痴漢事件では、実際には行為をしていないにもかかわらず、疑いをかけられて捜査の対象となることがあります。その後の捜査により、証拠や供述の内容を踏まえて判断された結果、不起訴処分とされるケースも少なくありません。ただし、不起訴となるかどうかは一律に決まるものではなく、どのような事情がどのように評価されるかによって左右されます。本記事では、痴漢の冤罪が問題となる場合に、どのような理由で不起訴と判断されるのかを、実務の視点から解説します。
この記事の監修者
藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
痴漢事件で「冤罪」が問題になる理由
痴漢事件は、短時間の出来事をきっかけに捜査が始まることが多く、その場にいた人全員の行動を正確に確認することが難しい事件類型です。とくに満員電車や混雑した場所では、意図しない身体の接触が起こりやすく、「誰の手だったのか」「どの位置にいたのか」といった点が曖昧になりがちです。その結果、実際には行為をしていないにもかかわらず、特定の人物が疑われてしまうことがあります。
また、痴漢事件では、被害を訴える側の供述をきっかけに捜査が進むのが一般的です。ただし、その供述が常に客観的事実と一致しているとは限りません。混雑状況や一瞬の出来事による思い違い、別の人物との取り違えなどが影響し、結果として誤った認識が生じるケースも見られます。
このように、痴漢事件にはもともと誤認が生じやすい構造があります。そのため、捜査や処分の段階では、防犯カメラの映像や位置関係などの客観的な証拠と、供述内容の整合性が重視されます。冤罪が疑われる痴漢事件では、これらの点を踏まえた判断の結果、不起訴処分が選択されることがあります。
痴漢事件における不起訴処分とは
不起訴処分とは、捜査の結果、検察が刑事裁判を起こさないと判断することを指します。起訴されないため、裁判は開かれず、前科が付くこともありません。痴漢事件においても、捜査の過程で集められた証拠や事情を踏まえ、不起訴とされるケースがあります。
なお、こうした判断がどのように行われるかについては、痴漢冤罪における全体像と判断ポイントもあわせてご参照ください。
痴漢事件では、被害を訴える供述がある一方で、客観的な証拠が十分にそろわないことも少なくありません。防犯カメラの映像が不鮮明であったり、現場が混雑していて位置関係を正確に特定できない場合、供述だけで事実を断定することは難しくなります。そのため、検察は証拠の内容や供述の信用性を慎重に確認し、起訴するだけの立証が可能かどうかを判断します。
また、不起訴処分にはいくつかの理由がありますが、痴漢の冤罪が疑われる事件では、主に「嫌疑なし」または「嫌疑不十分」と判断されるかどうかが問題になります。これは、行為自体が認められない場合や、犯罪を立証するための証拠が足りない場合を指します。冤罪の可能性がある痴漢事件では、これらの判断がなされるかどうかが、結果を左右します。痴漢事件における不起訴は、単に処分が軽いという意味ではありません。証拠関係や供述内容を踏まえ、刑事責任を問うことができないと判断された結果である点に特徴があります。
痴漢事件は、事件類型的に客観的な証拠が少ない、という点に大きな特徴があります。そのため、犯罪立証の証拠が不足していると評価されることも相当数あり、「嫌疑なし」または「嫌疑不十分」と判断される場合も珍しくはありません。
痴漢の冤罪で不起訴になる主な理由
痴漢事件で冤罪が疑われる場合、不起訴となるかどうかは、検察がどのように事実と証拠を評価するかによって決まります。とくに重要になるのが、行為があったといえるか、そしてそれを立証できるかという点です。実務上は、次の二つの判断が中心となります。
嫌疑なしと判断される場合
嫌疑なしとは、捜査の結果、そもそも犯罪行為が認められないと判断される場合を指します。痴漢の冤罪が疑われる事件では、客観的な証拠から被疑者が行為に及んでいないことが明らかになるケースがあります。
