借金の返済が難しくなると、「このまま返さずにいれば踏み倒せるのではないか」「何年か返済せずにいれば時効になるのではないか」と考える方もいるでしょう。しかし、借金を返済せずに放置しても、簡単に踏み倒せるわけではありません

この記事では、借金の踏み倒しが現実的に可能なのかをはじめ、踏み倒した場合に生じるリスクや保証人・家族・勤務先への影響、借金の消滅時効が成立する条件について解説します。また、返済が難しくなった場合に、任意整理・個人再生・自己破産によって借金問題を解決する方法も取り上げます。

返済を放置すると、遅延損害金によって借金が増えるだけでなく、裁判や支払督促を経て、給与や預貯金を差し押さえられる事態に至ることもあります。時効による解決を考える場合にも、時効の完成を妨げる事情や援用の必要性を踏まえて判断することが必要です。

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借金踏み倒しは現実的に可能?

借金の返済をやめ、債権者からの連絡を無視し続けたとしても、借金をそのまま踏み倒すことは現実的な解決方法とはいえません。返済しないだけで債務がなくなることはなく、債権者は返済を求め続けることができます。返済を長期間放置するほど、借金問題が自然に解決するのではなく、債権者による回収手続が進むことを想定する必要があります。

債権者との連絡を絶つために住所を変えても、それだけで請求を免れられるわけではありません。債権回収のために必要な場合には、債権者が所定の手続によって債務者の住所を調査した上で、裁判などの手続を進めることがあります。そのため、「連絡を取らなければ債権者が諦める」と考えて返済を放置するのは適切ではありません

借金には消滅時効があるため、一定の条件を満たした場合には、時効を援用して返済義務を免れることができます。しかし、一定期間返済しなければ必ず借金を踏み倒せるわけではありません。時効が完成するまでの間に生じた事情によっては時効の完成が妨げられるほか、時効期間が経過した後にも援用が必要です。

したがって、借金を返済できなくなった場合には、「いつまで逃げれば踏み倒せるか」ではなく、現在の借金をどのような方法で処理できるかという観点から対応を決める必要があります。返済を放置する方法では結果を予測しにくいため、返済能力や債務の状況に応じた解決方法を検討することが現実的です。

借金を踏み倒せるかどうかは、債権者側の対応に依存せざるを得ません。踏み倒しを目指す動きは、非常に不安定な立場になることを避けられない点に十分注意しましょう。

借金を踏み倒すリスク

遅延損害金によって借金が増える

借金の返済期日を過ぎると、契約に基づいて遅延損害金が発生します。遅延損害金は滞納している期間に応じて増えていくため、返済せずに放置する期間が長くなるほど支払総額も大きくなります。返済を止めても、借金の負担まで止まるわけではありません。

遅延損害金の利率は契約によって異なるため、契約書や利用明細などを確認する必要があります。長期間滞納した後に返済を再開する場合には、元金だけでなく、それまでに発生した遅延損害金も問題となります。そのため、返済を先延ばしにするほど、その後の返済による解決が難しくなります

一括返済を求められる可能性がある

分割払いの借金では、毎月決められた金額を返済することを前提として、それぞれの返済期限まで支払を猶予されています。しかし、一定期間の滞納など契約で定められた事由が生じて期限の利益を失うと、まだ返済期限が来ていない分を含め、残額の一括返済を求められます

期限の利益を失う条件は契約によって異なるため、滞納した場合には契約内容や債権者から届いた書面を確認する必要があります。一括請求を受けても支払わずにいると、債権者は訴訟や支払督促などによって債権の回収を進めることができます。分割返済を前提としていた状態から、一括返済を前提とした回収へ移る点が大きな変化です

裁判や支払督促などの法的措置を取られる

督促や一括請求に応じなければ、債権者は訴訟を提起したり、簡易裁判所に支払督促を申し立てたりして、法的な手続による回収を図ることができます。裁判所から書類が届いたにもかかわらず対応しなければ、自分の主張や反論を裁判手続に反映できないまま、債権者の請求を認める判決等が出ることがあります

