暴行事件で自首する場合の適切な方法は?自首が必要かはどうやって判断すべきか?

このページでは,暴行事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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暴行事件で自首をするべき場合

①現場から逃走してしまった場合

暴行事件が現行犯で問題となった際に,現場から逃亡する方法でその場を逃れた場合には,自首の検討が有力な状況と言えます。

現場から逃走した場合には,その後に被害者が警察に被害申告する可能性が非常に高くなります。そして,被害申告を受けた警察としては,加害者が現場から逃走してしまったという事実を踏まえ,再び逃亡される危険を防ぐために,加害者を特定次第逮捕することが有力な選択肢となります。
そのため,逮捕を防ぐためには,逃亡の可能性がない,ということを捜査機関に理解してもらう必要があり,逃亡しないとのメッセージを明確に発信する具体的な手段が自首です。

逆に,現場から逃走してしまった状況下では,自首以外の手段で逮捕を防ぐ積極的な動きを取ることは難しい場合が多数です。このケースでは,自首の効果が特に高いということができるでしょう。

ポイント
加害者が現場から逃走した場合,捜査機関にとって逮捕が有力な選択肢になる
逮捕の必要がないことを理解してもらうには,自首が有力な行動

②相手と音信不通になった場合

暴行事件の場合,当事者間で円満な解決ができれば,自首までは必要のないことが通常です。自首の主な目的は,逮捕や刑罰を回避する点にありますが,当事者間で解決ができた場合にはそれのみで逮捕や刑罰が防げることが一般的であるため,重ねて自首を行う必要まではないと言えます。
そのため,当事者間が元々知人などの間柄であったり,共通の知人がいて橋渡し役になってくれたりと,当事者間の解決ができる状況にある場合は,まず示談などの円満な解決を目指すことが適切でしょう。

一方,当事者間で円満解決する手段がない場合には,自首が有力な行動になります。特に,ある時期までは連絡が取り合えていたにもかかわらず,急に音信不通になってしまった,という場合には,相手が円満な解決を諦めて捜査機関に捜査を求める方針を取ることとした可能性が高い状況であるため,捜査が行われる前に先手を打って自首することで,不利益を最小限に抑える方針が有力と言えるでしょう。

ポイント
当事者間で解決ができれば,自首までは必要のないことが通常
相手と音信不通になった場合,当事者間での解決が期待できないため自首が有力

③継続的なトラブルである場合

当事者間に継続的なトラブルが生じており,その一部が暴行事件という形で現れたという場合,警察の捜査に際しては,トラブルの深刻化を防ぐための慎重な判断が必要になります。
特に,暴行事件の発生までは互いに暴力を振るうまでは至っていなかった,という場合,暴行事件を皮切りに互いの暴力的行為がエスカレートしてしまう可能性が懸念されるため,逮捕の必要性が高い,との評価につながりやすい傾向にあります。

そのため,当事者間のトラブルが継続的にある場合には,暴行事件を過小評価することなく,将来の捜査に備えた自首の検討が有力です。
また,自首をした場合には,その後にトラブルが起きないことも非常に重要となります。被害者の立場になることは避けられませんが,自分が加害者と評価されかねないようなトラブルは決して引き起こさないように注意しましょう。

ポイント
暴行事件を皮切りにトラブルがエスカレートすると懸念されやすい
自首後にはトラブルを再発させないことも重要

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

暴行事件の自首は弁護士に依頼すべきか

暴行事件の自首を検討する場合には,必ず弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら進めることを強くお勧めします。また,実際に自首を行う場合にも,弁護士に依頼の上で,弁護士が主導する形で試みることが有益でしょう。

弁護士への依頼には,以下のようなメリットが見込まれます。

①犯罪に当たるかが判断できる

自首は,当然ながら犯罪行為をしてしまった際に行うべきものです。犯罪行為をしていないにもかかわらず自首をしようとすれば,その動き自体が無駄となるのみならず,より悪質な別の犯罪を隠そうとしているのではないか,などという疑いを持たれるきっかけにもなりかねません。
そのため,自首を検討する際には,自分の行為が犯罪に当たるかどうか,という点の正確な理解が必要不可欠と言えます。

この点,弁護士に依頼することで,自分の不安視している行動が犯罪に当たるか,弁護士に法的な判断をしてもらうことが可能です。特に,暴行罪は対象となる行為の幅が広く,犯罪に該当するかどうかの判断が容易でないものも多いため,検討の初期段階で法的な整理をしておくことは非常に有益でしょう。

②逮捕が回避しやすくなる

自首の最大の目的の一つが,逮捕の回避です。自首をしなければ逮捕される恐れがある場合,ケースや状況によっては自首が唯一の逮捕回避策となることも少なくありません。そのため,自首を行うのであれば,逮捕の回避につながる形で行うことが非常に重要となります。
しかしながら,自首のやり方を誤ってしまうと,せっかく自首をしたにもかかわらず逮捕を防ぐ効果が十分に発揮されない結果となる恐れもあり得ます。大きなリスクを背負った行為をする以上,その方法は万全にするのが適切です。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕回避の効果を最大限に高めるための進め方や対応の仕方を知ることができ,自首による逮捕回避がより見込みやすくなります。また,弁護士が捜査機関と協議を試みるなど,弁護士が別途逮捕を防ぐための弁護活動をしてくれるため,相乗効果も期待できるでしょう。

③自首後の弁護活動が迅速にできる

自首を行った後は,捜査が行われ,最終的な刑事処分を受けるまでの手続が進むことになります。そのため,自首をするのであれば,自首後の手続にも無関心でいるわけにはいきません。

この点,自首後の弁護活動も行ってもらう内容で弁護士に依頼すれば,自首をした後速やかに,必要な弁護活動を開始してもらうことができます。暴行事件の場合,被害者への対応など迅速に行うべき弁護活動も多いため,速やかに動き出せることのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

④早期釈放を目指すことができる

捜査機関の判断によっては,逮捕を回避できない場合も考えられますが,暴行事件の場合には,ケースによって逮捕後の早期釈放が十分に期待できる可能性も低くはありません。もっとも,積極的に法律上の不服申立てを行う必要があるなど,弁護士がいなければ早期釈放を目指す行動自体ができない恐れもあり得ます。

この点,弁護士に依頼しておくことで,万一逮捕されてしまった場合でも早期釈放を目指すための動きを尽くしてもらうことが可能です。逮捕されたケースであっても,最短で釈放してもらうことができれば,日常生活への悪影響は最小限に抑えられるでしょう。

暴行事件で自首をする場合の注意点

①早期に行う必要がある場合

自首は,捜査機関が「犯罪事実」と「犯人」の両方又は一方を把握していない場合にのみ成立する手続です。捜査機関にとって,犯罪事実も犯人も分かっている状況だと,自分から積極的に出頭しても自首と評価してもらえる可能性はありません。

暴行事件の場合,当事者同士が知り合いであるケースも少なくありませんが,そのように相手の個人情報を知っている間柄だと,捜査機関による「犯人」の特定が短期間で可能になります。極論すれば,被害者が捜査機関に被害申告をしたと同時に,犯人が誰であるかも分かることになるでしょう。

そうすると,暴行事件の自首は,被害者が警察等に相談するより前に,早期に行う必要がある場合も少なくない点に注意が必要です。自首の決断は容易ではありませんが,見えないタイムリミットが迫っている可能性にも気を付けておくことが望ましいと言えます。

②自首後に示談を試みるべき場合

自首をした場合,その後に示談を試みるべき場合は少なくありません。基本的に,被害者が誰であるか明らかな場合には,自首後速やかに示談を試みるのが適切でしょう。

自首の目的は,最終的には刑事処分を少しでも軽くすることであるのが通常です。そして,暴行事件で刑事処分が軽くなる最大の要因は,認め事件であれば被害者との解決(示談)であることがほとんどです。そうすると,刑事処分を軽くするための手段として自首をしておきながら,更に効果が見込まれる示談を試みないというのは,合理的な動き方とは言い難いでしょう。

自首をした暴行事件では,基本的に示談を試みるべきものだ,という理解をしても間違いないと考えます。

③捜査の初期段階であること

自首は,あくまで捜査の初期段階であり,自首をきっかけとして刑事手続がスタートすることになります。被疑者本人にとっては,自首が非常に大きな分岐点であり,心理的負担の大きな行動であることも確かですが,手続全体との関係ではスタートラインを切ったばかりです。

そのため,自首をした場合には,その後に刑事手続が始まる初期段階であることに十分注意の上,自首に満足したり,自首後の対応を疎かにしたりすることのないよう,真摯な対応を続けるようにしましょう。自首の効果が十分に発揮されるかどうかは,その後の動き方にもかかっています。

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【暴行事件での呼び出し】逮捕を防ぐ方法や出頭時の正しい対応方法などを詳細解説

このページでは,暴行事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
暴行事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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暴行事件で呼び出された場合の対応法

①基本的な方針

暴行事件で呼び出しを受けた場合,まずは呼び出しに応じることを前提に対応するようにしましょう。内容や言い分によっては,呼び出しに応じることが割に合わない,または納得できないといった思いになることは十分に考えられると思います。しかしながら,呼び出し自体に一切応じないとのスタンスは,かえって自分に不利益をもたらす可能性があって適切とは言えません。

言い分がある場合には,呼び出しに応じた上で,出頭した際に述べることが最も適切です。もっとも,呼び出しに応じるタイミングを捜査機関の希望に合わせる必要まではありません。自身のスケジュールと調整できる範囲内で,まずは呼び出しに応じることを方針の第一歩としましょう。

ポイント
呼び出し自体には応じる方が賢明
言い分は出頭した際に述べる

②内容に反論がない場合

疑いの内容に間違いがなく,反論すべき内容がない場合には,まず反省の意思を前面に示し,捜査協力のスタンスを明確にすることが適切です。

内容面に争いがないケースでは,反省状況等の情状面がその後の進行や結果を大きく左右します。その中でも,呼び出しを受けた段階で行うことのできる情状面の行動が,反省と捜査協力の意思表明です。呼び出しを受けたその時から反省の意思を示すとともに,取り調べなどの捜査を全面的に受け入れる姿勢を見せるのが,初期段階で可能な最善の対応と言えるでしょう。

また,呼び出しに応じて出頭した際には,事実をありのままに述べ,捜査機関の把握している事実関係とズレのない話を尽くすことも重要です。捜査機関の認識と整合する内容の話を一貫できれば,捜査が円滑に進行する上,反省の意思を表明する手段の一つにすることもできるでしょう。

ポイント
反省の意思と捜査協力のスタンスを示す
事実をありのまま述べ,捜査機関の認識と整合する話を尽くす

③していない行為を疑われている場合

自分がしていない行為を疑われているケースでは,まずその事実を明確に表明することを優先しましょう。刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,その後の捜査が大きく変わるため,本件は否認事件である,という事実を正しく把握してもらうことが第一歩となります。

認め事件とは異なり,否認事件の場合には,被疑者の自白なしで犯罪の立証をしなければなりません。被疑者の自白がある認め事件では,自白を裏付ける証拠や自白と整合する証拠が重要な位置づけとなりますが,否認事件ではそもそも自白がないため,自白以外の証拠のみで犯罪を立証するほかないのです。
また,被疑者が「実際はこうであった」と別の事実を主張している場合,被疑者の主張が真実でないとの確信に至らなければ,犯罪の立証には至りません。否認事件では,証拠の量及び質の両面で,犯罪の立証が容易でないと言えます。

してもいない行為を疑われて呼び出しを受けた場合には,否認の意思をはっきりさせることで,「本件の立証は容易ではない」と捜査機関に認識してもらうことが適切でしょう。

ポイント
否認事件は,犯罪の立証が容易でない
否認事件であることを早期に把握してもらうことが適切

④経緯に言い分がある場合

事件の内容そのものには争いがないが,事件の経緯に言い分がある,という場合,その言い分を伝える時期や方法・内容は慎重に検討することが望ましいでしょう。

経緯に言い分がある事件は,認め事件か否認事件かで言えば認め事件に該当します。認め事件である以上は,反省状況が重要なポイントとなることには変わりありません。
一方で,経緯に関する言い分は,表現を誤ると「反省がない」との評価につながってしまう恐れがあります。自分にとって有益と思う主張をしたにもかかわらず,その結果が自分にとって不利益となってしまうのは不合理と言わざるを得ないでしょう。

経緯に言い分がある事件で呼び出しを受けた場合には,まず認め事件であることを前提に反省の意思を示す方針を優先すべきです。経緯を伝える機会や方法はそれ以降にも複数あるため,呼び出しを受けた段階で強引に伝えようとする必要はありません。

