業務上横領に強い弁護士へ依頼するポイントや費用相場を弁護士が解説

会社の財産を不正に処分したと疑われる業務上横領は、発覚すれば逮捕や起訴、さらには実刑に至る可能性もある重大な犯罪です。発生直後から適切に対応しなければ、社会的信用の失墜や将来への影響は避けられません。こうしたリスクを最小限に抑えるには、業務上横領に精通した弁護士へ早期に相談することが不可欠です。本記事では、業務上横領に強い弁護士へ依頼する際のポイントや費用相場を、弁護士が分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

横領罪とは

横領罪とは,他人の物を占有している人が,その物を領得する犯罪です。
典型例は,人から預かっていたお金を自分のために使ってしまう,というケースでしょう。

①横領罪と窃盗罪の区別

横領罪は窃盗罪との区別が問題になりやすいですが,両者の違いは,対象物が他人が占有しているものか,自己の占有するものか,という点にあります。

窃盗罪は,他人が占有しているものを,その他人の了承なく自分の占有に移す犯罪です。例えば万引きは,店舗が占有する商品を勝手に自分の持ち物にしてしまう犯罪というわけですね。
一方の横領罪は,もともと自分が占有をしている物を自分の物(所有)にしてしまう,という犯罪類型です。会社のお金を預かっていた(占有していた)としても,あくまでお金は会社の物であるため,そのお金を自分のために使ってしまうと横領罪になる,というわけですね。

②横領罪の類型

横領罪には,大きく分けて以下の3つの類型があります。

単純横領罪(刑法第252条第1項)自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の拘禁刑に処する。
業務上横領罪(刑法第253条)業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の拘禁刑に処する。
占有離脱物横領罪(刑法第254条)遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

横領事件として最も問題になりやすいのは,「業務上横領罪」でしょう。
経理担当者が勤務先の金銭を横領した場合などが代表的です。
一方,単純横領罪が成立するのは,業務の伴わない場合であり,友人から預かっていた金銭を使い込むようなケースが該当します。

また,占有離脱物横領罪は,横領罪ではありますが置き引きなどの窃盗類似の事例で問題になりやすいところです。

ポイント
窃盗と横領の区別は,対象物がどちらの占有していたものか,という点が基準
勤務先に対する業務上横領事件が問題になりやすい

参照:刑法 e-Gov法令検索

横領事件の刑事処分

横領事件は,窃盗類似の事件である占有離脱物横領罪を除き,罰金の処罰規定がありません。
つまり,拘禁刑より軽微な罰金刑が規定されておらず,罰金刑にとどまる余地がないため,起訴されるときにはすべて拘禁刑の対象となります。

もっとも,拘禁刑の対象になった場合の全てが実刑判決(直ちに刑務所に服役することを命じる判決)となるわけではありません。執行猶予となれば,刑務所に入る必要はなく,円滑に社会生活に復帰することが可能です。

横領事件の場合,実刑判決となるか執行猶予付きの判決となるかは,損害額の大きさをベースに判断されるのが通常です。損害額の大きな事件では,規模により概ね3~5年程度の実刑判決の対象となることも考えられるでしょう。
一方,事件の規模が大きい場合でも,その損害が後から金銭賠償等により補填されている場合には,非常に重要な事情として斟酌されます。損害が大きなケースであっても,その全部又は大部分が賠償されている場合には,損害が補填されたことを踏まえて執行猶予判決となることも数多く見られるところです。

横領事件の刑事処分においては,損害額とその補填の二つが重要な判断要素になりやすいことを把握しておくとよいでしょう。

ポイント
逮捕の可能性は事件の規模や悪質さによる
刑事処分の基準は損害額の大きさと補填の程度

業務上横領で弁護士に依頼するメリット

業務上横領の疑いを受けると、会社や警察への対応をどう進めるべきか判断が難しく、誤った行動が状況を悪化させるおそれがあります。早期に刑事事件に精通した弁護士へ相談することで、手続の見通しや最善の対応策を把握し、リスクを最小化できます。主なメリットは次のとおりです。

① 事前の相談ができる

業務上横領の疑いを受けたとき、会社からの呼び出しや任意の事情聴取にどのように対応すべきかは非常に悩ましい問題です。弁護士に早い段階で相談すれば、事実関係の整理、説明すべき範囲、警察や会社への対応方針などを事前に具体的に検討できます。
不適切な発言や曖昧な説明は後の手続で不利に扱われる可能性があるため、初動で専門家に助言を受けることは、結果に大きく影響します。弁護士のサポートを受けながら対応方針を固めることで、事件化リスクや身柄拘束のリスクを最小化できる点が大きなメリットです。

② 事件化する前に解決を目指すことができる

会社からの調査段階や、まだ警察に被害届が提出されていない段階で弁護士に依頼すると、事件化を防ぐための働きかけが可能になります。会社側は事実確認や損害の回収を優先している場合も多く、適切なコミュニケーションと誠実な対応方針を示すことで、刑事手続に進まずに内部処理で収めてもらえる可能性があります。

弁護士は、被害額の精査、返還方法の調整、謝罪の手順などを整理し、会社との交渉窓口を一本化します。本人だけで対応すると感情的な行き違いが生じやすく、誤解が事件化につながることもあるため、第三者である弁護士が関与することには大きな意味があります。早期に適切な対応を整えれば、被害届提出や告訴の回避につながり、逮捕や前科のリスクを大幅に減らすことができます。

業務上横領の事件の大きな特徴の一つが、捜査の前に当事者間で解決し得るケースが多くなりやすいという点です。事件化前の解決の余地があれば、可能な限り目指したいところです。

③ 事件化した場合は会社との示談交渉で不起訴を目指せる

被害届が提出され、業務上横領が事件化した場合でも、弁護士が介入することで示談成立による不起訴処分を目指すことが可能です。業務上横領は、被害者(多くは勤務先)の処罰感情が処分に大きく影響するため、適切な示談交渉は極めて重要です。

弁護士は、被害額の把握、返還方法や分割の可否、謝罪の伝え方、再発防止策の提示など、示談に必要な要素を丁寧に整理し、会社側と冷静な協議を進めます。本人が直接交渉すると、感情的対立や誤解が生じてしまい、かえって「厳罰を望む」という方向に傾くこともあるため、第三者である弁護士が交渉窓口となる意義は大きいといえます。

示談が成立し、被害回復が十分に図られたと判断されれば、検察官が不起訴処分とする可能性が高まり、前科を避けられるという重大なメリットがあります。

刑事事件として捜査が開始された後でも、当事者間での解決を目指すことは同様に極めて重要です。会社側に示談に応じる余地がある場合は、可能な限り示談を目指すことをお勧めします。

④ 逮捕された場合は接見が可能

業務上横領で逮捕されると、本人は家族とも連絡が取れず、孤立した状態で取調べを受けることになります。しかし、弁護士だけは面会(接見)が認められ、直接本人に状況を説明し、今後の方針を助言できる唯一の存在となります。

接見では、取調べでの回答姿勢、不利な供述を避けるための注意点、黙秘権の使い方、今後の身柄の見通しなど、刑事手続で重要となるポイントについて具体的なアドバイスが可能です。また、家族への連絡や生活面の調整など、精神的な負担を軽減する役割も果たします。

弁護士の迅速な接見により、本人の不安を和らげつつ、不利な自白の強要や誤った供述によるリスクを最小化できるのは大きなメリットです。初動段階での適切なサポートが、その後の処分や量刑にも影響し得るため、早期に弁護士へ依頼する意義は非常に大きいといえます。

⑤ 起訴された場合は執行猶予判決を目指す

業務上横領で起訴された場合でも、弁護士の弁護活動によって執行猶予付き判決を獲得できる可能性があります。量刑は、被害額や犯行態様、被害弁償の有無、反省状況、再発防止策など多くの事情を総合的に考慮して判断されるため、適切な主張・立証を行うことが極めて重要です。

弁護士は、示談成立の状況、家族の監督体制、職場環境の改善、再発防止策の具体性など、被告人に有利となる事情を整理し、裁判所に丁寧に伝える役割を担います。また、社会内での更生可能性を裏付ける資料(誓約書、監督書、就労証明など)の準備もサポートします。

これらの弁護活動によって、たとえ起訴されたとしても、実刑を回避し社会での生活を維持できる可能性が大きく高まります。刑事手続の中でも量刑判断は専門的要素が多いため、早期から弁護士に依頼して体制を整えておくことが重要です。

刑罰が防げない場合、実刑となるか執行猶予となるかは、今後の生活を決定づけるほど極めて大きな分岐点です。執行猶予判決の獲得は、損失を最小限に抑えるために最も重要な目標と言ってよいでしょう。

業務上横領に強い弁護士に依頼するポイント

① 迅速な示談交渉が可能か

業務上横領事件は,被害者との示談交渉が非常に重要なポイントとなります。具体的な被害者が存在する犯罪類型であることから,その被害者が捜査や刑罰を求めなければ,現実に捜査や刑罰の対象となることは考えにくいためです。

そして,その示談交渉は,可能な限り迅速に行うことが非常に重要となります。被害者側が警察に捜査を求めるかどうかを決める前に示談ができ,当事者間での解決となれば,捜査や刑罰を受ける現実的な可能性はなくなるため,極めて利益の大きな結果となるためです。
逆に,捜査が開始された後や事件が起訴された後では,示談が成立してもその効果は早期の示談成立には及びません。既に行われた手続がなかったことにはならないため,進行中の手続に伴う不利益は受け入れる必要が生じます。

そのため,弁護士選びに際しては,迅速な示談交渉を尽くしてくれるか,という点を重要な基準とすることをお勧めします。

② 具体的な解決方針を示してくれるか

多くの刑事事件は,典型的な暴行事件や交通事故などに代表されるように,一回きりの事件やトラブルであることが一般的です。この場合,解決方針は比較的シンプルに検討しやすく,見通しも分かりやすいことが多いでしょう。
もっとも,業務上横領事件の場合,当事者間の関係が継続的である上,発生した横領行為も継続的であることが多い,という点に大きな特徴があります。そのため,事件解決を目指すためには,複数の継続的な事柄を同時に解決する必要があり,方針や見通しもその分複雑にならざるを得ません。

弁護士が業務上横領事件を扱う場合,複数の継続的な事件を解決するための方針を具体的に立てることが,最初の大きなポイントとなるところです。逆に,弁護士を選ぶ立場からは,その弁護士の解決方針がどれだけ具体的で適切なものと考えられるか,という点を重要な判断材料とするのが適切でしょう。

継続的に複数回発生した業務上横領事件では、「個別事件の解決」と「全体の解決」をそれぞれ目指す必要があることも少なくありません。適切な整理と解決方針の検討は、対応に精通した弁護士に依頼することが望ましいでしょう。

③ 見通しの説明に説得力があるか

業務上横領事件は,ケースによってその見通しが様々に異なります。特に,財産に対する犯罪であることから,横領金額の大きさは処分の大きさをダイレクトに左右しやすい傾向が見られるところです。
また,前提として,被害者(主に勤務先など)との間で当事者間での解決ができ,被害者が加害者を許すとの判断に至れば,その段階で事件が終了するケースもあります。これは最も有益な結果であることが多く,最優先で目指したいところですが,当事者間での解決が実現できる場合には限りがあると言わざるを得ないのも事実です。

弁護士が業務上横領の弁護活動をする際には,数ある可能性から個別事件の内容を踏まえた見通しを立て,これを前提に弁護方針を検討することになります。そのため,見通しが適切であることは,弁護活動が適切であることに直結する非常に重要な問題です。
弁護士選びに際しては,弁護士による見通しの説明に耳を傾け,その内容や説得力に納得することができるか,という点を判断基準とすることが有力でしょう。

④ 弁護士と円滑に連絡が取れるか

弁護士と連絡を取る方法や連絡の頻度は,弁護士により様々です。特に,「弁護士と連絡したくても連絡が取れない」という問題は,セカンドオピニオンとして相談をお受けする場合に最も多く寄せられるお話の一つです。
電話をしても常に不通となって折り返しがない,メールへの返信も全くない,といったように,弁護士との連絡が滞るという問題は生じてしまいがちです。

そのため,弁護士とはどのような方法で連絡が取れるか,どのような頻度で連絡が取れるか,という点を重要な判断基準の一つとすることは,事件解決のために有力でしょう。

なお,法律事務所によっては,事務職員が窓口になって弁護士が直接には対応しない運用であるケースも考えられます。そのような運用が希望に合わない場合は,依頼後の連絡方法を具体的に確認することも有益でしょう。

弁護士との連絡が取れるペースや連絡方法は、個々の弁護士によって様々に異なります。連絡の円滑さに不安が生じてしまうと、状況確認がうまくできないのみでなく、解決に重大な影響を及ぼす可能性も高いでしょう。

業務上横領で示談を弁護士に依頼する重要性

業務上横領事件で示談は必要か

業務上横領事件の場合,認め事件では示談が必要と考えるべきでしょう。

業務上横領は,業務上の立場に基づいて預かった金銭等の財産を自分のものにする(横領する)ことを言います。そのため,業務上横領事件では,被害者に経済的な損害が発生していることになります。
業務上横領事件にこのような性質があるため,業務上横領事件の刑事処分の重さを判断する場合には,被害者に生じた経済的な損害の程度が非常に大きな事情となります。また,同時に,その経済的な損害が加害者によってどの程度回復されたか,という点も非常に重要な判断材料とされています。

例えば,同じ100万円の業務上横領事件でも,損害がそのままにされている場合と,後になって加害者が100万円を全額返金した場合とでは,加害者に対する刑事処分の程度は大きく異なります。当然ながら,100万円が全額返金されているケースの方が刑事処分は軽微なものとなり,内容によっては不起訴処分が獲得できる場合もあり得ます。不起訴処分となれば,刑罰を受ける可能性はなくなり,前科が付くこともありません。

そして,返金の手段として最も有益なものが示談です。示談によって支払う金額の合意ができ,その金額の返済もできていれば,被害者の経済的な損害は加害者によってすべて回復されたと評価できるでしょう。また,示談の中で被害者が加害者を許すという内容が合意されていれば,加害者が刑事処罰を受ける可能性は劇的に低くなるということもできます。

内容に争いのない業務上横領事件では,示談によって被害者の経済的な損害を回復させるとともに,被害者の許しを獲得するのが有益でしょう。

一方,否認事件の場合,示談を行うことには慎重な検討が必要です
示談の試みは,被害者に対する謝罪及び賠償という意味を持つ行動となることが一般的です。そのため,否認事件の場合に示談をするのは,疑いを否認しつつ謝罪や賠償をする,という必ずしも合理的とは言えない動き方になり得るのです。
否認事件でも,紛争の深刻化を防いで早期解決を図るため,示談を行うことが有益な場合も否定はできません。しかし,その内容や方法には適切な配慮が必要となるため,弁護士に相談して方針決定するようにしましょう。

