自転車窃盗で自首をする場合の方法や流れ,注意点などを知りたい方へ弁護士が詳細解説

このページでは,自転車窃盗事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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自転車窃盗事件で自首をするべき場合

①現行犯で発覚している場合

自転車窃盗事件は,現行犯で被害者や目撃者に発覚している場合,速やかな捜査で被疑者の特定に結びつく可能性が高くなりやすい傾向にあります。自転車窃盗の捜査が難航したり長期化したりするのは,主に事件の発覚が遅れてしまい,客観的な証拠が残っていない場合が挙げられますが,現行犯で発覚している場合には,証拠が散逸している可能性が低く,被疑者の特定が実現しやすいのです。

自首は,捜査がなされれば自分が被疑者と特定される,という場合に,先手を打って行うことで特に高い効果を発揮する動きです。自首をしなくても自分が被疑者と特定されてしまうのであれば,それに先立って自首をすることで,刑事処分の軽減が図れることになります。

そのため,自転車窃盗事件が現行犯で発覚したものの,その場を逃れてきたという場合には,後になって自分が被疑者と特定される可能性を踏まえ,自首をするメリットが大きくなりやすいでしょう。

ポイント
現行犯で発覚した自転車窃盗は,被疑者の特定に至りやすい

②反省・後悔の意思を表明したい場合

自転車窃盗事件の刑事処分は,反省や後悔といった情状面の事情が大きく影響することもあります。特に,被害の規模が小さいケースや,盗品の自転車が被害者の手元に戻ったため実質的な損害がないケースなどでは,反省の深さを考慮して不起訴処分を検討する余地も生じ得ます。

この点,反省や後悔を行動として表明する際の有力な手段が自首です。自首は,自らの犯罪行為を捜査機関に申告するものであって,刑事処罰を受けるリスクを背負った行為であるため,大きなリスクを背負ってでも反省の意思を表明したい,という気持ちがあると理解してもらうことが可能な動きです。自転車窃盗事件では,自首を行うほど反省を深めた被疑者である,ということを理由に不起訴処分とされることも少なくはありません。

反省の気持ちを具体的な行動に移したい場合には,自首をするメリットが非常に大きくなるでしょう。

ポイント
自転車窃盗の場合,自首が不起訴処分の理由となるケースもある

③周囲への発覚を防ぎたい場合

自首は,自ら捜査機関へ出頭する代わりに,事件の捜査をできるだけ穏やかな方法で行ってもらうことを期待する動きでもあります。自首をしない場合には家宅捜索などが必要と考えられるケースでも,自首をしているのであれば任意の提出に委ねてよい,と判断される可能性が高くなります。
自首をしている以上,証拠隠滅の恐れは想定しづらく,強制的な証拠収集の捜査を行う必要はないと判断してもらいやすいのです。

捜査方法が穏やかなものになれば,捜査を受けていることや事件の存在・内容などが周囲に発覚する可能性は非常に低くなります。一般的に,事件が周囲に発覚するのは,逮捕された場合や警察が自宅に来た場合などが代表例ですが,それらが行われず,周囲に発覚するきっかけが生じなければ,家族や職場などへの影響を防ぎながら解決を目指すことができるでしょう。

ポイント
自首をした場合,強制的な捜査は行われにくくなる

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

自転車窃盗事件の自首は弁護士に依頼すべきか

自転車窃盗事件の場合,自首をするかどうか検討をしている状況であれば,弁護士に相談・依頼をして専門的な判断を仰ぐことが有益でしょう。また,実際に自首を試みる場合には,弁護士に委任をして,警察とのやり取りを可能な限り弁護士に進めてもらうことが非常に有効です。

自転車窃盗事件の自首に関して,弁護士に依頼する具体的なメリットとしては,以下のような点が挙げられます。

①事件の法的な整理ができる

自転車窃盗事件は,事件の具体的な内容によって窃盗罪や占有離脱物横領罪など,該当する罪名が異なる可能性があります。また,自転車を乗り捨てる行為が犯罪に該当しないケースもあり得るため,自分の行為のうちどの点がどの犯罪に該当し得るか,という整理は意外に難しいものでもあります。

自首の検討をするためには,前提として自分のどの行為がどの犯罪に当たるのかを理解していなければなりません。自首は自分の犯罪事実を申告するものである以上,犯罪事実が分からないというわけにはいかないためです。

この点,弁護士に依頼をすることで,その点の法的な整理は全面的に弁護士へ委ねることが可能になるでしょう。あわせて,犯罪事実の内容を踏まえた自首のメリットデメリットを正確に理解することも容易になります。

②適切な手順で自首ができる

自首を行うとなった場合,では具体的に何をするのか,ということが明確にイメージできる人は少ないでしょう。自首という言葉やその意味は何となく分かるものの,実際に自首をするにはまずどうすべきか,と問われるとよく分からないことが多いはずです。

自首は,捜査機関に捜査を求める動きであって,対応する捜査機関にはやむを得ず負担が生じるものであるため,捜査機関に配慮した手順や流れで行うことが適切です。自首に際して,捜査機関への適切な配慮ができていれば,逮捕回避や処分軽減といった自首のメリットは受けやすくなるでしょう。

この点,弁護士に依頼をし,弁護士が主導する形で自首を進めることによって,捜査機関への配慮と円滑な自首を両立することが可能です。弁護士が必要なやり取りを代わりに行ってくれるため,負担の軽減につながる効果も大きいでしょう。

③示談の試みができる

自転車窃盗の事件では,示談の成否が最終的な処分結果を左右しやすい傾向にあります。そのため,刑事処分の軽減を目指して自首を行うのであれば,続けて示談の試みに移行することが適切でしょう。自首のみをして示談を試みないというのは,合理的な動きとは言い難いところです。

この点,示談の試みは,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にして行う必要があります。裏を返せば,自首の段階で弁護士に依頼している場合,既に窓口となる弁護士がいるため,速やかに示談の試みを進めることが可能になります。
速やかに示談ができれば,それだけ速やかな事件解決にもつながるため,そのメリットは非常に大きくなるでしょう。

自転車窃盗事件で自首をする場合の注意点

①捜査を誘発する可能性

自首は,自ら捜査機関に捜査を求める行為であるため,メリットが大きい反面リスクも小さくはありません。この点,自首の代表的なリスクは,自首をしたばかりに捜査を誘発する結果になり得る,という点です。

自分の中では,自首しなくても捜査が行われ,やがて自分の犯罪が明らかになってしまうという流れを思い描いていたとしても,実際が異なる場合はあり得ます。被疑者の特定に必要な証拠が不足していたり,そもそも捜査が開始されていなかったりすれば,自首が捜査のきっかけとなる可能性は否定できません。

自首を試みる場合には,自首が捜査を誘発する結果になってもやむを得ない,という発想で行うことが望ましいでしょう。

②捜査のスタートライン

自首は,あくまで捜査のスタートラインであって,その後に行われる捜査の方がむしろ刑事手続のメインになります。自首は心理的負担も大きいため,「無事に自首ができたから一段落」と感じてしまいがちですが,適切ではありません。自首が成立したことに満足し,その後の捜査対応をおろそかにしては本末転倒と言わざるを得ないため,十分に注意しましょう。

③自首先の判断

自首を行う場合には,どの警察署に対して行うべきか,警察署のどの課に対して行うべきか,という点に注意するとより円滑な手続が見込まれやすくなります。

自首を行う警察署の場所としては,基本的に事件発生地を管轄する警察であることが望ましいでしょう。具体的に事件の捜査を行う場合,事件発生地を管轄する警察が担当することになりやすいためです。
もっとも,住居地と事件発生地が遠く離れている場合には,事件発生地への自首が困難であるため,自宅の最寄りにある警察署でも問題はありません。

また,自首先に関しては,窃盗事件であるため刑事課(盗犯係)にするべきとも思えますが,逮捕勾留のない事件では,地域課の管轄とされていることが少なくありません。個別のケースに際しては,警察に問い合わせて直接確認するのが端的でしょう。

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自転車窃盗事件の取調べを弁護士が解説|呼び出しへの対応や自首の利点も網羅

このページでは,自転車窃盗事件で警察や検察の取調べを受ける場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
自転車窃盗の呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

自転車窃盗事件における取調べの対応法

①認め事件の初回呼び出し

事件の内容に争いがなく認めるケースでは,初回の呼び出しに際して認める方針であることを極力速やかに示すのが賢明です。

初回呼び出し前の段階では,捜査機関にとって被疑者のスタンスが分かりません。認めるか否認するか,どのような言い分を述べてくるのか,予想に限界があるため,最も対応に気を付けるべき否認や証拠隠滅の可能性を踏まえて望むことになるでしょう。
この点,できるだけ速やかに認めて争わないことを示せば,呼び出し後の手続は円滑になり,不要な負担を減少させることにもつながります。反省の態度を明らかにする趣旨でも,非常に有効な動きと言えます。

ポイント
認める方針であることをできるだけ早期に示す

②認め事件の2回目以降

認め事件における2回目以降の呼び出しに際しては,1回目の呼び出しで述べた内容を踏まえ,供述調書の作成などを行うことが想定されます。そして,捜査機関としては,1回目の呼び出しでなされた話を前提に,全ての段取りを想定していることが通常です。

そのため,呼び出された場合の対応としては,確実に出頭の上で,1回目と矛盾のない供述や対応に努めることが適切です。話すたびに内容が二転三転するのは,手続の停滞や長期化を招くのみでなく,自分の供述が信用できない,との評価につながりやすいため,避けることが賢明でしょう。

なお,1回目の呼び出しで事実でないことを話してしまった,という場合には,2回目の出頭より前の段階で訂正を申し出るのが円滑でしょう。多くの場合,1回目の呼び出しから日を空けて2回目の出頭日時を調整することになりやすいですが,2回目の出頭日時を相談する際にあわせて訂正を申し出るのは有力な手段です。

ポイント
1回目の供述内容を踏まえた供述調書の作成などが見込まれる
話が矛盾しないよう一貫した内容とすることが適切

③否認事件

否認事件の場合には,まず自分が何を疑われているのか,という被疑事件の具体的内容を把握するように努めましょう。疑われている内容を正確に理解することが,否認の第一歩となります。
また,被疑事件の内容を把握することで,その証拠関係を推測できるケースもあります。現場を録画した防犯映像はあるのか,目撃者はいるのかなど,証拠の有無や内容が分かれば,あらぬ疑いが生じている原因を突き止めるきっかけにもなります。

なお,これらの前提として,呼び出しに応じて出頭することは重要な対応です。呼び出しに対応させられることへの不満は募るものですが,かえって情報を得るチャンスと理解すれば,有益な機会とすることも可能になるでしょう。

ポイント
疑いの内容や証拠関係を把握する
呼び出しに応じることは非常に重要

自転車窃盗事件の取調べに応じたときの注意点

①記憶に乏しい場合

自転車窃盗事件でよく見られるのが,飲酒をした日の帰り道,というケースです。終電を逃した後,最寄り駅まで電車に乗った後など,徒歩が必要なタイミングで,目についた自転車を乗り捨ててしまう,というものです。
このような事件では,往々にして事件当時の記憶が乏しく,十分な供述ができないことも考えられます。それでも,呼び出しを受けて話を求められることは避け難いため,対応の仕方は十分に知っておくことが必要です。

この点,記憶に乏しい場合には,以下の点に注意することが適切でしょう。

記憶に乏しいときの対応

1.記憶がある部分とない部分を具体的に区別する
→漫然と「覚えていない」と供述するのは,手続の停滞や長期化を招く原因となるため,できるだけ避けるべき

2.記憶がない部分の認否を明確にする
→「覚えていない」との返答は基本的に「認めていない」という意味であるため,その認否が自分の真意と合致しているかは注意すべき

②単独での事件でない場合

自転車窃盗事件では,窃盗した自転車に二人乗りで移動したなど,単独の事件でない場合も少なくありません。このような場合には,自分以外の人物について何と話すのか,という点も検討する必要があります。
また,単独の事件でないことが明らかとなった場合には,他の関係者も呼び出され,話を聞かれることが見込まれます。そのため,他の人がどんな話をするのか,という点も自分の手続や処分に影響を及ぼす可能性があります。

この点,犯人隠避罪や証拠隠滅罪に該当する行為をしないことには,十分に注意をする必要があります。他人に自分の犯罪の証拠を隠滅させたり,自分が他人の犯罪の証拠を隠滅したりする行為は,証拠隠滅罪に該当し,別途刑事処罰を受ける可能性が生じます。なお,ここでの証拠には,物的なものだけでなく,人(人の話=供述)も含まれます。口裏合わせを試みることも含まれることになるため,注意すべきでしょう。

証拠隠滅行為が犯罪とならない場合

・自分の犯罪の証拠を自分で隠滅する

証拠隠滅行為が犯罪となる場合

・自分の犯罪の証拠を他人に隠滅させる
・他人の犯罪の証拠を自分が隠滅する

③自転車を処分するべきか

窃盗した自転車を所持している場合,これを手元に置いておくべきか処分すべきか,という点は悩みが生じやすいポイントです。

この点,少なくとも捜査を受けた後に処分することは,メリットに乏しく基本的に不合理と考えるのが適切でしょう。既に被疑者が特定されており,自転車が手元にあってもなくてもその責任が増減することは考えにくいためです。

一方,まだ捜査を受けていない場合については,自転車を処分することで自分が被疑者と特定されなくなるケースがあるかもしれません。もっとも,発覚した場合には悪質であると判断される原因になり得るので,非常に大きなリスクが伴うことは注意しておくべきでしょう。
また,証拠隠滅行為となり,他者を巻き込むと犯罪に該当するため,他者に相談したり他者と一緒になって行ったりすることは厳禁です。

自転車窃盗事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

自転車窃盗事件の場合,呼び出しに応じたことで逮捕される,という経過をたどることはほとんどないと考えられます。むしろ,逮捕を防ぐ意味では,呼び出しに応じることが最善の手段と言っても過言ではありません。

逮捕は,逃亡や証拠隠滅を防ぐために行われるものですが,呼び出しに応じる場合と応じない場合を比較すると,応じない場合の方が逃亡や証拠隠滅の危険は高いと理解されるのが通常です。そのため,呼び出しに応じることは,それだけで逮捕の必要が低いと理解してもらえる有益な行動と言えるでしょう。

