配偶者に性病が見つかり、浮気を疑ったものの、本人は一切認めない――
このような状況に直面した場合、離婚や慰謝料請求は本当に可能なのでしょうか。

性病の発覚は、浮気を疑う大きなきっかけになります。しかし、法律上は「疑わしい」という感情と、「不貞行為があったと評価できるか」は別の問題として扱われます。特に、配偶者が浮気を否認している場合には、離婚や慰謝料を求めるうえでの判断基準やハードルが大きく変わります。

また、性病が関係する問題では、不貞行為の有無だけでなく、婚姻関係がどのような状態にあるのか、性病の感染によってどのような法的責任が問題となるのかを整理して考える必要があります。浮気が証明できなければ何もできない、というわけではありませんが、できること・できないことの線引きは慎重に見極めなければなりません。

この記事では、配偶者が浮気を認めない状況を前提に、性病をめぐって離婚や慰謝料請求が問題となる場面で、どのような点が法的に判断されるのかを整理します。感情的な評価ではなく、実際の手続や裁判で重視される考え方を軸に、現実的な判断の目安を示していきます。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

性病が発覚しただけで浮気と法的に評価されるわけではない

配偶者に性病が見つかると、多くの人がまず浮気を疑います。実際、性病の感染は不貞行為を想起させる事情ではありますが、法律上は性病があるという事実だけで直ちに「浮気があった」と評価されるわけではありません。離婚や慰謝料の場面で問題になるのは、性病の有無そのものではなく、配偶者に性行為があったと認められるかという点です。

裁判や調停では、「疑わしい」という感覚的な評価では足りず、客観的な事情から不貞行為があったと判断できるかが重視されます。性病は感染経路や潜伏期間に幅があるため、特定の時期や相手との性行為を直接裏づけるものとは限りません。そのため、性病の診断結果だけを根拠に不貞行為を認定することには慎重な姿勢が取られています。

また、性病の種類や症状の有無によっても評価は一律ではありません。医療的な説明が可能であっても、それがそのまま法律上の評価に結びつくとは限らず、裁判所は、その性病の事実から配偶者に性的関係があったといえるかという観点で判断します。この判断では、行動状況や生活状況、当事者双方の説明内容など、性病以外の事情も含めた総合的な評価が行われます。

このように、性病の発覚は重要な事情の一つではあるものの、それ単体で不貞行為があったと断定されることは多くありません。離婚や慰謝料を検討する場面では、性病の事実をどのように位置づけるのかを冷静に整理することが不可欠です。

配偶者が浮気を認めない場合、法律上は何が問題になるのか

配偶者に性病が見つかり、浮気を疑って問いただしても、本人が一切認めない場合、当事者としては「嘘をついているのではないか」という思いが強くなりがちです。しかし、法律の場面で問題になるのは、配偶者が本当のことを言っているかどうかではありません。問われるのは、裁判所が不貞行為があったと評価できるかという点です。

不貞行為は、単なる好意や交際では足りず、配偶者以外の者との性的関係があったことが必要とされます。そして、配偶者が浮気を否認している場合、その事実を主張する側が、不貞行為があったことを客観的な証拠によって立証する責任を負うことになります。性病の発覚は一つの事情ではありますが、否認がある以上、それだけで不貞行為が認められることは多くありません

この点で重要なのは、「浮気をしていない」との説明が合理的かどうかではなく、不貞行為があったと推認できる事情が積み重なっているかです。裁判所は、性病の事実に加えて、外泊や生活状況の変化、当事者の説明の一貫性など、複数の事情を総合して判断します。いずれか一つの事情が決定打になるというよりも、全体として不貞行為があったといえるかが検討されます。そのため、配偶者が浮気を認めない場合には、「疑わしい」という感情だけで離婚や慰謝料を求めることは難しくなります。否認されている状況では、証拠の有無と内容が結果を大きく左右するため、性病の事実をどのように位置づけるのか、他の事情とあわせて冷静に整理することが重要です。

