【後遺障害1級】主な症状や認定基準,賠償金額の具体的計算などを弁護士が解説

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害1級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害1級の認定基準

1級の認定基準一覧

要介護(別表第1)

要介護1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
要介護1級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

その他の後遺障害(別表第2)

1号両眼が失明したもの
2号咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3号両上肢をひじ関節以上で失つたもの
4号両上肢の用を全廃したもの
5両下肢をひざ関節以上で失つたもの
6号両下肢の用を全廃したもの

【要介護1号】神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

脳や神経に重大な障害が残った結果,生命維持に必要な身の回りの処理の動作が行えず,常に介護を要する場合を指します。

要介護1級1号に該当する神経系統の機能や精神への障害としては,脳の器質的損傷に伴う高次脳機能障害,脳挫傷や脊髄損傷などによる身体性機能障害などが挙げられます。
具体的な認定基準は,障害の具体的な内容によって個別に定められています。

【1.高次脳機能障害】

a.重篤な高次脳機能障害のため,食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの

b.高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため,常時監視を要するもの

【2.身体性機能障害】

a.高度の四肢麻痺が認められるもの

b.中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

c.高度の片麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

(四肢麻痺:四肢すべての麻痺)
(片麻痺:左右どちらか半身の麻痺)

中等度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,その基本動作にかなりの制限があるもの
(例)
・概ね500グラムのものを持ち上げられない
・文字を書くことができない
・障害のある片足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない
・杖や硬性装具なしには歩行が困難

高度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ基本動作(物を持ち上げて動かす・立つ・歩行するなど)ができないもの
(例)
・完全強直又はこれに近い状態(動かない)
・上肢の三大関節(肩・肘・手)及び5つの手指すべてが自分では動かせない
・下肢の三大関節(股・膝・足)すべてが自分では動かせない
・障害を残した片腕ではものを持ち上げて移動させることができない
・障害を残した片足では,支える力や思うように動かす力がほとんどない

【3.脊髄損傷】

a.高度の四肢麻痺が認められるもの

b.高度の対麻痺が認められるもの

c.中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

d.中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

(対麻痺:両上肢又は両下肢の麻痺)

【要介護2号】胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

「胸腹部臓器の機能障害」と呼ばれるものです。胸腹部の臓器に障害が残った結果,生命維持に必要な身の回りの処理の動作が行えず,常に介護を要する場合に,要介護1級2号の認定対象となります。

具体的な認定基準は,臓器ごとに定められていますが,要介護1級の対象として定められているのは呼吸器の障害のみです。
呼吸器に関する要介護1級2号の認定基準は,以下の通りです。

呼吸器

a.動脈酸素分圧50Torr以下のもので,呼吸器機能の低下により常時介護が必要なもの

b.動脈酸素分圧50Torr~60Torrで,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外(37Torr~43Torrの間にない)であり,
かつ,呼吸器機能の低下により常時介護が必要なもの

c.スパイロメトリーの結果が%1秒量35以下又は%肺活量40以下で,高度の呼吸困難があり,
かつ,呼吸器機能の低下により常時介護が必要なもの


→3級4号の基準を満たし,かつ常時介護が必要な場合に該当する

呼吸困難の程度に関する判断基準

高度呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中等度呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同じように歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行ができるもの
軽度呼吸困難のため、健常者と同じようには階段の昇降ができないもの

【1号】両眼が失明したもの

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

【2号】咀嚼及び言語の機能を廃したもの

そしゃく機能と言語機能の両方を「廃した」と評価される場合が該当します。

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

そしゃく状況報告表

「そしゃく機能を廃したもの」
=流動食以外は摂取できないもの

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

「言語の機能を廃したもの」
=4種の語音(口唇音,歯舌音,口蓋音,喉頭音)のうち,3種以上の発音不能のもの

【3号】両上肢をひじ関節以上で失つたもの

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.肩関節において、肩甲骨と上腕骨とを離断したもの
2.肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
3.ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【4号】両上肢の用を全廃したもの

「上肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

三大関節(肩関節・肘関節・手関節)の全てが強直(※)している
かつ
手指の全部の用を廃している

※関節が可動性を失い,動かなくなった状態

【5号】両下肢をひざ関節以上で失つたもの

「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.股関節おいて、寛骨と大腿骨とを離断したもの
2.股関節とひざ関節との間において切断したもの
3.ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【6号】両下肢の用を全廃したもの

