不法侵入は現行犯以外で逮捕される?後日逮捕される確率や流れなどを解説

「不法侵入って現行犯じゃないと逮捕されないの?」
「後から侵入がバレた場合でも罪に問われるの?」

上記のようなことを感じている方もいるのではないでしょうか。

不法侵入は現行犯でなくても、状況次第では後日逮捕や書類送検される可能性があります。警察が証拠を集め、住居侵入罪として立件できれば法的措置が取られることもあるのです。

本記事では、不法侵入の正しい定義や、現行犯でなくても処罰対象となる具体的なケース、後から逮捕されるまでの流れについて、わかりやすく解説していきます。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

不法侵入とは

不法侵入とは、他人の敷地や建物などに無断で立ち入る行為です。刑法上では「住居侵入罪」として規定されています。

刑法130条では、「正当な理由なく人の住居、建造物若しくは艦船に侵入した者」は、三年以下の懲役または十万円以下の罰金に処せられるとされています。

つまり、単に「入っただけ」であっても、相手の承諾がなければ罪に問われる可能性があるのです。

住居侵入罪が成立する要件

住居侵入罪が成立するためには、まず「他人が占有する住居等であること」が前提です。

ここでいう「住居」には、人が居住している住宅だけでなく、事務所や店舗、場合によっては空き家も含まれます。

次に、「正当な理由がなく侵入したこと」が必要です。

たとえば、郵便配達員や修理業者など、社会的に認められた職務で立ち入る場合は正当な理由があるとされますが、それ以外で黙って入れば違法です。

また、「侵入の意思」が問われるため、間違って入っただけでは故意がないとみなされ、罪に問われないこともあります。

ただし、立ち入りの意図や態度から、明らかに不法だと判断されれば処罰の対象です。これらの要件がそろったときに、住居侵入罪として成立します。

住居侵入罪として問題になる行為には例として以下のようなものが挙げられるので、ぜひ参考にしてください。

住居侵入罪に該当する行為

①窃盗目的で住宅に侵入する行為
いわゆる空き巣などが該当します。窃盗行為が行われた場合,あわせて窃盗罪又は窃盗未遂罪が成立します。
もっとも,窃盗行為を実行せずに立ち去ったとしても,住居侵入罪は変わらず成立します。

②わいせつ行為目的で帰路の後をつけ,住宅に侵入する行為
路上で目撃した被害者へのわいせつ行為を企図した人が,その場ではわいせつ行為を行わず,自宅に入る被害者の後をつけて住宅に侵入した場合です。
わいせつ行為がなされた場合,内容等に応じて不同意わいせつ罪などの性犯罪が別途成立します。また,わいせつ行為がなされなかった場合でも住居侵入罪は変わらず成立します。

③知人の自宅の合鍵を作り,それを用いて居宅に侵入する行為
加害者と被害者が勤務先の同僚等の関係にある場合に,加害者が被害者の所持品から鍵を持ち出して合鍵を作製し,その合鍵を用いて被害者方に侵入するケースです。
合鍵を持ち出した段階で,その行為について窃盗罪の成立することが一般的です。

④更衣室や浴室を覗く目的で住宅の敷地内に侵入する行為
庭などの敷地から,住宅の更衣室や浴室を覗くことができる状況にある場合,その敷地に入る行為は住居侵入罪に該当するのが通常です。
住居侵入罪は,住居のみでなく,その住居に付属して一体となった場所に侵入する行為も対象とするものと理解されます。そのため,庭や駐車場,塀と玄関の間のスペースなど,住居に付属した私有地への侵入行為は,住居侵入罪に該当するところです。

なお,覗き行為が行われた場合,軽犯罪法違反などの犯罪があわせて成立するでしょう。

⑤下着窃盗のためベランダに侵入する行為
ベランダに洗濯物が干してある場合に,これを盗むためベランダに立ち入ったり手を伸ばしたりする行為にも住居侵入罪が成立します。
ベランダも,居室そのものではありませんが住居の一部に含まれるとの理解が一般的です。そのため,正当な理由なくベランダに侵入すれば,住居侵入罪の対象となります。

住居侵入と建造物侵入の区別

住居侵入罪と類似する犯罪に,建造物侵入罪があります。建造物侵入罪は,文字通り建造物に正当な理由なく侵入する犯罪です。

ここで,建造物とは,人が出入りする構造物のうち,住居以外の建物を指すのが通常です。そのため,住居侵入罪は人が日常的に生活する場所への侵入を,建造物侵入罪は住居でないが人が出入りする建物への侵入を,それぞれ対象としていると言えるでしょう。
建造物の具体例としては,商業施設やオフィスビル,学校,工場,倉庫などが挙げられます。

なお,住居侵入罪と建造物侵入罪は,守ろうとする権利や利益(保護法益)にも相違があるとされます。
具体的には以下の通りです。

住居侵入罪個人の生活の平穏 プライバシーの保護
建造物侵入罪建物の安全性 公共の秩序の保護

不法侵入は現行犯逮捕以外で逮捕される?

不法侵入は、現行犯で逮捕されるケースが多いですが、実は後日逮捕されることもあります。

防犯カメラの映像や目撃証言などによって、後日特定された場合、警察が逮捕状を取って身柄を拘束することが可能です。

後日逮捕される可能性

現行犯でその場で逮捕されなかったからといって、不法侵入が無罪になるわけではありません。警察は証拠や情報をもとに、後から侵入者を特定し、逮捕できます。

たとえば、防犯カメラの映像や近隣住民の証言、侵入者が残した指紋などが重要な手がかりになります。

現行犯逮捕が優先されるのは証拠隠滅や逃走を防ぐためであり、後日逮捕も法的には十分可能です。

特に悪質なケースや、再犯の恐れがある場合は、警察も積極的に後日逮捕を検討します。現行犯でないからと安心するのは危険です。

不法侵入の事件では、後日逮捕される場合も十分にあり得ます。5割程度は逮捕される印象です。侵入後に別の犯罪行為をしてしまっている場合、特に後日逮捕の可能性が上がりやすいでしょう。

後日逮捕されるには証拠が必要

後日逮捕の場合には、現行犯逮捕以上に「確実な証拠」が求められます。裁判所に逮捕状を請求するには、「罪を犯した相当な理由」があると警察が立証しなければなりません。

たとえば、防犯カメラの映像に顔が鮮明に映っていたり、住人の証言と侵入時の服装や特徴が一致していたりすれば、証拠として採用されやすくなります。

また、物的証拠として指紋や足跡、遺留品が見つかった場合も後日逮捕の根拠になります。

逆に証拠が曖昧だったり、特定できなかったりすると、逮捕に至らないこともあります。つまり、証拠の有無が後日逮捕の可否を大きく左右するのです。

後日逮捕されるまでにかかる期間

後日逮捕までの期間は、事件の内容や証拠の集まり具合によって異なります。早ければ数日以内に逮捕されることもあれば、数週間から数ヶ月かかることもあるでしょう。

警察はまず、関係者からの聞き取りや現場の捜査、証拠の分析を進めます。そのうえで逮捕に足る証拠がそろったと判断されれば、検察と連携して逮捕状を請求し、執行に移ります。

場合によっては、「在宅捜査」として任意で呼び出しを受け、取り調べの末に書類送検されるケースもあります。

逮捕までの期間は見えにくいものですが、「もう大丈夫だろう」と油断するのは禁物です。

不法侵入が発覚するまでの期間、その後に加害者が特定されるまでの期間によって異なりますが、3~6か月程度の期間がかかることは決して珍しくないでしょう。

不法侵入で後日逮捕された際の流れ

不法侵入で後日逮捕された場合、まず警察は逮捕状を取得して本人を拘束します。逮捕後は警察署に連行され、48時間以内に検察に送致されます。

検察はさらに24時間以内に勾留の要否を判断し、必要があれば裁判所に勾留請求を行います。

勾留が認められれば最大10日間(延長含め最大20日間)拘束され、その間に取り調べや証拠収集が行われます。勾留後、検察は起訴するか不起訴にするかを判断します。

起訴された場合は刑事裁判へと進み、有罪となれば罰金刑や懲役刑が科される可能性があります。

このように、後日逮捕であっても法的手続きは厳格に進められるため、油断は禁物です。

不法侵入で後日逮捕されるのを防ぐために必要なこと

不法侵入をしてしまったが、現時点で逮捕されていない場合、今後の対応によっては処分が軽くなる可能性もあります。

この章では、逮捕を避けたり、刑を軽くしたりするために取れる行動について解説します。

自首する

自ら警察に出頭して罪を認める行為、つまり自首は、刑法上も情状酌量の対象です。

自首には「発覚前」と「発覚後」の区別がありますが、事件がまだ警察に知られていない段階での自首であれば、刑の減免の可能性が高くなります。

発覚後でも、自ら進んで警察に説明し、協力的な姿勢を示すことで、裁判官や検察官の心証を良くし、処分が軽くなるケースがあります。

自首には精神的なハードルがあるものの、逃げ続けるよりも早期の決断が重要です。

示談を交渉する

被害者との間で示談を成立させることも、刑事処分に大きな影響を及ぼします。

住居侵入罪のような被害者が明確な事件では、示談が成立している場合、検察が不起訴にすることもあるでしょう。

示談では謝罪と損害賠償が一般的ですが、内容によっては訴えを取り下げてもらえることもあります。

ただし、無理に示談を進めようとしたり、相手の同意なしに接触したりすると、逆効果になる場合もあるため、弁護士を通じて慎重に交渉することが大切です。

示談は、処分を軽くするための現実的な選択肢の1つです。

住居侵入・建造物侵入事件で弁護士に依頼するメリット

依頼を検討するべきケース

弁護士への依頼を検討すべき場合には,以下のようなケースが挙げられます。

①逮捕の回避を目指す場合

まだ捜査されていないが,今後の逮捕が懸念されるという場合,弁護士に依頼の上で自首を行うことが非常に有力です。
自首を行うと,自ら犯罪捜査のきっかけを作ることにはなりますが,自分から出頭している以上,逮捕が必要だと判断される可能性は大きく低下するのが通常です。
放置していては逮捕が危ぶまれるという状況では,自首による逮捕回避を検討するのが適切でしょう。

もっとも,その手順や方法を誤ると,せっかく自首をしても望んだ効果が得られない可能性も高くなってしまいます。自首を検討する場合は,弁護士との同行など,弁護士への依頼をお勧めいたします。

②早期釈放を目指す場合

逮捕されたケースで早期釈放を目指す場合も,弁護士への依頼が適切と言えます。
住居侵入(建造物侵入)事件では,内容により早期釈放が実現できるかどうかの見込みが大きく異なりやすく,正確な見込みに沿った弁護活動が必要です。現実的に成功する可能性がない方法を取った場合,かえって捜査の長期化を招き,釈放時期を遅らせることにもなりかねません。

釈放を目指す場合,弁護士へ依頼の上,具体的な見込みと釈放に向けた弁護活動の案内を受けることをお勧めいたします。

③刑罰の軽減を目指す場合

刑罰の軽減を目指すためには,被害者との示談が必要不可欠です。
もっとも,当事者間での示談交渉は困難であるため,示談を試みる場合には弁護士への委任が必須となります。

示談に強い弁護士に依頼の上,弁護士を通じて示談交渉を試みることで,刑罰の軽減が実現しやすくなるでしょう。

④接見禁止処分のある場合

証拠隠滅などを防ぐため,弁護士以外との面会を禁じられることがあります。これを「接見禁止」処分と言います。
接見禁止の場合,弁護士しか被疑者の方と会えず,捜査への適切な対応は困難になります。弁護士に委任の上,弁護士とご本人との接見を実施し,早期に適切な対応方針を立てるのが適切でしょう。

⑤否認事件の場合

否認事件では,犯罪事実の立証ができるか,という点が最大の問題になりますが,その判断は非常に専門的な内容となり,弁護士への依頼なく検察と協議をすることは困難です。
事件の内容や否認のポイント,争点の判断基準などについて,弁護士に相談・依頼の上,法的に適切な主張を行うことで,不起訴処分を引き出すことが可能になり得るでしょう。

住居侵入・建造物侵入の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

住居侵入・建造物侵入の事件は,個別の内容によってその後の流れや処分の見通しに幅の生じやすい事件類型です。正しい見通しを持つことができれば,できる限り有益な結果に向けて最善の対応を尽くすことが可能になります。
一方で,見通しを誤り,有効とは言えない対応に終始した場合,取り返しのつかない不利益が生じる可能性も否定できません。
そのため,個別の内容を踏まえて刑事事件に強い弁護士の意見をお聞きになることをお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

横領罪で早く会社と解決するためには?横領事件の悩みとケース別の対応方法を解説

●横領罪はどのような場合に成立するか?

●横領が職場に発覚した場合にはどうすべきか?

●横領事件は逮捕されるか?

●横領事件では実刑判決になるか?

●横領事件は弁護士に依頼すべきか?

●横領事件ではどんな弁護活動が可能か?

●横領事件の示談での注意点は?

といった悩みはありませんか?

このページでは,横領事件の対応に関してお困りの方に向けて,横領事件の流れ横領事件の捜査,刑罰,弁護活動等について詳細に解説します。

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横領罪とは

横領罪とは,他人の物を占有している人が,その物を領得する犯罪です。
典型例は,人から預かっていたお金を自分のために使ってしまう,というケースでしょう。

①横領罪と窃盗罪の区別

横領罪は窃盗罪との区別が問題になりやすいですが,両者の違いは,対象物が他人が占有しているものか,自己の占有するものか,という点にあります。

窃盗罪は,他人が占有しているものを,その他人の了承なく自分の占有に移す犯罪です。例えば万引きは,店舗が占有する商品を勝手に自分の持ち物にしてしまう犯罪というわけですね。
一方の横領罪は,もともと自分が占有をしている物を自分の物(所有)にしてしまう,という犯罪類型です。会社のお金を預かっていた(占有していた)としても,あくまでお金は会社の物であるため,そのお金を自分のために使ってしまうと横領罪になる,というわけですね。

②横領罪の類型

横領罪には,大きく分けて以下の3つの類型があります。

単純横領罪(刑法第252条第1項)自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
業務上横領罪(刑法第253条)業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
占有離脱物横領罪(刑法第254条)遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

横領事件として最も問題になりやすいのは,「業務上横領罪」でしょう。
経理担当者が勤務先の金銭を横領した場合などが代表的です。
一方,単純横領罪が成立するのは,業務の伴わない場合であり,友人から預かっていた金銭を使い込むようなケースが該当します。

また,占有離脱物横領罪は,横領罪ではありますが置き引きなどの窃盗類似の事例で問題になりやすいところです。

ポイント
窃盗と横領の区別は,対象物がどちらの占有していたものか,という点が基準
勤務先に対する業務上横領事件が問題になりやすい

横領事件が職場に発覚した場合の対応

職場での業務上横領事件では,職場に発覚する形で問題が明らかになる場合が大多数です。
そして,それが刑事事件化するのは,職場が警察等の捜査機関に捜査を求めた場合,ということになります。
そのため,横領事件が職場に発覚した場合,職場に対してどのような対応を取るのかは,極めて重要な事項になってきます。

①金銭賠償

横領事件が職場に発覚した場合,横領をしてしまった従業員のすべき対応は,何よりも金銭賠償に尽きます。

会社としては,横領行為によって財産が失われてしまったわけですから,その財産的損害がどのように補填できるのか,又はできないのか,という点が最大の懸案事項ということになります。
例えば,預貯金から一定の支払がなされた上で,何らかの仕事を続けるなどして継続的な返済を行うことにより,損害額全体の補填が見込まれるのであれば,会社にとってはそれが最も有益な結論であると理解されることがほとんどです。逆に,刑事事件としたために得られたはずの返済が得られなくなってしまうとなると,会社には不利益が残ってしまいます。
そのため,まずは具体的な返済方法や計画を具体的に示すよう努め,会社にとって刑事事件化が不合理な選択肢であると理解してもらうことが非常に重要になるでしょう。