性病自体は浮気を直接立証する証拠にはなりづらいですが、浮気を推認させる事情の一つになり得る、というのが法律的な理解になるでしょう。

性病を理由に離婚が認められるケースと認められないケース

性病が発覚したことをきっかけに離婚を考える場合、「性病がある以上、離婚できるのではないか」と感じる人も少なくありません。しかし、法律上は、性病が見つかったという事実そのものが、直ちに離婚原因になるわけではありません。離婚が認められるかどうかは、どの手続で、どのような事情が主張・立証できるかによって判断が分かれます。

まず、協議離婚の場合には、離婚の理由そのものは厳密には問われません。性病をめぐる不信感や夫婦関係の悪化を背景に、双方が離婚に合意すれば、法的には離婚は成立します。この段階では、不貞行為があったかどうかを明確に証明できなくても、離婚自体が可能となるケースがあります。

一方、裁判離婚では判断の枠組みが大きく異なります。裁判で離婚を認めてもらうためには、原則として法定離婚事由が必要になります。性病に関して問題となるのは、その背景に不貞行為があったといえるか、あるいは夫婦関係がすでに回復困難な状態にあるかといった点です。性病の事実だけでは、不貞行為があったと認定されず、離婚が否定される可能性もあります。

また、配偶者が浮気を否認している場合には、離婚が認められるかどうかのハードルはさらに高くなります。裁判所は、「疑いがある」という事情だけでは足りず、不貞行為を裏づける客観的な事情があるかを重視します。そのため、性病の発覚があっても、証拠関係が不十分な場合には、裁判離婚に至らないケースも少なくありません。このように、性病を理由に離婚が認められるかどうかは、協議か裁判かという手続の違いと、不貞行為や夫婦関係の状態をどこまで立証できるかによって大きく左右されます。性病の事実をどの場面で、どのように主張するのかを見誤ると、期待していた結果につながらないこともあるため、慎重な整理が求められます。

不貞行為が証明できなくても、離婚が問題となる場面がある

配偶者の浮気が立証できなかった場合、「それ以上、離婚を主張する余地はないのではないか」と感じる人もいるかもしれません。しかし、裁判離婚において問題になるのは、不貞行為の有無だけではありません。状況によっては、不貞行為が証明できなくても、婚姻関係がすでに回復困難な状態にあるかが検討されることがあります。

裁判所は、夫婦関係が形式的に続いているかではなく、実質的に婚姻関係が破綻しているといえるかという観点から判断を行います。たとえば、性病の発覚をきっかけに深刻な不信感が生じ、長期間にわたって別居が続いている場合や、夫婦としての協力関係が完全に失われているような状況では、婚姻関係の破綻が問題となる余地があります。

もっとも、性病が見つかったという事情だけで、直ちに婚姻関係の破綻が認められるわけではありません。裁判では、別居の有無や期間、夫婦間のやり取り、生活実態など、性病以外の事情も含めて総合的に評価されます。そのため、不貞行為の立証ができなかったからといって、自動的に離婚が認められるわけではない点には注意が必要です。このような場面では、性病の事実はあくまで一つの背景事情として位置づけられ、夫婦関係がどのような経緯で破綻に至ったのかが重視されます。不貞行為の有無だけに目を向けるのではなく、現在の婚姻関係の実態を冷静に整理することが、離婚の可否を判断するうえで重要になります。

性病の事実は、浮気が立証できるかできないかに関わらず、夫婦関係に亀裂を生む大きな要因になり得ます。その亀裂が修復困難な程度に至った場合、それ自体が離婚原因になる可能性もあるでしょう。

性病をめぐる慰謝料は、不貞とは別に考える必要がある

性病が関係する場面では、「慰謝料」と一括りにされがちですが、法的には同じ性病の問題でも、どの責任を問うのかによって評価の枠組みが異なります。特に、配偶者が浮気を認めない場合には、不貞行為を前提とする慰謝料と、性病の感染それ自体による損害賠償を切り分けて考えることが重要です。

まず、一般に想定されるのが不貞慰謝料です。これは、配偶者が第三者と性的関係を持ったことにより、婚姻関係が侵害されたとして請求されるものです。この場合、前提となるのは不貞行為があったことの立証であり、性病の発覚だけでは足りません。配偶者が浮気を否認している状況では、不貞行為そのものを証明できなければ、不貞慰謝料の請求は難しくなるのが実情です。

