浮気相手から慰謝料請求|支払義務と対応・反論のポイント

浮気相手から突然、慰謝料請求を受けた場合でも、必ずしも支払う義務があるとは限りません。
不倫に関する慰謝料は通常、配偶者から請求されるものですが、例外的に浮気相手から請求されるケースも存在します。ただし、その多くは法的に認められない可能性があり、請求内容を十分に検討せずに支払ってしまうと、本来不要な負担を負うおそれがあります。

一方で、一定の事情がある場合には、例外的に慰謝料の支払義務が認められることもあり、「自分が支払うべきケースに当たるのか」を正確に見極めることが重要です。 また、対応を誤ると、不要な高額支払いにつながるだけでなく、トラブルが長期化するリスクもあります。本記事では、浮気相手からの慰謝料請求に支払義務が生じるケースと生じないケースの違い、具体的な反論方法や証拠の考え方、適切な対応の進め方について、弁護士の視点から整理します。状況に応じた適切な判断ができるよう、実務的なポイントを中心に解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

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浮気相手から慰謝料請求されたら払う必要はある?結論と判断ポイント

浮気相手から慰謝料請求を受けた場合でも、原則として支払義務は認められないケースが多いといえます。
不倫に関する慰謝料は、本来、婚姻関係を侵害された配偶者が請求するものであり、浮気相手が既婚者に対して請求できる場面は限定的です。

もっとも、すべてのケースで支払義務が否定されるわけではありません。たとえば、既婚であることを隠して交際していた場合や、結婚する意思がないにもかかわらずそれを装って関係を継続していた場合など、相手の権利や利益を侵害したと評価される事情があれば、例外的に慰謝料請求が認められる可能性があります。

このように、支払義務の有無は個別事情によって判断されるため、まずは自分の状況がどの類型に当たるのかを整理することが重要です。判断の目安としては、次のような点が挙げられます。

  • 相手に対して既婚であることを伝えていたか
     既婚であることを隠していた場合、相手は結婚できると誤信して交際していた可能性があり、いわゆる貞操権侵害として慰謝料請求が認められる余地があります。
  • 結婚を前提とした交際であると誤信させていないか
     明確な約束がなくても、「いずれ結婚する」などと期待させる言動を繰り返していた場合には、相手の信頼を裏切ったと評価される可能性があります。
  • 妊娠・中絶など特別な事情が関係していないか
     妊娠や中絶に至った場合には、精神的苦痛の程度が大きいと判断されやすく、慰謝料請求が認められる方向に働くことがあります。
  • 相手も既婚者であるなど、双方に責任がある関係ではないか
     いわゆるダブル不倫の場合には、双方に責任があると評価されやすく、請求自体が認められない、または大幅に減額される可能性があります。

これらの事情によって、慰謝料請求が認められるかどうか、また金額がどの程度になるかが大きく変わります。
請求を受けた段階で安易に支払うのではなく、まずは法的に支払義務があるのかを冷静に見極めることが不可欠です。

浮気相手から慰謝料請求されたときにまずやるべき対応と注意点

浮気相手から慰謝料請求を受けた場合、最も重要なのは「その場の流れで対応しないこと」です。
突然の連絡や強い口調での請求に動揺し、安易に謝罪や支払いの意思を示してしまうと、その後の交渉で不利になるおそれがあります。

まずは、請求内容を冷静に確認することが不可欠です。具体的には、次の点を整理します。

  • 誰が、どのような根拠で請求しているのか
     単なる感情的な請求なのか、それとも法的根拠(貞操権侵害など)を主張しているのかによって、対応は大きく異なります。
  • 請求金額とその内訳は妥当か
     相場とかけ離れた高額請求であるケースも少なくありません。金額だけで判断せず、なぜその金額になるのかを確認する必要があります。
  • 証拠の有無や内容はどうか
     相手が主張を裏付ける証拠を持っているかどうかは重要です。証拠が乏しい場合には、請求自体が認められない可能性もあります。

これらを踏まえ、対応は次のような流れで進めるのが基本です。

  • 事実関係を整理する(いつ・どのような関係だったか)
  • 相手の主張と自分の認識に食い違いがないか確認する
  • 法的に支払義務があるかどうかを検討する

この段階で結論を急がず、「判断材料をそろえること」に集中することが重要です。

そのうえで、対応にあたっては次の点に注意が必要です。

  • 安易に支払いや示談に応じないこと
     一度支払ってしまうと、後から「やはり支払義務がなかった」と判明しても返還を求めることは容易ではありません。
  • 不用意な発言や書面のやり取りを避けること
     LINEやメールでの発言が、後に不利な証拠として扱われることがあります。特に、事実関係を認めるような発言には注意が必要です。
  • 連絡を無視するかどうかは慎重に判断すること
     明らかに不当な請求であっても、完全に無視することで相手の感情を刺激し、訴訟に発展する可能性もあります。

請求を受けた直後の対応は、その後の解決結果を大きく左右します。
焦って判断するのではなく、事実関係と法的評価を整理したうえで、適切な対応方針を検討することが重要です。

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浮気相手への慰謝料の支払い義務が生じるケースとは

浮気相手からの慰謝料請求は原則として認められにくいものの、一定の事情がある場合には例外的に支払い義務が生じることがあります。
その判断は、単なる不倫関係にとどまるのか、それとも相手の重要な期待や利益を侵害したといえるかという観点から行われます。

既婚であることを隠して交際していた場合

既婚である事実を伝えずに交際していた場合、相手は結婚できる可能性があると信じて関係を継続していたと評価されることがあります。この前提が覆されることで精神的苦痛を受けたと認められる場合、貞操権侵害として慰謝料請求が認められる可能性があります。 特に、長期間にわたり関係が継続していた場合や、真剣交際と評価される事情がある場合には、責任が重く判断されやすくなります。

結婚を前提とした交際と誤信させていた場合

明確な婚約がなくても、「離婚したら結婚する」「将来は一緒になる」などの発言を繰り返していた場合には、相手に結婚への強い期待を抱かせたと評価されることがあります。このような場合、相手の信頼を裏切ったこと自体が違法と評価され、慰謝料請求が認められる余地があります。 言葉だけでなく、同居準備や家族への紹介など、結婚を前提とする行動があったかも重要な判断要素となります。

妊娠・中絶など特別な事情がある場合

交際関係の中で妊娠や中絶に至った場合には、精神的・身体的負担が大きいことから、慰謝料請求が認められる方向に働くことがあります。特に、妊娠に関する重要な判断において相手に不利益な影響を与えたと評価される場合には、通常よりも高額な慰謝料が認められる可能性もあります。

内縁関係に近い実態があった場合

単なる交際関係を超えて、同居や生活費の分担など、生活の一体性が認められる場合には、内縁関係に近いものとして保護される可能性があります。このような関係において信頼を裏切る行為があった場合には、法律上保護される利益の侵害として慰謝料請求が認められる余地があります。このように、浮気相手からの慰謝料請求が認められるかどうかは、「相手の期待や信頼をどの程度侵害したか」によって判断されます。
単なる不倫関係にとどまる場合とは異なり、相手の人生に影響を与えるような事情がある場合には、例外的に支払い義務が生じる可能性がある点に注意が必要です。

浮気相手からの慰謝料請求が認められないケース

浮気相手からの慰謝料請求は、一定の事情がない限り認められないのが原則です。
不倫関係にあるだけでは、直ちに相手に対する違法行為が成立するわけではなく、法的に保護される利益が侵害されたといえる事情が必要となります。

単なる不倫関係にとどまる場合

既婚者であることを相手が認識したうえで交際していた場合には、原則として慰謝料請求は認められません。
このような場合、相手も一定のリスクを理解したうえで関係を持っていると評価されるため、一方的に精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求することは難しいと考えられます。

感情的な不満や報復を目的とする請求

交際の解消やトラブルをきっかけに、感情的な不満や報復として慰謝料を請求してくるケースも見られます。しかし、単なる感情的理由だけでは法的な請求根拠とはならず、慰謝料請求は認められません。
請求の内容に具体的な権利侵害の主張が含まれているかどうかを見極めることが重要です。

相手も既婚者である場合(ダブル不倫)

いわゆるダブル不倫の場合には、双方が既婚であることを認識しながら関係を持っているため、一方だけが被害者であるとは評価されにくく、慰謝料請求が認められない可能性が高くなります。
仮に請求が認められるとしても、責任は相互に分担されることになり、金額は大幅に減額される傾向があります。

自由な意思に基づく交際関係である場合

交際が双方の自由な意思に基づいて成立しており、特段の欺罔行為や強制がない場合には、原則として慰謝料請求は認められません。
たとえば、結婚に関する明確な約束がない場合や、将来についての期待が一方的なものであった場合には、法的に保護される利益の侵害とは評価されにくいといえます。このように、浮気相手からの慰謝料請求が認められるためには、単なる交際関係を超えた違法性が必要です。
請求を受けた場合には、相手の主張がこれらの要件を満たしているかを慎重に確認することが重要です。

相手が浮気している事実を知っていた場合には、浮気相手に対する慰謝料は発生しないのが通常です。ただし、婚姻関係が破綻している状況だと偽っていた場合には、慰謝料の問題になる可能性があり得るでしょう。

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浮気相手からの慰謝料請求への反論方法と証拠の考え方

浮気相手から慰謝料請求を受けた場合には、相手の主張を前提に対応するのではなく、法的に成立要件を満たしているかを一つずつ検討し、適切に反論していくことが重要です。
特に、慰謝料請求が認められるためには一定の要件が必要であるため、これらが欠けていることを具体的に指摘することが有効です。

既婚であることを伝えていたと主張する場合

相手が「既婚であるとは知らなかった」と主張している場合でも、実際には交際の初期段階で伝えていた、あるいは状況から容易に認識できたといえる場合には、責任は否定される可能性があります。
たとえば、SNSや日常の会話の中で家族の存在を示していた場合や、生活状況から既婚であることが推認できる事情があれば、相手の主張する前提自体が成り立たないことを指摘できます。

結婚の約束をしていないことを明確にする場合

相手が結婚を前提とした交際であったと主張している場合には、そのような約束が存在しなかったことを整理する必要があります。
単なる好意的な発言や曖昧な将来の話があったとしても、それが法的に保護される「結婚の約束」とまでは評価されない場合も多く、具体的な約束や行動が伴っていないことを示すことが重要です。

請求を裏付ける証拠の有無を検討する場合

慰謝料請求が認められるためには、相手がその主張を裏付ける証拠を提示できることが前提となります。
したがって、相手の主張があっても、それを裏付ける客観的な証拠が乏しい場合には、請求自体が認められない可能性があります。証拠の内容や信頼性を冷静に検討することが重要です。

自身に有利な証拠を確保・整理する場合

反論を行うにあたっては、相手の証拠を検討するだけでなく、自身に有利な事情を裏付ける資料を整理しておくことも重要です。
たとえば、既婚であることを伝えていたやり取りや、結婚を約束していないことがわかるメッセージの履歴などは、主張の裏付けとして有効に機能します。

高額請求に対する減額交渉の視点

仮に一定の責任が認められる可能性がある場合でも、請求額が直ちにそのまま認められるわけではありません。
事情に比して過大な請求がされている場合には、関係の期間や態様、相手の認識などを踏まえて、適切な水準まで減額する交渉を行うことが可能です。慰謝料請求への対応では、事実関係・要件・証拠の三点を整理しながら、主張と反論を組み立てていく視点が不可欠です。
感情的なやり取りに流されず、法的な基準に沿って検討することで、不当な請求を回避できる可能性が高まります。

浮気相手から慰謝料請求される理由|法的な仕組みを整理

浮気相手からの慰謝料請求は例外的にしか認められませんが、その背景には民法上の不法行為という考え方があります。
慰謝料が認められるかどうかは、「どのような権利や利益が侵害されたのか」によって判断されます。

まず整理しておきたいのは、一般的な不倫慰謝料との違いです。
通常の不倫では、配偶者が「婚姻共同生活の平穏」という法的利益を侵害されたとして、浮気相手に対して慰謝料を請求します。一方で、浮気相手が既婚者に対して請求する場合には、このような利益は前提とならないため、別の権利侵害が認められる必要があります。

