自己破産を検討しているものの、「退職金があると自己破産できないのではないか」「退職金をすべて失ってしまうのではないか」と不安を感じている方もいるでしょう。
自己破産では退職金も財産として扱われますが、すべての退職金がそのまま処分対象になるわけではありません。在職中なのか、退職が近いのか、すでに退職金を受け取っているのかによって扱いが大きく異なります。また、「8分の1ルール」や「4分の1評価」など、自己破産特有の考え方も理解しておく必要があります。
この記事では、自己破産における退職金の基本的な扱い、退職金がどの程度処分対象になるのか、退職前と退職後のどちらで申し立てる方が有利になりやすいのか、退職金を受け取った後に注意すべきポイント、会社に知られる可能性や管財事件との関係について解説します。
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自己破産しても退職金は残せる?まず知っておきたい基本
自己破産を検討している方の中には、「退職金があると自己破産できないのではないか」「退職金をすべて失ってしまうのではないか」と不安を抱えている方もいるでしょう。しかし、退職金があること自体が自己破産の障害になるわけではありません。 退職金も財産として扱われますが、状況に応じて評価方法が異なるため、直ちに全額が処分対象になるわけではありません。
自己破産では、債務者が保有する財産を調査し、債権者への配当に充てるべき財産がある場合には、その財産を換価して配当することになります。そのため、退職金も一定の場合には財産として評価されます。ただし、退職金には「まだ受け取っていない退職金」と「すでに受け取った退職金」があり、両者は別のものとして扱われます。
例えば、現在も会社に勤務しており退職予定が決まっていない場合には、将来受け取る見込みの退職金全額が評価されるわけではありません。裁判所の運用では、退職金見込額の8分の1程度が財産として評価されることが一般的です。 一方で、定年退職が近い場合や退職日が決まっている場合には、退職金を受け取る可能性が高いため、より高い割合で評価されることがあります。
また、すでに退職金を受け取っている場合には、退職金そのものではなく現金や預貯金として扱われます。そのため、退職金を受け取った後に自己破産を申し立てる場合には、口座にどの程度残っているのか、どのような用途に使ったのかが問題になります。
さらに、自己破産をすると会社を辞めなければならないと誤解されることがありますが、自己破産を理由として当然に退職する必要はありません。 一般の会社員であれば、自己破産手続を行った後も引き続き勤務を続けることができます。退職金があることと、勤務を継続できるかどうかは別の問題です。
もっとも、退職金の評価額が一定額を超える場合には、管財事件として処理されることがあります。また、退職前に申し立てるのか、退職後に申し立てるのかによって処分対象となる金額が変わることもあります。自己破産における退職金の問題は、「退職金があるかどうか」ではなく、「現在どのような状態の退職金なのか」によって結論が変わる点が重要です。
そのため、まずは在職中なのか、退職予定があるのか、すでに退職金を受け取っているのかを整理し、自分がどのケースに当てはまるのかを確認する必要があります。その違いを理解することが、退職金を踏まえた適切な自己破産手続につながります。
前提として、自己破産をするべきかまだ不要か、という検討においても、退職金の存在を踏まえることが適切でしょう。
【早見表】自己破産で退職金はどこまで残せる?