なお,自転車窃盗事件では,以下のような場合に逮捕される可能性が高い傾向にあります。

自転車窃盗事件で逮捕されやすいケース

1.件数が多い

2.営利目的である

3.計画性・集団性がある

4.不合理な否認をしている

詳細は【自転車窃盗事件で逮捕される可能性】をご参照ください

例外的ではありますが,呼び出して話を聞いた段階で初めてこれらのケースに該当すると分かった場合には,逮捕リスクが高くなることも考えられます。もっとも,それは呼び出しに応じたことが原因ではなく,そもそもの事件の内容が原因ではあるため,やはり呼び出しに応じるべきであることに変わりはないでしょう。

自転車窃盗事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①被疑者特定後の取調べ目的

自転車窃盗事件では,盗難が発覚した段階では被疑者が分からず,その後の捜査で被疑者を特定できるに至る場合が多く見られます。そして,捜査機関が被疑者を特定した場合には,取調べのためにその被疑者を呼び出すことが一般的です。

この呼び出しは,被疑者が捜査機関を特定した後,あまり期間を空けずに行うことが通常です。具体的な時期は捜査に着手した時期等にもよりますが,事件後1~3か月間程度が目安になりやすいでしょう。
呼び出した際には,被疑者が認めるかどうか,認める場合にはどのような話をしてくれるか,という点を確認し,その後の捜査方針を決定することが見込まれます。呼び出しは,警察担当者から携帯電話等への電話連絡が行われることが一般的でしょう。

②現場の実況見分のため

自転車窃盗事件の捜査としては,事件現場の位置関係を具体的に把握することが必要です。事件現場を直接確認する捜査を「実況見分」と言いますが,実況見分に際しては被疑者を同席させ,被疑者に説明をさせながら確認を進めることが多く行われます。
そのため,事件の発生現場で実況見分を行う際には,呼び出しを受けることが見込まれやすいでしょう。

実況見分のための呼び出しは,取調べで一通りの話を聞いた後になされることが通常です。取調べの内容を踏まえて実況見分を行い,その結果を実況見分調書の形で証拠化することが目的であるためです。
具体的な呼び出しの時期は,捜査機関のスケジュールにも影響を受けますが,必要な取調べの後1週間~1か月ほどの時期が目安になりやすいでしょう。

③盗品の提出を求めるため

自転車窃盗の事件で最も重要な証拠は,実際に窃盗の対象となった自転車です。そのため,盗品である自転車が確保できるのであれば,捜査機関としては必ず一度手にし,写真撮影等して証拠化をすることになります。
また,盗難自転車は所有者の手元に返す必要があるところ,被疑者から直接被害者に返させるわけにはいかないため,一度警察で預かり,警察から被害者に手渡すのが通常です。

そのため,窃盗された自転車を被疑者が所持している場合には,その提出を求めるために呼び出されることが想定されます。
呼び出しの時期は,所持していることが分かってから間もないタイミングであることが通常です。日程の都合がつけられない等の事情がない限り,基本的には自転車の提出を優先して進めることになるでしょう。

呼び出しに関する基礎知識

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

自転車窃盗事件の自首

自転車窃盗事件で自首をするべき場合

①現行犯で発覚している場合

自転車窃盗事件は,現行犯で被害者や目撃者に発覚している場合,速やかな捜査で被疑者の特定に結びつく可能性が高くなりやすい傾向にあります。自転車窃盗の捜査が難航したり長期化したりするのは,主に事件の発覚が遅れてしまい,客観的な証拠が残っていない場合が挙げられますが,現行犯で発覚している場合には,証拠が散逸している可能性が低く,被疑者の特定が実現しやすいのです。

自首は,捜査がなされれば自分が被疑者と特定される,という場合に,先手を打って行うことで特に高い効果を発揮する動きです。自首をしなくても自分が被疑者と特定されてしまうのであれば,それに先立って自首をすることで,刑事処分の軽減が図れることになります。

そのため,自転車窃盗事件が現行犯で発覚したものの,その場を逃れてきたという場合には,後になって自分が被疑者と特定される可能性を踏まえ,自首をするメリットが大きくなりやすいでしょう。

ポイント
現行犯で発覚した自転車窃盗は,被疑者の特定に至りやすい

②反省・後悔の意思を表明したい場合

自転車窃盗事件の刑事処分は,反省や後悔といった情状面の事情が大きく影響することもあります。特に,被害の規模が小さいケースや,盗品の自転車が被害者の手元に戻ったため実質的な損害がないケースなどでは,反省の深さを考慮して不起訴処分を検討する余地も生じ得ます。

この点,反省や後悔を行動として表明する際の有力な手段が自首です。自首は,自らの犯罪行為を捜査機関に申告するものであって,刑事処罰を受けるリスクを背負った行為であるため,大きなリスクを背負ってでも反省の意思を表明したい,という気持ちがあると理解してもらうことが可能な動きです。自転車窃盗事件では,自首を行うほど反省を深めた被疑者である,ということを理由に不起訴処分とされることも少なくはありません。

反省の気持ちを具体的な行動に移したい場合には,自首をするメリットが非常に大きくなるでしょう。

ポイント
自転車窃盗の場合,自首が不起訴処分の理由となるケースもある

③周囲への発覚を防ぎたい場合

自首は,自ら捜査機関へ出頭する代わりに,事件の捜査をできるだけ穏やかな方法で行ってもらうことを期待する動きでもあります。自首をしない場合には家宅捜索などが必要と考えられるケースでも,自首をしているのであれば任意の提出に委ねてよい,と判断される可能性が高くなります。
自首をしている以上,証拠隠滅の恐れは想定しづらく,強制的な証拠収集の捜査を行う必要はないと判断してもらいやすいのです。

捜査方法が穏やかなものになれば,捜査を受けていることや事件の存在・内容などが周囲に発覚する可能性は非常に低くなります。一般的に,事件が周囲に発覚するのは,逮捕された場合や警察が自宅に来た場合などが代表例ですが,それらが行われず,周囲に発覚するきっかけが生じなければ,家族や職場などへの影響を防ぎながら解決を目指すことができるでしょう。

ポイント
自首をした場合,強制的な捜査は行われにくくなる

自転車窃盗事件で自首をする場合の注意点

①捜査を誘発する可能性

自首は,自ら捜査機関に捜査を求める行為であるため,メリットが大きい反面リスクも小さくはありません。この点,自首の代表的なリスクは,自首をしたばかりに捜査を誘発する結果になり得る,という点です。

自分の中では,自首しなくても捜査が行われ,やがて自分の犯罪が明らかになってしまうという流れを思い描いていたとしても,実際が異なる場合はあり得ます。被疑者の特定に必要な証拠が不足していたり,そもそも捜査が開始されていなかったりすれば,自首が捜査のきっかけとなる可能性は否定できません。

自首を試みる場合には,自首が捜査を誘発する結果になってもやむを得ない,という発想で行うことが望ましいでしょう。

②捜査のスタートライン

自首は,あくまで捜査のスタートラインであって,その後に行われる捜査の方がむしろ刑事手続のメインになります。自首は心理的負担も大きいため,「無事に自首ができたから一段落」と感じてしまいがちですが,適切ではありません。自首が成立したことに満足し,その後の捜査対応をおろそかにしては本末転倒と言わざるを得ないため,十分に注意しましょう。

③自首先の判断

自首を行う場合には,どの警察署に対して行うべきか,警察署のどの課に対して行うべきか,という点に注意するとより円滑な手続が見込まれやすくなります。

自首を行う警察署の場所としては,基本的に事件発生地を管轄する警察であることが望ましいでしょう。具体的に事件の捜査を行う場合,事件発生地を管轄する警察が担当することになりやすいためです。
もっとも,住居地と事件発生地が遠く離れている場合には,事件発生地への自首が困難であるため,自宅の最寄りにある警察署でも問題はありません。

また,自首先に関しては,窃盗事件であるため刑事課(盗犯係)にするべきとも思えますが,逮捕勾留のない事件では,地域課の管轄とされていることが少なくありません。個別のケースに際しては,警察に問い合わせて直接確認するのが端的でしょう。

自転車窃盗事件の自首は弁護士に依頼すべきか

自転車窃盗事件の場合,自首をするかどうか検討をしている状況であれば,弁護士に相談・依頼をして専門的な判断を仰ぐことが有益でしょう。また,実際に自首を試みる場合には,弁護士に委任をして,警察とのやり取りを可能な限り弁護士に進めてもらうことが非常に有効です。

自転車窃盗事件の自首に関して,弁護士に依頼する具体的なメリットとしては,以下のような点が挙げられます。

①事件の法的な整理ができる

自転車窃盗事件は,事件の具体的な内容によって窃盗罪や占有離脱物横領罪など,該当する罪名が異なる可能性があります。また,自転車を乗り捨てる行為が犯罪に該当しないケースもあり得るため,自分の行為のうちどの点がどの犯罪に該当し得るか,という整理は意外に難しいものでもあります。

自首の検討をするためには,前提として自分のどの行為がどの犯罪に当たるのかを理解していなければなりません。自首は自分の犯罪事実を申告するものである以上,犯罪事実が分からないというわけにはいかないためです。

この点,弁護士に依頼をすることで,その点の法的な整理は全面的に弁護士へ委ねることが可能になるでしょう。あわせて,犯罪事実の内容を踏まえた自首のメリットデメリットを正確に理解することも容易になります。

②適切な手順で自首ができる

自首を行うとなった場合,では具体的に何をするのか,ということが明確にイメージできる人は少ないでしょう。自首という言葉やその意味は何となく分かるものの,実際に自首をするにはまずどうすべきか,と問われるとよく分からないことが多いはずです。

自首は,捜査機関に捜査を求める動きであって,対応する捜査機関にはやむを得ず負担が生じるものであるため,捜査機関に配慮した手順や流れで行うことが適切です。自首に際して,捜査機関への適切な配慮ができていれば,逮捕回避や処分軽減といった自首のメリットは受けやすくなるでしょう。

この点,弁護士に依頼をし,弁護士が主導する形で自首を進めることによって,捜査機関への配慮と円滑な自首を両立することが可能です。弁護士が必要なやり取りを代わりに行ってくれるため,負担の軽減につながる効果も大きいでしょう。

③示談の試みができる

自転車窃盗の事件では,示談の成否が最終的な処分結果を左右しやすい傾向にあります。そのため,刑事処分の軽減を目指して自首を行うのであれば,続けて示談の試みに移行することが適切でしょう。自首のみをして示談を試みないというのは,合理的な動きとは言い難いところです。

この点,示談の試みは,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にして行う必要があります。裏を返せば,自首の段階で弁護士に依頼している場合,既に窓口となる弁護士がいるため,速やかに示談の試みを進めることが可能になります。
速やかに示談ができれば,それだけ速やかな事件解決にもつながるため,そのメリットは非常に大きくなるでしょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

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【自転車窃盗事件の逮捕】逮捕を防げる可能性はあるか?逮捕回避を積極的に試みる必要はあるか?

このページでは,自転車窃盗事件の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

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自転車窃盗事件で逮捕される可能性

自転車窃盗事件は,逮捕される可能性が類型的に高いというわけではありません。現行犯で発覚した場合,後日被疑者が特定された場合のいずれについても,逮捕されずにいわゆる在宅事件として取り扱われることは決して珍しくありません。

もっとも,自転車窃盗事件の中でも逮捕の可能性が高くなりやすいケースはあります。具体的には,以下のような場合が挙げられます。

自転車窃盗で可能性が高くなる場合

1.件数が多い

2.営利目的である

3.計画性・集団性がある

4.不合理な否認をしている

【1.件数が多い】

自転車窃盗事件で逮捕の可能性低くなるのは,その場の感情で行われた一回のみの犯罪行為である場合です。逆に,複数の余罪があるなど,決してその場の感情だけでは説明できない事件の場合,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

また,件数が多い場合,それだけ刑事責任も重くなるのが一般的であるため,刑事責任や最終的な処分が重くなることを踏まえた逮捕の可能性も高くなります。

【2.営利目的である】

自転車窃盗は,その場で自転車を使用する目的で行われるのが一般的です。徒歩で移動をしていたところ,より手軽な移動手段として自転車を利用したいと思った,という目的での事件がほとんどでしょう。

一方,自転車の財産的な価値に着目して,自転車を換価することで経済的な利益を得ようとする場合には,事件の性質が大きく異なります。通常,刑事事件は自己使用目的よりも営利目的で行われる場合の方が悪質と評価され,処分も重くなる傾向にあります。そのため,自転車窃盗についても,その場で乗るためでなく,利益を得るために行われた場合の方が,処分が重くなり,その処分を科す手続も逮捕を伴った厳重なものになりやすいでしょう。

【3.計画性・集団性がある】

刑事事件は,事前に計画が立てられていたり,集団で役割分担したりといったケースの方が,重大事件と評価されるのが通常です。自転車窃盗の場合,このような計画性や集団性のない場合がほとんどですが,逆に計画性や集団性が見受けられるケースでは,他の自転車窃盗事件よりも重い取り扱いの対象となるでしょう。

また,共犯者のいる事件では,共犯者間の口裏合わせを封じることが必要です。口裏合わせによる証拠隠滅を防ぐ手段としても,逮捕は活用される可能性が高くなるでしょう。

【4.不合理な否認をしている】

被疑者として犯罪事実を疑われている場合,基本的な対応は認めるか否認するかの二択です。この点,否認自体は問題のある行為ではありませんが,明らかに内容不合理な否認に終始していると,証拠隠滅の意思が強いと理解される恐れがあります。

この点,被疑者に証拠隠滅の意思が強いと思われる場合,証拠隠滅を防ぐ手段を取る必要がありますが,その代表的な方法が逮捕です。逮捕によって留置場に収容すれば,物理的に証拠隠滅の余地をなくすことが可能となります。

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

自転車窃盗事件で逮捕を避ける方法

①捜査を受けていない場合

自転車窃盗を行ってしまったものの,まだ捜査を受けていない場合,自分が被疑者と特定されていない可能性があります。このような状況では,自ら捜査機関に名乗り出て自首をすることで,逮捕を避けられる可能性が非常に高くなるでしょう。

自ら警察等に出頭し,自分の行ったことやその証拠を積極的に示せば,その後捜査を行うに際して逮捕が必要であるとは見なされにくくなります。捜査協力の姿勢を明確にすればするほど,逮捕の回避につながりやすくなると言えるでしょう。

②捜査を受けている場合

自転車窃盗事件で既に捜査を受けている場合,逮捕なく捜査されている状況なのであれば,基本的にはそのまま逮捕をしないで捜査を継続することが予定されていると考えられます。これは,捜査機関としては逮捕せずとも必要な被疑者の対応が得られると考えているためです。
そのため,逮捕回避のためには,捜査機関の期待に沿う形で必要な対応を尽くすのが適切でしょう。呼び出されたときに出頭する,求められた提出物は提出するなど,具体的な動きとしては「求めに応じる」というくらいで差し支えありません。

