【交通事故解決事例】後遺障害14級9号認定後,交渉開始から1か月足らずの間に200万円超の増額回収を実現。スピード示談の事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,後遺障害14級の賠償額交渉を弁護士が受任し,1か月に満たない短期間で200万円を超える増額解決に至った事例を紹介します。

事案の概要

被害者は,自転車に乗車中,信号のある十字路を青信号に従って走行していたところ,右方から赤信号を看過して十字路に進入してきた自動車に衝突される事故被害に遭いました。
この事故によって,被害者は頸椎捻挫,腰椎捻挫等を受傷し,約半年間の通院治療を要しました。その後,頸椎捻挫後の神経症状に対して後遺障害14級9号が認定され,加害者の保険会社から賠償額の提案を受けた段階で弁護士への相談をご希望されました。

なお,被害者はパートタイマーの兼業主婦という立場であり,弁護士への相談前には,相手保険との間で仕事や主婦業に関する話をしたことがない,とのことでした。
ちなみに,家事ができずに困ったなど,主婦業への影響を考慮した賠償額を保険会社が提案する場合,前提として被害者の職業や家族構成を確認する必要があります。なぜなら,主婦業をしている立場であるかどうかは,職業や同居家族を確認しなければ判断できないためです。

弁護士への相談時に被害者が保険会社から受けていた賠償額の提示内容は,総額約123万円というものでした。

ポイント
後遺障害14級9号認定済み
保険会社から約123万円の賠償額提示済み
被害者はパートタイマーの兼業主婦

法的問題点

①休業損害

【休業損害の有無】

専業主婦またはパートタイマーの兼業主婦が交通事故に遭った場合,収入に対する影響は限定的ですが,その分,主婦業に対する影響が非常に大きく生じます。そのため,主婦が被害者の場合には,主婦業(家事労働)の休業損害が発生すると考えられています。

しかし,保険会社の提示内容は,被害者の家事労働に関する休業損害を一切考慮していないものでした。そもそも,被害者が兼業主婦であることも,被害者の同居家族の有無・内容も,保険会社は確認を取っておらず,家事労働に関する休業損害を検討する意思が見受けられない状況でもありました。

主婦の交通事故被害に関して,休業損害は無視できない規模の金額になることが少なくありません。保険会社としては,あえて休業損害の点に触れないことで損害賠償の負担軽減を目指したのであろうと想像されますが,被害者にとっては休業損害の計上をしないメリットはありません。
被害者に休業損害が発生しないという特別な事情も見受けられなかったため,弁護士からは適正な休業損害を請求すべき状況と理解されました。

【休業損害の金額】

主婦業(家事労働)に関する休業損害の金額は,いわゆる自賠責基準の場合だと,以下の金額になります。

家事労働の休業損害(自賠責基準)

【日額】6,100円
【日数】実通院日数

家事労働は,会社員の労働などと異なり,何日の休業を要したかを特定したり,どのような損害があったかを金額換算したりすることが困難な分野です。そのため,休業日数は実通院日数と同じ日数であるとみなし,日額を6,100円と定めることで,機械的な計算をできるようにしたのが自賠責基準の計算方法です。
自賠責基準の金額は,機械的に算出できなければ保険の運用ができないため,実際の休業の程度に関わらず,一律で「6,100円×実通院日数」という形が取られます。

なお,自賠責基準には支払の上限額が定められています。傷害部分は合計の限度額が120万円のため,治療費で120万円が発生していれば休業損害はゼロとなります。自賠責基準の計算式は,自賠責限度額の範囲内でのみ意味を持つものなのです。

一方,裁判基準と呼ばれる計算基準では,以下のような計算を行うことが通例です。

家事労働の休業損害(裁判基準)

【日額】(事故前年の女性平均賃金(年収))÷365
【日数】休業を要した日数

日額は,女性の平均年収を365日で割る方法で算出するのが通常です。具体的な金額は事故発生の年にもよりますが,日額は概ね1万円を超える水準になることが多く,自賠責基準よりも高額になりやすいところです。

一方,日数に関しては,定まった特定方法がなく,個別の内容・状況に応じて検討しなければならないところです。どのような家事分担であったか,事故によってどのような家事がどの程度の期間できなかったか,という点などを総合的に考慮の上,被害者側と加害者保険会社の間で協議することが一般的です。
この点,自賠責基準で「休業日数=実通院日数」としている以上,休業日数を実通院日数とするべきとも思えますが,「休業日数=実通院日数」としなければならない法的な根拠はありません。あくまで,自賠責基準は自賠責が支払う保険金額の計算方法を定めているだけであり,被害者の損害額を定めているわけではないからです。そのため,日額を裁判基準に改めて,日数は自賠責基準と同じ実通院日数にしたいと思っても,それを加害者側が了承する必要はないという結論になるでしょう。

ポイント
保険会社が休業損害を省いて提示していても,適正な休業損害は請求すべき
休業損害の金額計算に際しては,休業日数が問題になりやすい

②後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益は,後遺障害に伴う労働能力の減少が,将来の収入減少をもたらすという内容の損害です。イメージとしては,症状固定後の休業損害と考えてよいでしょう。

休業しなければならない程度は,事故発生の直後が一番大きく,治療や時間経過を経て段階的に減少していくとの理解が一般的です。そして,症状固定(治療終了)の時期になれば,後遺障害等級が認定される場合でない限り休業の必要はゼロとなります。

症状固定

この点,症状固定時の症状について後遺障害等級が認定された場合,症状固定時にも休業の必要が残り続けているということになります。その具体的な程度は後遺障害等級によりますが,最も重い1級は100%,最も軽いとされる14級では5%とされています。

頸椎捻挫の神経症状で14級9号が認定された場合,5%の休業が症状固定後5年以内の期間に渡って残り続ける,という理解になり,この将来の休業に対する支払が後遺障害逸失利益というものです。

具体的な逸失利益の計算に際しては,休業が将来どのくらいの期間に渡って生じると見込まれるのかを特定する必要があります。後遺障害の影響が大きければ大きいほど影響する期間も長いと理解することになるため,交渉に際しては,後遺障害が家事労働をどのように制限するのか,説得的に示すことが重要になります。

ポイント
後遺障害逸失利益は,症状固定後の休業損害
後遺障害が休業にどの程度の影響を及ぼすのか,という点が重要

③弁護士費用の負担

被害者は,弁護への依頼に当たって弁護士費用の負担を強く懸念していました。被害者は,自家用車を所持していたものの,自動車保険に入っていない状態だったため,弁護士費用が自己負担になることを想定し,これまで弁護士への依頼を検討できないでいた,との経緯がありました。

弁護士の費用を負担する自動車保険のサービスには,「弁護士費用特約」があります。弁護士費用特約は,一定の対象者が自動車事故に遭った際,加害者に対して金銭を請求するための弁護士費用を負担してくれる,というものです。
ただし,弁護士費用特約から支払われる具体的な費用の金額や上限は決まっており,必ずしも弁護士費用全額を網羅できるとは限りません。弁護士費用特約で必要な弁護士費用をすべて賄えるかは,多くの場合,弁護士側の費用設定によって変わります。

被害者は,自動車保険や弁護士費用特約についてあまり分からないでいる,とのことであったため,弁護士費用特約が利用できる状況にないか,という点も弁護士にて確認を進めることとしました。

ポイント
弁護士費用特約は,被害者が加害者に金銭請求するときの弁護士費用を支払ってくれるサービス
弁護士費用の全額をカバーできるかは,多くの場合弁護士側の費用設定による
自分に利用できる弁護士費用特約の有無が分からなければ,弁護士への相談が可能

弁護士の活動

①休業損害の交渉

休業損害については,特段の事情がない限り請求すれば一定の支払が得られるであろうことが明らかな状況でした。ただ,その金額をどうするかは,難解な問題であると想像されました。

そこで,まず,被害者の家事に生じた具体的な休業の内容と程度を,時系列に沿って指摘していただくことにしました。事故直後はどの程度の家事ができなかったか,それが時間経過に応じてどのように回復していったのか,時間経過しても引き続きできなかった家事はどんなものか,といった点を,可能な限り具体的にするよう努めました。

あわせて,被害者がパートタイマーであったことから,パート勤務の休業状況を確認しました。一般的に,兼業主婦でパート勤務の休業が全くなければ,それだけ家事の休業も少なく済んでいるはずであり,逆にパート勤務が長期間できていなければ,家事の休業も多くなってしまっていると理解されやすいです。

弁護士による確認内容

1.具体的な家事の休業内容・程度を時系列に沿って整理
2.パート勤務の休業状況を確認

以上の確認の結果,被害者には事故直後から一定の休業が生じており,時間経過によって回復は見られるものの,症状固定までの間継続的に支障が生じ続けていると判断することができました。
そこで,休業損害の請求に際しては,時間経過に応じて段階的に休業の程度を減少させていく方法で計算することとしました。

休業損害のイメージ

具体的な計算のイメージは以下の通りです。

本件における休業損害の計算方法

事故後の期間休業の程度
1日~40日80%
41日~80日60%
81日~120日40%
121日~160日20%
161日~180日10%

被害者の実態を反映する方法として合理的な計算をしつつ,交渉でできる限りの休業損害を獲得するための具体的方法として,本件では上記の計算方法による解決を提案することとしました。

以上の対応の結果,総治療期間約180日,実通院日数約100日のところ,80日を超える日数分の休業損害で合意するに至りました。

ポイント
休業の実態を丁寧に確認
段階的に休業の程度を設定することで,説得的な休業損害の金額計算を行った

②後遺障害部分の交渉

後遺障害部分に関する保険会社の提示は,いわゆる自賠責基準の金額とほとんど同額でした。
自賠責保険からは,後遺障害14級に対して75万円が支払われますが,加害者の保険会社としては,後遺障害部分の支払が75万円に収まれば,自社負担がなくなる点で最も利益になるため,自賠責基準での提示を行うことが非常に多く見られます。

弁護士が交渉を行う場合,この自賠責基準の提示に対して,適正な金額の請求を行って増額を図る,ということが非常に重要となります。特に本件では,相手保険が被害者の家事労働を全く考慮していなかった点もあり,「後遺障害逸失利益」の増額交渉が要点となる状況でした。

後遺障害逸失利益は,将来の休業損害というイメージの損害であることを解説しましたが,後遺障害逸失利益と休業損害は似た性質の損害であるため,その損害の大きさを立証するための根拠も類似したものになってきます。
つまり,治療中には休業を多く要しており,症状固定後にも同じような休業の継続が見込まれる,ということが示せれば,逸失利益が決して小さくならないことの裏付けにつながるというわけです。

弁護士からは,症状固定前の休業が症状固定後も継続していること,それが後遺障害の影響によるものであることを具体的に指摘することで,後遺障害逸失利益を可能な限り大きい金額とすることを目指しました。この交渉に際しては,依頼者とも十分な打ち合わせを実施し,後遺障害の家事への影響を具体的に整理しました。

以上の対応の結果,後遺障害部分(後遺障害慰謝料+後遺障害逸失利益)の金額は,弁護士が事前に想定していた目標額に達することができました。

ポイント
後遺障害逸失利益の立証は,休業損害の立証と類似する内容
症状固定前の休業が症状固定後も続いていることを具体的に示す

③弁護士費用に関する保険の確認

弁護士においては,依頼者及び家族の弁護士費用特約が利用できないか,確認することにしました。

一般的に,弁護士費用特約が利用できる人は,以下のような立場の人です。

弁護士費用特約が利用できる主な立場

契約者
契約者の同居家族
契約者の別居の子(未婚の場合のみ)
契約自動車の同乗者

また,対象になる事故はいわゆる自動車事故ですが,契約者やその家族が利用する場合,被害者自身がその自動車に乗っている必要はありません。歩行中に自動車と接触した事故であっても,弁護士費用特約の利用は可能です。

本件では,被害者が兼業主婦であることを踏まえ,同居の配偶者の自動車保険を確認することとしました。
配偶者は,本件事故に対してほとんど関与していなかったため,自身の自動車保険を確認する機会がありませんでしたが,弁護士が保険証券等を確認したところ,配偶者の自動車保険に被害者が利用できる弁護士費用特約を発見できました。

そのため,弁護士が配偶者加入の保険会社に問い合わせ,事情や状況を説明の上,弁護士費用特約で対応してもらうよう手続を進めました。
結果,被害者は特に煩雑な対応をすることなく,弁護士費用特約から弁護士費用全額の支払を受けられることになりました。

ポイント
弁護士費用特約は自身が自動車に乗っていなくても利用可能
同居家族の弁護士費用特約は確認をすることが望ましい

活動の結果

以上の活動を尽くした結果,弁護士依頼前の提示額約123万円であったところ,総額約330万円での合意に至り,約207万円の増額が実現されました。
また,この増額交渉に際して発生した弁護士費用は,全額が弁護士費用特約からの支払となり,被害者に弁護士費用の負担が生じなかったため,増額分は全て被害者の利益となりました。

本件では,活動開始から1か月以内で解決に至ることができました。

弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件の被害者は,加害者の保険会社からかなり低額の金額提示を受けている状況でした。もっとも,被害者自身にその事実は分からないので,弁護士に相談しなければ低額であることを知らないまま合意していたかもしれません。その意味では,弁護士への相談が極めて重要なアクションであったということができるでしょう。

また,弁護士費用特約は,交通事故被害に遭わないと利用することがほとんどないため,被害者自身が利用できる状態かどうか分からないままである,ということも少なくありません。しかも,自分以外の人が契約した弁護士費用特約が利用できる場合もあり,逆に自分が契約した弁護士費用特約でも使えない局面があるなど,確認も容易でないことがあり得ます。
そのため,弁護士費用特約の利用ができるか不明な場合は,その点も含めて弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

なお,本件は交渉開始から賠償額の獲得までにかかった期間が1か月弱でした。増額幅や要した手続を踏まえると,非常にスピーディーな解決であったと言えます。
もっとも,迅速解決は弁護士だけでは実現できず,ご依頼者の対応あってこそのことです。ご依頼者様自身が,自分の力で迅速解決を勝ち取った事例と言っても差し支えないでしょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故解決事例】実通院日数60日程度の頸椎捻挫にて後遺障害14級9号獲得。総額245万円超の賠償額に至った事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,通院日数が決して多くない中で後遺障害14級9号の獲得を実現した頸椎捻挫の事例を紹介します。

事案の概要

被害者は,片側二車線の道路の右側の車線をバイクで直進走行していましたが,左側の路肩に一時停止していたタクシーが乗車扱いを終えて発進し,そのまま右側の車線に進入したため,直進走行中の被害者と接触する事故が発生しました。
加害者のタクシーが,被害者のバイクに気づかず,右ウインカーを出したまま右側の車線に進入してきたため,被害者はクラクションを鳴らしながら回避を試みましたが,タクシーがクラクションを意に介さず走行し続けたため,接触は避けられませんでした。

被害者には,事故直後は目立った受傷が見られませんでしたが,事故翌日になって右手のしびれや首の痛みなどが生じるようになりました。医療機関での診断は「頸椎捻挫」というもので,画像上の異常所見は特に確認されませんでした。

なお,加害者のタクシー運転手及び所属するタクシー会社は,被害者側の速度超過を問題視しているという話をしているようでした。

法的問題点

①過失割合

交通事故の過失割合は,事故類型ごとに設けられている「基本過失割合」と,この基本過失割合に加えて考慮すべき事情がある場合の「修正要素」によって決定されます。
そのため,過失割合を判断するためには,まず該当する基本過失割合の有無及び内容を特定し,その上で修正要素の検討をすることになります。

【基本過失割合】

本件は,自動車進路変更時における後続直進単車との事故であるため,事故類型を踏まえた基本過失割合は,以下の【225】図に従って単車:四輪車=20:80となります。

「別冊判例タイムズ38号」より引用

【修正要素】

本件では,加害者側から,被害者の速度超過が主張されているという状況でした。この点,後続直進車の速度超過は,時速15㎞以上の場合に「+5」,時速30㎞以上の場合に「+15」の修正要素に該当します。
そうすると,被害者の速度超過を前提とした場合,被害者の過失は5~15%修正されることになり,25~35%となる可能性があります。

ポイント
基本過失割合は被害者20%
被害者に速度超過があると,被害者の過失は25~35%になり得る

②後遺障害等級

本件の被害者の受傷内容は「頸椎捻挫」であり,画像等の他覚的所見がないものでした。この場合,後遺障害等級としては14級9号の獲得を目指すことになります。

前提として,頸椎捻挫等に代表される神経症状に関し,後遺障害等級としては以下のものがあります。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

また,それぞれの認定基準を満たしているかどうかの具体的な考え方は,以下の通りです。

12級13号症状が医学的に証明できる場合
(画像所見などの他覚的所見によって客観的に認められる場合)
14級9号症状が医学的に説明できる場合
他覚的所見はないものの,受傷内容や治療経過を踏まえると症状の存在が医学的に推定できる場合

本件では,他覚的所見が認められないため,12級13号の認定が見込めません。そのため,受傷内容や治療経過などを踏まえ,14級9号の基準である「症状が医学的に説明できる」場合と認められるかどうかが問題になります

なお,むち打ちの後遺障害等級認定については,こちらの記事もご参照ください。

ポイント
神経症状の後遺障害等級としては,12級13号又は14級9号が挙げられる
本件は他覚的所見がないため,14級9号を目指すべき場合に当たる

弁護士の活動

①過失割合の協議

過失割合に関しては,基本過失割合の20:80は了承できるものの,速度超過による過失割合の修正は了承できないと判断しました。なぜなら,過失割合の修正要素は,それを主張する方が具体的な主張立証をできるか,修正要素の存在について当事者間で争いのないことが必要ですが,本件ではいずれも見受けられなかったためです。

本件で相手方が被害者の速度超過の根拠として主張するのは,主に加害者(タクシー運転手)の記憶とドライブレコーダー映像でした。なお,タクシーが相手の場合,その加入している保険はタクシー共済になるのが一般的ですが,タクシー共済を利用するタクシー会社では,自社の担当者が対応する(タクシー共済には自動車保険会社のように連絡窓口となる人がいない)ことが通常です。本件でも,加害者の勤務先であるタクシー会社の担当者が,弁護士との連絡窓口に入っていました。