「下肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

3大関節(股関節、ひざ関節、及び足関節)の全てが強直(※)した場合
(3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直した場合も含まれる)

※「強直」:関節が全く可動しない場合,又はこれに近い状態(※※)である場合
※※「これに近い状態」:自動の可動域が10%以下になった場合

後遺障害1級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害1級の場合,自賠責保険からは1,150万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は2,800万円となります。

後遺障害1級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害1級の場合は,労働能力喪失率が100%となります。

計算例
年収500万円,40歳,1級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×1.0×18.3270(27年ライプニッツ)
91,635,000円

後遺障害1級の将来介護費

①将来介護費とは

後遺障害が残ったことにより,被害者が介護を要する状況となった場合,その介護のために発生する費用将来介護費といいます。将来介護費の金額は,親族が行う近親者介護の場合と,業務として行う職業介護の場合とで変わります。職業介護の方が介護費用の日額が高くなるため,将来介護費の全体額も大きくなってきます。

②計算方法

【基本的な考え方】

将来介護費は,以下の計算式で算出されます。

将来介護費
=「介護費の日額」×365日×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

基本的な考え方は,1年分の介護費を日額×365で出し,これに生涯を遂げるまでの年数を掛け合わせる,というものです。もっとも,単純に「日額×365×平均余命の年数」としてしまうと,利息の分だけ金額が大きくなりすぎてしまうという問題があります。

法律上,金銭は利息を生むものと理解されています。本稿執筆時の法定利率は年3%であるため,100万円は1年後に利息3%を含む103万円の価値になっている,というのが法律の理解です。
そのため,将来受け取るはずだったものを今受け取る場合,受け取った時点から本来受け取るはずだった時点までの利息の分だけ,早く受け取った方が得をしているという考え方になるのです。

そのため,一括で支払う場合,この期間の利息(中間利息)を差し引いた金額を支払うのが適切ということになりますが,この中間利息を差し引くために用いられる数字が「ライプニッツ係数」です。

将来介護費の計算に当たっては,「日額×365×平均余命の年数」の金額から,利息分を差し引いた金額になる,との理解をすると適切でしょう。

【介護費の日額】

職業付添人による介護が必要か,近親者付添人の介護が可能か,という点の区別によって,日額が異なります。
職業介護の場合はその実費(概ね15,000円~20,000円ほど)が日額となり,近親者介護の場合は1日8,000円ほどを日額とみなす場合が多く見られます。近親者介護よりも職業介護の方が日額は大きくなるのが通常です。

計算例
令和4年症状固定,症状固定時40歳,要介護1級認定,職業介護(15,000円)

計算式
=「介護費の日額」×365日×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

=15,000円×365日×23.7014(42年ライプニッツ)
129,765,165円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

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【後遺障害2級】認定されるケースの症状は?認定された場合の補償金額は?

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害2級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害2級の認定基準

2級の認定基準一覧

要介護(別表第1)

要介護2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
要介護2級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

その他の後遺障害(別表第2)

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になつたもの
2号両眼の視力が0.02以下になつたもの
3号両上肢を手関節以上で失つたもの
4号両下肢を足関節以上で失つたもの

【要介護1号】神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

脳や神経に重大な障害が残った結果,生命維持に必要な身の回りの処理の動作に随時介護を要する場合を指します。

要介護2級1号に該当する神経系統の機能や精神への障害としては,脳の器質的損傷に伴う高次脳機能障害,脳挫傷や脊髄損傷などによる身体性機能障害などが挙げられます。
具体的な認定基準は,障害の具体的な内容によって個別に定められています。

【1.高次脳機能障害】

a.重篤な高次脳機能障害のため,食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの

b.高次脳機能障害による認知症,情意の障害,幻覚,妄想,頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの

c.重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが,1人で外出することなどが困難であり,外出の際には他人の介護を必要とするため,随時他人の介護を必要とするもの

【2.身体性機能障害】

a.高度の片麻痺が認められるもの

b.中等度の四肢麻痺であって,食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を必要とするもの

(片麻痺:左右どちらか半身の麻痺)
(四肢麻痺:四肢すべての麻痺)

中等度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,その基本動作にかなりの制限があるもの
(例)
・概ね500グラムのものを持ち上げられない
・文字を書くことができない
・障害のある片足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない
・杖や硬性装具なしには歩行が困難