また,被害者との示談の試みも,逮捕回避の効果が期待できる動きの一つです。被疑事実を認め,被害者への謝罪や賠償を試みる姿勢を見せている場合,逮捕の必要が高いとは評価されにくく,逮捕回避につながる可能性は高いでしょう。

③否認事件の場合

見に覚えのない否認事件の場合,逮捕される筋合いはないと感じるところですが,逮捕自体は適法に行う余地があり得るため,自ら逮捕を招く行動を取ってしまわないよう気を付けるのが適切です。

具体的には,連絡が来たら応じる,出頭の求めには可能な範囲で応じる,という点を軽視しないようにしましょう。身に覚えがない事件で連絡への応答や警察への出頭を求められても,感情的には拒んでしまいたくなるところですが,感情的に拒むことで逮捕リスクを自ら高めることは合理的とは言えません。

否認事件ほど冷静に対処することを心掛けるのが賢明でしょう。

自転車窃盗事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

自転車窃盗事件で逮捕を防ぎたい場合,具体的な動きを弁護士に依頼することは非常に有力です。弁護士に依頼することで,以下のような利点が生じるでしょう。

①不適切な逮捕を抑制できる

捜査機関の取り扱いは,弁護士がいない場合よりもいる場合の方が慎重になることが一般的です。不用意な動きは,弁護士から咎められたり,場合によっては国家賠償などの法的責任を追及されたりする可能性があるため,弁護士に隙を見せないよう注意深くなることが通常です。
特に,逮捕のように被疑者(弁護士にとって依頼者)の不利益が非常に大きな手続は,弁護士の反発も強くなることが想定されます。そのため,反発への対処が困難になるような逮捕は行わない,という方針が取られやすくなります。

弁護士の目がある,というだけで防げることも決して少なくはありません。捜査機関の対応に信頼ができない場合には,弁護士が存在するという事実は特に効果を発揮しやすいでしょう。

②示談に着手できる

自転車窃盗事件の逮捕を防ぐ手段として,示談の試みは有力です。もっとも,示談を行うためには弁護士への依頼が必要となります。捜査機関は,当事者同士を直接引き合わせるわけにいかないためです。
示談を試みる場合,弁護士が捜査機関に示談希望の旨を申し入れ,捜査機関から被害者の意向を確認してもらうことになります。被害者が連絡先の交換を了承すれば,被害者と弁護士との間で連絡先を交換し,示談交渉が開始できることになります。

示談交渉の流れ

示談は極めて重要ですが,示談のスタートラインに立つだけでも弁護士が必要となります。弁護士に依頼することで,示談を通じた円滑な事件解決の可能性が生まれることとなるでしょう。

③否認する場合の言い分を正確に伝えられる

否認事件の場合,取調べを行う捜査官に自分の主張を伝えるのは心理的に負担の大きなものです。捜査機関側は自分を疑っている以上,時に強い口調で,時には頭ごなしに,自分の言い分を否定しようとしてくることも考えられます。
そのような状況下で,争点を踏まえて争点との関係で理路整然と整理された否認の主張を行う,というのは容易なことではありません。

この点,弁護士に依頼すれば,あらかじめ弁護士が主張の内容を捜査機関に示すなどして,言い分を正確に伝えるためのサポートをしてもらうことが可能です。捜査機関も,あらかじめ主張の内容が理解できていれば,取調べを円滑に行いやすく,不要な問答の負担が減少する効果につながりやすいでしょう。

自転車窃盗事件の逮捕に関する注意点

①現行犯逮捕の可能性

自転車窃盗事件は,事件現場やその付近で発覚することも相当数見られます。この場合,被疑者を現行犯逮捕するかどうか,という選択が生じますが,現行犯逮捕されると,その後に逮捕の回避を図ることは事実上困難となる点に注意が必要です。
刑事手続は遡って修正・変更などを行うことができないため,現行犯逮捕されてしまえば,逮捕されたことを前提とした手続を進めざるを得ません。

もっとも,自転車窃盗事件の場合,逮捕された場合でも,早期釈放の可能性は十分に考えられます。現行犯逮捕となったケースでは,できるだけ早く弁護士に相談・依頼をし,早期釈放を目指すことが有力でしょう。

②職務質問時の対応

自転車窃盗事件が発覚する経緯として代表的なものが,職務質問時の防犯登録の確認です。路上で職務質問を受け,自転車の防犯登録を確認したところ,所有者が一致しないと問題になるケースです。

この点,職務質問で盗品の自転車の防犯登録を確認された際には,逮捕リスクを自分で高めないよう注意することが適切です。具体的には,むやみな否認は避け,入手した経緯をありのまま話すことが基本の対応になるでしょう。
防犯登録の所有者と一致しないことは既に明らかであるため,犯罪の疑いは客観的に認められ,不用意な対応は逮捕の原因となりかねません。また,ありのまま話をしたとしても,現実に捜査や処分の対象となるかは,被害者側の対応によります。被害者が希望しなければ,現実には捜査や処分の対象にならない可能性もあり得るところです。

職務質問などで突発的に事件の疑いを把握した場合,その場を逃すと証拠隠滅が懸念されるため,捜査機関も慎重な検討を要求されます。それだけに逮捕リスクを高める動きは極力避けるのが,逮捕回避にとって重要な対応になるでしょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

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【自転車窃盗事件の不起訴処分】自転車窃盗で不起訴となるために重要な基礎知識を一挙解説

このページでは,自転車窃盗事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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自転車窃盗事件で不起訴を目指す方法

①自首を行う

自転車窃盗の事件は,特に内容が軽微と判断できる場合,深い反省を大きな理由に不起訴処分となる可能性が考えられる事件類型です。内容軽微と判断されるケースとしては,自転車の経済的価値がほとんどない,放置自転車であった,被害者の被害感情がない,といった場合が挙げられます。このようなケースでは,真摯に反省を深めており,再発の可能性がないと期待できる状況であれば,検察官の裁量で不起訴処分となる可能性もあり得るところです。

この点,深い反省を示す有力な手段の一つが自首です。自首は,自ら名乗り出て自分の犯罪行為を申告し,自分に対する刑事処分を求める行動であるため,犯罪行為に対する深い反省や後悔,責任を全うしたいという意思などが捜査機関に伝わりやすいという利点があります。
自首は,真摯な反省を外部に表明するために最初にできる行動ということできるでしょう。

自転車窃盗事件で不起訴処分を目指す場合,捜査を受けていない状況であれば,まずは自首を検討することが有力です。

ポイント
比較的軽微な自転車窃盗事件は,反省状況を踏まえて不起訴とされることもある
反省の意思を示す最初の手段が自首

②示談を試みる

自転車窃盗事件は,盗品となった自転車の所有者を被害者とする犯罪です。そして,被害者のいる事件で刑事処分を決める際には,被害者の意向が強く反映されやすい傾向にあります。
そのため,自転車窃盗事件の場合,被害者である自転車所有者の意向によって,起訴不起訴の判断が変わる可能性が非常に高いところです。

そうすると,自転車窃盗事件で不起訴を目指す場合には,被害者に不起訴を希望してもらうことが有益ですが,被害者に不起訴を希望してもらう手段が示談です。示談が成立した場合には,示談の内容に「被害者が不起訴を希望する」という旨を明記することになるのが一般的であるため,これを踏まえて不起訴とされる可能性が高くなるでしょう。

また,自転車窃盗は「財産犯」と呼ばれる事件類型であり,被害者に財産的なマイナスをもたらした犯罪行為への責任が問われることになります。そのため,示談によって被害者の財産的なマイナスを自発的に補填する動きを取ることは,犯罪の責任を事後的に軽減する意味でも不起訴処分を近づける効果が期待できるでしょう。

ポイント
被害者が不起訴を希望すれば,不起訴の可能性が高まる
財産的な損害を補填することで,刑事責任の軽減につながる

③事件の軽重を踏まえた処分を求める

自転車窃盗の場合,対象となった自転車の価値や保管状況などによって,その事件の軽重に大きな幅が生じやすいところです。例えば,財産的な価値が高く,厳重に管理されていた自転車を被害者の駐輪スペースから持ち出した場合と,無造作に横倒しされている長年使い古したような自転車を拾い上げて利用した場合とでは,その重さに差が生じるのは明らかです。

そして,事件が非常に軽いと評価する余地がある場合には,その事件の程度を踏まえて不起訴処分を求めることも有力な方針でしょう。起訴不起訴の処分は,先例を踏まえて矛盾の内容に行うことが一般的であるため,過去に類似の内容で不起訴とされている規模の事件であれば,不起訴処分の対象となる可能性はあり得ます。

ただし,事件の重さだけを踏まえて処分を決めるわけではないため,深い反省や再発防止策の実施など,不起訴処分を促す他の事情を可能な限り示すことも重要です。事件の軽重は,単独で処分を左右するものではなく,総合考慮されるときの判断材料の一つ,という理解をするのが適切でしょう。

ポイント
自転車の価値や保管状況により,事件の軽重には大きな差が生じる
軽微な内容の場合,不起訴処分を促す事情の一つになり得る

自転車窃盗事件で不起訴になる可能性

自転車窃盗の事件は,不起訴処分となる可能性が十分に考えられる事件類型です。他の窃盗事件と比較しても,不起訴処分となる余地が大きい傾向にあると言っても過言ではないでしょう。
自転車窃盗の場合で不起訴の可能性が高くなる要因としては,以下のような点が挙げられます。

自転車窃盗事件で不起訴処分の可能性が高まる要因

1.突発的な事件であることが多い

2.被害が大きくないことが多い

3.軽微な罪名に該当する可能性がある

【1.突発的な事件であることが多い】

自転車窃盗は,自転車を利用したいと考えたときに犯意が生じ,その直後に犯罪行為をする,という流れがほとんどです。事件が事前から計画的に進められていることは考えにくく,大多数が突発的なものになるでしょう。

刑事事件は,用意周到に計画を立てて行った場合よりも,その場の感情で突発的に行った場合の方が,責任が軽微と評価されやすい傾向にあります。計画的な事件は,それだけ悪質とみなされやすいためです。
裏を返せば,突発的な事件である自転車窃盗は,悪質である,刑事責任が重大であるといった理解にはつながりにくく,不起訴処分の可能性が十分に残りやすいところです。

【2.被害が大きくないことが多い】

自転車窃盗の被害は,自転車1台であることが通常です。そして,相当期間使用していた自転車である場合,経年劣化によって価値が減少していると評価されるため,時価額はそれほど大きくないことも少なくありません。

自転車窃盗事件も窃盗罪に該当する事件である以上,窃盗の対象となった財産の大きさは処分の重さに大きな影響を及ぼすことになります。この点,被害が大きくない自転車窃盗の場合には,刑事処分も大きなものにはなりにくく,不起訴処分に該当する可能性が高まりやすくなります。

【3.軽微な罪名に該当する可能性がある】

自転車窃盗の場合,基本的には窃盗罪の対象ですが,内容によっては占有離脱物横領罪に該当する場合であったり,それすら成立せず各都道府県の条例で取り締まられる場合であったりすることが考えられます。占有離脱物横領罪や条例違反に該当するケースの場合,窃盗罪よりも軽微な犯罪類型と評価されるのが通常です。

この点,窃盗罪より軽微な罪名に該当する自転車窃盗は,それだけ事件の内容が軽微であるため,刑事処分の結果も軽微なものになりやすいところです。窃盗罪に該当しない自転車窃盗の場合には,不起訴の可能性が類型的に高くなりやすいと言えるでしょう。

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

自転車窃盗事件で不起訴を目指す場合の注意点

①被害者の意向が反映されやすい

自転車窃盗事件の刑事処分は,被害者が起訴を望むか不起訴を望むか,という意向を反映した結果になりやすい傾向にあります。被害者のいる事件では,被害者の処罰感情が処分に直結しやすいですが,自転車窃盗の事件でもこの点は顕著に見られるところです。

これまで,自転車窃盗の事件では内容の軽微さを踏まえた不起訴処分の可能性があり得ることを指摘してきましたが,これはあくまで他の事件類型と比較して,という程度にとどまります。事件の重さと被害者の意向とでは,処分結果への影響力には歴然とした差があると言わざるを得ません。
そのため,被害者が刑事処罰を強く望んでいる状況で,被害者への示談の試みなく事件が軽微であると主張しても,不起訴処分となることは考えにくい場合がほとんどでしょう。事件の重さを指摘することよりも,被害弁償や示談を通じて被害者の処罰感情を緩和させる方がはるかに不起訴につながりやすいため,不起訴を目指す手段には注意が必要でしょう。

ポイント
事件の軽重よりも被害者の処罰感情の方が圧倒的に重要

②被害額の予測が難しい

自転車窃盗事件の被害額は,基本的に自転車の時価額ですが,一見してその金額を具体的に想定することは容易ではありません。ただ乗れればよい,と思って自転車窃盗をしたケースであっても,思いのほか価値の高い自転車であったということは十分に考えられます。

また,示談交渉をする際には,自転車窃盗によって被害者が被った損害を考慮する必要がありますが,どのような損害が生じたかは被害者の行動やスケジュールなどによっても様々です。例えば,自転車レースへの出場を逃した,自転車でしか移動できない大事な予定に支障が生じたなど,被害者側の事情によって損害が広がる可能性も否定できません。

一般的には,明らかに高価な自転車である場合を除き,損害額があまりに大きくなることは考えにくいところですが,特に示談交渉に際しては被害額の予測が困難な可能性に注意をしておくのが望ましいでしょう。

ポイント
被害者にどのような損害が生じたかは,事前には分からないことも多い

③記憶に限りがある場合の対応

自転車窃盗事件の中には,酩酊状態など記憶に限りのある状況で起きるものも珍しくありません。飲酒を伴う飲食の帰り道に,徒歩が億劫になって付近の自転車を乗り捨ててしまう,といったケースが一例です。
このようなケースでは,事件後に行動の流れや窃盗行為の内容を聞かれても,十分に答えられないことが考えられます。記憶自体が不足している以上,やむを得ないところがあります。

もっとも,記憶に限りがある場合に,「覚えていない」と対応を諦めてしまったりいい加減な返答に終始したりすることはお勧めできません。記憶が不十分であるからこそ,丁寧な対応を心掛けるのが有益です。

具体的には,認否を明確にすることが非常に重要となりやすいでしょう。
「覚えていない」という供述は,基本的に認めないスタンスとみなされやすいものです。少なくとも認めていないため,認め事件とは扱われません。しかしながら,「覚えていないものの否認の意思はない」という場合,単に「覚えていない」と回答するのは意図に反した取り扱いを招く結果となってしまい,適切ではありません。

