公然わいせつは刑法で処罰対象とされる犯罪であり、状況によっては現行犯逮捕や後日逮捕に至るケースもあります。突然の逮捕や取調べに直面すると、今後の生活や仕事への影響を不安に感じる方も少なくありません。本記事では「公然わいせつはどんな場合に逮捕されるのか」「逮捕後はどのような流れになるのか」といった疑問に答え、公然わいせつの逮捕について適切な対応のポイントを分かりやすく解説します。
この記事の監修者
藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
公然わいせつとは
公然わいせつ罪は,不特定多数者が目にできる状態でわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
代表的な行為は,路上で自身の性器を露出させることなどが挙げられます。
その他,公衆の面前で性行為や自慰行為をする場合も,公然わいせつ罪に該当するでしょう。
また,公然わいせつ罪の対象となりやすい少し意外な事件としては,車内でのわいせつ行為が挙げられます。
駐車場で停止している車の中で自慰行為や性行為を行うことは,その車中が不特定多数者の認識し得る状態である限り,公然わいせつ罪に該当する行為となりやすいです。
① 成立要件
公然わいせつ罪は、刑法第174条に規定されています。
この罪が成立するためには、次の3つの要件が必要です。
1.公然性
「公然」とは、不特定または多数の人が認識し得る状態を指します。実際に誰かが見ていたかどうかは問題ではなく、見られるおそれがある状況であれば成立します。
例えば、通行人がいる公園や駅構内、マンションの共用部、車内などで性器を露出した場合は「公然」と評価される可能性があります。
一方、完全に閉ざされた室内で、他人が見るおそれのない状況であれば「公然性」が否定される余地もあります。
2.わいせつ性
「わいせつ」とは、社会通念上、人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいいます。
性器の露出、性行為、自慰行為などが典型ですが、露出の程度や態様、場所などの事情によって判断されます。
なお、芸術・医学・教育などの目的でなされた行為については、「わいせつ性が否定される場合」もあります。たとえば、美術展における裸体表現がわいせつ罪に当たらないとされた裁判例も存在します。
3.故意
行為者が、自らの行為が「公然」であり「わいせつ」であると認識しながら行ったことが必要です。
酩酊状態などで判断力が低下していても、意識的に露出行為などを行った場合は「故意あり」とされることが多く、酔っていたから罪にならないということは基本的にありません。
酩酊状態にあった場合、自身が行ったことの認識(故意)を争うかどうかは判断が難しいですが、できるだけ早期に方針を決めることが大切です。速やかに弁護士と協議し、適切な対応に努めることが非常に重要となります。
参照:刑法 e-Gov法令検索
② 刑罰
公然わいせつ罪の刑罰は「6月以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」とされます。
拘留とは1日以上30日未満の収監,科料は1000円以上1万円未満の金銭納付を内容とする刑罰です。
そのため,6月以下の収監か30万円未満の金銭納付が公然わいせつ罪の刑罰となります。
比較的軽い法定刑に見えますが、実際には逮捕・勾留されるケースも多く、社会的信用の失墜や職場への影響など、刑罰以外の重大な結果を招くこともあります。
また、特定の被害者が存在する場合や、同様の行為を繰り返している場合には、情状が重く扱われる傾向があります。
個別事件における具体的な刑事処罰としては,前科のない初犯の場合には罰金刑の対象となることが多いでしょう。概ね10~30万円ほどの罰金刑の対象になる例が多く見られます。
一方,前科があるなど,軽微な罰金刑にとどめることが適切でない場合には,拘禁刑の対象となる可能性も考えられます。
ポイント
初犯では罰金刑の対象になりやすい
法定刑以上に、社会的信用等への重大な悪影響が生じやすい
公然わいせつ罪で逮捕されるケース
(1)公然わいせつ罪で逮捕される可能性
公然わいせつ罪は,決して逮捕の可能性が高い事件類型ではありません。
