、身柄拘束が続く場合は起訴後に保釈を請求できます。なお、約23日という期間は逮捕・勾留された身柄事件の目安であり、逮捕されずに捜査される在宅事件には、同様の期限はありません。

傷害罪では、初犯であることと逮捕勾留の有無に直接の関係がないケースも多いです。初犯であっても身柄拘束の回避を目指す実益は非常に大きいと言えます。

傷害罪の初犯で実刑・前科を回避する対策3選

実刑と前科では、回避するために目指す処分が異なります。前科を回避するには不起訴処分を得る必要がありますが、実刑については、罰金刑や執行猶予付き判決となった場合にも回避できます。この違いを踏まえ、起訴前から処分を軽くする事情を具体的に整える必要があります。

被害者との示談を迅速に成立させる

傷害事件では、被害者との示談が成立すると、被害の回復が図られ、当事者間の紛争も解決したことを検察官や裁判所へ示せます。特に、示談書に被害者が加害者の処罰を求めない旨が記載されている場合には、不起訴処分を目指すうえで有利な事情となります。起訴前に不起訴処分となれば、前科を回避できます。

示談では、治療費、休業損害、慰謝料などを踏まえて示談金を定め、謝罪、接触禁止、清算条項などについても合意します。ただし、示談が成立しても必ず不起訴になるわけではありません。傷害結果や行為態様が重大であれば起訴される可能性は残りますが、起訴後も、示談の成立は執行猶予や刑の重さを判断する際に考慮されます。そのため、検察官が処分を決める前に示談を成立させることが、前科回避を目指す場合の基本となります。

取調べで真摯な反省と再発防止策を示す

事実関係を認める事件では、取調べにおいて犯行を正当化せず、被害者にけがを負わせたことをどのように受け止めているかを具体的に説明する必要があります。単に「反省しています」と述べるだけではなく、犯行の原因を分析し、同じ状況を繰り返さないための行動を示すことで、再犯のおそれが低いことを裏付けられます。

再発防止策としては、被害者との接触を避ける、飲酒が原因であれば断酒や治療に取り組む、家族による監督を受ける、交友関係や生活環境を見直すといった方法があります。反省文、通院資料、家族の誓約書などを提出し、実行済みの対策を客観的に示すことも有効です。一方、傷害行為をしていないなど事実関係を争う場合には、軽い処分を得るために事実に反する自白をしてはいけません。認める範囲や供述内容は、客観的証拠を確認したうえで慎重に判断します。

刑事事件が得意な弁護士に早期相談する

傷害事件では、逮捕後に勾留が続くと、起訴・不起訴の判断まで約23日しかありません。この期間内に、取調べへの対応方針を決め、被害者との示談を進め、再発防止策を整えたうえで、検察官へ不起訴処分を求める必要があります。相談が遅れるほど、起訴前に必要な対応を完了できる時間が短くなります。

被害者の連絡先は、通常、加害者本人には開示されませんが、弁護士であれば、捜査機関を通じて被害者に連絡の可否を確認し、了承を得て示談交渉を始められる場合があります。また、事件の内容から見込まれる処分を検討し、前科回避を目指すのか、実刑回避を目指すのかに応じて活動方針を定められます。逮捕前や在宅捜査中であっても、検察官が処分を決める前に相談することが有効です。

傷害罪の初犯で弁護士ができること

傷害罪については、事件の内容や対応の仕方によって、その後の処分が大きく左右されることがあります。とくに、捜査の初期段階からどのような対応を取るかは、処分の見通しを考えるうえで重要な要素となります。弁護士は、刑事手続の各段階に応じて、法的観点から適切な対応を行うことができます。

捜査段階での対応

捜査が始まった段階では、取調べへの対応や供述内容が、その後の処分に影響を与えることがあります。弁護士は、事実関係を整理したうえで、どのような点に注意して対応すべきかを助言し、不利益な供述を避けるためのサポートを行います。また、逮捕や勾留が問題となる場面では、身柄拘束の必要性が低いことを主張し、在宅事件としての取扱いや早期の身柄解放を目指す活動を行うこともあります。

