このページでは,不同意性交等罪の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。
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不同意性交等罪で逮捕される可能性
不同意性交等罪の事件は,捜査に際して逮捕される可能性が非常に高いでしょう。警察などが捜査を行い,被疑者を特定した場合,特段の事情がない限りは逮捕すると考えても差し支えないでしょう。
不同意性交等罪の場合に逮捕される可能性が高い理由としては,以下のような点が挙げられます。
逮捕の可能性が高い理由
1.事件が非常に重大である
2.被害者の心理的負担への配慮を要する
【1.事件が非常に重大である】
刑事事件における逮捕は,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防止する目的で行われる手続です。そのため,被疑者が逃亡する可能性や被疑者による証拠隠滅の可能性が高いと思われるケースでは,逮捕する必要が特に大きいということになります。
この点,事件の重大性が際立っており,刑罰が科される場合には重い処分になると見込まれる場合,逃亡や証拠隠滅の危険性が高くなるとの理解が一般的です。事件の内容や見込まれる処分が重ければ重いほど,逃亡や証拠隠滅によって刑事処分を防ぐ利益が大きくなるためです。
不同意性交等罪は,被害者の性的自由を極めて強く侵害する犯罪であり,非常に重大な事件類型です。その刑罰も,実刑判決を念頭に置くほど重いものになることが見込まれます。
そのため,不同意性交等罪の事件では逃亡や証拠隠滅が懸念されやすく,逮捕の可能性が高くなるのです。
【2.被害者の心理的負担への配慮を要する】
不同意性交等罪の事件を取り扱う捜査機関は,深刻なダメージを受けた被害者側の心理的負担に配慮することが必要となります。被疑者が特定されたにもかかわらず,逮捕もなく放置されているとなれば,被害者にとっては強い恐怖や精神的苦痛の原因となることが避けられません。
そのため,不同意性交等罪の事件では,被疑者が特定できた段階で逮捕し,被疑者が認めているなどの情報を被害者に伝えることで,被害者側の心理的負担を和らげる手法が広く取られています。このように,被害者保護の一環として,逮捕を伴う捜査方法が選択されやすいという傾向が見られるところです。
不同意性交等罪の場合,特に逮捕が不要・不適切であるという事情がなければ,逮捕されるのが通常であるとの理解が適切でしょう。
ポイント
不同意性交等罪は逮捕の可能性が非常に高い
事件の重大性や被害者保護が大きな理由
逮捕の種類や流れ
逮捕の種類・方法
法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。
①現行犯逮捕
現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。
典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。
ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。
なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。
準現行犯逮捕が可能な場合
1.犯人として追いかけられている
2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている
3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある
4.身元を確認されて逃走しようとした
ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能
②通常逮捕(後日逮捕)
通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。
裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。
通常逮捕の要件
1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。
2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。
通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。
ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要
③緊急逮捕
緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。
緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。
緊急逮捕の要件
1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う
緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。
緊急逮捕と現行犯逮捕の違い
現行犯逮捕 | 緊急逮捕 | |
逮捕状 | 不要 | 逮捕後に請求が必要 |
一般人の逮捕 | 可能 | 不可能 |
逮捕後の流れ
逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。
逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。
ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される
逮捕による不利益
逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。
①社会生活を継続できない
逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。
また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。
②仕事への影響
逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。
また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。
③家族への影響
逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。
このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。
④報道の恐れ
刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。
万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。
⑤前科が付く可能性
逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。
不同意性交等罪で逮捕を避ける方法
①自ら警察に出頭する
逮捕は,逃亡や証拠隠滅を防ぐための捜査手続であるため,逮捕を防ぐ試みとしては,積極的な行動によって逃亡や証拠隠滅の可能性がないと理解してもらう方針が有力です。具体的には,自ら警察に出頭し,自分から捜査協力を申し出ることが一案でしょう。
自分から事件の情報を可能な限り提供し,想定される証拠物を提出するなどすれば,そのような行動を取る人物が逃亡や証拠隠滅をする可能性があるか,という点には大きな疑問が残ることになります。自ら出頭する行為は,自分から捜査を受けに行くという負担を受け入れる代わりに,逃亡や証拠隠滅が見込まれないから逮捕は不要である,との判断を期待できる試みと言えるでしょう。
なお,犯罪事実や犯人が発覚していない段階で自ら警察に出頭した場合,法律上「自首」が成立する可能性もあります。自首が成立する場合には,その後の取り扱いや最終的な刑事処分はより軽くなる可能性が上がるでしょう。
②被害者との示談を試みる
被害者との示談が成立し,被害者との間で事件が解決している場合,その後に警察の捜査が行われる可能性は現実的になくなります。捜査が行われなければ,捜査の手段である逮捕も行われないため,逮捕を確実に防ぐことが可能です。
もっとも,捜査前や逮捕前に被害者との示談を試みることができるのは,かなり限定的なケースに限られるでしょう。被害者と面識があり,被害者との間に交友関係があるような間柄でないと,示談を試みる手段はありませんし,連絡手段があったとしても,被害者が示談交渉に応じる意向でなければ示談は進まないためです。
逆に,警察などの捜査前に示談を試みることのできる状況であれば,可能な限り示談交渉を尽くし,当事者間での解決を目指すことが賢明です。
③取り調べへの適切な対応に努める
逮捕されていない状態で取調べを受けることになった場合,取調べに対して適切な対応を尽くすことで,逮捕を防ぐ効果が期待できる可能性もあります。具体的には,以下のような対応が有効でしょう。
取り調べへの適切な対応
1.出頭を拒まない,すっぽかさない
2.問いには可能な限りの回答をする
3.提出を求められた証拠はできる限り提出する
このように,円滑な捜査への協力姿勢を示すことが,逮捕回避の可能性を高める取調べ対応と言えます。
不同意性交等罪の逮捕は弁護士に依頼すべきか
不同意性交等罪の逮捕に関する対応は,弁護士への依頼が有力な手段です。
