【後遺障害3級】該当する症状の程度から請求可能な金額まで一挙解説

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害3級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害3級の認定基準

3級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの
2号咀嚼又は言語の機能を廃したもの
3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5号両手の手指の全部を失つたもの

【1号】一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

また,後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【2号】咀嚼又は言語の機能を廃したもの

そしゃく機能と言語機能のどちらかを「廃した」と評価される場合が該当します。

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

そしゃく状況報告表

「そしゃく機能を廃したもの」
=流動食以外は摂取できないもの

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

「言語の機能を廃したもの」
=4種の語音(口唇音,歯舌音,口蓋音,喉頭音)のうち,3種以上の発音不能のもの

【3号】神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

生命維持に欠かせない身の回りの処理はできるものの,労務はできない場合を指します。

神経系統の機能や精神への障害の代表例としては,脳の器質的損傷に伴う高次脳機能障害,脳挫傷や脊髄損傷などによる身体性機能障害などが挙げられます。
具体的な認定基準は,障害の具体的な内容によって個別に定められています。

【1.高次脳機能障害】

脳機能の4能力について,

①いずれか1つ以上能力が全部失われている
②いずれか2つ以上の能力の大部分が失われている

ことを要します。

高次脳機能障害の4能力

①意思疎通能力
→職場などで他人と適切にコミュニケーションできるか

②問題解決能力
→作業課題の指示や要求水準を正しく理解し,適切に判断して円滑に業務遂行できるか

③作業負荷に対する持続力・持久力
→一般的な就労時間に耐えられるか

④社会行動能力
→職場で他人と円滑な共同作業ができるか,社会的行動ができるか

なお,1か月に2回以上発作のある外傷性てんかんは,高度の高次脳機能障害を伴っていることが通常であるため,3級以上の高次脳機能障害の等級の中で評価されます。

【2.身体性機能障害】

中等度の四肢麻痺が認められるもの
(四肢麻痺:四肢すべての麻痺)

食事・入浴・用便・更衣等について常時又は随時介護を必要とするものは除く

中等度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,その基本動作にかなりの制限があるもの
(例)
・概ね500グラムのものを持ち上げられない
・文字を書くことができない
・障害のある片足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない
・杖や硬性装具なしには歩行が困難

【3.脊髄損傷】

脊髄の症状に伴い,以下のいずれかの状態にある場合

a.軽度の四肢麻痺が認められるもの
(食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を必要とするものは除く)
b.中等度の対麻痺が認められるもの
(食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を必要とするものは除く)

(対麻痺:両上肢又は両下肢の麻痺)

【4.失調・めまい・平衡機能障害】

生命維持に必要な身の回りの処理の動作は可能であるが,高度の失調又は平衡機能障害のため,労務に服することができないもの

【4号】胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

「胸腹部臓器の機能障害」と呼ばれるものです。胸腹部の臓器に障害が残った結果,生命維持に欠かせない身の回りの処理はできるものの,労務はできない場合に,3級4号の認定対象となります。

具体的な認定基準は,臓器ごとに定められていますが,3級の対象として定められているのは呼吸器の障害のみです。
呼吸器に関する3級4号の認定基準は,以下の通りです。

呼吸器

a.動脈酸素分圧50Torr以下のもの
(呼吸器機能の低下により常時又は随時介護が必要なものを除く)

b.動脈酸素分圧50Torr~60Torrで,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外(37Torr~43Torrの間にない)の場合
(呼吸器機能の低下により常時又は随時介護が必要なものを除く)

c.スパイロメトリーの結果が%1秒量35以下又は%肺活量40以下で,高度の呼吸困難がある場合
(呼吸器機能の低下により常時又は随時介護が必要なものを除く)

呼吸困難の程度に関する判断基準

高度呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中等度呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同じように歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行ができるもの
軽度呼吸困難のため、健常者と同じようには階段の昇降ができないもの

【5号】両手の手指の全部を失つたもの

「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。

1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害3級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害3級の場合,自賠責保険からは861万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は1990万円となります。

後遺障害3級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害3級の場合は,労働能力喪失率が100%となります。

計算例
年収500万円,40歳,3級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×1.0×18.3270(27年ライプニッツ)
91,635,000円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【後遺障害4級】主な症状や賠償金の相場などを弁護士が詳細解説

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害4級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害4級の認定基準

4級の認定基準一覧

1号両眼の視力が0.06以下になつたもの
2号咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3号両耳の聴力を全く失つたもの
4号一上肢をひじ関節以上で失つたもの
5号一下肢をひざ関節以上で失つたもの
6号両手の手指の全部の用を廃したもの
7号両足をリスフラン関節以上で失つたもの

【1号】両眼の視力が0.06以下になつたもの

後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。
両目について矯正視力が0.06以下になった場合,等級認定の対象になります。

【2号】咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの

そしゃく機能と言語機能の両方に「著しい障害」を残す場合が該当します。

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

そしゃく状況報告表

「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」
=粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

「言語の機能に著しい障害を残すもの」
=4種の語音のうち,2種の発音不能のもの又は綴音機能(語音を一定の順序に連結すること)に障害があるため,言語のみを用いては意思を疎通することができないもの

【3号】両耳の聴力を全く失つたもの

具体的な認定基準は以下の通りです。

①両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの

【一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係】

一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係

【両耳聴力と最高明瞭度の関係】

両耳聴力と最高明瞭度の関係

【4号】一上肢をひじ関節以上で失つたもの

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.肩関節において、肩甲骨と上腕骨とを離断したもの
2.肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
3.ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【5号】一下肢をひざ関節以上で失つたもの

「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.股関節おいて、寛骨と大腿骨とを離断したもの
2.股関節とひざ関節との間において切断したもの
3.ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【6号】両手の手指の全部の用を廃したもの

「手指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.中手指節関節又は近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が1/2以下に制限されるもの
3.親指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が1/2以下に制限されるもの
4.手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚完全に脱失したもの

(「障害認定必携」より引用)

【7号】両足をリスフラン関節以上で失つたもの

「リスフラン関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.足根骨(腓骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨)において切断したもの
2.リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離団したもの

(「障害認定必携」より引用 再掲)

後遺障害4級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害4級の場合,自賠責保険からは737万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は1670万円となります。

後遺障害4級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害4級の場合は,労働能力喪失率が92%となります。

計算例
年収500万円,40歳,4級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.92×18.3270(27年ライプニッツ)
84,304,200円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【後遺障害5級】認定される類型や内容は?慰謝料などの金額は?

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害5級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害5級の認定基準

5級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの
2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4号一上肢を手関節以上で失つたもの
5号一下肢を足関節以上で失つたもの
6号一上肢の用を全廃したもの
7号一下肢の用を全廃したもの
8号両足の足指の全部を失つたもの

【1号】一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

また,後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【2号】神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

労務に服することはできるものの,脳や神経に対する重大な障害により,ごく軽い業務しか行えない場合を指します。

神経系統の機能や精神への障害の代表例としては,脳の器質的損傷に伴う高次脳機能障害,脳挫傷や脊髄損傷などによる身体性機能障害などが挙げられます。
具体的な認定基準は,障害の具体的な内容によって個別に定められています。

【1.高次脳機能障害】

脳機能の4能力について,

①いずれか1つの能力の大部分が失われている
②いずれか2つ以上の能力の半分程度が失われている

ことを要します。

高次脳機能障害の4能力

①意思疎通能力
→職場などで他人と適切にコミュニケーションできるか

②問題解決能力
→作業課題の指示や要求水準を正しく理解し,適切に判断して円滑に業務遂行できるか

③作業負荷に対する持続力・持久力
→一般的な就労時間に耐えられるか

④社会行動能力
→職場で他人と円滑な共同作業ができるか,社会的行動ができるか

【2.身体性機能障害】

軽度の四肢麻痺が認められるもの
中等度の片麻痺が認められるもの
高度の単麻痺が認められるもの

(四肢麻痺:四肢すべての麻痺)
(片麻痺:左右どちらか半身の麻痺)
(単麻痺:片手又は片足のみの麻痺)

軽度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われ,その基本動作における巧緻性や速度が相当程度損なわれているもの
(例)
・文字を書くことに困難が伴う
・概ね独歩だが,不安定で転倒しやすく,速度も遅い
・障害のある両足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない

中等度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,その基本動作にかなりの制限があるもの
(例)
・概ね500グラムのものを持ち上げられない
・文字を書くことができない
・障害のある片足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない
・杖や硬性装具なしには歩行が困難

高度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ基本動作(物を持ち上げて動かす・立つ・歩行するなど)ができないもの
(例)
・完全強直又はこれに近い状態(動かない)
・上肢の三大関節(肩・肘・手)及び5つの手指すべてが自分では動かせない
・下肢の三大関節(股・膝・足)すべてが自分では動かせない
・障害を残した片腕ではものを持ち上げて移動させることができない
・障害を残した片足では,支える力や思うように動かす力がほとんどない

【3.脊髄損傷】

脊髄の症状に伴い,以下のいずれかの状態にある場合

a.軽度の対麻痺が認められるもの
b.1下肢の高度の単麻痺が認められるもの

(対麻痺:両上肢又は両下肢の麻痺)

【4.外傷性てんかん】

1ヶ月に1回以上の発作があり、かつその発作が転倒する発作等(※)であるもの
※転倒する発作:①意識障害の有無を問わず転倒する発作,又は②意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作

【5.失調・めまい・平衡機能障害】

著しい失調又は平衡機能障害のために,労働能力が極めて低下し,一般平均人の1/4程度しか残されていないもの

【3号】胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

「胸腹部臓器の機能障害」と呼ばれるものです。胸腹部の臓器に障害が残った結果,労務自体はできるものの特に簡単な軽作業しかできない場合に,5級3号の認定対象となります。