示談交渉への関与

傷害事件においては、被害者との示談が処分に影響を与える重要な要素となることがあります。弁護士が関与することで、法的に適切な内容での示談交渉が進められ、感情的な対立を避けながら話し合いを行うことが可能になります。示談の進め方や条件についても、処分への影響を踏まえた検討が行われます。

起訴・裁判段階での弁護活動

起訴された場合には、略式手続が相当かどうか、あるいは正式な裁判でどのような主張を行うべきかが検討されます。弁護士は、事件の内容や反省の状況などを踏まえ、処分が過度に重くならないようにするための弁護活動を行います。裁判においては、量刑を判断するための事情を整理し、適切に主張する役割を担います。

弁護士が関与する意義

このように、傷害罪については、弁護士が関与することで、刑事手続全体を見据えた対応が可能になります。捜査・示談・起訴・裁判といった各段階を個別に捉えるのではなく、全体の流れを踏まえて対応することが、処分の見通しを考えるうえで重要となります。

手続の段階や事件の内容によって、弁護士にできることは変わってきます。臨機応変に、最良の結果を目指す動きを選択、実行できることが、専門性ある弁護士に依頼する大きなメリットと言えるでしょう。

まとめ|傷害罪が初犯でも押さえておくべきポイント

傷害罪は、初犯であっても、事件の内容や対応次第で処分の見通しが大きく変わる可能性がある犯罪です。初犯であることは有利に考慮され得る事情の一つではありますが、それだけで軽い処分にとどまると一概に言えるものではありません。

処分の判断においては、被害の程度や行為態様、事件後の対応、被害者との示談の有無など、複数の事情が総合的に考慮されます。不起訴や罰金刑にとどまるケースがある一方で、事案によっては軽い処分にとどまらないこともあります。また、罰金刑や執行猶予付き判決となった場合には、初犯であっても前科が付く点にも注意が必要です。

刑事手続の進行においては、逮捕や勾留の有無、起訴の判断、裁判手続の選択など、複数の段階があります。これらは個別に判断されるものではありますが、全体の流れを踏まえて対応することが、処分の見通しを考えるうえで重要となります。

このように、傷害罪については、初犯かどうかだけに目を向けるのではなく、事件の内容やその後の対応を含めて全体像を把握することが大切です。状況を正確に整理し、どのような点が判断材料となるのかを理解したうえで、冷静に対応を検討することが求められます。

傷害罪の初犯に関するよくある質問

Q1. 傷害罪が初犯であれば、必ず罰金で済みますか?

いいえ、必ず罰金で済むとは限りません。
初犯であることは処分を判断する際に考慮される事情の一つですが、被害の程度や行為態様、事件後の対応などによっては、罰金刑にとどまらない処分が検討されることもあります。処分の内容は、個別の事情を踏まえて判断されます。

Q2. 傷害罪が初犯でも前科が付くことはありますか?

はい、処分の内容によっては前科が付くことがあります。
不起訴処分となった場合には前科は付きませんが、罰金刑や執行猶予付き判決となった場合には、初犯であっても前科が付きます。前科が付くかどうかは、初犯か再犯かではなく、最終的な処分の内容によって決まります。

Q3. 示談が成立すれば、傷害罪は不起訴になりますか?

示談が成立すれば不起訴となる可能性は高まりますが、必ず不起訴になるわけではありません。
示談は処分を判断する際の重要な考慮要素の一つですが、それだけで結果が決まるものではなく、被害の程度や事件の経緯などを踏まえて総合的に判断されます。

Q4. 傷害罪が初犯の場合、逮捕されないこともありますか?

はい、逮捕されずに在宅事件として捜査が進むこともあります。
逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断される場合などには、初犯であることも考慮され、逮捕されないことがあります。ただし、被害の程度や事件の状況によっては、初犯であっても逮捕が検討されることがあります。

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