器物損壊事件の必見対処法|逮捕を防ぐ手段や呼び出しへの対応策、自首を検討すべきケースまで

●器物損壊事件とされるのはどのような場合か?

●器物損壊事件は逮捕されるか?

●器物損壊事件は早期釈放が可能か?

●器物損壊事件では示談をすべきか?

●器物損壊事件の中で重大なケースはどんな場合か?

●器物損壊事件の刑罰はどのくらいか?

●器物損壊事件は弁護士に依頼すべきか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,器物損壊事件に関してお困りの方に向けて,器物損壊事件で逮捕や起訴はされるか示談や不起訴を目指すにはどうすべきかなどを解説します。

目次

器物損壊とは

器物損壊罪とは、他人の物を壊したり傷つけたりして、その物の価値や機能を減損する犯罪です。
具体的な犯罪の構成要件は、以下の通りです。

「他人の物」を「損壊し、又は傷害」すること
①「他人の物」
所有権などの物権の対象となる物である必要があります。自分の物や、所有者の同意を得て使用している物は該当しません。
②「損壊し、又は傷害」
その物の効用を害する一切の行為をいう、とされています。一般的には、物の形状や性質を変える行為が該当するでしょう。壊す以外にも、曲げる、折る、切断する、汚す、塗るなどが含まれます。

器物損壊罪に該当する行為の具体例としては、以下の者が挙げられます。
・車の窓ガラスを割ったり、タイヤをパンクさせたりする行為
・店の商品を壊したり、看板を壊したりする行為
・パソコンの重要なデータを消去する行為
・鍵穴を詰まらせる行為
・食品を不潔な環境に置く行為

器物損壊の刑罰

器物損壊罪の刑罰は、「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」と定められています。
懲役は刑務所に収監して身柄を拘束する内容の刑罰、罰金は金銭の支払を指せる刑罰ですが、科料は1000円以上1万円未満の金銭を支払わせる刑罰であり、罰金が軽微になったもの、という性質の刑罰です。
そのため、器物損壊罪の刑罰は、3年以下の収監か30万円以下の金銭納付、という理解ができるでしょう。

器物損壊と逮捕

器物損壊事件の一般的な取り扱い

器物損壊事件は、必ずしも逮捕される可能性が高い事件類型ではありません。
特に、損害の規模があまりに大きくなければ、1件の器物損壊事件で直ちに逮捕されるケースは少数派ということもできるかと思います。

もっとも、以下のような場合には逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。

①反復継続して同種事件が行われている場合
多数の自動車のタイヤをパンクさせて回っているなど、同種事件を反復継続している事件は、計画性も高く今後の同種事件の発生も懸念されるため、その事件の重大性を踏まえて逮捕される可能性が高くなる傾向にあります。

②怨恨が動機となって起きた場合
怨恨など、人間関係の悪化が原因となって起きた器物損壊事件は、今後もトラブルの深刻化に伴う重大事件の発生が強く懸念されたり、被害者への働きかけによる証拠隠滅の恐れが想定されたりするため、逮捕の可能性が高くなりやすい類型です。

③被疑者の捜査協力がない場合
捜査を開始し、警察が被疑者を呼び出しているにもかかわらず、一向に応じる気配のない場合などが挙げられます。このような状況では、被疑者の逃亡や証拠隠滅の恐れが高いため、逮捕の可能性が高くなります。

逮捕リスクの上がる具体的なケース

器物損壊事件であっても,事件の内容や状況によって逮捕が選択されるケースも十分に考えられるところです。具体的には,以下のような場合に逮捕リスクが高くなりやすいでしょう。

器物損壊事件で逮捕リスクが高くなるケース

1.事件当時,現場でトラブルになっている

2.被害規模が大きい

3.態様が悪質である

4.同種事件が複数発生している

【1.事件当時,現場でトラブルになっている】

事件当時,加害者が現場で暴れているなど大きなトラブルになっている場合,被害の拡大や被害者の心身への危害が懸念されるため,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。

この場合,事件現場でのトラブル拡大を防止する必要性が高いため,その場で速やかに行うことのできる現行犯逮捕が選択されやすいでしょう。

【2.被害規模が大きい】

損害の規模が非常に大きく,器物損壊事件の中でも重大な部類と評価される事件では,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

