後遺障害12級の神経症状とは?認定基準から慰謝料まで弁護士がわかりやすく解説

交通事故のあと、手足のしびれや痛みがなかなか取れない場合、後遺障害12級と診断される可能性があります。

後遺障害12級の神経症状は、「しびれ・痛み・感覚障害」などが医学的に証明された場合に認定される等級です。

適正な慰謝料や逸失利益を受け取るためには、認定基準と異議申立のポイントを正しく理解しておくことが重要です。

そこで本記事では、後遺障害12級の神経症状の具体的な認定基準や該当する代表的な症状例などを詳しく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

後遺障害12級の神経症状とは?

交通事故や労災などで受傷した後、治療を続けても「しびれ」「痛み」「感覚の鈍さ」などの神経症状が残る場合、後遺障害12級に該当することがあります。

12級の中でも「12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)」として扱われるケースが多く、神経の損傷が医学的に確認できるかどうかが認定の重要な判断基準です。

たとえば、MRIやCTなどの画像検査によって神経圧迫や損傷が裏付けられた場合には、単なる自覚症状ではなく「医学的に証明可能な神経障害」として評価されやすくなります。

一方で、症状があるのに検査結果に明確な異常が見られない場合、より軽い14級と判断されることも少なくありません。

そのため、医師に的確な診断書を書いてもらうことが、12級認定のための大きなポイントです。

後遺障害12級に認定される代表的なケース

後遺障害12級に認定される代表的なケースは、主に以下の通りです。

  • むち打ち・頸椎捻挫による神経症状
  • 腰椎ヘルニアや脊髄損傷に伴うしびれ・痛み
  • 末梢神経損傷による知覚障害・運動障害

詳しく解説します。

むち打ち・頸椎捻挫による神経症状

交通事故の後遺症として多いのが、むち打ち症(頸椎捻挫)による神経症状です。

追突事故などで首に強い衝撃が加わると、頸椎やその周囲の神経が損傷し、長期間にわたってしびれや痛み、頭痛、倦怠感などが残る場合があります。

症状の程度が重い場合には、12級13号として後遺障害が認定されることがありますが、医学的な証拠が乏しいと14級止まりになることも少なくありません。

腰椎ヘルニアや脊髄損傷に伴うしびれ・痛み

腰椎ヘルニアや脊髄損傷が原因で手足にしびれや痛みが残る場合も、後遺障害12級に該当することがあります。

とくに交通事故で腰部に強い衝撃を受けた場合、椎間板が突出して神経を圧迫し、下肢の感覚鈍麻や歩行障害などが生じることがあるのです。

こうした症状が治療を続けても改善せず、画像検査などで神経圧迫が確認されれば、12級の認定が期待できます。

末梢神経損傷による知覚障害・運動障害

骨折や外傷により末梢神経が損傷した場合、手足の感覚が鈍くなったり、力が入りづらくなるといった神経症状が残ることがあります。

このような症状が長期にわたり改善しない場合、後遺障害12級に認定されるケースがあります。

とくに、上肢や下肢の神経損傷では、感覚の喪失や細かい動作の困難が残ることが多く、作業能力や生活の質に直接影響を及ぼすでしょう。

後遺障害12級の認定基準

12級の認定基準一覧

1号1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2号1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4号1耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5号鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
8号長管骨に変形を残すもの
9号一手のこ指を失ったもの
101手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
111足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
12号1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14号外貌に醜状を残すもの

【1号】「1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの」

著しい調節機能障害」とは以下の場合を指します。

著しい調節機能障害
眼の調節力が損傷を受けなかった方の他眼に比して2分の1以下に減じたもの

(注意事項)
①両眼とも損傷を受けた場合,損傷していない眼の調節機能に異常がある場合は,年齢別の調整力と比較する
②以下のいずれかに当たる場合は障害認定されない
・損傷していない眼の調整力が1.5D以下であるとき
・55歳以上であるとき

5歳ごとの年齢別の調整力

年齢(歳)調整力(ジオプトリー(D))
159.7
209.0
257.6
306.3
355.3
404.4
453.1
502.2
551.5
601.35

「眼球に著しい運動障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

「眼球に著しい運動障害を残すもの」
=眼球の注視野が2分の1以下に減じたもの

注視野とは
頭部を固定した状態で眼球を動かして直視できる範囲
平均値は単眼視で各方面50度,両眼視で各方面45度とされています。

【2号】「1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの」

【具体的基準】

「まぶたに著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。
①まぶたを開けた時にまぶたが完全に瞳孔(黒目)を覆ってしまうもの
②まぶたを閉じたときに角膜(眼球の色がある部分を覆う膜)を完全に覆えないもの

【3号】「7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」

「歯科補綴を加えたもの」とは
=現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴

「著しく欠損した」とは
歯冠部(歯肉より露出している部分)の体積の4分の3以上を欠損したもの

「補綴」とは
歯が喪失したり欠損したりしたところを,クラウン(歯全体を覆う被せ物)や入れ歯などの人工物で補うこと

【留意事項】
①認定対象になる歯の条件
→認定対象となる歯は,永久歯を指します。乳歯や含まれず,いわゆる親知らずも含まれません。ただし,乳歯が欠損したことで永久歯の萌出が見込めない場合は含まれます。

②喪失した歯の数より補綴した義歯の数が多い場合
→喪失した歯牙が大きい場合や歯間が広かった場合など,喪失した歯の数よりも多くの補綴を要した場合,等級の認定は喪失した歯の数によって判断されます。

(例)7本を喪失したが,10本の補綴をした場合,7本の歯科補綴として12級を認定する

③ブリッジなどで失った歯以外を切除した場合
→交通事故で失った歯の補綴に際して,ブリッジを設ける目的などで他の歯を切除した場合,歯冠部の4分の3以上切除していれば,歯科補綴を加えた本数に含みます。

(例)交通事故で5本喪失したところ,両側2本の歯にブリッジを施した場合,7本の歯科補綴として12級を認定する

【4号】「1耳の耳殻の大部分を欠損したもの」

「耳殻の大部分の欠損」とは,以下の場合を指します。

「耳殻の大部分の欠損」
耳殻の軟骨部の2分の1以上を欠損したもの

ここで「耳殻」とは,耳のうち外に張り出て飛び出している部分をいいます。
一般的に「耳」と呼ぶ楕円形の部位全体を指します。

なお,耳殻の欠損障害が醜状障害にも該当する場合,いずれか上位の等級が認定されます

【5号】「鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」

変形障害と呼ばれるものです。
変形の程度としては,裸体になったときに目で見てわかるものであることが必要とされます。そのため,レントゲン等の撮影画像で判断できるというのみでは認定対象とはなりません。

【6号】「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」

「関節の機能に障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
上肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
肩関節①屈曲(前方拳上)180度
肩関節②外転(側方拳上)180度
肘関節屈曲・伸展(※)145度・5度(合計150度)
手関節屈曲(掌屈)・伸展(背屈)(※)90度・70度(合計160度)
※肘関節と手関節は,「屈曲+伸展」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

肩関節の運動

肘関節の運動

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
肩関節①伸展(後方拳上)50度
肩関節②外旋・内旋60度・80度(合計140度)
手関節①橈屈25度
手関節②尺屈55度
橈屈と尺屈

【7号】「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」

「関節の機能に障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
下肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
股関節①屈曲・伸展125度・15度(合計140度)
股関節②外転・内転145度・20度(合計65度)
ひざ関節屈曲・伸展130度・0度(合計130度)
足関節屈曲(底屈)・伸展(背屈)45度・20度(合計65度)
「屈曲+伸展」「外転+内転」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

股関節の主要運動

足関節の主要運動

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
股関節外旋・内旋45度・45度(合計90度)

【8号】「長管骨に変形を残すもの」

上肢又は下肢のいずれかについて,長い骨が骨折後にうまく癒合せず,変形してしまった場合です。

上肢の「長管骨に変形を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
2.橈骨及び尺骨の両方に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
3.上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの
4.橈骨又は尺骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、硬性補装具を必要としないもの
5.上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
6.上腕骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
7.橈骨又は尺骨(骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少したもの
8.上腕骨が50度以上、外旋又は内旋で変形癒合しているもの

(「障害認定必携」より引用)

下肢の「長管骨に変形を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.大腿骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
2.脛骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
3.大腿骨の骨端部に癒合不全を残すもの
4.脛骨の骨端部に癒合不全を残すもの
5.腓骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもの
6.大腿骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
7.脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
8.大腿骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
9.脛骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
10.大腿骨が外旋45度以上(=股関節の内旋が0度を超えて可動できない)又は、内旋30度以上(=股関節の外旋が15度を超えて可動できない)で変形癒合しているもの

(「障害認定必携」より引用)

【9号】「一手のこ指を失ったもの」

「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。

1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【10号】「1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの」

「手指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.中手指節関節又は近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が1/2以下に制限されるもの
3.親指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が1/2以下に制限されるもの
4.手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚完全に脱失したもの

【11号】「1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの」

3つの基準が設けられています。

12級11号に該当する場合

1足の第2の足指を失ったもの
第2の足指を含み2の足指を失ったもの
第3の足指以下の第3の足指を失ったもの

なお,「第2の足指」は人差し指,「第3の足指」は中指を指します。そのため,「第3の足指以下の3の足指」は,中指・薬指・小指の3つを指します。

「足指を失ったもの」とは,足指を中足指節関節から失ったことを指します。つまり,足指をすべて失った場合を指すことになります。

(「障害認定必携」より引用)

【12号】「1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの」

「足指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.親指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.親指以外の足指について、中節骨又は基節骨で切断したもの
3.親指以外の足指について、遠位指節間関節又は近位指節間関節で離断したもの
4.親指の中足指節間関節又は指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
5.親指以外の足指の中足指節間関節又は近位指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの

【13号】「局部に頑固な神経症状を残すもの」

神経症状と呼ばれるものです。むち打ちの場合に認定を目指す類型の代表例であるため,後遺障害等級の代表格としても知られているでしょう。これは,交通事故の外傷によって神経系統に異常を来した結果,痛みや痺れといった神経への症状が残存する後遺障害を一般的に指すものです。

具体的な等級とその認定基準は,以下の通りです。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

後遺障害等級は,1級から14級まであり,1級が最も上位の(=重い)後遺障害です。神経症状については,12級の方がより上位の後遺障害等級となります。

また,それぞれの認定基準を満たしているかどうかの具体的な考え方は,以下の通りです。

12級13号症状が医学的に証明できる場合
(画像所見などの他覚的所見によって客観的に認められる場合)
14級9号症状が医学的に説明できる場合
(他覚的所見はないものの,受傷内容や治療経過を踏まえると症状の存在が医学的に推定できる場合)

したがって,画像所見など,第三者が客観的に確認できる所見がある場合は12級の認定される可能性があり,そのような客観的な所見がない場合は14級の認定を目指すことになります。

【14号】「外貌に醜状を残すもの」

醜状障害と呼ばれるものです。
醜状障害は,人の目につく人体の露出面に,目立つ傷跡が残った場合の後遺障害をいいます。醜状の具体的な内容としては,瘢痕や線状痕,組織の陥没,色素沈着による変色などが挙げられます。

12級14号は外貌の醜状障害に関するものですが,外貌とは,頭部・顔面部・頸部の各部位を指します。それぞれの部位について,認定基準は以下のとおり定められています。

12級14号 外貌に醜状を残すもの

部位基準
頭部鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
顔面部10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
頚部鶏卵大面以上の瘢痕

なお,瘢痕の大きさや線状痕の長さを確認する際には,以下の点に注意を要します。

①人目につくことが必要
→眉や髪で隠れる部分は醜状として扱われません。また,アゴの下で正面から見えない部分も対象外となります。これらの部分を除いた長さや面積を計測します。

②2つ以上の傷跡がある場合の判断方法
→複数の傷跡は,それらが一体となっている場合,一体となっている面積や長さを合算した数値で等級が判断されます

③事故時に生じたものでない醜状の取り扱い
→治療中に生じた手術痕や,やけど等の治療後に生じた色素沈着なども,醜状障害の対象に含まれます。

後遺障害12級の神経症状に対する慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害12級の場合,自賠責保険からは94万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は290万円となります。

後遺障害12級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害12級の場合は,労働能力喪失率が14%となります。

計算例
年収500万円,40歳,12級13号認定(むち打ちの場合)

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.14×8.5302(10年ライプニッツ)
5,971,140円

(※)12級13号のむち打ちについては,労働能力喪失期間を10年以内とする運用が広く用いられています。

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

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【後遺障害13級】具体的な認定基準は?慰謝料や逸失利益の金額は?