高度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ基本動作(物を持ち上げて動かす・立つ・歩行するなど)ができないもの
(例)
・完全強直又はこれに近い状態(動かない)
・上肢の三大関節(肩・肘・手)及び5つの手指すべてが自分では動かせない
・下肢の三大関節(股・膝・足)すべてが自分では動かせない
・障害を残した片腕ではものを持ち上げて移動させることができない
・障害を残した片足では,支える力や思うように動かす力がほとんどない

【3.脊髄損傷】

a.中等度の四肢麻痺が認められるもの

b.軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

c.中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

(対麻痺:両上肢又は両下肢の麻痺)

軽度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われ,その基本動作における巧緻性や速度が相当程度損なわれているもの
(例)
・文字を書くことに困難が伴う
・概ね独歩だが,不安定で転倒しやすく,速度も遅い
・障害のある両足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない

【要介護2号】胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

「胸腹部臓器の機能障害」と呼ばれるものです。胸腹部の臓器に障害が残った結果,生命維持に欠かせない身の回りの処理に随時介護を要する場合に,要介護2級2号の認定対象となります。

具体的な認定基準は,臓器ごとに定められていますが,要介護2級の対象として定められているのは呼吸器の障害のみです。
呼吸器に関する要介護2級2号の認定基準は,以下の通りです。

呼吸器

a.動脈酸素分圧50Torr以下のもので,呼吸器機能の低下により随時介護が必要なもの

b.動脈酸素分圧50Torr~60Torrで,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外(37Torr~43Torrの間にない)であり,
かつ,呼吸器機能の低下により随時介護が必要なもの

c.スパイロメトリーの結果が%1秒量35以下又は%肺活量40以下で,高度の呼吸困難があり,
かつ,呼吸器機能の低下により随時介護が必要なもの


→3級4号の基準を満たし,かつ随時介護が必要な場合に該当する

呼吸困難の程度に関する判断基準

高度呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中等度呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同じように歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行ができるもの
軽度呼吸困難のため、健常者と同じようには階段の昇降ができないもの

【1号】一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になつたもの

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

また,後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【2号】両眼の視力が0.02以下になつたもの

同様に,矯正視力を基準に判断します。
矯正視力が両眼について0.02以下になった場合,認定対象になります。

【3号】両上肢を手関節以上で失つたもの

「上肢を手関節以上失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.ひじ関節と手関節との間で切断したもの
2.手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【4号】両下肢を足関節以上で失つたもの

「下肢を足関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.ひざ関節と足関節との間で切断したもの
2.足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの

後遺障害2級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害2級の場合,自賠責保険からは998万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は2370万円となります。

後遺障害2級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害2級の場合は,労働能力喪失率が100%となります。

計算例
年収500万円,40歳,2級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×1.0×18.3270(27年ライプニッツ)
91,635,000円

後遺障害2級の将来介護費

①将来介護費とは

後遺障害が残ったことにより,被害者が介護を要する状況となった場合,その介護のために発生する費用将来介護費といいます。将来介護費の金額は,親族が行う近親者介護の場合と,業務として行う職業介護の場合とで変わります。職業介護の方が介護費用の日額が高くなるため,将来介護費の全体額も大きくなってきます。

②計算方法

【基本的な考え方】

将来介護費は,以下の計算式で算出されます。

将来介護費
=「介護費の日額」×365日×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

基本的な考え方は,1年分の介護費を日額×365で出し,これに生涯を遂げるまでの年数を掛け合わせる,というものです。もっとも,単純に「日額×365×平均余命の年数」としてしまうと,利息の分だけ金額が大きくなりすぎてしまうという問題があります。

法律上,金銭は利息を生むものと理解されています。本稿執筆時の法定利率は年3%であるため,100万円は1年後に利息3%を含む103万円の価値になっている,というのが法律の理解です。
そのため,将来受け取るはずだったものを今受け取る場合,受け取った時点から本来受け取るはずだった時点までの利息の分だけ,早く受け取った方が得をしているという考え方になるのです。

そのため,一括で支払う場合,この期間の利息(中間利息)を差し引いた金額を支払うのが適切ということになりますが,この中間利息を差し引くために用いられる数字が「ライプニッツ係数」です。