自己破産における退職金の扱いは、退職金を受け取ったかどうかや退職時期によって大きく異なります。まずは自分がどのケースに当てはまるのかを確認してみましょう。
| 状況 | 財産評価の考え方 | 退職金見込額800万円の場合 |
| 在職中で退職予定がない | 退職金見込額の8分の1を評価 | 100万円 |
| 定年退職が近い・退職予定が決まっている | 退職金見込額の4分の1を評価 | 200万円 |
| 退職金を受領済み | 現金・預貯金として評価 | 残っている金額が対象 |
在職中で退職予定がない場合
在職中で退職予定がない場合は、退職金見込額の8分の1が財産として評価されます。
例えば、退職金見込額が800万円であれば、財産評価額は100万円です。退職金見込額が1,600万円であれば、財産評価額は200万円になります。
退職金見込額全額が財産になるわけではありません。 在職中の退職金は将来受け取る予定の財産であり、現時点で自由に使える現金や預貯金とは性質が異なるためです。
定年退職が近い・退職予定が決まっている場合
定年退職が近い場合や、すでに退職日が決まっている場合は、退職金見込額の4分の1が財産として評価されます。
例えば、退職金見込額が800万円であれば、財産評価額は200万円になります。退職金見込額が1,200万円であれば、財産評価額は300万円です。
退職時期が近いほど退職金を受け取る可能性が高くなるため、在職中より高い割合で評価されます。 その結果、同じ退職金額でも自己破産手続への影響が大きくなることがあります。
退職金を受領している場合
退職金を受け取った後は、退職金請求権ではなく現金や預貯金として扱われます。
例えば、退職金500万円を受け取り、そのまま預金口座に残している場合は、預貯金500万円として財産評価されます。退職金だから特別な扱いになるわけではありません。
一方で、生活費や医療費など通常必要な支出に使用し、申立時点で残高が減っている場合には、その時点で実際に保有している金額が問題になります。
ただし、退職金を受け取った後に特定の債権者へだけ返済したり、親族へ財産を移したりすると問題になることがあります。 退職金を受け取った後の注意点については後のH2で詳しく解説します。
このように、自己破産における退職金の扱いは、退職金があるかどうかではなく、在職中なのか、退職が近いのか、すでに受け取っているのかによって変わります。 まずは自分がどのケースに当てはまるのかを確認することが重要です。
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自己破産の「退職金8分の1ルール」をわかりやすく解説
自己破産では、在職中の退職金がそのまま全額財産として扱われるわけではありません。多くの裁判所では、在職中の退職金請求権について、退職金見込額の8分の1を財産評価額とする運用が採られています。
例えば、現在会社に勤務しており、退職した場合の退職金見込額が800万円であれば、財産評価額は100万円になります。退職金見込額が1,600万円であれば200万円です。自己破産で問題になるのは退職金見込額そのものではなく、財産として評価された金額です。
なぜ退職金見込額の8分の1で評価されるのか
在職中の退職金は、現時点で自由に受け取れる財産ではありません。
退職まで長期間残っている場合には、
- 将来退職金制度が変更される可能性がある
- 自己都合退職か定年退職かで金額が変わる可能性がある
- 退職前に会社が倒産する可能性がある
- 退職時期自体が未確定である
といった事情があります。
そのため、裁判所は在職中の退職金を現金や預貯金と同じようには扱わず、将来取得する見込みのある財産として一定割合のみを評価しています。
8分の1ルールはどのような裁判所で採用されているのか
退職金見込額の8分の1を基準とする考え方は、東京地裁、大阪地裁、名古屋地裁、横浜地裁などで採用されている運用として紹介されています。
もっとも、退職金の評価方法は法律で一律に定められているわけではありません。実際の自己破産手続では、申立先の裁判所や個別事情によって必要資料や評価方法が異なることがあります。
そのため、退職金見込額が高額な場合には、自分の地域の裁判所でどのような運用がされているのかを確認することが重要です。
退職金見込額はどのように確認するのか
自己破産を申し立てる際には、退職金見込額を確認する資料の提出を求められることがあります。
代表的な資料は次のとおりです。
- 退職金見込額証明書
- 退職金規程
- 就業規則
- 給与規程
- 退職金計算書
勤務先によっては退職金見込額証明書を発行してもらえるため、その金額を基準に財産評価が行われます。
一方で、証明書が発行されない場合には、退職金規程や勤続年数などから退職金見込額を算定することになります。
8分の1だから退職金を失わないとは限らない
退職金見込額の8分の1で評価されるとしても、その評価額が大きければ自己破産手続に影響します。
例えば、退職金見込額が4,000万円であれば、8分の1評価でも500万円になります。このような場合には、管財事件として処理される可能性が高くなります。
また、8分の1評価だから退職金の問題を気にしなくてよいわけでもありません。財産評価額がいくらになるのかによって、同時廃止事件になるのか、管財事件になるのかが変わるためです。
そのため、退職金見込額が高額な方ほど、自己判断で進めるのではなく、退職金評価額を踏まえた手続の見通しを事前に確認することが重要になります。
退職金が「4分の1」で計算されるケースとは?