まず,逮捕回避の重要な手段としては被害者との示談が挙げられますが,具体的な示談交渉は,弁護士を窓口に行うことが望ましいでしょう。現実的には,当事者が直接交渉するべきでないことがほとんどであり,弁護士を通じて行うことが必須と言っても差し支えないところです。
特に,直接の連絡手段がない場合には,弁護士から捜査機関に連絡を取ってもらい,弁護士限りで被害者との連絡を試みる必要があります。この場合には,弁護士がいなければ示談希望の意思を伝えることもできない,ということになるでしょう。
また,逮捕をすべきかという点について,弁護士を通じて捜査機関と協議をしてもらう手段も有力です。弁護士が法律のルールを踏まえた主張をし,捜査機関に逮捕が適切でないと判断してもらうことができれば,逮捕の回避につながる可能性も考えられます。
加えて,取調べなどで自分が捜査機関と直接やり取りする必要が生じる際,どのように対応すべきか,という点について弁護士から案内を受けることも可能です。適切な取り調べ対応によって,逮捕の可能性が低下することも大いに考えられます。
以上のように,不同意性交等罪の逮捕に関しては,弁護士への依頼によってより有効な対応がしやすくなるため,弁護士への依頼を積極的に検討するのが適切でしょう。
ポイント
示談交渉には弁護士が不可欠
弁護士と捜査機関の間で,逮捕すべきかを協議してもらうことも
自分が捜査機関とやり取りするときの対応方法を案内してもらえる
不同意性交等罪の逮捕に関する注意点
①逮捕前の示談が困難な場合
逮捕前に示談ができれば,その後の逮捕の可能性が非常に低くなることは間違いありません。ただ,実際に逮捕前の示談が可能なケースは多くないため,逮捕前に示談をするチャンスが存在しない場合には注意が必要です。
不同意性交等罪の事件では,自分に対して捜査が行われていることを,自分への逮捕によって知る,という場合が珍しくありません。捜査機関としては,被疑者に予告せず突然逮捕することによって,被疑者の妨害を防ぎながら捜査を進める手段を取ることの多い事件類型でもあります。
逮捕によって初めて事態を把握した場合には,逮捕前の示談で事件を解決する余地がないため,逮捕後できるだけ速やかに示談などの対応に着手する必要があります。
②逮捕後の身柄拘束期間
不同意性交等罪の事件では,逮捕の後速やかに釈放されるというケースはあまりなく,一定期間の身柄拘束を強いられることが想定されます。
逮捕されると,最長72時間以内に「勾留」されるかどうかが判断され,勾留が決定すると10日間,さらに「勾留延長」という手続で延長されると最長10日間の勾留が追加されることになります。
この点,不同意性交等罪の場合,勾留や勾留延長をしない,という判断を期待することは難しく,基本的には勾留延長まで行われることを十分に想定する必要があるでしょう。なお,示談が成立したなど,不起訴処分を見込む状況となった場合には,例外的にその時点での釈放も考えられるところです。
③逮捕後の報道の可能性
刑事事件の報道は,逮捕された事件の一部を対象に行われることが一般的です。著名人などの例外的な場合を除き,逮捕当日又は翌日に,逮捕された事実とその事件の内容が報道される,というケースがほとんどです。
この点,不同意性交等罪の事件は,重大犯罪との理解をされやすいため,逮捕された場合に報道される可能性が比較的高い類型と言えます。重大な事件であるほど,社会的関心が高く,国民に広く周知させるために報道されやすいのです。
確実に報道される,という性質のものではありませんが,報道の対象となる可能性は踏まえておくことが適切でしょう。
不同意性交罪での自首は有効か
不同意性交等罪で自首をするべき場合
①実刑判決の回避を目指したい場合
不同意性交等罪は,法定刑が「5年以上の有期拘禁刑」と定められています。
刑罰が科せられる場合の具体的な内容としては,軽微なものから「罰金」「執行猶予」「実刑」とあるところ,最も軽微な罰金刑は法律上科すことができません。また,執行猶予は3年以下の懲役刑(拘禁刑)の場合にしかつけられないため,原則として執行猶予の対象にもなりません。
そのため,不同意性交等罪で刑事処罰が科せられる場合には,実刑判決が想定されやすいということができます。

この点,5年以上が原則とされる拘禁刑の期間を3年以下に減軽できる例外的なケースの一つが,自首のあった場合です。自首によって拘禁刑の期間が3年以下になれば,執行猶予の対象となり得るため,実刑判決の回避が可能です。
執行猶予となる場合,刑務所に収容されることがなくなるため,そのメリットは極めて大きなものとなります。
ポイント
不同意性交等罪の刑罰は実刑判決が原則
自首があると,例外的に執行猶予になり得る
②犯人が特定される可能性が高い場合
自首は,後に自分が犯人と特定される可能性が高い場合により効果を発揮します。自首をしてもしなくても自分が犯人と特定されるのであれば,あらかじめ自首をしてしまった方が処分の軽減が期待できる分だけ有益であるためです。