特に,強い悪意がなければ被害を与えられないような物品を対象としている場合や,大きな経済的被害を生じさせようという意思が明らかな事件である場合は,被害規模の大きさと刑事責任の重さが直結しやすく,重大事件であることを踏まえた逮捕が選択されやすい傾向にあります。

【3.内容が悪質である】

加害行為の内容が特に悪質であると評価される場合,事件の重大性を踏まえて逮捕が選択される可能性は高くなりやすいです。

器物損壊事件の場合は,一般的に単独での突発的な事件が想定されているため,複数人での事件や組織的な事件,計画的な事件は,悪質と判断されやすいでしょう。また,加害行為のために入手した凶器を用いている,加害行為が執拗である(損壊するのにに必要な程度を超えている)など,行為の内容そのものに悪質性が見受けられるケースも,同様の恐れがあります。

【4.同種事件が複数発生している】

同種事件を複数行ってしまっており,いわゆる余罪が多数あるケースでは,余罪を含めた全容解明のため,証拠隠滅を防ぐ目的での逮捕がなされやすくなるでしょう。

この点は,複数の事件が同一人物によるものと考えられる場合に問題となりますが,同一人物の事件であるかどうかの判断は,時期や場所,犯行方法に共通性があるかどうかを重要な基準とすることが一般的です。

器物損壊事件で逮捕を避ける方法

①示談

器物損壊事件の場合,被害者との間で示談が成立し,被害者が告訴を取り消すとの判断に至れば,その後に逮捕される可能性がなくなります。そのため,逮捕を避ける方法として,示談の試みは非常に重要です。

また,器物損壊事件の場合,適切な内容で示談が成立すれば,逮捕が避けられるだけではなく,起訴も確実に避けることが可能です。起訴されなければ,前科が付かず事件が終了するため,最終的な結論としても最も望ましいと言ってよいでしょう。

②自首

器物損壊事件が捜査される前段階や,捜査が開始されていても自分が加害者であると特定されていない時期であれば,自首を行うことで逮捕を避ける方法も有力です。
一般的に,器物損壊事件の当事者間が連絡を取り合える関係であることは多くないため,示談の試みが現実的にできず,自首以外に検討の余地がないことも少なくはないでしょう。

自首した場合には,警察等の捜査機関にとって,加害者が自分の犯罪行為を認めて捜査して欲しいとの意思であることが明らかになります。そのため,捜査への妨害を防ぐための逮捕が必要ない,との判断をしてもらいやすくなるでしょう。

③呼び出しへの対応

器物損壊事件について,警察などから呼び出しを受けた場合には,できる限り捜査協力の姿勢を示し,逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを理解してもらうのも有力な方法です

呼び出しをすれば積極的な協力をしてくれる,と分かれば,逮捕をしてまで強制的に捜査協力をさせる必要はなく,逮捕まではしなくてよい,との判断を引き出しやすくなります。

器物損壊事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

器物損壊事件の逮捕に関して対応する場合は,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士への依頼によって,以下のような利点が期待できます。

①逮捕が懸念される状況であるか判断できる

器物損壊事件は,決して逮捕の可能性が高い事件類型というわけではありません。そのため,現実に逮捕の懸念が大きくないのであれば,逮捕を恐れるあまり動き方を誤ってしまう方が大きなデメリットを招く結果になる場合も多いところです。

この点,弁護士に依頼し,弁護士の専門的な判断を仰ぐことで,本件では逮捕が懸念される状況か,正確な判断が可能になります。逮捕が懸念される状況であれば,逮捕を避けるための方策を優先的に検討すべきですし,逆に逮捕の懸念がそれほどない状況だと分かれば,他の対応に時間を割くことが容易になるでしょう。
また,逮捕に関する見通しが分かることで,精神的な負担が軽減でき,大きな安心につながる効果も見込まれます。

②事件に応じた適切な対応方法が分かる

逮捕を避ける方法は,事件の内容や状況によって個別に異なります。そのため,事件や状況に合った対応を取ることが非常に重要なところです。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕を避けるために本件で必要な動きが分かり,方針の選択に悩む必要がなくなります。また,実際の動きも弁護士主導で行うことができるため,対応の負担も軽減されるでしょう。

③当事者間の解決を試みることができる

器物損壊事件では,当事者間での解決が逮捕回避にとって極めて重要なポイントになりやすいです。当事者間で解決できれば,その後に逮捕されることはないと言ってよいでしょう。