退職金見込額の8分の1評価は、退職時期が決まっていない在職中の方を前提とした考え方です。一方で、退職金を受け取る時期が近づいている場合には、退職金見込額の4分の1が財産評価額になります。
例えば、退職金見込額が800万円の場合、8分の1評価であれば財産評価額は100万円ですが、4分の1評価になると200万円になります。同じ退職金額でも評価額は2倍になるため、自己破産手続への影響も大きくなります。
定年退職が近い場合
定年退職が近い場合には、退職金を受け取る可能性が極めて高くなります。
例えば、60歳定年の会社で59歳後半の方や、数か月後に定年退職を迎える方は、退職金を受け取ることがほぼ予定されている状態です。そのため、在職中の一般的なケースとは異なり、退職金見込額の4分の1を財産評価額として計算します。
退職時期が近づくほど退職金を受け取る蓋然性が高くなるため、8分の1ではなく4分の1で評価されます。
退職日が決まっている場合
定年退職でなくても、すでに退職日が決まっている場合には、退職金見込額の4分の1を財産評価額として計算します。
例えば、
- 退職届を提出している
- 退職について会社と合意している
- 退職日が確定している
といったケースです。
このような場合には、退職金を受け取る時期や金額が具体化しているため、在職中の8分の1評価ではなく4分の1評価が前提になります。
「まだ退職していないから8分の1で評価される」と考えるのは誤りです。 退職が目前に迫っている場合には、退職金を受け取ることを前提として財産評価が行われます。
早期退職制度を利用する場合
会社の早期退職制度や希望退職制度を利用する場合も、退職金見込額の4分の1を財産評価額として計算します。
早期退職制度では、通常の退職金に加えて特別退職金や割増退職金が支給されることがあります。そのため、退職金見込額自体が高額になるケースも少なくありません。
例えば、早期退職制度により退職金見込額が1,200万円になる場合、財産評価額は300万円になります。
退職金額が大きくなるほど、自己破産手続に与える影響も大きくなります。
4分の1評価になると何が変わるのか
4分の1評価になると、財産評価額が大きくなるため、自己破産手続全体に与える影響も大きくなります。
例えば、退職金見込額が1,000万円の場合、
- 8分の1評価 → 125万円
- 4分の1評価 → 250万円
となります。
同じ退職金額でも評価額は2倍になります。
その結果、自由財産として残せる範囲や管財事件になる可能性にも影響します。
そのため、退職が近い方は、退職金額だけでなく、申立時点で退職までどの程度の期間が残っているのかを踏まえて自己破産の時期を検討することが重要です。
退職金のうち4分の3は差し押さえ禁止とされているため、残りの4分の1が財産として評価されることになります。
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自己破産は退職前・退職後のどちらが有利?