支払督促が送達された場合には、送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てることができます。異議を申し立てれば通常の訴訟手続へ移行しますが、異議を申し立てず、仮執行宣言付支払督促が確定するなどすれば、強制執行を受ける根拠になります。裁判所から届いた書類を通常の督促と同じように放置しないことが必要です

給料や預貯金などを差し押さえられる

債権者が確定判決や仮執行宣言付支払督促などの債務名義を取得すると、それを根拠として強制執行を申し立てることができます。対象となる財産には給与や預貯金などがあり、借金を任意に返済しなければ、財産から強制的に回収される段階まで進むことがあります

給与には法律上の差押禁止部分があるため、原則として給与全額が差し押さえられるわけではありません。一方、給与が銀行口座へ振り込まれた後は預金債権となるため、給与そのものに対する差押禁止の範囲が当然にそのまま適用されるわけではありません。給与と預貯金では差押えの扱いが異なることを理解しておく必要があります。

信用情報に事故情報が登録されてローンなどが利用しにくくなる

貸金業者やクレジットカード会社などへの返済を長期間滞納すると、延滞に関する情報が信用情報機関に登録されることがあります。一般に「ブラックリストに載る」と表現されることがありますが、実際にそのような名簿が作成されるのではなく、延滞などの事実が信用情報として登録されるという意味です

金融機関やカード会社は、新たな契約の審査に際して信用情報を確認します。そのため、延滞に関する情報が登録されていると、新たな借入れやクレジットカード、各種ローンなどの審査で不利な事情になります。ただし、審査は信用情報だけで決まるものではなく、情報が登録される期間も情報の種類や信用情報機関などによって異なります。

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借金を踏み倒すとどれだけ迷惑がかかるか

保証人や連帯保証人が返済を求められる

保証人は、借金をした本人が返済しない場合に、その債務を履行する責任を負う立場です。そのため、本人が返済を続けなければ、本人に代わって保証人が債権者から返済を求められることになります

ただし、通常の保証人と連帯保証人では、債権者から請求を受けたときに主張できる内容が異なります。通常の保証人は、債権者から請求された場合に、まず本人へ請求するよう求めることができます。また、本人に返済できる財産があり、強制執行が容易であることを証明すれば、まず本人の財産から回収するよう求めることもできます。これに対して、連帯保証人にはこれらの主張が認められていないため、債権者から返済を求められた場合に「先に本人から回収してほしい」という理由で請求を拒むことはできません。

保証人や連帯保証人が本人に代わって借金を返済すれば、それで本人の負担までなくなるわけではありません。保証人等は、本人に代わって支払った後、本人に対して求償することができます。したがって、借金を踏み倒そうとすると、保証人等に金銭的な負担を負わせた上で、本人と保証人等との間にも新たな支払関係が生じることになります

家族の生活に影響が及ぶことがある

本人が借金を返済しなくても、家族であるという理由だけで配偶者や親、子どもが本人の借金を返済する義務を負うわけではありません。家族自身が保証人になっているなど別の理由がない限り、本人に代わって返済する必要はなく、本人の借金だけを理由として家族自身の給与や預貯金が差し押さえられることもありません。

もっとも、法的な返済義務がないことと、家族の生活に影響がないことは別です。家計を共通にしている家庭では、本人の給与や預貯金が差押えの対象となれば、それまで生活費に充てていた収入や財産を十分に使えなくなることがあります。本人の借金によって家族の財産が直接回収されるのではなく、本人の収入や財産が減ることで家計に影響が及ぶという関係を区別して考える必要があります。

給与を差し押さえられると勤務先に知られる可能性がある

債権者が本人の給与を差し押さえる場合、裁判所から勤務先に債権差押命令が送達されます。勤務先は給与を支払う第三債務者として差押えの手続に関与するため、給与差押えまで進むと、勤務先に差押えの事実を知られずに手続を進めることはできません

ただし、給与差押えによって、勤務先のすべての人に借金の詳細まで知られるわけではありません。実際に情報を把握する範囲は勤務先の組織や事務処理の方法にもよりますが、少なくとも給与計算や差押えへの対応を担当する部署などは手続への対応が必要になります。借金を放置して給与差押えまで進むと、勤務先を強制執行の手続に関与させる結果になることも、周囲への影響として考えておく必要があります。

借金の踏み倒しで時効は成立する?

