後方確認不足の過失割合は?駐車場バックや車線変更など場面別パターンと修正要素を解説 

交通事故で相手が後方を十分に確認せずにバックや車線変更をしてきた場合、「相手の後方確認不足なのだから、自分には過失がないのではないか」と疑問に感じる方もいるでしょう。しかし、後方確認不足があったという理由だけで、直ちに相手方の過失が100%になるわけではありません。

交通事故の過失割合は、事故の状況に応じた基本過失割合を出発点として、速度違反や合図の有無などの事情を踏まえて決められます。そのため、駐車場でのバック、車線変更、ドア開放など、同じ後方確認不足が原因でも事故のパターンによって基本となる過失割合は異なります。

この記事では、後方確認不足による事故の基本過失割合をはじめ、ぶつけられた側の過失割合が増えるケース、基本過失割合を変化させる修正要素、過失割合で揉めた場合の対処法について解説します。相手方や保険会社から提示された過失割合に納得できない場合は、事故状況と過失割合の基準を照らし合わせて、提示された割合が適切かを検討する必要があります。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

後方確認不足による事故の基本過失割合【事故パターン4選】

事故パターン①:駐車場内でバック(後退)した際の後方確認不足事故

駐車場の通路を進行するA車と、駐車区画に入るためバックするB車が衝突した場合、基本過失割合はA車80:B車20です。駐車場の通路は、車が通過するだけでなく、駐車区画へ出入りするためにも利用されます。そのため、通路を進行するA車にも、駐車しようとする車の動きに注意しながら走行することが求められます。

B車がバックする際には後方の安全を確認する必要がありますが、後方確認が不十分だったことだけを理由にB車の過失が100%になるわけではありません。通路を進行するA車の方が基本的な過失割合は大きく設定されています。もっとも、実際の過失割合は、両車の動きや事故直前の状況に応じて基本割合から変わることがあります。

引用:別冊判例タイムズ38号

事故パターン②:車線変更(進路変更)時の後方確認不足事故

同じ方向へ走行している車同士で、A車が直進しているところへB車が車線変更して衝突した場合、基本過失割合は直進するA車30:車線変更するB車70です。

車線を変更すると、後続車の進路に入ることになるため、車線変更をする車は後方の車との距離や速度を確認し、安全に進路を変更しなければなりません。特に、後続車の速度や方向を急に変えさせるおそれがある状況では進路変更をしてはならないため、直進車よりも車線変更車の過失が大きく設定されています。実際の過失割合は、速度違反や進路変更時の合図などの事情によって基本割合から修正されます。

引用:別冊判例タイムズ38号

事故パターン③:停車中にドアを開けた際の後方確認不足事故

道路脇に停車しているA車がドアを開け、後方から進行してきたB車と衝突した場合、基本過失割合はドアを開けたA車90:後方から進行したB車10です。

ドアを開ける側が後方を確認しなければ、後方から進行する車にとっては、それまで走行できた場所に突然ドアが出てくることになります。後方車が衝突を避けることが難しいケースも多いため、後方の安全を確認してからドアを開ける側に大きな過失が認められるのが基本です。ただし、後方車がドアの開放をあらかじめ予測できた場合など、事故直前の状況によって過失割合は変わります。

引用:別冊判例タイムズ38号

事故パターン④:公道上で突然バック・後退した場合の事故

公道上で前方のA車が突然バックして後方のB車に衝突し、B車には衝突を避ける余地がなかった場合、基本的には後退したA車100:後方のB車0と考えられます。

後方のB車は、前方の車が突然自車に向かってバックしてくることまで常に予測して運転する必要はありません。A車が後方の安全を確認せずに突然バックし、B車が停止するなどしても衝突を避けられなかったのであれば、事故の原因は後退したA車の後方確認不足にあるためです。

一方、A車が後退していることをB車が認識してから衝突までに十分な時間や距離があり、停止などによって事故を避けられた場合は、B車にも過失が認められます。したがって、100:0となるかは、後退開始時の両車の距離やB車に衝突を回避する余地があったかを確認して判断します。

後方確認不足による事故でぶつけられた側の過失割合が増えるパターン

相手車との衝突を回避できたのに対応しなかった場合

相手車に後方確認不足があったとしても、ぶつけられた側が事故を避けられる状況だった場合には、その対応の有無が過失割合に反映されます。たとえば、前方車がバックを始めたことを早い段階で確認でき、十分な距離があったにもかかわらず、減速や停止をせずに進行して衝突したケースです。相手車の危険な動きを認識した後に衝突を回避できたかも、過失割合を判断する際のポイントになります。

ただし、事故を避けられたかどうかは、衝突したという結果だけから判断するものではありません。相手車が動き始めてから衝突するまでの時間、両車の距離や速度などを確認し、実際に減速や停止によって衝突を回避できたかを検討します。突然バックしてきた車に衝突されるなど、対応する時間や距離がなかった場合には、回避行動を取れなかったことを理由として、ぶつけられた側の過失を増やすことはできません。

ぶつけられた側の運転にも事故の原因があった場合

ぶつけられた側の運転自体が事故の発生に関係している場合にも、過失割合は増えます。たとえば、相手車が後方確認を十分にせず車線変更した場合でも、直進車に速度違反があれば、相手車との距離が短時間で縮まるだけでなく、直進車が減速や停止によって衝突を避けることも難しくなります。このような場合には、ぶつけられた側の運転も事故の原因として考慮されます。

過失割合を判断する際には、「どちらがぶつけたか」「どちらに後方確認不足があったか」という一つの事情だけを見るのではなく、双方の運転状況を確認します。ぶつけられた側にも速度違反や前方不注視などがあり、それが事故の発生や回避に関係していれば、相手方に後方確認不足があっても、ぶつけられた側の過失割合は増えます。

後続車の速度や、後方確認不足と事故発生までの時間の長さ(事故回避するための時間的猶予の長さ)は、過失割合に大きく影響することが少なくありません。

後方確認不足の過失割合が変化する修正要素

修正要素は事故の種類によって異なります。ここでは、後方確認不足が問題となる事故で、基本過失割合を増減させる代表的な修正要素を取り上げます。

速度違反がある場合

事故の一方当事者に速度違反がある場合には、その程度に応じて基本過失割合が修正されます。たとえば、基本過失割合が直進車30:車線変更車70となる車線変更事故では、直進車に時速15km以上の速度違反があると40:60、時速30km以上の速度違反があると50:50に修正されるのが基本です。制限速度を大きく超えて走行すると、相手車との距離が短時間で縮まるだけでなく、直進車自身も減速や停止によって衝突を避けにくくなるためです。

停車中の車がドアを開けて後方から来た車と衝突する事故でも、後方車の速度違反は修正要素となります。基本過失割合がドア開放車90:後方車10の場合、後方車に時速15km以上の速度違反があれば80:20、時速30km以上の速度違反があれば70:30に修正されるのが基本です。後方確認を怠った側だけでなく、事故の危険を高めた速度違反についても過失割合に反映されます。

進路変更時に合図をしなかった場合

車線変更をする場合には、方向指示器で合図をして、周囲の車に進路を変えることを知らせる必要があります。基本過失割合が直進車30:車線変更車70となる事故で、車線変更車が合図をしなかった場合には直進車10:車線変更車90に修正されるのが基本です。

方向指示器による合図があれば、後方の直進車は車線変更を予測し、減速したり車間距離を確保したりして衝突を避けることができます。合図をしないと、このような対応を取る機会が少なくなるため、合図を怠った車線変更車の過失が大きくなります。ただし、この修正は車線変更事故についてのものであり、すべての後方確認不足事故に一律に適用されるものではありません。

著しい過失・重過失がある場合

基本過失割合には、その事故類型で通常想定される程度の不注意があらかじめ織り込まれています。そのため、単に後方確認を怠ったというだけで、さらに過失割合が加算されるわけではありません。通常想定される不注意を超える事情がある場合に、著しい過失・重過失として基本過失割合を修正するかを検討します。

たとえば、酒気帯び運転や携帯電話を操作しながらの運転などは、その態様や事故との関係によって著しい過失・重過失として評価する対象になります。実際に該当するかは、事故の種類、運転方法、不注意の程度などを踏まえ、基本過失割合が前提としている不注意をどの程度超えているかによって判断します。修正幅も事故類型によって異なるため、該当する過失相殺基準に沿って過失割合を算定する必要があります。

後方確認不足の過失割合で揉めた際の対処法

ドライブレコーダーなど事故状況がわかる証拠を確保する

過失割合について相手方と意見が食い違った場合には、まず事故当時の状況を客観的に確認できる証拠を確保します。後方確認不足による事故では、相手車がいつバックや車線変更を始めたのか、衝突までにどの程度の時間や距離があったのかなどによって、適切な過失割合が変わります。当事者の説明だけでは事故状況について意見が食い違うこともあるため、客観的な証拠が重要です。

ドライブレコーダーの映像からは、両車の動きや衝突までの経過などを確認できます。また、駐車場などの防犯カメラに事故の様子が記録されていれば、自車以外の位置から事故状況を確認する証拠になります。事故直後の車両の位置や損傷箇所を撮影した写真も、衝突した位置や方向を検討する手掛かりです。防犯カメラの映像などは時間の経過によって消去・上書きされることがあるため、過失割合で争いになるかどうかにかかわらず、事故後早い段階で確保することが適切です。

事故状況に合った基本過失割合と修正要素を検討する

証拠を確保した後は、まず両車の位置や進行方向、事故直前の動きなどから事故態様を整理します。そのうえで、実際の事故態様に対応する基本過失割合を確認し、修正要素の有無を検討するという順序で過失割合を考えます。相手が後方確認を怠ったという一つの事情だけから過失割合を決めるものではありません。