退職金がある方が自己破産を検討する際には、「退職前と退職後のどちらで申し立てた方がよいのか」という疑問を持つことがあります。しかし、この問いに対して一律の正解はありません。有利かどうかは、退職金の金額、退職時期、現在の財産状況によって変わります。
そのため、「退職後の方が有利」「退職前の方が有利」と単純に考えるのではなく、自分の状況に応じて検討することが重要です。
在職中に申し立てた方が有利なケース
在職中で退職予定がなく、退職金見込額の8分の1評価が適用される場合には、退職前に申し立てた方が有利になることがあります。
例えば、退職金見込額が1,600万円の場合、
- 在職中(8分の1評価) → 財産評価額200万円
- 退職後に全額受領 → 退職金1,600万円が現金・預貯金になる
という違いがあります。
退職金を受け取った後は、退職金請求権ではなく現金や預貯金として扱われるため、財産評価額が大きく増える可能性があります。
そのため、退職金を受け取る前に自己破産を申し立てた方が、処分対象財産を抑えられるケースがあります。
退職後に申し立てた方が有利なケース
一方で、退職後の方が有利になるケースもあります。
例えば、退職金を受け取った後、その大部分を生活費や住居費、医療費など必要な支出に充てている場合です。
自己破産では、申立時点で保有している財産が問題になります。そのため、退職金を受け取ったとしても、適切な用途に支出し、申立時点で保有財産が減少している場合には、実際に残っている財産を基準に判断されます。
ただし、退職金を受け取った後に借金の返済へ充てたり、親族へ財産を移転したりした場合には別の問題が生じるため注意が必要です。
退職金受領直後の申立ては注意が必要
退職金を受け取った直後に自己破産を申し立てる場合には、退職金の使途が詳細に確認されます。
特に、
- 特定の債権者だけに返済した
- 現金で保管している
- 親族へ渡した
- 高額な買い物をした
といった事情がある場合には、破産手続上の問題になることがあります。
反対に、
- 家賃
- 生活費
- 医療費
- 引越費用
など、生活に必要な支出であれば、その必要性を説明できるケースが多いでしょう。
退職金を受け取った後は、「いくら残っているか」だけでなく、「何に使ったか」も重要な判断要素になります。
自己判断で申立時期を決めるべきではない
退職金がある場合には、申立時期によって財産評価額が大きく変わることがあります。
例えば、
- 退職直前で4分の1評価になる
- 退職金受領後で現預金として評価される
- 受領後の使途が問題になる
など、状況によって検討すべきポイントが異なります。
そのため、退職金がある方は「退職前が得」「退職後が得」と考えて自己判断で申立時期を決めるべきではありません。 退職金額や退職予定時期、現在の資産状況を踏まえて検討することが重要です。
退職前後で生活が大きく変わることも少なくないため、退職後の生活設計も踏まえた検討が望ましいでしょう。
退職金を受け取ってから自己破産する場合の注意点
退職金を受け取った後に自己破産を申し立てること自体は可能です。しかし、退職金を受け取る前と後では財産の評価方法が大きく異なります。退職金を受け取る前は退職金請求権として評価されますが、受け取った後は現金や預貯金として扱われます。
そのため、退職金を受け取った後に自己破産を申し立てる場合には、申立時点で退職金がどの程度残っているのか、どのような用途に使用したのかが重要になります。
現金で保有している場合は99万円基準が問題になる
退職金を現金で保有している場合には、自由財産として認められる現金の範囲が問題になります。
破産法では、99万円以下の現金は自由財産として扱われ、原則として手元に残すことができます。
例えば、退職金300万円を受け取り、そのまま現金で保有している場合には、99万円を超える部分が問題になります。
もっとも、実際には現金として保有しているのか、預金口座に入れているのかによって扱いが異なるため注意が必要です。
預貯金として残している場合は20万円基準が問題になる
退職金を銀行口座に入れている場合には、現金ではなく預貯金として扱われます。
例えば、退職金500万円を受け取り、そのまま預金口座に残している場合には、500万円の預貯金として財産評価されます。
自己破産では、預貯金は現金のように99万円まで無条件に残せるわけではありません。そのため、退職金を受け取った後に預金として保有している場合には、現金よりも自己破産手続への影響が大きくなることがあります。
「退職金を引き出して現金にしておけば安全」というわけではありません。 裁判所は退職金の受領状況や資金の流れを確認するため、形式的に現金化しただけでは問題の解決になりません。
特定の債権者への返済は避けるべき
退職金を受け取った後に借金を返済したいと考える方もいます。