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害13級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害13級の認定基準

13級の認定基準一覧

1号一眼の視力が0.6以下になつたもの
2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
3号一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4号両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
5号五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
6号一手のこ指の用を廃したもの
7号一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
8号一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
9号一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
10一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
11胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

【1号】「一眼の視力が0.6以下になつたもの」

後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【2号】「正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの」

複視」は,1つの物体が2つに見えることをいいます。主に眼の周りにある筋肉の一部が麻痺して片方の眼球の動きが悪くなることで,物が上下左右にずれて二重に見える状態を指します。

「複視の症状を残すもの」とは,以下の全てを満たす場合を指します。

1.本人が複視のあることを自覚していること
2.眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること
3.ヘススクリーンテストにより患側の像が健側に比して5度以上離れた位置にあること

【3号】「一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの」

「半盲症」とは

「半盲症」とは
視野の右半分又は左半分が欠損し,見えなくなってしまう症状をいいます。以下のような種類があります。
同側半盲:両眼の同じ側で半盲が生じる場合
異名半盲:両眼のそれぞれ反対側で半盲が生じる場合

また,視野の上半分または下半分が欠損する場合もあり,「水平半盲」といいます。

「視野狭窄」とは

「視野狭窄」とは
視野が狭くなる症状をいいます。以下のような種類があります。
同心性狭窄:中心部分ははっきり見えるが,周辺部分が見えない
不規則狭窄:視野の一部分が規則性のない形で狭くなる

「視野変状」とは

「視野変状」とは
半盲症や視野狭窄のほか,視野に異常が生じることをいいます。具体的には以下の内容があります。
暗転:視野の中に暗くて見えない部分が生じるもの
視野欠損:視野の一部が見えなくなる状態

【4号】「両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの」

「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは
まぶたを閉じた場合に、角膜を完全に覆うことができるものの、球結膜(白目)が露出してしまう場合

「まつげはげを残すもの」とは
まつげの生えている周縁の2分の1以上にわたってまつげはげを残す場合

両目について,目を閉じていても白目が露出してしまった場合,又はまつげが半分以上剥げてしまった場合は,13級4号の認定対象になります。

【5号】「五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」

歯牙障害と呼ばれる後遺障害です。歯牙障害は,歯科補綴を加えた歯の数によって等級が認定されます。

「歯科補綴を加えたもの」とは
=現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴

「著しく欠損した」とは
歯冠部(歯肉より露出している部分)の体積の4分の3以上を欠損したもの

「補綴」とは
歯が喪失したり欠損したりしたところを,クラウン(歯全体を覆う被せ物)や入れ歯などの人工物で補うこと

【留意事項】
①認定対象になる歯の条件
→認定対象となる歯は,永久歯を指します。乳歯や含まれず,いわゆる親知らずも含まれません。ただし,乳歯が欠損したことで永久歯の萌出が見込めない場合は含まれます。

②喪失した歯の数より補綴した義歯の数が多い場合
→喪失した歯牙が大きい場合や歯間が広かった場合など,喪失した歯の数よりも多くの補綴を要した場合,等級の認定は喪失した歯の数によって判断されます。

(例)5本を喪失したが,7本の補綴をした場合,5本の歯科補綴として13級を認定する

③ブリッジなどで失った歯以外を切除した場合
→交通事故で失った歯の補綴に際して,ブリッジを設ける目的などで他の歯を切除した場合,歯冠部の4分の3以上切除していれば,歯科補綴を加えた本数に含みます。

(例)交通事故で3本喪失したところ,両側2本の歯にブリッジを施した場合,5本の歯科補綴として13級を認定する

なお,歯牙障害については,歯科用の後遺障害診断書を用いて主治医の記載を依頼します。

後遺障害診断書(歯科用)

【6号】「一手のこ指の用を廃したもの」

手指の用廃に関する等級です。

「手指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.中手指節関節又は近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が1/2以下に制限されるもの
3.親指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が1/2以下に制限されるもの
4.手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚完全に脱失したもの

(「障害認定必携」より引用)

【7号】「一手のおや指の指骨の一部を失つたもの」

1指骨の一部を失っていること(遊離骨片の状態を含む)がX線写真より確認できるものを指します。

【8号】「一下肢を一センチメートル以上短縮したもの」

下肢の短縮は,上前腸骨棘と下腿内果下端の間の長さを健側の下肢と比較して等級認定を行います。

下肢の短縮

【9号】「一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの」

「足指を失ったもの」とは,足指を中足指節関節から失ったことを指します。つまり,足指をすべて失った場合を指すことになります。

(「障害認定必携」より引用)

【10号】「一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの」

3つの基準が設けられています。

13級10号に該当する場合

1足の第2の足指の用を廃したもの
第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの
第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの

なお,「第2の足指」は人差し指,「第3の足指」は中指を指します。そのため,「第3の足指以下の3の足指」は,中指・薬指・小指の3つを指します。

「足指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.親指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.親指以外の足指について、中節骨又は基節骨で切断したもの
3.親指以外の足指について、遠位指節間関節又は近位指節間関節で離断したもの
4.親指の中足指節間関節又は指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
5.親指以外の足指の中足指節間関節又は近位指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの

上記のうち「1」及び「4」は親指に関する基準であるため,「2」「3」「5」のいずれかに該当する場合,14級8号の認定対象になります。

【11号】「胸腹部臓器の機能に障害を残すもの」

具体的な認定基準は,各臓器ごとに異なります。具体的には以下のような基準が設けられています。

胃の障害
噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失したもの

胆のうの障害
胆のうを失ったもの

ひ臓の障害
ひ臓を失ったもの

腎臓の障害
1.一側の腎臓を失い,GFR値が90ml/分を超えるもの
2.腎臓を失っておらず,GFR値が70ml/分を超え90ml/分以下のもの

生殖機能に軽微な障害を残すもの
【男性】
 一側の睾丸を失ったもの(睾丸の亡失に準ずべき程度の萎縮を含む)
【女性】
 一個の卵巣を失ったもの

後遺障害13級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害13級の場合,自賠責保険からは57万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は180万円となります。

後遺障害13級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害13級の場合は,労働能力喪失率が9%となります。

計算例
年収500万円,40歳,13級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.09×18.3270(27年ライプニッツ)
8,247,150円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

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【後遺障害14級】認定対象となる症状や慰謝料額を一挙解説

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害14級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害14級の認定基準

14級の認定基準一覧

1号一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2号三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3号一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
4号上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5号下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6号一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
7号一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
8号一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
9号局部に神経症状を残すもの

【1号】「一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの」

具体的には,以下の場合を指します。

1.まぶたを欠損したことで,眼を閉じても眼球の一部(白目)が露出してしまう場合
2.まぶたで眼球全てを覆うことはできるが,まぶたの欠損によってまつげが半分以上無くなって生えてこない場合

【2号】「三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」

歯牙障害と呼ばれる後遺障害です。歯牙障害は,歯科補綴を加えた歯の数によって等級が認定されます。

「歯科補綴を加えたもの」とは
=現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴

「著しく欠損した」とは
歯冠部(歯肉より露出している部分)の体積の4分の3以上を欠損したもの

「補綴」とは
歯が喪失したり欠損したりしたところを,クラウン(歯全体を覆う被せ物)や入れ歯などの人工物で補うこと

【留意事項】
①認定対象になる歯の条件
→認定対象となる歯は,永久歯を指します。乳歯や含まれず,いわゆる親知らずも含まれません。ただし,乳歯が欠損したことで永久歯の萌出が見込めない場合は含まれます。

②喪失した歯の数より補綴した義歯の数が多い場合
→喪失した歯牙が大きい場合や歯間が広かった場合など,喪失した歯の数よりも多くの補綴を要した場合,等級の認定は喪失した歯の数によって判断されます。

(例)4本を喪失したが,5本の補綴をした場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③ブリッジなどで失った歯以外を切除した場合
→交通事故で失った歯の補綴に際して,ブリッジを設ける目的などで他の歯を切除した場合,歯冠部の4分の3以上切除していれば,歯科補綴を加えた本数に含みます。

(例)交通事故で2本喪失したところ,両側2本の歯にブリッジを施した場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

【3号】「一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの」

交通事故による聴力の低下のため,1メートル以上離れた距離では小声での話し声を聞き取ることが困難になった状態を指します。
具体的には,検査の結果,1耳の平均純音聴力レベルが40デシベル以上70デシベル未満の状態のことをいいます。

純音聴力レベル」とは
音波の基本的なもの(=純音)に対する聴こえ方の程度。音が聴こえるかどうか

【4号】「上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」

上肢の露出面とは,肩関節から先(指先まで)を指します。
この範囲に,手のひら大(指を除く)の醜状が残った場合,認定対象になります。

【5号】「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」

下肢の露出面とは,股関節から先(足の背部まで)を指します。
この範囲に,手のひら大(指を除く)の醜状が残った場合,認定対象になります。

【6号】「一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの」

具体的には,以下の場合を指します。

1.指の骨の一部を喪失した場合
2.骨折した骨がうまく癒合しなかった場合

1指骨の一部を失っていること(遊離骨片の状態を含む)がX線写真より確認できる必要があります。

【7号】「一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの」

遠位指節間関節は,最も指先に近い関節(いわゆる第一関節)を指します。

(「障害認定必携」より引用)

交通事故により,親指以外の手指を第一関節で曲げたり伸ばしたりできなくなった場合に該当します。

【8号】「一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの」

第三の足指とは中指のことをいいます。そのため,「第三の足指以下」の足指とは,中指,薬指,小指を指します。

また,「足指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.親指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.親指以外の足指について、中節骨又は基節骨で切断したもの
3.親指以外の足指について、遠位指節間関節又は近位指節間関節で離断したもの
4.親指の中足指節間関節又は指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
5.親指以外の足指の中足指節間関節又は近位指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの

上記のうち「1」及び「4」は親指に関する基準であるため,「2」「3」「5」のいずれかに該当する場合,14級8号の認定対象になります。

【9号】「局部に神経症状を残すもの」

局部=体の一部に,神経系統の障害による症状が残ることを指します。
一般に,神経症状が医学的に証明できないものの,医学的に説明できる場合をいうものと理解されています。

症状が医学的に証明できる場合
=画像所見などの他覚的所見によって客観的に認められる場合

症状が医学的に説明できる場合
=他覚的所見はないものの,受傷内容や治療経過を踏まえると症状の存在が医学的に推定できる場合

他覚的所見はないものの,総合的判断によって症状の存在が説明可能と評価される場合,14級9号の認定対象になります。

後遺障害14級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害14級の場合,自賠責保険からは32万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は110万円となります。

後遺障害14級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害14級の場合は,労働能力喪失率が5%となります。

計算例
年収500万円,40歳,14級9号認定(むち打ちにて)

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.05×4.5797(5年ライプニッツ※)
1,144,925円

(※)14級9号のむち打ちについては,労働能力喪失期間を5年以内とする運用が広く用いられています。

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害14級の場合,神経症状のうち,主に自覚症状に関する認定が問題となるケースが多く見られます。そして,自覚症状の内容や程度が分かる資料を別途作成・提出するためには,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,特に自覚症状が重要な問題となるときには,被害者請求の方法を選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

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【交通事故解決事例】後遺障害12級獲得後,逸失利益の満額回収で2200万円超の高額賠償にて解決した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】

・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

事案の概要

被害者が単車に乗車中,片側二車線の幹線道路を直進走行していたところ,左の駐車場から進入してきた四輪車と衝突する事故に遭いました。
被害者は,右上腕を骨折し,主に肩関節の可動域に大きな支障が生じている状況でした。

弁護士には,退院直後の段階でご相談され,その後の対応や解決に向けたお力添えのため弁護活動を受任しました。
相談当時には,過失割合について交渉を行っている状況でした。

法的問題点

①過失割合

単車が道路を直進中に,路外から進入した四輪車と事故になった場合の過失割合は,単車:四輪車=10:90が基本過失割合とされます(【218】図)。
また,現場の道路は「幹線道路」に該当するため,-5%の修正がなされ,単車:四輪車=5:95となることが見込まれる事故態様でした。

「別冊判例タイムズ38号」より引用

もっとも,加害者側は,被害者の速度超過を問題視しているようでした。被害者の単車に速度超過がある場合,時速15㎞以上で10%,時速30㎞以上で20%の修正要素となるところです。
また,被害者としては,自身が被害者であるにもかかわらず自分の方にも過失割合が発生することに納得し難いという意向をお持ちでした。
そのため,被害者及び加害者それぞれが主張する過失について,その根拠の有無を慎重に確認する必要がありました。

ポイント
事故類型から想定される過失割合は5:95
被害者加害者双方に修正要素の言い分がある様子であった

②後遺障害等級

被害者は,骨折の影響で肩関節の動きに制約のある状況でした。これは,「上肢の機能障害」に該当する後遺障害と思われるところです。

上肢の機能障害については,以下の「1」~「4」の等級認定基準が設けられています。

1.「上肢の用を全廃したもの」

等級基準
1級4号両上肢の用を全廃したもの
5級6号1上肢の用を全廃したもの

「上肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。


三大関節(肩関節・肘関節・手関節)の全てが強直(※)している
かつ
手指の全部の用を廃している

※関節が可動性を失い,動かなくなった状態

2.「関節の用を廃したもの」

等級基準
6級6号1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

3.「関節の機能に著しい障害を残すもの」

等級基準
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
2.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2分の1以下に制限されていないもの

4.「関節の機能に障害を残すもの」

等級基準
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「関節の機能に障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合

なお,関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
肩関節については,以下の通りです。

主要運動及び関節可動域

関節主要運動参考可動域角度
肩関節①屈曲(前方拳上)180度
肩関節②外転(側方拳上)180度

被害者の場合,肩関節の可動域に一定の制限が生じており,その程度としては健側の4分の3以下と評価し得るものと見受けられました。そのため,12級6号の認定可能性が考えられる状況でした。

ポイント
肩関節の可動域制限が問題
患側可動域が健側の4分の3以下で12級の認定可能性あり

③慰謝料

交通事故の慰謝料には,「傷害慰謝料」と「後遺障害慰謝料」があります。そして,それぞれについて自賠責保険の基準=いわゆる自賠責基準と,裁判で用いられる基準=いわゆる裁判基準があります。
保険会社は,一般的に弁護士がいない場合には自賠責基準(また保険会社内部の基準)に沿った金額提示を行いますが,弁護士が交渉を行う場合は裁判基準を念頭に置いた計算を行うケースが大多数です。通常,自賠責基準より裁判基準の方が大きい金額となるため,その差額が弁護士による交渉の成果となりやすいところです。

