交通事故では自首が必要か?自首しないとどうなるか?自首すると逮捕されてしまうか?

このページでは,交通事故加害者の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

交通事故加害者が自首をするべき場合

①交通事故で自首が必要なケースとは

交通事故の場合,自首が必要なケースはあまり多くありません。なぜなら,交通事故が発生した段階で,自動車運転者には警察への報告義務が発生するためです。
事故発生から間もないタイミングで,報告義務に従って警察に報告がなされ,警察が事故の存在を把握することになるため,自然と自首の機会は生じないこととなります。
そのため,交通事故で自首が必要なケースは,警察への報告義務を怠った場合や,報告後に警察の捜査への対応を怠った場合のいずれかとなるでしょう。

交通事故の処理を適切に行っていれば,自首が必要となることは考えにくいと言えます。

ポイント
交通事故は,発生直後に警察への報告が必要
適切な事故処理をしていれば,自首は必要ない

②口頭で身体に異常がないと確認した場合

自動車での走行中,歩行中又は自転車乗車中の相手と軽く接触した,という場合に,口頭で相手の身体に異常がないことを確認し,その場を離れてしまうケースが散見されます。この場合,後になって相手が怪我を主張し,警察に捜査を求めることになれば,いわゆるひき逃げ事件として捜査の対象となる可能性が否定できません。

もちろん,実際に相手に何も異常がなく,相手が特に警察への連絡等をしなければ,何事もなく終了することになります。しかしながら,相手に全く怪我がなかったか,後になって怪我を主張して警察に捜査を求めたかは,事前に把握する手段がありません。

そのため,口頭での確認のみを取ってその場を去った場合には,後にひき逃げとして扱われることを防ぐために,自首を検討することが有力でしょう。

ポイント
事故直後に身体の異常がないと告げた被害者も,後から怪我を主張する場合がある
後から怪我を主張された場合,ひき逃げ事件として扱われる恐れがある

③事故発生の有無が不安な場合

自動車の運転中に,背後で何か音がした,軽く何かが接触した感覚があったなど,交通事故を想起させる出来事があった場合,実際に交通事故が起きているかどうかは非常に大きな問題です。交通事故が起きてしまっていると,やはりひき逃げ事件として捜査の対象とされる可能性が生じてしまいます。

そのため,運転中に異常を感じ,事故が発生したかどうか不安に感じている場合には,将来的にひき逃げ事件の被疑者とされる危険を避けるため,自首を検討することが一案です。なお,実際には事故が起きていなかった,又は事故が起きたかどうか分からなかったという場合には,特に捜査が行われることなく対応が終了することになるため,不要な捜査を招くことにはなりにくいでしょう。

ポイント
事故が起きたかどうか分からず不安な場合には自首が有力
事故が起きていなければ,特に捜査されないことが通常

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

交通事故加害者の自首は弁護士に依頼すべきか

交通事故加害者として自首を検討する場合や,実際に自首を行う場合には,弁護士への依頼が適切です。弁護士に依頼をすることで,法的に適切な検討や対応が可能となります。
弁護士に依頼することの具体的なメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①自首すべき状況かが分かる

自首は,自身の行為について逮捕や刑罰が想定される場合に有力な手段となります。裏を返せば,交通事故の内容などを踏まえて逮捕や刑罰が想定されないと判断される場合には,自首すべき状況にはない,と考えるのが適切です。
もっとも,個別の事件について逮捕や刑罰が想定されるかどうか,という点を具体的に検討することは,専門家でなければ困難と言わざるを得ません。もし自分自身で一定の判断をしたとしても,それが本当に適切な判断かを知る手段がなければ,事態はあまり好転していないと言えます。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕や刑罰が想定される状況か,言い換えれば自首すべき状況かを弁護士に判断してもらうことが可能です。交通事故の場合,逮捕や刑罰をそれほど懸念しなくてよいケースも少なくはないため,この点が正しく判断できることは非常に重要となるでしょう。

②適切な自首の方法が分かる

自首を行うことに決めたとしても,具体的にどこへ何をしに行けばいいのか,まず最初にはどのようなアクションを起こすべきか,といった点が次の課題となります。せっかく自首を試みたとしても,その方法を誤ってしまうと,手続が滞る上に自首のメリットを最大限に得られないリスクも生じます。
大きなリスクと負担を背負って自首をする以上,適切な方法での自首を行うべきです。

この点,弁護士に依頼をすれば,自首の方法や流れは弁護士に判断してもらい,弁護士から案内してもらうことができるため,手段を誤る恐れなく自首を試みることが可能です。交通事故の場合,交通課が取り扱う関係で,その他の事件類型とは異なる独特の取り扱いも生じ得るため,適切な対応を尽くすため弁護士のサポートを受けることをお勧めします。

③自首に伴う負担が大きく軽減する

自首は,自分から捜査機関に連絡を取って事件の内容を詳細に説明しなければならないなど,行動の負担や動きに伴う心理的な負担が非常に重くなりがちです。それらの負担が,自首を躊躇させやすい要因でもあります。
もっとも,自首をすべき状況であるのに,負担を理由に自首を控えてしまうのは合理的な判断とは言い難く,チャンスを逃すことにもなりかねません。

この点,弁護士に依頼すれば,弁護士が代行できる対応はすべて弁護士に行ってもらうことができます。警察への電話連絡や自首希望であることの意思表明,事件内容の説明,警察とのスケジュール調整など,負担の生じやすい動きを弁護士に委ねることができれば,自首を試みるハードルは大きく下がるでしょう。

④捜査機関の対応が軟化しやすい

捜査機関は,弁護士が入っているケースの方がそうでないケースよりも穏やかで緩やかな取り扱いをしやすい傾向にあります。法律の専門家である弁護士が目を光らせているため,法的な根拠に乏しいことを強引に行うケースはほとんどなくなるのが通常です。

当事者自身が,捜査機関の対応について法的に適切かどうかを判断するのは容易でありません。知識面はもちろんのこと,その場で突然行われたことや言われたことを,直ちに判断するのは非常に難しいと言わざるを得ないでしょう。
そのため,弁護士の存在によって捜査機関の対応が軟化することは,困難な判断が不要になる意味でも非常に価値の高い効果と言えます。

交通事故加害者が自首をする場合の注意点

①事故後の対処の重要性

交通事故は,事故後に適切な対応を尽くすかどうかによってその刑事責任の重さが極めて大きく異なります。なぜなら,事故後に被害者の救護や警察への報告を怠ると,ただの交通事故でなくひき逃げ事件となってしまうためです。
ひき逃げ事件は,法的には救護義務違反を指しますが,被害者の生命や身体に対する危険が非常に強い行為であるため,厳罰の対象となりやすいものです。ひき逃げ事件になってしまうと,後に自首をしても逮捕を防げない場合は珍しくありません。

ひき逃げ事件となって自首の検討に苦慮することのないよう,事故直後に適切な救護や報告を尽くすことがまず何よりです。

②自首しても進展しない可能性

交通事故の場合,基本的に当事者のいずれかから報告がないと,警察はその存在も把握することができません。そのため,交通事故があったかもしれないと思って自首しても,相手が警察に報告をしていなければ,警察にとって事故の有無は分からないままとなります。この場合,警察は具体的な捜査を行うことが困難となりやすく,自首をしても事態は何も変わらない結果となる可能性は否定できないでしょう。

そのため,交通事故について自首をする場合には,必ずしも自首によって警察の処理が進行するとは限らず,特に事態が進展しない可能性をあらかじめ踏まえておくことをお勧めします。
なお,もし事態が進展しなかったとしても,自首が無意味だったというわけではありません。万一その後に被害者が発見され,捜査されるに至った場合には,自首は加害者に有利な材料として考慮されることになります。

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【交通事故加害者の呼び出し】呼び出しに応じると何がある?出頭したときの注意点は?弁護士は必要?

このページでは,交通事故加害者として警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
交通事故加害者の呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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交通事故加害者で呼び出された場合の対応法

①基本的な考え方

交通事故加害者となった件について,捜査機関から呼び出しを受けた場合,基本的には「呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じない」と理解をしておくことが適切です。

交通事故は,不注意で起きてしまった過失犯であるため,特段の事情がなければそれほど加害者の不利益が大きな手続(長期の身柄拘束など)を用いることはありません。特に,事故直後にしっかりと事故処理の対応を尽くしていれば,その後の呼び出しに応じている限り不測の不利益は生じないことが通常でしょう。

このような考え方を持っておくことは,自身の不安な感情を適切にコントロールする意味でも非常に重要です。交通事故は,刑事事件の中でも件数が非常に多い分野のため,手続が進むのを待つ期間が長く,手続全体も長期化しがちです。そのため,手続がなかなか終わらない中で自身をコントロールする必要がありますが,「呼ばれたときに適切に応じればよい」と割り切ることができれば,長期化による精神的負担は最小限に抑えることが可能になります。

ポイント
呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じ難い
交通事故の刑事手続は長期化しやすい

②反省内容の表明

交通事故加害者に対する呼び出しの際に確認されやすい点の一つが,反省状況です。その背景には,交通事故は,故意でなく過失(=注意義務違反)によって起きたものである,という点があります。

故意に起こした事件の場合,認め事件であれば反省の意思を表明しないことは稀です。故意に起こした犯罪行為に反省しない余地が考えにくいためです。一方,過失犯の場合,自分の過失をどのように評価しているかによって,反省を深めているケースもあれば,捜査を受けていることが不服であると考えているケースもあり得ます。
そうすると,捜査機関の目線では反省すべき過失があるのに,加害者本人が「自分にそれほどの落ち度はない」とのスタンスだと,捜査機関の理解との間に大きなギャップが生まれ,不利益な刑事処分につながる可能性もあり得ます。

そのため,自身の過失として指摘されている内容を冷静に確認し,反省すべき内容であればその反省を明確に表明していくことが適切な対応となります。

ポイント
反省すべきケースで反省が見られないと,大きな不利益につながる

③保険会社による対応状況の把握

呼び出しを受けた場合,警察署等で取り調べを受けることが見込まれますが,その際には被害者との間での解決状況についても確認されることが一般的です。そのため,自動車保険に加入している場合は,保険会社と被害者との間のやり取りの進捗をある程度把握しておくようにしましょう。