もっとも,当事者間での解決は,弁護士を窓口にしなければ試みられないのが通常です。当事者同士がやり取りするのではなく,加害者の代理をする弁護士が,被害者と連絡を取り合う必要があります。
また,解決内容をどうすべきか,という点についても,専門的な知識経験を持つ弁護士の見解を仰ぐことで,合理的な判断が容易になるでしょう。

器物損壊事件の逮捕に関する注意点

①現行犯逮捕の場合

器物損壊事件では,事件現場でトラブルやパニックが生じてしまっていると,その場を収める方法として現行犯逮捕が行われる場合もあります。そして,現行犯逮捕はその場で直ちに行われることになるため,事前に逮捕を防ぐ余地がなく,予防策を講じることが困難である点に注意をする必要があるでしょう。

②弁護士への依頼時期

弁護士への依頼を検討されている方から,適切な依頼のタイミングはいつか,というご質問をお受けすることは非常に多くあります。
この点,器物損壊事件で弁護士に依頼する時期は,早ければ早いほど望ましいと言えるでしょう。逆に,意図的に依頼の時期を遅らせるメリットはない,という点には注意することが望ましいです。

器物損壊事件では,告訴の有無が処分を決定づける材料になりますが,それはあくまで起訴不起訴が判断されるまでです。そのため,起訴された後に告訴がなくなっても,遡って不起訴にはならず,時機を逸してしまうことになります。

依頼先の弁護士を決めた際には,早期に依頼し,活動に着手してもらいましょう。

③記憶がない事件

器物損壊事件の場合,泥酔などの影響で事件の記憶がないケースも一定数見られます。飲酒してなければ行っていなかったであろう加害行為を,泥酔状態になった影響で無意識に行ってしまった,という場合がこれに当たります。

この際,認めるか否認するかは難しい問題になりやすいですが,周囲の話から起きた出来事が間違いないのであれば,基本的には認める方針が合理的でしょう。否認の方が逮捕リスクは高くなるため,記憶がない場合に否認するかどうかは慎重な判断が適切です。

また,「記憶がない」という発言だけにとどまってしまうのも控えるべきです。記憶がないとの返答は否認と理解されるため,認める方針を取りたい場合には不合理な動き方となってしまいます。

器物損壊における示談の重要性

器物損壊罪の場合、示談ができるかどうかは刑事処分を決定付ける極めて重要な要素となります。
それは、器物損壊罪が親告罪であるためです。

親告罪とは、告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪を言います。一般的に、告訴を行うのは被害者ですが、被害者が告訴をしなければ、検察は器物損壊罪を起訴することができません。
そのため、親告罪においては、被害者が告訴をするかどうか、告訴した場合にこれを取り消すかどうかが、事件の起訴不起訴を直ちに左右するほどの重要な事情となるのです。

もっとも、示談によって不起訴を獲得するためには、示談の内容として告訴の取り消しを設けるなど、親告罪であることに配慮した適切な方法で行う必要があります。
具体的な示談交渉や締結は、刑事事件に精通した弁護士に依頼することを強くお勧めします。

ポイント
器物損壊事件は決して逮捕の可能性が高くはない
器物損壊罪は示談ができれば確実に不起訴処分になる

より重大な事件になる場合

器物損壊の趣旨でなされた行為が、器物損壊罪よりも重大な事件になってしまう場合があります。
それは、建造物損壊罪が成立する場合です。

①建造物損壊罪の要件
建造物損壊罪は、他人の建造物を損壊した場合に成立する犯罪類型です。
ここでいう損壊も、基本的には器物損壊罪と類似しており、建造物の効用を害する一切の行為であるとされています。
物理的に破壊することはもちろんですが、著しく汚損する場合も含まれます。また、心理的に使用できない状態になることも含まれます。

建造物損壊罪に該当する行為としては、以下のようなものが挙げられます。
・住宅の壁にスプレーやペンキをかけた
・建造物の玄関ドアについた鍵を破壊した
・建造物の中に汚物をばらまいた
・集合住宅の郵便受けを汚損した

②建造物損壊罪の刑罰
建造物損壊罪の罰則は、「5年以下の懲役」とされています。
器物損壊罪より懲役刑が重く、懲役刑より軽い罰金刑となる余地もありません。

③建造物損壊罪と告訴
建造物損壊罪は、器物損壊罪と異なり親告罪ではありません。そのため、建造部と損壊罪の場合、被害者らの告訴がなくても起訴することが可能です。
告訴がなければ起訴できない器物損壊罪よりも、刑罰が科せられるケースの多い事件類型と言えるでしょう。