その代表例が、いわゆる貞操権侵害です。
これは、結婚するかどうかを自由に決める利益や、真実に基づいて交際を選択する利益が侵害された場合に問題となります。たとえば、既婚であることを隠して交際を開始・継続した場合には、相手は本来とは異なる判断を強いられることになり、その結果として精神的苦痛を受けたと評価されることがあります。

また、結婚の約束や将来の生活に関する具体的な期待を抱かせていた場合にも、その信頼を裏切る行為が違法と評価されることがあります。この場合には、単なる交際の解消とは異なり、相手の信頼利益を侵害した点が重視されます。

もっとも、これらの法的評価が認められるためには、単に交際していたという事実だけでは足りず、

  • 相手が既婚であることを知らなかったこと
  • 結婚に対する合理的な期待があったこと
    など、具体的な事情が必要となります。

したがって、浮気相手からの慰謝料請求が認められるかどうかは、「どの利益が侵害されたのか」「その侵害がどの程度か」という観点から個別に判断されます。
請求の有無だけで判断するのではなく、その法的な根拠を整理することが、適切な対応につながります。

実際は浮気だが相手は浮気だと思っていなかった、という場合に、相手が抱いた結婚等への正当な期待が慰謝料発生の根拠になります。

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浮気相手から慰謝料請求されやすいケース別の対応ポイント

浮気相手からの慰謝料請求は、事案の内容によって対応方針が大きく異なります。
同じ「請求された」という状況でも、事実関係や相手の主張によって、有効な反論や解決方法は変わるため、典型的なケースごとに整理して考えることが重要です。

既婚を隠していたと主張されている場合

相手から「既婚であることを知らされていなかった」と主張されている場合には、その点が最大の争点となります。
この場合、実際にどのような説明をしていたか、相手が既婚であることを認識できた事情があったかを具体的に整理する必要があります。
交際当初のやり取りや日常の会話内容などを証拠として確認し、認識の有無を明らかにすることが重要です。

結婚を前提とした交際と主張されている場合

相手が「結婚を前提に交際していた」と主張している場合には、その前提となる具体的な約束や行動があったかが問題となります。
単なる将来の話や曖昧な発言では足りず、婚約に近い関係であったかどうかが重要となるため、発言の内容や交際状況を整理し、過度な期待を抱かせていないことを示す必要があります。

妊娠・中絶に関する請求を受けている場合

妊娠や中絶が関係している場合には、精神的苦痛が大きいと評価されやすく、請求が認められる方向に働くことがあります。
もっとも、すべてのケースで責任が認められるわけではなく、事情によっては減額や否定が可能な場合もあります。
当時の関係性や意思決定の経緯を整理し、責任の範囲を検討することが重要です。

高額な慰謝料を請求されている場合

相場とかけ離れた高額請求を受けるケースも少なくありませんが、その金額がそのまま認められることは通常ありません。
請求額の妥当性は、交際期間や関係の深さ、相手の認識などを踏まえて判断されるため、個別事情に応じて減額交渉を行うことが可能です。

感情的対立が強い場合

請求の背景に強い感情的対立がある場合には、法的な問題以上に交渉の進め方が重要となります。
感情的なやり取りを続けることで事態が悪化するおそれがあるため、必要に応じて第三者を介した対応を検討することも有効です。事案ごとの特徴を踏まえて対応方針を検討することで、不当な請求を回避したり、適切な範囲に調整したりすることが可能となります。
一律の対応ではなく、個別事情に応じた判断を行うことが重要です。

基本的に、直ちに何らかの結論を出すのではなく、まずは事実関係や慰謝料の根拠を整理することが肝要です。

浮気相手からの慰謝料はいくら?相場と金額の決まり方

浮気相手から慰謝料請求を受けた場合でも、請求された金額がそのまま認められるわけではありません。
慰謝料の金額は一律に決まっているものではなく、個別の事情を踏まえて判断されるため、相場というよりも「どのような事情が考慮されるか」を理解しておくことが重要です。

浮気相手から既婚者への慰謝料請求は、そもそも認められるケースが限定的であるため、金額も事案ごとの差が大きくなります。
慰謝料が認められる場合でも数十万円程度にとどまることもあれば、事情によっては100万円を超える水準となることもあり、一定の金額に一律に当てはめて考えることはできません。

具体的な金額は、次のような事情を総合的に考慮して判断されます。

交際期間や関係の深さ

交際期間が長期にわたる場合や、同居・生活費の分担など生活の一体性が認められる場合には、精神的苦痛が大きいと評価され、金額が上がる方向に働きます。

相手の認識(既婚であることの認識)

既婚であることを隠していた場合には、相手の判断が大きく歪められるため、責任が重く評価されます。
一方で、相手が既婚であることを認識していた場合には、慰謝料は認められない、または低額にとどまる方向に働きます。

結婚への期待の程度

具体的な結婚の約束や、それに近い事情がある場合には、相手の信頼利益が大きく侵害されたと評価され、金額に影響します。
曖昧な関係にとどまる場合には、その分評価は限定的となります。

妊娠・中絶などの特別な事情

妊娠や中絶が関係する場合には、精神的・身体的負担の大きさが考慮され、金額が上がる方向に働くことがあります。

双方の責任の程度

相手も既婚者である場合や、関係の形成に双方の関与が認められる場合には、責任は調整され、慰謝料は減額される可能性があります。慰謝料の金額は、これらの事情を総合的に考慮して個別に判断されます。
請求額が提示された場合には、その金額が事案の内容と照らして妥当といえるかを検討し、必要に応じて減額交渉を行うことが重要です。

浮気相手への慰謝料対応で注意すべきリスク(求償・トラブル拡大)

浮気相手からの慰謝料請求に対しては、支払うかどうかだけでなく、その後に生じ得るリスクまで見据えて対応することが重要です。
対応を誤ると、想定していなかった不利益が生じる可能性があります。

支払後に返還を求めることの難しさ

一度慰謝料を支払ってしまうと、後から「本来は支払義務がなかった」と判明した場合でも、返還を求めることは容易ではありません。
示談書を作成している場合には、清算条項によって請求が遮断されることも多く、安易な支払いは取り返しのつかない結果につながるおそれがあります。

配偶者との関係で生じるリスク(求償・別請求)

浮気に関する問題は、浮気相手との関係だけで完結するとは限りません。
配偶者がいる場合には、別途、配偶者から慰謝料請求を受ける可能性があります。

また、場合によっては、浮気相手との間での負担割合が問題となり、求償関係が生じることもあります。
一方に多く支払った場合には、その一部を他方に求めることが検討される場面もあり、関係が複雑化するおそれがあります。

不利な示談条件に拘束されるリスク

早期解決を優先するあまり、内容を十分に検討しないまま示談に応じてしまうと、過大な金額や不利な条件に拘束される可能性があります。
たとえば、過度な違約金条項や過剰な義務を課されるケースもあり、一度合意すると後から修正することは困難です。

感情的対立の激化による紛争長期化

感情的なやり取りを繰り返すことで、当初は小さなトラブルであっても紛争が長期化することがあります。
結果として、交渉コストや精神的負担が増大し、本来よりも不利な解決を余儀なくされる可能性があります。慰謝料請求への対応は、単に目の前の請求に応じるかどうかだけでなく、その後の影響まで含めて判断することが重要です。
短期的な解決だけでなく、中長期的なリスクも踏まえた対応を検討する必要があります。

ひとたび支払ってしまうと、支払ったものを後から回収するのは非常に困難です。支払う前に十分な検討を尽くす必要があります。

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浮気相手から慰謝料請求されたとき弁護士に相談すべきケース

浮気相手から慰謝料請求を受けた場合、すべてのケースで弁護士への相談が必要とは限りませんが、一定の事情がある場合には早期に相談することが重要です。
特に、対応を誤ると不利な結果につながるおそれがある場面では、専門的な判断を踏まえて進める必要があります。

請求内容の妥当性が判断できない場合

請求が法的に認められるものかどうかは、事実関係や証拠の内容によって左右されます。
自分で判断することが難しい場合には、早い段階で弁護士に相談することで、支払義務の有無や適切な対応方針を明確にすることができます。

高額な慰謝料を請求されている場合

請求額が高額である場合には、その妥当性を慎重に検討する必要があります。
交際の実態や相手の認識などを踏まえて、法的に認められる範囲を超えていないかを判断し、必要に応じて減額交渉を行うことが重要です。

相手との交渉が難航している場合

感情的対立が強く、話し合いが進まない場合には、当事者間での解決が困難となることがあります。
弁護士が介入することで、法的な観点から整理された交渉が可能となり、冷静かつ現実的な解決につながることが期待できます。

示談書の内容に不安がある場合

示談書は一度締結すると、その内容に拘束されるため、慎重な確認が必要です。
条項の内容によっては将来の請求や責任関係に影響を及ぼすこともあるため、専門的な観点から内容を確認しておくことが重要です。

訴訟に発展する可能性がある場合

相手が訴訟提起を示唆している場合や、内容証明郵便が送付されている場合には、早期の対応が必要です。
この段階で適切に対応しないと、不利な状況で手続が進むおそれがあるため、速やかに弁護士に相談することが望ましいといえます。弁護士に相談することで、法的な見通しを踏まえた適切な対応が可能となり、不要な支払いや不利な合意を避けることにつながります。
状況に応じて専門家の関与を検討することが、適切な解決への近道となります。

金額をはじめとする内容面のご相談が必要になる場合、弁護士への早期のご相談が望ましいでしょう。

浮気相手からの慰謝料請求に関するよくある質問

請求を無視しても問題ありませんか

一概に無視すればよいとはいえません。
明らかに法的根拠がない請求であっても、完全に無視することで相手の感情を刺激し、訴訟などに発展する可能性があります。
一方で、安易に応答してしまうと不利な発言を残すおそれもあるため、対応するかどうかも含めて慎重に判断することが重要です。

LINEやメールでの請求にも応じる必要がありますか

形式にかかわらず、請求が直ちに法的義務を生じさせるわけではありません。
LINEやメールで請求があった場合でも、その内容に法的根拠があるかどうかを確認する必要があります。
ただし、やり取りの内容は証拠として扱われる可能性があるため、不用意な返信は控えるべきです。

支払わない場合、訴えられることはありますか

可能性はありますが、直ちに認められるとは限りません。
相手が訴訟を提起すること自体は可能ですが、裁判では請求の根拠や証拠が厳格に判断されます。
そのため、請求に法的根拠がない場合には、訴えられたとしても支払義務が認められないケースもあります。

配偶者に知られる可能性はありますか

事案によっては知られる可能性があります。
相手が配偶者に連絡を取る、または紛争が訴訟に発展することで、結果的に発覚することがあります。
特に、内容証明郵便や訴状が自宅に届く場合には、家族に知られるリスクが高まる点に注意が必要です。

一度支払うと後から争えますか

原則として、後から争うことは困難です。
示談によって解決した場合には、清算条項などにより追加の請求や争いが制限されることが一般的です。
そのため、支払いを行う前に、本当に支払義務があるのかを慎重に検討する必要があります。

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浮気相手から慰謝料請求された場合のまとめ

浮気相手から慰謝料請求を受けた場合でも、直ちに支払義務が生じるとは限りません。
不倫関係にあるという事情だけでは足りず、相手の権利や利益を侵害したといえる具体的な事情が必要となります。

特に、既婚であることを隠していた場合や、結婚を前提とした交際と誤信させていた場合などには、例外的に慰謝料請求が認められる可能性があります。一方で、相手が既婚であることを認識していた場合や、単なる交際関係にとどまる場合には、請求が認められないケースも少なくありません。

また、請求を受けた際の対応によって、その後の結果は大きく変わります。
安易に支払うことや不用意な発言は、不利な状況を招くおそれがあるため、まずは事実関係と法的な位置づけを整理することが重要です。

慰謝料の金額についても一律の基準があるわけではなく、交際の経緯や相手の認識、関係の内容などを踏まえて個別に判断されます。請求額が提示された場合には、その妥当性を検討し、必要に応じて調整を図ることが求められます。浮気相手からの慰謝料請求に対しては、感情的に対応するのではなく、法的な基準に沿って冷静に判断することが重要です。
状況に応じて専門家への相談も視野に入れながら、適切な対応を進めることが、不要な負担を避けることにつながります。

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この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