逮捕は,逃亡や証拠隠滅の恐れが高い場合に行われますが,公然わいせつ罪は他の犯罪と比べて重大な刑事処罰を定めていないため,刑事処罰から免れる目的での逃亡は考えにくいとされます。また,事件の性質上,その場で終了してしまう事件であって物証が見込まれづらいこと,目撃者や防犯映像等の物証があったとしても,その隠滅や接触を図ることが現実的に困難なことから,証拠隠滅の恐れも高くないと判断されることが多いでしょう。
もっとも,以下のような場合には逮捕の可能性が高くなることもあります。
①被疑者が犯罪事実を否認している場合
被疑者が否認している事件は,犯罪の立証を妨げる目的で証拠隠滅をされる可能性が高くなると理解されます。そのため,認め事件と比べると逮捕の可能性が高くなる傾向にあるでしょう。
もちろん,否認をしているから直ちに逮捕されるわけではありませんが,その否認の内容が明らかに不合理であったり,事件の内容から被疑者に隠滅し得る証拠が想定されたりする場合には,逮捕の可能性が高くなる場合もあり得るところです。
②特定の相手に対して継続的に行っていた場合
公然わいせつ事件の中には,特定の相手を対象に自身の性器を露出する(見せつける)内容のものがあります。この場合,その相手となった人物に対する接触の可能性を考慮する必要が生じます。
多くの場合,特定の相手に自身の性器を露出する事件は,性的欲求の現れとして起きてしまうことが見られますが,性的な対象となった目撃者としては,露出にとどまらず身体接触等を試みてくる恐れを懸念するところです。
そして,その相手に対する露出行為が継続的になされているとなると,被疑者が目撃者への接触手段を把握している可能性が高く見込まれるため,目撃者への接触がより強く懸念されることになるでしょう。
また,目撃者は事件にとって最も重要な証拠ですので,目撃者への接触の恐れは,すなわち証拠隠滅の恐れという理解がなされます。目撃者への威迫による証拠隠滅を防ぐためにも,逮捕の必要性が高くなると考えられることになります。
③客観的証拠が確かな場合(特に後日逮捕)
コンビニや飲食店で性器を露出し,従業員とトラブルになった場合など,その犯罪事実の一部始終が撮影映像などの客観的証拠に残されている場合があります。
この場合には,起きた出来事の重大性も踏まえて,現行犯でなくても通常逮捕(いわゆる後日逮捕)される可能性が高くなり得ます。
その他、行ったことの重大さや執拗さ、社会的影響といった点も逮捕の可能性に影響を及ぼすケースが見られます。違法性が大きければ大きいほど、逮捕リスクも大きくなりやすいです。
(2)逮捕されやすい具体的なケース
上記の他、以下のようなケースで逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。
公然わいせつ事件で逮捕されやすいケース
1.店舗や会場の混乱を招いているケース
2.特定の目撃者を標的にしているケース
3.同種事件を繰り返しているケース
【1.店舗や会場の混乱を招いているケース】
店舗内やイベント会場内で起きた公然わいせつ事件によって,現場が大きく混乱している場合,逮捕の可能性が高くなりやすい傾向にあります。なぜなら,現場における混乱の拡大を防ぐ必要があるほか,周囲の人物(店舗従業員,イベント関係者等)と深刻なトラブルになる恐れがあるためです。
また,店舗やイベント会場などは,公然わいせつ事件が起きた場合に誰かの目に入ることが明らかな場所です。そのため,犯罪に当たることを強く認識しながらわいせつ行為に及んだと理解せざるを得ず,悪質さが大きくなることから,逮捕の可能性が高くなります。
【2.特定の目撃者を標的にしているケース】
特定の目撃者に見せつける目的で,その人物を標的に行われた公然わいせつ事件では,目撃者を精神的苦痛などから保護するために逮捕されやすい傾向にあります。このようなケースでは,目撃者が事実上の被害者と理解されるため,被害者保護のために逮捕をする場合と近い状況になるでしょう。
特に,目撃者の住居や生活圏などの個人情報を把握している場合,目撃者への被害の拡大が懸念されやすいため,逮捕の可能性がより高くなります。
【3.同種事件を繰り返しているケース】
同種の事件が繰り返されている場合,更なる事件の発生を防ぐ必要があることから,被疑者を特定した段階で逮捕となる可能性が高くなります。複数の事件を起こしている場合,刑事責任もより重大になることから,刑罰を免れる動きを防ぐためにも逮捕されやすくなるでしょう。