特に認める方針の場合には,認否を明確に示すことに注意しましょう。

ポイント
記憶がない旨の供述は,認めているとは評価されない

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【自転車窃盗事件の弁護士選び】自転車窃盗の特徴を踏まえた弁護士選択の方法を解説

このページでは,自転車窃盗事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

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自転車窃盗事件で弁護士を選ぶタイミング

①自首を検討するとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

自転車窃盗の事件では,現行犯で発覚する場合を除き,事件が発生してから加害者が特定されるまでの間に一定の期間が生じる場合が多く見られます。そのため,自転車窃盗事件の加害者となってしまったケースで,自分が加害者と特定されていない段階では,自首を検討することも有力な手段の一つです。自分が加害者と特定される前であれば,自首が成立し,刑事処分の軽減を期待することもできるでしょう。

もっとも,本当に自首をすべきかどうか,自首をする場合にどのような手順・方法で行うか,という点は,当事者自身での判断が困難なポイントです。自首を試みようと考えるときには,適切な弁護士選びの上で,弁護士とともに検討・行動をするのが適切でしょう。

ポイント
現行犯以外の自転車窃盗は,加害者の特定に時間がかかりやすい
自首すべきか,自首の方法をどうすべきかは,弁護士の判断を仰ぐべき

②出頭要請を受けたとき

自転車窃盗の事件で捜査を受ける場合,後日になって警察から出頭要請を受けることが考えられます。これは,多くの場合,被疑者を特定した後に,その被疑者に対する取調べを行う目的でなされるものです。
そのため,出頭要請を受けたときには,その後に行われるであろう取り調べの対応について事前に検討しておく必要があります。想定される質問や質問への回答方法・内容を整理し,取り調べに備えることは非常に重要でしょう。

しかしながら,出頭後の取り調べに対してどのように対応するのが適切かを自分の力で整理するのは容易でありません。取り調べを受けた経験のある人でなければ,取り調べがどのように行われるかを想像することも困難でしょう。
そこで,出頭要請を受けて取り調べの予定が明らかになったタイミングで,弁護士を選ぶことが有力な選択肢になります。適切な弁護士選びができれば,出頭時の対応が万全になるほか,その後の弁護活動も充実したものになるでしょう。

③示談を試みたいとき

自転車窃盗は,個別の被害者に対する窃盗事件であるため,被害者側の意向が刑事処分を大きく左右します。被害者との間で示談が成立し,被害者が加害者の処罰を希望しないとの意向を示せば,通常の自転車窃盗事件は不起訴処分となることが一般的でしょう。

この点,示談交渉には弁護士が不可欠となります。示談を試みるためには,弁護士を介して捜査機関に連絡し,被害者と弁護士との間での連絡を始めてもらう必要があるためです。

示談交渉の流れ

そして,示談の成否やその内容は,担当する弁護士によって様々に変わりやすいものです。示談における合意内容は当事者間の自由であり,無数の選択肢があるため,示談交渉の巧拙が示談の内容に直結することも珍しくありません。
そのため,示談を試みたいときには示談に精通した適任の弁護士を選ぶ必要があるでしょう。

④事件が発覚したとき

自転車窃盗の事件は,被害者がその被害を把握したタイミングで発覚することがほとんどです。そのため,事件が発覚するかどうかは,被害者側の対応に大きく左右されます。

この点,被害者が日常的に使用している自転車であったり,被害者にとって思い入れのある自転車であったりすれば,事件はすぐに発覚するでしょう。しかし,放置自転車のように被害者がさほど必要としていない自転車の場合には,後日,自転車の防犯登録を確認した警察官から連絡を受け,初めて被害を知るという経過をたどることも珍しくはありません。
加害者の立場としては,いつ事件が発覚するか,という点を具体的に見定めることが困難となりやすいですが,裏を返せば,被害者に事件が発覚した段階では,その後の対応を具体的に検討すべきである,ということができます。

自分の事件が被害者に発覚したと判断できる場合には,弁護士選びを行い,解決に適した弁護士に依頼することをお勧めします。

ポイント
自転車窃盗は被害者に発覚したタイミングで捜査が開始されやすい
被害者に発覚した段階で,具体的な対応策の検討を行うのが適切

自転車窃盗事件の弁護士を選ぶ基準

①自転車窃盗という事件類型への理解

自転車窃盗の事件は,具体的な内容によって,以下のように該当する刑罰法令が異なる可能性があります。

一般的な自転車窃盗窃盗罪 10年以下の懲役又は50万円以下の罰金
放置自転車占有離脱物横領罪 1年以下の懲役又は10万円以下の罰金
ゴミの場合自治体によっては窃盗罪や条例違反になる可能性あり

また,自転車窃盗に伴って他の犯罪が成立する場合もあります

器物損壊罪 3年以下の懲役又は30万円以下の罰金
自転車窃盗の際にカギを壊すと,カギを壊してしまった行為について別途器物損壊罪が成立します。
その他,駐輪場に設置してある機材を壊した場合にも器物損壊罪の対象となるでしょう。

住居侵入罪・建造物侵入罪 3年以下の懲役又は10万円以下の罰金
自転車窃盗のために他人の住居やその敷地に侵入した場合には,住居侵入罪や建造物侵入罪が成立します。
一般的には,戸建ての住宅やマンションの専有スペースへの侵入は住居侵入罪,マンションの共用スペースへの侵入は建造物侵入罪に当たるでしょう。

当然ながら,どの罪に当たるかによって,その後の取り扱いも最終的な処分の見込みも異なりやすいです。また,被害者との示談を試みる場合にも,どの罪に当たる内容かという点が示談の方法・内容に影響を及ぼしやすいでしょう。

このように,自転車窃盗の場合,一口に自転車窃盗と言っても様々な罪名に該当し得るものですが,これは他の事件類型にはない自転車窃盗の特徴とも言えます。そして,この自転車窃盗の特徴を踏まえているかどうかによって,弁護活動の内容や結果に大きな差が生じる可能性があります。

自転車窃盗の弁護士を選ぶ場合には,事件類型の特徴に理解があるか,という点を重要な基準とするのがよいでしょう。

②見込まれる刑事手続の理解

適切な弁護活動を行うには,今後にどのような手続が見込まれるか,正しく理解していることが不可欠です。今後なされる手続を把握していなければ,手続の中で何を行うべきかも判断できないためです。

そのため,弁護士選びに際しては,個別事件の内容を踏まえて,今後に見込まれる刑事手続を具体的に見通せている弁護士か,という点を重要な判断基準とすることをお勧めします。手続の見通しが具体的であることは,弁護活動の内容が具体的であることにもつながるため,安心して弁護士に依頼できる結果にもなるでしょう。

③弁護方針の具体的内容

弁護士選びは,依頼した際にどのような弁護方針で活動してくれるか,という点を慎重に検討して行うことが必要です。依頼した結果,弁護方針が希望と合致していなかったり,弁護方針に違和感があったりすれば,弁護士選びはうまくいかなかったと言わざるを得ないでしょう。

そのため,弁護士選びの際には,その弁護士がどのような方針で弁護活動をしてくれるのか,可能な限り具体的に把握することをお勧めします。例えば,認め事件であれば示談を試みることが有力ですが,一口に示談を試みると言っても,示談金額はどの程度を想定するか,示談金以外の示談条件として考えられるものはあるか,謝罪の意思を伝える方法はどうするか,事件の経緯や具体的内容についてはどのように説明するかなど,事前に決めなければならない具体的な内容は少なくありません。

弁護方針が具体的であればあるほど,その弁護士は弁護活動のイメージを詳細に持てているということが分かります。これは,弁護士に経験値や解決能力があることの端的な現れでもあるので,弁護士選びに際しては注意してみるとよいでしょう。

④弁護士との連絡方法・頻度

弁護士と連絡を取る方法や連絡の頻度は,弁護士により様々です。特に,「弁護士と連絡したくても連絡が取れない」という問題は,セカンドオピニオンとして相談をお受けする場合に最も多く寄せられるお話の一つです。
電話をしても常に不通となって折り返しがない,メールへの返信も全くない,といったように,弁護士との連絡が滞るという問題は生じてしまいがちです。

そのため,弁護士とはどのような方法で連絡が取れるか,どのような頻度で連絡が取れるか,という点を重要な判断基準の一つとすることは,事件解決のために有力でしょう。

なお,法律事務所によっては,事務職員が窓口になって弁護士が直接には対応しない運用であるケースも考えられます。そのような運用が希望に合わない場合は,依頼後の連絡方法を具体的に確認することも有益でしょう。

自転車窃盗事件で弁護士を選ぶ必要

①不起訴処分のため

刑事事件の被疑者となった場合には,最終的な結果として不起訴処分となることを目指すのが通常です。検察は,捜査を遂げた段階で「起訴」するか「不起訴」とするか判断をしますが,起訴されれば裁判所から刑罰を言い渡される可能性が高く,不起訴となれば刑罰を受けることなく手続が終了するため,その差は極めて大きなものとなります。
そのため,不起訴処分を目指すことが,刑事事件における最大の目標と言っても過言ではないでしょう。

この点,不起訴処分となるかどうかは,高度に法的な問題となることがほとんどです。認め事件であれば,「犯罪事実があるにもかかわらず不起訴とする」ための法的な根拠が必要ですし,否認事件であれば,「犯罪事実が立証できないから不起訴とする」という判断を引き出す必要があります。
これらは,過去の先例や個別の証拠を踏まえ,法的に整理した上での判断が必要となるため,法律の専門家以外には対応が困難と言わざるを得ないでしょう。

そのため,不起訴処分を獲得するという最大の目標を実現する手段として,弁護士を選ぶことは非常に重要と言えます。

②早期釈放のため

自転車窃盗の場合,逮捕されてしまったとしても,早期釈放の可能性がないわけではありません。むしろ,事件によっては早期釈放を見込むことのできるケースも珍しくはないでしょう。

しかしながら,実際に早期釈放を目指す動きを取るためには,弁護士の存在が不可欠です。手続の局面に応じて,適切な申立てなどを行うためには,手続に精通した弁護士に依頼するほかないためです。

逮捕後の早期釈放を目指すためには,できる限り速やかに弁護士選びをすることをお勧めします。なお,身柄拘束されている場合,弁護士選びが遅くなればその分だけ拘束期間が長くなってしまうため,弁護士選びの早さも大切なポイントとして留意することが望ましいでしょう。

③家族や関係者との連携のため

身柄事件の場合,逮捕勾留されたご本人は,自分で外部と連絡を取ることができません。電話を携帯することも認められないため,連絡を取るための手段は以下のような方法に限られます。

逮捕勾留中に外部と連絡を取る手段

1.手紙の送受
→数日~1週間ほどのタイムラグが避けられない

2.(一般)面会
→時間制限が厳しい。接見禁止の場合は面会自体ができない

3.弁護士の接見
→時間的制限なくコミュニケーションが可能

手紙の送受は現実的でなく,面会の時間制限の中で必要な連絡をすべて取ることも難しいため,ご本人と周囲との連絡には弁護士の接見を活用することが不可欠になりやすいでしょう。
身柄事件で必要な連絡を取り合うためには,弁護士への依頼が適切です。

④適切な取り調べ対応のため

刑事事件の捜査では取調べが不可欠です。特に,被疑者への取調べは捜査の中核であって,被疑者からどのような話が引き出せるかによってその後の捜査が決定づけられる事件も少なくありません。

逆に,被疑者の立場にある場合,取調べにどのような対応を取るのが最も有益であるのかを把握していることは非常に重要です。自分が何を話すか,どのように話すかによって,その後の捜査や処分が決定づけられる可能性もあるため,取調べ対応の方法・内容は十分に検討する必要があるでしょう。

この点,個別の事件に応じてどのような取調べ対応をすべきかは,弁護士の法的な判断を仰ぐことが適切です。そのため,取調べ対応に万全を期すためには,弁護士選びが重要なポイントとなるでしょう。

自転車窃盗事件における弁護士選びの準備

①事件の内容を詳細に伝える準備

自転車窃盗の事件では,具体的な状況や内容によって該当する罪名が変わる可能性があります。そして,罪名が変わるほど事件の内容が異なれば,処分の見通しや弁護活動の方針が異なる場合もあり得るところです。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士に事件の情報を漏れなく伝え,弁護士の誤解を招かないようにすることが重要となります。弁護士選びに際しては,弁護士との相談が不可欠ですが,相談に際して事件の詳細を伝える準備はしっかりとしておくようにしましょう。

②現在の状況を正確に伝える準備

現在どのような状況に置かれているか,という事情によって,取るべき行動やなすべき弁護活動が変化することは珍しくありません。例えば,既に捜査を受けているのか,まだ呼び出されたことがないのか,被害品の自転車をまだ所持しているのか,既に処分してしまったのかなど,状況や局面が異なれば,弁護士の見立てや案内も異なることになりやすいでしょう。

弁護士選びに際しては,事件との関係で自分が置かれている現在の状況を,弁護士に正確に伝えられるようにしましょう。適切な弁護士に相談できれば,その断片的な内容から,今後の見通しを正確に持てる場合も少なくありません。

③予算額の検討

自転車窃盗の事件では,特に認め事件の場合,被害者との間で弁償や示談の動きを試みるのが有力です。自転車窃盗事件は,自転車を失った損害に対する刑事責任が問われることになるため,被害者側に一定の金銭を支払い,損害を埋め合わせることができれば,刑事処分はそれだけ軽減する可能性が高くなります。

もっとも,自転車窃盗で示談を試みるためには,弁護士費用の負担も不可欠です。依頼者側の金銭的負担は,被害者への支払と弁護士費用の二つがあり,その両方を負担できることが弁護士選びの前提となります。

そのため,弁護士選びに際しては,予算額を事前に想定し,予算の範囲内で依頼が可能かを検討するようにしましょう。事前に予算額を見積もることが難しい場合には,いくつかの法律事務所に相談を試み,弁護士費用のイメージを持つことも有力です。

自転車窃盗事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①相談時間の制限

弁護士への法律相談は,30分以内,又は1時間以内といった形で時間を区切って行われるのが通常です。その時間内で,必要な情報を伝え,弁護士から案内を受け,弁護士選びの検討を行う必要があります。
もっとも,その時間は決して長くはありません。無意識に相談時間を浪費してしまうと,肝心の弁護士選びに必要な話が聞けないまま相談が終了してしまう可能性もあるでしょう。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士への法律相談に時間的な制限があることを踏まえ,弁護士選びの基準や聞きたいことなどを可能な限り整理して法律相談に臨むことをお勧めします。そのようなスタンスは,法律相談をより有益な内容とする結果にもつながるでしょう。