特に,不同意性交等罪の事件では,自首をせずに捜査によって犯人が特定できたとなれば,その犯人を被疑者として逮捕し,身柄拘束をした状態で取り調べなどをする可能性が高いです。一方,犯人が特定できていない段階で,自ら名乗り出て自首をした場合,逮捕の可能性は大きく低下し,逮捕は必要ないとの判断に至ることも十分に考えられます。
想定される証拠などから,将来的に犯人として特定される可能性が高いと思われる場合には,先手を打つ趣旨で早期に自首を試みることが有力でしょう。
ポイント
自首をしてもしなくても犯人が特定されるのであれば,自首する方が有益
③日常生活への支障を防ぎたい場合
不同意性交等罪で捜査や刑事処分の対象となった場合,日常生活の様々な面に支障が生じることが想定されます。
日常生活への支障の例
1.家族・親族への発覚
2.勤務先など仕事関係者への発覚
3.報道による周知
4.刑事処分の業務への影響
これらの支障は,自首を行うことで回避ができたり一定程度軽減ができたりする場合もあり得ます。特に,不同意性交等罪の事件は,性犯罪という性質も相まって周囲に与える影響が非常に大きいため,自首によって悪影響を緩和することのメリットは大きくなりやすいでしょう。
不同意性交等罪の自首を弁護士に依頼するメリット
不同意性交等罪で自首を試みる場合には,弁護士に依頼し,弁護士に主導してもらう形で行うことが有益です。具体的には,以下のようなメリットが考えられます。
①逮捕回避につながりやすくなる
不同意性交等罪の事件における自首は,まず逮捕の回避につながるかどうかが重要なポイントとなります。事件類型的に逮捕の可能性が高いため,自首によって逮捕の必要性をどこまで引き下げられるかが肝心です。
この点,弁護士への依頼をすることで,より逮捕の必要性を引き下げるための効果的な自首が可能になります。弁護士なしで行う自首は,手順も内容も手探りにならざるを得ませんが,弁護士主導で行うことによってその点の負担が大きく軽減する効果も期待できるでしょう。
②自首の意思を正確に伝えられる
一口に自首と言っても,その具体的な内容は一つではありません。同一の事件に関する自首でも,対象となる事件の範囲をどこまでにするか,という選択肢は決して一つだけではありませんし,どこまでの話をするか,どこまでの証拠提出をするかなどによって,捜査機関に与える印象なども大きく異なります。
この点,弁護士に依頼することで,どのような事件について,何をしてしまったということへの自首なのか,ということを正確に伝えることが可能になります。これによって,自首の対象とすべき事件についての反省状況を正しく理解してもらえるとともに,自分が行っていないことについての不要な疑いや捜査を招く恐れがなくなるという利点があるでしょう。
自首をしようと思っても,自分で理路整然とした内容で行うことは容易ではありません。弁護士に依頼することで,自首をしたい,という自分の意思の中身を正確に伝えることができるでしょう。
③示談の試みが可能になる
不同意性交等罪の事件では,示談ができるかどうかによって処分結果が決定的に変わります。そのため,可能な限り早期の段階で示談を試み,示談の成立を目指すことが重要です。
この点,自首の時点で弁護士への依頼を行うことにより,自首後に捜査が始まった際,直ちに示談の試みに着手することが可能になります。示談は,弁護士がいなければ着手できない性質の動きであるため,弁護士に依頼しなければ生じないメリットと言えるでしょう。
不同意性交等罪で自首をする場合の注意点
①自首しても逮捕が防げない可能性
不同意性交等罪の場合,逮捕の必要性が非常に高いと評価される傾向にあります。そのため,自首によって逮捕の必要性が低下したとしても,なお逮捕が必要であるという判断になる可能性は否定できません。
不同意性交等罪の自首では,自首をしても逮捕回避の結果が実現しない可能性に注意をしておくことが必要です。
もっとも,逮捕が防げなかったとしても,それは自首の効果がないという意味ではありません。逮捕後の取り扱いや最終的な処分に対しては,大きな影響を及ぼす可能性が高く,自首が重要な行動であることには変わりありません。
②自首をしても実刑判決が防げない可能性
自首の重要な効果の一つが刑事処分の軽減ですが,不同意性交等罪の場合,悪質と評価される事件では自首をしてもなお実刑判決の対象となる可能性はあり得ます。自首が処分を大きく軽減させる事情であることは間違いありませんが,自首によって直ちに実刑判決を防げるとは限らない点に注意が必要でしょう。
ただし,実刑判決が防げなかったとしても,実刑判決の具体的内容には大きな影響を及ぼすことが通常です。自首がなかった場合と比較すれば,その刑期は明らかに短くなることが見込まれるでしょう。
③自首が成立しない可能性