具体的な認定基準は,臓器ごとに定められています。

1.呼吸器

動脈酸素分圧50Torr~60Torrで,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torr~43Torrの間)の場合

2.小腸の障害

a.人工肛門を造設したもののうち,小腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができないもの

b.小腸皮膚瘻を残すもののうち,瘻孔から小腸内容の全部または大部分が漏出し,小腸皮膚瘻周辺に著しいびらんが生じ、パウチなどの装着ができないもの(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)

3.大腸の障害

a.人工肛門を造設したもののうち,大腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができないもの

b.大腸皮膚瘻を残すもののうち,瘻孔から大腸内容の全部または大部分が漏出し,大腸皮膚瘻周辺に著しいびらんが生じ、パウチなどの装着ができないもの(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)

4.尿管,膀胱及び尿道の障害

非尿禁制型尿路変向術を行ったもので,尿が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ,パッド等の装着ができないもの

【4号】一上肢を手関節以上で失つたもの

「上肢を手関節以上失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.ひじ関節と手関節との間で切断したもの
2.手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【5号】一下肢を足関節以上で失つたもの

「下肢を足関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.ひざ関節と足関節との間で切断したもの
2.足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【6号】一上肢の用を全廃したもの

「上肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

三大関節(肩関節・肘関節・手関節)の全てが強直(※)している
かつ
手指の全部の用を廃している

※関節が可動性を失い,動かなくなった状態

【7号】一下肢の用を全廃したもの

「下肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

3大関節(股関節、ひざ関節、及び足関節)の全てが強直(※)した場合
(3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直した場合も含まれる)

※「強直」:関節が全く可動しない場合,又はこれに近い状態(※※)である場合
※※「これに近い状態」:自動の可動域が10%以下になった場合

【8号】両足の足指の全部を失つたもの

「足指を失ったもの」とは,足指を中足指節関節から失ったことを指します。つまり,足指をすべて失った場合を指すことになります。

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害5級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害5級の場合,自賠責保険からは618万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は1400万円となります。

後遺障害5級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害5級の場合は,労働能力喪失率が79%となります。

計算例
年収500万円,40歳,5級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.79×18.3270(27年ライプニッツ)
72,391,650円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【後遺障害6級】対象となる症状の類型や具体的基準,慰謝料額などを詳細解説

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害6級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害6級の認定基準

6級の認定基準一覧

1号両眼の視力が0.1以下になつたもの
2号咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3号両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
4号一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
5号脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6号一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7号一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8号一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの

【1号】両眼の視力が0.1以下になつたもの

後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。
両目について矯正視力が0.1以下になった場合,等級認定の対象になります。

【2号】咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの

そしゃく機能と言語機能のどちらかに「著しい障害」を残す場合が該当します。

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

そしゃく状況報告表

「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」
=粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

「言語の機能に著しい障害を残すもの」
=4種の語音のうち,2種の発音不能のもの又は綴音機能(語音を一定の順序に連結すること)に障害があるため,言語のみを用いては意思を疎通することができないもの

【3号】両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの

具体的な認定基準は以下の通りです。

①両耳の平均純音聴力レベル80dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの

【一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係】

一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係

【両耳聴力と最高明瞭度の関係】

両耳聴力と最高明瞭度の関係

【4号】一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの

具体的な認定基準は以下の通りです。

1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上

かつ

他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上

【5号】脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの

背骨が基準以上に変形してしまった場合や,首から腰にかけて動かなくなってしまった場合に該当します。

「脊柱に著しい変形を残すもの」とは

脊柱に著しい変形を残すもの(6級)
1.複数の椎体の圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体1個分以上低くなっている場合
2.圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体2分の1個分以上低くなっており、かつ、コブ法による側彎度が50度以上ある場合

「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは

脊柱に著しい運動障害を残すもの(6級)
次のいずれかにより頚部および胸腰部が強直したもの
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

【6号】一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

上肢の三大関節(肩・肘・手首)のうち二つの関節で用廃となった場合に認定対象となります。

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
上肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
肩関節①屈曲(前方拳上)180度
肩関節②外転(側方拳上)180度
肘関節屈曲・伸展(※)145度・5度(合計150度)
手関節屈曲(掌屈)・伸展(背屈)(※)90度・70度(合計160度)
※肘関節と手関節は,「屈曲+伸展」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

肩関節の運動

肘関節の運動

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
肩関節①伸展(後方拳上)50度
肩関節②外旋・内旋60度・80度(合計140度)
手関節①橈屈25度
手関節②尺屈55度
橈屈と尺屈

【7号】一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

下肢の三大関節(股・膝・足首)のうち二つの関節で用廃となった場合に認定対象となります。

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
下肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
股関節①屈曲・伸展125度・15度(合計140度)
股関節②外転・内転145度・20度(合計65度)
ひざ関節屈曲・伸展130度・0度(合計130度)
足関節屈曲(底屈)・伸展(背屈)45度・20度(合計65度)
「屈曲+伸展」「外転+内転」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

股関節の主要運動

足関節の主要運動

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
股関節外旋・内旋45度・45度(合計90度)

【8号】一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの

「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。

1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害6級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害6級の場合,自賠責保険からは512万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は1180万円となります。

後遺障害6級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害6級の場合は,労働能力喪失率が67%となります。

計算例
年収500万円,40歳,6級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.67×18.3270(27年ライプニッツ)
61,395,450円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【後遺障害7級】等級認定基準の具体的な内容を詳細に解説

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害7級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害7級の認定基準

7級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になつたもの
2号両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
3号一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5号胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6号一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
7号一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
8号一足をリスフラン関節以上で失つたもの
9号一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11号両足の足指の全部の用を廃したもの
12号外貌に著しい醜状を残すもの
13号両側の睾丸を失つたもの

【1号】一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になつたもの

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

また,後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【2号】両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの

具体的な認定基準は以下の通りです。

①両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの

【一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係】

一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係

【両耳聴力と最高明瞭度の関係】

両耳聴力と最高明瞭度の関係

【3号】一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの

具体的な認定基準は以下の通りです。

1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上

かつ

他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上

【4号】神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

労務に服することはできるが,他の人と同様にはできず,簡単な労務しか行えない場合を指します。

神経系統の機能や精神への障害の代表例としては,脳の器質的損傷に伴う高次脳機能障害,脳挫傷や脊髄損傷などによる身体性機能障害などが挙げられます。
具体的な認定基準は,障害の具体的な内容によって個別に定められています。

【1.高次脳機能障害】

脳機能の4能力について,

①いずれか1つの能力の半分程度が失われている
②いずれか2つ以上の能力の相当程度が失われている

ことを要します。

高次脳機能障害の4能力

①意思疎通能力
→職場などで他人と適切にコミュニケーションできるか

②問題解決能力
→作業課題の指示や要求水準を正しく理解し,適切に判断して円滑に業務遂行できるか

③作業負荷に対する持続力・持久力
→一般的な就労時間に耐えられるか

④社会行動能力
→職場で他人と円滑な共同作業ができるか,社会的行動ができるか

【2.身体性機能障害】

軽度の片麻痺が認められるもの
中等度の単麻痺が認められるもの

(片麻痺:左右どちらか半身の麻痺)
(単麻痺:片手又は片足のみの麻痺)

軽度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われ,その基本動作における巧緻性や速度が相当程度損なわれているもの
(例)
・文字を書くことに困難が伴う
・概ね独歩だが,不安定で転倒しやすく,速度も遅い
・障害のある両足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない

中等度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,その基本動作にかなりの制限があるもの
(例)
・概ね500グラムのものを持ち上げられない
・文字を書くことができない
・障害のある片足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない
・杖や硬性装具なしには歩行が困難

【3.脊髄損傷】

脊髄の症状に伴い,1下肢に中等度の単麻痺が認められるもの

【4.外傷性てんかん】

転倒する発作等(※)が数ヶ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの
※転倒する発作:①意識障害の有無を問わず転倒する発作,又は②意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作

【5.失調・めまい・平衡機能障害】

中等度の失調又は平衡機能障害のために,労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの

【5号】胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

「胸腹部臓器の機能障害」と呼ばれるものです。胸腹部の臓器に障害が残った結果,労務自体はできるものの軽作業程度に限られる場合に,7級5号の認定対象となります。

具体的な認定基準は,臓器ごとに定められています。

1.呼吸器

a.動脈酸素分圧60Torr~70Torrで,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外(37Torr~43Torrの間にない)の場合
b.スパイロメトリーの結果が%1秒量35以下又は%肺活量40以下で,中等度の呼吸困難がある場合
c.スパイロメトリーの結果が%1秒量35~55又は%肺活量40~60で,高度または中等度の呼吸困難がある場合

呼吸困難の程度に関する判断基準

高度呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中等度呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同じように歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行ができるもの
軽度呼吸困難のため、健常者と同じようには階段の昇降ができないもの

2.循環器

除細動器を植え込んだもの

3.胃の障害

消化吸収障害、ダンピング症候群、胃切除術後逆流性食道炎のいずれもが認められるもの

「消化吸収障害」とは

以下のいずれかに該当するもの
1.胃の全部を亡失したこと
2.噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失し、低体重等(※)が認められること
(※)①BMI20以下又は②事故前からBMI20以下の場合は体重が10%以上減少

「ダンピング症候群」とは

以下のいずれにも該当するもの
1.胃の全部または幽門部を含む胃の一部を亡失した
2.早期ダンピング症候群に起因する症状(※)または晩期ダンピング症候群に起因する症状(※※)が認められること
(※)食後30分以内に出現するめまい,起立不能等
(※※)食後2時間後から3時間後に出現する全身脱力感,めまい等

