交通事故で人にケガをさせてしまった場合、「過失運転致傷」として刑事責任を問われることがあります。その際、多くの方がまず気になるのが、罰金はいくらになるのか、また前科がつくのかといった点ではないでしょうか。

過失運転致傷の罰金は、法律で上限が定められている一方、実際の金額は事故の内容や対応状況によって幅があります。さらに、罰金とは別に、違反点数や免許処分といった行政上の不利益が生じることもあります。

この記事では、過失運転致傷の罰金について、法定刑の考え方や実務上の相場、金額に影響する要素を中心に整理します。あわせて、前科との関係や示談が処分に与える影響など、判断にあたって押さえておきたいポイントを、弁護士の視点から解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

過失運転致傷とは?罰金が科される事故の基本

過失運転致傷とは、自動車を運転する中で注意が十分に行き届かず、その結果として他人にケガをさせてしまった場合に成立する犯罪です。問題となるのは、危険な運転をしようとしたかどうかではなく、運転者として求められる注意を尽くしていたかという点です。

ここでいう「過失」とは、前方への注意が足りなかった、安全確認が不十分だった、状況に見合った速度で走行していなかったなど、日常的な運転場面で起こり得る不注意や判断のずれを指します。特別に乱暴な運転でなくても、結果として人にケガを負わせてしまえば、過失運転致傷に該当することがあります。

また、「致傷」とされるケガの程度についても誤解されがちです。過失運転致傷は、入院を要するような重いケガに限られません。通院が必要となる程度の比較的軽いケガであっても成立する点には注意が必要です。

過失運転致傷が成立した場合には、刑事責任が問題となり、処分として罰金刑が科される可能性があります。法律上は、罰金刑のほかに拘禁刑が定められていますが、実際にどの処分が選択されるかは、事故の内容やその後の対応など、さまざまな事情を踏まえて判断されます。

このように、過失運転致傷に当たるかどうかや、どのような処分が想定されるかは、事故の状況ごとに個別に判断されます。罰金の金額や処分の重さを考える前提として、まずはこの基本的な位置づけを押さえておくことが大切です。

過失運転致傷で罰金になるケースは、刑罰を受ける中では比較的軽微な事件と評価されたものです。弁護活動の際、罰金を目指すことも珍しくはありません。

過失運転致傷の罰金はいくら?法定刑と処分の枠組み

過失運転致傷が成立した場合、刑事処分としてどのような罰が科されるのかは、多くの方が最初に気になる点です。法律では、過失運転致傷に対する処分として、拘禁刑または罰金刑が定められています。

法定刑としては、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が規定されています。ただし、これはあくまで法律上認められている処分の幅を示したものであり、実際にどの処分が選択されるかは、事故の内容や経緯を踏まえて判断されます。

実務上は、すべての事案で拘禁刑が問題になるわけではありません。過失の程度が比較的軽く、被害者のケガが軽傷にとどまる場合や、事故後の対応に大きな問題がない場合には、罰金刑によって処理されるケースが多いのが実情です。この場合、多くは通常の裁判を開かず、略式命令によって罰金の支払いが命じられる形で手続が進みます。

一方で、事故の態様が悪質と評価される事情がある場合には、処分の重さも変わってきます。たとえば、著しい速度超過や信号無視など、事故との因果関係が強い過失が認められる場合や、被害者のケガが重い場合には、罰金では足りないとして、正式な裁判で処分内容が検討されることもあります。

また、事故後の対応も処分判断に影響します。救護措置や警察への連絡が適切に行われているか、被害者への対応が誠実であったかといった点は、罰金で足りるかどうかを判断するうえで考慮される事情の一つです。これらの事情によっては、同じ過失運転致傷であっても、処分の方向性が分かれることがあります。

このように、過失運転致傷の処分は一律に決まるものではなく、法定刑の枠内で、個別の事故状況や対応を踏まえて選択されます。罰金が科されるかどうかを考える際には、金額だけでなく、この処分構造全体を理解しておくことが重要です。

実際の罰金相場はどの程度か

過失運転致傷の罰金については、「結局いくらになるのか」という点が最も気になるところですが、あらかじめ一律に決まった金額はありません。罰金は、事故の内容や経緯、被害の程度などを踏まえて判断されるため、まずは実務上の傾向として相場感を押さえることが重要になります。

一般的には、被害者のケガが軽く、通院期間も比較的短いケースでは、数十万円程度の罰金にとどまることが多いとされています。たとえば、打撲や軽度のむち打ちなどで、日常生活への支障が限定的な場合には、罰金額も比較的抑えられる傾向があります。

一方で、通院期間が長期に及んだ場合や、入院を要するケガが生じた場合には、罰金額が高くなる可能性があります。また、骨折や後遺障害が残るような事案では、罰金では足りないとして、処分全体がより重く検討されることもあります。