しかし、自己破産を予定している段階で特定の債権者だけに返済すると、偏頗弁済(へんぱべんさい)の問題が生じます。
例えば、
- 消費者金融Aだけに返済する
- 親族からの借入金だけ返済する
- 保証人が付いている借金だけ返済する
といった行為です。
このような返済は債権者間の公平を害するため、破産手続上問題視されます。
退職金を受け取ったからといって、自己判断で借金の返済に充てるべきではありません。
親族への財産移転は避けるべき
退職金を守りたいという理由で、親族名義の口座へ送金したり、家族へ現金を渡したりする方がいます。
しかし、このような行為は財産隠しと判断されるおそれがあります。
例えば、
- 配偶者口座への送金
- 子ども名義口座への入金
- 親族への贈与
などです。
自己破産では通帳履歴や取引履歴が確認されるため、不自然な資金移動は発見される可能性が高いといえます。
生活費や医療費への支出は事情を説明できるようにしておく
一方で、退職金を生活費や医療費などに使用することまで禁止されているわけではありません。
例えば、
- 家賃の支払い
- 日常生活費
- 医療費
- 介護費用
- 引越費用
など、生活に必要な支出であれば合理的な支出として説明できる場合があります。
ただし、自己破産の申立てが近い時期に退職金を受け取った場合には、後から使途を確認されることがあります。
そのため、退職金を受け取った後は何に使ったのかを説明できるよう、領収書や通帳履歴を保管しておくことが重要です。
退職金があると管財事件になる?
退職金があるからといって、必ず管財事件になるわけではありません。しかし、退職金の財産評価額が大きい場合には、管財事件として処理される可能性が高くなります。
そのため、退職金がある方が自己破産を検討する際には、「退職金がいくらあるのか」だけでなく、「自己破産上いくらと評価されるのか」を確認することが重要です。
管財事件とは
自己破産には、大きく分けて
- 同時廃止事件
- 管財事件
があります。
同時廃止事件は、換価して債権者へ配当する財産がほとんどない場合に利用される手続です。
一方、管財事件では裁判所が破産管財人を選任し、財産の調査や換価、債権者への配当などを行います。
そのため、管財事件になると、
- 破産管財人との面談
- 資料提出
- 裁判所への出頭
- 予納金の負担
などが必要になります。
問題になるのは退職金そのものではなく財産評価額
退職金が高額だからといって、直ちに管財事件になるわけではありません。
例えば、
- 退職金見込額800万円
- 在職中
- 8分の1評価
であれば、財産評価額は100万円です。
一方で、
- 退職金見込額3,200万円
- 在職中
- 8分の1評価
であれば、財産評価額は400万円になります。
このように、自己破産で問題になるのは退職金見込額そのものではなく、自己破産上の財産評価額です。
退職金評価額が高いと管財事件になりやすい
退職金評価額が大きい場合には、換価して債権者へ配当できる財産が存在すると考えられます。
例えば、
- 退職金見込額が高額
- 定年退職が近く4分の1評価になる
- 退職金を受領して多額の預金が残っている
といったケースです。
このような場合には、破産管財人による調査や換価が必要になるため、管財事件として処理される可能性が高くなります。
特に、退職金を受領した後は退職金請求権ではなく現金や預貯金として扱われるため、管財事件になる可能性を検討する必要があります。
自由財産拡張が認められることもある
退職金評価額があるからといって、その全額が直ちに処分対象になるわけではありません。
自己破産では、生活再建のために一定の財産を手元に残す制度があります。
その一つが自由財産拡張です。
例えば、
- 今後の生活費が必要
- 高齢で再就職が難しい
- 医療費負担が大きい
などの事情がある場合には、財産の一部について手元に残すことが認められることがあります。
もっとも、自由財産拡張が認められるかどうかは事案ごとの判断になります。
管財事件になるかどうかは退職金以外の財産も影響する
退職金だけで管財事件になるかどうかが決まるわけではありません。
例えば、
- 預貯金
- 保険解約返戻金
- 有価証券
- 不動産
- 自動車
などもあわせて判断されます。
そのため、退職金評価額だけを見て「同時廃止になる」「管財事件になる」と判断することはできません。
自己破産において重要なのは、退職金を含めた財産全体の評価です。 特に退職金が高額な方は、申立て前に財産評価額を整理し、手続の見通しを確認しておくことが重要になります。
少なくとも、管財事件になる可能性を想定しておくことはあった方が望ましいでしょう。
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自己破産すると退職金のことで会社にバレる?