独身女性と既婚男性の関係に潜む法的リスク|慰謝料を弁護士が解説

独身女性が既婚男性と交際した場合、その関係は単なる恋愛問題にとどまらず、法律上の不貞行為として評価され、慰謝料請求などの法的責任を問われる可能性があります。
「独身であれば問題にならないのではないか」「既婚者だと知らなかった場合は責任を負わないのではないか」といった疑問を持つ方も少なくありませんが、実際の判断はそう単純ではありません。
不貞行為の成立要件や、故意・過失の有無、慰謝料額の考え方は、裁判例や具体的事情によって左右されます。本記事では、独身女性と既婚男性の関係に生じ得る法的リスクについて解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

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代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
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独身女性と既婚男性の関係は法律上どのような問題が生じるのか

独身女性が既婚男性と交際した場合、その関係は当事者同士の合意があっても、法律上は問題とされる可能性があります。これは、恋愛関係そのものが禁止されているからではなく、婚姻関係が法律によって保護されており、その平穏を害する行為は、不法行為として評価されることがあるためです。

この点で注意すべきなのは、「自分は独身である」という事情だけで、法的な責任が否定されるわけではないということです。既婚男性と関係を持った場合、その内容や経緯によっては、配偶者から慰謝料を請求される立場になることもあります。独身であるかどうかよりも、関係が婚姻関係にどのような影響を与えたかが重視されます。

また、独身女性と既婚男性の関係は、交際中は大きな問題になっていなくても、発覚をきっかけに法的な争いへ発展するケースが少なくありません。配偶者が事実を知ったことで、感情的な対立だけでなく、慰謝料請求や離婚協議といった具体的な法的手続が始まることもあります。

このように、独身女性と既婚男性の関係は、当事者の認識とは別に、法律上の評価が加わることで問題となります。どのような場合に不貞行為と判断されるのか、また慰謝料請求が認められるのはどのようなケースかについては、法律上の基準に沿って整理する必要があります。

既婚男性が責任を負う対象は、基本的に自分の家庭内のみですが、独身女性は相手の家庭に対する責任を負いかねない立場です。女性側ではコントロールできない事情で法律問題が大きくなる可能性もあるため、不安定な地位になりがちです。

法律上の「不貞行為」とは何か

独身女性と既婚男性の関係が法的に問題となるかどうかは、その関係が「不貞行為」に当たるかどうかによって判断されます。不貞行為とは、一般に「既婚者が、配偶者以外の者と自由な意思に基づいて性的関係を持つこと」を指すものとされています。

ここで注意したいのは、不貞行為に該当するかどうかは、恋愛感情の強さや交際の真剣さによって決まるわけではないという点です。好意があったかどうか、将来を考えていたかといった事情よりも、肉体関係の有無が重視されます。裁判例においても、性的関係が認められる場合には、不貞行為に当たると判断されるのが一般的です。

一方で、食事や連絡のやり取りをしていた程度であれば、通常は不貞行為とは認められません。いわゆる「精神的な浮気」については、道義的な問題になることはあっても、それだけで慰謝料請求が認められるケースは多くありません。もっとも、やり取りの内容や関係の継続性によっては、他の事情とあわせて評価されることがあります。

また、不貞行為があったかどうかは、当事者の説明だけで決まるものではありません。実際には、メッセージの内容、写真、行動の経緯など、客観的な資料をもとに総合的に判断されます。そのため、本人の認識と法律上の評価が一致しない場合もあります。

このように、不貞行為に当たるかどうかは、感覚的な判断ではなく、一定の基準に沿って判断される点を理解しておく必要があります。

独身女性は慰謝料を請求されるのか|法的責任の考え方

独身女性が既婚男性と不貞行為と評価される関係を持った場合、相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。独身であることだけを理由に、法的な責任が自動的に否定されるわけではありません。

この問題で重視されるのは、その関係が既婚男性の婚姻関係にどの程度の影響を与えたかという点です。恋愛感情の有無や当事者の主観よりも、結果として婚姻関係の平穏が害されたといえるかどうかが判断の基準になります。

もっとも、すべてのケースで慰謝料の支払いが認められるわけではありません。相手が既婚者であることを知らなかった場合や、注意しても分からなかった事情がある場合には、責任そのものが否定されたり、慰謝料の金額が減額されたりすることがあります。交際期間や関係の継続性も、判断に影響します。

また、婚姻関係がすでに実質的に破綻していたといえる事情がある場合には、慰謝料請求が認められにくくなることもあります。たとえば、交際を始める前から長期間別居していた場合や、夫婦関係が事実上終了していたと評価できる事情があれば、婚姻関係への影響は限定的と判断される可能性があります。

さらに、実務上は、独身女性と既婚男性が同じ重さの責任を負うとは限りません。多くの場合、婚姻関係に直接の責任を負う既婚男性の責任が重く評価され、独身女性側の負担は事情に応じて調整されます。このように、独身女性が慰謝料を請求されるかどうかは、個別の事情を踏まえて判断される問題であり、一つの要素だけで一律に結論が出るものではありません。

慰謝料の相場と金額が決まる判断基準

独身女性が既婚男性との関係を理由に慰謝料を請求された場合、金額は一律に決まるものではありません。実務上は、個々の事情を踏まえて判断され、いわゆる「相場」はあくまで目安にとどまります。

一般的には、独身女性に対する慰謝料額は、数十万円から百数十万円程度の範囲で検討されることが多いとされています。ただし、これは典型例に過ぎず、関係の内容や経緯によっては、これより低くなることも、高くなることもあります。

金額を左右する主な判断要素としては、交際期間の長さが挙げられます。関係が短期間であれば、婚姻関係への影響は限定的と評価されやすく、慰謝料額も抑えられる傾向があります。反対に、長期間にわたって関係が続いていた場合には、影響が大きいとして金額が増えることがあります。

また、関係の深さや態様も重要な要素です。単発的な関係であったのか、継続的に会っていたのか、生活の一部として密接な関係にあったのかといった点は、評価に影響します。さらに、その関係が原因で別居や離婚に至った場合には、慰謝料が増額される要因となることがあります。

加えて、既婚者であることを知っていたかどうか、知り得た事情があったかどうかも、金額判断において考慮されます。知らなかった事情がある場合には、責任の程度が軽いと評価され、減額されることがあります。

このように、慰謝料の金額は、単に「不貞行為があったかどうか」だけで決まるものではありません。関係の期間、内容、当時の認識、婚姻関係への影響などを総合して判断されるため、個別の事情を整理することが重要になります。

既婚者だと知らなかった場合でも慰謝料は請求されるのか

独身女性が既婚男性と関係を持った場合でも、相手が既婚者であることを本当に知らなかったのであれば、慰謝料請求が認められないことがあります。ただし、「知らなかった」という事情だけで、常に責任が否定されるわけではありません。

この点で重要になるのは、既婚者であることを知らなかったことに落ち度がなかったかという点です。法律上は、実際に知らなかったかどうかだけでなく、当時の状況から見て、注意すれば知り得たといえるかどうかもあわせて判断されます。

たとえば、休日や夜間にしか会えない関係が続いていた場合や、自宅を一切教えてもらえなかった場合、家族の話題を避ける様子があった場合などは、既婚である可能性を疑う事情として考慮されることがあります。このような事情が重なると、「知らなかった」との主張が認められにくくなることがあります。

一方で、交際開始時に独身であると明確に説明されていた場合や、結婚していることをうかがわせる事情が特に見当たらなかった場合には、独身女性側に故意や過失がないと判断され、慰謝料請求が否定される、または大きく減額される可能性があります。

また、「知らなかった」という事情が問題となる場面では、当時のやり取りや状況をどのように説明できるかも重要になります。メッセージの内容や交際の経緯など、客観的に状況を示せる事情があるかどうかによって、評価が左右されることがあります。

このように、既婚者だと知らなかった場合の評価は、単に本人の認識だけで決まるものではありません。交際当時の事情を踏まえて、総合的に判断される問題である点に注意が必要です。

既婚男性が負う法的リスクと家庭内への影響

独身女性との関係が不貞行為と評価された場合、法的な責任の中心は既婚男性側にあります。婚姻関係を維持する義務を負っているのは既婚男性であり、その義務に反する行為を行った点が重く見られるためです。

具体的には、配偶者から慰謝料を請求される可能性があるほか、関係の内容によっては離婚を求められることもあります。離婚に至った場合には、慰謝料に加えて、財産分与や養育費といった問題が生じることもあり、影響は一時的なものにとどまりません。

また、既婚男性の行為は、家庭内だけでなく、社会的な立場や職場での評価に影響することもあります。不貞行為が周囲に知られたことで、信頼関係が損なわれたり、業務上の不利益を受けたりするケースも見られます。こうした影響は、独身女性側に直接の責任が及ばない場面であっても、関係性の中で無視できない現実的な問題です。

さらに、既婚男性と独身女性の関係は、配偶者との間だけでなく、独身女性との間でもトラブルを生むことがあります。関係の解消をめぐる行き違いや感情的な対立が、連絡の継続や紛争につながることもあり、問題が長期化する要因になることがあります。

このように、既婚男性が負う法的リスクは、慰謝料の問題にとどまらず、家庭や社会生活全体に及ぶ可能性があります。独身女性の立場から見ても、相手が抱えるリスクの大きさを理解しておくことは、関係を考えるうえで重要な視点となります。

不貞行為があった場合、既婚男性の配偶者との関係では、独身女性と既婚男性がともに慰謝料全額を支払う責任を負います。両者の内部でどのような負担割合が適切であっても、配偶者には全額を支払うことになる点に注意が必要です。

関係を終わらせる際に注意すべき法的ポイント

独身女性と既婚男性の関係を終わらせる場面では、別れ方そのものが新たなトラブルを招くことがあります。不貞行為の有無や期間だけでなく、関係解消時の対応が後の評価に影響するケースも少なくありません。

まず注意したいのは、感情的なやり取りです。別れ話の中で送ったメッセージや発言が、その後の紛争で証拠として提出される可能性があります。強い言葉や相手を非難する表現、関係の継続をうかがわせる内容は、意図しない不利な評価につながることがあります。

また、関係を終わらせたつもりであっても、連絡を取り続けている場合には、実質的に関係が継続していると受け取られることがあります。特に、会う約束や私的な連絡が続いていると、別れた時期があいまいになり、責任の範囲が広がるおそれがあります。

さらに、配偶者や周囲の人を巻き込む行動にも注意が必要です。事情を説明するつもりで第三者に話した内容が伝わり、対立を深める結果になることもあります。関係解消の過程では、情報の扱いにも慎重さが求められます。

このように、関係を終わらせる際には、単に距離を置くだけでなく、その過程や対応の仕方が重要になります。冷静さを保ち、不要な接触や記録を残さないよう意識することが、トラブルを広げないための現実的な対応といえます。

慰謝料請求やトラブルを避けるために重要な視点

独身女性と既婚男性の関係に関する問題は、感情的に整理しようとすると判断を誤りやすい一方で、法律上は一定の基準に沿って淡々と評価されるという特徴があります。そのため、関係の是非を気持ちだけで考えるのではなく、どの点が問題になり得るのかを冷静に把握しておくことが重要です。

特に意識しておきたいのは、「知らなかった」「悪気はなかった」といった主観的な事情だけでは足りないという点です。実際の評価では、交際の経緯や関係の内容、当時の状況など、客観的に説明できる事情が重視されます。日常的なやり取りや行動が、後からどのように見られるかを意識しておくことが、トラブルの予防につながります。

また、問題が表面化してから対応を考えるよりも、早い段階で状況を整理しておくことで、不要な対立を避けられる場合もあります。感情的な対応や場当たり的な判断は、かえって問題を長引かせる原因になることがあります。このように、独身女性と既婚男性の関係に関するトラブルを避けるためには、感情と法律を切り分けて考える視点が欠かせません。関係の中で生じ得る法的な評価を理解しておくことが、結果的に自分自身を守ることにつながります。

相手が既婚男性であることを知りつつ肉体関係を持った場合、原則として慰謝料請求を受けるリスクを負うと理解するのが適切でしょう。

独身女性と既婚男性の関係に関するよくある質問

Q1

独身女性でも既婚男性との関係で慰謝料を請求されることはありますか?

A
あります。独身であること自体は免責理由にはならず、既婚男性との関係が不貞行為と評価され、婚姻関係の平穏を害したと判断される場合には、配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。


Q2

既婚者だと知らなかった場合でも慰謝料は請求されますか?