②事実関係の確認への協力

金銭賠償を行う前提として,横領行為によって会社にはどれだけの損害が生じたのか,という事実関係の確認が不可欠です。

この点,業務上横領事件が生じてしまっている状況では,横領をした従業員のみが把握している財産の流れも多く,全体像を明らかにするためには従業員側の協力が必要となるところです。
会社としても,事件の詳細を確認することは非常に煩雑な作業を要するため,従業員の協力によって円滑化すれば,その後の話し合いに対してもプラスの材料として考慮することが多くなるでしょう。

逆に,自分の行為とは関係なく生じている被害についてまで横領を疑われる可能性もあります。業務上横領事件の起きる会社の財産管理は十分でないことも多く,事件の発覚後になって様々な金銭の不足が明らかになることも少なくありませんが,その全てが一人の従業員の行為によるものと誤認される場合もあるのです。
そのような疑いをかけられたときには,自身の行為によるものとそうでないものを区別の上,自身の行為による損害について可能な限り具体的かつ詳細な説明を尽くすなど,事実確認への協力に努めるのが適切でしょう

③適切な対応をしても刑事事件化が避けられないケース

金銭賠償や調査協力など,できる限りの対応を尽くしても,なお刑事事件化が避けられない場合はあり得ます。

例えば,損害の規模があまりに大きい場合,従業員に全額の賠償ができないことが明らかであるため,最初から刑事事件として処分してもらうことを会社が求める場合が考えられます。
また,会社がコンプライアンス(法令順守)に厳しく,法令違反については厳格な対応を取る方針である場合には,事件の大小にかかわらず刑事事件化を求めることもあり得ます。

刑事事件とすることを求めるかどうかは,専ら被害者である会社側の判断になり,刑事事件化されたことに何らかの不服を申し立てる余地はありません。それだけに,できる限り会社の温情的な判断を引き出すような真摯な対応が望ましいことは間違いないでしょう。

ポイント
職場に発覚した場合は,可能な限りの賠償と調査協力を
コンプライアンスに厳しい勤務先の場合は,それでも厳格な方針となる場合あり

横領事件で逮捕される場合

横領事件では,逮捕されるケース,されないケースいずれも考えられるところです。
逮捕されやすい場合としては,以下のようなものが挙げられます。

①事件の規模が大きい

横領事件は金額的な規模が様々ですが,被害金額の規模が大きければ大きいほど,逮捕の可能性は高くなる傾向にあります。
金額の規模が大きいケースは,最終的な処罰も実刑判決などの重大な刑罰になりやすいため,逃亡や証拠隠滅の可能性が類型的に高く,逮捕の必要性も高いと判断されやすいためです。

②組織的事件である

複数の共犯者が関与する組織的事件では,共犯者間のやり取りが秘密裏に行われている場合が多く,それらの証拠は容易に隠滅される可能性が高いため,逮捕の可能性も比例して高くなりやすいです。
また,共犯者間での口裏合わせを防ぐため,逮捕に引き続く勾留の段階では「接見禁止」という処分がなされるケースも多く見られます。接見禁止の場合,弁護士以外との面会ができず,共犯者との面会を通じた証拠隠滅が防止されます。

③否認事件である

否認事件は,認め事件に比べて証拠隠滅の恐れが大きく,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。
特に,客観的証拠を踏まえれば犯罪事実の存在が明らかである等,否認の内容が不合理であると判断される場合には,より逮捕の可能性は上昇しやすいでしょう。

横領事件の刑事処分

横領事件は,窃盗類似の事件である占有離脱物横領罪を除き,罰金の処罰規定がありません。
つまり,懲役刑より軽微な罰金刑が規定されておらず,罰金刑にとどまる余地がないため,起訴されるときにはすべて懲役刑の対象となります。

もっとも,懲役刑の対象になった場合の全てが実刑判決(直ちに刑務所に服役することを命じる判決)となるわけではありません。執行猶予となれば,刑務所に入る必要はなく,円滑に社会生活に復帰することが可能です。

横領事件の場合,実刑判決となるか執行猶予付きの判決となるかは,損害額の大きさをベースに判断されるのが通常です。損害額の大きな事件では,規模により概ね3~5年程度の実刑判決の対象となることも考えられるでしょう。
一方,事件の規模が大きい場合でも,その損害が後から金銭賠償等により補填されている場合には,非常に重要な事情として斟酌されます。損害が大きなケースであっても,その全部又は大部分が賠償されている場合には,損害が補填されたことを踏まえて執行猶予判決となることも数多く見られるところです。

横領事件の刑事処分においては,損害額とその補填の二つが重要な判断要素になりやすいことを把握しておくとよいでしょう。

ポイント
逮捕の可能性は事件の規模や悪質さによる
刑事処分の基準は損害額の大きさと補填の程度

横領事件の弁護活動

①認め事件の場合

認めの横領事件については,少しでも早く金銭賠償(示談)の試みを行うのが極めて重要になるでしょう。
もっとも,例えば会社での業務上横領事件において,従業員本人が会社と直接金銭賠償の協議を行うのは,現実的には困難なことが非常に多いです。立場に大きな違いがある上,直ちに全額の賠償ができない限り,詳細な交渉にならざるを得ないことから,示談交渉は弁護士への委任が適切でしょう。
弁護士に委任すれば,有力な交渉方法・内容について案内を受けられるとともに,会社との間で理性的な,前向きな交渉を行うことが可能になります。

②否認事件の場合

否認事件では,犯罪事実の有無が極めて重要なポイントになります。犯罪事実の立証ができなければ不起訴となり,犯罪事実の立証が可能と判断されれば起訴される可能性が高まります。
この点横領事件における否認のケースとしては,本当に犯人であるかという点や,何らかの犯人であったとしてもその特定の事件を犯した犯人だと立証できているか,という点が問題になりやすいです。特に,幅のある期間の中で何らかの横領行為がなされたはずである,という疑いの場合には,その個別の横領行為が立証できているのか問題になることが少なくありません。

横領事件で示談を試みる場合の注意点

横領事件で生じやすい示談交渉時の問題として,被害金額の認識に相違が生じやすい,ということが挙げられます。
横領事件の生じる状況下では,被害者が自身の財産を詳細に把握していない場合が多く,どれだけの被害があったかを裏付ける証拠に乏しいことが少なくありません。その場合,被害者としては,本来あったはずの財産額と現実に残っている財産額の差額を被害額とみなすことが見込まれますが,その差額の全てが加害者側の横領行為によって生じたとは限りません。実際,別の原因(財産管理の不十分さなど)で使途不明金などが生じている場合も多く見られます。
そのため,心当たりのない金額も含めて被害者側から請求されることは少なくないでしょう。

もっとも,示談交渉の局面においては,被害金額の認識に相違が生じやすいことを事前に想定した上で,実際に相違があった場合にはできる限り被害者側の認識に寄り添った形での解決を目指すのが現実的と思われます。被害者の立場からすれば,損害額を争っている加害者との間で示談しようとは考えにくいためですね。
このときは,「実際の被害金額は異なるが,示談の限りであればご主張の金額を支払う」というスタンスである旨を表明することで,被害者側にとっても,「示談の方がより大きな損害の回復が見込める」という示談のメリットが生まれます。示談交渉を円滑に進めるためには非常に大切な発想になりやすいでしょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

横領事件は,被害者側への対応が極めて重要になりやすい事件類型です。
特に,被害者側との間でどのような金銭面の事後対応を尽くしたのか,という点は,処分の重さに直接影響することが非常に多いと言うことができます。
もっとも,その対応をご自身で行うのは,立場上も容易ではないため,対応に精通した弁護士への委任が有力でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

商標法違反とは?刑事処罰の内容や弁護士に相談するメリットなどを解説

「自分のビジネス名が他社と被っているかもしれない」
「商標法違反ってどこからがアウトなの?知らずに使ってたらどうなるの?」

そんな不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

商標法違反は、たとえ悪意がなくても、他者の登録商標を無断で使用していれば違反と判断される可能性があります。

最悪の場合、民事上の損害賠償だけでなく刑事罰を受けるケースもあるため、早めの確認と対策が必要です。

本記事では、商標法違反の定義や商標法違反で刑事事件になるとどうなるのか、刑事事件化する流れなどを詳しく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

商標法違反とは

①商標法違反の意味

商標法違反は、他人の商標権を侵害した場合に成立する犯罪です。

商標というのは、事業者が、自身の取り扱う商品やサービスを他社のものと区別するために用いる目印となるものです。簡単に言うと、企業ロゴのことを指すのがほとんどでしょう。
商標は、その企業の商品が持つブランドイメージの象徴であり、商品を見た人は、商品中の商標を基準に商品への信頼を持つでしょう。ブランド品のバッグや財布などはその代表例です。

商標は、特許庁に申請して商標登録をすることで、排他的に(他人に用いられることなく)使用することができます。商標登録によって、自分たちの築き上げたブランドイメージにタダ乗りされないよう予防しているわけですね。

商標法違反というのは、そのように他人がブランドイメージを作った企業ロゴを、勝手に自分のものとして利用する行為を指します。なお、厳密には、ロゴなどの文字列のみでなく、図形や模様、記号、色彩やパッケージの形状なども商標登録することが可能です。

②商標法違反の具体的行為

商標法違反となる具体的な行為には、以下のようなものが挙げられます。

偽造品の作成・販売企業ロゴを模倣したニセ物を作成・販売する行為
類似商標の使用他の商標に似せて作成した商標を使用する行為
同一商標の無断使用商標権者の許諾を得ることなく、その商標を使用する行為

近年では、ネット上で広く物品の販売ができるようになった影響もあり、商標を無断使用した商品や類似商標を使用した商品をネット上で販売する事件が増加傾向にあります。
また、海外で類似商標を使用した安価な商品を購入し、それを国内で転売する行為が問題になるケースも少なくありません。

ポイント
商標法違反は,他人の商標(ロゴなど)を無断利用する行為

商標法違反で科される刑事処罰

商標法違反の罰則

商標法違反の基本的な罰則は、「10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金又はその併科」とされています。
罰金額の上限が非常に高額であること、罰金刑と拘禁刑の併科が可能であることが大きな特徴です。

また、商標権行為の準備行為に対しては、「5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科」の罰則が科せられます。

加えて、商標法違反が法人の業務として行われた場合には、行為をした個人に科される刑罰のほか、法人にも3億円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
なお、個人と法人の両方を処罰することのできる定めを、両罰規定といいます。

商標法違反の刑罰は、罰金刑の高い上限額や両罰規定などによって、大きな金銭的負担を内容とするものになっています。

参照:商標法 e-Gov法令検索

商標法違反の一般的な刑事処分

商標法違反は、規模の限定的な個人の事件であれば、罰金刑の対象となることが多く見られます。他から購入した偽造品や類似商標の商品を販売した、という一般的な商標法違反事件であれば、30~50万円ほどの罰金刑が一つの目安になるでしょう。

もっとも、余罪が多い場合、共犯者が多く計画性の高い場合、犯罪による収益の規模が大きな場合など、より刑罰が重くなるケースも少なくありません。特に、法人を設立し、事業として行っているような場合だと、代表者や実行した者個人への処罰に加え、法人にも多額の罰金が科せられることにより、トータルの金銭制裁が非常に大きな金額となることも考えられます。

商標法違反で刑事事件になるとどうなる?

商標法違反は民事上の損害賠償請求だけにとどまらず、悪質な場合には刑事事件として扱われる可能性があります。刑事事件になる流れは、主に以下の通りです。

  • 家宅捜索が行われる
  • 逮捕される
  • 警察で取り調べされる
  • 執行猶予がつくか実刑判決が下される

詳しく解説します。

家宅捜索が行われる

商標法違反が疑われると、捜査機関は証拠収集のために家宅捜索を行うことがあります。

これは刑事事件における初期段階の重要な措置であり、裁判所の発行する捜索差押許可状に基づいて行われます。

捜索対象となるのは、自宅、会社の事務所、倉庫、パソコンやスマートフォンなど、違反行為に関係する可能性があるあらゆる場所です。

捜索の際には、違法な商標を使用した製品や契約書類、メールの履歴などが押収されることが多く、ここで集められた証拠が後の取り調べや裁判に大きく影響します。

また、捜索が行われるタイミングは早朝であることも多く、精神的な動揺や社会的信用への打撃は計り知れません。

捜査対象となった時点で、既に重大な疑いがかけられていると認識する必要があります。

逮捕される

商標法違反が悪質かつ継続的であると判断された場合、刑事事件として被疑者が逮捕されることがあります。

逮捕の要件としては、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると捜査機関が判断した場合です。

逮捕された場合、最大で72時間は警察に拘束され、その後、検察官による勾留請求が通れば、さらに10日から最大20日間拘束が続きます。

この期間、被疑者は外部との連絡が制限されることがあり、企業経営者や事業主であれば、業務への支障が出ることは避けられません。

さらに、報道等により社会的信用が失われ、取引先や顧客からの信頼を失うリスクも高まります。

商標法違反が刑事罰の対象であるという認識が甘い場合、こうした深刻な展開に至ることがあるのです。

商標法違反の場合、決して逮捕されるケースの方が多いとは思われませんが、体感的には2~3割程度のケースで逮捕される印象です。

警察で取り調べされる

逮捕後、もしくは任意の事情聴取として、警察による取り調べが行われます。

取り調べでは、なぜその商標を使用したのか、相手企業の存在を認識していたのか、類似性についてどう認識していたのかなど、詳細な経緯が追及されます。

特に重要なのは、違反行為に対して「故意」があったかどうかであり、商標法における刑事責任を問う際の判断基準です。

捜査官は、取り調べを通じて自白を得ることを重視しますが、ここでの供述内容は後の裁判にも大きな影響を与えます。

不適切な発言や曖昧な説明は不利な判断材料となり得るため、弁護士を通じた適切な対応が求められます。

取り調べの過程で否認を続ける場合でも、押収された証拠と照合されることで矛盾点が浮き彫りになることもあるため、対応には慎重さが必要です。

執行猶予がつくか実刑判決が下される

商標法違反で刑事裁判にかけられた場合、有罪が確定すれば「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」、もしくはその両方が科される可能性があります。

初犯で悪質性が低いと判断された場合には、執行猶予付きの判決が下されることが多いですが、組織的な犯行や再犯、被害金額が大きい場合などは、実刑判決となる可能性も十分にあります。

執行猶予がついたとしても前科は残り、社会的信用の回復は容易ではありません。

また、法人が関与していた場合には、法人自体にも罰金刑が科され、企業活動に甚大な影響を及ぼします。

商標法違反は「知らなかった」では済まされず、たとえ善意であっても厳しい責任が問われる可能性があるため、事前のリスク管理が必要です。

前科がない初犯のケースであれば、多くは執行猶予判決になりやすいでしょう。適切な対応を尽くすことで、経験的には8割程度のケースで執行猶予判決になる印象です。

商標法違反が刑事事件化する流れ

商標法違反が刑事事件化するケース

商標法違反が刑事事件となる場合には、以下のようなケースがあります。

①商品の購入者が警察に通報する
購入した商品が商標を模倣した偽造品であった場合、その購入者が警察に通報する方法で捜査が始まるケースです。
このケースでは、販売者が正規品として販売していることが大多数であるため、正規品であるか模倣品であるか、正規品でなかった場合にその認識が販売者にあったかなどが問題になりやすいです。

②侵害行為を知った商標権者が警察に捜査を求める
侵害行為が生じている事実を知った商標権者が、自らの被害を警察に申告した場合です。
権利者地震の被害深刻であるため、犯罪事実が明らかに存在しない場合でない限りは被疑者に対する十分な捜査が行われやすい傾向にあります。、

③サイバーパトロール
警察によるサイバーパトロール中に、商標法違反の事実を発見したケースです。
いわゆるネットフリマ等で偽造品や類似商標が確認された場合、これをきっかけに捜査が開始され、刑事事件化する場合があります。