ポイント

認め事件では示談が必要
→経済的損害の回復,許しの獲得のため

否認事件の示談は慎重に検討するべき
→否認の方針と矛盾しないための適切な配慮が必要

業務上横領事件の示談時期

業務上横領事件の場合,警察などの捜査機関から捜査を受けるより前に,当事者間で問題になり,協議の場などが設けられることも少なくありません。

業務上横領事件の代表例は,仕事上管理していた勤務先の金銭を横領してしまう,というケースですが,その横領が発覚した場合,いきなり警察などを巻き込むよりも,会社内部で問題視され,話し合いなどの機会が設けられる場合も多く見られます。
そして,捜査機関の介入前に当事者間で話し合うことになった場合は,可能な限り速やかに示談の試みを行い,当事者間での解決を目指すべきでしょう。

もし,当事者間で金銭的な解決ができ,勤務先が刑事処分を希望しないという判断に至った場合,警察などが捜査を行うきっかけが生じないため,刑事手続が始まることなく,当事者間のみでの解決で事件が終了することになります。刑事手続への対応自体が必要なくなる点で,当事者間で解決できた場合の利益は非常に大きなものであり,その可能性があるならば可能な限り目指すのが得策です。

また,被害に遭った勤務先としても,経済的な損害がすべて回復できるのであれば,それ以上に加害者が処罰を受けるなどの不利益を被ることまでは希望しない,という発想であることが少なくありません。
警察などに捜査をしてもらっても勤務先に利益が生じるわけではなく,かえって対応の負担が増すという面は否めないため,勤務先の方も当事者間での解決を優先的に検討してくれる場合はあり得ます。

業務上横領事件は,示談によって刑事手続そのものを防げる可能性がある点で,早期示談のメリットが非常に大きい類型と言えるでしょう。

ポイント
示談の試みは可能な限り早く
刑事手続前に示談できれば,示談ですべて解決できる場合も

業務上横領事件で示談をする方法

一般的な刑事事件では,弁護士が警察や検察といった捜査機関に問い合わせ,加害者が示談を希望する旨を申し入れるとともに,被害者側の意向を確認してもらう,という手順が多く取られます。
被害者が示談交渉を了承する場合には,弁護士に被害者の連絡先等が伝えられ,弁護士を窓口に直接のやり取りをスタートすることになりやすいでしょう。

示談交渉の流れ

もっとも,業務上横領事件の場合,代表的な勤務先での横領事件などであれば,加害者側と被害者側は直接の連絡を容易に取ることのできる関係であることが通常です。被害者である勤務先としても,わざわざ警察を通じて間接的に連絡をよこすのでなく,直接の連絡を行う方が望ましいと考える場合が多く見られます。

そのため,業務上横領事件のように直接の連絡が不適切でない場合は,弁護士から被害者側に直接連絡を入れ,示談交渉を試みることも珍しくありません。

業務上横領事件における示談交渉の流れ

いずれの方法を取るかは,個別のケースや被害者側の意向によっても異なるため,刑事事件に強い弁護士に相談の上,具体的に検討するようにしましょう。

業務上横領の示談金相場

具体的な金額の目安

業務上横領事件の示談金は,損害額を基準にすることとなります。
示談金は,業務上横領によって被害者に生じた損害を埋め合わせるものでなければならないため,まずは損害総額を確認し,その金額を踏まえて示談金を決定することが必要です。

一般的には,横領の対象となった金額にいくらかを上乗せして示談金とすることが多く見受けられます。どの程度上乗せをするかは双方の意向にもよりますが,上乗せされる要素としては以下のような点が挙げられます。

示談金に含む損害

1.横領行為による業務全体の損失
2.損害調査のために生じたコスト・負担
3.示談交渉のために生じた負担(弁護士費用等)

業務上横領の示談内容・条項

①一般的な示談条項

【確認条項】

加害者の被害者に対する支払金額を確認する条項です。

【給付条項】

確認条項に記載した金銭の支払をどのように行うのかを定める条項です。

【清算条項】

示談で定めた条項以外には,当事者間に権利義務の関係がないことを定める条項です。清算条項を取り交わせば,その後に相手から金銭を追加請求される可能性は法的になくなります。
業務上横領事件の場合,被害者の経済的な損害を全て回復させられたか,という点が重要となりやすいため,清算条項の価値がより高くなりやすい事件類型と言えます。清算条項があるということは,加害者が被害者に支払うべきものを全て支払った,という理解になるためです。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)条項とは,被害者が加害者を許す,という意味の条項です。
示談が刑事処分に有利な影響を及ぼすのは,基本的にこの宥恕条項があるためです。被害者が加害者を許している,という事実が,刑事処分を劇的に軽減させる要素となります。
業務上横領事件は被害者のいる事件であり,被害者の意向が処分に反映されやすい類型であるため,宥恕条項の獲得は非常に重要となります。

②業務上横領事件で特に設けやすい条項

【退職・解雇】

業務上横領事件の示談では,示談後の雇用関係に関する取り決めを設けることが多く見られます。一般的には,勤務先側が加害者との関係の継続を希望することはあまりないため,加害者の自主退職又は勤務先による解雇を行うことが多いでしょう。

加害者の立場としては,基本的に退職しない選択肢が考えにくいため,勤務先の求めに応じる形で合意するのが最も合理的なことがほとんどです。

業務上横領の弁護士費用

法律相談

業務上横領の疑いを受けた場合、最も重要なのは初動の判断を誤らないことです。会社からの呼び出しへの対応、任意の事情聴取で何を話すか、被害額の整理など、序盤での対応がその後の処分に大きく影響します。
このため、事件化する前でも早めに弁護士へ法律相談することが有効です。

法律相談料は事務所によって異なりますが、多くの場合は「30分あたり5,000円〜1万円程度」とされる例が多く見られます。また、初回相談は無料としている法律事務所も少なくあありません。

弁護活動の依頼

業務上横領の弁護活動を正式に依頼する場合、費用は着手金報酬金に分かれます。
費用は事案の規模、身柄拘束の有無、示談の難易度によって変動しますが、業界全体を見ると以下が標準的な範囲といえます。

■ 在宅事件の場合の相場

身柄拘束がない分、費用は比較的抑えられる傾向があります。

  • 着手金:30万〜50万円程度
  • 報酬金:30万〜50万円程度
    (不起訴獲得、示談成立、執行猶予獲得などで変動)

在宅であっても、会社との交渉や被害額の調整が必要となるケースが多いため、一定の費用は見込まれます。

■ 身柄事件(逮捕・勾留)の場合の相場

逮捕・勾留が伴う場合は、接見や勾留阻止の対応など緊急性の高い業務が増えるため、在宅よりも高くなります。

  • 着手金:50万〜80万円前後
  • 報酬金:50万〜80万円前後

身柄事件では、接見対応、準抗告、保釈請求、家族との連絡調整など、短期間で多数の対応が必要となることが費用に反映されます。

■ 示談交渉費用

業務上横領では、示談の可否が処分の大きな分岐点となるため、多くの事務所が示談費用を独立した項目として定めています。

  • 示談交渉費用:20万〜40万円程度
    (被害額が大きい場合や複数の調整が必要な場合は増額することもある)

示談は業務の難度が高く、会社の処罰感情の調整、返還方法の協議、謝罪文の作成、再発防止策の提示など、多面的な対応が必要です。

◆ 業務上横領の弁護士費用:項目ごとの相場費用目安

項目内容費用相場(目安)
法律相談初回の事実整理・会社対応・事件化リスクの判断など30分:5,000円〜1万円(無料の事務所もあり)
在宅事件:着手金事件化後の弁護活動。警察・検察対応、示談、見通し整理など30万〜50万円
在宅事件:報酬金不起訴獲得、示談成立、執行猶予など結果に応じて発生30万〜50万円
身柄事件:着手金逮捕・勾留後の弁護活動。接見、勾留阻止など緊急対応が中心50万〜80万円前後
身柄事件:報酬金勾留阻止、不起訴、保釈、執行猶予獲得などの成果に応じて発生50万〜80万円前後
示談交渉費用会社との被害弁償・処罰感情の調整、謝罪文・再発防止策の作成など20万〜40万円(難易度により増額あり)

◆ 業務上横領の弁護士費用:総額の目安表

ケース総額の目安主な対応内容
在宅・示談なし60万〜100万円取調べ対応、検察折衝
在宅・示談あり80万〜140万円示談成立による不起訴を目指す対応
身柄・示談なし100万〜150万円接見、勾留阻止、保釈対応など
身柄・示談あり120万〜180万円示談+早期釈放の総合弁護
被害額が高額(数百万円〜数千万円)150万〜250万円超もあり得る複雑な示談交渉・分割弁済案の調整

業務上横領に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

商標法違反事件で自首を検討すべきケースや自首の方法,自首が成立した場合の効果などを弁護士が解説

このページでは,商標法違反事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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商標法違反事件で自首をするべき場合

①購入者との間でトラブルが起きた場合

商標法違反の事件では,購入者がいわゆる偽物の商品だと気づき,購入者から警察に被害申告が行われる,という経緯で捜査が開始される場合も数多く見られます。そして,購入者の被害申告で捜査が行われる場合,その購入者に販売した立場の人物は,捜査の対象となることが通常です。
そうすると,購入者が警察に被害申告を行うと見込まれるのであれば,先に自首をしてしまう選択肢が有力になりやすいと言えます。

この点,購入者との間で偽物であるとの疑いや返金などに関するトラブルが起きた場合,そのトラブルが解決できない限り,購入者が警察に被害申告する可能性は高く見込まれます。そのため,当事者間でトラブルになった場合には,自首の検討が有益でしょう。
もちろん,当事者間で何らかの解決ができるのであればそれが最善ですが,どうしても当事者間で解決できず喧嘩別れのようになってしまう場合には,速やかに自首を進めることも一案です。

ポイント
購入者から警察への被害申告が見込まれる
当事者間で解決できないときは速やかな自首が有力

②商標権侵害の事実を後から知った場合

その商品を取り扱った当時は商標権侵害の事実を知らなかったものの,後からその事実を知ったという場合,知った段階で自首を検討することは有力です。

この場合,当時は商標法違反の故意がなかったとの主張になるため,厳密には自首には該当しませんが,商標権侵害に巻き込まれた事情を警察に伝えて捜査してもらうことで,後から不意打ち的に捜査される流れを防ぐ効果が見込まれます。
また,規範意識が高いことを行動に示す意味もあり,「当時は知らなかった」との主張がより説得的になる面も期待できるでしょう。

ポイント
事件に巻き込まれたことを伝えて捜査協力を求める
犯罪ではないとの主張であるため,厳密には自首ではない

③関係者が捜査を受けた場合

自分が関わる商標法違反の事件について,自分以外の関係者が捜査の対象になった場合,速やかな自首の検討は有力な選択肢の一つです。
一例としては,取引先の業者が捜索を受けた,警察に呼びされた,といった場合が挙げられるでしょう。

関係者が捜査を受けているということは,その事件が捜査の対象となっていることは明らかであり,自分の関与が特定されれば,必然的に自分も捜査対象となることが見込まれます。そうすると,自首をしてもしなくても捜査対象となる可能性が高く,自首のリスクが非常に低い状況と考えられるため,自首による処分の軽減を目指す動きは大いにあってよいでしょう。

ポイント
事件が捜査されていることは明らか
自首してもしなくても自分の関与が特定されやすい状況

④権利者に発覚したと分かった場合

商標法違反の事件では,商標権者に権利侵害が発覚したことをきっかけに捜査が開始される流れも多数見られます。そのため,権利者に侵害行為が発覚した,ということが分かった場合には,後の捜査を想定して速やかな自首を行うことが有力になります。

権利者に事件が発覚したかどうかは,権利者側の対外的な告知やプレスリリースによって把握できるケースがあり得ます。特に,規模が大きくコンプライアンス(法令遵守)の意識が高い企業が権利者である場合,企業ホームページなどで告知を行う場合も散見されるところです。
このような告知は,加害者の誠意ある行動を期待している面も含まれているのが通常であるため,早期の自首が被害者側への配慮につながる効果も期待できるでしょう。

ポイント
ホームページなどで告知されるケースもある

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

商標法違反事件の自首は弁護士に依頼すべきか

商標法違反の事件で自首の検討を行う場合には,弁護士への依頼が適切でしょう。また,実際に自首を行う場合にも,弁護士に依頼し,弁護士と協同して進めることが有益です。
弁護士への依頼によって,以下のようなメリットが期待できます。

①自首すべき状況か分かる

商標法違反の場合,事件が捜査されているかどうか,という状況自体が全く分からないというケースも少なくありません。商標権者や商品の購入者などと連絡を取り合う関係になければ,それらの人がどんな行動を取っているかも把握できないため,違反行為が誰かに疑われているのかすら判断できない可能性も低くありません。
そのため,商標法違反の事件は,捜査の進捗状況を確認しながら方針を練ることが難しい事件類型と言えるでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,限られた情報の中から状況を推測し,自首を行うことのメリットとデメリットを可能な限り正確に整理することが可能です。これにより,自首すべき状況かどうかを適切に判断することも可能になるでしょう。

②適切な自首の方法が分かる

自首を試みることに決めたとしても,具体的にどのように進めるのかは知識や経験がなければ判断の困難なポイントです。商標法違反は警察のどこで取り扱ってくれるのか,誰に何と言って相談すればいいのかなど,具体的な動き方を考え始めると数多くの疑問にぶつかることになります。

この点,弁護士に依頼することで,自首の適切な進め方を判断してもらうことができ,正しい方法で進めることが可能になります。また,弁護士に必要な対応をしてもらうことで,進める際の負担軽減にもつながるでしょう。

③自首後の流れが分かる

自首は,刑事手続を始めて欲しい,という申出であるため,自首後には捜査が進むことになります。そうすると,自首を行うに当たって,その後の手続がどのように流れていくのか,把握しているのといないのとでは,手続への対応に大きな違いが生じるでしょう。

この点,弁護士に依頼して自首を進める場合には,弁護士から自首後の手続の流れを具体的に案内してもらうことができます。また,適切な対応方針についても判断してもらうことができるため,自首後の手続にも安心して応じることが可能になります。