A
本当に知らず、注意しても知り得なかったと判断される場合には、慰謝料請求が否定されたり、金額が大きく減額されたりすることがあります。ただし、「知らなかった」と言うだけでは足りず、当時の状況ややり取りなどが総合的に考慮されます。


Q3

肉体関係がなければ不貞行為にはなりませんか?

A
一般的には、肉体関係がなければ不貞行為とは認められにくいとされています。食事や連絡のやり取りだけでは、通常は慰謝料請求が認められることは多くありません。ただし、関係の内容や態様によっては、他の事情とあわせて評価されることがあります。


Q4

独身女性に請求される慰謝料の金額はどのくらいですか?

A
事案によって異なりますが、実務上は数十万円から百数十万円程度で検討されるケースが多く見られます。交際期間の長さ、関係の深さ、既婚者であることを知っていたかどうかなどの事情によって、金額は増減します。


Q5

関係を終わらせた後でも慰謝料を請求されることはありますか?

A
あります。関係を終わらせた後であっても、過去の不貞行為を理由に慰謝料を請求されることはあります。別れた時期やその後の連絡状況なども含めて、個別に判断されます。


Q6

相手の配偶者から直接連絡が来た場合、どう対応すべきですか?A
感情的に対応したり、その場で謝罪や支払いの約束をしたりすることは避けた方がよいとされています。連絡内容を整理し、冷静に対応することが重要になります。

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この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

慰謝料を払えない場合どうなる?支払義務と対応の考え方

慰謝料を請求されたものの、今の収入や生活状況では支払いが難しい――このような状況に直面したとき、多くの方が払えなければどうなるのか、法的に問題があるのかといった不安を抱えます。
もっとも、慰謝料は経済的に余裕がないという事情だけで直ちに支払義務が否定されるものではありません。一方で、個別の事情がまったく考慮されないわけでもなく、法律上は一定の枠組みに沿って評価されます。
重要なのは、慰謝料を払えない状態が法律上どのように位置づけられ、どの点が問題になるのかを正確に理解することです。ここでは、支払義務の考え方や想定される法的リスクを、弁護士の視点から解説します。

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慰謝料を「払えない」とは法律上どのような状態か

「慰謝料を払えない」という状況は、多くの場合、収入や貯蓄が十分でなく、今すぐには支払う余裕がない状態を指します。日常感覚では「払えないのだから仕方がない」と考えてしまいがちですが、法律上は少し違った整理がされます。

慰謝料は、不法行為などによって生じた損害を補うための金銭です。そのため、慰謝料を支払う必要があるかどうかは、行為の内容や当事者の関係など、法律上の要件をもとに判断されます。 収入が少ない、貯蓄がないといった事情だけで、支払う必要がなくなるわけではありません。

もっとも、実際の場面では、慰謝料を払えない状態がどのような事情によるものかがまったく考慮されないわけではありません。たとえば、一時的に仕事を失っているのか、長期間にわたって安定した収入を得る見込みがないのかによって、話し合いや手続の進み方は変わることがあります。支払いが難しい理由を、どこまで具体的に説明できるかも重要になります。

このように、慰謝料を払えないという事情は、それだけで結論が決まるものではありませんが、支払う義務とは別の場面で、どのように扱われるかが問題になるという点を理解しておくことが大切です。

慰謝料の支払義務が生じる条件と、争いになるポイント

慰謝料を支払う必要があるかどうかは、「お金があるか」「払えるか」といった事情では決まりません。まず問題になるのは、法律上、慰謝料を請求できる関係があるかどうかです。

慰謝料は、不法行為によって精神的な苦痛を受けた場合などに認められるものです。そのため、慰謝料の支払義務が生じるかどうかは、行為の内容や経緯が法律上の要件を満たしているかによって判断されます。たとえば、不貞行為があったといえるのか、その行為によって実際に精神的苦痛が生じたと評価できるのか、といった点が前提になります。

また、誰が誰に対して請求しているのかも重要です。配偶者からの請求なのか、不倫相手からの請求なのかによって、問題となるポイントは異なります。請求の相手や立場によって、支払義務の範囲や責任の重さが争われることもあります。

実務上、争いになりやすいのは、そもそも慰謝料を支払う必要があるのかという点と、請求されている金額が妥当といえるのかという点です。行為の期間や態様、当事者の関係性などをどう評価するかによって、結論が分かれることも少なくありません。

このように、慰謝料を払えないと感じている場合であっても、その前提として、支払義務が法律上認められるかどうかを切り分けて考える必要があります。この点を曖昧にしたまま話を進めてしまうと、本来争えるはずの部分を見落としてしまうこともあります。

神様の視点で支払義務があるならば、多くは円滑に支払うことが望ましいです。しかし、それでも積極的に支払わない選択が有力な場合もあり得ます。慰謝料問題の難解なポイントの一つです。

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慰謝料を払えない場合に、まず検討すべき法的対応

慰謝料を請求され、現時点では支払いが難しい場合でも、請求に対して何の対応もしないままにしておくことは避けるべきです。請求を放置すると、話し合いによる解決が困難と判断され、調停や訴訟といった手続に進まれる可能性が高まります。

特に注意が必要なのは、連絡を取らない、書面を無視するといった対応です。このような対応を続けると、「支払う意思がない」と受け取られ、裁判所を通じた手続が選択されやすくなります。その結果、支払方法について柔軟な調整ができる余地が狭まることがあります。

次に整理すべきなのは、支払えない理由の内容です。収入が一時的に減少しているのか、生活費を差し引くと支払いに回せる余力がないのか、他に返済中の債務があるのかといった点は、後の話し合いで必ず確認されます。支払えない理由を具体的な事情として説明できるかどうかによって、相手の対応や交渉の進み方は変わります。

あわせて、請求内容そのものを確認することも欠かせません。支払えないという事情がある場合でも、そもそも慰謝料を支払う法的義務があるのか、請求されている金額が行為の内容に見合っているのかといった点は別途検討が必要です。支払能力の問題と、請求の正当性は切り分けて考える必要があります

このように、慰謝料を払えない場合の初期対応では、請求を放置しないこと、支払えない理由を整理すること、請求の内容を冷静に確認することが具体的な検討事項になります。これらを整理しないまま対応を進めてしまうと、不利な条件で話が進む可能性があります。

戦略的に無視をするケースもあります。しかし、具体的な見通しや戦略的判断なく無視することはお勧めできません。専門家の意見を仰いでから判断することが望ましいでしょう。

減額や分割払いが検討される場面とその考え方

慰謝料を払えない場合、「金額を調整できないか」「支払い方を工夫できないか」といった点が話題になることがあります。もっとも、減額や分割払いは当然に用意された制度ではなく、当事者間でどのような合意を目指すかという文脈で検討されるものです。

まず前提として、減額や分割が話題になるのは、慰謝料の支払義務があることを前提に、金額や支払方法について調整が必要な場面です。「そもそも支払う必要があるのか」という問題とは、整理して考える必要があります。

実務上、話し合いの中で重視されやすいのは、支払えない事情の内容と、その見通しです。一時的に収入が減っているのか、生活状況から見て当面は支払いに回せる余力がないのかによって、話の前提は変わります。また、生活費や既存の負債を踏まえて、現実的にどの程度の負担が可能なのかも、検討材料になります。

あわせて、請求されている金額自体についても、調整の余地があるかどうかが問題になることがあります。行為の期間や態様、当事者の関係性などを踏まえて、その金額がどのように評価されるかは、話し合いの中で争点になることがあります。支払能力だけでなく、請求額の前提となる事情も切り離せません。

もっとも、こうした点について当事者間で考え方が一致しない場合もあります。その場合には、話し合いの場が調停や裁判に移り、第三者の判断を仰ぐことになります。いずれの場面であっても、「払えない」という事情を具体的な内容として説明できるかが、話の進み方に影響します。

このように、減額や分割払いは、「できるか・できないか」で単純に整理できるものではありません。どの事情が、どの場面で、どのように受け止められるのかを理解したうえで、現実的な対応を考える必要があります。

慰謝料を支払わないままにした場合に起こり得る法的リスク

慰謝料を請求されているにもかかわらず、支払わない状態が続くと、状況は徐々に変わっていきます。すぐに大きな不利益が生じるとは限りませんが、何も対応しないまま時間が経過すること自体がリスクになります。

まず考えられるのは、話し合いによる解決が難しいと判断されることです。連絡が取れない、支払う意思が見えないと受け取られると、相手は任意の交渉ではなく、調停や訴訟といった法的手続を選択する可能性が高まります。そうなると、当事者同士で柔軟に条件を調整する余地は小さくなります。

手続に進んだ場合、裁判所を通じて慰謝料の支払義務が確定することがあります。判決や調停調書などで支払内容が定まると、その内容に従って支払う義務が明確になります。この段階になってから「やはり払えない」と主張しても、考慮される範囲は限られます。

さらに、確定した内容どおりに支払いが行われない場合には、強制執行の手続が取られる可能性があります。預金や給与などが差し押さえの対象になることもあり、生活への影響が現実的な問題として生じます。支払わない状態を続けることで、選択肢が狭まっていく点には注意が必要です。

このように、慰謝料を支払わないままにしておくことは、「いずれ考えればよい」という問題ではありません。支払えない事情がある場合でも、どの段階で、どのような対応を取るのかによって、その後の負担や影響は大きく変わります。

訴訟外の請求は、応じなくても法的なデメリットが生じるケースは少数です。しかし、訴訟上での請求を放置するのは、相手の請求通りに支払義務を負うという多大なリスクを負う行動と言えます。

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自己破産や債務整理をしても慰謝料は免除されるのか

慰謝料を支払えない状況が続くと、「自己破産や個人再生をすれば、慰謝料も整理できるのではないか」と考える方は少なくありません。しかし、慰謝料については、債務整理をすれば当然に支払わなくてよくなるわけではありません

まず、自己破産の場合です。自己破産では、多くの借金について支払義務が免除されますが、慰謝料はその内容によって扱いが異なります。原因となった行為の性質が重く、強い非難が向けられるようなものである場合には、自己破産をしても免責が認められず、慰謝料の支払義務がそのまま残ることがあります

次に、個人再生についても注意が必要です。個人再生は、借金を大幅に減額したうえで分割返済する手続ですが、すべての債務が同じように減額されるわけではありません。慰謝料については、その内容によっては、借金のように減額の対象とされず、元の金額のまま支払う必要が残るケースがあります。これは、「個人再生をしても、その慰謝料は整理の対象にできない」と表現される場面です。

このように、自己破産では「免責されるかどうか」、個人再生では「減額の対象にできるかどうか」がそれぞれ問題になりますが、いずれの場合でも、慰謝料の内容次第で支払義務が残る可能性がある点は共通しています。

そのため、「払えないから債務整理をすれば解決する」と考えてしまうと、実際には慰謝料だけが残り、想定していた状況と大きく異なる結果になることもあります。慰謝料について債務整理を検討する場合には、その慰謝料がどのような性質のものかを踏まえて判断することが欠かせません。

弁護士に相談すべきタイミングと、早期対応の意味

慰謝料を請求され、支払えない状況にある場合、判断を先延ばしにすると選択肢が減っていきます。特に、請求書や通知が届いているにもかかわらず対応しないままでいると、相手が話し合いでは解決できないと考え、調停や訴訟といった手続に進む可能性が高まります

また、支払えない事情がある場合でも、その内容や説明の仕方によって受け止められ方は変わります。収入の状況、生活費との関係、今後の見通しなどを整理しないまま対応してしまうと、「支払う意思がない」と誤解されることもあります。早い段階で状況を整理しておくことで、交渉の余地が残る場合もあります。

さらに、請求内容そのものに問題がないかを確認することも重要です。そもそも支払義務があるのか、請求額が行為の内容に見合っているのかといった点は、後から争おうとしても難しくなることがあります。初期の段階で論点を整理しておかないと、本来検討できたはずの主張を見逃してしまうおそれがあります。

このように、慰謝料を払えない場合に問題になるのは、「払えるかどうか」だけではありません。どの段階で、どの点を確認し、どのような対応を取るのかによって、その後の負担や結果は大きく変わります。状況が複雑な場合ほど、早めに専門的な視点を入れて整理することが、現実的な解決につながります。

弁護士を窓口にすることで、真摯に対応する意思があることを相手に伝える効果も期待できます。話し合いでの解決を目指す場合は、早期に弁護士を窓口にすることで円滑な解決につながるケースも多く見られるところです。

