盗撮の再犯は、初犯よりも処分が重くなる傾向があります。 とくに前回が執行猶予付き判決だった場合や、同種前科が複数ある場合には、実刑の可能性が現実的に検討される場面も少なくありません。

もっとも、「再犯=必ず実刑」というわけではなく、事案の内容や示談の成否、再犯防止の取組みなど、複数の事情を総合して量刑は判断されます。 そのため、「何回まで執行猶予がつくのか」「再犯でも罰金で済むことはあるのか」といった疑問に対しては、単純な回数論ではなく、裁判所が重視する判断要素を踏まえて検討する必要があります。

また、執行猶予期間中に再犯した場合には、前回の執行猶予が取り消される可能性もあり、処分の見通しはさらに複雑になります。再犯が前科の評価にどのように影響するのか、将来的な量刑にどのような意味を持つのかも、慎重に整理しなければなりません。本記事では、盗撮の再犯について、刑が重くなる法的根拠、執行猶予中の再犯の扱い、実刑となる典型的なケース、そして再犯でも不起訴となる可能性まで、量刑判断の枠組みに沿って弁護士の視点から解説します。再犯という重大な局面で、今後の見通しを冷静に把握するための基礎としてご確認ください。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

盗撮の再犯とは?前科がある場合の扱い

まず、「盗撮の再犯」とはどのような状態を指すのかを整理しておきます。一般に再犯とは、過去に有罪の裁判を受けた後に、再び罪を犯すことをいいます。盗撮事件の場合、以前に盗撮で罰金刑や執行猶予付き判決などの有罪の裁判を受け、その後に再び同様の行為を行えば、同種前科のある再犯として扱われるのが通常です。

ここで区別しておきたいのが、「前科」と「前歴」の違いです。前科とは有罪の裁判を受けた経歴をいい、前歴とは逮捕や捜査を受けた事実を指します。 量刑判断においてより強く影響するのは、原則として前科です。とくに盗撮という同種前科がある場合には、常習性や規範意識の問題が指摘されやすくなります。

また、前回が執行猶予付きの有罪判決であったかどうかも重要な分岐点です。執行猶予期間中に再犯した場合と、猶予期間経過後に再犯した場合とでは、法的な扱いは大きく異なります。 前者では、今回の事件の処分だけでなく、前回の執行猶予の効力にも影響が及ぶ可能性があります。

さらに、盗撮以外の犯罪歴がある場合も無関係ではありません。たとえ異なる罪名であっても、複数の前科があるという事実自体が量刑上の不利な事情として評価されることがあります。 とくに性犯罪関連の前科が累積している場合には、再犯防止の必要性が強く意識される傾向があります。

このように、「盗撮の再犯」といっても、
・同種か異種か
・前回の処分内容は何か
・執行猶予期間中かどうか
・前科が何回あるか

といった事情によって評価は変わります。再犯という事実のみで結論が決まるわけではなく、前科の内容や時期、今回の事案との関係が重要な意味を持つことをまず押さえておく必要があります。

今回の事件と同種の前科である場合は、異種前科よりも処分を重くする方向で評価される事情になりやすいです。

盗撮の再犯で刑が重くなる理由

盗撮の再犯が重く扱われる理由には、刑法上の「再犯」に関する規定と、量刑実務上の評価という二つの側面があります。まずは、条文上の再犯がどのような場合に成立し、どの程度重くなり得るのかを整理します。


1.刑法上の再犯が成立する要件

刑法は、拘禁刑(旧・懲役刑)に処せられ、その刑の執行を終え、または免除された者が、5年以内にさらに罪を犯した場合を再犯と定めています。

ここで重要なのは、前回の刑の種類です。
前回が罰金刑のみで終わっている場合は、通常、条文上の再犯には該当しません。

また、執行猶予付き判決であっても、

  • 猶予が取り消されていない
  • 実際に刑の執行を受けていない

という段階では、原則として条文上の再犯は成立しません。

一方で、

  • 実刑の執行を終えた後
  • または執行猶予が取り消されて刑の執行を受けた後

5年以内に再び罪を犯した場合には、条文上の再犯が成立し得ます。


2.再犯が成立した場合の法的効果

再犯が成立すると、その罪について定められた有期拘禁刑の「長期」を加重できるとされています。

これは「必ず倍になる」という仕組みではありませんが、
法律上、通常よりも重い刑を選択できる枠組みに入るという意味を持ちます。

したがって、

  • 実刑前科があり
  • その執行終了後まもなく再犯している

といった場合には、量刑が上限側に寄る可能性が高くなります。


3.盗撮実務における実際の重み

もっとも、盗撮事件の実務では、

  • 初犯が罰金で終わるケースが多い
  • 再犯であっても、条文上の再犯に該当しない場合がある

という実情があります。

しかし、条文上の再犯に該当しなくても、再犯であること自体が量刑上の強い不利事情となる点は変わりません。

とくに、

  • 同種前科が複数回ある
  • 前回処分から短期間で再犯している

といった事情があれば、条文上の再犯加重がなくても、実刑選択が現実的になる場面があります。


以上のとおり、盗撮の再犯が重くなる根拠は、

  1. 条文上の再犯(法定刑の加重可能性)
  2. 実務上の量刑評価(再犯事情の重視)