④弁護活動を迅速に開始できる

自首後は,その状況に応じて弁護士に弁護活動を求めることがより有益です。逮捕されてしまうのであれば早期釈放を目指す,被害者側との接触が可能であれば示談を目指すなど,自首という決断を最大限の結果に結びつけるためには,自首後の弁護活動とセットで考えておくことが望ましいでしょう。

この点,自首の段階から弁護士に依頼しておくことで,自首後の弁護活動は直ちに始めてもらうことが可能です。弁護活動の内容によっては,早期の着手が結果に直結する場合もあり得るため,このメリットは非常に大きいと言えます。

商標法違反事件で自首をする場合の注意点

①捜査を誘発する結果になる可能性

商標法違反の場合,違反行為があったとしても,その違反行為を指摘する人がいなければ捜査は開始しないのが通常です。違反行為が見落とされたまま,時間だけが流れていくことも考えられます。

この場合,違反行為が発覚していない状況下で自首をするのは,自首が捜査を誘発する原因となり得ます。自首をしたばかりに捜査を受けることになってしまった,との結果になる可能性については,あらかじめ注意しておくことが必要でしょう。

②既に捜査が進んでいる場合

商標法違反に対する捜査がどこまで進んでいるかは,事前には把握することが非常に困難です。ケースによっては,自分の知らないところで犯罪事実が発覚しており,犯人の特定まで進んでいるかもしれません。

この点,犯罪事実と犯人の両方が捜査機関に発覚している場合,自ら出頭しても自首は成立しません。もちろん,自発的に出頭して反省の意思を示す行為は有益ですが,法的には自首とならず,自首のメリットが得られない可能性についても注意しておくのが望ましいでしょう。

③不起訴が約束されるわけではない

自首の大きな目的の一つが,不起訴処分の獲得でしょう。不起訴となれば,刑罰を受けることがなくなるため,前科(刑罰を受けた経歴)が付くこともありません。刑事手続の最終的な目標は,不起訴であることが多数と言えます。

もっとも,自首をしたことによって直ちに不起訴になる,というわけでない点には注意が必要です。自首をしたとしても,事件の内容や程度を踏まえ,その法的責任が重大であると評価されれば,自首による軽減の効果を踏まえてもなお起訴すべき,と判断されることはあり得ます。

不起訴を前提に自首するのでなく,不起訴を目指して自首をするという理解が望ましいでしょう。そのような理解は,反省の意思がより強く伝わる結果にもつながりやすいです。

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【商標法違反事件での呼び出し】呼び出しを受けたらどうなる?対処はどうするべき?注意点は?

このページでは,商標法違反事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
商標法違反事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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商標法違反事件で呼び出された場合の対応法

①心当たりのある事件

心当たりのある商標法違反事件で呼び出しを受けた場合には,まずできるだけ速やかに心当たりのある旨を明らかにし,「全面的に捜査協力する意思がある」ということを把握してもらえるよう努めることが賢明です。

商標法違反の場合,自宅や事業所に捜査機関が訪れ,捜索・差押えという手続で証拠品を確保する流れが相当数見られます。捜索や差押えを受けた場合,実際に事件に関係するかはともかく,多くの物品が押収されやすいため,その後の生活に大きな影響を及ぼすケースが少なくありません。
この点,捜索・差押えなく呼び出しを受けているのであれば,今後捜索・差押えを受ける可能性をできる限り下げるのが合理的であり,その具体的な方法が捜査協力の姿勢を示すことと言えます。捜索や差押えをしなくても証拠品が確保できると判断してもらえれば,捜査に伴う不利益を最小限に抑えることもできるでしょう。

ポイント
心当たりがあること,全面的な捜査協力の意思があることを速やかに示す
自宅や事業所での捜索・差押えが行われると不利益が大きい

②心当たりのない事件

心当たりのない事件では,まず,なぜ自分が商標法違反をしたと疑われているのか,という理由を把握したいところです。具体的には,疑いの根拠となっている証拠が何かを特定することが最初の目標になるでしょう。

商標法違反の疑いで呼び出されている場合,何らかの証拠を踏まえて判断されているはずであり,その証拠に争点の原因がある,というケースが通常です。例えば,自分のアカウント情報を盗用されている,自分の名前を悪用されている,カード情報や連絡先を利用されているなど,他人が自分に成りすまして商標法違反の行為に及んでいる場合は,隠れ蓑にされた自分に疑いが向きやすいでしょう。

そのため,心当たりのない事件で呼び出しを受けた場合には,可能な範囲で冷静に受け答えをし,どのような内容で,何を根拠に自分が疑われているのか,という点の特定をできる限り目指すことをお勧めします。
なお,争点や証拠の特定は容易でないケースも多いため,具体的な動きを弁護士に委ねるのも有力な手段です。

ポイント
自分が疑われている根拠を把握する
容易ではないため弁護士に委ねることも有力

③商標法違反だと思っていなかったケース

商標法違反の疑いで呼び出しを受けたとき,起きた出来事自体には心当たりがあるものの,それが商標法違反に当たるとは全く思っていなかった,というケースはあり得るところです。例えば,ある商品を仕入れて売却したことは間違いないが,その商品が商標を無断利用したものであるとは全く知らなかった,という場合などが挙げられます。

このようなケースでは,当時の自分の認識やその根拠を,丁寧に整理し指摘できることが重要になります。どのような経緯で,どのような理由で商標法違反だとは思っていなかったか,という点は,最終的な刑事処分の判断に大きな影響を及ぼします。
また,「当時の」認識を述べる,という点にも留意しておくことが適切です。呼び出された現在,疑いを向けられた現在の認識ではなく,あくまで「当時の」認識が問題となる,という理解を正しくしておきましょう。

ポイント
当時の認識やその根拠を整理する
現在でなく当時の認識が問題であることを理解する

商標法違反事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

商標法違反の事件では,呼び出しに応じた際に逮捕することは一般的に少ないと考えられます。逮捕が予定されているのであれば,逮捕前に呼び出すことはあまり得策でないと理解されるのが通常でしょう。

この点には,以下のような商標法違反事件の特徴が影響していると思われます。

商標法違反事件の特徴

1.証拠物が多数ある

2.捜査されているかが当事者から分かりにくい

3.捜査のきっかけが複数あり得る

【1.証拠物が多数ある】

商標法違反の場合,傷害事件や痴漢事件のようなジャンルとは異なり,証拠物がほぼ確実に存在し,しかもその内容が多数に渡ることも珍しくありません。

そのため,証拠隠滅の可能性を防ぐために逮捕した後で証拠収集を進める,という流れも多く見られますが,このとき逮捕前に呼び出して知らせてしまうと,証拠物が散逸してしまうリスクを招く原因になりかねません。これでは,逮捕の意味が大きくそがれてしまう結果になります。

【2.当事者に接触しなくても証拠収集が可能である】

商標法違反の事件では,証拠収集のために必ずしも当事者(被疑者)に接触をする必要があるとは限りません。問題となる商品が手元にある,入手経路が特定できているなど,被疑者に知られないままある程度の証拠を収集し,その上で被疑者から話を聞く,という流れになる場合も相当数見られます。

この場合,逮捕しなければ収集できなくなる,という性質の証拠が少ないため,証拠収集目的で逮捕を行う必要自体が小さいです。そのため,呼び出した段階では既に逮捕する必要がなくなっている,という可能性があるでしょう。

【3.捜査のきっかけが複数あり得る】

商標法違反で捜査が開始されるきっかけとしては,権利者からの被害申告,商品の購入者からの被害申告,いわゆるサイバーパトロールなど,複数の可能性があります。そして,呼び出しを受けた被疑者が,具体的な捜査のきっかけを知ることは難しいケースも多いところです。

逮捕は,加害者から被害者に圧力をかけるような動きを防ぐ目的でも行われますが,商標法違反の場合,そもそも圧力をかけるべき相手が誰か,加害者には分からないことが少なくありません。この点は,窃盗事件や暴行事件などの一般的な事件類型とは異なる特徴の一つです。
そのため,呼び出しをして被疑者への嫌疑が固まったとしても,被害者への圧力を防ぐ目的で逮捕する必要が決して大きくないと判断され得るでしょう。

商標法違反事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①取調べのため

商標法違反事件での呼び出しは,基本的に取調べ目的であることが通常です。疑いの内容について被疑者の認識を確認するため,呼び出して話を聞く,という流れとなります。

このような呼び出しのタイミングは,被疑者に対する呼び出しの初期段階であることが通常です。必要な証拠物や被害者側の供述などを捜査した後,比較的速やかに行われることが想定されやすいでしょう。

②証拠品の提出を求めるため

商標法違反の場合,捜査のため必要な証拠品が少なくないため,未収集の証拠品を提出してもらう目的で呼び出しを行う場合も見られます。

このような呼び出しは,基本的に取調べの後であることが多いでしょう。取調べの内容を踏まえ,提出を求める必要がある,と考えた証拠品について,後日提出してもらうため呼び出すという流れを辿ります。
なお,取り調べ前に捜索・差押えが行われているなど,既に証拠収集のための手続が取られている場合は,証拠品の提出を求める呼び出しは行われないことが通常でしょう。

③証拠品を還付するため

商標法違反の事件捜査では,証拠品を捜査機関の手元に置いて捜査することになりやすいですが,最終的には還付(返却)しなければならないため,還付を目的に呼び出すことも考えられます。

還付目的での呼び出しは,捜査の終盤であることが通常です。証拠品の還付は,証拠品について必要な捜査を尽くした後でないと行われないため,少なくともその証拠品については捜査をする必要がなくなった,という段階に至っていなければなりません。
なお,商標権を侵害した商品の現物などは,場合により還付されないものもあり得るため,留意しておくのが望ましいでしょう。

商標法違反事件の呼び出しに応じたときの注意点

①認否の方針

商標法違反の事件では,違反していたことの確信はなかった,という場合に認否の方針が難しくなりやすいところです。商標法違反だと分かっていたわけではないが疑わしい事情はあった,というケースが代表例です。

この点,基本的には,客観的な事情から「商標法違反であってもいいと思っていた」と評価されるかどうかを基準とすることが合理的です。なぜなら,それが万一裁判所に判断されることとなった場合の判断方法であるためです。
例えば,製造者が明らかに権利者と無関係に見える,仕入れ金額が異様に安価であるなど,容易に商標法違反の可能性を想定できるケースでは,「違反を知らなかった」という一点のみで否認の方針を取るかべきかは慎重な判断が望ましいでしょう。

②証拠品を所持している場合

手元に証拠品を所持している場合,自ら自発的にその申出をし,提出を提案をすることは有力な行動の一つです。自分から証拠品を明らかにして提出する行為は,積極的な捜査協力の姿勢を示す行動であり,その後の捜査が被疑者側に配慮された形で行われる可能性を高める効果が期待できます。

呼び出しを受けた際には,その事件に関連していると思われる証拠品の提出を検討することも,重要なポイントの一つと言えるでしょう。

③出頭する警察署の場所

商標法違反の場合,呼び出され出頭する先の警察署が,自宅の最寄りなどでなく遠方になる可能性に注意することが適切です。

捜査を行う警察署は,捜査のきっかけが最初に生じた警察署であることが通常です。例えば,商品の購入者が自宅の近くにある警察署に相談した,というきっかけであれば,購入者の自宅近辺の警察署が捜査を行うことになりやすいでしょう。
そうすると,自分の生活圏と捜査をしている警察署が大きく離れている場合,遠方への呼び出しを受ける可能性は否定できません。無理な出頭を求められることまでは考えにくいですが,移動の負担が避けにくい可能性は踏まえておくことをお勧めします。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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商標法違反で逮捕されるケースは?商標法違反で逮捕されたらどうなる?

商標法違反は知的財産権に関わる重大な犯罪とされ、場合によっては逮捕に発展することがあります。模倣品の販売や商標権を侵害する行為で摘発されると、刑事手続が進み、罰金や懲役といった刑罰を受ける可能性も否定できません。「商標法違反はどんな場合に逮捕されるのか」「逮捕されたらどうなるのか」と不安に感じる方も多いでしょう。本記事では、商標法違反の逮捕について、逮捕されるケースや逮捕後の流れを分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

商標法違反とは

① 商標権の定義

商標法違反とは、登録商標に関する権利を保護する商標法に反する行為の総称です。ここで前提となる商標権とは、商品やサービスの提供者が、自らのブランドを識別してもらうために用いる標識に対して与えられる独占的な権利を指します。

商標は、単なるマークやロゴではなく、「どの商品・サービスを誰が提供しているのかを消費者に明確に伝える」機能を持っています。文字・図形・記号・色彩、さらには立体的形状や音など、多様な形式が商標法上認められており、企業のブランド戦略に直結する重要な知的財産です。

日本では、商標の使用を開始しただけでは権利は発生せず、特許庁に出願し、登録を受けることによって初めて商標権が成立します。登録された商標は、指定商品・指定役務(サービス)の範囲内で、権利者が独占的に使用し、他人の使用を排除できる法的地位を持ちます(商標法25条)。これは、ブランドの信用維持や市場の混乱防止を目的とした制度です。

商標権の保護は、単なるロゴの保護にとどまらず、

  • ブランドの信用価値
  • 偽造品流通による消費者の混乱防止
  • 公正な市場競争の確保

といった広い利益を守る役割を持っています。

このため、商標権に対する侵害行為については民事責任に加え、悪質な場合には刑事責任が問われる仕組みとなっており、状況によっては警察の捜査や逮捕に発展することがあります。

② 商標権の侵害行為

商標権の侵害行為とは、商標権者の許可なく、登録商標または類似商標を使用する行為を指します。商標権は「指定商品・指定役務」の範囲で保護されるため、侵害となるかどうかは、①商標の同一性・類似性と、②商品・役務の同一性・類似性の両面から判断されます。

1 登録商標の無断使用(同一商標の使用)

もっとも典型的な侵害で、権利者の登録商標と同一の商標を、同一または類似の商品・サービスに使用する行為を指します。
例:公式ブランドのロゴと全く同じ標章を付した商品を販売する行為。

2 類似商標の使用

商標が完全に一致していなくても、取引者や需要者が出所を誤認する程度に似ていれば、侵害と判断されます。
外観・称呼(呼び方)・観念(イメージ)の総合判断が行われ、模倣品・コピー品のほか、ブランドを想起させる紛らわしい標章も対象になります。

3 偽造品・模倣品の製造・販売・輸出入

偽ブランド品の製造・販売・保管・輸入・輸出は、商標権侵害の典型であり、悪質性が高いケースとして刑事手続に移行することも少なくありません。ネット販売やフリマアプリ上の取引も含まれます。