また,以前に行われた同種の事件について被害届などが出ている場合,それらの事件に関する証拠も確保するため,逮捕をすることで証拠隠滅を防ぐ手段が有力になります。複数の事件を捜査する必要があると,それだけ収集するべき証拠も多くなるため,逮捕の可能性が高くなりやすいところです。
公然わいせつは、どちらかというと現行犯での逮捕が問題になりやすい傾向にあります。現行犯の際に逮捕の必要性が高いと思われる事情があるかどうかは、結果を大きく左右します。
公然わいせつ罪で逮捕されたときの流れ
逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。
逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。
ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される
公然わいせつ罪で逮捕された場合のリスク
公然わいせつ罪で逮捕されると、刑事処分の有無にかかわらず、社会的なダメージが極めて大きいのが実情です。
報道や噂などを通じて周囲に知られる可能性があり、仕事・家庭・学校生活などあらゆる面で深刻な影響を受けることがあります。
① 周囲に発覚する
公然わいせつ事件は、現行犯逮捕や通報によって発覚するケースが多く、警察官や通行人の目撃、カメラ映像などからすぐに特定されます。
逮捕されると、警察による取調べの後、事件は検察庁に送致(送検)されます。
その後、検察官が勾留を請求し、裁判官がこれを認めた場合には、最長で10日間(延長を含め最大20日間)身柄拘束が続くことになります。
この間、職場や学校、家族に「連絡が取れない状態」が生じるため、逮捕や勾留そのものが周囲に知られるきっかけとなります。
また、事件の内容によっては、報道機関が「公然わいせつ容疑で逮捕」と報じることもあり、インターネット上に情報が残るリスクも避けられません。
公然わいせつは、適切な対処ができれば、逮捕を回避するとともに周囲への発覚も最小限に抑えられることが決して珍しくありません。周囲への発覚を避けるためには、できる限り迅速な対応を強くお勧めします。
② 仕事や学校に影響する
逮捕・勾留が長引くと、無断欠勤や授業欠席が続くことになります。
会社員の場合、懲戒処分や解雇の対象となることが多く、特に公務員や教員、医療関係者など社会的信用が重視される職業では、懲戒免職や資格停止などの厳しい処分を受ける可能性があります。
学生の場合も、大学や高校に事件が知られると、停学・退学処分が下されることがあります。
また、将来的に就職活動や資格試験で「犯罪歴の有無」を問われた際に不利益を受けることもあります。
このように、公然わいせつの逮捕は「刑罰以上に社会的信用を失うリスク」が大きく、早期の弁護活動によって身柄拘束を回避することが極めて重要です。
③ 前科が付く恐れがある
公然わいせつ罪で起訴され、有罪が確定すると前科として記録されます。
有罪の確定には、正式裁判による判決だけでなく、略式手続によって罰金刑の略式命令が出され、そのまま確定した場合も含まれます。
つまり、略式罰金であっても「有罪の確定」として前科に該当する点に注意が必要です。
一方、起訴前に弁護士を通じて被害者との示談が成立した場合や、反省の態度が強く認められた場合には、不起訴処分となる可能性もあります。
不起訴になれば前科は付かず、記録上も「犯罪歴」には残りません。
ただし、再犯や常習的な行為が認められる場合は、罰金刑では済まず拘禁刑が科されることもあります。
したがって、逮捕後は「前科を回避できるかどうか」を見据え、できるだけ早い段階で弁護士の助言と弁護活動を受けることが極めて重要です。
公然わいせつの事件で前科を防ぐ手段としては、目撃者との示談が非常に有効です。特定の目撃者がいる事件では、示談の試みを検討することが有益でしょう。
公然わいせつ罪の逮捕への対処法
(1)公然わいせつで逮捕を避ける方法
①自首の試み
逮捕は,逃亡や証拠隠滅を防ぐ目的で行われる捜査手続です。そのため,逃亡や証拠隠滅の恐れが大きいほど逮捕されやすく,逆に逃亡や証拠隠滅の恐れが小さいほど逮捕の可能性は低くなります。
この点,逃亡や証拠隠滅の可能性が低い,との判断を促す動きとして有力なものが自首です。自首は,自ら捜査機関に出頭し,自分の犯罪事実を明らかにする行動であるため,その後に逃亡や証拠隠滅をすると考えられることは通常ありません。そのため,自首を行った場合には逮捕を避けられる可能性が非常に高くなるでしょう。
