器物損壊罪は身近なトラブルから発生することも多く、「器物損壊で逮捕されるのか」「警察はどんな場合に動くのか」と不安に感じる方は少なくありません。実際には、被害の状況や被害者の意向によって逮捕や立件の有無が左右されます。本記事では、器物損壊罪の逮捕について、逮捕されるケースとされないケースの違い、さらに警察が動く場合の特徴について分かりやすく解説します。
この記事の監修者
藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
器物損壊罪の定義
器物損壊罪とは、他人の物を壊したり、汚したり、機能を低下させたりする行為を処罰する犯罪で、刑法261条に規定されています。
「壊す」というイメージが強いものの、実際には物の価値や使用目的を損なう行為全般が含まれます。たとえば、車に傷をつける、壁に落書きをする、他人の衣服を汚す、スマートフォンを投げ捨てて操作不能にする、といった行為が典型例です。
重要なのは、必ずしも完全に破壊する必要はないという点です。見た目が多少損なわれるだけでも、あるいは機能が一時的に失われるだけでも「損壊」に該当することがあります。裁判例でも、「使用価値の減少」があれば損壊と認められる傾向があります。
また、器物損壊罪は「他人の物」を対象とするため、自分の物を壊しても成立しません。ただし、「共有物」や「会社の備品」など、自分にも関係する物であっても、他人の権利が及ぶ物を損壊すれば本罪が成立する可能性がある点には注意が必要です。
具体的な犯罪の構成要件は、以下の通りです。
「他人の物」を「損壊し、又は傷害」すること
①「他人の物」
所有権などの物権の対象となる物である必要があります。自分の物や、所有者の同意を得て使用している物は該当しません。
②「損壊し、又は傷害」
その物の効用を害する一切の行為をいう、とされています。一般的には、物の形状や性質を変える行為が該当するでしょう。壊す以外にも、曲げる、折る、切断する、汚す、塗るなどが含まれます。
器物損壊罪に該当する行為の具体例としては、以下の者が挙げられます。
・車の窓ガラスを割ったり、タイヤをパンクさせたりする行為
・店の商品を壊したり、看板を壊したりする行為
・パソコンの重要なデータを消去する行為
・鍵穴を詰まらせる行為
・食品を不潔な環境に置く行為
器物損壊罪の刑罰
器物損壊罪の刑罰は、「3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料」と定められています。
拘禁刑は刑務所に収監して身柄を拘束する内容の刑罰、罰金は金銭の支払を指せる刑罰ですが、科料は1000円以上1万円未満の金銭を支払わせる刑罰であり、罰金が軽微になったもの、という性質の刑罰です。
そのため、器物損壊罪の刑罰は、3年以下の収監か30万円以下の金銭納付、という理解ができるでしょう。
刑事処分の判断では、損壊の程度(破壊の度合い・修理費・交換費)、犯行態様(故意の強さ・計画性・悪質性)、被害者への影響(業務への支障、精神的負担など)が重視されます。軽微な傷や落書きであっても、被害額が大きい場合や社会的影響が大きい場合には、身柄拘束に発展するケースもあります。
他方で、損壊が軽度で、早期に被害弁償や示談が成立している場合には、罰金刑や不起訴処分となることも少なくありません。特に初犯の場合は、反省状況や再犯防止策が十分に評価されることが多く、処分が軽減されることがあります。
いずれにしても、最終的な処分は個別事情を総合的に考慮して決定されるため、早期に適切な対応を取ることが重要です。
器物損壊罪の刑罰は、損壊行為の重大性や被害の大きさを主な基準とするのが一般的です。行為が重大で危険なものであるほど刑罰は重く、被害の規模や損害額が大きいほど刑罰も重くなります。
器物損壊罪と親告罪
器物損壊罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪に該当します(刑法264条)。そのため、警察が被害届を受理して捜査を開始したとしても、最終的には被害者が「処罰してほしい」と意思表示(告訴)をするかどうかが大きなポイントとなります。
つまり、加害者が特定されていても、被害者が告訴しなければ、原則として起訴されることはありません。もっとも、捜査段階では身柄拘束(逮捕・勾留)が行われる可能性があり、「告訴がない=逮捕されない」という仕組みではない点には注意が必要です。