④内部告発
主に法人として商標法違反の行為がなされている場合に、その内部事情を把握する人が警察等の捜査機関に告発するケースです。

ポイント
商標法違反の刑罰は両罰規定の存在が特徴
捜査の主なきっかけは購入者の通報,商標権者の通報,サイバーパトロール,内部告発

商標法違反の捜査

商標法違反における捜査の方法としては、捜索が先に行われる場合が多く見られます。電話連絡や呼び出しなどされることなく、自宅や事業所などに立ち入り、保管されている商品などを強制的に差し押さえる捜査手法です。

商標法違反の事件は、偽造品や類似商標の用いられた商品などが被疑者の管理下にある場合、捜索によってその存在を証拠かすることが極めて強力な犯罪の証拠となります。また、捜査の当初段階で把握できる違反行為には限りがあり、その全体像を把握することは容易でないため、実際の商品や取引履歴・内容を網羅的に確認することで、証拠隠滅の防止や余罪の発見を可能にする意味もあります。
このような捜索・差し押さえは、事前に被疑者へ通知していたのでは証拠隠滅の機会を与えることになりかねないため、被疑者側への通知を行うことなく、証拠隠滅の猶予を与えない方法で強制的に行うのが一般的です。

商標法違反事件で弁護士に依頼するメリット

①適切な取り調べ対応のため

刑事事件の捜査では取調べが不可欠です。特に,被疑者への取調べは捜査の中核であって,被疑者からどのような話が引き出せるかによってその後の捜査が決定づけられる事件も少なくありません。

逆に,被疑者の立場にある場合,取調べにどのような対応を取るのが最も有益であるのかを把握していることは非常に重要です。自分が何を話すか,どのように話すかによって,その後の捜査や処分が決定づけられる可能性もあるため,取調べ対応の方法・内容は十分に検討する必要があるでしょう。
特に,商標法違反の場合には,犯罪の故意の有無が問題になるケース,余罪の捜査が生じるケースなど,取り調べへの対応が結果を左右する局面は類型的に多くなりやすいところです。

商標法違反事件に対応する場合には,取調べ対応への重要性を踏まえ,弁護士から適切なサポートを受けるようにしましょう。

②早期釈放のため

商標法違反の事件で逮捕された場合,早期釈放を目指すことは有力な選択肢です。短い拘束期間のみで釈放されることができれば,日常生活への悪影響は最小限に抑えることが可能になります。

もっとも,その具体的な動きは,弁護士以外には困難なものです。接見で必要な話し合いを行ったり,ご家族と連絡を取り合ったり,捜査機関や裁判所に必要なアクションを尽くしたりと,早期釈放に向けて弁護士でしかできないことは多岐に渡ります。
また,商標法違反の事件では,そもそも早期釈放が困難な事件も少なくないため,弁護士に判断を仰ぐなどして,釈放に関する見通しを正しく持つことも不可欠です。

③刑事処分の軽減のため

商標法違反の場合,認め事件であれば,刑事処分を少しでも軽減するための試みを行うことが適切です。漫然と対応していては刑罰を防ぐことが難しい事件類型であり,場合によっては重大な刑罰の対象ともなりかねないため,処分の軽減に向けた弁護活動を依頼することは非常に重要となるでしょう。

この点,刑事処分の軽減のため,具体的にどのような試みを行うのかは,個別の事件を踏まえた専門的な判断が必要となります。また,弁護活動によってどのような刑事処分が見込まれるのか,という見通しを持つことも不可欠です。
これらの判断や見通しは,弁護士に委ねることが最も適切であるため,処分軽減を目指す場合には弁護士選びが必要と言えます。

④家族や周囲との連携のため

身柄事件の場合,逮捕勾留されたご本人は,自分で外部と連絡を取ることができません。電話を携帯することも認められないため,連絡を取るための手段は以下のような方法に限られます。

逮捕勾留中に外部と連絡を取る手段

1.手紙の送受
→数日~1週間ほどのタイムラグが避けられない

2.(一般)面会
→時間制限が厳しい。接見禁止の場合は面会自体ができない

3.弁護士の接見
→時間的制限なくコミュニケーションが可能

手紙の送受は現実的でなく,面会の時間制限の中で必要な連絡をすべて取ることも難しいため,ご本人と周囲との連絡には弁護士の接見を活用することが不可欠になりやすいでしょう。
身柄事件で必要な連絡を取り合うためには,弁護士への依頼が適切です。

弁護士に依頼するタイミング

①自首を試みるとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。
そのため,自首は,事件の発覚や犯人の特定に時間を要しやすいケースで,特にその時間的な猶予が生じやすいものです。

この点,商標法違反の事件は,違反行為が発覚するまでに時間がかかりやすい,という点に大きな特徴があります。多くの場合,商標法違反に当たる商品の販売などがきっかけになりやすいですが,商品が販売されたからと言って,直ちに違反行為が発覚するわけではないためです。
その意味では,商標法違反の事件は自首の検討が有力になりやすい事件類型と言えます。

もっとも,本当に自首をすべきかどうか,自首をする場合にどのような手順・方法で行うか,という点は,当事者自身での判断が困難なポイントです。自首を試みようと考えるときには,適切な弁護士選びの上で,弁護士とともに検討・行動をするのが適切でしょう。
そのため,自首を試みたいと考えるときは,弁護士選びのタイミングということができます。

ポイント
商標法違反の事件は,自首が有力になりやすい
自首すべきかの判断,自首する場合の方法は,弁護士に委ねることが適切

②捜索を受けたとき

商標法違反の場合,被疑者に対する捜査は捜索から始まることが非常に多く見られます。商標法違反の証拠となる商品が保管されている可能性が高いため,家宅や事業所の捜索を行い,商品の差押えを行うことが優先されやすいのです。
そして,捜索を受けて商品の差し押さえがなされた後,取り調べなどの本格的な捜査が始まることとなります。

そのため,商標法違反の事件で捜索を受けた際には,その後の捜査に対する備えを検討したり,刑事処分を少しでも軽減するための行動に着手したりすることが望ましいと言えます。これらの動きは,弁護士なしでは現実的に困難であるため,弁護士選びを行うべきタイミングということができるでしょう。

ポイント
商標法違反に対する捜査は,捜索から始まるケースが多い
捜索後の捜査に対応するため,弁護士選びを行うべきタイミング

③呼び出しを受けたとき

商標法違反の事件で取り調べを行う場合には,逮捕せず呼び出す方法が用いられるケースも多数見られます。特に,あらかじめ捜索差押えをしている,証拠となる商品が確保できているなど,今後に証拠隠滅される可能性が低いと言える状況であれば,逮捕せず呼び出す形になりやすいでしょう。
そのため,呼び出しを受けたときには,その後に行われる取調べへの対応を事前に検討しておく必要があります。商標法違反の場合には,対象となる行為や証拠が一つしかないというケースはほとんどないため,複数の出来事について,それぞれどのような対応をすべきかを想定することが非常に重要です。

しかしながら,出頭後の取り調べに対してどのように対応するのが適切かを自分の力で整理するのは容易でありません。取り調べを受けた経験のある人でなければ,取り調べがどのように行われるかを想像することも困難でしょう。
そこで,呼び出しを受けて取り調べの予定が明らかになったタイミングで,弁護士を選ぶことが有力な選択肢になります。適切な弁護士選びができれば,出頭時の対応が万全になるほか,その後の弁護活動も充実したものになるでしょう。

ポイント
逮捕せず取調べ目的で呼び出す方法が用いられる場合も多数ある
取り調べに備えるためには,取調べに精通した弁護士選びが適切

④逮捕されたとき

商標法違反事件は,逮捕をされる可能性も十分に考えられる事件類型です。特に,違反行為の数や期間が際立っている場合,違反行為による損害が非常に大きい場合,組織的,計画的な事件である場合など,捜査に慎重を期す必要が大きい事情があるケースでは,被疑者を逮捕勾留の上で捜査することが多くなります。

そのため,逮捕された商標法違反事件では,その後に捜査される内容が多くなりやすく,対応を要するポイントも多くなるのが通常です。そのすべてに適切な判断をすることは非常に難しく,弁護士の助言やサポートを受けながら対応することが望ましいでしょう。
逮捕されてしまったケースでは,家族をはじめとする周囲の人ができるだけ早期に弁護士選びを進め,その後の不利益を最小限に抑えることを目指すのが適切です。

ポイント
逮捕された場合は,特に対応を要する点が多くなりやすい
適切な対応を判断するため,弁護士選びが望ましいタイミング

商標法違反事件の弁護士を選ぶ基準

①商標法違反の弁護に精通しているか

商標法違反の事件は,弁護活動に他の事件類型とは異なる特徴が複数あります。刑事事件の代表的な弁護活動である示談一つを取っても,示談の相手は誰なのか,誰との間であれば示談が可能か,誰と示談をすると処分結果にどのような影響があるか,といった点を検討しなければなりませんが,これは商標法違反の特徴と言えるでしょう。

商標法違反の弁護士を選ぶ際には,商標法違反事件の弁護活動について十分な知識を持っているか,事件類型の特色に精通しているか,といった点を重要な判断基準とすることをお勧めします。

②詳細な聴き取りを円滑に行ってくれるか

商標法違反とされる具体的な事件としては,商標権を侵害した商品を入手し,販売したというケースが非常に多く見られますが,商品の入手方法,販売方法は人により様々です。また,商品の数や取引の回数,得られた利益の大きさなど,事件の全体像を把握しなければ,適切な見通しを持つことも困難です。
そのため,商標法違反事件の弁護活動を行う場合には,事件の詳細な内容をはじめ,経緯などの周辺事情を適切に聴き取ることが不可欠です。

弁護士選びに際しては,弁護士が事件の把握に必要な情報を,円滑に聴き取ってくれるかという点を基準の一つとするのが適切でしょう。聴き取りの円滑さは,商標法違反の事件への経験値を推し量る判断材料にもなります。

③具体的な対応方針を説明してくれるか

商標法違反の場合,弁護活動の方針にいくつかの選択肢があるケースも少なくありません。特に,余罪を含めた複数の事件が問題になりやすいことから,一つの事件だけでなく複数の事件それぞれについて方針を検討する必要があり,それだけに選択肢も多くなりやすい傾向にあります。
もっとも,どの選択肢が客観的に正しいかは不明確であって,結果が出た後でも正しい選択だったかは分からない,というケースは多く見られます。その中で,どのような理由でどのような方針を取っていくのか,という判断が,商標法違反の事件を弁護する弁護士の大きな役割と言えるでしょう。

そのため,商標法違反の弁護士選びに際しては,弁護士が今後の対応方針を詳細に判断してくれるか,その方針を取る理由やメリットは何か,といった点について,十分な説明を受けるようにしましょう。その説明内容を踏まえて,弁護士選びを行うことが有力です。

④弁護士費用の見通しは明確か

商標法違反の事件は,逮捕などの身柄拘束を受けるかどうか,捜査にどの程度の期間を要するか,どのような動きを要するか,といった点を事前に判断することが容易でありません。そして,期間が長く,必要な活動が多くなれば,事前の想定よりも弁護士費用が高くなる可能性はあり得ます。

もっとも,想定される弁護士費用が分からない,という状態で弁護士選びをするわけにはいきません。そのため,弁護士費用については,どのような場合にどの程度の費用となりやすいか,といった形で見通しを把握できることが望ましいでしょう。
裏を返せば,依頼者目線を踏まえてできる限り費用の見通しを明確にしてくれるかどうか,という点は,弁護士選びの重要な判断基準の一つと言えます。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

商標法違反の事件は,その内容や捜査に至った経緯などによって,有効な対応策が変わってくることのある事件類型です。
そのため,商標法違反に精通した弁護士への相談や依頼ができなかった場合,有益な対処をする機会を逃してしまう可能性も高いと言えます。
商標法違反の事件でお困りの場合は,弁護士へのご相談をお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

薬物の規制にはどんな種類がある?大麻の使用は違法?捜査への対応法は?薬物事件を知りたい人への完全ガイド

●どんな薬物が規制の対象になっているのか?

●大麻は犯罪にならないと聞いたけど本当か?

●薬物事件は逮捕されるのか?

●薬物事件は起訴されるのか?

●薬物事件の刑罰はどのようなものか?

●薬物事件の再犯の場合,実刑は避けられないか?

●薬物事件は弁護士に依頼すべきか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,薬物事件についてお困りの方に向けて,薬物事件の取り締まり内容争点になりやすい事項刑罰の軽減を目指す弁護活動などを解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

薬物規制の類型

薬物に対する規制は、様々な薬物について様々な法律でなされています。
その主な類型は以下の通りです。

①覚せい剤取締法
②大麻取締法
③麻薬及び向精神薬取締法
④あへん法
⑤麻薬特例法
⑥毒物及び劇物取締法
⑦医薬品医療機器等法

参照:違法薬物について

①覚せい剤取締法

規制の対象となる薬物は覚せい剤です。
覚せい剤取締法では、主に覚せい剤の使用・所持・譲渡・製造・輸入・輸出を禁止しています。
覚せい剤は、規制される薬物の中でも依存性や幻覚作用の強い薬物で、その危険性が大きいことから、違反行為に対する刑罰は厳罰化されていることに特徴があります。

参照:覚醒剤取締法 e-Gov法令検索

②大麻取締法

大麻(主に大麻草の樹液に含まれる成分)を規制対象とする法律です。
大麻の栽培・製造・所持・譲渡・輸入・輸出を禁止しています。

なお、大麻については、使用行為が処罰の対象とされていませんでしたが、2023年12月6日に成立した法改正により、使用行為も処罰対象とされました。

参照:大麻取締法 e-Gov法令検索

③麻薬及び向精神薬取締法

ヘロイン、コカイン、モルヒネなど、麻薬及び向精神薬として指定された薬物を規制対象とする法律です。
主に麻薬及び向精神薬の製造・所持・譲渡・輸入・輸出を禁止しています。

なお、使用が新たに処罰対象とされる大麻は、法的には麻薬に位置づけられるという方法で使用が禁止されることとなります。
※2024年12月12日施行(引用:大麻の所持・譲渡、使用、栽培は禁止!法改正の内容も紹介します

参照:麻薬及び向精神薬取締法 e-Gov法令検索

④あへん法

あへんとは、ケシの実から採取される果汁を乾燥させ凝固させた物質です。
あへん法は、このあへんについて栽培・製造・所持・譲渡・輸入・輸出を禁止しています。

参照:あへん法 e-Gov法令検索

⑤麻薬特例法

正式名称は、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」といいます。

①覚せい剤、②大麻、③麻薬及び向精神薬、④あへんのそれぞれについて、
組織的犯罪や国際的犯罪などを特に厳罰とするため設けられた特例法です。

参照:国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律 e-Gov法令検索

⑥毒物及び劇物取締法

人の生命や健康に著しい被害を与える恐れのある毒物や劇物について、その製造、販売、譲渡、使用、保管等に厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定める法律です。
また、毒劇物の容器にはその旨表示しなければならず、毒劇物の保管を誤って漏洩させる行為も刑罰の対象とされています。

毒物や劇物の例
毒物: 青酸カリウム、シアン化ナトリウム、ヒ素、ストリキニーネ、ニコチンなど
劇物: 塩酸、硫酸、硝酸、苛性ソーダ、亜鉛メチルなど

参照:毒物及び劇物取締法 e-Gov法令検索

⑦医薬品医療機器等法

正式名称は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。

医薬品、医薬部外品、化粧品等、安全性や有効性が失われてはならない「医薬品等」について、その無許可販売・営業や、商品の誇大広告などを禁止する法律です。
脱法ドラッグと呼ばれる医薬品の不正な所持や譲渡を禁じる法律でもあります。

参照:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 e-Gov法令検索

⑧まとめ

①覚せい剤取締法対象薬物:覚せい剤
②大麻取締法対象薬物:大麻
③麻薬及び向精神薬取締法対象薬物:麻薬(コカイン・ヘロインなど)・向精神薬
④あへん法対象薬物:あへん
⑤麻薬特例法①~④の組織的犯罪や国際的犯罪を厳罰化
⑥毒物及び劇物取締法毒物や劇物に関する製造・販売・保管などのルール
⑦医薬品医療機器等法医薬品等の無許可販売・誇大広告などを禁止