また,捜査のために必要と思われる証拠をあわせて提出することができれば,証拠隠滅の可能性はより低いとの評価につながり,逮捕をより避けやすくなる結果につながります。
②呼び出しへの対応
公然わいせつ事件で逮捕をしない場合の捜査方法としては,呼び出しを行い,警察などに出頭をしてもらって捜査協力を求める,ということが一般的です。そのため,呼び出しを受ける場合には,逮捕が避けられる可能性が十分にあると言えるでしょう。
もっとも,呼び出しへの対応を誤り,捜査機関が求めるような捜査協力が得られければ,逮捕を招く結果にもなりかねません。呼び出しを受けた場合には,対応次第で逮捕を避けるチャンスであると理解し,適切な対応を尽くすことをお勧めします。
具体的には,呼び出しには可能な限り応じる,問われたことには可能な限り答えるなど,捜査が円滑に進められるような対応ができると,逮捕の回避につながりやすいでしょう。
③謝罪や示談
公然わいせつ事件の場合,目撃者を保護する目的で逮捕される可能性があります。逆に,目撃者を保護する必要が小さいケースでは,それだけ逮捕の必要性も低いということになります。
そのため,特定の目撃者がいる公然わいせつ事件では,目撃者に対する謝罪や示談を尽くすことが逮捕を回避する有力な手段と言えます。当事者間で示談による解決ができれば,逮捕の可能性が低下することはもちろん,最終的な刑事処分も大きく軽減する結果が期待できるでしょう。
④否認事件での事情説明
否認事件で逮捕を回避する場合には,証拠隠滅の恐れがないことを明らかにする動きが有力です。具体的には,事件内容に関する事情の説明を可能な限り行うことで,情報提供に対して積極的な態度であると理解してもらうのが有力でしょう。
心当たりがない場合,捜査の対象となること自体が納得しづらいため,捜査対応も消極的で非協力的なものになってしまう場合が少なくありません。しかしながら,心当たりがないからこそ,積極的に捜査への対応を行った方が結果的に円滑に進み,逮捕回避にもつながりやすいと言えます。
公然わいせつで現行犯逮捕されなかった場合、対応次第で後日の逮捕を回避することができるケースは決して少なくありません。具体的な対応方法は、刑事事件に精通した弁護士に相談することを強くお勧めします。
(2)公然わいせつの逮捕は弁護士に依頼すべきか
公然わいせつ事件の逮捕に関しては,弁護士に依頼の上,弁護士の専門的な案内や対応を仰ぐことが有益でしょう。弁護士への依頼によって,具体的には以下のような利点が見込まれます。
①逮捕リスクの高さが分かる
公然わいせつ事件の場合,逮捕リスクの高さが個別事件の内容等によって様々に異なります。「公然わいせつ事件だから逮捕される,されない」という問題ではないため,個別具体的な事情を踏まえた検討が必要です。
この点,専門性ある弁護士に依頼することで,逮捕リスクの高さを具体的に判断してもらうことが可能です。逮捕リスクの高さは,方針を決める際の重要な判断材料となるため,適切な対応方針を決められる結果にもつながるでしょう。
②逮捕を避けるための具体的手段が分かる
逮捕の回避を目指す必要がある場合,ではどのようにして逮捕を回避すべきか,という問題が生じます。逮捕を避けるための具体的な手段は,事件内容や状況,ご本人にできることの内容などによっても変わってくるでしょう。
この点,弁護士に依頼することで,逮捕回避にとって有益な手段を具体的に把握することが可能です。あわせて,その手段を講じる場合の負担の大きさや効果の程度なども分かるため,自分にとって最適な手段を検討することが容易になります。
③逮捕後の早期釈放を目指せる
公然わいせつ事件の場合,逮捕されたとしてもその後に早期釈放の可能性があるケースは少なくありません。そのため,逮捕されてしまったといって諦めることなく,できる限り早期釈放を目指す手立てを講じることが適切です。
もっとも,具体的にどのような方法で早期釈放を目指すことができるかは,手続に精通した弁護士でないと判断が困難なポイントです。また,実際に早期釈放を目指す動きを取るにしても,その動きは弁護士でないとできないことが多くあります。
そのため,逮捕後においても,早期釈放を目指すため弁護士に依頼するに依頼することが非常に有益と言えるでしょう。
逮捕前後を通じて、弁護士の果たす役割は非常に多くなりやすいです。逮捕された場合や逮捕が予想される場合は、できるだけ速やかに弁護士に相談、依頼することが有益でしょう。
(3)公然わいせつの逮捕に関する注意点
①現行犯逮捕の可能性