ポイント
経緯の言い分を述べようとするあまり,反省がないとの評価を受けるのは不合理
まずは事件を認め,反省の意思を表明することを優先すべき

暴行事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①現行犯で取り締まりを行った後

現行犯で取り締まりを受けた場合には,その後に改めて呼び出し,話を聞いたり供述調書を作成したりすることが考えられます。

この場合の呼び出しは,現行犯で取り締まりをしてからそれほど期間を空けずに行われることが一般的です。捜査機関のスケジュールにもよりますが,現行犯での取り締まり後1週間~1か月程度の間には行われることが多いでしょう。

②被害届が提出された後

被害者から被害届が提出されると,警察は捜査を開始することになるため,被害届の提出後には,捜査の一環として呼び出しを受けることが考えられます。

呼び出しの時期は,被害者にとって加害者が特定できているかどうかによって大きく異なりやすいところです。被害者が加害者を特定できている場合には,被害届の提出後,間もないタイミングで呼び出されることが多いでしょう。被害者にとって加害者が特定できない場合は,加害者の特定が必要となるため,呼び出しの時期は捜査の進捗によるところです。

③写真撮影や指紋採取のため

警察における捜査の一環として,写真撮影や指紋採取,DNA型鑑定のための検体採取などが広く行われています。これらの個人情報は,将来の別件での捜査に用いることなどを想定し,捜査機関内部で保管することが想定されているものです。

そのため,呼び出しを受ける際には,これらの写真撮影や指紋採取等の目的であることも考えられるでしょう。このような呼び出しは,警察での捜査が終了する際に行われることが多く見られます。一通りの取調べ等が終了した後であることが一般的でしょう。

暴行事件の呼び出しに応じたときの注意点

①冷静な対処を心掛ける

暴行事件の場合,まずはとにかく冷静な対応に努めることが非常に大切な考え方となります。主張の内容が全く同じであっても,冷静に対処しているか感情的になってしまっているかによって,結果に大きな差が生じてしまう可能性は低くありません。

暴行事件では,互いに相手への悪感情を持っていることが一般的であるため,捜査機関が相手に肩入れをしているような態度を見せれば,それだけで冷静さを失ってしまうケースが散見されます。しかし,冷静さを失うことは損しか生まないと言い切ってもよいでしょう。
常に冷静な対処を心掛けることで,円滑な進行を促すことが賢明です。

②出頭拒否のリスク

呼び出しに応じて出頭するかどうかは,強制ではなく任意です。そのため,出頭を求められても拒否することが可能であり,出頭拒否自体に法的な問題はありません。

もっとも,出頭拒否は捜査機関への協力を一切しないという強いメッセージとなるため,そのやり方を誤ってしまうと大きなリスクが付きまとうことになります。中でも,出頭拒否によって逮捕を招いてしまうことは,最も避けるべき事態と言えるでしょう。

出頭拒否に対して直ちに逮捕することは法的に問題がありますが,出頭拒否を判断材料の一つにして,総合的な判断の結果逮捕する,ということは違法とは言い難いものです。そのため,出頭拒否を選択する場合には,それが逮捕のリスクをどれほど抱える対応なのか,という点を慎重に検討することをお勧めします。

③弁護士への依頼時期

弁護士への依頼を検討する場合,その時期は早ければ早いほど有益であることが一般的です。どこかのタイミングまで弁護士への依頼を保留する方が効果的である,といった事情は通常ありません。
特に,被害者との示談を目指す事件では,被害者の感情面に配慮するためにも,できるだけ早期に行動に移し,被害者側にも極力早く謝罪の意思を知ってもらうことが有益です。

また,事件によっては,検察庁での呼び出しを受けた際に,担当検事から弁護士への依頼を勧められることもあり得ます。暴行事件は,当事者間で解決する方が望ましいトラブルと理解されやすいため,弁護士に依頼して当事者間での解決を目指すべきでないか,との助言もなされ得るのです。
その場合は,当事者間での解決が刑事処分の軽減につながる,とのメッセージでもあるため,できるだけ早期に,積極的に弁護士への依頼を検討することをお勧めします。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

暴行事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

暴行事件での呼び出しに応じた場合,そのまま逮捕されることは基本的に考えにくいと言えます。逮捕する予定であれば,逮捕状を持って被疑者の自宅を訪れる方が端的であり,わざわざ呼び出して出頭を求めるのは合理的な手段とは言えません。単純にロスが生じることに加え,呼び出している間に証拠隠滅されてしまうリスクも抱えるため,捜査方法として採用するメリットに乏しいです。

もっとも,呼び出しが行われる事件であれば逮捕されない,とは限りません。呼び出しへの対応を誤ってしまえば,それが逮捕のきっかけになる可能性は十分に考えられるためです。

逮捕のきっかけになり得る対応としては,以下のような例が挙げられます。

逮捕につながりかねない対応の例

1.相手方当事者に連絡を試みること

2.感情的に拒絶すること

3.捜査機関に危害を加える旨の言動

【1.相手方当事者に連絡を試みること】

呼び出しを受けることに納得がいかない,などの理由で相手の当事者と話を付けようと試みる行為は,逮捕につながりかねない危険な動きと言えます。

捜査機関は,被害者と主張する相手方当事者から捜査を求められて動いていることが通常です。そして,被害者側の希望としては,加害者と今後関わりたくない,との意向であることが一般的です。
そのため,捜査機関の呼び出しがきっかけになって加害者が被害者に接触を試みる結果となるのは,捜査機関としては避けなければならず,その可能性が見受けられるならば予防策を講じる,という判断になることは大いにあり得ます。

そのため,相手方当事者に連絡を試みる動きに出ることは,当事者間の接触を防ぐための逮捕を誘発する行為になりかねないのです。

【2.感情的に拒絶すること】

暴行事件は,当事者間の感情的な対立が背景にあることも多く,事件を思い起こす度に感情的になってしまうこともある程度やむを得ません。もっとも,呼び出しをしてきた警察官にその感情をぶつけたり,感情のままに呼び出しを拒絶してしまったりすることは得策ではありません。

警察による呼び出しは,「呼び出せば応じてくれるはずだ」という判断がその前提にあります。呼び出せば応じてくれる以上,呼び出し以上に強力な手段を用いる必要がない,と考えているからこそ,呼び出しているのです。
しかし,呼び出しに対して感情的なリアクションを見せたり,拒絶の姿勢を見せたりすると,「呼び出せば応じてくれるはずだ」という前提は崩れてしまいます。呼び出してもまともな話ができず,出頭にも応じてくれないとなると,確実に出頭してもらうために逮捕する,という選択にもなりかねません。

【3.捜査機関に危害を加える旨の言動】

捜査機関から一方的に呼び出されることは,特に否認事件の場合には不快にも感じられますが,だからといって捜査機関と対立するような言動に及ぶことは不利益しかありません。特に,捜査機関に対して何らかの危害を加える内容の言動をすることは,捜査の妨害や現実の危害を防ぐための逮捕を誘発してしまう可能性があります。

捜査機関に対する不満や不快などの感情を抱いた際には,一度落ち着いて冷静な対応に努めるよう心がけましょう。また,「捜査機関も仕事でしょうがなく呼び出しているんだ」というように相手の立場を想像することができれば,捜査機関とむやみに対立する言動をする意欲は生じにくいでしょう。

暴行事件の逮捕

暴行事件で逮捕される可能性

暴行事件の場合,逮捕の可能性は十分に考えられます

暴行は,結果的に被害者が怪我などの傷害を受けなかったという事件類型であり,その分事件の重大性は大きくないケースが少なくありません。そして,逮捕するかどうかは事件の重大性を大きな判断基準の一つとするため,暴行事件は逮捕の可能性が低くなり得る事件類型と言えるでしょう。

しかしながら,暴行事件では,むしろ逮捕されやすい条件が揃ってしまうケースも多い点に特徴があり,漫然と対応していると逮捕の恐れが大きくなりかねません。そのため,逮捕されやすい条件を踏まえておき,個別の対応に活かすことが重要となります。

暴行事件で逮捕されやすいケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

暴行事件で逮捕されやすいケース

1.現行犯での対応を要する場合

2.当事者間の争いが深刻な場合

3.暴行の内容が悪質な場合

【1.現行犯での対応を要する場合】

暴行事件は,現行犯で問題になることが非常に多い事件類型です。そして,暴行事件が現行犯で取り扱われる場合,その場の紛争を収める目的も兼ねて,当事者の一方を逮捕することが非常に多く見られます。

逮捕は,逃亡また証拠隠滅の可能性が高い場合に用いられる捜査手続ですが,現行犯でトラブルになっている暴行事件だと,被害者(の話)という最も重要な証拠が,その後の暴行行為などによって押さえつけられ,捜査の妨げになる可能性があると判断される傾向にあります。

そのため,現行犯で捜査が開始され,当事者間に激しい感情対立が見られる場合には,逮捕されやすいと言えるでしょう。

【2.当事者間の争いが深刻な場合】

当事者間に継続的な紛争があり,その紛争が根深く深刻なケースでは,当事者を引き離すために逮捕される可能性が高い傾向にあります。

継続的に争う関係にある当事者間では,一度暴行事件が起きると,その後さらにエスカレートした事態がいつ生じるか分からない,という不安が付きまとうことになります。現在起きているのは暴行事件だけであっても,継続的に積み重なった紛争の火種がいつより大きな事件に発展してもおかしくない,と評価されるわけです。

そのため,暴行事件の段階で捜査をより厳格に行い,その後のトラブルの深刻化を防ぐ目的で,逮捕を伴う強制的な捜査を行う可能性が高くなります。

【3.暴行の内容が悪質な場合】

暴行事件と一口に言っても,その具体的な暴行の内容は様々です。例えば,素手による暴行に限ったとしても,はたく,押すといったものから,握りこぶしで思い切り殴りつける行為まで,強度や危険性に大きな幅があり得ます。

この点,暴行の程度がより危険である場合には,事件の悪質性を踏まえて逮捕の判断がなされやすいと言えます。悪質な暴行がなされていると,その後の再発を防ぐ必要性が非常に高くなるため,強制的に再発や二次被害を避けるための手段として,逮捕が用いられやすくなるのです。

暴行事件で逮捕を避ける方法

①当事者間での解決を目指す

暴行事件の場合,当事者間で事件が解決していれば,その後に逮捕される可能性は現実的になくなります。暴行事件の捜査は,ほとんどが被害者の被害申告をきっかけに開始されるものであって,被害者が解決したと考える以上,捜査の始まるきっかけが生じないためです。
また,捜査の開始後であっても,被害者が解決したとの意向であれば,その後に逮捕の必要があるとは判断されず,逮捕には至らないことが通常です。

そのため,逮捕の回避を目指す場合には,まず当事者間での解決が目指せないか,検討することが有力でしょう。直接連絡を取り合う方法があったり,間に入ってくれる第三者がいたりすれば,直接の協議も一案です。一方,連絡を取りあう手段がない場合には,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にする形で解決を試みることが望ましいでしょう。

②現行犯逮捕を防ぐ

逮捕の種類が複数ある中で,最も容易に行うことができるのは現行犯逮捕です。現行犯逮捕は,裁判所から逮捕状の発付を受けることなく実行できる逮捕手続であり,かつ捜査機関に限らず誰でもできることから,そのハードルは非常に低くなりやすい傾向にあります。

裏を返せば,逮捕を避けるためには,最も容易に行われ得る現行犯逮捕を防ぐことが重要な手段になります。特に,暴行事件を含むトラブルが現場で警察沙汰になったような場合,周囲の私人が現行犯逮捕し,そのまま警察に引き渡すことで法的に逮捕が正当化されてしまう場合が非常に多いため,そのような流れを一度断ち切り,現行犯逮捕が成立しない状態を作り出すことが有力でしょう。

具体的な手段としては,一度その場を離れて再度連絡を取り合うことにする,といったように,事件と逮捕が時間的・場所的に近い状態とならないように意識することが有力です。

③自首を検討する

現に捜査されていないため当事者間での解決手段がなく,現行犯逮捕される状態にもないという場合,積極的な逮捕回避策には限界がありますが,その際,逮捕を防ぐ手段として有力になってくるのが自首です。

自首は,自分に対する捜査が行われる前に,積極的に自身の犯罪行為を申告することで,自分に対する捜査や処罰を求める行動です。そして,自分から積極的に犯罪の情報を示していくことから,逃亡や罪証隠滅の可能性は低く,逮捕の回避につながりやすいという利点があります。