大麻に対する規制

①従来の規制内容

従来、大麻については、その使用が禁止されていませんでした。
これは、覚せい剤や麻薬及び向精神薬といった他の薬物とは異なる大麻の特徴であったということができます。

②大麻の使用が罪でなかった経緯

大麻取締法に使用の罪がなかった経緯は、必ずしも明らかにされてはいませんが、以下のような理由が指摘されています。

・法律制定当時、大麻草が国内で乱用されている状況はなかった
・大麻草の栽培を、農産物の一つとして許可制にすれば不正取引は防げると思われていた
・大麻草の栽培農家が、作業中に大麻の成分を吸引したケースが犯罪にならないよう配慮した

③大麻使用罪の新設

2023年12月6日の法改正により、大麻を麻薬に含める形で、大麻の使用が犯罪されました。大麻を他の麻薬と同様に扱うことになるため、簡単に言えば、大麻の特別扱いがなくなるということです。

これは、大麻由来成分を用いた薬物の使用が横行していることを踏まえ、大麻由来成分の不正な使用を麻薬の不正な使用と位置付けることにしたものと言われています。

薬物事件の刑罰

薬物事件の刑罰は、対象となる薬物の危険性の大きさや違反行為の内容によって異なります。
代表的なものとして、薬物ごとの所持に対する刑罰は以下の通りです。

①覚せい剤    10年以下の拘禁刑
②ヘロイン(麻薬)10年以下の拘禁刑
③コカイン(麻薬)7年以下の拘禁刑
④あへん     7年以下の拘禁刑
⑤大麻      5年以下の拘禁刑
⑥向精神薬    3年以下の拘禁刑

覚せい剤やヘロインなど、効果や依存性の強い薬物であるほど、違反行為の罰則は重く定められています。
また、営利目的である場合には、刑罰はさらに重くなります。

薬物事件と逮捕

薬物事件の捜査は、基本的に逮捕を伴う方法で行われます。
逮捕される方が通常である、と理解しても間違いかもしれません。

薬物事件の場合、違反行為が何であっても、一人だけの力でその違反行為ができるというケースは非常に少ないものです。所持であれば、販売者(いわゆる売人)から購入していることが大半ですし、譲渡の事件であれば、その性質上譲り渡した人と譲り受けた人が存在します。
そのため、薬物事件の捜査は複数名の関与を想定して行いますが、薬物に関するやり取りが秘密裏に行われやすいこと、重大な刑罰の対象となりやすい事件類型であることなどを踏まえ、証拠隠滅を防ぐ目的で逮捕されることが多くなるのです。

薬物事件の起訴

①基本的な運用

薬物事件は、犯罪事実の存在が明らかである場合には、起訴され公判(公開の裁判)の対象となることが一般的です。
他の軽微な事件類型の場合には、犯罪事実の存在が明らかであっても、検察官に大目に見てもらうことができれば、不起訴(起訴猶予)になる余地もあり得ますが、薬物事件の場合、起訴猶予になることは非常に困難であり、ほとんど例が見られないものと理解するのが適切でしょう。

②不起訴になる場合

薬物事件で不起訴になるケースは、犯罪事実の存在が立証できるか不明確な場合がほとんどです。不起訴の理由としては、「嫌疑なし」又は「嫌疑不十分」ということになります。
嫌疑不十分として不起訴になる場合の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

量が極めて少ない

袋の中に残りカスのようなものが少しだけ入っていた場合など、所持量が極めて少ない場合には、それが薬物の所持と評価することができるのかが不明確であるため、嫌疑不十分となることがあり得ます。
また、極めて少量の所持は、自分の意思で所持していたのか不意に混入しただけなのかの区別も難しく、その点でも薬物所持の立証が困難になりやすいです。

持ち主がだれか分からない

共同利用していた個室などの中で薬物が発見された場合、誰かが薬物を所持していることが明らかでも、具体的に誰が持ち主か分からないことがあります。このケースでは、誰の物であるか分からない以上、誰のものであるとも立証できないことになり、嫌疑不十分となり得るでしょう。

なお、複数の人が協力して薬物を所持していた場合には、共同所持として協力者全員の犯罪が立証されることがあります。誰の物か分からず不起訴になるのは、協力や意思疎通なく誰かが勝手に所持していたケースに限られることになります。

意図せず荷物の中に薬物が混入した可能性を否定できない

荷物の中に薬物が混入していたものの、それが意図的に携帯していたのか、意図せず荷物の中に混入していたのか分からない場合は、嫌疑不十分になり得ます。例えば、直前に薬物所持者を含む大人数がいる場所で時間を過ごしていた場合、その中で荷物内に薬物が入ってしまっただけであるかもしれず、もしそうであれば当然ながら犯罪にはならないわけです。

もっとも、荷物の中から薬物が見つかった場合のすべてについて、勝手に入っていただけだという主張がまかり通るわけではありません。勝手に入っていた可能性も確かにある、と言えるだけの事情は必要になるでしょう。

尿検査に用いられた液体が本人の尿か分からない

薬物使用は、尿検査の結果を客観的証拠とすることが一般的です。そのため、検査結果のもとになった尿は間違いなく被疑者の出したものであることが必要です。
逆に、尿の採取過程で他の物質が混入した可能性があるなど、尿検査に用いられた液体が本当に本人の尿か分からないと、薬物使用の根拠としては不十分であり、嫌疑不十分となることが考えられます。

ポイント
薬物ごとの刑罰は,対象となる薬物の依存性などにより異なる
薬物事件は逮捕をするケースが多数
処分の基準は,犯罪事実が立証できれば起訴,できなければ不起訴

薬物事件で科せられる処分

薬物事件の刑事処分は、具体的な違反行為によって様々ですが、単純な所持や自己使用といったものであれば、初犯だと執行猶予の対象となることが多いです。
執行猶予とは、懲役刑など、刑務所に収監する刑の執行を一定期間猶予し、その期間内を無事に過ごせば、刑の執行がなくなるというものです。つまり、次はないが今回は刑務所に入れないこととする、という意味合いの処分ということになります。

もっとも、薬物事件の中でも、営利目的で行われたものについては重大な刑罰の対象となりやすく、初犯でも実刑判決となることが多く見られます。実刑判決となった場合、直ちに刑務所に収監されることとなります。

薬物事件の再犯は執行猶予になるか

①薬物事件の再犯における執行猶予の困難さ

薬物事件は、薬物の依存性もあり、類型的に再犯が生じやすい犯罪類型です。
そして、薬物事件の初犯は執行猶予になりやすいことから、再犯は執行猶予前科のある状態での事件ということになります。

この点、執行猶予期間中の再犯は、原則として執行猶予の対象にはなりません。再度の執行猶予という制度もありますが、その対象となるのは稀と言えるでしょう。再度の執行猶予となるのは、徹底した入院治療を前提としたケースの一部など、極めて限定した場合に限られます。

また、執行猶予期間の経過後でも、経過後それほど期間が経っていなければ、同じく実刑判決の対象となります。執行猶予期間の経過後、概ね10年以内の場合、実刑判決が強く懸念される傾向にあるでしょう。

②刑の一部執行猶予制度

そのような薬物の再犯における特徴的な制度に、「刑の一部執行猶予」というものがあります。

刑の一部執行猶予制度とは、その文字通り、刑の全部でなく一部を執行猶予の対象にする、というものです。
実刑判決の一類型ではありますが、刑務所における更生と社会内における更生を併用することで、より適切な再犯防止を目指すための制度と位置付けられています。
具体的な刑の宣告としては、「懲役1年6月、うち6月について3年の執行猶予」といった内容になります。執行猶予のない期間は服役し、執行猶予のついた期間は服役せず社会内での更生を試みる形を取ります。

薬物事件では、この一部執行猶予が広く採用される傾向にあります。
実刑判決の対象として刑務所での服役を強いたとしても、それが薬物依存の解決には直接つながらず、再発防止にとって必ずしも適切ではないと考えられるためです。
そうであれば、一部執行猶予とし、一部を社会内での更生とすることで、薬物依存からの脱却も含めたより適切な方法での再犯防止を実現しようということです。

薬物事件の場合、他の事件類型よりも一部執行猶予の対象となるための要件が緩く、刑の一部執行猶予制度を採用しやすい配慮がなされています。
例えば、薬物事件以外だと、「禁錮以上の刑に処せられたことが」ある人には一部執行猶予とすることができませんが、薬物事件にはその制限はありません。
一方で、薬物事件については、一部執行猶予期間中に保護観察が必須とされており、生活状況を厳格に管理されることとなります。

ポイント
単純所持や自己使用は初犯の場合だと執行猶予が見込まれやすい
再犯は実刑判決が一般的
実刑判決の場合には一部執行猶予が広く用いられている

薬物事件で弁護士に依頼すべき場合

①認め事件の場合

認め事件では、犯罪事実を争うために弁護士に依頼する必要はありませんが、取り扱いや処分の軽減を目指す場合には弁護士に依頼するのが適切です。具体的には、以下のような場合が挙げられます。

・逮捕回避を目指す場合
→捜査機関に犯罪事実が発覚していないが今後発覚が見込まれる、という場合には、自首などの方法で将来の逮捕回避を目指すことが有力です。その際は、弁護士に依頼の上で具体的な方法や方針を検討してもらい、弁護士と共同して実行するのが適切でしょう。

・早期釈放を目指す場合
→逮捕や勾留が防げない場合には、できる限り早期の釈放を目指すことが有力です。
弁護士への依頼により、捜査を早期に終結してもらって勾留期間を短縮したり、起訴後に速やかな保釈の手続を行ったりという手段を通じて、早期釈放を目指すことが可能となります。

・刑罰の軽減を図る場合
→刑事処分の軽減を目指す場合、刑事処分の検討は高度に法的な内容になるため、弁護士に依頼の上、弁護士を通じて対応してもらうことが適切です。また、刑罰の軽減を図るために自分ができることが何か、という点も、あわせて協議することが可能です。

・再度の執行猶予や一部執行猶予を目指す場合
→再度の執行猶予や一部執行猶予といった、原則とは異なる刑事処分を求める場合には、弁護士に依頼の上、弁護士から法的主張・立証を行うことが適切です。
弁護士に依頼した場合、執行猶予が獲得できる見込みも踏まえて、どのような動きを取るべきかを検討してもらうことも可能です。

・再発防止を目指す場合
→再発の生じやすい事件類型であることから、再発を防ぐことも非常に重要となります。
薬物への依存がうかがわれる場合には治療等の医学的な解決を試みるなど、弁護士から適切な再発防止策の案内を受けることはとても有力でしょう。

②否認事件の場合

否認事件では、犯罪事実の存在が立証できるかどうか、ということが極めて大きな問題になります。
薬物事件については、「薬物事件の起訴」の項目で解説した通り、犯罪事実の立証が困難ではないかという問題の生じる類型が一定数あります。それらを踏まえ、どのような方針で否認を貫いていくかは、弁護士による法的判断が適切でしょう。
また、弁護士への委任により、否認の方針が適切かどうかという案内を受けることも可能になります。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

薬物事件は,身柄拘束を伴う捜査が行われやすい類型です。また,他の関係者が想定される事件では,弁護士以外との面会すらできない場合も珍しくありません。
一方で,法的には刑事処罰の対象とできるか難しいケースも多く,望ましい結果を獲得するためには,薬物事件に精通した弁護士の協力を得るのが非常に有力です。

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器物損壊罪は逮捕されるか?器物損壊で警察が動く場合の特徴は?

器物損壊罪は身近なトラブルから発生することも多く、「器物損壊で逮捕されるのか」「警察はどんな場合に動くのか」と不安に感じる方は少なくありません。実際には、被害の状況や被害者の意向によって逮捕や立件の有無が左右されます。本記事では、器物損壊罪の逮捕について、逮捕されるケースとされないケースの違い、さらに警察が動く場合の特徴について分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

器物損壊罪の定義

器物損壊罪とは、他人の物を壊したり、汚したり、機能を低下させたりする行為を処罰する犯罪で、刑法261条に規定されています。
「壊す」というイメージが強いものの、実際には物の価値や使用目的を損なう行為全般が含まれます。たとえば、車に傷をつける、壁に落書きをする、他人の衣服を汚す、スマートフォンを投げ捨てて操作不能にする、といった行為が典型例です。

重要なのは、必ずしも完全に破壊する必要はないという点です。見た目が多少損なわれるだけでも、あるいは機能が一時的に失われるだけでも「損壊」に該当することがあります。裁判例でも、「使用価値の減少」があれば損壊と認められる傾向があります。

また、器物損壊罪は「他人の物」を対象とするため、自分の物を壊しても成立しません。ただし、「共有物」や「会社の備品」など、自分にも関係する物であっても、他人の権利が及ぶ物を損壊すれば本罪が成立する可能性がある点には注意が必要です。

具体的な犯罪の構成要件は、以下の通りです。
「他人の物」を「損壊し、又は傷害」すること
①「他人の物」
所有権などの物権の対象となる物である必要があります。自分の物や、所有者の同意を得て使用している物は該当しません。
②「損壊し、又は傷害」
その物の効用を害する一切の行為をいう、とされています。一般的には、物の形状や性質を変える行為が該当するでしょう。壊す以外にも、曲げる、折る、切断する、汚す、塗るなどが含まれます。

器物損壊罪に該当する行為の具体例としては、以下の者が挙げられます。
・車の窓ガラスを割ったり、タイヤをパンクさせたりする行為
・店の商品を壊したり、看板を壊したりする行為
・パソコンの重要なデータを消去する行為
・鍵穴を詰まらせる行為
・食品を不潔な環境に置く行為

器物損壊罪の刑罰

器物損壊罪の刑罰は、「3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料」と定められています。
拘禁刑は刑務所に収監して身柄を拘束する内容の刑罰、罰金は金銭の支払を指せる刑罰ですが、科料は1000円以上1万円未満の金銭を支払わせる刑罰であり、罰金が軽微になったもの、という性質の刑罰です。
そのため、器物損壊罪の刑罰は、3年以下の収監か30万円以下の金銭納付、という理解ができるでしょう。

参照:器物損壊罪ではどのような刑罰が科されますか。

刑事処分の判断では、損壊の程度(破壊の度合い・修理費・交換費)、犯行態様(故意の強さ・計画性・悪質性)、被害者への影響(業務への支障、精神的負担など)が重視されます。軽微な傷や落書きであっても、被害額が大きい場合や社会的影響が大きい場合には、身柄拘束に発展するケースもあります。

他方で、損壊が軽度で、早期に被害弁償や示談が成立している場合には、罰金刑や不起訴処分となることも少なくありません。特に初犯の場合は、反省状況や再犯防止策が十分に評価されることが多く、処分が軽減されることがあります。

いずれにしても、最終的な処分は個別事情を総合的に考慮して決定されるため、早期に適切な対応を取ることが重要です。

器物損壊罪の刑罰は、損壊行為の重大性や被害の大きさを主な基準とするのが一般的です。行為が重大で危険なものであるほど刑罰は重く、被害の規模や損害額が大きいほど刑罰も重くなります。

器物損壊罪と親告罪

器物損壊罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪に該当します(刑法264条)。そのため、警察が被害届を受理して捜査を開始したとしても、最終的には被害者が「処罰してほしい」と意思表示(告訴)をするかどうかが大きなポイントとなります。

つまり、加害者が特定されていても、被害者が告訴しなければ、原則として起訴されることはありません。もっとも、捜査段階では身柄拘束(逮捕・勾留)が行われる可能性があり、「告訴がない=逮捕されない」という仕組みではない点には注意が必要です。

親告罪であることは、実務上、示談の成立が処分判断に強く影響することを意味します。被害者が損害賠償を受け、事件を穏便に解決したいと判断すれば、告訴を取り下げるケースも多く、これが不起訴処分につながることがあります。

反対に、損害額が大きい場合や犯行態様が悪質な場合には、被害者が告訴を取り下げないこともあり、刑事手続が進む可能性が高まります。

器物損壊罪の場合、告訴の取り消しを獲得することが逮捕を防ぐ最も有力な手段の一つです。当事者間での解決は、器物損壊罪の根本的な解決とイコールであると理解してよいでしょう。

