ストーカー規制法違反で不起訴になる方法|示談の進め方や弁護士依頼のポイントを解説

このページでは,ストーカー規制法違反の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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目次

ストーカー規制法違反で不起訴を目指す方法

①警告を受けた場合の対応

ストーカー規制法違反の事件では,いきなり刑事事件として捜査を行うのではなく,加害者に警告を行う取り扱いが広く行われています。警告は,ストーカー行為を二度と行わないように注意喚起する措置で,これに反してストーカー行為を継続すると重い刑事処罰の対象となり得るため,刑事事件に発展しないための抑止力を期待して行われるものです。

この点,ストーカー行為に関する警告を受けた場合には,その後一切相手方への接触を試みない,という方法を取るのが,不起訴のための最善策となりやすいでしょう。警告された段階で,相手が自分との接触を希望していないことが明らかであるため,どのような方法であっても接触を試みることがプラスになる可能性はありません。

なお,警告のみで終了した場合には,事件を起訴するか不起訴するかという判断自体が生じないため,厳密には不起訴ではありませんが,不起訴処分すら必要のない結果であるという点で,不起訴よりさらに有益な結果と言えるでしょう。

ポイント
警告を受けた段階で,相手への接触を断つことが最も有益

②当事者間での解決

ストーカー行為をしてしまった後,相手が警察に被害申告などせず当事者間で解決する,という形を目指したい場合も考えられますが,この場合には,その後一切相手方に接触しない,という方法で解決を目指すのが最も適切でしょう。

当事者としては,安心のために「相手が解決する意思を示した」ことを確認したい,と考えてしまいますが,相手にそのような意思表明を求めることはいささか現実的ではないことが多く見られます。場合によっては,相手に解決の相談を試みる動き自体が,ストーカー行為の継続と理解されてしまい,大きな不利益につながりかねません。

ストーカー規制法違反の事件の場合,当事者間での解決は積極的に形に残すことが難しく,互いに今後何もしないという消極的な解決が現実的であるケースが多いでしょう。自分が安心できる方法を望んでしまいがちですが,安心を求めるあまりかえって不利益を被らないように注意したいところです。

ポイント
当事者間での解決は,解決内容を形に残す方法を取ることが難しい
今後何もしない,という消極的解決が現実的になりやすい

③呼び出しへの対応

ストーカー規制法違反の事件で警察から呼び出しを受けた場合,不起訴を目指す上で非常に重要となるのは,相手に接触しない意思を明確に表明することです。

ストーカー事件とされるものは,その類型上,加害者から被害者に対する継続的な連絡や接触が非常に懸念されやすい傾向にあります。そして,今後の接触が心配される事件であればあるほど,刑罰を科し,刑罰による抑止力の効果を期待する取り扱いが多くなります。一度刑罰を受けてしまうと,その後に重ねて刑罰を受ける際,前科を踏まえてより重い刑の対象となってしまうため,刑罰にはその後の再発を踏みとどまらせる効果があると理解されているのです。

逆に,刑罰を科さなくても再発が見込まれないのであれば,不起訴となる可能性が高くなるということになります。呼び出しを行う捜査機関としても,今後の接触が心配されるかどうかによって取り扱いを変えようという意図があるケースも少なくありません。

ポイント
呼び出しへ対応する際には,相手に接触しない意思を明確に表明する

④言い分がある場合

ストーカー規制法違反の事件では,相手との言い分に相違があるケースが少なくありません。その場合,相手の言い分のみを鵜呑みにしようとする捜査機関の対応に不満が生じることも珍しくはないでしょう。
ただ,言い分がある場合には,言い分を表明するかどうか,表明する場合にどのような方法を取るべきかは,慎重な検討が望ましいところです。その判断を誤った場合,不起訴処分を自ら遠ざける可能性も否定できません。