暴行事件が捜査されているかどうか分からず,逮捕の不安を払拭する手段がない場合には,自首を検討することをお勧めします。

暴行事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

暴行事件の逮捕に関して適切な対応を尽くしたい場合には,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士への依頼によって,具体的には以下のようなメリットが生じるでしょう。

①逮捕を避けるために何をすべきか分かる

暴行事件の場合,逮捕の可能性やその回避に必要な手段が様々に異なります。そのため,逮捕の回避を試みようとしても,見通しや手段を誤ってしまえば,せっかくの行動が結果につながらない,という事態が生じかねません。

この点,弁護士に依頼することで,個別の事件内容を踏まえた逮捕の可能性の高さや,現実に逮捕を避けるための手段などを,専門的な見地から適切に判断してもらうことが可能です。事前の判断が適切であることは,最終的な結果を直接大きく左右するため,そのメリットの大きさは極めて大きいと言えます。

②弁護士に必要な対応を主導してもらえる

逮捕を防ぐために必要な対応が分かったとしても,その対応を自分で十分に行うのは困難であることが少なくありません。例えば,当事者間での解決が望ましいとしても,当事者間で直接話し合いができるかと言えばそうでないことがほとんどです。また,自首が望ましい場合であっても,自首するにはどうすればいいか事前に分かっている人はほとんどいないでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,必要な対応を主導して進めてもらうことができ,対応を誤る恐れがなくなります。また,対応の負担も劇的に軽減することとなるため,実際の動きに踏み出す心理的負担も大きく異なるでしょう。

③早期釈放を目指すことができる

暴行事件で逮捕されてしまった場合には,早期釈放を目指すことが次の検討事項となります。暴行事件は,逮捕後に早期釈放が実現されるケースも決して少なくはない事件類型であるため,逮捕されたことで落胆してしまうのでなく,不利益を最小限に抑える試みへと速やかにシフトすることが肝要です。

この点,弁護士に依頼することで,早期釈放を目指すための具体的な手段を講じてもらうことが可能です。適切な弁護士に依頼することができれば,スピーディーに対応を進めてもらうことができ,早期釈放によって生活への悪影響を避けられる可能性が高まるでしょう。

暴行事件の逮捕に関する注意点

①事件直後に逮捕される可能性

暴行事件では,事件直後に警察沙汰になり,そのまま逮捕される可能性が低くない点に注意が必要です。事件直後のタイミングでは,誰でも逮捕状なく現行犯逮捕ができてしまうため,逮捕した本人ですら自覚しないまま,法的には逮捕されていた,という事態に至る可能性も十分にあります。

事件直後においては,特に現行犯逮捕の可能性に注意して,これを避けることを目指すのが望ましいところです。

②当事者間の言い分に争いがある場合

暴行事件の場合,当事者双方に何らかの言い分があり,その言い分が互いに対立しているケースも珍しくありません。そして,当事者の言い分の争いある暴行事件が逮捕の対象となった場合,早期釈放が難しく,身柄拘束が長期化しやすい可能性に注意が必要です。

言い分に争いがある場合,事実関係の捜査にはやむを得ず時間がかかります。その間,逮捕した被疑者を釈放するわけにいかないとなれば,捜査に時間がかかっている間は身柄拘束を受けざるを得ず,その分長期化の恐れがあるのです。

③同居家族を被害者とする事件の場合

暴行事件は,同居家族との間で生じる場合もありますが,同居家族を被害者とする暴行事件の場合,帰宅するとしてどこへ帰宅するのか,という点は適切な調整が不可欠なポイントになります。

まず,事件が解決しないうちに同居を再開させることは不可欠と考えられるのが通常です。そのため,漫然と釈放を求めても,互いの住居地がしっかりと調整できていなければ,身柄拘束の継続が必要との判断になりやすいでしょう。
多くの場合は,一時的に他の親族の自宅へ行く,ホテルやマンスリーマンションを利用する,といった手段で,当事者双方を物理的に切り離す手段が有力です。これらの具体的手段をどうするかは,逮捕を防ごうとする段階で事前に検討し,準備しておくべきである,ということに注意しましょう。

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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【暴行事件の逮捕】初犯でも逮捕されるか?逮捕されたらどうすべきか?

暴行事件は身近なトラブルから発展することも多く、「初犯でも逮捕されるのか」「逮捕後はどうなるのか」と不安に感じる方は少なくありません。暴行で逮捕されると、取調べや勾留といった刑事手続が進み、仕事や生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。本記事では、暴行で逮捕されるケースや逮捕後の流れを整理し、逮捕された際に取るべき適切な対応について分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

暴行とは

① 暴行の定義

「暴行」とは、人の身体に対して不法な有形力を行使する行為をいいます。これは刑法208条に定められており、実際に傷害の結果を生じていなくても成立します。たとえば、殴る・蹴る・突き飛ばすといった行為はもちろん、物を投げつける、至近距離で脅すように物を振りかざすなど、身体に対する力の行使と評価できる行為も暴行にあたる場合があります。

暴行罪の成立には、相手にけがを負わせる結果までは必要とされません。したがって、被害者が実際に痛みを感じなかったとしても、客観的に危険な有形力の行使があれば暴行が成立する可能性があります。

また、暴行罪は「公然わいせつ罪」や「脅迫罪」などと異なり、行為の結果ではなく行為そのものに重きを置く犯罪類型です。暴行の程度や態様によっては、傷害罪(刑法204条に発展することもあり、どの範囲までが「暴行」にあたるかは、事案ごとの判断が求められます。

② 暴行と傷害の違い

暴行罪と傷害罪は、基本的に「けが(傷害)の結果が生じたかどうか」で区別されます。

まず、暴行罪(刑法208条)は、相手の身体に対して不法に有形力を行使する行為そのものを処罰するものであり、けがなどの結果がなくても成立します。たとえば、相手を突き飛ばす、胸ぐらをつかんで揺さぶる、物を投げつけるといった行為がこれに当たる場合があります。

これに対して、傷害罪(刑法204条)は、暴行などの結果として身体の生理的機能に障害が生じた場合に成立します。出血・腫れ・打撲などの外傷はもちろん、強い精神的ショックによる不眠など、身体の正常な機能に支障をきたす状態も含まれます。

したがって、暴行の結果としてけがを負わせた場合は、暴行罪ではなく傷害罪が成立します。
ただし、実際の事件では「どの程度の被害をもって傷害といえるか」が問題となることがあり、結果の有無だけでなく、行為の危険性や被害の程度などを総合的に考慮して判断されます。

なお、現在の法定刑は次のとおりです。

・暴行罪(刑法208条):2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料
・傷害罪(刑法204条):15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

このように、傷害の結果を伴うかどうかが両者を分ける基本的な基準であり、結果の重大性に応じて処罰の重さも異なります。

実際の運用としては、傷害結果の根拠があるかどうかによって暴行罪と傷害罪が区別されます。多くの場合は診断書が提出されるかどうかによりやすいでしょう。

③ 暴行の時効

刑事事件には、一定の期間が経過すると起訴できなくなる「公訴時効」が定められています。
これは、時間の経過によって証拠や記憶が薄れるなど、刑事責任の追及が適切でなくなることを考慮した制度です。

暴行罪の公訴時効期間は、刑の重さ(法定刑の上限)によって決まります。
刑事訴訟法第250条では、次のように規定されています。

刑事訴訟法第250条(抜粋)公訴時効期間
死刑に当たる罪30年
無期の拘禁刑に当たる罪20年
長期15年以上の拘禁刑に当たる罪15年
長期10年以上15年未満の拘禁刑に当たる罪10年
長期5年以上10年未満の拘禁刑に当たる罪7年
長期5年未満の拘禁刑、罰金、拘留または科料に当たる罪3年

暴行罪(刑法208条)の法定刑は「2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料」であるため、
上表の「長期5年未満の拘禁刑等に当たる罪」に該当し、公訴時効は3年です。

つまり、暴行の行為から3年が経過すれば、原則としてその行為について起訴されることはありません。
ただし、被疑者が国外に逃亡している場合などは時効が一時的に停止することがあります(刑事訴訟法255条)。

暴行の結果としてけがを負わせた場合は傷害罪(時効7年)、死亡させた場合は傷害致死罪(時効10年)が成立するため、結果の重大性に応じて時効期間も長期化することがあります。

暴行で逮捕されるケース

(1)暴行で逮捕される可能性

暴行事件の場合,逮捕の可能性は十分に考えられます

暴行は,結果的に被害者が怪我などの傷害を受けなかったという事件類型であり,その分事件の重大性は大きくないケースが少なくありません。そして,逮捕するかどうかは事件の重大性を大きな判断基準の一つとするため,暴行事件は逮捕の可能性が低くなり得る事件類型と言えるでしょう。

しかしながら,暴行事件では,むしろ逮捕されやすい条件が揃ってしまうケースも多い点に特徴があり,漫然と対応していると逮捕の恐れが大きくなりかねません。そのため,逮捕されやすい条件を踏まえておき,個別の対応に活かすことが重要となります。

暴行事件で逮捕されやすいケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

暴行事件で逮捕されやすいケース

1.現行犯での対応を要する場合

2.当事者間の争いが深刻な場合

3.暴行の内容が悪質な場合

【1.現行犯での対応を要する場合】

暴行事件は,現行犯で問題になることが非常に多い事件類型です。そして,暴行事件が現行犯で取り扱われる場合,その場の紛争を収める目的も兼ねて,当事者の一方を逮捕することが非常に多く見られます。

逮捕は,逃亡また証拠隠滅の可能性が高い場合に用いられる捜査手続ですが,現行犯でトラブルになっている暴行事件だと,被害者(の話)という最も重要な証拠が,その後の暴行行為などによって押さえつけられ,捜査の妨げになる可能性があると判断される傾向にあります。

そのため,現行犯で捜査が開始され,当事者間に激しい感情対立が見られる場合には,逮捕されやすいと言えるでしょう。

現行犯の現場で不適切な対応を取ってしまうと、現行犯での逮捕リスクが飛躍的に上がります。まずは一度落ち着いて、弁護士への相談を含めた対応方針の検討を行うようにしましょう。

【2.当事者間の争いが深刻な場合】

当事者間に継続的な紛争があり,その紛争が根深く深刻なケースでは,当事者を引き離すために逮捕される可能性が高い傾向にあります。

継続的に争う関係にある当事者間では,一度暴行事件が起きると,その後さらにエスカレートした事態がいつ生じるか分からない,という不安が付きまとうことになります。現在起きているのは暴行事件だけであっても,継続的に積み重なった紛争の火種がいつより大きな事件に発展してもおかしくない,と評価されるわけです。

そのため,暴行事件の段階で捜査をより厳格に行い,その後のトラブルの深刻化を防ぐ目的で,逮捕を伴う強制的な捜査を行う可能性が高くなります。

【3.暴行の内容が悪質な場合】

暴行事件と一口に言っても,その具体的な暴行の内容は様々です。例えば,素手による暴行に限ったとしても,はたく,押すといったものから,握りこぶしで思い切り殴りつける行為まで,強度や危険性に大きな幅があり得ます。

この点,暴行の程度がより危険である場合には,事件の悪質性を踏まえて逮捕の判断がなされやすいと言えます。悪質な暴行がなされていると,その後の再発を防ぐ必要性が非常に高くなるため,強制的に再発や二次被害を避けるための手段として,逮捕が用いられやすくなるのです。

暴行の悪質さは、どれほど重大な結果を招く可能性があったか、という点が大きな判断基準になりやすいです。実際に結果が生じていなくても、極めて重大な結果を招き得る暴行があった場合、その悪質さは重く判断されるでしょう。

暴行における逮捕の方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

暴行で逮捕されたときの流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

暴行で逮捕されたときのデメリット

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

暴行で逮捕されないようにする方法

①当事者間での解決を目指す

暴行事件の場合,当事者間で事件が解決していれば,その後に逮捕される可能性は現実的になくなります。暴行事件の捜査は,ほとんどが被害者の被害申告をきっかけに開始されるものであって,被害者が解決したと考える以上,捜査の始まるきっかけが生じないためです。
また,捜査の開始後であっても,被害者が解決したとの意向であれば,その後に逮捕の必要があるとは判断されず,逮捕には至らないことが通常です。

そのため,逮捕の回避を目指す場合には,まず当事者間での解決が目指せないか,検討することが有力でしょう。直接連絡を取り合う方法があったり,間に入ってくれる第三者がいたりすれば,直接の協議も一案です。一方,連絡を取りあう手段がない場合には,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にする形で解決を試みることが望ましいでしょう。