たとえば、防犯カメラの映像により、被疑者が被害申告のあった位置にいなかったことが確認できた場合や、申告内容と現場状況に明確な食い違いがある場合などです。また、被害供述そのものに不自然な点があり、供述の信用性が認められないと判断されることもあります。
このように、事実関係を踏まえて「痴漢行為はなかった」と評価されれば、嫌疑なしとして不起訴処分が選択されます。
嫌疑不十分と判断される場合
一方、嫌疑不十分とは、犯罪があった可能性を完全には否定できないものの、起訴するだけの証拠が足りないと判断される場合です。痴漢事件では、目撃者がいない、映像が不鮮明、供述が食い違っているなどの理由から、事実を断定できないケースが少なくありません。
たとえば、混雑した車内で接触があったこと自体は否定できないものの、それが意図的な行為だったのか、誰の行為だったのかを特定できない場合があります。このような状況では、刑事裁判で有罪を立証することが困難であるため、嫌疑不十分として不起訴とされることがあります。痴漢の冤罪が問題となる事件では、「やっていない」と主張しているだけでは足りず、証拠全体から見て立証ができないと評価されるかどうかが、不起訴判断の分かれ目になります。
このように、痴漢事件で冤罪が疑われる場合の不起訴理由は、行為自体が否定されるのか、それとも立証ができないと判断されるのかによって整理されます。いずれの場合も、証拠と供述をどう評価するかが、最終的な判断に大きく影響します。

痴漢冤罪事件で不起訴と判断されるケース
痴漢事件で冤罪が疑われる場合、不起訴となるかどうかは、どのような証拠があり、それがどの程度信用できるかによって判断されます。実務では、行為の有無や関与の程度を客観的に裏付けられるかどうかが、重要なポイントになります。
まず、防犯カメラの映像やICカードの利用履歴など、客観的な資料から、被疑者が申告された場所や時間帯に関与していなかったことが確認できる場合があります。このようなケースでは、行為自体が否定され、嫌疑なしとして不起訴と判断されることがあります。
また、被害を訴える供述があるものの、現場の混雑状況や身体の向き、距離関係などを踏まえると、供述内容と客観的状況との間に食い違いが生じることもあります。供述が一貫しておらず、他の証拠によっても裏付けられない場合には、供述の信用性が問題となり、起訴するだけの立証ができないとして、嫌疑不十分と判断されることがあります。
さらに、満員電車などで身体の接触が避けられない状況では、接触があったとしても、それが意図的な行為だったのか、偶発的なものだったのかを区別することが難しい場合があります。このような場合、行為の故意を立証できないとして、不起訴処分が選択されることがあります。これらのケースに共通しているのは、単に否認しているかどうかではなく、証拠全体を踏まえて刑事責任を問えるかという点が判断の中心になっていることです。痴漢の冤罪が疑われる事件では、事実関係と証拠の評価次第で、不起訴という結論に至ることがあります。
電車内の痴漢事件では、身体接触自体は間違いなくあったものの犯罪の故意があったかが分からない、という理由で不起訴となるケースも相当数あります。そのため、接触していたから冤罪を主張できない、と考えるのは早計です。
痴漢冤罪で不起訴を目指す際の重要なポイント
痴漢事件で冤罪が疑われる場合、不起訴に至るかどうかは、捜査の初期段階からの対応によって大きく左右されます。単に「やっていない」と否認するだけでは足りず、どのような事情を、どのような形で示せるかが重要になります。ここでは、実務上とくに影響が大きいポイントを解説します。
初期対応での言動がその後の判断に影響する
痴漢事件では、任意での事情聴取や現行犯での対応など、捜査の早い段階で供述を求められることが少なくありません。この段階での説明内容は、後の捜査や証拠評価に影響します。事実関係が十分に整理されないまま発言してしまうと、供述に食い違いが生じ、結果として不利に評価されるおそれがあります。