保険会社から過失割合を提示されている場合には、割合だけでなく、その根拠も確認することが必要です。どの事故類型を前提としているのか、速度違反や合図なしなどの修正要素をどのように評価しているのかを確認し、実際の事故状況と比較します。保険会社と認識が異なる事故状況や修正要素を特定することで、何について反論すべきかを整理できます。

過失割合の交渉を弁護士に依頼する

事故状況や過失割合について相手方や保険会社との意見が一致しない場合には、弁護士に交渉を依頼することが考えられます。弁護士は、ドライブレコーダーなどの証拠から事故態様を整理したうえで、過失割合の基準や裁判例を踏まえ、適用すべき基本過失割合や修正要素について具体的な根拠を示して交渉します。

たとえば、相手方が主張する事故態様が映像と異なる場合には証拠に基づいて反論し、適用されている基本過失割合が事故態様と合わない場合には別の基準を主張することが考えられます。過失割合が変われば、過失相殺によって最終的に受け取れる損害賠償額も変わるため、過失割合の根拠に争いがある場合には、事故状況と基準の両面から検討することが必要です。弁護士費用特約を利用できる場合には弁護士費用を保険でまかなえることがあるため、加入している自動車保険などの契約内容も確認しましょう。

特に相手が不合理な主張をしている場合は、弁護士への依頼が有力になりやすいです。弁護士が法的根拠を添えて説明・主張することで、相手当事者が理解を改めるきっかけになりやすいでしょう。

後方確認不足による事故の過失割合まとめ

後方確認不足による事故では、後方確認を怠った側だけに過失があるとは限りません。駐車場でのバック、車線変更、停車中のドア開放など、事故の状況に応じて基本過失割合が異なり、さらに速度違反や合図の有無、著しい過失・重過失などの修正要素を踏まえて具体的な過失割合を判断します。

また、ぶつけられた側であっても、相手車の動きを認識してから衝突を避ける十分な時間や距離があった場合や、自身の運転にも事故の原因があった場合には、過失が認められます。後方確認不足という一つの事情だけではなく、事故直前の双方の動きを確認することが必要です。

過失割合について相手方や保険会社と意見が合わない場合には、ドライブレコーダーや防犯カメラなどの証拠から事故態様を整理し、それに対応する基本過失割合と修正要素を検討します。提示された過失割合の根拠に納得できない場合には、弁護士に相談し、事故状況や過失割合の基準を踏まえて交渉することも検討しましょう。

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【T字路事故の過失割合】10対0になるケース4選!自分が悪くないことを証明するポイントを徹底解説

T字路で交通事故に遭い、「相手が一時停止を無視したのだから10対0になるはず」「自分は衝突時に停止していたのに、なぜ過失が付くのか」と疑問を感じている方もいるでしょう。

T字路事故の過失割合は、道路の幅や優先関係、一時停止規制、双方の進行方向などを踏まえて基本となる割合を定め、個別の事故状況に応じて修正するのが一般的です。そのため、相手側に明らかな交通違反があっても、必ず10対0になるとは限りません。一方、自車が十分前から停止していた場合や、相手車の運転に大きな問題があった場合など、事故状況によっては被害者側の過失が0と評価されることもあります。

この記事では、T字路事故で過失割合が10対0になるケースや基本過失割合、10対0を主張する際の注意点を解説します。相手方の保険会社から提示された過失割合に納得できない方は、適切な過失割合を検討する際の参考にしてください。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

T字路事故で過失割合が10対0(被害者過失なし)になるケース

自車が停止した後に相手車が衝突したケース

T字路で相手車との衝突を避けるために自車が停止し、その後に相手車が進行を続けて衝突した場合、自車が事故を避けるために必要な対応をしていたといえれば、過失割合は10対0と判断できます。

重要なのは、衝突した瞬間に停止していたかではなく、事故を避けられる段階で適切に停止していたかどうかです。相手車との距離、自車が停止した時点、停止してから衝突するまでの時間などを踏まえ、自車が停止するまでの運転も含めて、事故を避けるために適切な対応をしていたかが判断のポイントになります。

右左折した相手車が自車の通行部分にはみ出して衝突したケース

T字路の突き当たりから右折または左折する相手車が、必要以上に大回りや小回りをして、本来進むべき範囲から外れて自車の通行部分にはみ出すことがあります。自車が正常に走行しており、相手車の進入を予測したり避けたりすることが難しかった事情は、自車の過失を0と判断する重要な根拠になります。

通常のT字路事故では、直進車と右左折車の双方が交差点へ進入して衝突することを前提に、基本となる過失割合を考えます。一方、相手車が本来進むべき範囲から外れて一方的に自車側へ進入した場合は、通常のT字路事故とは事故の起こり方が異なるため、一般的な基本過失割合がそのまま当てはまるとは限りません。

赤信号を無視した相手車と衝突したケース

信号機のあるT字路で、自車が青信号に従って直進し、相手車が赤信号を無視して交差点へ進入した場合、青信号の直進車と赤信号の進入車との基本過失割合は0:100です。

青信号で進行する車は、通常、赤信号側の車が停止することを前提として交差点へ進入できます。そのため、赤信号を無視した相手車との事故では、相手車が事故の責任を負うことが基本です。ただし、青信号側にも事故につながる特別な事情があれば、基本過失割合から修正されることがあります。

相手車に重過失などの修正要素があるケース

通常のT字路事故では自車にも一定の基本過失が設定されますが、相手車に著しい過失や重過失などがあれば、基本過失割合を修正した結果として10対0になることがあります。

たとえば、優先道路を直進するA車と、突き当たり道路から右折するB車との事故では、基本過失割合はA車10:B車90です。B車に著しい過失が認められると、A車の過失割合が10%減り、A車0:B車100となります。このように、基本過失割合だけで結論を出すのではなく、事故当時の事情を踏まえて過失割合を修正する必要があるかまで検討することが重要です。

T字路事故の基本過失割合と修正要素

引用:別冊判例タイムズ38号

同じ幅の道路における直進車と右折車の事故

信号機がなく、道路の幅がほぼ同じT字路で、直線道路を進むA車と、突き当たり道路から右折するB車が衝突した場合、基本過失割合はA車30:B車70です。右折するB車には、直進するA車の進行を妨げないよう注意する必要があるため、B車の過失が大きくなります。

基本過失割合は、実際の運転状況によって修正されます。たとえば、A車に時速15km以上の速度違反があればA車の過失割合に10%、時速30km以上であれば20%が加算されます。反対に、B車が徐行していなければA車の過失割合から10%が差し引かれます。また、B車に著しい過失や重過失がある場合も、その程度に応じてA車の過失割合が小さくなります。

一時停止規制がある場合の直進車と右折車の事故

T字路の突き当たり道路に一時停止規制があり、そこから右折するB車と、規制のない道路を直進するA車が衝突した場合、基本過失割合はA車15:B車85です。一時停止規制があるB車は、停止線の直前で一時停止したうえで交差道路の安全を確認する必要があるため、B車の過失が大きくなります。

ここで注意したいのは、B車側に一時停止規制があること自体は、すでに15:85という基本過失割合に反映されていることです。一時停止規制があるという理由だけで、A車の過失が0になるわけではありません。そのうえで、A車の速度違反やB車の著しい過失・重過失など、事故当時の具体的な運転状況に応じて基本過失割合を修正します。

優先道路における直進車と右折車の事故

A車が優先道路を直進し、B車が突き当たり道路から右折してきた場合、基本過失割合はA車10:B車90です。B車には、優先道路を通行するA車の進行を妨げないようにする必要があるため、一時停止規制がある場合よりもA車の基本過失が小さくなります。

この場合も、事故当時の運転状況によって基本過失割合が修正されます。たとえば、A車に時速15km以上の速度違反があればA車の過失割合に10%、時速30km以上であれば20%が加算されます。反対に、B車に著しい過失が認められれば、A車の過失割合から10%が差し引かれ、A車0:B車100となります。このように、T字路事故の過失割合は、道路の状況から基本過失割合を確認したうえで、双方の具体的な運転状況を踏まえて修正することが重要です。

T字路事故で過失割合10対0を主張する際の注意点

相手車に交通違反があっても10対0になるとは限らない

T字路事故で相手車が一時停止を無視したり、徐行せずに右左折したりしていても、相手車に交通違反があるという理由だけで過失割合が10対0になるわけではありません。相手車の交通違反とは別に、自車の運転にも事故の原因となる問題がなかったかを検討する必要があります。

たとえば、相手車が一時停止を無視していても、自車に速度違反があった場合には、自車の過失が大きくなる方向に修正されます。反対に、相手車に著しい過失や重過失があれば、自車の過失が小さくなる方向に修正されます。相手車の交通違反だけでなく、双方が事故に至るまでにどのような運転をしていたかを踏まえて、最終的な過失割合を判断します。

衝突時に停止したとしても10対0になるとは限らない

事故の瞬間に自車が停止していたとしても、それだけで自車の過失が0になるわけではありません。過失割合を判断する際には、衝突した瞬間だけでなく、衝突に至るまでの双方の運転状況が問題になります。

たとえば、自車がT字路の交差点へ進入した後、相手車との衝突直前に急ブレーキをかけて停止した場合、それまでの自車の運転に事故の原因となる問題があれば、その点も過失割合に反映されます。一方、相手車の進入を確認して早い段階で停止し、その後に相手車が衝突してきた場合には事情が異なります。いつ、どこで停止し、その時点で相手車がどこにいたのかなど、衝突までの経過を踏まえて判断することが重要です。