暴行事件で逮捕を防ぎたい場合、当事者間で解決ができるのであれば最優先に目指すのが適切です。被害者のいる事件では、被害者の意向が非常に大きく反映されるためです。

②現行犯逮捕を防ぐ

逮捕の種類が複数ある中で,最も容易に行うことができるのは現行犯逮捕です。現行犯逮捕は,裁判所から逮捕状の発付を受けることなく実行できる逮捕手続であり,かつ捜査機関に限らず誰でもできることから,そのハードルは非常に低くなりやすい傾向にあります。

裏を返せば,逮捕を避けるためには,最も容易に行われ得る現行犯逮捕を防ぐことが重要な手段になります。特に,暴行事件を含むトラブルが現場で警察沙汰になったような場合,周囲の私人が現行犯逮捕し,そのまま警察に引き渡すことで法的に逮捕が正当化されてしまう場合が非常に多いため,そのような流れを一度断ち切り,現行犯逮捕が成立しない状態を作り出すことが有力でしょう。

具体的な手段としては,一度その場を離れて再度連絡を取り合うことにする,といったように,事件と逮捕が時間的・場所的に近い状態とならないように意識することが有力です。

③自首を検討する

現に捜査されていないため当事者間での解決手段がなく,現行犯逮捕される状態にもないという場合,積極的な逮捕回避策には限界がありますが,その際,逮捕を防ぐ手段として有力になってくるのが自首です。

自首は,自分に対する捜査が行われる前に,積極的に自身の犯罪行為を申告することで,自分に対する捜査や処罰を求める行動です。そして,自分から積極的に犯罪の情報を示していくことから,逃亡や罪証隠滅の可能性は低く,逮捕の回避につながりやすいという利点があります。

暴行事件が捜査されているかどうか分からず,逮捕の不安を払拭する手段がない場合には,自首を検討することをお勧めします。

自首は、逮捕を防ぐために有効な手段の一つですが、自ら捜査を招くというリスクもあります。
暴行事件の場合、被害者側が特に動いていない限り捜査されていない可能性が高いため、自首のリスクを踏まえた検討が望ましいでしょう。

暴行で警察に呼び出された場合の対処法

① 基本的な方針

暴行事件で呼び出しを受けた場合,まずは呼び出しに応じることを前提に対応するようにしましょう。内容や言い分によっては,呼び出しに応じることが割に合わない,または納得できないといった思いになることは十分に考えられると思います。しかしながら,呼び出し自体に一切応じないとのスタンスは,かえって自分に不利益をもたらす可能性があって適切とは言えません。

言い分がある場合には,呼び出しに応じた上で,出頭した際に述べることが最も適切です。もっとも,呼び出しに応じるタイミングを捜査機関の希望に合わせる必要まではありません。自身のスケジュールと調整できる範囲内で,まずは呼び出しに応じることを方針の第一歩としましょう。

ポイント
呼び出し自体には応じる方が賢明
言い分は出頭した際に述べる

② 内容に反論がない場合

疑いの内容に間違いがなく,反論すべき内容がない場合には,まず反省の意思を前面に示し,捜査協力のスタンスを明確にすることが適切です。

内容面に争いがないケースでは,反省状況等の情状面がその後の進行や結果を大きく左右します。その中でも,呼び出しを受けた段階で行うことのできる情状面の行動が,反省と捜査協力の意思表明です。呼び出しを受けたその時から反省の意思を示すとともに,取り調べなどの捜査を全面的に受け入れる姿勢を見せるのが,初期段階で可能な最善の対応と言えるでしょう。

また,呼び出しに応じて出頭した際には,事実をありのままに述べ,捜査機関の把握している事実関係とズレのない話を尽くすことも重要です。捜査機関の認識と整合する内容の話を一貫できれば,捜査が円滑に進行する上,反省の意思を表明する手段の一つにすることもできるでしょう。

ポイント
反省の意思と捜査協力のスタンスを示す
事実をありのまま述べ,捜査機関の認識と整合する話を尽くす

③ していない行為を疑われている場合

自分がしていない行為を疑われているケースでは,まずその事実を明確に表明することを優先しましょう。刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,その後の捜査が大きく変わるため,本件は否認事件である,という事実を正しく把握してもらうことが第一歩となります。

認め事件とは異なり,否認事件の場合には,被疑者の自白なしで犯罪の立証をしなければなりません。被疑者の自白がある認め事件では,自白を裏付ける証拠や自白と整合する証拠が重要な位置づけとなりますが,否認事件ではそもそも自白がないため,自白以外の証拠のみで犯罪を立証するほかないのです。
また,被疑者が「実際はこうであった」と別の事実を主張している場合,被疑者の主張が真実でないとの確信に至らなければ,犯罪の立証には至りません。否認事件では,証拠の量及び質の両面で,犯罪の立証が容易でないと言えます。

してもいない行為を疑われて呼び出しを受けた場合には,否認の意思をはっきりさせることで,「本件の立証は容易ではない」と捜査機関に認識してもらうことが適切でしょう。

ポイント
否認事件は,犯罪の立証が容易でない
否認事件であることを早期に把握してもらうことが適切

④ 経緯に言い分がある場合

事件の内容そのものには争いがないが,事件の経緯に言い分がある,という場合,その言い分を伝える時期や方法・内容は慎重に検討することが望ましいでしょう。

経緯に言い分がある事件は,認め事件か否認事件かで言えば認め事件に該当します。認め事件である以上は,反省状況が重要なポイントとなることには変わりありません。
一方で,経緯に関する言い分は,表現を誤ると「反省がない」との評価につながってしまう恐れがあります。自分にとって有益と思う主張をしたにもかかわらず,その結果が自分にとって不利益となってしまうのは不合理と言わざるを得ないでしょう。

経緯に言い分がある事件で呼び出しを受けた場合には,まず認め事件であることを前提に反省の意思を示す方針を優先すべきです。経緯を伝える機会や方法はそれ以降にも複数あるため,呼び出しを受けた段階で強引に伝えようとする必要はありません。

ポイント
経緯の言い分を述べようとするあまり,反省がないとの評価を受けるのは不合理
まずは事件を認め,反省の意思を表明することを優先すべき

暴行の呼び出し後に逮捕されないための注意点

① 冷静な対処を心掛ける

暴行事件の場合,まずはとにかく冷静な対応に努めることが非常に大切な考え方となります。主張の内容が全く同じであっても,冷静に対処しているか感情的になってしまっているかによって,結果に大きな差が生じてしまう可能性は低くありません。

暴行事件では,互いに相手への悪感情を持っていることが一般的であるため,捜査機関が相手に肩入れをしているような態度を見せれば,それだけで冷静さを失ってしまうケースが散見されます。しかし,冷静さを失うことは損しか生まないと言い切ってもよいでしょう。
常に冷静な対処を心掛けることで,円滑な進行を促すことが賢明です。

② 出頭拒否のリスク

呼び出しに応じて出頭するかどうかは,強制ではなく任意です。そのため,出頭を求められても拒否することが可能であり,出頭拒否自体に法的な問題はありません。

もっとも,出頭拒否は捜査機関への協力を一切しないという強いメッセージとなるため,そのやり方を誤ってしまうと大きなリスクが付きまとうことになります。中でも,出頭拒否によって逮捕を招いてしまうことは,最も避けるべき事態と言えるでしょう。

出頭拒否に対して直ちに逮捕することは法的に問題がありますが,出頭拒否を判断材料の一つにして,総合的な判断の結果逮捕する,ということは違法とは言い難いものです。そのため,出頭拒否を選択する場合には,それが逮捕のリスクをどれほど抱える対応なのか,という点を慎重に検討することをお勧めします。

呼び出しに対する出頭の義務がないことはその通りです。しかし、実際に出頭を拒むのが有益かどうかは別の検討が必要な問題です。
呼び出しを受けた場合に応じるかどうかは、専門知識を踏まえた比較検討が必要になるため、弁護士への相談も含め慎重に検討しましょう。

③ 弁護士への依頼時期

弁護士への依頼を検討する場合,その時期は早ければ早いほど有益であることが一般的です。どこかのタイミングまで弁護士への依頼を保留する方が効果的である,といった事情は通常ありません。
特に,被害者との示談を目指す事件では,被害者の感情面に配慮するためにも,できるだけ早期に行動に移し,被害者側にも極力早く謝罪の意思を知ってもらうことが有益です。

また,事件によっては,検察庁での呼び出しを受けた際に,担当検事から弁護士への依頼を勧められることもあり得ます。暴行事件は,当事者間で解決する方が望ましいトラブルと理解されやすいため,弁護士に依頼して当事者間での解決を目指すべきでないか,との助言もなされ得るのです。
その場合は,当事者間での解決が刑事処分の軽減につながる,とのメッセージでもあるため,できるだけ早期に,積極的に弁護士への依頼を検討することをお勧めします。

暴行で逮捕されると実名報道されるのか

暴行罪で逮捕された場合、必ずしもすべてのケースで実名報道されるわけではありません。

報道されるかどうかは、事件の重大性、社会的関心の高さ、そして警察による発表の有無という3つの要素が大きく関係しています。

報道を避けるために弁護士が警察へ働きかけるポイント

警察がメディアに対して情報を公開することを「広報」と呼びますが、すべての逮捕案件を広報するわけではありません。

一般的に、凶器を使用したものや被害者が重傷を負ったもの、公務員や著名人による犯行などが実名報道の対象となりやすい傾向にあります。

報道のタイミングは、通常は逮捕直後から数日以内に集中するため、この極めて短い期間にどれだけ迅速な対応ができるかが運命を分けます。

前科がつくと仕事や就職にどう響くのか

一度インターネット上で実名が報じられると、情報の拡散を完全に止めることは困難です。

勤務先に知られれば、たとえ後に不起訴となったとしても、社内での評価低下や退職勧奨につながる恐れがあります。

また、家族や子供が学校や近隣で誹謗中傷を受けるなど、取り返しのつかない二次被害が生じるリスクも否定できません。

これらの社会的制裁を避けるためには、法的手段による「情報のコントロール」が必要です。

暴行の逮捕に関するよくある質問

① 暴行事件では逮捕を覚悟すべきか

暴行があっても、決して逮捕が想定される事件ばかりではありません。
暴行事件の逮捕は、行為の悪質性や被害の程度、被害者との関係、逃亡・証拠隠滅のおそれなどを総合的に考慮して判断されます。
たとえば、軽い接触や一時的な口論の延長など、社会的に軽微なケースでは、任意の事情聴取にとどまり、逮捕されないことも多いです。

② 被害者が「許す」と言えば逮捕されないか

被害者の意向は考慮されますが、それだけで逮捕が避けられるわけではありません。
被害者が示談や謝罪を受け入れている場合、逮捕や勾留の必要性が低いと判断されることはあります。
しかし、暴行の態様が悪質である場合や、複数回にわたる暴行、通報によって現行犯逮捕された場合などでは、被害者が許していても逮捕される可能性もあり得ます。

③ 逮捕された場合はどれくらい身柄が拘束されるか

原則として、警察による逮捕後は最大72時間(3日間)身柄が拘束されます。
その後、検察官が勾留を請求し、裁判官が認めると、さらに最大10日間、延長されると最長20日間の勾留が可能です。
ただし、弁護士が早期に介入し、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを主張することで、勾留を回避できる場合もあります。

④ 暴行事件は示談をすれば不起訴になるか

被害者との示談成立は、不起訴処分を得るうえで非常に重要な要素です。
特に初犯で被害が軽微な場合、真摯な謝罪と示談が成立すれば、検察官が起訴を見送る(不起訴の判断をする)可能性が非常に高くなります。
一方で、再犯や計画的な暴行、社会的影響の大きい事件では、示談があっても起訴されることがあります。

⑤ 暴行していない場合でも弁護士は必要か

暴行を否認している場合こそ、弁護士の関与が重要です。
防犯カメラ映像や証言など、事実関係の確認には専門的な視点が必要であり、誤認逮捕や不当な供述調書を防ぐためにも、弁護士が早期に介入して捜査対応をサポートすることが望まれます。

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暴行事件で不起訴獲得の可能性や実現方法,示談や自首の影響などを詳細解説

このページでは,暴行事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。
示談や自首の方法やメリットについても紹介しているので、不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

暴行事件で不起訴を目指す方法

①当事者間での解決を試みる

暴行事件は,当事者間で解決している場合,不起訴となることが通常です。刑事事件では,様々な事情を踏まえて起訴不起訴の判断がなされますが,暴行事件の場合には,その中でも当事者間で解決されたか,という点が非常に重大視されやすい傾向にあります。当事者間で解決していれば不起訴,していなければ起訴,という判断になる事件も全く珍しくはありません。

