スポーツ会場では写真や動画の撮影が広く行われており、選手を撮影しただけで直ちに盗撮となるわけではありません。しかし、下着や性的部位をひそかに撮影した場合や、更衣中の姿を撮影した場合には、撮影罪などが成立する可能性があります

スポーツ撮影が違法になるかは、撮影場所だけでなく、撮影対象・撮影方法・本人の認識や同意などを踏まえて判断されます。本記事では、通常のスポーツ撮影と盗撮との境界を整理したうえで、適用される罰則や画像を拡散した場合の責任、被害にあった場合の対応を解説します。

違法な撮影によって逮捕や刑事処分を受けるだけでなく、画像の削除や損害賠償を求められることもあります。また、撮影画像をSNSなどへ公開すると、撮影行為とは別の刑事・民事上の責任を負う場合があるため注意が必要です。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

スポーツ現場での盗撮は違法?知っておくべき法的リスクと罰則

①2023年新設「性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)」の概要

2023年7月に施行された性的姿態撮影等処罰法は、正当な理由なく、人の性的な部位や下着、性交等をしている姿をひそかに撮影する行為などを処罰しています。撮影罪はスポーツ現場にも適用されるため、競技中に下着や性的部位が露出した瞬間を本人に知られないよう撮影すれば、処罰対象となります。

一方、競技用ウェアを着た選手の姿など、通常公に見られている着衣姿を撮影しただけでは、撮影罪は成立しません。違法性は撮影者の目的だけで決まるものではなく、何を、どのような方法で、本人に知られず撮影したのかを基準に判断されます。ただし、撮影罪が成立しなくても、撮影場所や方法によっては、都道府県の迷惑防止条例や会場の撮影規則に違反します。

②逮捕・検挙された場合の罰則(懲役・罰金)

撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。実際に画像を記録できなかった場合でも、撮影しようとしてカメラを向けた段階で未遂罪が成立します。迷惑防止条例違反の罰則は都道府県によって異なるため、撮影場所の条例を確認しなければなりません。

盗撮が発覚すると、現場で警察へ引き渡される場合だけでなく、撮影画像や投稿履歴、会場の防犯カメラ映像などから撮影者が特定され、後日逮捕される場合もあります。逮捕の有無や最終的な処分は、撮影内容、撮影回数、被害者の年齢、画像の拡散、前科・前歴、示談の成否などを踏まえて判断されます。初犯であっても、悪質な撮影や画像の拡散があれば、罰金にとどまるとは限りません。

③SNSやネット掲示板への無断転載・拡散に伴う法的リスク

撮影罪によって作成された画像を第三者へ提供すると、提供罪として3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されます。不特定多数へ提供した場合や、公然と画像を表示した場合の法定刑は、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金です。SNSへの投稿やネット掲示板への掲載は、不特定多数への提供または公然陳列に該当します。

撮影罪の対象にならない写真でも、本人の承諾なく性的な意図で編集して投稿した場合や、選手の名誉・私生活を害する形で拡散した場合には、肖像権やプライバシー権の侵害として、削除請求や損害賠償請求を受けます。元の投稿を転載しただけでも責任を免れるわけではありません。撮影者以外の者も、投稿内容や拡散方法に応じて刑事・民事上の責任を負います。

スポーツ現場の盗撮行為は、現行犯で発見されるリスクが他の盗撮事件より高い傾向にあるでしょう。

スポーツ撮影で盗撮(違法)とみなされる行為

競技中に露出した下着や性的部位をひそかに撮影する

競技中の動作によってユニフォームがずれた瞬間を狙い、露出した下着や性的部位を本人に知られないよう撮影すると、撮影罪が成立します。撮影罪における性的部位には、性器や肛門だけでなく、臀部や胸部も含まれます。画像の保存に失敗した場合でも、録画ボタンを押すなど撮影行為に着手していれば、未遂罪として処罰されます。

通常の競技風景や、公に見られているユニフォーム姿を撮影しただけで、直ちに撮影罪が成立するわけではありません。違法性を判断する際は、実際に写っている部分、撮影角度、特定の部位を継続して追っていたか、衣服がずれた瞬間を狙っていたかなどが確認されます。これらの事情から下着や性的部位を意図的に撮影したことが認められれば、競技を記録する目的だったとの説明だけで撮影行為を正当化することはできません。

更衣室やトイレで衣服を着けていない姿や着替え中の姿を撮影する

更衣室やトイレ、シャワールームなどで、衣服を着けていない選手や着替え中の選手をひそかに撮影する行為は、撮影罪の典型例です。本人が競技中の撮影に同意していたとしても、更衣中や入浴中の撮影まで同意したことにはなりません。競技会場への入場や競技中の撮影が許可されていたことも、更衣室等での撮影を正当化する理由にはなりません。