「胃切除術後逆流性食道炎」とは

以下のいずれにも該当するもの
1.胃の全部又は噴門部を含む胃の一部を亡失したこと
2.胃切除術後逆流性食道炎に起因する自覚症状(胸焼け,胸痛,嚥下困難等)があること
3.内視鏡検査により食道にの胃切除術後逆流性食道炎に起因する所見(びらん,潰瘍等)が認められること

4.小腸の障害

a.人工肛門を造設したもの
(小腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができない場合を除く)

b.小腸皮膚瘻を残し,瘻孔から小腸内容の全部または大部分が漏出するもの
(パウチなどによる維持管理が困難である場合を除く)

c.小腸皮膚瘻を残し,瘻孔から漏出する小腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上で,パウチなどによる維持管理が困難であるもの
(パウチなどによる維持管理が困難でない場合は9級11号)

5.大腸の障害

a.人工肛門を造設したもの
(大腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができない場合を除く)

b.大腸皮膚瘻を残し,瘻孔から大腸内容の全部または大部分が漏出するもの
(パウチなどによる維持管理が困難である場合を除く)

c.大腸皮膚瘻を残し,瘻孔から漏出する大腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上で,パウチなどによる維持管理が困難であるもの
(パウチなどによる維持管理が困難でない場合は9級11号)

d.完全便失禁を残すもの
(完全便失禁: 肛門括約筋の機能が全部失われ,便の貯留機能が喪失した状態)

6.腎臓の障害

一側の腎臓を失い,GFR値が30ml/分を超え50ml/分以下のもの

GFR値
→腎臓が血液をろ過して尿を作った量の値

7.尿管,膀胱及び尿道の障害

a.非尿禁制型尿路変向術を行ったもの
(尿が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ,パッド等の装着ができないものを除く)

b.禁制型尿リザボアの術式を行ったもの

c.持続性尿失禁を残すもの

d.切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,終日パッド等を装着し,かつパッドをしばしば交換しなければならないもの
(パッドの交換までは要しない場合は9級11号)

【6号】一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの

「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。

1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【7号】一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの

「手指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.中手指節関節又は近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が1/2以下に制限されるもの
3.親指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が1/2以下に制限されるもの
4.手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚完全に脱失したもの

「5本の手指」又は「親指を含む4本の指」について用廃となった場合,8級4号の認定対象となります。

【8号】一足をリスフラン関節以上で失つたもの

「リスフラン関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.足根骨(腓骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨)において切断したもの
2.リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離団したもの

(「障害認定必携」より引用)

【9号】一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

偽関節とは,骨折した部位が変形癒合し,関節でない部分が曲がって関節のようになってしまった状態を指します。関節のようだが関節ではない,ニセの関節というべきものです。

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの
2.橈骨及び尺骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの

【10号】一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの
2.脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残し,常に硬性補装具を必要とするもの
3.脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残し,常に硬性補装具を必要とするもの

【11号】両足の足指の全部の用を廃したもの

「足指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.親指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.親指以外の足指について、中節骨又は基節骨で切断したもの
3.親指以外の足指について、遠位指節間関節又は近位指節間関節で離断したもの
4.親指の中足指節間関節又は指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
5.親指以外の足指の中足指節間関節又は近位指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの

(「障害認定必携」より引用)

【12号】外貌に著しい醜状を残すもの

醜状障害と呼ばれるものです。
醜状障害は,人の目につく人体の露出面に,目立つ傷跡が残った場合の後遺障害をいいます。醜状の具体的な内容としては,瘢痕や線状痕,組織の陥没,色素沈着による変色などが挙げられます。

7級12号は外貌の醜状障害に関するものですが,外貌とは,頭部・顔面部・頸部の各部位を指します。それぞれの部位について,認定基準は以下のとおり定められています。

7級12号「外貌に著しい醜状を残すもの」

部位基準
頭部手のひら大(指の部分を含まず)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
顔面部鶏卵大面以上の瘢痕、又は10円銅貨代以上の組織陥没
頚部手のひら大以上の瘢痕

なお,瘢痕の大きさや線状痕の長さを確認する際には,以下の点に注意を要します。

①人目につくことが必要
→眉や髪で隠れる部分は醜状として扱われません。また,アゴの下で正面から見えない部分も対象外となります。これらの部分を除いた長さや面積を計測します。

②2つ以上の傷跡がある場合の判断方法
→複数の傷跡は,それらが一体となっている場合,一体となっている面積や長さを合算した数値で等級が判断されます

③事故時に生じたものでない醜状の取り扱い
→治療中に生じた手術痕や,やけど等の治療後に生じた色素沈着なども,醜状障害の対象に含まれます。

【13号】両側の睾丸を失つたもの

両側の睾丸を失った結果,生殖機能を喪失した場合,7級13号の認定対象になります。

以下の場合には,7級13号が準用されます。

1.睾丸が残っているが,常態として精液中に精子が存在しない場合
2.女性が両側の卵巣を失った場合
3.卵巣が残っているが,常態として卵子が形成されない場合

後遺障害7級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害7級の場合,自賠責保険からは419万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は1000万円となります。

後遺障害7級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害7級の場合は,労働能力喪失率が56%となります。

計算例
年収500万円,40歳,7級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.56×18.3270(27年ライプニッツ)
51,315,600円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【後遺障害8級】対象となる各部位の症状は?認定された場合の慰謝料額は?

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害8級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害8級の認定基準

8級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になつたもの
2号脊柱に運動障害を残すもの
3号一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの
4号一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
5号一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
6号一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
7号一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
8号一上肢に偽関節を残すもの
9号一下肢に偽関節を残すもの
10一足の足指の全部を失つたもの

【1号】一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になつたもの

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

また,後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【2号】脊柱に運動障害を残すもの

具体的基準

脊柱に運動障害を残すもの(8級)
1.次のいずれかにより頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
①頚椎又は胸腰椎に脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頚椎又は胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

2.頭蓋から上位頚髄間(頭蓋骨・首の骨・背中の骨)にかけて著しい異常可動性がある場合

【3号】一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの

「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。

1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【4号】一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの

「手指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.中手指節関節又は近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が1/2以下に制限されるもの
3.親指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が1/2以下に制限されるもの
4.手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚完全に脱失したもの

「親指を含む3本の指」又は「親指以外の4本の指」について用廃となった場合,8級4号の認定対象となります。

【5号】一下肢を五センチメートル以上短縮したもの

下肢の短縮は,上前腸骨棘と下腿内果下端の間の長さを健側の下肢と比較して等級認定を行います。

下肢の短縮

【6号】一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
上肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
肩関節①屈曲(前方拳上)180度
肩関節②外転(側方拳上)180度
肘関節屈曲・伸展(※)145度・5度(合計150度)
手関節屈曲(掌屈)・伸展(背屈)(※)90度・70度(合計160度)
※肘関節と手関節は,「屈曲+伸展」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

肩関節の運動

肘関節の運動

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
肩関節①伸展(後方拳上)50度
肩関節②外旋・内旋60度・80度(合計140度)
手関節①橈屈25度
手関節②尺屈55度
橈屈と尺屈

【7号】一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
下肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
股関節①屈曲・伸展125度・15度(合計140度)
股関節②外転・内転145度・20度(合計65度)
ひざ関節屈曲・伸展130度・0度(合計130度)
足関節屈曲(底屈)・伸展(背屈)45度・20度(合計65度)
「屈曲+伸展」「外転+内転」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

股関節の主要運動

足関節の主要運動

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
股関節外旋・内旋45度・45度(合計90度)

【8号】一上肢に偽関節を残すもの

偽関節とは,骨折した部位が変形癒合し,関節でない部分が曲がって関節のようになってしまった状態を指します。関節のようだが関節ではない,ニセの関節というべきものです。

「偽関節を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
2.橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
3.橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

【9号】一下肢に偽関節を残すもの

「偽関節を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.大腿骨の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
2.脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
3.脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

【10号】一足の足指の全部を失つたもの

「足指を失ったもの」とは,足指を中足指節関節から失ったことを指します。つまり,足指をすべて失った場合を指すことになります。

(「障害認定必携」より引用)

足指の全部について,付け根から先のすべてを失った場合,等級認定の対象となります。

後遺障害8級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害8級の場合,自賠責保険からは331万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は830万円となります。

後遺障害8級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害8級の場合は,労働能力喪失率が45%となります。

計算例
年収500万円,40歳,8級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.45×18.3270(27年ライプニッツ)
41,235,750円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故解決事例】下肢の偽関節などで併合6級の認定後,訴訟を選択して8900万円の高額賠償を獲得するに至ったケース

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】

・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

事案の概要

被害者が単車に乗車中,信号表示のある交差点を赤信号に従って停止していたところ,対面から赤信号を看過して直進走行してきた四輪車がセンターオーバーし,被害者に衝突する事故が発生しました。加害者は,てんかん発作を起こしてしまい自動車の制御が困難な状態に陥っていました。

被害者は,大腿骨骨折及び下腿骨骨折等の被害に遭い,3年近くの治療を要する大けがを負いました。治療を尽くしたものの,下腿骨の骨折部は偽関節化し,硬性補装具や杖がなければ満足に歩行することもできない状態でした。

弁護士には,約三年の治療後,後遺障害等級認定を控えた段階で弁護士に相談されました。主治医から近日中の症状固定を予定している旨を告げられたため,その後の対応に関するご相談・ご依頼を希望されてのご相談でした。

法的問題点

①請求方法の選択

被害者は,非常に重大な怪我を負っており,下腿骨の骨折部には偽関節が残るにも至っていました。そのため,相当程度の後遺障害が想定されることもあり,損害額は大きくなることが見込まれやすい状況でした。
この場合,加害者(及び加害者加入保険会社)に対する金銭請求の方法をどうするか,慎重な検討が必要となり得ます。