そのため,暴行事件で不起訴を目指す場合には,まず当事者間での解決を試みることが最も有力な手段と言えます。具体的には,被害者との間で示談を目指すことが一般的ですが,示談が成立し,被害者が不起訴を希望するとの判断に至れば,不起訴が見込まれやすくなるでしょう。

また,警察などによる捜査前の段階では,当事者間で解決することにより,捜査が開始されない形でトラブルを収束することも可能です。この場合,起訴・不起訴という判断自体がなされないため,厳密には不起訴ではありませんが,捜査への対応を要しない点では不起訴処分よりも有益な早期解決と言えるでしょう。

ポイント
当事者間で解決していれば不起訴処分となるのが通常
捜査開始前に解決できれば,捜査自体が開始されない

②経緯を踏まえた判断を促す

暴行事件の中には,暴行行為そのものよりも暴行に至った経緯の方を重大視するべきケースも少なくありません。暴行事件は,当事者間の感情的な対立が原因となりやすいですが,感情的な対立を作ったのが被害者側である場合,その点を考慮しないで起訴するのは不合理と言わざるを得ない事件も多く見られます。

そのため,事件の背景に酌むべき経緯があり,その経緯を踏まえて不起訴の判断を求める,という動きは,不起訴を目指す有力な手段の一つと言えるでしょう。
もっとも,どのような経緯があれば不起訴とすべき事情と言えるのかは,具体的な経緯の内容や,暴行行為の内容等によって様々です。闇雲に経緯を主張することは逆効果になりかねないため,経緯を踏まえた判断を求めたいという場合は,その主張が合理的であるか,必ず弁護士の見解を仰ぐようにしましょう。可能であれば,弁護士に依頼し,弁護士を通じて経緯を主張してもらうことが適切です。

ポイント
経緯や暴行行為の内容によっては,不起訴の判断を促すべき場合もある
個別の事件で経緯を主張すべきかは,弁護士の見解を仰ぐことが適切

③行為や結果の程度が限定的である場合

他人の身体に危害を加える事件としては,暴行事件と傷害事件があります。この点,暴行と傷害の区別は,傷害結果(怪我など)が発生していなければ暴行,傷害結果が発生していれば傷害,という基準で行われます。
そうすると,暴行事件は,他人に暴行を加えた事件の中では,比較的軽微な事件類型と言うことができます。暴行行為が傷害結果を引き起こさなかった,ということが,暴行事件の前提となっているためです。

そして,暴行事件にも様々な内容のものがあり,ケースによっては暴行の程度を踏まえて不起訴処分を求めるべき場合もあり得ます。危険な行為をしたものの結果的に傷害結果が生じなかっただけなのか,暴行行為の危険性自体がほとんどなかったのか,という点は,起訴不起訴の判断に際して非常に大きな事情となります。

そのため,暴行行為や結果を踏まえ,事件の程度があまりに限定的であると言える場合には,その点を踏まえて不起訴処分とすることを求める動きが有力となるでしょう。もっとも,個別具体的な判断は,法的な知識や経験がなければ困難であるため,弁護士の専門的な見解を仰いだ上で検討することをお勧めします。

ポイント
暴行事件は,暴行したものの傷害結果が生じなかったという事件類型
暴行行為の危険性がない場合は,不起訴処分を求める動きが有力

暴行事件で不起訴になる可能性

暴行事件は,適切な事後対応を行うことで,ケースによっては不起訴となる可能性が十分に考えられる事件類型です。もっとも,暴行をしてしまったことが明らかである場合など,漫然と捜査に応じているだけでは不起訴が期待できないケースも少なくありません。
そのため,不起訴を目指すために有力な事後対応を具体的に理解しておくことが重要です。

不起訴を目指すための事後対応

【1.被害者側の許しを獲得すること】

認め事件の場合,被害者が加害者を許しているかどうか,という点が起訴不起訴の判断に極めて大きな影響を及ぼします。被害者が許しているとの意思表明さえあれば,それだけで不起訴処分にしてもらえるというケースも数多く見られるところです。

そのため,暴行行為をしてしまった事実が間違いなく,いわゆる情状に訴える必要がある場合には,まず何より被害者側の許しを獲得することが重要な事後対応となるでしょう。具体的には,被害者との示談を目指すことが考えられますが,特に当事者間で連絡を取り合うことができる場合を除いては,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にして交渉を試みる手段が有力です。

【2.反省の意思を具体的な行動に移すこと】

暴行事件で不起訴処分とするかどうか,という判断に際しては,被疑者(加害者)がどれだけ反省しているか,という事情も重要な判断材料になります。もっとも,反省を口にしていればよいかと言えば,そう簡単な話ではありません。暴行行為を認めているのであれば,反省していることは当然であり,反省の意思を示してもマイナス評価を防ぐ程度の意味しかないためです。

反省を不起訴処分に結び付けたい場合には,単に反省の意思を表明するだけではなく,その意思を具体的な行動に移すことが望ましいでしょう。行動に移す場合の具体的な手段はケースによりますが,第三者に迷惑をかけてしまっていればその第三者への謝罪や賠償を試みる,お酒が原因になっていれば断酒したり酒の危険性を勉強したりするなど,事件の内容に応じた行動を検討することが有力でしょう。

【3.否認事件で主張の根拠を明確にすること】

否認の暴行事件では,当事者双方の言い分が大きく食い違い,どちらの言い分が真実に近いのか判断の困難な場合も少なくありません。この点,当事者間で言い分が大きく場合には,言い分の信用性を基準にどちらが正しいと言えるか判断することが通常です。

言い分の信用性を判断するための要素は数多くありますが,中でも根拠のある言い分であるかどうかは,非常に重要な判断要素となります。物的証拠と一致する言い分である,他の関係者の話と一致する言い分であるなど,証拠と整合していることが分かれば,言い分の信用性は劇的に高くなるでしょう。

そのため,否認事件の場合には,自身の主張の根拠を明確にし,その根拠を捜査機関に把握してもらう動きが有力です。はっきりとした言い分や根拠がある場合には,意図的に隠しておくようなことはせず,積極的に情報提供をして判断に反映してもらう方針が適切でしょう。

不起訴の意味や効果

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

暴行事件で示談を目指す場合のポイント

暴行事件における示談のメリット

暴行事件で示談をすることには,以下のように多数のメリットがあります。

①前科の回避

暴行事件では,犯罪事実の存在が明らかであれば,被害者が特に許している場合を除いて起訴されることが一般的です。起訴された場合には,刑罰を受けることになるため,前科(刑罰を受けた経歴)が付いてしまいます。

この点,起訴を防いで前科が付かないようにするための最も有力な手段が,示談です。示談が成立する場合,被害者が加害者を許すという意思を表明することになるため,被害者が許した事実を踏まえて不起訴になる可能性が非常に高くなります。

被害者が許すのは,基本的に示談が成立した場合のみです。暴行事件で捜査が行われるのは,被害者が捜査や処罰を求めているからであるため,何もしなければ被害者は許さないままとなってしまいます。
示談は,被害者の許しを通じて前科を防ぐ唯一の手段として,大きなメリットのある行動と言えるでしょう。

ポイント
示談のない暴行事件は起訴されるのが一般的
示談をすれば,不起訴の可能性が非常に高くなる

②逮捕の回避

暴行事件は,被害者の身体に危害の生じる恐れが高い類型であるため,被害者を危険から守るために加害者を逮捕することが多いものでもあります。当事者間の感情的なトラブルであることも多いことから,事件の大小にかかわらず加害者を逮捕して物理的に引き離す,という取り扱いになることも少なくありません。
そして,逮捕をされると,同居家族や仕事の関係者に具体的な影響が生じかねない上,刑事施設に収容されることで重大な精神的苦痛を強いられることになります。逮捕のデメリットは極めて大きなものです。

この点,示談の成立した暴行事件は,その後に逮捕されることがほとんどないということができるでしょう。示談が成立している以上,その後に逮捕をして被害者を加害者から守る必要がないためです。

逮捕を防ぎ,円滑に事件を解決するための手段として,示談のメリットは非常に大きいと考えてよいでしょう。

ポイント
暴行事件は逮捕される場合が多い
示談が成立すれば,逮捕の必要はほとんどなくなる

③早期釈放

暴行事件で既に逮捕や勾留という身柄拘束をされている場合,早期釈放の手段として示談は非常に有力です。

逮捕をされた場合,まず最長72時間拘束された後,10日間の勾留,さらには最長10日間の勾留延長と,20日を超える期間の身柄拘束を強いられる可能性も否定できません。勾留延長までがすべて行われてしまう場合,加害者の生活はそれまでとは一変しているでしょう。
一方,少しでも早期に釈放されれば,それだけ生活への悪影響も小さく済むことが多いはずです。

この点,逮捕の後に示談が成立した場合,勾留をするか,さらには勾留延長をするか,という局面において,釈放の判断を促す非常に大きな材料になります。逮捕後に勾留されず釈放された場合は,最長72時間の身柄拘束で済むことになるため,生活への影響も最小限に抑えられるでしょう。

逮捕から起訴までの流れ

④被害者との解決

暴行事件は,犯罪であるという側面のみでなく,当事者間の法律問題(民事事件)の側面も持つトラブルです。具体的には,被害者が加害者に対して,精神的苦痛への慰謝料などを金銭で支払うよう請求することが可能とされます。
そして,この金銭請求の権利は,加害者が刑罰を受けても影響されません。そのため,加害者としては,刑罰を受けた上でさらに被害者から金銭を請求される可能性もあり得ます。

この点,示談が成立した場合,被害者との法律問題も同時に解決することとなります。そのため,示談成立後に被害者から金銭を請求される可能性はなくなり,当事者間でのトラブル解決にもつながるでしょう。

ポイント
被害者から金銭を請求される可能性がある
示談が成立すれば,被害者からの金銭請求もなくなる

暴行事件で示談は必要か

暴行事件の場合,疑われている内容に間違いがなければ,処分軽減のためには示談が必要と考えるべきです。
事件の内容が間違いない場合(認め事件の場合),処分の重さは被害者の意向を反映する形で決められます。被害者が処罰を望めば処罰が科されやすく,逆に被害者が処罰しないことを望めば処罰が科されづらくなるのです。

そのため,被害者に処罰を望まない意思を表明してもらうために,その唯一の手段である示談を行う必要がある,ということになります。

一方,疑われている内容が事実でない,という場合(否認事件の場合)には,示談を行うかどうかに慎重な判断が望ましいでしょう。

示談の基本的な内容は,被害者への謝罪と賠償です。これを受けた被害者が加害者を許すことで,示談が刑事処分の軽減につながるというわけです。
そのため,被害者への謝罪と賠償を行うべきでない場合,謝罪と賠償を内容とする示談を行うのは不合理です。最悪の場合,疑いが事実でない,という主張の信用性に悪影響を及ぼす可能性もあります。疑いが事実でないのに被害者への謝罪と賠償をするのは矛盾するからですね。

ただし,否認事件であっても,解決を急ぐ目的で示談を行うことはあり得ます。その場合は,示談の内容に配慮する必要があるため,必ず専門家の意見を仰ぐようにしましょう。

ポイント
認め事件では示談が必要
否認事件では示談するか慎重な判断をすべき

暴行事件で示談をする方法

暴行事件における示談は,捜査機関(警察や検察)から被害者に連絡を入れてもらう方法で試みることが一般的です。捜査機関担当者が被害者に示談への意向を確認し,示談交渉を了承する場合には連絡先の交換に至る,という流れが通常です。

しかし,捜査機関がこのような取り扱いをするのは,加害者が弁護士を通じて示談を試みる場合に限られます。弁護士を間に挟まない限り,示談交渉を開始することはできません。
暴行事件の場合,当事者間に大きな感情的対立の生じていることが多いため,捜査機関は当事者を直接引き合わせることはできないと考えます。そのため,弁護士を窓口にすることを条件に,示談交渉を認めるという運用をしているのです。

弁護士が示談交渉を試みる場合の主な流れは,以下の通りです。

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

示談交渉の流れ

暴行事件の示談金相場

暴行事件の示談金は,概ね10~30万円ほどが目安になりやすいでしょう。
暴行事件は,被害者がケガをしていないことが前提であるため,被害者がケガをしている傷害事件などと比べて,示談金は低額になる傾向があります。