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この記事の監修者

藤垣圭介

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代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

交通事故の慰謝料は整骨院で最大化できる?適切な通院方法を弁護士が解説

交通事故後の通院において、整骨院(接骨院)の利用は重要な手段の一つです。
特に、整形外科が遠方である、仕事などで時間内に通えない、問診しか取り扱っていないといった問題がある場合には、症状の回復を図るために整骨院(接骨院)を利用することはとても有益と言えます。

また、整骨院への適切な通院ができれば、交通事故の慰謝料がより大きな金額獲得できる可能性もあり得ます。適切な通院期間や通院方法を知ることは、金銭的解決にとっても重要な正当な慰謝料を受け取れる可能性が高まります。

この記事では、交通事故の被害に遭い、整骨院の利用を検討している方に向けて、
整骨院の利用方法や慰謝料との関係などについて、弁護士が解説します。
交通事故の適切な解決のため、参考にしていただければ幸いです。

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整骨院での通院慰謝料の基礎知識

①整骨院への通院でも慰謝料請求は可能か

交通事故の治療で整骨院への通院を選択した場合でも、慰謝料請求は可能です。ただし、整形外科での診察と治療指示を受けることが前提となります。整形外科に通院の上、主治医から整骨院の利用に関する指示又は許可が得られれば、必要な整骨院への通院であると評価でき、慰謝料請求の対象となるのが一般的です。

整骨院での施術部位や施術内容は、医師の診断や治療方針と矛盾しない範囲で行われることが重要です。例えば、整形外科で首に関する診断しかなされていない状況では、肩や背中への施術は必要なものとは評価されづらく、慰謝料の対象とはなりにくいでしょう。その点では、整形外科への通院時に自覚症状をもれなく伝えるなどして、主治医から適切な診断書を出してもらうことは大切な備えと言えます。

交通事故に伴う通院先は、基本的には被害者が自由に選択できる性質のものです。ただし、後日のトラブルを避けるためにも、整形外科医との連携を取りながら整骨院での治療を進めることが賢明でしょう。

自己判断で整骨院を利用した後、主治医から整骨院への通院を認めないと言われた場合、整骨院通院が慰謝料請求の対象にならないのみでなく、整骨院の施術費用が自己負担になりかねません。
通常、保険会社も対応してくれない整骨院通院となってしまうため、必要なステップを踏んでから整骨院を利用することが重要です。

②整骨院における施術の必要性が前提

交通事故に伴う整骨院での施術は、その必要性が明確に認められる場合に限り、慰謝料請求の対象となります。施術の必要性を判断する際は、整形外科医による診断や治療方針が重要な根拠となるでしょう。
具体的には、むち打ちや筋肉の損傷、関節の違和感といった症状に対して、整形外科医が整骨院での施術を指示又は許可した場合が該当します。保険会社も、このような医師の判断があれば、整骨院での治療を認めるのが通常です。
一方で、整形外科から整骨院での施術を認めてもらえなかった場合、治療として必要な整骨院の施術ということが難しいため、整骨院に通院しても慰謝料の対象外とされることが見込まれます。

整骨院での施術は厳密には医療行為ではないため、医療行為との関係で必要であることを裏付けるためには、医師の判断が必要ということになるのです。

整骨院での施術を受けた場合、症状が和らぐ効果が期待できますが、施術によって症状が和らぐことは施術の必要性とは関係しないことに注意しましょう。あくまで、医学的な意見として施術の必要性が肯定されなければ慰謝料の請求根拠にすることは困難です。

③整骨院通院時の慰謝料の相場

整骨院通院時の慰謝料は、通院機関や実通院日数を基準に計算されます。
計算の方法(基準)としては、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準の3種類が設けられており、一般的に自賠責基準が最も低額、裁判基準が最も高額となる傾向にあります。

具体的な金額は、以下のように計算されます。

【自賠責基準の計算方法】

①対象日数「総治療期間」と「実通院日数×2」のいずれか小さい日数
②日額1日4,300円
③計算方法①対象日数×②日額=自賠責基準の金額

【任意保険基準の計算方法】

任意保険基準は,入通院期間を基準に,保険会社の内部で採用されている計算方法を用いて計算されます。
任意保険基準の代表的な金額は,以下の通りです。なお,1月=30日とみなして計算します。

任意保険基準の慰謝料(一例)

【裁判基準の計算方法】


裁判基準では,任意保険基準と同様,入通院期間を基準に計算しますが,その金額は任意保険基準より大きくなるのが通常です。
また,裁判基準の場合,他覚症状のないむち打ち(=軽傷)の場合(別表Ⅱ)とそうでない(=重傷)場合(別表Ⅰ)の二種類があり,重傷に用いられる別表Ⅰの方が金額が大きく定められています。

具体的な金額は以下の通りです。なお,1月=30日とみなして計算します。

裁判基準の慰謝料 別表Ⅰ(重傷)

裁判基準の慰謝料 別表Ⅱ(軽傷)

計算方法の詳細については、以下の記事でも紹介しています。
「交通事故の慰謝料とは?具体的な計算方法は?弁護士はなぜ増額させられる?弁護士に慰謝料交渉を依頼すべき場合も解説」

整骨院での施術を受ける実際の事例では、画像所見などのない受傷が多いため、裁判基準のうち別表Ⅱを用いた計算を想定することが一般的でしょう。

④整骨院と病院の慰謝料の違い

整骨院での施術の必要性が存在する限り、基本的に整骨院と病院の通院の間で慰謝料の違いは生じません。
自賠責基準、任意保険基準、裁判基準のいずれにおいても、慰謝料の計算上、整骨院の通院1日と整形外科の通院1日は同じ1日です。

ただ、相手保険会社のスタンスや個別事件の争点によっては、相手保険会社から整骨院通院分の慰謝料を小さく見積もった提示が行われるケースも否定はできません。
このような紛争を避ける趣旨では、整骨院の通院方法や期間、施術内容などについて、事前に相手保険会社と十分な情報共有や協議を行っておくことが有益です。

相手保険会社が裁判手続での決着を希望する(裁判を辞さない)ような場合でない限り、あからさまに整骨院通院分の慰謝料を小さく見積もることはあまり見られません。
少なくとも、明確な根拠なく「整骨院だから」という理由で慰謝料の減額が強いられることは考えにくいです。

整骨院通院で請求可能なその他の費用

①施術費用

交通事故の治療費は、事故の相手方が加入している自賠責保険や任意保険から支払われます。整骨院での施術費用は、医師の指示などによって施術の必要性が明らかである限り、原則として全額が補償の対象になります。
整骨院での施術内容は、電気治療やマッサージ、温熱療法などが多く見られますが、具体的な金額は施術内容や部位数などによって異なります。自分で施術費用を立て替えた場合には、必ず施術費用の領収書を保管しておきましょう。

事前に相手保険会社と十分な連絡を取っている場合には、保険会社が整骨院から直接施術費用の請求を受け、保険会社が整骨院に対して直接支払をしてくれることも多いです。立替えの手間が省ける点で有益なので、できる限り保険会社に直接支払ってもらうよう調整したいところです。

②通院交通費

交通事故の通院に伴う交通費は、実費として請求可能な損害項目です。通院1回あたりの交通費は、基本的に自宅から整骨院までの往復分が認められ、電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合はその運賃が、自家用車を利用した場合には1㎞あたり15円で換算されたガソリン代が、それぞれ通院交通費の金額となります。

その他、交通費に関連して請求し得る費用としては、以下のものが考えられます。

・駐車料金
→駐車場の料金が発生する場合、交通費の一部として請求可能であることが通常です。

・タクシー代
→通院のためタクシー移動した場合です。しかし、タクシー利用の必要性が前提になります。

・代車費用
→車での交通事故で代車を要した場合の費用です。もっとも、一般的には修理期間中の代車費用を物損の一部として支払うため、交通費として支払われることは通常ありません。

タクシー料金は、医師の指示などで必要性を示せる場合以外、支払を受けることは難しいです。
明らかに歩けないなど、車も公共交通機関も利用できないことが明らかなケースを除き、保険会社は消極的になりやすい傾向にあります。
ただ、公共交通機関の運賃相当額を受領する前提で、差額を自己負担してタクシー利用することは可能な場合も多いでしょう。

③休業損害

整骨院への通院に伴って休業が発生した場合、休業損害を請求できる可能性があります。
日額の具体的な計算方法は以下のとおりです。

【会社員(給与所得者)の場合】

事故前3か月分の給与を90で割る方法で算出するのが原則です。
交通事故の時点で3か月以上の就業継続がない場合は,上記の方法で計算ができないため,別途収入額の根拠を用いて計算します。具体的には,雇用契約書や事故直前の賃金台帳,給与明細などを用いて,事故当時の給与額を特定することがあります。

【自営業(事業所得者)の場合】

事故前年分の確定申告書における申告所得を基準に,365で割る方法で日額を算出するのが原則です。
開業後間もない場合など,事故前年分の確定申告書が存在しない場合には,事故直前の収入額に関する根拠資料を用いて個別に計算します。各種契約書,入出金が分かる帳簿や預金通帳の履歴など,収入減少を相手保険が理解できるよう,可能な限り詳細に説明することが適切です。

【主婦(家事従事者)の場合】

女性の平均年収を基準に,365で割る方法にて日額を算出するのが原則です。
平均年収は,いわゆる賃金センサス(「賃金構造基本統計調査」の結果)を基に計算するのが一般的です。

休業損害の計算については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
「交通事故の休業損害はいくらもらえる?正しい計算方法を知りたい,問題点や対処法を知りたい人に弁護士が分かりやすく解説」

整骨院の通院日に休業すれば全て休業損害が支払われる、というわけでない点には注意が必要です。
実際の保険会社対応でも、本当に休業しなければならなかったのか、という問題が生じることは少なくありません。

交通事故で整骨院に通院する際の注意点

①整形外科医師の許可を事前に得る

交通事故の治療で整骨院に通院する際は、必ず事前に整形外科医師の許可を得ることが重要です。保険会社は整骨院での治療に対して厳しい姿勢を示すこともあるため、整形外科医師の許可があることで、施術の必要性を裏付けることが肝要となりやすいでしょう。

整形外科医師の許可を得るためには、まず整形外科で診察を受け、医師に整骨院での施術の必要性を相談します。医師から「整骨院での治療が効果的」との判断を得られれば、その旨診断書に明記してもらったり、相手保険会社に伝えたりすることが適切です。整形外科医師の許可なく整骨院での治療を開始してしまうと、後々の慰謝料請求時に問題となる可能性が高まるため控えましょう。

整形外科医師の許可を得た上で整骨院に通院することで、治療費や通院慰謝料の支払いがスムーズになり、適切な補償を受けられやすくなります。医師の許可は、交通事故による怪我の治療に整骨院での施術が必要だという医学的根拠となるからです。

例外的に、通院が非常に少ない期間、回数で終了する場合には、医師の許可なくとも保険会社が整骨院の利用を認めることもあり得ます。
ただ、少なくとも、相手保険会社の了承を獲得することは事前に行った方が望ましいでしょう。

②整形外科と整骨院の併用が必要

整骨院での施術を受ける場合でも、整形外科への通院を一切しないことは控えるのが賢明です。整骨院では医療行為や医学的な診断ができないため、後に通院期間や通院の終了時期が問題になった場合などに不利益を被る恐れがあります。
整形外科への通院は、一般的には月に1回以上のペースでは行うことが望ましいでしょう。あまりに長期間空いてしまうと、治療の必要性を疑問視される恐れがあるため、一定のペースで整形外科を受診することをお勧めします。

実際のケースでは、「整形外科の最終通院日まで整骨院利用を認める」という結論になったこともあります。
その場合、整形外科の通院を怠ると不利益が大きくなってしまいますね。

③通院頻度

通院頻度は、基本的には症状の程度などによって個別に異なって問題ないところです。慰謝料請求との兼ね合いでは、概ね3日に1回以上のペースであると、金額面で不利益を被ることが防ぎやすいでしょう。

なお、通院頻度は、事故直後であるほど高く、治療終了が近づくほど徐々に低くなることが一般的です。逆に、ある時期から急に通院が多くなったり、ある日から全く通院しなくなったりしてしまうと、慰謝料の交渉に際してトラブルになる恐れもあるので注意しましょう。