という二層構造にあります。条文上の再犯が成立するか否かと、量刑が重くなるかどうかは必ずしも一致しないという点を踏まえて理解することが重要です。

執行猶予中に盗撮で再犯したらどうなる?

盗撮事件で実務上もっとも重大な局面の一つが、執行猶予期間中の再犯です。前回の有罪の裁判で執行猶予が付されている場合、今回の事件だけでなく、前回の判決そのものに影響が及ぶ可能性があります。


1.執行猶予の基本的な仕組み

執行猶予とは、拘禁刑の言渡しを受けながら、一定期間その刑の執行を猶予し、問題なく経過すれば刑の執行を免れる制度です。
前提には、社会内での更生が可能であるという評価があります。

そのため、猶予期間中に再び罪を犯した場合には、この前提が揺らぐことになります。


2.執行猶予が取り消される場合

刑法は、執行猶予期間中にさらに罪を犯し、拘禁刑に処せられた場合などに、原則として執行猶予を取り消すと定めています。

つまり、

  • 今回の盗撮事件で拘禁刑の実刑判決が出た場合
  • または一定の有罪判決が確定した場合

には、前回の刑と今回の刑の双方を執行することになる可能性があります。

この点が、初犯とは決定的に異なる重大なリスクです。


3.必ず取り消されるのか

もっとも、再犯があれば常に自動的に取消となるわけではありません。
今回の事件の内容や量刑、前回判決の条件などによって扱いは異なります。

例えば、

  • 今回が罰金刑にとどまる
  • 情状が極めて軽微

といった場合には、直ちに取消に至らないケースもあります。

しかし、同種の盗撮行為を再び行った場合には、取消の可能性は現実的に検討されると考えるべきです。


4.実務上の影響

執行猶予中の再犯では、

  • 前回の刑の執行
  • 今回の事件の量刑
  • 両者の関係(併合処理の問題)

が絡み、処分は大きく重くなり得ます。

とくに、前回が拘禁刑で、今回も拘禁刑が選択される場合には、実刑となる可能性が極めて高まるのが実務の傾向です。


執行猶予中の再犯は、単なる「前科が一つ増える」という問題ではありません。
前回の裁判で与えられた猶予という機会を失う可能性がある重大な局面であることを理解しておく必要があります。

盗撮の再犯は何回まで執行猶予がつくのか

「盗撮で再犯した場合、執行猶予は何回までつくのか」という質問は多く寄せられます。しかし結論からいえば、法律上“何回まで”という明確な回数制限は定められていません。

執行猶予を付すかどうかは、回数だけで機械的に決まるものではなく、裁判所が個別事情を総合して判断します。


1.回数よりも重視される要素

実務上、執行猶予の可否を左右するのは、主に次のような事情です。

  • 前回からの経過期間
  • 同種前科の回数
  • 今回の行為態様の悪質性
  • 被害者との示談の有無
  • 再犯防止に向けた具体的取組み

たとえば、前回から長期間経過している場合と、短期間で再犯している場合とでは評価が大きく異なります。


2.二度目の再犯でも執行猶予はあり得るか

理論上は、二度目の再犯であっても執行猶予が付く可能性は否定できません。もっとも、同種前科が複数回に及んでいる場合には、社会内での更生可能性に疑問が生じやすくなります。

とくに、

  • 前回も執行猶予
  • その猶予期間中または終了直後に再犯

という事情があれば、執行猶予が付かない可能性は高まります。


3.実務上の傾向

盗撮事件では、初犯であれば罰金や執行猶予付き判決にとどまるケースが多く見られます。しかし、同種前科が重なるにつれて、実刑選択の可能性は段階的に高まるのが実務の一般的傾向です。