まず,捜査機関に伝えるべき言い分は,犯罪の成否や犯罪行為の内容に影響を及ぼす点のみとするのが適切です。それ以外の情報は,捜査機関にとって不要であり,耳を傾ける意思が捜査機関にないため,伝えるメリットに乏しいと言えます。しかも,犯罪事実を認める事件であれば,反省をしていないとの評価につながる可能性もあり,デメリットすら生じかねません。
また,言い分を示す際は,できる限り冷静に,内容を整理した形で行うことが適切です。逆に,最も避けるべきは「相手と話をしてハッキリさせたい」など相手との接触を希望するスタンスで,このような態度は被害者への接触が危険視されるため,むしろ不起訴処分にすべきでないとの判断を促す可能性もあり得るでしょう。できれば,弁護士に依頼の上,弁護士を通じて言い分を表明することをお勧めします。

ポイント
捜査機関に伝えるべき言い分は,犯罪の成否や犯罪行為の内容に影響する点
相手と話をしたい,というスタンスは表明すべきでない

ストーカー規制法違反で不起訴になる可能性

ストーカー規制法違反の事件は,不起訴になる可能性が十分に考えられる事件です。

まず,ストーカー規制法違反の場合,捜査に着手する前に警告や禁止命令といった,今後のストーカー行為をやめるよう求める措置が取られるケースも少なくありませんが,警告や禁止命令は,それに従っている限り起訴しないことを念頭に置いたものです。そのため,警告や禁止命令を受けた後,その措置に従って特段の動きを取らなければ,起訴されることは考え難いでしょう。

もっとも,内容や程度が悪質と評価される事件の場合,警告や禁止命令なく捜査の対象となることも考えられます。このケースでは,その後に何もしなくても起訴されてしまう可能性があり得ます。
現実に犯罪捜査の対象となった場合には,示談等によって被害者との間での解決を目指すことが有力でしょう。当事者間でトラブルが解決し,被害者が加害者の刑罰を望まないとの意向を表明した場合には,不起訴となることが見込まれやすいと言えます。

ポイント
警告や禁止命令に従っている場合,起訴されることは考え難い
捜査を受けた場合には,被害者との示談を目指すことが有力

不起訴に関する基礎知識

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

ストーカー規制法違反の示談

ストーカー規制法違反事件で示談は必要か

ストーカー規制法違反事件の場合,解決のために示談は必要不可欠と理解するのが適切です。

そもそも,ストーカー規制法違反となる行為は何かといえば,「つきまとい」や「GPSによる位置情報の取得」を同一人物に対して反復して行うことです。恋愛感情が満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的でこれらの行為をするのは,被害者の精神的苦痛が非常に大きいのみでなく,被害者への更なる危害も懸念されるため,ストーカー規制法で特に禁じられ,刑罰の対象となっているのです。

そのため,ストーカー規制法違反とされる行為は,特定の被害者に向けた行為であって,その責任の重さは,被害者に与える損害の大きさに応じて定められることが一般的です。被害者が大きな苦痛を受けているほど,ストーカー規制法違反の責任も重くなります。

この点,ストーカー規制法違反で示談をすることは,被害者に生じた損害の大部分が回復されたことを意味します。そして,示談によって被害者の損害が回復されている場合,これに応じて犯罪の責任の重さも大きく減少するのが通常です。

被害者の損害を事後的に回復する手段は示談以外になく,示談で被害者の損害を回復することの効果は極めて大きいため,ストーカー規制法違反事件を解決するためには示談が必要と考えるべきでしょう。

ポイント
ストーカー規制法違反の責任の重さは,被害者の苦痛の大きさに影響される
示談により被害者の苦痛が回復されるため,責任の軽減につながる

ストーカー規制法違反事件における示談のメリット

①逮捕を防げる

ストーカー規制法違反の事件が捜査される場合は,ストーカー行為が執拗に繰り返されている,と理解された場合であることが一般的です。

ストーカー規制法違反の事実を警察が把握した場合,まずは,警告や禁止命令という方法で加害者にそれ以上のストーカー行為をしないよう求めることが通常です。その後にトラブルが起きなければ,捜査を受けることなく終了することが見込まれます。
一方,警告や禁止命令にもかかわらずストーカー行為が継続された場合には,犯罪捜査に踏み切らなければならない,という判断になります。警告や禁止命令ではやめてくれなかった以上,より強い手段に出なければならないためです。

