置き引き事件で自首すべき場合や自首のメリット,注意点などを弁護士が詳細解説

このページでは,置き引き事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。
自首後に想定される警察からの呼び出しについても、対応方法を詳細に解説していますので、自首を検討する際の参考にしてみてください。

置き引き事件で自首をするべき場合

①自分が犯人と特定される見込みがある場合

自首は,いずれ自分が犯人と特定されるであろう事件について,捜査機関から特定される前に行うケースで特に効果を発揮します。自首をしてもしなくても特定される以上,自首を行うリスクがなく,処分の軽減につながりやすいというメリットを得られるためです。
もちろん,「いずれ自分が犯人と特定される」かどうかを確実に判断することは難しいため,「自首しなければ分からなかったのに」というリスクを完全に取り除くことはできませんが,自分が犯人と特定される見込みが高ければ高いほど,自首が有力な手段になることは間違いありません。

置き引き事件の場合,以下のようなケースで犯人の特定がなされやすい傾向にあります。

置き引き事件の犯人が特定されやすいケース

1.目撃者がいる場合

2.現場や付近の撮影画像・映像がある場合

3.盗品の中に位置情報を発信するものがある場合

4.盗品中のカード類を使用した場合

②日常生活への支障を防ぎたい場合

置き引き事件で捜査を受けることになると,日常生活への支障が生じてしまう場合も少なくありません。逮捕された場合や家宅捜索を受けた場合は代表的ですが,住居の近辺で捜査機関と接触しているだけでも,周囲への悪影響が生じかねません。
この点,置き引き事件の捜査による日常生活への支障を防ぐためには,できる限り緩やかな,穏やかな方法での捜査を行ってもらうことが有益です。そして,捜査の方法が穏やかな内容になりやすいケースの代表例が,自首をした場合です。

捜査を強制的な方法で行わなければならないのは,そうしないと証拠隠滅の可能性が高いと考えられるためです。強制的な捜査をすることで証拠隠滅の機会を防ぐ,ということが最大の目的となります。
一方,自首をしたケースでは,被疑者が自分から犯罪事実を明らかにしている以上,証拠隠滅の可能性は類型的に低いと評価されることが通常です。そのため,強制的な方法を取ってまで証拠隠滅を防ぐ必要は,それほど高くないと考えられやすく,穏やかな捜査につながりやすいのです。

ポイント
強制的な捜査は日常生活への支障を生じさせかねない
自首をした場合,捜査はより穏やかな方法になりやすい

③反省の意思を表明したい場合

置き引き事件の場合,深い反省の態度が処分結果を軽減させるケースも考えられます。特に,被害規模が小さく,被害者の経済的な損害が後から補填されているケースでは,被疑者に深い反省が見られることを条件に不起訴処分とされることも少なくありません。
そのため,置き引き事件の対応に際しては,否認事件でない限りは反省の意思を積極的に表明する方針が有力と言えます。

この点,反省の意思を表明するため,最初にできる最も有益な手段が自首です。自首は,行う場合のリスクが高く心理的負担も大きいため,実際に行った被疑者に対しては,深い反省の意思があるとの評価になることが通常です。自首の有無による評価の差は,取調べの際の言葉遣いが適切かどうかなどとは比較にならないほど大きなものになるでしょう。

刑事処分の軽減のためにも,いち早く深い反省の意思を表明したい場合には,自首の検討をお勧めします。

ポイント
置き引き事件では,反省の程度が処分結果に影響することも少なくない
深い反省を示せる最初の手段が自首

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

置き引き事件の自首は弁護士に依頼すべきか

置き引き事件で自首を検討する場合には,弁護士に依頼することでより有効な方法を取ることができるでしょう。そのため,自首をすべきか検討する場合も,実際に自首を行う場合も,弁護士に依頼して十分な相談等を行うことをお勧めします。
弁護士に依頼することの具体的なメリットとしては,以下のような点が挙げられます。

①逮捕の可能性がより低下する

自首は,逮捕を防ぐことを最初の目標とした行動である場合がほとんどでしょう。放っておいては逮捕される危険がある場合に,先手を打って自首をすることで逮捕を防ぐ,という流れであることが一般的です。
そのため,自首を行うに際しては,より逮捕の可能性を低くできる方法で行うべきであり,どうすれば逮捕の可能性が低くなるかは重要なポイントと言えます。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕の回避につながりやすい自首の方法・内容を専門的な観点から判断してもらうことができ,逮捕回避の効果を大きく高めることができるでしょう。
また,逮捕の可能性がより低下するような方法での自首は,最終的な刑事処分を軽減させる効果も大きな方法であることが通常です。弁護士に依頼することで,逮捕回避と処分軽減の両方をより確実に目指せるでしょう。

ポイント
弁護士に依頼することでより逮捕回避につながりやすい自首の方法を判断してもらえる

②周囲への影響を最小限に抑えられる

弁護士に依頼して自首を行う場合,捜査機関とのやり取りは基本的に弁護士が代行する形で進めることができます。そのため,自分が捜査機関と接触をすることで周囲に発覚するなど,事件が周囲に悪影響を及ぼす可能性は最小限に抑えることができるでしょう。

弁護士に依頼した場合でも,実際の取調べなどは自分で直接対応せざるを得ず,すべてを弁護士に代行してもらえるわけではありません。もっとも,家族や勤務先など,日頃から接点のある関係者に影響が生じるようなやり取りは,一通り弁護士に委ねることができるでしょう。

ポイント
一通りの対応を弁護士に委ねられるため,周囲に発覚しづらい

③自首後の見通しが分かる

自首は,あくまで捜査の出発点に過ぎません。そのため,自首の後には捜査が行われ,捜査が遂げられた後には刑事処分の判断が待っています。
そうすると,自首をした後にはどのような取り扱いを受けるのか,最終的な処分はどのような内容になるのか,ということをある程度見通せていないと,実際に自首をするという判断はなかなか容易ではないでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,自首後の捜査手続や処分結果を事前にある程度想定することが可能です。どのような不利益が生じ得るか,逆に自首をすることでどのような利益が生じるかが比較できるため,自首をすべきかどうかの判断は格段に容易なものとなるでしょう。

ポイント
自首後の手続の流れや処分の見込みを踏まえた上で,自首するか判断できる

④直ちに弁護活動を開始できる

置き引き事件の場合,自首後には被害者との示談を目指すことが非常に有効です。置き引き事件で示談が成立すれば,逮捕や起訴はされづらく,示談は自首の目的を達成する手段として最重要と言っても過言ではありません。

また,自首を行った場合,自首しなかったケースと比較すると被害者側の感情面が穏やかになりやすいという特徴もあります。加害者が自首をしたのか,捜査機関に問い質されて認めただけなのか,という違いは,当然ながら被害者の感情に大きな影響を及ぼすためです。そのため,自首をしたケースの方が示談は成立しやすい傾向にあり,特段の理由がなければ自首後には示談を試みるべきと言えます。

この点,自首の段階で弁護士に依頼していれば,その後の示談の動きを速やかに開始することが可能です。示談の試みは,弁護士がいなければ行えないものでもあるため,自首後に示談を行うつもりがある場合には,自首の段階から弁護士に委任するのが有益でしょう。

ポイント
自首した場合には,示談成立しやすいケースが増える
弁護士委任していれば,自首の後,速やかに示談へ移行できる

置き引き事件で自首をする場合の注意点

①動きが遅れると自首が成立しない可能性

自首は,捜査機関に「犯罪事実」か「犯人」が特定されていない段階で行わなければいけません。犯罪事実と犯人が両方明らかとなった後に自首を試みても,法的には自首が成立せず,自首の恩恵を受けることはできなくなってしまいます。

置き引き事件の場合,被害に気付いた被害者が警察に捜査を求めた後,犯人の特定を試みることになりますが,捜査機関がいつ犯人を特定できるかは,個別のケースや証拠関係によると言わざるを得ません。自首をしようと考えた場合に,「犯人が特定された前か後か」を知った上で判断する,ということは現実的に困難です。
そのため,自首を検討する場合には,時期が遅れると犯人が特定されてしまい,自首が成立しない可能性があることに注意するのが適切です。自首を行う意思が固い場合には,極力早期に行動に移すことにも留意すべきでしょう。

②必ず処分が軽減するわけではない

置き引き事件の場合,自首をしても処分の軽減が約束されるわけではありません。自首をしなければ罰金刑が見込まれる事件であった場合,「自首をすれば不起訴になる」と判断できればより自首しやすいものではありますが,そのような判断は困難と言わざるを得ません。自首をしても変わらず罰金刑の対象となることはあり得るため,場合によっては「自首したばかりに刑罰を受けた」と感じる可能性もあるでしょう。

自首を検討する場合には,決して「自首=不起訴」ではないことに注意するのが適切です。そもそも,自首は自分に対する刑事処分を求める行動であるので,「自首すれば処分を受けない」という発想自体が不適切であるとも言えるでしょう。

③盗品の管理・処分状況に応じた対応

置き引き事件で自首を行う場合,「盗品が現在どうなっているのか」は必ず問題になるポイントです。それだけ,置き引き事件の証拠として盗品の現物は重要なものでもあります。
そのため,盗品の管理・処分状況については,捜査機関にできる限りの情報提供をできるよう事前に整理しておきましょう。具体的には,以下のような対応が有力です。

1.盗品を所持している場合
→所持している旨を事前に伝え,出頭の際に持参する

2.盗品を既に処分している場合
→処分済みである旨を事前に伝え,出頭した後に詳細な経過を説明する

なお,盗品が提出できるのであればそれに越したことはありませんが,盗品が提出できなければ自首の意味がない,というわけではありません。置き引き事件の場合は,金品以外の盗品を加害者が処分してしまうことは珍しくないため,処分したことを詳細に説明できれば十分な理解は得られるでしょう。

呼び出された場合の対応法

①適切な返答方法

置き引き事件で呼び出しを受けた場合,まずは「呼び出しを無視しない」「呼び出しを拒否しない」というスタンスで返答するのが適切であり,最も重要視すべき点と言えます。
呼び出しを行う場合,捜査機関としては,呼び出しへの応対を踏まえてその後の取り扱いを判断しようと考えていることが通常です。呼び出しに対して穏やかな対応をすれば,捜査機関の取り扱いも穏やかになりやすく,呼び出しに対して敵対心を明らかにすれば,捜査機関との関係は対立構造にならざるを得ません。

そのため,呼び出しを受けた段階では,「連絡をすれば応じる」「求めれば出頭してくれる」と理解してもらうことが得策です。なぜなら,連絡に応じ,出頭の要求にも応えてくれるならば,捜査機関としてはそれ以上に強制力のある手段を取る必要はないためです。
これは,認め事件,否認事件の両方に共通する基本姿勢と言ってよいでしょう。

呼び出しを受けた際に適切な応答ができれば,その後の対応に必要な負担も大きく軽減する可能性が高いです。無視せず応答する,拒否せず出頭する,という対応は念頭に置くことを強くお勧めします。

ポイント
無視せず応答する
拒否せず出頭する

②認めるべき事件の場合

内容に間違いがなく,自分の責任を認めるべき置き引き事件では,できるだけ速やかに争わない姿勢であることをはっきりと表明するのが有益です。

捜査機関は,呼び出しを行う段階では被疑者の認否が分かりません。ただ,認めるか認めないかはその後の捜査の内容を大きく左右するため,捜査機関としては認否を可能な限り早期に把握したいと考えていることが通常です。
そのため,認めるべき事件である場合には,認める意思であることを速やかに伝えることで,真摯な反省と捜査機関への配慮の意思を同時に示すことができます。反省を深め,円滑な捜査に協力的な被疑者と評価してもらえれば,その後の手続や処分に有益な影響が期待できるでしょう。

ポイント
速やかに認める意思を表明する
深い反省と捜査への協力姿勢を示すことができる

③心当たりがない場合

置き引き事件で心当たりがない場合には,まず事件の内容や疑われている行為の内容を可能な限り把握するのが有益です。

心当たりのない事件で呼び出しを受ける場合には,以下のいずれかのケースが考えられます。

心当たりのない置き引き事件で呼び出しを受ける場合

1.犯罪や犯人を立証する証拠に乏しいケース

2.誤って自身が疑われているケース

この点,証拠に乏しい場合は,呼び出しを通じて被疑者の自白を期待している可能性があります。そのため,端的に認めない方針を一貫して表明し続け,「自白を引き出すことができない」との判断をしてもらうのが有益でしょう。
一方,誤って疑われている場合,単に否認を続けるだけでは円滑な解決が期待できない可能性があります。この場合には,自身が疑われた理由や根拠とされているものを把握し,捜査機関の誤りを正すことが有効です。

同じ否認事件でも,ケースによって有効な対処に違いが生じるため,まずは疑いの内容をできるだけ具体的に押さえることを目指しましょう。

ポイント
事件の内容・疑いの内容を具体的に把握する

呼び出しに応じると逮捕されるか

置き引き事件では,逮捕目的で呼び出しを行っているケースはあまり見られません。そのため,呼び出しに適切な対応を尽くしていれば,逮捕されない方が通常でしょう。

逮捕されない場合は,いわゆる「在宅捜査」の対象となります。在宅捜査とは,身柄を拘束しないで行う捜査を指しますが,多くの場合は出頭を求める際に都度連絡をし,任意の取調べを行っていく流れが見込まれます。
一度在宅捜査が選択されても,その後の対応によっても逮捕される可能性がないわけではありません。もっとも,出頭を求める連絡に対して拒否せず応じていれば,逮捕はされないことが通常でしょう。

置き引き事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①被疑者を特定したとき

置き引き事件は,現行犯で被疑者が特定できる場合が少ないため,後日になって捜査が行われ,被疑者の特定に至ることが一般的です。そして,被疑者を特定した段階では,被疑者自身から話を聞きだすために呼び出しを行うのが通常です。

具体的な時期は,被害者側が捜査機関に被害申告を行ったタイミングにもよりますが,事件から間もなく捜査が開始されていれば,事件後1~2か月程度が一つの目安になるでしょう。捜査機関の担当者から電話連絡がなされ,「●月●日の(場所)の件」といった形で心当たりの有無を尋ねられることが多く見られます。

②供述調書を作成するとき

刑事事件の捜査に際しては,捜査機関が聴取した内容を供述調書という書面に記録し,証拠化することが不可欠です。そして,供述調書の作成においては,調書の内容を本人に確認してもらい,間違いがないことを証するための署名押印を求める必要があります。
そのため,話の内容を供述調書として記録化する必要がある場合には,呼び出しの上で供述調書の作成が行われることになるでしょう。

供述調書の作成は,被疑者の認否や供述内容がある程度わかった後に行われるのが一般的です。呼び出しの連絡をした際に認否が分かれば,初回の呼び出しの機会に供述調書を作成することも考えられるでしょう。また,初回に供述調書を作成しなかった場合には,その後1週間~1か月程度のうちに再度呼び出され,供述調書の作成を行うケースが多く見られます。

③盗品を所持していることが分かったとき

置き引き事件において最も重要な証拠は,実際に置き引きの対象となった盗品です。そのため,捜査に際しては,盗品の現物を確認できるのであれば,ほぼ確実に現物の確認が行われるでしょう。
この点,置き引き事件では,盗品を既に処分している場合もあれば,処分せず所持している場合もあり得ます。捜査機関としては,被疑者に確認を取り,盗品を所持していると分かった場合には,その提出を求めるため呼び出しを行うことが通常です。

この場合の呼び出しの時期は,捜査機関が盗品の所持を把握したタイミングに影響を受けますが,捜査機関が知ってからそれほど遠くない時期であることが一般的です。取調べの際に盗品を所持していると知った場合には,その取調べから1~2週間ほどの時期に呼び出されるケースが多く見られます。

置き引き事件の呼び出しに応じたときの注意点

①真摯な対応に努める

置き引き事件で呼び出しが行われるケースでは,対応を誤らなければ逮捕なく手続が進むことになりやすいです。そのため,むやみに逮捕を誘発しない対応は心がけるのが賢明でしょう。

この点,特に認め事件の場合には,反省や捜査協力などについて,できる限り真摯な対応に努めるのが有益です。捜査機関に対して真摯な姿勢を見せている限り,捜査手続上での不要な不利益(取調べの長期化や身柄拘束など)を被る可能性は非常に低くなります。

また,真摯な対応を尽くすことは,最終的な刑事処分にも有益な効果が期待できるため,意識的に行って損をすることはないでしょう。

②証拠を自発的に提出する

盗品等の証拠は,所持している場合には自発的に提出を行うことが有効です。捜査に際しては,物的証拠の収集に手間がかかったり困難が生じたりすることが少なくありません。特に置き引き事件では,盗品がどこに行ったか分からない,被疑者の手元に必要な証拠があるかもしれないが分からない,といった事態が往々にして生じがちです。

このとき,証拠を自発的に提出することができれば,捜査の円滑化が見込まれるだけでなく,深い反省を端的に示せる結果にもなるでしょう。また,被害者の手元に盗品が戻ることになれば,被害者側の処罰感情(処罰を希望するかどうかの気持ち)にも良い影響を及ぼす可能性が非常に高くなります。

③否認事件での応じ方

否認事件の場合,呼び出された側の立場としては「事件に巻き込まれた」という思いが生じてもやむを得ません。実際,心当たりがない事件で一方的に警察へ出頭するよう求められるのは,納得し難いこともあるでしょう。

ただ,否認事件であっても,連絡を一切無視したり,「話を聞きたい」という求めを一切無視したりと,むやみに捜査機関との対立姿勢を露わにすることは得策とは言えません。呼び出しはあくまで任意の手続にとどまる以上,ある程度柔軟な方法で応じられる場合もあるので,全面的に無視や拒否をするよりも「可能な範囲で対応する」ことを前提とした応対が合理的です。

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【置き引き事件での呼び出し】呼び出しに応じるとどうなる?応じないとどうなる?