もっとも、「軽傷だから必ず低額」「重傷だから必ず高額」と機械的に決まるわけではありません。同じ程度のケガであっても、事故の態様や過失の内容、事故後の対応によって評価は変わります。そのため、相場はあくまで目安であり、個別の事案ごとに金額が決まるという点は押さえておく必要があります。

また、罰金相場を考える際には、略式命令による処理が多いという実務の特徴も踏まえる必要があります。略式命令の場合、裁判所が書面審理を行い、罰金額を定めますが、その判断にあたっては、警察や検察が把握している事故状況や被害の内容が重視されます。このため、事故後の対応や供述内容が、間接的に罰金額に影響することもあります。

このように、過失運転致傷の罰金相場は幅をもって考える必要があります。数十万円程度が一つの目安となることは多いものの、最終的な金額は、事故ごとの事情を総合的に見たうえで判断されるという点を理解しておくことが大切です。

罰金額に影響する判断要素(軽くなる・重くなる事情)

過失運転致傷の罰金額は、ケガの有無だけで決まるものではありません。実務では、事故の結果に加え、事故に至る経緯やその後の対応など、複数の事情を総合して判断されます。ここでは、罰金額に影響しやすい代表的な要素を整理します。

まず重要となるのが、被害者のケガの程度や治療期間です。通院回数が少なく、比較的短期間で回復している場合と、長期の通院や入院を要する場合とでは、評価に差が生じます。後遺障害が残った場合には、結果の重大性が考慮され、罰金額が高くなる、あるいは罰金以外の処分が検討されることもあります。

次に、運転者の過失の内容も重要な判断材料となります。前方不注視や安全確認不足といった過失であっても、その程度や事故との関係性によって評価は異なります。特に、信号無視や著しい速度超過など、事故の発生に直結する過失が認められる場合には、処分が重くなる傾向があります。

また、事故後の対応も罰金額に影響します。事故直後に救護措置を行い、警察への通報を適切に行っているか、被害者に対して誠実な対応をしているかといった点は、処分判断の際に考慮されます。反対に、対応が不十分であったり、不誠実と受け取られる事情がある場合には、不利に評価されることがあります。

さらに、被害者との示談の有無も無視できません。示談が成立している場合には、被害回復が図られている事情として考慮されることがあります。ただし、示談が成立していれば必ず罰金が軽くなるわけではなく、他の事情とあわせて判断されます。

このほか、前科や前歴の有無も影響する要素の一つです。過去に交通事故や交通違反による処分歴がある場合には、同種事案として評価され、処分が重くなる可能性があります。

このように、過失運転致傷の罰金額は、単一の基準で決まるものではなく、個別事情を積み重ねて判断されます。相場や金額だけでなく、どのような点が評価されるのかを理解しておくことが重要です。

罰金でも前科はつく?略式命令と不起訴の違い

過失運転致傷について、「罰金で済んだ場合でも前科が付くのか」という点は、多くの方が不安に感じるポイントです。この点を理解するためには、略式命令と不起訴の違いを正しく押さえておく必要があります。

過失運転致傷で罰金となる場合、実務上は略式命令という手続が用いられることが少なくありません。略式命令は、通常の裁判(公判)を開かず、書面による審理によって、裁判所が罰金の支払いを命じる手続です。
このため、公判による判決ではありませんが、犯罪の成立を前提として裁判所が刑罰を科す処分である点に変わりはありません。

その結果、略式命令によって罰金が科された場合には、刑事処分として前科が付く扱いになります。「裁判をしていないから前科にならない」というわけではない点には注意が必要です。

これに対して、不起訴となった場合は事情が異なります。不起訴とは、検察官が裁判にかけないと判断する処分であり、有罪か無罪かの判断自体が行われません。そのため、不起訴となった場合には前科は付きません

もっとも、どちらの処分になるかは自動的に決まるものではありません。事故の内容や被害の程度、事故後の対応、被害者との示談の有無など、さまざまな事情を踏まえて判断されます。その結果として、略式命令による罰金となる場合もあれば、不起訴とされる場合もあります。

このように、前科が付くかどうかという点では、罰金と不起訴とでは意味合いが大きく異なることになります。処分の重さを考える際には、金額だけでなく、その法的な位置づけにも目を向けることが重要です。

過失運転致傷の罰金と違反点数・免許処分の関係

過失運転致傷では、罰金といった刑事上の処分とは別に、運転免許に関する行政上の処分が行われることがあります。この二つは目的や考え方が異なり、罰金と免許処分はそれぞれ独立して判断されます。そのため、罰金を支払えば免許の問題が解決する、あるいは免許処分を受けたから刑事上の責任が軽くなる、という関係にはありません。

まず、罰金は刑事手続の中で問題となる処分であり、事故について刑事責任を問う観点から、裁判所が科すかどうかを判断します。事故の内容や過失の程度、被害者のケガの状況、事故後の対応などを踏まえ、罰金刑で足りるのかが検討されます。これに対し、違反点数の加算や免許停止・免許取消といった措置は、交通の安全を確保するという行政目的のもと、法令や基準に基づいて行政機関が行う行政処分です。