そうすると,ストーカー規制法違反の捜査は,開始された段階では既にストーカー行為を強制的に食い止める必要が大きい状況にある,という場合が非常に多い傾向にあります。そのため,確実にストーカー行為を防ぐ方法として,逮捕勾留といった身柄拘束が行われやすいです。

この点,ストーカー規制法違反の事件で示談が成立した場合,その後に逮捕されることは考えにくくなるでしょう。なぜなら,被害者と示談が成立している以上,被害者に対する危害が生じる可能性はなくなったと理解できるためです。被害者に対する危害が生じないのであれば,危害を防ぐために逮捕する必要もなくなるわけです。

ストーカー規制法違反では逮捕されやすい傾向があることを踏まえると,示談によって逮捕を防げるメリットは非常に大きなものと言えるでしょう。

ポイント
警告や禁止命令を無視してのストーカー行為は逮捕の可能性が高い
示談が成立することで,逮捕されることは考えにくくなる

②前科を防げる

ストーカー規制法違反の場合,被害者が特に加害者を許しているケースを除き,起訴されて何らかの刑罰を受けることが通常です。刑罰の内容としては,一般的には罰金刑などが多く見られますが,悪質なケースでは罰金にとどまらず,公開の裁判を受けて執行猶予又は実刑というより重い刑罰の対象になる可能性も否定できないところです。

刑事罰の種類

この点,ストーカー規制法違反の刑事処分は,被害者の意向に極めて大きく左右されます。被害者が加害者への刑罰を希望しなければ,刑罰が科される可能性は非常に低くなるでしょう。
そして,被害者が加害者への刑罰を希望しない,ということになる唯一の手段が,示談です。示談が成立する場合,被害者は加害者の刑罰を望まないという意向を示すことになるため,刑罰が科される可能性は極めて低くなります。

ポイント
ストーカー規制法違反事件は,被害者が許している場合を除き起訴されやすい
示談が成立すれば,被害者が許していることを明らかにできる

③当事者間の紛争が解決できる

ストーカー規制法違反事件に至る当事者間では,長期間に渡る複数のトラブルが起きていることが通常です。類型的に,見知らぬ人同士の間で起きることがほとんどない事件のため,当事者間でトラブルがあり,それによって感情的な対立の生じたことが,ストーカー行為につながっている,という場合が大半です。
そのため,ストーカー規制法違反事件の当事者間では,ストーカー行為以外にも解決すべき紛争がいくつも存在することが多く見られます。

この点,示談を行うときには,これらの当事者間の紛争を一挙に解決する形を取ることが通常です。両当事者にとって,ストーカー行為だけを解決しても当事者間の紛争全体の解決にはならないので,ストーカー行為のみを切り取って示談し,それ以外の紛争を棚上げにするということはあまりありません。
そうすると,ストーカー規制法違反事件で示談をすることによって,当事者間の紛争は一通り解決することになります。示談後に紛争の火種が残らないのは,大きなメリットと言えるでしょう。

ポイント
当事者間には,長期間に渡る複数のトラブルがある
示談によって,すべてのトラブルを一挙に解決できる

ストーカー規制法違反事件で示談をする方法

ストーカー規制法違反事件の場合,当事者間に交友関係があったというケースが多いため,被害者の連絡先や住居などを把握していることが珍しくありません。そのため,示談を試みたいと考えた場合,被害者に直接連絡をすることも不可能ではないでしょう。