ポイント
建物を損壊してしまっていると,より重い建造物損壊罪に
建造物損壊罪は親告罪でないため,示談しても起訴される可能性あり

器物損壊事件の刑事処分

器物損壊事件の処分は、示談が成立しているなど、告訴がないケースでは確実に不起訴処分となります。告訴が後から取り消されたケースも同様です。
そのため、器物損壊事件で起訴されるのは、有効な告訴がなされ、それが取り消されなかった場合に限られることとなります。

器物損壊罪が起訴される場合、あまりに規模の大きなものでなければ罰金刑の対象となることが多く見られます。器物損壊罪そのものの処分は、直ちに実刑判決となるほど重大になることは多くないでしょう。

もっとも、被害者との間で示談が成立せず、告訴が存在する状況であれば、犯罪事実がある限り起訴されやすい、ということもできます。被害者と示談できれば確実に不起訴を獲得することもできますが、示談の試みをしなければ起訴が見込まれやすいことになります。

器物損壊事件で呼び出されたときのポイント

呼び出しへの対応法

①初めて呼び出しを受けた場合

初めて呼び出しを受けたときの基本的な対応方針としては,まず連絡を無視しない,ということが非常に重要です。

器物損壊事件で呼び出しの連絡が来た,という場合,捜査機関の方針としては,呼び出しに応答してくれるのであれば,比較的穏やかな手続で進めるつもりである可能性が高いでしょう。そのため,捜査機関の期待通りに応答し,連絡が円滑に取れる人物だと分かってもらえれば,逮捕などの大きな不利益は回避しやすくなります。

一方,呼び出しを無視してしまうと,捜査機関から見て呼び出しに応じてくれる人なのかが分かりません。呼び出しに応じてくれれば穏やかな手続でよかったのに,呼び出しを無視したばかりに逮捕などの強制的な手続を取らざるを得ない,と判断されてしまうと,その不利益は極めて大きくなります。

そのため,まずは呼び出しに対して無視せず応じる,留守番電話に担当者名や用件が録音されていれば折り返しなどの対応をするなど,呼び出しへの応答がしてくれる人物だと分かってもらうためのリアクションを取るようにしましょう。

ポイント
無視しないことが最重要
呼び出しの連絡に応じていれば,穏やかな手続で進むことが通常

②2回目以降の呼び出しを受けた場合

1回目の呼び出しで話を聞かれるなどした後,2回目以降に呼び出しが行われるのは,供述調書などの書面を作成する目的であることが一般的です。1回目の呼び出しで供述調書を作成するケースもありますが,1回目に供述調書が作成されなかったケースでは,2回目以降の呼び出しは調書作成の目的であると考えて基本的に間違いないでしょう。

供述調書の作成に当たっては,作成時に求められる署名押印の意味を把握しておくことが重要です。
供述調書への署名押印は,調書の内容が自分の発言と一致することのお墨付きという意味合いのものです。調書の作成者は捜査担当者であり,自分の発言を他人が文字起こししているため,その文字起こしに誤りがないことを署名押印という方法で明らかにしているのです。

そのため,署名押印を求められた際には,内容に間違いがなければ応じる,という方針が合理的です。内容に一部誤りがあれば,訂正を求めることができるため,誤りのない供述調書にしてもらいましょう。

ポイント
供述調書の作成目的であることが一般的
署名押印は,内容に間違いがないことのお墨付きの意味

③事件の記憶がない場合

器物損壊事件の場合,事件当時の記憶がなく,自分が加害行為をしてしまったかどうか分からない,というケースも散見されます。代表例が,深酒で泥酔状態になってしまった後,路上や店舗などで加害行為をした,と言われているケースです。

この点,事件の記憶がない場合には,記憶がないことを前提とはしつつ,疑われている加害行為を認めるか認めないか,という点をできるだけ早期にはっきりさせることをお勧めします。特に,自分がしたことで間違いないであろうという場合,「覚えていない」とだけ答えてしまうと,「自分がしたとは認めていない」という意味で解釈されることは踏まえておきたいところです。