公然わいせつ事件は,事件のあった現場で事件が発覚し,現行犯で警察などの取り締まりが行われるケースも少なくありません。特に,はっきりした目撃者がいる場合や,施設内等で起きた場合には,現場に警察が駆け付ける流れになることが多いでしょう。
そうすると,現行犯で問題になった公然わいせつ事件では,そのまま現行犯逮捕されてしまう可能性があるため,逮捕回避の余地がない可能性に注意が必要です。この点,公然わいせつ事件の現行犯逮捕は,必ずしもその後に身柄拘束を続ける想定でないことも多いため,早期釈放を目指す方針へ速やかに切り替えることが有力です。
②事件の記憶がない場合
公然わいせつ事件の場合,泥酔状態で事件を起こしてしまったなど,事件の記憶がないケースも一定数見られます。この点,記憶がない事件で逮捕を避けるためには,「認めているか認めていないかを明確にする」ということに注意するのが適切です。
泥酔状態のため記憶がない,という回答は,法的には認めていないという意味で理解されます。一般的に,認めている事件よりも認めていない事件の方が逮捕の必要性が高いと考えられるため,記憶がないとの回答のみを続けていると,逮捕の可能性を高める結果になり得るでしょう。
そのため,状況などを踏まえて認める必要がある場合には,記憶がないことを前提としつつも,認めるスタンスを明確にするのが適切です。認め事件と理解してもらうことで逮捕回避につながる場合は珍しくありません。
③逮捕前の示談の可否
逮捕前に目撃者と示談ができた公然わいせつ事件は,逮捕されない可能性が非常に高くなります。そのため,逮捕前に示談ができれば最も有益と言えます。
しかしながら,目撃者との示談を目指すには,警察など捜査機関の存在が不可欠です。目撃者の個人情報が分かっているというケースはほとんどないため,捜査機関を通じて目撃者に連絡を入れてもらうステップが必要となります。
そうすると,示談のためには捜査が開始されていることが必要であるため,いきなり逮捕されてしまう事件では逮捕前に示談を試みる余地がないことに注意が必要です。
もっとも,いきなり逮捕されてしまった事件でも,その後に示談を目指すことで早期釈放につながる可能性は十分に考えられます。いずれにしても,目撃者との示談を目指すことは非常に有力な動きとなるでしょう。
公然わいせつの逮捕に関するよくある質問
① 自首すれば逮捕されないか
自首をすれば必ず逮捕を免れるわけではありません。
しかし、自ら進んで警察に出頭し、犯行を申告したという事実は、刑事手続上きわめて重要な情状として扱われます。
刑法第42条では、自首が成立した場合には刑を減軽できると定められており、実務でも「反省の意思を示す行動」として重視されます。
とくに、公然わいせつのような比較的軽微な犯罪で、被害者がいない場合には、逮捕を避けられる可能性が高くなることがあります。
ただし、次の点に注意が必要です。
・犯行の内容や態様が悪質である場合や、逃亡・証拠隠滅のおそれがある場合は、自首しても逮捕されることがあります。
・逆に、早期に弁護士を通じて出頭・申告した場合には、逮捕されずに在宅事件として捜査が進むケースもあります。
公然わいせつの場合、現場映像や通報などで身元が割れているときに放置していると、かえって「逃亡の意思がある」とみなされるおそれもあります。
そのため、できるだけ早く弁護士に相談し、弁護士を通じて出頭のタイミングや方法を調整することが最善です。
弁護士が同席して出頭すれば、事実関係の整理や反省の意向が適切に伝わり、逮捕を回避できる可能性が高まります。
弁護士が主導して自首を進めることで,逮捕を回避できる可能性はより高くなることが通常です。大きな負担やリスクを背負って自首をする以上,その効果を最大限に発揮するため,弁護士と協同して行うことをお勧めします。
② 警察から呼び出しを受けた場合はどうすべきか
1.現行犯で取り締まりを受けた事件
公然わいせつ事件は,現場でトラブルになった場合など,現行犯で取り締まりを受けることも少なくありません。その場合,その場ではとりあえず事態の収拾を優先し,後に呼び出しを行って話を聞く,という流れが一定数見られるところです。
現行犯で取り締まりを受けたケースでは,捜査機関は事件当時,現場で確認した内容を踏まえてその後の呼び出しや取調べを行います。そのため,呼び出しを受けた際には,事件当時の状況や,当日取り締まりを受けたときの話と矛盾しないように留意するのが出発点となるでしょう。