4 販売目的での保管・陳列

実際に販売していなくても、販売の意思をもって保管・陳列しているだけで侵害となることがあります。
「まだ売っていないから大丈夫」という認識は誤りで、捜査対象となり得ます。

5 広告・インターネット上の表示行為

商標の「使用」には、商品のタグや包装だけでなく、以下のものも含まれます。

・ホームページ上の表記
・ネットショップの商品説明
・広告・チラシ
・SNSでの販売宣伝

表示の仕方によっては、実際に商品を提供する前でも商標侵害が成立し得ます。

6 輸出入に関わる行為

偽ブランド品を海外から仕入れる行為や、国内で製造した模倣品を国外に出荷する行為も、商標権の侵害となります。税関で差し止められることや、刑事事件化される例も多い領域です。

商標権侵害が疑われやすいケースには、以下のような特徴がみられます。
・商標が同一または紛らわしいほど類似
・商品やサービスが同一または類似
・販売目的での製造・輸入・保管・広告がある
・消費者が正規品と誤認する可能性が高い

商標法違反事件で逮捕されるケース

商標法違反の事件は,逮捕をされるケースも十分に考えられる事件類型です。突然自宅や事業所に警察が訪れ,そのまま逮捕される可能性は否定できません。
一方で,逮捕されず在宅事件として取り扱われることも相当数あるため,逮捕の可能性が高いのはどのような場合か,把握しておくことは有益です。具体的には,以下のような場合に逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

① 組織的に行っている場合

一人で行った事件より,複数人が組織的に関与して行った事件の方が,逮捕の可能性が高い傾向にあります。その主な理由としては,以下の点が挙げられます。

・規模が大きい
→単独犯のケースと比べ,件数や規模が大きく,事件の重大性を踏まえた逮捕の可能性が高くなりやすいです。

・必要な証拠が多い
→複数人が関わっている場合,関係者間のやり取りが発生するため,事件の全容を把握するのに必要な証拠が多くなりやすいです。そのため,証拠収集を円滑に進める目的で逮捕される可能性が高くなります。

・証拠隠滅されやすい
→組織内・共犯者間の口裏合わせなどによって,証拠隠滅される可能性が高いと判断されやすいため,証拠隠滅を防止する目的で逮捕される可能性が高くなります。

② 件数が非常に多い場合

商標法違反に該当する事件の数があまりに多い場合は,事件の重大性を踏まえ,逮捕される可能性が高くなります。また,事件ごとに証拠収集が必要となることから,事件が多いほど必要な証拠が多くなりやすく,証拠の散逸を防ぐ目的で逮捕される可能性が高くなります。

③ 商品の入手方法が悪質である場合

商品を入手する段階で,商標権侵害を把握していたことが明らかである場合,逮捕の可能性が高くなります。
例えば,明らかに商標を用いる権利のない製造者から直接購入していた,自身や近しい関係者が製造した商品であった,といったケースが挙げられるでしょう。これらの場合,意図的に商標権侵害の行為を助長している点で悪質であり,逮捕の必要性が高いと判断される傾向にあります。

商標法違反の場合、人的な規模の大きさ、件数の多さ、社会的な影響の大きさなどを逮捕の有力な判断基準とするケースが多く見られるところです。

偽物と知らなくても逮捕されるか

商標法違反の事件では、偽物(模倣品)と知らずに扱っていた場合でも、状況次第では逮捕される可能性があります。
もっとも、商標法違反で処罰するためには原則として 「故意」 が必要であり、模倣品であることを認識していたか、少なくともその可能性を認識していたことが求められます。

逮捕の段階では、本人の「知らなかった」という主張よりも、外形的な状況が重視されます。
たとえば、次のような事情があると、警察は「模倣品に関与している疑いが強い」と判断します。

・店舗や倉庫に大量の模倣品が保管されている
・相場とかけ離れた安価な仕入れが繰り返されている
・出所が明らかでない商品を販売している

次のような事情は、本来であれば気づくべき状況だった と評価されやすく、故意を推認されやすいポイントです。

・相場より明らかに安い仕入れルート
・ブランド品なのに箱・タグ・保証書などが不自然
・同じデザインの商品を大量に取引している
・個人輸入を繰り返してブランド品を扱っている
・過去に税関で差し止められた経験がある

こうした事情が積み重なるほど、「知らなかった」という主張が受け入れられにくくなります。

商標法違反の事件では、以下のような点に関する証拠が重要な根拠になりやすいです。
・仕入れルート
・在庫状況
・取引履歴
・広告・ネット掲載の内容
各事情を踏まえ、偽物であるとの認識や疑いを抱いていたと言えるか、という検討を行います。

商標法違反で問われる罪や罰則

① 商標法

商標法違反が成立すると、商標法に定められた刑事罰の対象となります。模倣品の流通はブランド価値の毀損や消費者被害につながるため、法定刑は比較的重く設定されています。

商標権を侵害した者には、以下の刑罰が科される可能性があります(商標法78条)。

  • 10年以下の拘禁刑
  • 1,000万円以下の罰金
  • またはその併科

また、法人が関与した場合には、
3億円以下の罰金
が科されることがあり、企業が模倣品取引に関与しているケースでは特に重い制裁が課される可能性があります。

なお、単に偽ブランド品を販売する行為だけでなく、次の行為も「侵害とみなされる行為」として処罰対象になります。

商標法は、単に偽ブランド品を販売する行為だけでなく、次の行為も「侵害とみなされる行為」として処罰対象に含めています。

・店舗で模倣品を 陳列 する
・模倣品を 輸入 する
・模倣品を 輸出 する
・模倣品を 販売目的で所持 する

② 不正競争防止法

模倣品の取扱いは、商標法だけでなく 不正競争防止法 にも抵触する場合があります。特に、商標が登録されていない場合や、商品の形態や表示全体を模倣したケースでは、不正競争防止法による刑事罰の対象となります。

不正競争防止法では、次のような行為が「不正競争」とされます。

  • 他人の商品表示(名称・ロゴ・パッケージ)と混同を生じさせる行為(2条1項1号)
  • 周知な商品表示を模倣し、混同を生じさせる行為(同2号)
  • 著名な商品表示の希釈化(ダイリューション)(同2条1項2号の2)
  • 商品形態(デザイン)の模倣(同3号)

商標登録されていなくても、周知性・著名性がある場合や、需要者が混同する可能性が高い場合には不正競争防止法で刑事訴追され得ます。

不正競争行為を行った者には、次の刑罰が科される可能性があります(不正競争防止法21条)。

  • 5年以下の拘禁刑
  • 500万円以下の罰金
  • またはその併科

法人については、
5億円以下の罰金
と、極めて重い法人罰が定められています。

③ 詐欺罪

模倣品(偽物)を販売した場合、商標法違反や不正競争防止法違反だけでなく、取引相手を欺いて代金を得たとして 詐欺罪(刑法246条) が成立する可能性があります。

詐欺罪は「人をだまして財物を交付させる行為」を処罰するもので、模倣品販売は該当する可能性が高いでしょう。

模倣品販売において、詐欺罪が成立しやすいのは次のような場合です。

  • 偽物であることを知りながら正規品として販売した
  • ブランド品と誤認させる表示・説明を意図的に行った
  • 本物の写真を掲載して偽物を発送した
  • 正規品と説明しつつ相場より不自然に安い価格で販売した
  • 模倣品である可能性を知りながら黙って販売した

これらのケースでは「欺く意思(故意)」が明確であり、詐欺罪として立件されやすくなります。

詐欺罪の法定刑は次のとおりです。

  • 10年以下の拘禁刑

罰金刑は規定されておらず、拘禁刑のみが法定刑です。
そのため、模倣品販売で詐欺罪が成立した場合、商標法や不正競争防止法よりも実刑リスクが相対的に高くなることがあります。

個別のケースや内容によっては、これら複数の犯罪が同時に成立することも考えられます。具体的にどのような罪名で取り扱われるかは、捜査機関の裁量的な判断にも影響を受けます。

商標法違反の刑罰

商標法違反は、模倣品の製造・販売・輸入・保管などを通じてブランド価値を損ない、消費者や市場に大きな混乱を生じさせるおそれがあるため、法定刑が比較的重く設定されている点が特徴です。

商標権を侵害した場合、個人には次の刑罰が規定されています。

  • 10年以下の拘禁刑
  • 1,000万円以下の罰金
  • またはその併科

法人(会社)が関与していた場合には、

  • 3億円以下の罰金
    が科される可能性があります。

模倣品ビジネスに組織的に関与する企業を抑止する目的から、法人罰が非常に重く設定されています。

商標法違反で逮捕を防ぐ方法

① 自首

商標法違反の事件では,事件が発覚する前に自ら自首を行う方法で,逮捕の回避を目指す動きが有力です。事件が捜査される前に自首を行った場合,基本的には逮捕されない方が通常と言えるでしょう。

なお,自首は,捜査機関が犯罪事実と犯人の両方を把握している状態で行っても,法的には自首と認められません。そのため,極力速やかに決断し,行動に移すことが有益でしょう。

② 呼び出しへの対応

商標法違反の事件で呼び出しを受ける場合,呼び出しへの対応を適切に尽くすことで,逮捕を回避する可能性を高くする努力も可能です。具体的には,呼び出しに対して速やかに対応し,出頭を求められた際にはできる限り日程を確保するなどの捜査協力を尽くす,という動きが適切でしょう。

捜査機関が呼び出しを行う場合,呼び出しに応じてくれれば逮捕しなくてもよい,と判断していることが多く見られます。そのような捜査機関の期待に応えるような対応を尽くせれば,逮捕を避けられる可能性は非常に高くなるでしょう。

③ 早期の示談

商標法違反の事件は,商標権者や商品の購入者など,被害に遭った立場の人が警察に被害申告し,捜査を求めることで手続が始まる,というケースが大半です。裏を返せば,商標権者や商品の購入者が被害申告をしない場合,捜査が開始される可能性は低く,逮捕される可能性も低い,と言えます。

そのため,逮捕を防ぐためには,捜査開始前に早期の示談を図る試みが非常に有力です。捜査開始前に当事者間で解決ができれば,最も早期に心配が解消されるでしょう。
例えば,商品の購入者から「偽物でないか」とのクレームが入ったなど,当事者間での協議のきっかけが生じたケースでは,内容を踏まえて早期の示談を目指す動きが有力になります。

商標法違反事件を早期解決する方法

商標法違反の事件について、早期解決による逮捕の回避を試みる際には,弁護士に依頼し,弁護士の専門的な見解を仰ぐことをお勧めします。弁護士への依頼によって,以下のような利点が期待できます。

① 逮捕リスクの高さが分かる

商標法違反の事件は,逮捕リスクの高さがケースによって様々に異なります。事件によっては逮捕を全く想定しない捜査手続が進むこともあれば,突然逮捕されることが強く懸念される場合もあります。
そして,逮捕がどれくらい懸念されるかは,その後の動き方や方針に大きな影響を及ぼすため,事前に把握しておくことが肝要なポイントでもあります。

この点,弁護士に依頼することで,弁護士の専門的な知識・経験を通じて個別の逮捕リスクを判断してもらうことが可能です。また,逮捕リスクの高さを踏まえ,どのような弁護活動の方針を取るべきか,という点についても適切な案内を受けることができるでしょう。

② 手続や処分の見込みが分かる

商標法違反事件で想定される捜査手続の流れや最終的な処分には,数多くの選択肢があります。捜査手続としては,逮捕するかしないか,家宅や事業所の捜索差押えをするかしないか,取り調べはどの程度の期間,どの程度の回数行われるかなど,多くの局面で捜査機関の判断が生じるでしょう。また,最終的な刑事処分としては,どのような条件が整えば不起訴処分なのか,罰金になるのは,公判請求(公開の裁判)になるのはどのような場合か,といった点は,個別の事情によって細かく変わり得ます。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕の有無はもちろん,その後の捜査や処分の見通しについて,ある程度のイメージを持つことが可能になるでしょう。また,現状で分かることと分からないことの区別ができれば,「何が分からないかが分からない」という不安が払拭でき,逮捕に関して必要な対応に注力することも容易になります。

③ 具体的な動きを主導してもらえる

逮捕を防ぐために,また逮捕された後にどんな対応を取るのか,という方針が立てられたとしても,それを実行することはまた別の困難な作業になりやすいところです。特に,刑事手続は法律でルールが厳格に定められている面が多いため,そのルールの中で,適切なタイミングに適切な動きを取る必要があります。

この点,弁護士に依頼することで,具体的な動きをするに際して弁護士が主導してくれるため,安心して進めることが可能です。また,弁護士が可能な限りの対応を代行してくれるため,肉体的・精神的な負担は大きく軽減されやすいでしょう。

商標法違反の逮捕に関する注意点

① 逮捕前の動きが困難である可能性

商標法違反の事件では,予告なく逮捕や捜索といった強制的な捜査に踏み切られる場合も少なくありません。事件の性質上,物的な証拠が複数存在しており,事前に予告してしまうと簡単に処分されてしまう恐れがあるため,証拠収集の観点から突然の強制捜査を受ける可能性が高い傾向にあります。

この点,突然逮捕されてしまうケースだと,逮捕前に逮捕を防ぐ動きを取ることが現実的に難しい可能性も低くないため,注意が必要です。逮捕が防げない場合には,逮捕を前提に早期釈放や処分軽減を目指す動きに手早くシフトすることが有益でしょう。

② 余罪がある場合の対応

商標法違反の場合,余罪が一定数あるケースも少なくありません。むしろ,余罪が全くない事件の方が少ないと言ってもよいでしょう。そのため,余罪に関する対応をどうするか,という点は悩ましいポイントの一つです。

この点,認め事件の場合であれば,捜査機関が特定し捜査することとした余罪に一つ一つ対応する,という方針を取るべきことが大多数です。どの事件を捜査・処分の対象とするかは捜査機関の判断となり,判断に必要な証拠も捜査機関の手中にあることから,証拠の精査や方針判断を待つことが必要になりやすいです。
例えば,複数の商品を複数の購入者に売却した,というケースであれば,捜査対象となった商品ごとに,それぞれの購入者と示談を目指す,という方針が有力な動き方の一例になるでしょう。

③ 捜査開始前に示談を試みる方法

商標法違反の事件は,捜査開始前に購入者と示談による解決ができていれば,少なくとも購入者がきっかけで捜査が始まる可能性はなくなるため,事実上の解決となるケースが多くなりやすいところです。そのため,捜査開始前に購入者との間で解決できるかは,重要な問題となるでしょう。