【傷害慰謝料】

ケガを負ったことや入通院を要することに対する慰謝料です。主に入通院期間や実通院日数を基準に計算されます。

自賠責基準の計算方法

①対象日数「総治療期間」と「実通院日数×2」のいずれか小さい日数
②日額1日4,300円
③計算方法①対象日数×②日額=自賠責基準の金額

任意保険基準の計算方法(一例)

任意保険基準の慰謝料

裁判基準の計算方法 別表Ⅰ(重傷)

裁判基準の慰謝料

本件では,被害者の治療費だけで自賠責保険の支払限度額120万円を大きく超えていたため,任意保険基準と裁判基準との比較をすることが見込まれます。
この点,被害者の通院期間は約9か月であったところ,通院9か月の傷害慰謝料は,任意保険基準が82万円,裁判基準が139万円となります。両者の間には50万円以上の差があり,傷害慰謝料に交渉余地があると見込まれることが分かります。

【後遺障害慰謝料】

後遺障害慰謝料は,後遺障害が残存することに対する慰謝料で,その金額は等級ごとに定められています。自賠責基準と裁判基準の比較は以下の通りです。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害12級の場合,自賠責基準が94万円,裁判基準が290万円であり,200万円近くの差があります。後遺障害慰謝料についても,交渉の余地があることが見込まれます。

ポイント
傷害慰謝料は任意保険基準と裁判基準の差を交渉
後遺障害慰謝料は自賠責基準と裁判基準の差を交渉

④後遺障害逸失利益

後遺障害等級が認定された場合,損害の項目として後遺障害逸失利益が発生します。後遺障害逸失利益は,後遺障害によって労働能力が低下したことにより,被害者に生じる収入減少を金額計算したものです。

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

【基礎収入】

基礎収入は,事故前年の収入額を基準にするのが通常です。事故前年の収入額を特定する方法としては,給与所得者(会社員等)であれば源泉徴収票,事業所得者(個人事業主等)であれば確定申告書を用いるのが一般的とされます。

【労働能力喪失率】

労働能力喪失率は,後遺障害によって労働能力が失われた割合を指し,その程度は等級によって定められています。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害12級の場合,14%とされるため,計算に際しては「0.14」となります。

【労働能力喪失期間】

労働能力が失われる期間を指しますが,原則として67歳までの期間とされます。67歳に至る前に労働が終了するケースでは,その年齢までの期間を用いることが考えられます。

この点,保険会社は,一般的な給与所得者の定年が60歳であることを踏まえ,60歳までの期間を用いて金額提示をすることが少なくありません。もっとも,あくまで原則は67歳までの期間であるため,60歳までに限定するのは例外的な取り扱いという位置づけに過ぎないと理解するのが適切でしょう。

ポイント
本件の原則的な逸失利益は
「事故前年収入」×「0.14」×「67歳までの期間に対応するライプニッツ係数」

弁護士の活動

①過失割合

本件では,幹線道路の修正を踏まえた過失割合が5:95であるところ,これをさらに修正すべきかどうか,という点が問題となりました。
この点,特に相手が主張する被害者の速度超過を考慮すべきかが主な問題となるところです。

【加害者の主張】

加害者は,被害者の速度超過を指摘していましたが,その根拠は加害者の体感のみでした。ドライブレコーダー映像を踏まえても,時速15㎞以上の速度超過が分かるということはなく,客観的根拠に乏しいと判断しました。
そのため,加害者側の主張する速度超過の修正は端的に拒否するという姿勢を取ることとしました。

【被害者の主張】

被害者としては,具体的な修正要素の主張こそないものの,自分では避け難い事故であったため,自分が無過失になる余地がないか,という問題意識をお持ちの状況でした。そのため,弁護士においては具体的な修正要素の主張が可能か,検討を試みることとしました。

路外から進入してきた車との事故で,加害者に生じやすい修正要素としては,「徐行なし」が考えられます。文字通り,徐行しないまま進入してきた場合を修正要素とするものです。
もっとも,ドライブレコーダー映像上,相手の車両は低速で駐車場内を移動しており,車道への進入直前にも一時停止をしていたことが見受けられました。そのため,弁護士からは,「徐行なし」の主張が難しいことを確認の上,5:95の過失割合での解決を進めることとしました。

ポイント
速度超過の根拠がなく,相手の主張は拒否
被害者に有利な修正要素も,具体的な確認の上で主張困難と判断

②後遺障害等級

本件では,肩関節の可動域が問題となっていましたが,関節可動域は,後遺障害診断書上の測定値を基準に判断されるのが一般的です。そのため,可動域制限について後遺障害等級を獲得するためには,後遺障害診断書上の測定結果が極めて重要となります。

そこで,弁護士からは,被害者及び主治医と問題意識を共有の上,患側の可動域が健側の可動域の4分の3以下と言えるか,ということを明らかにするよう勧めることにしました。その結果,測定値は4分の3を十分に下回る数字であることが確認でき,12級の獲得に十分な後遺障害診断書の作成となりました。

これを踏まえた等級認定の結果,当初の目標通り12級の獲得に至りました。

ポイント
関節可動域は後遺障害診断書の記載内容を基準に判断される

③慰謝料

傷害慰謝料及び後遺障害慰謝料については,弁護士にて裁判基準を念頭に置いた交渉を実施しました。

弁護士が交渉を行う場合,裁判基準の80~90%を目指す交渉が有力と考えられています。裁判基準満額は,裁判を行って被害者の言い分が全て認められた(加害者側の言い分がすべて退けられた)場合に初めて認められる金額であるため,交渉で実現されることは通常ありませんが,裁判基準に近い水準は交渉でも合意されるべき水準として多く用いられているところです。

本件では,裁判基準の90%を合意の目標額として金額交渉を実施したところ,結果としても裁判基準の90%を採用することとなり,十分な慰謝料額に至りました。

ポイント
交渉の目標額は裁判基準の80~90%が目安
90%を目指す交渉を実施し,90%にて合意

④逸失利益

後遺障害逸失利益については,特段の事情がない限り以下の計算を用いるのが適切と思われる内容でした。

目標とする逸失利益
=「事故前年収入」×「0.14」×「67歳までの期間に対応するライプニッツ係数」

この点,保険会社は「67歳まで」でなく「60歳まで」と主張する場合が少なくありませんが,これは60歳までで労働を終えることが明確なケースに限られるべきところです。
そのため,弁護士においては,60歳までに限定する理由が特にないことを被害者の状況を踏まえて指摘し,67歳までの計算が適切であることを主張しました。

交渉の結果,逸失利益は当初の目標と同額にて合意することとなりました。その金額は,12級ながら約2000万円と,高額合意に至りました。

ポイント
労働能力喪失期間は原則通り67歳とする内容で合意

活動の結果

以上の活動の結果,被害者には後遺障害12級が認定されるとともに,約2250万円の賠償額を獲得することとなりました。

慰謝料,逸失利益ともに,弁護士が目標とする金額が実現され,被害者への十分な補償がなされる結果となりました。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件では,後遺障害等級12級で2200万円を超える賠償額となり,等級に比して非常に高額の賠償となる事例でした。主な要因は,被害者が若い年齢であったことや安定した職に就いていたことで,後遺障害逸失利益が高額になりやすかった点にあると思われます。もっとも,適切な請求や交渉なくこの金額になることは考えにくいため,やはり適切な交渉を尽くすことが大切である,と改めて感じるケースになりました。

また,本件では双方に過失割合の言い分があったところ,主に相手の主張する修正要素を排斥した内容での解決に至りました。修正要素は,修正すべきと主張する側がその根拠を示し,立証しなければなりません。そのため,相手の主張に根拠がない場合や,立証ができていると言えない場合には,修正要素の主張を受け入れる必要はないでしょう。
もちろん,交渉の段階では互いの主張を一定程度反映した中間的な解決も多くありますが,相手が主張している,というだけで安易に譲歩することもまた不合理と考えるべきです。

これらの交渉は,弁護士を通じて行うかどうかで大きく結果が異なりやすいものです。そのため,保険会社との交渉を想定する場合は,一度弁護士にご相談されることを強くお勧めします。

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【交通事故解決事例】12級認定後の金額交渉を円滑に進め,高齢パートタイマーながら約1か月で150万円超の増額を実現した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】

・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

事案の概要

被害者が夜間に歩行中,信号のない十字路交差点を横断しようとしたところ,同一方向に走行中の自動車が左折を試み,衝突する事故に遭いました。被害者及び加害者が通っていた道路はセンターラインのない狭路,被害者が横断を試みた道路はセンターラインのある片側一車線の道路でした。

被害者は,右大腿骨を骨折し,主に股関節に支障が生じました。2年近く通院をしたものの,股関節に可動域制限が残り,後遺障害12級が認定されました。

弁護士には,保険会社からの金額提示を受けた段階で,金額の合理性と増額余地の有無をご相談されました。
なお,被害者は単身居住のパートタイマーで,年収が100万円前後の高齢女性でした。

法的問題点

①過失割合

保険会社の提示では,被害者の過失割合が10%とされていました。
被害者にも過失割合がある場合,過失割合の分だけ賠償額が減少することになるため,過失割合の数字が適切であるかどうかは十分な確認が必要となります。

この点,本件事故現場で,横断歩行者と同一方向進行中に左折した自動車との事故は,基本過失割合が10:90とされます(【34】図(b)).

「別冊判例タイムズ38号」より引用

そして,修正要素としては,「夜間」の+5%と,「高齢者」の-5%がそれぞれ該当しますが,差し引きゼロのため,修正要素による過失割合の変化は生じないこととなります。

そのため,他の事情がなければ被害者の過失割合は10%とするのが適切な内容と判断される状況でした。

②傷害慰謝料

交通事故では,入通院期間に応じた傷害慰謝料という慰謝料が発生します。これは,入院や通院を強いられたことの精神的負担や,治療を要するようなケガを負った苦痛への金銭賠償という性質のものです。
そのため,傷害慰謝料の金額は,ケガが大きいほど高額になり,治療期間が長期に渡る方が高額になることが一般的です。

本件の場合,被害者の治療期間は2年以上,入院日数も1か月以上と,非常に長期間の治療を要している状況でした。その期間や後遺障害が残るほどの受傷であったことを踏まえると,慰謝料は決して低く見積もられるべきではないと考えられます。

この点,保険会社の提示は一定の金額ではありましたが,治療期間が長期であった分,交渉の余地はあると思われる状況でした。治療長期の交通事故では,基本的に弁護士による慰謝料交渉の余地が生じやすく,本件でも傷害慰謝料の交渉が見込まれる状況でした。

ポイント
傷害慰謝料は入通院期間を主な基準として計算する
治療期間が長期の場合,弁護士による交渉の余地が生じやすい

③後遺障害慰謝料

後遺障害等級が認定された場合,傷害慰謝料とは別に,後遺障害慰謝料が発生します。これは,将来に渡って後遺障害が残存することに対する精神的苦痛を対象とするものです。
後遺障害慰謝料は,後遺障害等級によって金額が定められていますが,12級の場合,自賠責基準の金額が94万円,裁判基準の金額が290万円とされています。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

本件では,自賠責基準に沿って94万円の提示がなされており,いわば最低額というべき提示内容でした
保険会社が自賠責基準で提案を行うのは,その金額で合意ができれば自社の負担なく解決ができるためです。一方,被害者としては,自賠責から自分で回収しても同額が受領できる以上,相手保険とその金額で合意するメリットがほとんどありません。
後遺障害慰謝料についても,十分な増額交渉が必要であると判断される状況でした。

ポイント
後遺障害等級が認定されると,等級に応じた後遺障害慰謝料が発生する
相手保険の提示は自賠責基準であったため,増額交渉の余地がある内容

④弁護士相談前の交渉経過

被害者と保険会社の間では,弁護士への相談前に一定の交渉が行われていました。当初の保険会社の提示は約250万円であったところ,被害者が納得できないとの意思を表明したところ,保険会社から300万円の支払が可能であるとの再提示を受けている状況でした。

このように,保険会社担当者と交渉を試みると,被害者に対して一定の増額提示を行ってくれることがあります。これ自体は決して不利益ではなく,被害者による対応の成果と言えるでしょう。
しかしながら,保険会社による増額提示が本当に満足すべき金額かどうか,という点は全く別の問題です。そもそも,保険会社担当者がすんなり増額提示をすることができるのは,最初の提示が最低限に近い水準であったためです。そうすると,保険会社担当者が早期に引き上げられる程度の水準が,弁護士による交渉でようやく実現し得る水準と同程度であるか,という点には大きな疑問が残ります。

本件の場合でも,弁護士からは,少なく見積もって400万円ほどの賠償額は期待してよい状況であろうと判断される状況でした。
保険会社は,被害者による弁護士依頼を防止する目的で一定の増額提示をすることがあり得ますが,その提示内容が本当に有益かどうかは慎重に判断することが適切でしょう。

ポイント
保険会社は被害者の弁護士依頼を回避するため増額提示することがある
もっとも,増額結果が満足すべき水準かは慎重に検討すべき

弁護士の活動

①過失割合

弁護士においては,特に主張すべき修正要素の有無を確認することとしました。結果,特に被害者から主張すべき修正要素はないことが確認でき,過失割合は相手保険の提示通り10%とする解決が適切であるとの判断に至りました。