②弁護士との相性の重要性

依頼者も弁護士も人である以上,相性の問題を避けて通ることはできません。依頼者目線では,相性が良くないと感じながら弁護士に依頼するメリットはないと考えるべきでしょう。

この点は,最善の解決に至ればそれほど大きな問題にはなりません。しかしながら,弁護活動は事前に最善の結果になるとお約束することが不可能であり,どうしても結果が伴わない場合があります。示談を試みたものの被害者に拒否された,全部無罪を主張したものの一部の主張が認められなかった,といった場合が代表例でしょう。

そして,弁護士との相性を軽視することは,最善の結果でなかった場合に大きな問題となります。弁護士が最善の活動をしてくれたのか,結果はやむを得ないものだったのか,という点について疑念が生じやすくなるためです。
弁護士との相性が良く,弁護士の活動を心底信頼できれば,心から「やむを得なかった」と納得しやすいですが,相性が悪いと感じている場合にはそうもいかないことが多くなりがちです。

弁護士との相性を率直にどう感じるか,という点は,弁護士選びに際して軽視しないことが適切でしょう。

③弁護士によって案内が異なる可能性

自転車窃盗の事件では,処分の見通しなど,案内の内容が弁護士によって異なることも少なくありません。特に,起訴されるか不起訴になるか,という点は,法律相談の段階で具体的に見通すことが困難な場合も多く,確実に回答できないという方がむしろ自然でしょう。

そのため,ある弁護士に相談した結果と他の弁護士に相談した結果が異なる場合もありますが,それはどちらかが誤っているというよりも,見通しの不透明さが影響した結果と理解すべきものです。それにもかかわらず,「どちらの回答が正しいのか」という視点で結論を出そうとすると,答えのない泥沼にはまる恐れもあるため,注意しましょう。

弁護士によって案内が異なることは,決しておかしな出来事ではないと分かっているだけでも,弁護士選びは格段にやりやすくなるはずです。

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置き引き事件で自首すべき場合や自首のメリット,注意点などを弁護士が詳細解説

このページでは,置き引き事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。
自首後に想定される警察からの呼び出しについても、対応方法を詳細に解説していますので、自首を検討する際の参考にしてみてください。

置き引き事件で自首をするべき場合

①自分が犯人と特定される見込みがある場合

自首は,いずれ自分が犯人と特定されるであろう事件について,捜査機関から特定される前に行うケースで特に効果を発揮します。自首をしてもしなくても特定される以上,自首を行うリスクがなく,処分の軽減につながりやすいというメリットを得られるためです。
もちろん,「いずれ自分が犯人と特定される」かどうかを確実に判断することは難しいため,「自首しなければ分からなかったのに」というリスクを完全に取り除くことはできませんが,自分が犯人と特定される見込みが高ければ高いほど,自首が有力な手段になることは間違いありません。

置き引き事件の場合,以下のようなケースで犯人の特定がなされやすい傾向にあります。

置き引き事件の犯人が特定されやすいケース

1.目撃者がいる場合

2.現場や付近の撮影画像・映像がある場合

3.盗品の中に位置情報を発信するものがある場合

4.盗品中のカード類を使用した場合

②日常生活への支障を防ぎたい場合

置き引き事件で捜査を受けることになると,日常生活への支障が生じてしまう場合も少なくありません。逮捕された場合や家宅捜索を受けた場合は代表的ですが,住居の近辺で捜査機関と接触しているだけでも,周囲への悪影響が生じかねません。
この点,置き引き事件の捜査による日常生活への支障を防ぐためには,できる限り緩やかな,穏やかな方法での捜査を行ってもらうことが有益です。そして,捜査の方法が穏やかな内容になりやすいケースの代表例が,自首をした場合です。

捜査を強制的な方法で行わなければならないのは,そうしないと証拠隠滅の可能性が高いと考えられるためです。強制的な捜査をすることで証拠隠滅の機会を防ぐ,ということが最大の目的となります。
一方,自首をしたケースでは,被疑者が自分から犯罪事実を明らかにしている以上,証拠隠滅の可能性は類型的に低いと評価されることが通常です。そのため,強制的な方法を取ってまで証拠隠滅を防ぐ必要は,それほど高くないと考えられやすく,穏やかな捜査につながりやすいのです。

ポイント
強制的な捜査は日常生活への支障を生じさせかねない
自首をした場合,捜査はより穏やかな方法になりやすい

③反省の意思を表明したい場合

置き引き事件の場合,深い反省の態度が処分結果を軽減させるケースも考えられます。特に,被害規模が小さく,被害者の経済的な損害が後から補填されているケースでは,被疑者に深い反省が見られることを条件に不起訴処分とされることも少なくありません。
そのため,置き引き事件の対応に際しては,否認事件でない限りは反省の意思を積極的に表明する方針が有力と言えます。

この点,反省の意思を表明するため,最初にできる最も有益な手段が自首です。自首は,行う場合のリスクが高く心理的負担も大きいため,実際に行った被疑者に対しては,深い反省の意思があるとの評価になることが通常です。自首の有無による評価の差は,取調べの際の言葉遣いが適切かどうかなどとは比較にならないほど大きなものになるでしょう。

刑事処分の軽減のためにも,いち早く深い反省の意思を表明したい場合には,自首の検討をお勧めします。

ポイント
置き引き事件では,反省の程度が処分結果に影響することも少なくない
深い反省を示せる最初の手段が自首

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

置き引き事件の自首は弁護士に依頼すべきか

置き引き事件で自首を検討する場合には,弁護士に依頼することでより有効な方法を取ることができるでしょう。そのため,自首をすべきか検討する場合も,実際に自首を行う場合も,弁護士に依頼して十分な相談等を行うことをお勧めします。
弁護士に依頼することの具体的なメリットとしては,以下のような点が挙げられます。

①逮捕の可能性がより低下する

自首は,逮捕を防ぐことを最初の目標とした行動である場合がほとんどでしょう。放っておいては逮捕される危険がある場合に,先手を打って自首をすることで逮捕を防ぐ,という流れであることが一般的です。
そのため,自首を行うに際しては,より逮捕の可能性を低くできる方法で行うべきであり,どうすれば逮捕の可能性が低くなるかは重要なポイントと言えます。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕の回避につながりやすい自首の方法・内容を専門的な観点から判断してもらうことができ,逮捕回避の効果を大きく高めることができるでしょう。
また,逮捕の可能性がより低下するような方法での自首は,最終的な刑事処分を軽減させる効果も大きな方法であることが通常です。弁護士に依頼することで,逮捕回避と処分軽減の両方をより確実に目指せるでしょう。

ポイント
弁護士に依頼することでより逮捕回避につながりやすい自首の方法を判断してもらえる

②周囲への影響を最小限に抑えられる

弁護士に依頼して自首を行う場合,捜査機関とのやり取りは基本的に弁護士が代行する形で進めることができます。そのため,自分が捜査機関と接触をすることで周囲に発覚するなど,事件が周囲に悪影響を及ぼす可能性は最小限に抑えることができるでしょう。

弁護士に依頼した場合でも,実際の取調べなどは自分で直接対応せざるを得ず,すべてを弁護士に代行してもらえるわけではありません。もっとも,家族や勤務先など,日頃から接点のある関係者に影響が生じるようなやり取りは,一通り弁護士に委ねることができるでしょう。

ポイント
一通りの対応を弁護士に委ねられるため,周囲に発覚しづらい

③自首後の見通しが分かる

自首は,あくまで捜査の出発点に過ぎません。そのため,自首の後には捜査が行われ,捜査が遂げられた後には刑事処分の判断が待っています。
そうすると,自首をした後にはどのような取り扱いを受けるのか,最終的な処分はどのような内容になるのか,ということをある程度見通せていないと,実際に自首をするという判断はなかなか容易ではないでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,自首後の捜査手続や処分結果を事前にある程度想定することが可能です。どのような不利益が生じ得るか,逆に自首をすることでどのような利益が生じるかが比較できるため,自首をすべきかどうかの判断は格段に容易なものとなるでしょう。

ポイント
自首後の手続の流れや処分の見込みを踏まえた上で,自首するか判断できる

④直ちに弁護活動を開始できる

置き引き事件の場合,自首後には被害者との示談を目指すことが非常に有効です。置き引き事件で示談が成立すれば,逮捕や起訴はされづらく,示談は自首の目的を達成する手段として最重要と言っても過言ではありません。

また,自首を行った場合,自首しなかったケースと比較すると被害者側の感情面が穏やかになりやすいという特徴もあります。加害者が自首をしたのか,捜査機関に問い質されて認めただけなのか,という違いは,当然ながら被害者の感情に大きな影響を及ぼすためです。そのため,自首をしたケースの方が示談は成立しやすい傾向にあり,特段の理由がなければ自首後には示談を試みるべきと言えます。

この点,自首の段階で弁護士に依頼していれば,その後の示談の動きを速やかに開始することが可能です。示談の試みは,弁護士がいなければ行えないものでもあるため,自首後に示談を行うつもりがある場合には,自首の段階から弁護士に委任するのが有益でしょう。

ポイント
自首した場合には,示談成立しやすいケースが増える
弁護士委任していれば,自首の後,速やかに示談へ移行できる

置き引き事件で自首をする場合の注意点

①動きが遅れると自首が成立しない可能性

自首は,捜査機関に「犯罪事実」か「犯人」が特定されていない段階で行わなければいけません。犯罪事実と犯人が両方明らかとなった後に自首を試みても,法的には自首が成立せず,自首の恩恵を受けることはできなくなってしまいます。

置き引き事件の場合,被害に気付いた被害者が警察に捜査を求めた後,犯人の特定を試みることになりますが,捜査機関がいつ犯人を特定できるかは,個別のケースや証拠関係によると言わざるを得ません。自首をしようと考えた場合に,「犯人が特定された前か後か」を知った上で判断する,ということは現実的に困難です。
そのため,自首を検討する場合には,時期が遅れると犯人が特定されてしまい,自首が成立しない可能性があることに注意するのが適切です。自首を行う意思が固い場合には,極力早期に行動に移すことにも留意すべきでしょう。

②必ず処分が軽減するわけではない

置き引き事件の場合,自首をしても処分の軽減が約束されるわけではありません。自首をしなければ罰金刑が見込まれる事件であった場合,「自首をすれば不起訴になる」と判断できればより自首しやすいものではありますが,そのような判断は困難と言わざるを得ません。自首をしても変わらず罰金刑の対象となることはあり得るため,場合によっては「自首したばかりに刑罰を受けた」と感じる可能性もあるでしょう。

自首を検討する場合には,決して「自首=不起訴」ではないことに注意するのが適切です。そもそも,自首は自分に対する刑事処分を求める行動であるので,「自首すれば処分を受けない」という発想自体が不適切であるとも言えるでしょう。

③盗品の管理・処分状況に応じた対応

置き引き事件で自首を行う場合,「盗品が現在どうなっているのか」は必ず問題になるポイントです。それだけ,置き引き事件の証拠として盗品の現物は重要なものでもあります。
そのため,盗品の管理・処分状況については,捜査機関にできる限りの情報提供をできるよう事前に整理しておきましょう。具体的には,以下のような対応が有力です。

1.盗品を所持している場合
→所持している旨を事前に伝え,出頭の際に持参する

2.盗品を既に処分している場合
→処分済みである旨を事前に伝え,出頭した後に詳細な経過を説明する

なお,盗品が提出できるのであればそれに越したことはありませんが,盗品が提出できなければ自首の意味がない,というわけではありません。置き引き事件の場合は,金品以外の盗品を加害者が処分してしまうことは珍しくないため,処分したことを詳細に説明できれば十分な理解は得られるでしょう。

呼び出された場合の対応法

①適切な返答方法

置き引き事件で呼び出しを受けた場合,まずは「呼び出しを無視しない」「呼び出しを拒否しない」というスタンスで返答するのが適切であり,最も重要視すべき点と言えます。
呼び出しを行う場合,捜査機関としては,呼び出しへの応対を踏まえてその後の取り扱いを判断しようと考えていることが通常です。呼び出しに対して穏やかな対応をすれば,捜査機関の取り扱いも穏やかになりやすく,呼び出しに対して敵対心を明らかにすれば,捜査機関との関係は対立構造にならざるを得ません。

そのため,呼び出しを受けた段階では,「連絡をすれば応じる」「求めれば出頭してくれる」と理解してもらうことが得策です。なぜなら,連絡に応じ,出頭の要求にも応えてくれるならば,捜査機関としてはそれ以上に強制力のある手段を取る必要はないためです。
これは,認め事件,否認事件の両方に共通する基本姿勢と言ってよいでしょう。

呼び出しを受けた際に適切な応答ができれば,その後の対応に必要な負担も大きく軽減する可能性が高いです。無視せず応答する,拒否せず出頭する,という対応は念頭に置くことを強くお勧めします。

ポイント
無視せず応答する
拒否せず出頭する

②認めるべき事件の場合

内容に間違いがなく,自分の責任を認めるべき置き引き事件では,できるだけ速やかに争わない姿勢であることをはっきりと表明するのが有益です。

捜査機関は,呼び出しを行う段階では被疑者の認否が分かりません。ただ,認めるか認めないかはその後の捜査の内容を大きく左右するため,捜査機関としては認否を可能な限り早期に把握したいと考えていることが通常です。
そのため,認めるべき事件である場合には,認める意思であることを速やかに伝えることで,真摯な反省と捜査機関への配慮の意思を同時に示すことができます。反省を深め,円滑な捜査に協力的な被疑者と評価してもらえれば,その後の手続や処分に有益な影響が期待できるでしょう。

ポイント
速やかに認める意思を表明する
深い反省と捜査への協力姿勢を示すことができる

③心当たりがない場合

置き引き事件で心当たりがない場合には,まず事件の内容や疑われている行為の内容を可能な限り把握するのが有益です。

心当たりのない事件で呼び出しを受ける場合には,以下のいずれかのケースが考えられます。

心当たりのない置き引き事件で呼び出しを受ける場合

1.犯罪や犯人を立証する証拠に乏しいケース

2.誤って自身が疑われているケース

この点,証拠に乏しい場合は,呼び出しを通じて被疑者の自白を期待している可能性があります。そのため,端的に認めない方針を一貫して表明し続け,「自白を引き出すことができない」との判断をしてもらうのが有益でしょう。
一方,誤って疑われている場合,単に否認を続けるだけでは円滑な解決が期待できない可能性があります。この場合には,自身が疑われた理由や根拠とされているものを把握し,捜査機関の誤りを正すことが有効です。