将来介護費の計算に当たっては,「日額×365×平均余命の年数」の金額から,利息分を差し引いた金額になる,との理解をすると適切でしょう。

【介護費の日額】

職業付添人による介護が必要か,近親者付添人の介護が可能か,という点の区別によって,日額が異なります。
職業介護の場合はその実費(概ね15,000円~20,000円ほど)が日額となり,近親者介護の場合は1日8,000円ほどを日額とみなす場合が多く見られます。近親者介護よりも職業介護の方が日額は大きくなるのが通常です。

計算例
令和4年症状固定,症状固定時40歳,要介護2級認定,近親者介護

計算式
=「介護費の日額」×365日×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

=8,000円×365日×23.7014(42年ライプニッツ)
69,208,088円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

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【労災事故解決事例】工事現場で事故被害に遭った後遺障害1級の被害者を弁護し,将来介護費を含め約1億9,000万円の賠償を獲得した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,工事現場における労災事故で後遺障害1級となった被害者を弁護した結果,将来介護費を含めて総額約1億9000万円が獲得された事例を紹介します。

事案の概要

被害者は,大型建物の撤去工事に参加していたところ,重機で引き上げていた重量物が落下し,手足に直撃する事故に遭いました。事故の結果,被害者は両足の膝から下を失うとともに,右手も失うという重大な障害を負いました。

法的問題点

①後遺障害等級

下肢の欠損については,以下の後遺障害等級が考えられます。
(なお,便宜上自賠責保険の認定基準を用います)

両下肢を失った場合の後遺障害等級

等級基準
1級5号両下肢をひざ関節以上で失ったもの
2級4号両下肢を足関節以上で失ったもの
4級7号両足をリスフラン関節以上で失ったもの

本件では,両下肢の膝から下を失っているため,1級の認定が想定されます。

また,上肢の欠損については,以下の後遺障害等級が考えられます。

1上肢を失った場合の後遺障害等級

等級基準
4級4号1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5級4号1上肢を手関節以上で失ったもの

本件では,手関節以上を失っており,5級の認定が想定されます。

以上を踏まえると,本件では後遺障害1級の認定が明らかに見込まれる,と言っても差し支えない状況でした。
なお,これらの後遺障害は,要介護の後遺障害とはされていないため,認定基準を満たせば直ちに介護が必要と判断できるわけではありません。ただ,両下肢を失ってしまえば現実的に介護を要する場合が多いため,将来介護費の対象とすることは多く見られます。

ポイント
両下肢の欠損で後遺障害1級
要介護の後遺障害等級ではないが,現実的には介護を要しやすい

②請負関係

被害者は,建築現場の業務中に事故に遭いましたが,この建築現場には複数の会社が介入していました。このうち,被害者の立場はいわゆる孫請け(二次下請)をする会社の所属でした。
この場合,現場業務には「元請」の会社,「一次下請(子請け)」の会社と,被害者を含む「二次下請(孫請け)」の会社がいることになりますが,損害賠償の関係は元請けから二次下請までの各会社との間で生じます。

建築業務に携わる会社は,万一の事故に備えて各種の傷害保険や賠償保険に加入していることが一般的ですが,被害者の場合,直接の雇用関係にある二次下請の会社のみならず,その上位にある一次下請や元請の会社が加入している保険からの給付も受けられる可能性が高い状況でした。
このような保険給付は,交渉などを要せず比較的速やかに行われるものも多いため,漏れなく請求することが被害者の利益のためには非常に重要です。

ポイント
被害者は二次下請の会社に属していた
元請や一次下請の会社の保険給付も受けられる余地がある

③将来介護費

既に解説した通り,下肢の欠損自体は要介護の後遺障害等級とされているわけではありません。しかし,両下肢を欠損した状態では,生活に多大な支障があることは明らかであり,一人で十分な生活を送ることは困難です。
そのため,被害者の十分な救済を図るためには,将来介護費の交渉が不可欠な状況でした。

この点,将来介護費の請求を行うためには,具体的にどのような介護を要したか,という点の主張立証が重要になります。

将来介護の内容には,大きく以下の2種類が挙げられます。

将来介護の種類

1.職業介護
→職業介護人による介護(日額15,000円~20,000円ほど)

2.近親者介護
→家族等による介護(日額8,000円ほど)

一般的な介護の必要性としては,「職業介護を要する場合」「介護を要するが近親者介護で足りる場合」「近親者介護も不要である場合」という区別ができるでしょう。
したがって,近親者介護を要することが立証できなければ,将来介護費の請求は困難ということになります。