②傷害慰謝料

傷害慰謝料については,相手保険の提示額と弁護士が目標とする水準との差額について,増額交渉を実施することとしました

弁護士が慰謝料を交渉することで増額しやすいのは,保険会社の運用による面が大きいところです。保険会社は,弁護士が交渉を行う場合に限り,いわゆる裁判基準を念頭に置いた慰謝料計算をする傾向にあります。そのため,より低い計算基準で算出された慰謝料との差額が生じるわけです。

具体的な弁護士の慰謝料交渉に際しては,裁判基準とされる最大額の80~90%の金額での合意を目指すことが多く見られます。裁判基準の満額は,裁判で裁判所が全面的に被害者の言い分を認めた場

合のものであるため,裁判なしでの請求が困難ですが,概ね80~90%ほどの水準であれば,保険会社も裁判を回避する利益を踏まえて合意することが多くなります。
特段の事情がなければ,裁判基準とされる最大額の90%で合意ができる場合,有益な交渉結果と言いやすいでしょう。

本件の慰謝料交渉でも,裁判基準の90%を目標の目安に交渉を試みたところ,90%を若干上回る金額での合意となり,傷害慰謝料の増額に至りました。

ポイント
傷害慰謝料は,裁判基準の80~90%を目指す交渉が一般的
90%に至った場合は,有益な結果と評価できる場合が大多数

③後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料についても,弁護士が交渉を行う場合,裁判基準の80~90%を合意の水準として見込む場合が多く見られます。この点,12級の慰謝料の場合,裁判基準が290万円のため,80~90%は232万円~261万円となります。そうすると,提示額の94万円(=自賠責基準)からは概ね150万円前後の増額余地があり,後遺障害慰謝料についても十分な交渉が必要であると想定されました。

この点,後遺障害慰謝料について裁判基準を踏まえた金額で請求できる根拠は,まさにその後遺障害等級が認定されたという事実です。後遺障害慰謝料は,後遺障害等級が認定されるような症状が残ったということを理由に支払われるものであるため,等級認定されれば通常は支払われるべき,ということになります。
裏を返せば,後遺障害慰謝料を減額交渉しようとするのであれば,その等級が認定されたことが不適切である,という内容の主張になるのが通常です。もっとも,これは保険会社の主張としては困難と言わざるを得ません。

そのため,弁護士からは,端的に裁判基準を踏まえた金額交渉を実施して,相手保険の了承を引き出すことにしました。交渉の結果,傷害慰謝料と同じく裁判基準の90%を若干上回る金額での合意に至り,増額が実現されました。

ポイント
後遺障害慰謝料は,等級認定されれば他の理由なく支払われるべきもの

④弁護士依頼前の交渉経過について

弁護士に依頼する前の交渉によって,被害者には一定の増額提示がなされていましたが,その内容はキリのよい300万円という水準への増額をする,というのみであり,具体的な根拠は不明でした。おそらく,具体的な根拠自体存在せず,被害者の早期合意を獲得する目的で増額をした,という形を取ろうとしたものと推測されます。

この点,弁護士による交渉は被害者本人による交渉とは別のものとして行いますが,被害者にとっては,「自分で増額を一部勝ち取った」という事実に間違いはなく,弁護士としてもその点に配慮することが適切です。
そこで,弁護士費用の金額計算に際して,被害者による交渉の成果を反映させることにしました。

交通事故の弁護士費用は,弁護士の活動によって増加した金額(経済的利益)を基準に計算されます。経済的利益が大きいほど,弁護士費用も大きくなります。
本件では,当初提示の約250万円と最終結果との差額でなく,被害者による交渉で引き出された300万円という金額と最終結果の差額を経済的利益とし,弁護士費用を計算する契約としました。

一般的な経済的利益
「最終結果」-「保険会社の提示(約250万円)」

本件の経済的利益
「最終結果」-「被害者の交渉結果(300万円)」

なお,被害者が300万円の増額提示を受けたのは口頭でのことで,その根拠はありませんでしたが,弁護士判断で300万円を経済的利益の計算に用いることとしました。

ポイント
弁護士費用は経済的利益を基準に計算される
被害者が交渉で引き出した増額分は,経済的利益に含まない契約に

活動の結果

以上の活動の結果,約450万円での合意となり,150万円を超える増額に至りました。
また,交渉の開始から被害者による賠償金の受領までは約1か月の期間と,早期円満な解決になりました。

弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,被害者が保険会社から一定の増額提示を受けていた点に特徴がありました。もっとも,その増額提示が被害者にとって真に有益かは明確でありません。実際,弁護士目線では,最低額に若干色を付けた,という程度に映る内容でした。

また,本件の被害者は高齢のパートタイマーの方であったため,その立場上,後遺障害逸失利益が大きくはなりづらく,慰謝料の交渉がメインになるという特徴もありました。この場合,逸失利益が限定的になる以上,総額は控えめな水準になる場合もありますが,慰謝料に十分な交渉余地があることに変わりはありません。
むしろ,慰謝料の交渉を十分に尽くさなければ,適切な被害者の救済は図ることができないため,慰謝料の適切な交渉がより重要な事故類型ということができるでしょう。

本件では,保険会社からの増額提示にしっかりと疑問を持って弁護士に相談されたこと,慰謝料が中心の交渉となることを踏まえてしっかりと慰謝料の増額を目指す動きを取られたことが,適切な賠償につながったと言えます。

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【交通事故解決事例】眼窩骨折後に複視が残った被害者を弁護し,後遺障害13級の認定と約980万円の損害賠償を獲得した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】


・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

事案の概要

被害者が自転車に乗車し直進走行していたところ,信号のない十字路交差点で右方から同じく直進走行してきた四輪車と衝突する事故に遭いました。
事故により,被害者は眼窩底骨折や鼻骨骨折などのケガを負い,入通院治療を余儀なくされました。

弁護士へのご相談は,入院中に実施されました。今後の治療に際して,健康保険の利用を相手保険から求められており,健康保険利用の是非に悩みをお持ちの状況でした。また,加害者側が自分に過失がない旨の主張しているため,治療費が自己負担の状態になっているとのことでした。

弁護士にて,適切な対応方針を検討の上,十分な損害賠償をの獲得を目指すため,弁護活動を受任する運びとなりました。

法的問題点

①健康保険の利用

交通事故の場合,健康保険の利用を勧められることが一定数あります。これは,主に治療費の負担軽減を目的に行われるものです。

前提として,交通事故で受傷した場合の治療には,「自由診療」と「保険診療」の二つがあります。簡単に区別すれば,健康保険を利用しない治療が「自由診療」で,健康保険を利用する治療が「保険診療」となります。

自由診療は,公的医療保険の適用がないため,診療費が医療機関ごとの設定となり,一般的に高額です。その一方で,保険診療では受けられない治療法が可能であったり,医療機関によっては自由診療専用の予約枠が設けられていたりと,高額な分だけ融通の利く受診方法ということができるでしょう。

自由診療と保険診療

治療方法医療費自己負担部分治療の選択肢予約の優遇等
自由診療高額全額制限なしあり
保険診療低額一部のみ制限ありなし

もっとも,交通事故の一般的な治療過程で,自由診療でなければ治療が受けられず不都合である,ということはあまり生じません。そうすると,保険診療にするデメリットがあまりないため,医療費を低額にできる分だけ得であるとの考え方になります。
そのため,保険会社からは,特に入院を要するなど治療費が高額になりそうな場合に,被害者へ健康保険の利用を勧めることがあるのです。

これは,被害者にとっても有益なことがあり得ます。具体的には,被害者にも過失割合のあるケースが代表例です。
過失割合がある場合,被害者自身も治療費を一部自己負担する必要があります。負担割合は過失割合によって決まりますが,負担金額は治療費そのものの金額に直接的な影響を受けることとなります。例えば,過失割合10%の被害者の場合,治療費が10万円であれば自己負担1万円,治療費が100万円であれば自己負担10万円,というような差異が生じ得るわけです。
そのため,被害者にも過失割合がある事故では,健康保険の利用が有益な選択肢になり得るでしょう。

また,過失がない事故であったとしても,将来的な金額交渉に際しては健康保険の利用が有益になり得ます。保険診療を選択した場合,治療費が減少し,相手保険の治療費負担が軽減するため,その分だけ慰謝料など他の項目の交渉に際して柔軟な譲歩が得られやすくなる,というケースは一定数見られるところです。

ポイント
健康保険を利用すると,治療費が低額になる
過失割合がある場合は,被害者の負担額に直接の影響がある

②過失割合

過失割合については,相手本人が無過失を主張しているとのことでした。もっとも,その主張には全く根拠がなく,言うならば「ゴネている」状態でした。

この点は,最終的には保険会社と加害者本人との間できちんと解決してもらえば足りるのですが,治療中に相手が無過失を主張していると,一つ問題が生じます。それは,相手保険が治療費などの負担をしてくれない,という点です。
相手本人が無過失を主張する以上,相手の代わりに支払う立場である保険会社は支払をすることができません。しかし,治療をストップするわけにはいかないため,治療費は随時発生しますし,休業があれば休業損害も発生し続けます。そうすると,これらの損害はとりあえず被害者が立て替えるほかなく,被害者が経済的負担を背負い続けなければならないのです。

相手の不合理な主張によって,被害者に重い経済的負担が生じるのは明らかに不適切です。そのため,被害者の負担になっている状態を速やかに取り除くことが必要な状況でした。

なお,本件の事故状況を踏まえた一般的な過失割合は20:80となることが見込まれる状況でした(【240】図)。

20:80の過失割合であれば,加害者の賠償保険でとりあえず全額負担を行う,という運用が一般的であるため,本件で被害者が立て替えを強いられるのはやはり不適切と言えます。

ポイント
加害者が無過失を主張している場合,被害者による立替の必要があり得る
20:80の過失割合であれば,被害者の立替は不適切

③後遺障害等級認定

被害者の主な受傷内容は,眼窩底骨折と呼ばれるものでした。眼窩底骨折とは,眼部や眼の周辺部に外圧が加わった際に,眼窩(眼球が入る骨の窪み)の下部が骨折するものを指します。眼窩下壁は,薄い骨で構成されており,圧力に強くないため,外圧に耐えることができず骨折してしまうことがあります。

眼窩底骨折

そして,眼窩底骨折の影響で多いものが,眼の動きが悪くなってしまうというものです。眼窩の中の脂肪組織や筋肉が損傷してしまうため,それまで通りの眼の動きができなくなってしまうことが多く見られます。

この点,後遺障害との関係では,複視(物が二重に見えてしまうこと)が生じやすいと言われています。
複視に関する後遺障害等級は,複視の内容・程度によって以下のものが定められています。

複視の後遺障害等級

等級基準
10級2号正面を見た場合に複視の症状を残すもの
13級2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

「複視の症状を残すもの」とは

1.本人が複視のあることを自覚していること
2.眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること
3.ヘススクリーンテストにより患側の像が健側に比して5度以上離れた位置にあること

なお,10級と13級の差異は以下の通りです。
正面を見た場合に複視の症状を残すもの」(10級)
→正面視で複視が中心の位置にあること
正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの」(13級)
→それ以外の場合

本件においては,被害者にもやはり複視の症状が見られており,複視に関する後遺障害等級認定を想定することが必要でした。

ポイント
眼窩底骨折に伴い複視が生じやすい
複視は正面視かそれ以外かで等級が分かれる

④逸失利益

後遺障害等級が認定された場合,損害の項目として後遺障害逸失利益が発生します。後遺障害逸失利益は,後遺障害によって労働能力が低下したことにより,被害者に生じる収入減少を金額計算したものです。

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

この点,労働能力喪失期間は,67歳までの期間とするのが原則的な運用です。もっとも,被害者は公務員として仕事をしており,基本的には60歳で定年を迎えることが想定される状況でした。
そうすると,労働能力喪失期間を60歳までの期間とすべきか,原則的な運用に沿って67歳までとすべきか,という点に大きな問題が生じ得ます。

ポイント
労働能力喪失期間は67歳までの期間とするのが原則
もっとも,被害者は60歳を定年とする公務員の立場であった

弁護士の活動

①健康保険の利用

本件の場合,自由診療でなければ治療に窮するという事情は特にないことが確認されました。そのため,弁護士からは健康保険の利用をお勧めし,できるだけ立替の金額が少ない状態で相手保険の早期対応を求める形を取ることとしました。

なお,健康保険の利用は,特に立替が生じる場合に大きなメリットとなることが少なくありません。それは,保険診療の自己負担分が治療費の一部(多くの場合は3割)にとどまるためです。
自由診療の場合には,治療費そのものが高額になる上,全額の負担が必要となるため,現実の負担額は非常に大きくなりやすいものです。その一方,保険診療では,低額の治療費のうち3割を負担することで足りるため,立替時の経済的負担は大きく軽減されることになるでしょう。

ポイント
保険診療で不都合が生じないことを確認し,健康保険の利用をお勧め
健康保険の利用は,立替額が大きく軽減する

②過失割合

本件では,過失割合について加害者が不合理にも無過失を主張していたため,被害者に治療費の立替が生じるという不適切な状態に陥っていました。そのため,弁護士において早期に相手保険と協議を開始し,対応を改めるよう求めました

この場合,保険会社の対応は様々です。最も無責任な対応の場合,「契約者本人が無過失だと言っているから何もしない」と放置を決め込むケースも残念ながら見られます。
そこで,弁護士からは,被害者の立替が続くようであれば,今後交渉には一切応じず,裁判で金銭を請求することになる可能性を強く示す方針を取ることにしました。この方針が有力であるのは,保険会社にとって放置するデメリットが大きくなるためです。