借金には消滅時効がある

借金にも消滅時効があります。現行民法では、債権は原則として、債権者が権利を行使できることを知った時から5年間、または権利を行使できる時から10年間行使しない場合に時効によって消滅します。一般的な金融機関や貸金業者からの借入れでは、返済期限が来れば債権者は返済を請求できることを把握しているため、基本的には5年の時効期間が問題になります

ただし、「最後に返済した日から5年」と一律に計算することはできません。返済期限がいつだったのか、分割払いであれば各返済分をどのように扱うのか、期限の利益を失って残額を一括請求できる状態になったのはいつかなどによって、時効の起算点を判断します。また、2020年4月1日の改正民法施行前に締結された契約などから生じた債権には、原則として改正前の時効制度が適用されます。改正前は、消費者金融や銀行などの事業者からの借入れは原則5年、個人間の貸し借りなどは原則10年とされていました。そのため、古い借金では契約時期や貸主なども確認して時効期間を判断する必要があります。

裁判を起こされると時効の完成が妨げられる

返済せずに時効期間が経過するのを待っていても、その途中で債権者から裁判を起こされれば、予定どおりに時効が完成するとは限りません。債権者が訴訟を提起すると、裁判が続いている間は時効の完成が猶予されます。つまり、時効期間の終わりが近づいていても、裁判中にそのまま時効が完成するわけではありません。

その後、確定判決などによって債権者の権利が確定すると、それまで進行していた時効は更新され、改めて時効期間が進行します。また、確定判決などによって確定した権利について、それまでの時効期間が10年より短かった場合には、確定後の時効期間は10年となります。そのため、単に債権者からの連絡を避けながら5年間待てば、確実に借金を時効にできるわけではありません。

債務を承認すると時効が更新される

時効が完成する前に、債務者自身が借金の存在を認める「債務の承認」をした場合にも時効は更新されます。債務を承認すると、それまで進んでいた時効期間をそのまま利用することはできず、承認した時から新たに時効が進行します

債務の承認は、「借金があることを認めます」と明言する場合だけではありません。借金の一部を返済する行為は、借金が存在することを前提とするため、原則として債務の承認に当たります。また、債権者に対して返済猶予や分割払いを求めた場合にも、その内容から借金の存在を認めたと判断されることがあります。時効の成立を検討する場合には、債権者へ連絡したり一部を返済したりする前に、現在の時効の状況を確認することが必要です

時効完成後に援用しなければならない

必要な時効期間が経過しても、それだけで債権者からの請求に対して時効の効果を主張できるわけではありません。消滅時効によって借金の支払を拒むためには、時効を援用する必要があります。援用とは、時効による利益を受ける意思を相手方に示すことです。

また、時効期間が経過した後に債権者から請求を受けた場合には、その後の対応にも注意が必要です。時効が完成していることを知らずに借金の一部を返済したり、支払うことを約束したりすると、その後に時効を援用することが信義則上認められない場合があります。したがって、長期間返済していない借金について請求を受けた場合には、支払や返済の約束をする前に時効が完成しているかを確認することが適切です。

知らず知らずのうちに債務の承認に当たる行為をしてしまっている場合は少なくありません。特に過去の返済状況などはしっかりと確認しておくことが望ましいでしょう。

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借金を踏み倒さずに解決する方法

任意整理で返済条件を見直す

任意整理は、裁判所を利用せず、債権者と個別に交渉して返済条件の変更について合意を目指す方法です。一般的には、将来利息のカットや返済期間の延長によって毎月の返済額を抑え、合意した条件で元金などを分割して返済することを目指します。現在の条件では返済が難しくても、返済条件を変更すれば継続的に支払えるだけの収入がある場合には、任意整理を検討できます。