弁護士がタクシー会社担当者と連絡を取ったところ,タクシーのドライブレコーダー映像が確認できるとのことであったため,タクシー会社に訪問し,直接ドライブレコーダー映像の確認を行いました。タクシー会社としては,映像から被害者の速度超過が推測できるとの主張でしたが,弁護士が直接確認すると,その主張は非常に抽象的であるという判断ができました。
というのも,速度超過を理由とする過失割合の修正は,速度が時速何キロ超過していたか,というレベルで特定できなければなりません。時速15㎞以上の超過がなければ修正自体が生じませんし,時速30㎞を境に修正の程度も変わるためです。
しかし,本件のタクシー会社の主張は,「いくらか制限速度より速いスピードであると推測される」という程度にとどまる内容でした。走行距離と走行時間から速度を割り出せるわけでもなく,映像に残るバイクの動きが速そうに映る,という趣旨の指摘しかなされておらず,修正要素の立証とは到底考え難いものと判断されました。

そのため,弁護士からは,以下の指摘を行いました。

過失割合に対する指摘の内容

1.タクシーは片側二車線の道路上を路肩から右車線まで一気に進路変更しており,強引な運転行為が見受けられる
2.タクシーの強引な運転行為はあるが,交渉の限りであれば基本過失割合である20%の過失を了承する
3.訴訟に移行した場合は,20%より被害者に有利な過失割合を主張することになる
4.被害者の速度超過に関する主張は一切受け入れない

以上の指摘を踏まえた協議の結果,タクシー会社との間で過失割合20:80の合意に至り,過失割合の問題は解決しました。

ポイント
速度超過の修正は,具体的な速度も含めて主張立証が必要
相手が根拠とするドライブレコーダーを直接確認し,主張の誤りを指摘
基本過失割合に沿った解決を提案し,早期に合意

②後遺障害等級の獲得

後遺障害等級については,14級9号の認定を受けることが目標であったところ,14級9号に関する判断要素としては,以下のようなものが挙げられます。

受傷内容の重大さに関する事情

【事故態様】
→歩行者と大きな車が衝突した,車の速度が速かったなど,被害者の受ける衝撃の程度が大きいと思われる事故態様である場合,事故直後の症状が重いと評価されやすいです。

【事故による物的損害の程度】
→車両の損傷が激しい,多くの部品交換を要するような多額の修理費が発生しているなど,車両への衝撃が大きい内容である場合,事故直後の症状が重いと評価されやすいです。

【事故直後の診断内容】
事故直後に症状の重大さをうかがわせる診断内容がある場合,症状が重いと評価されやすいです。

【事故直後の画像所見】
事故直後に神経症状の原因となる画像所見が残っている場合,症状が重いと評価されやすいです。

症状改善のため十分な治療を尽くしたという事情

【治療期間及び実通院日数】
→治療期間が長く,実通院日数が多い方が,等級認定に近づきやすい傾向にあります。一般的には,通院期間6月以上,実通院日数100日以上を要することが目安とされるケースが散見されるところです。
もっとも,長ければ長いほど,多ければ多いほどいいというものではありません。明らかに過剰な診療と評価される治療経過だと,逆に症状とは関係のない理由で(=打算的に)通院したものと評価され,等級認定が得られづらい事情になりかねません。

【治療内容】
→神経ブロック注射など,より症状に対する影響の強い治療を受けている場合,十分な治療を尽くしたものと評価されやすい傾向にあります。具体的な治療方法は主治医とのご相談が適切ですが,可能であれば症状が重いことを把握してもらい,その症状に適した強度の治療を受けるのが望ましいです。

【治療中の症状経過】
治療期間中にどんな症状が出ていたか,という点が具体的に明らかであれば,それに対する治療も尽くされ,結果的に十分な治療を行ったと評価されやすいところです。例えば,首だけでなく上肢や下肢にも症状が出ているほど深刻な症状だったため,これを踏まえた治療内容に移行した,といった場合が挙げられます。

症状固定時における症状の重さに関する事情

【症状の一貫性】
→診断書やカルテの記載上,事故直後と類似した症状が一貫して残存している場合,その症状は重い物と評価されやすいです。

【症状の常時性】
→症状が残存しているとき,それが動作をしたときに生じるのか,動作しなくても常時生じるのかは大きな違いになります。症状に常時性がある場合,その症状は重いと評価されやすいです。

【神経学的検査の結果】
→神経症状に関する後遺障害等級認定の判断に当たっては,その神経症状の程度を推し量るための「神経学的検査」の結果が参照されやすいです。具体的な検査としては,ジャクソンテストやスパーリングテストといった「神経根症状誘発テスト」が挙げられます。

ジャクソンテスト
頭部を後ろに倒しながら圧迫したとき,肩や上腕,前腕などに痛みや痺れが生じるかを確認する検査

スパーリングテスト
頭を後ろに反らせた状態で左右に傾けたとき,肩や腕,手などに痛みや痺れが生じるかを確認する検査

【画像所見】
→14級を目指す場合には画像所見の指摘は困難ですが,何らかの画像所見が医師の先生から指摘される状況であれば,非常に有力な材料になります。

この点,非常に簡易な判断材料として,通院期間及び実通院日数を基準とする検討が広く用いられています。具体的には,通院期間180日以上,実通院日数100日以上を要した場合,そのような神経症状は14級9号の対象になる可能性が生じる,というものです。
ただし,通院期間180日以上,実通院日数100日以上であったとしても,直ちに14級が認定されるわけではなく,イメージとしては認定対象となるためのスタートラインに近いイメージでしょう。

しかし,本件の被害者の場合,通院期間は180日強あったものの,諸事情があり実通院日数が60日程度にとどまっていました。そのため,実通院日数は,後遺障害等級認定に対して消極的な材料となっている状況でした。

そのため,弁護士の方では,以下のような事情を強調することにより,実通院日数が多くなくても14級が認定されるべきであることを主張立証することを目指しました。

14級認定を目指すための主張内容

1.事故態様
a.被害者はバイク乗車中であり,四輪車と違って事故の衝撃が直接身体に及ぶ状況であった
b.四輪車進路変更時の後続直進バイクとの事故は,決して受傷が軽くなりやすい事故類型ではない

2.症状の推移
a.被害者の実通院日数が60日程度にとどまっていたのは,やむを得ない事情があったためで,通院が不要だったからではない
b.被害者は治療開始直後から一貫して痛みを訴え続けており,治療をしても改善されない頑固な症状がある

以上の試みをした結果,後遺障害等級は目標としていた14級9号の認定に至りました。

ポイント
頸椎捻挫での14級9号は,総治療期間と実通院日数が重要な判断要素
実通院日数が一般的基準より少なかったものの,14級9号の認定を実現

③損害賠償額の交渉

1.慰謝料

14級の認定を前提とした場合,主な損害項目は「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」「後遺障害慰謝料」「後遺障害逸失利益」の3点となるのが通常です。本件の場合も同様でした。

この点,「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」及び「後遺障害慰謝料」は,弁護士の交渉による増額が生じやすい主な項目でもあります。弁護士がいない場合はいわゆる自賠責基準が採用されやすいものの,弁護士に依頼し,弁護士が交渉を尽くすことで,裁判基準と呼ばれるより高額な金額水準を踏まえた合意が可能となります。

一例として,14級の後遺障害慰謝料の場合,以下のような差異が考えられます。

14級の後遺障害慰謝料

自賠責基準=32万円
裁判基準=110万円

差額=78万円

なお,弁護士が交渉で解決する場合,裁判基準の80~90%が一つの目安になりやすいところですが,90%の99万円であっても自賠責基準とは67万円もの差があります。

2.逸失利益

後遺障害逸失利益(労働能力の喪失による収入減少)については,労働能力喪失期間が主な問題になりやすいところです。

具体的な労働能力喪失期間は,個別の後遺障害や症状の内容によっても異なりますが,14級9号に該当する頸椎捻挫の場合,5年以内の期間を念頭に置く運用が一般的です。加害者保険会社としては,労働能力喪失期間が短ければ短いほど賠償額も小さくなるため,特に弁護士がいなければより短い期間を主張することが広く見られます。
この点,交通事故と縁のなかった人が,突然「労働能力喪失期間2年」と言われても判断基準を持ち合わせていないため,十分に検討しないまま合意してしまう被害者も相当数いるようです。

しかし,弁護士が交渉をする場合にそのような被害者の損失を見過ごすわけにはいきません。労働能力喪失期間は5年間とすることを念頭に交渉を実施する方針としました。

ポイント
慰謝料は弁護士の有無で最も金額が変わりやすい項目
頸椎捻挫による14級9号の逸失利益は,労働能力喪失期間の問題が生じやすい

活動の結果

上記の各活動を尽くした結果,以下の結果が実現されました。

本件の主な結果

1.過失割合20%(加害者の主張を退ける)
2.後遺障害14級認定(目標等級の実現)
3.賠償額合計245万円(労働能力喪失期間5年)

なお,20%の過失割合があることを踏まえると,賠償額は交渉で実現し得る最大限に近い水準であったと考えられます。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,過失割合について加害者側の中途半端な主張があった,という点に最初の関門がありました。この点については,弁護士が実際の根拠資料を具体的に確認し,加害者側の言い分は法的に認められる余地のない程度の内容であることをはっきり指摘することで,早期解決に至りました。

具体的金額に関しては,後遺障害等級が認定されるかどうか,という点が損害賠償額の大きさを決定づけました。実際には,後遺障害14級を前提に245万円を超える賠償に至りましたが,後遺障害が非該当(等級なし)であれば,賠償額は3分の1にも満たなかったことが見込まれます。

後遺障害等級認定を得るためには,実通院日数の少なさが懸念事項でしたが,バイクの運転中で事故の衝撃が大きかったことや,実際に頑固な症状が残り続けていたことなどを丁寧に示すことで,被害者の後遺障害に対する理解を得られたのが大きな要因だったと考えられます。

頸椎捻挫について後遺障害14級の認定を獲得することは容易でなく,残念ながら非該当を覚悟して行う必要がある,というのが現実ですが,実際に結果が伴うケースも確かに存在するということを伝えてくれる事例だと言えるでしょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故解決事例】後遺障害9級,賠償額2,800万円超を獲得。治療中に失職した後も十分な休業損害の支払を受け続けることに成功した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,バイク乗車中に自動車との事故に遭い,二か所に人工関節の挿入置換を要した結果,後遺障害9級,賠償額合計2,800万円超を獲得した事例を紹介します。

事案の概要

信号機のある十字路交差点で,バイクに乗車した被害者が直進走行していたところ,対向の右折四輪車と接触するいわゆる右直事故が発生しました。被害者は,自分の右前方から右折してきた車と自車の間に右足を挟まれる形になってしまったため,主に右足の受傷が大きい状態でした。

被害者の受傷内容は,右骨盤の脱臼骨折,右膝靭帯の断裂,右足甲の骨折等,多岐に渡りました。受傷部に対する手術は複数回に及び,その間に感染症にかかるなどもしたため,被害者は合計で300日を超える入院を要することになりました。

弁護士が法律相談を受けたのは,入通院治療継続中のことで,治療中の対応から最終的な解決までをご一緒するため依頼をお受けすることになりました。

法的問題点

①過失割合

直進二輪車と右折四輪車との間における右直事故は,以下の【175】図の通り,二輪車:四輪車=15:85が一般的な過失割合となります。

「別冊判例タイムズ38号」より引用

そのため,本件の過失割合は被害者15%であれば適正であると考えられ,相手から被害者15%を超える主張が出ないか,という点が問題になると想定できました。
結果,加害者保険会社も被害者15%の過失割合を想定しており,過失割合に問題のないことが確認できました。

ポイント
直進バイク:右折自動車の右直事故の場合,基本的な過失はバイク15%

②治療期間中の生活保障

本件の場合,治療期間が約2年半,うち入院期間が300日以上と,非常に長期の入通院を要することになりました。そのため,事故前に勤めていた勤務先との雇用関係は終了せざるを得ない状況に至りました。

この点,雇用が継続しており,その勤務先の仕事を休業している,という状態であれば,適切な手続を踏めば相手保険から休業損害の受領が可能です。もっとも,勤務先を退職した後については,勤務先の休業が観念できないため,休業損害の支払が受けられないのではないか,という問題意識が生じます。

休業損害に関する事情

雇用契約中勤務先を欠勤しているため,現実の欠勤に対応する休業損害が発生
退職(雇用契約終了)後退職している以上欠勤もないため,休業損害は不発生?

この点,被害者が自分の意思で勤務先を辞めたり,そもそも事故前から退職するつもりだったりすれば,退職後の収入まで加害者側に保障してもらうのは困難でしょう。しかしながら,被害者の退職原因が交通事故にしかない場合,退職をしたからといってその後の休業損害を加害者側が負担しないというのは不公平と言わざるを得ません。

本件の被害者については,交通事故とこれに伴う入通院のため,出勤の見込みが長期間立たず,今後も継続的な出勤が見通せないために雇用契約を終了する,という状況でした。つまり,被害者が退職をするのは専ら交通事故が原因であって,退職後も休業損害の支払を継続してもらうべき(加害者側に生活保障を求めるべき)内容であると判断できる内容でした。

ポイント
休業損害は,退職後には生じないのが原則
ただし,退職原因が専ら交通事故であれば,退職後も休業損害の支払はなされるべき

③後遺障害等級の獲得方法・内容

本件における被害者の後遺障害等級は,9級相当となることがほぼ明らかに見通せる状況でした。

被害者の後遺障害等級

10級:右股関節の人工関節挿入置換
10級:右膝関節の人工関節挿入置換

結論:9級相当

人工関節の挿入置換は,その内容が明白であるため,不必要な処置であったような例外的な場合を除き,後遺障害10級の認定が想定されます。今回は,股関節と膝関節の2か所に人工関節の挿入置換があったため,最終的な結論も9級であることが見通しやすい内容でした。

そうすると,その後遺障害等級を獲得する手段については,柔軟な検討が可能となります。

そもそも,後遺障害等級を獲得するには,自賠責保険会社に所定の請求手続を行うことが必要ですが,具体的な手続の方法は以下の二通りです。

後遺障害等級認定を目指す手続

1.事前認定
加害者の保険会社が必要な書類等を収集・提出する方法

2.被害者請求
被害者自身が必要な書類等を収集・提出する方法

また,各方法のメリット・デメリットについては以下のように整理されます。

方法メリットデメリット
事前認定後遺障害診断書だけ主治医から取り付けて提出すれば,あとは保険会社がすべて進めてくれる保険会社は,必要な書面以外は何も提出してくれない
被害者請求必要書類以外にも,自分の主張に関わる書類を自由に添えて提出することができる提出書類の取得や作成を自分でしなければならないため,手間が多い

本件では,被害者請求に際して発生する手間や弁護士費用を考慮した場合に,これを避けて事前認定を行う方が被害者にとって有益であると判断しました。そのため,手続選択について弁護士から必要な説明を行い,弁護士費用を含む各種負担の軽減を目的に事前認定を選択することとしました。

ポイント
本件は9級相当となることがほぼ明らかな状況
弁護士費用や手続負担を回避するため,あえて事前認定を選択

④後遺障害逸失利益

被害者は,症状固定時55歳という年齢でした。そして,事故当時は会社員として勤務しており,治療中にその会社を退職した,という経緯がありました。

この場合,後遺障害等級が認定された場合の逸失利益について,計算方法に争いの生じることが想定されます。それは,一般的に定年とされる60歳を近年のうちに迎えるためです。

後遺障害逸失利益は,後遺障害による労働能力の喪失が収入減少を引き起こすことを踏まえ,その収入減少に対する補償をするものです。そうすると,そもそも収入がない状態であれば,逸失利益はゼロとなるべきです。
そして,定年後は仕事がなく,収入もないことが一般的であるため,定年以降に後遺障害逸失利益は発生しないのではないか,という問題が生じるというわけです。

法律的な運用では,後遺障害逸失利益が生じる一般的な期間は67歳までとされるため,被害者目線では67歳までの逸失利益を請求したいところです。一方,実際に67歳まで労働をして収入を獲得し続ける立場ではなければ,67歳までとするのは不適切だ,という反論を受けることは避けられません。

そこで,被害者の後遺障害逸失利益は,何歳までを対象期間として計算すべきであるか,という点について慎重な検討を要する状況でした。

ポイント
後遺障害逸失利益は,後遺障害による収入減少への補償
もともと収入がなければ,後遺障害逸失利益はゼロになる
一般的な定年とされる60歳以降は,逸失利益の有無が問題になりやすい

弁護士の活動

①休業損害の解決

休業損害については,退職後も加害者保険会社に支払いを継続してもらうため,弁護士にて必要な対応と交渉を尽くしました。
具体的には,以下のような対応を行うこととしました。

休業損害に関する対応

1.退職理由が専ら交通事故にあることを勤務先に書面化してもらう
2.退職がなければ見込まれていた収入額とその根拠を書面化する
3.医師の所見としても速やかな業務復帰が不可能であることを示す

以上の対応を通じて,「勤務先を退職したのは,交通事故のために勤務できない状況が長期間続いている点が唯一の原因である」という事実を説得的に示し,退職後も休業損害の支払いを続けるよう保険会社に求めました。

その結果,休業損害は継続的に支払われることとなり,入通院中の被害者の生活保障は約束される結果に至りました。

②後遺障害等級

後遺障害等級については,事前認定の結果,想定通り9級の認定となりました。認定された等級,内容ともに事前の予定と相違ないものであったため,速やかに金額交渉へ移行することとしました。

ポイント
後遺障害等級は,事前認定により負担を避けつつ希望する9級認定

③後遺障害逸失利益の交渉

後遺障害逸失利益に関しては,まず,被害者の勤務先で予定されていた定年や再雇用のルールを確認することとしました。そうすると,被害者の勤務先は,60歳定年となるものの,65歳まで再雇用が可能とされており,実際にも65歳までの再雇用を選択する例が大多数であることが分かりました。

そのため,65歳まで期間を後遺障害逸失利益の対象とする解決を目指し,相手保険との交渉を実施することとしました。
もっとも,根拠なく主張するのでは解決が難しいため,以下のような根拠資料の作成・提出も並行して行いました。

後遺障害逸失利益に関する根拠

1.勤務先の定年・再雇用に関するルール(就業規則)を示す
2.被害者の勤務先では65歳までの再雇用が常態化していることを示す
3.就業規則を踏まえ,定年後の具体的な想定収入額を算定