しかしながら,被害者への直接の連絡は厳禁です。示談目的であっても,決して行わないようにするべきと考えましょう。
それは,ストーカー規制法違反事件として捜査されている以上,被害者が加害者側からの直接の連絡を受け入れる可能性がないためです。最悪の場合,更なるストーカー行為と判断され,より責任が重くなる恐れも否定できません。

ストーカー規制法違反事件で示談を試みる場合には,弁護士に依頼し,弁護士から捜査機関(警察や検察)の担当者に連絡してもらうのが適切です。連絡を受けた捜査担当者が,被害者に示談の意向を確認し,被害者が了承すれば,弁護士との間で示談交渉を開始することが可能になります。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

ストーカー規制法違反事件の示談金相場

ストーカー規制法違反事件の示談金は,ケースによりますが30~150万円ほどとされる場合が多く見受けられます。事件類型的に,示談金の幅が非常に大きくなりやすいという特徴があるところです。

示談金額に影響を与える事情や問題点としては,以下のような点が挙げられます。

①当事者間の関係全体の清算となること

ストーカー規制法違反の事件は,それまでに交友関係やトラブルがあった間柄で生じることが通常です。そのため,示談をしようとすれば,これまでの交友関係全体を清算するための話し合いとならざるを得ないことが多いでしょう。

そのため,当事者間の従前の関係が複雑であればあるほど,被害者からは高額の示談金を求められることが増えやすい傾向にあります。「あんなこともされた,こんなこともされた」という具合に,過去のトラブルについても責任を取る内容の示談を求められることは珍しくありません。

ストーカー規制法違反の事件で示談を試みる場合は,ストーカー行為とされたもののみでなく,それまでの一切のトラブルが交渉の対象になりやすい点を想定しておくことが適切です。
示談金額に幅が生じやすいのは,当事者間の関係がケースによって様々であるためです。

②刑罰との関係

ストーカー規制法違反の事件では,想定される刑罰を上回る示談金が発生する場合もある点に特徴があります。

ストーカー規制法に定められている刑罰は,以下の3種類です。

①ストーカー行為をした場合
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

②禁止命令に反してストーカー行為をした場合
2年以下の懲役又は200万円以下の罰金

③禁止命令に違反した場合
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金

ストーカー行為があったか,禁止命令の違反があったかによって刑罰の程度が異なりますが,禁止命令違反(③)では罰金が50万円以下,ストーカー行為(①)では罰金が100万円以下と定められているため,100万円を超える示談金になった場合,法律が定める罰金額の上限を超える金銭を支払う必要が生じやすいことになります。
これは,ストーカー規制法違反の責任の重さと比較して支払金額が高すぎる可能性がある,との理解もできるでしょう。

もっとも,これは当事者間の関係をすべて清算するために起きることであり,単にストーカー規制法違反に対する示談金,というだけの意味合いではありません。そのため,金額が法律上の罰金額上限を超えたとしても,直ちに不当という考え方はしなくてもよいでしょう。

法的にも,他のトラブルが別途犯罪に当たる場合,複数の犯罪で処分される可能性があるため,ストーカー規制法違反の罰金額上限を超える刑罰になることも十分に考えられます。その意味でも,示談金額とストーカー規制法の刑罰との関係はそれほど意識する問題ではないと考える方が適切です。

ポイント
当事者間の関係や経緯によって,示談金額は変わりやすい
罰金額の上限を超える示談金になるケースもある

ストーカー規制法違反事件の示談で注意すべきこと

①相手に何かを要求をする交渉ではない

ストーカー規制法違反の事件では,当事者双方に何らかの言い分がある場合がほとんどです。加害者側にも,被害者への不満があるからこそ,ストーカー行為とされる行動に及んだはずです。

しかし,示談交渉の場はその不満を相手にぶつけたり,相手に何かを求めたりするものではない,という点に注意が必要です。示談の目的は,あくまでストーカー行為を被害者に許してもらうことですから,相手に自分の不満をぶつけるような行動は,示談の目的に反する極めて不合理な行為と言えるでしょう。