保険会社の対応状況を把握することは,以下のようなメリットにつながります。

保険会社の対応状況を把握するメリット

1.捜査機関に解決見込みありと理解してもらえる
→対応が順調に進んでいれば,当事者間の金銭的解決を前提にしてもらえる

2.十分な被害者対応をしているとの評価が得られる
→被害者対応を積極的に尽くそうとしている態度があるとの評価につながる

3.被害者側の感情面に有益な効果が期待できる
→加害者が状況把握に努めていると被害者に伝われば,被害者側の感情面の緩和につながる

交通事故加害者が呼び出しに応じると逮捕されるか

刑事事件では,呼び出しをした上で,呼び出しに応じたところを逮捕するケースも一定数見られます。もっとも,交通事故加害者として呼び出しを受けた場合,これに応じたところを逮捕されるという可能性は基本的にないでしょう。

その理由としては,以下のような点が挙げられます。

交通事故加害者が呼び出しの際に逮捕されない理由

1.過失犯である
→故意犯より刑事責任が軽いため,類型的に逮捕の必要性が高くない

2.逮捕の必要性が高い状況にない
→事故直後に一定の必要な捜査がされており,証拠隠滅が生じにくい

3.呼び出しを選択している際の捜査方針
→あえて呼び出しを選択しているのは,呼び出しに応じれば逮捕不要との判断であるため

交通事故加害者として呼び出された場合には,円滑にその求めに応じ,端的に求められた捜査協力を尽くすことが適切でしょう。「逮捕されるのではないか」といった不要な警戒心を示すのは,警戒するだけの事情があるのではないか,との疑念を招く恐れがあり,かえって不利益の原因となる可能性もあります。

交通事故加害者を警察が呼び出すタイミングや方法

①実況見分のため

交通事故の場合,事故現場の道路状況や事故の起きた具体的場所等を,現場に行って確認することが一般的です。このような捜査を「実況見分」と言います。
実況見分を行う場合,当事者の双方又は一方の立ち会いを要するため,捜査機関からの呼び出しがこの実況見分への立ち会いを求める目的であるケースは多いでしょう。

実況見分は,交通事故捜査の比較的早期の段階で行われることが一般的です。場合によっては,事故発生当日又は直後に行うこともあり得ます。事故当日に行われた場合,その後に実況見分目的で呼び出されることは通常なくなります。

②取調べのため

交通事故加害者に対する捜査では,基本的に当事者双方から事情を聴き,事故発生状況等の把握を進めることが必要となります。そのため,捜査機関による呼び出しは取調べを実施するためであることも多くあるでしょう。

取調べ目的で呼び出しがなされるタイミングは,警察側のスケジュールによって様々です。交通事故や交通違反は,件数自体が非常に多いため,警察側も迅速な処理が難しく,順番待ちが生じやすい,というのがその大きな理由です。
場合によっては月単位で待機する可能性も否定はできませんが,期間が空いたからと言って不利益な事情というわけではないため,自分だけが一方的に焦ってしまうことはないように注意しましょう。

③車両の持参を求めるため

交通事故では,当事者双方の乗っていた車両が重要な証拠物となります。特に,事故態様や過失の内容が争いになっているケースでは,車両の損傷箇所や損傷状況を根拠に結論が出る場合もあります。
そのため,警察の捜査の一環として,事故車両の持参を求め,写真撮影などの証拠化を行うことは広く行われているところです。

車両の持参を求められるのは,基本的に自走が可能な状況にあるケースです。事故車両に乗って警察に向かい,その場で車両の確認や撮影等が行われる,という流れが多く見られるでしょう。

交通事故加害者が呼び出しに応じたときの注意点

①供述調書の内容

呼び出しに応じて出頭した場合,取調べの上で「供述調書」を作成されることが考えられます。供述調書は,自身の話した内容を捜査機関が書面化したものです。供述調書には,供述した本人の署名押印が求められますが,この署名押印は,「調書の内容は自分の話したことで間違いない」というお墨付きを与える趣旨のものです。

供述調書の作成をされると,その内容が気になるところですが,供述調書の内容に対してどのような考え方でいるべきかは,認め事件か否認事件かによって大きく異なります。

【認め事件の場合】

認め事件では,あまり細部に過敏になる必要はありません。供述調書上での言い回しや細かい内容によって,処分結果が変わる可能性が考え難いためです。
認め事件の場合には,厳密な内容よりも自身の反省状況・内容が反映されていることを重視する方が有益でしょう。反省の内容や程度は,刑事処分の結果に直接影響を及ぼす可能性があります。

【否認事件の場合】

否認事件では,争点となるポイントに関する記載が適切かどうか,厳密に確認することが必要です。争点に対する最終的な判断が,供述調書の内容を根拠に行われる場合もあり得るため,慎重な判断が不可欠となります。
また,記載内容が適切か判断できない場合には,供述調書への署名押印を拒否する手段も有力です。署名押印のない供述調書は,捜査機関の内部資料となるのみで,犯罪の成否を立証するための証拠とすることはできません。

②呼び出しの時期

交通事故は,件数が非常に多い類型でもあるため,呼び出しがなされるまでに順番待ちを要することが少なくありません。呼び出されるまで数週間~数か月待機することは決して珍しくないでしょう。
また,最終的な刑事処分までの期間も長くなりやすい傾向にあります。事故発生から1年近く経って刑事処分が決まる,という例も散見されるところです。

交通事故の場合には,呼び出しまでの待期期間が長くなりやすい可能性にあらかじめ注意しておくことをお勧めします。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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【交通事故加害者の逮捕】逮捕されやすいケース・されにくいケースは?避けるためには?

このページでは,交通事故加害者の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

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交通事故加害者が逮捕される可能性

交通事故加害者の場合,逮捕される可能性は否定できません。その背景には,交通事故が発生すると,自動車運転者には警察に報告をする義務が生じるため,基本的に現行犯で事件が発覚する,という点があります。現行犯で取り締まる際には,逃亡や証拠隠滅の可能性を直ちに詳細に確認することが難しいため,確認不足による不利益を避けるため,逮捕に踏み切るという例が散見されます。

もっとも,これは交通事故のケースで逮捕の可能性が高い,という意味ではなく,個別事件における逮捕の可能性はそれぞれの事情によって大きく変わります。それほど重大ではない交通事故であれば,逮捕されない方が通常とも言えるでしょう。
なお,一般的に逮捕の可能性が高くなるケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

交通事故で逮捕の可能性が高くなるケース

1.被害結果が重い
→死亡事故など,被害結果が重大である場合

2.重大な交通違反がある
→酒気帯び運転,無免許運転,極端な速度超過など,重大な交通違反を伴う場合

3.現行犯で逃亡が懸念される
→事故直後に当事者間でトラブルが起きた,その場を去ろうとした,という場合

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

交通事故加害者が逮捕を避ける方法

①事故直後の対応

自動車の運転中に交通事故が発生した場合,自動車運転者には,被害者を救護する義務(救護義務)と警察に事故発生を報告する義務(報告義務)が発生します。まずは被害者の容態を確認し,110番通報をする必要があるということですね。

これらの義務を果たすことで,やむを得ず交通事故の発生が警察に知られることにはなります。場合によっては,そのまま逮捕される可能性も否定できません。しかしながら,救護義務と報告義務をしっかりと果たすことは,逮捕を避けるため非常に重要な対応です。

交通事故加害者が,被害者への救護義務を怠ってその場を去ることを,俗にひき逃げと言います。逮捕は,加害者の逃亡を防ぐために行われる手続であるため,実際に事故現場から逃亡した人物に対しては,逮捕の必要性が非常に高くなってしまうことになるでしょう。
ひき逃げとなることを防ぎ,逮捕が必要との判断を自ら招かないよう,事故直後に救護義務や報告義務を尽くすことは極めて重要と言えます。

②取調べや実況見分への協力

交通事故の捜査では,警察署等での取調べや,事故現場の実況見分(現場の道路状況や事故発生状況の確認)が行われます。捜査機関としては,これらの捜査が円滑に進むのであれば,特に被疑者を逮捕する必要はないとの判断に至ることが多数でしょう。

そのため,加害者側の対応方針としては,捜査機関による取調べや実況見分には積極的に協力し,捜査手続の円滑化に配慮した動きを取ることが適切です。このような対応は,速やかな手続の進行にもつながるため,より早期の事件解決も期待しやすくなるでしょう。

③被害者側への対応

交通事故の場合,被害者側への真摯な対応が尽くされている状況であれば,殊更に逮捕すべきとの判断はなされないことが非常に多く見られます。逮捕勾留によって当事者間の連絡手段を断ってしまうことは,かえって被害者の救済を困難にする結果になりかねず,特段の必要がなければ逮捕を控える要因となりやすいでしょう。

そのため,加害者にとっては,被害者側にできる限りの対応を尽くすことが,逮捕回避にもつながる適切な方法と言えます。被害者への真摯なお詫び等の動きは,道徳的にも望ましい上,被害者側の許しにもつながれば最終的な処分にも有益な効果が期待できるため,行わないメリットはないでしょう。

交通事故加害者の逮捕は弁護士に依頼すべきか

交通事故加害者の立場で逮捕への対応を検討する場合には,弁護士への相談・依頼を行うことが適切です。専門的な弁護士への依頼により,以下のような利点があるでしょう。

①見通しを持つことができる

交通事故の場合,逮捕回避の努力を尽くすべきケースもあれば,特に逮捕を懸念する必要がないケースもあります。実際の事件がどちらのケースに当たるかを事前に理解できていれば,その後の対応が格段に容易なものとなることは間違いありません。

この点,弁護士に依頼し,専門的な判断をしてもらうことができれば,個別の事件内容を踏まえた逮捕リスクの見通しを把握することが可能になります。あわせて,見通しを踏まえた具体的な対策についても案内が得られるため,安心して適切な対応を尽くすことができるでしょう。

②捜査への対応方針が分かる

交通事故の場合,捜査への適切な対応ができれば,それのみで逮捕を回避できる場合も少なくはありません。逆に,捜査への対応が不適切なものだと,逮捕リスクに影響し得るほか,手続の長期化を招く可能性もあり,大きな不利益につながりかねないところです。

この点,弁護士に依頼すれば,個別の事件内容に応じて適切な対応方針を検討・判断してもらうことができます。この点は,当事者自身が判断することの難しい問題であるため,弁護士に依頼することの重要性が非常に大きいポイントと言えます。