以上の対応を通じて,65歳までの期間は収入の継続が見込まれていたことを説得的に示し,相手保険会社の理解を得る試みを行いました。

活動の結果

上記の活動の結果,治療期間中の休業損害1,000万円超,治療終了後の賠償額1,800万円超,合計2,800万円超の賠償を獲得するに至りました。

なお,休業損害は治療期間中の全日について支払が得られ,後遺障害逸失利益については65歳までの期間を対象とする当方の主張がそのまま採用されました。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件では,右足に大きなケガを負った被害者が,入院中に度重なる感染症の被害にも遭うという状況下で,入院期間が非常に長期に渡ったという特徴がありました。
入院期間が長期に渡ったことで,勤務先への復帰が困難になってしまい,治療の終わりが見えない中で仕事だけを失った,という不安定な状況を強いられてしまいました。
そこで,まずは治療期間中の生活を支えるための休業損害の交渉が急務だったと言えますが,休業損害の問題が速やかに解決できたのはとても有益なことでした。

また,後遺障害逸失利益に関しては,必要な根拠を提出の上,根拠に沿った請求を行うことで,比較的円滑な合意・解決に至ることができました。この点については,退職後でありながら協力的な対応をしていただいた勤務先の存在も非常に大きく,被害者と勤務先との信頼関係が解決に導いてくれたと指摘することもできそうです。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故解決事例】後遺障害の被害者請求を早期に実施したことで減額回避。スピード弁護が最大額の賠償獲得を実現した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,事故後意識を失った状態であった高齢者に関し,迅速な弁護活動によって最大額の受領を実現した事例を紹介します。

事案の概要

90歳の被害者は,自転車の乗車中に自動車と衝突する事故に遭い,脳挫傷,肩や肋骨の骨折,全身の打撲等,極めて重大なケガを負いました。被害者は,事故発生から意識のない状態が続いていたため,被害者から事故状況を聞き出すことはできませんでした。
事故態様に関しては,被害者が片側一車線の道路の路肩を走行していたところ,後続の自動車と接触した事故のようである,との情報が得られましたが,その正確さは不十分なものにとどまりました。被害者が歩道を走行していたのか路肩を走行していたのか,どのような経緯で車道に進入したのか,なぜ接触が回避できなかったのか,という点について,明確な情報は得られないままでした。

また,自動車側の保険会社は,意識を失って入院中である被害者の入院費用の支払を拒んでいました。このような対応は,通常,被害者側に大きな過失があると考える場合に取られるものであり,相手方やその保険会社が,被害者の過失を相当程度大きく見積もっていることが推測される状況でした。

被害者自身が弁護士に依頼することは困難であるため,被害者の唯一の子である男性が,弁護士への相談・依頼を希望されました。

法的問題点

①過失割合

交通事故の損害額は,過失割合によって大きく異なります。それは,損害額を被害者と加害者の過失割合に応じて負担し合うことになるためです。

例えば,被害者に総額1,000万円の損害が生じているとして,被害者の過失がゼロであれば,1,000万円の損害は全て加害者が負担すべきということになります。全ての損害が加害者の落ち度によって生じているためです。
一方,被害者と加害者の過失がともに50%であれば,加害者に全ての損害を負担させるのは公平ではありません。被害者にも50%の過失がある以上,被害者に生じた損害の50%に当たる500万円は被害者が負担すべきであって,加害者に請求ができるのは1,000万円のうち500万円のみという結論になります。

本件では,被害者自身から事故状況が聴取できず,事故を撮影した映像もなかった上,加害者の主張する内容も明確には把握できなかったため,過失割合を特定しづらいという難点がありました。ただ,加害者の保険会社が被害者の入院費用の支払を拒んでいることは,保険会社が被害者の過失を相当程度見積もっていることの十分な裏付けになる事情ではありました。

被害者の家族を通じて収集できた情報を踏まえると,過失割合にはいくつかの仮説を立てることは不可能ではありませんでした。

【仮説1.進路変更の場合】

自転車と車が同一方向に走行していたところ,自転車が何らかの事情で進路変更を試み,その際に車と接触した,という場合です。過失割合は,前方に障害物があったかどうかによって区別されますが,障害物はなかったという前提で仮説を立てます。

この場合,以下の【307】図に従い,基本過失割合は自転車:自動車=20:80,自転車が高齢者のため「-10」の修正がなされ,自転車:自動車=10:90という過失割合が想定されます。

「別冊判例タイムズ38号」より引用 以下同じ

【仮説2.路外からの侵入の場合】

自転車が路肩を走行していたという点が不正確であり,実際は路外の駐車場などから自転車が車道へ進入した,という場合です。

この場合,以下の【300】図に従い,基本過失割合は自転車:自動車=40:60,自転車高齢者のため「-10」の修正がなされ,自転車:自動車=30:70という過失割合が想定されます。

【仮説3.横断自転車の場合】

路肩を走行中の自転車が,何らかの理由で車道を横断して対向車線側に移ろうとした場合です。また,自転車が路肩でなくさらに外側の歩道を走行しており,その後車道を横断しようと試みた,という場合も含まれます。

この場合,以下の【310】図に従い,基本過失割合は自転車:自動車=30:70,自転車高齢者のため「-10」の修正がなされますが,この場合には自動車側から「直前横断」の主張がなされるのが多数であるため,直前横断によりさらに「+10」の修正がなされ,結果的には自転車:自動車=30:70という過失割合が想定されます。

【過失割合に関するその他の事情】

過失割合の検討を行う場合,刑事記録として作成されている「実況見分調書」の取り付けが広く行われています。実況見分調書は,当事者が立ち会いの上,当事者が指示説明した事故態様を書面に記録したもので,当事者の主張する事故態様を把握するための根拠資料とされます。

ただ,実況見分調書を含む刑事記録の取り付けができるのは,基本的に刑事処分がなされた後です。そして,交通事故に関して刑事処分がなされるのは,早くても数か月後,ケースによっては1年以上経ってからのことにもなりかねません。時間をかけて調査するのであれば,実況見分調書を通じて相手の主張を確認するのも有力ですが,本件では以下で解説するようにあまり時間が残されていませんでした。

ポイント
被害者側の情報を踏まえると,被害者の過失は10~30%になりやすいか
実況見分調書の取り付けは有力だが,取得に時間がかかる

②損害の内容

本件の被害者の後遺障害等級は,1級となることがほぼ明らかな状況でした。事故発生から一貫して意識のない状態が続いており,意識の回復する見通しがなかったためです。そのため,被害者の損害としては,入院に対する慰謝料と,後遺障害1級に対する慰謝料が見込まれやすいところです。

もっとも,被害者は90歳と高齢であり,収入を得る仕事をしている立場にはなかったため,後遺障害に伴う逸失利益(労働能力の喪失による収入減少)は存在しない状況でした。後遺障害等級が認定される場合,金額的にはこの逸失利益が全項目中最も大きな金額になることが通常ですが,収入のない立場の高齢者は例外で,本件でも後遺障害の逸失利益は存在しないことを前提に考慮する必要がありました。

ポイント
後遺障害は1級であることがほぼ明らか。「入院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」が生じる
しかし,被害者の立場上「後遺障害逸失利益」は存在しない

③被害者死亡後の損害額

被害者は,事故当時90歳と非常に高齢で,事故がなくても生涯を遂げる時期が遠くはないと見られていました。そこに交通事故で意識不明の重体となり,その生命維持は非常に不安定な状態を強いられ続けていました。

この場合,弁護士としては,死亡前後の損害額の変化を考慮する必要があります。つまり,死亡後では得られる賠償額が小さくなってしまう場合,死亡より前に金銭を回収しなければ,被害者の不利益につながってしまうということです。
しかも,本件では被害者側に一定程度の過失が見込まれるため,死亡前後の比較はいわゆる裁判基準のみでなく,自賠責基準についても行う必要があります。なぜなら,自賠責基準は被害者側にあまりに大きな過失がない限りは過失による金額減少が生じないため,後遺障害逸失利益のない本件のようなケースでは,過失相殺を要する裁判基準よりも過失相殺しなくて済む自賠責基準の方が高額になる可能性も大いにあるからです。

実際に,本件では自賠責保険金の方が高額になりやすいケースと考えられる状況でした。そして,自賠責保険金は,死亡後になると,それ以前の半分に満たない金額しか受領できなくなることが試算できました。

したがって,過失割合の問題は存在するものの,過失割合の検討に時間をかけている場合ではなかったのです。

ポイント
被害者死亡の可能性がある場合,死亡前後で損害額が大きく減少しないか注意が必要
死亡前後での金額変化は,自賠責基準についても検討する必要がある
本件では,死亡後になると自賠責保険金が半分以下になってしまう

④子の依頼を受けて活動できるか

被害者自身が弁護士に依頼できないため,現実的には子が被害者の代わりに動いている状況でした。
もっとも,法律上は,本人の代わりに動くのは成年被後見人と呼ばれる立場の人物でなければならず,子であっても法的には第三者に過ぎません。そのため,法律を厳密に守るのであれば,子を成年被後見人と認めてもらった後に,改めて子から依頼を受けて弁護活動を行うべき,ということになります。

しかし,被害者死亡後に回収できる金額が大きく減少してしまうため,ゆっくりと成年被後見人の手続をしているわけにはいきませんでした。
この点,自賠責保険は,被害者の成年被後見人見込みとして適切な人物であれば,請求者が被害者自身でなくても自賠責保険金の請求を受け付ける運用をしています。この取り扱いを踏まえ,とりあえず自賠責保険金の受領に限り,子の委任を受けて弁護士が活動を行うことに決めました。

ポイント
法的には,成年被後見人が被害者のために弁護士依頼することが必要
自賠責保険は,成年被後見人でなくてもその見込みがあれば請求者として取り扱う
自賠責保険金の請求に限り,速やかに子の委任を受けて活動することにした

弁護士の活動

①自賠責保険への被害者請求

弁護士の方では,まず何より速やかな自賠責保険金の請求を試みました。そのため,具体的には以下のような活動を尽くしました。

被害者請求迅速化のための活動

1.症状固定の判断と後遺障害診断書作成を直ちに行うことを,医療機関に丁寧に相談

2.成年被後見人見込みの子が請求者として被害者請求する予定であることを,自賠責保険会社と事前に打ち合わせ

3.自賠責に作成・提出を要する資料は前倒しで順次取り付け

これらの活動の結果,被害者の存命中に被害者請求が実施でき,自賠責保険から3,129万円の保険金を受領することができました。

②被害者請求後

自賠責保険金を受領した後は,それ以前のような時間の切迫はないため,通常通り実況見分調書の取り付けを試みるとともに,被害者の成年被後見人を選任する手続を進めるなどしながら,加害者側への請求内容を検討していました。

しかし,ほどなくして被害者の方が生涯を遂げられたため,自賠責保険金を超える請求の余地がなくなり,活動は終了することとなりました。

なお,加害者立ち会いの実況見分調書が後に取得できたため,内容を確認してみたところ,加害者側の主張は【仮説3.横断自転車の場合】に該当するものでした。加害者によれば,路肩よりさらに外側の歩道を走行していたはずの自転車が,突然歩道に飛び出して目の前を横断しようとした,という事故態様であったようです。
加害者の主張を踏まえた過失割合は,自転車:自動車=30:70をベースにすると思われますが,加害者保険会社の姿勢を考慮すると,それ以上の被害者の過失を主張するつもりであった可能性も考えられます。

ポイント
迅速な被害者請求により,自賠責保険金3,129万円を獲得
その後の請求を実施せず弁護活動終了
加害者の主張は,被害者の過失30%以上

活動の結果

上記の弁護活動の結果,被害者の後遺障害1級に対する自賠責保険金として3,129万円が支払われ,被害者の死亡後,遺族に相続されることとなりました。

なお,この後遺障害に対する自賠責保険金を受領する以上に金銭を獲得する方法は,本件では結果的に存在しませんでした。被害者の死亡まで手をこまねいていると,回収金額は半分以下に減少してしまうため,スピード弁護が最大額の補償を引き出すに至りました。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,過失割合の不明確さ,逸失利益がないことによる方法選択の困難さ,被害者本人に意識がないことによる弁護士依頼の難しさなど,複数の異なる問題点に頭を悩ませやすい内容でした。しかし,本件の最も大きな問題は,死亡を待っていられない点にあり,その問題にどれだけ早く気づき,迅速な対応ができるかが極めて重要なポイントになっていました。

一般的な進め方では,まず可能な限り十分な治療を尽くして,過失割合については加害者の刑事処分を待って…と長い期間を費やした後に初めて方針の検討をすることも珍しくありませんが,本件ではそれが許されないという点に,杓子定規では解決できない弁護活動の難解さがあったのではないかと考えます。
また,最大限の金銭回収に至った原動力が,活動のスピードであったという点は,日頃から私が大切にしている活動の迅速さが結果に結びついたものでもあります。そのため,自分の考え方やスタンスが間違っていなかったとの確信を深める大切な機会にもなりました。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故解決事例】首と腰のヘルニアで被害者請求非該当も異議申立てで14級の認定を獲得し,345万円の賠償金を獲得した事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,追突事故被害によるヘルニアの受傷で,異議申立てにより14級の認定を獲得した解決事例を紹介します。

事案の概要

赤信号にて停止中の被害車両に加害車両が追突する形で事故が発生しました。被害者は主に首と腰の痛みに悩まされており,半年近く通院を継続したものの,症状は残存し続けました。

約半年が経過した段階で,通院先にてMRIを撮影したところ,首と腰にヘルニアの症状があるとの指摘を受け,弁護士への法律相談をご希望されました。

弁護士の相談時には,既に通院先での後遺障害診断書作成の予定も設けられており,通院治療は終了が見込まれている状況でした。被害者の悩みも後遺障害等級の点にあり,申請に際して弁護士のサポートをご希望の状況でした。

法的問題点

①ヘルニアと交通事故との因果関係

ヘルニアとは,体内の臓器や組織が本来あるべき場所から逸脱して飛び出した状態を指し,首や腰で問題になるのは「椎間板ヘルニア」と呼ばれるものであることが通常です。
脊椎の間には椎間板というクッションとなる軟骨がありますが,椎間板が圧迫されて飛び出してしまい,神経を圧迫する状態にあるのが椎間板ヘルニアと呼ばれる状態です。

もっとも,このヘルニアは,一般には外傷のみから生じるとは理解されておらず,交通事故で判明したヘルニアの原因は,交通事故前から存在していたと判断されることが非常に多く見られます。
ヘルニアが生じていても,直ちに痛みなどの自覚症状が現れるわけではなく,事故によってヘルニアの箇所に刺激が生じた結果,自覚症状が現れるに至った,という場合が非常に多くあるのです。

ヘルニアの原因が交通事故の原因でない場合,その問題は後遺障害等級の判断にダイレクトな影響を及ぼします。MRIなどの画像でヘルニアが確認でき,ヘルニアに伴う神経症状が出ていたとしても,ヘルニアが事故によって生じたのでないのであれば,ヘルニアは後遺障害等級の根拠にはならない,という結論になってしまいます。
実際に,このような判断でヘルニアがあっても後遺障害等級が非該当との結論になるケースは枚挙に暇がありません。ヘルニアが生じている事故では,ほとんどの場合で因果関係が大きな問題になります。

②神経症状に対する後遺障害等級

神経症状に対する後遺障害等級としては,以下の内容が挙げられます。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

また,その具体的な判断基準としては,以下のように整理されています。

12級13号症状が医学的に証明できる場合
(画像所見などの他覚的所見によって客観的に認められる場合)
14級9号症状が医学的に説明できる場合
(他覚的所見はないものの,受傷内容や治療経過を踏まえると症状の存在が医学的に推定できる場合)

つまり,画像所見などの客観的な所見で第三者が判断できる場合には12級の認定可能性があり,そのような客観的な所見がない場合には14級の認定を目指す,ということになります。

この点,ヘルニアの場合,MRIで客観的に確認できれば12級の認定が得られそうにも思えますが,残念ながらそれほど簡単な話ではありません。ヘルニアがあっても,直ちに事故と因果関係があるとは認められないため,客観的な画像所見があることに加え,それが外傷性のヘルニアであることがわかる根拠も指摘できなければ,12級の根拠とすることは困難と理解されます。

ヘルニアが外傷性であると分かる場合というのは,主に新鮮なヘルニアが画像に現れている場合です。しかし,追突事故で早期にMRI撮影を行うケースはあまり多くはなく,本件でも事故から半年ほど経過し,通院治療の終了に差し掛かった段階で初めてMRIが撮影され,ヘルニアが判明しました。
そのため,本件で12級を目指すことは非常に難しく,14級を目指すことが現実的であろうと思われる状況でした。

③損害賠償額

交通事故の主な損害賠償の項目としては,慰謝料が挙げられます。
この慰謝料は,入院及び通院の期間に応じて発生する「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」と,後遺障害等級に応じて発生する「後遺障害慰謝料」の二つに大きく区別されますが,入通院慰謝料は入通院があれば生じるのに対し,後遺障害慰謝料は後遺障害等級が認定されなければ発生しません。
そのため,後遺障害等級が認定されるかどうかは,後遺障害慰謝料がゼロであるかどうか,という大きな分岐点になるところです。

また,慰謝料の金額は,弁護士の有無で保険会社の対応が変わる主なポイントでもあります。弁護士が金額交渉を行うことで増額するのは,基本的に弁護士が付くとこの慰謝料額について保険会社が増額に応じる運用をしているためです。
もっとも,具体的な増額幅は個別の交渉により異なるため,増額交渉をどのように実施するか,どのような増額結果になるかは,弁護活動によって変化する部分となります。

ポイント
ヘルニアは交通事故との因果関係が問題になる
外傷性のヘルニアか判断できない場合は14級を目指す
慰謝料額の交渉は弁護士交渉のメインポイント

弁護士の活動

①被害者請求の実施

交通事故で後遺障害等級認定を目指す場合,自賠責保険に認定を求める手続を行い,調査・判断してもらうことが必要です。そして,認定を求める手続には,以下の二通りがあります。

後遺障害等級認定を目指す手続

1.事前認定
加害者の保険会社が必要な書類等を収集・提出する方法

2.被害者請求
被害者自身が必要な書類等を収集・提出する方法

また,各方法のメリット・デメリットについては以下のように整理されます。

方法メリットデメリット
事前認定後遺障害診断書だけ主治医から取り付けて提出すれば,あとは保険会社がすべて進めてくれる保険会社は,必要な書面以外は何も提出してくれない
被害者請求必要書類以外にも,自分の主張に関わる書類を自由に添えて提出することができる提出書類の取得や作成を自分でしなければならないため,手間が多い