このページでは,置き引き事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
置き引き事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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置き引き事件で呼び出された場合の対応法

①適切な返答方法

置き引き事件で呼び出しを受けた場合,まずは「呼び出しを無視しない」「呼び出しを拒否しない」というスタンスで返答するのが適切であり,最も重要視すべき点と言えます。
呼び出しを行う場合,捜査機関としては,呼び出しへの応対を踏まえてその後の取り扱いを判断しようと考えていることが通常です。呼び出しに対して穏やかな対応をすれば,捜査機関の取り扱いも穏やかになりやすく,呼び出しに対して敵対心を明らかにすれば,捜査機関との関係は対立構造にならざるを得ません。

そのため,呼び出しを受けた段階では,「連絡をすれば応じる」「求めれば出頭してくれる」と理解してもらうことが得策です。なぜなら,連絡に応じ,出頭の要求にも応えてくれるならば,捜査機関としてはそれ以上に強制力のある手段を取る必要はないためです。
これは,認め事件,否認事件の両方に共通する基本姿勢と言ってよいでしょう。

呼び出しを受けた際に適切な応答ができれば,その後の対応に必要な負担も大きく軽減する可能性が高いです。無視せず応答する,拒否せず出頭する,という対応は念頭に置くことを強くお勧めします。

ポイント
無視せず応答する
拒否せず出頭する

②認めるべき事件の場合

内容に間違いがなく,自分の責任を認めるべき置き引き事件では,できるだけ速やかに争わない姿勢であることをはっきりと表明するのが有益です。

捜査機関は,呼び出しを行う段階では被疑者の認否が分かりません。ただ,認めるか認めないかはその後の捜査の内容を大きく左右するため,捜査機関としては認否を可能な限り早期に把握したいと考えていることが通常です。
そのため,認めるべき事件である場合には,認める意思であることを速やかに伝えることで,真摯な反省と捜査機関への配慮の意思を同時に示すことができます。反省を深め,円滑な捜査に協力的な被疑者と評価してもらえれば,その後の手続や処分に有益な影響が期待できるでしょう。

ポイント
速やかに認める意思を表明する
深い反省と捜査への協力姿勢を示すことができる

③心当たりがない場合

置き引き事件で心当たりがない場合には,まず事件の内容や疑われている行為の内容を可能な限り把握するのが有益です。

心当たりのない事件で呼び出しを受ける場合には,以下のいずれかのケースが考えられます。

心当たりのない置き引き事件で呼び出しを受ける場合

1.犯罪や犯人を立証する証拠に乏しいケース

2.誤って自身が疑われているケース

この点,証拠に乏しい場合は,呼び出しを通じて被疑者の自白を期待している可能性があります。そのため,端的に認めない方針を一貫して表明し続け,「自白を引き出すことができない」との判断をしてもらうのが有益でしょう。
一方,誤って疑われている場合,単に否認を続けるだけでは円滑な解決が期待できない可能性があります。この場合には,自身が疑われた理由や根拠とされているものを把握し,捜査機関の誤りを正すことが有効です。

同じ否認事件でも,ケースによって有効な対処に違いが生じるため,まずは疑いの内容をできるだけ具体的に押さえることを目指しましょう。

ポイント
事件の内容・疑いの内容を具体的に把握する

置き引き事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

置き引き事件では,逮捕目的で呼び出しを行っているケースはあまり見られません。そのため,呼び出しに適切な対応を尽くしていれば,逮捕されない方が通常でしょう。

逮捕されない場合は,いわゆる「在宅捜査」の対象となります。在宅捜査とは,身柄を拘束しないで行う捜査を指しますが,多くの場合は出頭を求める際に都度連絡をし,任意の取調べを行っていく流れが見込まれます。
一度在宅捜査が選択されても,その後の対応によっても逮捕される可能性がないわけではありません。もっとも,出頭を求める連絡に対して拒否せず応じていれば,逮捕はされないことが通常でしょう。

置き引き事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①被疑者を特定したとき

置き引き事件は,現行犯で被疑者が特定できる場合が少ないため,後日になって捜査が行われ,被疑者の特定に至ることが一般的です。そして,被疑者を特定した段階では,被疑者自身から話を聞きだすために呼び出しを行うのが通常です。

具体的な時期は,被害者側が捜査機関に被害申告を行ったタイミングにもよりますが,事件から間もなく捜査が開始されていれば,事件後1~2か月程度が一つの目安になるでしょう。捜査機関の担当者から電話連絡がなされ,「●月●日の(場所)の件」といった形で心当たりの有無を尋ねられることが多く見られます。

②供述調書を作成するとき

刑事事件の捜査に際しては,捜査機関が聴取した内容を供述調書という書面に記録し,証拠化することが不可欠です。そして,供述調書の作成においては,調書の内容を本人に確認してもらい,間違いがないことを証するための署名押印を求める必要があります。
そのため,話の内容を供述調書として記録化する必要がある場合には,呼び出しの上で供述調書の作成が行われることになるでしょう。

供述調書の作成は,被疑者の認否や供述内容がある程度わかった後に行われるのが一般的です。呼び出しの連絡をした際に認否が分かれば,初回の呼び出しの機会に供述調書を作成することも考えられるでしょう。また,初回に供述調書を作成しなかった場合には,その後1週間~1か月程度のうちに再度呼び出され,供述調書の作成を行うケースが多く見られます。

③盗品を所持していることが分かったとき

置き引き事件において最も重要な証拠は,実際に置き引きの対象となった盗品です。そのため,捜査に際しては,盗品の現物を確認できるのであれば,ほぼ確実に現物の確認が行われるでしょう。
この点,置き引き事件では,盗品を既に処分している場合もあれば,処分せず所持している場合もあり得ます。捜査機関としては,被疑者に確認を取り,盗品を所持していると分かった場合には,その提出を求めるため呼び出しを行うことが通常です。

この場合の呼び出しの時期は,捜査機関が盗品の所持を把握したタイミングに影響を受けますが,捜査機関が知ってからそれほど遠くない時期であることが一般的です。取調べの際に盗品を所持していると知った場合には,その取調べから1~2週間ほどの時期に呼び出されるケースが多く見られます。

置き引き事件の呼び出しに応じたときの注意点

①真摯な対応に努める

置き引き事件で呼び出しが行われるケースでは,対応を誤らなければ逮捕なく手続が進むことになりやすいです。そのため,むやみに逮捕を誘発しない対応は心がけるのが賢明でしょう。

この点,特に認め事件の場合には,反省や捜査協力などについて,できる限り真摯な対応に努めるのが有益です。捜査機関に対して真摯な姿勢を見せている限り,捜査手続上での不要な不利益(取調べの長期化や身柄拘束など)を被る可能性は非常に低くなります。

また,真摯な対応を尽くすことは,最終的な刑事処分にも有益な効果が期待できるため,意識的に行って損をすることはないでしょう。

②証拠を自発的に提出する

盗品等の証拠は,所持している場合には自発的に提出を行うことが有効です。捜査に際しては,物的証拠の収集に手間がかかったり困難が生じたりすることが少なくありません。特に置き引き事件では,盗品がどこに行ったか分からない,被疑者の手元に必要な証拠があるかもしれないが分からない,といった事態が往々にして生じがちです。

このとき,証拠を自発的に提出することができれば,捜査の円滑化が見込まれるだけでなく,深い反省を端的に示せる結果にもなるでしょう。また,被害者の手元に盗品が戻ることになれば,被害者側の処罰感情(処罰を希望するかどうかの気持ち)にも良い影響を及ぼす可能性が非常に高くなります。

③否認事件での応じ方

否認事件の場合,呼び出された側の立場としては「事件に巻き込まれた」という思いが生じてもやむを得ません。実際,心当たりがない事件で一方的に警察へ出頭するよう求められるのは,納得し難いこともあるでしょう。

ただ,否認事件であっても,連絡を一切無視したり,「話を聞きたい」という求めを一切無視したりと,むやみに捜査機関との対立姿勢を露わにすることは得策とは言えません。呼び出しはあくまで任意の手続にとどまる以上,ある程度柔軟な方法で応じられる場合もあるので,全面的に無視や拒否をするよりも「可能な範囲で対応する」ことを前提とした応対が合理的です。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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【置き引き事件の逮捕】逮捕を防ぐ具体的方法や置き引き事件における注意点を徹底解説

このページでは,置き引き事件の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

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置き引き事件で逮捕される可能性

置き引き事件は,決して類型的に逮捕可能性が高いわけではありません。被疑者が特定できた場合であっても,逮捕せずに捜査を行うことは珍しくないでしょう。そのため,適切な対応を尽くすことで,逮捕を回避しながらの解決も目指せる場合は多いと言えます。

ただし,置き引き事件の場合,内容によっては逮捕可能性が高くなるケースがあり得ます。具体的には,以下のような場合が挙げられます。

逮捕の可能性が高くなりやすいケース

1.盗品が悪用された場合

2.被害規模が大きい場合

3.同種の余罪が多数ある場合

【1.盗品が悪用された場合】

置き引き事件では,盗品が複数あり,その中には悪用される恐れのあるものも含まれていることが少なくありません。財布の中に保管されているキャッシュカードやクレジットカードは代表例でしょう。

この点,キャッシュカードを用いて多額の現金が引き出されている,クレジットカードを用いて商品を購入している,といった事情がある場合,盗品の悪用が重大視され逮捕の可能性が高まることが考えられます。単純に被害が拡大するというのみならず,盗品をさらに悪用する動きは別の犯罪に当たる可能性の高い悪質な行為であるため,逮捕をして厳重に捜査を尽くす必要が大きくなってしまうのです。

【2.被害規模が大きい場合】

明らかに経済的価値の高いものを置き引きしている,際立って多くの物を置き引きしているなど,被害の規模が大きい場合には,事件の重大性を踏まえて逮捕される可能性が高まる傾向にあります。

置き引き事件で逮捕がなされないケースは,突発的な事件であること大きく評価されていることが多く見られます。「魔が差した」というべき事件であれば,証拠隠滅の可能性も低く,逮捕までする必要はないと評価されやすいためです。
一方,価値の高い物を選んでいる場合や,簡単に持ち出せない物を持ち出している場合には,突発的ではなく計画的な事件であることが見込まれやすくなります。特に,計画的な事件と考えなければ説明のつかない行動を取っている場合には,計画性があるとみなされやすいでしょう。そして,このようなケースでは,突発的な置き引き事件とは異なり,計画性に関する証拠隠滅を防ぐために逮捕に踏み切る必要が大きいと判断されかねません。

【3.同種の余罪が多数ある場合】

場所や方法,対象となる盗品など,特徴の共通した事件が多数発生している場合,捜査機関としては同一犯の事件を想定するとともに,再発防止のために被疑者を逮捕する必要が高いと考える傾向にあります。多数の余罪がある被疑者の場合,放置していると再び同様の事件を起こす可能性が高いため,逮捕によって事件を予防しつつ捜査を行う手段が選択されやすいのです。

また,余罪が多数あるということは,捜査すべき事件がそれだけ多いため,事件の数に比例して必要な証拠も多くなります。逮捕しないでいると,余罪に関する重要な証拠を隠滅される恐れがあるため,速やかに逮捕をし,余罪を含む事件の全容解明を目指す方針が取られやすい傾向にあります。

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

置き引き事件で逮捕を避ける方法

①捜査を受ける前の段階

置き引き事件では,目撃者の存在が期待できないため,防犯映像などの明らかな証拠がなければ,被疑者の特定に時間のかかる場合も少なくありません。そのため,逮捕の回避を検討する段階ではまだ被疑者が特定されておらず,取調べ等の捜査を受けていない状況であることも考えられます。

この段階で逮捕の回避を目指す場合には,自ら捜査機関に出頭する動きが一案です。捜査機関に特定されるより前に,自分から被疑者として扱ってもらうよう申し出ることで,逮捕しない判断を促すことが可能になります。
自分が被疑者として特定される前に出頭を試みれば,法的には「自首」が成立し,取り扱いがより緩和される効果も期待できます。

②捜査開始後

置き引き事件で既に捜査を受けており,その内容に争いがない場合には,被害者との示談を通じて逮捕回避を目指す方法が有力です。

置き引き事件の場合,被害者との間で示談が成立すれば,その後に逮捕されることはほとんどありません。しかも,示談は最終的な刑事処分の軽減にも非常に大きな意味を持つものであるため,行わないメリットはないと言っても過言ではないでしょう。

示談は,被害者側の対応によっては速やかに成立しないため,「示談が成立したから逮捕しない」という判断になるケースはあまり多くはありません。しかし,「示談を希望している」という事実を捜査機関に把握してもらうだけでも,逮捕回避につながることは非常に多く,少しでも早期に示談の試みに着手することはとても有益でしょう。

③逮捕の判断基準を踏まえた対応

逮捕を行うかどうかの判断基準は,「逃亡の恐れ」と「罪証隠滅の恐れ」です。逮捕をしないと逃亡する可能性が高いか,犯罪の証拠を隠滅される可能性が高いか,ということを基準に,逮捕の判断が行われることになります。
裏を返せば,逃亡や罪証隠滅の恐れが小さい場合,逮捕の可能性は大きく低下することになります。捜査への対応にあたっては,逃亡や罪証隠滅の恐れに配慮することが有益でしょう。

具体的な対応としては,呼び出しの連絡は無視せず対応し,出頭を拒否せず可能な範囲で応じる,という方針が適切です。円滑に連絡が取れれば,逃亡の恐れは小さいと評価されやすく,出頭の求めに応じてくれれば罪証隠滅の恐れが小さいとの理解につながりやすいでしょう。

置き引き事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

置き引き事件で逮捕の回避を目指す場合には,弁護士に依頼し,弁護士と協同して対応を進めることが適切です。弁護士に依頼しなければできないことも少なくないため,特段の理由がなければ弁護士への依頼を検討することをお勧めします。
弁護士への依頼を要するケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

①示談をしたい場合

逮捕回避の手段として有力な示談は,弁護士を窓口にしなければ行うことができません。捜査機関は,加害者と被害者が直接連絡を取ることは認めないため,被害者と連絡を取りたい場合には,弁護士に依頼をして弁護士を窓口とする必要があります。
被害者との示談を通じて逮捕を回避したい場合には,弁護士への依頼が必須となるでしょう。

②出頭を試みたい場合

まだ捜査を受けていない段階で自ら出頭を試みたいと思っても,具体的にどのような方法を取るべきか,判断することは容易ではありません。同じく出頭を試みるのでも,適切な方法で行うかどうかによってその後の取り扱いが大きく変わる可能性もあり得ます。

そのため,出頭を試みたい場合には,弁護士に依頼をして,弁護士主導の形で進めることをお勧めします。自分から出頭(自首)する行為は,大きな不利益の伴う重大なものであるため,より万全な方法で行うべきでしょう。

③適切な取調べ対応をしたい場合

特に否認事件の場合,取調べへの対応をどのように行うかがその後の取り扱いを左右するケースが少なくありません。取調べ対応を誤ったことで逮捕を誘発してしまうと,その不利益は極めて大きく取り返しのつかないものとなります。