過失割合10対0では自分の保険会社に示談交渉を任せられない

自車の過失が0で相手方に対する賠償責任がない場合、自分が加入している保険会社に相手方との示談交渉を任せることはできません。自分の保険会社には相手方へ賠償金を支払う必要がなく、契約者に代わって相手方へ損害賠償を請求するための交渉はできないためです。

そのため、相手方の保険会社が10対0を認めず、自車にも一定の過失があると主張してきた場合には、自分で相手方と交渉する必要があります。過失割合について意見が対立し、自分での交渉が難しい場合には、弁護士に示談交渉を依頼することが有力です。

弁護士でなければ交渉の代理人になることはできません。自分の保険会社が交渉の代行をできるのは、自社の支払に関する交渉という面を含む場合のみ(自分の過失がある場合のみ)です。そのため、過失ゼロを主張する交渉を保険会社が代行することは難しい、ということになります。

T字路事故で過失割合10対0を勝ち取るための手順

ドライブレコーダーなど事故状況を示す証拠を集める

10対0を主張するためには、まず事故がどのように起きたのかを客観的に示す証拠を集めることが重要です。当事者の説明が食い違っている場合、証拠がなければ、事故状況について客観的な根拠をもって10対0を主張することが難しくなります。

特に有力なのはドライブレコーダーの映像です。双方の進行方向や速度、相手車が一時停止したか、自車がいつ停止したかなどを確認できます。そのほか、事故現場や車両の損傷箇所を撮影した写真、防犯カメラの映像なども事故状況を明らかにする材料になります。時間が経つと映像が消去されるなど、入手できなくなる証拠もあるため、事故後は早めに確保することが大切です。

事故状況に合った基本過失割合と修正要素を確認する

証拠を集めたら、そこから分かった事故状況をもとに、自分の事故に近い事故類型と基本過失割合を確認します。T字路事故でも事故の起こり方はさまざまであり、似ているように見えても、道路の状況や双方の進行方向が違えば基本過失割合も変わります。

事故類型を特定した後は、双方の運転状況に基本過失割合を修正する事情がないかを検討します。相手車に著しい過失などがあれば自車の過失が小さくなる一方、自車の速度違反などがあれば自車の過失が大きくなります。事故類型から基本過失割合を確認し、修正要素を当てはめて最終的な過失割合を検討するという順序が重要です。

根拠を示して相手方の保険会社と交渉する

事故状況や基本過失割合、修正要素から10対0と考えられる場合には、事故状況を裏付ける証拠と過失割合の根拠を示して、相手方の保険会社と交渉します。単に「自分は悪くない」と主張するのではなく、どの事故類型に当たり、どのような事情から自車の過失を0とすべきなのかを具体的に伝えることが重要です。

相手方の保険会社から別の過失割合を提示された場合には、どの事故類型や修正要素を根拠としているのかを確認し、こちらの事故状況と一致しているかを検討します。そのうえで、相手方が考慮していない証拠や修正要素があれば、それらを示して反論します。交渉しても10対0で合意できない場合には、弁護士への依頼や訴訟による解決を検討することになります。

【まとめ】T字路事故で過失割合10対0を目指すなら弁護士へ相談を

T字路事故では、相手車に一時停止無視などの交通違反があったとしても、それだけで過失割合が10対0になるとは限りません。道路の状況や双方の進行方向から基本過失割合を確認し、事故当時の運転状況による修正要素まで検討することが重要です。

また、10対0を主張する場合には、自分の保険会社に示談交渉を任せることができません。相手方の保険会社が異なる過失割合を主張している場合、自分で事故状況や過失割合の根拠を示して交渉する必要があります。

弁護士に依頼すれば、ドライブレコーダーなどの証拠から事故状況を整理し、基本過失割合や修正要素を踏まえて適切な過失割合を検討したうえで、相手方との示談交渉を任せることができます。相手方から提示された過失割合に納得できない場合や、自分では10対0の根拠を整理することが難しい場合には、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

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駐車場事故の過失割合は?バック・出庫・出会い頭などケース別パターンと納得がいかないときの解決策 

駐車場で事故を起こしてしまい、「バックしていた自分の過失が大きいのか」「駐車場内では50対50になるのか」など、過失割合が気になっている方もいるでしょう。駐車場事故の過失割合は、出庫・入庫・出会い頭などの事故状況によって基本となる割合が異なり、さらに個別の事情によって修正されます。

過失割合が大きくなるほど、相手方に賠償すべき金額が増える一方、自分が受け取れる賠償金は過失相殺によって減額されます。そのため、保険会社から提示された割合をそのまま受け入れるのではなく、事故状況に適した基本過失割合が用いられているか、修正すべき事情がないかを確認することが大切です。

この記事では、駐車場事故の過失割合をケース別に整理したうえで、過失割合を変化させる修正要素、事故発生後の対応、適切な過失割合を求めるためのポイントを解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

駐車場事故の過失割合パターン6選【状況・ケース別】

ケース①:通路走行車 vs 駐車スペースからの出庫車

駐車スペースから通路へ出ようとする車と通路を走行する車が衝突した場合、基本過失割合は通路走行車30:出庫車70です。駐車区画から出庫する車は、既に通路を走行している車の存在を確認し、安全に通路へ進入することが求められます。そのため、通路走行車よりも出庫車の過失が大きく設定されています。

ただし、この割合で必ず決まるわけではありません。通路走行車に著しい過失や重過失があるなど、基本となる事故態様とは異なる事情があれば割合は修正されます。30:70を出発点として、実際の運転状況に修正要素を当てはめるのが過失割合を判断する基本的な流れです。

引用:別冊判例タイムズ38号

ケース②:通路走行車 vs 駐車スペースへのバック入庫車

通路から駐車スペースへバックで入庫しようとしている車と通路走行車が衝突した場合、基本過失割合は通路走行車80:入庫車20です。これは、入庫車が駐車区画への進入動作を開始しており、通路走行車からその動きを認識できる状況で衝突したケースを前提としています。

そのため、「バックしていた車だから過失が大きい」と判断することはできません。駐車場では車が駐車区画へ出入りすることが予定されているため、既に入庫動作を開始している車の動きに通路走行車が注意する必要があります。一方、入庫車が徐行していなかった場合などには割合が修正されるため、衝突時だけでなく事故直前の双方の動きを確認することが必要です。

引用:別冊判例タイムズ38号

ケース③:通路同士の交差部での事故(出会い頭)

同程度の幅の通路が交差する場所で車同士が出会い頭に衝突した場合、基本過失割合は50:50です。双方が駐車場内の通路を進行して交差部へ進入する事故では、基本的に双方へ同程度の注意が求められることが割合の前提となっています。

もっとも、駐車場内の出会い頭事故がすべて50:50になるわけではありません。一方が狭い通路から広い通路へ進入した場合や、一時停止・通行方向の標示に違反していた場合などには割合が修正されます。通路の幅や標示、双方の運転方法まで確認することが必要です。

引用:別冊判例タイムズ38号

ケース④:停車・駐車中の車への追突事故

正常な態様で停車・駐車している車に走行車が追突した場合、過失割合は原則として停車・駐車車0:走行車100と考えられます。停車・駐車車は動いておらず、後方などから接近してくる走行車との衝突を避けるための行動を取ることが通常できないためです。

ただし、0:100となるのは、停車・駐車車側に事故発生の原因となる事情がないことが前提です。通路上の危険な位置に車を止めていたなど、停車・駐車の方法が事故の発生に影響している場合には、停車・駐車車側にも過失を認めるべきかを個別に検討します。

ケース⑤:ドア開けによる接触事故

双方の車が駐車している状態で、一方の車の乗員がドアを開けて隣の車に接触させた、いわゆるドアパンチでは、原則としてぶつけられた車0:ドアを開けた側100と考えられます。ぶつけられた車は停止しているため、通常はドアとの接触を回避できないことが理由です。

ここで0:100とするのは、駐車して動いていない車へドアを接触させたケースです。駐車車両のドアを開けたところへ通路を走行する車が衝突した場合には、走行車側にも回避可能性があったかなどを検討する必要があります。同じドア開けによる事故でも、相手車が駐車中か走行中かで判断は異なります。

ケース⑥:駐車場内の歩行者 vs 自動車

駐車場の駐車区画内や通路上で歩行者と自動車が衝突する事故では、基本過失割合は歩行者10:自動車90です。駐車場では歩行者が駐車車両の間や通路を移動することが予定されているため、自動車には歩行者の存在を踏まえて安全に走行することが求められます。

もっとも、実際の割合は事故状況によって変わります。歩行者用通路上での事故であったか、歩行者が児童・高齢者等であったか、急な飛び出しがあったかなどが修正要素になります。したがって、10:90を出発点として、歩行者と自動車の双方に関する修正要素を確認することが必要です。

引用:別冊判例タイムズ38号

駐車場事故の過失割合を変化させる修正要素

通路の広さや標示など駐車場内の状況

駐車場事故では、事故類型ごとの基本過失割合に加えて、通路の広さや駐車場内の標示なども過失割合を判断する材料になります。たとえば、同程度の幅の通路が交差する場所での出会い頭事故は50:50が基本ですが、一方が狭い通路から広い通路へ進入した場合には、狭い通路側の車の過失が加算されます。

また、一時停止や通行方向の標示があるにもかかわらず、これに違反して進行したことも修正要素となります。歩行者と自動車の事故では、歩行者用通路として標示された場所を歩行していたことが歩行者側の過失を減らす事情となります。通路幅や標示の有無だけでなく、事故当時にそれぞれの車や歩行者がどこをどのように進行していたかまで確認することが必要です。