親告罪であることは、実務上、示談の成立が処分判断に強く影響することを意味します。被害者が損害賠償を受け、事件を穏便に解決したいと判断すれば、告訴を取り下げるケースも多く、これが不起訴処分につながることがあります。
反対に、損害額が大きい場合や犯行態様が悪質な場合には、被害者が告訴を取り下げないこともあり、刑事手続が進む可能性が高まります。
器物損壊罪の場合、告訴の取り消しを獲得することが逮捕を防ぐ最も有力な手段の一つです。当事者間での解決は、器物損壊罪の根本的な解決とイコールであると理解してよいでしょう。
器物損壊罪で逮捕されるケース
器物損壊罪の逮捕に関する一般的な取り扱い
器物損壊事件は、必ずしも逮捕される可能性が高い事件類型ではありません。
特に、損害の規模があまりに大きくなければ、1件の器物損壊事件で直ちに逮捕されるケースは少数派ということもできるかと思います。
もっとも、以下のような場合には逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。
①反復継続して同種事件が行われている場合
多数の自動車のタイヤをパンクさせて回っているなど、同種事件を反復継続している事件は、計画性も高く今後の同種事件の発生も懸念されるため、その事件の重大性を踏まえて逮捕される可能性が高くなる傾向にあります。
②怨恨が動機となって起きた場合
怨恨など、人間関係の悪化が原因となって起きた器物損壊事件は、今後もトラブルの深刻化に伴う重大事件の発生が強く懸念されたり、被害者への働きかけによる証拠隠滅の恐れが想定されたりするため、逮捕の可能性が高くなりやすい類型です。
③被疑者の捜査協力がない場合
捜査を開始し、警察が被疑者を呼び出しているにもかかわらず、一向に応じる気配のない場合などが挙げられます。このような状況では、被疑者の逃亡や証拠隠滅の恐れが高いため、逮捕の可能性が高くなります。
器物損壊罪で逮捕リスクが上がるケース
器物損壊事件であっても,事件の内容や状況によって逮捕が選択されるケースも十分に考えられるところです。具体的には,以下のような場合に逮捕リスクが高くなりやすいでしょう。
器物損壊事件で逮捕リスクが高くなるケース
1.事件当時,現場でトラブルになっている
2.被害規模が大きい
3.態様が悪質である
4.同種事件が複数発生している
【1.事件当時,現場でトラブルになっている】
事件当時,加害者が現場で暴れているなど大きなトラブルになっている場合,被害の拡大や被害者の心身への危害が懸念されるため,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。
この場合,事件現場でのトラブル拡大を防止する必要性が高いため,その場で速やかに行うことのできる現行犯逮捕が選択されやすいでしょう。
【2.被害規模が大きい】
損害の規模が非常に大きく,器物損壊事件の中でも重大な部類と評価される事件では,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。
特に,強い悪意がなければ被害を与えられないような物品を対象としている場合や,大きな経済的被害を生じさせようという意思が明らかな事件である場合は,被害規模の大きさと刑事責任の重さが直結しやすく,重大事件であることを踏まえた逮捕が選択されやすい傾向にあります。
【3.内容が悪質である】
加害行為の内容が特に悪質であると評価される場合,事件の重大性を踏まえて逮捕が選択される可能性は高くなりやすいです。
器物損壊事件の場合は,一般的に単独での突発的な事件が想定されているため,複数人での事件や組織的な事件,計画的な事件は,悪質と判断されやすいでしょう。また,加害行為のために入手した凶器を用いている,加害行為が執拗である(損壊するのにに必要な程度を超えている)など,行為の内容そのものに悪質性が見受けられるケースも,同様の恐れがあります。
【4.同種事件が複数発生している】
同種事件を複数行ってしまっており,いわゆる余罪が多数あるケースでは,余罪を含めた全容解明のため,証拠隠滅を防ぐ目的での逮捕がなされやすくなるでしょう。
この点は,複数の事件が同一人物によるものと考えられる場合に問題となりますが,同一人物の事件であるかどうかの判断は,時期や場所,犯行方法に共通性があるかどうかを重要な基準とすることが一般的です。
器物損壊罪の逮捕手続
① 現行犯逮捕
器物損壊の現場を警察官や第三者が目撃した場合、**その場で身柄を確保される「現行犯逮捕」**が行われることがあります。
現行犯逮捕は、捜査機関による令状が不要であるため、事件性が明らかであれば迅速に逮捕される特徴があります。