同じ否認事件でも,ケースによって有効な対処に違いが生じるため,まずは疑いの内容をできるだけ具体的に押さえることを目指しましょう。

ポイント
事件の内容・疑いの内容を具体的に把握する

呼び出しに応じると逮捕されるか

置き引き事件では,逮捕目的で呼び出しを行っているケースはあまり見られません。そのため,呼び出しに適切な対応を尽くしていれば,逮捕されない方が通常でしょう。

逮捕されない場合は,いわゆる「在宅捜査」の対象となります。在宅捜査とは,身柄を拘束しないで行う捜査を指しますが,多くの場合は出頭を求める際に都度連絡をし,任意の取調べを行っていく流れが見込まれます。
一度在宅捜査が選択されても,その後の対応によっても逮捕される可能性がないわけではありません。もっとも,出頭を求める連絡に対して拒否せず応じていれば,逮捕はされないことが通常でしょう。

置き引き事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①被疑者を特定したとき

置き引き事件は,現行犯で被疑者が特定できる場合が少ないため,後日になって捜査が行われ,被疑者の特定に至ることが一般的です。そして,被疑者を特定した段階では,被疑者自身から話を聞きだすために呼び出しを行うのが通常です。

具体的な時期は,被害者側が捜査機関に被害申告を行ったタイミングにもよりますが,事件から間もなく捜査が開始されていれば,事件後1~2か月程度が一つの目安になるでしょう。捜査機関の担当者から電話連絡がなされ,「●月●日の(場所)の件」といった形で心当たりの有無を尋ねられることが多く見られます。

②供述調書を作成するとき

刑事事件の捜査に際しては,捜査機関が聴取した内容を供述調書という書面に記録し,証拠化することが不可欠です。そして,供述調書の作成においては,調書の内容を本人に確認してもらい,間違いがないことを証するための署名押印を求める必要があります。
そのため,話の内容を供述調書として記録化する必要がある場合には,呼び出しの上で供述調書の作成が行われることになるでしょう。

供述調書の作成は,被疑者の認否や供述内容がある程度わかった後に行われるのが一般的です。呼び出しの連絡をした際に認否が分かれば,初回の呼び出しの機会に供述調書を作成することも考えられるでしょう。また,初回に供述調書を作成しなかった場合には,その後1週間~1か月程度のうちに再度呼び出され,供述調書の作成を行うケースが多く見られます。

③盗品を所持していることが分かったとき

置き引き事件において最も重要な証拠は,実際に置き引きの対象となった盗品です。そのため,捜査に際しては,盗品の現物を確認できるのであれば,ほぼ確実に現物の確認が行われるでしょう。
この点,置き引き事件では,盗品を既に処分している場合もあれば,処分せず所持している場合もあり得ます。捜査機関としては,被疑者に確認を取り,盗品を所持していると分かった場合には,その提出を求めるため呼び出しを行うことが通常です。

この場合の呼び出しの時期は,捜査機関が盗品の所持を把握したタイミングに影響を受けますが,捜査機関が知ってからそれほど遠くない時期であることが一般的です。取調べの際に盗品を所持していると知った場合には,その取調べから1~2週間ほどの時期に呼び出されるケースが多く見られます。

置き引き事件の呼び出しに応じたときの注意点

①真摯な対応に努める

置き引き事件で呼び出しが行われるケースでは,対応を誤らなければ逮捕なく手続が進むことになりやすいです。そのため,むやみに逮捕を誘発しない対応は心がけるのが賢明でしょう。

この点,特に認め事件の場合には,反省や捜査協力などについて,できる限り真摯な対応に努めるのが有益です。捜査機関に対して真摯な姿勢を見せている限り,捜査手続上での不要な不利益(取調べの長期化や身柄拘束など)を被る可能性は非常に低くなります。

また,真摯な対応を尽くすことは,最終的な刑事処分にも有益な効果が期待できるため,意識的に行って損をすることはないでしょう。

②証拠を自発的に提出する

盗品等の証拠は,所持している場合には自発的に提出を行うことが有効です。捜査に際しては,物的証拠の収集に手間がかかったり困難が生じたりすることが少なくありません。特に置き引き事件では,盗品がどこに行ったか分からない,被疑者の手元に必要な証拠があるかもしれないが分からない,といった事態が往々にして生じがちです。

このとき,証拠を自発的に提出することができれば,捜査の円滑化が見込まれるだけでなく,深い反省を端的に示せる結果にもなるでしょう。また,被害者の手元に盗品が戻ることになれば,被害者側の処罰感情(処罰を希望するかどうかの気持ち)にも良い影響を及ぼす可能性が非常に高くなります。

③否認事件での応じ方

否認事件の場合,呼び出された側の立場としては「事件に巻き込まれた」という思いが生じてもやむを得ません。実際,心当たりがない事件で一方的に警察へ出頭するよう求められるのは,納得し難いこともあるでしょう。

ただ,否認事件であっても,連絡を一切無視したり,「話を聞きたい」という求めを一切無視したりと,むやみに捜査機関との対立姿勢を露わにすることは得策とは言えません。呼び出しはあくまで任意の手続にとどまる以上,ある程度柔軟な方法で応じられる場合もあるので,全面的に無視や拒否をするよりも「可能な範囲で対応する」ことを前提とした応対が合理的です。

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【置き引き事件での呼び出し】呼び出しに応じるとどうなる?応じないとどうなる?

このページでは,置き引き事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
置き引き事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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置き引き事件で呼び出された場合の対応法

①適切な返答方法

置き引き事件で呼び出しを受けた場合,まずは「呼び出しを無視しない」「呼び出しを拒否しない」というスタンスで返答するのが適切であり,最も重要視すべき点と言えます。
呼び出しを行う場合,捜査機関としては,呼び出しへの応対を踏まえてその後の取り扱いを判断しようと考えていることが通常です。呼び出しに対して穏やかな対応をすれば,捜査機関の取り扱いも穏やかになりやすく,呼び出しに対して敵対心を明らかにすれば,捜査機関との関係は対立構造にならざるを得ません。

そのため,呼び出しを受けた段階では,「連絡をすれば応じる」「求めれば出頭してくれる」と理解してもらうことが得策です。なぜなら,連絡に応じ,出頭の要求にも応えてくれるならば,捜査機関としてはそれ以上に強制力のある手段を取る必要はないためです。
これは,認め事件,否認事件の両方に共通する基本姿勢と言ってよいでしょう。

呼び出しを受けた際に適切な応答ができれば,その後の対応に必要な負担も大きく軽減する可能性が高いです。無視せず応答する,拒否せず出頭する,という対応は念頭に置くことを強くお勧めします。

ポイント
無視せず応答する
拒否せず出頭する

②認めるべき事件の場合

内容に間違いがなく,自分の責任を認めるべき置き引き事件では,できるだけ速やかに争わない姿勢であることをはっきりと表明するのが有益です。

捜査機関は,呼び出しを行う段階では被疑者の認否が分かりません。ただ,認めるか認めないかはその後の捜査の内容を大きく左右するため,捜査機関としては認否を可能な限り早期に把握したいと考えていることが通常です。
そのため,認めるべき事件である場合には,認める意思であることを速やかに伝えることで,真摯な反省と捜査機関への配慮の意思を同時に示すことができます。反省を深め,円滑な捜査に協力的な被疑者と評価してもらえれば,その後の手続や処分に有益な影響が期待できるでしょう。

ポイント
速やかに認める意思を表明する
深い反省と捜査への協力姿勢を示すことができる

③心当たりがない場合

置き引き事件で心当たりがない場合には,まず事件の内容や疑われている行為の内容を可能な限り把握するのが有益です。

心当たりのない事件で呼び出しを受ける場合には,以下のいずれかのケースが考えられます。

心当たりのない置き引き事件で呼び出しを受ける場合

1.犯罪や犯人を立証する証拠に乏しいケース

2.誤って自身が疑われているケース

この点,証拠に乏しい場合は,呼び出しを通じて被疑者の自白を期待している可能性があります。そのため,端的に認めない方針を一貫して表明し続け,「自白を引き出すことができない」との判断をしてもらうのが有益でしょう。
一方,誤って疑われている場合,単に否認を続けるだけでは円滑な解決が期待できない可能性があります。この場合には,自身が疑われた理由や根拠とされているものを把握し,捜査機関の誤りを正すことが有効です。

同じ否認事件でも,ケースによって有効な対処に違いが生じるため,まずは疑いの内容をできるだけ具体的に押さえることを目指しましょう。

ポイント
事件の内容・疑いの内容を具体的に把握する

置き引き事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

置き引き事件では,逮捕目的で呼び出しを行っているケースはあまり見られません。そのため,呼び出しに適切な対応を尽くしていれば,逮捕されない方が通常でしょう。

逮捕されない場合は,いわゆる「在宅捜査」の対象となります。在宅捜査とは,身柄を拘束しないで行う捜査を指しますが,多くの場合は出頭を求める際に都度連絡をし,任意の取調べを行っていく流れが見込まれます。
一度在宅捜査が選択されても,その後の対応によっても逮捕される可能性がないわけではありません。もっとも,出頭を求める連絡に対して拒否せず応じていれば,逮捕はされないことが通常でしょう。

置き引き事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①被疑者を特定したとき

置き引き事件は,現行犯で被疑者が特定できる場合が少ないため,後日になって捜査が行われ,被疑者の特定に至ることが一般的です。そして,被疑者を特定した段階では,被疑者自身から話を聞きだすために呼び出しを行うのが通常です。

具体的な時期は,被害者側が捜査機関に被害申告を行ったタイミングにもよりますが,事件から間もなく捜査が開始されていれば,事件後1~2か月程度が一つの目安になるでしょう。捜査機関の担当者から電話連絡がなされ,「●月●日の(場所)の件」といった形で心当たりの有無を尋ねられることが多く見られます。

②供述調書を作成するとき

刑事事件の捜査に際しては,捜査機関が聴取した内容を供述調書という書面に記録し,証拠化することが不可欠です。そして,供述調書の作成においては,調書の内容を本人に確認してもらい,間違いがないことを証するための署名押印を求める必要があります。
そのため,話の内容を供述調書として記録化する必要がある場合には,呼び出しの上で供述調書の作成が行われることになるでしょう。

供述調書の作成は,被疑者の認否や供述内容がある程度わかった後に行われるのが一般的です。呼び出しの連絡をした際に認否が分かれば,初回の呼び出しの機会に供述調書を作成することも考えられるでしょう。また,初回に供述調書を作成しなかった場合には,その後1週間~1か月程度のうちに再度呼び出され,供述調書の作成を行うケースが多く見られます。

③盗品を所持していることが分かったとき

置き引き事件において最も重要な証拠は,実際に置き引きの対象となった盗品です。そのため,捜査に際しては,盗品の現物を確認できるのであれば,ほぼ確実に現物の確認が行われるでしょう。
この点,置き引き事件では,盗品を既に処分している場合もあれば,処分せず所持している場合もあり得ます。捜査機関としては,被疑者に確認を取り,盗品を所持していると分かった場合には,その提出を求めるため呼び出しを行うことが通常です。

この場合の呼び出しの時期は,捜査機関が盗品の所持を把握したタイミングに影響を受けますが,捜査機関が知ってからそれほど遠くない時期であることが一般的です。取調べの際に盗品を所持していると知った場合には,その取調べから1~2週間ほどの時期に呼び出されるケースが多く見られます。

置き引き事件の呼び出しに応じたときの注意点

①真摯な対応に努める

置き引き事件で呼び出しが行われるケースでは,対応を誤らなければ逮捕なく手続が進むことになりやすいです。そのため,むやみに逮捕を誘発しない対応は心がけるのが賢明でしょう。

この点,特に認め事件の場合には,反省や捜査協力などについて,できる限り真摯な対応に努めるのが有益です。捜査機関に対して真摯な姿勢を見せている限り,捜査手続上での不要な不利益(取調べの長期化や身柄拘束など)を被る可能性は非常に低くなります。

また,真摯な対応を尽くすことは,最終的な刑事処分にも有益な効果が期待できるため,意識的に行って損をすることはないでしょう。

②証拠を自発的に提出する

盗品等の証拠は,所持している場合には自発的に提出を行うことが有効です。捜査に際しては,物的証拠の収集に手間がかかったり困難が生じたりすることが少なくありません。特に置き引き事件では,盗品がどこに行ったか分からない,被疑者の手元に必要な証拠があるかもしれないが分からない,といった事態が往々にして生じがちです。

このとき,証拠を自発的に提出することができれば,捜査の円滑化が見込まれるだけでなく,深い反省を端的に示せる結果にもなるでしょう。また,被害者の手元に盗品が戻ることになれば,被害者側の処罰感情(処罰を希望するかどうかの気持ち)にも良い影響を及ぼす可能性が非常に高くなります。

③否認事件での応じ方

否認事件の場合,呼び出された側の立場としては「事件に巻き込まれた」という思いが生じてもやむを得ません。実際,心当たりがない事件で一方的に警察へ出頭するよう求められるのは,納得し難いこともあるでしょう。

ただ,否認事件であっても,連絡を一切無視したり,「話を聞きたい」という求めを一切無視したりと,むやみに捜査機関との対立姿勢を露わにすることは得策とは言えません。呼び出しはあくまで任意の手続にとどまる以上,ある程度柔軟な方法で応じられる場合もあるので,全面的に無視や拒否をするよりも「可能な範囲で対応する」ことを前提とした応対が合理的です。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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【置き引き事件の逮捕】逮捕を防ぐ具体的方法や置き引き事件における注意点を徹底解説

このページでは,置き引き事件の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

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置き引き事件で逮捕される可能性

置き引き事件は,決して類型的に逮捕可能性が高いわけではありません。被疑者が特定できた場合であっても,逮捕せずに捜査を行うことは珍しくないでしょう。そのため,適切な対応を尽くすことで,逮捕を回避しながらの解決も目指せる場合は多いと言えます。

ただし,置き引き事件の場合,内容によっては逮捕可能性が高くなるケースがあり得ます。具体的には,以下のような場合が挙げられます。

逮捕の可能性が高くなりやすいケース

1.盗品が悪用された場合

2.被害規模が大きい場合

3.同種の余罪が多数ある場合

【1.盗品が悪用された場合】

置き引き事件では,盗品が複数あり,その中には悪用される恐れのあるものも含まれていることが少なくありません。財布の中に保管されているキャッシュカードやクレジットカードは代表例でしょう。

