盗撮事件で捜査を受けている方にとって、もっとも気になるのは「不起訴になる可能性はあるのか」という点ではないでしょうか。不起訴となれば刑事裁判は開かれず、原則として前科も付きません。そのため、今後の生活や仕事への影響を考えたとき、不起訴かどうかは極めて重要な分岐点になります。

もっとも、初犯であれば必ず不起訴になる、示談が成立すれば確実に不起訴になる、といった単純な基準があるわけではありません。検察官は、事案の内容、被害状況、常習性、余罪の有無、示談の成否、再犯防止策などを総合的に考慮して処分を判断します。近年は2023年の撮影罪創設により、法的枠組みも変化しており、従来の条例違反とは異なる視点が必要になる場面もあります。本記事では、盗撮事件の起訴率・不起訴率の実情、検察が重視する判断基準、不起訴になりやすいケース・なりにくいケースの違いを整理したうえで、逮捕から処分決定までの流れ、不起訴の種類、そして起訴された場合の見通しまで、弁護士の視点から分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

盗撮事件の起訴率・不起訴率はどのくらい?

盗撮で捜査を受けていると、「実際どのくらいの人が不起訴になるのか」が気になるのは当然です。結論として、盗撮事件でも不起訴になるケースはありますが、決して“珍しい”わけでも、“簡単”なわけでもありません。

法務省の統計(刑法犯全体)を見ると、起訴される事件はおおむね6〜7割、不起訴は3〜4割程度という割合で推移しています。ただし、これは刑法犯全体の数字であり、盗撮だけの正確な全国割合をそのまま示すものではありません。つまり、「3〜4割は不起訴だから大丈夫」と単純に考えることはできないということです。

また、「不起訴」と一言でいっても中身はさまざまです。

  • そもそも犯罪が成立しないと判断される場合(嫌疑なし)
  • 証拠が足りない場合(嫌疑不十分)
  • 犯罪は成立するが、事情を考慮して起訴を見送る場合(起訴猶予)

盗撮事件で問題になるのは、主にこの「起訴猶予」になるかどうかです。つまり、「やった事実はあるが、今回は裁判にしない」と判断されるかどうかが大きな分かれ目になります。

さらに、2023年に創設された撮影罪によって、盗撮は全国共通の法律で処理されるようになりました。これにより枠組みは整理されましたが、最終的な処分は今もなお“事案ごとの事情”で決まります。

実務上、処分を左右しやすいポイントは次のような事情です。

  • 初犯かどうか
  • 示談が成立しているか
  • 余罪や常習性があるか
  • 撮影データを拡散していないか
  • 再発防止の取り組みがあるか

同じ「盗撮」でも、事情が違えば処分結果は大きく変わります。
統計の数字はあくまで「目安」であり、自分の事件がどう評価されるかは、次に説明する検察の判断基準を踏まえて考える必要があります。

統計は事件全体を対象にしたものであるため、積極的に不起訴を目指す動きを講じた場合の不起訴率は、一般的にはより高くなりやすいでしょう。

盗撮で不起訴になるかは何で決まる?

不起訴になるかどうかは、一つの要素だけで決まるわけではありません。検察官は、事件の内容や被疑者の事情を総合的に見て、「裁判にかけるべきかどうか」を判断します。ここでは、実務上とくに重視されやすいポイントを整理します。

1.初犯か、繰り返しか

まず大きいのが、初犯かどうかです。前科や前歴がなく、これまで同種行為をしていない場合は、情状として有利に働く可能性があります。
一方で、余罪がある、過去にも同様の行為があるといった事情があると、起訴される可能性は高まります。常習性が疑われる場合は、不起訴のハードルが上がるのが実務の傾向です。

2.被害の内容と悪質性

同じ盗撮でも、行為の内容によって評価は異なります。

  • 計画性があったか
  • 被害者が複数か
  • 学校・職場・公共交通機関など場所の性質
  • 盗撮の態様(執拗性・大胆さ)