ポイント
将来介護には職業介護と近親者介護がある
介護費を請求するには,少なくとも近親者介護は必要と言えることが必要

④労災保険の手続

労災保険は,労働者が勤務中の災害で受傷した場合に損害の補填をする保険ですが,適切に給付を受けるためには必要な手続を行わなければなりません。

本件では,以下の2つの手続が想定されます。

【傷病補償等年金・特別支給金】

療養の開始後1年6か月を経過しても治療が終わらず,その負傷が1級などの上位の後遺障害に該当するものである場合,傷病補償等年金の請求が可能です。
また,等級に応じた特別支給金や特別年金の支給を受けることも可能となります。この特別支給金及び特別年金は,相手方からの賠償とは別に受領できる(損益相殺の対象にならない)ため,被害者への補償として非常に有益なものです。

傷病等級傷病補償等年金傷病特別支給金傷病特別年金
第1級給付基礎日額の313日分114万円算定基礎日額の313日分
第2級給付基礎日額の277日分107万円算定基礎日額の277日分
第3級給付基礎日額の245日分100万円算定基礎日額の245日分

【障害補償年金・特別支給金】

治療の終了後,後遺障害が残った場合,後遺障害1級から7級ではその等級に応じて障害補償年金の請求が可能です(8級から14級は年金でなく一時金のみでの支給となります)。
また,等級に応じた特別支給金や特別年金の支給を受けることも可能となります。この特別支給金及び特別年金は,相手方からの賠償とは別に受領できる(損益相殺の対象にならない)ため,被害者への補償として非常に有益なものです。

障害等級障害補償年金障害特別支給金障害特別年金
第1級給付基礎日額の313日分342万円算定基礎日額の313日分
第2級給付基礎日額の277日分320万円算定基礎日額の277日分
第3級給付基礎日額の245日分300万円算定基礎日額の245日分
第4級給付基礎日額の213日分264万円算定基礎日額の213日分
第5級給付基礎日額の184日分225万円算定基礎日額の184日分
第6級給付基礎日額の156日分192万円算定基礎日額の156日分
第7級給付基礎日額の131日分159万円算定基礎日額の131日分

本件では,生活に介護を要する被害者に代わり,これらの手続を弁護士が対応することとしました。

ポイント
治療が長期化すると傷病補償年金の請求が可能
後遺障害が残ると障害補償年金の請求が可能

弁護士の活動

①請負関係の処理

まず,弁護士からは各社で利用可能な保険の内容を一通り確認することとしました。その結果,それぞれ後遺障害1級を前提とした保険金の支払が可能であり,その総額は8,000万円あまりに上ることが分かりました
多大な損害を被った被害者にまず一定額の受領をしてもらうため,これらの保険金の支払手続を急ぐこととしました。

その後は,各社と個別に協議を行うと解決が困難になりかねないため,代表者の選定を依頼するとともに,その代表者の代理人弁護士と協議する方針を取りました。こうすることで,各社から個別に主張を受けることがなくなり,円滑な解決が可能となりました。

ポイント
各保険から合計8,000万円あまりの給付が受けられることを確認
迅速に保険金を回収することで,被害者の損害補填を実現
その後の交渉は,代表者1名との間で行う形を取った

②将来介護費の解決

将来介護費については,近親者介護の必要性を具体的に指摘することが必要でした。

そのため,被害者及び同居する母と綿密な打ち合わせを実施し,治療中及び症状固定後の介護状況を具体的に整理することとしました。聴取の結果,生活の各局面で母による献身的な介護が被害者を支えていると確認することができました。
弁護士からは,被害者に対する母親の介護状況を詳細に整理して指摘することで,将来介護費の必要が認められるに至りました。また,その日額は近親者介護を終日要する場合の基準額である8,000円となりました。

ポイント
被害者の母による介護の実績を詳細に整理
将来介護費の有無が大きな争点となることを防止

③労災保険の手続

労災保険の各給付に関しては,弁護士が被害者の代理人として申請手続を行った結果,無事に各給付を受けることができました。
被害者自身が具体的な申請を行うことは容易でないため,被害者にとっては弁護士依頼の大きなメリットが生じた一面であったとも言えるでしょう。