③被害者側とのやり取りが円滑になる

多くの交通事故では,当事者間でのやり取りが不可欠ですが,加害者自身が被害者側と連絡や交渉を行うのは現実的に困難と言わざるを得ません。自身の希望を表明しづらい立場である上,そもそも自身の主張は適切な内容なのかを判断することも容易ではないでしょう。

この点,弁護士に依頼した場合には,弁護士が被害者との連絡窓口となるため,直接のやり取りを要することなく円滑な対応が被害者可能になります。また,加害者側の主張を法的に検討し,適切な主張のみを適切な方法で表明していくことも可能です。

交通事故加害者の逮捕に関する注意点

①現行犯逮捕の場合

交通事故加害者に対する逮捕は,現行犯逮捕となることが非常に多く見られます。事故発生の報告を受けた警察が現場に駆け付け,その流れで逮捕に至る,ということが典型例です。

この場合,事故発生から逮捕までの間に時間的な猶予があまりないことが見込まれます。そのため,逮捕を未然に防ぐための対応を取ることが現実的に難しく,逮捕後の対応とならざるを得ない点に注意しておくことが必要です。

なお,事故現場では,現行犯逮捕の必要性が高くないことをできる限り示すため,極力冷静で真摯な対応を心掛けることが有益でしょう。

②後日逮捕の可能性

交通事故で想定される逮捕には,大きく分けて現行犯逮捕と後日逮捕の2種類があります。このうち,後日逮捕とは,事故当日でなく後日の段階で,逮捕状を用いて行われる逮捕手続で,法的には通常逮捕と呼ばれます。

この点,交通事故の場合,一般的には後日逮捕が選択されるケースはあまりないと言えるでしょう。少なくとも,あえて現行犯逮捕でなく後日逮捕を選択することは考えにくいところです。
交通事故の場合,後日の逃亡や証拠隠滅が懸念されることは類型的に少数であるため,捜査に対して適切な対応さえ尽くしていれば,後日逮捕の心配は不要であることが通常でしょう。

③逮捕後の考え方

交通事故加害者として逮捕された場合,そこで止まってしまうのではなく,速やかに早期釈放に向けた動きを進めることが重要です。なぜなら,交通事故の場合,逮捕されたとしても早期の釈放が実現できるケースは少なくないからです。

逮捕をされると,最長72時間以内に,「勾留」という10日間の身柄拘束に移るかどうかが判断されます。勾留された場合には,さらに最長10日間の「勾留延長」がなされる可能性もあるため,逮捕及び勾留はトータルで最長22~23日程度になることがあります。

逮捕から起訴までの流れ

交通事故の場合には,逮捕後に勾留をされるかどうかが非常に大きな分岐点であり,勾留を回避できるケースも相当数見られることに特徴があります。勾留されなければ,身柄拘束は最長でも2~3日にとどまるため,生活への影響は最小限にとどめることが可能です。

逮捕後には,できるだけ速やかに早期釈放を目指すことをお勧めします。

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【交通事故の不起訴処分】交通事故加害者が不起訴となるために必要な対応や注意点を詳細解説

このページでは,交通事故事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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交通事故事件で不起訴を目指す方法

①被害者対応を尽くす

交通事故は,特定の被害者に対する事件であるため,被害者の意向が刑事処分を左右しやすい傾向にあります。過失の程度や被害者の受傷結果があまりに著しいケースでなければ,被害者の意向によって起訴不起訴の処分結果が分かれる場合も決して少なくはありません。

そのため,交通事故の事件で不起訴を目指す手段としては,まずどれだけ被害者へのお詫びの対応を尽くせるか,という点が非常に重要となるでしょう。被害者側の意向は,どうしても感情的な面に大きく影響を受けることになるため,感情面に最大限配慮したお詫びの動きが取れれば,有益な結果につながりやすいと言えます。

ポイント
交通事故の処分は被害者の意向に大きく影響を受ける
被害者の感情面に配慮したお詫びの対応が重要

②適切な法的評価を促す

交通事故によって加害者が刑事処分を受けるのは,加害者の行為に「過失」があるためです。過失とは,注意義務違反(注意すべき義務があったのに必要な注意を怠ったこと)をいい,具体的にどのような注意義務が課せられ,どのような義務違反があったか,という点は,個別のケースによるところです。
そして,刑事処分の程度は,過失の程度に比例して重くなるとの取り扱いが一般的とされます。センターオーバーや追突事故のように一方だけに過失のある事故か,被害者側にも相当程度の過失が認められる事故かによって,刑事処分は大きく異なってきます。

交通事故の場合,加害者とされる人の過失がさほど大きくないケースだと,他の事情も踏まえて不起訴処分の対象となることも相当数見受けられます。そのため,過失の程度が大きくないと主張すべきケースでは,過失の程度に関して適切な評価をするよう求めることで,不起訴処分を促す動きも有力になり得るでしょう。

ポイント
交通事故の刑事処分は過失の重さに比例しやすい
過失が小さい場合,不起訴処分の判断材料となり得る

③再発防止

刑事処罰が科せられる目的の一つに,加害者の再発防止を促す目的が挙げられます。「犯罪を犯すと大きな不利益(=刑罰)を受けなければならない」ということを経験的に理解させ,再発を踏みとどまらせる効果を期待する,ということです。
もっとも,交通事故の場合,そもそもが故意に起こした事件ではないため,再発を踏みとどまらせるために刑罰を科す必要が決して大きいとは言えません。そのため,交通事故では,刑罰以外の方法で再発防止の見込みが立つのであれば,再発防止の意味を込めて刑事処罰を科す積極的な意味はとても小さいと理解されるところです。

したがって,交通事故で不起訴処分を目指す手段としては,具体的な再発防止策を検討し,実行することが非常に有力でしょう。具体的な再発防止策の内容は,事故の原因等によって異なるため,個別に弁護士などと相談し,検討することをお勧めします。

ポイント
刑罰には再発防止の目的がある
刑罰を科さずとも再発防止が見込める場合,不起訴処分が有力になる

④交通違反が伴う場合

交通事故の事件では,事故の発生原因や事故前後の運転行為に,交通違反が伴うケースも少なくありません。そのため,交通違反を伴う交通事故では,交通違反の重大さを踏まえた検討・対応が必要となるでしょう。

この点,それ自体が犯罪として処罰されるような交通違反がある場合,不起訴処分は容易ではなくなるため,不起訴を目指す積極的な試みは不可欠と言えるでしょう。例えば,速度超過をした上で交通事故を起こした場合,速度超過の分だけ刑事責任が重くなることに配慮した努力が必要となります。

また,酒気帯び運転など,交通違反の程度が著しい場合には,そもそも不起訴を目指すことが現実的でない可能性もあります。手段を尽くしてもなお起訴を免れないケースは珍しくないため,弁護士に見通しを判断してもらうなど,事前の検討を十分に行うことが適切です。

ポイント
犯罪として処罰されるような交通違反があると,不起訴は容易でない
程度が著しい交通違反の場合,不起訴が現実的でないことも

交通事故事件で不起訴になる可能性

交通事故の場合,不起訴となる可能性は十分に考えられます。もちろん,ケースによっては不起訴処分の見込みが現実的にない場合もありますが,一般的な交通事故であれば,不起訴処分を目指す努力は十分に結果を左右し得ると考えてよいでしょう。

交通事故で不起訴の可能性が十分に考えられる大きな理由の一つが,過失犯であるという点です。交通事故は,わざと引き起こしているわけではなく,加害者自身も希望しないまま,不注意で起きてしまうものであるため,刑事責任は故意犯に比べて小さく評価されることが一般的です。起訴不起訴の判断は,事件ごとの刑事責任の重さを重要な基準とするため,交通事故が過失犯であることによる責任の小ささは,不起訴処分の可能性を高くする事情と言えます。

一方,過失犯であっても,刑事責任が重く評価されざるを得ない場合には,安易に不起訴を見込むわけにはいきません。交通事故の場合,被害者側に全く落ち度がない場合や,被害者に深刻な損害を与えた場合には,刑事責任が重大であると評価され,不起訴処分の可能性は低下しやすいでしょう。

ポイント
不起訴の可能性は,刑事責任の重さに大きく左右される
過失犯である交通事故は,故意犯よりも刑事責任が小さく評価されやすい

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

交通事故事件で不起訴を目指す場合の注意点

①被害者の意向の重大性

交通事故の刑事処分を左右する事情は複数ありますが,その中でも非常に重要であるのは被害者の意向です。刑事処分を直接決定づけることができるのは,被害者の意向以外にないと言っても過言ではありません。
また,刑事処分の判断材料のうち,事後的に内容が変わり得る唯一の点としても,被害者の意向は重要な位置づけにあります。過失や怪我の程度は,事故が発生した後に結果が変わるものではありませんが,被害者の意向だけは事故後の心境の変化などによって内容が大きく変わり得るため,不起訴を目指すのであれば最大限の努力を注ぐべきポイントと言えるでしょう。

交通事故加害者が被害者の心情に配慮するということは,道義的にも適切な動きであるため,加害者としては積極的に努力をしていきたいところです。

②保険会社に委ねられる内容・範囲

交通事故の場合,自動車保険会社が加害者に代わって被害者側とやり取りをしてくれるのが通常です。任意保険に加入している場合,当事者間で連絡を取り合うのではなく,保険会社担当者と被害者との間で連絡を取り合うことが一般的でしょう。

もっとも,保険会社に被害者への対応を委ねることによって不起訴処分が目指せるか,というと,そうではありません。なぜなら,保険会社は刑事処罰に関する被害者の意向に配慮する立場にはないからです。
保険会社は,加害者がすべき金銭賠償を代わりに行う役割を担います。逆に,金銭賠償と関係のない事柄については,保険会社が介入することは許されていません。

保険会社に被害者とのやり取りを委ねても,不起訴を目指す動きとしては不十分である,という点に注意することをお勧めします。

③過失やケガの程度を争うことの問題点

交通事故の場合,加害者の過失や被害者の怪我の程度は様々です。そして,過失の程度や怪我の程度によって,刑事処分は異なってくることになります。
そのため,加害者の立場としては,実際よりも過失や怪我の程度を大きく見積もられていると考える場合,この点を争う方針もあり得るところです。

もっとも,過失や怪我の程度がさほど大きくない,との主張は,犯罪が成立するかどうかとは無関係な主張であるということに注意が必要です。この主張は,「過失や怪我の程度が大きくないから処分を軽くしてほしい」という意味合いのものであり,いわゆる情状の一内容にとどまるのです。