個別の示談金は当事者間の協議で決定しますが,示談金額に影響する事情としては以下のような点が挙げられます。

示談金に影響する事情

1.暴行の経緯
→被害者に落ち度がなければ増額要因に,被害者にも落ち度があれば減額要因になる

2.暴行の内容
→危険性の高い行為であれば増額要因に,けがをする可能性のない行為であれば減額要因になる

3.ケガのなかった理由
→被害者が回避した結果であれば増額要因に,加害者の行為が原因であれば減額要因になる

暴行事件は自首するメリットがあるか

暴行事件で自首をするべき場合

①現場から逃走してしまった場合

暴行事件が現行犯で問題となった際に,現場から逃亡する方法でその場を逃れた場合には,自首の検討が有力な状況と言えます。

現場から逃走した場合には,その後に被害者が警察に被害申告する可能性が非常に高くなります。そして,被害申告を受けた警察としては,加害者が現場から逃走してしまったという事実を踏まえ,再び逃亡される危険を防ぐために,加害者を特定次第逮捕することが有力な選択肢となります。
そのため,逮捕を防ぐためには,逃亡の可能性がない,ということを捜査機関に理解してもらう必要があり,逃亡しないとのメッセージを明確に発信する具体的な手段が自首です。

逆に,現場から逃走してしまった状況下では,自首以外の手段で逮捕を防ぐ積極的な動きを取ることは難しい場合が多数です。このケースでは,自首の効果が特に高いということができるでしょう。

ポイント
加害者が現場から逃走した場合,捜査機関にとって逮捕が有力な選択肢になる
逮捕の必要がないことを理解してもらうには,自首が有力な行動

②相手と音信不通になった場合

暴行事件の場合,当事者間で円満な解決ができれば,自首までは必要のないことが通常です。自首の主な目的は,逮捕や刑罰を回避する点にありますが,当事者間で解決ができた場合にはそれのみで逮捕や刑罰が防げることが一般的であるため,重ねて自首を行う必要まではないと言えます。
そのため,当事者間が元々知人などの間柄であったり,共通の知人がいて橋渡し役になってくれたりと,当事者間の解決ができる状況にある場合は,まず示談などの円満な解決を目指すことが適切でしょう。

一方,当事者間で円満解決する手段がない場合には,自首が有力な行動になります。特に,ある時期までは連絡が取り合えていたにもかかわらず,急に音信不通になってしまった,という場合には,相手が円満な解決を諦めて捜査機関に捜査を求める方針を取ることとした可能性が高い状況であるため,捜査が行われる前に先手を打って自首することで,不利益を最小限に抑える方針が有力と言えるでしょう。

ポイント
当事者間で解決ができれば,自首までは必要のないことが通常
相手と音信不通になった場合,当事者間での解決が期待できないため自首が有力

③継続的なトラブルである場合

当事者間に継続的なトラブルが生じており,その一部が暴行事件という形で現れたという場合,警察の捜査に際しては,トラブルの深刻化を防ぐための慎重な判断が必要になります。
特に,暴行事件の発生までは互いに暴力を振るうまでは至っていなかった,という場合,暴行事件を皮切りに互いの暴力的行為がエスカレートしてしまう可能性が懸念されるため,逮捕の必要性が高い,との評価につながりやすい傾向にあります。

そのため,当事者間のトラブルが継続的にある場合には,暴行事件を過小評価することなく,将来の捜査に備えた自首の検討が有力です。
また,自首をした場合には,その後にトラブルが起きないことも非常に重要となります。被害者の立場になることは避けられませんが,自分が加害者と評価されかねないようなトラブルは決して引き起こさないように注意しましょう。

ポイント
暴行事件を皮切りにトラブルがエスカレートすると懸念されやすい
自首後にはトラブルを再発させないことも重要

暴行事件の自首は弁護士に依頼すべきか

暴行事件の自首を検討する場合には,必ず弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら進めることを強くお勧めします。また,実際に自首を行う場合にも,弁護士に依頼の上で,弁護士が主導する形で試みることが有益でしょう。

弁護士への依頼には,以下のようなメリットが見込まれます。

①犯罪に当たるかが判断できる

自首は,当然ながら犯罪行為をしてしまった際に行うべきものです。犯罪行為をしていないにもかかわらず自首をしようとすれば,その動き自体が無駄となるのみならず,より悪質な別の犯罪を隠そうとしているのではないか,などという疑いを持たれるきっかけにもなりかねません。
そのため,自首を検討する際には,自分の行為が犯罪に当たるかどうか,という点の正確な理解が必要不可欠と言えます。

この点,弁護士に依頼することで,自分の不安視している行動が犯罪に当たるか,弁護士に法的な判断をしてもらうことが可能です。特に,暴行罪は対象となる行為の幅が広く,犯罪に該当するかどうかの判断が容易でないものも多いため,検討の初期段階で法的な整理をしておくことは非常に有益でしょう。

②逮捕が回避しやすくなる

自首の最大の目的の一つが,逮捕の回避です。自首をしなければ逮捕される恐れがある場合,ケースや状況によっては自首が唯一の逮捕回避策となることも少なくありません。そのため,自首を行うのであれば,逮捕の回避につながる形で行うことが非常に重要となります。
しかしながら,自首のやり方を誤ってしまうと,せっかく自首をしたにもかかわらず逮捕を防ぐ効果が十分に発揮されない結果となる恐れもあり得ます。大きなリスクを背負った行為をする以上,その方法は万全にするのが適切です。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕回避の効果を最大限に高めるための進め方や対応の仕方を知ることができ,自首による逮捕回避がより見込みやすくなります。また,弁護士が捜査機関と協議を試みるなど,弁護士が別途逮捕を防ぐための弁護活動をしてくれるため,相乗効果も期待できるでしょう。

③自首後の弁護活動が迅速にできる

自首を行った後は,捜査が行われ,最終的な刑事処分を受けるまでの手続が進むことになります。そのため,自首をするのであれば,自首後の手続にも無関心でいるわけにはいきません。

この点,自首後の弁護活動も行ってもらう内容で弁護士に依頼すれば,自首をした後速やかに,必要な弁護活動を開始してもらうことができます。暴行事件の場合,被害者への対応など迅速に行うべき弁護活動も多いため,速やかに動き出せることのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

④早期釈放を目指すことができる

捜査機関の判断によっては,逮捕を回避できない場合も考えられますが,暴行事件の場合には,ケースによって逮捕後の早期釈放が十分に期待できる可能性も低くはありません。もっとも,積極的に法律上の不服申立てを行う必要があるなど,弁護士がいなければ早期釈放を目指す行動自体ができない恐れもあり得ます。

この点,弁護士に依頼しておくことで,万一逮捕されてしまった場合でも早期釈放を目指すための動きを尽くしてもらうことが可能です。逮捕されたケースであっても,最短で釈放してもらうことができれば,日常生活への悪影響は最小限に抑えられるでしょう。

暴行事件で自首をする場合の注意点

①早期に行う必要がある場合

自首は,捜査機関が「犯罪事実」と「犯人」の両方又は一方を把握していない場合にのみ成立する手続です。捜査機関にとって,犯罪事実も犯人も分かっている状況だと,自分から積極的に出頭しても自首と評価してもらえる可能性はありません。

暴行事件の場合,当事者同士が知り合いであるケースも少なくありませんが,そのように相手の個人情報を知っている間柄だと,捜査機関による「犯人」の特定が短期間で可能になります。極論すれば,被害者が捜査機関に被害申告をしたと同時に,犯人が誰であるかも分かることになるでしょう。

そうすると,暴行事件の自首は,被害者が警察等に相談するより前に,早期に行う必要がある場合も少なくない点に注意が必要です。自首の決断は容易ではありませんが,見えないタイムリミットが迫っている可能性にも気を付けておくことが望ましいと言えます。

②自首後に示談を試みるべき場合

自首をした場合,その後に示談を試みるべき場合は少なくありません。基本的に,被害者が誰であるか明らかな場合には,自首後速やかに示談を試みるのが適切でしょう。

自首の目的は,最終的には刑事処分を少しでも軽くすることであるのが通常です。そして,暴行事件で刑事処分が軽くなる最大の要因は,認め事件であれば被害者との解決(示談)であることがほとんどです。そうすると,刑事処分を軽くするための手段として自首をしておきながら,更に効果が見込まれる示談を試みないというのは,合理的な動き方とは言い難いでしょう。

自首をした暴行事件では,基本的に示談を試みるべきものだ,という理解をしても間違いないと考えます。

③捜査の初期段階であること

自首は,あくまで捜査の初期段階であり,自首をきっかけとして刑事手続がスタートすることになります。被疑者本人にとっては,自首が非常に大きな分岐点であり,心理的負担の大きな行動であることも確かですが,手続全体との関係ではスタートラインを切ったばかりです。

そのため,自首をした場合には,その後に刑事手続が始まる初期段階であることに十分注意の上,自首に満足したり,自首後の対応を疎かにしたりすることのないよう,真摯な対応を続けるようにしましょう。自首の効果が十分に発揮されるかどうかは,その後の動き方にもかかっています。

暴行事件で不起訴を目指す場合の注意点

①被害者から接触を拒否される可能性

暴行事件で不起訴を目指す場合,被害者との間で解決を目指すことが非常に有力な手段となりますが,被害者と解決するには被害者の了承が不可欠です。加害者側が解決を試みたいと考えたとしても,被害者側に話し合いや解決の意思がなければ,当事者間で解決のための合意をすることは困難となってしまいます。

被害者に話し合いや解決の意思があるかどうかは,専ら被害者の感情的な判断にならざるを得ません。この点,暴行事件の場合だと,当事者間の感情的な対立が激しく,被害者がどうしても解決を目指す気持ちになれないというケースが多くなりがちです。
もちろん,当事者間で解決を目指す方が被害者にとってもメリットある話であることは多いですが,仮に不合理な判断だったとしても,被害者が話し合いたくないと思えば,話し合いは実現の可能性がありません。

暴行事件の場合,被害者の感情的な判断から接触を拒否される可能性に注意が必要となるでしょう。

②相手に怪我がないとの主張

暴行事件では,事件が軽微であることを不起訴とするべき事情の一つとして主張する場合があり得ます。もっとも,被害者に怪我がない,との主張は,必ずしも奏功しない可能性に注意が必要です。

そもそも,暴行事件は,暴行をしたものの相手が怪我などをしなかった場合に成立する犯罪です。暴行事件である以上,相手は怪我していないことが前提であるため,相手が怪我しなかったとの主張が有効であるケースは非常に限られやすいでしょう。
この点,暴行自体が絶対に怪我をする可能性のないほど軽い行為だった場合には,その点を不起訴処分を目指す材料として主張することがあってもよいでしょう。結果的に怪我をしなかったのみならず,怪我をする余地のない程度の行為だったということができれば,事件はそれだけ軽微であったとの評価につながる可能性が高いためです。

③共犯事件の場合

暴行事件は,一対一だけでなく,一対複数,複数対複数など,多数の人物が関わっているケースも少なくありません。そして,複数の加害者が存在する共犯事件の場合,共犯者間で処分の結果に差の生じる可能性も決して低くはありません。

この点,共犯事件における刑事処分は,それぞれの役割の大きさを基準に区別されることが一般的です。主犯格であったのか,従属的な立場であったのか,ほとんど傍観者のような存在だったのか,といった役割に関する事情が,処分の重さに直接重大な影響を及ぼすのです。
また,共犯事件では足の引っ張り合いに注意が必要となり得ます。自分の役割が小さいほど有益であるとの思いから,他の共犯者の役割を誇張して主張するなど,責任のなすりつけ合いにつながるケースも多数見られます。

共犯事件では,それぞれが果たした役割の大きさが不起訴処分の可否に大きな影響を及ぼすことを意識したいところです。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
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【暴行事件の弁護士選び】依頼時期や判断基準,事前準備などを弁護士が解説

このページでは,暴行事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

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暴行事件で弁護士を選ぶタイミング

①事件直後

暴行事件は,事件が発生した直後に当事者間で問題になることが非常に多い類型です。場合によっては,その場に警察を呼んだことをきっかけに,そのまま速やかに捜査が開始される流れとなることも相当数見られます。
そのため,暴行事件の対応は,事件が発生した直後から始まっており,事件直後から適切な対応を取っていくことが非常に望ましいと言えます。初期対応を誤ってしまうと,大きな不利益につながる可能性も決して低くはありません。

適切な初期対応を図り,暴行事件による不利益を最小限に抑えるため,事件直後から弁護士選びを行い,適切な弁護士のサポートを受けることをお勧めします。

ポイント
暴行事件は,発生直後から捜査が開始されやすい
初期対応を誤ると大きな不利益につながる可能性が高い

②逮捕直後

暴行事件の場合,現行犯などでトラブルが問題となった後,その場を収めるために加害者側を逮捕する形が取られることも多くあります。逮捕されたからといって,直ちに重い刑罰を受けるというわけではありませんが,釈放されるまでの間は社会生活に戻れず,生活に大きな支障が生じてしまうでしょう。