ストーカー事件として扱われている以上,相手が今後に渡って交友関係を保ちたいと思っている可能性はないと考える必要があります。そのため,示談に際しては少しでも円滑に,穏やかに当事者同士の関係を終了させることを目指しましょう

②親告罪ではない

ストーカー規制法違反は,従来,親告罪であったため,示談によって告訴が取り消されれば,確実に不起訴となる事件類型でした。しかし,平成28年(2016年)の法改正によって,親告罪ではなくなったため,現在は告訴がなくても事件の起訴が可能です。つまり,告訴がなくても刑罰を受けて前科が付く可能性があります

そうすると,示談をしても法的には起訴される可能性がゼロにはならない,ということになります。示談をすることで直ちに事件が終了するわけでないことには注意が必要でしょう。
もっとも,現実的には示談が成立したストーカー規制法違反の事件は,不起訴となることが通常です。被害者が起訴を希望しない以上,その意向を尊重して不起訴処分とされる傾向にあります。

ストーカー規制法違反で不起訴を目指す場合の注意点

①示談による解決の有効性

ストーカー規制法違反の事件で不起訴を目指す場合,具体的な方法は示談が最も有力である場合が非常に多いところです。逆に,示談をして被害者の許しを得る以外には具体的な方法に乏しい場合も多い,という点には注意が必要となるでしょう。

ストーカー事件とされるトラブルは,個別の被害者を保護することが非常に強く重視されるため,被害者側の意向が処分結果に直接影響しやすいと言えます。裏を返せば,被害者を保護する必要がほとんどない場合,重大な処分は必要がないと理解されやすいことになります。

ただし,事件類型的には,示談による解決が難しいケースが多いという面もあるため,あわせて注意が必要です。示談交渉を通じて関わりを持つこと自体を希望しない被害者が多く,示談を試みても「示談は不要だから今後接触してほしくない」などと接触拒否の意向を示されることが少なくないためです。

ストーカー規制法違反の場合,示談が非常に有効な解決手段であるものの,その実現が難しいケースも多い,という点を踏まえておくことが適切です。

②行為の悪質性の判断基準

ストーカー行為が悪質であるほど,重大な処分の対象になりやすく,不起訴を目指すことも難しくなります。この点,行為が悪質であるかどうかの判断は,本人の意図ではなく第三者の客観的な観点を基準に行う,ということには注意が必要です。

例えば,ただ相手と話し合いをしたい,という気持ちで「つきまとい等」に当たる行為を繰り返していた場合,その「つきまとい等」の行為が悪質であるかどうかを判断するにあたって,ただ相手と話し合いをしたいと思っていた,という点を十分に評価してくれることは期待できません。なぜなら,ただ話し合いをしたい,という気持ちであることは,行為が悪質でないことの理由にはなり得ないためです。話し合い目的であっても,恨みの気持ちをぶつける目的であっても,同様に悪質とみなされることを想定しておくのが適切でしょう。
この場合,行為の悪質さは,端的に行為の内容を客観的に評価して判断されることが通常です。

③否認の主張をする場合

被害者や捜査機関の言い分が自分の認識と違う場合,否認の主張も有力な対応です。もっとも,自身の主張が法的に否認になっているか,という点は,十分な確認が必要です。

特に,行為の内容に争いがなく,その動機や目的が違うという主張は,否認の意味を成しておらず,メリットがないことに注意が必要でしょう。例えば,「その行為をしたのは,嫌がらせ目的ではなく復縁したいと思っていたからだ」という主張がこれに当たります。
ストーカー規制法違反に該当するのは,「恋愛感情その他行為の感情」や「それが満たされなかったことに対する怨恨の感情」を満たす目的で行為を行った場合です。そのため,嫌がらせ目的であっても,復縁目的であっても,同様にストーカー規制法違反には当たることとなります。

否認の方針を取る場合には,法的な主張の方針を事前にしっかり検討することが適切です。安易に判断することなく,弁護士に依頼・相談などして慎重に動くことをお勧めします。