とくに、短期間に繰り返している場合や、被害態様が悪質である場合には、回数にかかわらず実刑が選択されることもあります。


したがって、「何回まで大丈夫か」という問いに対しては、
回数の問題というよりも、前科の内容と今回の事案の重さが決定的に重要であると理解することが適切です。

執行猶予の可否は、形式的な数字ではなく、裁判所が改善可能性をどう評価するかによって左右されます。

現実的には、同種の事件で何度も繰り返し執行猶予が付くことはあまり期待できません。例外的なケースであると理解する方が適切でしょう。

盗撮再犯で実刑になるケースと裁判所の判断ポイント

盗撮の再犯で実刑となるかどうかは、単に「再犯かどうか」だけで決まるものではありません。裁判所は、複数の事情を総合して量刑を判断します。ここでは、実刑が選択されやすい典型的なケースと、その判断ポイントを整理します。


1.同種前科が複数回ある場合

最も重く評価されやすいのは、同種の盗撮前科が複数回に及んでいるケースです。

とくに、

  • 罰金 → 再犯 → 執行猶予 → 再犯
    といった経過をたどっている場合には、段階的な処分にもかかわらず改善がみられなかったと評価されやすくなります。

このような場合、裁判所は社会内更生よりも、実刑による矯正・抑止を重視する傾向があります。


2.執行猶予期間中の再犯

前項で述べたとおり、執行猶予期間中の再犯は特に重く扱われます。

執行猶予は「今回限り」という前提のもとで付される制度であるため、その期間中に再犯した場合には、改善可能性が否定されたと評価されやすくなります。

今回の事件でも拘禁刑が選択されれば、前回の執行猶予が取り消され、実刑となる可能性が高まります。


3.短期間での再犯

前回の有罪の裁判から短期間で再犯している場合も、実刑選択の可能性が高くなります。

処分直後に再び盗撮を行っている場合には、前回の刑罰による警告効果が全く機能していないと評価されやすいためです。


4.悪質な態様・被害状況

盗撮の方法や態様が悪質である場合も重要です。

  • 計画性が強い
  • 複数回にわたる継続行為
  • 被害規模が大きい

といった事情があれば、再犯であることと相まって、量刑は重くなる傾向があります。

また、被害者との示談が成立していない場合には、実刑選択の可能性はさらに高まります。


5.再犯防止の具体性

一方で、再犯であっても、

  • 専門機関での治療開始
  • 家族の監督体制の整備
  • 再犯防止プログラムへの参加

などの具体的な取組みがある場合には、量刑判断に一定の影響を与えることがあります。

もっとも、再犯である以上、初犯と同程度の寛大な評価がされることは通常ありません。


以上を整理すると、盗撮再犯で実刑となる可能性が高いのは、

  • 同種前科が重なっている
  • 執行猶予中の再犯
  • 前回から短期間での再犯
  • 悪質性が高く示談未成立

といった事情が重なる場合です。

実刑になるかどうかは「回数」ではなく、「改善可能性が否定される事情がどの程度積み重なっているか」によって判断されると理解することが重要です。

盗撮の再犯でも不起訴になる可能性はあるか

盗撮の再犯であっても、必ず起訴されるとは限りません。もっとも、初犯と比べて不起訴のハードルは明らかに高くなるのが実務の傾向です。ここでは、不起訴が検討され得る事情を整理します。


1.不起訴の基本的な考え方

不起訴にはいくつかの類型がありますが、盗撮事件で問題となるのは主に「起訴猶予」です。これは、犯罪の成立は認められるものの、情状を考慮して検察官が起訴を見送る処分です。

再犯の場合でも理論上は起訴猶予があり得ますが、前科の存在は不利に働きます。


2.示談の成立

不起訴判断で最も重要な事情の一つが、被害者との示談が成立しているかどうかです。

被害者の処罰感情が緩和されている場合には、再犯であっても起訴猶予が検討される余地があります。ただし、同種前科が複数ある場合や、短期間での再犯である場合には、示談があっても起訴に踏み切られる可能性は否定できません。


3.被害態様の軽重

行為態様が比較的軽微であることも考慮要素となります。

  • 偶発的・単発的な行為
  • 撮影データが拡散していない
  • 被害が限定的

といった事情があれば、総合判断の中で有利に働くことがあります。


4.再犯防止に向けた具体的取組み

再犯であっても、

  • 専門機関でのカウンセリング開始
  • 再犯防止プログラムへの参加
  • 家族による監督体制の整備

などの具体的取組みがある場合には、将来的な再犯危険性が低いと評価される可能性があります。

もっとも、再犯という事実そのものが重い不利事情であることに変わりはありません。


まとめると、盗撮の再犯でも不起訴の可能性は理論上存在しますが、
示談の成立、事案の軽微性、再犯防止努力といった事情が重ならなければ、起訴に至る可能性は高いと考えるのが現実的です。