そのため,過失や怪我の程度を主張する場合には,「温情的な判断を期待する動きだ」ということを十分に理解し,主張する際のスタンスや主張の仕方を誤らないように注意することが適切でしょう。

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【交通事故加害者の弁護士選び】要否や判断基準,弁護士選びの注意点などを網羅

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交通事故加害者が弁護士を選ぶタイミング

①事故直後

交通事故の場合,事故直後に加害者自身が警察を呼ぶなどし,必要な手続を尽くす必要があります。これは,交通事故が発生した際に,自動車運転者には警察へ報告する義務が生じるためです。
そうすると,交通事故では,基本的にすべての事件が発生直後から警察による取り扱いの対象となります。つまり,事故直後の段階から,既に将来的な刑事処分を見据えた対応の必要が生じているというわけです。

しかも,事故直後の手続では,現場の実況見分を合わせて行うケースもありますが,実況見分は加害者の責任の程度に関する重要な証拠となるものです。実況見分に際しては,個別のケースに応じて生じ得る争点を整理した上で,不要な不利益を招かない対応が必要となります。

そのため,交通事故加害者の場合には,事故直後の時点で弁護士を選び,順次進む手続に対して適切な対処を取っていくことが不可欠です。事故直後は,弁護士に依頼をするべき重要なタイミングと言えるでしょう。

ポイント
交通事故の場合,事故直後に警察を呼ぶことになる
早期に実況見分が行われ,重要な証拠となり得る

②被害者側と連絡を取るとき

交通事故の場合,金銭賠償が必要となるため,継続的に被害者側と連絡を取り合うことになる,という点に特徴があります。自動車保険に加入している場合は,保険会社にやり取りの多くを委ねることができますが,保険会社への引継ぎまでは,どうしても当事者間で連絡を取ることになります。
また,保険会社が対応を始めた後でも,保険会社が対応できない点については当事者間で解決する必要があります。保険会社は,当事者の代わりに被害者への金銭賠償を行ってくれますが,金銭面の問題以外には介入することができないため,この点はやはり当事者間での直接の連絡を要します。

被害者側との連絡は,その心情に配慮するため,細心の注意を払って行う必要がありますが,加害者という立場で適切な応対を判断し,続けるのは,非常に大きな負担を伴うものです。
そのため,被害者側との連絡に際しては,適切な弁護士を選び,専門性ある弁護士から指示や助言を受ける形で進めることを強くお勧めします。被害者側との連絡が円滑にできれば,最終的な事件解決にとっても非常に有益な効果が期待できるでしょう。

ポイント
交通事故は,当事者間での連絡を要する点に特徴がある
被害者側への連絡に細心の注意を払うため,事前に弁護士選びを行いたい

③取調べを受ける前

交通事故では,当日に事故の処理をした後,後日に改めて取調べを受ける流れが非常に多く見られます。そして,最終的な刑事処分の検討は,その取調べの内容を踏まえて行われるため,取調べでの応答がどのようなものであったかは,刑事処分に直結するケースもあります。

もっとも,どのような取調べ対応が適切であるかは,個別具体的な内容によって異なってくるため,加害者自身が正確に把握することの困難なものです。刑事事件の専門家に判断を仰ぎ,刑事処分のために有益な対応を尽くすことを強くお勧めします。
取調べを受ける前のタイミングは,万全の回答を準備するために弁護士を選ぶべき時期と言えるでしょう。

ポイント
取調べ内容が最終的な刑事処分の結果に直結するケースもある
適切な取調べ対応の具体的内容は,個別の事件によって異なる

④起訴された後

交通事故では,過失の程度や被害結果の程度が大きい場合,起訴されて公開の裁判(公判)を受ける流れになる場合も否定できません。特に,以下のような場合には起訴の上で公開裁判の対象となりやすいでしょう。

公開裁判の対象となりやすい交通事故

1.被害者に過失のない事故
→横断歩道歩行中,加害者のセンターオーバー・追突など

2.被害者が死亡した事故
→被害結果が最も大きい類型

この点,公開裁判の対象となる場合には,公開の法廷でどのように対応すべきか,事前に準備をする必要があります。適切な準備を怠ってしまうと,裁判所の判決に重大な悪影響が生じる可能性も十分に考えられるところです。
そのため,起訴された後,公開裁判を控える時期には,必ず弁護士選びを行い,適切な弁護士のサポートを受けるようにしましょう。

交通事故加害者の弁護士を選ぶ基準

①交通事故加害者の弁護に精通しているか

交通事故加害者の刑事事件は,特に被害者側とのやり取りに特徴があります。そのため,他の事件類型と同じように被害者側への対応を行おうとすると,被害者側の悪感情を招くなど,当事者間の解決にとって不利益な状況となりかねません。

そのため,交通事故加害者の弁護士を選ぶ場合には,特に被害者側への対応方法に関して,交通事故の刑事弁護に精通しているかどうか,という点を重要な基準としましょう。判断方法としては,実際に被害者側への対応方針を質問し,どれだけ具体的な回答・案内が出てくるかを判断材料とすることが一案です。

②見通しの説明が具体的か

交通事故の刑事処分に関する見通しは,対応に精通した弁護士であればある程度の確度を持って想定できるケースも少なくありません。事故態様や被害結果,被害者側の意向など,様々な事情を考慮し,先例や経験に当てはめることで,一定の見通しを設けることも十分に可能であることが多いでしょう。

逆に,処分見通しが持てない場合,必要な前提知識や経験値に不足のある可能性が考えられます。もちろん,ピンポイントで見通しを立てることは困難ですが,処分が変わる条件ごとに場合分けをするなどして,あり得る処分の幅を具体的に案内してくれるかは,重要な判断基準とすることをお勧めします。

③弁護士と滞りなく連絡する手段があるか

交通事故の場合,被害者,加害者,保険会社,弁護士と複数の人物が関わり,そのそれぞれが連絡を取り合う可能性があります。この点,弁護士と加害者側の連絡が滞ってしまうと,やり取り全体に滞りが生じ,結果として事件解決が遠のいてしまいかねません。
また,加害者側との連絡が滞ってしまう弁護士は,多くの場合それ以外の相手との連絡も滞ってしまいがちです。万一,被害者との連絡がうまくできず,被害者側の感情面に悪影響が生じてしまうと,刑事処分にも大きなマイナスとなることが見込まれます。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士と滞りなく連絡を取る手段があるか,弁護士が円滑な連絡を取ってくれる人か,という点を判断基準の一つにするとよいでしょう。れらくの取り方や頻度は,完全に各弁護士の判断にかかっているため,この点は弁護士の個性や性格による面も少なくありません。

④事務所所在地

交通事故の場合,事故発生場所で捜査が行われ,事故発生場所を管轄する警察署で取り調べが実施され,被害者の居住地は事故発生場所と近いケースが多いなど,事故発生場所を起点とした動きが不可欠になります。そのため,弁護士が事故発生場所や近辺に出向く必要のある場合,法律事務所があまりに遠方であるのはデメリットと言えます。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士の所属する事務所所在地のアクセスを基準の一つとするのが有力です。ただし,事件や弁護活動の内容によっては,事務所所在地が問題にならないこともあります。弁護士と相談の上,アクセスの問題が解消できる場合には,それほど気にする必要はないでしょう。

交通事故加害者が弁護士を選ぶ必要

①被害者対応

交通事故の被害者対応は,少なくとも一部は加害者側が直接行わざるを得ません。一般的な刑事事件では,捜査機関が当事者同士の連絡先交換を許すことはありませんが,交通事故の場合には,金銭問題の解決を促すため,むしろ積極的に連絡先交換を促す方が通常です。
もっとも,加害者の立場で被害者対応を十分に行うのは容易でないため,やり取りを代理してくれる弁護士を選ぶことは,当事者間の解決にとって極めて重要と言えます。

②取り調べ対応

交通事故は,故意に起きる事件ではないため,犯罪の成立には「過失」が必要となります。過失とは,注意不足のことであり,加害者に法律上必要な注意不足がない場合,交通事故を犯罪として処罰することはできません。
ただ,何が過失に当たるのか,過失がないというべき場合はどのようなケースか,という点は,専門家でなければ判断の困難な問題です。しかし,過失がないと主張する否認事件では,どうして過失がないと言えるのか,という点を十分に整理し,根拠を持って主張することが不可欠です。

そのため,特に否認事件の場合には,取調べ対応を適切にするため弁護士を選ぶ必要性が高いと言えます。

③逮捕後の釈放

交通事故加害者となってしまった場合,事件が現行犯で発覚しやすいこともあり,捜査の開始段階で逮捕される場合も一定数見られます。特に,死亡事故のように重大な結果が生じてしまった交通事故の場合,逮捕の上で実名報道の対象となる運用も相当数見られるところです。

もっとも,交通事故はあくまで過失犯であり,故意に行った事件のように積極的な証拠隠滅が懸念されるわけではありません。そのため,逮捕後に身柄拘束を継続してまで証拠隠滅を防ぐ必要性は決した高くはなく,逮捕後の速やかな段階で釈放される事例も数多くあります。

そのため,交通事故加害者として逮捕された場合には,まず早期の釈放を目指すため,弁護士に依頼することが非常に有力です。早期釈放に至れば,生活への支障が最小限にとどまるため,その利益は極めて大きいものと言えるでしょう。

交通事故加害における弁護士選びの準備

①事故前後の状況をまとめる

交通事故加害者として捜査を受けることになる場合,その前後の状況によって刑事責任の重さや処分の見通しが大きく変わってくる場合があります。そのため,事故の直前直後の状況に関しては,できる限り漏れなく弁護士に共有することが適切です。
弁護士に共有すべき事故前後の状況としては,以下の点が挙げられます。

まとめるべき事故前後の状況

1.事故前の交通違反の有無
→飲酒運転,無免許運転,速度超過など

2.被害者の視認状況に関する事情
→どの時点で被害者を視認できたか,ライトやウインカーの有無はどうだったか等

3.当事者間の優先関係に関する事情
→信号表示など

4.事故後の対応
→その場を離れた事実があるか,誰が警察に通報したか等

②弁護士への要望をまとめる

弁護士選びに際しては,弁護士に依頼した場合に何を実現したいか,弁護士にどのような弁護活動を求めたいか,という要望を整理しておくことをお勧めします。

交通事故の場合,幸いにも過失犯であることから,それほど重大な刑罰の対象となることは決して多くありません。初犯で実刑判決の対象となってしまうのは,飲酒運転やひき逃げが伴ったケース,死亡事故で落ち度があまりに大きいケース,被害者が多数のケースなど,限定的ということができます。
そうすると,実刑判決さえ避けられれば足りる,という場合,その実現のためにどれほどのコストを費やすべきかは慎重な判断が望ましいでしょう。