自首は,犯罪事実又は犯人のいずれかが捜査機関に発覚していない段階で行う必要があります。そのため,犯罪事実も犯人も特定されてしまった後では,出頭を試みても自首は成立せず,自首による刑罰減軽の効果も生じない点に注意が必要です。
特に,不同意性交等罪の事件は,被害者保護の観点や事件の重大性を踏まえ,極力迅速に捜査を進め,犯人の特定を目指すことの多い傾向にあります。そのため,自首が成立する期間はより短い可能性があり,自首ができる時間的猶予があまり多くは残されていない恐れもあります。
自首による刑罰の減軽は,実刑判決を回避して執行猶予を獲得するために必要な減軽となる可能性もあるため,自首を行う場合には可能な限り速やかに進めることをお勧めします。
警察に呼び出された場合はどうすべきか
不同意性交等罪で呼び出された場合の対応法
①逮捕回避を最優先に目指す
不同意性交等罪の事件は,逮捕が非常に強く懸念されることに特徴があります。捜査機関としては,呼び出しを行うのでなくいきなり逮捕する選択肢も有力です。
そのため,不同意性交等罪の場合,逮捕を防ぐ余地があるのであれば逮捕回避を最優先に行動することが適切でしょう。
この点,呼び出しを行う場合の捜査機関の考えとしては,呼び出しへの適切な対応が得られるのであれば逮捕をしなくてもよい,という発想である可能性も低くありません。逮捕をするつもりであれば,わざわざ呼び出して逃亡のリスクを招くより,自宅などへ行っていきなり逮捕する方が合理的であるためです。
あえて呼び出しの方法を選択している以上,逮捕をしない方針もあり得ると理解し,逮捕回避のために全力を尽くすことが有益です。
ポイント
不同意性交等罪では逮捕が強く懸念される
呼び出しを行う場合,逮捕回避の余地がある
②弁護士の判断を仰ぐ
不同意性交等罪のような重大事件では,呼び出し後の対応が適切かどうかがその後の処分を非常に大きく左右する可能性が高いです。対応を誤った場合の不利益が極めて大きくなりかねないため,対応方針はより慎重に検討する必要があります。
そのため,不同意性交等罪で呼び出しを受けた場合には,まず弁護士に相談を行い,適切な対応方針について判断を仰ぐことをお勧めします。弁護士への相談に際しては,以下のような情報が伝えられると有益でしょう。
弁護士相談の際に伝えるべき情報
1.事件の内容
2.認否
3.考えられる証拠
4.呼び出しを受けた際の問答
5.要望(目指す結果)
弁護士への相談に際しては,刑事事件に精通し,刑事弁護に長けた法律事務所を選択の上,十分な回答が得られるまで弁護士探しを粘り強く行うことをお勧めします。
また,信頼に足りる弁護士が見つかった場合には,具体的な弁護活動の委任も積極的に検討することが有益です。不同意性交等罪の場合,弁護活動によって望ましい結果が引き出せれば,刑事処分などの不利益を最小限に抑えられる可能性もあります。
ポイント
重大事件のため,対応方針は慎重な検討が適切
信頼できる弁護士探しの上,相談や依頼を積極的に行う
③否認事件の初期対応
否認事件の場合,呼び出しを受けること自体が納得できず,捜査協力に時間や労力を割きたくないという思いが生じることもやむを得ません。もっとも,否認事件であっても,適切な初期対応を行い,呼び出しに正しく応じることには複数のメリットがあります。
まず,被疑事実の詳細や証拠構造を把握できる可能性があります。被疑事実とは,行ったと疑われている具体的な行為の内容です。いつ,どこで,何をしたと疑われているのかを把握するのは,適切な対応の出発点と言えます。
また,客観的な証拠があるかないか,客観的な証拠があるとしてそれは何を立証できる内容のものなのか,といった証拠構造を把握できる可能性もあります。証拠構造が分かれば,立証の困難な点が何か,ということを的確に把握することも可能です。
更に,相手方の言い分を知る機会になる可能性もあります。否認事件の場合,捜査機関は相手の一方的な言い分を足がかりに捜査している可能性が非常に高いため,捜査機関との問答を通じて,相手がどんな被害を受けたと主張しているのか,逆に何を伝えていないのか,といった点を把握することもできるでしょう。
否認事件の場合,呼び出しを情報獲得のチャンスと考え,対応することが有益になり得ます。
ポイント
被疑事実や証拠構造を把握する機会になり得る
相手の言い分を詳細に知るチャンスでもある
不同意性交等罪の呼び出しに応じると逮捕されるか
不同意性交等罪の場合,逮捕目的で呼び出しを行うケースはあまり見られません。そのため,呼び出しに応じることで逮捕される,ということは考えにくいでしょう。
捜査機関が逮捕を行うつもりであれば,呼び出すことなく,逮捕状を得た上で自宅などに訪れる方が一般的です。捜査機関のペースで,ほぼ確実に逮捕を執行できるためです。