具体的な請求方法の選択肢は,主に「交渉」か「訴訟」か,ということになります。それぞれの特徴や比較は,以下のように整理できるでしょう。

【交渉による請求】

交渉の特徴

1.請求金額
→訴訟と比べて請求金額は小さくなる傾向があります。

2.柔軟性
→双方の合意に基づくため,条件や解決策に柔軟性があります。
→迅速に解決することができる場合が多いです。

3.費用
→訴訟に比べて費用が抑えられることが多いです。
→弁護士を介する場合でも,訴訟よりも費用が低いことが一般的です。

4.当事者間の関係
→双方の関係を比較的良好に保つことができるため,将来的な関係性を重視する場合に適しています。

5.結果の見込み
→交渉の結果は双方の合意によるため,予測可能性が高いです。

交渉のデメリット

・相手方が交渉に応じない場合,解決が難しくなることがあります。
・提示された条件に納得がいかない場合,満足のいく解決が得られないことがあります。

【訴訟による請求】

訴訟の特徴

1.請求金額
→交渉に比べて請求金額が大きくなりやすいです。

2.法的拘束力
→裁判所の判決に基づくため,法的な強制力があります。
→相手方が支払いを拒否した場合でも,強制執行が可能です。

3.公平性
→中立的な第三者である裁判所が判断を下すため,公平な結果が期待できます。

4.先例に沿った合理的解決
→過去の判例に基づく判断が行われるため,一定の基準に基づいた損害賠償が期待できます。

訴訟のデメリット

・訴訟にかかる時間が長くなることが多いです。数ヶ月から数年かかる場合もあります。
・訴訟費用(弁護士費用,裁判所の手数料など)が高額になることがあります。
・判決に不満がある場合,控訴などの手続きが必要となり,さらなる時間と費用がかかります。
・双方の関係が悪化する可能性があります。

【比較一覧】

項目交渉による請求訴訟による請求
請求額低い高い
解決の柔軟性高い低い
費用 低い高い
時間短い長い
法的強制力ないある
公平性双方の合意による裁判所の判断
関係の維持良好に保ちやすい悪化する可能性がある

交渉は,費用を抑え,迅速かつ柔軟に解決したい場合に適しており,訴訟は,時間や費用のリスクを負ってでも最大限の金額を請求し,公平な判断を得たい場合に適している,という区別ができるでしょう。

ポイント
交渉は最大額でないが迅速解決可能
訴訟は長期を要するが最大額の請求が可能

②後遺障害等級認定

請求方法を交渉とするか訴訟とするか,という点は,後遺障害等級認定を求める方法にも影響を与えることが考えられます。
後遺障害等級認定を求める方法には,「被害者請求」と「事前認定」があり,個別のケースによっていずれを選択するか検討することになりますが,両者の特徴や比較は以下のように整理できるでしょう。

【被害者請求】

被害者請求の特徴

1.被害者主導
→被害者自身が保険会社に直接請求を行う手続
→自賠責保険会社は,被害者から提出された資料をもと等級認定をする

2.手続の自由度
→被害者が自分で必要な資料を収集・提出するため,手続に柔軟性があります。
→被害者が自身のペースで手続きを進めることができます。

3.費用負担・手続負担
→被害者が自分で資料を集める必要があるため,場合によっては時間や費用がかかることがあります。

【事前認定】

事前認定の特徴

1.加害者主導
→加害者(または加害者の保険会社)が被害者の損害賠償額を認定する手続
→加害者の保険会社が必要な資料を収集・提出する

2.手続の簡便さ
→被害者は後遺障害診断書の提出をすれば足りるため,簡便になりやすいです。

3.負担の軽減
→後遺障害診断書以外の必要資料は,保険会社が取付の上で提出してくれます。
→文書料の負担や取付の手間を回避することができます。

【両者の比較】

項目被害者請求事前認定
手続の主導者被害者加害者(保険会社)
手続の自由度高い低い
手続の簡便さ 労力がかかる簡便
費用負担被害者自身保険会社がサポート
資料収集被害者自身が行う保険会社がサポート

被害者請求は,保険会社に手続を委ねたくない場合や,必要書類以外にも積極的に書類提出したい場合に適しており,事前認定は,保険会社に手続を委ねても差し支えない場合や,手続の簡便さを重視したい場合に適していると言えるでしょう。

ポイント
被害者請求は,自分で自賠責に提出する手続
事前認定は,保険会社に提出してもらう手続

③持病の影響

被害者は,3年ほどに渡る長期の治療を要していましたが,その大きな原因の一つは,被害者の下肢に感染症が生じたことでした。治療の過程で患部に細菌が侵入し,感染症を引き起こしてしまうと,感染症が治まるまでの間は手術等の治療を進めることができず,その分だけ治療が長期間に渡るのです。

そして,被害者の治療が感染症等で長期化しやすかった理由に,被害者が持病としていた糖尿病が影響している可能性も否定できない状況でした。糖尿病患者は,そうでない人と比べて重度の感染症を起こしやすいと言われており,感染症にかかる確率,感染症が重度になる確率は,いずれも糖尿病によって高くなる傾向にあると言われています。

そうすると,被害者の治療が長期に渡ったのは,ただ交通事故の受傷が重かっただけではなく,糖尿病という被害者側の事情が影響してのことでもある,という主張がなされる可能性を考慮する必要がありました。

ポイント
感染症により治療が長期化
持病の糖尿病が感染症の遠因となった可能性も

弁護士の活動

①請求方法の選択

弁護士では,本件における請求方法を訴訟とする方針を取ることとしました。その理由としては,主に以下のような点が挙げられます。

【請求金額の差】

交渉と比較した場合の訴訟の最大のメリットは,請求できる金額が大きくなりやすいことです。そうすると,その金額の差が大きければ大きいほど,交渉より訴訟を選択する方が有益ということになります。

この点,本件の場合,被害者に生じた受傷内容や見込まれる後遺障害の内容からすると,請求金額が数千万円という規模になることが明らかな状況でした。そうすると,仮に金額が一割違うだけでも,数百万円の差ということになります。これは無視できる金額ではありませんでした。

また,交渉では請求できず訴訟でのみ請求できる損害として,「遅延損害金」が挙げられます。これは,事故から賠償までの期間,被害者の損害が補填されなかったことを損害とみなし,請求金額に応じた利息を加算するというものです。
この遅延損害金は,請求金額が大きいほど,そして事故から支払までの期間が長いほど,高額になるところ,本件では高額請求が見込まれる上,事故から3年物通院を要する長期の問題となっていました。そのため,遅延損害金の金額も軽視できない水準であると考えられます。

以上を踏まえると,交渉と訴訟では請求し得る金額の差があまりに大きく,訴訟で請求するメリットが大きいものと考えられました。

【交渉が難航する可能性】

交渉でも,訴訟と遜色のない水準の金額で早期に合意できるのであれば,必ずしも訴訟を行う必要はありません。しかし,本件では,相手保険が被害者の糖尿病の影響を明らかに問題視していた,という状況がありました。
そのため,交渉で解決しようとした場合でも,糖尿病がどの程度損害の拡大に影響を与えたのかを協議する必要があり,その解決は容易でないことが想定されます。

そうすると,交渉をしても難航する可能性が高く,あえて交渉を選択するメリットが大きくないと考えられました。

【長期間を要しても差し支えない事情】

訴訟の大きな問題点は,解決までの期間が長期化しやすい点です。長期に渡る訴訟の間に,経済的に訴訟維持が難しくなってしまえば,訴訟での満足な解決は望むことが困難になります。

しかしながら,本件では,早期に後遺障害等級の認定手続を行うことができる段階にありました。そのため,後遺障害等級認定を受け,等級に応じた自賠責保険金が受領できれば,当面の金銭的問題は解決することが可能です。

そのため,被害者の了承さえ得られれば,解決が長期化しても具体的な問題は生じにくいことが想定されました。

【解決に要する期間の差】

交渉は,確かに訴訟よりは短期間ですが,賠償額が大きくなるとそれほど早期に解決できるわけではありません。具体的には,保険会社内部の意思決定(決裁)に長期を要することが非常に多く見られます。

そうすると,早期解決を目指して交渉を試みても,結局保険会社に待たされる形で長期化することが珍しくありません。本件でもその可能性が大いに見込まれる状況であったため,交渉を選択しても解決に要する期間にそれほど大きな差の生じないことが想定されました。

ポイント
請求額の差の大きさを重視し,訴訟での請求を選択
交渉を選択してもそれほど早期解決につながらない見込みもあった

②後遺障害等級認定

後遺障害等級認定の方法は,被害者請求を選択することとしました。これは,金銭の請求方法を訴訟とした点と大きく関係します。具体的な理由は,以下のように整理できます。

【自賠責保険金を回収する必要】

訴訟での請求を選択する場合,長期に渡る訴訟が被害者の経済的負担につながらないように配慮することが必要となります。その有力な手段の一つが,被害者請求によってあらかじめ自賠責保険金を回収しておくことです。

被害者には,常に硬性補装具を必要とする偽関節で7級,大腿骨骨折後の症状に対して12級の,併合6級が認定され得る状況でした。そして,この内容で併合6級が認定される場合,自賠責保険からは1200万円以上の自賠責保険金が支払われることになります。

この保険金を回収した上で訴訟に臨むことで,訴訟の長期化が被害者の経済的負担となるのを可能な限り防ぎつつ解決を目指すことが可能になります

【訴訟のために必要な手続】

訴訟の中で,後遺障害等級が争点となる場合,適切な等級を明らかにするため,被害者請求を行う必要が生じやすい傾向にあります。なぜなら,裁判所の運用として,被害者請求に対する自賠責調査事務所の等級認定を尊重するのが一般的であるためです。