この点,キャッシュカードを用いて多額の現金が引き出されている,クレジットカードを用いて商品を購入している,といった事情がある場合,盗品の悪用が重大視され逮捕の可能性が高まることが考えられます。単純に被害が拡大するというのみならず,盗品をさらに悪用する動きは別の犯罪に当たる可能性の高い悪質な行為であるため,逮捕をして厳重に捜査を尽くす必要が大きくなってしまうのです。

【2.被害規模が大きい場合】

明らかに経済的価値の高いものを置き引きしている,際立って多くの物を置き引きしているなど,被害の規模が大きい場合には,事件の重大性を踏まえて逮捕される可能性が高まる傾向にあります。

置き引き事件で逮捕がなされないケースは,突発的な事件であること大きく評価されていることが多く見られます。「魔が差した」というべき事件であれば,証拠隠滅の可能性も低く,逮捕までする必要はないと評価されやすいためです。
一方,価値の高い物を選んでいる場合や,簡単に持ち出せない物を持ち出している場合には,突発的ではなく計画的な事件であることが見込まれやすくなります。特に,計画的な事件と考えなければ説明のつかない行動を取っている場合には,計画性があるとみなされやすいでしょう。そして,このようなケースでは,突発的な置き引き事件とは異なり,計画性に関する証拠隠滅を防ぐために逮捕に踏み切る必要が大きいと判断されかねません。

【3.同種の余罪が多数ある場合】

場所や方法,対象となる盗品など,特徴の共通した事件が多数発生している場合,捜査機関としては同一犯の事件を想定するとともに,再発防止のために被疑者を逮捕する必要が高いと考える傾向にあります。多数の余罪がある被疑者の場合,放置していると再び同様の事件を起こす可能性が高いため,逮捕によって事件を予防しつつ捜査を行う手段が選択されやすいのです。

また,余罪が多数あるということは,捜査すべき事件がそれだけ多いため,事件の数に比例して必要な証拠も多くなります。逮捕しないでいると,余罪に関する重要な証拠を隠滅される恐れがあるため,速やかに逮捕をし,余罪を含む事件の全容解明を目指す方針が取られやすい傾向にあります。

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

置き引き事件で逮捕を避ける方法

①捜査を受ける前の段階

置き引き事件では,目撃者の存在が期待できないため,防犯映像などの明らかな証拠がなければ,被疑者の特定に時間のかかる場合も少なくありません。そのため,逮捕の回避を検討する段階ではまだ被疑者が特定されておらず,取調べ等の捜査を受けていない状況であることも考えられます。

この段階で逮捕の回避を目指す場合には,自ら捜査機関に出頭する動きが一案です。捜査機関に特定されるより前に,自分から被疑者として扱ってもらうよう申し出ることで,逮捕しない判断を促すことが可能になります。
自分が被疑者として特定される前に出頭を試みれば,法的には「自首」が成立し,取り扱いがより緩和される効果も期待できます。

②捜査開始後

置き引き事件で既に捜査を受けており,その内容に争いがない場合には,被害者との示談を通じて逮捕回避を目指す方法が有力です。

置き引き事件の場合,被害者との間で示談が成立すれば,その後に逮捕されることはほとんどありません。しかも,示談は最終的な刑事処分の軽減にも非常に大きな意味を持つものであるため,行わないメリットはないと言っても過言ではないでしょう。

示談は,被害者側の対応によっては速やかに成立しないため,「示談が成立したから逮捕しない」という判断になるケースはあまり多くはありません。しかし,「示談を希望している」という事実を捜査機関に把握してもらうだけでも,逮捕回避につながることは非常に多く,少しでも早期に示談の試みに着手することはとても有益でしょう。

③逮捕の判断基準を踏まえた対応

逮捕を行うかどうかの判断基準は,「逃亡の恐れ」と「罪証隠滅の恐れ」です。逮捕をしないと逃亡する可能性が高いか,犯罪の証拠を隠滅される可能性が高いか,ということを基準に,逮捕の判断が行われることになります。
裏を返せば,逃亡や罪証隠滅の恐れが小さい場合,逮捕の可能性は大きく低下することになります。捜査への対応にあたっては,逃亡や罪証隠滅の恐れに配慮することが有益でしょう。

具体的な対応としては,呼び出しの連絡は無視せず対応し,出頭を拒否せず可能な範囲で応じる,という方針が適切です。円滑に連絡が取れれば,逃亡の恐れは小さいと評価されやすく,出頭の求めに応じてくれれば罪証隠滅の恐れが小さいとの理解につながりやすいでしょう。

置き引き事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

置き引き事件で逮捕の回避を目指す場合には,弁護士に依頼し,弁護士と協同して対応を進めることが適切です。弁護士に依頼しなければできないことも少なくないため,特段の理由がなければ弁護士への依頼を検討することをお勧めします。
弁護士への依頼を要するケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

①示談をしたい場合

逮捕回避の手段として有力な示談は,弁護士を窓口にしなければ行うことができません。捜査機関は,加害者と被害者が直接連絡を取ることは認めないため,被害者と連絡を取りたい場合には,弁護士に依頼をして弁護士を窓口とする必要があります。
被害者との示談を通じて逮捕を回避したい場合には,弁護士への依頼が必須となるでしょう。

②出頭を試みたい場合

まだ捜査を受けていない段階で自ら出頭を試みたいと思っても,具体的にどのような方法を取るべきか,判断することは容易ではありません。同じく出頭を試みるのでも,適切な方法で行うかどうかによってその後の取り扱いが大きく変わる可能性もあり得ます。

そのため,出頭を試みたい場合には,弁護士に依頼をして,弁護士主導の形で進めることをお勧めします。自分から出頭(自首)する行為は,大きな不利益の伴う重大なものであるため,より万全な方法で行うべきでしょう。

③適切な取調べ対応をしたい場合

特に否認事件の場合,取調べへの対応をどのように行うかがその後の取り扱いを左右するケースが少なくありません。取調べ対応を誤ったことで逮捕を誘発してしまうと,その不利益は極めて大きく取り返しのつかないものとなります。

そのため,取調べの対応を適切に尽くす必要が高い場合には,弁護士に依頼し,十分な相談の上であらかじめ助言を受けるようにしましょう。

置き引き事件の逮捕に関する注意点

①対象となる罪名

置き引き事件は,「窃盗罪」に当たる場合と「占有離脱物横領罪」にあたる場合があります。主な違いは以下の通りです。

窃盗罪:置いてはあるが被害者の手元を離れているとは言えない場合
占有離脱物横領罪:置かれた財産が被害者の手元を離れたと評価できる場合

基本的には,置かれてから時間が経っていない場合に窃盗罪,長時間が経過している場合に占有離脱物横領罪の対象となります。犯罪としては,置かれて間もない財産を置き引きする方が責任が重いと評価されやすいため,窃盗罪の方が重大であり,逮捕の可能性も窃盗罪に当たる方が高い傾向にあります。

同じ置き引きでも,責任の重さによって罪名が異なることには注意しておくとよいでしょう。

②逮捕後の身柄拘束期間

逮捕が防げなかった場合には,逮捕後の身柄拘束がどの程度の期間となるか,という点が重要な問題になります。

逮捕されると,最大72時間以内に「勾留」されるかが判断され,勾留された場合には10日間の身柄拘束が生じます。そして,勾留後には最大10日間の「勾留延長」がなされる可能性もあります。そうすると,起訴不起訴の判断までの間に,最長で23日程度の身柄拘束があり得るということになります。

逮捕から起訴までの流れ

この点,置き引き事件では勾留や勾留延長が回避できるか,という点がケースによって様々に異なりやすい傾向にあります。他の置き引き事件では勾留されなかったから,と安易に釈放を見込むことは不適切であり,大きな危険があると考えるべきでしょう。

釈放時期の具体的な見込みについては,個別の内容を踏まえた判断が不可欠であるため,弁護士への十分な相談を行うことをお勧めします。

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【置き引き事件の不起訴処分】不起訴処分の意味や効果から置き引き事件での注意事項まで

このページでは,置き引き事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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置き引き事件で不起訴を目指す方法

①示談交渉

置き引き事件で不起訴を目指す場合,最も端的な方法は被害者側に不起訴を希望してもらうことです。置き引き事件のように被害者がいる事件では,被害者が起訴を望むか不起訴を望むか,という意向が刑事処分に直接の影響を与えやすい傾向にあるためです。
そして,被害者に不起訴を希望してもらうための手段が,被害者との示談です。被害者との間で示談が成立した場合,被害者からは「不起訴を希望する」という意向を表明してもらうのが通常であるため,示談が成立すれば不起訴となる可能性が極めて高くなるでしょう。

なお,被害者側との示談を試みるのは,基本的に認め事件の場合です。否認事件でも,金銭的解決を図る趣旨で示談を試みる選択肢はあり得ますが,内容を慎重に検討する必要があるため,弁護士の法的な判断を仰ぐことを強くお勧めします。

ポイント
被害者が不起訴を希望すれば不起訴になりやすい
示談が成立した場合,被害者からは不起訴希望の意向を表明してもらうことになる

②再発防止・贖罪

不起訴処分を目指して示談を試みたとしても,必ず示談の成立に至るとは限りません。示談は相手のあるお話であるため,相手から拒否をされてしまえば,どれだけ希望しても示談成立に至ることは困難です。
相手に示談の意思がない場合には,示談によって不起訴処分を目指すことはできないため,次善策の検討が必要となります。

この点,認め事件であれば,二度と同様の事件が発生しない状況が整っている,と判断してもらうことが,不起訴処分を目指す有力な手段として考えられます。具体的には,事件の原因を予防できる再発防止策を講じたり,贖罪(しょくざい)の意思を贖罪寄付などの方法で表明したりすることが一案でしょう。
個別の事件でどのような再発防止策が考えられるか,贖罪寄付はどこへ,いくら,どのように行うべきか,という点は,弁護士と十分に協議することが望ましいところです。

なお,再発防止や贖罪の動きは,それだけで不起訴処分が獲得できる性質のものでない,という点には予め注意が必要です。起訴不起訴の判断で検察が迷う場合に,不起訴処分を促す事情になり得る,という程度の位置づけと理解するのが適切でしょう。

ポイント
再発防止策を講じることや贖罪寄付を行うことも有力
もっとも,再発防止や贖罪があれば不起訴になる,というわけではない

置き引き事件で不起訴になる可能性

置き引き事件は,不起訴処分となる可能性が十分に考えられる事件類型と言うことができるでしょう。

置き引き事件の場合,被害者が起訴を望まなければ,通常は不起訴処分となります。被害者の意向に反してまで起訴しなければならない事情があるケースはほとんどないため,被害者が不起訴の意向であれば,これを反映して不起訴とすることになりやすいでしょう。
そして,被害者に不起訴の意向を示してもらうには示談が有力な手段ですが,置き引き事件の示談は,経済的なマイナスを早期に補填できる点で被害者にとっても有益な面があります。そのため,適切な条件を示すことができれば,被害者に示談での解決を納得してもらえる場合は決して少なくありません。

置き引き事件では,示談の成立が当事者双方にとって望ましい解決になりやすい点で,不起訴になる可能性は十分にあると考えられます。

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

置き引き事件で不起訴を目指す場合の注意点

①示談金額

置き引き事件で示談を行う場合,示談金額は実際の損害額を目安にすることが通常です。一般的には,損害額にお詫びの趣旨でいくらか上乗せをした金額を示談金額とする,という考え方が用いられやすいでしょう。

もっとも,損害額に上乗せするお詫びの部分については,ケースによって損害額を大きく超える金額を希望されることもあり得ます。被害者としては,警察への相談やクレジットカード等の悪用を防ぐ対応など,置き引き被害にあったばかりに数々の面倒な動きをさせられているため,加害者への怒りの感情が増大していることも少なくはありません。また,損害額が小さい場合,その金額を支払うだけで加害者にお咎めなく事件が終わる,ということに被害者の納得が得られないことも多く見られます。

置き引き事件の示談に際しては,実際の損害額を超える示談金額が想定されやすいことにあらかじめ注意しておくようにしましょう。

②盗品の中身に争いが生じる可能性

置き引き事件の特徴として,盗品が複数になりやすい,という点があります。通常,バッグや財布など,中に他の金品が入っているものが盗品となるためです。

この点,加害者が置き引きした盗品の中身と,被害者が記憶している中身が一致しない,というケースは珍しくありません。自分のバッグや財布の中身を常に正確に把握するのは難しいため,やむを得ないところではあります。
現実に盗品の中身に関する争いが生じた場合には,以下のような対応方針が賢明でしょう。

盗品の中身に争いが生じた場合

1.対捜査機関(取調べ等)
→自分の記憶を述べ,被害者の主張に合わせる必要はない

2.対被害者(示談交渉)
→被害者の言い分に沿った示談条件を検討する
→「実際の中身は違った」という指摘をすること自体は問題ない

捜査機関に対しては,記憶に反する話をするメリットはないため,実際の内容を一貫して述べ続けるのが適切です。一方,示談交渉に際しては,被害者の言い分を踏まえた条件でなければ被害者の納得を得ることは困難です。そのため,実際の中身が被害者の言い分通りであるかは別として,示談条件は被害者の言い分に沿って検討するのが現実的でしょう。

③否認事件の対応方法

否認事件の場合,取調べにどのような対応をできるか,という点が起訴不起訴を大きく左右しやすいところです。
具体的には,事件の争点を念頭に置いた対応を心掛けることが適切でしょう。

例えば,「自分のバッグだと勘違いして他人のバッグを持って行ってしまった」という主張は,犯罪の故意を否認する内容です。そのため,ここでの争点は故意の有無であり,故意があったと立証できるかどうかが唯一最大の問題点となります。
この場合,「自分が他人のバッグを持って行ったかどうか」は当然ながら争点にはなりません。他人のバッグを持って行ったことは前提であり,持って行った時の内心が争点であるためです。
しかしながら,このような場合に「他人のバッグを持って行ったから悪い」といった内容の取調べを受けることも珍しくはありません。このような指摘を真に受けて争点と無関係の話に終始してしまうのは,不合理と言わざるを得ないでしょう。

否認事件では,争点をしっかりと整理して取調べに臨むことが必要です。そうすることで,取調べの内容を「重要な点」と「重要でない点」に区別することもでき,より適切な対応を尽くせるようになるでしょう。

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【置き引き事件の弁護士選び】早期解決を目指すのに適した弁護士選びの具体的方法とは