本件では,神経症状という数値で判断できない分野の後遺障害等級認定を目指す試みであったこと,ヘルニアの存在だけがわかっても等級認定には結びつかないであろうことなどを踏まえ,被害者請求の方法で可能な限り丁寧な主張を尽くすことにしました。

被害者請求に際しては,以下のような活動も実施しました。

【医学的意見の獲得】

ヘルニアの原因が交通事故であっても矛盾しないことや,本件事故の内容を踏まえれば自覚症状が重く残存してもおかしくないことなどについて,医師の医学的意見を聴取の上,書面化への協力を依頼しました。
活動の結果,ヘルニアに伴う神経症状の主張を補強する医学的意見の獲得に至りました。

【自覚症状の書面化】

神経症状については,自覚症状の程度・内容が判断の対象とならざるを得ないため,症状そのものをできる限り具体的に示せるよう,被害者の生の声を書面化することとしました。被害者から自覚症状の内容を洗い出してもらい,その内容を踏まえて適宜打ち合わせを重ねながら,現在被害者に残っている症状とその重さを文書にしました。

②異議申立ての実施

以上の準備の上,被害者請求を実施しましたが,結果は非該当(後遺障害に該当しない)というものでした。
本件は必ずしも等級認定が見込めるとまでは言えない内容であったため,非該当の結果は想定内ではありましたが,等級認定の有無ではやはり大きく賠償額が変わることもあり,異議申立てという不服申し立ての手続を試みることにしました。

異議申立ては,同一の内容について再度自賠責保険(及び自賠責損害調査事務所)の調査・判断を求める手続ですが,同じ事柄について同じ場所が判断を行うため,追加の立証資料がなければ結論が変わることはまずありません。
本件では,以下のような追加資料の作成・提出を行いました。

異議申立ての追加資料

1.非該当とした判断の理由と被害者の自覚症状が食い違っていることや,その自覚症状が継続的にあったことについて,根拠を添えて示す書類を作成

2.非該当の判断理由がこちらの提出した医学的意見とも食い違うことについて,医師の意見を獲得し書面化

③異議申立ての結果

このような異議申立ての結果,非該当との判断が覆り,被害者の首及び腰の神経症状についてそれぞれ14級9号が認定されることとなりました。
異議申立てを尽くしたことで,被害者の後遺障害等級は併合14級となりました。

④金額交渉

後遺障害等級認定の結果を踏まえ,相手保険担当者との間で金額交渉を実施しました。
主な項目である慰謝料は,弁護士が交渉を行う場合,裁判で認められ得る最大額(いわゆる裁判基準)の80~90%を見込むものと言われており,90%が一定の目標水準とされやすい傾向にあります。ただ,本件の場合では,他の項目において,被害者側が相手保険に配慮して譲歩していた部分が見受けられたため,これを踏まえて90%を超える水準での合意が獲得できないか,交渉を試みることにしました。

活動の結果

上記の弁護活動の結果,被害者の後遺障害等級は併合14級,被害者に対する損害賠償額は合計345万円(自賠責保険金75万円,任意保険より270万円)となりました。

損害賠償のうち,慰謝料の金額は裁判基準の92~93%ほどの水準という結果でした。弁護士による金額交渉の結果,90%を上回る金額で,端数を切り上げた切りのいい金額での合意となったための増額でした。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

神経症状に関する14級の後遺障害は,後遺障害等級の中でも最も問題になりやすいものです。また,同時に,等級認定の難易度が高い傾向にある類型ということもできるでしょう。
首や腰の神経症状については,他覚的所見を確認することが非常に難しく,ヘルニアのように所見があったとしても事故との因果関係が不明確とされる場合が非常に多く見られます。この場合,等級認定の客観的な根拠に乏しいため,自覚症状の程度を推測させる事情を丁寧に積み上げて,総合考慮の上で14級の認定をしてもらえるよう試みる必要があります。

本件では,追突された車の損傷が相当程度大きく,事故の規模が小さくはなかったと評価できたことや,自覚症状の内容や推移について被害者が詳細な説明を尽くしたことなどが,異議申立ての結果に結びついた可能性が高いと思われます。

なお,むち打ちに関する後遺障害等級認定については,こちらの記事もご参照ください。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故解決事例】異議申立ての結果,後遺障害5級→4級と上位等級の認定が獲得でき,約1,050万円の増額に至った事例

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,後遺障害5級の認定後,異議申立てによってより上位の4級が認定され,増額交渉に成功した事例を紹介します。

事案の概要

被害者は,青信号に従って横断歩道を渡っていたところ,対面から右折してきた自動車から衝突されました。
被害者は,頭部を強く受傷しており,相当な間意識を失うほどの重篤な状況にありましたが,幸いにも一命を取り留めました。ただ,脳に障害を受け,いわゆる高次脳機能障害が残るに至りました

高次脳機能障害とは,頭部の傷害によって脳の高次機能である認知,記憶,思考,判断,言語,行動等を司る部分が損傷を受けた場合に生じる障害です。高次脳機能障害の主な症状としては,記憶障害や言語障害,感情制御機能の障害等が挙げられます。

被害者は,弁護士が相談を実施した段階では既に後遺障害等級の認定を受けており,その内容は高次脳機能障害について5級を認定するというものでした。
また,これを踏まえ,加害者の保険会社から損害賠償額の提示も受けている状況でした。提示額の総額は約3,350万円という内容でした。

ポイント
高次脳機能障害について5級認定済み
保険会社から約3,350万円の賠償額提示あり

法的問題点

①等級認定結果の合理性

【高次脳機能障害】

被害者には,高次脳機能障害について後遺障害5級の認定がなされていましたが,高次脳機能障害には,以下の通り複数の後遺障害等級が定められています。

【高次脳機能障害の後遺障害等級】

等級基準
1級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

そのため,被害者の高次脳機能障害が5級と認定されることの合理性は慎重に検討する必要がありました。
この点,弁護士が被害者と直接対面し,被害者に生じている症状の内容や程度を丁寧に確認した結果,後遺障害5級の結果は決して被害者に不利益なものではないと判断することができました。

【その他の後遺障害】

弁護士が被害者と対面での相談を実施したところ,被害者の頭部に相当程度の大きさをしたへこみが見受けられました。もっとも,従前の等級認定結果では,頭部のへこみに関しては非該当との判断がなされていました

この点,頭部の醜状障害としては,「鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損」がある場合に12級14号「外貌に醜状を残すもの」に該当するという基準があります。ただし,この欠損は人目につく程度のものであることが必要とされます。

被害者の場合には,頭蓋骨に「鶏卵大面以上の欠損」があり,正面から見て頭部の不自然な形状が判別できることから「人目につく程度のもの」であるとも考えられる状況でした。しかし,従前の等級認定では,簡単な顔写真の確認のみで非該当とされていました。

ポイント
高次脳機能障害5級は適正な結果
頭蓋骨の一部欠損について醜状障害12級の認定が考えられる

②損害賠償額の合理性

後遺障害等級が伴う場合,交通事故の損害賠償としては,「慰謝料」「逸失利益」が主な項目となります。

【慰謝料】

保険会社からの金額提示は,後遺障害等級5級に対する慰謝料が800万円という内容になっていました。
この点,後遺障害慰謝料の金額については,以下のような基準が設けられています。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害5級の場合,いわゆる裁判基準では慰謝料額が1,400万円とされています。弁護士が交渉を行う場合,慰謝料は裁判基準満額の80~90%で合意する場合が多く見られ,90%の実現が一つの目標になりやすいところですが,90%であれば1,260万円と,相手保険の提示から見ると1.5倍以上になります。

後遺障害慰謝料に関しては,弁護士の交渉による増額余地が多分に残されている状況であると判断することができました。

【逸失利益】

後遺障害の逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

この点,逸失利益については,主に「労働能力喪失期間」がどの程度の期間であるか,という点が争点になりやすいところです。もっとも,本件の被害者に関しては,比較的高齢であったこともあり,「労働能力喪失期間」の内容が弁護士から見ても合理的であり,逸失利益の金額は弁護士が目標とする金額と比較しても遜色のない水準であることが確認できました。

今回の事故が大きな規模で,被害者に重大な損害が生じたことを踏まえ,保険会社は逸失利益を全面的に譲歩するスタンスを示しているものと推察されました。

ポイント
後遺障害慰謝料に増額の余地が多く残されている
逸失利益は,保険会社の全面譲歩により適正額であった

③問題点まとめ

以上を踏まえ,問題点は以下の2点に絞られました。

本件の具体的な問題点

1.頭部のへこみが12級に認定されるか
2.後遺障害慰謝料が増額されるか

弁護士の活動

①後遺障害等級に関する異議申立て

最終的な目標は金額交渉等による増額ですが,まずは,金額交渉の前提として後遺障害等級の獲得が必要です。本件では,頭部のへこみが後遺障害等級認定の対象とされていない点を覆すことが必要でした。

この点,醜状障害と呼ばれる後遺障害の判断方法は,面談を行って直接目視してもらうことが適切です。見た目の変化が後遺障害等級の対象となる以上,その見た目の変化を正確に把握してもらうため,面談を実施するべきであるというわけですね。
しかし,本件では,写真での簡単な画像調査のみで安易に非該当の結果になっていることが見受けられました。また,被害者と面談をした弁護士としては,しっかりと面談を実施してもらえれば被害者の頭部のへこみは等級認定の対象になるであろうとの見立てもありました。

そこで,弁護士受任前に行われた後遺障害等級に対して,異議申立てを実施するとともに,後遺障害等級の認定調査を行う「自賠責損害調査事務所」にて被害者の面談を行うよう求めました。
また,面談に際しては,被害者と事前に十分な打ち合わせを行い,面談当日に弁護士も同行することとしました。被害者が自分で等級認定に必要な説明を行うのは容易でないため,説明や案内をサポートするため,弁護士が同席することとしたのでした。

なお,面談を実施する前提としては,「自賠責損害調査事務所」に面談が必要であると判断してもらうことが必要となります。そのため,弁護士が異議申立てを行う際には,頭部のへこみに関する詳細な説明を提出した上,複数の鮮明な写真を添付することで,必要な書面上の説明も尽くしました。

②異議申立ての結果

異議申立て及び面談を行い,調査担当者に被害者の頭部のへこみを把握してもらうことができた結果,頭部の醜状障害について希望通り12級の認定を受けることができました。
被害者の後遺障害等級は,高次脳機能障害の5級と頭部醜状障害の12級をあわせて,併合4級との認定になり,申立て前よりも上位等級の認定に至りました。

③損害賠償額の交渉

後遺障害等級認定を獲得した後,弁護士にて相手保険担当者との金額交渉に着手しました。

この点,主な争点は800万円と提示されていた「後遺障害慰謝料」でした。
異議申立てにより併合4級となったことで,弁護士の目標額は4級の裁判基準1,670万円の90%に当たる1,503万円(約700万円増)と想定できる状況でした。弁護士にて,このような金額水準を踏まえて慰謝料の交渉を実施しました。

また,後遺障害慰謝料以外には,「入通院慰謝料」や「休業損害」,「逸失利益」についても一定の交渉を実施することとしました。保険会社は,弁護士の有無によって金額計算の内容を変える運用をしていることが多く,弁護士の交渉によってはこれらの項目も一定程度の増額がなされ得ると判断しました。

ポイント
頭部のへこみは,異議申立てと面談を通じて12級獲得
併合4級を踏まえた後遺障害慰謝料の交渉を実施(目標約700万円増)
入通院慰謝料,休業損害,逸失利益についても交渉を実施

活動の結果

弁護士による活動の結果,被害者に対する賠償金額は合計で約4,400万円となりました。
弁護士依頼前の提示額約3,350万円と比較すると,約1,050万円の増額が実現されました。

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件の具体的な弁護活動は,醜状障害に関する異議申立てと慰謝料交渉の2点でした。それぞれの対応は,適切に尽くせば望ましい結果を獲得することは決して難しいわけではありません。実際に,弁護士が活動を行った結果,比較的円滑に上位等級の認定と慰謝料の増額が実現されることとなりました。

しかし,弁護士依頼前にはこれらの問題が解消できていなかったことも事実です。そのため,被害者は得られるはずの賠償額を1,000万円以上逃す可能性があるところでした。これは非常に重大な問題であると思います。

後遺障害等級を認定する自賠責保険も,賠償金額を提案する相手の任意保険も,そのような問題点を積極的に指摘してくれることはありません。被害者が積極的に問題意識をもって弁護士に相談・依頼しなければ,被害者は十分な補償を受けられない可能性がある,という交通事故分野の問題が浮き彫りになった事例と言えるでしょう。

交通事故被害に関しては,やはり弁護士へのご相談が望ましいと考える次第です。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故解決事例】股関節人工関節で後遺障害8級,併合7級の認定を受け4600万円超を獲得。紛争処理機構で等級認定が覆り増額実現

このページでは,交通事故等の事故被害者が,弁護士の活動により後遺障害等級認定を獲得し,金銭賠償の獲得や増額に成功した解決事例を紹介します。

【このページで分かること】
・実際に交通事故の金銭賠償を獲得した事件の内容
・後遺障害等級のポイント
・金額交渉・増額のポイント
・具体的な争点と解決内容

今回は,人工関節の挿入置換に対して,紛争処理機構への申立てにより後遺障害8級,併合7級の獲得に至った事例をご紹介します。

事案の概要

自転車での通勤中,後続自動車に接触され,転倒。大腿骨開放骨折,鎖骨骨折等を受傷しました。
自動車運転者には任意保険がなかったため,被害者自身が加入する自動車保険を利用して入通院費用を賄っていました。また,通勤中の事故であったため,労災保険も並行して利用していました。

弁護士の相談は,通院治療中の段階で行いました。相談時には,股関節の症状が芳しくなく,人工関節を挿入する可能性が見込まれる状況でした。

法的問題点

本件の主な問題点は,股関節部の受傷に対する後遺障害等級でした。具体的には以下のような問題点が想定されました。

①股関節の受傷と事故との因果関係

本件事故の発生直後における主な受傷は,大腿骨の骨折であったため,股関節の受傷は入院先の病院でもあまり意識されていませんでした。そのような経緯もあり,股関節の症状について初めて診断されたのは,事故から期間が経ってからのことでした。

一般的に,事故から期間が経過した後に初めて診断された傷病については,事故との因果関係の有無が問題になりやすい傾向にあります。事故の直後であれば,事故によって生じた傷病であるという可能性以外に考えにくいですが,事故から期間が経過すればするほど,事故以外の原因が混入する可能性が高まるためです。

本件では,大腿骨の骨折に伴う痛みが症状のメインと考えられていたので,これと近い部位にある股関節の症状は大腿骨との区別が困難な状況にありました。しかし,大腿骨の症状が落ち着いても股関節の痛みが取れないため,病院での検査を重ねたところ,「股関節唇損傷」が明らかになりました。「股関節唇」とは,大腿骨頭と骨盤をつなぐ軟骨組織の一部で,衝撃吸収などの役割を果たしています。この部分に損傷が生じると,足を動かす動作に痛みが伴ったり,股関節がぐらついたりすると言われています。
被害者の股関節付近に生じていた痛みの正体は,大腿骨骨折の症状が落ち着いて初めて,股関節唇の損傷によるものだと判明したのでした。

股関節唇

②股関節人工関節挿入の後遺障害等級

被害者に生じた股関節唇損傷に対する治療としては,股関節に人工関節を挿入することが必要と判断される状態でした。人工関節とは,損傷の生じた関節の表面の代わりをするための人工的な関節をいいます。痛みの原因は損傷した関節にあるため,これを損傷のない関節に置き換えることで,痛みを取り除くことができる治療方法です。

この点,人工関節を挿入した場合の後遺障害等級としては,以下の可能性があります。

等級基準
8級7号1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級11号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

具体的な認定基準は,以下の通りです。

等級具体的な認定基準
8級7号人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
10級11号人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2分の1以下に制限されていないもの

もっとも,人工関節を挿入した場合に,それでも可動域が大きく制限されることはあまり想定されていません。人工関節を挿入すれば痛みは取り除かれ,可動域は十分に取り戻せるのが通常であるためです。
しかしながら,本件の被害者の場合は,股関節の神経に一部麻痺が生じていると見られる状況でした。そのため,人工関節を挿入したものの,股関節の関節可動域に大きな制限の生じてしまっていました。

さらに,本件では,可動域制限に関してもう一つ問題点がありました。それは,「他動」であれば股関節は動けてしまう,という点です。
関節可動域の測定には,自分で動かす「自動」と,人に動かしてもらう「他動」があり,可動域制限は基本的に「他動」の値を基準に判断されます。もっとも,被害者は人工関節を挿入の上,神経麻痺で股関節を動かせない状況のため,人が動かそうと思えば股関節は動かせる(痛みを訴えてストップさせることがない)のです。
そのため,被害者の関節可動域制限は,「自動」で判断されるべきであることを示す必要がありました。

ポイント 股関節に関する法的問題点
股関節の受傷と交通事故との因果関係
股関節人工関節の等級が10級か8級か(可動域制限があるか)

③その他の部位の後遺障害等級

被害者は,股関節以外にも複数のケガがあったため,以下のような等級認定が見込まれる状況でした。

被害者に見込まれた主な後遺障害等級
・肩関節の可動域制限 10級~12級
・鎖骨骨折後の変形障害 12級
・大腿骨骨折後の神経症状 12級

弁護士の活動

①自賠責保険への被害者請求

弁護士においては,症状固定後,まずは自賠責保険への被害者請求を実施し,望ましい等級認定の獲得を目指しました。交通事故の後遺障害等級は,基本的に自賠責保険(及び損害保険料率算出機構)の判断が尊重されることになるため,自賠責保険への被害者請求に際しては,万全の手続を取ることが重要です。

被害者請求に当たっては,弁護士の判断で以下の対応を試みました。

【診療録(カルテ)の検討】

交通事故の解決に当たって,弁護士が医療機関から診療録を取り付けることは珍しくありません。もっとも,無計画に,闇雲に取り付けても特に意味はないため,何のために取り付けるのか,という目的意識が非常に重要となります。

本件では,股関節の損傷と事故との因果関係が大きく問題になり得る状況であったため,「股関節の症状は事故が原因である」ことを示すための証拠資料として,診療録を活用することを目指しました。
具体的には,以下のような点の確認を試みました。

診療録の検討事項
1.股関節の症状を早期の段階から訴えていること
2.股関節の症状に関する検査結果が早期に出ていること
3.事故から股関節唇損傷の診断までの間に,股関節を怪我する原因がないこと