活動の結果

上記の活動の結果,被害者には各会社の加入する保険から所定の保険金が支払われるとともに,労災保険にて後遺障害1級が認定され,労災保険からも必要な給付がすべて行われました。
さらに,会社加入の賠償保険から逸失利益及び将来介護費などの支払を受け,その総額(将来の年金を除く)は約1億9000万円となりました。

被害者の方は,バリアフリーに配慮した自宅への転居や介護体制の完備が得られ,将来の生活に対する憂いを解消するに至りました。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,工事現場における労災事故で,幸いにも一命を取り留めたというものでした。しかし,その受傷は一見して後遺障害1級に該当すると判断できるほど深刻であり,今後の生活保障のためにもできる限りの賠償金を獲得することが重要な状況でした。

特徴的な損害項目としては将来介護費が挙げられますが,どの程度の介護費が生じるかは,必要な介護の具体的内容による面が非常に大きいところです。そのため,請求時にどのような介護を要しているか,その介護は今後も継続的に必要か,といった点を詳細に示すことが解決の近道になります。

本件では,被害者やご家族のご協力をいただけたこともあり,介護の実態を具体的に指摘できたのが円滑な解決につながりました。

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【交通事故解決事例】後遺障害の被害者請求を早期に実施したことで減額回避。スピード弁護が最大額の賠償獲得を実現した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,事故後意識を失った状態であった高齢者に関し,迅速な弁護活動によって最大額の受領を実現した事例を紹介します。

事案の概要

90歳の被害者は,自転車の乗車中に自動車と衝突する事故に遭い,脳挫傷,肩や肋骨の骨折,全身の打撲等,極めて重大なケガを負いました。被害者は,事故発生から意識のない状態が続いていたため,被害者から事故状況を聞き出すことはできませんでした。
事故態様に関しては,被害者が片側一車線の道路の路肩を走行していたところ,後続の自動車と接触した事故のようである,との情報が得られましたが,その正確さは不十分なものにとどまりました。被害者が歩道を走行していたのか路肩を走行していたのか,どのような経緯で車道に進入したのか,なぜ接触が回避できなかったのか,という点について,明確な情報は得られないままでした。

また,自動車側の保険会社は,意識を失って入院中である被害者の入院費用の支払を拒んでいました。このような対応は,通常,被害者側に大きな過失があると考える場合に取られるものであり,相手方やその保険会社が,被害者の過失を相当程度大きく見積もっていることが推測される状況でした。

被害者自身が弁護士に依頼することは困難であるため,被害者の唯一の子である男性が,弁護士への相談・依頼を希望されました。

法的問題点

①過失割合

交通事故の損害額は,過失割合によって大きく異なります。それは,損害額を被害者と加害者の過失割合に応じて負担し合うことになるためです。

例えば,被害者に総額1,000万円の損害が生じているとして,被害者の過失がゼロであれば,1,000万円の損害は全て加害者が負担すべきということになります。全ての損害が加害者の落ち度によって生じているためです。
一方,被害者と加害者の過失がともに50%であれば,加害者に全ての損害を負担させるのは公平ではありません。被害者にも50%の過失がある以上,被害者に生じた損害の50%に当たる500万円は被害者が負担すべきであって,加害者に請求ができるのは1,000万円のうち500万円のみという結論になります。

本件では,被害者自身から事故状況が聴取できず,事故を撮影した映像もなかった上,加害者の主張する内容も明確には把握できなかったため,過失割合を特定しづらいという難点がありました。ただ,加害者の保険会社が被害者の入院費用の支払を拒んでいることは,保険会社が被害者の過失を相当程度見積もっていることの十分な裏付けになる事情ではありました。

被害者の家族を通じて収集できた情報を踏まえると,過失割合にはいくつかの仮説を立てることは不可能ではありませんでした。

【仮説1.進路変更の場合】

自転車と車が同一方向に走行していたところ,自転車が何らかの事情で進路変更を試み,その際に車と接触した,という場合です。過失割合は,前方に障害物があったかどうかによって区別されますが,障害物はなかったという前提で仮説を立てます。

この場合,以下の【307】図に従い,基本過失割合は自転車:自動車=20:80,自転車が高齢者のため「-10」の修正がなされ,自転車:自動車=10:90という過失割合が想定されます。