認めるかどうかの判断材料としては,周囲の人や捜査担当者から当時の話を聞き,その内容を総合することが有効です。泥酔状態で記憶がない場合には,酔いが覚めた後に冷静な対応を尽くすことで,不利益を最小限に抑える結果につながりやすいでしょう。

ポイント
認めるかどうかをできるだけ早くハッキリさせる
覚えていないとの回答は,認めないという意味で理解される

④否認事件の場合

疑われている犯罪行為をしていない,という否認事件の場合には,まずその争点を自分の中で明確に把握することが非常に重要です。

一口に否認事件と言っても,その具体的な内容は争点によって様々です。器物損壊事件では,自分が行ったものではない(=犯人性の否認),わざとおこなったことではない(=故意の否認)などが代表的な争点ですが,いずれが争点であるかによって,適切な対応方法や注意すべき点が大きく異なります。犯人性が争点であるのに,「わざとやったわけではない」と述べるのは,むしろ不利益を招くでしょう。

また,争点を把握した後は,できればその争点について法的な判断を行うときの基準や根拠になるものを理解しておきたいところです。この点は,高度に法律的な問題となるため,弁護士への相談をお勧めします。

ポイント
争点を明確に把握する
争点の判断基準や根拠を理解する

器物損壊事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

器物損壊事件の場合,呼び出しに応じたことをきっかけに逮捕されるという流れは基本的に考えにくいでしょう。呼び出しに対してあまりに不合理な対応をしない限りは,逮捕しないとの判断をすることが通常です。
器物損壊事件で逮捕をするのであれば,呼び出しを行うのではなく,予告をしないまま突然自宅等に訪れ,逮捕状を示して逮捕(=通常逮捕)をすることが一般的と言えます。逃亡や証拠隠滅を防ぐ手段として,その方が優れているためです。

ただし,例外的に,呼び出し後に逮捕の判断に至る場合もあり得ます。一例としては,犯人でないと思っていた人を呼んだ(又は犯人がだれか分からない状態で呼んだ)後,呼び出した相手が犯人であると特定できるだけの新事情が発覚した場合が挙げられます。
この場合,事件の程度などから「犯人が特定できれば逮捕する」との捜査方針だったときには,呼び出した人物を犯人だと特定でき次第,逮捕に踏み切る可能性があり得ます。

ポイント
基本的には考えにくい
呼び出し後に犯人と特定された場合には例外的にあり得る

器物損壊事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①事件直後

器物損壊事件は,被害者や目撃者の面前で行われた場合,現行犯で問題になり,警察が関与する流れとなることが一般的です。そして,現行犯で問題になったケースでは,事件から間もないタイミングで呼び出しを受け,取り調べを受けることが見込まれやすいでしょう。

また,事件直後に,事件現場へ警察が駆け付けた際には,そのまま警察署への動向を求められる形になることも多く見られます。

②加害者を特定したとき

被害者などによる事件の把握が現行犯でなかった場合には,被害者が捜査機関に捜査を求め,捜査機関によって加害者の特定が試みられる,という流れになりやすいです。このようなケースでは,加害者として特定された段階で,警察が呼び出しを行うことが想定されるでしょう。

呼び出しのタイミングは,加害者として特定されてから間もない時期であることが一般的です。警察担当者のスケジュールに問題がない限り,期間を空けるメリットはないため,特定され次第の呼び出しとなるでしょう。
また,捜査開始から加害者特定までの期間は,ケースや証拠関係によって様々ですが,概ね1~6か月程度が目安になりやすい傾向が見られます。

③関係者から事情を聴取した後

複数の関係者や目撃者がいた場合,それらの人物から事情を聴取した後に呼び出されるケースもあり得ます。これは,特に被害者と加害者の言い分に相違が見られる場合,第三者の話を踏まえて再度呼び出す,という流れで行われやすい動きです。

呼び出しの時期は特定が困難ですが,必要な第三者からの聴取の後,それほど間を空けずに行われることが一般的です。

④被害弁償を促すとき

器物損壊事件は,被害者の財産に対して損害を与えるという内容です。そのため,事件の解決としては,被害者の経済的な損害が補填される,という結果になることが最も望ましいと言えるでしょう。
捜査機関としても,被害弁償による損害の補填を促したい,と考えることは少なくないため,その旨を加害者側に伝える目的で呼び出すケースがあり得ます。