検討の結果,弁護士においては,主に股関節の自覚症状に関する指摘を丁寧に拾い,根拠資料として提出することとしました。

【医療照会の実施】

被害者の股関節の治療をご担当された主治医の先生から,因果関係及び可動域制限の原因に関する医学的なご意見をいただくことを目指しました。
被害者の治療をご担当された先生は,大変ありがたいことに非常に協力的な先生であったため,まず面談を実施し,先生の生の意見をお聞きしました。先生からは,積極的なご意見をいただける見込みが立ったため,その内容を医療照会という形で書面化し,先生のご協力をお願いしました。

先生からは,医療照会書の作成にも快くご協力をいただくことができ,事故と股関節唇損傷に因果関係が認められること,被害者の可動域制限は神経麻痺の結果生じたものであることなどについて医学的意見を獲得しました。

ポイント
診療録を詳細に検討し,事故と怪我との因果関係の立証資料とした
医療照会を通じて,争点に関する医学的意見を獲得した

②自賠責保険に対する異議申立て

自賠責保険への被害者請求を実施したところ,その結果は目標とする併合7級ではなく併合9級というものでした。目標の等級に至らなかった原因は,問題視していた「股関節唇損傷と事故との因果関係」でした。自賠責では因果関係が否定され,股関節について後遺障害等級の認定対象とはならなかったため,他に10級及び12級が認定されていたことから,併合9級という結果になったのでした。

この結果は不服であったため,自賠責保険への異議申立てを実施しました。
自賠責保険の後遺障害等級認定結果に不服がある場合,異議申立てという手続で再度の判断を求めることが可能です。もっとも,同じ機関が判断することになるため,ただ異議申立てをするのみでは結果が変わる可能性はほとんどありません。異議申立てに際しては,新たな根拠資料の提出が不可欠となります。

本件では,診療録の検討結果を改めて詳細に整理するとともに,自賠責の判断を主治医の先生と共有し,自賠責の判断内容が主治医の先生の見解と食い違うことを書面化させていただくことができました。

ポイント
自賠責保険の判断に不服がある場合,異議申立てが可能
もっとも,新たな根拠資料を提出しなければ結果は変わらない

③紛争処理機構に対する申立て

異議申立ての結果は,遺憾ながら当初の判断から変わることがありませんでした。この場合,異議申立てに回数制限はないため,もう一度異議申立てを行うことも可能です。もっとも,既に提出できる限りの根拠は提出しており,これ以上異議申立てを繰り返しても結果が好転する見通しは持てませんでした。

そこで,自賠責保険の判断を不服として,「自賠責保険・共済紛争処理機構」に対する申請を行うこととしました。
「自賠責保険・共済紛争処理機構」は,自賠責保険金の適正な支払を図るため,自賠責保険の判断に不服がある者の申請を受けて,その判断の妥当性を審査する機関です。この紛争処理機構への申請は,同一の内容に関して1回しか行うことができず,自賠責保険への異議申立てのように複数回実施することはできません。しかし,本件では,これまでの手続の中でできる限りの根拠は揃えていたため,紛争処理機構を利用して問題ないと判断しました。

念のため,再度主治医の先生と相談の上,異議申立ての結果を踏まえた追加の医学的意見の作成にご協力いただきました。これも医療照会書の形式にし,主治医の先生の意見を添える形で申請を実施しました。

ポイント
自賠責の判断に不服のある場合,紛争処理機構への申請が可能
紛争処理機構への申請は1回きり

活動の結果

①後遺障害等級

紛争処理機構への申請の結果,股関節の症状と交通事故との因果関係について判断が覆り,因果関係があるとする当方の主張が受け入れられました。また,具体的な等級についても,可動域制限が他動運動でなく主に自動運動で生じていたにもかかわらず,10級でなく可動域制限を前提とした8級の認定となりました。

これを踏まえた後遺障害等級は,従前の併合9級から併合7級へと変更され,被害者の救済に結びつく結果となりました。

②金銭賠償の内容

本件では,加害者側に任意保険がなく,また加害者本人は生活保護受給者であったため,経済力のないことが明らかな状況でした。
そのため,被害者自身の加入する人身傷害保険又は無保険車傷害保険での対応を予定することになりましたが,具体的な金額計算の結果,人身傷害保険の方が高額の保険金受領が可能であることが確認できたため,人身傷害保険を通じて金銭の支払を受けることとしました。

最終的には,自賠責保険金1051万円,これを除く人身傷害保険金が3,500万円を超える金額となり,合計で4,600万円超の支払を受けることができました。

ポイント
紛争処理機構を通じて併合7級が認められた
最も支払額の高い手続を選択し,4,600万円超の支払を獲得

後遺障害等級の獲得
弁護士による増額

弁護士によるコメント

本件は,股関節の受傷に関して,事故との因果関係と人工関節挿入後の可動域制限が同時に問題になるという,同種事例に乏しいケースでした。もっとも,一つ一つの争点を丁寧に分解して具体的に検討することで,いずれの争点についても適正な判断を獲得することが可能であることを示す事例になったと思います。

ただ,これらの争点は必ずしも被害者側に有利な判断がされるわけではなく,判断の難しい性質のものであることは間違いありません。実際,本件では,労働災害であったため労災の後遺障害等級認定も受けましたが,手続を尽くしたものの,結果は併合9級止まりでした。その理由は,因果関係の問題こそクリアできたものの,可動域制限の点について機械的に「他動」の値で判断するとの結論にしかならなかったためでした。

弁護士から,結果が伴うと安易に約束することは決してできませんが,最善を尽くし,ご依頼者の方が少しでも納得して今後の生活に向かっていただけるような活動は,今後も心掛けていきたいと強く感じる機会でもありました。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故】後遺障害認定の基準は?後遺障害認定を得る方法は?後遺障害認定に対する金額は?部位別に詳細解説

交通事故などで負ったケガが治った後も、痛みや機能障害などが残る場合、「後遺障害」として認定される可能性があります。後遺障害に該当するかどうかは、賠償金額を大きく左右する非常に重要なポイントですが、その認定基準や手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。
また、部位や症状ごとに評価のポイントも異なるため、適切な等級認定を受けるには慎重な準備が欠かせません。

この記事では、後遺障害認定の基準や取得方法認定されることで受け取れる可能性のある賠償金額について、部位別の基準も含めて詳細解説します。

後遺障害認定とは

後遺障害認定とは、交通事故でケガをした後、治療を続けても完全には治らず、痛みやしびれ、関節の動かしにくさなどの症状が体に残ってしまった場合に、その障害を公的に「後遺障害」として認めてもらうための制度です。認定は自賠責保険の基準に基づいて行われ、症状の重さに応じて1級から14級までの等級が決まります。この等級は、その後に受け取れる保険金や損害賠償の金額に大きく影響します。

後遺障害認定は弁護士への依頼が適切

後遺障害認定には、事前認定又は被害者請求という二つの方法があります。この点、積極的に後遺障害認定を目指す場合には、弁護士に依頼をして被害者請求を行ってもらうことが望ましいでしょう。

【後遺障害認定を獲得する2つの手続】

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

被害者請求では、必要最小限の書類のみならず、後遺障害認定のため有益と思われる資料を加えて提出できる、という点に大きな特徴があります。この被害者請求は、弁護士に依頼しなくても行うこと自体は可能ですが、以下の各点を踏まえると弁護士に依頼することが有益です。

被害者請求を弁護士に依頼すべき理由

・どのような資料を収集・提出するべきかを専門的に判断してもらえる
・提出書類の取得や整理を代わりにやってもらえる
・通院中や診断書作成時のアドバイスも受けられる
・後遺障害認定の後の金額交渉も依頼できる

後遺障害認定された場合の賠償金

後遺障害等級が認定された場合の,被害者への基本的な支払内容は以下の通りです。

①慰謝料

慰謝料とは,精神的苦痛に対する賠償を指します。後遺障害等級の対象になる症状が残存したことに対する精神的苦痛を金銭換算したものがが,後遺障害慰謝料です。
慰謝料の金額は等級によって異なります。等級ごとの後遺障害慰謝料額は,以下の通りです。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

②逸失利益

後遺障害の逸失利益とは,後遺障害が生じたことによって労働能力が低下した結果,減少する収入額に応じた賠償を指します。
後遺障害等級が認定される場合,等級に応じて労働能力が一定程度減少したものと評価され,労働能力が低下した分だけ将来の収入が減少するものとみなします。その収入減少を逸失利益といい,後遺障害等級が認定された場合には賠償の対象となります。

具体的な計算方法については,こちらの関連記事をご参照ください

むち打ちに関する後遺障害認定基準

むち打ちに対する後遺障害等級は,等級認定基準との関係では「神経症状」というものに位置付けられます。これは,交通事故の外傷によって神経系統に異常を来した結果,痛みや痺れといった神経への症状が残存する後遺障害を一般的に指すものです。

具体的な等級とその認定基準は,以下の通りです。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

後遺障害等級は,1級から14級まであり,1級が最も上位の(=重い)後遺障害です。神経症状については,12級の方がより上位の後遺障害等級となります。

また,それぞれの認定基準を満たしているかどうかの具体的な考え方は,以下の通りです。

12級13号症状が医学的に証明できる場合
(画像所見などの他覚的所見によって客観的に認められる場合)
14級9号症状が医学的に説明できる場合
(他覚的所見はないものの,受傷内容や治療経過を踏まえると症状の存在が医学的に推定できる場合)

したがって,画像所見など,第三者が客観的に確認できる所見がある場合は12級の認定される可能性があり,そのような客観的な所見がない場合は14級の認定を目指すことになります。

むち打ちに関する後遺障害認定については、以下の記事でも詳細に解説しています。
https://www.fujigakilaw.com/koutsu47/

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

脊柱に関する後遺障害認定の種類と基準

【変形障害】

圧迫骨折や破裂骨折に伴って脊柱部の変形が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい変形を残すもの
8級脊柱に中程度の変形を残すもの
11級脊柱に変形を残すもの

具体的基準

脊柱に著しい変形を残すもの(6級)
1.複数の椎体の圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体1個分以上低くなっている場合
2.圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体2分の1個分以上低くなっており、かつ、コブ法による側彎度が50度以上ある場合

脊柱に中程度の変形を残すもの(8級)
1.圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体2分の1個分以上低くなっている場合
2.側彎度が50度以上となっている場合
3.環椎(第一頚椎)または軸椎(第二頚椎)の変形・固定により次のいずれかに当てはまる場合
a.60度以上の回旋位となっている
b.50度以上の屈曲位となっている
c.60度以上の伸展位になっている
d.側屈位となっており、矯正位(頭部を真っ直ぐにした姿勢)で頭蓋底部と軸椎下面の平行線の交わる角度が30度以上となっている

脊柱に変形を残すもの(11級)
1.圧迫骨折が生じ、そのことがエックス線写真等で確認できる場合
2.脊椎固定術が行われた場合
3.3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けた場合

【運動障害】

圧迫骨折などの結果,脊柱部の運動機能に制限が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級脊柱に運動障害を残すもの

具体的基準

脊柱に著しい運動障害を残すもの(6級)
次のいずれかにより頚部および胸腰部が強直したもの
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

脊柱に運動障害を残すもの(8級)
次のいずれかにより頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

【荷重障害】

脊柱を支える筋肉や組織の変化に伴い,荷重機能に制限が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい荷重障害を残すもの(運動障害に準じて取り扱う)
8級脊柱に荷重障害を残すもの(運動障害に準じて取り扱う)

具体的基準

6級:頚部および腰部の両方の保持に困難があり,常に硬性補装具を必要とする場合
8級:頚部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とする場合

がある場合は12級の認定される可能性があり,そのような客観的な所見がない場合は14級の認定を目指すことになります。

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

脳に関する後遺障害認定の種類と基準

脳の損傷に関する後遺障害等級としては,以下のようなものが挙げられます。

脳の損傷に関する後遺障害等級の主な類型
①高次脳機能障害
②外傷性てんかん
③遷延性意識障害
④神経症状(脳挫傷痕に関するもの)

【高次脳機能障害】

頭部外傷の影響で,認知機能,行動制御能力,記憶能力などに制限の生じる後遺障害です。

等級基準
1級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

【外傷性てんかん】

脳の中枢神経が損傷したことにより,神経細胞に異常が生じ,発作が発生する障害です。発作の頻度や程度に応じた後遺障害等級の定めがあります。

等級基準具体的な要件
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの1ヶ月に1回以上の発作があり、かつその発作が転倒する発作等(※)であるもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの
12級局部に頑固な神経症状を残すもの発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波(きょくは)を認めるもの
※転倒する発作:①意識障害の有無を問わず転倒する発作,又は②意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作

【遷延性意識障害】

遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)とは,脳挫傷の影響で意識が戻らない状態,いわゆる植物状態になった場合です。

具体的には,治療にもかかわらず以下の6つの症状が3か月以上続いた場合,遷延性意識障害の診断対象になるとされています。

①自力で移動できない
②自力で食事ができない
③糞・尿の失禁がある
④言葉を発せても意味のある発語ができない
⑤意思疎通がほとんどできない
⑥眼球が動いたとしても何も認識できない

等級基準
1級(要介護)神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

【脳挫傷痕】

MRI等で脳挫傷痕の存在が認められ,頭痛や神経痛等の症状を引き起こす場合です。

等級基準
12級局部に頑固な神経症状を残すもの

脳の後遺障害認定に関しては、以下の記事でも詳細に解説しています。
交通事故で脳の後遺障害認定はどうなる?高次脳機能障害が認定されるためのポイントや進め方を詳細解説

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

醜状障害に関する後遺障害認定の種類と基準

醜状障害は,人の目につく人体の露出面に,目立つ傷跡が残った場合の後遺障害をいいます。醜状の具体的な内容としては,瘢痕や線状痕,組織の陥没,色素沈着による変色などが挙げられます。

また,醜状障害が認定される部位としては,以下のものが挙げられます。

醜状障害の対象部位
①外貌(頭部・顔面部・頸部)
②上肢又は下肢の露出面
③日常露出しない部位(胸部・腹部・背部・臀部)

醜状障害が後遺障害等級に認定されるかどうかは,自賠責の損害調査を行う「損害保険料率算出機構」によって判断されます。実際には,全国各地の自賠責損害調査事務所において,管轄地域の後遺障害等級認定を行うことになります。

調査事務所では,診断書上に記録された醜状の内容や程度,当該部位の撮影写真,さらには面談を行って目視したときの状態などを踏まえ,後遺障害等級に該当するかを判断します。もっとも,具体的にどこまでの調査を行うのかは,基本的に調査事務所側の判断となっています。

ポイント
醜状障害は人体の露出面における傷跡が後遺障害とされるもの
醜状障害の主な対象部位は,外貌(頭部・顔面部・頸部)と上下肢
醜状障害の判断は,診断書・写真・面談等を通じて行う

【外貌】

外貌の醜状に関する後遺障害等級には,以下のものがあります。

等級基準
7級12号外貌に著しい醜状を残すもの
9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの
12級14号外貌に醜状を残すもの

この中では,7級が最も上位の後遺障害等級であり,醜状の程度も最も著しい場合となります。
そして,具体的な認定基準は,等級ごと及び部位ごとに定められており,その内容は以下の通りです。

7級12号「外貌に著しい醜状を残すもの」

部位基準
頭部手のひら大(指の部分を含まず)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
顔面部鶏卵大面以上の瘢痕、又は10円銅貨代以上の組織陥没
頚部手のひら大以上の瘢痕

9級16号「外貌に相当程度の醜状を残すもの」

部位基準
顔面部5cm以上の線状痕で、人目につく程度のもの

12級14号 外貌に醜状を残すもの

部位基準
頭部鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
顔面部10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
頚部鶏卵大面以上の瘢痕

なお,瘢痕の大きさや線状痕の長さを確認する際には,以下の点に注意を要します。

①人目につくことが必要
→眉や髪で隠れる部分は醜状として扱われません。また,アゴの下で正面から見えない部分も対象外となります。これらの部分を除いた長さや面積を計測します。

②2つ以上の傷跡がある場合の判断方法
→複数の傷跡は,それらが一体となっている場合,一体となっている面積や長さを合算した数値で等級が判断されます

③事故時に生じたものでない醜状の取り扱い
→治療中に生じた手術痕や,やけど等の治療後に生じた色素沈着なども,醜状障害の対象に含まれます。

ポイント 外貌醜状
等級は7級,9級,12級
それぞれ,頭部・顔面部・頸部の醜状が対象になり得る

【上肢下肢】

上下肢の場合,その露出面が対象になります。露出面とは以下の通りです。

「露出面」とは
上肢 肩関節から先(指先まで)
下肢 股関節から先(足の背部まで)

そして,上下肢の露出面に関する後遺障害等級には,いかのものがあります。

等級基準
14級4号上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
14級5号下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

また,上下肢の露出面における醜状障害がさらに重い場合は,以下の等級に該当する場合があります。

等級基準
12級相当・上肢の露出面に手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕を残し、特に著しい醜状であると判断されるもの

・下肢の露出面に手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕を残し、特に著しい醜状であると判断されるもの

なお,「手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕」とは,手のひらの3倍程度以上の大きさの瘢痕を指すとされています。

ポイント 上下肢露出面の醜状
手のひら大の場合,14級
手のひらの3倍以上の場合,12級相当

【日常露出しない部位】

日常露出しない部位(=胸部・腹部・背部・臀部)については,その全面積の4分の1程度を超える場合,後遺障害等級に該当する可能性があります。具体的な基準は以下の通りです。

等級基準
12級相当全面積の1/2程度を超える瘢痕
14級相当全面積の1/4程度を超える瘢痕
QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

上肢・手指に関する後遺障害認定の種類と基準

上肢とは肩や腕のことを指します。交通事故の結果,骨折や脱臼が生じるなどすると,治療を尽くしても事故前の状態には戻らず,後遺障害の対象となることがあります。

上肢及び手指の後遺障害としては,以下のものが挙げられます。

上肢の後遺障害

欠損障害上肢の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害関節(肩関節・肘関節・手関節)の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
変形障害上肢の骨折部が曲がったまま癒合するなどした結果,変形が生じたことに関する後遺障害

手指の後遺障害

欠損障害手指の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害①手指の関節の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
②手指の一部を失ったうち,欠損障害に該当しないものに関する後遺障害