もっとも,捜査開始前の段階では,購入者が捜査機関への被害申告などに動いているかどうか,そもそも商標法違反の問題意識を持っているかどうか,などの点が,自分からは分からないことが通常です。そのため,購入者との解決を試みに行く際は,ある程度リスクを負って自発的に動く必要がある点に注意するのが望ましいでしょう。

なお,既に購入者からクレームなどが寄せられており,購入者が商標法違反について問題意識を持っていることが明らかであれば,捜査開始前の示談に可能な限り注力するのが合理的な行動になりやすいと言えます。

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【商標法違反の不起訴処分】不起訴になる可能性や具体的ケース,不起訴を目指したい場合の手段などを解説

このページでは,商標法違反の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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商標法違反で不起訴を目指す方法

①被害者との示談

商標法違反は,他人の商標を無断で利用するなどする事件です。そのため,事件の被害者は商標に関する権利を持っている人や会社(商標権者)であり,起訴不起訴の判断には商標権者の意向が大きく影響します。
そうすると,不起訴を目指す観点では,被害者である商標権者と示談し,その許しを獲得することが不起訴に大きく近づくと言えるでしょう。

なお,商標権者が誰であるか,商標権者が法人である場合には誰に連絡を試みるべきか,といった具体的な点は,事件の当事者には判断が困難な問題です。示談を目指す場合には,弁護士に依頼し,弁護士を通じて捜査機関担当者に相談してもらうことが適切な方法となります。

ポイント
商標権者を被害者とする犯罪
具体的な連絡方法は弁護士から捜査機関に相談してもらう

②商品の購入者との示談

商標法違反の場合,商標を無断利用した商品が流通し,無断利用を知らない購入者の手元に移っているケースが多く見られます。このとき,適正な商標だと信頼して商品を購入した人は,商標の無断利用によっていわば偽物の商品を掴まされており,実質的な被害者と言えます。
そのため,商品が既に購入されているケースでは,実質的な被害者出る購入者との間で示談を試み,購入者からの許しの獲得を目指す方法が有力です。

購入者との示談は,特に購入者が捜査機関に相談したことが捜査開始のきっかけとなった場合に有力となりやすいところです。商標権者は捜査を求めていないものの,購入者が捜査を求めているという場合,購入者との示談はその後の捜査や処分に大きな影響を及ぼすことが期待できるでしょう。

ポイント
購入者は実質的な被害者
購入者が捜査開始のきっかけとなった場合に有力な手段

③自首

商標法違反の事件は,捜査が開始される前に,積極的な動きで捜査を回避することが非常に難しい事件類型です。捜査開始前の試みとしては,当事者間での解決を目指すことが代表的ですが,商標法違反では誰が相手方当事者であるか分からない,又は誰に対して連絡を試みればいいか分からない,という場合が大半であるためです。
そのため,商標法違反では事前の対処が困難な傾向にあると言えます。

この点,捜査を受ける前にできる数少ない動きの一つが,自首です。捜査が行われる前に,自首によって反省の意思を表明するなどすることで,強い反省の態度を踏まえた不起訴処分の可能性が高くなるでしょう。
また,自首を行うことで,いつ捜査を受けるか分からないという不安を解消することができ,生活への悪影響を最小限に抑える効果も期待できます。

ポイント
商標法違反は,捜査開始前の対処が困難
自首によって強い反省の意思を示すことが可能

④商標法違反の認識がなかった場合

商標法違反の事件では,商標を無断利用した商品の製造者と販売者が異なる場合も数多く見られます。このとき,販売者が商標法違反の事実を知らずに商品を仕入れ,販売をしてしまっていた,というケースも一定数あり得るところです。

商標法違反は故意犯であるため,商標権の侵害を知らずに商品販売した人には成立しません。そのため,商標法違反の事実を知らずに商品を仕入れ,販売してしまったというケースでは,「本物だと信じ込んでおり商標法違反の認識はなかった」との理由で不起訴処分としてもらうことを目指すのが有力です。

なお,商標法違反の認識がなかったかどうかは,客観的な事情を総合して判断されます。判断材料としては,商品の精巧さ,仕入れルートや価格,販売方法や販売価格などが挙げられるでしょう。

ポイント
販売者が商標法違反を知らなかった場合,不起訴になり得る
知らなかったと言えるかどうかは,客観的な事情を総合して判断される

商標法違反で不起訴になる可能性

商標法違反の事件は,犯罪事実が明らかである場合には基本的に起訴される事件類型です。初犯だから,反省しているからという程度の一般的な事情のみで不起訴になることは考えにくいため,不起訴となるには相応の事情が必要になりやすいでしょう。
特に,複数件の商標法違反があるケースや,被害規模が大きいケースでは,それでも不起訴としてよいと言えるだけの根拠が必要とされやすいです。

もっとも,ケースに応じた適切な対応を尽くし,その結果が伴った場合には,不起訴となることも十分に考えられます。
認め事件の場合には,やはり示談や金銭賠償を尽くし,被害者側の損害を埋め合わせる動きが重要です。もともとの事件がそれほど悪質でなく,事後的に被害が回復されたとなれば,不起訴処分は有力になりやすいでしょう。
一方,否認事件の場合には,犯罪事実の立証が困難であるとの具体的な主張が肝要です。どのような主張が,根拠が適切であるかは,個別の内容によるので,弁護士と十分に相談して方針決定することをお勧めします。

ポイント
初犯,反省といった一般的な事情のみでは不起訴になりづらい
事件内容に応じた適切な対処ができれば,結果により不起訴は十分あり得る

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

商標法違反で不起訴を目指す場合の注意点

①購入者との示談の効果

商標法違反で不起訴処分を目指す場合,示談の試みが有力ですが,購入者との示談についてはその位置付けや効果について注意が必要です。

商標法違反の被害者は,正確には商標権者であるため,その商品を購入した人は犯罪の直接の被害者ではなく,事実上損害を被った人,という立場にとどまります。そのため,購入者との示談が成立し,購入者から許しが得られたとしても,他の事件で被害者と示談したのと同様に不起訴と直結する効果が期待できるとは限りません。

もっとも,商標権者との示談交渉ができるケースは少ないため,現実的には購入者との示談を試みるほかない場合は多いところです。この場合に,購入者相手の示談以上に有力な手段が考えにくい,というのもまた間違いないところでしょう。

②事業として行っていた場合

商標権を侵害した商品を,事業として仕入れ販売していた場合には,事件の重大性が重く評価され,刑事責任も大きくなりやすい可能性に注意が必要です。

個人がたまたま購入したものを転売したようなケースとは異なり,事業として仕入や販売を繰り返しているケースでは,以下のような理由で刑事責任が重大視されやすい傾向にあります。

・件数や期間が大きくなりやすい
→事件の数が多くなればなるほど,刑事責任は重大になりやすい

・営利目的である
→商標権侵害の行為を営利事業として行うのは,より責任が重く見られやすい

事業として取り扱ってしまっていたケースでは,不起訴を目指すためより慎重な検討・対応をお勧めします。

③余罪の取り扱い

商標法違反の事件は,1件だけという場合はあまりなく,いわゆる余罪が複数あるケースが多く見られます。そのため,余罪が刑事処分にどのような影響を及ぼすのか,という点は大きな心配事になりやすいです。

この点,余罪が具体的に捜査の対象となるのは,被害届などの形で被害者側から被害申告が出されている件に限られるのが通常です。捜査機関は,商標権者や購入者が捜査を求めた事件について,捜査処分するとの取り扱いをすることが一般的でしょう。
そのため,複数の余罪が発覚したときにその全てが刑事処罰の対象になる,というわけではありません。

もっとも,余罪の件数や規模は,刑事処分を決める際の重要な判断要素になることもまた事実です。余罪の数や規模が著しい場合には,それだけ不起訴になりづらくなる可能性に注意が必要でしょう。

④否認事件の注意事項

商標法違反の場合,故意を争う否認事件が相当数見られます。代表的なものは,「商品を仕入れて販売したものの,商標権を侵害した商品であるとは知らなかった」との主張です。

この点,故意を争うケースでは,商標権侵害を知らなかった原因が何か,という点が問題になり得るということに注意しましょう。具体的には,必要な注意を怠ったり,重要な事情を見落としたりしていると,「商標権を侵害していてもよいと思っていた」と判断され,故意ありとみなされてしまう可能性があります。

一例としては,あまりに安価で販売されていた,同じ商品が商標権侵害として問題になっていたなど,商標権侵害の事実が容易に把握できる場合が挙げられます。
なぜ商標権侵害が分からなかったか,という点が追及される可能性を踏まえ,合理的な否認の主張をすることをお勧めします。

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【埼玉大宮で商標法違反事件の弁護士選び】重視すべき基準や選び方などを弁護士が解説

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商標法違反事件で弁護士を選ぶタイミング

①自首を試みるとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。
そのため,自首は,事件の発覚や犯人の特定に時間を要しやすいケースで,特にその時間的な猶予が生じやすいものです。

この点,商標法違反の事件は,違反行為が発覚するまでに時間がかかりやすい,という点に大きな特徴があります。多くの場合,商標法違反に当たる商品の販売などがきっかけになりやすいですが,商品が販売されたからと言って,直ちに違反行為が発覚するわけではないためです。
その意味では,商標法違反の事件は自首の検討が有力になりやすい事件類型と言えます。

もっとも,本当に自首をすべきかどうか,自首をする場合にどのような手順・方法で行うか,という点は,当事者自身での判断が困難なポイントです。自首を試みようと考えるときには,適切な弁護士選びの上で,弁護士とともに検討・行動をするのが適切でしょう。
そのため,自首を試みたいと考えるときは,弁護士選びのタイミングということができます。

ポイント
商標法違反の事件は,自首が有力になりやすい
自首すべきかの判断,自首する場合の方法は,弁護士に委ねることが適切

②捜索を受けたとき

商標法違反の場合,被疑者に対する捜査は捜索から始まることが非常に多く見られます。商標法違反の証拠となる商品が保管されている可能性が高いため,家宅や事業所の捜索を行い,商品の差押えを行うことが優先されやすいのです。
そして,捜索を受けて商品の差し押さえがなされた後,取り調べなどの本格的な捜査が始まることとなります。

そのため,商標法違反の事件で捜索を受けた際には,その後の捜査に対する備えを検討したり,刑事処分を少しでも軽減するための行動に着手したりすることが望ましいと言えます。これらの動きは,弁護士なしでは現実的に困難であるため,弁護士選びを行うべきタイミングということができるでしょう。

ポイント
商標法違反に対する捜査は,捜索から始まるケースが多い
捜索後の捜査に対応するため,弁護士選びを行うべきタイミング

③呼び出しを受けたとき

商標法違反の事件で取り調べを行う場合には,逮捕せず呼び出す方法が用いられるケースも多数見られます。特に,あらかじめ捜索差押えをしている,証拠となる商品が確保できているなど,今後に証拠隠滅される可能性が低いと言える状況であれば,逮捕せず呼び出す形になりやすいでしょう。
そのため,呼び出しを受けたときには,その後に行われる取調べへの対応を事前に検討しておく必要があります。商標法違反の場合には,対象となる行為や証拠が一つしかないというケースはほとんどないため,複数の出来事について,それぞれどのような対応をすべきかを想定することが非常に重要です。

しかしながら,出頭後の取り調べに対してどのように対応するのが適切かを自分の力で整理するのは容易でありません。取り調べを受けた経験のある人でなければ,取り調べがどのように行われるかを想像することも困難でしょう。
そこで,呼び出しを受けて取り調べの予定が明らかになったタイミングで,弁護士を選ぶことが有力な選択肢になります。適切な弁護士選びができれば,出頭時の対応が万全になるほか,その後の弁護活動も充実したものになるでしょう。

ポイント
逮捕せず取調べ目的で呼び出す方法が用いられる場合も多数ある
取り調べに備えるためには,取調べに精通した弁護士選びが適切

④逮捕されたとき

商標法違反事件は,逮捕をされる可能性も十分に考えられる事件類型です。特に,違反行為の数や期間が際立っている場合,違反行為による損害が非常に大きい場合,組織的,計画的な事件である場合など,捜査に慎重を期す必要が大きい事情があるケースでは,被疑者を逮捕勾留の上で捜査することが多くなります。

そのため,逮捕された商標法違反事件では,その後に捜査される内容が多くなりやすく,対応を要するポイントも多くなるのが通常です。そのすべてに適切な判断をすることは非常に難しく,弁護士の助言やサポートを受けながら対応することが望ましいでしょう。
逮捕されてしまったケースでは,家族をはじめとする周囲の人ができるだけ早期に弁護士選びを進め,その後の不利益を最小限に抑えることを目指すのが適切です。

ポイント
逮捕された場合は,特に対応を要する点が多くなりやすい
適切な対応を判断するため,弁護士選びが望ましいタイミング

商標法違反事件の弁護士を選ぶ基準

①商標法違反の弁護に精通しているか

商標法違反の事件は,弁護活動に他の事件類型とは異なる特徴が複数あります。刑事事件の代表的な弁護活動である示談一つを取っても,示談の相手は誰なのか,誰との間であれば示談が可能か,誰と示談をすると処分結果にどのような影響があるか,といった点を検討しなければなりませんが,これは商標法違反の特徴と言えるでしょう。

商標法違反の弁護士を選ぶ際には,商標法違反事件の弁護活動について十分な知識を持っているか,事件類型の特色に精通しているか,といった点を重要な判断基準とすることをお勧めします。

②詳細な聴き取りを円滑に行ってくれるか

商標法違反とされる具体的な事件としては,商標権を侵害した商品を入手し,販売したというケースが非常に多く見られますが,商品の入手方法,販売方法は人により様々です。また,商品の数や取引の回数,得られた利益の大きさなど,事件の全体像を把握しなければ,適切な見通しを持つことも困難です。
そのため,商標法違反事件の弁護活動を行う場合には,事件の詳細な内容をはじめ,経緯などの周辺事情を適切に聴き取ることが不可欠です。

弁護士選びに際しては,弁護士が事件の把握に必要な情報を,円滑に聴き取ってくれるかという点を基準の一つとするのが適切でしょう。聴き取りの円滑さは,商標法違反の事件への経験値を推し量る判断材料にもなります。

③具体的な対応方針を説明してくれるか

商標法違反の場合,弁護活動の方針にいくつかの選択肢があるケースも少なくありません。特に,余罪を含めた複数の事件が問題になりやすいことから,一つの事件だけでなく複数の事件それぞれについて方針を検討する必要があり,それだけに選択肢も多くなりやすい傾向にあります。
もっとも,どの選択肢が客観的に正しいかは不明確であって,結果が出た後でも正しい選択だったかは分からない,というケースは多く見られます。その中で,どのような理由でどのような方針を取っていくのか,という判断が,商標法違反の事件を弁護する弁護士の大きな役割と言えるでしょう。