典型例としては次のようなケースが挙げられます。
- 他人の車を傷つけているところを見つかった
- 店舗のガラスを割った直後に警察官が駆けつけた
- 路上で他人のスマートフォンを叩き壊した場面を通行人が目撃した
器物損壊は財産犯であっても、行為態様が悪質な場合や逃走・証拠隠滅のおそれがある場合は、現行犯逮捕が選択されやすい傾向があります。
② 後日逮捕
事件当時は発覚しなくても、防犯カメラ映像、目撃証言、SNSの投稿などから加害者が特定され、その後に逮捕されることもあります。これがいわゆる後日逮捕です。
後日逮捕が行われやすいのは、次のようなケースです。
- 防犯カメラの映像から犯人が特定できた
- 器物損壊の被害届の内容と、加害者の行動が一致した
- 現場に残された物的証拠(工具、指紋など)から関与が推認できる
ただし、後日逮捕は必ず行われるわけではなく、被害が軽微な場合や加害者が任意の呼び出しに応じる見込みが高い場合には、在宅で捜査が進むことも多いのが実務上の実情です。
器物損壊罪では、現行犯逮捕の回避が特に重要なポイントになりやすいです。現行犯逮捕されやすくなってしまうような対応を避けるため、刑事手続に精通した弁護士から適切な案内を受けることが有力です。
器物損壊罪で逮捕を避けるための方法
① 示談
器物損壊事件の場合,被害者との間で示談が成立し,被害者が告訴を取り消すとの判断に至れば,その後に逮捕される可能性がなくなります。そのため,逮捕を避ける方法として,示談の試みは非常に重要です。
また,器物損壊事件の場合,適切な内容で示談が成立すれば,逮捕が避けられるだけではなく,起訴も確実に避けることが可能です。起訴されなければ,前科が付かず事件が終了するため,最終的な結論としても最も望ましいと言ってよいでしょう。
② 自首
器物損壊事件が捜査される前段階や,捜査が開始されていても自分が加害者であると特定されていない時期であれば,自首を行うことで逮捕を避ける方法も有力です。
一般的に,器物損壊事件の当事者間が連絡を取り合える関係であることは多くないため,示談の試みが現実的にできず,自首以外に検討の余地がないことも少なくはないでしょう。
自首した場合には,警察等の捜査機関にとって,加害者が自分の犯罪行為を認めて捜査して欲しいとの意思であることが明らかになります。そのため,捜査への妨害を防ぐための逮捕が必要ない,との判断をしてもらいやすくなるでしょう。
③ 呼び出しへの対応
器物損壊事件について,警察などから呼び出しを受けた場合には,できる限り捜査協力の姿勢を示し,逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを理解してもらうのも有力な方法です。
呼び出しをすれば積極的な協力をしてくれる,と分かれば,逮捕をしてまで強制的に捜査協力をさせる必要はなく,逮捕まではしなくてよい,との判断を引き出しやすくなります。
④ 弁護士への相談
器物損壊の疑いをかけられている場合、早期に弁護士へ相談することは逮捕を防ぐうえで非常に重要です。器物損壊は財産犯であっても、被害額が大きい場合や犯行態様が悪質と判断される場合には、後日逮捕に発展する可能性があります。弁護士が介入することで、捜査機関との連絡調整や適切な対応方針を整えることができ、身柄拘束のリスクを下げる効果があります。
弁護士は、警察から呼び出しがあった際の対応方法や、任意出頭時に注意すべき点を具体的に助言します。また、依頼者の反省状況や弁済の意思を示す資料を適切に整理し、警察・検察に提出することで、**「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」**という事情を伝えやすくなります。
さらに、弁護士が早い段階で被害者との連絡窓口に入り、弁済や示談に向けた交渉を進めることは、逮捕回避に役立つ大きな要素です。実務上、示談が進んでいるケースでは、身柄拘束の必要性が低いと判断されることが多く、在宅捜査で事件が進む傾向があります。
器物損壊の疑いをかけられた段階で相談をしておくことで、不要な逮捕を避けるための準備が整い、事件全体の見通しも把握しやすくなる点が大きなメリットです。
器物損壊罪で現行犯逮捕されなかった場合、その後に適切な対応を継続できれば後日逮捕なく手続が終了することは決して珍しくありません。
器物損壊罪で呼び出しを受けたときは逮捕されるか