スマートフォンを直接向ける場合だけでなく、小型カメラをロッカーや荷物の中に設置して撮影する場合も対象です。録画前にカメラが発見された場合でも、設置状況や録画設定などから撮影行為への具体的な着手が認められれば、未遂罪が成立します。撮影目的で立入禁止の更衣室等へ無断で入れば、施設管理者の意思に反する立入りとして、建造物侵入罪が成立することもあります

赤外線カメラなどで衣服の下の下着や性的部位を撮影する

赤外線カメラや透過撮影機能を備えた機器を使い、外見上は衣服で隠れている下着や性的部位を撮影する行為も、撮影罪の対象となります。選手が観客のいる場所で競技していても、衣服の下まで撮影されることを認識・承諾しているわけではありません。観客席など通常は撮影できる場所からであっても、撮影対象と方法が違法であれば撮影罪が成立します。

捜査では、撮影機器の性能や設定、保存された画像、撮影角度、同種画像の枚数などから、実際に何を撮影したのかが確認されます。通常のカメラで撮影した画像を後から加工し、衣服を透過させたように見せた場合には、撮影罪の成否とは別に、肖像権やプライバシー権の侵害が問題となります。加工画像をSNS等へ公開すれば、画像の削除や損害賠償を求められます。

性的な部位が強調されていないなど、「性的姿態等」に該当しない姿であれば、撮影が直ちに犯罪となるわけではありません。しかし、少なくともスポーツ現場であれば盗撮が正当化されると考えるべきではないでしょう。

スポーツ現場で盗撮被害にあった場合の対応

撮影者に直接接触せず安全を確保して大会運営者や施設スタッフへ報告する

盗撮に気づいても、撮影者を一人で問い詰めたり、カメラやスマートフォンを無理に取り上げたりしてはいけません。撮影者が逃走する、画像を削除する、暴力を振るうといった事態も想定されます。まずは撮影者から距離を取り、自分の安全を確保したうえで、大会運営者や施設スタッフへ直ちに報告してください

運営者側には、撮影者への声かけや警察への通報、防犯カメラ映像の確認を求めます。被害者自身が撮影者を取り押さえたり、端末内の画像を強制的に確認・削除したりする必要はありません。撮影者が逃げようとしている場合や身の危険を感じる場合は、110番通報を優先し、撮影者や端末への対応は警察に任せるのが安全です

撮影者の特徴・撮影状況・投稿画面などの証拠を保存する

警察や大会運営者へ被害を正確に伝えられるよう、撮影された日時・場所、競技種目、撮影者がいた位置、カメラを向けていた方向などを記録しておきましょう。撮影者の服装や年齢層、使用していた機器、座席番号、立ち去った方向も、後日の特定に役立ちます。目撃者がいる場合は、可能な範囲で氏名や連絡先を確認しておくことも有効です。

画像がSNSやネット掲示板へ掲載された場合は、投稿画面だけでなく、投稿者のアカウント名、投稿日時、URL、画像、コメントもスクリーンショット等で保存してください。投稿者に削除を求めると、証拠やアカウント自体を消されるおそれがあります。削除を求める前に証拠を確保し、大会運営者に対しても、防犯カメラ映像や入場記録を保存するよう早期に申し入れる必要があります

警察に被害を申告し弁護士へ削除請求や損害賠償請求を相談する

撮影罪や迷惑防止条例違反に該当する疑いがあるときは、撮影場所を管轄する警察署へ被害を申告してください。被害届の提出や告訴を行う際には、撮影された状況、対象となった部位、撮影者の特徴、確保した証拠を具体的に説明します。被害者が未成年者であれば、保護者とともに警察へ相談することが適切です。

画像がインターネット上に掲載されている場合は、サイト運営者等に削除を求めます。投稿者が分からなければ、発信者情報開示請求によって特定し、プライバシー権や肖像権の侵害を理由として慰謝料などを請求する方法があります。投稿者の特定に必要な情報には保存期間があるため、削除請求や発信者情報開示請求は速やかに弁護士へ相談してください

被害者の立場では、迅速な被害の特定が非常に重要です。時間が経過するほど、盗撮被害を把握したり裏付けを獲得することが難しくなります。

スポーツ現場の盗撮に関するまとめ

スポーツ選手を撮影しただけで、直ちに犯罪となるわけではありません。しかし、露出した下着や性的部位をひそかに撮影した場合や、更衣中の姿、衣服の下を透過させた画像を撮影した場合には、撮影罪や迷惑防止条例違反として処罰されます。撮影画像をSNSなどへ公開・拡散すれば、撮影行為とは別の刑事責任や損害賠償責任を負います。

盗撮の疑いをかけられた場合は、画像を削除したり、被害者へ直接連絡したりする前に、撮影場所・撮影対象・撮影方法を整理して弁護士へ相談してください。被害にあった場合は、安全を確保して大会運営者や警察へ報告し、撮影状況や投稿画面などの証拠を保存することが必要です。加害者側・被害者側のいずれも、証拠が失われる前の早期対応が解決を左右します

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