弁護士へ依頼するメリット

ストーカー規制法違反で弁護士に依頼すべきケースと選び方

①逮捕を防ぐため

ストーカー規制法違反の事件では,当事者間でのトラブルが深刻化することを防ぎ,被害者の身体などを守るため,逮捕されることが相当数見られます。一般的に,警告や禁止命令といった再発防止の措置を取った後,これに反する形でストーカー行為がなされたと確認した場合,逮捕に踏み切る場合が多くなりやすいところです。

そのため,意図に反してストーカー行為を続けたと判断されてしまったり,勇み足で逮捕されてしまったりすることを防ぐ必要が生じ得ますが,このようなときには弁護士に依頼し,弁護士から法的に適切な対応,主張をしてもらうことが望ましいでしょう。
逮捕が懸念されるケースでは,弁護士選びが非常に重要となります。

②早期釈放のため

逮捕されてしまった場合,その後に身柄拘束が継続するか,早期に釈放されるかは大きな問題です。逮捕後は,最大72時間以内に「勾留」という手続で身柄拘束が継続するか判断され,勾留が決まると10日間,その後に「勾留延長」が決まると更に最大10日間の身柄拘束を受ける可能性があります。

この点,勾留や勾留延長を回避して早期釈放を実現するためには,弁護士へ依頼の上,弁護士に適切な動きを取ってもらうことが必要です。弁護士が迅速に活動を行ったために早期釈放できた,というケースも決して珍しくはありません。
逮捕後には,早期釈放を試みるための弁護士選びをお勧めします。

③不起訴処分のため

刑事事件は,捜査を尽くした後,検察によって起訴されるか不起訴となるかが判断されます。起訴されると,無罪でない限りは刑罰を受けて前科が付きますが,不起訴となれば刑罰を受けることはなく,前科も付きません。そのため,起訴されるかどうかは,今後を左右する極めて重要な事柄となります。

ストーカー規制法違反の場合,弁護士の積極的な動きによって不起訴処分を獲得できる場合が少なくありません。特に,弁護士が間に入れば当事者間で解決(示談)ができる,という場合には,弁護士の有無で起訴か不起訴かが決定的に決まる可能性も高いでしょう。

ストーカー規制法違反の事件で不起訴処分を目指したい場合には,適切な弁護士選びを強くお勧めします。

④適切な取り調べ対応のため

ストーカー規制法違反と扱われる事件の場合,加害者とされる側にも一定の言い分があるケースは少なくありません。当事者双方の意思疎通が十分にできなかった結果,一方的にストーカー行為を受けたと主張された場合,加害者とされることに納得できないこともあり得るでしょう。
また,ストーカー行為に心当たりがある場合にも,その経緯や動機は様々であり,意図を汲んで欲しいと感じることもあり得ます。結果としてストーカー行為と評価される行動に出てしまっただけで,真意は異なる,と言いたい場合もあるでしょう。

しかしながら,多くの場合,自分の感情や考えを捜査機関にぶつけても,あまりメリットはないのが実情です。適切な取調べ対応を冷静に判断することは難しいため,取調べが見込まれる場合には,弁護士に相談・依頼し,対応方針について法的な判断を仰ぐことをお勧めします

ストーカー規制法違反で弁護士を選ぶタイミング

①警察の取り締まりを受けたとき

ストーカー規制法違反に対する警察の対応としては,いきなり刑事事件としての本格的な取り扱いをするのではなく,まずは警告や禁止命令といった再発予防のための措置を取ることが多く見られます。警告や禁止命令を行ったにもかかわらず,つきまとい等のストーカー行為が継続していると判断された場合には,そこで刑事事件の対象とすることが通例です。
そのため,警告や禁止命令という形で警察の取り締まりを受けることが手続の出発点となりやすく,そのような取り締まりを受ける段階で弁護士に相談や依頼を行うことが有力な手段と言えます。