器物損壊罪で逮捕されるケース

器物損壊罪の逮捕に関する一般的な取り扱い

器物損壊事件は、必ずしも逮捕される可能性が高い事件類型ではありません。
特に、損害の規模があまりに大きくなければ、1件の器物損壊事件で直ちに逮捕されるケースは少数派ということもできるかと思います。

もっとも、以下のような場合には逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。

①反復継続して同種事件が行われている場合
多数の自動車のタイヤをパンクさせて回っているなど、同種事件を反復継続している事件は、計画性も高く今後の同種事件の発生も懸念されるため、その事件の重大性を踏まえて逮捕される可能性が高くなる傾向にあります。

②怨恨が動機となって起きた場合
怨恨など、人間関係の悪化が原因となって起きた器物損壊事件は、今後もトラブルの深刻化に伴う重大事件の発生が強く懸念されたり、被害者への働きかけによる証拠隠滅の恐れが想定されたりするため、逮捕の可能性が高くなりやすい類型です。

③被疑者の捜査協力がない場合
捜査を開始し、警察が被疑者を呼び出しているにもかかわらず、一向に応じる気配のない場合などが挙げられます。このような状況では、被疑者の逃亡や証拠隠滅の恐れが高いため、逮捕の可能性が高くなります。

器物損壊罪で逮捕リスクが上がるケース

器物損壊事件であっても,事件の内容や状況によって逮捕が選択されるケースも十分に考えられるところです。具体的には,以下のような場合に逮捕リスクが高くなりやすいでしょう。

器物損壊事件で逮捕リスクが高くなるケース

1.事件当時,現場でトラブルになっている

2.被害規模が大きい

3.態様が悪質である

4.同種事件が複数発生している

【1.事件当時,現場でトラブルになっている】

事件当時,加害者が現場で暴れているなど大きなトラブルになっている場合,被害の拡大や被害者の心身への危害が懸念されるため,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。

この場合,事件現場でのトラブル拡大を防止する必要性が高いため,その場で速やかに行うことのできる現行犯逮捕が選択されやすいでしょう。

【2.被害規模が大きい】

損害の規模が非常に大きく,器物損壊事件の中でも重大な部類と評価される事件では,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

特に,強い悪意がなければ被害を与えられないような物品を対象としている場合や,大きな経済的被害を生じさせようという意思が明らかな事件である場合は,被害規模の大きさと刑事責任の重さが直結しやすく,重大事件であることを踏まえた逮捕が選択されやすい傾向にあります。

【3.内容が悪質である】

加害行為の内容が特に悪質であると評価される場合,事件の重大性を踏まえて逮捕が選択される可能性は高くなりやすいです。

器物損壊事件の場合は,一般的に単独での突発的な事件が想定されているため,複数人での事件や組織的な事件,計画的な事件は,悪質と判断されやすいでしょう。また,加害行為のために入手した凶器を用いている,加害行為が執拗である(損壊するのにに必要な程度を超えている)など,行為の内容そのものに悪質性が見受けられるケースも,同様の恐れがあります。

【4.同種事件が複数発生している】

同種事件を複数行ってしまっており,いわゆる余罪が多数あるケースでは,余罪を含めた全容解明のため,証拠隠滅を防ぐ目的での逮捕がなされやすくなるでしょう。

この点は,複数の事件が同一人物によるものと考えられる場合に問題となりますが,同一人物の事件であるかどうかの判断は,時期や場所,犯行方法に共通性があるかどうかを重要な基準とすることが一般的です。

器物損壊罪の逮捕手続

① 現行犯逮捕

器物損壊の現場を警察官や第三者が目撃した場合、**その場で身柄を確保される「現行犯逮捕」**が行われることがあります。
現行犯逮捕は、捜査機関による令状が不要であるため、事件性が明らかであれば迅速に逮捕される特徴があります。

典型例としては次のようなケースが挙げられます。

  • 他人の車を傷つけているところを見つかった
  • 店舗のガラスを割った直後に警察官が駆けつけた
  • 路上で他人のスマートフォンを叩き壊した場面を通行人が目撃した

器物損壊は財産犯であっても、行為態様が悪質な場合や逃走・証拠隠滅のおそれがある場合は、現行犯逮捕が選択されやすい傾向があります。

② 後日逮捕

事件当時は発覚しなくても、防犯カメラ映像、目撃証言、SNSの投稿などから加害者が特定され、その後に逮捕されることもあります。これがいわゆる後日逮捕です。

後日逮捕が行われやすいのは、次のようなケースです。

  • 防犯カメラの映像から犯人が特定できた
  • 器物損壊の被害届の内容と、加害者の行動が一致した
  • 現場に残された物的証拠(工具、指紋など)から関与が推認できる

ただし、後日逮捕は必ず行われるわけではなく、被害が軽微な場合や加害者が任意の呼び出しに応じる見込みが高い場合には、在宅で捜査が進むことも多いのが実務上の実情です。

器物損壊罪では、現行犯逮捕の回避が特に重要なポイントになりやすいです。現行犯逮捕されやすくなってしまうような対応を避けるため、刑事手続に精通した弁護士から適切な案内を受けることが有力です。

器物損壊罪で逮捕を避けるための方法

① 示談

器物損壊事件の場合,被害者との間で示談が成立し,被害者が告訴を取り消すとの判断に至れば,その後に逮捕される可能性がなくなります。そのため,逮捕を避ける方法として,示談の試みは非常に重要です。

また,器物損壊事件の場合,適切な内容で示談が成立すれば,逮捕が避けられるだけではなく,起訴も確実に避けることが可能です。起訴されなければ,前科が付かず事件が終了するため,最終的な結論としても最も望ましいと言ってよいでしょう。

② 自首

器物損壊事件が捜査される前段階や,捜査が開始されていても自分が加害者であると特定されていない時期であれば,自首を行うことで逮捕を避ける方法も有力です。
一般的に,器物損壊事件の当事者間が連絡を取り合える関係であることは多くないため,示談の試みが現実的にできず,自首以外に検討の余地がないことも少なくはないでしょう。

自首した場合には,警察等の捜査機関にとって,加害者が自分の犯罪行為を認めて捜査して欲しいとの意思であることが明らかになります。そのため,捜査への妨害を防ぐための逮捕が必要ない,との判断をしてもらいやすくなるでしょう。

③ 呼び出しへの対応

器物損壊事件について,警察などから呼び出しを受けた場合には,できる限り捜査協力の姿勢を示し,逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを理解してもらうのも有力な方法です

呼び出しをすれば積極的な協力をしてくれる,と分かれば,逮捕をしてまで強制的に捜査協力をさせる必要はなく,逮捕まではしなくてよい,との判断を引き出しやすくなります。

④ 弁護士への相談

器物損壊の疑いをかけられている場合、早期に弁護士へ相談することは逮捕を防ぐうえで非常に重要です。器物損壊は財産犯であっても、被害額が大きい場合や犯行態様が悪質と判断される場合には、後日逮捕に発展する可能性があります。弁護士が介入することで、捜査機関との連絡調整や適切な対応方針を整えることができ、身柄拘束のリスクを下げる効果があります。

弁護士は、警察から呼び出しがあった際の対応方法や、任意出頭時に注意すべき点を具体的に助言します。また、依頼者の反省状況や弁済の意思を示す資料を適切に整理し、警察・検察に提出することで、**「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」**という事情を伝えやすくなります。

さらに、弁護士が早い段階で被害者との連絡窓口に入り、弁済や示談に向けた交渉を進めることは、逮捕回避に役立つ大きな要素です。実務上、示談が進んでいるケースでは、身柄拘束の必要性が低いと判断されることが多く、在宅捜査で事件が進む傾向があります。

器物損壊の疑いをかけられた段階で相談をしておくことで、不要な逮捕を避けるための準備が整い、事件全体の見通しも把握しやすくなる点が大きなメリットです。

器物損壊罪で現行犯逮捕されなかった場合、その後に適切な対応を継続できれば後日逮捕なく手続が終了することは決して珍しくありません。

器物損壊罪で呼び出しを受けたときは逮捕されるか

器物損壊事件の場合,呼び出しに応じたことをきっかけに逮捕されるという流れは基本的に考えにくいでしょう。呼び出しに対してあまりに不合理な対応をしない限りは,逮捕しないとの判断をすることが通常です。
器物損壊事件で逮捕をするのであれば,呼び出しを行うのではなく,予告をしないまま突然自宅等に訪れ,逮捕状を示して逮捕(=通常逮捕)をすることが一般的と言えます。逃亡や証拠隠滅を防ぐ手段として,その方が優れているためです。

ただし,例外的に,呼び出し後に逮捕の判断に至る場合もあり得ます。一例としては,犯人でないと思っていた人を呼んだ(又は犯人がだれか分からない状態で呼んだ)後,呼び出した相手が犯人であると特定できるだけの新事情が発覚した場合が挙げられます。
この場合,事件の程度などから「犯人が特定できれば逮捕する」との捜査方針だったときには,呼び出した人物を犯人だと特定でき次第,逮捕に踏み切る可能性があり得ます。

ポイント
呼び出し時の逮捕は基本的には考えにくい
呼び出し後に犯人と特定された場合は、その後の後日逮捕も例外的にあり得る

器物損壊罪の呼び出しで逮捕を避ける対処法

① 初めて呼び出しを受けた場合

初めて呼び出しを受けたときの基本的な対応方針としては,まず連絡を無視しない,ということが非常に重要です。

器物損壊事件で呼び出しの連絡が来た,という場合,捜査機関の方針としては,呼び出しに応答してくれるのであれば,比較的穏やかな手続で進めるつもりである可能性が高いでしょう。そのため,捜査機関の期待通りに応答し,連絡が円滑に取れる人物だと分かってもらえれば,逮捕などの大きな不利益は回避しやすくなります。

一方,呼び出しを無視してしまうと,捜査機関から見て呼び出しに応じてくれる人なのかが分かりません。呼び出しに応じてくれれば穏やかな手続でよかったのに,呼び出しを無視したばかりに逮捕などの強制的な手続を取らざるを得ない,と判断されてしまうと,その不利益は極めて大きくなります。

そのため,まずは呼び出しに対して無視せず応じる,留守番電話に担当者名や用件が録音されていれば折り返しなどの対応をするなど,呼び出しへの応答がしてくれる人物だと分かってもらうためのリアクションを取るようにしましょう。

ポイント
無視しないことが最重要
呼び出しの連絡に応じていれば,穏やかな手続で進むことが通常

② 2回目以降の呼び出しを受けた場合

1回目の呼び出しで話を聞かれるなどした後,2回目以降に呼び出しが行われるのは,供述調書などの書面を作成する目的であることが一般的です。1回目の呼び出しで供述調書を作成するケースもありますが,1回目に供述調書が作成されなかったケースでは,2回目以降の呼び出しは調書作成の目的であると考えて基本的に間違いないでしょう。

供述調書の作成に当たっては,作成時に求められる署名押印の意味を把握しておくことが重要です。
供述調書への署名押印は,調書の内容が自分の発言と一致することのお墨付きという意味合いのものです。調書の作成者は捜査担当者であり,自分の発言を他人が文字起こししているため,その文字起こしに誤りがないことを署名押印という方法で明らかにしているのです。

そのため,署名押印を求められた際には,内容に間違いがなければ応じる,という方針が合理的です。内容に一部誤りがあれば,訂正を求めることができるため,誤りのない供述調書にしてもらいましょう。

ポイント
供述調書の作成目的であることが一般的
署名押印は,内容に間違いがないことのお墨付きの意味

③ 事件の記憶がない場合

器物損壊事件の場合,事件当時の記憶がなく,自分が加害行為をしてしまったかどうか分からない,というケースも散見されます。代表例が,深酒で泥酔状態になってしまった後,路上や店舗などで加害行為をした,と言われているケースです。

この点,事件の記憶がない場合には,記憶がないことを前提とはしつつ,疑われている加害行為を認めるか認めないか,という点をできるだけ早期にはっきりさせることをお勧めします。特に,自分がしたことで間違いないであろうという場合,「覚えていない」とだけ答えてしまうと,「自分がしたとは認めていない」という意味で解釈されることは踏まえておきたいところです。

認めるかどうかの判断材料としては,周囲の人や捜査担当者から当時の話を聞き,その内容を総合することが有効です。泥酔状態で記憶がない場合には,酔いが覚めた後に冷静な対応を尽くすことで,不利益を最小限に抑える結果につながりやすいでしょう。

ポイント
認めるかどうかをできるだけ早くハッキリさせる
覚えていないとの回答は,認めないという意味で理解される

④ 否認事件の場合

疑われている犯罪行為をしていない,という否認事件の場合には,まずその争点を自分の中で明確に把握することが非常に重要です。

一口に否認事件と言っても,その具体的な内容は争点によって様々です。器物損壊事件では,自分が行ったものではない(=犯人性の否認),わざとおこなったことではない(=故意の否認)などが代表的な争点ですが,いずれが争点であるかによって,適切な対応方法や注意すべき点が大きく異なります。犯人性が争点であるのに,「わざとやったわけではない」と述べるのは,むしろ不利益を招くでしょう。

また,争点を把握した後は,できればその争点について法的な判断を行うときの基準や根拠になるものを理解しておきたいところです。この点は,高度に法律的な問題となるため,弁護士への相談をお勧めします。

ポイント
争点を明確に把握する
争点の判断基準や根拠を理解する

器物損壊罪で自首により逮捕を防ぐべき場合

①現行犯で発覚している場合

自首をするべきケースの代表例は,自分が犯人と特定され,何もしなくても自分に対する捜査がなされやすい,という場合です。自首の最大のリスクは,「自首さえしなければ捜査を受けなかったのに,自ら自首したばかりに捜査を受けることになってしまった」という結果となることですが,自首をしなくても自分が犯人と特定されてしまう状況であれば,その最大のリスクがないということになるため,自首のメリットの方が大きいと考えやすくなります。

この点,器物損壊事件は,加害行為のあった直後,現行犯で事件が発覚することも少なくありません。そして,現行犯で発覚した場合には,直ちに警察の捜査が開始されることが見込まれやすいものです。しかも,証拠の多くは失われず残っており,犯人の特定に至る可能性は非常に高いと言ってよいでしょう。

そうすると,現行犯で発覚した器物損壊事件の場合,自首してもしなくても犯人が特定されやすいため,自首のリスクよりもメリットを優先すべき状況である,と考えるのが合理的です。このようなケースでは,積極的な自首の検討をお勧めします。

ポイント
自首のリスクは,自首が原因で捜査を受ける結果になること
現行犯で発覚した場合,自首せずとも犯人が特定されやすい

②被害者との間で解決したい場合

器物損壊事件は,被害者との解決が極めて重要です。被害者と適切な解決ができれば,それで直ちに刑事手続も解決に至る,と言っても過言ではありません。
もっとも,被害者と知人等の関係にある場合を除き,直接被害者に接触する手段はないのが通常です。そのため,被害者との解決を目指すには,捜査機関の力を借り,捜査機関に間に入ってもらうことが必要です。

この時,有力な手段が自首です。自首をした上で捜査を始めてもらい,捜査機関に被害者との解決希望の旨を伝えることで,捜査機関に間に入ってもらうことができます。
なお,実際の被害者とのやり取りは,自分で行うのでなく,弁護士を通じて行うことが求められます。そのため,弁護士への依頼とセットで動くのが良いでしょう。

ポイント
被害者と連絡を取るには,捜査機関に間に入ってもらう必要がある
弁護士への依頼とセットで進めるのが適切

③日常生活への支障を防ぎたい場合

刑事事件で捜査を受けると,様々な局面で日常生活に悪影響が生じる可能性が懸念されます。捜査協力に時間を割かれることのスケジュール面への影響はもちろんですが,それ以上に,捜査を受けたという事実が周囲に知られることの悪影響が非常に大きくなりがちです。
刑事事件の被疑者となることは,非常に不名誉であって周囲の信頼を損なう恐れがあるため,できる限り周囲に知られないことが望ましいでしょう。