一方,交通事故は機械的な処分も少なくありません。そのため,ケースによっては起訴を防ぐ手段がないという場合もあり得るところです。起訴を前提に,公開の裁判で適切な対応をすることを弁護活動の主な目的とする場合も考えられるでしょう。
ただ,この場合,不起訴という要望は実現が困難ということになります。不起訴を唯一の目的に弁護士選びをしているのであれば,起訴を防ぐ手段に乏しいと後から分かった場合,深刻なミスマッチの原因となりかねません。

弁護士への要望を整理することは,適切な弁護士選びをするため非常に重要な準備と言えるでしょう。

③迷いや悩みを言語化する

交通事故加害者となった場合に,弁護士に解決してほしい悩みは,個別のケースや当事者の希望によって様々に異なりやすいものです。取調べ対応に苦慮しているケース,被害者対応が円滑に進んでいないケース,保険未加入のため金銭賠償の方法に悩んでいるケースなど,他の事件類型よりも悩みに幅が生じやすいのも交通事故の特徴の一つでしょう。

そのため,弁護士から希望する案内をしてもらうための前提として,自分が抱えている迷いや悩みを,できるだけ具体的に言語化しておくことをお勧めします。弁護士は,自分から全て網羅的に案内するのでなく,相談者側の疑問に回答する形を取る場合が多いため,準備を怠ってしまうと希望する案内が得られない恐れもあり得るところです。

④予算を決める

弁護士への依頼には,やむを得ず弁護士費用の負担が必要となります。もっとも,具体的な弁護士費用の金額は,それぞれの法律事務所により異なるため,同じ弁護活動に対する弁護士費用が事務所ごとに違う可能性もあり得ます。

そのため,弁護士選びに際しては,その法律事務所の費用を支払うことが可能かを判断するため,予め予算を決めておくことが適切です。予算のイメージを弁護士側と共有することで,予算内で弁護活動ができるかどうかを案内してもらえるほか,弁護士によっては予算内で可能な弁護活動の内容や契約内容を柔軟に案内してもらえる可能性もあります。

交通事故加害で弁護士に依頼する場合の注意点

①保険会社の対応との関係

「被害者との示談は保険会社に任せていいのか」というご質問は,交通事故加害者の立場になった方からのご相談として非常に多く寄せられるものです。この点を正しく把握するためには,まず保険会社の役割を理解することが必要になります。

保険会社の役割は,加害者の代わりに被害者へ支払をするという点にあります。裏を返すと,その支払の限りでのみ,保険会社は加害者の代わりになることができる,という立場にあります。
もっとも,交通事故には金銭の支払の面(=民事事件)のみでなく,刑罰の面(=刑事事件)も同時にあります。保険会社は,民事事件に関する示談は代わりに行ってくれますが,刑事事件に関する対応には介入することができません。

そのため,「被害者との示談は保険会社に任せていいのか」という点への回答としては,「民事事件の面については任せてよい」となるでしょう。保険会社の行う示談が,刑事事件に対する十分なサポートではないというポイントは,十分に注意することをお勧めします。

②被害者への支払が生じる可能性

自動車保険(特に任意保険)に加入している場合,被害者の損害に対する支払は基本的に保険会社が行ってくれます。そのため,加害者自身が被害者に支払を行う必要は基本的にありません。
ただ,刑事処分をより軽微にすることを目指すため,被害者の許しを獲得しようとする場合,双方の希望によっては別途金銭を支払うケースもあり得ます。被害者としては,加害者を許しても特段のメリットはないため,加害者側が許しの獲得を強く希望する場合,対価を支払うことを合意する場合があるのです。

この点,当事者間で許しの対価として支払いを行う場合には,その支払が「金銭賠償(=保険会社が行うべき支払)とは別のものである」ということを明確にする必要があります。金銭賠償の一部と評価されてしまうと,保険会社からは支払ができなくなってしまう場合もあり得るため,十分な注意をお勧めします。

③被害者側への接触方法

多くの刑事事件では,当事者が直接連絡を取ったり接触したりすることは望ましくありません。加害者側が被害者側への接触を図る際には,弁護士を窓口にし,弁護士限りで被害者側への連絡を試みるのが適切とされています。

しかし,交通事故の場合には,当事者間で直接連絡先を交換する運用が広く行われています。その理由としては,過失犯であって当事者間のトラブルが生じにくいという点や,金銭賠償のために連絡を取り合うことが不可欠であるという点が挙げられます。

そのため,交通事故で加害者側が被害者側へ接触する場合,当事者自身も動く必要が生じやすいことに注意することが望ましいでしょう。保険会社や弁護士に依頼したからあとは任せてよい,という発想にならないよう気を付けたいところです。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

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交通事故で加害者に処罰を望まない場合の対応方法|弁護士の役割まで徹底解説

交通事故の被害に遭われた方は、怪我の治療や示談交渉、加害者の刑事処分など、さまざまな問題に直面します。

とくに、加害者が深く反省している場合、「重い処罰までは望まないが、適正な賠償は受けたい」という複雑な思いを抱えることは少なくありません。

適切な対応を誤れば、処罰意思の表明が賠償に不利に働くのではないかと不安を感じる方もいらっしゃいます。

本記事では、交通事故の被害者が加害者の処罰を望まない場合に、その意思を法的に正確に伝える方法や、被害者自身の賠償問題への影響について詳しく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

被害者が処罰を望まない意思を伝える具体的な方法と注意点

交通事故の被害者の方が「加害者に重い処罰は望まない」と考える場合、加害者の刑事手続きに影響を与える「宥恕(ゆうじょ)」の意思として法的に扱われます。

この意思を伝える方法は、口頭ではなく、後から証拠となる書面によって行う必要があります。

示談書に「処罰を望まない」旨を記載する

交通事故の損害賠償問題(民事)と加害者の刑事処分(刑事)を同時に解決する最も一般的な方法は、示談書に宥恕の意思を明記することです。

結論、この方法が推奨されるのは、賠償問題が解決したことと、処罰を求めない意思表明が一体となるため、法的な関係性が明確になるからです。

示談書には、「被害者は、本示談をもって加害者による損害の賠償を受け入れたものとし、加害者に対する刑事処罰を求めないことを表明する」といった文言を盛り込めます。

この示談書は、後に検察官が加害者を起訴するかどうかを判断する際、被害者の処罰感情が和らいでいることを示す決定的な証拠として扱われます。

ポイントとして、被害者の方がこの意思を伝えるのは、必ず賠償額(示談金)に納得し、受け取りを確約した後に限定してください。

賠償額が確定する前に意思を伝えてしまうと、後の交渉で不利になる可能性があります。

(参考文献:民法 第709条、刑事訴訟法 第248条)

検察官宛てに「嘆願書(加害者有利)」を提出する

示談書とは別に、被害者の方が個別に加害者の処罰軽減を求める嘆願書を、事件を担当している検察官宛てに提出することも可能です。

嘆願書は、示談の成立とは独立して、被害者の純粋な処罰感情の緩和を直接的に検察官に訴えるための手段となります。

嘆願書には、加害者が事故後に真摯に謝罪や反省をしている点、示談が成立している点などを記載し、「よって、検察官におかれては、加害者に対して寛大な処分(不起訴処分など)を下していただきたい」という旨を明記します。

注意点は、嘆願書に一度署名をしてしまうと、後からその内容を撤回することは困難です。

必ず内容を吟味し、ご自身の処罰感情と賠償額に納得した上で、提出するかどうかを決定するようにしてください。

処罰を望まない意思が加害者の刑事手続きに与える影響

被害者が加害者に処罰を望まないという「宥恕の意思」は、加害者の刑事処分に対して大きな影響を受けます。

宥恕の意思があることは、加害者の刑事処罰が最も軽い処分、すなわち不起訴処分となる可能性を高めます。

不起訴処分となれば、加害者には前科はつきません。万が一、検察官が加害者を起訴したとしても、裁判官は被害者の宥恕の意思を情状として最大限考慮します。

これにより、懲役刑や禁錮刑などの重い実刑ではなく、執行猶予付きの判決や、罰金で済む略式命令となる可能性が高まるのです。

交通事故の処罰を望まない場合の弁護士の役割

加害者に処罰を望まない被害者の方にとって、弁護士に依頼することは、単に賠償金を獲得する以上の大きなメリットがあります。

ここからは、交通事故の処罰を望まない場合の弁護士の役割について詳しく解説します。

適正な賠償額の算定と獲得

被害者側の弁護士の重要な役割は、被害者が受けた損害に見合った、最も高額な弁護士基準(裁判基準)による賠償金を獲得することです。

処罰を望まないという意思とは関係なく、弁護士は保険会社が提示する低額な基準ではなく、裁判実務に基づいた適正な慰謝料額を算定し、交渉によって確実に被害者の利益を守ります。