被害者側が訴訟で金銭を請求した場合,当然ながら加害者は保険会社に助けを求めることになります。そして,助けを求められた保険会社は,訴訟への必要な対応や,訴訟で決まった賠償額の支払を行う必要が生じます。
そうすると,訴訟で被害者の主張が認められた場合の賠償額は,交渉で解決する場合の金額よりも高額になることが通常であるため,訴訟をされてしまうと保険会社はより多額の支払を強いられる恐れがあるのです。
そのため,裁判の可能性を強く示すことで,保険会社が積極的に訴訟を回避する動きを取る可能性が高くなります。結果,加害者本人への必要な説得をし,治療費の支払などの対応を自ら行うようになるのです。

本件でも,相手保険会社が加害者本人を積極的に説得し,加害者に過失のあることを認めさせ,保険の対応を自ら開始するに至りました。
なお,過失割合は基本過失割合通り20:80での解決となりました。

ポイント
加害者本人が不合理な主張をする場合,保険会社に正してもらうのが円滑
保険会社に訴訟の方針を示すことで,加害者への説得を催促できる

③後遺障害等級 

後遺障害等級に関しては,複視についての等級認定が問題となりました。この点,正面視以外の場合に複視の症状が出ていることが見込まれたため,後遺障害13級の認定を目指すことが有力と考えられました。

結果的にも,被害者には無事後遺障害13級の認定がなされました。

④逸失利益

本件では,60歳までと60歳以降とで,逸失利益の計算を異にする必要がありました。それは,60歳定年の公務員である被害者にとって,60歳までの収入と60歳以降の収入が同じである可能性がないためです。

この点,60歳までについては,原則通りの計算が可能と思われます。

後遺障害逸失利益
「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

60歳までの逸失利益
「事故前年の収入額」×9%(13級のため)×「症状固定~60歳までの期間に対応するライプニッツ係数」

一方,60歳以降は,同じ収入額が保たれる可能性こそないものの,一定の労働は可能な状況であるため,いくらかの逸失利益は発生すると考えられます。このような場合,平均賃金を用いて起訴収入を計算することが有力な解決方法です。

60歳以降の逸失利益
「60歳の平均賃金」×9%(13級のため)×「60歳~67歳までの期間に対応するライプニッツ係数」

以上を踏まえ,逸失利益としては,上記の「60歳までの逸失利益」と「60歳以降の逸失利益」の合計額を採用するべきであることを主張し,その通りの金額での合意となりました。

ポイント
定年以降の収入が分からない場合,平均賃金を基礎収入とする手段が有力

活動の結果

以上の活動の結果,被害者には複視に伴う後遺障害13級が認定されました。
また,後遺障害13級を前提に相手保険と金額交渉を尽くした結果,約980万円の賠償を獲得するに至りました。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,過失割合について加害者が不合理な主張をしていたことが最初のハードルとなっていました。無責任な加害者は,自分の経済的負担を回避したい一心で,明らかに不合理でも無過失の主張をしてくることがあり得ます。そして,その不合理な主張で不利益を被るのは,残念ながら被害者になりがちです。

しかし,そのような事態を許すべきでないことは明らかであり,加害者の不合理な主張には適切な対応を早期に尽くすことで,被害を最小限に抑えることが有益でしょう。
具体的には,やはり弁護士を窓口にして,弁護士から適切な請求を行ってもらうことが,円滑な解決の近道になりやすいでしょう。

本件の場合は,被害者の方が入院中の早期段階で弁護士にご相談・ご依頼されたため,迅速な活動が可能となり,立替は最小限度に収まったということができるでしょう。
交通事故で重大な被害を被った場合は,まず弁護士に相談してみる,という考え方が肝要だと考えます。

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【交通事故解決事例】顔面醜状障害による12級で,逸失利益に関する丁寧な主張立証により300万円を超える増額を獲得した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】

・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

事案の概要

被害者が,車道脇を自転車で直進走行し,信号のある十字路交差点を青信号に従って通過しようとしたところ,対向から右折で交差点に進入した単車と衝突する事故が発生しました。互いに渋滞する車列をすり抜けるように走行していたため,相互に相手の発見が遅れた,という事情がありました。

事故の結果,被害者は主に顔面を受傷し,額は数十針も縫うケガとなりました。1年以上に渡る通院治療を尽くしたものの,額に線状痕が残り,顔面の醜状障害として後遺障害12級の認定を受けました。

その後,相手保険から賠償額の提示を受け,金額の合理性や増額余地の有無などを確認するために弁護士への相談を希望されました。

法的問題点

①過失割合

保険会社の提示では,被害者の過失割合が10%とされていました。
被害者にも過失割合がある場合,過失割合の分だけ賠償額が減少することになるため,過失割合の数字が適切であるかどうかは十分な確認が必要となります。

この点,信号のある交差点で,双方ともに青信号に従っていた場合,直進自転車と対向右折車(四輪車・単車とも含む)の間で発生した交通事故では,基本過失割合が10:90とされています(【249】図)。

「別冊判例タイムズ38号」より引用

そのため,実際の事故態様が上図と同様であり,過失割合を修正すべき事情がなければ,被害者の過失を10%とする解決が合理的と思われます。
ただし,信号のある交差点での対向車間の事故においては,信号表示が問題になり得ることに注意が必要です。互いが交差点に入った時の信号表示が本当に青信号であったか,進入後に信号が変わっていないか,という事情によって,過失割合が変動する可能性も低くはないためです。

②傷害慰謝料

交通事故では,入通院期間に応じた傷害慰謝料という慰謝料が発生します。これは,入院や通院を強いられたことの精神的負担や,治療を要するようなケガを負った苦痛への金銭賠償という性質のものです。
そのため,傷害慰謝料の金額は,ケガが大きいほど高額になり,治療期間が長期に渡る方が高額になることが一般的です。

本件における被害者の通院期間は,1年を超えるものでした。その期間や後遺障害が残るほどの受傷であったことを踏まえると,慰謝料は決して低く見積もられるべきではないと考えられます。
しかし,相手保険の金額提示では,傷害慰謝料が35万円とされていました。これは,1年を超える通院を要したケースとしては非常に低額と言わざるを得ないものでした。しかも,35万円という提示に特段の理由は見受けられず,漫然と低額の提示をしているようでした。
そのため,傷害慰謝料については,根拠ある金額での解決が適切であり,重要な交渉対象となることが想定されました。

ポイント
傷害慰謝料は,ケガの程度や通院期間を主な基準として計算する
傷害慰謝料の提示額35万円は,受傷内容や治療期間を踏まえると非常に低額

③後遺障害慰謝料

後遺障害等級が認定された場合,傷害慰謝料とは別に,後遺障害慰謝料が発生します。これは,将来に渡って後遺障害が残存することに対する精神的苦痛を対象とする慰謝料です。
後遺障害慰謝料は,後遺障害等級によって金額が定められていますが,12級の場合,自賠責基準の金額が94万円,裁判基準の金額が290万円とされています。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

本件では,自賠責基準に沿って94万円の提示がなされており,いわば最低額というべき提示内容でした。
保険会社が自賠責基準で提案を行うのは,その金額で合意ができれば自社の負担なく解決ができるためです。一方,被害者としては,自賠責から自分で回収しても同額が受領できる以上,相手保険とその金額で合意するメリットがほとんどありません。
後遺障害慰謝料についても,十分な増額交渉が必要であると判断される状況でした。

ポイント
後遺障害等級が認定されると,等級に応じた後遺障害慰謝料が発生する
相手保険の提示は自賠責基準であったため,増額交渉の余地がある内容

④後遺障害逸失利益

後遺障害等級が認定された場合,損害の項目として後遺障害逸失利益が発生します。後遺障害逸失利益は,後遺障害によって労働能力が低下したことにより,被害者に生じる収入減少を金額計算したものです。

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

この点,「労働能力喪失率」がゼロであれば,逸失利益もゼロとなります。労働能力が失われていない以上,収入減少もないのは当然ともいえます。
そして,顔面の醜状障害は,必ずしも労働能力を失わせるものとは考えられていません。顔面に醜状が残ったとしても,直ちに労働ができなくなるわけではないからです。
そうすると,顔面の醜状が全く労働に影響しないと考えるならば,労働能力喪失率はゼロ,逸失利益もゼロ,という計算になってしまうため,逸失利益の有無が争点になり得ます。

本件では,相手保険による逸失利益の提示が130万円という金額でした。一定の逸失利益を認めているようですが,実際はそうではありません。これも,後遺障害慰謝料と同じく,自賠責保険から出る金額をそのまま計上しているというのみです。
後遺障害12級に対しては,自賠責保険から総額224万円の保険金が支払われます。このうち,慰謝料は94万円であるため,残りの130万円を逸失利益として計上している,というわけです。

このような提示を行う保険会社のメッセージとしては,「逸失利益はないと考えている」というものであると想像されます。本件の醜状障害のように,後遺障害の類型として逸失利益が発生しない可能性があるものだと,保険会社がこのようなスタンスを示してくることは決して珍しくありません。

弁護士としては,逸失利益についてどのような解決を目指すべきか,検討が必要な問題でした。

ポイント
顔面の醜状は逸失利益が生じるかどうか明確でない
相手保険の提示は自賠責基準と同額であった

弁護士の活動

①過失割合

過失割合については,まず,基本過失割合の確認を行いました。
この点,被害者から事故状況の聴取をしたところ,相手保険が被害者の過失10%の根拠とした事故態様に間違いがないことが確認できました。そのため,基本過失割合が10%となる点は了承することが適切な内容でした。

また,信号がある場合,信号表示に争いの生じることがあり得ますが,双方の交差点進入時,及び衝突時のそれぞれについて,互いの対面信号が青色表示であったことにも争いがないと確認が取れました。
そのため,過失割合については10%を了承し,争わない方針とすべきである旨が判断できました。

なお,本件は,渋滞中の車列の間をすり抜けるように交差点に進入したという事情があり,被害者が相手の単車を確認するのが遅れたきっかけにもなっているため,この点を過失割合に反映させるかどうかは問題となり得るところです。
しかし,本件の場合,互いに渋滞をすり抜けて走行しているため,相手の確認が遅れた原因は双方にあると考えられる状況でもありました。このような場合に過失割合を争おうとすると,相手からの強い反発が見込まれ,解決が困難となる場合も否定できません。争った場合の結果も不透明であることから,過失割合を争うことにあまり合理性がないと考えられる内容でした。

そのため,本件では渋滞があった点を過失割合の主張に反映させないことを選択し,早期円満な解決を目指しました。

ポイント
基本過失割合の根拠となった事故態様が一致することが確認できた
信号表示は互いに青であったことに争いがないと確認できた

②傷害慰謝料

傷害慰謝料については,被害者の受傷結果や通院期間を踏まえると,100万円を超える増額可能性があり得るものと見受けられました。そして,相手が低額な提示をしていることに特段の根拠がないという特徴も見受けられました。

そこで,弁護士からは,一般的に根拠があるとされる裁判基準を踏まえた金額提示の上で,相手保険の提示が根拠に基づかない低額な水準であることを指摘するとともに,低額な金額提示を維持するのであれば,その具体的な根拠を示すよう求める方針を取ることにしました。
相手の提示額に根拠が見受けられない場合は,まず相手の根拠の指摘を求めるのが端的です。そもそも,低額の提示をするのであれば,相応の根拠を添えて行うべきであって,正しい対応を求めたのみである,という言い方もできるでしょう。相手が交渉に必要なステップをちゃんと踏んでいないのであれば,まずはそのステップを踏んでから,初めてこちらが検討する順番となるべきです。

本件では,上記の方針を取ったところ,保険会社から低額な提示の根拠が示されることはなく,概ね当方の請求に沿った慰謝料額での合意となりました。具体的には,弁護士が交渉を行う場合,裁判基準の80~90%を合意の水準として見込む場合が多いところ,裁判基準の95%に当たる金額での合意となりました。

ポイント
低額な慰謝料の提示は相応の根拠を添えて行われるべき
根拠のない提示に対しては根拠を出すよう求めるのが有力な交渉方法

③後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料についても,弁護士が交渉を行う場合,裁判基準の80~90%を合意の水準として見込む場合が多く見られます。この点,12級の慰謝料の場合,裁判基準が290万円のため,80~90%は232万円~261万円となります。そうすると,提示額の94万円(=自賠責基準)からは概ね150万円前後の増額余地があり,後遺障害慰謝料についても十分な交渉が必要であると想定されました。

この点,後遺障害慰謝料について裁判基準を踏まえた金額で請求できる根拠は,まさにその後遺障害等級が認定されたという事実です。後遺障害慰謝料は,後遺障害等級が認定されるような症状が残ったということを理由に支払われるものであるため,等級認定されれば通常は支払われるべき,ということになります。
裏を返せば,後遺障害慰謝料を減額交渉しようとするのであれば,その等級が認定されたことが不適切である,という内容の主張になるのが通常です。もっとも,これは保険会社の主張としては困難と言わざるを得ません。

そのため,弁護士からは,保険会社の低額な提示を無視する方針とし,端的に裁判基準を踏まえた金額交渉を実施して,相手保険の了承を引き出すことにしました。交渉の結果,傷害慰謝料と同じく,裁判基準の95%に当たる金額での合意となり,一般的な目標額を超える水準での解決に至りました。

ポイント
後遺障害慰謝料は,等級認定されれば他の理由なく支払われるべきもの

④後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益に関しては,まず,後遺障害に伴う労働への影響を確認することとしました。
この点,被害者は介護職に従事していましたが,特に顔面の醜状が仕事への制限をもたらす立場にはありませんでした。顔面の醜状が直ちに労働能力に影響を与えやすい業種としては,モデルや営業職,一部の接客業などが挙げられますが,被害者はそのどれにも当てはまっておらず,醜状障害そのものが労働能力を低下させるとの主張は難しいことが見込まれました。