捜査機関が現認した状況と整合しない話をしてしまうと,自分の発言が信用できないとの評価につながりやすく,刑事処分への悪影響が強く懸念されます。また,事件直後の自分の発言と矛盾する発言をしてしまうのも,同様に信用できないとの判断を招く恐れがあるでしょう。
ただし,以前の発言が誤っていたため訂正をする,というのは問題ありません。その場合は,誤っていた内容と訂正したい内容を明確にし,可能であれば誤っていた原因も明らかにすることが望ましいでしょう。
理由や内容が合理的な訂正であれば,刑事処分への悪影響は考えにくいと言えます。
ポイント
事件当時の状況や発言と矛盾しないことに留意する
合理的な訂正は問題なく可能
2.初めて呼び出しを受けた事件
特に事件当時トラブル等になっておらず,後日になって初めて呼び出しを受けた場合,捜査機関としては,事前に収集した証拠と呼び出し後の供述が一致するかどうか,という点を確認することになります。また,関係者であると特定して呼び出していることを踏まえると,事件の内容についてある程度確かな裏付けを持っていることが見込まれます。
そのため,基本的には自身の記憶をありのまま話すことを念頭に置くのが合理的でしょう。弁護士へのご相談では,「認めると不利益になるのではないか」という悩みを示されることも少なくありませんが,実際にはむやみに認めない態度を見せる方が不利益になりやすいと言えます。
もっとも,記憶に反して疑いを認める必要はありません。認めるも認めないも含めて,自身の記憶をありのままに表明していくことが適切な対応になりやすいところです。
ポイント
記憶の通りにありのまま話す
記憶に反して認める必要もない
3.事件の記憶や心当たりがない場合
公然わいせつ事件について呼び出しを受けたものの,事件に関する記憶がなかったり,該当する出来事の心当たりがなかったりする場合には,まず認否を明確にすることをお勧めします。
記憶や心当たりがない場合,その理由は様々です。そして,具体的な理由によって適切な対応方法は異なります。泥酔状態であって記憶が混濁しているケースと,そもそも事件とのかかわりがないケースでは,認否が真逆になるため,対応方針も真逆になることが見込まれるでしょう。
そのため,まずは疑われている事柄(被疑事実)を認めるべきかそうでないか,という区別を行うことが出発点となります。
認めるべき事件では,記憶がないことを理由に認めていないと理解されないように注意するのが重要な対応です。一方,認めるべきでない事件では,心当たりがないことを一貫して述べ続け,安易に自身の非を認めるような話をしないことに注意するべきでしょう。
ポイント
認否を明確にし,認否に沿った対応をするべき
認否の方針は,記憶がない理由による
③ 弁護士に依頼するとどんな活動ができるか
公然わいせつで逮捕された場合、弁護士の早期介入が重要です。
弁護士が行う主な活動は次のとおりです。
・身柄解放の働きかけ:勾留請求を防ぎ、釈放や勾留取消を求めます。
・取調べへの助言:不利な供述を避けるため、取調べ対応を指導します。
・示談交渉:被害者や関係者への謝罪・弁償を代理で行い、不起訴の可能性を高めます。
・前科回避・影響の軽減:検察官への意見提出や更生の資料整備を通じて、社会的損失を最小限に抑えます。
弁護士に依頼することで、釈放や不起訴、前科回避につながる可能性が高まるため、できるだけ早い段階で相談することが望ましいです。
公然わいせつの事件は、逮捕されても早期釈放の実現できるケースが少なくありません。逮捕後にはできるだけ速やかに弁護士へ依頼することをお勧めします。
公然わいせつに強い弁護士をお探しの方へ
捜査段階で公然わいせつと扱われる事件の中には,本当に公然わいせつ罪に該当するのか,法的には不明確な事件も少なくありません。
また,明らかに公然わいせつ罪に該当する事件の場合には,事後的に適切な対応を尽くすことで,処分の軽減,ひいては不起訴処分が獲得できることも考えられます。
いずれの場合も,具体的な対応方針の決定に際しては,刑事弁護に精通した弁護士へのご相談・ご依頼が適切でしょう。
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早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。
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