もっとも,暴行事件は,被害者が怪我をしていないため,比較的重くない事件類型と評価されることが多いものです。そして,事件が重くないほど早期釈放の可能性は高くなることが一般的であるため,比較的軽微な暴行事件であれば早期釈放を目指すことが有力な動きになりやすいと言えます。
暴行事件には,逮捕が少なくない一方で早期釈放を目指せるケースも少なくないという特徴があると言えるでしょう。

そのため,逮捕直後には,早期釈放を目指すため弁護士選びを早期に行うことが有益です。

ポイント
暴行事件では逮捕後の早期釈放を目指せる事件も少なくない

③呼び出しを受けたとき

逮捕をしない暴行事件の場合,被疑者に対する捜査の第一歩は呼び出しであることが通常です。電話などで警察署に呼び出しを行い,そこで話を聞くことが最初の動きになりやすいでしょう。
そして,捜査の入り口である呼び出しの段階でどのような対応をするかは,その後の捜査や最終的な処分に大きく影響する可能性があり得ます。呼び出しへの対応によってその後の捜査方法や捜査方針が変わりやすいため,呼び出しは第一歩であると同時に大きな分岐点とも言えるでしょう。

呼び出しを受け,その対応を検討する際には,専門的な判断が可能な弁護士を選び,適切な動きが取れるよう万全の体制を取ることをお勧めします。

ポイント
逮捕しない場合,呼び出しが捜査の第一歩
捜査対応によってその後の流れや最後の処分が変わり得る

④示談を試みるとき

暴行事件は,個別具体的な被害者が存在する事件類型です。そのため,暴行事件が捜査や刑罰の対象になるかどうかには,被害者の意向が大きく影響することになります。被害者が捜査を希望し,加害者への刑罰を求めるのであれば,事件内容を踏まえて不合理な取り扱いでない限りはその通りになる可能性が高いでしょう。一方,被害者との間で示談が成立し,被害者が捜査や刑罰を希望しないとの意向になった場合は,捜査や刑罰には至らないことが見込まれます。

そのため,暴行事件の解決には示談が非常に重要な役割を持ちますが,実際に示談をする場合には当事者間の直接のやり取りは望ましくありません。感情的な衝突が生じやすく,トラブルの原因にもなりかねないでしょう。
示談を試みるときには,暴行事件の示談に精通した弁護士に依頼し,弁護士を通じて示談成立を目指すことが有力です。

ポイント
暴行事件が捜査や刑罰の対象になるかは,被害者の意向による
捜査や刑罰を避けるための示談交渉は,弁護士を挟んで行うべき

暴行事件の弁護士を選ぶ基準

①速やかに動くことができるか

暴行事件の弁護活動は,スピードが要求される局面も少なくありません。特に,現行犯で逮捕され,早期釈放を目指すという場合には,動きが遅いほど釈放の時期も遅くなってしまうため,弁護活動のスピードが結果に直結します。
一方,逮捕されていない事件でも,被害者側との示談交渉を行うのであれば,やはり弁護士の速やかな対応は必須です。連絡に対する対応が早い場合と遅い場合を比較すれば,被害者目線でどちらの方が示談の合意をするであろうか,明らかでしょう。

もっとも,弁護士がいつどのような弁護活動を行うかは,基本的に個々の弁護士の判断に委ねられています。弁護士が速やかに動いてくれるか,という点は弁護士次第ということです。
そのため,弁護士を選ぶ際には,その弁護士が速やかな弁護活動を行ってくれるかどうか,という基準を設けることをお勧めします。具体的な判断方法としては,依頼後の段取りや弁護活動の進め方を具体的に聞いてみることが有益でしょう。

②解決実績があるか

弁護士の活動方針は,基本的に過去の先例や経験に基づいて組み立てられます。過去の同種事件における体験や反省を踏まえて,最良と思われる方針を決めることとなるわけです。
暴行事件の場合では,事件の内容と過去の同種事件を比較対照しながら,釈放の可能性や処分結果の可能性について大まかな見通しを立て,その見通しを前提に最も望ましい結果と実現方法を検討する,という手順が一般的です。

そうすると,弁護士が暴行事件の活動方針を決めるには,過去の経験を根拠に見通しを立てられなければなりません。見通しがあやふやであれば,目指す結果やその実現手段もあいまいにならざるを得ないためです。

そのため,弁護士に同種事件の解決実績があること,弁護の経験値があることは,重要な判断基準とすることをお勧めします。なお,刑事事件の場合,弁護士の年齢や弁護士歴が必ずしも経験値と一致しないことも多いため,注意するのが望ましいでしょう。

③弁護士と円滑に連絡が取れるか

弁護士への依頼後は,基本的に弁護士を通じてしか進捗や結果を確認することができません。弁護士が何をしてくれているか,弁護士の動きがどのような結果につながったかは,弁護士から案内を受けて知るほかないところです。
また,被害者側との示談交渉に際しては,弁護士を窓口とすることになるため,相手の要望やメッセージを知ることはもちろん,それ踏まえてどのような交渉を試みるべきか,という点も,弁護士に案内を受けながら判断するしかないでしょう。

そのため,弁護士との連絡が滞ってしまったり,弁護士が進捗の報告を怠ってしまったりすると,現状を把握する手段がなくなり,ケースによっては具体的な不利益につながってしまう可能性も否定できません。また,多くの場合,そのような問題は弁護士との信頼関係に悪影響を及ぼしやすく,弁護士がしっかり動いてくれているのか,という疑念が生まれてしまう場合もあり得ます。

弁護士との連絡が滞ってしまう恐れがある場合には,依頼の判断を慎重に行うことが賢明でしょう。

暴行事件で弁護士を選ぶ必要

①早期釈放のため

暴行事件では,逮捕されても早期釈放が期待できるケースが決して少なくはありません。特に,自身の行為を認めて深く反省している,身元がしっかりしていて逃亡の可能性がないなど,身柄拘束が必要ないと判断できる事情が揃っている場合には,より早期釈放の可能性が高くなるでしょう。

もっとも,現実に早期釈放を目指すアクションを取るには,弁護士に依頼する以外には現実的な手段はありません。釈放を目指すための法的な手続を取ることや,釈放の判断をする検察・裁判所に適切な働きかけをすることは,弁護士でなければ困難であるためです。

そのため,早期釈放を目指す手段として,弁護士を選ぶことが必要であり,速やかに弁護士選びを行うのが適切でしょう。

②不起訴処分のため

暴行事件は,一般的には実刑判決などの重大な刑罰の対象となることが少ない類型です。そして,もともと想定される刑罰が重くないということは,不起訴処分となる余地がそれだけ大きいということでもあります。

そのため,暴行事件では不起訴処分を目指すべき場合が少なくありませんが,実際に不起訴処分を目指すための方法や方針は,法的に検討する必要があり,そこには弁護士の存在が必要不可欠です。

不起訴処分を実現するための具体的な方法は,個別事件の内容や認否などによって大きく異なる可能性があります。弁護士を選び,弁護士の判断を仰ぐことが適切でしょう。

③前科前歴の悪影響を防ぐため

刑事事件の当事者となった場合に最も避けたいことの一つが,前科や前歴といったものが今後の生活に悪影響を及ぼすことです。逆に,事件が今後の生活に悪影響を及ぼさなければ,刑事事件に関する不安のほとんどは解消されたと言ってもよいでしょう。

この点,前科前歴の悪影響を防ぐには,そもそも前科とは何か,前歴とは何か,という正確な理解に始まり,どのような悪影響があり得るか,その悪影響が生じる可能性はどの程度か,悪影響を防ぐための具体的手段や効果はどうか,といった点を正しく判断する必要があります。これができるのは,基本的に弁護士以外にはいないでしょう。
そのため,事件が今後の生活に悪影響しないことを目指したい場合には,弁護士選びが重要な動きになります。

④適切な取り調べ対応のため

暴行事件の捜査が行われる場合,取調べを避けて通ることはできません。警察や検察で取り調べを行って事実を確認し,それを供述調書という書面の形にすることが,捜査の重要なステップとなります。そして,当事者双方(場合によっては他の関係者も含めて)から聴取した話を照らし合わせ,犯罪事実の有無や言い分の食い違いなどを確認することになるでしょう。

そのため,暴行事件への対処においては,取り調べにどのような対応をするか,という検討が不可欠と言えます。取調べ対応を適切に尽くすことができれば,望ましい結果に至るための重要な足がかりになる可能性が高いでしょう。
この点,具体的な取調べへの対応方法は,専門家である弁護士に判断してもらうことが最も適切です。専門性ある弁護士を選び,その弁護士から正しい取り調べ対応を案内してもらうことが,暴行事件の解決にとって重要な意味を持つこととなります。

暴行事件における弁護士選びの準備

①事件内容をまとめる

弁護士は,個別事件の内容を踏まえて弁護方針を立てたり,依頼者への案内を行ったりします。その判断はオーダーメイドであって,事件の内容が異なれば弁護方針も大きく異なる可能性が高くなるものです。
そうすると,弁護士が事件内容を正しく把握できているかどうかは,弁護士から適切な案内を受けられるか,ひいては適切な弁護士選びができるか,という点に大きな影響を及ぼす可能性が高いでしょう。

弁護士選びに際しては,弁護士に事件の内容を正しく把握してもらえるよう,出来事をまとめておくことが適切です。この場合,起きた出来事を時系列にして伝えられるようにしておくとより有益でしょう。
一方で,当事者双方の気持ちや感じたことなど,主観が入ってしまう点は,できる限り省略する方が合理的です。当事者間で言い分が食い違いやすい箇所であるため,弁護士の理解を誤らせる原因となる恐れがあります。

②弁護士選びの目的を決める

弁護士選びに際しては,弁護士に何を求めたいのか,その目的を明確に決めておくことをお勧めします。暴行事件の場合では,「逮捕されたが早期釈放して欲しい」「被害者と示談をして不起訴処分を目指したい」「心当たりのない疑いをかけられているため適切な対応をしたい」といったケースが考えられるでしょう。もちろん,目的は複数あっても問題ありません。

事前に目的を決めておくことで,弁護士から目的の内容を踏まえたピンポイントの案内を受けることが可能になります。弁護士からの説明を理解しやすくなり,目的意識を持って弁護士選びを行えるようになる点で,目的を決めておくことは非常に重要な準備と言えます。
また,弁護士に求める目的が明確であれば,仮にその目的の実現が難しいと分かった場合に,早期の方針転換が可能です。目的があいまいなまま進めてしまい,後になって実現困難と分かっても,そこからの方針転換は困難であることが少なくありません。

③弁護士選びの予算を決める

弁護士への依頼には,やむを得ず弁護士費用が発生します。弁護士費用には,主に「着手金」や「成功報酬」といったものがありますが,その金額や定め方は法律事務所によっても様々です。事務所間の費用水準を単純に比較すると,非常に大きな差がある場合も少なくないでしょう。
もちろん,安ければ良く高ければ悪い,というわけではありませんが,経済的負担がどこまで可能であるかは重要なポイントであるため,依頼する弁護士の費用を正しく把握することが重要です。

また,示談を試みる事件では,被害者へ支払う示談金の負担も生じます。示談をする場合,弁護士費用と示談金を合わせたものが全体の経済的負担となるため,示談金を踏まえた予算の検討が必要です。
できれば,弁護士への相談時に大まかな示談金の目安を確認し,その目安を若干上回る示談金を負担できる程度の予算を想定することが望ましいでしょう。

④早期の相談を試みる

弁護活動は,開始を遅くするメリットがありません。逆に,手続によっては,動き出しが遅かったためにできなくなってしまう弁護活動もあるため,早期であるに越したことはないでしょう。
この点,弁護活動が早期に開始できるかは,弁護士への相談が早期にできるか,という点と大きな関係にあります。実際に依頼するかは別として,早期に弁護士への相談を行ってみることにはほとんど不利益はないため,まず早期に相談を試みてみることをお勧めします。

暴行事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①土日祝日の対応

身柄事件の場合,手続のスケジュールによっては土日祝日に対応の必要が生じることもあります。身柄拘束には法律上の期間制限があり,この期間制限には土日祝日といった区別がないためです。
そのため,特に逮捕直後で早期釈放を目指したい場合には,必要な対応が土日祝日にならないか,土日祝日の対応が必要となった場合に弁護士の動きが可能か,といった点はあらかじめ確認しておくことが適切です。