そのため,商標法違反の弁護士選びに際しては,弁護士が今後の対応方針を詳細に判断してくれるか,その方針を取る理由やメリットは何か,といった点について,十分な説明を受けるようにしましょう。その説明内容を踏まえて,弁護士選びを行うことが有力です。

④弁護士費用の見通しは明確か

商標法違反の事件は,逮捕などの身柄拘束を受けるかどうか,捜査にどの程度の期間を要するか,どのような動きを要するか,といった点を事前に判断することが容易でありません。そして,期間が長く,必要な活動が多くなれば,事前の想定よりも弁護士費用が高くなる可能性はあり得ます。

もっとも,想定される弁護士費用が分からない,という状態で弁護士選びをするわけにはいきません。そのため,弁護士費用については,どのような場合にどの程度の費用となりやすいか,といった形で見通しを把握できることが望ましいでしょう。
裏を返せば,依頼者目線を踏まえてできる限り費用の見通しを明確にしてくれるかどうか,という点は,弁護士選びの重要な判断基準の一つと言えます。

商標法違反事件で弁護士を選ぶ必要

①適切な取り調べ対応のため

刑事事件の捜査では取調べが不可欠です。特に,被疑者への取調べは捜査の中核であって,被疑者からどのような話が引き出せるかによってその後の捜査が決定づけられる事件も少なくありません。

逆に,被疑者の立場にある場合,取調べにどのような対応を取るのが最も有益であるのかを把握していることは非常に重要です。自分が何を話すか,どのように話すかによって,その後の捜査や処分が決定づけられる可能性もあるため,取調べ対応の方法・内容は十分に検討する必要があるでしょう。
特に,商標法違反の場合には,犯罪の故意の有無が問題になるケース,余罪の捜査が生じるケースなど,取り調べへの対応が結果を左右する局面は類型的に多くなりやすいところです。

商標法違反事件に対応する場合には,取調べ対応への重要性を踏まえ,弁護士から適切なサポートを受けるようにしましょう。

②早期釈放のため

商標法違反の事件で逮捕された場合,早期釈放を目指すことは有力な選択肢です。短い拘束期間のみで釈放されることができれば,日常生活への悪影響は最小限に抑えることが可能になります。

もっとも,その具体的な動きは,弁護士以外には困難なものです。接見で必要な話し合いを行ったり,ご家族と連絡を取り合ったり,捜査機関や裁判所に必要なアクションを尽くしたりと,早期釈放に向けて弁護士でしかできないことは多岐に渡ります。
また,商標法違反の事件では,そもそも早期釈放が困難な事件も少なくないため,弁護士に判断を仰ぐなどして,釈放に関する見通しを正しく持つことも不可欠です。

③刑事処分の軽減のため

商標法違反の場合,認め事件であれば,刑事処分を少しでも軽減するための試みを行うことが適切です。漫然と対応していては刑罰を防ぐことが難しい事件類型であり,場合によっては重大な刑罰の対象ともなりかねないため,処分の軽減に向けた弁護活動を依頼することは非常に重要となるでしょう。

この点,刑事処分の軽減のため,具体的にどのような試みを行うのかは,個別の事件を踏まえた専門的な判断が必要となります。また,弁護活動によってどのような刑事処分が見込まれるのか,という見通しを持つことも不可欠です。
これらの判断や見通しは,弁護士に委ねることが最も適切であるため,処分軽減を目指す場合には弁護士選びが必要と言えます。

④家族や周囲との連携のため

身柄事件の場合,逮捕勾留されたご本人は,自分で外部と連絡を取ることができません。電話を携帯することも認められないため,連絡を取るための手段は以下のような方法に限られます。

逮捕勾留中に外部と連絡を取る手段

1.手紙の送受
→数日~1週間ほどのタイムラグが避けられない

2.(一般)面会
→時間制限が厳しい。接見禁止の場合は面会自体ができない

3.弁護士の接見
→時間的制限なくコミュニケーションが可能

手紙の送受は現実的でなく,面会の時間制限の中で必要な連絡をすべて取ることも難しいため,ご本人と周囲との連絡には弁護士の接見を活用することが不可欠になりやすいでしょう。
身柄事件で必要な連絡を取り合うためには,弁護士への依頼が適切です。

商標法違反事件における弁護士選びの準備

①事件内容や経緯をまとめる

弁護士から適切な案内を受けるためには,弁護士に事件の内容を正確に把握してもらうことが不可欠です。弁護士から十分な案内が受けられないと,弁護士選びも適切にはできないため,弁護士に正しい情報を伝えることは弁護士選びの第一歩と言えるでしょう。

この点,商標法違反の事件では,具体的にどのような行動を取ったのか,ということに加え,その行動を取った際にはどのような認識だったか,という内心の問題も重要になります。そして,行動した際の内心(特に,商標法違反の認識があったかどうか)を裏付けるための事情として,事前の経緯も大きな問題になりやすいところです。
そのため,弁護士選びに際しては,事件の内容や経緯をできる限りまとめ,どの時点でどのような認識であったか,という点が明らかにできるようにしておくことをお勧めします。

②証拠になる物をまとめる

事件の証拠となり得る物が手元にある場合,弁護士への相談に際して弁護士に示せるよう準備しておくことが有益です。

商標法違反の事件は,主に企業ロゴなどを不正に用いた商品の入手・販売が問題になりやすいところですが,実際にどのような商品が問題となっているのか,という点を把握するには,関連する証拠を共有することが最も端的であり確実です。
想定される証拠としては,商品の現物のほか,その商品を入手した時の情報商品を販売した時の情報(インターネット上に掲載した情報など)が挙げられるでしょう。

③弁護士に求めたいことをまとめる

弁護士を選ぶ際,何のために,何を目指して弁護士に依頼するのか,という点を明確にしておくことが必要です。相談の目的に関して弁護士とズレが生じると,弁護士からの案内も目的から外れたものになってしまい,結果として弁護士選びが円滑にできないためです。

もちろん,弁護士側も法律相談の目的を想像することはできるため,理解が大きくズレることは多くありませんが,その目的が自分にとってどれだけ重要なものか,という詳細なニュアンスの面は,どうしても弁護士側の想像では補いきれないものです。
弁護士選びを実のあるものにするためにも,弁護士選びの目的は明確に表現できるようにしましょう。

商標法違反事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①弁護士との相性の重要性

商標法違反の事件では,依頼する弁護士との相性は非常に重要なポイントとなることが多く,この点を軽視しないよう注意することが適切です。

商標法違反の場合,事件の性質上,どのような動きを取ればどのような成果が得られるか(刑事処分がどの程度軽減するか等)という点を明確に見通すことが困難です。そもそも,活動方針が最も有益な結果につながるかどうか,つまり方針の判断が適切なのかどうかという点も,分からないまま進めざるを得ないことが多いでしょう。

そうすると,最善の結果が得られなかった場合に,どうしても「事前の判断や方針が誤っていたのではないか」との発想になりがちですが,そのような思いになる原因の多くが,弁護士への不信感です。
弁護士への信頼が確かであれば,結果が伴わなかった場合にやむを得ないと考えやすいですが,弁護士と相性が悪く,今一つ信頼できないと感じている場合には,弁護士の判断に原因があるのではないか,とのトラブルに発展しやすい傾向にあります。

このようなトラブルに至っても,依頼者自身が得をする可能性はないため,事前に弁護士との相性を重要なポイントと理解し,弁護士に全幅の信頼を寄せられるか慎重に検討することが適切でしょう。

②示談を試みる場合の経済的負担

商標法違反のケースでは,商品の購入者または商標権者(多くの場合は企業)との間で示談を試みることが有力な活動方針になります。示談が成立した場合には,刑事処分が多かれ少なかれ軽減することが見込まれるでしょう。

そのため,弁護士に依頼する際には,示談を試みる可能性を想定の上,示談のための経済的負担を背負うことができるか,という点に注意することが望ましいでしょう。
また,示談のためにどの程度の経済的負担が可能か,という水準をあらかじめ見積もっておけば,思わぬ金銭負担に悩むことも事前に回避できます。

③法律相談の時間制限

弁護士への法律相談は,30分以内,又は1時間以内といった形で時間を区切って行われるのが通常です。その時間内で,必要な情報を伝え,弁護士から案内を受け,弁護士選びの検討を行う必要があります。
もっとも,その時間は決して長くはありません。無意識に相談時間を浪費してしまうと,肝心の弁護士選びに必要な話が聞けないまま相談が終了してしまう可能性もあるでしょう。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士への法律相談に時間的な制限があることを踏まえ,弁護士選びの基準や聞きたいことなどを可能な限り整理して法律相談に臨むことをお勧めします。そのようなスタンスは,法律相談をより有益な内容とする結果にもつながるでしょう。

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器物損壊事件で自首をするべき場合やメリットデメリットなどを詳細解説

このページでは,器物損壊事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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器物損壊事件で自首をするべき場合

①現行犯で発覚している場合

自首をするべきケースの代表例は,自分が犯人と特定され,何もしなくても自分に対する捜査がなされやすい,という場合です。自首の最大のリスクは,「自首さえしなければ捜査を受けなかったのに,自ら自首したばかりに捜査を受けることになってしまった」という結果となることですが,自首をしなくても自分が犯人と特定されてしまう状況であれば,その最大のリスクがないということになるため,自首のメリットの方が大きいと考えやすくなります。

この点,器物損壊事件は,加害行為のあった直後,現行犯で事件が発覚することも少なくありません。そして,現行犯で発覚した場合には,直ちに警察の捜査が開始されることが見込まれやすいものです。しかも,証拠の多くは失われず残っており,犯人の特定に至る可能性は非常に高いと言ってよいでしょう。

そうすると,現行犯で発覚した器物損壊事件の場合,自首してもしなくても犯人が特定されやすいため,自首のリスクよりもメリットを優先すべき状況である,と考えるのが合理的です。このようなケースでは,積極的な自首の検討をお勧めします。

ポイント
自首のリスクは,自首が原因で捜査を受ける結果になること
現行犯で発覚した場合,自首せずとも犯人が特定されやすい

②被害者との間で解決したい場合

器物損壊事件は,被害者との解決が極めて重要です。被害者と適切な解決ができれば,それで直ちに刑事手続も解決に至る,と言っても過言ではありません。
もっとも,被害者と知人等の関係にある場合を除き,直接被害者に接触する手段はないのが通常です。そのため,被害者との解決を目指すには,捜査機関の力を借り,捜査機関に間に入ってもらうことが必要です。

この時,有力な手段が自首です。自首をした上で捜査を始めてもらい,捜査機関に被害者との解決希望の旨を伝えることで,捜査機関に間に入ってもらうことができます。
なお,実際の被害者とのやり取りは,自分で行うのでなく,弁護士を通じて行うことが求められます。そのため,弁護士への依頼とセットで動くのが良いでしょう。

ポイント
被害者と連絡を取るには,捜査機関に間に入ってもらう必要がある
弁護士への依頼とセットで進めるのが適切

③日常生活への支障を防ぎたい場合

刑事事件で捜査を受けると,様々な局面で日常生活に悪影響が生じる可能性が懸念されます。捜査協力に時間を割かれることのスケジュール面への影響はもちろんですが,それ以上に,捜査を受けたという事実が周囲に知られることの悪影響が非常に大きくなりがちです。
刑事事件の被疑者となることは,非常に不名誉であって周囲の信頼を損なう恐れがあるため,できる限り周囲に知られないことが望ましいでしょう。

この点,自首を行うことで,捜査機関に周囲へ知られないよう配慮した方法での捜査をしてもらうことが期待しやすくなります。捜査機関としても,円滑な協力が得られるならば,殊更に周囲に知られるような捜査手法を取る必要はない,との判断になりやすいところです。

ポイント
事件や捜査を周囲に知られると,日常生活への支障が懸念される
自首した場合,捜査方法を配慮してもらいやすくなる

④反省の意思を表明したい場合

刑事事件の処分軽減を図るためには,反省の意思をできるだけ明確に表明していくことが重要です。重大犯罪の場合,元々の刑事責任が大きすぎるため,反省が処分に与える影響には限りがありますが,比較的軽微と評価される器物損壊事件の場合,反省の意思を加味して処分に反映してもらえるケースが多くなる傾向が見られます。

この点,反省の意思を最も強く表明できる手段が自首です。自首は,自分から大きなリスクを負うため,強い反省の意思がないと実行できない動きだと理解されるのが通常です。「自首するくらいに反省を深めている」と認めてもらうことができれば,自首を理由に処分が大きく軽減されることも十分に考えられるでしょう。

ポイント
器物損壊事件では,深い反省の意思が刑事処分に反映され得る
自首は,反省の深さを最も強く行動に示せる手段

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

器物損壊事件の自首は弁護士に依頼すべきか

器物損壊事件の自首については,弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら進めることをお勧めします。弁護士への依頼によって,以下のようなメリットが見込まれるでしょう。

①器物損壊事件に該当するかが分かる

器物損壊事件は,その意味が抽象的であるため,事件の内容によっては器物損壊罪が成立するかどうか,という点の判断が難しいケースも少なくありません。犯罪行為となる「損壊」とは,「対象物の効用を害する一切の行為」と定義されますが,その意味を明確に理解し,個別の事件に当てはめて犯罪に当たるかを判断するのは容易ではないでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,高度に法的な判断を自分でする必要なく,器物損壊罪に該当するかどうかを弁護士に確認してもらうことができます。自首は,犯罪に当たる行為をした場合に行うべき行動であるため,犯罪に当たるかどうかの理解は非常に重要な前提となります。

②自首すべき状況であるかが分かる

自首は,自分から犯罪事実を申告して,自分に対する捜査を求めるという意思表明であるため,その必要がない場合に行うべきかは慎重な判断をしたいところです。そのため,自首の必要があるかどうか,自首すべき状況なのかは,重要なポイントになりますが,個別事件についてその判断を行うことは当事者には極めて難しいでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,自首をしない場合の不利益と自首をした場合の効果を比較しながら,自首すべき状況であるかどうかについて適切なアドバイスを受けることができるでしょう。自分が自首をするメリットデメリットが明確に分かれば,自首の判断も後悔なくすることが可能です。