客観的な証拠を早期に確認・確保する
冤罪が疑われる事件では、防犯カメラの映像や位置関係、ICカードの利用履歴など、客観的な資料が判断の決め手となることがあります。これらの証拠は、時間の経過とともに保存期間が過ぎてしまう場合もあるため、早い段階で確認・確保することが重要です。
供述の一貫性と説明の具体性が重視される
否認事件では、供述の内容が一貫しているかどうかが重視されます。記憶があいまいな部分を無理に補おうとすると、不自然な説明になりやすく、供述の信用性に影響することがあります。どの点が分からないのか、どこまでが事実なのかを区別して説明する姿勢が求められます。
弁護士が関与することで評価の視点が整理される
痴漢の冤罪が疑われる事件では、捜査機関がどの点を重視して判断するのかを踏まえた対応が必要になります。弁護士が関与することで、証拠関係や供述内容を整理し、不起訴判断に直結するポイントを明確にした対応が可能になります。

不起訴になった場合でも注意すべき点
痴漢事件で不起訴処分となった場合、刑事裁判は開かれず、前科が付くこともありません。その一方で、不起訴になったからといって、すべての問題が自動的に解消されるとは限らない点には注意が必要です。
まず、不起訴処分は、あくまで刑事責任を問わないという判断にとどまります。事件としての捜査が行われた事実自体が消えるわけではなく、周囲の認識や誤解が残ることもあります。とくに、勤務先や学校に事情が伝わっている場合には、説明や対応が必要になるケースも考えられます。
また、不起訴理由によっては、「嫌疑なし」と「嫌疑不十分」で受け止め方が異なることがあります。いずれも起訴されない点では同じですが、後に事情を説明する場面では、どのような理由で不起訴となったのかを正確に理解しておくことが重要です。
さらに、痴漢事件では、被害を訴えた側との関係が完全に解消されるとは限りません。民事上の問題や、再発防止を求められる場面が生じることもあり、刑事手続きとは別の対応が必要になる場合もあります。
不起訴となった後であっても、今後の生活への影響を最小限に抑えるためには、処分の意味を正しく理解し、必要に応じて専門家の助言を受けながら対応を検討することが大切です。
不起訴処分となれば刑事事件の手続は終了しますが、生活への影響がすべてなくなるとは限りません。特に、痴漢事件の捜査を受けていることが知られている相手に対しては、適切な説明を尽くすことが重要ですが、具体的にどうすべきかは弁護士の判断を仰ぐことをお勧めします。
痴漢の冤罪で不起訴を目指す場合の弁護士の役割
痴漢事件で冤罪が疑われる場合、不起訴に至るかどうかは、事実関係や証拠の内容だけでなく、それらがどのように整理され、評価されるかにも大きく左右されます。この点で、弁護士の関与は重要な意味を持ちます。
まず、弁護士は早い段階で事情を丁寧に聞き取り、どこが争点になり得るのかを明確にします。痴漢事件では、接触の有無や位置関係、時間帯など、細かな事実の積み重ねが判断に影響します。弁護士が関与することで、供述の中で整理すべき点や、無理に説明すべきでない点が明確になります。
また、冤罪が疑われる事件では、防犯カメラ映像やICカードの履歴、目撃情報などの客観的証拠の有無や評価が重要になります。弁護士は、どの証拠が判断に影響するかを見極め、必要に応じて収集や確認を行い、捜査機関に対して適切な形で示します。
さらに、検察が不起訴と判断するかどうかは、証拠全体を踏まえた立証の可否にかかっています。弁護士は、供述と証拠との関係を整理し、刑事責任を問うことができない理由を具体的に示すことで、不起訴判断につながる視点を提示します。痴漢の冤罪が疑われる事件では、感情的な主張ではなく、事実と証拠を踏まえた対応が求められます。弁護士が関与することで、捜査の流れや判断のポイントを踏まえた対応が可能となり、結果として不起訴という判断に近づくことがあります。

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