徐行の有無や急な飛び出しなど事故当時の行動

事故類型によっては、事故直前の車や歩行者の具体的な行動も修正要素として定められています。たとえば、駐車スペースへ入庫する車と通路走行車との事故では、入庫車が徐行していなかった場合、入庫車側の過失が加算されます。

歩行者と自動車との事故では、歩行者の急な飛び出しが歩行者側の過失を加算する事情となる一方、駐車区画内で隣接する車へ乗降するために歩いていた場合には、歩行者側の過失を減らす方向に修正されます。どの行動が修正要素になるかは事故類型ごとに異なるため、基本過失割合だけでなく、その類型に設定された修正要素を個別に確認する必要があります。

脇見運転や酒酔い運転など著しい過失・重過失

通常想定される注意義務違反よりも過失の程度が大きい場合には、「著しい過失」や「重過失」として過失割合が修正されます。著しい過失には、脇見運転などの著しい前方不注視、著しく不適切なハンドル・ブレーキ操作、携帯電話等で通話しながらの運転や画像を注視しながらの運転、酒気帯び運転などが該当し得ます。

さらに過失の程度が大きい重過失としては、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転などが挙げられます。これらに該当する事情があれば、通常の事故態様を前提とした基本過失割合をそのまま用いるのではなく、著しい過失・重過失がある当事者の過失を加算して最終的な割合を検討します。具体的な修正幅は事故類型によって異なるため、該当する基準を確認する必要があります。

駐車場で事故が発生した際に行うべき事故対応手順

負傷者を救護して周囲の安全を確保する

駐車場で事故を起こした場合は、まず車を停止させ、負傷者がいれば救護を最優先にします。負傷の程度に応じて119番通報を行い、必要な救護を行います。事故車両をそのままにすると別の車や歩行者との二次事故につながる場合には、負傷者の救護を行ったうえで周囲の安全も確保します。

相手が事故直後に「大丈夫」と話していても、それだけでけががないとは判断できません。事故後に痛みなどの症状が現れる場合もあるため、外見だけで負傷の有無を決めつけず、相手の状態を確認して必要な対応を取ることが適切です。

警察に連絡して事故を届け出る

救護や安全確保をした後は、駐車場内の事故でも警察へ連絡し、事故を届け出ておくことが適切です。道路交通法上の事故報告義務が生じるかは、その駐車場が同法上の「道路」に該当するかによって異なりますが、私有地で発生したという理由だけで警察への連絡が不要と判断するのは適切ではありません。

警察への届出をしないまま当事者間だけで処理すると、後から事故の発生自体や事故状況をめぐって争いになるおそれがあります。また、保険請求などで用いる交通事故証明書を取得するためにも、警察への届出が必要です。物損事故であっても、その場で相手方と話を済ませて立ち去るのではなく、警察へ事故を届け出ておきましょう。

事故状況と相手方の情報を記録する

警察への連絡とあわせて、事故直後の状況を写真や動画で記録しておきます。車両の損傷箇所だけでなく、衝突地点、双方の車両の位置、駐車区画、通路の幅、一時停止や進行方向などの標示を撮影しておくと、後から事故態様や過失割合を検討するための資料になります。

相手方については、氏名・連絡先・車両のナンバーなどを確認します。事故車両を移動した後では衝突時の位置関係を正確に把握できなくなるため、二次事故などの危険がない範囲で、車両を移動させる前の位置関係を記録しておくことも有効です。

保険会社に事故を連絡する

事故現場で必要な対応を終えたら、加入している任意保険会社へ速やかに事故を連絡します。事故の日時・場所、相手方の情報、事故状況や車両の損傷などを伝え、利用できる保険や事故受付後の対応を確認します。

事故直後は、過失割合を判断するための資料が十分にそろっていない場合があります。その場で相手方から責任を認めるよう求められても、具体的な過失割合まで安易に合意することは避け、事故状況や客観的な資料を確認してから過失割合を検討することが適切です。

事故直後に当事者間で何かを取り決めようとすることは、基本的にお勧めできません。その場で言質を取ったとしても、法的にはそれほど大きな意味は持たないと考える方が適切でしょう。

駐車場内の事故で適切な過失割合を求める際のコツ

ドライブレコーダーや防犯カメラなどの証拠を確保する

適切な過失割合を求めるには、まず事故状況を客観的に確認できる証拠を確保することが重要です。当事者の説明が食い違っている場合、どちらが先に動き始めたのか、どの位置で衝突したのかなどを明らかにできなければ、適切な基本過失割合や修正要素を判断することが難しくなります。

ドライブレコーダーの映像に加え、店舗や商業施設などの駐車場では、防犯カメラが事故の様子を記録している場合があります。防犯カメラの映像は一定期間が経過すると上書きされる可能性があるため、事故後できるだけ早く管理者へ映像の有無を確認し、保存を依頼することが有効です。管理者から直接映像の提供を受けられない場合でも、まず映像が消去されないよう保存を求めることは有力です。

事故状況に合った基本過失割合と修正要素を確認する

証拠を確保した後は、実際の事故態様に対応する基本過失割合を選択することが必要です。たとえば、駐車スペースから通路へ出庫する車との事故と、通路から駐車スペースへバックで入庫する車との事故では、基本過失割合が大きく異なります。単に「駐車場でバック中に起きた事故」と捉えるだけでは、適切な割合を判断できません。

事故態様を特定したら、その類型の基本過失割合を確認し、通路の広さや標示、徐行の有無、著しい過失・重過失などの修正要素を当てはめます。保険会社から割合を提示されている場合も、前提となる事故類型が正しいか、考慮すべき修正要素が漏れていないかという順序で確認することが、提示された割合の妥当性を判断するポイントです。

過失割合に納得できない場合は弁護士に相談する

保険会社から提示された過失割合に納得できない場合でも、提示された割合がそのまま確定するわけではありません。事故状況を示す証拠と基本過失割合、修正要素を根拠として、別の過失割合を主張できる場合があります。

弁護士に相談すれば、証拠から事故態様を整理し、適用すべき基本過失割合や修正要素を検討したうえで、適切と考えられる割合を相手方に主張できます。自動車保険などに弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用を保険でまかなえる場合もあるため、自分や家族が加入している保険の契約内容も確認するとよいでしょう。

駐車場内における事故の過失割合に関するよくある質問

駐車場内の事故にも道路交通法は適用されますか?

駐車場内だからといって、道路交通法が一律に適用されないわけではありません。道路交通法上の「道路」には、公道だけでなく「一般交通の用に供するその他の場所」も含まれるため、不特定の人や車が自由に通行できる駐車場などは、道路交通法上の道路に該当する場合があります。

一方、利用者が限定され、一般の交通に利用されていない駐車場であれば、道路に該当しない場合もあります。また、道路交通法が適用されるかどうかと、民事上の過失割合は別の問題です。道路交通法が適用されない駐車場でも、事故状況に応じて双方の過失を判断する必要があります。

駐車場内の事故では過失割合が50対50になるのですか?

駐車場内で事故が起きたからといって、過失割合が一律に50対50になるわけではありません。50対50が基本となる代表例は、同程度の幅の通路が交差する場所で、車同士が出会い頭に衝突したケースです。

これに対し、駐車スペースから通路へ出庫する車と通路走行車との事故では30:70、駐車スペースへの入庫車と通路走行車との事故では80:20など、事故態様によって基本過失割合は異なります。さらに修正要素も考慮されるため、実際の事故態様を特定して、それに対応する基準を当てはめることが必要です。

駐車場内の事故の過失割合は誰が決めるのですか?

警察が交通事故の捜査や事故状況の確認を行っても、警察が民事上の過失割合を決定するわけではありません。通常は、事故当事者やその保険会社が、事故状況や過去の裁判例などを踏まえて交渉し、過失割合について合意します。

当事者間で合意できなければ、示談だけで過失割合を確定させることはできません。訴訟となった場合には、双方が提出した証拠や主張を踏まえて裁判所が過失割合を判断します。そのため、保険会社から割合を提示された場合も、それが最終決定ではなく、根拠となる事故類型や修正要素を確認したうえで交渉する余地があります。

駐車場事故の過失割合まとめ

駐車場事故の過失割合は、事故が駐車場内で発生したというだけで一律に決まるものではありません。通路走行中、駐車スペースからの出庫、バックでの入庫、出会い頭など、具体的な事故態様に対応する基本過失割合を確認したうえで、個別の修正要素を考慮する必要があります。

過失割合に疑問がある場合は、ドライブレコーダーや防犯カメラなどから事故状況を確認し、適用されている事故類型や修正要素が適切かを検討することが必要です。保険会社から提示された割合が当然に確定するわけではないため、客観的な証拠や過失割合の基準と異なる点があれば、根拠を示して交渉することが考えられます。

自分だけで適切な過失割合を判断することが難しい場合や、相手方との主張が食い違っている場合には、弁護士への相談も選択肢となります。事故状況と証拠を整理し、基本過失割合や修正要素を確認したうえで、適切な解決を目指しましょう。

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車とバイクの事故でバイクが悪いケースとは?過失割合を覆すプロの交渉術

車とバイクの事故で、保険会社から「バイク側の過失が大きい」と言われ、「本当に自分の方が悪いのだろうか」「過失割合を覆すことはできないのだろうか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

保険会社から提示された過失割合が、そのまま最終的な結論になるとは限りません。 過失割合は、事故類型ごとの基本的な考え方をもとに、事故当時の状況や双方の運転状況などの具体的な事情を踏まえて判断されます。そのため、証拠や事故状況によっては、保険会社の提示内容が見直されることもあります。

