痴漢で身に覚えがない場合の正しい対応|疑われた直後の注意点

電車内などで、痴漢をしていないにもかかわらず「疑われる」場面に直面することがあります。突然声をかけられ、周囲の視線を集める状況では、冷静に判断することが難しく、とっさの言動がその後の扱いに影響することも少なくありません。

身に覚えがない場合であっても、対応を誤れば誤解が深まり、不利な状況に進んでしまう可能性があります。一方で、初期段階で適切な対応を取ることにより、不要なリスクを避けられるケースもあります

ここでは、痴漢で身に覚えがないと疑われた場合に、その場で意識すべき対応や避けるべき言動、警察を呼ばれた際の考え方について、弁護士の視点から解説します。痴漢冤罪全体の流れや判断の枠組みを把握しておくことは非常に有益です。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

目次

痴漢で「身に覚えがない」のに疑われるのはどのような場面か

痴漢をしていないにもかかわらず疑われるケースの多くは、電車内の混雑した状況で起こります。乗降時や急停車の際に体が接触したり、立ち位置や手の位置が近かったりすると、意図しない接触が誤解を招くことがあります。

また、被害を訴える側が触れた相手を正確に特定できていないまま、近くにいた人を指摘するケースも少なくありません。混雑した車内では視界が遮られやすく、「近くにいた」という理由だけで疑いを向けられることもあります。第三者の指摘や周囲の反応が重なり、事実関係が十分に確認されないまま話が進むこともあります。

このように、痴漢の疑いは、特別な行動を取っていなくても生じ得ます。身に覚えがない場合であっても、疑われた状況や経緯を冷静に整理し、その後の対応を慎重に考えることが重要になります。

痴漢事件で疑いがかかる場合、その根拠は客観的証拠でなく人(特に被害者と称する人)の主張であることがほとんどです。そのため、人の誤解などが原因となることは相当数見られます。

身に覚えがない場合、その場で取るべき基本的な対応

痴漢をしていないにもかかわらず疑われた場合、重要なのは、その時点での言動がどのように受け取られるかを意識することです。突然の出来事に動揺してしまうのは自然ですが、感情的な反応や不用意な行動は、状況を複雑にしてしまうことがあります。

まず、触っていないという立場を落ち着いて伝えることが基本になります。否認の意思を示す際は、強い口調で相手を責めたり、曖昧な言い回しを用いたりせず、事実関係に即した説明を心がけることが大切です。

また、行動面では、逃げようとしていると受け取られかねない振る舞いを避けるという視点が重要になります。身に覚えがない場合であっても、周囲の受け止め方によっては、行動が誤解を招くことがあります。自分の立場を明確にしつつ、状況の整理に必要な対応を冷静に行うことが求められます。

その場の状況や相手の対応によっては、駅員や警察が関与することもありますが、いずれの場合であっても、感情に流されず、身に覚えがないという主張と整合する対応を取り続けることが、その後の展開に大きく影響します。

なぜ「やっていない」と言っても疑いが晴れにくいのか

痴漢をしていないにもかかわらず否認しても、すぐに疑いが解消されるとは限りません。その背景には、痴漢事件特有の捜査構造があります。

痴漢が疑われる場面は、多くの場合、混雑した車内など第三者が事実関係を直接確認しにくい環境で発生します。そのため、初期段階では物的証拠が乏しく、当事者双方の説明をもとに状況が整理されることになります。この過程では、被害を訴える側の申告が出発点となり、疑いが前提として扱われやすい傾向があります。

また、現場対応では、短時間で状況を把握する必要があるため、その場での言動や態度が重視されやすいという特徴があります。落ち着いた説明ができなかったり、説明が二転三転したりすると、事実とは別に「不自然さ」が強調されてしまうこともあります。

さらに、初期のやり取りは、後の捜査や判断の基礎資料として残ることがあります。身に覚えがない場合であっても、最初の段階での説明が十分に整理されていないと、疑いが長期化する要因になり得ます。このような事情から、「やっていない」と主張するだけでは足りず、どのように、どの時点で説明するかが重要になります。初動対応が重視される理由は、まさにこの点にあります。

痴漢事件は、類型的に現行犯で指摘をされても言い逃れを図ってしまうことが少なくありません。他の人から見ると、言い逃れを図っているのか真意で否認しているのかは分からないため、「やっていない」と主張しているから疑いが晴れるとはなりづらいところです。

身に覚えがない場合に避けるべき言動

痴漢をしていないにもかかわらず疑われた場面では、事実と無関係な言動が誤解を深めてしまうことがあります。身に覚えがない場合ほど、冷静さを保ち、発言や行動を慎重に選ぶ必要があります。

まず注意すべきなのは、軽い謝罪や曖昧な同意をしてしまうことです。その場を収めようとして発した言葉であっても、後に事実を認めたものと受け取られるおそれがあります。身に覚えがない場合には、安易に謝罪の言葉を口にすることは避けるべきです。

また、強い口調で相手を責めたり、大声で反論したりする行為も適切とはいえません。感情的な言動は、周囲に「冷静さを欠いている」という印象を与え、事実関係とは別の評価につながることがあります。