「別冊判例タイムズ38号」より引用 以下同じ

【仮説2.路外からの侵入の場合】

自転車が路肩を走行していたという点が不正確であり,実際は路外の駐車場などから自転車が車道へ進入した,という場合です。

この場合,以下の【300】図に従い,基本過失割合は自転車:自動車=40:60,自転車高齢者のため「-10」の修正がなされ,自転車:自動車=30:70という過失割合が想定されます。

【仮説3.横断自転車の場合】

路肩を走行中の自転車が,何らかの理由で車道を横断して対向車線側に移ろうとした場合です。また,自転車が路肩でなくさらに外側の歩道を走行しており,その後車道を横断しようと試みた,という場合も含まれます。

この場合,以下の【310】図に従い,基本過失割合は自転車:自動車=30:70,自転車高齢者のため「-10」の修正がなされますが,この場合には自動車側から「直前横断」の主張がなされるのが多数であるため,直前横断によりさらに「+10」の修正がなされ,結果的には自転車:自動車=30:70という過失割合が想定されます。

【過失割合に関するその他の事情】

過失割合の検討を行う場合,刑事記録として作成されている「実況見分調書」の取り付けが広く行われています。実況見分調書は,当事者が立ち会いの上,当事者が指示説明した事故態様を書面に記録したもので,当事者の主張する事故態様を把握するための根拠資料とされます。

ただ,実況見分調書を含む刑事記録の取り付けができるのは,基本的に刑事処分がなされた後です。そして,交通事故に関して刑事処分がなされるのは,早くても数か月後,ケースによっては1年以上経ってからのことにもなりかねません。時間をかけて調査するのであれば,実況見分調書を通じて相手の主張を確認するのも有力ですが,本件では以下で解説するようにあまり時間が残されていませんでした。

ポイント
被害者側の情報を踏まえると,被害者の過失は10~30%になりやすいか
実況見分調書の取り付けは有力だが,取得に時間がかかる

②損害の内容

本件の被害者の後遺障害等級は,1級となることがほぼ明らかな状況でした。事故発生から一貫して意識のない状態が続いており,意識の回復する見通しがなかったためです。そのため,被害者の損害としては,入院に対する慰謝料と,後遺障害1級に対する慰謝料が見込まれやすいところです。

もっとも,被害者は90歳と高齢であり,収入を得る仕事をしている立場にはなかったため,後遺障害に伴う逸失利益(労働能力の喪失による収入減少)は存在しない状況でした。後遺障害等級が認定される場合,金額的にはこの逸失利益が全項目中最も大きな金額になることが通常ですが,収入のない立場の高齢者は例外で,本件でも後遺障害の逸失利益は存在しないことを前提に考慮する必要がありました。

ポイント
後遺障害は1級であることがほぼ明らか。「入院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」が生じる
しかし,被害者の立場上「後遺障害逸失利益」は存在しない

③被害者死亡後の損害額

被害者は,事故当時90歳と非常に高齢で,事故がなくても生涯を遂げる時期が遠くはないと見られていました。そこに交通事故で意識不明の重体となり,その生命維持は非常に不安定な状態を強いられ続けていました。

この場合,弁護士としては,死亡前後の損害額の変化を考慮する必要があります。つまり,死亡後では得られる賠償額が小さくなってしまう場合,死亡より前に金銭を回収しなければ,被害者の不利益につながってしまうということです。
しかも,本件では被害者側に一定程度の過失が見込まれるため,死亡前後の比較はいわゆる裁判基準のみでなく,自賠責基準についても行う必要があります。なぜなら,自賠責基準は被害者側にあまりに大きな過失がない限りは過失による金額減少が生じないため,後遺障害逸失利益のない本件のようなケースでは,過失相殺を要する裁判基準よりも過失相殺しなくて済む自賠責基準の方が高額になる可能性も大いにあるからです。

実際に,本件では自賠責保険金の方が高額になりやすいケースと考えられる状況でした。そして,自賠責保険金は,死亡後になると,それ以前の半分に満たない金額しか受領できなくなることが試算できました。

したがって,過失割合の問題は存在するものの,過失割合の検討に時間をかけている場合ではなかったのです。

ポイント
被害者死亡の可能性がある場合,死亡前後で損害額が大きく減少しないか注意が必要
死亡前後での金額変化は,自賠責基準についても検討する必要がある
本件では,死亡後になると自賠責保険金が半分以下になってしまう