一方で、一時停止違反や速度超過、安全確認義務違反などが認められると、バイク側の過失割合が大きく修正される可能性があります。 過失割合は、示談金の金額だけでなく、修理費の自己負担額や賠償額にも大きく影響するため、提示された内容を十分に確認せず受け入れることは避けるべきです。

この記事では、車とバイクの事故でバイク側の過失割合が大きくなりやすい代表的な事故類型と、過失割合が修正されやすい主な要素を解説します。また、「バイクが悪い」と言われた場合に確認すべき証拠や適切な対処法、弁護士へ相談するメリットについても紹介します。ご自身の事故で提示された過失割合が妥当かを判断する際の参考にしてください。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

車とバイクの事故でバイクが悪いとされる代表的なケース

一時停止を無視して交差点へ進入した事故

一時停止標識がある道路から停止せずに交差点へ進入し、優先道路を走行していた車と衝突する事故は、バイク側の過失割合が大きくなりやすい代表的なケースです。

一時停止規制がある道路を通行する車両には、停止して安全を確認し、優先道路の通行を妨げないよう交差点へ進入する義務があります。そのため、一時停止を怠って進入した場合は、事故の原因を作ったと評価されやすくなります。

特に、見通しの悪い住宅街の交差点や交通量の多い生活道路では、「車が来ていないだろう」という思い込みによる進入が衝突につながるケースも少なくありません。一時停止義務に違反した事故は、バイク側が不利な判断を受けやすい典型例といえます。

(引用:別冊判例タイムズ38)

追越し中に前方車両と接触した事故

前方を走行する車を追い越そうとして接触した事故も、バイク側の過失割合が大きくなりやすい代表的なケースです。

バイクは車体が小さく加速性能にも優れているため、前方車両を追い越す場面が比較的多く見られます。しかし、追越しは前方車両との距離や位置関係が絶えず変化する運転場面であり、通常の走行以上に慎重な安全確認が求められます。

例えば、十分な側方間隔を確保しないまま追越しを行った結果、前方車両と接触した場合には、追越しを行ったバイク側の責任が重く評価されることがあります。追越しは自ら危険性の高い運転状況を作り出すため、事故が発生するとバイク側の過失が大きく認められやすい事故類型です。

(引用:別冊判例タイムズ38)

センターラインをはみ出して対向車と衝突した事故

センターラインを越えて対向車線へ進入し、対向車と衝突した事故は、バイク側の過失が非常に大きく認められやすい代表例です。

例えば、カーブで曲がり切れずに対向車線へ膨らんだ場合や、前方車両を追い越そうとしてセンターラインを越えた場合には、対向車との正面衝突や接触事故につながる危険が高まります。

対向車は、突然センターラインを越えてくるバイクを避ける時間やスペースが十分にないことも多く、重大事故に発展しやすいのが特徴です。そのため、このような事故では、センターラインを越えて走行したバイク側の責任が重く評価される傾向があります。

(引用:別冊判例タイムズ38)

前方車両へ追突した事故

赤信号で停止していた車や渋滞で減速した車に追突した事故では、後続車であるバイク側の過失が大きく認められるのが一般的です。

後続車には、前方車両との車間距離を十分に保ち、前方の状況に応じて安全に停止できるよう運転する義務があります。バイクは加速や減速の操作が軽快である一方、前車との距離を詰めて走行してしまうと、急な減速に対応できず追突事故につながることがあります。

特に、信号待ちの最後尾や渋滞中の車列では、前方への注意が遅れたことによる追突事故が多く見られます。追突事故では、後続車が適切な車間距離を保ち、安全に停止できる運転をしていたかが重要な判断ポイントになります。

バイクが悪いと判断されやすくなる修正要素

過失割合は、事故類型だけで決まるものではありません。 同じ事故であっても、事故当時の運転状況によっては、基本となる過失割合が修正されることがあります。

特に、バイク側に事故の危険性を高めた事情が認められる場合には、過失割合がバイク側に不利な方向へ修正される可能性があります。

著しい速度超過があった

バイクに著しい速度超過が認められた場合には、基本となる過失割合よりもバイク側の過失が重く評価されることがあります。

速度が速くなるほど停止距離は長くなり、危険を発見してから事故を回避できる可能性は低くなります。また、相手方がバイクの接近速度を正確に判断しにくくなるため、事故の発生や被害の拡大につながる要因として評価されます。

そのため、著しい速度超過が認められた場合には、事故類型とは別の修正要素として、バイク側の過失割合が加算されることがあります。

前方不注視や安全確認義務違反があった

前方不注視や安全確認義務違反も、過失割合を修正する代表的な要素です。

前方車両の動きや道路状況を十分に確認せずに走行していた場合には、本来であれば事故を回避できた可能性があったと評価されることがあります。また、交差点への進入や進路変更時の安全確認が不十分だった場合も、事故発生への寄与が大きい事情として考慮されます。

このような事情が認められると、基本となる過失割合よりもバイク側の過失が重く評価される可能性があります。

危険なすり抜けや追越し方法で走行していた

危険なすり抜けや無理な追越しは、過失割合を修正する要素となることがあります。

車両の間を十分な間隔を空けずに通行したり、安全を確認しないまま追越しを行ったりすると、通常より危険性の高い運転方法を選択したものとして評価されることがあります。

そのため、事故類型だけでは説明できない危険な運転が認められた場合には、バイク側に不利な方向へ過失割合が修正される可能性があります。

無灯火など発見が困難な状態で走行していた

無灯火など、相手方から発見しにくい状態で走行していたことも、過失割合の修正要素となる場合があります。

夜間や薄暮時の灯火には、自車の存在を周囲へ知らせる重要な役割があります。そのため、無灯火によって相手方がバイクを発見しにくい状況を生じさせた場合には、事故発生や被害拡大への影響が考慮されます。

このように、相手方からの視認性を低下させる事情が認められた場合には、基本となる過失割合がバイク側に不利な方向へ修正される可能性があります。

バイクは、車(四輪車)に比べて過失が小さくなるケースの多い立場ですが、歩行者や自転車ほど過失が小さい立場にはありません。特に不適切な運転動作があった場合には、10割に近い過失割合となることも十分にあります。

「バイクが悪い」と言われた場合の対処法

保険会社から提示された過失割合が、そのまま最終的な結論になるとは限りません。 新たな証拠によって事故状況を客観的に立証できれば、過失割合が見直される可能性があります。

ドライブレコーダーを確認する

ドライブレコーダーは、過失割合を争う最も有力な証拠の一つです。

映像には、信号表示、双方の走行位置や進行方向、進入のタイミング、ウインカーの有無、回避行動などが記録されていることがあります。これらは、「一時停止をしていたか」「相手が急な進路変更をしたのではないか」など、事故原因に関する双方の主張を客観的に検証する重要な資料になります。

事故後は映像が自動的に上書きされることもあるため、速やかに保存してください。また、自分の車両だけでなく、相手方車両や周辺車両のドライブレコーダー映像も入手できないか確認すると、事故状況をより正確に立証できる場合があります。

防犯カメラを確認する

防犯カメラ映像は、ドライブレコーダーでは映らない事故状況を補完できる重要な証拠です。

店舗や駐車場、交差点などの防犯カメラには、事故直前の双方の動きや周囲の交通状況が記録されていることがあります。第三者の視点から事故状況を確認できるため、当事者双方の説明に食い違いがある場合には、どちらの主張が実際の状況に近いかを判断する有力な資料になります。

防犯カメラの映像は保存期間が短いことが多いため、事故後はできるだけ早く管理者へ保存を依頼しましょう。

現場の物証確認を行う

現場の物証は、事故状況を客観的に裏付ける重要な証拠です。

車両の停止位置や損傷箇所、ブレーキ痕、飛散物の位置などは、衝突地点や双方の進行方向、回避行動の有無などを検討する重要な手掛かりになります。また、停止線や道路標識、車線の形状、見通しの状況なども、過失割合を判断する際の重要な事情です。

事故現場は時間の経過とともに状況が変化するため、現場や車両の状態を写真や動画で記録しておくことが重要です。これらの記録は、当事者の記憶や説明だけでは明らかにならない事実を裏付ける資料として役立つことがあります。

相手保険会社は、相手本人の言い分のみを根拠に過失割合を主張していることもあります。この場合には、ドライブレコーダーをはじめとする客観的な証拠と相手の言い分が整合するかどうか、という点が重要なポイントになりやすいでしょう。

車とバイクの事故のトラブルは弁護士への相談がベストな理由

「バイクの方が悪い」と言われても、その過失割合が法的に正しいとは限りません。 過失割合や損害賠償額は、事故状況や証拠、交通事故実務で用いられる認定基準を踏まえて判断されます。弁護士へ相談すれば、これらを法的観点から検討し、適正な解決を目指すことができます。

保険会社との過失割合の交渉をすべて一任できる

弁護士は、証拠と交通事故実務の認定基準に基づいて過失割合を争うことができます。

保険会社との交渉では、事故状況だけでなく、速度超過や安全確認義務違反などの修正要素も踏まえて過失割合が検討されます。そのため、単に「納得できない」と主張するだけでは、過失割合が見直されることは多くありません。

弁護士は、ドライブレコーダー映像や実況見分調書、現場写真などの証拠を分析し、交通事故実務で広く用いられている過失割合認定基準や裁判例を踏まえて反論を組み立てます。法的根拠に基づいて交渉することで、過失割合が見直される可能性があります。