保険会社は、自社の基準で低い賠償額を提示することが多いため、弁護士が介入し、法的な根拠に基づいた請求を行うことで、賠償額を大幅に増額できるでしょう。

加害者への間接的な意思伝達

加害者側から嘆願書の提出や示談交渉を求められた際、被害者の方が直接対応するのは精神的な負担が大きいものです。

弁護士が被害者の代理人となることで、加害者やその弁護人との交渉窓口を一本化できます。

これにより、被害者の方は煩雑な交渉から解放され、治療に専念できるようになるでしょう。

処罰を望まない意思表明のタイミングや形式についても、弁護士が被害者の方の意思を確認した上で、法的に最も適切な方法で加害者側に伝達します。

感情と実利の切り分け

被害者の方は、加害者の反省の度合いを見て「重い処罰は不要」と考える一方で、「怪我や生活の被害に対しては十分な賠償を受けたい」という複雑な思いを抱えます。

弁護士は、処罰感情という感情的な側面と、適正な賠償金獲得という実利的な側面を明確に切り分け、交渉を進められます。

被害者の感情に寄り添いつつも、示談交渉においては法的な基準に基づいて冷静に判断するよう助言し、被害者の方が感情に流されて不利益な示談をすることを防げるでしょう。

交通事故の被害者が適切な解決を目指すための行動ステップ

加害者の処罰を望まない場合でも、被害者の方が適切な賠償を獲得し、事件を円満に終結させるために、以下のステップで行動することが重要です。

ステップ1:まずはご自身の治療と賠償問題の解決を優先する

加害者の刑事処分を心配する前に、何よりも優先すべきは被害者ご自身の怪我の治療と、損害の確定です。

示談交渉は、治療が終了し、将来的な後遺障害の有無が確定した後に行うのが原則です。

損害額が確定していない段階で安易に示談や処罰意思の表明をしてしまうと、将来発生する可能性のある損害について賠償を受けられなくなるおそれがあります。

ステップ2:示談交渉に入る前に弁護士基準の賠償額を把握する

保険会社から示談の提案があったとしても、その金額に安易に合意してはいけません。

示談交渉を始める前に、必ず弁護士に相談し、ご自身の損害が最も高額な弁護士基準(裁判基準)でいくらになるのかを正確に把握しておくべきです。

保険会社は、自社の基準(任意保険基準)や自賠責保険の基準など、低額な基準で慰謝料を提示します。

弁護士が介入し、弁護士基準を適用することで、提示額が2倍~3倍に増額するケースも珍しくありません。適正額を把握することで、交渉で不利になることを防げます。

ステップ3:処罰を望まない意思は「示談書」の署名時に伝える

処罰を望まないという意思(宥恕の意思)は、加害者に対する被害者の方の大きな譲歩の一つです。

この重要な意思表示は、適正な賠償額で示談が成立し、示談書に署名捺印する際に、書面に明記する形で伝えるのが安全で、効果的な行動となります。

先に宥恕の意思だけを伝えてしまうと、加害者側が「処罰回避の目的は達した」として、後の賠償交渉で非協力的になるリスクがあります。

示談書の締結をもって初めて意思を伝えることで、被害者の方の利益を最後まで守ることができるのです。

まとめ

交通事故の加害者に処罰を望まないというお気持ちは、加害者の真摯な反省を受け入れた結果であり、事件の円満な解決を目指す上で重要なことです。

この「宥恕(ゆうじょ)の意思」は、加害者の不起訴処分の可能性を高める、法的に極めて重要な要素となります。

しかし、その意思が被害者ご自身の賠償額を減らすことは原則としてありません。

感情的な面と実利的な面を切り分け、「治療の完了」「弁護士基準の適正な賠償金獲得」を確実に実現した上で、示談書を通じて宥恕の意思を伝えることが、被害者の方にとって最も賢明で、後悔のない解決方法です。

交通事故加害者に強い弁護士へ依頼するメリットとは?特に依頼するべきケースとは?弁護士解説

交通事故の加害者となってしまうと、被害者への賠償問題や刑事処分、さらには社会的信用の低下など、さまざまな不安に直面します。適切な対応を誤れば、解決までの負担が大きくなる可能性もあります。こうした事態を避けるためには、交通事故加害者の弁護に精通した弁護士へ早期に相談することが重要です。本記事では、交通事故加害者が弁護士に依頼するメリットや、特に依頼すべきケースについて弁護士が分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

交通事故加害者に生じる責任

自動車の運転によって他者との事故が発生し,被害者がケガをした場合には,加害者に複数の責任が発生し得ます。
通常,交通事故の加害者に生じる責任は,以下の3つです。

①刑事責任

交通事故(人身事故)は,「過失運転致傷」又は「過失運転致死」という犯罪に該当するのが通常です。
そのため,犯罪に対する処分を受ける責任,つまり刑事責任が発生し得ることになります。
刑事責任が生じる場合,刑罰という形で国から被疑者(加害者)に対して科せられます。

②民事上の責任

交通事故が発生すると,加害者から被害者に対して金銭賠償を支払う義務が発生します。
車両の修理費,入通院治療費,休業損害,慰謝料等が代表的です。
このような被害者と加害者との間の金銭面の問題を,一般に民事事件といい,民事事件における加害者の賠償責任が民事責任です。

③行政上の責任

交通事故加害者となる場合には,何らかの交通違反が伴っていることが通常です。
そのため,交通違反に対して自動車免許の違反点数が発生します。
自動車免許の違反点数に関する事件は行政事件に位置付けられますが,免許の違反点数は行政上の責任ということができます。

各責任の内容をまとめると,以下の通りです。

①刑事事件国が加害者に対して刑罰を科す
②民事事件被害者が加害者に金銭賠償を請求する
③行政事件加害者の自動車免許に違反点数がつく

交通事故加害者に強い弁護士に相談するメリット

交通事故を起こしてしまった場合、被害者対応や保険会社との交渉、刑事処分の見通しなど、多くの問題が同時に発生します。こうした状況では、交通事故加害者の弁護に精通した弁護士に早期に相談することが非常に重要です。

弁護士はまず、事故の状況や証拠を正確に整理し、刑事事件化を防ぐための示談交渉や、不起訴処分・減刑を目指すための対応を行います。特に被害者との関係が悪化している場合でも、弁護士が間に入ることで冷静かつ法的に適切な解決が可能となります。

また、保険会社とのやり取りでも弁護士が代理人となることで、過失割合の妥当性損害賠償額の公平性を専門的に判断してもらえる点も大きなメリットです。自ら対応するよりも、結果として経済的・心理的負担を大幅に軽減できるでしょう。

交通事故加害者に強い弁護士は、刑事・民事の両面から事件を総合的にサポートし、最も望ましい解決へ導きます。

ポイント
刑事事件化を防ぐ示談交渉不起訴・減刑を目指す対応が可能
・被害者との直接交渉を避け、冷静で適法な解決が図れる
保険会社との交渉を代理し、過失割合・損害額の妥当性を確保
・専門知識に基づき、刑事・民事の両面から総合的にサポート
・早期相談により、精神的・経済的負担を大幅に軽減できる

実際に弁護士へ相談する際には、以下の各点に注意しましょう。

弁護士に相談する際の準備

①事故前後の状況をまとめる

交通事故加害者として捜査を受けることになる場合,その前後の状況によって刑事責任の重さや処分の見通しが大きく変わってくる場合があります。そのため,事故の直前直後の状況に関しては,できる限り漏れなく弁護士に共有することが適切です。
弁護士に共有すべき事故前後の状況としては,以下の点が挙げられます。

まとめるべき事故前後の状況

1.事故前の交通違反の有無
→飲酒運転,無免許運転,速度超過など

2.被害者の視認状況に関する事情
→どの時点で被害者を視認できたか,ライトやウインカーの有無はどうだったか等

3.当事者間の優先関係に関する事情
→信号表示など

4.事故後の対応
→その場を離れた事実があるか,誰が警察に通報したか等

②弁護士への要望をまとめる

弁護士選びに際しては,弁護士に依頼した場合に何を実現したいか,弁護士にどのような弁護活動を求めたいか,という要望を整理しておくことをお勧めします。

交通事故の場合,幸いにも過失犯であることから,それほど重大な刑罰の対象となることは決して多くありません。初犯で実刑判決の対象となってしまうのは,飲酒運転やひき逃げが伴ったケース,死亡事故で落ち度があまりに大きいケース,被害者が多数のケースなど,限定的ということができます。
そうすると,実刑判決さえ避けられれば足りる,という場合,その実現のためにどれほどのコストを費やすべきかは慎重な判断が望ましいでしょう。

一方,交通事故は機械的な処分も少なくありません。そのため,ケースによっては起訴を防ぐ手段がないという場合もあり得るところです。起訴を前提に,公開の裁判で適切な対応をすることを弁護活動の主な目的とする場合も考えられるでしょう。
ただ,この場合,不起訴という要望は実現が困難ということになります。不起訴を唯一の目的に弁護士選びをしているのであれば,起訴を防ぐ手段に乏しいと後から分かった場合,深刻なミスマッチの原因となりかねません。

弁護士への要望を整理することは,適切な弁護士選びをするため非常に重要な準備と言えるでしょう。

そもそも希望できることの選択肢が分からない、という場合には、その点の疑問も含めて弁護士に相談するとよいでしょう。一般的に目指す方針の選択肢やメリット・デメリット等を案内してもらうことが可能です。

③迷いや悩みを言語化する

交通事故加害者となった場合に,弁護士に解決してほしい悩みは,個別のケースや当事者の希望によって様々に異なりやすいものです。取調べ対応に苦慮しているケース,被害者対応が円滑に進んでいないケース,保険未加入のため金銭賠償の方法に悩んでいるケースなど,他の事件類型よりも悩みに幅が生じやすいのも交通事故の特徴の一つでしょう。

そのため,弁護士から希望する案内をしてもらうための前提として,自分が抱えている迷いや悩みを,できるだけ具体的に言語化しておくことをお勧めします。弁護士は,自分から全て網羅的に案内するのでなく,相談者側の疑問に回答する形を取る場合が多いため,準備を怠ってしまうと希望する案内が得られない恐れもあり得るところです。

④予算を決める

弁護士への依頼には,やむを得ず弁護士費用の負担が必要となります。もっとも,具体的な弁護士費用の金額は,それぞれの法律事務所により異なるため,同じ弁護活動に対する弁護士費用が事務所ごとに違う可能性もあり得ます。

そのため,弁護士選びに際しては,その法律事務所の費用を支払うことが可能かを判断するため,予め予算を決めておくことが適切です。予算のイメージを弁護士側と共有することで,予算内で弁護活動ができるかどうかを案内してもらえるほか,弁護士によっては予算内で可能な弁護活動の内容や契約内容を柔軟に案内してもらえる可能性もあります。

弁護士に相談するときの注意点

①保険会社の対応との関係

「被害者との示談は保険会社に任せていいのか」というご質問は,交通事故加害者の立場になった方からのご相談として非常に多く寄せられるものです。この点を正しく把握するためには,まず保険会社の役割を理解することが必要になります。

保険会社の役割は,加害者の代わりに被害者へ支払をするという点にあります。裏を返すと,その支払の限りでのみ,保険会社は加害者の代わりになることができる,という立場にあります。
もっとも,交通事故には金銭の支払の面(=民事事件)のみでなく,刑罰の面(=刑事事件)も同時にあります。保険会社は,民事事件に関する示談は代わりに行ってくれますが,刑事事件に関する対応には介入することができません。