悪質性が高いと評価されるほど、起訴の可能性は高まります。

3.示談が成立しているか

示談は非常に重要な要素です。被害者との間で示談が成立し、処罰を求めない意思が示されている場合、検察の判断に大きく影響します。
ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありません。事案の内容によっては、示談があっても起訴されるケースはあります。

4.撮影データの扱い

撮影したデータをどう扱っていたかも重要です。

  • データを保存していたか
  • SNSやクラウドにアップしていないか
  • 他人に共有していないか

データの拡散や共有がある場合は、処分が重くなる傾向があります。

5.再犯防止への取り組み

近年は、再発防止への具体的な取り組みも重視されます。

  • カウンセリングの受診
  • 家族の監督体制
  • スマートフォンや機器の管理方法

「もう繰り返さない」と口で言うだけでなく、具体策があるかどうかが評価に影響します。


このように、盗撮事件の処分は、単純な基準では決まりません。初犯・示談・悪質性・再発防止策などを総合して、検察が最終判断を下します。

一般的には、示談があるケースで他の要素で大きなマイナスポイントがない場合、不起訴になりやすい傾向が見られます。

盗撮で不起訴になりやすいケース・なりにくいケースの違い

前の項で見た判断基準を踏まえると、不起訴になりやすいケースと、そうでないケースには一定の傾向があります。もちろん、最終的な判断は個別事情によりますが、実務上みられる違いは以下のとおりです。


不起訴になりやすい傾向があるケース

まず、次のような事情がある場合は、起訴猶予となる可能性が比較的高まります。

  • 初犯である
  • 被害者が一人で、被害が比較的軽微
  • 被害者との示談が成立している
  • 撮影データを削除し、拡散していない
  • 余罪がない
  • 再犯防止の具体的な取り組みがある

特に、示談の成立は大きな意味を持ちます。被害者が処罰を求めない意思を示している場合、検察が起訴を見送る方向に働くことがあります。また、初犯であり、深く反省し、再発防止策が具体化されていることも重要です。

もっとも、これらの事情がそろえば必ず不起訴になるという保証はありません。あくまで「有利に働きやすい事情」であるという位置づけです。


不起訴になりにくい傾向があるケース

一方で、次のような事情がある場合は、起訴される可能性が高まります。

  • 過去にも同種行為がある(前歴・余罪)
  • 被害者が複数いる
  • 計画的・執拗な態様である
  • 撮影データを保存・共有・拡散している
  • 示談が成立していない、または被害者の処罰感情が強い

とくに、データの拡散や共有がある場合は、被害が拡大していると評価されやすく、処分が重くなる傾向があります。また、常習性が疑われる場合は、「再犯の可能性が高い」と判断されやすく、不起訴のハードルは大きく上がります。


大切なのは「自分の事案の位置づけ」を冷静に見ること

同じ「盗撮」でも、事情の違いによって処分結果は大きく変わります。
インターネット上の体験談や一部の事例だけを見て、「自分も同じになる」と考えるのは危険です。

不起訴を目指すには、

  • どの事情が有利に働き得るのか
  • どの事情が不利になり得るのか

 を整理したうえで、具体的な対応を検討することが重要です。

被疑者の行動や判断が強く非難されるべきかどうか、という点が大きな判断の目安になりやすいでしょう。

盗撮事件はどのように処分が決まる?逮捕から不起訴までの流れ

盗撮事件の処分は、警察による捜査の後、検察官が最終的に決定します。起訴するか、不起訴とするかは検察官の判断に委ねられています。その判断に至るまでには、一定の手続の流れがあります。

1.逮捕される場合と在宅で進む場合

盗撮事件では、現行犯で逮捕される場合と、後日呼び出しを受けて在宅のまま捜査が進む場合があります。現行犯逮捕は、駅や商業施設などで発覚したケースに多くみられます。

もっとも、逮捕されたかどうかと、最終的に起訴されるかどうかは別の問題です。逮捕されても不起訴となることはありますし、在宅事件でも起訴されることはあります。処分はあくまで証拠や事情の評価によって決まります。