そのため,取調べの対応を適切に尽くす必要が高い場合には,弁護士に依頼し,十分な相談の上であらかじめ助言を受けるようにしましょう。

置き引き事件の逮捕に関する注意点

①対象となる罪名

置き引き事件は,「窃盗罪」に当たる場合と「占有離脱物横領罪」にあたる場合があります。主な違いは以下の通りです。

窃盗罪:置いてはあるが被害者の手元を離れているとは言えない場合
占有離脱物横領罪:置かれた財産が被害者の手元を離れたと評価できる場合

基本的には,置かれてから時間が経っていない場合に窃盗罪,長時間が経過している場合に占有離脱物横領罪の対象となります。犯罪としては,置かれて間もない財産を置き引きする方が責任が重いと評価されやすいため,窃盗罪の方が重大であり,逮捕の可能性も窃盗罪に当たる方が高い傾向にあります。

同じ置き引きでも,責任の重さによって罪名が異なることには注意しておくとよいでしょう。

②逮捕後の身柄拘束期間

逮捕が防げなかった場合には,逮捕後の身柄拘束がどの程度の期間となるか,という点が重要な問題になります。

逮捕されると,最大72時間以内に「勾留」されるかが判断され,勾留された場合には10日間の身柄拘束が生じます。そして,勾留後には最大10日間の「勾留延長」がなされる可能性もあります。そうすると,起訴不起訴の判断までの間に,最長で23日程度の身柄拘束があり得るということになります。

逮捕から起訴までの流れ

この点,置き引き事件では勾留や勾留延長が回避できるか,という点がケースによって様々に異なりやすい傾向にあります。他の置き引き事件では勾留されなかったから,と安易に釈放を見込むことは不適切であり,大きな危険があると考えるべきでしょう。

釈放時期の具体的な見込みについては,個別の内容を踏まえた判断が不可欠であるため,弁護士への十分な相談を行うことをお勧めします。

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【置き引き事件の不起訴処分】不起訴処分の意味や効果から置き引き事件での注意事項まで

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置き引き事件で不起訴を目指す方法

①示談交渉

置き引き事件で不起訴を目指す場合,最も端的な方法は被害者側に不起訴を希望してもらうことです。置き引き事件のように被害者がいる事件では,被害者が起訴を望むか不起訴を望むか,という意向が刑事処分に直接の影響を与えやすい傾向にあるためです。
そして,被害者に不起訴を希望してもらうための手段が,被害者との示談です。被害者との間で示談が成立した場合,被害者からは「不起訴を希望する」という意向を表明してもらうのが通常であるため,示談が成立すれば不起訴となる可能性が極めて高くなるでしょう。

なお,被害者側との示談を試みるのは,基本的に認め事件の場合です。否認事件でも,金銭的解決を図る趣旨で示談を試みる選択肢はあり得ますが,内容を慎重に検討する必要があるため,弁護士の法的な判断を仰ぐことを強くお勧めします。

ポイント
被害者が不起訴を希望すれば不起訴になりやすい
示談が成立した場合,被害者からは不起訴希望の意向を表明してもらうことになる

②再発防止・贖罪

不起訴処分を目指して示談を試みたとしても,必ず示談の成立に至るとは限りません。示談は相手のあるお話であるため,相手から拒否をされてしまえば,どれだけ希望しても示談成立に至ることは困難です。
相手に示談の意思がない場合には,示談によって不起訴処分を目指すことはできないため,次善策の検討が必要となります。

この点,認め事件であれば,二度と同様の事件が発生しない状況が整っている,と判断してもらうことが,不起訴処分を目指す有力な手段として考えられます。具体的には,事件の原因を予防できる再発防止策を講じたり,贖罪(しょくざい)の意思を贖罪寄付などの方法で表明したりすることが一案でしょう。
個別の事件でどのような再発防止策が考えられるか,贖罪寄付はどこへ,いくら,どのように行うべきか,という点は,弁護士と十分に協議することが望ましいところです。

なお,再発防止や贖罪の動きは,それだけで不起訴処分が獲得できる性質のものでない,という点には予め注意が必要です。起訴不起訴の判断で検察が迷う場合に,不起訴処分を促す事情になり得る,という程度の位置づけと理解するのが適切でしょう。

ポイント
再発防止策を講じることや贖罪寄付を行うことも有力
もっとも,再発防止や贖罪があれば不起訴になる,というわけではない

置き引き事件で不起訴になる可能性

置き引き事件は,不起訴処分となる可能性が十分に考えられる事件類型と言うことができるでしょう。

置き引き事件の場合,被害者が起訴を望まなければ,通常は不起訴処分となります。被害者の意向に反してまで起訴しなければならない事情があるケースはほとんどないため,被害者が不起訴の意向であれば,これを反映して不起訴とすることになりやすいでしょう。
そして,被害者に不起訴の意向を示してもらうには示談が有力な手段ですが,置き引き事件の示談は,経済的なマイナスを早期に補填できる点で被害者にとっても有益な面があります。そのため,適切な条件を示すことができれば,被害者に示談での解決を納得してもらえる場合は決して少なくありません。

置き引き事件では,示談の成立が当事者双方にとって望ましい解決になりやすい点で,不起訴になる可能性は十分にあると考えられます。

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

置き引き事件で不起訴を目指す場合の注意点

①示談金額

置き引き事件で示談を行う場合,示談金額は実際の損害額を目安にすることが通常です。一般的には,損害額にお詫びの趣旨でいくらか上乗せをした金額を示談金額とする,という考え方が用いられやすいでしょう。

もっとも,損害額に上乗せするお詫びの部分については,ケースによって損害額を大きく超える金額を希望されることもあり得ます。被害者としては,警察への相談やクレジットカード等の悪用を防ぐ対応など,置き引き被害にあったばかりに数々の面倒な動きをさせられているため,加害者への怒りの感情が増大していることも少なくはありません。また,損害額が小さい場合,その金額を支払うだけで加害者にお咎めなく事件が終わる,ということに被害者の納得が得られないことも多く見られます。

置き引き事件の示談に際しては,実際の損害額を超える示談金額が想定されやすいことにあらかじめ注意しておくようにしましょう。

②盗品の中身に争いが生じる可能性

置き引き事件の特徴として,盗品が複数になりやすい,という点があります。通常,バッグや財布など,中に他の金品が入っているものが盗品となるためです。

この点,加害者が置き引きした盗品の中身と,被害者が記憶している中身が一致しない,というケースは珍しくありません。自分のバッグや財布の中身を常に正確に把握するのは難しいため,やむを得ないところではあります。
現実に盗品の中身に関する争いが生じた場合には,以下のような対応方針が賢明でしょう。

盗品の中身に争いが生じた場合

1.対捜査機関(取調べ等)
→自分の記憶を述べ,被害者の主張に合わせる必要はない

2.対被害者(示談交渉)
→被害者の言い分に沿った示談条件を検討する
→「実際の中身は違った」という指摘をすること自体は問題ない

捜査機関に対しては,記憶に反する話をするメリットはないため,実際の内容を一貫して述べ続けるのが適切です。一方,示談交渉に際しては,被害者の言い分を踏まえた条件でなければ被害者の納得を得ることは困難です。そのため,実際の中身が被害者の言い分通りであるかは別として,示談条件は被害者の言い分に沿って検討するのが現実的でしょう。

③否認事件の対応方法

否認事件の場合,取調べにどのような対応をできるか,という点が起訴不起訴を大きく左右しやすいところです。
具体的には,事件の争点を念頭に置いた対応を心掛けることが適切でしょう。

例えば,「自分のバッグだと勘違いして他人のバッグを持って行ってしまった」という主張は,犯罪の故意を否認する内容です。そのため,ここでの争点は故意の有無であり,故意があったと立証できるかどうかが唯一最大の問題点となります。
この場合,「自分が他人のバッグを持って行ったかどうか」は当然ながら争点にはなりません。他人のバッグを持って行ったことは前提であり,持って行った時の内心が争点であるためです。
しかしながら,このような場合に「他人のバッグを持って行ったから悪い」といった内容の取調べを受けることも珍しくはありません。このような指摘を真に受けて争点と無関係の話に終始してしまうのは,不合理と言わざるを得ないでしょう。

否認事件では,争点をしっかりと整理して取調べに臨むことが必要です。そうすることで,取調べの内容を「重要な点」と「重要でない点」に区別することもでき,より適切な対応を尽くせるようになるでしょう。

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【置き引き事件の弁護士選び】早期解決を目指すのに適した弁護士選びの具体的方法とは

このページでは,置き引き事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

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置き引き事件で弁護士を選ぶタイミング

①示談を試みたいとき

置き引き事件は,特定の被害者に対して損害を与える事件であるため,その被害者の意向が刑事処分を非常に大きく左右する傾向にあります。被害者が加害者の処罰を望めば,加害者には刑罰が科されやすく,逆に被害者が加害者の処罰を望まなければ,加害者は処罰されず不起訴処分の対象になりやすいでしょう。

そのため,置き引き事件の加害者となった場合には,被害者に処罰を望まないとの意向を表明してもらうことが大きな目標となりますが,そのための具体的な手段が示談です。示談によって被害者の許しが得られれば,刑罰が科される可能性は非常に低くなるでしょう。

もっとも,示談を試みるには弁護士への依頼が必要です。当事者同士が直接やり取りするわけにいかないため,弁護士を通じて捜査機関に示談希望の旨を申し入れる必要があります。その後,被害者が弁護士との連絡を受け入れれば,被害者と弁護士との連絡先交換ができ,弁護士と被害者との間での連絡が可能になります。

示談交渉の流れ

そのため,示談を試みたい場合には,示談交渉の依頼に適した弁護士を選ぶことが重要になるでしょう。

ポイント
置き引き事件では示談の試みが有効
示談を試みるには弁護士が必要

②自首を検討しているとき

置き引き事件は,その性質上,事件が発生したことは明らかであるものの被疑者が特定できない,という期間が一定程度生じやすい傾向にあります。被疑者の特定が容易でない場合には,捜査機関が様々な証拠を精査し,時間をかけて特定を目指す場合も見られます。
そのため,置き引き事件の加害者となってしまった場合,自分が被疑者と特定されているかどうか分からない期間が生じ,大きな不安や精神的負担を強いられるケースも少なくありません。

このような場合には,自ら自首を行い,捜査協力を尽くすことで,逮捕や起訴を防ぐ試みが有効ですが,適切な方法で自首を行うことは容易ではありません。また,そもそも自首を行うべき状況かどうか,という点も判断が難しく,専門的な見解が不可欠です。
自首を行うべきか判断が必要な場合や,実際に自首を行いたい場合には,適任の弁護士を選び,弁護士主導で進めることが適切でしょう。

ポイント
置き引き事件は被疑者特定に時間がかかる場合もある
被疑者特定前に自首を検討する場合,弁護士主導とするのが適切

③呼び出しを受けたとき

置き引き事件で被疑者として特定された場合,警察から呼び出しを受け,取調べを受ける可能性があります。そのため,呼び出しを受けた場合には,その後に控える取調べへの対応を十分に検討する必要があるでしょう。

具体的な検討方法としては,取調べの対応に精通した弁護士を選び,弁護士の見解を仰ぎながら詳細な供述方針を決めるのが適切です。生じ得る争点や取調べの際に留意すべき点について,弁護士から十分な案内を受けることができれば,その後の取調べには格段に対応しやすくなるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けたときには,取調べへの対応方針を弁護士と協議するべき

置き引き事件の弁護士を選ぶ基準

①置き引き事件の解決実績

弁護活動は,過去の経験を踏まえた経験則を元に行うのが通常です。事件ごとによくある問題点や注意点なども,それが問題となった過去のケースを経験しているからこそ把握できるものです。

そのため,弁護士を選ぶ基準としては,過去に解決実績があるかどうかを重要なポイントとすることをお勧めします。この点,刑事事件の場合には,事件類型ごとに特徴が異なるため,置き引き事件の場合には同様の置き引き事件を解決した実績があると望ましいでしょう。

②示談交渉に長けているか

置き引き事件の解決は,否認事件でない限り示談交渉が不可欠です。認め事件では,被害者と示談が成立しているかどうかが最終的な刑事処分に直結していると言っても過言ではないでしょう。

そのため,置き引き事件での弁護士依頼では示談交渉を重視するべきですが,刑事事件の示談交渉に精通しているかどうかは,弁護士ごとに大きく異なります。特に,刑事事件では加害者側の立場で示談交渉をする必要があるため,相手に金銭などの請求をする事件とは勝手が違い,得手不得手の差が生じやすいものです。
しかも,置き引き事件の場合,盗品が被害者にとって思い入れのある場合など,金額面以外の点で被害者への配慮を要するケースが少なくありません。そのような特徴に無頓着だと,示談交渉が難航する原因にもなりやすいです。

置き引き事件で弁護士を選ぶ場合は,置き引き事件の加害者として示談交渉を行うことに長けているか,という基準を重視するのが有益です。

③弁護士と円滑に連絡が取れるか

弁護士への委任後は,事件に関する状況や進捗の把握を基本的に弁護士を通じて行うことになります。弁護士が捜査機関や被害者と接触した内容などを,弁護士から聞く形で把握していく,という流れが通常でしょう。

そのため,依頼した事件について不明な点は,全て弁護士から回答してもらう方法で解決する必要がありますが,弁護士とどのような方法,頻度で連絡を取ることができるかは,弁護士の取り扱いによる面が非常に大きいものです。
もちろん,弁護士も複数の事件を同時にこなしているため,常に連絡が取れるわけではありませんが,できるだけ連絡の時間を確保しようとしてくれるかは各弁護士の方針次第,というのが実情です。法律事務所によっては,連絡の窓口に弁護士が一切現れず,事務職員としか連絡が取れないということもあるようです。

弁護士選びに際しては,依頼後に弁護士と円滑に連絡が取れるか,という点を重要な基準とすることをお勧めします。可能であれば,弁護士が依頼者との連絡にどの程度時間を割いてくれるタイプの人か,という点も事前に把握したいところです。

④弁護士費用の見込みは具体的か

一般的な置き引き事件の場合,手続の流れにそれほど多くの可能性はありません。刑事事件の手続に精通している弁護士であれば,考えられる進行を一通り想定することが可能でしょう。
そのため,弁護士費用がどの程度発生するか,という金額の面についても,ある程度具体的な見通しを立てられる場合が多い傾向にあります。ある程度の幅はやむを得ず生じるものの,「この流れになればこのくらいの金額」というシナリオを一通り立てられるケースがほとんどです。

そこで,弁護士選びに際しては,依頼後の弁護士費用がどのくらいの金額になるか,という点の説明をできるだけ具体的に受けてみることをお勧めします。費用見込みの具体性に欠ける場合,金銭面に不安が残るのみでなく,具体的な説明をしてくれない弁護士への信頼にも大きな懸念が生じるため,依頼には慎重な検討が望ましいところです。

置き引き事件で弁護士を選ぶ必要

①不起訴処分を獲得するため

置き引き事件は,不起訴処分の可能性が十分にある事件類型です。認め事件であれば,被害者との示談が成立しているかどうかが不起訴処分を決定づける傾向にあり,示談が成立した事件では不起訴処分となる方が通常と言っても過言ではありません。
この点,示談交渉には弁護士の存在が不可欠です。当事者同士を直接引き合わせるわけにはいかないので,捜査機関は弁護士から依頼があった場合にのみ,弁護士限りで被害者と引き合わせることを認める運用をしています。

一方,否認事件の場合,起訴不起訴の判断は高度の法律的なものとならざるを得ません。犯罪の構成要件を満たしているか,犯罪の立証に足りる証拠はあるかなど,被疑者に刑罰を科すために必要な事項を精査し,刑罰を科せられない可能性が見込まれる場合には,不起訴処分の対象となります。
このような法律的な判断に際して,不起訴を求める意見を述べたり捜査機関との協議を試みたりするには,専門家である弁護士の存在が不可欠でしょう。認め事件のみならず,否認事件でも弁護士選びが不起訴処分を大きく左右することになります。

②取調べに適切な対応を行うため

置き引き事件で捜査を受けるとなれば,事件の内容に関する取り調べは避けられません。警察や検察から事件に関する話を聴取され,その内容を供述調書の形にすることは必須のステップとなります。
この点,事件によっては取調べへの対応次第で起訴不起訴の判断が大きく分かれる場合も少なくありません。特に置き引き事件の場合,立証に必要な証拠が数多く残されていることが期待できないため,足りない部分を取調べで埋め合わせる必要があることも考えられます。

そうすると,置き引き事件で不起訴を目指すためには,取調べへの対応を十分に準備し,不利益のない適切な取調べ対応を尽くすことが非常に重要となります。そして,適切な取調べ対応には弁護士の法的な判断や助言が極めて有益であるため,この点でも弁護士選びは重要な意味を持つことになるでしょう。