自己破産を検討している方の中には、「退職金の資料を準備すると、会社に自己破産が知られるのではないか」と不安を感じる方もいるでしょう。結論として、自己破産をしたことが勤務先へ自動的に通知される制度はありません。 そのため、会社員が自己破産を申し立てても、それだけで勤務先に知られるわけではありません。
もっとも、退職金の評価には資料が必要になるため、退職金資料の集め方によっては会社に知られるきっかけが生じます。 特に、退職金見込額証明書を勤務先に発行してもらう場合、人事部や総務部へ依頼することになります。この依頼だけで自己破産が確定的に知られるわけではありませんが、事情を聞かれる可能性はあります。
裁判所から会社へ通知されるわけではない
自己破産手続では、裁判所が勤務先へ自己破産の事実を通知するわけではありません。破産管財人が選任された場合でも、退職金額を確認できる資料が提出されていれば、勤務先へ直接照会しないで手続が進むこともあります。
そのため、会社に知られるかどうかは、自己破産の制度そのものよりも、退職金額を確認する資料をどのように準備するかによって変わります。
退職金見込額証明書で知られる可能性がある
退職金見込額証明書は、自己破産で退職金を評価するために有用な資料です。ただし、勤務先に発行を依頼する必要があるため、会社に事情を推測される可能性があります。
もっとも、退職金見込額証明書は、住宅ローン審査、金融機関への提出、老後資金の確認などでも使われる資料です。したがって、証明書の発行依頼だけで自己破産が必ず知られるわけではありません。
就業規則や退職金規程で代用できる場合がある
勤務先へ証明書を依頼したくない場合には、就業規則、退職金規程、給与規程、勤続年数が分かる資料などから退職金見込額を計算できる場合があります。
例えば、退職金規程に「基本給×勤続年数×支給率」といった計算式が定められていれば、その規程と給与明細をもとに退職金見込額を算定できます。会社に知られたくない場合は、まず代替資料で対応できるかを検討するべきです。
官報掲載だけで会社に知られる可能性は高くない
自己破産をすると官報に氏名や住所が掲載されます。しかし、一般企業が日常的に官報を確認し、従業員の自己破産を調査しているケースは多くありません。
実務上は、官報よりも、退職金見込額証明書の取得、社内での会話、家族や知人への相談内容などから知られるリスクの方が現実的です。
会社に知られたくない場合は資料収集の方法を先に決める
退職金がある場合でも、退職金規程や給与資料で計算できるケースでは、勤務先へ連絡せずに手続を進められることがあります。一方で、証明書が必要になる場合には、どのような理由で発行を依頼するかを事前に整理しておく必要があります。
自己破産をしたから会社に必ず知られるわけではありません。 問題になるのは、退職金の存在そのものではなく、退職金資料をどの方法で準備するかです。会社に知られたくない事情がある方は、申立て前に資料収集の方法を確認しておく必要があります。
自己破産と退職金について弁護士へ相談した方がよい理由
退職金がある状態で自己破産を検討している場合、自己判断で手続を進めることはおすすめできません。退職金は「あるかないか」ではなく、「いつ受け取るのか」「いくらと評価されるのか」によって自己破産への影響が大きく変わるためです。
例えば、
- 在職中で8分の1評価になるケース
- 退職が近く4分の1評価になるケース
- 退職金を受け取って預金として保有しているケース
では、検討すべきポイントが大きく異なります。
また、退職金が高額な場合には、同時廃止事件で進められるのか、管財事件になるのかという問題も生じます。退職金見込額だけで判断すると誤りやすく、実際には財産評価額を計算した上で見通しを立てる必要があります。
さらに、退職金を受け取った後に自己破産を申し立てる場合には、退職金の使い方も重要です。