器物損壊事件の場合,呼び出しに応じたことをきっかけに逮捕されるという流れは基本的に考えにくいでしょう。呼び出しに対してあまりに不合理な対応をしない限りは,逮捕しないとの判断をすることが通常です。
器物損壊事件で逮捕をするのであれば,呼び出しを行うのではなく,予告をしないまま突然自宅等に訪れ,逮捕状を示して逮捕(=通常逮捕)をすることが一般的と言えます。逃亡や証拠隠滅を防ぐ手段として,その方が優れているためです。
ただし,例外的に,呼び出し後に逮捕の判断に至る場合もあり得ます。一例としては,犯人でないと思っていた人を呼んだ(又は犯人がだれか分からない状態で呼んだ)後,呼び出した相手が犯人であると特定できるだけの新事情が発覚した場合が挙げられます。
この場合,事件の程度などから「犯人が特定できれば逮捕する」との捜査方針だったときには,呼び出した人物を犯人だと特定でき次第,逮捕に踏み切る可能性があり得ます。
ポイント
呼び出し時の逮捕は基本的には考えにくい
呼び出し後に犯人と特定された場合は、その後の後日逮捕も例外的にあり得る
器物損壊罪の呼び出しで逮捕を避ける対処法
① 初めて呼び出しを受けた場合
初めて呼び出しを受けたときの基本的な対応方針としては,まず連絡を無視しない,ということが非常に重要です。
器物損壊事件で呼び出しの連絡が来た,という場合,捜査機関の方針としては,呼び出しに応答してくれるのであれば,比較的穏やかな手続で進めるつもりである可能性が高いでしょう。そのため,捜査機関の期待通りに応答し,連絡が円滑に取れる人物だと分かってもらえれば,逮捕などの大きな不利益は回避しやすくなります。
一方,呼び出しを無視してしまうと,捜査機関から見て呼び出しに応じてくれる人なのかが分かりません。呼び出しに応じてくれれば穏やかな手続でよかったのに,呼び出しを無視したばかりに逮捕などの強制的な手続を取らざるを得ない,と判断されてしまうと,その不利益は極めて大きくなります。
そのため,まずは呼び出しに対して無視せず応じる,留守番電話に担当者名や用件が録音されていれば折り返しなどの対応をするなど,呼び出しへの応答がしてくれる人物だと分かってもらうためのリアクションを取るようにしましょう。
ポイント
無視しないことが最重要
呼び出しの連絡に応じていれば,穏やかな手続で進むことが通常
② 2回目以降の呼び出しを受けた場合
1回目の呼び出しで話を聞かれるなどした後,2回目以降に呼び出しが行われるのは,供述調書などの書面を作成する目的であることが一般的です。1回目の呼び出しで供述調書を作成するケースもありますが,1回目に供述調書が作成されなかったケースでは,2回目以降の呼び出しは調書作成の目的であると考えて基本的に間違いないでしょう。
供述調書の作成に当たっては,作成時に求められる署名押印の意味を把握しておくことが重要です。
供述調書への署名押印は,調書の内容が自分の発言と一致することのお墨付きという意味合いのものです。調書の作成者は捜査担当者であり,自分の発言を他人が文字起こししているため,その文字起こしに誤りがないことを署名押印という方法で明らかにしているのです。
そのため,署名押印を求められた際には,内容に間違いがなければ応じる,という方針が合理的です。内容に一部誤りがあれば,訂正を求めることができるため,誤りのない供述調書にしてもらいましょう。
ポイント
供述調書の作成目的であることが一般的
署名押印は,内容に間違いがないことのお墨付きの意味
③ 事件の記憶がない場合
器物損壊事件の場合,事件当時の記憶がなく,自分が加害行為をしてしまったかどうか分からない,というケースも散見されます。代表例が,深酒で泥酔状態になってしまった後,路上や店舗などで加害行為をした,と言われているケースです。
この点,事件の記憶がない場合には,記憶がないことを前提とはしつつ,疑われている加害行為を認めるか認めないか,という点をできるだけ早期にはっきりさせることをお勧めします。特に,自分がしたことで間違いないであろうという場合,「覚えていない」とだけ答えてしまうと,「自分がしたとは認めていない」という意味で解釈されることは踏まえておきたいところです。
認めるかどうかの判断材料としては,周囲の人や捜査担当者から当時の話を聞き,その内容を総合することが有効です。泥酔状態で記憶がない場合には,酔いが覚めた後に冷静な対応を尽くすことで,不利益を最小限に抑える結果につながりやすいでしょう。
ポイント
認めるかどうかをできるだけ早くハッキリさせる
覚えていないとの回答は,認めないという意味で理解される
④ 否認事件の場合