早期の段階で弁護士を選ぶことにより,取り締まりに対する適切な対応を知ることができ,不要な不利益を避ける動きが可能になります。また,捜査機関に対しても,法律の専門家である弁護士の目があることにより,法的に正当とは言えない取り扱いや手続を控えさせる効果も期待できるでしょう。

ポイント
ストーカー規制法違反に対しては,捜査の前に警告などの措置が行われやすい

②逮捕されたとき

ストーカー規制法違反の事件では,当事者間での接触の危険があると判断されやすいことから,被害者保護の目的で逮捕されるケースも相当数見られます。そして,逮捕された場合には,その後に身柄拘束が継続するのか,最終的な刑事処分がどうなるのか,といった点に対処するため,弁護士選びの上で適切な弁護活動を行ってもらうことが重要です。

そのため,ストーカー規制法違反で逮捕されてしまった場合には,速やかな弁護士選びを強くお勧めします。
特に,ストーカー規制法違反の場合,特定の相手方(被害者)が存在しており,その相手方との間で何らかの解決ができるか,といった点が手続の行方を大きく左右します。相手方との解決を目指すためには,弁護士が窓口となって対応することが不可欠でもあるため,当事者間での解決に適した弁護士選びを行うことも肝要と言えます。

ポイント
逮捕後の対処には弁護士の役割が重要
当事者間の解決を図る際にも弁護士が不可欠

③起訴されたとき

刑事事件が起訴された場合,原則として裁判所の公開の法廷で裁判手続(公判)を受けることになります。公判の内容を踏まえ,裁判所が判決を決めることになるため,公判における対応は非常に重要なものとなります。
また,公判でより有益な主張や証拠を出すため,事前の対応や準備も同様に重要です。

この点,公判に向けた準備や公判の場での対応をどうするのが適切か,という判断は,専門性ある弁護士による法的な判断が必要となります。実際の準備や対応も,弁護士を通じて行うことが非常に多く,弁護士選びが公判の内容を左右すると言っても過言ではないでしょう。
そのため,起訴されて公判を受ける際には,弁護士選びを十分に行うことをお勧めします。

ポイント
起訴後の公判対応や準備によって,判決が異なる
公判への対応や準備は,弁護士によって内容が左右される

ストーカー規制法違反の弁護士を選ぶ基準

①ストーカー規制法の手続を把握しているか

ストーカー規制法違反の事件は,警告や禁止命令といった特徴的な制度があり,手続の流れが他の事件にはない経過をたどることも珍しくありません。弁護士の対応は,手続の流れを正しく理解した上で,それぞれの段階で適切な動き方を判断することが必要となります。

そのため,ストーカー規制法違反の事件で弁護士選びを行う際には,ストーカー規制法違反に関する手続を正しく把握しているかどうかを重要な判断基準とすることをお勧めします。手続の理解があいまいだと,適切な対応方針を判断することができず,結果として不利益につながってしまう可能性も十分に考えられます。

②具体的な弁護方針を示してくれるか

ストーカー規制法違反の場合,個別の内容や状況に応じて,取るべき方針が大きく変わりやすいところです。相手方への対応一つを取っても,積極的に解決を目指すべき場合もあれば,何もせず相手に接触する意思を示さない方がよい場合もあります。どちらが望ましい動きであるかは,弁護士が専門的な知見をもとに判断するのが適切です。
その他にも,捜査機関に対してはどのような対応を取るべきか,それはどのような理由や目的かなど,明確にすべき方針は多岐に渡ります。

そのため,ストーカー規制法違反の弁護士を選ぶ際には,対応方針,弁護方針の具体的な内容やその理由を示してくれるか,という点を判断基準の一つとすることをお勧めします。弁護方針を示してもらい,その内容や理由に納得することができれば,弁護士選びを後押しする重要な判断材料にもなるでしょう。