③早期釈放のため

置き引き事件で逮捕された場合,その後の動き次第では早期釈放される可能性も十分に考えられます。
逮捕されると,最大72時間以内に「勾留」されるかが判断され,勾留された場合には10日間の身柄拘束が生じます。そして,勾留後には最大10日間の「勾留延長」がなされる可能性もあります。そうすると,起訴不起訴の判断までの間に,最長で23日程度の身柄拘束があり得るということになります。

逮捕から起訴までの流れ

もっとも,勾留されずに釈放となれば,最大72時間の身柄拘束にとどまり,日常生活への悪影響は最小限にとどまります。早期釈放は,生活を守るために極めて重要なものであり,その可能性があるならばできる限り目指すことが有益でしょう。
この点,釈放を目指す具体的な手続や申立てには,弁護士への依頼が必要となります。法律の手続に則って弁護士に対応をしてもらうことで,早期釈放の可能性が大きく上昇することは決して珍しくないでしょう。

④刑罰の軽減を図るため

刑罰が避けられない置き引き事件の場合は,どれだけ軽微な刑罰にとどまるかが非常に重要な問題となります。刑罰には,大きく分けて「罰金」「執行猶予」「実刑」の3つがありますが,金銭を支払うことで終了する罰金が最も軽く,刑務所に収容させられる実刑が最も重い刑罰となります。
この点,罰金で終了させられることができれば,裁判所での裁判を受けることなく,略式手続という形で速やかに終了することも多いため,不利益は最小限にとどまります。罰金ではとどまらないケースでも,執行猶予となるか実刑となるかは,刑務所に収容されるかどうかという極めて大きな違いになります。

刑事罰の種類

刑罰の軽減を目指す場合,具体的な方法や内容は個別の事情を踏まえて決定する必要があるため,弁護士の専門的な判断が不可欠です。可能な限り円滑な解決を目指すためには,弁護士選びが重要となるでしょう。

置き引き事件における弁護士選びの準備

①事件の内容をまとめる

弁護士選びを適切に行うためには,相談相手の弁護士に事件の内容を正確に把握してもらうことが必要となります。そのため,事件の具体的内容は整理して伝えられるようまとめることが有益でしょう。

弁護士が事件の内容の一部を把握しているかいないかで,アドバイスの内容が大きく変わる場合も否定できません。弁護士に誤解が生じることを防ぐため,起きた出来事を漏れなく伝える用意をしておくとよいでしょう。
実際に内容をまとめるに際しては,以下のような点に留意することをお勧めします。

まとめる際の留意点

1.時系列で整理すること

2.起きた出来事と思った内容を区別すること

3.不利益な事情こそ伝えること

②悩みや迷いを整理する

事件解決をどのように図るべきか,弁護士をどのように選ぶべきかを検討しているということは,判断できずにいる原因として何らかの悩みや迷いがあるはずです。「弁護士に依頼するような事件なのか」「弁護士に依頼することで何かが変わるのか」「弁護士が変わると結果も変わるのか」「経済的に不安である」など,悩みや迷いが具体的にどのような内容であるかは,人により様々です。場合によっては,「何に迷うべきかも分からない」ということすらあり得るでしょう。

弁護士選びは,抱えている悩みや迷いの解消に最も適した弁護士を選ぶことが重要です。「悩みを解消してくれそう」という信頼感があるかないかだけでも,その後の動きに大きな影響を及ぼすでしょう。
そのため,弁護士選びに際しては,自分が抱えている迷いや悩みをまずは整理し,可能な限り言語化して弁護士に伝えられるようにしてみましょう。

③早期に弁護士への相談を試みる

置き引き事件は,認め事件であれば示談が最重要な動きとなりますが,示談は相手のある問題です。相手の気持ち一つで結果が真逆になる可能性もあるため,相手への配慮はできる限りするべきでしょう。
この点,示談の試みは早期に着手する方が相手への配慮として適切であることが通常です。被害者の立場では,時間が経ってから初めて示談の話が出てくるより,被疑者の特定後速やかに示談を申し入れてくる方が,真摯に反省していると評価するのが一般的と言えます。

そのため,特に認め事件で示談を目指す場合には,できるだけ早期に弁護士への相談を試み,早めに弁護士選びができるよう心掛けることをお勧めします。

置き引き事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①本人が依頼する

置き引き事件で必要となりやすい示談は,加害者と被害者の間における契約です。そのため,示談を試みるかどうか,示談ができる場合にどのような内容とするか,という点については,契約の当事者である本人の判断が必要となります。
また,弁護士が依頼を受けて活動をするためには,個別事件の詳細な内容を把握していなければなりません。そのため,弁護士が本人から事件の内容を直接聴取することは不可欠と言えるでしょう。

そうすると,弁護士に依頼する場合には,本人が依頼する,という考え方が非常に重要となります。弁護士も本人の意思が沿わない弁護活動はできないため,依頼者がご家族であっても,ご家族と本人の気持ちが一致していることは必要です。

②弁護士の聴取には個人差がある

弁護士への依頼は,法律相談を受けた上で検討することになりますが,弁護士がどのように話を聞くか,どのように回答してくれるか,話し方や言葉遣いはどうか,といった点は,当然ながら弁護士により大きく異なります。これは個人差の問題であり,依頼者目線では「合うか合わないか」という問題でもあります。
弁護士への依頼は,その後の弁護活動や判断の多くを弁護士に委ねるものであるため,弁護士との相性は思いのほか重要です。「この弁護士とは合わない」と感じながら依頼するのは,トラブルの原因にもなりかねません。

そのため,弁護士への相談においては,弁護士の応対には大きな個人差があることを念頭に置き,応対に違和感を覚えない弁護士(=自分と合う弁護士)を選ぶようにすることをお勧めします。

③相談時間には限りがある

弁護士への法律相談は,30分以内,又は1時間以内といった形で時間を区切って行われるのが通常です。その時間内で,必要な情報を伝え,弁護士から案内を受け,弁護士選びの検討を行う必要があります。
もっとも,その時間は決して長くはありません。無意識に相談時間を浪費してしまうと,肝心の弁護士選びに必要な話が聞けないまま相談が終了してしまう可能性もあるでしょう。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士への法律相談に時間的な制限があることを踏まえ,弁護士選びの基準や聞きたいことなどを可能な限り整理して法律相談に臨むことをお勧めします。そのようなスタンスは,法律相談をより有益な内容とする結果にもつながるでしょう。

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万引き事件で自首を考えている人へ,重要な予備知識を徹底網羅

このページでは,万引き事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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万引き事件で自首をするべき場合

①現行犯で発覚したと思われる場合

万引き事件で捜査されるケースは,ほとんどが被害店舗から警察に対する被害申告がなされた場合です。お店から警察に被害届が提出されるなどすることで,警察が捜査を開始し,被疑者の特定を進める流れになります。裏を返せば,被害店舗が警察に対する被害申告などを行わなければ,捜査が開始されることは現実的に考えにくいでしょう。

そのため,被害店舗が被害申告などの動きを取る可能性が高い場合には,自首をするべき場合である可能性も高いということになります。代表例が,事件が現行犯で発覚したと思われるケースです。
事件が現行犯で目視されたものの,その場で呼び止めたり問題にしたりするほどの確固たる証拠はなかった,という場合,お店が警察に捜査を求め,被疑者の特定を進めることになる可能性が高まります。少なくとも,お店側に事件を問題視する大きなきっかけが生じているのは間違いなく,捜査が懸念されやすい状況と考えるべきでしょう。

現行犯で店員などに目視された可能性がある場合には,捜査機関に自分が特定されるより前に進んで自首をすることが有力な手段になるでしょう。

ポイント
万引き事件が捜査されるケースは,被害店舗が警察に捜査を求めた場合
現行犯で目視されている場合,捜査に発展する可能性が高い

②捜査の開始を知った場合

店舗によっては,万引き事件について警察に被害届を出した,といった動きを公表している場合があります。店頭に看板や掲示を行ったり,ネット上でその旨を通知したりという例が代表的です。
この点,店側の公開した情報によって,心当たりのある事件について捜査が開始されたと分かった場合,自首の検討が有力になりやすいでしょう。

捜査が開始されれば,捜査機関が客観的な証拠を精査し,被疑者として自身が特定される可能性は非常に高くなりやすいところです。特に,警察に捜査を求めた事実を公表するような店舗では,警察に対する捜査協力や情報提供も精力的に行っていることが見込まれるため,捜査が不十分になる,ということは考えにくいでしょう。
また,警察に被害申告したことを公表する店舗の意図としては,新たな万引き事件を予防するとともに,対象となった事件の加害者に反省を促したい,逃げ得を許したくない,という思いのあることが多く見られます。自ら名乗り出て自首を行うことは,そのような店舗側の意向にも沿った動きであり,店舗側の感情面にもプラスの影響を及ぼす可能性が高いです。

ポイント
店舗によっては捜査の開始を公表しているケースがある
自首は,捜査開始を公表した店舗の意向に沿った動きと言える

③周囲への発覚を防ぎたい場合

万引き事件の加害者になってしまった場合,回避したい事柄の一つとして周囲への発覚が挙げられやすいです。万引きは,家族や近しい知人などに知られたくない性質の事件であり,できることであれば周囲に発覚しないまま解決したいと考えるのは自然なことでしょう。

この点,周囲に発覚しやすいタイミングの代表例は,予期せず警察の捜査を受けることになったときです。突然警察から連絡がきた,家宅の捜索をされた,呼び出しを受けた際に家族や職場へ連絡されたなど,警察主導で行われる捜査の中で,やむを得ず周囲に知られてしまう,というケースが非常に多く見られます。

そのため,周囲への発覚を防ぐためには,警察から予期せぬ捜査を受けることなく,捜査の方法などを周囲に発覚しやすい形にとどめてもらうことが重要です。そして,これを実現する最も有力な手段が自首です。
自首によって自ら捜査協力を行う形を取り,できるだけ周囲に発覚しない方法を取ってほしい旨を伝えれば,捜査機関側がこれを拒むことはそれほどありません。捜査協力が得られる限り,被疑者側に配慮した捜査方法を取ってくれる可能性が高いでしょう。

ポイント
万引き事件は周囲への発覚を防ぐ必要が高い事件類型
自首によって,捜査機関に配慮してもらえる可能性が高まる

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

万引き事件の自首は弁護士に依頼すべきか

万引き事件で自首を検討する場合は,弁護士に依頼し,弁護士の法的な判断を仰ぐことが非常に重要です。実際に自首を行うときも,具体的な動きを弁護士に進めてもらうことが有益でしょう。
弁護士に依頼するメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①周囲への影響を最小限に抑えられる

万引き事件での自首は,周囲に知られないことを大きな目的の一つに行うことが多いでしょう。しかし,自分と捜査機関の直接のやり取りが急に増えるとなれば,偶然周囲に知られてしまうリスクは高くなります。自首を試みたばかりに,自首に必要なやり取りが原因で周囲に知られてしまうのは,本末転倒にもなりかねません。

この点,弁護士に依頼をすることで,基本的なやり取りは弁護士と捜査機関との間で行ってもらうことができます。取調べの対応など,どうしても自分で応じなければならないこと以外は弁護士に対応してもらえるため,捜査機関とのやり取りが偶然周囲に発覚するリスクは最小限にとどまるでしょう。

②自首すべきかどうかの判断ができる

万引き事件では,自首をするべき状況であるか,という点の判断が困難である場合も少なくありません。事件の性質上,被害者であるお店が被害を把握しているか不明確な場合も多いため,お店が被害を知らなければ自首は不合理な行為となり得ます。また,被害が発生していることは分かっても,犯人を特定する手段がないという場合があり得るため,自首が原因で犯人特定に至る結果となる可能性も否定できません。

この点,弁護士に依頼し,法的な判断を仰ぐことで,本件は自首をすべき内容,状況であるかを知ることができます。同種事件の経験豊富な弁護士であれば,経験を踏まえた具体的な見解を示してくれることも期待できるでしょう。

また,自首すべきかどうかが明確に判断できないケースであっても,自首に伴うメリットデメリットを正確に把握し,後悔のない選択がしやすくなるでしょう。

③自首後の対応に備えられる

自首を行った後は,その事件について捜査が継続し,最終的には事件に対する刑事処分が判断されることになります。そのため,自首を行うに際しては,自首後の流れやそこでの対応をあらかじめ考えておくことが重要です。

この点,自首を検討する段階で弁護士に依頼していれば,自首後にどのような流れが想定されるか,目的を達成するためにはどのような対応をするのが適切か,という点について,具体的な助言を受けることが可能です。弁護士の見解を踏まえて対応方針を検討することで,逮捕の回避や刑事処分の軽減によりつながりやすくなるでしょう。

万引き事件で自首をする場合の注意点

①余罪の取り扱い

自首は,当然ながら特定の事件について行う必要があります。どの事件に関する自首であるかは,自分で明確にしなければなりません。
ここで問題になりやすいのは,余罪がある場合にどの事件の自首をするか,という点です。例えば,A事件とB事件という2件の心当たりがある場合,A事件だけで自首を試みたものの,実際にはB事件だけが捜査されており,捜査機関に問い詰められてB事件を自白した,となると,最初からB事件の自首を試みておくべきだったということになるでしょう。

この点,基本的な方針としては,同一の店舗に対する余罪は自首の対象に含める,という形を取るのが賢明でしょう。通常,万引き事件の捜査は被害店舗ごとに行われるため,ある店舗に対する万引き事件で自首したことにより,他の店舗に対する万引き事件が発覚するという流れにはなりづらいところです。一方,同じ店舗における別事件の場合には,余罪として追及の対象となる可能性が高くなりやすいでしょう。

ポイント
自首は事件ごとに行うもの
同一店舗の余罪は自首の対象に含めるのが賢明

②捜査を誘発する可能性

自首は,捜査が行われているであろうと推測される事件について行うものですが,現実には捜査が行われていない,という状況だと,かえって自首が捜査を誘発する結果になる可能性も否定できません。
万引き事件の場合,自分の事件や行動が店舗にマークされている前提で検討することもありますが,実際にはそうでなかった場合,大きな思い違いを前提に自首をしてしまう,ということになりかねません。

ただ,このようなリスクは自首に当然つきまとうものであり,基本的に捜査を誘発するリスクなしで自首をすることは困難です。自首を検討する場合には,リスクも承知の上で,それでも自首のメリットが大きいと考えられるか,十分に検討することをお勧めします。

ポイント
自首が捜査を誘発するリスクは抱えざるを得ない

③被疑者特定前に行う必要

自首は,捜査機関に事件が発覚していないか,事件が発覚していても被疑者が特定できていない段階で行う必要があります。自首を試みたとしても,既に捜査機関によって被疑者と特定されていた場合,法的には自首が成立せず,自首の法的なメリットを受けることもできません。

万引き事件では,特にチェーン店等の規模の大きな店舗が現場である場合,防犯映像などの客観的証拠がしっかり確保されているケースも多いため,時間をかければ被疑者が特定できるということも少なくありません。そうすると,自首までにあまり時間をかけてしまった場合,自首が成立する時期を逃してしまう恐れがあり得ます。

自首を試みる場合には,自首が成立する機会を逃すことのないよう,できるだけ速やかに判断し実行するのが望ましいでしょう。

ポイント
被疑者特定後では自首が成立しない

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【万引き事件での呼び出し】どう対応するのが適切か?どんな点に注意するべきか?