慰謝料の増額目的で不自然な通院頻度になると、かえって慰謝料の金額が争いになりかねないため、控えることをお勧めします。

④後遺障害等級認定に必要な診断はできない

交通事故の後遺障害等級認定において、整骨院での診察や施術は認定の基準として認められていません。後遺障害の診断や等級認定には、医師による診察が必須となるためです。整骨院の柔道整復師は、骨折や脱臼、打撲、捻挫などの施術は可能ですが、後遺障害の診断書を作成する資格は持っていません。
保険会社との交渉においても、後遺障害の主張には医師の診断書が必要不可欠です。整骨院のカルテや施術記録だけでは、後遺障害の認定申請はできないことに注意が必要です。

後遺障害等級認定を視野に入れる場合は、定期的な整形外科通院がより重要になりやすいです。

整骨院への通院と慰謝料の問題は弁護士に相談するべき

交通事故で適切な整骨院利用を進めるためには、事前に弁護士への十分な相談やご依頼をお勧めします。弁護士のへの相談や依頼によって、以下のようなメリットが期待できます。

①適切な整骨院通院の方法を助言してもらえる

交通事故の対応に精通した弁護士であれば、どの程度の通院期間、通院日数でどの程度の慰謝料が発生するか、精度高く推測することが可能です。症状や忙しさとの兼ね合いも含めて、どの様な通院をすることで慰謝料の受領額が最大化できるか、という点についても、適切な助言をしてもらうことができるでしょう。
また、整骨院の通院が認められない、といった悩みを持つ場合にも、適切な対処法をアドバイスしてもらうことが可能です。後のトラブル防止のため、極力早期に弁護士へ相談されることをお勧めします。

②慰謝料の増額が期待できる

保険会社の運用上、交通事故の慰謝料は、弁護士の有無で金額が異なるのが一般的です。保険会社は、弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に慰謝料額を計算しますが、弁護士がいる場合には裁判基準を念頭に慰謝料額を計算するため、金額に差が生じやすいのです。裏を返せば、その差額が弁護士に依頼することのメリットとも言えます。

交通事故における慰謝料額の最大化は、適切な通院と弁護士の存在という両輪によってはじめて実現します。適切な通院を無駄にしないためにも、弁護士に依頼して慰謝料の増額交渉を行ってもらいましょう。

③弁護士費用特約が利用できる場合

弁護士費用特約を利用できれば、弁護士への相談や依頼にかかる費用を保険でカバーできます。一般的な弁護士費用特約では、着手金や報酬金など、交渉の依頼に必要な費用を一通り賄うことが可能です。
自分の加入している保険に弁護士費用特約が付いているか確認するためには、保険証券を確認するか、保険会社に直接問い合わせることが適切です。

弁護士費用特約を活用することで、経済的な負担を抑えながら、専門家による適切な法的サポートを受けられるため、特約の有無を正確に確認し、積極的に活用することをお勧めします。

弁護士費用特約の有無が分からない場合には、弁護士から保険会社に確認を取るなどすることも可能です。

交通事故での整骨院通院に関するよくある質問

①整骨院だけの通院は可能か?

交通事故の治療で整骨院のみに通院することは、基本的に推奨されません。整形外科などの医療機関での診察を受けずに整骨院だけに通院した場合、症状の重症度や治療の必要性を客観的に証明することが困難になってしまうためです。
基本的には、少なくとも整骨院の通院前に一度整形外科での受診を行われることをお勧めします。整形外科で診察を受けた後、医師から整骨院での施術を勧めてもらうことができれば、その後の通院が整骨院だけであっても相手保険会社とのトラブルにならない可能性が高くなります。

もっとも、個別のケースで慰謝料交渉に問題が生じないかは、具体的な検討・判断が必要です。弁護士に相談の上、適切な通院方法や慰謝料請求の進め方についてアドバイスを受けることをお勧めします。

②整形外科に許可してもらえなかった場合は?

整形外科医から整骨院への通院許可が得られなかった場合、保険会社は施術費用や慰謝料の支払いを拒否する可能性が高まります。このような状況では、まず別の整形外科を受診してセカンドオピニオンを求めることを検討するのも有力です。医師によって見解や対応が異なることは少なくありません。

他の整形外科で整骨院利用の指示や許可が得られそうであれば、整形外科を転院する選択もあってよいでしょう。ただし、転院の判断はできるだけ早期に行うことが肝要です。事故から長期間経過後に転院を試みようとしても、事故当時の症状を知らない医師の意見であるとして相手保険会社が争う姿勢を見せてくるケースがあるためです。

整形外科への初回通院時に、整骨院の併用を許可してもらえるかどうかは判断できることが通常です。医師の先生の許可が得られないと分かった段階で、速やかに転院を検討することが望ましいと考えます。

交通事故の慰謝料に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故における整骨院への通院は、被害者の回復にとって非常に重要な意味を持つ場合が多いものです。適切な整骨院利用を通じて、身体的な回復と金銭面の補償を両立することをお勧めいたします。


さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【後遺障害1級】主な症状や認定基準,賠償金額の具体的計算などを弁護士が解説

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害1級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害1級の認定基準

1級の認定基準一覧

要介護(別表第1)

要介護1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
要介護1級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

その他の後遺障害(別表第2)

1号両眼が失明したもの
2号咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3号両上肢をひじ関節以上で失つたもの
4号両上肢の用を全廃したもの
5両下肢をひざ関節以上で失つたもの
6号両下肢の用を全廃したもの

【要介護1号】神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

脳や神経に重大な障害が残った結果,生命維持に必要な身の回りの処理の動作が行えず,常に介護を要する場合を指します。

要介護1級1号に該当する神経系統の機能や精神への障害としては,脳の器質的損傷に伴う高次脳機能障害,脳挫傷や脊髄損傷などによる身体性機能障害などが挙げられます。
具体的な認定基準は,障害の具体的な内容によって個別に定められています。

【1.高次脳機能障害】

a.重篤な高次脳機能障害のため,食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの

b.高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため,常時監視を要するもの

【2.身体性機能障害】

a.高度の四肢麻痺が認められるもの

b.中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

c.高度の片麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

(四肢麻痺:四肢すべての麻痺)
(片麻痺:左右どちらか半身の麻痺)

中等度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,その基本動作にかなりの制限があるもの
(例)
・概ね500グラムのものを持ち上げられない
・文字を書くことができない
・障害のある片足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない
・杖や硬性装具なしには歩行が困難

高度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ基本動作(物を持ち上げて動かす・立つ・歩行するなど)ができないもの
(例)
・完全強直又はこれに近い状態(動かない)
・上肢の三大関節(肩・肘・手)及び5つの手指すべてが自分では動かせない
・下肢の三大関節(股・膝・足)すべてが自分では動かせない
・障害を残した片腕ではものを持ち上げて移動させることができない
・障害を残した片足では,支える力や思うように動かす力がほとんどない

【3.脊髄損傷】

a.高度の四肢麻痺が認められるもの

b.高度の対麻痺が認められるもの

c.中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

d.中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

(対麻痺:両上肢又は両下肢の麻痺)

【要介護2号】胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

「胸腹部臓器の機能障害」と呼ばれるものです。胸腹部の臓器に障害が残った結果,生命維持に必要な身の回りの処理の動作が行えず,常に介護を要する場合に,要介護1級2号の認定対象となります。

具体的な認定基準は,臓器ごとに定められていますが,要介護1級の対象として定められているのは呼吸器の障害のみです。
呼吸器に関する要介護1級2号の認定基準は,以下の通りです。

呼吸器

a.動脈酸素分圧50Torr以下のもので,呼吸器機能の低下により常時介護が必要なもの

b.動脈酸素分圧50Torr~60Torrで,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外(37Torr~43Torrの間にない)であり,
かつ,呼吸器機能の低下により常時介護が必要なもの

c.スパイロメトリーの結果が%1秒量35以下又は%肺活量40以下で,高度の呼吸困難があり,
かつ,呼吸器機能の低下により常時介護が必要なもの


→3級4号の基準を満たし,かつ常時介護が必要な場合に該当する

呼吸困難の程度に関する判断基準

高度呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中等度呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同じように歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行ができるもの
軽度呼吸困難のため、健常者と同じようには階段の昇降ができないもの

【1号】両眼が失明したもの

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

【2号】咀嚼及び言語の機能を廃したもの

そしゃく機能と言語機能の両方を「廃した」と評価される場合が該当します。

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

そしゃく状況報告表

「そしゃく機能を廃したもの」
=流動食以外は摂取できないもの

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

「言語の機能を廃したもの」
=4種の語音(口唇音,歯舌音,口蓋音,喉頭音)のうち,3種以上の発音不能のもの

【3号】両上肢をひじ関節以上で失つたもの

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.肩関節において、肩甲骨と上腕骨とを離断したもの
2.肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
3.ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【4号】両上肢の用を全廃したもの

「上肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

三大関節(肩関節・肘関節・手関節)の全てが強直(※)している
かつ
手指の全部の用を廃している

※関節が可動性を失い,動かなくなった状態

【5号】両下肢をひざ関節以上で失つたもの

「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.股関節おいて、寛骨と大腿骨とを離断したもの
2.股関節とひざ関節との間において切断したもの
3.ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【6号】両下肢の用を全廃したもの

「下肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

3大関節(股関節、ひざ関節、及び足関節)の全てが強直(※)した場合
(3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直した場合も含まれる)

※「強直」:関節が全く可動しない場合,又はこれに近い状態(※※)である場合
※※「これに近い状態」:自動の可動域が10%以下になった場合

後遺障害1級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害1級の場合,自賠責保険からは1,150万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は2,800万円となります。

後遺障害1級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害1級の場合は,労働能力喪失率が100%となります。

計算例
年収500万円,40歳,1級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×1.0×18.3270(27年ライプニッツ)
91,635,000円

後遺障害1級の将来介護費

①将来介護費とは

後遺障害が残ったことにより,被害者が介護を要する状況となった場合,その介護のために発生する費用将来介護費といいます。将来介護費の金額は,親族が行う近親者介護の場合と,業務として行う職業介護の場合とで変わります。職業介護の方が介護費用の日額が高くなるため,将来介護費の全体額も大きくなってきます。

②計算方法

【基本的な考え方】

将来介護費は,以下の計算式で算出されます。

将来介護費
=「介護費の日額」×365日×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

基本的な考え方は,1年分の介護費を日額×365で出し,これに生涯を遂げるまでの年数を掛け合わせる,というものです。もっとも,単純に「日額×365×平均余命の年数」としてしまうと,利息の分だけ金額が大きくなりすぎてしまうという問題があります。

法律上,金銭は利息を生むものと理解されています。本稿執筆時の法定利率は年3%であるため,100万円は1年後に利息3%を含む103万円の価値になっている,というのが法律の理解です。
そのため,将来受け取るはずだったものを今受け取る場合,受け取った時点から本来受け取るはずだった時点までの利息の分だけ,早く受け取った方が得をしているという考え方になるのです。

そのため,一括で支払う場合,この期間の利息(中間利息)を差し引いた金額を支払うのが適切ということになりますが,この中間利息を差し引くために用いられる数字が「ライプニッツ係数」です。

将来介護費の計算に当たっては,「日額×365×平均余命の年数」の金額から,利息分を差し引いた金額になる,との理解をすると適切でしょう。

【介護費の日額】

職業付添人による介護が必要か,近親者付添人の介護が可能か,という点の区別によって,日額が異なります。
職業介護の場合はその実費(概ね15,000円~20,000円ほど)が日額となり,近親者介護の場合は1日8,000円ほどを日額とみなす場合が多く見られます。近親者介護よりも職業介護の方が日額は大きくなるのが通常です。

計算例
令和4年症状固定,症状固定時40歳,要介護1級認定,職業介護(15,000円)

計算式
=「介護費の日額」×365日×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

=15,000円×365日×23.7014(42年ライプニッツ)
129,765,165円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

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【後遺障害2級】認定されるケースの症状は?認定された場合の補償金額は?