③適切に軌道修正してくれるか 

ストーカー規制法違反の事件は,当事者間のトラブルが発展する形で刑事事件化していることが少なくありません。そのため,互いに相手への感情を強くしており,時に誤った行動に出てしまうこともやむを得ずあり得るところです。
そのため,ストーカー規制法違反の事件を扱う弁護士には,依頼者となる当事者の意向に沿った動きを尽くすのみでなく,必要に応じて依頼者にブレーキをかける役割も求められると言えます。

弁護士探しに際しては,自分が意図せず動きを誤った際に,弁護士が適切に軌道修正してくれるかどうかを判断基準の一つとすることが有力です。具体的には,事前に避けるべき行動を具体的に指摘してくれることや,自分が取るべき行動の方針を具体的に示してくれることを判断の目安にすることが一案でしょう。

④事務所所在地

ストーカー規制法違反に関する捜査は,被害者側の居住地に近い警察署で行われることが一般的です。事件の発生場所となりやすいことや,被害者が最寄りの警察署に相談しやすいことなどが大きな理由とされています。そして,弁護活動を行う場合も,内容によっては警察署や被害者の居住地近くに行くなど,その周辺場所での動きが必要となることが考えられます。

そのため,事務所の所在地が被害者方や警察署からあまりに離れている場合,弁護活動に限界が生じてしまう可能性があるため,注意するのが望ましいところです。
必ずしも遠方の弁護士では対応が不可能というわけではありませんが,判断する際の目安の一つとしては持っておくとよいでしょう。

ストーカー規制法違反の弁護士選びの注意点

①あくまで目的は刑事弁護であること

ストーカー規制法違反として問題になる事件の中には,加害者とされている側が相手に強い不満を持っており,相手に態度を改めて欲しい,謝罪してほしい,といった希望のあることが一定数見られます。弁護士へのご相談にも,「相手が間違っている」という主張がメインであることが散見されます。

しかし,ストーカー規制法違反として警察等の取り締まりを受けている状況では,相手の間違いを主張したり,相手への不満を指摘したりすることは不適切です。なぜなら,警察等の捜査機関は,当事者間の仲裁をする立場ではなく,犯罪捜査を行う立場でしかないためです。警察側に聞き入れたり対応したりする意思も必要もない以上,メリットのない動きと言わざるを得ません。

弁護士選びを行う際には,あくまでその目的が刑事事件への対応であること,刑事処罰の回避や軽減のために弁護士選びをしているということを,しっかりと念頭に置くことをお勧めします。

②弁護士への相談時間に制限があること

弁護士選びに際しては,弁護士との法律相談を行うことが一般的ですが,その相談時間には30分以内,1時間以内といった制限のあることが通常です。この限られた時間の中で,事情を伝え,弁護士の見解を仰ぎ,今後の進め方の判断をする,という手順を踏まなければならないため,明確な目的意識なく相談に臨んでしまうと,相談時間はあっという間に過ぎてしまう可能性が高くなります。

そのため,弁護士選びに際しては,相談時間に限りがあることを踏まえ,時間内に実りある相談ができるよう,相談の目的や聞きたいことをできるだけ整理して臨むことが有益でしょう。

③トータルの経済的負担を把握しておくこと

弁護士への依頼には,弁護士費用の負担が必要となりますが,具体的な金額や,個別の着手金,成功報酬等の生じる条件は,法律事務所によって様々です。そのため,どのような弁護活動をしてもらえるかと同時に,その活動にはどの程度の費用が見込まれるかを把握することが適切でしょう。
また,ストーカー規制法違反の事件では,相手方(被害者)との間で金銭的な解決を目指すことも有力な手段になりやすいです。もちろん,金銭を支払っての解決を目指す場合,相手方に支払う金銭も負担する必要が生じるため,経済的負担としては,相手への示談金も加味しておく必要があります。

このように,弁護士への依頼には複数の経済的負担が想定され,その金額が一律ではないため,弁護士選びに当たってはトータルの経済的負担がイメージできるよう,注意して検討することをお勧めします。

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