もっとも,被害者の醜状障害は,額の深い傷を原因とするものであったため,顔面の一部に知覚の低下をもたらすものでもありました。これは,神経症状と呼ばれるもので,局部の神経症状は労働能力に一定の影響があると考える余地がありました。
そこで,弁護士からは,12級相当の労働能力の喪失が,症状固定後5年間低下する可能性があることを主張し,相手保険に逸失利益の増額を求めることとしました。その結果,当方の主張が受け入れられ,症状固定後5年分の逸失利益が支払われる内容での合意となりました。

ポイント
顔面の醜状そのものは労働能力に影響しない業務内容であった
醜状に伴う神経症状を根拠に逸失利益を請求し,合意に至った

活動の結果

各慰謝料と逸失利益の交渉を尽くした結果,従前の提示額約270万円に対して,約580万円での示談成立となり,310万円を超える増額が実現されました。

弁護士による増額

弁護士によるコメント

顔面の醜状障害は,後遺障害逸失利益の金額計算が難解な後遺障害の一つです。顔面に醜状があっても,身体的な機能が低下するとは限らないため,逸失利益はないのではないか,という発想があるためです。
一方,醜状を残すほどの受傷がある場合,醜状以外にも何らかのダメージが残っており,後遺障害等級はそのようなダメージを含めた認定になっていることがあります。この点を踏まえれば,一定の逸失利益は観念することもでき,逸失利益に交渉の余地があり得ます。

本件では,後遺障害等級認定の中で顔面部の知覚低下を含む認定であることが明記されていたため,これを逸失利益の交渉における重要な根拠の一つとしました。醜状障害に伴うダメージの内容は,単に主張するのみでなく,その裏付けを示す形を取ることで,相手保険の合意を引き出しやすくもなります。

具体的な交渉方法・内容は個別のケースによるため,一律の指摘は困難ですが,一度交通事故に強い弁護士に相談を実施の上で,見解を仰いでみるのは重要なことだと考えます。
弁護士の敷居を決して高く感じる必要はありませんので,一度お気軽にご相談されてみることをお勧めいたします。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

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【交通事故解決事例】後遺障害14級9号認定後,交渉開始から1か月足らずの間に200万円超の増額回収を実現。スピード示談の事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,後遺障害14級の賠償額交渉を弁護士が受任し,1か月に満たない短期間で200万円を超える増額解決に至った事例を紹介します。

事案の概要

被害者は,自転車に乗車中,信号のある十字路を青信号に従って走行していたところ,右方から赤信号を看過して十字路に進入してきた自動車に衝突される事故被害に遭いました。
この事故によって,被害者は頸椎捻挫,腰椎捻挫等を受傷し,約半年間の通院治療を要しました。その後,頸椎捻挫後の神経症状に対して後遺障害14級9号が認定され,加害者の保険会社から賠償額の提案を受けた段階で弁護士への相談をご希望されました。

なお,被害者はパートタイマーの兼業主婦という立場であり,弁護士への相談前には,相手保険との間で仕事や主婦業に関する話をしたことがない,とのことでした。
ちなみに,家事ができずに困ったなど,主婦業への影響を考慮した賠償額を保険会社が提案する場合,前提として被害者の職業や家族構成を確認する必要があります。なぜなら,主婦業をしている立場であるかどうかは,職業や同居家族を確認しなければ判断できないためです。

弁護士への相談時に被害者が保険会社から受けていた賠償額の提示内容は,総額約123万円というものでした。

ポイント
後遺障害14級9号認定済み
保険会社から約123万円の賠償額提示済み
被害者はパートタイマーの兼業主婦

法的問題点

①休業損害

【休業損害の有無】

専業主婦またはパートタイマーの兼業主婦が交通事故に遭った場合,収入に対する影響は限定的ですが,その分,主婦業に対する影響が非常に大きく生じます。そのため,主婦が被害者の場合には,主婦業(家事労働)の休業損害が発生すると考えられています。

しかし,保険会社の提示内容は,被害者の家事労働に関する休業損害を一切考慮していないものでした。そもそも,被害者が兼業主婦であることも,被害者の同居家族の有無・内容も,保険会社は確認を取っておらず,家事労働に関する休業損害を検討する意思が見受けられない状況でもありました。

主婦の交通事故被害に関して,休業損害は無視できない規模の金額になることが少なくありません。保険会社としては,あえて休業損害の点に触れないことで損害賠償の負担軽減を目指したのであろうと想像されますが,被害者にとっては休業損害の計上をしないメリットはありません。
被害者に休業損害が発生しないという特別な事情も見受けられなかったため,弁護士からは適正な休業損害を請求すべき状況と理解されました。

【休業損害の金額】

主婦業(家事労働)に関する休業損害の金額は,いわゆる自賠責基準の場合だと,以下の金額になります。

家事労働の休業損害(自賠責基準)

【日額】6,100円
【日数】実通院日数

家事労働は,会社員の労働などと異なり,何日の休業を要したかを特定したり,どのような損害があったかを金額換算したりすることが困難な分野です。そのため,休業日数は実通院日数と同じ日数であるとみなし,日額を6,100円と定めることで,機械的な計算をできるようにしたのが自賠責基準の計算方法です。
自賠責基準の金額は,機械的に算出できなければ保険の運用ができないため,実際の休業の程度に関わらず,一律で「6,100円×実通院日数」という形が取られます。

なお,自賠責基準には支払の上限額が定められています。傷害部分は合計の限度額が120万円のため,治療費で120万円が発生していれば休業損害はゼロとなります。自賠責基準の計算式は,自賠責限度額の範囲内でのみ意味を持つものなのです。

一方,裁判基準と呼ばれる計算基準では,以下のような計算を行うことが通例です。

家事労働の休業損害(裁判基準)

【日額】(事故前年の女性平均賃金(年収))÷365
【日数】休業を要した日数

日額は,女性の平均年収を365日で割る方法で算出するのが通常です。具体的な金額は事故発生の年にもよりますが,日額は概ね1万円を超える水準になることが多く,自賠責基準よりも高額になりやすいところです。

一方,日数に関しては,定まった特定方法がなく,個別の内容・状況に応じて検討しなければならないところです。どのような家事分担であったか,事故によってどのような家事がどの程度の期間できなかったか,という点などを総合的に考慮の上,被害者側と加害者保険会社の間で協議することが一般的です。
この点,自賠責基準で「休業日数=実通院日数」としている以上,休業日数を実通院日数とするべきとも思えますが,「休業日数=実通院日数」としなければならない法的な根拠はありません。あくまで,自賠責基準は自賠責が支払う保険金額の計算方法を定めているだけであり,被害者の損害額を定めているわけではないからです。そのため,日額を裁判基準に改めて,日数は自賠責基準と同じ実通院日数にしたいと思っても,それを加害者側が了承する必要はないという結論になるでしょう。

ポイント
保険会社が休業損害を省いて提示していても,適正な休業損害は請求すべき
休業損害の金額計算に際しては,休業日数が問題になりやすい

②後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益は,後遺障害に伴う労働能力の減少が,将来の収入減少をもたらすという内容の損害です。イメージとしては,症状固定後の休業損害と考えてよいでしょう。

休業しなければならない程度は,事故発生の直後が一番大きく,治療や時間経過を経て段階的に減少していくとの理解が一般的です。そして,症状固定(治療終了)の時期になれば,後遺障害等級が認定される場合でない限り休業の必要はゼロとなります。

症状固定

この点,症状固定時の症状について後遺障害等級が認定された場合,症状固定時にも休業の必要が残り続けているということになります。その具体的な程度は後遺障害等級によりますが,最も重い1級は100%,最も軽いとされる14級では5%とされています。

頸椎捻挫の神経症状で14級9号が認定された場合,5%の休業が症状固定後5年以内の期間に渡って残り続ける,という理解になり,この将来の休業に対する支払が後遺障害逸失利益というものです。

具体的な逸失利益の計算に際しては,休業が将来どのくらいの期間に渡って生じると見込まれるのかを特定する必要があります。後遺障害の影響が大きければ大きいほど影響する期間も長いと理解することになるため,交渉に際しては,後遺障害が家事労働をどのように制限するのか,説得的に示すことが重要になります。

ポイント
後遺障害逸失利益は,症状固定後の休業損害
後遺障害が休業にどの程度の影響を及ぼすのか,という点が重要

③弁護士費用の負担

被害者は,弁護への依頼に当たって弁護士費用の負担を強く懸念していました。被害者は,自家用車を所持していたものの,自動車保険に入っていない状態だったため,弁護士費用が自己負担になることを想定し,これまで弁護士への依頼を検討できないでいた,との経緯がありました。

弁護士の費用を負担する自動車保険のサービスには,「弁護士費用特約」があります。弁護士費用特約は,一定の対象者が自動車事故に遭った際,加害者に対して金銭を請求するための弁護士費用を負担してくれる,というものです。
ただし,弁護士費用特約から支払われる具体的な費用の金額や上限は決まっており,必ずしも弁護士費用全額を網羅できるとは限りません。弁護士費用特約で必要な弁護士費用をすべて賄えるかは,多くの場合,弁護士側の費用設定によって変わります。

被害者は,自動車保険や弁護士費用特約についてあまり分からないでいる,とのことであったため,弁護士費用特約が利用できる状況にないか,という点も弁護士にて確認を進めることとしました。

ポイント
弁護士費用特約は,被害者が加害者に金銭請求するときの弁護士費用を支払ってくれるサービス
弁護士費用の全額をカバーできるかは,多くの場合弁護士側の費用設定による
自分に利用できる弁護士費用特約の有無が分からなければ,弁護士への相談が可能

弁護士の活動

①休業損害の交渉

休業損害については,特段の事情がない限り請求すれば一定の支払が得られるであろうことが明らかな状況でした。ただ,その金額をどうするかは,難解な問題であると想像されました。

そこで,まず,被害者の家事に生じた具体的な休業の内容と程度を,時系列に沿って指摘していただくことにしました。事故直後はどの程度の家事ができなかったか,それが時間経過に応じてどのように回復していったのか,時間経過しても引き続きできなかった家事はどんなものか,といった点を,可能な限り具体的にするよう努めました。

あわせて,被害者がパートタイマーであったことから,パート勤務の休業状況を確認しました。一般的に,兼業主婦でパート勤務の休業が全くなければ,それだけ家事の休業も少なく済んでいるはずであり,逆にパート勤務が長期間できていなければ,家事の休業も多くなってしまっていると理解されやすいです。

弁護士による確認内容

1.具体的な家事の休業内容・程度を時系列に沿って整理
2.パート勤務の休業状況を確認

以上の確認の結果,被害者には事故直後から一定の休業が生じており,時間経過によって回復は見られるものの,症状固定までの間継続的に支障が生じ続けていると判断することができました。
そこで,休業損害の請求に際しては,時間経過に応じて段階的に休業の程度を減少させていく方法で計算することとしました。

休業損害のイメージ

具体的な計算のイメージは以下の通りです。

本件における休業損害の計算方法

事故後の期間休業の程度
1日~40日80%
41日~80日60%
81日~120日40%
121日~160日20%
161日~180日10%

被害者の実態を反映する方法として合理的な計算をしつつ,交渉でできる限りの休業損害を獲得するための具体的方法として,本件では上記の計算方法による解決を提案することとしました。

以上の対応の結果,総治療期間約180日,実通院日数約100日のところ,80日を超える日数分の休業損害で合意するに至りました。

ポイント
休業の実態を丁寧に確認
段階的に休業の程度を設定することで,説得的な休業損害の金額計算を行った

②後遺障害部分の交渉

後遺障害部分に関する保険会社の提示は,いわゆる自賠責基準の金額とほとんど同額でした。
自賠責保険からは,後遺障害14級に対して75万円が支払われますが,加害者の保険会社としては,後遺障害部分の支払が75万円に収まれば,自社負担がなくなる点で最も利益になるため,自賠責基準での提示を行うことが非常に多く見られます。

弁護士が交渉を行う場合,この自賠責基準の提示に対して,適正な金額の請求を行って増額を図る,ということが非常に重要となります。特に本件では,相手保険が被害者の家事労働を全く考慮していなかった点もあり,「後遺障害逸失利益」の増額交渉が要点となる状況でした。

後遺障害逸失利益は,将来の休業損害というイメージの損害であることを解説しましたが,後遺障害逸失利益と休業損害は似た性質の損害であるため,その損害の大きさを立証するための根拠も類似したものになってきます。
つまり,治療中には休業を多く要しており,症状固定後にも同じような休業の継続が見込まれる,ということが示せれば,逸失利益が決して小さくならないことの裏付けにつながるというわけです。

弁護士からは,症状固定前の休業が症状固定後も継続していること,それが後遺障害の影響によるものであることを具体的に指摘することで,後遺障害逸失利益を可能な限り大きい金額とすることを目指しました。この交渉に際しては,依頼者とも十分な打ち合わせを実施し,後遺障害の家事への影響を具体的に整理しました。