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害2級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害2級の認定基準

2級の認定基準一覧

要介護(別表第1)

要介護2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
要介護2級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

その他の後遺障害(別表第2)

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になつたもの
2号両眼の視力が0.02以下になつたもの
3号両上肢を手関節以上で失つたもの
4号両下肢を足関節以上で失つたもの

【要介護1号】神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

脳や神経に重大な障害が残った結果,生命維持に必要な身の回りの処理の動作に随時介護を要する場合を指します。

要介護2級1号に該当する神経系統の機能や精神への障害としては,脳の器質的損傷に伴う高次脳機能障害,脳挫傷や脊髄損傷などによる身体性機能障害などが挙げられます。
具体的な認定基準は,障害の具体的な内容によって個別に定められています。

【1.高次脳機能障害】

a.重篤な高次脳機能障害のため,食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの

b.高次脳機能障害による認知症,情意の障害,幻覚,妄想,頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの

c.重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが,1人で外出することなどが困難であり,外出の際には他人の介護を必要とするため,随時他人の介護を必要とするもの

【2.身体性機能障害】

a.高度の片麻痺が認められるもの

b.中等度の四肢麻痺であって,食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を必要とするもの

(片麻痺:左右どちらか半身の麻痺)
(四肢麻痺:四肢すべての麻痺)

中等度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,その基本動作にかなりの制限があるもの
(例)
・概ね500グラムのものを持ち上げられない
・文字を書くことができない
・障害のある片足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない
・杖や硬性装具なしには歩行が困難

高度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ基本動作(物を持ち上げて動かす・立つ・歩行するなど)ができないもの
(例)
・完全強直又はこれに近い状態(動かない)
・上肢の三大関節(肩・肘・手)及び5つの手指すべてが自分では動かせない
・下肢の三大関節(股・膝・足)すべてが自分では動かせない
・障害を残した片腕ではものを持ち上げて移動させることができない
・障害を残した片足では,支える力や思うように動かす力がほとんどない

【3.脊髄損傷】

a.中等度の四肢麻痺が認められるもの

b.軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

c.中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

(対麻痺:両上肢又は両下肢の麻痺)

軽度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われ,その基本動作における巧緻性や速度が相当程度損なわれているもの
(例)
・文字を書くことに困難が伴う
・概ね独歩だが,不安定で転倒しやすく,速度も遅い
・障害のある両足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない

【要介護2号】胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

「胸腹部臓器の機能障害」と呼ばれるものです。胸腹部の臓器に障害が残った結果,生命維持に欠かせない身の回りの処理に随時介護を要する場合に,要介護2級2号の認定対象となります。

具体的な認定基準は,臓器ごとに定められていますが,要介護2級の対象として定められているのは呼吸器の障害のみです。
呼吸器に関する要介護2級2号の認定基準は,以下の通りです。

呼吸器

a.動脈酸素分圧50Torr以下のもので,呼吸器機能の低下により随時介護が必要なもの

b.動脈酸素分圧50Torr~60Torrで,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外(37Torr~43Torrの間にない)であり,
かつ,呼吸器機能の低下により随時介護が必要なもの

c.スパイロメトリーの結果が%1秒量35以下又は%肺活量40以下で,高度の呼吸困難があり,
かつ,呼吸器機能の低下により随時介護が必要なもの


→3級4号の基準を満たし,かつ随時介護が必要な場合に該当する

呼吸困難の程度に関する判断基準

高度呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中等度呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同じように歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行ができるもの
軽度呼吸困難のため、健常者と同じようには階段の昇降ができないもの

【1号】一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になつたもの

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

また,後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【2号】両眼の視力が0.02以下になつたもの

同様に,矯正視力を基準に判断します。
矯正視力が両眼について0.02以下になった場合,認定対象になります。

【3号】両上肢を手関節以上で失つたもの

「上肢を手関節以上失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.ひじ関節と手関節との間で切断したもの
2.手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【4号】両下肢を足関節以上で失つたもの

「下肢を足関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.ひざ関節と足関節との間で切断したもの
2.足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの

後遺障害2級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害2級の場合,自賠責保険からは998万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は2370万円となります。

後遺障害2級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害2級の場合は,労働能力喪失率が100%となります。

計算例
年収500万円,40歳,2級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×1.0×18.3270(27年ライプニッツ)
91,635,000円

後遺障害2級の将来介護費

①将来介護費とは

後遺障害が残ったことにより,被害者が介護を要する状況となった場合,その介護のために発生する費用将来介護費といいます。将来介護費の金額は,親族が行う近親者介護の場合と,業務として行う職業介護の場合とで変わります。職業介護の方が介護費用の日額が高くなるため,将来介護費の全体額も大きくなってきます。

②計算方法

【基本的な考え方】

将来介護費は,以下の計算式で算出されます。

将来介護費
=「介護費の日額」×365日×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

基本的な考え方は,1年分の介護費を日額×365で出し,これに生涯を遂げるまでの年数を掛け合わせる,というものです。もっとも,単純に「日額×365×平均余命の年数」としてしまうと,利息の分だけ金額が大きくなりすぎてしまうという問題があります。

法律上,金銭は利息を生むものと理解されています。本稿執筆時の法定利率は年3%であるため,100万円は1年後に利息3%を含む103万円の価値になっている,というのが法律の理解です。
そのため,将来受け取るはずだったものを今受け取る場合,受け取った時点から本来受け取るはずだった時点までの利息の分だけ,早く受け取った方が得をしているという考え方になるのです。

そのため,一括で支払う場合,この期間の利息(中間利息)を差し引いた金額を支払うのが適切ということになりますが,この中間利息を差し引くために用いられる数字が「ライプニッツ係数」です。

将来介護費の計算に当たっては,「日額×365×平均余命の年数」の金額から,利息分を差し引いた金額になる,との理解をすると適切でしょう。

【介護費の日額】

職業付添人による介護が必要か,近親者付添人の介護が可能か,という点の区別によって,日額が異なります。
職業介護の場合はその実費(概ね15,000円~20,000円ほど)が日額となり,近親者介護の場合は1日8,000円ほどを日額とみなす場合が多く見られます。近親者介護よりも職業介護の方が日額は大きくなるのが通常です。

計算例
令和4年症状固定,症状固定時40歳,要介護2級認定,近親者介護

計算式
=「介護費の日額」×365日×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

=8,000円×365日×23.7014(42年ライプニッツ)
69,208,088円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

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【後遺障害3級】該当する症状の程度から請求可能な金額まで一挙解説

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害3級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害3級の認定基準

3級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの
2号咀嚼又は言語の機能を廃したもの
3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5号両手の手指の全部を失つたもの

【1号】一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

また,後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【2号】咀嚼又は言語の機能を廃したもの

そしゃく機能と言語機能のどちらかを「廃した」と評価される場合が該当します。

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

そしゃく状況報告表

「そしゃく機能を廃したもの」
=流動食以外は摂取できないもの

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

「言語の機能を廃したもの」
=4種の語音(口唇音,歯舌音,口蓋音,喉頭音)のうち,3種以上の発音不能のもの

【3号】神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

生命維持に欠かせない身の回りの処理はできるものの,労務はできない場合を指します。

神経系統の機能や精神への障害の代表例としては,脳の器質的損傷に伴う高次脳機能障害,脳挫傷や脊髄損傷などによる身体性機能障害などが挙げられます。
具体的な認定基準は,障害の具体的な内容によって個別に定められています。

【1.高次脳機能障害】

脳機能の4能力について,

①いずれか1つ以上能力が全部失われている
②いずれか2つ以上の能力の大部分が失われている

ことを要します。

高次脳機能障害の4能力

①意思疎通能力
→職場などで他人と適切にコミュニケーションできるか

②問題解決能力
→作業課題の指示や要求水準を正しく理解し,適切に判断して円滑に業務遂行できるか

③作業負荷に対する持続力・持久力
→一般的な就労時間に耐えられるか

④社会行動能力
→職場で他人と円滑な共同作業ができるか,社会的行動ができるか

なお,1か月に2回以上発作のある外傷性てんかんは,高度の高次脳機能障害を伴っていることが通常であるため,3級以上の高次脳機能障害の等級の中で評価されます。

【2.身体性機能障害】

中等度の四肢麻痺が認められるもの
(四肢麻痺:四肢すべての麻痺)

食事・入浴・用便・更衣等について常時又は随時介護を必要とするものは除く

中等度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,その基本動作にかなりの制限があるもの
(例)
・概ね500グラムのものを持ち上げられない
・文字を書くことができない
・障害のある片足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない
・杖や硬性装具なしには歩行が困難

【3.脊髄損傷】

脊髄の症状に伴い,以下のいずれかの状態にある場合

a.軽度の四肢麻痺が認められるもの
(食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を必要とするものは除く)
b.中等度の対麻痺が認められるもの
(食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を必要とするものは除く)

(対麻痺:両上肢又は両下肢の麻痺)

【4.失調・めまい・平衡機能障害】

生命維持に必要な身の回りの処理の動作は可能であるが,高度の失調又は平衡機能障害のため,労務に服することができないもの

【4号】胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

「胸腹部臓器の機能障害」と呼ばれるものです。胸腹部の臓器に障害が残った結果,生命維持に欠かせない身の回りの処理はできるものの,労務はできない場合に,3級4号の認定対象となります。

具体的な認定基準は,臓器ごとに定められていますが,3級の対象として定められているのは呼吸器の障害のみです。
呼吸器に関する3級4号の認定基準は,以下の通りです。

呼吸器

a.動脈酸素分圧50Torr以下のもの
(呼吸器機能の低下により常時又は随時介護が必要なものを除く)

b.動脈酸素分圧50Torr~60Torrで,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外(37Torr~43Torrの間にない)の場合
(呼吸器機能の低下により常時又は随時介護が必要なものを除く)

c.スパイロメトリーの結果が%1秒量35以下又は%肺活量40以下で,高度の呼吸困難がある場合
(呼吸器機能の低下により常時又は随時介護が必要なものを除く)

呼吸困難の程度に関する判断基準

高度呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中等度呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同じように歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行ができるもの
軽度呼吸困難のため、健常者と同じようには階段の昇降ができないもの

【5号】両手の手指の全部を失つたもの

「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。

1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害3級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害3級の場合,自賠責保険からは861万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は1990万円となります。

後遺障害3級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害3級の場合は,労働能力喪失率が100%となります。

計算例
年収500万円,40歳,3級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×1.0×18.3270(27年ライプニッツ)
91,635,000円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

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【後遺障害4級】主な症状や賠償金の相場などを弁護士が詳細解説

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害4級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害4級の認定基準

4級の認定基準一覧

1号両眼の視力が0.06以下になつたもの
2号咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3号両耳の聴力を全く失つたもの
4号一上肢をひじ関節以上で失つたもの
5号一下肢をひざ関節以上で失つたもの
6号両手の手指の全部の用を廃したもの
7号両足をリスフラン関節以上で失つたもの

【1号】両眼の視力が0.06以下になつたもの

後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。
両目について矯正視力が0.06以下になった場合,等級認定の対象になります。

【2号】咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの

そしゃく機能と言語機能の両方に「著しい障害」を残す場合が該当します。

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

そしゃく状況報告表

「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」
=粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

「言語の機能に著しい障害を残すもの」
=4種の語音のうち,2種の発音不能のもの又は綴音機能(語音を一定の順序に連結すること)に障害があるため,言語のみを用いては意思を疎通することができないもの

【3号】両耳の聴力を全く失つたもの

具体的な認定基準は以下の通りです。

①両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの

【一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係】

一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係

【両耳聴力と最高明瞭度の関係】

両耳聴力と最高明瞭度の関係

【4号】一上肢をひじ関節以上で失つたもの

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.肩関節において、肩甲骨と上腕骨とを離断したもの
2.肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
3.ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【5号】一下肢をひざ関節以上で失つたもの

「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.股関節おいて、寛骨と大腿骨とを離断したもの
2.股関節とひざ関節との間において切断したもの
3.ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【6号】両手の手指の全部の用を廃したもの

「手指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.中手指節関節又は近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が1/2以下に制限されるもの
3.親指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が1/2以下に制限されるもの
4.手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚完全に脱失したもの

(「障害認定必携」より引用)

【7号】両足をリスフラン関節以上で失つたもの

「リスフラン関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.足根骨(腓骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨)において切断したもの
2.リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離団したもの

(「障害認定必携」より引用 再掲)

後遺障害4級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害4級の場合,自賠責保険からは737万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は1670万円となります。

後遺障害4級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害4級の場合は,労働能力喪失率が92%となります。

計算例
年収500万円,40歳,4級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.92×18.3270(27年ライプニッツ)
84,304,200円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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【後遺障害5級】認定される類型や内容は?慰謝料などの金額は?