疑われている犯罪行為をしていない,という否認事件の場合には,まずその争点を自分の中で明確に把握することが非常に重要です。
一口に否認事件と言っても,その具体的な内容は争点によって様々です。器物損壊事件では,自分が行ったものではない(=犯人性の否認),わざとおこなったことではない(=故意の否認)などが代表的な争点ですが,いずれが争点であるかによって,適切な対応方法や注意すべき点が大きく異なります。犯人性が争点であるのに,「わざとやったわけではない」と述べるのは,むしろ不利益を招くでしょう。
また,争点を把握した後は,できればその争点について法的な判断を行うときの基準や根拠になるものを理解しておきたいところです。この点は,高度に法律的な問題となるため,弁護士への相談をお勧めします。
ポイント
争点を明確に把握する
争点の判断基準や根拠を理解する
器物損壊罪で自首により逮捕を防ぐべき場合
①現行犯で発覚している場合
自首をするべきケースの代表例は,自分が犯人と特定され,何もしなくても自分に対する捜査がなされやすい,という場合です。自首の最大のリスクは,「自首さえしなければ捜査を受けなかったのに,自ら自首したばかりに捜査を受けることになってしまった」という結果となることですが,自首をしなくても自分が犯人と特定されてしまう状況であれば,その最大のリスクがないということになるため,自首のメリットの方が大きいと考えやすくなります。
この点,器物損壊事件は,加害行為のあった直後,現行犯で事件が発覚することも少なくありません。そして,現行犯で発覚した場合には,直ちに警察の捜査が開始されることが見込まれやすいものです。しかも,証拠の多くは失われず残っており,犯人の特定に至る可能性は非常に高いと言ってよいでしょう。
そうすると,現行犯で発覚した器物損壊事件の場合,自首してもしなくても犯人が特定されやすいため,自首のリスクよりもメリットを優先すべき状況である,と考えるのが合理的です。このようなケースでは,積極的な自首の検討をお勧めします。
ポイント
自首のリスクは,自首が原因で捜査を受ける結果になること
現行犯で発覚した場合,自首せずとも犯人が特定されやすい
②被害者との間で解決したい場合
器物損壊事件は,被害者との解決が極めて重要です。被害者と適切な解決ができれば,それで直ちに刑事手続も解決に至る,と言っても過言ではありません。
もっとも,被害者と知人等の関係にある場合を除き,直接被害者に接触する手段はないのが通常です。そのため,被害者との解決を目指すには,捜査機関の力を借り,捜査機関に間に入ってもらうことが必要です。
この時,有力な手段が自首です。自首をした上で捜査を始めてもらい,捜査機関に被害者との解決希望の旨を伝えることで,捜査機関に間に入ってもらうことができます。
なお,実際の被害者とのやり取りは,自分で行うのでなく,弁護士を通じて行うことが求められます。そのため,弁護士への依頼とセットで動くのが良いでしょう。
ポイント
被害者と連絡を取るには,捜査機関に間に入ってもらう必要がある
弁護士への依頼とセットで進めるのが適切
③日常生活への支障を防ぎたい場合
刑事事件で捜査を受けると,様々な局面で日常生活に悪影響が生じる可能性が懸念されます。捜査協力に時間を割かれることのスケジュール面への影響はもちろんですが,それ以上に,捜査を受けたという事実が周囲に知られることの悪影響が非常に大きくなりがちです。
刑事事件の被疑者となることは,非常に不名誉であって周囲の信頼を損なう恐れがあるため,できる限り周囲に知られないことが望ましいでしょう。
この点,自首を行うことで,捜査機関に周囲へ知られないよう配慮した方法での捜査をしてもらうことが期待しやすくなります。捜査機関としても,円滑な協力が得られるならば,殊更に周囲に知られるような捜査手法を取る必要はない,との判断になりやすいところです。
ポイント
事件や捜査を周囲に知られると,日常生活への支障が懸念される
自首した場合,捜査方法を配慮してもらいやすくなる
④反省の意思を表明したい場合
刑事事件の処分軽減を図るためには,反省の意思をできるだけ明確に表明していくことが重要です。重大犯罪の場合,元々の刑事責任が大きすぎるため,反省が処分に与える影響には限りがありますが,比較的軽微と評価される器物損壊事件の場合,反省の意思を加味して処分に反映してもらえるケースが多くなる傾向が見られます。