以上の対応の結果,後遺障害部分(後遺障害慰謝料+後遺障害逸失利益)の金額は,弁護士が事前に想定していた目標額に達することができました。

ポイント
後遺障害逸失利益の立証は,休業損害の立証と類似する内容
症状固定前の休業が症状固定後も続いていることを具体的に示す

③弁護士費用に関する保険の確認

弁護士においては,依頼者及び家族の弁護士費用特約が利用できないか,確認することにしました。

一般的に,弁護士費用特約が利用できる人は,以下のような立場の人です。

弁護士費用特約が利用できる主な立場

契約者
契約者の同居家族
契約者の別居の子(未婚の場合のみ)
契約自動車の同乗者

また,対象になる事故はいわゆる自動車事故ですが,契約者やその家族が利用する場合,被害者自身がその自動車に乗っている必要はありません。歩行中に自動車と接触した事故であっても,弁護士費用特約の利用は可能です。

本件では,被害者が兼業主婦であることを踏まえ,同居の配偶者の自動車保険を確認することとしました。
配偶者は,本件事故に対してほとんど関与していなかったため,自身の自動車保険を確認する機会がありませんでしたが,弁護士が保険証券等を確認したところ,配偶者の自動車保険に被害者が利用できる弁護士費用特約を発見できました。

そのため,弁護士が配偶者加入の保険会社に問い合わせ,事情や状況を説明の上,弁護士費用特約で対応してもらうよう手続を進めました。
結果,被害者は特に煩雑な対応をすることなく,弁護士費用特約から弁護士費用全額の支払を受けられることになりました。

ポイント
弁護士費用特約は自身が自動車に乗っていなくても利用可能
同居家族の弁護士費用特約は確認をすることが望ましい

活動の結果

以上の活動を尽くした結果,弁護士依頼前の提示額約123万円であったところ,総額約330万円での合意に至り,約207万円の増額が実現されました。
また,この増額交渉に際して発生した弁護士費用は,全額が弁護士費用特約からの支払となり,被害者に弁護士費用の負担が生じなかったため,増額分は全て被害者の利益となりました。

本件では,活動開始から1か月以内で解決に至ることができました。

弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件の被害者は,加害者の保険会社からかなり低額の金額提示を受けている状況でした。もっとも,被害者自身にその事実は分からないので,弁護士に相談しなければ低額であることを知らないまま合意していたかもしれません。その意味では,弁護士への相談が極めて重要なアクションであったということができるでしょう。

また,弁護士費用特約は,交通事故被害に遭わないと利用することがほとんどないため,被害者自身が利用できる状態かどうか分からないままである,ということも少なくありません。しかも,自分以外の人が契約した弁護士費用特約が利用できる場合もあり,逆に自分が契約した弁護士費用特約でも使えない局面があるなど,確認も容易でないことがあり得ます。
そのため,弁護士費用特約の利用ができるか不明な場合は,その点も含めて弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

なお,本件は交渉開始から賠償額の獲得までにかかった期間が1か月弱でした。増額幅や要した手続を踏まえると,非常にスピーディーな解決であったと言えます。
もっとも,迅速解決は弁護士だけでは実現できず,ご依頼者の対応あってこそのことです。ご依頼者様自身が,自分の力で迅速解決を勝ち取った事例と言っても差し支えないでしょう。

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【交通事故解決事例】実通院日数60日程度の頸椎捻挫にて後遺障害14級9号獲得。総額245万円超の賠償額に至った事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,通院日数が決して多くない中で後遺障害14級9号の獲得を実現した頸椎捻挫の事例を紹介します。

事案の概要

被害者は,片側二車線の道路の右側の車線をバイクで直進走行していましたが,左側の路肩に一時停止していたタクシーが乗車扱いを終えて発進し,そのまま右側の車線に進入したため,直進走行中の被害者と接触する事故が発生しました。
加害者のタクシーが,被害者のバイクに気づかず,右ウインカーを出したまま右側の車線に進入してきたため,被害者はクラクションを鳴らしながら回避を試みましたが,タクシーがクラクションを意に介さず走行し続けたため,接触は避けられませんでした。

被害者には,事故直後は目立った受傷が見られませんでしたが,事故翌日になって右手のしびれや首の痛みなどが生じるようになりました。医療機関での診断は「頸椎捻挫」というもので,画像上の異常所見は特に確認されませんでした。

なお,加害者のタクシー運転手及び所属するタクシー会社は,被害者側の速度超過を問題視しているという話をしているようでした。

法的問題点

①過失割合

交通事故の過失割合は,事故類型ごとに設けられている「基本過失割合」と,この基本過失割合に加えて考慮すべき事情がある場合の「修正要素」によって決定されます。
そのため,過失割合を判断するためには,まず該当する基本過失割合の有無及び内容を特定し,その上で修正要素の検討をすることになります。

【基本過失割合】

本件は,自動車進路変更時における後続直進単車との事故であるため,事故類型を踏まえた基本過失割合は,以下の【225】図に従って単車:四輪車=20:80となります。

「別冊判例タイムズ38号」より引用

【修正要素】

本件では,加害者側から,被害者の速度超過が主張されているという状況でした。この点,後続直進車の速度超過は,時速15㎞以上の場合に「+5」,時速30㎞以上の場合に「+15」の修正要素に該当します。
そうすると,被害者の速度超過を前提とした場合,被害者の過失は5~15%修正されることになり,25~35%となる可能性があります。

ポイント
基本過失割合は被害者20%
被害者に速度超過があると,被害者の過失は25~35%になり得る

②後遺障害等級

本件の被害者の受傷内容は「頸椎捻挫」であり,画像等の他覚的所見がないものでした。この場合,後遺障害等級としては14級9号の獲得を目指すことになります。

前提として,頸椎捻挫等に代表される神経症状に関し,後遺障害等級としては以下のものがあります。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

また,それぞれの認定基準を満たしているかどうかの具体的な考え方は,以下の通りです。

12級13号症状が医学的に証明できる場合
(画像所見などの他覚的所見によって客観的に認められる場合)
14級9号症状が医学的に説明できる場合
他覚的所見はないものの,受傷内容や治療経過を踏まえると症状の存在が医学的に推定できる場合

本件では,他覚的所見が認められないため,12級13号の認定が見込めません。そのため,受傷内容や治療経過などを踏まえ,14級9号の基準である「症状が医学的に説明できる」場合と認められるかどうかが問題になります

なお,むち打ちの後遺障害等級認定については,こちらの記事もご参照ください。

ポイント
神経症状の後遺障害等級としては,12級13号又は14級9号が挙げられる
本件は他覚的所見がないため,14級9号を目指すべき場合に当たる

弁護士の活動

①過失割合の協議

過失割合に関しては,基本過失割合の20:80は了承できるものの,速度超過による過失割合の修正は了承できないと判断しました。なぜなら,過失割合の修正要素は,それを主張する方が具体的な主張立証をできるか,修正要素の存在について当事者間で争いのないことが必要ですが,本件ではいずれも見受けられなかったためです。

本件で相手方が被害者の速度超過の根拠として主張するのは,主に加害者(タクシー運転手)の記憶とドライブレコーダー映像でした。なお,タクシーが相手の場合,その加入している保険はタクシー共済になるのが一般的ですが,タクシー共済を利用するタクシー会社では,自社の担当者が対応する(タクシー共済には自動車保険会社のように連絡窓口となる人がいない)ことが通常です。本件でも,加害者の勤務先であるタクシー会社の担当者が,弁護士との連絡窓口に入っていました。

弁護士がタクシー会社担当者と連絡を取ったところ,タクシーのドライブレコーダー映像が確認できるとのことであったため,タクシー会社に訪問し,直接ドライブレコーダー映像の確認を行いました。タクシー会社としては,映像から被害者の速度超過が推測できるとの主張でしたが,弁護士が直接確認すると,その主張は非常に抽象的であるという判断ができました。
というのも,速度超過を理由とする過失割合の修正は,速度が時速何キロ超過していたか,というレベルで特定できなければなりません。時速15㎞以上の超過がなければ修正自体が生じませんし,時速30㎞を境に修正の程度も変わるためです。
しかし,本件のタクシー会社の主張は,「いくらか制限速度より速いスピードであると推測される」という程度にとどまる内容でした。走行距離と走行時間から速度を割り出せるわけでもなく,映像に残るバイクの動きが速そうに映る,という趣旨の指摘しかなされておらず,修正要素の立証とは到底考え難いものと判断されました。

そのため,弁護士からは,以下の指摘を行いました。

過失割合に対する指摘の内容

1.タクシーは片側二車線の道路上を路肩から右車線まで一気に進路変更しており,強引な運転行為が見受けられる
2.タクシーの強引な運転行為はあるが,交渉の限りであれば基本過失割合である20%の過失を了承する
3.訴訟に移行した場合は,20%より被害者に有利な過失割合を主張することになる
4.被害者の速度超過に関する主張は一切受け入れない

以上の指摘を踏まえた協議の結果,タクシー会社との間で過失割合20:80の合意に至り,過失割合の問題は解決しました。

ポイント
速度超過の修正は,具体的な速度も含めて主張立証が必要
相手が根拠とするドライブレコーダーを直接確認し,主張の誤りを指摘
基本過失割合に沿った解決を提案し,早期に合意

②後遺障害等級の獲得

後遺障害等級については,14級9号の認定を受けることが目標であったところ,14級9号に関する判断要素としては,以下のようなものが挙げられます。

受傷内容の重大さに関する事情

【事故態様】
→歩行者と大きな車が衝突した,車の速度が速かったなど,被害者の受ける衝撃の程度が大きいと思われる事故態様である場合,事故直後の症状が重いと評価されやすいです。

【事故による物的損害の程度】
→車両の損傷が激しい,多くの部品交換を要するような多額の修理費が発生しているなど,車両への衝撃が大きい内容である場合,事故直後の症状が重いと評価されやすいです。

【事故直後の診断内容】
事故直後に症状の重大さをうかがわせる診断内容がある場合,症状が重いと評価されやすいです。

【事故直後の画像所見】
事故直後に神経症状の原因となる画像所見が残っている場合,症状が重いと評価されやすいです。

症状改善のため十分な治療を尽くしたという事情

【治療期間及び実通院日数】
→治療期間が長く,実通院日数が多い方が,等級認定に近づきやすい傾向にあります。一般的には,通院期間6月以上,実通院日数100日以上を要することが目安とされるケースが散見されるところです。
もっとも,長ければ長いほど,多ければ多いほどいいというものではありません。明らかに過剰な診療と評価される治療経過だと,逆に症状とは関係のない理由で(=打算的に)通院したものと評価され,等級認定が得られづらい事情になりかねません。

【治療内容】
→神経ブロック注射など,より症状に対する影響の強い治療を受けている場合,十分な治療を尽くしたものと評価されやすい傾向にあります。具体的な治療方法は主治医とのご相談が適切ですが,可能であれば症状が重いことを把握してもらい,その症状に適した強度の治療を受けるのが望ましいです。

【治療中の症状経過】
治療期間中にどんな症状が出ていたか,という点が具体的に明らかであれば,それに対する治療も尽くされ,結果的に十分な治療を行ったと評価されやすいところです。例えば,首だけでなく上肢や下肢にも症状が出ているほど深刻な症状だったため,これを踏まえた治療内容に移行した,といった場合が挙げられます。

症状固定時における症状の重さに関する事情

【症状の一貫性】
→診断書やカルテの記載上,事故直後と類似した症状が一貫して残存している場合,その症状は重い物と評価されやすいです。

【症状の常時性】
→症状が残存しているとき,それが動作をしたときに生じるのか,動作しなくても常時生じるのかは大きな違いになります。症状に常時性がある場合,その症状は重いと評価されやすいです。

【神経学的検査の結果】
→神経症状に関する後遺障害等級認定の判断に当たっては,その神経症状の程度を推し量るための「神経学的検査」の結果が参照されやすいです。具体的な検査としては,ジャクソンテストやスパーリングテストといった「神経根症状誘発テスト」が挙げられます。

ジャクソンテスト
頭部を後ろに倒しながら圧迫したとき,肩や上腕,前腕などに痛みや痺れが生じるかを確認する検査

スパーリングテスト
頭を後ろに反らせた状態で左右に傾けたとき,肩や腕,手などに痛みや痺れが生じるかを確認する検査

【画像所見】
→14級を目指す場合には画像所見の指摘は困難ですが,何らかの画像所見が医師の先生から指摘される状況であれば,非常に有力な材料になります。

この点,非常に簡易な判断材料として,通院期間及び実通院日数を基準とする検討が広く用いられています。具体的には,通院期間180日以上,実通院日数100日以上を要した場合,そのような神経症状は14級9号の対象になる可能性が生じる,というものです。
ただし,通院期間180日以上,実通院日数100日以上であったとしても,直ちに14級が認定されるわけではなく,イメージとしては認定対象となるためのスタートラインに近いイメージでしょう。

しかし,本件の被害者の場合,通院期間は180日強あったものの,諸事情があり実通院日数が60日程度にとどまっていました。そのため,実通院日数は,後遺障害等級認定に対して消極的な材料となっている状況でした。

そのため,弁護士の方では,以下のような事情を強調することにより,実通院日数が多くなくても14級が認定されるべきであることを主張立証することを目指しました。

14級認定を目指すための主張内容

1.事故態様
a.被害者はバイク乗車中であり,四輪車と違って事故の衝撃が直接身体に及ぶ状況であった
b.四輪車進路変更時の後続直進バイクとの事故は,決して受傷が軽くなりやすい事故類型ではない

2.症状の推移
a.被害者の実通院日数が60日程度にとどまっていたのは,やむを得ない事情があったためで,通院が不要だったからではない
b.被害者は治療開始直後から一貫して痛みを訴え続けており,治療をしても改善されない頑固な症状がある