任意整理では、交渉する債権者を選ぶことができます。たとえば、保証人が付いている借金を任意整理すると保証人への請求につながるため、その借金を対象から外し、ほかの借金だけを整理する方法を検討することがあります。ただし、将来利息のカットや分割回数などは債権者との合意によって決まり、希望した条件が当然に認められるわけではありません。借金額と毎月確保できる返済原資を確認し、現実に完済できる条件を検討する必要があります。

個人再生で借金の大幅な減額を目指す

個人再生は、裁判所に申し立て、法律で定められた基準に従って借金を減額した再生計画を作成し、その認可を受けて返済する手続です。自己破産とは異なり、免責によって返済義務をなくすのではなく、減額された借金を原則として3年間で分割返済することを目指します。そのため、借金を大幅に減らせば返済を続けられるだけの継続的な収入が見込める場合に検討できます。

実際の返済額は、借金総額に応じた最低弁済額だけで決まるとは限りません。保有財産の価値を基準とする清算価値保障原則なども考慮する必要があり、財産が多ければ返済額が増えることがあります。また、一定の条件を満たして住宅資金特別条項を利用すれば、住宅ローンを返済しながら自宅を維持し、その他の借金を整理できる場合があります。継続的な返済能力と保有財産、自宅を残す必要性などを踏まえて適否を判断します。

自己破産で借金の免責を目指す

自己破産は、借金を継続して返済できない場合に裁判所へ申し立て、免責許可を受けることで借金の支払義務を免れることを目指す手続です。単に毎月の返済が苦しいというだけでなく、収入や財産、借金総額などを踏まえて、借金を一般的かつ継続的に返済できない状態にあるかが判断の基礎となります。返済条件を変更したり借金を減額したりしても返済を続けることが難しい場合には、自己破産を検討することになります。

免責許可を受けても、税金や養育費、一定の損害賠償債務などの非免責債権については支払義務が残ります。また、一定以上の価値がある財産は破産手続で換価され、債権者への配当に充てられることがあります。そのため、借金を返済できるかだけでなく、残したい財産や免責されない債務の有無も確認して自己破産を選択する必要があります

返済が難しい場合は早めに弁護士に相談する

任意整理・個人再生・自己破産のどれが適しているかは、借金総額だけでは決まりません。収入や財産、毎月返済に充てられる金額、住宅を残したいか、保証人がいるかなどを確認し、今後も返済を続けられるのか、減額すれば返済できるのか、返済自体が困難なのかを整理して手続を選ぶ必要があります

弁護士が債務整理を受任して貸金業者等へ受任通知を送付すると、法律上の要件を満たす場合には、貸金業者等から本人への直接の取立てが規制されます。もっとも、受任通知を送付しただけで裁判や強制執行まで当然に止まるわけではありません。すでに滞納が続いている場合には法的手続の進行状況も確認しながら対応する必要があるため、約束どおりの返済を続けることが難しいと分かった段階で相談するのが適切です。

まとめ

借金を返済せずに放置しても、それだけで支払義務がなくなるわけではありません。滞納を続けると、遅延損害金によって支払額が増えるほか、一括請求、裁判や支払督促、給与や預貯金の差押えへと進むことがあります。保証人への請求や家計への負担、給与差押えによる勤務先への影響も考える必要があるため、借金の踏み倒しは現実的な解決方法とはいえません。

借金には消滅時効がありますが、一定期間が経過すれば必ず支払わなくてよくなるものでもありません。裁判を起こされたり、債務を承認したりすると時効に影響し、時効が完成した後には援用も必要です。長期間返済していない借金について請求を受けた場合には、一部返済や支払の約束をする前に、時効が成立しているかを確認することが必要です。

返済を続けることが難しい場合には、任意整理・個人再生・自己破産によって借金を整理する方法があります。どの方法が適しているかは、借金額だけでなく、収入や財産、毎月返済できる金額、保証人の有無などによって異なります。借金を放置して裁判や差押えに至る前に、弁護士へ相談し、現在の状況に合った解決方法を検討しましょう。

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