このページでは,万引き事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
万引き事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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万引き事件で呼び出された場合の対応法

①心当たりがあるとき

心当たりがある事件では,呼び出しの連絡受けた段階でできるだけ速やかに認める姿勢を明らかにすることをお勧めします。

万引き事件で呼び出しを行うのは,被害者である店舗の通報を受けた警察が必要な捜査をした結果,客観的な証拠から高い確度で被疑者が特定できた場合であることがほとんどです。つまり,被疑者自身が認めても認めなくても,客観的な証拠から立証できてしまう状況であると考えるのが適切でしょう。

認めても認めなくても犯罪が立証できる状況であれば,犯罪が立証できない可能性を残す目的で否認するメリットはない,ということになります。この点,認める方が認めないよりも犯罪が立証された場合の処分が軽くなる可能性があるため,処分が軽くなる効果を期待する意味でも速やかに認めるスタンスを明らかにする方が賢明でしょう。

なお,認めるスタンスを早期に表明することは,逮捕や捜索といった強制捜査を避ける効果を期待できる点でも有益と言えるでしょう。

ポイント
客観的な証拠から被疑者を特定できている可能性が高い
極力速やかに認める姿勢を示すのが合理的

②心当たりがないとき

心当たりのない事件で呼び出される場合,事件に関係している可能性がある人を広く呼び出して話を聞いている可能性があります。万引き事件が発生したことは明らかであるものの,その被疑者を特定するだけの客観的証拠に乏しく,しらみつぶしに話を聞く以外の手段がない,というのが一例です。

事件に心当たりがない場合は,当然ながら認める態度を取るべきではありません。特に,このような場合では誰かから自白があるのを期待して呼び出している可能性が見込まれるため,安易な自白はより不利益が大きいと言えます。

心当たりがない以上,まずは自分が事件と関係のない立場であることをはっきりと告げるようにしましょう。あわせて,問題となっている事件の内容をできるだけ詳細に把握できるとより有益です。
事件の内容が把握できれば,自分が事件と関係のないことが根拠を持って主張できる可能性もあります。そうすれば,対応の負担を大きく軽減させることにもつながり得るでしょう。

ポイント
自白を期待してしらみつぶしに呼び出している可能性がある
心当たりがないことをはっきり告げ,できれば事件内容の把握に努める

③余罪の取り扱い

万引き事件は,1件だけ行ったという場合はあまりなく,余罪のあるケースが非常に多い事件類型です。そのため,万引き事件で呼び出しを受けた場合,呼び出しの対象となった事件に心当たりがあるだけでなく,余罪の心当たりもある,ということはあり得るでしょう。
もちろん,捜査機関も余罪の可能性は織り込み済みです。そのため,呼び出された際には余罪についての対応も考える必要があります。

この点,基本的には余罪がある方が自然であるため,余罪が全くないという返答は違和感を持たれることが多いでしょう。そのため,余罪自体はあると答える方が円滑であるケースが多数です。
もっとも,その余罪のすべてが具体的な捜査や処分の対象となるわけではありません。具体的に捜査や処分の対象となる余罪は,一般的には以下のようなものに限られるでしょう。

捜査や処分の対象となりやすい余罪

1.日時・場所・内容が特定でき,立証できるもの

2.以前に被害届が出ている事件と一致するもの

3.呼び出された事件の直前直後に発生したもの

4.呼び出された事件の現場店舗における余罪

裏を返せば,これらの条件を満たさない場合,余罪があると分かっていたとしても具体的な捜査や処分の対象にはなりづらいということができます。余罪については,「被疑者はあると言っているものの具体的な捜査や処分の対象とはしない」という結果を目指すのが有効です。

万引き事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

万引き事件の呼出に応じても,その流れで逮捕されるということは基本的には考えにくいでしょう。

そもそも,万引き事件は,類型的に後日逮捕となるケースがそれほど多くはありません。回数や規模の面で悪質さが際立っている,現行犯で発覚した際に無理矢理逃亡した,といった特筆すべきケース以外は,逮捕せず在宅捜査で処理しようと考えている場合が多いです。
そのため,呼び出しへの適切な対応をしていれば逮捕されない方が一般的である,という場合は少なくありません。

もっとも,悪質性が高いなど,逮捕の可能性が類型的に高い内容の場合には,弁護士に依頼するなどしてより積極的に逮捕回避を目指す手段が有力になるでしょう。具体的には,以下のようなケースが挙げられます。

逮捕の可能性が類型的に高い万引き事件

1.余罪が多数

2.前科が多数

3.被害が高額

4.現行犯からの逃走

5.複数犯(組織的)

万引き事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①現行犯で取り締まりを受けなかった場合

現行犯で取り締まりを受けなかった万引き事件では,捜査機関が被疑者を特定した後,その被疑者に対して呼び出しを行うことが一般的です。そのため,呼び出しのタイミングは,以下のステップを踏んだ後,ということになります。

呼び出しまでのステップ

1.お店から捜査機関への被害申告

2.事件の存在及び内容の確認

3.防犯映像等による被疑者の特定

具体的に呼び出しを受けるタイミングは,事件がお店に発覚する時期,お店が動く時期,捜査機関が被疑者を特定する時期など,複数の事情に影響を受けるため,様々な可能性があるでしょう。一般的には,事件後数週間~数か月といった時期であることが多く見られます。

②現行犯で取り締まりを受けた場合

現行犯で取り締まりを受けた万引き事件では,当日に警察署に同行し,一通りの話を聞かれるのが一般的です。その後,内容を適切な書式の書面にまとめたり,補充的に話を聞いたりするために呼び出されることが考えられます。
このような呼び出しは,事件当日から1週間~1か月程度の間に行われることが通常でしょう。

また,呼び出しの回数は1回である場合も複数回である場合もあり得ます。1回で終わる場合には,朝から夕方までにかけて,必要な供述調書などを一通り作成する流れになることが多いでしょう。

③商品を所持している場合

盗品である商品を所持している場合には,その提出のために出頭を求める呼び出しを受けることがあります。このような呼び出しは,商品を所持していると分かった後,比較的速やかな段階で行われるのが通常です。

なお,所持している商品の提出は,罪証隠滅の可能性がないと評価してもらう意味でも有益な行動であるため,商品を所持している場合には提出する動きを取る方が賢明でしょう。

万引き事件の呼び出しに応じたときの注意点

①認否を明確にする

呼び出しに応じた際には,取調べを受ける可能性が見込まれますが,取調べにおいてはまず認否を明確にすることが適切です。

認めるべき事件の場合は,早期に認める態度であることを表明することで,その後の取調べなどが円滑に進みやすく,呼び出しに対応する負担を軽減させることにつながります。また,早期に認めて反省の意思を示している方が,情状面で有益な材料となり,最終的な処分を軽減させる効果も期待できます。

一方,否認事件の場合には,自白を期待する捜査機関に「この人からは自白が引き出せない」と理解してもらうことが適切です。捜査機関の目線では,否認する被疑者が言い逃れを試みているのか心から否認しているのかを区別することは困難です。そのため,言い逃れをしようとしていると感じれば,言い逃れを防ぐためにより執拗で高圧的な取調べになる可能性も否定できません。
そのような事態を避けるため,早期に否認のスタンスを強く表明し,一貫した対応に努めるのが望ましいでしょう。

②余罪を過度に意識しない

余罪のある万引き事件の場合,余罪を非常に強く意識しているケースが散見されます。しかし,余罪を意識するあまり本来するべき対応がおろそかになるのは不合理です。

前提として,余罪があり得ることは捜査機関も織り込み済みです。余罪があると分かっても捜査機関は驚きません。また,余罪のすべてを捜査し処罰するのは現実的に困難であることがほとんどです。客観的な証拠が残っていない場合も少なくありません。

また,万引き事件で余罪が捜査・処分される場合でも,そのきっかけが自白であることは少数です。具体的に捜査・処分の対象となるのは,自白があってもなくても,あらかじめ証拠があって立証できる余罪であることが一般的でしょう。

以上を踏まえると,「余罪がバレると重くなるのではないか」などと,余罪を過度に意識することには利点がないと考えるのが賢明です。余罪を気にするあまり,現実に捜査されている事件への対応が不適切になってしまうのであれば,本末転倒となるでしょう。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

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万引き事件は不起訴になるか?示談は可能か?自首をするべきか?弁護士が完全網羅

このページでは,万引き事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。示談や自首のポイントについてもあわせて解説していますので、不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

万引き事件と不起訴

万引き事件で不起訴を目指す方法

①現行犯で発覚した場合

万引き事件は,現行犯で発覚し,その場に警察が駆け付ける形で捜査が開始される,という流れが多数見られます。そして,警察が駆け付けるのはお店側が警察を呼んだ場合であり,警察が捜査を開始するのはお店側が捜査を求めた場合であることが通常です。
裏を返せば,現行犯で発覚した後,お店が警察を読んだり警察の捜査を求めたりしなかった場合,事件は捜査の対象とならず,起訴される可能性もない,ということになるでしょう。

そのため,事件が現行犯で発覚した場合には,お店側に警察を呼ばない等の寛大な判断の可能性はないか,検討してもらう流れを目指したいところです。具体的には,まず何よりお店側への謝罪を尽くし,被害に遭ったお店側の感情に少しでもプラスの影響があるよう,誠意ある言動や真摯な姿勢を心がけるのが適切でしょう。

もちろん,謝罪を尽くしたから許されるというわけではないため,誠意を見せてもなお警察の捜査を避けられない可能性は高いでしょう。もっとも,発覚直後に謝罪を尽くしたかどうかは,その後のお店側の対応方針に影響を与える可能性が少なくありません。捜査が防げなかったとしても,適切な対応であることに間違いはないでしょう。

ポイント
お店側が警察の対応を求めなければ,捜査は開始しない
まずは何よりお店側への真摯な謝罪を尽くす

②後日呼び出しを受けた場合

事件当日には発覚しなかったものの,後日になって警察から呼び出しを受けた場合には,自分が行ったことに間違いがない事件であればできるだけ早いタイミングから一貫して反省の態度を示す方針が適切です。

後日呼び出しを受けるケースでは,客観的な証拠から被疑者を特定できる状況であることが見込まれます。防犯映像をはじめとした証拠から,万引きの事実やその犯人が特定できた,ということを前提に対応することが望ましいでしょう。そのため,安易な言い逃れをしても,犯罪が立証されてしまう事実に変わりはなく,利益がありません。むしろ,反省が不十分であるとの評価につながる可能性があり,不起訴処分を遠ざけてしまう恐れがあります。

万引き事件の場合,あまりに悪質と評価されなければ,深い反省の態度が不起訴処分を引き寄せる重要な事情になる可能性もあります。反省の深さについては,反省の態度を示し始めた時期も判断基準の一つとされるため,呼び出しを受けたその時点から反省の意思を表明していくことは有益な対応と言えるでしょう。

ポイント
後日の呼び出しは,客観的証拠から被疑者が特定できた場合に行われる
自分が行ったことに間違いなければ,速やかに反省の態度を示す

③身に覚えがない場合

万引きを疑われているものの身に覚えがないという場合には,自分の犯罪が立証できない,という結論を目指すことが適切です

万引き事件の場合,身に覚えがない事件で疑われているケースだと,客観的な証拠が不十分であって犯人を特定しきれていないという可能性が高い傾向にあります。お店が被害に遭ったことは間違いないものの,誰が万引きをしたか分からないため,可能性のある人物を疑う,ということです。

この点,犯人を特定する証拠には,大きく分けて「物証」と「人証」があります。物証とは客観的な物,人証とは人の話のことを言います。そして,物証が乏しい場合には,人証の重要性がより高くなるため,人の話がどのような内容であるか,それが信用できるかという点が犯罪の立証を左右することになります。
そのため,身に覚えがないのに疑われている場合,つまり客観的な証拠に乏しいときには,決して安易に自白をしてしまったり,事実でないことを話したりしないように注意しましょう。一貫して身に覚えがないことを話し続け,自分の話が信用できると理解してもらうことが一番の近道です。

ポイント
身に覚えがないケースの多くは,犯人を特定する証拠が乏しい
一貫して事実を話し,自分の話が信用できると理解してもらう

万引き事件で不起訴になる可能性

万引き事件は,認め事件,否認事件いずれの場合も,不起訴になる可能性が十分にある事件類型ということができます。

①認め事件の場合

万引き事件の場合,被害額がそれほど大きくないケースが多数であるため,事件の重大性が小さいことを踏まえた不起訴処分の可能性は決して低くありません。特に,初犯で金額が小さく,余罪もそれほどないケースであれば,適切な対応により不起訴となることは大いに考えられるでしょう。

不起訴を目指すための対応としては,まず被害者であるお店側への謝罪や賠償が適切です。万引き事件は被害者の財産にマイナスを生じさせるものであり,マイナスを生じさせた行為の責任が問われることになるため,事後的にマイナスが補填されれば処分の軽減につながりやすいでしょう。また,被害者のいる事件では,被害者側が処罰を望むか望まないか,という感情面を考慮した刑事処分とされやすい傾向にあります。真摯な謝罪や賠償を尽くすことで,お店側の感情面が和らぐようであれば,それだけ不起訴処分が近づくと言えるでしょう。

ポイント
事件の規模が小さいことを踏まえた不起訴処分の可能性がある
被害店舗への謝罪や賠償を尽くすことが有益

②否認事件の場合

否認事件で問題になりやすい争点は,被疑者が犯人かどうか,という点です。これは「犯人性」と呼ばれます。
犯人性が問題になる場合,被疑者と犯人を結びつける客観的な証拠の有無が起訴不起訴を決定的に左右する場合が多いでしょう。裏を返せば,客観的な証拠に乏しい場合,犯人性の立証が困難となるため,不起訴の可能性が高くなりやすい傾向にあると言えます。
犯人性が争点となる否認事件では,客観的証拠の有無次第で不起訴が見込まれる場合も少なくないでしょう。

一方,犯罪の「故意」を争点とするのは,不起訴を目指す観点ではあまり有効でないことが多く見られます。故意を争点とするケースとは,確かに商品を店外へ持ち出してしまったが,意図的に持ち出したわけではない,と主張する場合です。
故意がない,という主張は,故意がないことを裏付ける事情とセットであることが必要です。故意がないと理解しなければ説明できない行動を取っている,という場合が代表例です。
根拠なく故意を争点とするのは,不起訴処分に結びつきにくいことが多数であるため,注意が必要でしょう。

ポイント
犯人性が争点となる場合は客観的証拠の有無による
故意を争点とするのは,不起訴処分の獲得が難しくなりやすい

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

万引き事件で不起訴を目指す場合の注意点

①被害店舗の許しを獲得できる可能性

被害者のいる事件では,被害者の許しを獲得することが不起訴を目指す場合に最も有力な手段です。もっとも,万引き事件の場合,被害者であるお店が許すという判断をすることはほとんどありません。特に,チェーン店など規模の大きなお店になると,示談には応じないという一律の対応が徹底されているケースが多数です。

ただし,例外的に被害店舗の許しを獲得できるケースがないわけではありません。具体的には,以下のような場合が挙げられます。

被害店舗の許しを得られるケース

1.個人商店の場合
→店主個人の判断で許しが得られる可能性がある

2.店舗の管理者が個人的に許す意向を示す場合
→お店の意向とは別に管理者個人の意向として許しが得られる可能性がある

もっとも,例外的に許しが得られるケースに当たるかどうかは,巡り合わせや運の要素が非常に強い問題であり,被害者側の判断次第と言わざるを得ません。そのため,まずは謝罪と賠償を尽くし,例外的なケースに当たるのであれば許しの獲得を目指す,という考え方が適切でしょう。

②余罪がある場合の取り扱い

万引き事件の場合,捜査されている事件以外にも,他の日や他の店舗での万引き事件(=余罪)があるケースは少なくありません。捜査機関も,余罪があることを想定しながら捜査を行うことが通常です。
そのため,余罪があるときに警察へどこまで答えるのか,という疑問や不安が生じることは少なくありません。自分から話すと処分される件が増えて不起訴が遠のくようにも思えますし,逆に答えることを拒むと反省がないとの評価につながって不起訴の可能性を手放すように思えます。

この点,基本的なスタンスとしては,「個別事件の特定までは至らない程度に余罪の存在を認める」という方針が有力でしょう。確かに万引きをしたのは1件ではないと認めつつ,事件の日時や場所,内容といった詳細は,虚偽供述にならない程度に明言を避ける,というものです。
もっとも,実際にどのような回答をすべきかは判断が困難な場合も少なくありません。個別のケースでどのように応じるべきかは,弁護士に依頼の上,具体的に方針を決めるのが良いでしょう。

③微罪処分を目指す方針について

万引き事件の場合,「微罪処分」という処分の対象になるケースがあり得ます。微罪処分とは,軽微な事件の場合に,検察庁へ事件を送致することなく,警察限りで事件の取り扱いを終えるというものです。起訴不起訴を判断する検察庁には事件を送ることなく終了するため,起訴される可能性がありません。また,警察での取り扱いも早期に終了するため,取調べなどに応じる負担も最小限に抑えられます。

そのため,微罪処分を目指すことができれば最も有益である,という場合は非常に多く,実際に微罪処分を希望して弁護士に相談されるケースも多く見られるところです。

しかしながら,微罪処分になるかどうかは被疑者側でコントロールできる事柄ではありません。被害者側の意向や捜査機関の判断がかみ合った場合に,初めて微罪処分となる可能性が生じるにとどまります。狙って実現できる性質のものではないので,微罪処分のために被疑者側(=加害者側)ができることは,やはり真摯な謝罪や賠償を行うことに尽きるでしょう。