【上肢の欠損障害】

①両上肢を失った場合

等級基準
1級3号両上肢をひじ関節以上で失ったもの
2級3号両上肢を手関節以上で失ったもの

②1上肢を失った場合

等級基準
4級4号1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5級4号1上肢を手関節以上で失ったもの

③具体的な認定基準

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.肩関節において、肩甲骨と上腕骨とを離断したもの
2.肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
3.ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの

「上肢を手関節以上失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.ひじ関節と手関節との間で切断したもの
2.手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【上肢の機能障害】

①上肢の用を全廃したもの

等級基準
1級4号両上肢の用を全廃したもの
5級6号1上肢の用を全廃したもの

「上肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

三大関節(肩関節・肘関節・手関節)の全てが強直(※)している
かつ
手指の全部の用を廃している

※関節が可動性を失い,動かなくなった状態

②関節の用を廃したもの

等級基準
6級6号1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

③関節の機能に著しい障害を残すもの

等級基準
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
2.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2分の1以下に制限されていないもの

④関節の機能に障害を残すもの

等級基準
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「関節の機能に障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合

⑤可動域の測定方法

【主要運動】

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
上肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
肩関節①屈曲(前方拳上)180度
肩関節②外転(側方拳上)180度
肘関節屈曲・伸展(※)145度・5度(合計150度)
手関節屈曲(掌屈)・伸展(背屈)(※)90度・70度(合計160度)
※肘関節と手関節は,「屈曲+伸展」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

肩関節の運動

肘関節の運動

【参考運動を用いる場合】

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
肩関節①伸展(後方拳上)50度
肩関節②外旋・内旋60度・80度(合計140度)
手関節①橈屈25度
手関節②尺屈55度

【上肢の変形障害】

①偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

 偽関節とは,骨折した部位が変形癒合し,関節でない部分が曲がって関節のようになってしまった状態を指します。関節のようだが関節ではない,ニセの関節というべきものです。

 偽関節に関する後遺障害は2つの種類があり,硬性補装具を必要とするかどうかにより区別されます。硬性補装具を要する場合,以下の等級に該当します。

等級基準
7級9号1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの
2.橈骨及び尺骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの

②偽関節を残すもの

等級基準
8級8号1上肢に偽関節を残すもの

「偽関節を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
2.橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
3.橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

③長管骨に変形を残すもの

等級基準
12級8号長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
2.橈骨及び尺骨の両方に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
3.上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの
4.橈骨又は尺骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、硬性補装具を必要としないもの
5.上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
6.上腕骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
7.橈骨又は尺骨(骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少したもの
8.上腕骨が50度以上、外旋又は内旋で変形癒合しているもの

(「障害認定必携」より引用 再掲)

【手指の欠損障害】

①「手指を失ったもの」

等級基準
3級5号両手の手指の全部を失ったもの
6級8号1手の5の手指またはおや指を含み4の手指を失ったもの
7級6号1手のおや指を含み3の手指またはおや指以外の4の手指を失ったもの
8級3号1手のおや指を含み2の手指またはおや指以外の3の手指を失ったもの
9級12号1手のおや指またはおや指以外の2の手指を失ったもの
11級8号1手のひとさし指、なか指またはくすり指を失ったもの
12級9号1手のこ指を失ったもの

「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。

1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

②「手指の一部を失ったもの」

等級基準
13級7号1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
14級6号1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

1指骨の一部を失っていること(遊離骨片の状態を含む)がX線写真より確認できるものを指します。

【手指の機能障害】

①「手指の用を廃したもの」

等級基準
4級6号両手の手指の全部の用を廃したもの
7級7号1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
8級4号1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
9級13号1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
10級7号1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
12級10号1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
13級6号1手のこ指の用を廃したもの

「手指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.中手指節関節又は近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が1/2以下に制限されるもの
3.親指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が1/2以下に制限されるもの
4.手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚完全に脱失したもの

(「障害認定必携」より引用 再掲)

②「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」

等級基準
14級7号1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.遠位指節間関節が強直したもの
2.屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないもの又はこれに近い状態にあるもの

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

下肢・足指に関する後遺障害認定の種類と基準

下肢は,人体の股関節より下の部位をいい,具体的には大腿骨,下腿(脛骨及び腓骨),足根骨,中足骨で構成されます。交通事故の結果,骨折や脱臼が生じるなどした場合に,治療を尽くしても事故前の状態には戻らず,後遺障害の対象となることがあります。

下肢及び足指の後遺障害としては,以下のものが挙げられます。

下肢の後遺障害

欠損障害下肢の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害関節(股関節、膝関節、足関節)の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
変形障害下肢の骨折部が曲がったまま癒合するなどした結果,変形が生じたことに関する後遺障害
短縮障害下肢(股から足までの間)の長さが短くなったことに関する後遺障害

足指の後遺障害

欠損障害足指の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害①足指の関節の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
②足指の一部を失ったうち,欠損障害に該当しないものに関する後遺障害

【下肢の欠損障害】

①両下肢を失った場合

等級基準
1級5号両下肢をひざ関節以上で失ったもの
2級4号両下肢を足関節以上で失ったもの
4級7号両足をリスフラン関節以上で失ったもの

②1下肢を失った場合

等級基準
4級5号1下肢をひざ関節以上で失ったもの
5級5号1下肢を足関節以上で失ったもの
7級8号1足をリスフラン関節以上で失ったもの

③具体的な認定基準

「下肢をひざ関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.股関節おいて、寛骨と大腿骨とを離断したもの
2.股関節とひざ関節との間において切断したもの
3.ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの

「下肢を足関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.ひざ関節と足関節との間で切断したもの
2.足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの

「リスフラン関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.足根骨(腓骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨)において切断したもの
2.リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離団したもの

(「障害認定必携」より引用)

【下肢の機能障害】

①下肢の用を全廃したもの

等級基準
1級6号両下肢の用を全廃したもの
5級7号1下肢の用を全廃したもの

「下肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

3大関節(股関節、ひざ関節、及び足関節)の全てが強直(※)した場合
(3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直した場合も含まれる)

※「強直」:関節が全く可動しない場合,又はこれに近い状態(※※)である場合
※※「これに近い状態」:自動の可動域が10%以下になった場合

②関節の用を廃したもの

等級基準
6級7号1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級7号1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

③関節の機能に著しい障害を残すもの

等級基準
10級11号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
2.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されていないもの

④関節の機能に障害を残すもの

等級基準
12級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「関節の機能に障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合

⑤動揺関節

動揺関節とは,骨折部の癒合不全や靭帯の断裂などが原因となって,関節の安定性が失われてしまったために,関節がグラグラして安定しなかったり,本来曲がらない方向に曲がってしまったりと,異常な関節運動の起きる状態を言います。膝関節の靭帯損傷に際して発生する場合が多く見られます。
自賠責保険の後遺障害等級認定基準には設けられていないものの,労災保険の認定基準に準じ,関節機能障害の一種として認定される運用となっています。

等級基準
8級7号相当
(用廃)
常に硬性補装具を必要とするもの
10級11号相当
(著しい障害)
時々硬性補装具を必要とするもの
12級7号相当
(障害)
重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの

⑥可動域の測定方法

【主要運動】

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
下肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
股関節①屈曲・伸展125度・15度(合計140度)
股関節②外転・内転145度・20度(合計65度)
ひざ関節屈曲・伸展130度・0度(合計130度)
足関節屈曲(底屈)・伸展(背屈)45度・20度(合計65度)
「屈曲+伸展」「外転+内転」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

股関節の主要運動

足関節の主要運動

【参考運動を用いる場合】

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
股関節外旋・内旋45度・45度(合計90度)

【下肢の変形障害】

①偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

 偽関節とは,骨折した部位が変形癒合し,関節でない部分が曲がって関節のようになってしまった状態を指します。関節のようだが関節ではない,ニセの関節というべきものです。

 偽関節に関する後遺障害は2つの種類があり,硬性補装具を必要とするかどうかにより区別されます。硬性補装具を要する場合,以下の等級に該当します。

等級基準
7級10号1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの
2.脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残し,常に硬性補装具を必要とするもの
3.脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残し,常に硬性補装具を必要とするもの

②偽関節を残すもの

等級基準
8級9号1下肢に偽関節を残すもの

「偽関節を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.大腿骨の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
2.脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
3.脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

③長管骨に変形を残すもの

等級基準
12級8号長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.大腿骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
2.脛骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
3.大腿骨の骨端部に癒合不全を残すもの
4.脛骨の骨端部に癒合不全を残すもの
5.腓骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもの
6.大腿骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
7.脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
8.大腿骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
9.脛骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
10.大腿骨が外旋45度以上(=股関節の内旋が0度を超えて可動できない)又は、内旋30度以上(=股関節の外旋が15度を超えて可動できない)で変形癒合しているもの

【下肢の短縮障害】

等級基準
8級5号1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

下肢の短縮は,上前腸骨棘と下腿内果下端の間の長さを健側の下肢と比較して等級認定を行います。

【足指の欠損障害】

等級基準
5級8号両足の足指の全部を失ったもの
8級10号1足の足指の全部を失ったもの
9級14号1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
10級9号1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
12級11号1足の第2の足指を失ったもの
第2の足指を含み2の足指を失ったもの
第3の足指以下の第3の足指を失ったもの
13級9号1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

「足指を失ったもの」とは,足指を中足指節関節から失ったことを指します。つまり,足指をすべて失った場合を指すことになります。

(「障害認定必携」より引用)

【足指の機能障害】

等級基準
7級11号両足の足指の全部の用を廃したもの
9級15号1足の足指の全部の用を廃したもの
11級9号1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
12級12号1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13級10号1足の第2の足指の用を廃したもの
第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの
第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
14級8号1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

「足指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.親指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.親指以外の足指について、中節骨又は基節骨で切断したもの
3.親指以外の足指について、遠位指節間関節又は近位指節間関節で離断したもの
4.親指の中足指節間関節又は指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
5.親指以外の足指の中足指節間関節又は近位指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

眼に関する後遺障害認定の種類と基準

眼球の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

視力障害視力の低下に関する後遺障害
調節機能障害ピントを合わせる機能に関する後遺障害
運動障害眼球の動きに制限が生じたり,複視が生じたりする後遺障害
視野障害視野の広さに制限が生じる後遺障害

まぶしさを調節する機能に障害(外傷性散瞳)が生じる場合,別途後遺障害等級が認定されることがあります。

また,まぶたに関する後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

欠損障害まぶたの全部又は一部を失ったことに関する後遺障害
運動障害まぶたの開閉をするための運動機能に制限が生じる後遺障害

【視力障害】

失明及び視力低下が生じた場合に認められる後遺障害です。
視力障害に関する具体的な後遺障害等級は,以下の通りです。

①両眼の視力障害

等級基準
1級1号両眼が失明したもの
2級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
2級2号両眼の視力が0.02以下になったもの
3級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
4級1号両眼の視力が0.06以下になったもの
5級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
6級1号両眼の視力が0.1以下になったもの
7級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
9級1号両眼の視力が0.6以下になったもの

②1眼の視力障害

等級基準
8級1号1眼が失明し又は1眼の視力が0.02以下になったもの
9級2号1眼の視力が0.06以下になったもの
10級1号1眼の視力が0.1以下になったもの
13級1号1眼の視力が0.6以下になったもの

③注意事項

【失明について】

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

【視力について】

後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【両眼に障害がある場合の等級】

両眼に視力の障害がある場合,1眼ごとの視力障害とどちらを認定すべきかが問題となりますが,この点のルールは以下の通りです。

両眼に障害がある場合
両眼の視力障害に関する等級で認定し,1眼ごとの等級を併合することはしない
両眼の等級よりもいずれか1眼の等級の方が上位である場合,1眼のみに障害があるものとみなしてより上位の等級を認定する

(例1)
右が0.1,左が0.02の場合
両眼:6級1号
1眼:8級1号(左について)
→6級1号が認定される(①のルールにより)

(例2)
右が0.6,左が0.02の場合
両眼:9級1号
1眼:8級1号(左について)
→8級1号が認定される(②のルールにより)

したがって,両眼の等級が原則であり,1眼のみの方がこれより上位の場合には例外的に1眼の等級を認定する,ということになります。

【調節機能障害】

等級基準
11級1号両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
12級1号1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

著しい調節機能障害」とは以下の場合を指します。

著しい調節機能障害
眼の調節力が損傷を受けなかった方の他眼に比して2分の1以下に減じたもの

(注意事項)
①両眼とも損傷を受けた場合,損傷していない眼の調節機能に異常がある場合は,年齢別の調整力と比較する
②以下のいずれかに当たる場合は障害認定されない
・損傷していない眼の調整力が1.5D以下であるとき
・55歳以上であるとき

5歳ごとの年齢別の調整力

年齢(歳)調整力(ジオプトリー(D))
159.7
209.0
257.6
306.3
355.3
404.4
453.1
502.2
551.5
601.35

【運動障害】

眼球の運動を維持する筋肉(眼筋)の一個又は数個が麻痺することにより,眼球が偏ってしまうことがあります。
この偏りによる注視野の減少や複視に関する障害が,運動障害です。

等級基準
10級2号正面を見た場合に複視の症状を残すもの
11級1号両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
12級1号1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
13級2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

「眼球に著しい運動障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

「眼球に著しい運動障害を残すもの」
=眼球の注視野が2分の1以下に減じたもの

注視野とは
頭部を固定した状態で眼球を動かして直視できる範囲
平均値は単眼視で各方面50度,両眼視で各方面45度とされています。

複視」は,1つの物体が2つに見えることをいい,以下の全てを満たす場合を指します。

「複視を残すもの」

1.本人が複視のあることを自覚していること
2.眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること
3.ヘススクリーンテストにより患側の像が健側に比して5度以上離れた位置にあること

なお,10級と13級の差異は以下の通りです。
正面を見た場合に複視の症状を残すもの」(10級)
→正面視で複視が中心の位置にあること
正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの」(13級)
→それ以外の場合

【視野障害】

等級基準
9級3号両眼に半盲症、視野狭窄、又は視野変状を残すもの
13級3号1眼に半盲症、視野狭窄、又は視野変状を残すもの

「半盲症」とは

「半盲症」とは
視野の右半分又は左半分が欠損し,見えなくなってしまう症状をいいます。以下のような種類があります。
同側半盲:両眼の同じ側で半盲が生じる場合
異名半盲:両眼のそれぞれ反対側で半盲が生じる場合

また,視野の上半分または下半分が欠損する場合もあり,「水平半盲」といいます。

「視野狭窄」とは

「視野狭窄」とは
視野が狭くなる症状をいいます。以下のような種類があります。
同心性狭窄:中心部分ははっきり見えるが,周辺部分が見えない
不規則狭窄:視野の一部分が規則性のない形で狭くなる

「視野変状」とは

「視野変状」とは
半盲症や視野狭窄のほか,視野に異常が生じることをいいます。具体的には以下の内容があります。
暗転:視野の中に暗くて見えない部分が生じるもの
視野欠損:視野の一部が見えなくなる状態

【散瞳】

散瞳とは,瞳孔の動きに異常が生じた結果,まぶしさを感じてしまうものをいいます。
瞳孔は,光の刺激を受けると小さくなり,眼に取り込む光の量を調節する機能を有します。これを対光反射と言いますが,対光反射に異常が生じると瞳孔が開いた状態(=散瞳)となり,光の刺激を弱めることができずまぶしさを感じてしまいます。

外傷性散瞳に関する後遺障害等級は,以下の通りです。

【両眼】

等級基準
11級相当両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
12級相当両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの

【1眼】

等級基準
12級相当1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
14級相当1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの

【まぶたの欠損障害】

等級基準
9級4号両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
11級3号1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
13級4号両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
14級1号1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

【具体的基準】

「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは
まぶたを閉じた場合に角膜(眼球の色がある部分を覆う膜)を完全に覆えない程度のもの

「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは
まぶたを閉じた場合に、角膜を完全に覆うことができるものの、球結膜(白目)が露出してしまう場合

「まつげはげを残すもの」とは
まつげの生えている周縁の2分の1以上にわたってまつげはげを残すもの

【まぶたの運動障害】

等級基準
11級2号両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
12級2号1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

【具体的基準】

「まぶたに著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。
①まぶたを開けた時にまぶたが完全に瞳孔(黒目)を覆ってしまうもの
②まぶたを閉じたときに角膜(眼球の色がある部分を覆う膜)を完全に覆えないもの

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

耳に関する後遺障害認定の種類と基準

耳の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

機能障害聴力の喪失・低下に関する後遺障害
欠損障害耳の大部分を失ったことに関する後遺障害
耳鳴り耳の中でのみ雑音が生じることに関する後遺障害
耳漏外傷により耳漏(分泌物)がある場合の後遺障害

【聴力障害】

聴力障害は,「純音聴力レベル」の平均値及び「明瞭度」の最高値を基準に判断されます。

「純音聴力レベル」とは
音波の基本的なもの(=純音)に対する聴こえ方の程度。音が聴こえるかどうか

「明瞭度」とは
言語の音声(語音)に対する聴こえ方の程度。言葉を聞き取れるかどうか

具体的な等級及び認定基準は以下の通りです。

等級基準
4級3号両耳の聴力を全く失ったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの
6級3号両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベル80dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの
6級4号1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
7級2号両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの
7級3号1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
9級7号両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
9級8号1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
10級5号両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
11級5号両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のもの

【一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係】

【両耳聴力と最高明瞭度の関係】

【欠損障害】

等級基準
12級4号1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

「耳殻の大部分の欠損」とは,以下の場合を指します。

「耳殻の大部分の欠損」
耳殻の軟骨部の2分の1以上を欠損したもの

ここで「耳殻」とは,耳のうち外に張り出て飛び出している部分をいいます。
一般的に「耳」と呼ぶ楕円形の部位全体を指します。

なお,耳殻の欠損障害が醜状障害にも該当する場合,いずれか上位の等級が認定されます

【耳鳴り】

等級基準
12級相当難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるもの
14級相当難聴に伴い常時耳鳴りのあることが合理的に説明できるもの

【具体的基準】

「難聴に伴い」とは(12級)
①耳鳴りが存在すると思われる純音聴力レベルが,他の純音聴力レベルと比べて低下している場合
②平均純音レベルが40dB未満(=聴力の後遺障害等級)に満たなくてもよい

「著しい耳鳴り」とは(12級)
耳鳴りに係る検査により耳鳴りが存在すると医学的に評価できる場合

「常時耳鳴りのあること」とは(14級)
耳鳴りが常時存在するものの,昼間外部の音によって耳鳴りが遮蔽されるため自覚症状が無く,夜間のみ耳鳴りの自覚症状を有する場合