④子の依頼を受けて活動できるか

被害者自身が弁護士に依頼できないため,現実的には子が被害者の代わりに動いている状況でした。
もっとも,法律上は,本人の代わりに動くのは成年被後見人と呼ばれる立場の人物でなければならず,子であっても法的には第三者に過ぎません。そのため,法律を厳密に守るのであれば,子を成年被後見人と認めてもらった後に,改めて子から依頼を受けて弁護活動を行うべき,ということになります。

しかし,被害者死亡後に回収できる金額が大きく減少してしまうため,ゆっくりと成年被後見人の手続をしているわけにはいきませんでした。
この点,自賠責保険は,被害者の成年被後見人見込みとして適切な人物であれば,請求者が被害者自身でなくても自賠責保険金の請求を受け付ける運用をしています。この取り扱いを踏まえ,とりあえず自賠責保険金の受領に限り,子の委任を受けて弁護士が活動を行うことに決めました。

ポイント
法的には,成年被後見人が被害者のために弁護士依頼することが必要
自賠責保険は,成年被後見人でなくてもその見込みがあれば請求者として取り扱う
自賠責保険金の請求に限り,速やかに子の委任を受けて活動することにした

弁護士の活動

①自賠責保険への被害者請求

弁護士の方では,まず何より速やかな自賠責保険金の請求を試みました。そのため,具体的には以下のような活動を尽くしました。

被害者請求迅速化のための活動

1.症状固定の判断と後遺障害診断書作成を直ちに行うことを,医療機関に丁寧に相談

2.成年被後見人見込みの子が請求者として被害者請求する予定であることを,自賠責保険会社と事前に打ち合わせ

3.自賠責に作成・提出を要する資料は前倒しで順次取り付け

これらの活動の結果,被害者の存命中に被害者請求が実施でき,自賠責保険から3,129万円の保険金を受領することができました。

②被害者請求後

自賠責保険金を受領した後は,それ以前のような時間の切迫はないため,通常通り実況見分調書の取り付けを試みるとともに,被害者の成年被後見人を選任する手続を進めるなどしながら,加害者側への請求内容を検討していました。

しかし,ほどなくして被害者の方が生涯を遂げられたため,自賠責保険金を超える請求の余地がなくなり,活動は終了することとなりました。

なお,加害者立ち会いの実況見分調書が後に取得できたため,内容を確認してみたところ,加害者側の主張は【仮説3.横断自転車の場合】に該当するものでした。加害者によれば,路肩よりさらに外側の歩道を走行していたはずの自転車が,突然歩道に飛び出して目の前を横断しようとした,という事故態様であったようです。
加害者の主張を踏まえた過失割合は,自転車:自動車=30:70をベースにすると思われますが,加害者保険会社の姿勢を考慮すると,それ以上の被害者の過失を主張するつもりであった可能性も考えられます。

ポイント
迅速な被害者請求により,自賠責保険金3,129万円を獲得
その後の請求を実施せず弁護活動終了
加害者の主張は,被害者の過失30%以上

活動の結果

上記の弁護活動の結果,被害者の後遺障害1級に対する自賠責保険金として3,129万円が支払われ,被害者の死亡後,遺族に相続されることとなりました。

なお,この後遺障害に対する自賠責保険金を受領する以上に金銭を獲得する方法は,本件では結果的に存在しませんでした。被害者の死亡まで手をこまねいていると,回収金額は半分以下に減少してしまうため,スピード弁護が最大額の補償を引き出すに至りました。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,過失割合の不明確さ,逸失利益がないことによる方法選択の困難さ,被害者本人に意識がないことによる弁護士依頼の難しさなど,複数の異なる問題点に頭を悩ませやすい内容でした。しかし,本件の最も大きな問題は,死亡を待っていられない点にあり,その問題にどれだけ早く気づき,迅速な対応ができるかが極めて重要なポイントになっていました。

一般的な進め方では,まず可能な限り十分な治療を尽くして,過失割合については加害者の刑事処分を待って…と長い期間を費やした後に初めて方針の検討をすることも珍しくありませんが,本件ではそれが許されないという点に,杓子定規では解決できない弁護活動の難解さがあったのではないかと考えます。
また,最大限の金銭回収に至った原動力が,活動のスピードであったという点は,日頃から私が大切にしている活動の迅速さが結果に結びついたものでもあります。そのため,自分の考え方やスタンスが間違っていなかったとの確信を深める大切な機会にもなりました。

特設サイト:藤垣法律事務所