これに対して、別の観点として問題となるのが、性病を感染させたこと自体による損害賠償です。こちらは、不貞行為の有無とは切り離して、性病に感染したことによる精神的苦痛や身体的負担が問題とされます。たとえば、配偶者が性病に感染していることを知りながら十分な配慮をせず、結果として相手に感染させた場合には、不法行為として責任が問われる余地があります。

もっとも、この場合でも自動的に慰謝料が認められるわけではありません。裁判では、感染経路や因果関係、相手方の注意義務違反があったかといった点が検討されます。性病に感染したという結果だけでなく、その結果が相手の行為によって生じたといえるかが重要になります。このように、性病をめぐる慰謝料の問題は、不貞行為を理由とするものなのか、性病感染による損害を理由とするものなのかによって、判断の前提が大きく異なります。配偶者が浮気を認めない場合には、どの責任を追及しようとしているのかを整理しないまま請求を進めると、思うような結果につながらないこともあるため、注意が必要です。

配偶者が否認している場合、慰謝料請求が難しくなる理由

配偶者が浮気を否認している状況では、慰謝料請求を検討するうえで、いくつかの点でハードルが高くなることがあります。これは、相手が認めないから感情的に難しくなるという意味ではなく、法的に立証すべきポイントが増えるためです。

まず、不貞慰謝料を請求する場合には、前提として不貞行為があったことを客観的に示す必要があります。配偶者が否認している以上、性病の事実だけでは不十分と評価されやすく、性的関係があったと推認できる事情がどこまでそろっているかが問題になります。この点が立証できなければ、不貞慰謝料の請求は認められにくくなります。

また、性病感染による損害賠償を求める場合でも、簡単に請求が通るわけではありません。裁判では、性病に感染したという結果と、配偶者の行為との因果関係が問われます。具体的には、いつ、どのような経緯で感染したのか、配偶者に注意義務違反があったといえるかといった点が争点になります。相手が否認している場合、これらの点についても丁寧な立証が必要になります。

さらに、慰謝料請求の場面では、当事者双方の説明内容の整合性も重視されます。配偶者の説明に不自然な点があったとしても、それだけで直ちに請求が認められるわけではありません。裁判所は、提出された証拠と説明内容を照らし合わせながら、全体としてどの説明が合理的かを判断します。このように、配偶者が浮気を否認している場合には、慰謝料請求において、不貞行為や感染の事実をどこまで裏づけられるかが結果を大きく左右します。可能性だけを前提に進めるのではなく、法的にどの点が争われるのかを見据えた整理が欠かせません。

配偶者が不貞を認めているかどうかで、取るべき方針や具体的な対策は大きく変わってきます。否認の場合には、立証のハードルが生じる点でより慎重な検討が望ましいでしょう。

証拠が十分でない段階で避けるべき対応

性病の発覚や配偶者の否認に直面すると、早く事実を明らかにしたいという思いから、感情的に行動してしまいがちです。しかし、証拠が十分でない段階での対応次第では、かえって法的な立場を不利にしてしまうことがあります。

まず注意すべきなのは、浮気を前提とした断定的な追及です。確かな裏づけがないまま相手を責め立てると、後に裁判や調停になった際、冷静さを欠いた対応として不利に評価されることがあります。また、やり取りの内容が記録に残る場合には、主張の一貫性が問われる場面も生じます。

次に、証拠としての価値が不明確な情報を安易に提出することにも注意が必要です。真偽が確認できない情報や、文脈が不十分な記録は、かえって反論の材料として使われることがあります。裁判では、何を提出するかだけでなく、どのような位置づけで提出するかも重要になります。

さらに、医療情報の取り扱いにも慎重さが求められます。性病に関する診断内容は重要な事情になり得ますが、それがどの点を立証するための資料なのかを整理しないまま用いると、期待した評価につながらないこともあります。医療的な説明と法律上の評価は必ずしも一致しないため、両者を混同しないことが大切です。このように、証拠が十分にそろっていない段階では、行動を急ぐよりも、どの事実を、どの場面で、どのように主張すべきかを整理することが重要になります。対応を誤らなければ、後の手続で不利を招くリスクを抑えることができます。