「合理的に説明できるもの」とは(14級)
耳鳴りの自訴があり、かつ、耳鳴りのあることが騒音暴露歴や音響外傷等から合理的に説明できること

【耳漏】

外傷による耳漏が生じ,手術で治療をしてもなお残った場合には,後遺障害等級認定の対象となります。

等級基準
12級相当常時耳漏があるもの
14級相当その他の耳漏があるもの
QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

鼻に関する後遺障害認定の種類と基準

鼻の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

欠損障害鼻を失ったことに関する後遺障害
機能障害呼吸困難となったこと,嗅覚がなくなったことに関する後遺障害

【欠損障害】

鼻の後遺障害等級は,以下の1つのみが定められています。

等級基準
9級5号鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの

等級認定のためには,①鼻の欠損と②著しい機能障害の両方について基準を満たす必要があります。

①鼻の欠損

鼻を欠損し」たとは,以下の場合を指します。

鼻を欠損し」たとは
鼻軟骨部の全部又は大部分の欠損をしたこと

鼻は,上部に鼻骨と呼ばれる骨であり,鼻骨の下に軟骨部があります。軟骨部は,一般的に鼻と呼ぶ三角錐の形に隆起した部位を指すものと理解して差し支えないでしょう。
したがって,鼻の三角錐形の部分が全部又は大部分欠損した場合に,欠損障害に該当し得ることになります。

②著しい機能障害

鼻呼吸困難,または嗅覚脱失をいいます。

嗅覚の障害については,「嗅覚脱失」と「嗅覚減退」が挙げられますが,これらは「T&Tオルファクトメータ」(嗅覚測定用の基準臭)による検査で認知域値(においを判別・表現できる最低濃度)を測定し,判定されます。具体的な基準は以下の通りです。

嗅覚脱失」認知域値5.6以上
嗅覚減退」認知域値2.6以上5.5以下

このうち,著しい機能障害に位置付けられるのは「嗅覚脱失」となります。

ポイント
鼻の後遺障害等級として明記されているのは,欠損+著しい機能障害のみ
欠損は軟骨部の全部又は大部分を失ったこと
著しい機能障害は鼻呼吸困難又は嗅覚脱失

【外貌醜状障害】

①鼻の欠損との関係

鼻の欠損が生じる場合,同時に外貌の醜状障害に該当することが考えられます。その場合,欠損障害と醜状障害のいずれか上位の等級が認定されます。上位の等級のみが認定され,併合されないことに注意が必要です。

例えば,鼻を欠損して著しい機能障害が生じた場合,9級5号に認定されますが,同時に外貌の醜状障害として7級12号に該当する場合,上位の7級が認定されます。

②鼻の欠損に至らない場合

鼻の欠損(=全部又は大部分の欠損)には至らない程度の一部欠損は,別途醜状障害の対象となるかどうかの問題となります。醜状障害の基準を満たせば,12級14号の認定可能性があります。

【機能障害】

鼻の欠損を伴わない機能障害は,以下の等級に該当する可能性があります。

等級基準
12級相当嗅覚脱失
鼻呼吸困難
14級相当嗅覚減退

嗅覚脱失」及び「嗅覚減退」の基準は,上記と同様です。

嗅覚脱失」とは
T&Tオルファクトメーターによる検査の認定域値5.6以上
嗅覚減退」とは
T&Tオルファクトメーターによる検査の認定域値2.6以上5.5以下

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

口に関する後遺障害認定の種類と基準

口に関する後遺障害には,以下の種類があります。

そしゃく機能障害口を開けたり物を噛んだりする能力に制限が生じる後遺障害
言語機能障害発声できる音に制限が生じる後遺障害
歯牙障害歯が欠損したことに関する後遺障害
味覚障害味覚を感じられなくなったことに関する後遺障害

【そしゃく障害】

①認定基準

【そしゃくと言語の両方に障害がある場合】

等級基準
1級2号そしゃく及び言語の機能を廃したもの
4級2号そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

【そしゃく又は言語の一方に障害がある場合】

等級基準
3級2号そしゃく又は言語の機能を廃したもの
6級2号そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
10級3号そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

②そしゃく機能の判断方法

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

③各基準の具体的内容

「そしゃく機能を廃したもの」
=流動食以外は摂取できないもの

「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」
=粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの

「そしゃく機能に障害を残すもの」
=以下のいずれかの場合
①固形食物の中にそしゃくができないものがあること(※)
②そしゃくが十分にできないものがあり,そのことが医学的に確認できる場合(※※)

(※)ごはん,煮魚,ハム等はそしゃくできるが,たくあん,らっきょう,ピーナッツ等の一定の固さの食物中にそしゃくできないものがあるなど
(※※)不正咬合,顎関節の障害,開口障害など,そしゃくできないものがあることの原因が医学的に確認できる場合

【言語障害】

①認定基準

【そしゃくと言語の両方に障害がある場合】

等級基準
1級2号そしゃく及び言語の機能を廃したもの
4級2号そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

【そしゃく又は言語の一方に障害がある場合】

等級基準
3級2号そしゃく又は言語の機能を廃したもの
6級2号そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
10級3号そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

②言語機能の判断方法

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

③各基準の具体的内容

「言語の機能を廃したもの」
=4種の語音(口唇音,歯舌音,口蓋音,喉頭音)のうち,3種以上の発音不能のもの

「言語の機能に著しい障害を残すもの」
=4種の語音のうち,2種の発音不能のもの又は綴音機能(語音を一定の順序に連結すること)に障害があるため,言語のみを用いては意思を疎通することができないもの

「言語の機能に障害を残すもの」
4種の語音のうち,1種の発音不能のもの

【歯牙障害】

①認定基準

等級基準
10級4号14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
11級4号10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
12級3号7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
13級4号5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
14級2号3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

②歯牙障害の判断方法

歯牙障害は,歯科補綴を加えた歯の数によって等級が認定されます。

「歯科補綴を加えたもの」とは
=現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴

「著しく欠損した」とは
歯冠部(歯肉より露出している部分)の体積の4分の3以上を欠損したもの

「補綴」とは
歯が喪失したり欠損したりしたところを,クラウン(歯全体を覆う被せ物)や入れ歯などの人工物で補うこと

【留意事項】
①認定対象になる歯の条件
→認定対象となる歯は,永久歯を指します。乳歯や含まれず,いわゆる親知らずも含まれません。ただし,乳歯が欠損したことで永久歯の萌出が見込めない場合は含まれます。

②喪失した歯の数より補綴した義歯の数が多い場合
→喪失した歯牙が大きい場合や歯間が広かった場合など,喪失した歯の数よりも多くの補綴を要した場合,等級の認定は喪失した歯の数によって判断されます。

(例)4本を喪失したが,5本の補綴をした場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③ブリッジなどで失った歯以外を切除した場合
→交通事故で失った歯の補綴に際して,ブリッジを設ける目的などで他の歯を切除した場合,歯冠部の4分の3以上切除していれば,歯科補綴を加えた本数に含みます。

(例)交通事故で2本喪失したところ,両側2本の歯にブリッジを施した場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③歯牙障害に関する診断書

歯牙障害については,歯科用の後遺障害診断書を用いて主治医の記載を依頼します。

【味覚障害】

①判断基準

等級基準
12級相当味覚脱失
14級相当味覚減退

②判断方法

味覚については,基本4味質(甘味,塩味,酸味,苦味)を感じる能力を基準に判断します。

「味覚脱失」とは
=頭部,顎周囲組織の損傷,舌の損傷によって基本4味質すべてが認知できない場合

「味覚減退」とは
=頭部,顎周囲組織の損傷,舌の損傷によって基本4味質のうち1味質以上を認知できない場合

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

内臓に関する後遺障害認定の種類と基準

内臓の後遺障害は,基本的に「胸腹部臓器の機能障害」に関する等級の問題となります。

その後遺障害等級の種類は以下の通りです。

等級基準
要介護1級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
要介護2級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級4号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級3号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級5号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級11号胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの
11級10号胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
13級11号胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

個別の臓器について,どのような基準を満たせばどのような等級に該当するかは,それぞれ定められているため,以下詳細を解説します。

【呼吸器】

肺などの呼吸器に関する後遺障害等級については,以下の3種類の検査方法による測定値を基準とするのが通常です。

【呼吸機能に関する検査】

①動脈酸素分圧と動脈炭酸ガス分圧の検査
②スパイロメトリーの検査+呼吸困難の程度
③運動負荷試験

原則として①の検査結果を基準にしますが,②③の検査結果による等級が①による等級よりも上位の場合,上位の等級が認定されます。

①動脈酸素分圧と動脈炭酸ガス分圧の検査

動脈から血を採取し,酸素や二酸化炭素のガス濃度を測定する検査です。
動脈血酸素分圧が低いほど,酸素の濃度が低く,障害が重大であることを意味します。

動脈酸素分圧ごとの後遺障害等級

動脈酸素分圧50Torr以下の場合の等級】

等級基準
要介護1級2号呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの
要介護2級2号呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの
3級4号上記のいずれにも該当しないもの

動脈酸素分圧50Torr~60Torrの場合の等級】

等級基準
要介護1級2号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外(※)+呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの
要介護2級2号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外+呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの
3級4号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外+上記のいずれにも該当しないもの
5級3号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内のもの

(※)動脈炭酸ガス分圧の限界値範囲は,37Torr~43Torrの間にあることを指します。限界値範囲外の場合,肺の換気機能に異常の生じていることが見込まれます。

動脈酸素分圧60Torr~70Torrの場合の等級】

等級基準
7級5号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外
9級11号上記の基準に該当しないもの

動脈酸素分圧70Torrを超える場合の等級】

等級基準
11級10号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもの

要介護の基準

常時介護が必要なもの」とは
生活全般において介護が必要な状態にあること

随時介護が必要なもの」とは
日常生活の一部の動作について介護や看視,声かけが必要な状態のこと

②スパイロメトリーの検査+呼吸困難の程度

スパイロメトリーとは,肺活量などを測定する検査です。
具体的には,以下の検査の結果を基準に後遺障害等級認定がなされます。

「%1秒量」
=最初の1秒間に吐き出した空気量
「%肺活量」
=平均的な肺活量と比べて何%の肺活量があるか

これらの検査結果と呼吸困難の程度の組み合わせにより,後遺障害等級が区別されます。

等級と認定基準一覧

【%1秒量35以下又は%肺活量40以下の場合】

①呼吸困難が高度

等級基準
要介護1級2号呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの
要介護2級2号呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの
3級4号上記のいずれにも該当しないもの

②呼吸困難が中等度

等級基準
7級5号中等度の呼吸困難が認められるもの

③呼吸困難が軽度

等級基準
11級10号軽度の呼吸困難が認められるもの

【%1秒量35~55又は%肺活量40~60の場合】

①呼吸困難が高度又は中等度

等級基準
7級5号中高度または中等度の呼吸困難が認められるもの

②呼吸困難が軽度

等級基準
11級10号軽度の呼吸困難が認められるもの

【%1秒量55~70又は%肺活量60~80の場合】

等級基準
11級10号高度、中等度または軽度の呼吸困難が認められるもの

呼吸困難の程度に関する判断基準

高度呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中等度呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同じように歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行ができるもの
軽度呼吸困難のため、健常者と同じようには階段の昇降ができないもの

③運動負荷試験

運動負荷試験とは
実際に運動をして心肺機能を確認する検査
(例)一定時間の歩行試験等

他の検査では後遺障害等級に該当しないものの,呼吸機能低下や呼吸困難があり,運動負荷試験の結果で明らかに呼吸機能障害があると認められる場合,11級10号の認定可能性があります。
もっとも,運動負荷試験での等級認定は,他の検査では後遺障害等級に該当しない場合のものであるため,認定は容易でない傾向にあります。主治医等による医学的意見やその根拠をより積極的に示すことが望ましいでしょう。

【循環器】

主に心臓の機能に障害が生じた場合,後遺障害等級認定の可能性が生じます。
具体的な機能障害としては,以下の内容が挙げられます。

循環器の機能障害
①心機能が低下したもの
②除細動器又はペースメーカーを植え込んだもの
③房室弁又は大動脈弁を置換したもの
④大動脈に解離を残すもの

①心機能が低下したもの

等級基準
9級11号心機能の低下による運動耐容能の低下が中程度であるもの
11級10号心機能の低下による運動耐容能の低下が軽度であるもの

「運動耐容能」とは
運動の負荷に耐えることのできる能力をいい,どの程度の運動強度に耐えられるかによって区別をします。
運動・作業強度の指標には「METs」(メッツ)という単位を用い,この値が大きいほど運動強度が大きいものとなります。

「運動耐容能の低下が中程度であるもの」とは(9級)
=おおむね6METs(メッツ)を超える強度の身体活動が制限されるもの
(例)
平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないものの、平地を急いで歩く、平地を健康な人と同じ程度で階段を上るという身体活動が制限されるもの

「運動耐容能の低下が軽度であるもの」とは(11級)
=おおむね8METs(メッツ)を超える強度の身体活動が制限されるもの
(例)
平地で急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上るという身体活動に支障がないものの、それ以上に激しいか、急激な身体活動が制限されるもの

②除細動器又はペースメーカーを植え込んだもの

等級基準
7級5号除細動器を植え込んだもの
9級11号ペースメーカーを植え込んだもの

③房室弁又は大動脈弁を置換したもの

人工弁に置換する手術を行った場合,後遺障害等級に該当します。

等級基準
9級11号継続的に抗凝血薬療法を行うもの
11級10号上記に該当しないもの

④大動脈に解離を残すもの

大動脈は,心臓から出た血液が通る人体の中で最も太い血管ですが,その大動脈に亀裂が入った結果,血管壁の内膜が裂けてしまった状態大動脈解離と言います。
大動脈解離が起きると,血管が裂けたことで新しい血管の通り道(偽腔)が生まれますが,偽腔の血流が止まっていない状態を「偽腔開存型」と言います。

等級基準
11級10号偽腔開存型の解離を残すもの

【腹部臓器】

腹部臓器は多数ありますが,臓器ごとにその機能低下の程度に応じた等級認定の可能性があります。

①食道の障害

等級基準
9級11号食道の狭さくによる通過障害を残すもの

以下のいずれにも該当する場合を指します。

「食道の狭さくによる通過障害を残すもの」とは
1.通過障害の自覚症状があること
2.消化管造影検査により,食道の狭さくによる造影剤のうっ滞が認められること

②胃の障害

等級基準
7級5号消化吸収障害、ダンピング症候群、胃切除術後逆流性食道炎のいずれもが認められるもの
9級11号消化吸収障害及びダンピング症候群が認められるもの

消化吸収障害及び胃切除術後逆流性食道炎が認められるもの
11級10号消化吸収障害、ダンピング症候群、胃切除術後逆流性食道炎のいずれかが認められるもの
13級11号噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失したもの

「消化吸収障害」とは

以下のいずれかに該当するもの
1.胃の全部を亡失したこと
2.噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失し、低体重等(※)が認められること
(※)①BMI20以下又は②事故前からBMI20以下の場合は体重が10%以上減少

「ダンピング症候群」とは

以下のいずれにも該当するもの
1.胃の全部または幽門部を含む胃の一部を亡失した
2.早期ダンピング症候群に起因する症状(※)または晩期ダンピング症候群に起因する症状(※※)が認められること
(※)食後30分以内に出現するめまい,起立不能等
(※※)食後2時間後から3時間後に出現する全身脱力感,めまい等


「胃切除術後逆流性食道炎」とは

以下のいずれにも該当するもの
1.胃の全部又は噴門部を含む胃の一部を亡失したこと
2.胃切除術後逆流性食道炎に起因する自覚症状(胸焼け,胸痛,嚥下困難等)があること
3.内視鏡検査により食道にの胃切除術後逆流性食道炎に起因する所見(びらん,潰瘍等)が認められること

③小腸の障害

小腸を大量に切除したもの

等級基準
9級11号残存する空腸および回腸の長さが100センチメートル以下となったもの
11級10号残存する空腸および回腸の長さが100センチメートルを超え300センチメートル未満であり,消化吸収障害(低体重等)が認められるもの

人工肛門を造設したもの

等級基準
5級3号小腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができないもの
7級5号人工肛門を造設したうち,上記に該当しないもの

小腸皮膚瘻を残すもの

等級基準
5級3号瘻孔から小腸内容の全部または大部分が漏出し,小腸皮膚瘻周辺に著しいびらんが生じ、パウチなどの装着ができないもの(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)
7級5号瘻孔から小腸内容の全部または大部分が漏出するが,5級3号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの

瘻孔から漏出する小腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上で,パウチなどによる維持管理が困難であるもの
9級11号瘻孔から漏出する小腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上だが,7級5号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの
11級10号瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸内容が漏出する程度のもの

小腸の狭さくを残すもの

等級基準
11級10号小腸に狭さくを残すもの

「小腸に狭さくを残すもの」とは

次のいずれにも該当するもの
1.1か月に1回程度,腹痛,腹部膨満感,嘔気,嘔吐などの症状が認められること
2.単純エックス線像においてケルクリングひだ像が認められること

④大腸の障害

大腸を大量に切除したもの

等級基準
11級10号結腸のすべてを切除するなど大腸のほとんどを切除したもの

人工肛門を造設したもの

等級基準
5級3号大腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができないもの
7級5号人工肛門を造設したうち,上記に該当しないもの

大腸皮膚瘻を残すもの

等級基準
5級3号瘻孔から大腸内容の全部または大部分が漏出し,大腸皮膚瘻周辺に著しいびらんが生じ、パウチなどの装着ができないもの(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)
7級5号瘻孔から大腸内容の全部または大部分が漏出するが,5級3号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの

瘻孔から漏出する大腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上で,パウチなどによる維持管理が困難であるもの
9級11号瘻孔から漏出する大腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上だが,7級5号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの
11級10号瘻孔から少量ではあるが明らかに大腸内容が漏出する程度のもの

大腸の狭さくを残すもの

等級基準
11級10号大腸に狭さくを残すもの

「大腸に狭さくを残すもの」とは

=次のいずれにも該当するもの
1.1か月に1回程度,腹痛,腹部膨満感などの症状が認められること
2.単純エックス線像において貯留した大量のガスにより結腸膨起像が相当区間認められること