以上の試みをした結果,後遺障害等級は目標としていた14級9号の認定に至りました。

ポイント
頸椎捻挫での14級9号は,総治療期間と実通院日数が重要な判断要素
実通院日数が一般的基準より少なかったものの,14級9号の認定を実現

③損害賠償額の交渉

1.慰謝料

14級の認定を前提とした場合,主な損害項目は「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」「後遺障害慰謝料」「後遺障害逸失利益」の3点となるのが通常です。本件の場合も同様でした。

この点,「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」及び「後遺障害慰謝料」は,弁護士の交渉による増額が生じやすい主な項目でもあります。弁護士がいない場合はいわゆる自賠責基準が採用されやすいものの,弁護士に依頼し,弁護士が交渉を尽くすことで,裁判基準と呼ばれるより高額な金額水準を踏まえた合意が可能となります。

一例として,14級の後遺障害慰謝料の場合,以下のような差異が考えられます。

14級の後遺障害慰謝料

自賠責基準=32万円
裁判基準=110万円

差額=78万円

なお,弁護士が交渉で解決する場合,裁判基準の80~90%が一つの目安になりやすいところですが,90%の99万円であっても自賠責基準とは67万円もの差があります。

2.逸失利益

後遺障害逸失利益(労働能力の喪失による収入減少)については,労働能力喪失期間が主な問題になりやすいところです。

具体的な労働能力喪失期間は,個別の後遺障害や症状の内容によっても異なりますが,14級9号に該当する頸椎捻挫の場合,5年以内の期間を念頭に置く運用が一般的です。加害者保険会社としては,労働能力喪失期間が短ければ短いほど賠償額も小さくなるため,特に弁護士がいなければより短い期間を主張することが広く見られます。
この点,交通事故と縁のなかった人が,突然「労働能力喪失期間2年」と言われても判断基準を持ち合わせていないため,十分に検討しないまま合意してしまう被害者も相当数いるようです。

しかし,弁護士が交渉をする場合にそのような被害者の損失を見過ごすわけにはいきません。労働能力喪失期間は5年間とすることを念頭に交渉を実施する方針としました。

ポイント
慰謝料は弁護士の有無で最も金額が変わりやすい項目
頸椎捻挫による14級9号の逸失利益は,労働能力喪失期間の問題が生じやすい

活動の結果

上記の各活動を尽くした結果,以下の結果が実現されました。

本件の主な結果

1.過失割合20%(加害者の主張を退ける)
2.後遺障害14級認定(目標等級の実現)
3.賠償額合計245万円(労働能力喪失期間5年)

なお,20%の過失割合があることを踏まえると,賠償額は交渉で実現し得る最大限に近い水準であったと考えられます。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,過失割合について加害者側の中途半端な主張があった,という点に最初の関門がありました。この点については,弁護士が実際の根拠資料を具体的に確認し,加害者側の言い分は法的に認められる余地のない程度の内容であることをはっきり指摘することで,早期解決に至りました。

具体的金額に関しては,後遺障害等級が認定されるかどうか,という点が損害賠償額の大きさを決定づけました。実際には,後遺障害14級を前提に245万円を超える賠償に至りましたが,後遺障害が非該当(等級なし)であれば,賠償額は3分の1にも満たなかったことが見込まれます。

後遺障害等級認定を得るためには,実通院日数の少なさが懸念事項でしたが,バイクの運転中で事故の衝撃が大きかったことや,実際に頑固な症状が残り続けていたことなどを丁寧に示すことで,被害者の後遺障害に対する理解を得られたのが大きな要因だったと考えられます。

頸椎捻挫について後遺障害14級の認定を獲得することは容易でなく,残念ながら非該当を覚悟して行う必要がある,というのが現実ですが,実際に結果が伴うケースも確かに存在するということを伝えてくれる事例だと言えるでしょう。

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【交通事故解決事例】首と腰のヘルニアで被害者請求非該当も異議申立てで14級の認定を獲得し,345万円の賠償金を獲得した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,追突事故被害によるヘルニアの受傷で,異議申立てにより14級の認定を獲得した解決事例を紹介します。

事案の概要

赤信号にて停止中の被害車両に加害車両が追突する形で事故が発生しました。被害者は主に首と腰の痛みに悩まされており,半年近く通院を継続したものの,症状は残存し続けました。

約半年が経過した段階で,通院先にてMRIを撮影したところ,首と腰にヘルニアの症状があるとの指摘を受け,弁護士への法律相談をご希望されました。

弁護士の相談時には,既に通院先での後遺障害診断書作成の予定も設けられており,通院治療は終了が見込まれている状況でした。被害者の悩みも後遺障害等級の点にあり,申請に際して弁護士のサポートをご希望の状況でした。

法的問題点

①ヘルニアと交通事故との因果関係

ヘルニアとは,体内の臓器や組織が本来あるべき場所から逸脱して飛び出した状態を指し,首や腰で問題になるのは「椎間板ヘルニア」と呼ばれるものであることが通常です。
脊椎の間には椎間板というクッションとなる軟骨がありますが,椎間板が圧迫されて飛び出してしまい,神経を圧迫する状態にあるのが椎間板ヘルニアと呼ばれる状態です。

もっとも,このヘルニアは,一般には外傷のみから生じるとは理解されておらず,交通事故で判明したヘルニアの原因は,交通事故前から存在していたと判断されることが非常に多く見られます。
ヘルニアが生じていても,直ちに痛みなどの自覚症状が現れるわけではなく,事故によってヘルニアの箇所に刺激が生じた結果,自覚症状が現れるに至った,という場合が非常に多くあるのです。

ヘルニアの原因が交通事故の原因でない場合,その問題は後遺障害等級の判断にダイレクトな影響を及ぼします。MRIなどの画像でヘルニアが確認でき,ヘルニアに伴う神経症状が出ていたとしても,ヘルニアが事故によって生じたのでないのであれば,ヘルニアは後遺障害等級の根拠にはならない,という結論になってしまいます。
実際に,このような判断でヘルニアがあっても後遺障害等級が非該当との結論になるケースは枚挙に暇がありません。ヘルニアが生じている事故では,ほとんどの場合で因果関係が大きな問題になります。

②神経症状に対する後遺障害等級

神経症状に対する後遺障害等級としては,以下の内容が挙げられます。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

また,その具体的な判断基準としては,以下のように整理されています。

12級13号症状が医学的に証明できる場合
(画像所見などの他覚的所見によって客観的に認められる場合)
14級9号症状が医学的に説明できる場合
(他覚的所見はないものの,受傷内容や治療経過を踏まえると症状の存在が医学的に推定できる場合)

つまり,画像所見などの客観的な所見で第三者が判断できる場合には12級の認定可能性があり,そのような客観的な所見がない場合には14級の認定を目指す,ということになります。

この点,ヘルニアの場合,MRIで客観的に確認できれば12級の認定が得られそうにも思えますが,残念ながらそれほど簡単な話ではありません。ヘルニアがあっても,直ちに事故と因果関係があるとは認められないため,客観的な画像所見があることに加え,それが外傷性のヘルニアであることがわかる根拠も指摘できなければ,12級の根拠とすることは困難と理解されます。

ヘルニアが外傷性であると分かる場合というのは,主に新鮮なヘルニアが画像に現れている場合です。しかし,追突事故で早期にMRI撮影を行うケースはあまり多くはなく,本件でも事故から半年ほど経過し,通院治療の終了に差し掛かった段階で初めてMRIが撮影され,ヘルニアが判明しました。
そのため,本件で12級を目指すことは非常に難しく,14級を目指すことが現実的であろうと思われる状況でした。

③損害賠償額

交通事故の主な損害賠償の項目としては,慰謝料が挙げられます。
この慰謝料は,入院及び通院の期間に応じて発生する「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」と,後遺障害等級に応じて発生する「後遺障害慰謝料」の二つに大きく区別されますが,入通院慰謝料は入通院があれば生じるのに対し,後遺障害慰謝料は後遺障害等級が認定されなければ発生しません。
そのため,後遺障害等級が認定されるかどうかは,後遺障害慰謝料がゼロであるかどうか,という大きな分岐点になるところです。

また,慰謝料の金額は,弁護士の有無で保険会社の対応が変わる主なポイントでもあります。弁護士が金額交渉を行うことで増額するのは,基本的に弁護士が付くとこの慰謝料額について保険会社が増額に応じる運用をしているためです。
もっとも,具体的な増額幅は個別の交渉により異なるため,増額交渉をどのように実施するか,どのような増額結果になるかは,弁護活動によって変化する部分となります。

ポイント
ヘルニアは交通事故との因果関係が問題になる
外傷性のヘルニアか判断できない場合は14級を目指す
慰謝料額の交渉は弁護士交渉のメインポイント

弁護士の活動

①被害者請求の実施

交通事故で後遺障害等級認定を目指す場合,自賠責保険に認定を求める手続を行い,調査・判断してもらうことが必要です。そして,認定を求める手続には,以下の二通りがあります。

後遺障害等級認定を目指す手続

1.事前認定
加害者の保険会社が必要な書類等を収集・提出する方法

2.被害者請求
被害者自身が必要な書類等を収集・提出する方法

また,各方法のメリット・デメリットについては以下のように整理されます。

方法メリットデメリット
事前認定後遺障害診断書だけ主治医から取り付けて提出すれば,あとは保険会社がすべて進めてくれる保険会社は,必要な書面以外は何も提出してくれない
被害者請求必要書類以外にも,自分の主張に関わる書類を自由に添えて提出することができる提出書類の取得や作成を自分でしなければならないため,手間が多い

本件では,神経症状という数値で判断できない分野の後遺障害等級認定を目指す試みであったこと,ヘルニアの存在だけがわかっても等級認定には結びつかないであろうことなどを踏まえ,被害者請求の方法で可能な限り丁寧な主張を尽くすことにしました。

被害者請求に際しては,以下のような活動も実施しました。

【医学的意見の獲得】

ヘルニアの原因が交通事故であっても矛盾しないことや,本件事故の内容を踏まえれば自覚症状が重く残存してもおかしくないことなどについて,医師の医学的意見を聴取の上,書面化への協力を依頼しました。
活動の結果,ヘルニアに伴う神経症状の主張を補強する医学的意見の獲得に至りました。

【自覚症状の書面化】

神経症状については,自覚症状の程度・内容が判断の対象とならざるを得ないため,症状そのものをできる限り具体的に示せるよう,被害者の生の声を書面化することとしました。被害者から自覚症状の内容を洗い出してもらい,その内容を踏まえて適宜打ち合わせを重ねながら,現在被害者に残っている症状とその重さを文書にしました。

②異議申立ての実施

以上の準備の上,被害者請求を実施しましたが,結果は非該当(後遺障害に該当しない)というものでした。
本件は必ずしも等級認定が見込めるとまでは言えない内容であったため,非該当の結果は想定内ではありましたが,等級認定の有無ではやはり大きく賠償額が変わることもあり,異議申立てという不服申し立ての手続を試みることにしました。

異議申立ては,同一の内容について再度自賠責保険(及び自賠責損害調査事務所)の調査・判断を求める手続ですが,同じ事柄について同じ場所が判断を行うため,追加の立証資料がなければ結論が変わることはまずありません。
本件では,以下のような追加資料の作成・提出を行いました。

異議申立ての追加資料

1.非該当とした判断の理由と被害者の自覚症状が食い違っていることや,その自覚症状が継続的にあったことについて,根拠を添えて示す書類を作成

2.非該当の判断理由がこちらの提出した医学的意見とも食い違うことについて,医師の意見を獲得し書面化

③異議申立ての結果

このような異議申立ての結果,非該当との判断が覆り,被害者の首及び腰の神経症状についてそれぞれ14級9号が認定されることとなりました。
異議申立てを尽くしたことで,被害者の後遺障害等級は併合14級となりました。

④金額交渉

後遺障害等級認定の結果を踏まえ,相手保険担当者との間で金額交渉を実施しました。
主な項目である慰謝料は,弁護士が交渉を行う場合,裁判で認められ得る最大額(いわゆる裁判基準)の80~90%を見込むものと言われており,90%が一定の目標水準とされやすい傾向にあります。ただ,本件の場合では,他の項目において,被害者側が相手保険に配慮して譲歩していた部分が見受けられたため,これを踏まえて90%を超える水準での合意が獲得できないか,交渉を試みることにしました。

活動の結果

上記の弁護活動の結果,被害者の後遺障害等級は併合14級,被害者に対する損害賠償額は合計345万円(自賠責保険金75万円,任意保険より270万円)となりました。

損害賠償のうち,慰謝料の金額は裁判基準の92~93%ほどの水準という結果でした。弁護士による金額交渉の結果,90%を上回る金額で,端数を切り上げた切りのいい金額での合意となったための増額でした。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

神経症状に関する14級の後遺障害は,後遺障害等級の中でも最も問題になりやすいものです。また,同時に,等級認定の難易度が高い傾向にある類型ということもできるでしょう。
首や腰の神経症状については,他覚的所見を確認することが非常に難しく,ヘルニアのように所見があったとしても事故との因果関係が不明確とされる場合が非常に多く見られます。この場合,等級認定の客観的な根拠に乏しいため,自覚症状の程度を推測させる事情を丁寧に積み上げて,総合考慮の上で14級の認定をしてもらえるよう試みる必要があります。

本件では,追突された車の損傷が相当程度大きく,事故の規模が小さくはなかったと評価できたことや,自覚症状の内容や推移について被害者が詳細な説明を尽くしたことなどが,異議申立ての結果に結びついた可能性が高いと思われます。

なお,むち打ちに関する後遺障害等級認定については,こちらの記事もご参照ください。

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