また、保険会社との交渉をすべて任せられるため、被害者自身が相手方や保険会社と直接やり取りする負担も軽減できます。

弁護士基準の適用で示談金を大幅に増額できる

弁護士へ依頼すると、弁護士基準(裁判基準)による適正な損害賠償額を請求できます。

保険会社が提示する示談金は、裁判になった場合に認められる水準より低い金額となることがあります。特に、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料は、弁護士基準を前提に交渉することで増額できるケースが少なくありません。

過失割合が見直されれば、最終的な受取額が大きく変わる可能性があります。 そのため、過失割合と損害賠償額は切り離して考えるのではなく、一体として検討することが重要です。

弁護士費用特約が利用できれば、多くの場合は自己負担なく弁護士へ依頼できます。 費用面が気になって相談をためらっている場合でも、まずは加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いているか確認するとよいでしょう。

弁護士への依頼により、適切な解決方法、内容について専門的な意見を仰ぐことも可能になるため、合理的な解決に近づく可能性が非常に高くなるでしょう。

まとめ

車とバイクの事故では、「バイクの方が悪い」と言われても、その過失割合が必ずしも正しいとは限りません。 事故状況や修正要素、証拠の内容によっては、保険会社が提示した過失割合が見直されることもあります。

また、過失割合は損害賠償額に大きく影響するため、納得できないまま示談に応じることは避けるべきです。 ドライブレコーダー映像や防犯カメラ、現場の物証などを適切に確保し、客観的な証拠に基づいて事故状況を検討することが重要になります。

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過失割合が9対1になる事故パターン3選!10:0へ覆すポイントと損害賠償の計算を弁護士が解説

交通事故で「過失割合は9対1です」と提示され、「相手に大きな責任がある事故なのに、なぜ自分にも1割の過失があるのだろう」「10対0にはならないのだろうか」と疑問に感じることも少なくありません。過失割合は、事故の状況や双方の運転状況などを踏まえて判断されるため、相手の過失が大きい事故でも、被害者側に一定の過失が認められる場合があります。また、過失割合は受け取れる損害賠償金に直接影響するため、提示された内容が適切かどうかを確認することが重要です。

この記事では、過失割合が9対1となる代表的な事故パターンや、10対0へ見直せる可能性があるケース、さらに過失割合9対1の場合の損害賠償金の計算方法について、弁護士が分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

過失割合「9対1」とは?事故の状況と基本知識

過失割合が9対1になる基本的な意味と責任の重さ

交通事故における過失割合9対1とは、事故の発生について相手方に9割、自分に1割の過失があると評価されたことを意味します。過失割合は、当事者の「どちらが悪いか」を感覚的に示すものではなく、事故発生に対する法的な過失の割合を数値化したものです。

この割合は、受け取れる損害賠償金や相手方へ支払う損害賠償金を計算する際の基準になります。例えば、自分の損害額が1,000万円で過失割合が9対1であれば、自分の1割の過失が考慮されるため、原則として受け取れる損害賠償金は900万円となります。このように、被害者にも一定の過失がある場合に、その割合に応じて賠償額を減額する制度を過失相殺といいます。

もっとも、過失割合は保険会社が自由に決めるものではありません。交通事故実務では、過去の裁判例の蓄積を踏まえて整理された基本過失割合を出発点とし、事故当時の状況に応じて修正を加えながら決定されます。そのため、同じ事故類型であっても、個別事情によって最終的な過失割合が変わることがあります。

なぜ10対0(無過失)にならないのか

過失割合が10対0となるのは、被害者側に事故の発生について法的に評価できる過失が全く認められない場合に限られます。そのため、相手方に明らかな交通違反があったとしても、それだけで直ちに10対0になるわけではありません。

その理由は、交通事故実務では、事故類型ごとに基本となる過失割合が設定されているためです。例えば、優先道路を直進していた車と一時停止規制のある道路から進入した車との事故では、優先道路側が被害者であっても、基本過失割合として9対1が採用される事故類型があります。これは、優先道路を走行している車にも、交差点では周囲の安全を確認しながら走行すべき注意義務があると考えられているためです。

もっとも、基本過失割合はあくまで出発点にすぎません。事故当時の道路状況や見通し、双方の走行状況などの個別事情によっては、基本割合が修正されることがあります。また、被害者側に事故を回避する余地がなく、注意義務違反も認められない事故では、10対0となる場合もあります。

したがって、保険会社から9対1と提示されたからといって、その割合が当然に正しいとは限りません。まずは事故類型ごとの基本過失割合を確認し、その上で個別事情による修正の余地があるかを検討することが重要です。

過失割合がゼロになるのは限られたケースにとどまる、ということを踏まえておくのがよいでしょう。

過失割合が9対1になる代表的な事故パターン3選

交通事故の過失割合は、事故類型ごとに蓄積された裁判例をもとに整理された基本過失割合を出発点として判断されます。そのため、相手方に重大な交通違反がある事故であっても、事故の状況によっては被害者側にも1割程度の過失が認められることがあります。

交通事故実務では、「別冊判例タイムズ38」に整理された事故類型が、保険会社の示談交渉や裁判実務において広く参照されています。ここでは、過失割合9対1となる代表的な事故パターンを紹介します。

パターン①:【車同士の事故】優先道路と非優先道路の交差点事故

優先道路を直進していた車と、非優先道路から交差点へ進入してきた車が衝突した事故では、基本過失割合が優先道路側1割・非優先道路側9割とされています。

非優先道路を走行する車には、優先道路を走行する車の進行を妨げないように交差点へ進入することが求められます。そのため、このような事故では非優先道路側の責任が重く評価されるのが一般的です。

もっとも、優先道路を走行している車であっても、交差点では左右から車が進入してくる可能性を踏まえて走行することが求められます。そのため、交通事故実務では、優先道路側にも1割の過失があることを前提として基本過失割合が定められています。

(引用:別冊判例タイムズ38)

パターン②:【バイク・自転車と車の事故】左折車と直進自転車の事故

同じ方向へ進行していた自動車が左折し、道路の左側を直進していた自転車と衝突した事故では、基本過失割合が自転車1割・自動車9割とされています。

左折する車は、左後方から直進してくる自転車がいないかを確認した上で左折しなければなりません。そのため、自転車を巻き込む形で事故が発生した場合は、自動車側の責任が重く評価されます。

一方、自転車にも、左折しようとしている車の動きに注意しながら走行することが求められます。そのため、この事故類型では、自転車側にも1割の過失があることを前提として基本過失割合が定められています。

(引用:別冊判例タイムズ38)

パターン③:【歩行者と車の事故】道路の側端以外を通行していた歩行者との事故

歩道がない道路で、道路の端ではなく車道寄りを歩いていた歩行者と車が衝突した事故では、基本過失割合が歩行者1割・車9割とされています。

歩道がない道路では、歩行者はできるだけ道路の端を通行することが求められています。そのため、道路の端から離れた場所を歩いていた場合には、歩行者側にも一定の過失が認められます。

もっとも、車を運転する人には、歩行者を見つけた場合には速度を落としたり進路を変えたりして事故を避けることが求められます。そのため、歩行者が道路の端以外を歩いていた場合でも、車側の責任が大きく評価され、基本過失割合は9対1とされています。

(引用:別冊判例タイムズ38)

ここで紹介した3つの事故類型は、いずれも基本過失割合が9対1となる代表例です。しかし、基本過失割合はあくまで出発点にすぎません。実際には、事故当時の道路状況や見通し、双方の走行状況などを踏まえて最終的な過失割合が決まります。そのため、自分の事故がどの事故類型に当てはまるのかを確認した上で、個別事情によって過失割合が修正される可能性がないかを検討することが重要です。

過失割合9対1での損害賠償金・保険金の計算方法

過失割合が9対1の場合、相手方の責任が大きい事故であっても、自分にも1割の過失が認められる以上、その割合に応じて損害賠償額は減額されます。ここでは、過失相殺の基本的な仕組みと、双方に損害が発生した場合の具体的な計算方法を解説します。

自分の過失1割が相殺される「過失相殺」の仕組み

交通事故の損害賠償額は、一般的に次の流れで計算されます。

  • 事故によって生じた損害額を算定する
  • 双方の過失割合を決める
  • 過失割合に応じて損害賠償額を調整する(過失相殺)
  • 保険会社がその計算結果を基に賠償金や保険金を支払う

このうち、被害者にも過失がある場合に損害賠償額を調整する仕組みを過失相殺といいます。

例えば、治療費、慰謝料、休業損害などを合計した損害額が300万円で、被害者の過失割合が1割であれば、相手方に請求できる金額は原則として270万円です。残り30万円は、自分の過失に対応する部分として自己負担になります。

過失相殺は慰謝料だけではなく、治療費、休業損害、逸失利益、車両修理費など、事故によって生じた損害全体を対象として行われます。そのため、損害額が大きい事故では、過失割合がわずか1割違うだけでも、最終的な賠償額に数十万円から数百万円の差が生じることもあります。

また、人身事故では自賠責保険から保険金が支払われる場合があります。被害者の過失が1割程度であれば、自賠責保険では原則として過失による減額は行われません。しかし、任意保険会社との示談では過失割合を前提として損害賠償額が計算されるため、最終的な賠償額には過失相殺が反映されます。

保険会社から提示された金額も、このような計算過程を経て算出されています。そのため、提示額に納得できない場合は、損害額の算定や過失割合が適切かどうかを確認することが重要です。

【シミュレーション】お互いに損害が出た場合の具体的な清算例

過失割合9対1の事故では、被害者だけでなく相手方にも損害が発生しているケースがあります。この場合は、それぞれが相手に請求できる金額を計算した上で、最終的な支払額が決まります。