さらに、相手の身体に触れる、腕を振り払うなどの身体的な行動は、状況を悪化させる要因になり得ます。意図せずトラブルが拡大することもあるため、慎重な対応が求められます。

身に覚えがないからこそ、不用意な言葉や行動によって状況を不利にしないことが重要です。事実関係を崩さず、落ち着いた対応を続けることが、その後の展開に大きく影響します。

身に覚えがないとの言い分と矛盾する言動、又は矛盾していると思われかねない言動は可能な限り控えましょう。態度の一貫性が重要です。

警察を呼ばれた場合に知っておくべき基本的な考え方

身に覚えがないまま状況が進み、駅員を通じて警察が呼ばれることもあります。この段階で重要なのは、すべてが直ちに刑事手続に移行するわけではないという点を理解しておくことです。

警察の関与があったとしても、最初は事情を確認する目的で話を聞かれるケースが多く、必ずしも逮捕を前提とした対応とは限りません。ただし、その場での説明内容や態度は、その後の判断材料として扱われる可能性があります。そのため、事実関係を整理しないまま詳細な説明を重ねることには慎重である必要があります。

また、警察からの要請には、任意で応じるものと、法的拘束力を伴うものがあります。どのような立場で話を求められているのかを意識し、自分の状況を冷静に把握することが重要です。必要に応じて、弁護士に相談したい旨を伝えること自体は不適切ではありません。身に覚えがない場合であっても、場の雰囲気に流されて不用意な発言をしてしまうと、後から修正することが難しくなることがあります。警察が関与した場面では、落ち着いて対応し、事実関係を崩さない姿勢を保つことが、その後の展開を左右します。

証拠がなくても「身に覚えがない」と主張できる理由

痴漢の疑いをかけられた場面では、「証拠がない以上、不利なのではないか」と感じる方も少なくありません。しかし、証拠が存在しないこと自体が、直ちに不利に働くわけではありません。

刑事手続においては、疑いをかけられた側が無実を証明しなければならないわけではなく、捜査機関側が事実を立証する必要があります。そのため、身に覚えがない場合には、触っていないという立場を一貫して示すこと自体が重要な意味を持ちます。

特に初期段階では、供述の一貫性が重視される傾向があります。説明内容がぶれず、状況に即したものであれば、証拠がないからといって直ちに不利な評価につながるとは限りません。また、当時の混雑状況や立ち位置、周囲の人の動きといった状況に関する情報も、事実関係を判断する材料として扱われることがあります。

身に覚えがない場合には、無理に細かな説明を重ねるよりも、事実関係を崩さず、冷静に主張を続けることが重要です。証拠の有無だけで判断が決まるわけではないという点を理解しておくことが、適切な対応につながります。

否認の主張を裏付ける証拠がないから否認が難しい、という考え方は適切ではありません。また、自分の言い分自体も立派な証拠です。

身に覚えがない段階で弁護士に相談する意味

痴漢をしていないにもかかわらず疑われた場合、早い段階で弁護士に相談することには、結果的にリスクを抑えるという実務上の意味があります。これは、必ずしも逮捕や起訴を前提とした対応ではなく、初期の対応を整理するための相談という位置づけです。

疑われた直後の言動や説明は、その後の捜査や判断の基礎として扱われることがあります。弁護士に相談することで、どの点をどの程度説明すべきか、どのような点に注意すべきかを整理でき、不必要に不利な状況を招くことを避けやすくなります。

また、警察や関係者とのやり取りにおいても、法的な観点から状況を把握することで、冷静な判断がしやすくなります。身に覚えがない場合ほど、「何もしていないから大丈夫」と自己判断してしまいがちですが、初期対応を誤らないこと自体が重要な防御になります。

弁護士への相談は、必ずしも大ごとにするためのものではありません。疑われた段階で状況を整理し、適切な対応を取るための手段として位置づけることで、その後の展開に備えることができます。

適切な方針を早期の段階から一貫するためにも、できるだけ早く弁護士の専門的な意見を仰ぐことが有益と言えます。

身に覚えがないまま対応を誤った場合のリスク

痴漢をしていないにもかかわらず疑われた場面では、初期の対応によって、その後の手続の進み方に差が生じることがあります。意図せず行った発言や説明が、後から振り返った際に重要な意味を持つ場合があるためです。

例えば、その場を早く終わらせたいという思いから、事実関係が十分に整理されないまま説明をしてしまうと、後に説明内容の一貫性が問題とされることがあります。最初の説明は、警察や関係者が状況を把握するための資料として扱われることがあり、後から内容を訂正しようとしても、慎重な判断が求められる場面があります。

また、疑いが一定期間続くことで、警察からの連絡や事情聴取が繰り返される可能性があります。その過程で、仕事や家庭生活に影響が及ぶことも現実的に想定されます。 事実関係が確定していない段階であっても、時間的・精神的な負担が生じる点は否定できません。

このようなリスクは、必ずしも特別な事情がある場合に限られるものではありません。身に覚えがない場合であっても、初期段階での言動を丁寧に選ぶことが、不要な不利益を避けるうえで重要になります。

当事者の立場では、対応が適切か誤っているか、という判断自体も容易ではありません。刑事事件に精通した専門家に判断してもらうことが最も確実です。

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