この点,自首を行うことで,捜査機関に周囲へ知られないよう配慮した方法での捜査をしてもらうことが期待しやすくなります。捜査機関としても,円滑な協力が得られるならば,殊更に周囲に知られるような捜査手法を取る必要はない,との判断になりやすいところです。

ポイント
事件や捜査を周囲に知られると,日常生活への支障が懸念される
自首した場合,捜査方法を配慮してもらいやすくなる

④反省の意思を表明したい場合

刑事事件の処分軽減を図るためには,反省の意思をできるだけ明確に表明していくことが重要です。重大犯罪の場合,元々の刑事責任が大きすぎるため,反省が処分に与える影響には限りがありますが,比較的軽微と評価される器物損壊事件の場合,反省の意思を加味して処分に反映してもらえるケースが多くなる傾向が見られます。

この点,反省の意思を最も強く表明できる手段が自首です。自首は,自分から大きなリスクを負うため,強い反省の意思がないと実行できない動きだと理解されるのが通常です。「自首するくらいに反省を深めている」と認めてもらうことができれば,自首を理由に処分が大きく軽減されることも十分に考えられるでしょう。

ポイント
器物損壊事件では,深い反省の意思が刑事処分に反映され得る
自首は,反省の深さを最も強く行動に示せる手段

器物損壊罪の逮捕に強い弁護士へ依頼するメリット

器物損壊事件の逮捕に関して対応する場合は,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士への依頼によって,以下のような利点が期待できます。

① 逮捕が懸念される状況であるか判断できる

器物損壊事件は,決して逮捕の可能性が高い事件類型というわけではありません。そのため,現実に逮捕の懸念が大きくないのであれば,逮捕を恐れるあまり動き方を誤ってしまう方が大きなデメリットを招く結果になる場合も多いところです。

この点,弁護士に依頼し,弁護士の専門的な判断を仰ぐことで,本件では逮捕が懸念される状況か,正確な判断が可能になります。逮捕が懸念される状況であれば,逮捕を避けるための方策を優先的に検討すべきですし,逆に逮捕の懸念がそれほどない状況だと分かれば,他の対応に時間を割くことが容易になるでしょう。
また,逮捕に関する見通しが分かることで,精神的な負担が軽減でき,大きな安心につながる効果も見込まれます。

② 事件に応じた適切な対応方法が分かる

逮捕を避ける方法は,事件の内容や状況によって個別に異なります。そのため,事件や状況に合った対応を取ることが非常に重要なところです。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕を避けるために本件で必要な動きが分かり,方針の選択に悩む必要がなくなります。また,実際の動きも弁護士主導で行うことができるため,対応の負担も軽減されるでしょう。

③ 当事者間の解決を試みることができる

器物損壊事件では,当事者間での解決が逮捕回避にとって極めて重要なポイントになりやすいです。当事者間で解決できれば,その後に逮捕されることはないと言ってよいでしょう。

もっとも,当事者間での解決は,弁護士を窓口にしなければ試みられないのが通常です。当事者同士がやり取りするのではなく,加害者の代理をする弁護士が,被害者と連絡を取り合う必要があります。
また,解決内容をどうすべきか,という点についても,専門的な知識経験を持つ弁護士の見解を仰ぐことで,合理的な判断が容易になるでしょう。

器物損壊罪で弁護士に依頼すべき場合

① 認め事件のケース

認め事件は、示談により不起訴処分を目指すことが極めて重要です。刑罰を受け入れる場合を除いては、弁護士への依頼が適切でしょう。

弁護士に依頼した場合、弁護士から捜査機関に示談を希望する旨申し入れを実施します。捜査機関から被害者側に意向を確認し、被害者の了承が得られれば、弁護士と被害者との間で連絡先を交換して示談交渉に着手することができます。

示談が成立した場合、弁護士が示談書等の必要な書面を作成し、被害者と示談の締結を行います。確実に不起訴処分となるよう、告訴の取り消しを確認し、捜査機関に提出します。
なお、一度取り消された告訴を再度行うことはできないため、告訴が取り消された時点で不起訴処分が見込まれることになります。

なお、器物損壊事件の示談金額は、損壊された物の価値を基準に検討することが多いでしょう。一般的には、被害物の価値相当額に、お詫びの趣旨でいくらかの金額を上乗せし、示談金額とする例が多く見られます。

② 否認事件のケース

否認事件の場合、起訴されるかどうかは犯罪事実が立証できるかどうかに左右されます。

もっとも、犯罪事実が立証できるか、というのは高度に法律的な問題であるため、具体的な主張内容や方針は、弁護士に依頼の上で弁護士と検討し、実施することが適切です。弁護士に依頼した場合、弁護士から適切な方針とそのための活動内容に関する案内を受けることができます。

器物損壊罪に強い弁護士をお探しの方へ

器物損壊の事件は,被害者との間で解決ができているかどうか,という点が処分に直接の影響を及ぼす事件類型です。
そのため,被害者と示談を締結することが非常に重要となりやすいですが,示談の締結には弁護士への委任が不可欠となります。
器物損壊事件で不起訴を獲得したい場合は,刑事弁護に精通した弁護士への依頼をお勧めいたします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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ストーカー行為で逮捕されるケースは?逮捕や呼び出しの流れは?

ストーカー規制法違反の加害者となってしまうと、被害者への接近禁止命令や逮捕、刑事処分、さらには職場への発覚による社会的信用の低下など、深刻な不安に直面します。

適切な対応を誤れば、長期間の身柄拘束や前科がつく可能性も否定できません。

こうした事態を避け、平穏な生活を取り戻すためには、ストーカー事件の弁護に精通した弁護士へ早期に相談することが要です。

本記事では、ストーカー事件で逮捕された際の流れや、不起訴を勝ち取るためのポイントについて弁護士が分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

ストーカーで逮捕される基準となる行為

ストーカー規制法で禁じられている行為には,大きく分けて「つきまとい等」と「位置情報無承諾取得等」があります。

①つきまとい等

恋愛感情が満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で,以下の8つのうちいずれかの行為をすることを指します。

つきまとい,待ち伏せ,押しかけ,うろつき
監視していると告げる
面会や交際の要求
粗野又は乱暴な言動
無言電話,連続しての電話・文書・FAX・メール
汚物や動物の死体等の送付
名誉を害する行為
性的羞恥心を害する行為

参照:ストーカー行為等の規制等に関する法律

②位置情報無承諾取得等

同じく,恋愛感情が満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的での行為ですが,こちらは位置情報の取得に関する以下のいずれかの行為をすることを指します。

GPSによる位置情報の取得
GPSの取り付け

参照:ストーカー規制法が改正されました!

③ストーカー行為

そして,この①つきまとい等や②位置情報無承諾取得等を同一人物に対して反復して行うことを,「ストーカー行為」と言います。
「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」は,それだけでは刑罰の対象ではありませんが,「ストーカー行為」に当たると刑罰の対象(=犯罪)となります。

ポイント
つきまとい等を同一人物へ反復して行うこと
又は
位置情報無承諾取得等を同一人物へ反復して行うこと
を「ストーカー行為」という

ストーカー行為の罰則

ストーカー規制法に定められている刑罰は,以下の3種類です。

①ストーカー行為をした場合
1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金

②禁止命令に反してストーカー行為をした場合
2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金

③禁止命令に違反した場合
6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金

つまり,「ストーカー行為」,「禁止命令」の違反,その二つを同時にした場合,の3種類ということになります。

なお,ストーカー規制法違反の行為は,それ自体が暴行・脅迫・器物損壊等の犯罪行為に該当する場合が多いため,ストーカー規制法違反以外にも複数の犯罪が成立し,あわせて処罰されることが多く見られます。

参照:ストーカー行為等の規制等に関する法律 e-Gov法令検索

ストーカー行為の罰則に関係する手続としては、「警告」と「禁止命令」があります。それぞれの内容や特徴は以下のとおりdす。

警告

警察は,「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」について警告を求める申し出を受け,実際にその行為が反復される恐れがあると認めたとき,さらに反復してはならないと告げることができます。
これを「警告」と言います。

警告は,ストーカー規制法に定められた手続ですが,これに反した場合の罰則はありません
あくまで止めることを求める,という限りの措置です。

もっとも,警告に反すると,後のより重大な手続に発展する可能性が高いため,警告に違反することはお勧めされません。

禁止命令

公安委員会は,「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」があり,さらに反復して行われる恐れがあると認めるときは,相手方の申し出又は職権により,以下の内容を命令できます。

一 さらに反復してその行為をしてはならないこと
二 さらに反復してその行為が行われることを防止するために必要な事項

これを「禁止命令」と言います。

禁止命令は,その違反に罰則が伴うほど重大な処分ですが,その期間は1年間に限定されます。
ただし,1年ごとに延長することが可能です。

ポイント
警告に法的拘束力はない
禁止命令は法的拘束力あり。違反は犯罪にも
禁止命令違反かつストーカー行為は刑罰が加重される

ストーカー行為はすぐに逮捕されるか

① ストーカー行為がすぐに逮捕される可能性

ストーカー規制法に違反する行為を行った場合でも、直ちに逮捕されるとは限りません。
警察は、まず被害者からの相談・通報を受けると、行為の内容や頻度、被害の深刻さを確認し、警告や禁止命令(公安委員会による)といった行政的措置をとるのが一般的です。

ただし、次のような事情がある場合には、警察が早期に逮捕に踏み切る可能性が高くなります。

・被害者が強い恐怖を感じている、または実際に危険が迫っている場合
・警察の警告や禁止命令に従わず、同様の行為を繰り返している場合
・被害者宅や勤務先周辺への押しかけ、待ち伏せなど身体的接触のおそれがある行為をしている場合
・SNSや電話などで執拗に連絡を取り続けており、威迫的・脅迫的なメッセージを送っている場合

このように、ストーカー行為の態様や危険性が高いと判断された場合には、警察が被害拡大防止の観点から身柄を確保する(逮捕する)ことがあります。

また、被害者が複数いる場合や、過去にも同様の行為を行っていた場合は、再犯のおそれがあるとして逮捕・勾留に至るケースもあります。

つまり、ストーカー行為は「一度の行為だから」「直接接触していないから」といって安心できるものではなく、被害者の恐怖感や危険の切迫度によっては即時に逮捕される可能性がある犯罪です。

そのため、警察から警告や呼び出しを受けた段階で、早めに弁護士へ相談し、対応方針を立てることが重要です。

ストーカー行為の逮捕は、ストーカー行為が繰り返される恐れが大きいほど可能性が高くなります。事件の性質上、継続的なストーカー行為による被害の拡大が生じやすいためです。

② ストーカー行為で逮捕の可能性が高いケース

ストーカー規制法違反の事件は,ケースによっては逮捕の可能性が十分に考えられる事件類型です。ストーカー事件の場合,個別の被害者が存在するため,主に被害者への悪影響や被害の拡大を防ぐため必要が大きい場合に,逮捕が選択されやすい傾向にあります。

ストーカー規制法違反で逮捕の可能性が高い場合としては,以下のようなケースが挙げられます。

ストーカー規制法違反で逮捕の可能性が高いケース

1.被害者の身体に危害の加わる恐れがある場合

2.警告や禁止命令を受けた後に継続した場合

3.期間や回数が著しい場合

【1.被害者の身体に危害の加わる恐れがある場合】

事件の内容から,今後被害者の身体に何らかの危害が加わる恐れがあると判断される場合,被害者を保護するため逮捕の可能性が高くなりやすいです。
危害の恐れの大きさは個別の判断とはなりますが,ストーカー行為の一環として身体への被害を示唆する言動があった場合,実際に身体への危害を加えようとした事実がある場合などは,危害の恐れが大きいと判断されやすいでしょう。

【2.警告や禁止命令を受けた後に継続した場合】

ストーカー事件では,いきなり刑事事件として捜査が行われるのではなく,警告又は禁止命令という形で,今後同様の行為をしないように求める告知が行われる流れが多く見られます。そして,警告や禁止命令を行った場合,これにもかかわらずストーカー行為が継続していれば,そこで刑事事件の対象とし,捜査や処分へと進むことになります。

この点,警告や禁止命令を受けたにもかかわらず,それでもストーカー行為が継続されているケースでは,逮捕以外に被害の拡大を防ぐ手段がないと判断されやすいため,捜査に際して逮捕が選択される可能性が高くなります。
特に,警告や禁止命令があってから,期間を空けずにストーカー行為が継続されている場合だと,逮捕の可能性が高まりやすいでしょう。

【3.期間や回数が著しい場合】

ストーカー行為の期間が著しく長い場合や,加害行為の回数が著しく多い場合には,逮捕しなければ大きな被害につながりかねないと判断され,逮捕の可能性が高くなりやすい傾向にあります。期間が長い場合には,その間のどこかで警告や禁止命令を受けているケースも少なくないでしょう。
また,長期間・多数回のストーカー行為の中で,被害者から明確に拒絶され,被害者が接触を望んでいないことが明らかになる場合も多く見られますが,被害者から拒絶されてもなお継続している場合には,特に逮捕の可能性が高くなりやすいところです。

ストーカー行為に対する逮捕は、当事者を強制的に引き離す必要性が高い場合になされやすいです。相手方への接触の恐れがあると判断されるような行動は控える方が賢明でしょう。

ストーカー規制法で逮捕された場合の流れ

逮捕から起訴までの流れ

ストーカー規制法で逮捕された場合、主に以下の流れになります。

  • 勾留
  • 勾留延長
  • 起訴・不起訴

詳しく解説します。

勾留

勾留とは、逮捕に引き続き、被疑者の身体拘束を継続する裁判所の決定です。

警察が逮捕してから48時間以内に検察官へ送致され、さらに検察官が24時間以内に裁判所へ勾留請求を行います。

の恐れ」や「逃亡の恐れ」があると判断した場合、まずは10日間の拘留が決定されます。

この期間、自宅に帰ることはできず、外部との連絡も制限されるため、社会的な影響が大きくなります。

勾留延長

当初の10日間で捜査が終わらない場合、検察官はさらに最大10日間の「勾留延長」を請求することが可能です。

ストーカー事件では、被害者の特定やスマートフォンの解析、動機の解明に時間がかかるケースが多く、勾留延長が認められやすい傾向にあります。

これにより、逮捕から合計で最大23日間も留置場での生活を余儀なくされる可能性があり、早期の弁護活動がなければ解雇や退学のリスクが現実味を帯びてきます。

起訴・不起訴

勾留期間の最終日までに、検察官は「起訴」か「不起訴」かを決定します。

起訴とは裁判にかけることであり、ストーカー規制法違反では略式起訴(罰金刑)または公判請求(正式な裁判)が行われます。

一方で「不起訴」となれば、前科はつかず、その日のうちに釈放されるでしょう。

ストーカー事件において不起訴を勝ち取るためには、この23日という限られた時間の中で、被害者との示談を成立させることが決定的な鍵となります。

ストーカーで逮捕されたときに不起訴を目指す方法

ストーカー規制法違反の事件で不起訴を目指す場合,相手方との間で示談を試みることが非常に有力です。

ストーカー規制法違反が起訴されるのは,ストーカー行為や禁止命令違反によって被害者に損害を与えたためです。損害を与えた犯罪行為に対する責任として,刑事罰を科されることになります。
そのため,被害者に損害を与えた行為の責任が小さくなる場合には,刑事罰を科す必要もまた小さくなると考えられます。
そして,被害者の損害が小さくなり,損害を与えた行為の責任も小さくなるのは,被害者に損害賠償等をし,被害者と示談できた場合というわけです。
ストーカー規制法違反の事件は,示談ができているかできていないかによって,処分結果が大きく変わりやすいということが出来るでしょう。

なお,ストーカー規制法違反で示談を試みる場合の意内容や示談金額は,他の事件類型に比べ,個別のケースによって非常に大きな開きが生じやすい傾向にあります。
というのも,ストーカー規制法違反の事件は,継続的なやり取りや関係を前提としたものであり,その当事者間の関係が十人十色であるからです。
刑事事件の示談は,犯罪行為を対象にした合意となることが通常ですが,ストーカー規制法違反のケースでは,それまでの継続的な関係全てを精算する内容の合意とならざるを得ず,それだけに事件前の事情が大きく影響しやすいでしょう。