例えば、
- 特定の債権者への返済
- 親族への送金
- 財産の名義変更
などを行うと、手続に悪影響を及ぼす可能性があります。
一方で、
- 生活費
- 医療費
- 家賃
- 引越費用
など、生活に必要な支出であれば問題なく説明できる場合もあります。
しかし、何が適切な支出と評価されるのかは、金額や支出時期、当時の状況によって異なります。「退職金を使ってしまったから自己破産できない」「退職金があるから自己破産できない」と自己判断するべきではありません。
また、会社に知られたくない場合には、退職金見込額証明書以外の資料で対応できるかを検討する必要があります。申立て前に準備方法を確認しておくことで、勤務先との不要な接触を避けられるケースもあります。
自己破産は、一度申立てをすると手続のやり直しが難しい場面もあります。特に退職金が関係する案件では、申立時期によって結果が変わることもあります。
退職金がある状態で自己破産を検討している場合には、退職前後のどの時点で申し立てるべきか、退職金がどの程度財産評価されるのかを事前に確認することが重要です。 早い段階で弁護士へ相談することで、退職金を踏まえた適切な手続方針を検討しやすくなります。
退職金が関わる自己破産の判断は、ご自身ではなかなか難しいことが多く見られます。依頼の有無に関わらず、一度専門的な意見を仰いでみることは非常に有力です。
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まとめ
自己破産をすると退職金がすべて失われるわけではありません。在職中で退職予定がない場合には、退職金見込額の8分の1が財産評価額となることが多く、定年退職が近い場合や退職日が決まっている場合には4分の1が財産評価額となります。
また、退職金を受け取った後に自己破産を申し立てることも可能ですが、その場合は退職金ではなく現金や預貯金として扱われます。そのため、申立時点でいくら残っているのかだけでなく、何に使ったのかも重要になります。
退職金があると管財事件になる可能性はありますが、問題になるのは退職金見込額そのものではなく、自己破産上の財産評価額です。さらに、自己破産をしたことが自動的に会社へ通知される制度はなく、会社に知られるかどうかは退職金資料の収集方法による部分が大きいといえます。
退職金がある場合は、退職前後のどの時点で申し立てるのかによって結果が変わることがあります。自己判断で進めるのではなく、退職金の評価額や申立時期を踏まえて検討することが重要です。
自己破産すると退職金は全部なくなりますか?
いいえ、退職金がすべてなくなるわけではありません。
在職中で退職予定がない場合には、退職金見込額全額ではなく8分の1が財産評価額となります。また、退職金を受け取った後であっても、生活費や医療費などに適切に支出している場合には、申立時点で残っている財産を基準に判断されます。
自己破産すると会社に知られますか?
自己破産をしたことが裁判所から会社へ通知されることはありません。
もっとも、退職金見込額証明書の発行を勤務先へ依頼した場合には、人事部や総務部に事情を推測される可能性があります。会社に知られたくない場合には、退職金規程や給与資料などで対応できないか事前に確認することが重要です。
退職金を生活費に使った場合でも問題ありませんか?
生活費や家賃、医療費など、通常の生活に必要な支出であれば問題にならないことが多いでしょう。
一方で、特定の債権者だけに返済したり、親族へ財産を移転したりすると、破産手続上問題になる可能性があります。退職金を受け取った後に自己破産を検討している場合には、使途が分かるよう通帳履歴や領収書を保管しておくことが重要です。
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