もちろん,毎週の土日祝日に対応を求めることは現実的ではありませんが,逮捕直後の対応が不可欠なタイミングで柔軟に動けるかどうかは,弁護士にもよるため確認が望ましいでしょう。

②示談金の負担

示談を目指す暴行事件の場合,示談金の負担には注意が必要です。そして,示談金の負担額は,当事者のイメージよりも大きいことが少なくありません。

暴行事件では,当事者間に感情的な対立,衝突のあることが多く見られますが,示談は,その感情面に決着を付け,相手が納得する内容であることが必要です。そうでなければ,相手が示談に応じることはないためです。
そうすると,相手の怒りや不満といった感情を収めるのに見合った示談金が必要となりますが,どの程度の金額が見合っていると考えるかは当事者にもより,一般的には行ったことの重みと比べると大きめの水準にならざるを得ない場合が多いでしょう。

示談は,当事者双方が合意しなければ成立しないため,相手の希望した金額を支払う義務はありませんが,示談の成立を目指す場合には何らかの譲歩を想定することが必要となります。

③地理的な条件

暴行事件は,事件現場又は被害者の住居地の近辺にある警察署が主に対応します。一般的には,事件現場でトラブル化して問題になり,事件現場を管轄する警察が対応することとなるか,被害者が後日に最寄りの警察へ捜査を求め,その警察が対応することとなるかのいずれかでしょう。

この点,弁護活動の内容や方針によっては,事件現場や被害者の住居地からあまりに遠い法律事務所だと,弁護活動に限界が生じてしまう場合もあり得ます。決して遠方の法律事務所では対応ができないわけではないため,具体的な動き方を含めて弁護士と相談することが適切ですが,地理的な条件を問題意識の一つとしておくことは有益です。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

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【暴行事件の示談を知りたい人のために】示談金額の考え方や盛り込むべき示談条件などを詳細解説

このページでは,暴行事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。

【このページで分かること】

暴行事件における示談のメリット
暴行事件で示談は必要か
暴行事件で示談をする方法
暴行事件の示談金相場
暴行事件の示談内容・条項
暴行事件の示談で注意すべきこと
暴行事件の示談に必要な費用

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暴行事件における示談のメリット

暴行事件で示談をすることには,以下のように多数のメリットがあります。

①前科の回避

暴行事件では,犯罪事実の存在が明らかであれば,被害者が特に許している場合を除いて起訴されることが一般的です。起訴された場合には,刑罰を受けることになるため,前科(刑罰を受けた経歴)が付いてしまいます。

この点,起訴を防いで前科が付かないようにするための最も有力な手段が,示談です。示談が成立する場合,被害者が加害者を許すという意思を表明することになるため,被害者が許した事実を踏まえて不起訴になる可能性が非常に高くなります。

被害者が許すのは,基本的に示談が成立した場合のみです。暴行事件で捜査が行われるのは,被害者が捜査や処罰を求めているからであるため,何もしなければ被害者は許さないままとなってしまいます。
示談は,被害者の許しを通じて前科を防ぐ唯一の手段として,大きなメリットのある行動と言えるでしょう。

ポイント
示談のない暴行事件は起訴されるのが一般的
示談をすれば,不起訴の可能性が非常に高くなる

②逮捕の回避

暴行事件は,被害者の身体に危害の生じる恐れが高い類型であるため,被害者を危険から守るために加害者を逮捕することが多いものでもあります。当事者間の感情的なトラブルであることも多いことから,事件の大小にかかわらず加害者を逮捕して物理的に引き離す,という取り扱いになることも少なくありません。
そして,逮捕をされると,同居家族や仕事の関係者に具体的な影響が生じかねない上,刑事施設に収容されることで重大な精神的苦痛を強いられることになります。逮捕のデメリットは極めて大きなものです。

この点,示談の成立した暴行事件は,その後に逮捕されることがほとんどないということができるでしょう。示談が成立している以上,その後に逮捕をして被害者を加害者から守る必要がないためです。

逮捕を防ぎ,円滑に事件を解決するための手段として,示談のメリットは非常に大きいと考えてよいでしょう。

ポイント
暴行事件は逮捕される場合が多い
示談が成立すれば,逮捕の必要はほとんどなくなる

③早期釈放

暴行事件で既に逮捕や勾留という身柄拘束をされている場合,早期釈放の手段として示談は非常に有力です。

逮捕をされた場合,まず最長72時間拘束された後,10日間の勾留,さらには最長10日間の勾留延長と,20日を超える期間の身柄拘束を強いられる可能性も否定できません。勾留延長までがすべて行われてしまう場合,加害者の生活はそれまでとは一変しているでしょう。
一方,少しでも早期に釈放されれば,それだけ生活への悪影響も小さく済むことが多いはずです。

この点,逮捕の後に示談が成立した場合,勾留をするか,さらには勾留延長をするか,という局面において,釈放の判断を促す非常に大きな材料になります。逮捕後に勾留されず釈放された場合は,最長72時間の身柄拘束で済むことになるため,生活への影響も最小限に抑えられるでしょう。

逮捕から起訴までの流れ

④被害者との解決

暴行事件は,犯罪であるという側面のみでなく,当事者間の法律問題(民事事件)の側面も持つトラブルです。具体的には,被害者が加害者に対して,精神的苦痛への慰謝料などを金銭で支払うよう請求することが可能とされます。
そして,この金銭請求の権利は,加害者が刑罰を受けても影響されません。そのため,加害者としては,刑罰を受けた上でさらに被害者から金銭を請求される可能性もあり得ます。

この点,示談が成立した場合,被害者との法律問題も同時に解決することとなります。そのため,示談成立後に被害者から金銭を請求される可能性はなくなり,当事者間でのトラブル解決にもつながるでしょう。

ポイント
被害者から金銭を請求される可能性がある
示談が成立すれば,被害者からの金銭請求もなくなる

暴行事件で示談は必要か

暴行事件の場合,疑われている内容に間違いがなければ,処分軽減のためには示談が必要と考えるべきです。
事件の内容が間違いない場合(認め事件の場合),処分の重さは被害者の意向を反映する形で決められます。被害者が処罰を望めば処罰が科されやすく,逆に被害者が処罰しないことを望めば処罰が科されづらくなるのです。

そのため,被害者に処罰を望まない意思を表明してもらうために,その唯一の手段である示談を行う必要がある,ということになります。

一方,疑われている内容が事実でない,という場合(否認事件の場合)には,示談を行うかどうかに慎重な判断が望ましいでしょう。

示談の基本的な内容は,被害者への謝罪と賠償です。これを受けた被害者が加害者を許すことで,示談が刑事処分の軽減につながるというわけです。
そのため,被害者への謝罪と賠償を行うべきでない場合,謝罪と賠償を内容とする示談を行うのは不合理です。最悪の場合,疑いが事実でない,という主張の信用性に悪影響を及ぼす可能性もあります。疑いが事実でないのに被害者への謝罪と賠償をするのは矛盾するからですね。

ただし,否認事件であっても,解決を急ぐ目的で示談を行うことはあり得ます。その場合は,示談の内容に配慮する必要があるため,必ず専門家の意見を仰ぐようにしましょう。

ポイント
認め事件では示談が必要
否認事件では示談するか慎重な判断をすべき

暴行事件で示談をする方法

暴行事件における示談は,捜査機関(警察や検察)から被害者に連絡を入れてもらう方法で試みることが一般的です。捜査機関担当者が被害者に示談への意向を確認し,示談交渉を了承する場合には連絡先の交換に至る,という流れが通常です。

しかし,捜査機関がこのような取り扱いをするのは,加害者が弁護士を通じて示談を試みる場合に限られます。弁護士を間に挟まない限り,示談交渉を開始することはできません。
暴行事件の場合,当事者間に大きな感情的対立の生じていることが多いため,捜査機関は当事者を直接引き合わせることはできないと考えます。そのため,弁護士を窓口にすることを条件に,示談交渉を認めるという運用をしているのです。

弁護士が示談交渉を試みる場合の主な流れは,以下の通りです。

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

示談交渉の流れ

暴行事件の示談金相場

暴行事件の示談金は,概ね10~30万円ほどが目安になりやすいでしょう。
暴行事件は,被害者がケガをしていないことが前提であるため,被害者がケガをしている傷害事件などと比べて,示談金は低額になる傾向があります。

個別の示談金は当事者間の協議で決定しますが,示談金額に影響する事情としては以下のような点が挙げられます。

示談金に影響する事情

1.暴行の経緯
→被害者に落ち度がなければ増額要因に,被害者にも落ち度があれば減額要因になる

2.暴行の内容
→危険性の高い行為であれば増額要因に,けがをする可能性のない行為であれば減額要因になる

3.ケガのなかった理由
→被害者が回避した結果であれば増額要因に,加害者の行為が原因であれば減額要因になる

暴行事件の示談内容・条項

①一般的な示談条項

【確認条項】

加害者の被害者に対する支払金額を確認する条項です。

【給付条項】

確認条項に記載した金銭の支払をどのように行うのかを定める条項です。

【清算条項】

示談で定めた条項以外には,当事者間に権利義務の関係がないことを定める条項です。清算条項を取り交わせば,その後に相手から金銭を追加請求される可能性は法的になくなります。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)条項とは,被害者が加害者を許す,という意味の条項です。
示談が刑事処分に有利な影響を及ぼすのは,基本的にこの宥恕条項があるためです。被害者が加害者を許している,という事実が,刑事処分を劇的に軽減させる要素となります。

②暴行事件で特に定めやすい条項

【接触禁止】

加害者が被害者に対して接触を図ることを禁止する条項です。
暴行事件の当事者になった間柄の場合,その後に被害者が加害者と接触を希望することはほとんどありません。そのため,被害者からは,加害者が接触することのないよう約束してほしいと求められることが多く見られます。
接触禁止に応じるデメリットは基本的にないため,この点は示談に盛り込むことが適切でしょう。

【現場への接近禁止】

事件の現場になった場所の近辺に接触することを禁止する条項です。偶然にでも加害者と会うことがないよう,被害者から求められることがあります。
具体的な接近禁止の対象としては,以下のような例が挙げられます。

接近禁止の例

1.事件の発生した店舗や施設
2.事件の発生した電車
3.路上で事件が起きた場合の現場周辺

もっとも,これらの接近禁止は,あまり広範囲に定めてしまうと加害者側の負担が過度に大きくなる可能性もあり得ます。具体的に接近禁止を合意する場合には,無理が生じないよう条件を慎重に検討するのが適切です。

暴行事件の示談で注意すべきこと

①言い分の食い違いが起きやすい

特にケンカのように感情的な対立が原因となった暴行事件の場合,互いに冷静さを欠く中での出来事であるため,内容の記憶も冷静にはできていないことが多くなりがちです。
そうすると,当事者間で事件の内容に関する記憶が大きく食い違っており,相手は実際よりも自分の落ち度を大きいものと主張してくる,という場合も珍しくありません。

言い分が食い違う場合,示談金額を含めた条件をどのように定めるかは個別のケースによりますが,少なくとも言い分が食い違う可能性をあらかじめ想定しておくことは大切です。
実際に言い分が食い違った場合も,十分にあり得ることだと理解できていれば,冷静に柔軟な対応をすることも容易になります。

②将来に傷害結果が出たときの補償

暴行事件の場合,被害者の身体には支障が生じていないことが前提ですが,被害者からは「将来身体に支障があった場合には金銭で補償してほしい」と求められる場合があり得ます。
現実的には,時間が経ってから初めて身体に支障が生じることは考えにくいため,例外的なケースを除いては現実に問題になることはないでしょう。ただ,「今」示談ですべてを解決するとなると,被害者側に漠然とした不安が生じてしまうことも納得はできるところです。

そのため,基本的には「将来,暴行行為による傷害結果が明らかになった場合には別途協議する」といった形で,身体の支障が分かったときに改めて話し合う余地を残すことが合理的な解決方法になるでしょう。

ポイント
事実関係の言い分が食い違う可能性を事前に想定しておく
傷害結果が将来判明した場合に配慮した示談もあり得る

暴行事件の示談に必要な費用

藤垣法律事務所で暴行事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。

①活動開始時

着手金33万円
実費相当額1万円
合計34万円

一般的な在宅事件では,34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。

②弁護活動の成果発生時

不起訴処分33万円
示談成立22万円(※)
出張日当・実費実額
※金銭賠償で5.5万円,清算条項締結で5.5万円,宥恕の獲得で11万円

活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。

③示談金

暴行事件の場合,10~30万円の示談金が目安として想定されます。

④合計額

上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。

目安となる費用総額(10万円で示談成立+不起訴の場合)

弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:10万円

計:99万円

弁護士費用の例

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