再犯の場合は、初動対応の重要性がより高まるといえます。

前回の刑罰が罰金にとどまる場合は、前回が執行猶予であった場合と比較して再犯時に不起訴になる可能性が高くなりやすいです。

盗撮の再犯と前科の累積的な影響とは

盗撮の再犯では、今回の処分だけでなく、前科がどのように累積して評価されるかも重要な問題となります。前科は単に「数が増える」というだけでなく、将来の量刑判断や社会的影響にも関わってきます。


1.前科は量刑判断でどのように扱われるか

裁判所は量刑を決める際、前科の有無や内容、回数、経過期間を重要な事情として考慮します。

同種前科が重なっている場合には、

  • 常習性
  • 規範意識の低下
  • 再犯危険性

が強く疑われやすくなります。その結果、将来の事件でさらに重い評価を受ける可能性があります。


2.前科の累積と処分の段階的強化

盗撮事件では、実務上、

  • 初犯:罰金
  • 再犯:執行猶予
  • さらに再犯:実刑

といった形で、処分が段階的に重くなる傾向がみられます。

必ずこの順序をたどるわけではありませんが、前科が増えるほど社会内更生の可能性が否定されやすくなるのが実務の実態です。


3.将来への影響

前科は一定期間が経過しても消えるものではなく、次の事件の量刑判断に影響を与え得ます。とくに同種前科が複数回に及ぶ場合には、将来的に実刑が選択される可能性が高まります。

したがって、盗撮の再犯は「今回をどう乗り切るか」だけでなく、今後の刑事責任全体にどう影響するかという観点からも慎重に対応する必要があります。

盗撮の再犯で弁護士ができる弁護活動

盗撮の再犯事件では、初犯以上に初動対応と量刑資料の整備が重要になります。再犯という不利な事情がある以上、どのような事情を積み上げられるかが、処分の見通しに大きく影響します。


1.早期の示談交渉

再犯であっても、被害者との示談の成否は依然として重要な判断要素です。処罰感情の緩和は、起訴・不起訴の判断や量刑に直接影響し得ます。

とくに、再犯では「被害回復に真摯に向き合っているか」が厳しく見られるため、早期の対応が重要になります。


2.再犯防止策の具体化

再犯事案では、単に反省の言葉を述べるだけでは不十分です。

  • 専門機関でのカウンセリング開始
  • 再犯防止プログラムへの参加
  • 家族の監督体制の整備
  • デジタル機器の使用制限

といった客観的・継続的な再犯防止策を示すことが、量刑判断に影響を与えることがあります。


3.身柄解放への対応

逮捕・勾留されている場合には、準抗告や保釈請求などを通じて、早期の身柄解放を目指す活動も重要です。身柄拘束が長期化すると、社会生活や仕事への影響が拡大します。


4.量刑に向けた総合的な主張立証

再犯事件では、

  • 前回からの生活状況の変化
  • 反省の具体性
  • 再犯防止策の実効性

などを丁寧に整理し、改善可能性が完全には失われていないことを具体的に示すことが重要です。

再犯である以上、厳しい判断が予想される場面ではありますが、対応次第で処分の方向性が変わる可能性はあります。

盗撮事件には具体的な相手がいるため、まずは示談を通じて相手との解決を試みることが非常に重要です。

盗撮の再犯に関するよくある質問

最後に、盗撮の再犯について多く寄せられる疑問を整理します。個別事情によって結論は異なりますが、一般的な考え方を確認しておきます。


Q1.盗撮の再犯は必ず実刑になりますか。

必ず実刑になるわけではありません。 もっとも、同種前科が複数ある場合や、執行猶予期間中の再犯である場合には、実刑の可能性は高まります。示談の成立や再犯防止の具体的取組みがあるかどうかも重要な判断材料になります。


Q2.再犯でも罰金で済むことはありますか。

理論上はあり得ますが、初犯と比べて罰金でとどまる可能性は低くなるのが一般的です。事案が軽微で、前回から相当期間が経過しているなどの事情が必要となります。


Q3.執行猶予は何回までつきますか。

法律上、回数の上限は明確に定められていません。ただし、同種前科が重なるほど執行猶予が認められる可能性は低下するのが実務の傾向です。回数よりも、改善可能性の評価が重視されます。


Q4.前科は将来どのように影響しますか。

前科は次の事件の量刑判断に影響します。とくに同種前科が累積している場合には、常習性や再犯危険性が強く疑われ、実刑選択の可能性が高まります。


盗撮の再犯は、初犯とは異なる厳しい局面です。回数や形式だけで結論を決めるのではなく、具体的事情を踏まえて見通しを検討することが重要です。

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