また,示談内容とすることの多い項目としては,接触禁止や特定の範囲への出入禁止といったものが挙げられます
いずれも,今後の当事者間の接触を物理的に断つための条項ですが,ストーカー規制法違反の場合,示談の要点は今後の接触がどのように防げるか,という点になることも非常に多いです。

示談を通じて不起訴を獲得することは、逮捕後の早期釈放にも直結しやすい重要な対応です。不起訴処分とされた段階で身柄拘束を続けることはなくなるため、即時に釈放されます。

ストーカーで逮捕される前に弁護士に相談するメリット

警察から警告を受けたり、事情聴取の連絡が来たりした段階、つまり「逮捕前」に弁護士に相談することには、事態の悪化を防ぐ大きなメリットがあります。

ここからは、ストーカーで逮捕される前に弁護士に相談するメリットを詳しく解説します。

被害者との間に立ち、スムーズな示談交渉が可能

弁護士は、あなたの代理人として被害者と接触できる唯一の存在です。ストーカー事件では被害者は加害者に対して強い拒絶反応を持っており、本人同士の交渉は不可能です。

弁護士が客観的な立場で謝罪を伝え、接触禁止の条項を盛り込んだ示談を提案することで、被害者と建設的なやりとりができ、警察への被害届取り下げや刑事告訴の回避へと繋げられます。

逮捕の回避や早期の身柄解放に向けた法的弁護

逮捕は「逃亡や証拠隠滅の恐れ」がある場合に行われます。

事前に弁護士が警察に対し、「本人は深く反省しており、弁護士が身元を引き受けているため逃亡の恐れはない」といった意見書を提出することで、逮捕を回避し「在宅捜査」に持ち込める可能性があります。

万一逮捕された後でも、裁判所に対して勾留の不当性を訴えることで、早期の釈放を目指すことが可能です。

精神的なケアや再犯防止のカウンセリング案内が受けられる

ストーカー行為は、本人も「止めたくても止められない」という心理的依存が背景にある場合があります。

弁護士は法的な解決だけでなく、専門のカウンセリング機関や医療機関を紹介する役割も果たします。

再犯防止に向けた具体的な治療計画を検察や警察に提示することは、単なる反省の言葉よりも強力な「再犯の恐れがない証拠」となり、処分の軽減に大きく寄与するでしょう。

ストーカー規制法違反の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

ストーカー規制法違反の事件は,早期に適切な対応を尽くせば深刻化しない場合も珍しくありません。
一方で,事態が深刻化した場合には逮捕勾留につながる場合もあり,また,意図せずストーカー行為を疑われた場合には法的な争点を踏まえた対処が必要です。
ストーカー規制法違反事件の解決には,刑事事件に精通した弁護士へのご相談やご依頼が有力でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

公然わいせつはどんな場合に逮捕されるか?逮捕された後の流れはどうなる?

公然わいせつは刑法で処罰対象とされる犯罪であり、状況によっては現行犯逮捕や後日逮捕に至るケースもあります。突然の逮捕や取調べに直面すると、今後の生活や仕事への影響を不安に感じる方も少なくありません。本記事では「公然わいせつはどんな場合に逮捕されるのか」「逮捕後はどのような流れになるのか」といった疑問に答え、公然わいせつの逮捕について適切な対応のポイントを分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

公然わいせつとは

公然わいせつ罪は,不特定多数者が目にできる状態でわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
代表的な行為は,路上で自身の性器を露出させることなどが挙げられます。
その他,公衆の面前で性行為や自慰行為をする場合も,公然わいせつ罪に該当するでしょう。

また,公然わいせつ罪の対象となりやすい少し意外な事件としては,車内でのわいせつ行為が挙げられます。
駐車場で停止している車の中で自慰行為や性行為を行うことは,その車中が不特定多数者の認識し得る状態である限り,公然わいせつ罪に該当する行為となりやすいです。

① 成立要件

公然わいせつ罪は、刑法第174条に規定されています。
この罪が成立するためには、次の3つの要件が必要です。

1.公然性

「公然」とは、不特定または多数の人が認識し得る状態を指します。実際に誰かが見ていたかどうかは問題ではなく、見られるおそれがある状況であれば成立します。
例えば、通行人がいる公園や駅構内、マンションの共用部、車内などで性器を露出した場合は「公然」と評価される可能性があります。
一方、完全に閉ざされた室内で、他人が見るおそれのない状況であれば「公然性」が否定される余地もあります。

2.わいせつ性

「わいせつ」とは、社会通念上、人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいいます。
性器の露出、性行為、自慰行為などが典型ですが、露出の程度や態様、場所などの事情によって判断されます。
なお、芸術・医学・教育などの目的でなされた行為については、「わいせつ性が否定される場合」もあります。たとえば、美術展における裸体表現がわいせつ罪に当たらないとされた裁判例も存在します。

3.故意

行為者が、自らの行為が「公然」であり「わいせつ」であると認識しながら行ったことが必要です。
酩酊状態などで判断力が低下していても、意識的に露出行為などを行った場合は「故意あり」とされることが多く、酔っていたから罪にならないということは基本的にありません。

酩酊状態にあった場合、自身が行ったことの認識(故意)を争うかどうかは判断が難しいですが、できるだけ早期に方針を決めることが大切です。速やかに弁護士と協議し、適切な対応に努めることが非常に重要となります。

参照:刑法 e-Gov法令検索

② 刑罰

公然わいせつ罪の刑罰は「6月以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」とされます。
拘留とは1日以上30日未満の収監,科料は1000円以上1万円未満の金銭納付を内容とする刑罰です。
そのため,6月以下の収監か30万円未満の金銭納付が公然わいせつ罪の刑罰となります。

比較的軽い法定刑に見えますが、実際には逮捕・勾留されるケースも多く、社会的信用の失墜や職場への影響など、刑罰以外の重大な結果を招くこともあります。
また、特定の被害者が存在する場合や、同様の行為を繰り返している場合には、情状が重く扱われる傾向があります。

個別事件における具体的な刑事処罰としては,前科のない初犯の場合には罰金刑の対象となることが多いでしょう。概ね10~30万円ほどの罰金刑の対象になる例が多く見られます。

一方,前科があるなど,軽微な罰金刑にとどめることが適切でない場合には,拘禁刑の対象となる可能性も考えられます。

ポイント
初犯では罰金刑の対象になりやすい
法定刑以上に、社会的信用等への重大な悪影響が生じやすい

公然わいせつ罪で逮捕されるケース

(1)公然わいせつ罪で逮捕される可能性

公然わいせつ罪は,決して逮捕の可能性が高い事件類型ではありません。
逮捕は,逃亡や証拠隠滅の恐れが高い場合に行われますが,公然わいせつ罪は他の犯罪と比べて重大な刑事処罰を定めていないため,刑事処罰から免れる目的での逃亡は考えにくいとされます。また,事件の性質上,その場で終了してしまう事件であって物証が見込まれづらいこと,目撃者や防犯映像等の物証があったとしても,その隠滅や接触を図ることが現実的に困難なことから,証拠隠滅の恐れも高くないと判断されることが多いでしょう。

もっとも,以下のような場合には逮捕の可能性が高くなることもあります。

①被疑者が犯罪事実を否認している場合

被疑者が否認している事件は,犯罪の立証を妨げる目的で証拠隠滅をされる可能性が高くなると理解されます。そのため,認め事件と比べると逮捕の可能性が高くなる傾向にあるでしょう。
もちろん,否認をしているから直ちに逮捕されるわけではありませんが,その否認の内容が明らかに不合理であったり,事件の内容から被疑者に隠滅し得る証拠が想定されたりする場合には,逮捕の可能性が高くなる場合もあり得るところです。

②特定の相手に対して継続的に行っていた場合

公然わいせつ事件の中には,特定の相手を対象に自身の性器を露出する(見せつける)内容のものがあります。この場合,その相手となった人物に対する接触の可能性を考慮する必要が生じます。

多くの場合,特定の相手に自身の性器を露出する事件は,性的欲求の現れとして起きてしまうことが見られますが,性的な対象となった目撃者としては,露出にとどまらず身体接触等を試みてくる恐れを懸念するところです。
そして,その相手に対する露出行為が継続的になされているとなると,被疑者が目撃者への接触手段を把握している可能性が高く見込まれるため,目撃者への接触がより強く懸念されることになるでしょう。

また,目撃者は事件にとって最も重要な証拠ですので,目撃者への接触の恐れは,すなわち証拠隠滅の恐れという理解がなされます。目撃者への威迫による証拠隠滅を防ぐためにも,逮捕の必要性が高くなると考えられることになります。

③客観的証拠が確かな場合(特に後日逮捕)

コンビニや飲食店で性器を露出し,従業員とトラブルになった場合など,その犯罪事実の一部始終が撮影映像などの客観的証拠に残されている場合があります。
この場合には,起きた出来事の重大性も踏まえて,現行犯でなくても通常逮捕(いわゆる後日逮捕)される可能性が高くなり得ます。

その他、行ったことの重大さや執拗さ、社会的影響といった点も逮捕の可能性に影響を及ぼすケースが見られます。違法性が大きければ大きいほど、逮捕リスクも大きくなりやすいです。

(2)逮捕されやすい具体的なケース

上記の他、以下のようなケースで逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

公然わいせつ事件で逮捕されやすいケース

1.店舗や会場の混乱を招いているケース

2.特定の目撃者を標的にしているケース

3.同種事件を繰り返しているケース

【1.店舗や会場の混乱を招いているケース】

店舗内やイベント会場内で起きた公然わいせつ事件によって,現場が大きく混乱している場合,逮捕の可能性が高くなりやすい傾向にあります。なぜなら,現場における混乱の拡大を防ぐ必要があるほか,周囲の人物(店舗従業員,イベント関係者等)と深刻なトラブルになる恐れがあるためです。

また,店舗やイベント会場などは,公然わいせつ事件が起きた場合に誰かの目に入ることが明らかな場所です。そのため,犯罪に当たることを強く認識しながらわいせつ行為に及んだと理解せざるを得ず,悪質さが大きくなることから,逮捕の可能性が高くなります。

【2.特定の目撃者を標的にしているケース】

特定の目撃者に見せつける目的で,その人物を標的に行われた公然わいせつ事件では,目撃者を精神的苦痛などから保護するために逮捕されやすい傾向にあります。このようなケースでは,目撃者が事実上の被害者と理解されるため,被害者保護のために逮捕をする場合と近い状況になるでしょう。

特に,目撃者の住居や生活圏などの個人情報を把握している場合,目撃者への被害の拡大が懸念されやすいため,逮捕の可能性がより高くなります。

【3.同種事件を繰り返しているケース】

同種の事件が繰り返されている場合,更なる事件の発生を防ぐ必要があることから,被疑者を特定した段階で逮捕となる可能性が高くなります。複数の事件を起こしている場合,刑事責任もより重大になることから,刑罰を免れる動きを防ぐためにも逮捕されやすくなるでしょう。

また,以前に行われた同種の事件について被害届などが出ている場合,それらの事件に関する証拠も確保するため,逮捕をすることで証拠隠滅を防ぐ手段が有力になります。複数の事件を捜査する必要があると,それだけ収集するべき証拠も多くなるため,逮捕の可能性が高くなりやすいところです。

公然わいせつは、どちらかというと現行犯での逮捕が問題になりやすい傾向にあります。現行犯の際に逮捕の必要性が高いと思われる事情があるかどうかは、結果を大きく左右します。

公然わいせつ罪で逮捕されたときの流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

公然わいせつ罪で逮捕された場合のリスク

公然わいせつ罪で逮捕されると、刑事処分の有無にかかわらず、社会的なダメージが極めて大きいのが実情です。
報道や噂などを通じて周囲に知られる可能性があり、仕事・家庭・学校生活などあらゆる面で深刻な影響を受けることがあります。

① 周囲に発覚する

公然わいせつ事件は、現行犯逮捕や通報によって発覚するケースが多く、警察官や通行人の目撃、カメラ映像などからすぐに特定されます。
逮捕されると、警察による取調べの後、事件は検察庁に送致(送検)されます。
その後、検察官が勾留を請求し、裁判官がこれを認めた場合には、最長で10日間(延長を含め最大20日間)身柄拘束が続くことになります。

この間、職場や学校、家族に「連絡が取れない状態」が生じるため、逮捕や勾留そのものが周囲に知られるきっかけとなります。
また、事件の内容によっては、報道機関が「公然わいせつ容疑で逮捕」と報じることもあり、インターネット上に情報が残るリスクも避けられません。

公然わいせつは、適切な対処ができれば、逮捕を回避するとともに周囲への発覚も最小限に抑えられることが決して珍しくありません。周囲への発覚を避けるためには、できる限り迅速な対応を強くお勧めします。

② 仕事や学校に影響する

逮捕・勾留が長引くと、無断欠勤や授業欠席が続くことになります。
会社員の場合、懲戒処分や解雇の対象となることが多く、特に公務員や教員、医療関係者など社会的信用が重視される職業では、懲戒免職や資格停止などの厳しい処分を受ける可能性があります。

学生の場合も、大学や高校に事件が知られると、停学・退学処分が下されることがあります。
また、将来的に就職活動や資格試験で「犯罪歴の有無」を問われた際に不利益を受けることもあります。

このように、公然わいせつの逮捕は「刑罰以上に社会的信用を失うリスク」が大きく、早期の弁護活動によって身柄拘束を回避することが極めて重要です。

③ 前科が付く恐れがある

公然わいせつ罪で起訴され、有罪が確定すると前科として記録されます。
有罪の確定には、正式裁判による判決だけでなく、略式手続によって罰金刑の略式命令が出され、そのまま確定した場合も含まれます。
つまり、略式罰金であっても「有罪の確定」として前科に該当する点に注意が必要です。

一方、起訴前に弁護士を通じて被害者との示談が成立した場合や、反省の態度が強く認められた場合には、不起訴処分となる可能性もあります。
不起訴になれば前科は付かず、記録上も「犯罪歴」には残りません。

ただし、再犯や常習的な行為が認められる場合は、罰金刑では済まず拘禁刑が科されることもあります。
したがって、逮捕後は「前科を回避できるかどうか」を見据え、できるだけ早い段階で弁護士の助言と弁護活動を受けることが極めて重要です。

公然わいせつの事件で前科を防ぐ手段としては、目撃者との示談が非常に有効です。特定の目撃者がいる事件では、示談の試みを検討することが有益でしょう。

公然わいせつ罪の逮捕への対処法

(1)公然わいせつで逮捕を避ける方法

①自首の試み

逮捕は,逃亡や証拠隠滅を防ぐ目的で行われる捜査手続です。そのため,逃亡や証拠隠滅の恐れが大きいほど逮捕されやすく,逆に逃亡や証拠隠滅の恐れが小さいほど逮捕の可能性は低くなります。

この点,逃亡や証拠隠滅の可能性が低い,との判断を促す動きとして有力なものが自首です。自首は,自ら捜査機関に出頭し,自分の犯罪事実を明らかにする行動であるため,その後に逃亡や証拠隠滅をすると考えられることは通常ありません。そのため,自首を行った場合には逮捕を避けられる可能性が非常に高くなるでしょう。

また,捜査のために必要と思われる証拠をあわせて提出することができれば,証拠隠滅の可能性はより低いとの評価につながり,逮捕をより避けやすくなる結果につながります。

②呼び出しへの対応

公然わいせつ事件で逮捕をしない場合の捜査方法としては,呼び出しを行い,警察などに出頭をしてもらって捜査協力を求める,ということが一般的です。そのため,呼び出しを受ける場合には,逮捕が避けられる可能性が十分にあると言えるでしょう。

もっとも,呼び出しへの対応を誤り,捜査機関が求めるような捜査協力が得られければ,逮捕を招く結果にもなりかねません。呼び出しを受けた場合には,対応次第で逮捕を避けるチャンスであると理解し,適切な対応を尽くすことをお勧めします。
具体的には,呼び出しには可能な限り応じる,問われたことには可能な限り答えるなど,捜査が円滑に進められるような対応ができると,逮捕の回避につながりやすいでしょう。