そのため,「被害者との示談は保険会社に任せていいのか」という点への回答としては,「民事事件の面については任せてよい」となるでしょう。保険会社の行う示談が,刑事事件に対する十分なサポートではないというポイントは,十分に注意することをお勧めします。

保険会社は、刑事処分に関与することのできない立場であり、刑事処分に対する関心もないため、刑事手続に対する対応は期待できません。保険に入っているからと丸投げしてしまうことなく、保険でカバーされる範囲はどこまでなのかを十分に整理することが非常に重要です。

②被害者への支払が生じる可能性

自動車保険(特に任意保険)に加入している場合,被害者の損害に対する支払は基本的に保険会社が行ってくれます。そのため,加害者自身が被害者に支払を行う必要は基本的にありません。
ただ,刑事処分をより軽微にすることを目指すため,被害者の許しを獲得しようとする場合,双方の希望によっては別途金銭を支払うケースもあり得ます。被害者としては,加害者を許しても特段のメリットはないため,加害者側が許しの獲得を強く希望する場合,対価を支払うことを合意する場合があるのです。

この点,当事者間で許しの対価として支払いを行う場合には,その支払が「金銭賠償(=保険会社が行うべき支払)とは別のものである」ということを明確にする必要があります。金銭賠償の一部と評価されてしまうと,保険会社からは支払ができなくなってしまう場合もあり得るため,十分な注意をお勧めします。

③被害者側への接触方法

多くの刑事事件では,当事者が直接連絡を取ったり接触したりすることは望ましくありません。加害者側が被害者側への接触を図る際には,弁護士を窓口にし,弁護士限りで被害者側への連絡を試みるのが適切とされています。

しかし,交通事故の場合には,当事者間で直接連絡先を交換する運用が広く行われています。その理由としては,過失犯であって当事者間のトラブルが生じにくいという点や,金銭賠償のために連絡を取り合うことが不可欠であるという点が挙げられます。

そのため,交通事故で加害者側が被害者側へ接触する場合,当事者自身も動く必要が生じやすいことに注意することが望ましいでしょう。保険会社や弁護士に依頼したからあとは任せてよい,という発想にならないよう気を付けたいところです。

加害者からの誠意ある謝罪やお見舞い等の対応が、解決を大きく近づける結果につながることも数多くあるのが、交通事故の特徴の一つです。謝意や誠意は、被害者側に確実に届くよう伝える努力を尽くしたいところです。

交通事故加害者に強い弁護士を選ぶ際のポイント

①交通事故加害者の弁護に精通しているか

交通事故加害者の刑事事件は,特に被害者側とのやり取りに特徴があります。そのため,他の事件類型と同じように被害者側への対応を行おうとすると,被害者側の悪感情を招くなど,当事者間の解決にとって不利益な状況となりかねません。

そのため,交通事故加害者の弁護士を選ぶ場合には,特に被害者側への対応方法に関して,交通事故の刑事弁護に精通しているかどうか,という点を重要な基準としましょう。判断方法としては,実際に被害者側への対応方針を質問し,どれだけ具体的な回答・案内が出てくるかを判断材料とすることが一案です。

②見通しの説明が具体的か

交通事故の刑事処分に関する見通しは,対応に精通した弁護士であればある程度の確度を持って想定できるケースも少なくありません。事故態様や被害結果,被害者側の意向など,様々な事情を考慮し,先例や経験に当てはめることで,一定の見通しを設けることも十分に可能であることが多いでしょう。

逆に,処分見通しが持てない場合,必要な前提知識や経験値に不足のある可能性が考えられます。もちろん,ピンポイントで見通しを立てることは困難ですが,処分が変わる条件ごとに場合分けをするなどして,あり得る処分の幅を具体的に案内してくれるかは,重要な判断基準とすることをお勧めします。

③弁護士と滞りなく連絡する手段があるか

交通事故の場合,被害者,加害者,保険会社,弁護士と複数の人物が関わり,そのそれぞれが連絡を取り合う可能性があります。この点,弁護士と加害者側の連絡が滞ってしまうと,やり取り全体に滞りが生じ,結果として事件解決が遠のいてしまいかねません。
また,加害者側との連絡が滞ってしまう弁護士は,多くの場合それ以外の相手との連絡も滞ってしまいがちです。万一,被害者との連絡がうまくできず,被害者側の感情面に悪影響が生じてしまうと,刑事処分にも大きなマイナスとなることが見込まれます。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士と滞りなく連絡を取る手段があるか,弁護士が円滑な連絡を取ってくれる人か,という点を判断基準の一つにするとよいでしょう。連絡の取り方や頻度は,完全に各弁護士の判断にかかっているため,この点は弁護士の個性や性格による面も少なくありません。

弁護士への連絡をしたいと思っても、「忙しいのではないか」と遠慮してしまうかもしれませんが、過度に遠慮する必要はありません。また、LINEやメールなど、電話以外の連絡手段を確保しておくことも有益になりやすいです。

交通事故加害者が弁護士に依頼するべき場合

①逮捕を防ぎたい場合

交通事故は,事後に適切な対応を尽くせば,逮捕されずに手続が進むことも多い類型です。
弁護士からは,ケースに応じてどのような対応をするのが適切か,逮捕を防ぐために他に取れる手立ては何か,といった点をご案内の上,事件に応じた逮捕回避の方策を弁護活動に反映させることが可能です。

②謝罪や示談をしたい場合

交通事故では,加害者と被害者が直接の連絡を取れる場合が多いですが,当事者間で宥恕(許し)に関するお話合いをすることはあまり現実的ではありません。
弁護士に弁護活動を依頼した場合,弁護士が窓口になって謝罪の申し入れをしたり,弁護士から宥恕に関するご相談を行ったりすることで,被害者との示談を円滑に試みることが可能です。

③起訴を防ぎたい場合

交通事故の事件には,弁護活動次第で起訴にも不起訴にもなる,という場合が多数見られます。
他の事件類型の中には,起訴を避ける手段がほとんどないものもあるため,活動次第で不起訴になり得るというのは交通事故の大きな特徴といえます。
弁護士に依頼された場合,刑事処分の正確な見込みを踏まえて,起訴を防ぐための弁護活動についてご案内を申し上げることが可能です。

④被害結果が重大な場合

死亡事故や重い後遺障害を伴う交通事故では、加害者が負う法的・社会的な責任は非常に大きくなります。
一瞬の不注意であっても、結果が重大であれば、刑事・民事の両面で厳しい責任を問われる可能性があります。

こうした重大事故では、次のような場面で専門的な法的対応が求められます。

・取調べや勾留段階での刑事弁護
・被害者遺族との示談交渉や謝罪の調整
・保険会社との折衝・対応方針の整理
・損害賠償請求訴訟への対応

特に死亡事故では、遺族の感情面への配慮と法的な交渉を両立させる必要があり、本人や家族だけでの対応は極めて困難です。
弁護士が介入することで、冷静な交渉が可能となり、刑事処分の軽減や円満な示談成立の可能性を高めることができます。

交通事故加害者に対する処分は、事故の重大さを重要な判断材料とすることが一般的です。重大な事故の場合は、できるだけ早く弁護士への依頼を検討することをお勧めします。

⑤被害者側との対応に限界がある場合

交通事故の加害者となった場合、被害者本人やその家族と直接やり取りをしなければならない場面があります。
しかし、感情的な対立や複雑な金銭交渉が絡むと、個人の対応では限界を感じるケースも少なくありません。

被害者対応が難航しやすい典型的なケース

・被害者や遺族が強い感情を抱いており、冷静な話し合いができない場合
・損害賠償額や補償内容について、双方の主張が大きく食い違っている場合
・過失割合の判断をめぐり、争いが長期化している場合
・被害者側に弁護士が就いており、専門的な法的知識を前提とした交渉が必要な場合

このような状況では、相手方とのやり取りが精神的にも大きな負担となり、不適切な発言や対応が新たなトラブルを招くおそれもあります。この点、弁護士が関与することで、被害者側との直接接触を避けつつ、法的根拠に基づいた冷静で公正な話し合いが可能になります。

交通事故の刑事処分には、被害者側の処罰感情(処罰を希望するかどうか)が非常に大きな影響を及ぼします。当然ながら、被害者が加害者に対する刑罰を希望しない方が軽減しやすい傾向にあり、不起訴処分の決定打になることも珍しくありません。

⑥自動車保険に加入していない場合

自動車保険に加入していない状態で交通事故を起こしてしまうと、加害者が負う経済的負担は非常に大きなものになります。
通常であれば任意保険会社が被害者への賠償や示談交渉を代行しますが、保険に未加入の場合は、すべての責任を自分自身で負う必要があります。

弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉や賠償額の算定を法的根拠に基づいて適切に進めることができます。
また、支払いが困難な場合には、分割払いの提案や減額交渉などを通じて現実的な解決を図ることも可能です。
刑事処分に発展するおそれがあるケースでも、早期に弁護活動を行うことで、処分の軽減を目指せる場合があります。

⑦刑罰に対する不安がある場合

交通事故を起こしてしまった場合、多くの方が「刑事罰を受けるのではないか」「逮捕されるのではないか」といった強い不安を抱くでしょう。
交通事故は民事上の損害賠償責任だけでなく、刑事責任を問われる可能性がある行為であり、その結果は事故の態様や被害の程度によって大きく異なります。

交通事故における主な刑事罰

・過失運転致死傷罪
→ 7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金
・危険運転致死傷罪
→ 被害者が負傷した場合は15年以下の懲役、死亡した場合は1年以上の有期懲役
・道路交通法違反(信号無視・速度超過など)
→ 罰金刑や免許停止・取消などの行政処分

刑罰への不安を抱えたときは、できるだけ早く弁護士に相談し、今後の見通しと取るべき対応を整理することが、冷静な解決への第一歩となります。

交通事故加害者が弁護士に依頼するべきタイミング

①事故直後

交通事故の場合,事故直後に加害者自身が警察を呼ぶなどし,必要な手続を尽くす必要があります。これは,交通事故が発生した際に,自動車運転者には警察へ報告する義務が生じるためです。
そうすると,交通事故では,基本的にすべての事件が発生直後から警察による取り扱いの対象となります。つまり,事故直後の段階から,既に将来的な刑事処分を見据えた対応の必要が生じているというわけです。