便秘を残すもの

等級基準
9級11号用手摘便を要すると認められるもの
11級10号上記の基準に該当しないもの

便秘とは

=次のいずれにも該当するもの
1.排便反射を支配する神経の損傷がMRIやCTなどにより確認できること
2.排便回数が週2回以下の頻度であって,恒常的に硬便であると認められること

便失禁を残すもの

等級基準
7級5号完全便失禁を残すもの
9級11号常時おむつの装着が必要であるが,7級5号の基準に該当しないもの
11級10号常時おむつの装着が必要ではないものの,明らかに便失禁があると認められるもの

⑤肝臓の障害

等級基準
9級11号肝硬変
(ウイルスの持続感染が認められ,かつ,AST・ALTが持続的に低値であるものに限る)
11級10号慢性肝炎
(ウイルスの持続感染が認められ,かつ,AST・ALTが持続的に低値であるものに限る)

⑥胆のうの障害

等級基準
13級11号胆のうを失ったもの

⑦すい臓の障害

等級基準
9級11号外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの
11級10号外分泌機能の障害と内分泌機能の障害のいずれかが認められるもの
12級13号軽微な膵液瘻を残したために皮膚に疼痛等が生じるもの(局部の神経症状)
14級9号軽微な膵液瘻を残したために皮膚に疼痛等が生じるもの(局部の神経症状)

外分泌機能:膵液(消化液)を腸に送り出す機能

外分泌機能の障害」とは

次のいずれにも該当するもの
1.上腹部痛,脂肪便,頻回の下痢などの外分泌機能の低下による症状が認められること
2.BT-PABA(PFD)試験で異常低値(70%未満)を示すこと
3.ふん便中キモトリプシン活性で異常低値(24U/g未満)を示すこと
4.アミラーゼまたはエラスターゼの異常低値を認めるもの

内分泌機能:ホルモンを血液中に送り出す機能

内分泌機能の障害」とは

次のいずれにも該当するもの
1.異なる日に行った経口糖負荷試験で境界型または糖尿病型であることが2回以上確認されること
2.空腹時血漿中のC-ペプチド(CPR)が0.5ng/ml以下(インスリン異常低値)であること
3.Ⅱ型糖尿病に該当しないこと

⑧ひ臓の障害

等級基準
13級11号ひ臓を失ったもの

⑨腹部臓器周辺のヘルニア

腹壁瘢痕ヘルニア,腹壁ヘルニア,鼠径ヘルニア又は内ヘルニアを残す場合,以下の後遺障害等級認定が考えられます。
もっとも,手術を行うことが通常であり,通常は多くは手術によりヘルニア内容の脱出は認めなくなることから,手術を試みたものの完治できない場合などが対象となります。

等級基準
9級11号常時ヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの

立位をしたときにヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの
11級10号重激な業務に従事した場合など腹圧が強くかかるときにヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの

【泌尿器】

①腎臓の障害

腎臓に関する後遺障害の等級は,以下の2点を踏まえて判断されます。

腎臓の後遺障害等級認定 基準となる要素
1.腎臓を失ったかどうか
2.GFR値(腎臓が血液をろ過して尿を作った量の値)

具体的な等級及び基準

【一側の腎臓を失ったもの】

等級基準
7級5号GFR値が30ml/分を超え50ml/分以下のもの
9級11号GFR値が50ml/分を超え70ml/分以下のもの
11級10号GFR値が70ml/分を超え90ml/分以下のもの
13級11号GFR値が90ml/分を超えるもの

【腎臓を失っていないもの】

等級基準
9級11号GFR値が30ml/分を超え50ml/分以下のもの
11級10号GFR値が50ml/分を超え70ml/分以下のもの
13級11号GFR値が70ml/分を超え90ml/分以下のもの

②尿管,膀胱及び尿道の障害

尿路変向術を行ったもの

等級基準
5級3号非尿禁制型尿路変向術を行ったもので,尿が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ,パッド等の装着ができないもの
7級5号非尿禁制型尿路変向術を行ったもので上記に該当しないもの

禁制型尿リザボアの術式を行ったもの
9級11号尿禁制型尿路変向術(禁制型尿リザボアおよび外尿道口形成術を除く)を行ったもの
11級10号外尿道口形成術を行ったもの

尿道カテーテルを留置したもの

排尿障害を残すもの

等級基準
9級11号膀胱の機能障害により残尿が100ミリリットル以上であるもの
11級10号膀胱の機能障害により残尿が50ミリリットル以上100ミリリットル未満であるもの

尿道狭さくのため糸状ブジーを必要とするもの
14級尿道狭さくのため,「シャリエ式」尿道ブジー第20番が辛うじて通り、時々拡張術を行う必要があるもの

畜尿障害を残すもの

等級基準
7級5号持続性尿失禁を残すもの

切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,終日パッド等を装着し,かつパッドをしばしば交換しなければならないもの
9級11号切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,常時パッド等を装着しなければならないが、パッドの交換までは要しないもの
11級10号切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,常時パッド等の装着は要しないが、下着が少しぬれるもの

頻尿を残すもの

頻尿」とは

次のいずれにも該当するもの
1.器質的病変による膀胱容量の減少または膀胱・尿道の支配神経の損傷が認められること
2.日中8回以上の排尿が認められること
3.多飲などの他の原因が認められないこと

【生殖器】

①生殖機能を完全に喪失したもの

等級基準
7級13号両側の睾丸を失ったもの
7級【男性】
 常態として精液中に精子が存在しないもの
【女性】
 両側の卵巣を失ったもの
 常態として卵子が形成されないもの

②生殖機能に著しい障害を残すもの

等級基準
9級17号【男性】
 陰茎の大部分を欠損したもの
 勃起障害を残すもの
 射精障害を残すもの
【女性】
 膣口狭さくを残すもの
 両側の卵巣に閉塞・癒着を残すもの(※)
 頸管に閉塞を残すもの(※)
 子宮を失ったもの(※)
(※)画像所見により認められるものに限る

陰茎の大部分を欠損したもの」とは

陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの

勃起障害を残すもの」とは

以下のいずれかに該当するもの
1.夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことがリジスキャンによる夜間陰茎勃起検査により証明されること
2.支配神経の損傷など,勃起障害の原因となりうる所見が,神経系検査か血管系検査のいずれかにより認められること

射精障害を残すもの」とは

次のいずれかに該当するもの
1.尿道または射精管が断裂していること
2.両側の下腹神経の断裂により当該神経の機能が失われていること
3.膀胱頚部の機能が失われていること

膣口狭さくを残すもの」とは

陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの

③生殖機能に障害を残すもの

等級基準
11級10号狭骨盤または比較的狭骨盤が認められるもの

産科的真結合線が10.5cm未満または入口部横径が11.5cm未満のもの が該当する

④生殖機能に軽微な障害を残すもの

等級基準
13級【男性】
 一側の睾丸を失ったもの(睾丸の亡失に準ずべき程度の萎縮を含む)
【女性】
 一個の卵巣を失ったもの

後遺障害認定に強い弁護士をお探しの方へ

後遺障害認定は、交通事故に関する金銭的補償の内容を決定的に左右するため、極めて重要な問題です。
将来の生活を守るためにも,十分な後遺障害等級認定と損害賠償を獲得する必要がありますので,その手段として弁護士への相談やご依頼は積極的にご検討されることをお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

口の後遺障害にはどんなものがある?物が噛めなくなったら?発声が難しくなったら?歯を失ったら?弁護士が徹底解説

●口の後遺障害にはどのようなものがあるか?

●口の後遺障害の判断基準は?

●そしゃく機能の程度はどのように決まるのか?

●後遺障害等級が認定された場合にはいくら請求できるか?

●口の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,口の後遺障害についてお困りの方に向けて,口の後遺障害等級として問題になる項目やその判断基準口の後遺障害等級が認定された場合の請求内容などを解説します。

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

口に関する後遺障害の種類

口に関する後遺障害には,以下の種類があります。

そしゃく機能障害口を開けたり物を噛んだりする能力に制限が生じる後遺障害
言語機能障害発声できる音に制限が生じる後遺障害
歯牙障害歯が欠損したことに関する後遺障害
味覚障害味覚を感じられなくなったことに関する後遺障害

後遺障害等級の判断基準(そしゃく障害)

①認定基準

【そしゃくと言語の両方に障害がある場合】

等級基準
1級2号そしゃく及び言語の機能を廃したもの
4級2号そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

【そしゃく又は言語の一方に障害がある場合】

等級基準
3級2号そしゃく又は言語の機能を廃したもの
6級2号そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
10級3号そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

②そしゃく機能の判断方法

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

③各基準の具体的内容

「そしゃく機能を廃したもの」
=流動食以外は摂取できないもの

「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」
=粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの

「そしゃく機能に障害を残すもの」
=以下のいずれかの場合
①固形食物の中にそしゃくができないものがあること(※)
②そしゃくが十分にできないものがあり,そのことが医学的に確認できる場合(※※)

(※)ごはん,煮魚,ハム等はそしゃくできるが,たくあん,らっきょう,ピーナッツ等の一定の固さの食物中にそしゃくできないものがあるなど
(※※)不正咬合,顎関節の障害,開口障害など,そしゃくできないものがあることの原因が医学的に確認できる場合

後遺障害等級の判断基準(言語障害)

①認定基準

【そしゃくと言語の両方に障害がある場合】

等級基準
1級2号そしゃく及び言語の機能を廃したもの
4級2号そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

【そしゃく又は言語の一方に障害がある場合】

等級基準
3級2号そしゃく又は言語の機能を廃したもの
6級2号そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
10級3号そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

②言語機能の判断方法

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

③各基準の具体的内容

「言語の機能を廃したもの」
=4種の語音(口唇音,歯舌音,口蓋音,喉頭音)のうち,3種以上の発音不能のもの

「言語の機能に著しい障害を残すもの」
=4種の語音のうち,2種の発音不能のもの又は綴音機能(語音を一定の順序に連結すること)に障害があるため,言語のみを用いては意思を疎通することができないもの

「言語の機能に障害を残すもの」
4種の語音のうち,1種の発音不能のもの

後遺障害等級の判断基準(歯牙障害)

①認定基準

等級基準
10級4号14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
11級4号10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
12級3号7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
13級4号5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
14級2号3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

②歯牙障害の判断方法

歯牙障害は,歯科補綴を加えた歯の数によって等級が認定されます。

「歯科補綴を加えたもの」とは
=現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴

「著しく欠損した」とは
歯冠部(歯肉より露出している部分)の体積の4分の3以上を欠損したもの

「補綴」とは
歯が喪失したり欠損したりしたところを,クラウン(歯全体を覆う被せ物)や入れ歯などの人工物で補うこと

【留意事項】
①認定対象になる歯の条件
→認定対象となる歯は,永久歯を指します。乳歯や含まれず,いわゆる親知らずも含まれません。ただし,乳歯が欠損したことで永久歯の萌出が見込めない場合は含まれます。

②喪失した歯の数より補綴した義歯の数が多い場合
→喪失した歯牙が大きい場合や歯間が広かった場合など,喪失した歯の数よりも多くの補綴を要した場合,等級の認定は喪失した歯の数によって判断されます。

(例)4本を喪失したが,5本の補綴をした場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③ブリッジなどで失った歯以外を切除した場合
→交通事故で失った歯の補綴に際して,ブリッジを設ける目的などで他の歯を切除した場合,歯冠部の4分の3以上切除していれば,歯科補綴を加えた本数に含みます。

(例)交通事故で2本喪失したところ,両側2本の歯にブリッジを施した場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③歯牙障害に関する診断書

歯牙障害については,歯科用の後遺障害診断書を用いて主治医の記載を依頼します。

後遺障害等級の判断基準(味覚障害)

①判断基準

等級基準
12級相当味覚脱失
14級相当味覚減退

②判断方法

味覚については,基本4味質(甘味,塩味,酸味,苦味)を感じる能力を基準に判断します。

「味覚脱失」とは
=頭部,顎周囲組織の損傷,舌の損傷によって基本4味質すべてが認知できない場合

「味覚減退」とは
=頭部,顎周囲組織の損傷,舌の損傷によって基本4味質のうち1味質以上を認知できない場合

後遺障害に対する損害賠償額

後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。

ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。

【ケース】
症状固定時40歳,年収500万円,7歯以上に対し歯科補綴を加えたものとして12級3号認定

①自賠責基準

①後遺障害慰謝料
=94万円

②後遺障害逸失利益
=130万円

③合計
224万円

②裁判基準

①後遺障害慰謝料
=290万円

②後遺障害逸失利益
=500万円×14%×18.3270(27年ライプ)
=12,828,900円

③合計
15,728,900円

③差額

15,728,900円-224万円
13,488,900円(約7.0倍)

あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

口の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

口の後遺障害に関しては,そしゃくについて被害者自ら状態を申告する書面の作成が必要になったり,歯科補綴に関して独自の後遺障害診断書が必要になったりと,他類型の後遺障害にはない対応が必要になりやすいところです。また,それらの対応は,後遺障害等級の結果に直結するものであるため,対応を誤ることは大きな不利益につながってしまいます。

そのため,口の後遺障害に関しては,適切な対応の上で適切な等級認定を受け,さらには適正額の賠償を受領するために,弁護士への依頼が適切でしょう。

口の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ

口の後遺障害は,そしゃくや言語など,生活への支障が極めて大きくなりやすいものが多く,適切な損害賠償を受ける必要性がとても高い分野です。
そのため,口の後遺障害が問題になる場合は,できる限り速やかに,交通事故に長けた弁護士に相談の上,その後の進め方を検討するのが適切です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

交通事故で鼻を欠損したときの後遺障害は?嗅覚や鼻呼吸に問題が生じたときは?どんなとき何級になる?弁護士依頼の要否も解説

●鼻の後遺障害にはどのようなものがあるか?

●鼻の後遺障害の判断基準は?

●嗅覚はどのように判断されるのか?

●後遺障害等級が認定された場合にはいくら請求できるか?

●鼻の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,鼻の後遺障害についてお困りの方に向けて,鼻の後遺障害等級の項目や判断基準弁護士に依頼するメリットの有無などを解説します。

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

鼻に関する後遺障害の種類

鼻の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

欠損障害鼻を失ったことに関する後遺障害
機能障害呼吸困難となったこと,嗅覚がなくなったことに関する後遺障害

後遺障害等級の判断基準(欠損障害)

鼻の後遺障害等級は,以下の1つのみが定められています。

等級基準
9級5号鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの

等級認定のためには,①鼻の欠損と②著しい機能障害の両方について基準を満たす必要があります。

①鼻の欠損

鼻を欠損し」たとは,以下の場合を指します。

鼻を欠損し」たとは
鼻軟骨部の全部又は大部分の欠損をしたこと

鼻は,上部に鼻骨と呼ばれる骨であり,鼻骨の下に軟骨部があります。軟骨部は,一般的に鼻と呼ぶ三角錐の形に隆起した部位を指すものと理解して差し支えないでしょう。
したがって,鼻の三角錐形の部分が全部又は大部分欠損した場合に,欠損障害に該当し得ることになります。

②著しい機能障害

鼻呼吸困難,または嗅覚脱失をいいます。

嗅覚の障害については,「嗅覚脱失」と「嗅覚減退」が挙げられますが,これらは「T&Tオルファクトメータ」(嗅覚測定用の基準臭)による検査で認知域値(においを判別・表現できる最低濃度)を測定し,判定されます。具体的な基準は以下の通りです。

嗅覚脱失」認知域値5.6以上
嗅覚減退」認知域値2.6以上5.5以下

このうち,著しい機能障害に位置付けられるのは「嗅覚脱失」となります。

ポイント
鼻の後遺障害等級として明記されているのは,欠損+著しい機能障害のみ
欠損は軟骨部の全部又は大部分を失ったこと
著しい機能障害は鼻呼吸困難又は嗅覚脱失

後遺障害等級の判断基準(外貌醜状障害)

①鼻の欠損との関係

鼻の欠損が生じる場合,同時に外貌の醜状障害に該当することが考えられます。その場合,欠損障害と醜状障害のいずれか上位の等級が認定されます。上位の等級のみが認定され,併合されないことに注意が必要です。

例えば,鼻を欠損して著しい機能障害が生じた場合,9級5号に認定されますが,同時に外貌の醜状障害として7級12号に該当する場合,上位の7級が認定されます。

②鼻の欠損に至らない場合

鼻の欠損(=全部又は大部分の欠損)には至らない程度の一部欠損は,別途醜状障害の対象となるかどうかの問題となります。醜状障害の基準を満たせば,12級14号の認定可能性があります。

後遺障害等級の判断基準(機能障害)

鼻の欠損を伴わない機能障害は,以下の等級に該当する可能性があります。

等級基準
12級相当嗅覚脱失
鼻呼吸困難
14級相当嗅覚減退

嗅覚脱失」及び「嗅覚減退」の基準は,上記と同様です。

嗅覚脱失」とは
T&Tオルファクトメーターによる検査の認定域値5.6以上
嗅覚減退」とは
T&Tオルファクトメーターによる検査の認定域値2.6以上5.5以下

後遺障害に対する損害賠償額

後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。

ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。

【ケース】
症状固定時50歳,年収400万円,「鼻の欠損及び著しい機能障害」により9級5号認定

①自賠責基準

①後遺障害慰謝料
=249万円

②後遺障害逸失利益
=367万円

③合計
616万円

②裁判基準

①後遺障害慰謝料
=690万円

②後遺障害逸失利益
=400万円×35%×13.1661(17年ライプ)
=18,432,540円

③合計
25,332,540円

③差額

25,332,540円-616万円
19,172,540円(約4.1倍)

あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

鼻の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

鼻の後遺障害等級は,欠損を伴う場合と伴わない場合で認定基準が異なり,場合分けの必要性が高い類型です。そのため,ケースに適した場合分けを誤ると,等級認定の見込みにも誤りが生じ,結果的に十分な損害賠償の獲得に至らない可能性が生じてしまいます。

また,「鼻の欠損」や「鼻呼吸困難」など,必ずしも認定基準が数値等で明確にならないものもあるため,具体的な対応に際しては弁護士への相談・依頼が望ましいでしょう。

鼻の後遺障害に交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

鼻に関する後遺障害は,主に嗅覚について問題になることが多く見受けられます。
この点,嗅覚の後遺障害は判断基準が明確に定められているため,この基準を踏まえた対応や申請が重要となります。
後遺障害の手続に際しては,交通事故に精通した弁護士へのご相談が有力です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所