微罪処分に関しては,これを目指す,という方針を取るのでなく,真摯な態度の副産物として幸運な場合にはあり得る,という程度の認識が適切です。

万引き事件と示談

万引き事件で示談はできるか

刑事事件における示談は,加害者が被害者に金銭賠償を行い,これに対して被害者が加害者を許す,という合意を指すのが一般的です。被害者のいる事件類型では,被害者が許しているかどうかが刑事処分の結果を大きく左右するため,示談によって被害者の許しを得ることが有力な手段となります。

この点,万引き事件は窃盗罪に該当し,お店は窃盗罪の被害者に当たる立場です。そのため,万引き事件でも示談によって被害者の許しを得ることができれば,刑事処分を大きく軽減させることになるでしょう。

しかし,万引き事件は相手が個人でなく店や会社であるため,特有の問題があります。それは,被害者である店や会社は,許すという対応を基本的にしない,ということです。
万引き被害は,店側にとって件数が非常に多いため,一律の対応方針を決めていることがほとんどです。具体的には,以下のような対応方針であることが多く見られます。

万引き被害に対する店側の一般的な方針

1.支払は対象商品の金額のみ受ける(買取を求める)

2.許すことはしない

3.今後の店への出入りを禁止する

そのため,刑事事件の示談で加害者側にとって最も重要な許しの獲得は,万引き事件だと困難なことが非常に多いです。特に,複数の店舗がある大規模なお店であるほど,一律で許しには応じないという対応がなされる傾向にあります

もちろん,一定の金銭を支払って謝罪や賠償を尽くすことは,刑事処分に一定の影響を及ぼすため,重要であることに変わりはありませんが,万引き事件では許しを内容とする示談になりづらい,という点を踏まえておくことが望ましいでしょう。

ポイント
刑事事件の一般的な示談は,被害者から許しを獲得するもの
万引き事件の場合,被害者である店は一律で許しを拒否するのが一般的

万引き事件における示談とは

万引き事件では,許しを内容とする示談は非常に困難であるため,許しが得られないことを想定して示談を試みることが適切です。具体的には,被害者の希望に沿って損害を回復させたことが,万引き事件における示談の主な内容となります。

そもそも,刑事事件における「示談」という言葉は「合意」という程度の意味合いしかなく,具体的にどのような合意をするかは様々です。許しを内容とする示談もあれば,許しを内容としない示談もあります。そして,万引き事件の示談でまず目指すべきなのは,損害を回復したという結果です。

万引き事件などの窃盗罪は,「財産犯」と呼ばれるカテゴリーの犯罪です。財産犯とは,被害者の財産に損害を及ぼしたという犯罪類型をいいます。この財産犯の刑事処分を判断するときの重要な要素としては,財産への損害がどれだけ回復されたか,という点が挙げられます。
たとえば,1万円の窃盗事件を起こしたものの,あとからその1万円を返したならば,最終的な損害はプラスマイナスゼロとなります。そうすると,刑事処分を判断するときには既に損害が残っていないため,重大な処罰を科す必要は低い,という判断がされやすいのです。
そのため,財産犯である窃盗罪の示談では,お店に生じさせてしまった財産的な損害を回復させることを目指すのが得策です

この点,万引き事件による財産的な損害は,商品以外にも複数考えられます。具体的には,対応に要した人件費,防犯対策を強いられたコストなどが挙げられるでしょう。
もっとも,現実の支払額は,店側から支払を求められた金額とすべきで,それ以上の支払を無理に行おうとするのはかえって不利益になりやすいところです。店側としては,求めた以上の支払を受けても,誰がいくら受け取ればいいかという判断が必要になってしまい,むしろ負担になってしまうためです。

万引き事件における示談は,店側から支払いを求められた金額を確かに支払うことを目指す,という方針で検討するようにしましょう。

ポイント
財産への損害がどれだけ回復されたかが,刑事処分に影響する
万引きの示談では,店から求められた支払いを行うことを目指すべき

万引き事件で示談をする方法

万引き事件の場合,被害店舗の場所や連絡先が分かるため,直接連絡を試みることも不可能ではありません。しかし,捜査を受けている状況であれば,捜査機関を介さずに直接店側との連絡を試みることは控えるのが適切です。
確かに,直接連絡が取れれば円滑ではあります。しかし,店側が加害者からの直接の連絡を希望している可能性はほとんどないため,直接の連絡はお店への迷惑行為と評価される恐れが非常に大きいでしょう。

示談を試みる場合は,弁護士に依頼し,弁護士から捜査機関に連絡を入れてもらうようにしましょう。
弁護士から連絡を受けた捜査機関は,被害店舗に問い合わせ,話を受けるかどうか,受ける際の担当者や連絡先はどうするか,といった点を確認します。このようにして,捜査機関から店舗に連絡を取ってもらえば,示談の試みが店側への迷惑になる危険は避けることができます。

この点,弁護士が示談を試みる場合の基本的な流れは,以下の通りです。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

このようにして,弁護士が加害者(被疑者)の謝罪の意思を代弁する形を取ることで,適切な示談の申し入れが可能になります。せっかくの示談の試みが不利益につながらないよう,示談は弁護士を通じて行うことを強くお勧めします。

ポイント
加害者が直接店舗に連絡を取ることは控えるべき
弁護士を通じて捜査機関に連絡し,捜査機関経由で意思確認する

万引き事件の示談金相場

万引き事件の場合,被害店舗が支払いを求める金銭は,万引きの対象となった商品の金額となることが非常に多く見られます。これは,店舗としては商品の買取を求めることで金銭的なやり取りを終了する,という意味合いになります。

刑事事件の一般的な示談では,損害額の実額のみでなく,謝罪の気持ちを上乗せする形で示談金額を定め,支払うことが多く見られます。しかし,万引き事件の場合は相手が店や会社という組織であるため,謝罪の気持ちを込めて金額を上乗せする,といった交渉を行うことはあまりありません。
ただし,同じ店で複数回の万引き行為があり,すべての金額が特定できない場合,損害額を概算して支払う旨の合意をすることはあり得ます。いずれにしても,基本的な示談金額は商品の価格となりやすいということですね。

ポイント
示談金額は対象となった商品の価格になりやすい

万引き事件の示談内容・条項

刑事事件で示談を取り交わす場合,示談書を作成し,その中に様々な条項を盛り込むことが一般的です。しかし,万引き事件の場合では,基本的に被害者が加害者を許す,という合意にはならないため,示談書の作成・締結自体を行わないことも珍しくありません。

万引き事件の示談における具体的な内容としては,以下のようなものが挙げられます。

①通常設ける内容

【確認条項】
支払う金額はいくらか,当事者間で確認する条項です。

【給付条項】
確認した金額を具体的に支払う方法を定める条項です。

なお,商品の買取という形で示談を行う場合,この確認及び給付の内容は,店側の発行するレシート又は領収証で代用されることも少なくありません。

②万引き事件では設けづらい内容

【清算条項】
示談で定めた内容以外に,当事者間に債権債務関係(法律関係)がないことを確認する条項です。この条項を設けることで,加害者と被害者との法律関係は示談金の支払をもって終了することになります。
ただ,店側のメリットがないので,店は一律で拒否することが通常です。

【宥恕条項】
宥恕(ゆうじょ)とは「許し」を意味します。宥恕条項は,被害者が加害者を許すことを内容とする条項です。
もっとも,万引き事件では店側が一律で宥恕を拒否することがほとんどであるため,設けることはあまりありません。

③示談書を作成できなくてもいいのか

万引き事件では特に示談書を作成せず,謝罪と買取だけ行って終了することも多数あります。ただ,示談をするのに書面も作成しなくていいのか,という点は疑問が残るかもしれません。

もっとも,結論的には,書面化しなくても不利益はない,と言って差し支えないでしょう。

書面化をする目的は,紛争の蒸し返しを防ぐためです。金額の合意をしたかしていないか,その金額を支払ったか支払っていないか,といった点が,後から紛争になることを防ぐため,書面に残しておくというわけです。
この点,万引き事件でも,確かに紛争の蒸し返しは防止したいところですが,現実的に店側が紛争を蒸し返すことはありません。店側は良くも悪くも一律の対応をしていることがほとんどですが,書面化せず蒸し返しもしないことが,店側の一律対応の内容でもあるためです。

また,万引き示談の目的である支払の事実は,買取時のレシートや領収証で立証可能ですので,刑事処分に対する影響や効果に差が生じるわけでもありません。刑事処分との関係でも,書面化しなかったから不利益が生じるということはないと言ってよいでしょう。

万引き事件の示談で注意すべきこと

万引き事件の示談では,以下の点に注意すべきところです。

①宥恕の獲得に固執しない

刑事事件で示談を試みる場合,被害者から許し(宥恕)をもらって直ちに解決する,という流れを目指したいと考えることが多いと思います。万引き事件でも,宥恕がもらえるのであればそれに越したことはありませんし,絶対に宥恕が獲得できないとは限りません。

しかし,基本的に宥恕が獲得できるものではない,という現実は,あらかじめ十分に把握しておくことが適切です。宥恕が獲得できない示談は失敗なのではなく,最初から宥恕を内容としない示談を試みる動きになると理解しておくようにしましょう。

自分から謝罪を行うこと,自分から賠償を行うことは,被害店舗側の処罰感情に十分な影響を与えることが珍しくありません。宥恕という形を取っていなくても,処罰を求める意思はない,ということになる可能性はあるのです。
その意味で,宥恕のない示談でも十分に意味を持っているものですから,店側の事情を無視して宥恕ありきの示談を目指すことはむしろ控える方が得にもなります。

②弁護士を通じて行う

店側とのやり取りに際しては,場所や連絡先が分かるからと言って自分で直接連絡を取ることはしないようにしましょう。店側の負担が大きくなり,かえって逆効果になりかねません。

示談の試みに際しては,弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な方法で進めるのが肝要です。店側への謝意は,直接の連絡という方法でなく,適切なやり方で進めるという行動で示すべきでしょう。

万引き事件と自首

万引き事件で自首をするべき場合

①現行犯で発覚したと思われる場合

万引き事件で捜査されるケースは,ほとんどが被害店舗から警察に対する被害申告がなされた場合です。お店から警察に被害届が提出されるなどすることで,警察が捜査を開始し,被疑者の特定を進める流れになります。裏を返せば,被害店舗が警察に対する被害申告などを行わなければ,捜査が開始されることは現実的に考えにくいでしょう。

そのため,被害店舗が被害申告などの動きを取る可能性が高い場合には,自首をするべき場合である可能性も高いということになります。代表例が,事件が現行犯で発覚したと思われるケースです。
事件が現行犯で目視されたものの,その場で呼び止めたり問題にしたりするほどの確固たる証拠はなかった,という場合,お店が警察に捜査を求め,被疑者の特定を進めることになる可能性が高まります。少なくとも,お店側に事件を問題視する大きなきっかけが生じているのは間違いなく,捜査が懸念されやすい状況と考えるべきでしょう。

現行犯で店員などに目視された可能性がある場合には,捜査機関に自分が特定されるより前に進んで自首をすることが有力な手段になるでしょう。

ポイント
万引き事件が捜査されるケースは,被害店舗が警察に捜査を求めた場合
現行犯で目視されている場合,捜査に発展する可能性が高い

②捜査の開始を知った場合

店舗によっては,万引き事件について警察に被害届を出した,といった動きを公表している場合があります。店頭に看板や掲示を行ったり,ネット上でその旨を通知したりという例が代表的です。
この点,店側の公開した情報によって,心当たりのある事件について捜査が開始されたと分かった場合,自首の検討が有力になりやすいでしょう。

捜査が開始されれば,捜査機関が客観的な証拠を精査し,被疑者として自身が特定される可能性は非常に高くなりやすいところです。特に,警察に捜査を求めた事実を公表するような店舗では,警察に対する捜査協力や情報提供も精力的に行っていることが見込まれるため,捜査が不十分になる,ということは考えにくいでしょう。
また,警察に被害申告したことを公表する店舗の意図としては,新たな万引き事件を予防するとともに,対象となった事件の加害者に反省を促したい,逃げ得を許したくない,という思いのあることが多く見られます。自ら名乗り出て自首を行うことは,そのような店舗側の意向にも沿った動きであり,店舗側の感情面にもプラスの影響を及ぼす可能性が高いです。

ポイント
店舗によっては捜査の開始を公表しているケースがある
自首は,捜査開始を公表した店舗の意向に沿った動きと言える

③周囲への発覚を防ぎたい場合

万引き事件の加害者になってしまった場合,回避したい事柄の一つとして周囲への発覚が挙げられやすいです。万引きは,家族や近しい知人などに知られたくない性質の事件であり,できることであれば周囲に発覚しないまま解決したいと考えるのは自然なことでしょう。

この点,周囲に発覚しやすいタイミングの代表例は,予期せず警察の捜査を受けることになったときです。突然警察から連絡がきた,家宅の捜索をされた,呼び出しを受けた際に家族や職場へ連絡されたなど,警察主導で行われる捜査の中で,やむを得ず周囲に知られてしまう,というケースが非常に多く見られます。

そのため,周囲への発覚を防ぐためには,警察から予期せぬ捜査を受けることなく,捜査の方法などを周囲に発覚しやすい形にとどめてもらうことが重要です。そして,これを実現する最も有力な手段が自首です。
自首によって自ら捜査協力を行う形を取り,できるだけ周囲に発覚しない方法を取ってほしい旨を伝えれば,捜査機関側がこれを拒むことはそれほどありません。捜査協力が得られる限り,被疑者側に配慮した捜査方法を取ってくれる可能性が高いでしょう。

ポイント
万引き事件は周囲への発覚を防ぐ必要が高い事件類型
自首によって,捜査機関に配慮してもらえる可能性が高まる

万引き事件の自首は弁護士に依頼すべきか

万引き事件で自首を検討する場合は,弁護士に依頼し,弁護士の法的な判断を仰ぐことが非常に重要です。実際に自首を行うときも,具体的な動きを弁護士に進めてもらうことが有益でしょう。
弁護士に依頼するメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①周囲への影響を最小限に抑えられる

万引き事件での自首は,周囲に知られないことを大きな目的の一つに行うことが多いでしょう。しかし,自分と捜査機関の直接のやり取りが急に増えるとなれば,偶然周囲に知られてしまうリスクは高くなります。自首を試みたばかりに,自首に必要なやり取りが原因で周囲に知られてしまうのは,本末転倒にもなりかねません。

この点,弁護士に依頼をすることで,基本的なやり取りは弁護士と捜査機関との間で行ってもらうことができます。取調べの対応など,どうしても自分で応じなければならないこと以外は弁護士に対応してもらえるため,捜査機関とのやり取りが偶然周囲に発覚するリスクは最小限にとどまるでしょう。

②自首すべきかどうかの判断ができる

万引き事件では,自首をするべき状況であるか,という点の判断が困難である場合も少なくありません。事件の性質上,被害者であるお店が被害を把握しているか不明確な場合も多いため,お店が被害を知らなければ自首は不合理な行為となり得ます。また,被害が発生していることは分かっても,犯人を特定する手段がないという場合があり得るため,自首が原因で犯人特定に至る結果となる可能性も否定できません。

この点,弁護士に依頼し,法的な判断を仰ぐことで,本件は自首をすべき内容,状況であるかを知ることができます。同種事件の経験豊富な弁護士であれば,経験を踏まえた具体的な見解を示してくれることも期待できるでしょう。

また,自首すべきかどうかが明確に判断できないケースであっても,自首に伴うメリットデメリットを正確に把握し,後悔のない選択がしやすくなるでしょう。

③自首後の対応に備えられる

自首を行った後は,その事件について捜査が継続し,最終的には事件に対する刑事処分が判断されることになります。そのため,自首を行うに際しては,自首後の流れやそこでの対応をあらかじめ考えておくことが重要です。

この点,自首を検討する段階で弁護士に依頼していれば,自首後にどのような流れが想定されるか,目的を達成するためにはどのような対応をするのが適切か,という点について,具体的な助言を受けることが可能です。弁護士の見解を踏まえて対応方針を検討することで,逮捕の回避や刑事処分の軽減によりつながりやすくなるでしょう。

万引き事件で自首するときのポイント

①余罪の取り扱い

自首は,当然ながら特定の事件について行う必要があります。どの事件に関する自首であるかは,自分で明確にしなければなりません。
ここで問題になりやすいのは,余罪がある場合にどの事件の自首をするか,という点です。例えば,A事件とB事件という2件の心当たりがある場合,A事件だけで自首を試みたものの,実際にはB事件だけが捜査されており,捜査機関に問い詰められてB事件を自白した,となると,最初からB事件の自首を試みておくべきだったということになるでしょう。