このため、罰金を支払っても違反点数が消えることはありません。また、行政処分として免許停止や免許取消を受けた場合であっても、刑事手続とは別に、罰金が科されることがあります。刑事処分と行政処分は、同じ事故をきっかけとして行われる場合であっても、判断の枠組みが異なる制度です。

過失運転致傷における違反点数は、被害者のケガの程度や治療期間などを基準として定められます。通院期間が短い軽傷の場合と、長期間の通院や入院を要する場合、後遺障害が残る場合とでは、加算される点数に差が生じます。加算された点数が一定の基準に達すると、免許停止や免許取消といった処分につながる可能性があります。

さらに、過去に交通違反や交通事故による処分歴がある場合には、同じ事故内容であっても、免停期間が長くなるなど、行政処分が重くなることがあります。これは、過去の違反歴を踏まえて再発防止の観点から評価されるためです。行政処分は、一定の通知や手続を経て行われますが、刑事手続とは進行の時期がずれることも多く、先に免許処分の通知が届く場合もあれば、後から行われる場合もあります。

このように、過失運転致傷では、罰金だけで手続がすべて終わるとは限りません。刑事上の処分と行政上の処分は性質が異なるため、罰金の見通しだけでなく、違反点数や免許への影響も含めて全体像を把握しておくことが重要です。

示談は罰金にどのような影響を与えるか

過失運転致傷では、被害者との示談が処分にどのような影響を与えるのかを気にする方が多く見られます。結論から言うと、示談は罰金の判断に影響する重要な要素の一つではありますが、示談さえ成立すれば必ず処分が軽くなる、あるいは罰金が科されなくなる、という関係ではありません。

示談とは、事故によって生じた損害について、当事者間で解決する合意を指します。過失運転致傷の事件では、治療費や慰謝料などについて示談が成立しているかどうかが、被害回復の状況として考慮されることがあります。実務上も、被害者の理解が得られている事情は、処分判断の際に一定の意味を持ちます。

もっとも、示談はあくまで数ある判断要素の一つにすぎません。事故の態様や過失の内容、被害者のケガの程度が重い場合には、示談が成立していても、罰金が科されることがあります。特に、治療期間が長期に及ぶ場合や、後遺障害が残るような事案では、示談の有無だけで処分が左右されるわけではありません。

また、示談の成立時期も重要です。捜査や処分判断が進んだ後に示談が成立した場合と、比較的早い段階で示談が成立している場合とでは、評価のされ方が異なることがあります。早期に示談が成立している場合には、被害回復に向けた姿勢として考慮されやすい一方、処分直前になってからの示談では、影響が限定的にとどまることもあります。

さらに注意したいのは、示談は刑事処分と行政処分の双方に同じ影響を及ぼすわけではないという点です。示談が成立した結果、刑事手続において罰金が軽くなる可能性があるとしても、違反点数や免許処分といった行政上の扱いが自動的に変わるわけではありません。行政処分は、事故の結果や基準に基づいて別途判断されます。このように、示談は過失運転致傷における処分判断の中で重要な位置を占めますが、示談が万能な解決策になるわけではありません。罰金への影響を考える際には、示談の有無だけでなく、事故全体の事情を踏まえて考える必要があります。

過失運転致傷の場合、自動車保険が被害者への支払を行い、金銭面の示談は保険が進めてくれることも多いです。しかし、被害者の許し(宥恕)を獲得してくれるわけではないので、その点は別途示談を取り付ける必要があります。

罰金以外に注意すべき処分と事故後の流れ

過失運転致傷では、罰金の金額だけに目が向きがちですが、実際にはそれ以外にも注意しておきたい点があります。事故後は、刑事手続・行政手続・民事上の対応がそれぞれ並行して進むことが多く、全体像を把握しておかないと、想定外の不利益が生じることがあります。

まず、刑事手続の流れとしては、事故の発生後、警察による捜査が行われ、検察官が処分を判断します。その結果として、略式命令による罰金となる場合もあれば、不起訴となる場合もあります。いずれの場合でも、処分が決まるまでには一定の期間を要するのが一般的です。

一方で、運転免許に関する行政処分は、刑事手続とは別の基準で進められます。そのため、罰金の結論が出る前に、免許停止などの行政処分が先に行われることも珍しくありません。時期が前後することで、「すでに処分は終わった」と誤解してしまうケースもありますが、手続は別々に進行します。

また、事故によって被害者に損害が生じている場合には、治療費や慰謝料などの民事上の問題も発生します。示談が成立するかどうかは、刑事処分や処分の重さに影響することがありますが、民事上の責任そのものが自動的に解消されるわけではありません。保険会社とのやり取りも含め、慎重な対応が必要になります。

このように、過失運転致傷では、罰金だけで問題が完結することは少ないのが実情です。刑事処分、行政処分、民事上の対応がそれぞれどの段階にあるのかを整理し、事故後の流れを把握しておくことが、不要な不安や誤解を避けることにつながります。

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