このような呼び出しは,一通りの取調べが終わった後の終盤の時期になされることが多いでしょう。捜査を尽くした段階で,「被害弁償ができれば,互いにとってより望ましい結果に近づくであろう」と判断した場合に,加害者側へ助け舟を出す意味も込めて行われる傾向にあります。

器物損壊事件の呼び出しに応じたときの注意点

①被害者との解決を目指す重要性

器物損壊事件の場合,被害者との解決の有無が最終的な結果を決定的に左右します。被害者と適切な解決ができていれば,確実に不起訴処分となり,前科が付かない結果を獲得できるため,器物損壊事件では何よりも被害者との解決を目指すことが重要です。

器物損壊事件について呼び出しを受けた場合,目先の対応や警察に出頭した際の不安が先行しがちですが,被害者との解決の重要性と比較すれば比較的小さな悩み事にとどまると言ってよいでしょう。特に,心当たりのある事件について呼び出しを受けた際には,とにかく被害者との解決が目指せないか,弁護士に相談するなどして方法を検討することに注力することをお勧めします。

②反省の深さを示す努力の重要性

器物損壊事件は,比較的軽微な事件類型と理解されています。そのため,他の重大な事件類型よりも,不起訴処分にしてもらえるケースが多い傾向にもあります。

より重大な事件類型では,どれだけ反省の意思を表明してもそれだけで不起訴になることは考えにくいですが,器物損壊事件の場合,その内容によっては反省の深さが不起訴処分に直結するケースもあり得ます。そのため,呼び出しに応じた際,どれだけ反省の深さが示せるか,という点が,他の事件類型よりも重要度の高いポイントとなることに注意すべきです。

もちろん,どの事件類型でも反省の意思を示すことは重要なポイントですが,特に結論に結びつくケースが多いことを踏まえ,意識的に努めることが望ましいでしょう。

③警察の呼び出しと検察の呼び出しとの区別

呼び出しを受ける場合,警察からの呼び出しなのか検察からの呼び出しなのか,という点は適切に区別することをお勧めします。

警察は,事件の捜査を一通り行うと,検察庁に事件を送致します。そして,送致を受けた検察庁が,起訴するか不起訴するかの判断を行い,それにより事件の捜査が終了する,という流れを辿ります。
そのため,警察署からの呼び出しは比較的初期の段階,検察庁からの呼び出しは比較的終盤の段階である,との理解が可能です。それのみならず,場合によっては検察庁での呼び出し段階では起訴不起訴の処分が事実上決まっているケースも少なくありません。

処分の軽減を目指したい場合,検察庁の呼び出しに応じた後では時期遅れになってしまっている可能性があるため,十分に注意しましょう。

器物損壊事件における自首の考え方

器物損壊事件で自首をするべき場合

①現行犯で発覚している場合

自首をするべきケースの代表例は,自分が犯人と特定され,何もしなくても自分に対する捜査がなされやすい,という場合です。自首の最大のリスクは,「自首さえしなければ捜査を受けなかったのに,自ら自首したばかりに捜査を受けることになってしまった」という結果となることですが,自首をしなくても自分が犯人と特定されてしまう状況であれば,その最大のリスクがないということになるため,自首のメリットの方が大きいと考えやすくなります。

この点,器物損壊事件は,加害行為のあった直後,現行犯で事件が発覚することも少なくありません。そして,現行犯で発覚した場合には,直ちに警察の捜査が開始されることが見込まれやすいものです。しかも,証拠の多くは失われず残っており,犯人の特定に至る可能性は非常に高いと言ってよいでしょう。

そうすると,現行犯で発覚した器物損壊事件の場合,自首してもしなくても犯人が特定されやすいため,自首のリスクよりもメリットを優先すべき状況である,と考えるのが合理的です。このようなケースでは,積極的な自首の検討をお勧めします。

ポイント
自首のリスクは,自首が原因で捜査を受ける結果になること
現行犯で発覚した場合,自首せずとも犯人が特定されやすい

②被害者との間で解決したい場合

器物損壊事件は,被害者との解決が極めて重要です。被害者と適切な解決ができれば,それで直ちに刑事手続も解決に至る,と言っても過言ではありません。
もっとも,被害者と知人等の関係にある場合を除き,直接被害者に接触する手段はないのが通常です。そのため,被害者との解決を目指すには,捜査機関の力を借り,捜査機関に間に入ってもらうことが必要です。