この点,基本的な方針としては,同一の店舗に対する余罪は自首の対象に含める,という形を取るのが賢明でしょう。通常,万引き事件の捜査は被害店舗ごとに行われるため,ある店舗に対する万引き事件で自首したことにより,他の店舗に対する万引き事件が発覚するという流れにはなりづらいところです。一方,同じ店舗における別事件の場合には,余罪として追及の対象となる可能性が高くなりやすいでしょう。

ポイント
自首は事件ごとに行うもの
同一店舗の余罪は自首の対象に含めるのが賢明

②捜査を誘発する可能性

自首は,捜査が行われているであろうと推測される事件について行うものですが,現実には捜査が行われていない,という状況だと,かえって自首が捜査を誘発する結果になる可能性も否定できません。
万引き事件の場合,自分の事件や行動が店舗にマークされている前提で検討することもありますが,実際にはそうでなかった場合,大きな思い違いを前提に自首をしてしまう,ということになりかねません。

ただ,このようなリスクは自首に当然つきまとうものであり,基本的に捜査を誘発するリスクなしで自首をすることは困難です。自首を検討する場合には,リスクも承知の上で,それでも自首のメリットが大きいと考えられるか,十分に検討することをお勧めします。

ポイント
自首が捜査を誘発するリスクは抱えざるを得ない

③被疑者特定前に行う必要

自首は,捜査機関に事件が発覚していないか,事件が発覚していても被疑者が特定できていない段階で行う必要があります。自首を試みたとしても,既に捜査機関によって被疑者と特定されていた場合,法的には自首が成立せず,自首の法的なメリットを受けることもできません。

万引き事件では,特にチェーン店等の規模の大きな店舗が現場である場合,防犯映像などの客観的証拠がしっかり確保されているケースも多いため,時間をかければ被疑者が特定できるということも少なくありません。そうすると,自首までにあまり時間をかけてしまった場合,自首が成立する時期を逃してしまう恐れがあり得ます。

自首を試みる場合には,自首が成立する機会を逃すことのないよう,できるだけ速やかに判断し実行するのが望ましいでしょう。

ポイント
被疑者特定後では自首が成立しない

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万引き事件で弁護士を選ぶタイミング

①逮捕されたとき

万引き事件での逮捕は,現行犯であることが非常に多いです。逮捕される事件では,現場で店員等に発覚し,警察に引き渡される流れが大多数でしょう。
一方,万引き事件は,類型的に重大犯罪との理解はされづらいため,逮捕されたとしてもその後に早期釈放が期待できる場合も少なくありません。早ければ,逮捕の翌日や翌々日に釈放となり,社会生活に復帰できる可能性もあり得るところです。そうなれば,逮捕による生活への影響は最小限に抑えることができるでしょう。

そのため,万引き事件で逮捕されたときは,早期釈放を目指すために弁護士を選ぶべき重要なタイミングということができます。適切な弁護士選びをし,弁護士に十分な弁護活動を尽くしてもらうことで,早期釈放の可能性はより高くなるでしょう。

また,逮捕やその後の早期釈放は,あくまで捜査の初期段階に過ぎないため,最終的な処分を軽減するための対応も必要不可欠です。この点,逮捕などの早い段階で弁護士に依頼し,適切な方針を立てることができれば,最終的な刑事処分にとっても有益な効果が期待できるでしょう。不起訴処分を目指す対応は,逮捕段階から始まっていると言っても過言ではありません。

ポイント
万引き事件は逮捕後に早期釈放の可能性がある
逮捕段階から不起訴を目指す対応の開始をするべき

②呼び出しを受けたとき

万引き事件では,後日になって被疑者が特定でき,警察が被疑者を呼び出す流れも非常に多く見られます。警察の呼び出しを受けた場合は,警察署での取り調べが行われることを想定するのが適切です。
もっとも,取調べでどのような対応をするべきか,何が聞かれ,何を回答すべきかという点は,万引き事件の取り扱いに精通していないと判断は困難です。対応時の注意点なども,個別の事件によって異なる可能性があるため,一概には指摘できないところがあります。

この点,万引き事件の弁護活動に適した弁護士を選ぶことができれば,呼び出しに対する適切な対応や供述の方針などを事前に確認することが可能です。事前に適切な方針を立てることができれば,呼び出しへの対応は格段に容易なものになるでしょう。

ポイント
万引き事件は,後日に被疑者を特定して呼び出すケースも多い
呼び出された場合には取調べ対応の準備が重要

③自首をしたいとき

万引き事件では,被害者であるお店側が損害の内容を特定できていなかったり,そもそも被害の事実を把握していなかったりと,具体的な刑事事件の捜査に至るまでに時間のかかるケースが少なくありません。万引き事件の捜査は,お店側が警察に被害申告することで開始する場合がほとんどであるため,お店側が十分に事件を把握するまでは捜査が開始しない,という流れになりやすいのです。

そのため,万引き事件は,捜査が開始される前に自ら警察に出頭(自首)することが可能になりやすい事件類型であると言えます。自首が成立する場合には,警察の取り扱いとして逮捕がされにくくなったり,最終的な刑事処分も不起訴処分などの軽微なものになりやすかったりと,有益な効果が期待できる場合も多いでしょう。

この点,自首を試みる場合には,弁護士選びの上,弁護士と一緒に適切な方法で行うことが望ましいでしょう。手続に精通した弁護士が主導して自首することで,自首のメリットがより大きくなる効果も期待できます。

ポイント
万引き事件は自首の時間的猶予が生じやすい
自首の試みは,手続に精通した弁護士に主導してもらうのが適切

④裁判を控えているとき

万引き事件で起訴され,公開の裁判(公判)を控える状況になった場合には,適切な弁護士選びが非常に重要となります。
万引き事件で公判を控えるケースというのは,前科や余罪が多数あったり,事件の内容や規模が悪質と理解されるものであったりと,実刑判決などの重大な刑事罰が懸念される場合が少なくありません。軽微な処分で済むのであれば,公判を行う必要はないため,公判に至った場合には万全の対応をすべき必要が非常に大きいと考えるのが適切でしょう。

そのため,公判を控える状況にある場合には,公判対応に適した弁護士を選び,実刑判決などの重大な刑事処罰を避けるための十分な準備と対応を尽くすことを強くお勧めします。また,刑事弁護に長けた弁護士に依頼すれば,結果の具体的な見通しが分かり,処分軽減のためにすべきこともより明確にすることができるでしょう。

ポイント
万引き事件で公判を控えるケースは,重い処罰が懸念される
実刑判決を回避するため,万全の対応をするべき

万引き事件の弁護士を選ぶ基準

①弁護士の専門分野にズレがないか

万引き事件は,処分の見通しや有効な弁護活動に特徴のある事件類型であるため,弁護活動に際しては,特徴を踏まえた正しい見通しを持った上で適切な弁護活動を判断する必要があります。
例えば,万引き事件では被害者であるお店と示談を行うことは基本的に困難であるため,示談での解決を前提とした弁護活動を進めるわけにはいきません。一方で,示談ができないと不起訴にならない,というわけではなく,ケースによってはお店側の許しが得られなくても不起訴処分に至る可能性があり得ます。

もっとも,弁護士には個々に専門分野があり,専門外の分野には強みのないことが少なくありません。刑事事件,民事事件,家事事件といった事件分野,個人相手,法人相手といった客層などは,弁護士によって様々です。

そのため,弁護士選びに際しては,その弁護士の専門分野とずれていないか,という基準を重視されることをお勧めします。

ポイント
万引き事件の特徴を把握した上での弁護活動が重要

②具体的な見通しを持てるか

万引き事件は,事件の具体的な内容や規模,余罪の数や前科の有無などによって,処分の見通しが様々に枝分かれします。そのため,正確な見通しを持つことは難しい場合もあり,弁護士によって見通しが異なるケースも少なくありません。

弁護活動は,漫然としていればどのような処分が見込まれるか,という見通しを前提に,希望する処分を獲得することは可能か,可能であればそのためには何をすることが必要か,という点を具体的に判断した上で進める必要があります。裏を返せば,見通しや活動内容が具体的でないと,適切な弁護活動は困難と言わざるを得ません。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士が処分の見通しをどれだけ具体的に示してくれるか,弁護活動が奏功した場合とそうでなかった場合にそれぞれ予想される結果を詳細に教えてくれるか,という点を判断基準の一つとすることが有益です。見通しが具体的であることは,弁護士に依頼するときの安心感にもつながるものであり,その点でも重要なポイントであると言えるでしょう。

ポイント
万引き事件の処分の見通しは,弁護士によって異なる可能性がある

③弁護方針の説明が説得的か

個別の事件で,弁護活動の方針や具体的な弁護活動の内容を決めるのは,弁護士側であることが通常です。依頼者側は,基本的に弁護士の決めた方針に沿って対応することになるでしょう。
もっとも,「この方針でよいのか」「こんなことをすべきではないか」といった疑問を持ったままでは,適切な信頼関係の上で弁護士との動きを進めていくことは困難になってしまいます。
特に,万引き事件の場合には,現実的に可能な弁護活動に限りがあるケースも多いため,弁護士の弁護方針に不足がないか,不安を感じる場合もあり得るでしょう。

そのため,弁護士選びに際しては,その弁護方針を信頼することができるか,十分に検討することをお勧めします。具体的には,なぜその方針を取るのか,その根拠は何か,といった点について,説得的に説明してくれることを重要な基準とするのが一案でしょう。

ポイント
弁護士の方針に疑問を持ったまま依頼しない

④弁護士費用は明確か

万引き事件は,お店の損害額は大きくないことが多いものの,弁護士に依頼した場合の経済的負担がそれに応じて小さくなるわけではありません。そのため,事件の規模に比べて弁護士費用が大きく感じられる場合もあり得るところです。
また,弁護士費用の設定は法律事務所によって様々であり,どのような条件でいくらの費用が発生するのか,という点は千差万別です。そのため,弁護士費用に関する合意が不十分なまま依頼してしまうと,後から想定していなかった弁護士費用の負担が生じる恐れもあります。

弁護士選びに際しては,確実に発生する弁護士費用の金額はもちろん,成功報酬など条件によって発生し得る費用についても,その内容が明確であるかどうかを十分に確認することをお勧めします。特に,一見すると安価そうに見える場合には,他に細かく条件が設定されているケースが多いため,端的に「今回必要となり得る費用はいくらか」と聞いてしまってもよいかもしれません。

ポイント
弁護士費用の設定は事務所により様々
一見安価な場合ほど,追加費用の条件に注意

万引き事件で弁護士を選ぶ必要

①早期釈放のため

万引き事件の場合,逮捕後の早期釈放を目指すべきケースが非常に多い傾向にあります。逮捕直後から適切な対応を尽くした場合とそうでない場合とでは,釈放されるタイミングに大きな差が生じることも珍しくありません。早期釈放の可能性があり得るからこそ,早期釈放に向けた動きは十分に取るべきです。

具体的には,やはり弁護士に依頼し,法的手続に沿って釈放に向けた弁護活動を尽くしてもらうことが最も有益です。弁護士であれば,被疑者本人と十分にコミュニケーションを取ることができる上,検察官や裁判官に対して適切な情報提供や申立てを行いながら,早期釈放のために可能な手段を尽くすことが可能です。

②処分軽減のため

万引き事件は,内容次第では不起訴処分が十分に目指せる事件類型です。不起訴処分となれば,前科が付かずに手続が終了し,事件の悪影響は最小限に抑えられるでしょう。

もっとも,処分の軽減を目指すための具体的な行動は,自分で判断して行うことが困難なものと言わざるを得ません。何をするべきか,という選択が困難であるのみならず,そもそも弁護士を間に挟まなければできないことも少なくないためです。

そのため,万引き事件で処分の軽減を目指す動きを尽くし,不起訴処分の獲得を希望したい場合には,対応に適した弁護士を選ぶ必要があるでしょう。

③前科前歴がある場合の対処のため

万引き事件の場合,1回だけ行った,というケースが非常に少なく,前科前歴のある場合も多く見られます。一般的に,同種の事件を繰り返してしまうと,繰り返すごとに刑事処分は重くなっていくことになります。
そのため,前科前歴がある場合には,それだけ重い刑事処分が科せられる可能性を考慮する必要がある,ということになるでしょう。

前科前歴があり,より十分な対応を尽くさないと重い刑罰が懸念されるという場合には,弁護士に依頼をして適切な弁護活動を行ってもらう必要が大きいと言えます。結果が出た段階で後悔することを防ぐため,事前に弁護士選びを行うべきでしょう。

④更生や治療を図るため

万引き事件の加害者となってしまう原因には,病的なものが影響しているケースもあります。「クレプトマニア」(窃盗症)と呼ばれるものが代表例です。
事件の原因が病的なものである場合,刑事処分の軽減を目指すと同時に再発防止のための医学的なアプローチが必要となります。通院治療などを通じて,万引き行為への病気の影響を防げなければ,事件の十分な解決とは言えません。

自分の万引き事件が病的な原因で起きていると考える場合には,弁護士に依頼し,原因の解決についても相談を試みることが有益です。また,実際に通院治療などを行い,これを弁護士に主張などしてもらうことで,治療の努力をしたことが刑事処分の軽減につながる効果も期待できます。

万引き事件における弁護士選びの準備

①包み隠さず説明する準備

弁護士選びのためには,弁護士に十分な情報を提供することが必要です。弁護士の案内が不十分だと感じた場合,その原因が情報不足だと,適切な弁護士選びのチャンスを逃す結果にもつながりかねません。

万引き事件の場合,対象となった商品の内容はもちろん,余罪や前科前歴など,自分にとって不利益で言いづらいことも,包み隠さず弁護士に説明できるように準備することをお勧めします。言いづらく隠しておきたくなることほど,弁護士にとって重要な情報であることが少なくありません。

②弁護士に求めたい要望の整理

弁護士選びに際しては,弁護士に何を実現してほしいのか,という要望を整理し,弁護士に伝えられるよう備えておくことをお勧めします。

万引き事件の場合,釈放を求めたい,不起訴を獲得したい,示談をしたい,自首をしたい,周囲に発覚したくないなど,要望のメインになり得る点は多数あります。もっとも,ケースによってはそのどれかは実現不可能であったり,弁護士の見通し次第で案内の内容が変わってきたりと,事前に聞いておかなければトラブルの原因になるものもあります。例えば,不起訴を希望したいと思って依頼したものの,弁護士側は不起訴が不可能だという前提で考えていると,そのミスマッチは致命的です。

弁護士への依頼には一定の費用が発生するため,相応の成果を求めたいというのは自然な発想です。弁護士選びが無駄にならないよう,要望は何かを明確に整理し,弁護士への依頼によって実現可能かどうかを十分に確認するようにしましょう。

③予算の決定

万引き事件は,高額の商品を対象とするケースが少ないため,事件規模は金額にするとそれほど大きくないことが通常です。もっとも,その事件に対応するための弁護士費用は,着手金のみでも数十万円という規模になることが一般的です。
そのため,特に経済的に余裕がない場合には,あらかじめ予算を決定し,その範囲内での弁護士探しを行うことをお勧めします。

弁護士費用は,活動の結果によっても左右されるため,着手金だけでギリギリ,とならないよう,可能な限り余裕を持った検討が望ましいところです。また,事前に予算を明確にしている場合には,その予算の範囲内でできる活動内容を弁護士側から案内してもらえる可能性もあるでしょう。

万引き事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①弁護士との相性

依頼者も弁護士も人である以上,相性の問題を避けて通ることはできません。依頼者目線では,相性が良くないと感じながら弁護士に依頼するメリットはないと考えるべきでしょう。

この点は,最善の解決に至ればそれほど大きな問題にはなりません。しかしながら,弁護活動は事前に最善の結果になるとお約束することが不可能であり,どうしても結果が伴わない場合があります。特に,万引き事件ではお店側と示談をしたり,お店から許してもらったりすることが現実的に難しいため,希望する最善の解決は困難な方が多いでしょう。

そして,弁護士との相性を軽視することは,最善の結果でなかった場合に大きな問題となります。弁護士が最善の活動をしてくれたのか,結果はやむを得ないものだったのか,という点について疑念が生じやすくなるためです。
弁護士との相性が良く,弁護士の活動を心底信頼できれば,心から「やむを得なかった」と納得しやすいですが,相性が悪いと感じている場合にはそうもいかないことが多くなりがちです。