しかも,事故直後の手続では,現場の実況見分を合わせて行うケースもありますが,実況見分は加害者の責任の程度に関する重要な証拠となるものです。実況見分に際しては,個別のケースに応じて生じ得る争点を整理した上で,不要な不利益を招かない対応が必要となります。

そのため,交通事故加害者の場合には,事故直後の時点で弁護士を選び,順次進む手続に対して適切な対処を取っていくことが不可欠です。事故直後は,弁護士に依頼をするべき重要なタイミングと言えるでしょう。

ポイント
交通事故の場合,事故直後に警察を呼ぶことになる
早期に実況見分が行われ,重要な証拠となり得る

②被害者側と連絡を取るとき

交通事故の場合,金銭賠償が必要となるため,継続的に被害者側と連絡を取り合うことになる,という点に特徴があります。自動車保険に加入している場合は,保険会社にやり取りの多くを委ねることができますが,保険会社への引継ぎまでは,どうしても当事者間で連絡を取ることになります。
また,保険会社が対応を始めた後でも,保険会社が対応できない点については当事者間で解決する必要があります。保険会社は,当事者の代わりに被害者への金銭賠償を行ってくれますが,金銭面の問題以外には介入することができないため,この点はやはり当事者間での直接の連絡を要します。

被害者側との連絡は,その心情に配慮するため,細心の注意を払って行う必要がありますが,加害者という立場で適切な応対を判断し,続けるのは,非常に大きな負担を伴うものです。
そのため,被害者側との連絡に際しては,適切な弁護士を選び,専門性ある弁護士から指示や助言を受ける形で進めることを強くお勧めします。被害者側との連絡が円滑にできれば,最終的な事件解決にとっても非常に有益な効果が期待できるでしょう。

ポイント
交通事故は,当事者間での連絡を要する点に特徴がある
被害者側への連絡に細心の注意を払うため,事前に弁護士選びを行いたい

③取調べを受ける前

交通事故では,当日に事故の処理をした後,後日に改めて取調べを受ける流れが非常に多く見られます。そして,最終的な刑事処分の検討は,その取調べの内容を踏まえて行われるため,取調べでの応答がどのようなものであったかは,刑事処分に直結するケースもあります。

もっとも,どのような取調べ対応が適切であるかは,個別具体的な内容によって異なってくるため,加害者自身が正確に把握することの困難なものです。刑事事件の専門家に判断を仰ぎ,刑事処分のために有益な対応を尽くすことを強くお勧めします。
取調べを受ける前のタイミングは,万全の回答を準備するために弁護士を選ぶべき時期と言えるでしょう。

ポイント
取調べ内容が最終的な刑事処分の結果に直結するケースもある
適切な取調べ対応の具体的内容は,個別の事件によって異なる

④起訴された後

交通事故では,過失の程度や被害結果の程度が大きい場合,起訴されて公開の裁判(公判)を受ける流れになる場合も否定できません。特に,以下のような場合には起訴の上で公開裁判の対象となりやすいでしょう。

公開裁判の対象となりやすい交通事故

1.被害者に過失のない事故
→横断歩道歩行中,加害者のセンターオーバー・追突など

2.被害者が死亡した事故
→被害結果が最も大きい類型

この点,公開裁判の対象となる場合には,公開の法廷でどのように対応すべきか,事前に準備をする必要があります。適切な準備を怠ってしまうと,裁判所の判決に重大な悪影響が生じる可能性も十分に考えられるところです。
そのため,起訴された後,公開裁判を控える時期には,必ず弁護士選びを行い,適切な弁護士のサポートを受けるようにしましょう。

交通事故加害者の弁護士依頼に関するよくある質問

逮捕されてしまうのか

交通事故加害者の場合,逮捕される可能性は否定できません。その背景には,交通事故が発生すると,自動車運転者には警察に報告をする義務が生じるため,基本的に現行犯で事件が発覚する,という点があります。現行犯で取り締まる際には,逃亡や証拠隠滅の可能性を直ちに詳細に確認することが難しいため,確認不足による不利益を避けるため,逮捕に踏み切るという例が散見されます。

もっとも,これは交通事故のケースで逮捕の可能性が高い,という意味ではなく,個別事件における逮捕の可能性はそれぞれの事情によって大きく変わります。それほど重大ではない交通事故であれば,逮捕されない方が通常とも言えるでしょう。
なお,一般的に逮捕の可能性が高くなるケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

交通事故で逮捕の可能性が高くなるケース

1.被害結果が重い
→死亡事故など,被害結果が重大である場合

2.重大な交通違反がある
→酒気帯び運転,無免許運転,極端な速度超過など,重大な交通違反を伴う場合

3.現行犯で逃亡が懸念される
→事故直後に当事者間でトラブルが起きた,その場を去ろうとした,という場合

警察に呼びされた場合どのように対応すべきか

①基本的な考え方

交通事故加害者となった件について,捜査機関から呼び出しを受けた場合,基本的には「呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じない」と理解をしておくことが適切です。

交通事故は,不注意で起きてしまった過失犯であるため,特段の事情がなければそれほど加害者の不利益が大きな手続(長期の身柄拘束など)を用いることはありません。特に,事故直後にしっかりと事故処理の対応を尽くしていれば,その後の呼び出しに応じている限り不測の不利益は生じないことが通常でしょう。

このような考え方を持っておくことは,自身の不安な感情を適切にコントロールする意味でも非常に重要です。交通事故は,刑事事件の中でも件数が非常に多い分野のため,手続が進むのを待つ期間が長く,手続全体も長期化しがちです。そのため,手続がなかなか終わらない中で自身をコントロールする必要がありますが,「呼ばれたときに適切に応じればよい」と割り切ることができれば,長期化による精神的負担は最小限に抑えることが可能になります。

ポイント
呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じ難い
交通事故の刑事手続は長期化しやすい

②反省内容の表明

交通事故加害者に対する呼び出しの際に確認されやすい点の一つが,反省状況です。その背景には,交通事故は,故意でなく過失(=注意義務違反)によって起きたものである,という点があります。

故意に起こした事件の場合,認め事件であれば反省の意思を表明しないことは稀です。故意に起こした犯罪行為に反省しない余地が考えにくいためです。一方,過失犯の場合,自分の過失をどのように評価しているかによって,反省を深めているケースもあれば,捜査を受けていることが不服であると考えているケースもあり得ます。
そうすると,捜査機関の目線では反省すべき過失があるのに,加害者本人が「自分にそれほどの落ち度はない」とのスタンスだと,捜査機関の理解との間に大きなギャップが生まれ,不利益な刑事処分につながる可能性もあり得ます。

そのため,自身の過失として指摘されている内容を冷静に確認し,反省すべき内容であればその反省を明確に表明していくことが適切な対応となります。

ポイント
反省すべきケースで反省が見られないと,大きな不利益につながる

③保険会社による対応状況の把握

呼び出しを受けた場合,警察署等で取り調べを受けることが見込まれますが,その際には被害者との間での解決状況についても確認されることが一般的です。そのため,自動車保険に加入している場合は,保険会社と被害者との間のやり取りの進捗をある程度把握しておくようにしましょう。

保険会社の対応状況を把握することは,以下のようなメリットにつながります。

保険会社の対応状況を把握するメリット

1.捜査機関に解決見込みありと理解してもらえる
→対応が順調に進んでいれば,当事者間の金銭的解決を前提にしてもらえる

2.十分な被害者対応をしているとの評価が得られる
→被害者対応を積極的に尽くそうとしている態度があるとの評価につながる

3.被害者側の感情面に有益な効果が期待できる
→加害者が状況把握に努めていると被害者に伝われば,被害者側の感情面の緩和につながる

不起訴になることはあるか

交通事故の場合,不起訴となる可能性は十分に考えられます。もちろん,ケースによっては不起訴処分の見込みが現実的にない場合もありますが,一般的な交通事故であれば,不起訴処分を目指す努力は十分に結果を左右し得ると考えてよいでしょう。

交通事故で不起訴の可能性が十分に考えられる大きな理由の一つが,過失犯であるという点です。交通事故は,わざと引き起こしているわけではなく,加害者自身も希望しないまま,不注意で起きてしまうものであるため,刑事責任は故意犯に比べて小さく評価されることが一般的です。起訴不起訴の判断は,事件ごとの刑事責任の重さを重要な基準とするため,交通事故が過失犯であることによる責任の小ささは,不起訴処分の可能性を高くする事情と言えます。

一方,過失犯であっても,刑事責任が重く評価されざるを得ない場合には,安易に不起訴を見込むわけにはいきません。交通事故の場合,被害者側に全く落ち度がない場合や,被害者に深刻な損害を与えた場合には,刑事責任が重大であると評価され,不起訴処分の可能性は低下しやすいでしょう。

ポイント
不起訴の可能性は,刑事責任の重さに大きく左右される
過失犯である交通事故は,故意犯よりも刑事責任が小さく評価されやすい

慰謝料を請求された場合はどうするべきか

交通事故の加害者として慰謝料を請求された場合は、まず冷静に対応することが大切です。焦って支払ったり、感情的に応じたりすると、不利な条件で示談してしまうおそれがあります。
具体的には、以下の点に留意しましょう。

1.請求内容を確認する
請求書に記載された金額や根拠を丁寧に確認しましょう。慰謝料は治療期間や過失割合などで変動するため、内容を理解せず支払うのは避けるべきです。

2.保険会社へ連絡する
任意保険に加入している場合は、すぐに保険会社へ報告を。多くの場合、交渉や支払いを代行してくれます。ただし、保険が適用されない部分については個別対応が必要です。

3.証拠を整理・保全する
事故状況の写真、ドライブレコーダー映像、診断書などを早めに整理・保管しておきましょう。

慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があり、弁護士基準がもっとも高額です。被害者が弁護士を立てて高額請求してくることもあります。

こうした場合、弁護士に相談することで請求金額の妥当性を判断し、減額交渉や示談対応を任せることができます。過失割合の整理や保険会社との調整もスムーズに進むため、慰謝料請求を受けた際は早期に専門家へ相談することが円満解決の近道です。

交通事故の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故は故意のない過失犯であるため,事件そのものの責任は決して大きくないことも少なくありません。
しかし,事後の対応を誤ってしまう場合も多く,それが本来科せられる必要のない責任や負担につながりやすい分野でもあります。
適切な対応の検討は,交通事故の刑事弁護に精通した弁護士へのご相談が有益です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所