本件では,重大な後遺障害等級の認定が見込まれる状況であったため,訴訟に発展すると後遺障害等級自体の争いになる可能性が低くありませんでした。そのため,あらかじめ被害者請求で等級認定を獲得する方が円滑であることが見込まれました。

本件では,以上の点を踏まえ,被害者請求の方法で後遺障害等級の認定を獲得することとしました。

ポイント
訴訟中の経済的問題を回避するため,被害者請求で自賠責保険金を回収
訴訟をするといずれにしても被害者請求を必要とする可能性がある

③持病の影響

被害者の持病である糖尿病が感染症の発症や重大化に影響を与えた可能性は,確かに一般論としては否定できないところでした。しかし一方で,本当に糖尿病と感染症に関係があったと言えるかどうかは,決して明確とまでは指摘できませんでした。

そこで,弁護士からは,主治医の見解などを仰いだ上で,糖尿病が感染症に影響を及ぼしたという具体的根拠がないことを主に主張し,持病の影響で損害額が減少することを防ぐ方針としました。
持病によって損害が拡大した場合,その拡大分を賠償額から差し引くことを「素因減額」と言います。もっとも,素因減額を行うには,素因(=持病)の存在のみならず,それが損害の拡大に影響したことを,相手が立証しなければなりません。そのため,弁護士からは素因減額に必要な立証がないことを強く示すこととしました。

ポイント
持病が損害の拡大に影響したとの立証が不十分であると指摘する方針に

活動の結果

以上の活動の結果,被害者には想定通り後遺障害併合6級が認定されました。
また,自賠責保険への請求及び訴訟での請求により,合計で8900万円を超える賠償を獲得し,解決に至りました。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,比較的に早期に訴訟の選択をし,賠償金額の最大化を目指したケースでした。

多くの場合,訴訟での解決は数々の負担が重くのしかかるため,交渉で解決する方が被害者側の希望に沿いやすいと思われます。弁護士も,むやみに訴訟を案内するべきではなく,訴訟を行うにあたってはリスク説明を十分に行う必要があるでしょう。

もっとも,本件ではそのリスクを補って余りある増額可能性が訴訟にあり,訴訟での解決を弁護士から案内する方法を取りました。本件の被害者の方は,弁護士の説明にご納得いただき,本心から訴訟をご希望いただくことができましたが,訴訟の負担を踏まえると,迷いながら訴訟に踏み切ることはお勧めできません。

被害者の方におかれては,弁護士から訴訟の案内を受けることがあった場合,想定されるメリットやデメリットについて適切な説明を受けることを強くお勧めします。訴訟の選択は,訴訟での解決が適切であると確信できるかどうかによって判断するのが望ましいでしょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故解決事例】高次脳機能障害を含む併合7級で増額交渉し,逸失利益の丁寧な主張で3,800万円を超える増額を実現したケース

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,高次脳機能障害で後遺障害7級の認定を受けた被害者の金額交渉を行い,3,800万円を超える増額を獲得した事例を紹介します。

事案の概要

被害者は自転車で直進走行していたところ,四輪自動車が左折に際して後方確認を怠ったまま交差点に進入したため,左折巻き込みの被害に遭いました。
被害者は,頭を強く打って頭蓋骨骨折等の重大な傷害を負い,2か月以上の入院を余儀なくされました。その後,1年半を超える通院治療を受けたものの,高次脳機能障害が残存し,後遺障害7級の認定を受けるに至りました。

被害者は,加害者の保険会社から過失割合10%,賠償額約3,537万円との提示を受けた後,金額の妥当性や増額余地の有無などの相談を希望され,弁護士の法律相談を行いました。

ポイント
高次脳機能障害にて後遺障害7級認定済み
過失割合10%,賠償額3,537万円の提示済み

法的問題点

①過失割合

同一方向に進行中の直進自転車と左折四輪車による巻き込み事故は,以下の【289】図または【290】図により,自転車の過失は10%または0%となります。

「別冊判例タイムズ38号」より引用

自転車の過失は,先行する四輪車を追い抜く形で交差点に進入した場合に10%となりますが,逆に四輪車が後方から追い越して左折してきた場合には0%になる,ということです。
そして,相手保険は自転車に10%の過失がある旨主張しており,上記【289】図を前提としていました。

ただ,被害者に話を聞いてみると,決して四輪車が前にいたとは限らないことが分かってきました。被害者自身は,事故で頭を強く打っており事故状況の記憶が定かでありませんが,車を追い抜いた記憶は特にないと説明していました。一方,車は前にいたと主張しているようですが,ドライブレコーダーはなく,主張の客観的な証拠は見受けられませんでした。
そうすると,被害者に10%の過失があるとの立証は十分にできていない可能性があり,過失割合に一定の交渉余地があるものと判断できました。

もっとも,被害者が事故態様を説明できる状況にないため,あまり強気に過失ゼロを主張できるわけでない点には注意が必要でした。

ポイント
直進自転車対左折四輪車の巻き込み事故は,自転車の過失0~10%
どちらが前にいたかによって過失割合が異なる
本件ではどちらが前にいたかが不明

②逸失利益

本件では,明らかに逸失利益がメインテーマでした。それは,被害者が一級建築士の資格を持って安定した収入を得ていた立場にあったためです。
逸失利益は,将来の収入減少を損害として計算するものであるため,事故前の収入額は逸失利益の金額に直接影響します。本件の被害者は,事故前に1200万円近い年収があり,7級という後遺障害の重さと相まって,逸失利益は相当な金額になる可能性が高い状況でした。

この点,相手保険会社は,後遺障害逸失利益も一定の金額を計上していましたが,その内容は複数の問題点を抱えたものでした。また,弁護士が逸失利益を請求するに際しては,慎重に検討しなければならない点も複数ありました。

【保険会社の提示内容の問題点】

相手保険の提示には,以下のような問題点がありました。

提示内容の問題点

1.労働能力喪失率35%としている

2.労働能力喪失期間60歳までと定めている

「1.労働能力喪失率を35%としている」点

労働能力喪失率は,後遺障害によって労働能力が低下する割合を数値化したもので,具体的な喪失率は後遺障害等級により定められています。
等級ごとの具体的な労働能力喪失率は,以下の通りです。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

上記の通り,後遺障害7級の逸失利益は56%であり,35%は後遺障害9級の場合の数値です。しかし,相手保険会社は労働能力喪失率35%を主張していました。
その背景には,「被害者の労働能力にそれほど影響していないのではないか」という考え方があったようです。ただ,漠然とした推測で逸失利益を減額されるのは明らかに不適切であり,相手保険会社にはそれ相応の主張立証を要求して差し支えないと判断される内容でした。

「2.労働能力喪失期間を60歳までと定めている」点

労働能力喪失期間は,後遺障害によって労働能力が影響を受ける期間を言います。基本的には,仕事のできなくなる年齢までの期間がこれに該当し,特段の事情がなければ67歳までが目安とされます

この点,被害者は,症状固定時51歳の会社員であったところ,相手保険の提示は60歳までを労働能力喪失期間としていました。60歳が定年であり,そこで労働も終わりという前提で計算したのでしょう。

ただ,被害者は資格を持って業務をしている立場にあり,定年を迎えた後も意欲次第では仕事を続けることが可能でした。そのため,労働能力喪失期間を60歳までに制限することに必ずしも合理性はない状況と考えられました。
一方で,勤務先の定年が60歳であることは間違いないため,60歳以降にいくらの収入が得られたであろうか,という計算は非常に困難でした。

ポイント
労働能力喪失率を7級の56%でなく9級相当の35%にしている
労働能力喪失期間を67歳まででなく60歳までに限定している

【減収がない点の取り扱い】

相手保険が労働能力喪失率を35%に制限したのは,事故後に被害者の減収がほとんどなかったことを大きな理由としているようでした。確かに,被害者は,重大な高次脳機能障害を伴う交通事故に遭ったものの,直接の減収は休業に伴う賞与の減額にとどまっていました。被害者の収入には,業務内容の成果に応じて生じる業績給もありましたが,業績給はほとんど減少していませんでした。

逸失利益は,後遺障害による収入減少に対する補償であるため,後遺障害があっても収入減少につながらなければ逸失利益はないとの理解もあり得ます
そのため,減収がないことと逸失利益の請求がどのように整合するか,という点は重要な検討事項でした。

ポイント
逸失利益は将来の収入減少を補填するための賠償
収入減少がない場合に逸失利益が請求できるかは問題になり得る

【定年後の取り扱い】

被害者の勤務先や業務内容を踏まえると,被害者が60歳で定年を迎えた後の仕事に関しては,以下のいずれかの可能性が考えられました。

被害者の定年後の仕事

1.勤務先で嘱託社員として再雇用を受ける

2.独立開業して建築士の仕事を続ける

3.定年を機に仕事を終了する

この点,いずれの選択肢も,収入額は定年前より低額になることが見込まれます。特に,仕事を終えてしまえば収入はゼロになるところです。

そのため,事故がなければ被害者が60歳以降得たであろう収入に関しては,明確な主張立証が難しいと思われる状況でした。言い換えれば,60歳以降は事故当時のように年収が1000万円を超える可能性がほぼないため,60歳までとは区別して丁寧に逸失利益の交渉を行う必要がありました。

ポイント
60歳以降は収入が減少していたであろうことがほぼ明らか
60歳までとは別に,逸失利益を丁寧に交渉する必要がある

弁護士の活動

①過失割合の交渉

過失割合については,被害者の過失が10%と立証できていない,ということを前提に,交渉を試みる方針を取りました。
もっとも,過失がゼロであることを立証することも困難であるため,互いに訴訟で争うリスクを回避するという趣旨で,中間的な5%の過失で合意することを目指す交渉を実施しました。