そのため,呼び出しに応じることで逮捕される,という懸念は通常必要ありませんが,呼び出しへの対応次第では逮捕のリスクを高める可能性があることに注意が必要でしょう。度重なる呼び出しへの十分対応が得られない等,被疑者による捜査妨害の恐れがあると考えられる場合には,そのことが逮捕の引き金になる場合も少なくありません。
呼び出しで済んだと油断するのでなく,その後も逮捕せず引き続き呼び出し続ければよい,との判断をしてもらえるよう,適切な対応を尽くすことをお勧めします。
ポイント
逮捕目的での呼び出しはあまりない
もっとも,呼び出しへの対応が不適切である場合,逮捕の引き金になり得る
不同意性交等罪で警察が呼び出すタイミングや方法
①事情聴取
不同意性交等罪での呼び出しは,事件の内容について事情を聴取する目的であることが一般的です。一方の当事者から聞いた話を元に,もう一方の当事者からも話を聞くことで,犯罪事実の有無を捜査する,という流れになります。
事情聴取目的での呼び出しは,相手方当事者が警察に相談などした後,比較的早期に行われる場合が多いでしょう。不同意性交等罪で呼び出しの形が取られる場合,客観的証拠がないか不十分であるケースが多いため,客観的証拠の捜査に長い時間をかけるよりは,とりあえずもう一方の当事者も呼んで話を聞く,という捜査手法が多く見られるところです。
呼び出し方法は電話連絡が一般的でしょう。
②証拠品の提出
当日の着衣や連絡に用いた携帯電話など,証拠となり得る物品の提出を求めるために,呼び出して出頭してもらうという場合があります。物品を提出すると,「領置」という手続で捜査機関の手に渡り,捜査の必要が終了した段階で還付(=返却)されることになります。
呼び出しを行う事件で証拠品の提出を求める場合は,初回の呼び出しの際に,話の内容を踏まえて,提出を求める証拠の内容と提出日を決定することが多いでしょう。そのようなケースでは,呼び出しに応じて出頭した日から1週間以内くらいのタイミングになる場合が多く見られます。
③写真撮影・指紋採取
捜査の対象となった場合,警察にて写真の撮影や指紋採取を求められることが一般的です。これは,将来の他の事件も含めた捜査の円滑化のため,今回の事件で必要かどうかにかかわらず広く行われているものです。
この写真撮影や指紋採取は,強制される手続ではなく,拒んでも具体的な不利益が生じるものではありません。もっとも,理由なく断るメリットにも乏しいため,特段の理由がない限りは淡々と応じる方が有益でしょう。
写真撮影や指紋採取の手続は,一通りの取り調べが終了した後に行われることが通常です。取調べが一段落した段階で,その日のうちに行うか,次回に行うための日程調整を行うか,という流れになることが多いでしょう。
不同意性交等罪の呼び出しに応じたときの注意点
①対応を怠らない
呼び出しに対しては,逮捕回避を重要な目標とすることが賢明ですが,対応自体を怠ることや必要な返答をしないことは,逮捕回避の観点からは最も避けるべきことと言えます。
呼び出しても必要な対応をしてもらえず,返答を求めても返答してくれない,となれば,対応を強制するために逮捕を選択する,という判断につながりかねません。
呼び出しを受けた場合は,まず連絡に応答すること,返答を求められたら返答することなど,対応を怠らない姿勢を保つようにしましょう。
②相手への接触を疑われないよう努める
不同意性交等罪の場合,当事者間の接触が非常に強く懸念されることがあります。特に,従前から交友関係があったなど,相手に接触する手段や情報を持ち合わせている場合には,捜査の開始をきっかけに,加害者とされた側が被害者とされる側への接触を試みる可能性があり得ると考えられやすいでしょう。
そして,相手に接触する恐れがあると評価された場合,それが逮捕の理由になる可能性も否定できません。
そのため,呼び出しを受けたり呼び出しに応じて出頭したりした際には,相手に接触する意思が全くないことを明確に意思表明していく方針が有力です。相手と話し合いたい,言い分を伝えたいなど,相手への接触が懸念されるような内容を捜査機関に告げるメリットはない,という点に注意することをお勧めします。
③取り調べへの対応方針
呼び出し後は取調べの実施が想定されます。そのため,どこまでの事実を話すのか,想定される質問には何と回答するのか,余罪がある場合には話すのか話さないのかなど,取調べを受けた際の対応方針は事前に検討しておくべきでしょう。
特に,否認事件の場合,争点に応じた適切な取り調べ対応が重要となります。中でも故意が争点になるケースでは,どの時点でどのような意思であったか,というように時系列に沿った説明をすべき場合もあるため,より綿密な事前準備が適切です。
取調べへの具体的な対応方針については,刑事事件に精通した弁護士と十分に協議し,あらかじめ明確にしておくことをお勧めします。
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