2.送致と検察での検討

警察の捜査が進むと、事件は検察に送られます(送致・書類送検)。逮捕されている場合は、原則として72時間以内に検察へ送致されます。その後、必要があると判断されれば、裁判所の決定により勾留(原則10日間、延長で最大20日間)が認められます。

この期間中、取調べや証拠整理が行われます。スマートフォンやカメラの解析、データの保存状況、余罪の有無などが確認されることもあります。証拠の内容は、処分判断の基礎となる重要な要素です。

在宅事件の場合は身体拘束はありませんが、事情聴取や証拠収集が続きます。処分が決まるまでに数か月かかることもあります。

3.処分に影響する事情

検察官は、証拠の有無だけでなく、次のような事情も総合的に考慮します。

  • 被害者との示談が成立しているか
  • 被害者の処罰感情
  • 撮影データの削除や拡散防止の状況
  • 常習性や余罪の有無
  • 反省の態度
  • 再発防止策の具体性

これらの事情が積み重なり、起訴するかどうかの判断につながります。

4.最終的な処分の決定

検察官は、事件の内容を踏まえ、次のいずれかの処分を選択します。

  • 不起訴(嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予)
  • 起訴(正式裁判または略式命令請求)

不起訴となれば刑事裁判は開かれません。一方で、起訴された場合は、略式罰金や正式裁判に進み、有罪判決が出れば罰金や執行猶予などの刑が科される可能性があります。盗撮事件の処分は、このような手続の中で決まります。どの段階でどのような事情が整っているかが、最終的な結果に影響します。

撮影罪創設で不起訴の可能性は変わったのか

2023年に「性的姿態等撮影罪」(いわゆる撮影罪)が新設され、盗撮行為は特別法に基づく全国共通の犯罪として扱われるようになりました。これ以前は、盗撮が発覚した場所や態様に応じて、都道府県の迷惑防止条例違反として立件されるケースが多くみられました。条例は地域によって条文や法定刑が異なるため、同じような行為でも、どの法律で立件されるかが都道府県によって揺れることがありました。

撮影罪の創設によって、この点は大きく変わりました。全国一律の枠組みで処理されるようになり、どのような行為が処罰対象になるかが明確になったためです。撮影罪では、単に撮影する行為だけでなく、事案によっては未遂や提供行為などが問題になることもあります。捜査段階では、撮影データの有無や保存状況だけでなく、端末解析の結果やクラウド上の保存・共有の有無が確認される場面も増えています。

もっとも、法改正があったからといって、直ちに「不起訴が難しくなった」「不起訴になりやすくなった」と一概には言えません。不起訴となるかどうかは、今もなお個別事情の評価で決まります。具体的には、初犯かどうか、被害の態様や悪質性、示談の有無、データの拡散状況、余罪や常習性の有無、再発防止策の具体性などが総合的に見られます。これらは改正前から重視されていた要素であり、改正後も判断の中心にあります。一方で、撮影罪は全国共通の犯罪類型として整理されたため、「どの点が悪質と評価されるか」「どの事情が処分を左右するか」がより意識されやすくなった側面はあります。たとえば、複数回にわたる盗撮や被害者が複数いる事案、撮影データの共有・拡散がある事案では、起訴される可能性が高まります。逆に、初犯で、被害が限定的で、示談が成立し、再発防止策が具体化している場合には、起訴猶予による不起訴が検討される余地があります。

現在は撮影罪と条例違反がともに成立し得ますが、撮影罪の対象になるケースの方が比較的不起訴になりやすい(=重い事件との取り扱いである)傾向が見られます。

不起訴にならなかった場合の処分は?