このページでは,置き引き事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

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置き引き事件で弁護士を選ぶタイミング

①示談を試みたいとき

置き引き事件は,特定の被害者に対して損害を与える事件であるため,その被害者の意向が刑事処分を非常に大きく左右する傾向にあります。被害者が加害者の処罰を望めば,加害者には刑罰が科されやすく,逆に被害者が加害者の処罰を望まなければ,加害者は処罰されず不起訴処分の対象になりやすいでしょう。

そのため,置き引き事件の加害者となった場合には,被害者に処罰を望まないとの意向を表明してもらうことが大きな目標となりますが,そのための具体的な手段が示談です。示談によって被害者の許しが得られれば,刑罰が科される可能性は非常に低くなるでしょう。

もっとも,示談を試みるには弁護士への依頼が必要です。当事者同士が直接やり取りするわけにいかないため,弁護士を通じて捜査機関に示談希望の旨を申し入れる必要があります。その後,被害者が弁護士との連絡を受け入れれば,被害者と弁護士との連絡先交換ができ,弁護士と被害者との間での連絡が可能になります。

示談交渉の流れ

そのため,示談を試みたい場合には,示談交渉の依頼に適した弁護士を選ぶことが重要になるでしょう。

ポイント
置き引き事件では示談の試みが有効
示談を試みるには弁護士が必要

②自首を検討しているとき

置き引き事件は,その性質上,事件が発生したことは明らかであるものの被疑者が特定できない,という期間が一定程度生じやすい傾向にあります。被疑者の特定が容易でない場合には,捜査機関が様々な証拠を精査し,時間をかけて特定を目指す場合も見られます。
そのため,置き引き事件の加害者となってしまった場合,自分が被疑者と特定されているかどうか分からない期間が生じ,大きな不安や精神的負担を強いられるケースも少なくありません。

このような場合には,自ら自首を行い,捜査協力を尽くすことで,逮捕や起訴を防ぐ試みが有効ですが,適切な方法で自首を行うことは容易ではありません。また,そもそも自首を行うべき状況かどうか,という点も判断が難しく,専門的な見解が不可欠です。
自首を行うべきか判断が必要な場合や,実際に自首を行いたい場合には,適任の弁護士を選び,弁護士主導で進めることが適切でしょう。

ポイント
置き引き事件は被疑者特定に時間がかかる場合もある
被疑者特定前に自首を検討する場合,弁護士主導とするのが適切

③呼び出しを受けたとき

置き引き事件で被疑者として特定された場合,警察から呼び出しを受け,取調べを受ける可能性があります。そのため,呼び出しを受けた場合には,その後に控える取調べへの対応を十分に検討する必要があるでしょう。

具体的な検討方法としては,取調べの対応に精通した弁護士を選び,弁護士の見解を仰ぎながら詳細な供述方針を決めるのが適切です。生じ得る争点や取調べの際に留意すべき点について,弁護士から十分な案内を受けることができれば,その後の取調べには格段に対応しやすくなるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けたときには,取調べへの対応方針を弁護士と協議するべき

置き引き事件の弁護士を選ぶ基準

①置き引き事件の解決実績

弁護活動は,過去の経験を踏まえた経験則を元に行うのが通常です。事件ごとによくある問題点や注意点なども,それが問題となった過去のケースを経験しているからこそ把握できるものです。

そのため,弁護士を選ぶ基準としては,過去に解決実績があるかどうかを重要なポイントとすることをお勧めします。この点,刑事事件の場合には,事件類型ごとに特徴が異なるため,置き引き事件の場合には同様の置き引き事件を解決した実績があると望ましいでしょう。

②示談交渉に長けているか

置き引き事件の解決は,否認事件でない限り示談交渉が不可欠です。認め事件では,被害者と示談が成立しているかどうかが最終的な刑事処分に直結していると言っても過言ではないでしょう。

そのため,置き引き事件での弁護士依頼では示談交渉を重視するべきですが,刑事事件の示談交渉に精通しているかどうかは,弁護士ごとに大きく異なります。特に,刑事事件では加害者側の立場で示談交渉をする必要があるため,相手に金銭などの請求をする事件とは勝手が違い,得手不得手の差が生じやすいものです。
しかも,置き引き事件の場合,盗品が被害者にとって思い入れのある場合など,金額面以外の点で被害者への配慮を要するケースが少なくありません。そのような特徴に無頓着だと,示談交渉が難航する原因にもなりやすいです。

置き引き事件で弁護士を選ぶ場合は,置き引き事件の加害者として示談交渉を行うことに長けているか,という基準を重視するのが有益です。

③弁護士と円滑に連絡が取れるか

弁護士への委任後は,事件に関する状況や進捗の把握を基本的に弁護士を通じて行うことになります。弁護士が捜査機関や被害者と接触した内容などを,弁護士から聞く形で把握していく,という流れが通常でしょう。

そのため,依頼した事件について不明な点は,全て弁護士から回答してもらう方法で解決する必要がありますが,弁護士とどのような方法,頻度で連絡を取ることができるかは,弁護士の取り扱いによる面が非常に大きいものです。
もちろん,弁護士も複数の事件を同時にこなしているため,常に連絡が取れるわけではありませんが,できるだけ連絡の時間を確保しようとしてくれるかは各弁護士の方針次第,というのが実情です。法律事務所によっては,連絡の窓口に弁護士が一切現れず,事務職員としか連絡が取れないということもあるようです。

弁護士選びに際しては,依頼後に弁護士と円滑に連絡が取れるか,という点を重要な基準とすることをお勧めします。可能であれば,弁護士が依頼者との連絡にどの程度時間を割いてくれるタイプの人か,という点も事前に把握したいところです。

④弁護士費用の見込みは具体的か

一般的な置き引き事件の場合,手続の流れにそれほど多くの可能性はありません。刑事事件の手続に精通している弁護士であれば,考えられる進行を一通り想定することが可能でしょう。
そのため,弁護士費用がどの程度発生するか,という金額の面についても,ある程度具体的な見通しを立てられる場合が多い傾向にあります。ある程度の幅はやむを得ず生じるものの,「この流れになればこのくらいの金額」というシナリオを一通り立てられるケースがほとんどです。

そこで,弁護士選びに際しては,依頼後の弁護士費用がどのくらいの金額になるか,という点の説明をできるだけ具体的に受けてみることをお勧めします。費用見込みの具体性に欠ける場合,金銭面に不安が残るのみでなく,具体的な説明をしてくれない弁護士への信頼にも大きな懸念が生じるため,依頼には慎重な検討が望ましいところです。

置き引き事件で弁護士を選ぶ必要

①不起訴処分を獲得するため

置き引き事件は,不起訴処分の可能性が十分にある事件類型です。認め事件であれば,被害者との示談が成立しているかどうかが不起訴処分を決定づける傾向にあり,示談が成立した事件では不起訴処分となる方が通常と言っても過言ではありません。
この点,示談交渉には弁護士の存在が不可欠です。当事者同士を直接引き合わせるわけにはいかないので,捜査機関は弁護士から依頼があった場合にのみ,弁護士限りで被害者と引き合わせることを認める運用をしています。

一方,否認事件の場合,起訴不起訴の判断は高度の法律的なものとならざるを得ません。犯罪の構成要件を満たしているか,犯罪の立証に足りる証拠はあるかなど,被疑者に刑罰を科すために必要な事項を精査し,刑罰を科せられない可能性が見込まれる場合には,不起訴処分の対象となります。
このような法律的な判断に際して,不起訴を求める意見を述べたり捜査機関との協議を試みたりするには,専門家である弁護士の存在が不可欠でしょう。認め事件のみならず,否認事件でも弁護士選びが不起訴処分を大きく左右することになります。

②取調べに適切な対応を行うため

置き引き事件で捜査を受けるとなれば,事件の内容に関する取り調べは避けられません。警察や検察から事件に関する話を聴取され,その内容を供述調書の形にすることは必須のステップとなります。
この点,事件によっては取調べへの対応次第で起訴不起訴の判断が大きく分かれる場合も少なくありません。特に置き引き事件の場合,立証に必要な証拠が数多く残されていることが期待できないため,足りない部分を取調べで埋め合わせる必要があることも考えられます。

そうすると,置き引き事件で不起訴を目指すためには,取調べへの対応を十分に準備し,不利益のない適切な取調べ対応を尽くすことが非常に重要となります。そして,適切な取調べ対応には弁護士の法的な判断や助言が極めて有益であるため,この点でも弁護士選びは重要な意味を持つことになるでしょう。

③早期釈放のため

置き引き事件で逮捕された場合,その後の動き次第では早期釈放される可能性も十分に考えられます。
逮捕されると,最大72時間以内に「勾留」されるかが判断され,勾留された場合には10日間の身柄拘束が生じます。そして,勾留後には最大10日間の「勾留延長」がなされる可能性もあります。そうすると,起訴不起訴の判断までの間に,最長で23日程度の身柄拘束があり得るということになります。

逮捕から起訴までの流れ

もっとも,勾留されずに釈放となれば,最大72時間の身柄拘束にとどまり,日常生活への悪影響は最小限にとどまります。早期釈放は,生活を守るために極めて重要なものであり,その可能性があるならばできる限り目指すことが有益でしょう。
この点,釈放を目指す具体的な手続や申立てには,弁護士への依頼が必要となります。法律の手続に則って弁護士に対応をしてもらうことで,早期釈放の可能性が大きく上昇することは決して珍しくないでしょう。

④刑罰の軽減を図るため

刑罰が避けられない置き引き事件の場合は,どれだけ軽微な刑罰にとどまるかが非常に重要な問題となります。刑罰には,大きく分けて「罰金」「執行猶予」「実刑」の3つがありますが,金銭を支払うことで終了する罰金が最も軽く,刑務所に収容させられる実刑が最も重い刑罰となります。
この点,罰金で終了させられることができれば,裁判所での裁判を受けることなく,略式手続という形で速やかに終了することも多いため,不利益は最小限にとどまります。罰金ではとどまらないケースでも,執行猶予となるか実刑となるかは,刑務所に収容されるかどうかという極めて大きな違いになります。

刑事罰の種類

刑罰の軽減を目指す場合,具体的な方法や内容は個別の事情を踏まえて決定する必要があるため,弁護士の専門的な判断が不可欠です。可能な限り円滑な解決を目指すためには,弁護士選びが重要となるでしょう。

置き引き事件における弁護士選びの準備

①事件の内容をまとめる

弁護士選びを適切に行うためには,相談相手の弁護士に事件の内容を正確に把握してもらうことが必要となります。そのため,事件の具体的内容は整理して伝えられるようまとめることが有益でしょう。

弁護士が事件の内容の一部を把握しているかいないかで,アドバイスの内容が大きく変わる場合も否定できません。弁護士に誤解が生じることを防ぐため,起きた出来事を漏れなく伝える用意をしておくとよいでしょう。
実際に内容をまとめるに際しては,以下のような点に留意することをお勧めします。

まとめる際の留意点

1.時系列で整理すること

2.起きた出来事と思った内容を区別すること

3.不利益な事情こそ伝えること

②悩みや迷いを整理する

事件解決をどのように図るべきか,弁護士をどのように選ぶべきかを検討しているということは,判断できずにいる原因として何らかの悩みや迷いがあるはずです。「弁護士に依頼するような事件なのか」「弁護士に依頼することで何かが変わるのか」「弁護士が変わると結果も変わるのか」「経済的に不安である」など,悩みや迷いが具体的にどのような内容であるかは,人により様々です。場合によっては,「何に迷うべきかも分からない」ということすらあり得るでしょう。

弁護士選びは,抱えている悩みや迷いの解消に最も適した弁護士を選ぶことが重要です。「悩みを解消してくれそう」という信頼感があるかないかだけでも,その後の動きに大きな影響を及ぼすでしょう。
そのため,弁護士選びに際しては,自分が抱えている迷いや悩みをまずは整理し,可能な限り言語化して弁護士に伝えられるようにしてみましょう。

③早期に弁護士への相談を試みる

置き引き事件は,認め事件であれば示談が最重要な動きとなりますが,示談は相手のある問題です。相手の気持ち一つで結果が真逆になる可能性もあるため,相手への配慮はできる限りするべきでしょう。
この点,示談の試みは早期に着手する方が相手への配慮として適切であることが通常です。被害者の立場では,時間が経ってから初めて示談の話が出てくるより,被疑者の特定後速やかに示談を申し入れてくる方が,真摯に反省していると評価するのが一般的と言えます。

そのため,特に認め事件で示談を目指す場合には,できるだけ早期に弁護士への相談を試み,早めに弁護士選びができるよう心掛けることをお勧めします。

置き引き事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①本人が依頼する

置き引き事件で必要となりやすい示談は,加害者と被害者の間における契約です。そのため,示談を試みるかどうか,示談ができる場合にどのような内容とするか,という点については,契約の当事者である本人の判断が必要となります。
また,弁護士が依頼を受けて活動をするためには,個別事件の詳細な内容を把握していなければなりません。そのため,弁護士が本人から事件の内容を直接聴取することは不可欠と言えるでしょう。

そうすると,弁護士に依頼する場合には,本人が依頼する,という考え方が非常に重要となります。弁護士も本人の意思が沿わない弁護活動はできないため,依頼者がご家族であっても,ご家族と本人の気持ちが一致していることは必要です。

②弁護士の聴取には個人差がある

弁護士への依頼は,法律相談を受けた上で検討することになりますが,弁護士がどのように話を聞くか,どのように回答してくれるか,話し方や言葉遣いはどうか,といった点は,当然ながら弁護士により大きく異なります。これは個人差の問題であり,依頼者目線では「合うか合わないか」という問題でもあります。
弁護士への依頼は,その後の弁護活動や判断の多くを弁護士に委ねるものであるため,弁護士との相性は思いのほか重要です。「この弁護士とは合わない」と感じながら依頼するのは,トラブルの原因にもなりかねません。

そのため,弁護士への相談においては,弁護士の応対には大きな個人差があることを念頭に置き,応対に違和感を覚えない弁護士(=自分と合う弁護士)を選ぶようにすることをお勧めします。

③相談時間には限りがある

弁護士への法律相談は,30分以内,又は1時間以内といった形で時間を区切って行われるのが通常です。その時間内で,必要な情報を伝え,弁護士から案内を受け,弁護士選びの検討を行う必要があります。
もっとも,その時間は決して長くはありません。無意識に相談時間を浪費してしまうと,肝心の弁護士選びに必要な話が聞けないまま相談が終了してしまう可能性もあるでしょう。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士への法律相談に時間的な制限があることを踏まえ,弁護士選びの基準や聞きたいことなどを可能な限り整理して法律相談に臨むことをお勧めします。そのようなスタンスは,法律相談をより有益な内容とする結果にもつながるでしょう。

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