この点,反省の意思を最も強く表明できる手段が自首です。自首は,自分から大きなリスクを負うため,強い反省の意思がないと実行できない動きだと理解されるのが通常です。「自首するくらいに反省を深めている」と認めてもらうことができれば,自首を理由に処分が大きく軽減されることも十分に考えられるでしょう。
ポイント
器物損壊事件では,深い反省の意思が刑事処分に反映され得る
自首は,反省の深さを最も強く行動に示せる手段
器物損壊罪の逮捕に強い弁護士へ依頼するメリット
器物損壊事件の逮捕に関して対応する場合は,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士への依頼によって,以下のような利点が期待できます。
① 逮捕が懸念される状況であるか判断できる
器物損壊事件は,決して逮捕の可能性が高い事件類型というわけではありません。そのため,現実に逮捕の懸念が大きくないのであれば,逮捕を恐れるあまり動き方を誤ってしまう方が大きなデメリットを招く結果になる場合も多いところです。
この点,弁護士に依頼し,弁護士の専門的な判断を仰ぐことで,本件では逮捕が懸念される状況か,正確な判断が可能になります。逮捕が懸念される状況であれば,逮捕を避けるための方策を優先的に検討すべきですし,逆に逮捕の懸念がそれほどない状況だと分かれば,他の対応に時間を割くことが容易になるでしょう。
また,逮捕に関する見通しが分かることで,精神的な負担が軽減でき,大きな安心につながる効果も見込まれます。
② 事件に応じた適切な対応方法が分かる
逮捕を避ける方法は,事件の内容や状況によって個別に異なります。そのため,事件や状況に合った対応を取ることが非常に重要なところです。
この点,弁護士に依頼することで,逮捕を避けるために本件で必要な動きが分かり,方針の選択に悩む必要がなくなります。また,実際の動きも弁護士主導で行うことができるため,対応の負担も軽減されるでしょう。
③ 当事者間の解決を試みることができる
器物損壊事件では,当事者間での解決が逮捕回避にとって極めて重要なポイントになりやすいです。当事者間で解決できれば,その後に逮捕されることはないと言ってよいでしょう。
もっとも,当事者間での解決は,弁護士を窓口にしなければ試みられないのが通常です。当事者同士がやり取りするのではなく,加害者の代理をする弁護士が,被害者と連絡を取り合う必要があります。
また,解決内容をどうすべきか,という点についても,専門的な知識経験を持つ弁護士の見解を仰ぐことで,合理的な判断が容易になるでしょう。
器物損壊罪で弁護士に依頼すべき場合
① 認め事件のケース
認め事件は、示談により不起訴処分を目指すことが極めて重要です。刑罰を受け入れる場合を除いては、弁護士への依頼が適切でしょう。
弁護士に依頼した場合、弁護士から捜査機関に示談を希望する旨申し入れを実施します。捜査機関から被害者側に意向を確認し、被害者の了承が得られれば、弁護士と被害者との間で連絡先を交換して示談交渉に着手することができます。
示談が成立した場合、弁護士が示談書等の必要な書面を作成し、被害者と示談の締結を行います。確実に不起訴処分となるよう、告訴の取り消しを確認し、捜査機関に提出します。
なお、一度取り消された告訴を再度行うことはできないため、告訴が取り消された時点で不起訴処分が見込まれることになります。
なお、器物損壊事件の示談金額は、損壊された物の価値を基準に検討することが多いでしょう。一般的には、被害物の価値相当額に、お詫びの趣旨でいくらかの金額を上乗せし、示談金額とする例が多く見られます。
② 否認事件のケース
否認事件の場合、起訴されるかどうかは犯罪事実が立証できるかどうかに左右されます。
もっとも、犯罪事実が立証できるか、というのは高度に法律的な問題であるため、具体的な主張内容や方針は、弁護士に依頼の上で弁護士と検討し、実施することが適切です。弁護士に依頼した場合、弁護士から適切な方針とそのための活動内容に関する案内を受けることができます。
器物損壊罪に強い弁護士をお探しの方へ
器物損壊の事件は,被害者との間で解決ができているかどうか,という点が処分に直接の影響を及ぼす事件類型です。
そのため,被害者と示談を締結することが非常に重要となりやすいですが,示談の締結には弁護士への委任が不可欠となります。
器物損壊事件で不起訴を獲得したい場合は,刑事弁護に精通した弁護士への依頼をお勧めいたします。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。
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