不起訴とならなかった場合、事件は起訴され、刑事裁判の手続に進みます。起訴された事件は有罪となる可能性が高く、何らかの刑罰が科されるのが実務の傾向です。そのため、不起訴で終わるかどうかは、前科の有無という点で大きな違いを生みます。

盗撮事件で起訴された場合の処分は、事案の内容や情状によって分かれます。


1.略式手続による罰金

比較的軽微な事案では、公開の法廷を開かず、書面審理による略式命令で罰金が科されることがあります。

略式手続には、

  • 被告人の同意が必要
  • 公開の公判は開かれない
  • 罰金刑が科される

という特徴があります。

略式命令であっても有罪の裁判結果であり、前科が付きます。罰金で終わる場合でも、刑事責任が確定する点に違いはありません。


2.正式裁判と懲役刑(拘禁刑)

事案が重い場合や、余罪がある場合、常習性が認められる場合などは、正式裁判に進みます。

正式裁判では、罰金刑にとどまらず、懲役刑(拘禁刑)が言い渡される可能性があります。とくに、

  • 繰り返し行われている
  • 被害者が複数いる
  • 撮影データを拡散・共有している

といった事情がある場合には、より厳しい評価がなされやすくなります。


3.執行猶予が付く場合

懲役刑(拘禁刑)が言い渡された場合でも、直ちに刑務所に収容されるとは限りません。

  • 初犯である
  • 示談が成立している
  • 深く反省している
  • 再発防止策が具体化している

といった事情が評価されれば、執行猶予が付くことがあります。

執行猶予が付けば、一定期間中に再犯がなければ収容されることはありません。ただし、有罪判決である以上、前科は残ります。


4.実刑となる可能性

一方で、常習性が強い場合や、社会的影響が大きい事案では、実刑判決となる可能性があります。過去に同種行為を繰り返している場合や、再犯の危険性が高いと評価された場合には、執行猶予が付かないこともあります。


不起訴と起訴では、その後の影響は大きく異なります。不起訴であれば裁判は開かれず前科も付きませんが、起訴され有罪となれば、罰金であっても、懲役刑(拘禁刑)であっても前科が残ります。

盗撮の不起訴に関するよくある質問

盗撮事件の不起訴に関しては、個別事情によって結論が分かれるため、具体的な疑問を持たれることが少なくありません。ここでは、実務上よく問われる点を整理します。


Q1.初犯なら不起訴になりますか?

初犯であることは有利に働く事情の一つですが、それだけで不起訴が保証されるわけではありません。
示談の成否、被害の内容、常習性の有無、再発防止策などが総合的に評価されます。初犯であっても、被害が重大であったり、悪質性が高いと判断された場合には起訴されることがあります。


Q2.示談が成立すれば不起訴になりますか?

示談は処分判断に大きな影響を与える事情です。被害者が処罰を求めない意思を示している場合、起訴猶予となる可能性は高まります。
もっとも、示談が成立したからといって必ず不起訴になるわけではありません。事案の内容によっては、示談があっても起訴されることがあります。


Q3.未成年の場合はどうなりますか?

未成年者が加害者となった場合は、家庭裁判所に送致されることが多く、成人事件とは手続が異なります。保護処分が中心となり、不起訴という形とは異なる処理がなされることがあります。
ただし、年齢や事案の内容によっては、通常の刑事手続が適用される場合もあります。


Q4.公務員の場合、不起訴でも影響はありますか?

不起訴であれば刑事裁判にはなりませんが、職場での懲戒や内部調査が行われる可能性はあります。とくに公務員の場合、信用失墜行為に該当するかどうかが問題となることがあります。刑事処分と職場での処分は別に判断されます。


Q5.実名報道は避けられますか?

実名報道の有無は、警察や報道機関の判断によります。逮捕された場合には報道される可能性がありますが、必ず実名で報道されるわけではありません。不起訴となった場合でも、既に報道がなされていると、その事実が消えるわけではありません。


盗撮事件で不起訴となるかどうかは、事案ごとの事情に左右されます。初犯であることや示談の成立は重要ですが、それだけで結論が決まるわけではありません。具体的な事情を踏まえた見通しの検討が必要になります。

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