弁護士との相性を率直にどう感じるか,という点は,弁護士選びに際して軽視しないことが適切でしょう。

②本人が動くこと

万引き事件の場合,お店側への謝罪や賠償といった試みを基本的に行うべきです。そのため,当事者本人が,自分の意思でお店への謝罪や賠償を尽くしたい,と考えていることが必要になります。
ご家族が主導して弁護士選びを進めるケースも少なくないかと思いますが,その場合には「最終的には本人が動くことが必要」という点に十分留意することをお勧めします。

なお,本人が身柄拘束を受けているなど,本人が動けない場合には,近親者による弁護士選びとなっても問題はありません。その場合は,弁護士が接見を行って直接本人の意思を確認しながら,弁護活動を進めていくことが可能です。

③弁護士相談の時間的制限

弁護士への法律相談は,30分以内,又は1時間以内といった形で時間を区切って行われるのが通常です。その時間内で,必要な情報を伝え,弁護士から案内を受け,弁護士選びの検討を行う必要があります。
もっとも,その時間は決して長くはありません。無意識に相談時間を浪費してしまうと,肝心の弁護士選びに必要な話が聞けないまま相談が終了してしまう可能性もあるでしょう。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士への法律相談に時間的な制限があることを踏まえ,弁護士選びの基準や聞きたいことなどを可能な限り整理して法律相談に臨むことをお勧めします。そのようなスタンスは,法律相談をより有益な内容とする結果にもつながるでしょう。

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【侵入窃盗事件の示談を知りたい人のために】侵入窃盗で示談をすることの重要性や示談方法,具体的な示談金額・内容など弁護士が解説

このページでは,侵入窃盗事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。

【このページで分かること】

侵入窃盗事件で示談は必要か
侵入窃盗事件における示談のメリット
侵入窃盗事件で示談をする方法
侵入窃盗事件の示談金相場
侵入窃盗事件の示談内容・条項
侵入窃盗事件の示談で注意すべきこと
侵入窃盗事件の示談に必要な費用

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侵入窃盗事件で示談は必要か

侵入窃盗事件の場合,身に覚えのない事件であるケースを除いて示談は必要と考えるべきでしょう。

前提として,侵入窃盗事件には以下の類型があります。

住居への侵入(住宅対象侵入窃盗)

①空き巣居住者がいないところに侵入し,窃盗する
②居空き(いあき)居住者がいるところに侵入し,窃盗する
③忍び込み居住者の就寝中に侵入し,窃盗する
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住居以外への侵入

①出店荒らし営業時間外の店舗に侵入し,窃盗する
②事務所荒らしビルなどのオフィスに侵入し,窃盗する

これらの侵入窃盗行為は,被害者に生じる損害が大きく,被害者を保護する必要が非常に大きいため,加害者側の取り扱いも重いものになりやすいです。捜査の対象になれば逮捕勾留が見込まれやすく,犯罪が立証されれば起訴されやすく,事件の程度によっては初犯で実刑判決を受け,刑務所に入ることを強いられる場合もあり得るところです。

このように,侵入窃盗事件の場合には捜査や処罰の対象になった場合の不利益が非常に大きいため,その不利益を軽減させる試みがとても重要になります。そして,加害者側の不利益を最も大きく軽減させるものが,示談です

示談が成立するかしないかによって,刑事手続における取り扱いが決定的に変わることも決して珍しくはありません。侵入窃盗事件で処分の軽減を目指す場合は,まず示談を検討することが適切でしょう。

ポイント
侵入窃盗事件は,逮捕や起訴などの面で重い取り扱いになりやすい
示談ができれば取り扱いが決定的に軽減することも珍しくない

侵入窃盗事件における示談のメリット

①逮捕の回避

侵入窃盗事件は,被疑者(加害者)を逮捕した上で捜査を行うことが非常に多い類型です。捜査機関が犯罪捜査を行う場合には,被疑者を逮捕して行う身柄事件と逮捕せずに行う在宅事件がありますが,重大事件であり逮捕の必要性が高い場合には,身柄事件として扱われる傾向にあります。侵入窃盗事件は,類型的に逮捕の必要性が高いと理解されているわけです。

この点,逮捕前に被害者との示談を成立させることができれば,その後逮捕される可能性は非常に小さくなります。なぜなら,被疑者の逮捕は被害者保護を大きな目的の一つとして行うところ,示談成立後であれば被害者保護の必要はほとんどなくなるためです。
逮捕前に示談を成立させることは容易ではありませんが,逮捕前の示談は極めて利益が大きいため,可能性がある場合には最優先で試みるのが適切でしょう。

②早期釈放

逮捕勾留をされた侵入窃盗事件の場合,示談によって早期釈放を図ることのできるケースが少なくありません。
逮捕前に示談ができれば,その後に逮捕をする必要がほとんどなくなる,という点を紹介しましたが,これは逮捕後であっても大きな違いはありません。つまり,逮捕後に示談が成立した場合,その後に逮捕勾留といった身柄拘束を続ける必要はほとんどなくなる場合が非常に多く見られます。

そのため,侵入窃盗事件で身柄拘束を受けている場合には,少しでも早い示談の成立を目指すことで,少しでも身柄拘束の期間を縮め,早期釈放を実現させるのが理想的です。認め事件の場合には,速やかに示談の試みを進めるようにしましょう。

③不起訴の獲得

侵入窃盗事件は,被害者の自宅など,部外者が入ってはならない場所への侵入を伴うために,窃盗事件の中でも悪質な事件類型とされやすいです。そのため,侵入窃盗事件で犯罪の立証に必要な証拠が揃えば,基本的には起訴されるものと考える必要があります。
そして,起訴された場合は,無罪判決を獲得しない限りは刑罰を受けることになり,前科が付くことも避けられません。

この点,起訴前に被害者と示談ができた場合には,同一の事件であっても不起訴処分となる可能性が非常に高くなります。それは,ほかならぬ被害者が不起訴を希望することになるためです。

起訴前に示談を行う場合,加害者側が求める最大の条件が,被害者に不起訴を希望してもらうこととなります。侵入窃盗事件のように被害者の存在する事件類型では,その被害者が起訴を望むか不起訴を望むかによって,処分が非常に大きく変わってきます。侵入窃盗事件でも,被害者が不起訴を望むのであればその通りに不起訴とするのが一般的と言えます。
そして,被害者に不起訴を希望してもらうための唯一の方法が,示談です。示談の内容として被害者が不起訴を希望する旨を盛り込み,捜査機関に提出できれば,不起訴の獲得が極めて現実的になるでしょう。

④実刑判決の回避

侵入窃盗事件は,その重大性から初犯であっても実刑判決の対象となる可能性があります。刑事裁判の判決には,大きく分けて執行猶予判決と実刑判決がありますが,執行猶予判決は刑務所に入る必要がない一方,実刑判決は直ちに刑務所に入ることを強制されてしまいます。

判決の種類

執行猶予判決刑務所に入る必要がない
実刑判決直ちに刑務所に入る必要がある

したがって,実刑判決になることは非常に大きな不利益であり,何としてでも避ける必要があると言えます。

この点,示談が成立している侵入窃盗事件の場合,一般的には実刑判決の対象となる可能性が非常に低くなります。特に実刑判決とするべき事情がなければ,示談成立後に実刑判決となることは考え難いと言ってもよいでしょう。
侵入窃盗事件で示談を行う場合,損害を補填するための金銭の支払を行った上で,少なくとも当事者間では一定の解決をすることを内容とするため,当事者間で解決した事件について,重ねて実刑判決という重い刑罰を科す必要はあまりないと考えられるのです。

侵入窃盗事件で起訴が避けられない場合にも,実刑判決の回避を目指すために示談を試みることを強くお勧めいたします。

⑤民事事件の同時解決

侵入窃盗事件では,被害者に重大な精神的苦痛が生じるとともに,盗まれた財産の分だけ被害者に経済的な損害も生じます。そのため,被害者は,これらの損害を加害者に金銭で賠償するよう求める権利を持つことになります。
当事者間の権利義務に関する問題を「民事事件」と言いますが,侵入窃盗事件は被害者と加害者の間における民事事件の側面も持つというわけです。仮に示談をしなかった場合,刑罰を受けてもそれで全て終わりではなく,今度は被害者から民事事件として金銭賠償を求められる可能性も十分に考えられます。

この点,示談が成立する場合,示談の中で民事事件の解決も行うことが通常です。具体的には「示談で定めるほかには互いに権利義務がない」ということを合意することになります。
このような合意をすれば,示談の内容以外には請求することもされることもないため,民事事件についても同時に解決でき,当事者間の関係を適切な形で終えることが可能になります。

侵入窃盗事件で示談をする方法

侵入窃盗事件で示談を試みる場合,基本的には捜査を受けている状態であるため,捜査を担当する警察や検察を通じて行うことが適切です。もっとも,警察や検察は,当事者間での直接のやり取りを許すわけにはいかないため,自ら行うのではなく,弁護士に依頼し弁護士を通じて行うことが必要です。

弁護士に依頼をした場合,弁護士が警察や検察に示談の希望を伝え,捜査担当者から被害者に連絡を入れてもらうことが一般的です。その後,被害者側から示談交渉が可能であるとの返答が得られれば,弁護士限りで被害者の連絡先が伝えられ,弁護士と被害者との連絡が始まることになります。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

侵入窃盗事件では,被害者が加害者側との直接のやり取りを希望している可能性がほとんどないため,どれだけ示談を希望する気持ちが強くても直接話をしようとすることは控えましょう。謝罪の意思を伝えるつもりであったとしても,その気持ちが正しく理解してもらえず,かえって逆効果になる可能性が非常に高く見込まれます。
正しいステップを踏むことで,謝罪や支払の意思を適切に伝えることが重要です。

ポイント
示談交渉は,弁護士が捜査機関に申し入れる方法で行う
被害者側への直接の交渉は控える

侵入窃盗事件の示談金相場

侵入窃盗事件の示談金は,ケースによって非常に大きな開きがあります。ただ,基本的な考え方としては,「侵入行為の精神的苦痛に対する支払」と「窃盗行為による財産的損害への支払」を合計したものということができるでしょう。

侵入窃盗事件の示談金

侵入行為の精神的苦痛に対する支払」

窃盗行為の財産的損害に対する支払」

この点,侵入行為の精神的苦痛を金銭換算する際の判断要素としては,以下の事情が挙げられます。

示談金の判断要素

1.侵入行為の回数
→多いほど示談金の増額要素となる

2.侵入した場所
→プライバシーの侵害が大きい場所であるほど増額要素となる

3.侵入方法
→悪質な方法であるほど増額要素となる

4.当事者間の関係
→被害者の信頼を裏切る侵入は増額要素となる

実際の示談交渉では,これらの要素を踏まえながら当事者間で協議を試みることになります。一般的には,増額要素に当たるものがない場合,侵入行為に対する支払額は20~30万円ほどが目安になりやすいところです。盗まれた財産が高額なものでなければ,30万円ほどを示談金とする例は少なくないでしょう。

ただし,増額すべき要素がある場合にはこれを大きく超える金額を要する可能性もある点には注意が必要でしょう。最も多く見られるのは,侵入行為が複数回に渡る場合です。
侵入窃盗事件は,その性質上,同じ場所に複数回侵入を繰り返すケースが少なくありません。当然ながら,頻繁に侵入されている場合の方が被害者の苦痛は大きくなり,示談に必要な金銭も多くなるのが通常です。
多数回の侵入があった事件では,概ね100~300万円といった高額の示談金とならざるを得ないことも考えられます。具体的な示談金額に関しては,個別の事情を踏まえて弁護士と十分に協議することをお勧めします。

ポイント
単純な事件であれば20~30万円ほどが目安か
複数回に渡る侵入行為があると金額が跳ね上がることも

侵入窃盗事件の示談内容・条項

①一般的な示談条項

【確認条項】

加害者の被害者に対する支払金額を確認する条項です。

【給付条項】

確認条項に記載した金銭の支払をどのように行うのかを定める条項です。

【清算条項】

示談で定めた条項以外には,当事者間に権利義務の関係がないことを定める条項です。清算条項があることによって,民事事件との同時解決が可能になります。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)条項とは,被害者が加害者を許す,という意味の条項です。
示談が刑事処分に有利な影響を及ぼすのは,基本的にこの宥恕条項があるためです。被害者が加害者を許している,という事実が,刑事処分を劇的に軽減させる要素となります。

②侵入窃盗事件で特に定めやすい条項

【接触禁止】

加害者が被害者への接触を試みない,という内容を定める条項です。特に,加害者が被害者への性的な興味関心から事件を起こした場合に定めることが多く見られます。

【立入禁止】

加害者に対して,一定の場所への立入を禁止する条項です。侵入窃盗事件の場合,侵入場所や近辺への立入禁止を被害者が希望するケースが非常に多く見られます。この点は,被害者の求めに応じて可能な限り応じるのが適切でしょう。

侵入窃盗事件の示談で注意すべきこと

①事件が複数の場合が少なくない

侵入窃盗事件は,複数回行われているケースが少なくありません。この場合,回数を重ねるごとに行動や内容がエスカレートしていることも多く見られます。
事件が複数あることは,侵入窃盗事件の示談に大きな影響を及ぼします。具体的には,以下のような影響が挙げられるでしょう。

事件複数の場合の影響

【同一の被害者に対する複数の事件】

同じ被害者に対して複数の侵入窃盗事件がある場合,示談金がより高額にならざるを得ない可能性に注意が必要です。回数が多く,内容もエスカレートしていると,それだけ被害者の損害や苦痛は大きくなるため,被害者の損害を埋め合わせるための示談金も大きくなることが通常です。

【複数の被害者に対する事件】

事件が複数であり,かつ被害者も複数の場合,一人の被害者と示談ができても,全体が不起訴になるわけではない,という点に注意が必要です。一人の被害者が不起訴を希望したとしても,それはほかの被害者の事件には関係しないためです。

全体が不起訴となるには,処分される事件のすべてについて示談を行うことが必要になるでしょう。

②転居の問題が生じ得る

特に住宅への侵入窃盗事件の場合,被害者側が転居を希望し,転居費用を含めた示談金を請求する,ということも珍しくありません。そのため,示談を試みる場合には転居の話が生じ得る点に注意が必要でしょう。

この点は金銭の問題となるため,転居費用名目の金銭を上乗せするかどうか,という判断になりますが,基本的には被害者の希望に応じていくらかの上乗せをする方針が適切でしょう。これは,上乗せに応じないという対応では示談の成立が困難となりやすいためです。
裏を返せば,金額面の調整で示談の可能性がある,ということでもあるため,被害者側に示談交渉を拒絶される場合よりもはるかに望ましい状況と考えてもよいかもしれません。

③逮捕前の示談は容易でない

逮捕前に示談が成立すれば,侵入窃盗事件でも逮捕の可能性が非常に大きく低下しますが,現実に逮捕前の示談を行うことは容易ではありません。これは,自分に対する捜査がなされたことを知るのが逮捕のタイミングであるためです。「自分の事件が捜査されているから示談したい」では遅いのですね。

そのため,逮捕前の示談を試みる場合には,自分に対する捜査が行われているか分からない段階で自分からアクションを起こす必要があります。具体的には,警察などに自首(出頭)し,自分の犯罪行為を積極的に伝え,その上で示談を希望することを要するでしょう。

ただ,自分から出頭することは大きなリスクも付きまとう行為であるため,検討する場合には刑事事件に精通した弁護士へのご相談を強くお勧めします。

ポイント 注意点
複数事件の場合には配慮が必要
転居費用の支払が問題になり得る
逮捕前の示談は自首を要しやすい

侵入窃盗事件の示談に必要な費用

藤垣法律事務所で侵入窃盗事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。
(身柄事件の場合)

①活動開始時

基本着手金33万円
着手金(身柄対応)22万円
実費相当額1万円
合計56万円

身柄事件では,56万円のお預かりにて活動の開始が可能です。

②弁護活動の成果発生時

不起訴処分33万円
示談成立22万円(※)
出張日当・実費実額
※金銭賠償で5.5万円,清算条項締結で5.5万円,宥恕の獲得で11万円

活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。

③示談金

侵入窃盗事件の場合,30万円前後の示談金が一例として想定されます。

④合計額

上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。

目安となる費用総額(身柄事件にて30万円で示談成立+不起訴の場合)

弁護士費用:56万円+55万円=111万円(※)
示談金:30万円

計:141万円

※身柄事件では,接見を要する場合の出張日当が別途発生し得ます。

弁護士費用の例

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

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