この時,有力な手段が自首です。自首をした上で捜査を始めてもらい,捜査機関に被害者との解決希望の旨を伝えることで,捜査機関に間に入ってもらうことができます。
なお,実際の被害者とのやり取りは,自分で行うのでなく,弁護士を通じて行うことが求められます。そのため,弁護士への依頼とセットで動くのが良いでしょう。

ポイント
被害者と連絡を取るには,捜査機関に間に入ってもらう必要がある
弁護士への依頼とセットで進めるのが適切

③日常生活への支障を防ぎたい場合

刑事事件で捜査を受けると,様々な局面で日常生活に悪影響が生じる可能性が懸念されます。捜査協力に時間を割かれることのスケジュール面への影響はもちろんですが,それ以上に,捜査を受けたという事実が周囲に知られることの悪影響が非常に大きくなりがちです。
刑事事件の被疑者となることは,非常に不名誉であって周囲の信頼を損なう恐れがあるため,できる限り周囲に知られないことが望ましいでしょう。

この点,自首を行うことで,捜査機関に周囲へ知られないよう配慮した方法での捜査をしてもらうことが期待しやすくなります。捜査機関としても,円滑な協力が得られるならば,殊更に周囲に知られるような捜査手法を取る必要はない,との判断になりやすいところです。

ポイント
事件や捜査を周囲に知られると,日常生活への支障が懸念される
自首した場合,捜査方法を配慮してもらいやすくなる

④反省の意思を表明したい場合

刑事事件の処分軽減を図るためには,反省の意思をできるだけ明確に表明していくことが重要です。重大犯罪の場合,元々の刑事責任が大きすぎるため,反省が処分に与える影響には限りがありますが,比較的軽微と評価される器物損壊事件の場合,反省の意思を加味して処分に反映してもらえるケースが多くなる傾向が見られます。

この点,反省の意思を最も強く表明できる手段が自首です。自首は,自分から大きなリスクを負うため,強い反省の意思がないと実行できない動きだと理解されるのが通常です。「自首するくらいに反省を深めている」と認めてもらうことができれば,自首を理由に処分が大きく軽減されることも十分に考えられるでしょう。

ポイント
器物損壊事件では,深い反省の意思が刑事処分に反映され得る
自首は,反省の深さを最も強く行動に示せる手段

器物損壊事件の自首を弁護士に相談するメリット

器物損壊事件の自首については,弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら進めることをお勧めします。弁護士への依頼によって,以下のようなメリットが見込まれるでしょう。

①器物損壊事件に該当するかが分かる

器物損壊事件は,その意味が抽象的であるため,事件の内容によっては器物損壊罪が成立するかどうか,という点の判断が難しいケースも少なくありません。犯罪行為となる「損壊」とは,「対象物の効用を害する一切の行為」と定義されますが,その意味を明確に理解し,個別の事件に当てはめて犯罪に当たるかを判断するのは容易ではないでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,高度に法的な判断を自分でする必要なく,器物損壊罪に該当するかどうかを弁護士に確認してもらうことができます。自首は,犯罪に当たる行為をした場合に行うべき行動であるため,犯罪に当たるかどうかの理解は非常に重要な前提となります。

②自首すべき状況であるかが分かる

自首は,自分から犯罪事実を申告して,自分に対する捜査を求めるという意思表明であるため,その必要がない場合に行うべきかは慎重な判断をしたいところです。そのため,自首の必要があるかどうか,自首すべき状況なのかは,重要なポイントになりますが,個別事件についてその判断を行うことは当事者には極めて難しいでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,自首をしない場合の不利益と自首をした場合の効果を比較しながら,自首すべき状況であるかどうかについて適切なアドバイスを受けることができるでしょう。自分が自首をするメリットデメリットが明確に分かれば,自首の判断も後悔なくすることが可能です。

③取り調べの対応方法が分かる

自首後には,警察での取り調べが見込まれます。そして,取り調べに対してどのような対応をするかによって,その後の捜査や自分への取り扱いが変わることになるでしょう。そのため,自首を行う際には,自首後の取り調べに対する準備も欠かすことができません。

この点,弁護士に依頼することで,自首後に行われる取調べの流れや内容の説明を受けることができ,取り調べの対応を適切に備えることができるでしょう。自首後に何が起きるかを想定しておくことができれば,適切に対処できる可能性が大きく上がるでしょう。