交渉の結果,実際に被害者の過失5%で解決する運びになりました。
5%という成果はそれほどでもないように見えますが,本件の金額にすると数百万円規模の成果であり,被害者への経済的補償にとっては非常に重大な意味を持つ交渉となりました。

ポイント
0%と10%の主張はいずれも真偽不明
中間的な5%での解決を目指し,合意

②労働能力喪失率の主張

相手保険が低い労働能力喪失率を主張している点については,こちらは一切譲歩すべきでないと判断しました。そもそも,7級が認定されている以上,労働能力喪失率は56%とみなすのが大原則であって,相手保険の主張は安易に例外を認めさせようとしているにすぎないためです。

一方で,被害者には収入減少が生じていないという事実もありました。収入減少がないことは,労働能力が減少していないことの根拠になるケースもあり得るため,収入減少していないことと労働能力が減少したことの関係を説得的に示す必要があります

この点,被害者の場合は,本人の努力や周囲の協力により,何とか仕事の質と収入を保てている,という事情がありました。
高次脳機能障害の結果,業務遂行能力が下がってしまったため,被害者はその分時間をかけて繰り返し確認をすることで,事故前と遜色のない仕事を続けていたのです。また,被害者の事情を知る同僚や上司などの配慮もあり,被害者の業務は事故前より負担の小さい内容としてもらっていることも分かりました。

以上を踏まえると,被害者の収入減少がないのは,被害者の労働能力が保たれているからではなく,本人や周囲が労働能力の減少を懸命にカバーしているからと理解するのが適切です。そうすると,収入減少のないことは労働能力喪失率を低く見積もる根拠にはできないと判断することができました。

弁護士からは,事故前後における被害者の業務状況や,事故後における勤務先の配慮の数々などを丁寧に指摘することで,労働能力喪失率を譲歩しない内容での解決を実現しました

ポイント
低い労働能力喪失率を主張する根拠は,減収がないこと
しかし,減収がなかったのは本人の努力や周囲の協力あってのこと
減収がないことは労働能力が減少していないことの根拠にならないと指摘

④定年後の逸失利益

被害者が60歳で定年を迎えた後の逸失利益は,相手保険の提示通りにゼロで合意するメリットこそないものの,漫然と請求しても合意に至ることは考えにくいため,何らかの合理的な説明が必要でした。

そこで,弁護士においては,被害者の先輩にあたる人の定年後の収入実績を確認することとしました。被害者の先輩の収入実績を,金額計算の参考にするためです。
本件では,被害者と同じく一級建築士として勤務した人の定年後の収入は,それまでの概ね3~7割程度になっている例があると確認できました。そのため,これを踏まえて相手保険と交渉を行うことにしました。

交渉の結果,定年後の逸失利益については,概ね定年前の5割の収入を念頭に計算する方法で合意することができました。
一切の根拠なく大雑把に計算,請求するのでは相手を納得させることは困難でしたが,過去の先例を計算根拠とすることで,説得力ある請求が可能となりました。

ポイント
被害者の先輩にあたる人物の収入実績を参考に交渉を実施
一定の計算根拠があることで,合意に至りやすくなった

活動の結果

上記の活動を尽くした結果,被害者への賠償額7,350万円で合意が成立し,従前の提示額約3,537万円からは3,800万円を超える増額となりました。

なお,賠償額7,350万円の内訳は,被害者の損害合計7,000万円,弁護士費用350万円(損害の5%)というものでした。弁護士が,早期解決の条件として弁護士費用の上乗せを求める交渉を行ったことにより,弁護士費用の支払も含めての合意となりました。
弁護士費用は,訴訟を行わない限り請求できないのが原則であるため,交渉で弁護士費用の支払を引き出した点は特筆事項と言えるでしょう。

弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,専門的な職業と安定した高額収入がある被害者の逸失利益が最大の争点でした。内容面で最大の争点となるのみでなく,金額面でも後遺障害逸失利益が大部分を占めるため,逸失利益に関する合意の可否は本件の解決の可否と直結する問題であったと言えるでしょう。

この点,相手保険は,逸失利益が多額になることを防ぐためにいくつかのそれらしい主張をした上で,被害者に一定の逸失利益を提示していました。しかし,弁護士目線では了承すべき内容ではなく,交渉は不可欠です。そのため,提示内容と弁護士が目指す水準の差をどのように埋めるのかが重要な問題となりました。

本件では,被害者の実際の業務内容や環境,能力の変化などを詳細に整理し,それを踏まえた請求を行うことで,相手保険の譲歩を引き出す方法を取りました。このような交渉は,特に訴訟を避けたいと考えている相手保険に有力です。なぜなら,個別の事情を詳細に整理した上での主張は,多くは訴訟に至ったときに行うものだからです。
相手保険が訴訟を避けたいと考えていることを見越して,こちらは訴訟を辞さない姿勢を暗に示すことにより,相手保険の譲歩を引き出す交渉を目指しました。

逸失利益は,後遺障害が伴う事故では最も大きな争点になりやすいものです。逸失利益の解決に際しては,弁護士に個別の事情を十分に把握してもらいながら,適切な解決を目指すことをお勧めいたします。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ

法律相談のご希望はお気軽にお問い合わせください
※お電話はタップで発信できます。メールは問い合わせフォームにアクセスできます。

【交通事故解決事例】併合7級にて3,200万円超の増額を実現。紛争処理センターで請求の合理性を立証し解決した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,交渉を拒む相手保険から,交通事故紛争処理センターの利用を通じて約3,280万円の増額賠償の獲得に至った事例を紹介します。

事案の概要

被害者(女性・当時高校生)は知人運転の単車に同乗していましたが,単車の運転手が信号のない十字路上での四輪車との出会い頭事故に遭い,受傷しました。被害者の乗車していた単車の方に一時停止規制があったものの,単車の運転手が速度を緩めないまま十字路内に進入したところ,事故が発生したという状況でした。

被害者の負った怪我は,頸椎の骨折,股関節の脱臼骨折,足指の骨折などでした。特に頸椎と股関節のケガが重く,後遺障害は避けられない状態でした。

1か月以上の入院及びその後の通院治療を経て,被害者には併合7級の後遺障害等級が認定されました。主な認定内容は以下の通りです。

被害者の後遺障害

脊柱の運動障害 8級
分娩機能障害 11級相当
その他,傷跡や痛みについて14級の認定あり

総合:併合7級

加害者(運転者)の保険会社からは,後遺障害等級認定の結果報告とともに,被害者へ損害賠償額の提案がなされました。
もっとも,提示金額は約2,140万円であり,後遺障害7級の高校生に対する賠償額としては非常に低い水準と思われるものでした

ポイント
併合7級の認定と約2,140万円の金額提示あり
保険会社の提示は非常に低い金額

法的問題点

①過失割合

保険会社が非常に低い金額の提示をしている理由の一つに,過失割合の主張がありました。

本来,被害者は同乗者に過ぎないため,運転者同士が起こした事故について過失を問われる立場にはありません。自動車同士の交通事故における過失割合は,運転行為の落ち度の割合である以上,運転をしていない人に落ち度を指摘することはできないからです。

今回,相手の保険会社が主張していた被害者の過失は,「好意同乗」と呼ばれるものでした。
好意同乗とは,運転者の車両に無償で(好意で)同乗させてもらうことをいいます。運転者が運転行為を誤って事故を起こしたのであっても,自分からその車両に同乗した人物が損害の全てを運転者に請求するのは公平でない,という考え方が,「好意同乗減額」と呼ばれる過失相殺の根本にあると言われます。
加害者の保険会社が金額提示を行うとき,同乗していたという理由のみで好意同乗の主張をすることは一定数見られます。特に,単車の運転や長時間運転など,類型的に事故が起きる可能性の低くない同乗行為に対して,主張されやすい傾向が見られます。

本件でも,相手保険会社は好意同乗による過失相殺を主張しており,提示金額の低さに大きな影響を及ぼしていました。もっとも,被害者は単車に同乗していただけであり,特に危険な行動をとっていたわけではありませんでした。

ポイント
同乗者に「好意同乗」を理由とした過失の生じる場合がある
もっとも,本件の被害者は特に危険な行為はしていない

②後遺障害等級の妥当性

交通事故の解決に際しては,認定された後遺障害等級の妥当性を判断することが必要です。後遺障害等級が一つ異なるだけで,数百~数千万円という単位で賠償金額が変動する可能性も低くないためです。

この点,本件で被害者に認定された等級は併合7級でしたが,主な後遺障害等級は脊柱の運動障害8級,それ以外は8級に至らない類型の後遺障害でした。そのため,脊柱の骨折に対する後遺障害等級が妥当であれば,全体の結果も妥当であると評価することが可能です。

脊柱部の骨折に対しては,一般的に変形障害及び運動障害の認定が考えられます。その具体的な認定基準は以下の通りです。

【変形障害】
圧迫骨折や破裂骨折に伴って脊柱部の変形が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい変形を残すもの
8級脊柱に中程度の変形を残すもの
11級脊柱に変形を残すもの

具体的基準

脊柱に著しい変形を残すもの(6級)
1.複数の椎体の圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体1個分以上低くなっている場合
2.圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体2分の1個分以上低くなっており、かつ、コブ法による側彎度が50度以上ある場合

脊柱に中程度の変形を残すもの(8級)
1.圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体2分の1個分以上低くなっている場合
2.側彎度が50度以上となっている場合
3.環椎(第一頚椎)または軸椎(第二頚椎)の変形・固定により次のいずれかに当てはまる場合
a.60度以上の回旋位となっている
b.50度以上の屈曲位となっている
c.60度以上の伸展位になっている
d.側屈位となっており、矯正位(頭部を真っ直ぐにした姿勢)で頭蓋底部と軸椎下面の平行線の交わる角度が30度以上となっている