例えば、次のようなケースを考えてみましょう。

  • 被害者(過失1割)の損害額:300万円
  • 相手方(過失9割)の損害額:100万円
  • 過失割合:相手方9割・被害者1割

まず、被害者は300万円の損害について、相手方の過失割合である9割に相当する270万円を請求できます。

一方、相手方も100万円の損害について、被害者の過失割合である1割に相当する10万円を請求できます。

その結果、双方が請求できる金額を反映すると、被害者が最終的に受け取る金額は260万円(270万円-10万円)となります。

このように、過失割合9対1だからといって、単純に「損害額の9割だけ受け取る」というわけではありません。双方に損害が発生している場合は、それぞれの請求額を計算した上で最終的な支払額が決まります。

また、過失割合が8対2になれば受け取れる金額はさらに減少し、反対に10対0と認められれば、自分に過失相殺は適用されません。過失割合がわずか1割変わるだけでも賠償額が大きく変動するため、過失割合の判断は示談交渉において非常に重要なポイントといえます。

過失割合9対1に納得いかず10対0へ覆すためのポイント

保険会社から過失割合9対1を提示されても、その割合が確定したわけではありません。保険会社の提示は、過去の裁判例を基にした事故類型に、個別の事情を加味して算定した交渉上の見解です。

裁判所も、過失割合を機械的に決めるのではなく、過去の裁判例を参考にしながら、事故ごとの具体的な事情を考慮して認定します。したがって、基本となる事故類型が誤っている場合や、過失割合を変更する事情が見落とされている場合には、9対1から10対0へ修正できる可能性があります。

ただし、「自分は悪くないと思う」「相手が謝っていた」という主張だけでは、過失割合を覆すことは困難です。事故状況を具体的に整理し、それを裏付ける客観的な証拠を提示する必要があります。

ポイント①:過失割合を修正する「修正要素」がないか確認する

過失割合を見直す際は、まず、保険会社がどの事故類型を前提として9対1を提示したのかを確認します。その上で、基準となる過失割合を変更する修正要素がないかを検討します。

修正要素とは、事故当事者の具体的な運転状況や道路状況などを踏まえ、基本となる過失割合を加算または減算する事情です。代表的なものとして、次のような事情があります。

  • 相手方が速度違反をしていた
  • 相手方が赤信号や一時停止規制を無視した
  • 相手方が合図を出さず、急な右左折や進路変更をした
  • 相手方が著しい前方不注意や脇見運転をしていた
  • 相手方が酒気帯び運転や無免許運転をしていた
  • 夜間や見通しの悪い場所など、事故発生時の道路状況に特殊性があった

例えば、自分が直進中に相手方の車が急に進路変更して衝突した事故では、保険会社から「直進車にも周囲を確認する義務がある」として1割の過失を提示される場合があります。しかし、相手方が方向指示器を出さず、避ける時間がない距離で突然進路を変えたのであれば、自分に事故を回避できる可能性があったのかを改めて検討する必要があります。

もっとも、相手方に交通違反があったからといって、当然に10対0になるわけではありません。重要なのは、その違反が事故の発生にどの程度影響したか、自分に予見や回避の余地があったかという点です。

また、修正要素を検討する前提として、事故類型そのものが正しいかも確認しなければなりません。交差点の形状、信号の有無、優先道路の指定、衝突した位置、双方の進行方向などが異なれば、適用すべき基本過失割合も変わる可能性があります。

保険会社に対しては、単に「9対1には納得できない」と伝えるのではなく、次の内容を確認することが重要です。

  • どの事故類型を基準としているのか
  • 基本過失割合を何対何としているのか
  • どの修正要素を考慮したのか
  • 自分に1割の過失があると判断した具体的な理由は何か

提示の根拠を明らかにすることで、争うべき点が事故類型なのか、修正要素なのか、それとも事実認定なのかを整理できます。

ポイント②:警察の「実況見分調書」や客観的証拠を確保する

過失割合を9対1から10対0へ覆すには、事故状況を裏付ける客観的証拠が重要です。当事者双方の説明が食い違う場合、保険会社や裁判所は、証拠と整合する供述を重視して事故状況を判断します。

特に重要となるのが、ドライブレコーダーの映像です。事故直前の速度、信号の色、相手方の進路変更、方向指示器の有無、自分がブレーキをかけた時期などを確認できれば、事故を回避できなかったことを具体的に示せます。

事故後は、次の証拠を早めに確保しましょう。

  • 自分や相手方のドライブレコーダー映像
  • 周辺店舗、住宅、駐車場などの防犯カメラ映像
  • 事故現場、車両の損傷箇所、タイヤ痕などの写真
  • 事故を目撃した第三者の氏名と連絡先
  • 信号の周期、道路標識、車線や道路幅を確認できる資料
  • カーナビ、車載システム、スマートフォンなどに残る走行記録

映像データは、一定期間が経過すると上書きされたり削除されたりするおそれがあります。防犯カメラについても、保存期間が数日から数週間に限られている場合があるため、事故後できるだけ早く管理者へ保存を依頼する必要があります。

人身事故について警察が捜査した場合には、事故現場の状況や当事者の説明などを記録した実況見分調書が作成されることがあります。

実況見分調書には、道路の形状、車両の位置、衝突地点、見通し、当事者が危険を認識した地点などが記載されることがあります。その内容は、過失割合を判断する上で有力な資料になり得ます。

ただし、実況見分調書は、交通事故証明書のように警察へ申請すれば直ちに交付される書類ではありません。刑事事件の処分状況や記録の保管先などに応じて、検察庁での閲覧・謄写、裁判手続における送付嘱託など、取得方法を検討する必要があります。

また、物損事故として処理された場合には、実況見分調書が作成されていないこともあります。その場合は、ドライブレコーダーや現場写真、防犯カメラなど、ほかの資料によって事故状況を立証しなければなりません。

客観的証拠を集めた後は、「その証拠から何が分かるのか」まで整理することが大切です。映像や写真を提出するだけでなく、相手方の動き、自分との距離、回避に使えた時間などを具体的に指摘することで、10対0を主張する根拠が明確になります。

ポイント③:弁護士に依頼して相手方保険会社と再交渉する

相手方保険会社が9対1の提示を変えない場合は、交通事故に詳しい弁護士へ相談する方法があります。

過失割合の争いでは、事故状況に近い裁判例を選び、基本過失割合と修正要素を正確に当てはめなければなりません。同じ「交差点での事故」でも、信号の有無、優先道路の指定、進入方向、衝突地点などによって、基準となる事故類型は異なります。

弁護士へ依頼した場合は、主に次の対応を任せられます。

  • 保険会社が採用した事故類型と計算根拠の確認
  • ドライブレコーダーや現場資料の分析
  • 実況見分調書などの刑事記録の取得方法の検討
  • 過去の裁判例を踏まえた修正要素の整理
  • 相手方保険会社に対する反論書面の作成と再交渉
  • 交渉がまとまらない場合の調停や訴訟への対応

弁護士が交渉する場合も、証拠がない事故状況を前提に10対0を主張できるわけではありません。しかし、保険会社の提示した類型が事故の実態と異なる場合や、重要な修正要素が考慮されていない場合には、その問題点を法的・客観的に指摘できます。

また、過失割合が1割変われば、治療費、休業損害、慰謝料、逸失利益、車両修理費など、過失相殺の対象となる金額も変わります。損害額が大きい事故では、弁護士費用を考慮しても、過失割合を争う経済的な意味が大きい場合があります。

自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、一定の限度額まで弁護士費用を保険で賄えることがあります。自分が加入している自動車保険だけでなく、同居する家族の保険などに付帯している特約を利用できる場合もあるため、契約内容を確認しましょう。

もっとも、証拠を検討した結果、1割の過失を否定することが難しいケースもあります。重要なのは、感覚的に10対0を求めることではなく、事故類型、修正要素、客観的証拠の三つを踏まえて、9対1の提示が妥当かを検証することです。

まとめ

過失割合9対1は、交通事故で比較的多く見られる割合ですが、保険会社から提示された時点で確定するものではありません。事故類型の選定や修正要素の有無によっては、過失割合が見直される可能性があります。

9対1に納得できない場合は、まず保険会社がどの事故類型を前提に判断したのかを確認し、修正要素が適切に反映されているかを検討しましょう。また、ドライブレコーダーや防犯カメラ映像、現場写真などの客観的証拠を早期に確保することが重要です。

過失割合が1割変わるだけでも、受け取れる損害賠償金や保険金は大きく変わることがあります。保険会社の説明に疑問がある場合や、証拠の評価・裁判例の当てはめに不安がある場合は、交通事故に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。適切な事故類型と修正要素を踏まえて検討することで、より妥当な過失割合となる可能性があります。

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【過失相殺完全ガイド】交通事故の過失相殺とは?どんな基準で決める?争うときの方法は?

●過失相殺ってどういうことですか?

●過失相殺・過失割合は誰が決めるの?

●過失割合・過失相殺の基準は?

●ぶつけられただけなのに過失相殺されるの?

●過失割合・過失相殺はどのように交渉すればいいの?