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害5級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害5級の認定基準

5級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの
2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4号一上肢を手関節以上で失つたもの
5号一下肢を足関節以上で失つたもの
6号一上肢の用を全廃したもの
7号一下肢の用を全廃したもの
8号両足の足指の全部を失つたもの

【1号】一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

また,後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【2号】神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

労務に服することはできるものの,脳や神経に対する重大な障害により,ごく軽い業務しか行えない場合を指します。

神経系統の機能や精神への障害の代表例としては,脳の器質的損傷に伴う高次脳機能障害,脳挫傷や脊髄損傷などによる身体性機能障害などが挙げられます。
具体的な認定基準は,障害の具体的な内容によって個別に定められています。

【1.高次脳機能障害】

脳機能の4能力について,

①いずれか1つの能力の大部分が失われている
②いずれか2つ以上の能力の半分程度が失われている

ことを要します。

高次脳機能障害の4能力

①意思疎通能力
→職場などで他人と適切にコミュニケーションできるか

②問題解決能力
→作業課題の指示や要求水準を正しく理解し,適切に判断して円滑に業務遂行できるか

③作業負荷に対する持続力・持久力
→一般的な就労時間に耐えられるか

④社会行動能力
→職場で他人と円滑な共同作業ができるか,社会的行動ができるか

【2.身体性機能障害】

軽度の四肢麻痺が認められるもの
中等度の片麻痺が認められるもの
高度の単麻痺が認められるもの

(四肢麻痺:四肢すべての麻痺)
(片麻痺:左右どちらか半身の麻痺)
(単麻痺:片手又は片足のみの麻痺)

軽度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われ,その基本動作における巧緻性や速度が相当程度損なわれているもの
(例)
・文字を書くことに困難が伴う
・概ね独歩だが,不安定で転倒しやすく,速度も遅い
・障害のある両足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない

中等度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ,その基本動作にかなりの制限があるもの
(例)
・概ね500グラムのものを持ち上げられない
・文字を書くことができない
・障害のある片足の影響で,杖や硬性装具なしには階段を上ることができない
・杖や硬性装具なしには歩行が困難

高度の麻痺とは

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ基本動作(物を持ち上げて動かす・立つ・歩行するなど)ができないもの
(例)
・完全強直又はこれに近い状態(動かない)
・上肢の三大関節(肩・肘・手)及び5つの手指すべてが自分では動かせない
・下肢の三大関節(股・膝・足)すべてが自分では動かせない
・障害を残した片腕ではものを持ち上げて移動させることができない
・障害を残した片足では,支える力や思うように動かす力がほとんどない

【3.脊髄損傷】

脊髄の症状に伴い,以下のいずれかの状態にある場合

a.軽度の対麻痺が認められるもの
b.1下肢の高度の単麻痺が認められるもの

(対麻痺:両上肢又は両下肢の麻痺)

【4.外傷性てんかん】

1ヶ月に1回以上の発作があり、かつその発作が転倒する発作等(※)であるもの
※転倒する発作:①意識障害の有無を問わず転倒する発作,又は②意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作

【5.失調・めまい・平衡機能障害】

著しい失調又は平衡機能障害のために,労働能力が極めて低下し,一般平均人の1/4程度しか残されていないもの

【3号】胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

「胸腹部臓器の機能障害」と呼ばれるものです。胸腹部の臓器に障害が残った結果,労務自体はできるものの特に簡単な軽作業しかできない場合に,5級3号の認定対象となります。

具体的な認定基準は,臓器ごとに定められています。

1.呼吸器

動脈酸素分圧50Torr~60Torrで,動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torr~43Torrの間)の場合

2.小腸の障害

a.人工肛門を造設したもののうち,小腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができないもの

b.小腸皮膚瘻を残すもののうち,瘻孔から小腸内容の全部または大部分が漏出し,小腸皮膚瘻周辺に著しいびらんが生じ、パウチなどの装着ができないもの(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)

3.大腸の障害

a.人工肛門を造設したもののうち,大腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができないもの

b.大腸皮膚瘻を残すもののうち,瘻孔から大腸内容の全部または大部分が漏出し,大腸皮膚瘻周辺に著しいびらんが生じ、パウチなどの装着ができないもの(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)

4.尿管,膀胱及び尿道の障害

非尿禁制型尿路変向術を行ったもので,尿が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ,パッド等の装着ができないもの

【4号】一上肢を手関節以上で失つたもの

「上肢を手関節以上失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.ひじ関節と手関節との間で切断したもの
2.手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【5号】一下肢を足関節以上で失つたもの

「下肢を足関節以上で失ったもの」とは

以下のいずれかの場合
1.ひざ関節と足関節との間で切断したもの
2.足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【6号】一上肢の用を全廃したもの

「上肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

三大関節(肩関節・肘関節・手関節)の全てが強直(※)している
かつ
手指の全部の用を廃している

※関節が可動性を失い,動かなくなった状態

【7号】一下肢の用を全廃したもの

「下肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

3大関節(股関節、ひざ関節、及び足関節)の全てが強直(※)した場合
(3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直した場合も含まれる)

※「強直」:関節が全く可動しない場合,又はこれに近い状態(※※)である場合
※※「これに近い状態」:自動の可動域が10%以下になった場合

【8号】両足の足指の全部を失つたもの

「足指を失ったもの」とは,足指を中足指節関節から失ったことを指します。つまり,足指をすべて失った場合を指すことになります。

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害5級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害5級の場合,自賠責保険からは618万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は1400万円となります。

後遺障害5級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害5級の場合は,労働能力喪失率が79%となります。

計算例
年収500万円,40歳,5級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.79×18.3270(27年ライプニッツ)
72,391,650円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【後遺障害6級】対象となる症状の類型や具体的基準,慰謝料額などを詳細解説

交通事故の被害に遭った際,治療が終了してもなお症状が残ってしまう場合には,後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。後遺障害等級が認定された場合,受領できる慰謝料額などが大きく変わるため,等級の認定基準を把握することは重要です。

自賠責保険では,1級から14級の後遺障害等級が定められており,それぞれに詳細な認定基準が設けられています。ここでは,後遺障害6級の対象となる症状や認定の基準,認定された場合の慰謝料額などを弁護士が解説します。

後遺障害6級の認定基準

6級の認定基準一覧

1号両眼の視力が0.1以下になつたもの
2号咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3号両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
4号一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
5号脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6号一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7号一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8号一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの

【1号】両眼の視力が0.1以下になつたもの

後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。
両目について矯正視力が0.1以下になった場合,等級認定の対象になります。

【2号】咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの

そしゃく機能と言語機能のどちらかに「著しい障害」を残す場合が該当します。

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

そしゃく状況報告表

「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」
=粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

「言語の機能に著しい障害を残すもの」
=4種の語音のうち,2種の発音不能のもの又は綴音機能(語音を一定の順序に連結すること)に障害があるため,言語のみを用いては意思を疎通することができないもの

【3号】両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの

具体的な認定基準は以下の通りです。

①両耳の平均純音聴力レベル80dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの

【一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係】

一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係

【両耳聴力と最高明瞭度の関係】

両耳聴力と最高明瞭度の関係

【4号】一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの

具体的な認定基準は以下の通りです。

1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上

かつ

他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上

【5号】脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの

背骨が基準以上に変形してしまった場合や,首から腰にかけて動かなくなってしまった場合に該当します。

「脊柱に著しい変形を残すもの」とは

脊柱に著しい変形を残すもの(6級)
1.複数の椎体の圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体1個分以上低くなっている場合
2.圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体2分の1個分以上低くなっており、かつ、コブ法による側彎度が50度以上ある場合

「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは

脊柱に著しい運動障害を残すもの(6級)
次のいずれかにより頚部および胸腰部が強直したもの
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

【6号】一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

上肢の三大関節(肩・肘・手首)のうち二つの関節で用廃となった場合に認定対象となります。

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
上肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
肩関節①屈曲(前方拳上)180度
肩関節②外転(側方拳上)180度
肘関節屈曲・伸展(※)145度・5度(合計150度)
手関節屈曲(掌屈)・伸展(背屈)(※)90度・70度(合計160度)
※肘関節と手関節は,「屈曲+伸展」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

肩関節の運動

肘関節の運動

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
肩関節①伸展(後方拳上)50度
肩関節②外旋・内旋60度・80度(合計140度)
手関節①橈屈25度
手関節②尺屈55度
橈屈と尺屈

【7号】一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

下肢の三大関節(股・膝・足首)のうち二つの関節で用廃となった場合に認定対象となります。

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
下肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
股関節①屈曲・伸展125度・15度(合計140度)
股関節②外転・内転145度・20度(合計65度)
ひざ関節屈曲・伸展130度・0度(合計130度)
足関節屈曲(底屈)・伸展(背屈)45度・20度(合計65度)
「屈曲+伸展」「外転+内転」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

股関節の主要運動

足関節の主要運動

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
股関節外旋・内旋45度・45度(合計90度)

【8号】一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの

「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。

1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害6級の慰謝料

等級ごとの後遺障害慰謝料

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害6級の場合,自賠責保険からは512万円の慰謝料が支払われます。また,裁判基準の慰謝料は1180万円となります。

後遺障害6級の逸失利益

後遺障害逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

このうち,労働能力喪失率は等級ごとに設けられており,等級が上位であるほど喪失率も大きくなります。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

後遺障害6級の場合は,労働能力喪失率が67%となります。

計算例
年収500万円,40歳,6級認定

計算式
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

=500万円×0.67×18.3270(27年ライプニッツ)
61,395,450円

後遺障害等級の認定を受ける方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

事前認定は,後遺障害診断書を相手保険に提出するのみで足りるため,手続が簡便であるというメリットがあります。一方で,自賠責保険に提出される資料は必要不可欠なもののみであるため,認定に有用な資料を追加で提出したい,という場合には適していません。
一方,被害者請求は,後遺障害診断書以外の提出書面も全て積極的に提出する必要があるため,手続負担が大きくなりやすいところです。しかし,提出できる資料は不可欠なものに限られず,判断に際して考慮してほしい資料や内容を任意に提出できるというメリットがあります。

後遺障害等級のうち,検査結果の数値で認定結果が決まる場合には,事前認定か被害者請求かという手段よりもその検査結果が重要になるでしょう。検査結果が認定基準を満たしている限り,どちらの方法でも差し支えないという結論になります。
一方,認定基準が数値だけでは判断できず,複数の事情を総合的に踏まえる必要がある場合,考慮してもらうべき事情を積極的に提出することが有益になり得ます。この点,必要な診断書等以外の資料を積極的に提出したい場合には,被害者請求の方法を取る必要があります。
そのため,数値で判断が可能な内容かどうかによって,事前認定と被害者請求を適宜選択することが有力でしょう。

弁護士依頼のメリット

①必要な対応を弁護士に任せることができる

交通事故被害に遭った場合,主に相手保険との間でやり取りが必要になり,その内容は多岐に渡ることが少なくありません。そのため,ただでさえ被害に遭って心身のダメージを抱えている中,相手保険への対応でさらに疲弊させられてしまうということが生じがちです。
この点,弁護士に依頼をすれば,その後の必要な対応を全て弁護士に任せることが可能です。弁護士に適切な対応をしてもらうことで,不要な負担を感じることなく解決を目指せるでしょう。

②後遺障害等級認定に必要なことが分かる

後遺障害等級認定を目指す場合,その等級認定基準を満たしていると判断してもらうことが必要になります。そうすると,あらかじめ等級認定基準を踏まえた上で,基準を満たす内容の資料を提出する形で申請を試みることが不可欠です。
しかしながら,等級認定基準を正確に把握することは,交通事故分野に精通していない限りは容易でありません。

この点,弁護士に依頼することで,等級認定基準を踏まえた申請の準備を弁護士に検討してもらうことが可能になります。そのため,後遺障害等級認定のために必要な対応が分かり,適切な申請ができるようになるでしょう。

③慰謝料などの増額が期待できる

交通事故の場合,弁護士が交渉を行うことで,慰謝料などの増額ができる場合が非常に多く見られます。これは,保険会社が,弁護士の有無で慰謝料などの賠償額を異にする運用をしているためです。
弁護士に依頼することで,慰謝料をはじめとした損害賠償額の増加が期待できるでしょう。また,後遺障害等級が認定された場合,後遺障害に応じた慰謝料なども発生するため,弁護士による増額の余地はさらに大きくなることが見込まれます。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

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