③取り調べの対応方法が分かる

自首後には,警察での取り調べが見込まれます。そして,取り調べに対してどのような対応をするかによって,その後の捜査や自分への取り扱いが変わることになるでしょう。そのため,自首を行う際には,自首後の取り調べに対する準備も欠かすことができません。

この点,弁護士に依頼することで,自首後に行われる取調べの流れや内容の説明を受けることができ,取り調べの対応を適切に備えることができるでしょう。自首後に何が起きるかを想定しておくことができれば,適切に対処できる可能性が大きく上がるでしょう。

④弁護活動を速やかに行ってもらえる

自首を行った場合,その後に弁護活動をしてもらうことで,逮捕回避や刑事処罰の回避といった自首の目的をより実現に近づける可能性が高まります。その意味で,自首をするのであればその後に弁護活動を依頼することも検討する方が適切です。

この点,自首の段階から弁護士に依頼しておくことで,自首の後速やかに弁護活動を開始してもらうことが可能です。特に,身柄拘束された場合,釈放を求める弁護活動は少しでも速やかに進めるのが望ましいため,弁護士が付いているメリットが大きくなりやすいでしょう。

器物損壊事件で自首をする場合の注意点

①捜査の出発点であること

自首は,捜査機関にとってはあくまで捜査を開始するきっかけにとどまります。自首を踏まえて捜査を始めるという意味では,刑事手続のスタートラインと言ってもよいでしょう。

自首が大きな決断であって,自首をする本人にとって負担ある手続であることは間違いありません。しかしながら,刑事手続全体を見ると,その後の方がはるかに長いため,自首後にも気を抜かず,適切な対応を続けられるよう注意しましょう。
自首後に適切な対応を続けることが,決断した自首の効果を最大限に高める方法でもあります。

②示談の試みとセットで行うこと

器物損壊事件の場合,自首を試みるのであれば,自首後に被害者との示談を試みることもセットで進めるのが適切です。逆に,自首をしておきながら被害者との示談は全く試みない,というのは合理的でないため,あらかじめ注意したいところです。

親告罪である器物損壊罪は,示談によって告訴がなくなれば確実に不起訴となります。自首という手段で深い反省の意思を示し,それが被害者に伝わっているのであれば,その状況を活かして示談を目指さない手はないでしょう。自首に込められた反省の意思が被害者にも理解してもらえれば,示談成立の可能性は飛躍的に上がるはずです。

③捜査を誘発する結果になり得ること

自首のリスクとして,いわゆる「やぶ蛇」となる可能性があります。特に,被害者が事件に気付いていなかったなど,自首以外に捜査の始まるきっかけがなかった場合,自首が捜査を誘発する結果になる恐れは否定できません。

このリスクは,自首に必ず付きまとうものであり,リスクの高さを推測することはできても確実に回避することは困難です。自首は「捜査されない可能性を自ら捨てる」動きであることを念頭に,一種の割り切りをしておくことも重要です。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

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【器物損壊事件での呼び出し】適切な対応方法は?任意なら応じる義務はない?弁護士への依頼は必要?弁護士解説

このページでは,器物損壊事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
器物損壊事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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器物損壊事件で呼び出された場合の対応法

①初めて呼び出しを受けた場合

初めて呼び出しを受けたときの基本的な対応方針としては,まず連絡を無視しない,ということが非常に重要です。

器物損壊事件で呼び出しの連絡が来た,という場合,捜査機関の方針としては,呼び出しに応答してくれるのであれば,比較的穏やかな手続で進めるつもりである可能性が高いでしょう。そのため,捜査機関の期待通りに応答し,連絡が円滑に取れる人物だと分かってもらえれば,逮捕などの大きな不利益は回避しやすくなります。

一方,呼び出しを無視してしまうと,捜査機関から見て呼び出しに応じてくれる人なのかが分かりません。呼び出しに応じてくれれば穏やかな手続でよかったのに,呼び出しを無視したばかりに逮捕などの強制的な手続を取らざるを得ない,と判断されてしまうと,その不利益は極めて大きくなります。

そのため,まずは呼び出しに対して無視せず応じる,留守番電話に担当者名や用件が録音されていれば折り返しなどの対応をするなど,呼び出しへの応答がしてくれる人物だと分かってもらうためのリアクションを取るようにしましょう。

ポイント
無視しないことが最重要
呼び出しの連絡に応じていれば,穏やかな手続で進むことが通常

②2回目以降の呼び出しを受けた場合

1回目の呼び出しで話を聞かれるなどした後,2回目以降に呼び出しが行われるのは,供述調書などの書面を作成する目的であることが一般的です。1回目の呼び出しで供述調書を作成するケースもありますが,1回目に供述調書が作成されなかったケースでは,2回目以降の呼び出しは調書作成の目的であると考えて基本的に間違いないでしょう。

供述調書の作成に当たっては,作成時に求められる署名押印の意味を把握しておくことが重要です。
供述調書への署名押印は,調書の内容が自分の発言と一致することのお墨付きという意味合いのものです。調書の作成者は捜査担当者であり,自分の発言を他人が文字起こししているため,その文字起こしに誤りがないことを署名押印という方法で明らかにしているのです。

そのため,署名押印を求められた際には,内容に間違いがなければ応じる,という方針が合理的です。内容に一部誤りがあれば,訂正を求めることができるため,誤りのない供述調書にしてもらいましょう。

ポイント
供述調書の作成目的であることが一般的
署名押印は,内容に間違いがないことのお墨付きの意味

③事件の記憶がない場合

器物損壊事件の場合,事件当時の記憶がなく,自分が加害行為をしてしまったかどうか分からない,というケースも散見されます。代表例が,深酒で泥酔状態になってしまった後,路上や店舗などで加害行為をした,と言われているケースです。

この点,事件の記憶がない場合には,記憶がないことを前提とはしつつ,疑われている加害行為を認めるか認めないか,という点をできるだけ早期にはっきりさせることをお勧めします。特に,自分がしたことで間違いないであろうという場合,「覚えていない」とだけ答えてしまうと,「自分がしたとは認めていない」という意味で解釈されることは踏まえておきたいところです。

認めるかどうかの判断材料としては,周囲の人や捜査担当者から当時の話を聞き,その内容を総合することが有効です。泥酔状態で記憶がない場合には,酔いが覚めた後に冷静な対応を尽くすことで,不利益を最小限に抑える結果につながりやすいでしょう。

ポイント
認めるかどうかをできるだけ早くハッキリさせる
覚えていないとの回答は,認めないという意味で理解される

④否認事件の場合

疑われている犯罪行為をしていない,という否認事件の場合には,まずその争点を自分の中で明確に把握することが非常に重要です。

一口に否認事件と言っても,その具体的な内容は争点によって様々です。器物損壊事件では,自分が行ったものではない(=犯人性の否認),わざとおこなったことではない(=故意の否認)などが代表的な争点ですが,いずれが争点であるかによって,適切な対応方法や注意すべき点が大きく異なります。犯人性が争点であるのに,「わざとやったわけではない」と述べるのは,むしろ不利益を招くでしょう。

また,争点を把握した後は,できればその争点について法的な判断を行うときの基準や根拠になるものを理解しておきたいところです。この点は,高度に法律的な問題となるため,弁護士への相談をお勧めします。

ポイント
争点を明確に把握する
争点の判断基準や根拠を理解する

器物損壊事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

器物損壊事件の場合,呼び出しに応じたことをきっかけに逮捕されるという流れは基本的に考えにくいでしょう。呼び出しに対してあまりに不合理な対応をしない限りは,逮捕しないとの判断をすることが通常です。
器物損壊事件で逮捕をするのであれば,呼び出しを行うのではなく,予告をしないまま突然自宅等に訪れ,逮捕状を示して逮捕(=通常逮捕)をすることが一般的と言えます。逃亡や証拠隠滅を防ぐ手段として,その方が優れているためです。

ただし,例外的に,呼び出し後に逮捕の判断に至る場合もあり得ます。一例としては,犯人でないと思っていた人を呼んだ(又は犯人がだれか分からない状態で呼んだ)後,呼び出した相手が犯人であると特定できるだけの新事情が発覚した場合が挙げられます。
この場合,事件の程度などから「犯人が特定できれば逮捕する」との捜査方針だったときには,呼び出した人物を犯人だと特定でき次第,逮捕に踏み切る可能性があり得ます。

ポイント
基本的には考えにくい
呼び出し後に犯人と特定された場合には例外的にあり得る

器物損壊事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①事件直後

器物損壊事件は,被害者や目撃者の面前で行われた場合,現行犯で問題になり,警察が関与する流れとなることが一般的です。そして,現行犯で問題になったケースでは,事件から間もないタイミングで呼び出しを受け,取り調べを受けることが見込まれやすいでしょう。

また,事件直後に,事件現場へ警察が駆け付けた際には,そのまま警察署への動向を求められる形になることも多く見られます。

②加害者を特定したとき

被害者などによる事件の把握が現行犯でなかった場合には,被害者が捜査機関に捜査を求め,捜査機関によって加害者の特定が試みられる,という流れになりやすいです。このようなケースでは,加害者として特定された段階で,警察が呼び出しを行うことが想定されるでしょう。

呼び出しのタイミングは,加害者として特定されてから間もない時期であることが一般的です。警察担当者のスケジュールに問題がない限り,期間を空けるメリットはないため,特定され次第の呼び出しとなるでしょう。
また,捜査開始から加害者特定までの期間は,ケースや証拠関係によって様々ですが,概ね1~6か月程度が目安になりやすい傾向が見られます。

③関係者から事情を聴取した後

複数の関係者や目撃者がいた場合,それらの人物から事情を聴取した後に呼び出されるケースもあり得ます。これは,特に被害者と加害者の言い分に相違が見られる場合,第三者の話を踏まえて再度呼び出す,という流れで行われやすい動きです。

呼び出しの時期は特定が困難ですが,必要な第三者からの聴取の後,それほど間を空けずに行われることが一般的です。

④被害弁償を促すとき

器物損壊事件は,被害者の財産に対して損害を与えるという内容です。そのため,事件の解決としては,被害者の経済的な損害が補填される,という結果になることが最も望ましいと言えるでしょう。
捜査機関としても,被害弁償による損害の補填を促したい,と考えることは少なくないため,その旨を加害者側に伝える目的で呼び出すケースがあり得ます。

このような呼び出しは,一通りの取調べが終わった後の終盤の時期になされることが多いでしょう。捜査を尽くした段階で,「被害弁償ができれば,互いにとってより望ましい結果に近づくであろう」と判断した場合に,加害者側へ助け舟を出す意味も込めて行われる傾向にあります。

器物損壊事件の呼び出しに応じたときの注意点

①被害者との解決を目指す重要性

器物損壊事件の場合,被害者との解決の有無が最終的な結果を決定的に左右します。被害者と適切な解決ができていれば,確実に不起訴処分となり,前科が付かない結果を獲得できるため,器物損壊事件では何よりも被害者との解決を目指すことが重要です。

器物損壊事件について呼び出しを受けた場合,目先の対応や警察に出頭した際の不安が先行しがちですが,被害者との解決の重要性と比較すれば比較的小さな悩み事にとどまると言ってよいでしょう。特に,心当たりのある事件について呼び出しを受けた際には,とにかく被害者との解決が目指せないか,弁護士に相談するなどして方法を検討することに注力することをお勧めします。

②反省の深さを示す努力の重要性

器物損壊事件は,比較的軽微な事件類型と理解されています。そのため,他の重大な事件類型よりも,不起訴処分にしてもらえるケースが多い傾向にもあります。

より重大な事件類型では,どれだけ反省の意思を表明してもそれだけで不起訴になることは考えにくいですが,器物損壊事件の場合,その内容によっては反省の深さが不起訴処分に直結するケースもあり得ます。そのため,呼び出しに応じた際,どれだけ反省の深さが示せるか,という点が,他の事件類型よりも重要度の高いポイントとなることに注意すべきです。

もちろん,どの事件類型でも反省の意思を示すことは重要なポイントですが,特に結論に結びつくケースが多いことを踏まえ,意識的に努めることが望ましいでしょう。

③警察の呼び出しと検察の呼び出しとの区別

呼び出しを受ける場合,警察からの呼び出しなのか検察からの呼び出しなのか,という点は適切に区別することをお勧めします。

警察は,事件の捜査を一通り行うと,検察庁に事件を送致します。そして,送致を受けた検察庁が,起訴するか不起訴するかの判断を行い,それにより事件の捜査が終了する,という流れを辿ります。
そのため,警察署からの呼び出しは比較的初期の段階,検察庁からの呼び出しは比較的終盤の段階である,との理解が可能です。それのみならず,場合によっては検察庁での呼び出し段階では起訴不起訴の処分が事実上決まっているケースも少なくありません。

処分の軽減を目指したい場合,検察庁の呼び出しに応じた後では時期遅れになってしまっている可能性があるため,十分に注意しましょう。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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【器物損壊事件の逮捕】逮捕をされるケースの特徴や逮捕回避のための具体的方法を弁護士が解説

このページでは,器物損壊事件の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

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器物損壊事件で逮捕される可能性

器物損壊事件は,決して逮捕の可能性が高い事件類型ではありません。比較的軽微な事件と理解されている上,損害の内容が器物(=財産)の損壊のみであることから,証拠隠滅や被害者の生命身体への危険が生じにくいためです。

もっとも,器物損壊事件であっても,事件の内容や状況によって逮捕が選択されるケースも十分に考えられるところです。具体的には,以下のような場合に逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

器物損壊事件で逮捕の可能性が高くなるケース

1.事件当時,現場でトラブルになっている

2.被害規模が大きい

3.態様が悪質である

4.同種事件が複数発生している

【1.事件当時,現場でトラブルになっている】

事件当時,加害者が現場で暴れているなど大きなトラブルになっている場合,被害の拡大や被害者の心身への危害が懸念されるため,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。

この場合,事件現場でのトラブル拡大を防止する必要性が高いため,その場で速やかに行うことのできる現行犯逮捕が選択されやすいでしょう。

【2.被害規模が大きい】

損害の規模が非常に大きく,器物損壊事件の中でも重大な部類と評価される事件では,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

特に,強い悪意がなければ被害を与えられないような物品を対象としている場合や,大きな経済的被害を生じさせようという意思が明らかな事件である場合は,被害規模の大きさと刑事責任の重さが直結しやすく,重大事件であることを踏まえた逮捕が選択されやすい傾向にあります。