●過失割合・過失相殺が話し合いで解決しない場合はどうなる?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の過失割合・過失相殺でお困りの方に向けて,過失割合の意味や判断基準,解決方法などを解説します。

過失相殺とは

過失相殺とは,交通事故において双方に過失がある場合に,被害者に対する損害賠償額から被害者の過失割合に応じた金額を減額する処理をいいます。これは,交通事故における損害の公平分担のための制度です。

例えば,加害者80%被害者20%という過失割合の交通事故があった場合,事故に対して加害者が負う責任は80%の限度となるべきであるため,加害者に損害の全てを負担させるのはかえって不公平になってしまいます。そこで,被害者に対する賠償額から20%を差し引き,加害者の負担すべき80%分だけを賠償させることで,被害者と加害者との公平を保つというわけですね。

なお,過失相殺は,交通事故で発生した全ての損害を対象とします。
人身損害だけでも,治療費や通院交通費,慰謝料,休業損害等の損害項目が挙げられますが,その全てを公平に分担する必要があるため,全ての損害項目を対象に過失相殺を行うことになります。

ポイント
過失相殺は,双方の責任に応じた公平分担のための制度
過失相殺が生じる場合,全ての損害について過失相殺を行う

過失割合は誰がどのように決めるのか

①基本的な考え方

過失相殺は,当事者双方に過失がある場合に,その過失割合に応じて行うことになるため,前提となる過失割合を誰がどのように決めるのかが大きな問題になります。
例えば,事故の発生後,加害者の保険会社から過失割合の話をされ,自分に20%の過失があると言われた場合,これに従わなければならないのでしょうか。

結論的には,相手の主張する過失割合が適切な内容であれば,その過失割合に従って解決すべきです。そこで,適切な過失割合であるか,適切な過失割合をどのように判断するのか,ということが次の問題になります。

この点,過失割合は,過去の裁判例の積み重ねを基に類型化されているため,これに沿って計算された過失割合であれば適切であると考えられます。

例えば,横断歩道上の歩行者と四輪車との交通事故は,基本過失割合が歩行者0%とされています。

(別冊判例タイムズNo.38より引用。以下全て同じ)

一方,横断歩道のない直進道路を横断中の歩行者と四輪車との交通事故は,基本過失割合が歩行者20%とされています。

更に,横断歩道から概ね20~30メートル以内の場所を横断中の歩行者と四輪車との交通事故は,基本過失割合が歩行者30%とされています。

これらは,過去の先例を踏まえて類型化された適切な過失割合として裁判実務で採用されているものであり,実際の事故と同じ類型があれば,この基本過失割合を基準とするのが適切であるということになるでしょう。

②交渉を要する場合

もっとも,どの類型に当たるのか,その類型の中で修正要素に該当するものがないか,といった点は,当事者間で言い分に相違のある場合があります。
例えば,歩行者は横断歩道上と主張しているものの,車側が横断歩道から離れた場所を横断していたと主張する場合,基本過失割合は歩行者の主張では0%,車側の主張では30%となり得ます。また,横断歩道上の歩行者は基本的に過失が0%ですが,直前横断に該当すると修正要素として5~15%の過失が生じます。

このような場合は,まず,当事者間で解決内容が決められないか,交渉を行うことが必要になります。交渉の結果,一方が主張を撤回して譲歩することもありますし,双方が歩み寄って中間的な過失割合で解決することもあります。

③交渉で解決しない場合

過失割合の主張が激しく対立し,交渉での解決ができない場合は,訴訟での解決が必要になります。当事者間での話し合いが奏功しないため,裁判所に判断をしてもらう必要がある,というわけですね。

過失割合は,全ての損害額に影響を及ぼす根本的な争点であるため,この点の主張に開きがある場合には交渉での解決が難しくなりやすい傾向にあります。一般的には,10~20%ほどの開きであれば双方に歩み寄っての解決が十分に見込まれますが,50%を超えるなど被害者・加害者の立場が逆転してしまうほどの開きがあると,交渉で解決できる水準をすり合わせるのは非常に困難になりやすいでしょう。

ポイント 過失割合の決め方
事故類型ごとに過去の裁判例に沿った過失割合を用いるのが通常
言い分に争いがある場合は,まず交渉を行う
主張の開きが大きい場合は,訴訟を要することも

過失割合の判断基準

過失割合については,事故類型ごとに基本過失割合が定められていますが,事故類型の特定は以下の手順で行います。

①交通手段による区別

まずは,当事者双方の交通手段によって類型が分けられます。具体的には,歩行者,四輪車,単車,自転車といったものが挙げられます。

なお,四輪車か単車であるかは,当事者双方が四輪車又は単車である場合には区別しますが,もう一方の当事者が歩行者又は自転車である場合には区別しません。
例えば,対向車の右直事故である場合,過失割合は以下の通りです。

四輪車同士の場合 直進車:右折車=20:80 
単車直進,四輪車右折の場合 直進車:右折車=15:85
四輪車直進,単車右折の場合 直進車:右折車=30:70

このように,四輪車か単車かによって過失割合に差異が生じます。

一方,直進の自転車と右折の四輪車による右直事故は,基本過失割合が以下の通り15:85とされます。そして,これは右折車が四輪車でなく単車であっても同様です。

②進行方向による区別

次に,それぞれの進行方向を特定します。
具体的には,直進か右折か左折か,という区別と,対向車なのか右や左から来たのか,という区別を行うのが一般的です。

例えば,四輪車同士で直進車と右折車の事故を前提とすると,対向車であれば先ほど紹介した通り直進車:右折車=20:80となります。

これが,対向車でなく右や左から来た場合だと,以下のように過失割合が変動します。

右折車が左方車の場合 直進車:右折車=40:60
右折車が右方車の場合 直進車:右折車=30:70

③道路状況による区別

加えて,事故現場の道路状況による区別を行います。
具体的には,直進道路上か,十字路交差点上か,丁字路交差点かといった道路の形状と,信号の有無(ある場合は信号表示),一時停止規制や優先道路に該当するかといった道路の優先関係を基準に道路状況を区別します。

例えば,直進四輪車同士による信号のない十字路での出会い頭事故である場合,優先関係によって以下のような基本過失割合の差異が生じます。

優先関係がない場合 左方車:右方者=40:60
一方が広路の場合※ 広路車:狭路車=30:70
一時停止規制あり 規制あり:規制なし=20:80
優先関係あり 優先車:劣後車=10:90
(双方が同程度の速度である場合(各図左側の過失割合)を想定)

※広路が狭路の幅員の概ね1.5倍以上ある場合に広路・狭路の関係にあると評価されやすい

過失割合の交渉方法

過失割合の交渉は,両当事者が本件に該当すると考える基本過失割合及び過失の修正要素を判断することから始まります。双方が同じ事故類型だと理解していれば,主張する基本過失割合や修正要素は一致するはずであり,それ以上の交渉は必要になりません。

駐車場などの路外から道路に進入した右折車と直進車との基本過失割合は20:80となりますが,互いにその理解が共通していれば,基本過失割合の争いが生じることはありません。

しかし,事故態様の理解が食い違う場合,それが過失割合に関する主張の差異となって現れます。例えば,上記の例で基本過失割合は20:80となることに争いはないが,右折車が頭出しで待機していたと主張する場合,これは「頭を出して待機」に該当し10%の修正が生じる修正要素のため,右折車側の主張する過失割合は30:70となります。
このとき,直進車の主張(20:80)と右折車の主張(30:70)に差異が生じ,合意をするには交渉の必要が生じます。

具体的な交渉の方法は,双方の主張に根拠があるか,という基準で行うのが一般的です。上記の頭出し待機の主張であれば,具体的にどのような位置でどの程度の時間待機していたのか,その証拠となるドライブレコーダー映像などがあるか,という点が問題になりやすいでしょう。

このような流れで,双方が合意可能な過失割合を協議・検討し,交渉での合意を目指していくことになります。

ポイント 過失割合の交渉方法
①基本過失割合及び修正要素の特定
②双方の見解に差異がある場合,根拠の有無を基準に交渉し,合意を目指す

過失割合が交渉で解決しない場合の対応

過失割合の主張が両当事者の間であまりにかけ離れている場合,交渉では解決しない可能性が見込まれます。この場合は,相手の言い分に沿った金額で合意するのでない限り,訴訟を提起して裁判所の判断を仰ぐ必要が生じます。
過失割合の争いは,個別の損害項目全てに影響する根本的な争いになるため,これが合意できないとなると訴訟での解決を要する可能性が非常に高くなります。特に,双方が自分を被害者側と認識しているなど,被害者・加害者の別が逆転しているケースでは,交渉での合意は現実的に難しいことが多いでしょう。

なお,交渉での合意が困難な場合としては,以下のようなケースが挙げられます。

ここでは,進路変更後に後続車から追突された,という例で見てみましょう。

①事故態様の理解が食い違っている場合
事故態様そのものの理解が食い違っている場合,それを踏まえた過失割合の理解も食い違うことになります。
今回の例では,一方は追突事故と主張するが,もう一方は側面同士が接触した事故だと主張する場合が挙げられます。

②事故態様の評価が食い違っている場合
事実関係は同じ理解をしているものの,その評価の仕方(類型へのあてはめ方)について主張が食い違う場合もあります。
今回の例では,一方は追突事故と主張し,もう一方は進路変更車と後続車との事故と主張するケースがあり得るところです。追突事故では追突された側の過失はゼロですが,進路変更車と後続車との事故であれば追突された側が70%の過失になります。

過失割合の差異

追突事故の場合  0:100
進路変更車の場合 70:30

③少なくとも一方が根拠に基づかない主張をする場合
一方が根拠に基づかない主張をしていると,それが修正されない限り合理的な過失割合での合意は困難になります。この場合は,弁護士や保険会社などが間に入って主張を修正してくれるのでなければ,訴訟で裁判所に正してもらう必要が生じるでしょう。

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過失割合は,判断の基準に明確なルールが定められており,ルールに沿った請求を行うことが必要です。
逆に,相手保険会社の主張がルールに沿ったものでない場合,きちんと反論しなければ,不当な過失割合で解決してしまうことにもなりかねません。
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