裁判では性病そのものより、因果関係の説明が重視される

性病が関係する事案では、医学的な説明に目が向きがちですが、裁判で重視されるのは性病に感染したという事実そのものではありません。問題になるのは、その結果が、誰の、どの行為によって生じたといえるのかという因果関係の説明です。

たとえば、性病の潜伏期間や一般的な感染経路について医学的な説明ができたとしても、それだけで直ちに法的責任が認められるわけではありません。裁判所は、特定の時期に、特定の相手の行為によって感染したと評価できるかを慎重に検討します。そのため、一般論としての医学知識と、当事者間の具体的な事実関係とは切り分けて判断されます。

この点で重要なのは、性病の説明が法的な主張とどのように結びついているかです。たとえば、不貞慰謝料を請求する場面では、性病の事実が性的関係の存在を推認させる事情として位置づけられるかが問題となります。一方、感染による損害賠償を求める場合には、感染の時期や経緯、相手方の注意義務違反との関係が整理されていなければなりません。

裁判では、医学的に「可能性がある」という説明だけでは足りず、提出された証拠全体から、因果関係があると評価できるかが判断されます。性病の事実をどのような主張の裏づけとして用いるのかを意識せずに議論を進めると、評価の軸がずれてしまうこともあります。このように、性病が関係する争いでは、医学的な説明を並べること自体が目的になるわけではありません。あくまで、離婚や慰謝料といった法的結論との関係で、因果関係をどのように説明できるかが重要になります。

性病と浮気をめぐる問題で弁護士が整理する視点

性病の発覚と配偶者の否認が重なった場合、当事者だけで状況を整理しようとすると、どうしても感情と事実、医学的な話と法的な評価が混ざり合いがちになります。弁護士が最初に行うのは、問題を一つの結論にまとめることではなく、争点を切り分けることです。

具体的には、まず離婚を目指すのか、慰謝料を求めるのか、あるいは両方なのかを整理します。そのうえで、不貞行為を主張するのか、性病感染による損害賠償を問題にするのか、どの責任をどの手続で追及するのが現実的かを検討します。ここを曖昧にしたまま進めると、主張がぶれ、結果として不利な評価につながることがあります。

次に重視されるのが、どの事実が争点となり、どこまで立証が必要なのかという点です。すべての疑いを証明しようとするのではなく、法的に意味を持つ事実に絞って整理することで、無理のない主張構成が可能になります。性病の事実についても、それが何を裏づけるための事情なのかを明確に位置づけます。

また、配偶者が否認している場合には、手続の選択と進め方も重要な判断要素になります。協議で解決を図るのか、調停や裁判を視野に入れるのかによって、求められる証拠や説明の水準は異なります。どの段階で、どの主張を行うべきかを見誤らないことが、結果に大きく影響します。このように、性病と浮気をめぐる問題では、感情的な評価に流されず、事実関係と法的評価を分けて整理することが不可欠です。最終的な結論に至るまでの道筋を冷静に描くことで、現実的な対応が可能になります。

弁護士のお力添えは、事実と法律効果の二つに区別してご理解されるとよいでしょう。どんな事実があり、どんな法律効果を目指すのか、という点を基準に、取り得る手段や見通しをご案内申し上げることになります。

性病と浮気についてよくある質問

性病が見つかれば、浮気があったと認められますか

いいえ。性病の発覚は浮気を疑う事情にはなりますが、それだけで不貞行為があったと法的に認められるとは限りません。裁判や調停では、性病の事実に加えて、性的関係があったと評価できる客観的な事情があるかが判断されます。


配偶者が浮気を認めない場合でも、慰謝料を請求できますか

不貞行為を前提とする慰謝料については、不貞が立証できなければ認められにくくなります。ただし、不貞とは別に、性病の感染による精神的苦痛などについて、損害賠償が問題となる余地がある場合もあります。


証拠が十分でなくても離婚はできますか

協議離婚であれば、双方が合意すれば離婚は可能です。一方、裁判で離婚を求める場合には、不貞行為や婚姻関係の破綻といった法的な判断基準が問題となり、証拠や事情の整理が重要になります。

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藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。