④弁護活動を速やかに行ってもらえる

自首を行った場合,その後に弁護活動をしてもらうことで,逮捕回避や刑事処罰の回避といった自首の目的をより実現に近づける可能性が高まります。その意味で,自首をするのであればその後に弁護活動を依頼することも検討する方が適切です。

この点,自首の段階から弁護士に依頼しておくことで,自首の後速やかに弁護活動を開始してもらうことが可能です。特に,身柄拘束された場合,釈放を求める弁護活動は少しでも速やかに進めるのが望ましいため,弁護士が付いているメリットが大きくなりやすいでしょう。

器物損壊事件で自首をする場合の注意点

①捜査の出発点であること

自首は,捜査機関にとってはあくまで捜査を開始するきっかけにとどまります。自首を踏まえて捜査を始めるという意味では,刑事手続のスタートラインと言ってもよいでしょう。

自首が大きな決断であって,自首をする本人にとって負担ある手続であることは間違いありません。しかしながら,刑事手続全体を見ると,その後の方がはるかに長いため,自首後にも気を抜かず,適切な対応を続けられるよう注意しましょう。
自首後に適切な対応を続けることが,決断した自首の効果を最大限に高める方法でもあります。

②示談の試みとセットで行うこと

器物損壊事件の場合,自首を試みるのであれば,自首後に被害者との示談を試みることもセットで進めるのが適切です。逆に,自首をしておきながら被害者との示談は全く試みない,というのは合理的でないため,あらかじめ注意したいところです。

親告罪である器物損壊罪は,示談によって告訴がなくなれば確実に不起訴となります。自首という手段で深い反省の意思を示し,それが被害者に伝わっているのであれば,その状況を活かして示談を目指さない手はないでしょう。自首に込められた反省の意思が被害者にも理解してもらえれば,示談成立の可能性は飛躍的に上がるはずです。

③捜査を誘発する結果になり得ること

自首のリスクとして,いわゆる「やぶ蛇」となる可能性があります。特に,被害者が事件に気付いていなかったなど,自首以外に捜査の始まるきっかけがなかった場合,自首が捜査を誘発する結果になる恐れは否定できません。

このリスクは,自首に必ず付きまとうものであり,リスクの高さを推測することはできても確実に回避することは困難です。自首は「捜査されない可能性を自ら捨てる」動きであることを念頭に,一種の割り切りをしておくことも重要です。

器物損壊事件で弁護士に依頼すべき場合

①認め事件の場合

認め事件は、示談により不起訴処分を目指すことが極めて重要です。刑罰を受け入れる場合を除いては、弁護士への依頼が適切でしょう。

弁護士に依頼した場合、弁護士から捜査機関に示談を希望する旨申し入れを実施します。捜査機関から被害者側に意向を確認し、被害者の了承が得られれば、弁護士と被害者との間で連絡先を交換して示談交渉に着手することができます。

示談が成立した場合、弁護士が示談書等の必要な書面を作成し、被害者と示談の締結を行います。確実に不起訴処分となるよう、告訴の取り消しを確認し、捜査機関に提出します。
なお、一度取り消された告訴を再度行うことはできないため、告訴が取り消された時点で不起訴処分が見込まれることになります。

なお、器物損壊事件の示談金額は、損壊された物の価値を基準に検討することが多いでしょう。一般的には、被害物の価値相当額に、お詫びの趣旨でいくらかの金額を上乗せし、示談金額とする例が多く見られます。

②否認事件の場合

否認事件の場合、起訴されるかどうかは犯罪事実が立証できるかどうかに左右されます。

もっとも、犯罪事実が立証できるか、というのは高度に法律的な問題であるため、具体的な主張内容や方針は、弁護士に依頼の上で弁護士と検討し、実施することが適切です。弁護士に依頼した場合、弁護士から適切な方針とそのための活動内容に関する案内を受けることができます。

器物損壊事件に強い弁護士をお探しの方へ

器物損壊の事件は,被害者との間で解決ができているかどうか,という点が処分に直接の影響を及ぼす事件類型です。
そのため,被害者と示談を締結することが非常に重要となりやすいですが,示談の締結には弁護士への委任が不可欠となります。
器物損壊事件で不起訴を獲得したい場合は,刑事弁護に精通した弁護士への依頼をお勧めいたします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

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