脊柱に変形を残すもの(11級)
1.圧迫骨折が生じ、そのことがエックス線写真等で確認できる場合
2.脊椎固定術が行われた場合
3.3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けた場合

【運動障害】
圧迫骨折などの結果,脊柱部の運動機能に制限が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級脊柱に運動障害を残すもの

具体的基準

脊柱に著しい運動障害を残すもの(6級)
次のいずれかにより頚部および胸腰部が強直したもの
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

脊柱に運動障害を残すもの(8級)
次のいずれかにより頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

そして,本件での被害者の状況を踏まえると,「脊椎固定術」をした上で「頸部の可動域が2分の1以下に制限」されており,確かに8級の認定対象になることが確認できました。一方,8級を超える等級認定の基準は満たしておらず,等級認定としては8級が妥当なものであるとの判断ができました。

以上の検討の結果,後遺障害等級は併合7級を前提に解決すべき事故であることが確認できました

なお,脊柱の後遺障害に関しては,こちらの記事もご参照ください。

ポイント
後遺障害等級は最も重い8級(脊柱の運動障害)が妥当かを基準に検討
認定基準と被害者の状態を照らし合わせ,認定等級が妥当であると判断できた

③後遺障害逸失利益

後遺障害等級が認定される場合,損害賠償額が最も大きくなりやすい項目は「後遺障害逸失利益」です。後遺障害逸失利益とは,後遺障害に伴う労働能力の低下によって収入が減少する分を損害として計算したものをいいます。後遺障害等級が認定される状況では,労働能力がそれ以前より制限されるため,得られたはずの収入が得られなくなったと評価され,逸失利益が発生するということです。

この点,後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

そして,労働能力喪失率は,主に後遺障害等級によって定められますが,仕事の内容によっては労働能力に影響しない後遺障害もあり得るため,仕事への具体的影響を踏まえての検討が必要です。例えば,顔面の醜状障害(傷跡)は,モデルなどの外見を活用した仕事には影響するものの,そうでない仕事には影響しないため,仕事によっては逸失利益の対象とならないことも少なくありません。

被害者の場合は,事故当時に高校生であったため,まだどのような仕事をするかが明らかでないという問題がありました。どんな仕事をするかが分からないため,労働能力への影響が分からない(=立証できていない)という反論を受ける可能性が想定されました。

ポイント
労働能力喪失率は,後遺障害の内容と仕事の内容の関係で検討する必要がある
事故当時学生のため,仕事への具体的影響を指摘することは困難

④相手保険との交渉の可否

本件では,相手保険に交渉の意思がない可能性を想定する必要があると考えられました。その理由は,概ね以下の通りです。

相手保険に交渉の意思がない可能性を想定する理由

1.提示金額が明らかに小さい
2.被害者の過失を不明確な根拠で強気に主張している
3.被害者に対して,金額を改める意思はないと告げていた

金額の低さと過失の主張だけでも,非常に好戦的な態度を感じさせるところですが,被害者に対してあらかじめ増額の意思がないと告げるのは,通常は考えにくい対応と言えます。明らかに被害者の感情面へマイナスの影響を与える発言であって,交渉を目指すには不適切と言わざるを得ないためです。
そうすると,相手保険は何らかの理由で交渉をする意思がないという可能性を強く考慮する必要があり,交渉以外の解決方法を検討することを視野に入れるべきケースでした。

ポイント
相手保険会社に交渉の意思がなければ,交渉での解決は困難
適正な解決を目指すには交渉以外の解決方法を検討する必要がある

弁護士の活動

①請求方法の検討

受任後,弁護士から相手保険に一度交渉での請求を行ってみることとしました。しかし,相手保険の態度は,提案を受け入れないどころか対案を検討する意思もないというもので,明らかに交渉の余地がないと判断せざるを得ませんでした。

そこで,弁護士としては交渉以外の解決を選択する必要がありますが,具体的には以下の2つが考えられます。

交渉以外の請求方法

1.訴訟(裁判手続による請求)
2.ADR(裁判外の紛争処理手続)

両者の主な違いとしては,以下のような内容が挙げられます。

【項目】【訴訟】【ADR】
手続の形式法律の定めに従う柔軟な取り扱いが可能
関与する人裁判所(裁判官)あっせん担当弁護士
解決のスピード長期間を要しやすい訴訟よりは短期間になりやすい
費用訴訟費用や弁護士費用等が発生申立て無料
公開性公開の法廷における審理非公開の手続
賠償額遅延損害金や弁護士費用を加算遅延損害金や弁護士費用は通常加算しない
強制力法的拘束力があり,履行を強制させられる合意内容の強制力はない

基本的な差異としては,訴訟だと厳格な手続で一定の費用が発生するものの,解決内容に強制力があるADRだと柔軟な手続で費用なく実施できるものの,解決内容に強制力はない,という区別ができるでしょう。

本件の被害者は,できる限り早期の解決を希望する気持ちが強く,訴訟への対応負担を避けたいという要望もあったため,十分な打ち合わせの上でADRの一つである「交通事故紛争処理センター」への和解あっ旋申立てを利用することとしました。
一方で,期間や負担よりも賠償金額を優先したいという場合は,訴訟での解決を目指すことも有力ではあります。訴訟にも賠償額の減額リスクはあるため,訴訟が必ず経済的にプラスとは言えませんが,獲得し得る最大額は訴訟の方が大きい傾向にあります。

ポイント
相手保険には交渉をする意思が全くない状態であると確認
請求方法を比較検討し,「交通事故紛争処理センター」の手続を利用することに

②過失割合に関する主張

相手保険は好意同乗を理由に被害者の過失を主張していましたが,弁護士の方では過失相殺を受け入れる必要は全くないとの判断に至りました。

そもそも,現在の裁判例では,ただ同乗したというだけで好意同乗を理由とした過失相殺が行われることはまずありません。やはり,単に同乗しているだけで過失だというのは不合理であって,妥当性を欠くという判断が定着しています。

現在,同乗者に好意同乗の過失相殺がなされるケースは,以下のような場合に限られています。

好意同乗減額が生じる場合

1.同乗者が事故発生の危険を増大させる行為をした
2.事故発生の危険が極めて高い状況を知りながらあえて同乗した

上記のように,同乗者を非難できる事情がなければ,好意同乗減額は認め難いところ,本件の被害者にそのような事情は全くなかったため,弁護士からは被害者無過失の主張を一貫して行うこととしました。

ポイント
ただ同乗しただけでは好意同乗減額の対象とはならない
被害者はただ同乗しただけであるから,過失を受け入れるべきでない

③逸失利益の主張立証

逸失利益に関しては,労働能力喪失率の問題になりますが,本件の後遺障害等級との関係における一般論は,以下のように整理できます。

後遺障害と労働能力の一般的な関係

1.脊柱の運動障害(8級)
→労働能力を喪失させることに異論は生じにくい

2.分娩機能障害(11級)
→労働能力に影響するかどうか不明確

3.その他(14級)
→労働能力に一定の影響はし得る

本件の場合,脊柱の運動障害8級と分娩機能障害11級が併合され,7級との認定になっていますが,分娩機能障害の方が労働能力に影響しないのであれば,7級の労働能力喪失率でなく8級の労働能力喪失率を用いるべきでないか,という見解が生じ得るところです。

なお,労働能力喪失率は後遺障害等級によって決まりますが,具体的な喪失率は以下の通りです。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

7級は56%,8級は45%のため,金額に11%の違いが生じる問題点となります。この11%の違いは,本件では400万円以上の差異につながるため,非常に大きな問題点です。

この点,分娩機能障害そのものが将来の労働能力に影響を及ぼすと主張するのは容易でありません。ただ,分娩機能障害を引き起こす股関節の障害は労働能力に一定の影響を及ぼす,との主張を念頭に,より大きい労働能力喪失率を目指すこととしました

ポイント
脊柱の運動障害と分娩機能障害がそれぞれ労働能力に影響するか,という問題
分娩機能障害が直接労働能力に影響するとの主張は容易でない

④解決までの流れ

本件では,交通事故紛争処理センターを利用しましたが,その手続の流れは以下の通りです。

【和解あっ旋】

和解あっ旋を担当する弁護士が双方を仲介する形で,和解に向けた話し合いを行います。一般的には,それぞれの当事者が順番にあっ旋担当弁護士と協議する方法で,あっ旋担当弁護士争点の整理や解決内容に関する話し合いを試みます。

【あっ旋案】

双方の主張が一通り出尽くすと,あっ旋担当弁護士からあっ旋案(和解内容の案)が示されます。双方があっ旋案に同意できれば,その内容で解決となります。
あっ旋案を念頭に,あっ旋案を若干変更した内容で合意に至ることもあります。

【審査】

和解あっ旋手続で解決できなかった場合,当事者の申立てにより審査手続を行ってもらうことが可能です。審査会が当事者双方の主張を踏まえて「裁定」という結論を出します。
申立人である被害者は,この裁定の結果には拘束されませんが,申立人が裁定に同意した場合,相手保険は裁定に従うルールとなっています。そのため,被害者が裁定結果に同意すれば,和解での解決となります。

活動の結果

本件では,交通事故紛争処理センターを利用したところ,相手保険があっ旋案による解決を拒否したため,審査に移行しました。その結果,相手保険の主張する賠償額は約2,140万円でしたが,裁定では約5,420万円という内容になり,約3,280万円の増額となりました。

被害者の過失はゼロを前提とした解決となり,好意同乗による過失相殺はなされませんでした。
また,逸失利益に関する労働能力喪失率は,8級が45%,7級が56%のところ,裁定では労働能力喪失率50%での解決となりました。

弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,相手保険が非常に強気に交渉を拒んできた,という特徴のあるケースでした。
相手保険が交渉を拒む対応を取ってくる場合,その対応に合理性があるかないかを判断し,不合理なのであれば毅然とした請求手続を取る必要があります。もっとも,その判断を被害者の方が行うのは容易でないため,速やかな弁護士への相談・依頼が適切なケースだったと言えるでしょう。

実際,相手保険の主張する金額は,最終的な解決金額を遥かに下回るものでしかなく,相手の強気な姿勢に付き合ってしまうと大きな不利益につながってしまうところでした。

法的には,好意同乗減額の主張は根拠に乏しく,一方で労働能力喪失率の主張には一定の合理性があり得る内容でした。そのため,紛争処理センターからどこまでこちらに寄り添った解決案を出してもらえるかは難しいところでもありました。
そんな中,本件の結果は労働能力喪失率を除き全てが当方の請求通りであり,労働能力喪失率も決して不利益ではない数字であったため,バランスの取れた結論に至ったと考えられます。

相手保険の不合理な主張に対して適切な対応を尽くし,適正な結果を引き出せた事例としては,特筆に値するものであったと言えるでしょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故解決事例】異議申立ての結果,後遺障害5級→4級と上位等級の認定が獲得でき,約1,050万円の増額に至った事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,後遺障害5級の認定後,異議申立てによってより上位の4級が認定され,増額交渉に成功した事例を紹介します。

事案の概要

被害者は,青信号に従って横断歩道を渡っていたところ,対面から右折してきた自動車から衝突されました。
被害者は,頭部を強く受傷しており,相当な間意識を失うほどの重篤な状況にありましたが,幸いにも一命を取り留めました。ただ,脳に障害を受け,いわゆる高次脳機能障害が残るに至りました

高次脳機能障害とは,頭部の傷害によって脳の高次機能である認知,記憶,思考,判断,言語,行動等を司る部分が損傷を受けた場合に生じる障害です。高次脳機能障害の主な症状としては,記憶障害や言語障害,感情制御機能の障害等が挙げられます。

被害者は,弁護士が相談を実施した段階では既に後遺障害等級の認定を受けており,その内容は高次脳機能障害について5級を認定するというものでした。
また,これを踏まえ,加害者の保険会社から損害賠償額の提示も受けている状況でした。提示額の総額は約3,350万円という内容でした。

ポイント
高次脳機能障害について5級認定済み
保険会社から約3,350万円の賠償額提示あり

法的問題点

①等級認定結果の合理性

【高次脳機能障害】

被害者には,高次脳機能障害について後遺障害5級の認定がなされていましたが,高次脳機能障害には,以下の通り複数の後遺障害等級が定められています。

【高次脳機能障害の後遺障害等級】

等級基準
1級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

そのため,被害者の高次脳機能障害が5級と認定されることの合理性は慎重に検討する必要がありました。
この点,弁護士が被害者と直接対面し,被害者に生じている症状の内容や程度を丁寧に確認した結果,後遺障害5級の結果は決して被害者に不利益なものではないと判断することができました。

【その他の後遺障害】

弁護士が被害者と対面での相談を実施したところ,被害者の頭部に相当程度の大きさをしたへこみが見受けられました。もっとも,従前の等級認定結果では,頭部のへこみに関しては非該当との判断がなされていました

この点,頭部の醜状障害としては,「鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損」がある場合に12級14号「外貌に醜状を残すもの」に該当するという基準があります。ただし,この欠損は人目につく程度のものであることが必要とされます。

被害者の場合には,頭蓋骨に「鶏卵大面以上の欠損」があり,正面から見て頭部の不自然な形状が判別できることから「人目につく程度のもの」であるとも考えられる状況でした。しかし,従前の等級認定では,簡単な顔写真の確認のみで非該当とされていました。

ポイント
高次脳機能障害5級は適正な結果
頭蓋骨の一部欠損について醜状障害12級の認定が考えられる

②損害賠償額の合理性

後遺障害等級が伴う場合,交通事故の損害賠償としては,「慰謝料」「逸失利益」が主な項目となります。

【慰謝料】

保険会社からの金額提示は,後遺障害等級5級に対する慰謝料が800万円という内容になっていました。
この点,後遺障害慰謝料の金額については,以下のような基準が設けられています。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害5級の場合,いわゆる裁判基準では慰謝料額が1,400万円とされています。弁護士が交渉を行う場合,慰謝料は裁判基準満額の80~90%で合意する場合が多く見られ,90%の実現が一つの目標になりやすいところですが,90%であれば1,260万円と,相手保険の提示から見ると1.5倍以上になります。

後遺障害慰謝料に関しては,弁護士の交渉による増額余地が多分に残されている状況であると判断することができました。

【逸失利益】

後遺障害の逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

この点,逸失利益については,主に「労働能力喪失期間」がどの程度の期間であるか,という点が争点になりやすいところです。もっとも,本件の被害者に関しては,比較的高齢であったこともあり,「労働能力喪失期間」の内容が弁護士から見ても合理的であり,逸失利益の金額は弁護士が目標とする金額と比較しても遜色のない水準であることが確認できました。

今回の事故が大きな規模で,被害者に重大な損害が生じたことを踏まえ,保険会社は逸失利益を全面的に譲歩するスタンスを示しているものと推察されました。

ポイント
後遺障害慰謝料に増額の余地が多く残されている
逸失利益は,保険会社の全面譲歩により適正額であった

③問題点まとめ

以上を踏まえ,問題点は以下の2点に絞られました。

本件の具体的な問題点

1.頭部のへこみが12級に認定されるか
2.後遺障害慰謝料が増額されるか

弁護士の活動

①後遺障害等級に関する異議申立て

最終的な目標は金額交渉等による増額ですが,まずは,金額交渉の前提として後遺障害等級の獲得が必要です。本件では,頭部のへこみが後遺障害等級認定の対象とされていない点を覆すことが必要でした。

この点,醜状障害と呼ばれる後遺障害の判断方法は,面談を行って直接目視してもらうことが適切です。見た目の変化が後遺障害等級の対象となる以上,その見た目の変化を正確に把握してもらうため,面談を実施するべきであるというわけですね。
しかし,本件では,写真での簡単な画像調査のみで安易に非該当の結果になっていることが見受けられました。また,被害者と面談をした弁護士としては,しっかりと面談を実施してもらえれば被害者の頭部のへこみは等級認定の対象になるであろうとの見立てもありました。

そこで,弁護士受任前に行われた後遺障害等級に対して,異議申立てを実施するとともに,後遺障害等級の認定調査を行う「自賠責損害調査事務所」にて被害者の面談を行うよう求めました。
また,面談に際しては,被害者と事前に十分な打ち合わせを行い,面談当日に弁護士も同行することとしました。被害者が自分で等級認定に必要な説明を行うのは容易でないため,説明や案内をサポートするため,弁護士が同席することとしたのでした。

なお,面談を実施する前提としては,「自賠責損害調査事務所」に面談が必要であると判断してもらうことが必要となります。そのため,弁護士が異議申立てを行う際には,頭部のへこみに関する詳細な説明を提出した上,複数の鮮明な写真を添付することで,必要な書面上の説明も尽くしました。

②異議申立ての結果

異議申立て及び面談を行い,調査担当者に被害者の頭部のへこみを把握してもらうことができた結果,頭部の醜状障害について希望通り12級の認定を受けることができました。
被害者の後遺障害等級は,高次脳機能障害の5級と頭部醜状障害の12級をあわせて,併合4級との認定になり,申立て前よりも上位等級の認定に至りました。

③損害賠償額の交渉

後遺障害等級認定を獲得した後,弁護士にて相手保険担当者との金額交渉に着手しました。

この点,主な争点は800万円と提示されていた「後遺障害慰謝料」でした。
異議申立てにより併合4級となったことで,弁護士の目標額は4級の裁判基準1,670万円の90%に当たる1,503万円(約700万円増)と想定できる状況でした。弁護士にて,このような金額水準を踏まえて慰謝料の交渉を実施しました。

また,後遺障害慰謝料以外には,「入通院慰謝料」や「休業損害」,「逸失利益」についても一定の交渉を実施することとしました。保険会社は,弁護士の有無によって金額計算の内容を変える運用をしていることが多く,弁護士の交渉によってはこれらの項目も一定程度の増額がなされ得ると判断しました。

ポイント
頭部のへこみは,異議申立てと面談を通じて12級獲得
併合4級を踏まえた後遺障害慰謝料の交渉を実施(目標約700万円増)
入通院慰謝料,休業損害,逸失利益についても交渉を実施

活動の結果

弁護士による活動の結果,被害者に対する賠償金額は合計で約4,400万円となりました。
弁護士依頼前の提示額約3,350万円と比較すると,約1,050万円の増額が実現されました。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件の具体的な弁護活動は,醜状障害に関する異議申立てと慰謝料交渉の2点でした。それぞれの対応は,適切に尽くせば望ましい結果を獲得することは決して難しいわけではありません。実際に,弁護士が活動を行った結果,比較的円滑に上位等級の認定と慰謝料の増額が実現されることとなりました。

しかし,弁護士依頼前にはこれらの問題が解消できていなかったことも事実です。そのため,被害者は得られるはずの賠償額を1,000万円以上逃す可能性があるところでした。これは非常に重大な問題であると思います。

後遺障害等級を認定する自賠責保険も,賠償金額を提案する相手の任意保険も,そのような問題点を積極的に指摘してくれることはありません。被害者が積極的に問題意識をもって弁護士に相談・依頼しなければ,被害者は十分な補償を受けられない可能性がある,という交通事故分野の問題が浮き彫りになった事例と言えるでしょう。

交通事故被害に関しては,やはり弁護士へのご相談が望ましいと考える次第です。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所