【3.内容が悪質である】

加害行為の内容が特に悪質であると評価される場合,事件の重大性を踏まえて逮捕が選択される可能性は高くなりやすいです。

器物損壊事件の場合は,一般的に単独での突発的な事件が想定されているため,複数人での事件や組織的な事件,計画的な事件は,悪質と判断されやすいでしょう。また,加害行為のために入手した凶器を用いている,加害行為が執拗である(損壊するのにに必要な程度を超えている)など,行為の内容そのものに悪質性が見受けられるケースも,同様の恐れがあります。

【4.同種事件が複数発生している】

同種事件を複数行ってしまっており,いわゆる余罪が多数あるケースでは,余罪を含めた全容解明のため,証拠隠滅を防ぐ目的での逮捕がなされやすくなるでしょう。

この点は,複数の事件が同一人物によるものと考えられる場合に問題となりますが,同一人物の事件であるかどうかの判断は,時期や場所,犯行方法に共通性があるかどうかを重要な基準とすることが一般的です。

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

器物損壊事件で逮捕を避ける方法

①示談

器物損壊事件の場合,被害者との間で示談が成立し,被害者が告訴を取り消すとの判断に至れば,その後に逮捕される可能性がなくなります。そのため,逮捕を避ける方法として,示談の試みは非常に重要です。

また,器物損壊事件の場合,適切な内容で示談が成立すれば,逮捕が避けられるだけではなく,起訴も確実に避けることが可能です。起訴されなければ,前科が付かず事件が終了するため,最終的な結論としても最も望ましいと言ってよいでしょう。

②自首

器物損壊事件が捜査される前段階や,捜査が開始されていても自分が加害者であると特定されていない時期であれば,自首を行うことで逮捕を避ける方法も有力です。
一般的に,器物損壊事件の当事者間が連絡を取り合える関係であることは多くないため,示談の試みが現実的にできず,自首以外に検討の余地がないことも少なくはないでしょう。

自首した場合には,警察等の捜査機関にとって,加害者が自分の犯罪行為を認めて捜査して欲しいとの意思であることが明らかになります。そのため,捜査への妨害を防ぐための逮捕が必要ない,との判断をしてもらいやすくなるでしょう。

③呼び出しへの対応

器物損壊事件について,警察などから呼び出しを受けた場合には,できる限り捜査協力の姿勢を示し,逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを理解してもらうのも有力な方法です

呼び出しをすれば積極的な協力をしてくれる,と分かれば,逮捕をしてまで強制的に捜査協力をさせる必要はなく,逮捕まではしなくてよい,との判断を引き出しやすくなります。

器物損壊事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

器物損壊事件の逮捕に関して対応する場合は,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士への依頼によって,以下のような利点が期待できます。

①逮捕が懸念される状況であるか判断できる

器物損壊事件は,決して逮捕の可能性が高い事件類型というわけではありません。そのため,現実に逮捕の懸念が大きくないのであれば,逮捕を恐れるあまり動き方を誤ってしまう方が大きなデメリットを招く結果になる場合も多いところです。

この点,弁護士に依頼し,弁護士の専門的な判断を仰ぐことで,本件では逮捕が懸念される状況か,正確な判断が可能になります。逮捕が懸念される状況であれば,逮捕を避けるための方策を優先的に検討すべきですし,逆に逮捕の懸念がそれほどない状況だと分かれば,他の対応に時間を割くことが容易になるでしょう。
また,逮捕に関する見通しが分かることで,精神的な負担が軽減でき,大きな安心につながる効果も見込まれます。

②事件に応じた適切な対応方法が分かる

逮捕を避ける方法は,事件の内容や状況によって個別に異なります。そのため,事件や状況に合った対応を取ることが非常に重要なところです。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕を避けるために本件で必要な動きが分かり,方針の選択に悩む必要がなくなります。また,実際の動きも弁護士主導で行うことができるため,対応の負担も軽減されるでしょう。

③当事者間の解決を試みることができる

器物損壊事件では,当事者間での解決が逮捕回避にとって極めて重要なポイントになりやすいです。当事者間で解決できれば,その後に逮捕されることはないと言ってよいでしょう。

もっとも,当事者間での解決は,弁護士を窓口にしなければ試みられないのが通常です。当事者同士がやり取りするのではなく,加害者の代理をする弁護士が,被害者と連絡を取り合う必要があります。
また,解決内容をどうすべきか,という点についても,専門的な知識経験を持つ弁護士の見解を仰ぐことで,合理的な判断が容易になるでしょう。

器物損壊事件の逮捕に関する注意点

①現行犯逮捕の場合

器物損壊事件では,事件現場でトラブルやパニックが生じてしまっていると,その場を収める方法として現行犯逮捕が行われる場合もあります。そして,現行犯逮捕はその場で直ちに行われることになるため,事前に逮捕を防ぐ余地がなく,予防策を講じることが困難である点に注意をする必要があるでしょう。

②弁護士への依頼時期

弁護士への依頼を検討されている方から,適切な依頼のタイミングはいつか,というご質問をお受けすることは非常に多くあります。
この点,器物損壊事件で弁護士に依頼する時期は,早ければ早いほど望ましいと言えるでしょう。逆に,意図的に依頼の時期を遅らせるメリットはない,という点には注意することが望ましいです。

器物損壊事件では,告訴の有無が処分を決定づける材料になりますが,それはあくまで起訴不起訴が判断されるまでです。そのため,起訴された後に告訴がなくなっても,遡って不起訴にはならず,時機を逸してしまうことになります。

依頼先の弁護士を決めた際には,早期に依頼し,活動に着手してもらいましょう。

③記憶がない事件

器物損壊事件の場合,泥酔などの影響で事件の記憶がないケースも一定数見られます。飲酒してなければ行っていなかったであろう加害行為を,泥酔状態になった影響で無意識に行ってしまった,という場合がこれに当たります。

この際,認めるか否認するかは難しい問題になりやすいですが,周囲の話から起きた出来事が間違いないのであれば,基本的には認める方針が合理的でしょう。否認の方が逮捕リスクは高くなるため,記憶がない場合に否認するかどうかは慎重な判断が適切です。

また,「記憶がない」という発言だけにとどまってしまうのも控えるべきです。記憶がないとの返答は否認と理解されるため,認める方針を取りたい場合には不合理な動き方となってしまいます。

④逮捕後の考え方

器物損壊事件で逮捕が避けられなかった場合,逮捕後の考え方を正しく持っているかどうかによってその後の流れが大きく変わる可能性があります。具体的には,早期釈放の可能性が十分にあることを念頭に,早期釈放を目指す動きを取ることが非常に重要です。

逮捕後に身柄拘束が続くか,早期に釈放してもらえるかは,その後の生活を決定づける可能性もある重大な分岐点です。動き方ひとつで釈放されるかどうかが変わるケースも大いにあるため,逮捕後には早期釈放を目指せるかどうか,できるだけ早期に弁護士へ相談することをお勧めします。

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【器物損壊事件の不起訴処分】不起訴処分となるケースは?不起訴を目指す具体的方法は?器物損壊事件解決の必須事項

このページでは,器物損壊事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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器物損壊事件で不起訴を目指す方法

①告訴の取り消し

器物損壊罪は,「親告罪」と呼ばれる犯罪類型に当たります。親告罪とは,告訴がなければ公訴提起(起訴)ができない犯罪をいいます。裏を返せば,起訴されるのは告訴がある場合のみであるため,告訴がないか,出された告訴が取り消された場合には,確実に不起訴となることが見込まれます。

器物損壊事件で捜査が行われる場合,通常は被害者側の希望で捜査が開始されるため,告訴が出されている状態であることが一般的です。そのため,告訴がない状態とするためには,当事者間での解決を目指し,被害者から告訴の取り消しを行ってもらうことが最も端的な手段になるでしょう。

被害者と加害者との間で示談が成立する場合には,示談内容に告訴の取り消しを含めることで,当事者間での解決と刑事事件の解決を同時に行う運用が一般的です。

ポイント
器物損壊罪は,告訴がない場合確実に不起訴となる
示談によって告訴の取り消しを目指す

②被害弁償

器物損壊事件は,被害者の財産を損壊してしまう事件類型であるため,被害者に金銭的な損害が生じていることが通常です。そして,刑事処分を考慮するに当たっては,被害者の損害が加害者によって補填されているか,という点が重要な判断材料の一つになります。なぜなら,経済的な損害を与えたことが刑事責任の根拠となっている以上,その損害が後から埋め合わせされれば,刑事責任の根拠が大きく失われるためです。

そのため,器物損壊事件で不起訴処分を目指す場合,被害者に生じてしまった経済的な損害を補填するため,被害弁償を試みる動きが有力でしょう。被害者の損害の全てを補填することができれば,刑事処分の必要性は大きく減少することが期待できます。

なお,被害弁償は被害者との示談の内容として行われることが多く,同時に告訴の取り消しがなされれば最も有益ではあります。被害弁償を行う以上は,告訴の取り消しを目指したいところですが,告訴の取り消しには至らなくても,被害弁償を行うこと自体の意味は小さくありません。

ポイント
経済的な損害が補填されている場合,刑事責任は大きく減少する
被害弁償と同時に告訴の取り消しをしてもらえればベスト

③否認事件の場合

否認事件では,犯罪の立証ができないことを理由とした不起訴(嫌疑不十分又は嫌疑なし)を目指すことが有力です。

器物損壊事件の場合,否認事件として問題になりやすい争点としては,以下のような点が挙げられます。

器物損壊事件の否認事件における主な争点

犯人性
→自分が行った行為ではない,という内容で,誰が犯人であるかが争点になります。主に,複数人が関わるトラブルがきっかけになった場合など,器物損壊の被害が起きたことは間違いないものの誰が行ったか分からない,というケースで問題になりやすいでしょう。

故意
わざと行ったのか,過失で起きてしまったことなのか,という争点です。内心の問題は,客観的な事情から判断することになるため,器物損壊の具体的な内容,前後の経緯などから,「故意に行ったのでなければ説明が付かない」と言えるかどうかが判断の対象になるでしょう。

器物損壊事件で不起訴になる可能性

器物損壊事件は,不起訴になる可能性が十分に考えられる事件類型です。
器物損壊罪は親告罪とされていますが,それは類型的に比較的軽微であるため,起訴するかどうかの判断は被害者の意思を尊重して行ってよい,という趣旨によるものです。つまり,法律が器物損壊罪を比較的軽微な類型と評価していることになります。
事件類型が比較的軽微である以上,不起訴になる可能性も類型的に高い傾向にあると言えるでしょう。

この点,特に不起訴の可能性が高くなる事情としては,以下のような点が挙げられます。

器物損壊事件で不起訴の可能性が高くなる場合

1.被害者が起訴を望んでいない

2.被害が小さい

3.金銭賠償をしている

4.経緯に酌むべき事情がある

【1.被害者が起訴を望んでいない】

器物損壊事件は,起訴するかどうかの判断に際して被害者の心情を考慮することの多い事件類型です。そのため,被害者が起訴を望んでいないと言える場合には,不起訴の可能性が高くなります。

なお,被害者が起訴を望んでいない,という事実が告訴の取り消し(又は告訴しない)という形で表明されている場合,確実に不起訴となります。起訴を望まない意向が最も強い形で示されているケースと言ってよいでしょう。

【2.被害が小さい】

被害規模が著しく小さい場合,事件の程度を踏まえて不起訴処分とされる可能性が高くなります。器物損壊事件は,もともと軽微な事件と評価されやすいため,その中でも特に軽微な場合には不起訴処分に直結する可能性があり得るでしょう。

被害の大きさは,基本的には被害金額の大きさを基準に判断することになります。その他,損壊の程度,損壊行為の内容などが判断材料になるでしょう。

【3.金銭賠償をしている】

加害者が被害者に金銭賠償をしている場合,その点を踏まえて不起訴処分とされる可能性が高くなります。
器物損壊事件は,被害者の財産に損害を与えたことが刑罰の主な理由とされており,その損害が金銭賠償によって回復されていれば,刑罰を科す必要が減少するためです。

なお,金銭賠償を行う場合には,当事者間でのやり取りを避け,弁護士に依頼して弁護士を窓口にすることをお勧めします。

【4.経緯に酌むべき事情がある】

事件の経緯に酌むべき事情があり,器物損壊事件を起こしてしまったことに同情すべき点がある場合,不起訴処分の可能性が高くなるでしょう。一例としては,被害者側から理不尽な言動を受け,感情を逆撫でされた,といった場合が考えられます。

もっとも,経緯に酌むべき事情があるからと言って必ず不起訴が近づくわけではありません。経緯と器物損壊事件の内容を比較して,加害者に同情すべき事情があるかどうかを判断することになるでしょう。

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

器物損壊事件で不起訴を目指す場合の注意点

①被害者と接触する方法

器物損壊事件で不起訴を目指すには,被害者との間で解決することが最も効果の大きい手段です。適切な解決ができれば確実に不起訴となるため,被害者との接触を図ることは非常に重要な問題となります。

この点,被害者と接触するには,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にして行う必要がある点に注意が必要です。被疑者の連絡先は,警察等の捜査機関を通じて聞き出す必要がありますが,捜査機関は,弁護士以外に被害者の連絡先を伝えることは拒否する運用のため,弁護士の存在が不可欠となります。

また,その後の示談交渉も弁護士を通じて行うことが必要となるため,被害者との接触は弁護士に依頼して行う,ということを把握しておきましょう。

②経済的負担

不起訴処分を目指す場合,複数の経済的負担が生じ得ます。代表的なものは,弁護士費用と示談金の2点でしょう。

この点,不起訴処分を目指さない場合には,弁護士費用も示談金も生じない形で対応することは不可能ではありません。また,不起訴を目指さなかった結果,罰金刑の対象になったとしても,その罰金額は弁護士費用や示談金より小さくなることが通常です。
そのため,基本的に不起訴を目指す動きを取る方が経済的負担が大きくなる,という点には注意しておくことをお勧めします。

不起訴処分を獲得し前科が付かない結果となることは,金銭には代えられない利益ではあるため,金銭面を優先するか,不起訴処分を優先するか,という判断になるということもできるでしょう。

③目指す時期

不起訴処分を目指す場合,その時期は早ければ早い方が有益です。

まず,不起訴を目指すことができるのは,起訴される前までです。不起訴を目指したいと思っても,その時点で既に起訴されてしまっていれば,不起訴になる可能性はなくなります。
また,不起訴を目指す手段としては,被害者との示談が最も有力ですが,示談成立のためには被害者が示談に応じる意向でなければなりません。そして,被害者が示談に応じる意向となるかどうかは,専ら感情的な判断にもなり得るため,被害者の感情面に配慮する意味で,できるだけ早くお詫びの意思を表明していくことが重要になるでしょう。

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