③謝罪や示談

公然わいせつ事件の場合,目撃者を保護する目的で逮捕される可能性があります。逆に,目撃者を保護する必要が小さいケースでは,それだけ逮捕の必要性も低いということになります。

そのため,特定の目撃者がいる公然わいせつ事件では,目撃者に対する謝罪や示談を尽くすことが逮捕を回避する有力な手段と言えます。当事者間で示談による解決ができれば,逮捕の可能性が低下することはもちろん,最終的な刑事処分も大きく軽減する結果が期待できるでしょう。

④否認事件での事情説明

否認事件で逮捕を回避する場合には,証拠隠滅の恐れがないことを明らかにする動きが有力です。具体的には,事件内容に関する事情の説明を可能な限り行うことで,情報提供に対して積極的な態度であると理解してもらうのが有力でしょう。

心当たりがない場合,捜査の対象となること自体が納得しづらいため,捜査対応も消極的で非協力的なものになってしまう場合が少なくありません。しかしながら,心当たりがないからこそ,積極的に捜査への対応を行った方が結果的に円滑に進み,逮捕回避にもつながりやすいと言えます。

公然わいせつで現行犯逮捕されなかった場合、対応次第で後日の逮捕を回避することができるケースは決して少なくありません。具体的な対応方法は、刑事事件に精通した弁護士に相談することを強くお勧めします。

(2)公然わいせつの逮捕は弁護士に依頼すべきか

公然わいせつ事件の逮捕に関しては,弁護士に依頼の上,弁護士の専門的な案内や対応を仰ぐことが有益でしょう。弁護士への依頼によって,具体的には以下のような利点が見込まれます。

①逮捕リスクの高さが分かる

公然わいせつ事件の場合,逮捕リスクの高さが個別事件の内容等によって様々に異なります。「公然わいせつ事件だから逮捕される,されない」という問題ではないため,個別具体的な事情を踏まえた検討が必要です。

この点,専門性ある弁護士に依頼することで,逮捕リスクの高さを具体的に判断してもらうことが可能です。逮捕リスクの高さは,方針を決める際の重要な判断材料となるため,適切な対応方針を決められる結果にもつながるでしょう。

②逮捕を避けるための具体的手段が分かる

逮捕の回避を目指す必要がある場合,ではどのようにして逮捕を回避すべきか,という問題が生じます。逮捕を避けるための具体的な手段は,事件内容や状況,ご本人にできることの内容などによっても変わってくるでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕回避にとって有益な手段を具体的に把握することが可能です。あわせて,その手段を講じる場合の負担の大きさや効果の程度なども分かるため,自分にとって最適な手段を検討することが容易になります。

③逮捕後の早期釈放を目指せる

公然わいせつ事件の場合,逮捕されたとしてもその後に早期釈放の可能性があるケースは少なくありません。そのため,逮捕されてしまったといって諦めることなく,できる限り早期釈放を目指す手立てを講じることが適切です。

もっとも,具体的にどのような方法で早期釈放を目指すことができるかは,手続に精通した弁護士でないと判断が困難なポイントです。また,実際に早期釈放を目指す動きを取るにしても,その動きは弁護士でないとできないことが多くあります。
そのため,逮捕後においても,早期釈放を目指すため弁護士に依頼するに依頼することが非常に有益と言えるでしょう。

逮捕前後を通じて、弁護士の果たす役割は非常に多くなりやすいです。逮捕された場合や逮捕が予想される場合は、できるだけ速やかに弁護士に相談、依頼することが有益でしょう。

(3)公然わいせつの逮捕に関する注意点

①現行犯逮捕の可能性

公然わいせつ事件は,事件のあった現場で事件が発覚し,現行犯で警察などの取り締まりが行われるケースも少なくありません。特に,はっきりした目撃者がいる場合や,施設内等で起きた場合には,現場に警察が駆け付ける流れになることが多いでしょう。

そうすると,現行犯で問題になった公然わいせつ事件では,そのまま現行犯逮捕されてしまう可能性があるため,逮捕回避の余地がない可能性に注意が必要です。この点,公然わいせつ事件の現行犯逮捕は,必ずしもその後に身柄拘束を続ける想定でないことも多いため,早期釈放を目指す方針へ速やかに切り替えることが有力です。

②事件の記憶がない場合

公然わいせつ事件の場合,泥酔状態で事件を起こしてしまったなど,事件の記憶がないケースも一定数見られます。この点,記憶がない事件で逮捕を避けるためには,「認めているか認めていないかを明確にする」ということに注意するのが適切です。

泥酔状態のため記憶がない,という回答は,法的には認めていないという意味で理解されます。一般的に,認めている事件よりも認めていない事件の方が逮捕の必要性が高いと考えられるため,記憶がないとの回答のみを続けていると,逮捕の可能性を高める結果になり得るでしょう。

そのため,状況などを踏まえて認める必要がある場合には,記憶がないことを前提としつつも,認めるスタンスを明確にするのが適切です。認め事件と理解してもらうことで逮捕回避につながる場合は珍しくありません。

③逮捕前の示談の可否

逮捕前に目撃者と示談ができた公然わいせつ事件は,逮捕されない可能性が非常に高くなります。そのため,逮捕前に示談ができれば最も有益と言えます。

しかしながら,目撃者との示談を目指すには,警察など捜査機関の存在が不可欠です。目撃者の個人情報が分かっているというケースはほとんどないため,捜査機関を通じて目撃者に連絡を入れてもらうステップが必要となります。
そうすると,示談のためには捜査が開始されていることが必要であるため,いきなり逮捕されてしまう事件では逮捕前に示談を試みる余地がないことに注意が必要です。

もっとも,いきなり逮捕されてしまった事件でも,その後に示談を目指すことで早期釈放につながる可能性は十分に考えられます。いずれにしても,目撃者との示談を目指すことは非常に有力な動きとなるでしょう。

公然わいせつの逮捕に関するよくある質問

① 自首すれば逮捕されないか

自首をすれば必ず逮捕を免れるわけではありません。
しかし、自ら進んで警察に出頭し、犯行を申告したという事実は、刑事手続上きわめて重要な情状として扱われます。

刑法第42条では、自首が成立した場合には刑を減軽できると定められており、実務でも「反省の意思を示す行動」として重視されます。
とくに、公然わいせつのような比較的軽微な犯罪で、被害者がいない場合には、逮捕を避けられる可能性が高くなることがあります。

ただし、次の点に注意が必要です。

・犯行の内容や態様が悪質である場合や、逃亡・証拠隠滅のおそれがある場合は、自首しても逮捕されることがあります。
・逆に、早期に弁護士を通じて出頭・申告した場合には、逮捕されずに在宅事件として捜査が進むケースもあります。

公然わいせつの場合、現場映像や通報などで身元が割れているときに放置していると、かえって「逃亡の意思がある」とみなされるおそれもあります。
そのため、できるだけ早く弁護士に相談し、弁護士を通じて出頭のタイミングや方法を調整することが最善です。

弁護士が同席して出頭すれば、事実関係の整理や反省の意向が適切に伝わり、逮捕を回避できる可能性が高まります。

弁護士が主導して自首を進めることで,逮捕を回避できる可能性はより高くなることが通常です。大きな負担やリスクを背負って自首をする以上,その効果を最大限に発揮するため,弁護士と協同して行うことをお勧めします。

② 警察から呼び出しを受けた場合はどうすべきか

1.現行犯で取り締まりを受けた事件

公然わいせつ事件は,現場でトラブルになった場合など,現行犯で取り締まりを受けることも少なくありません。その場合,その場ではとりあえず事態の収拾を優先し,後に呼び出しを行って話を聞く,という流れが一定数見られるところです。

現行犯で取り締まりを受けたケースでは,捜査機関は事件当時,現場で確認した内容を踏まえてその後の呼び出しや取調べを行います。そのため,呼び出しを受けた際には,事件当時の状況や,当日取り締まりを受けたときの話と矛盾しないように留意するのが出発点となるでしょう。
捜査機関が現認した状況と整合しない話をしてしまうと,自分の発言が信用できないとの評価につながりやすく,刑事処分への悪影響が強く懸念されます。また,事件直後の自分の発言と矛盾する発言をしてしまうのも,同様に信用できないとの判断を招く恐れがあるでしょう。

ただし,以前の発言が誤っていたため訂正をする,というのは問題ありません。その場合は,誤っていた内容と訂正したい内容を明確にし,可能であれば誤っていた原因も明らかにすることが望ましいでしょう。
理由や内容が合理的な訂正であれば,刑事処分への悪影響は考えにくいと言えます。

ポイント
事件当時の状況や発言と矛盾しないことに留意する
合理的な訂正は問題なく可能

2.初めて呼び出しを受けた事件

特に事件当時トラブル等になっておらず,後日になって初めて呼び出しを受けた場合,捜査機関としては,事前に収集した証拠と呼び出し後の供述が一致するかどうか,という点を確認することになります。また,関係者であると特定して呼び出していることを踏まえると,事件の内容についてある程度確かな裏付けを持っていることが見込まれます。

そのため,基本的には自身の記憶をありのまま話すことを念頭に置くのが合理的でしょう。弁護士へのご相談では,「認めると不利益になるのではないか」という悩みを示されることも少なくありませんが,実際にはむやみに認めない態度を見せる方が不利益になりやすいと言えます。

もっとも,記憶に反して疑いを認める必要はありません。認めるも認めないも含めて,自身の記憶をありのままに表明していくことが適切な対応になりやすいところです。

ポイント
記憶の通りにありのまま話す
記憶に反して認める必要もない

3.事件の記憶や心当たりがない場合

公然わいせつ事件について呼び出しを受けたものの,事件に関する記憶がなかったり,該当する出来事の心当たりがなかったりする場合には,まず認否を明確にすることをお勧めします。

記憶や心当たりがない場合,その理由は様々です。そして,具体的な理由によって適切な対応方法は異なります。泥酔状態であって記憶が混濁しているケースと,そもそも事件とのかかわりがないケースでは,認否が真逆になるため,対応方針も真逆になることが見込まれるでしょう。

そのため,まずは疑われている事柄(被疑事実)を認めるべきかそうでないか,という区別を行うことが出発点となります。
認めるべき事件では,記憶がないことを理由に認めていないと理解されないように注意するのが重要な対応です。一方,認めるべきでない事件では,心当たりがないことを一貫して述べ続け,安易に自身の非を認めるような話をしないことに注意するべきでしょう。

ポイント
認否を明確にし,認否に沿った対応をするべき
認否の方針は,記憶がない理由による

③ 弁護士に依頼するとどんな活動ができるか

公然わいせつで逮捕された場合、弁護士の早期介入が重要です。
弁護士が行う主な活動は次のとおりです。

・身柄解放の働きかけ:勾留請求を防ぎ、釈放や勾留取消を求めます。
・取調べへの助言:不利な供述を避けるため、取調べ対応を指導します。
・示談交渉:被害者や関係者への謝罪・弁償を代理で行い、不起訴の可能性を高めます。
・前科回避・影響の軽減:検察官への意見提出や更生の資料整備を通じて、社会的損失を最小限に抑えます。

弁護士に依頼することで、釈放や不起訴、前科回避につながる可能性が高まるため、できるだけ早い段階で相談することが望ましいです。

公然わいせつの事件は、逮捕されても早期釈放の実現できるケースが少なくありません。逮捕後にはできるだけ速やかに弁護士へ依頼することをお勧めします。

公然わいせつに強い弁護士をお探しの方へ

捜査段階で公然わいせつと扱われる事件の中には,本当に公然わいせつ罪に該当するのか,法的には不明確な事件も少なくありません。
また,明らかに公然わいせつ罪に該当する事件の場合には,事後的に適切な対応を尽くすことで,処分の軽減,ひいては不起訴処分が獲得できることも考えられます。
いずれの場合も,具体的な対応方針の決定に際しては,刑事弁護に精通した弁護士へのご相談・ご依頼が適切でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

当て逃げの示談金相場を弁護士が解説!被害者が対応すべき内容まで紹介

大切にしていた車に傷をつけられ、そのまま立ち去られてしまう「当て逃げ」。

犯人に対する憤りはもちろん、「修理代は自腹になるのか」「いくらくらい請求できるのか」という不安で頭がいっぱいになっているのではないでしょうか。

適切な対応を誤れば、解決までの負担が大きくなる可能性もあります。こうした事態を避けるためには、交通事故加害者の弁護に精通した弁護士へ早期に相談することが重要です。

本記事では、交通事故加害者が弁護士に依頼するメリットや、特に依頼すべきケースについて弁護士が分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

当て逃げの示談金相場はいくら?

当て逃げにおける示談金の相場は、一概に「一律◯◯円」と決まっているわけではありません。なぜなら、当て逃げは原則として「物損事故」として扱われ、賠償額は「発生した実損害の合計」によって算出されるからです。

一般的には数万円から数十万円程度になることが多いですが、高級車の破損や、営業車が使えなくなったことによる損失が含まれる場合は、100万円を超えるケースも存在します。

  • 小規模な接触: 3万〜10万円(バンパーの擦り傷など)
  • 中規模な破損: 10万〜30万円(ドアの交換、複数のパネルの板金)
  • 大規模な損壊: 50万円以上(フレームの歪み、エンジン系統への波及)

このように、損害の程度によって金額は大きく変動します。

当て逃げの示談金相場を左右する5つの損害項目

当て逃げ被害で請求できる示談金の内訳は、主に以下の5つの項目で構成されます。それぞれの内容を正しく理解することが、適正な賠償を受けるための第一歩です。

1. 車両の修理費用

最も基本となる項目です。事故によって壊れた箇所を元に戻すために必要な費用が請求可能です。

ただし、修理費が事故当時の車両の時価額を超える場合は「経済的全損」とみなされ、時価額までしか支払われないことがある点に注意が必要です。

2. 代車使用料

修理期間中に車が使えないことで、代車を借りる必要がある場合に認められます。

代車の必要性が認められる必要があり、通常は修理にかかる相当期間(1〜2週間程度)のレンタカー費用が目安となります。

3. 評価損(格落ち損害)

修理をしても事故歴が残ることで、車の転売価値が下がってしまう損害のことです。

新車登録から日が浅い場合や、高級車の場合に認められやすく、修理費の20〜30%程度が相場となることが多いです。

4. 休業損害

被害者がタクシーや運送業などの営業車を当て逃げされた場合、修理期間中に得られたはずの利益を請求できます。

一般の自家用車の場合は「休業損害」として認められることは珍しいでしょう。

5. 迷惑料や謝罪金

原則として、物損事故では「慰謝料」は認められません。

しかし、加害者側が誠意として「示談金」に上乗せして支払う場合や、被害者が精神的に強い衝撃を受けた例外的なケースでは、調整金として含まれることがあります。

被害者が当て逃げされた時に踏むべき3つの手順

当て逃げ被害に遭った際、パニックにならずに以下の手順を踏むことが、後の示談交渉で有利に働きます。

ここからは、被害者が当て逃げされた時に踏むべき3つの手順を詳しく解説します。

1. 警察への届け出と事故証明書の取得

当て逃げ被害に気づいたら、たとえ数時間後であっても必ず警察へ届け出てください。 なぜなら、警察へ届け出なければ公的な書類である「交通事故証明書」が発行されないからです。

この証明書がないと、後に加害者が判明した際に損害賠償を請求したり、ご自身の車両保険を使用したりすることができません

現場に警察官を呼び、実況見分を行ってもらうことで、事故の客観的な状況が記録されます。 「大した傷じゃないから」と自己判断せず、必ず道路交通法上の報告義務を果たすことが、法的な権利を守る第一歩となります。

2. ドライブレコーダーや防犯カメラの回収 証拠確保の重要性。

警察の捜査を待つだけでなく、自ら証拠を確保する姿勢が極めて重要です。 当て逃げは「逃げ得」を許さないためのスピード勝負となります。

ご自身の車にドライブレコーダーが搭載されている場合は、書き保存されないようにすぐにSDカードを抜き取り、パソコン等にバックアップを取ってください。

また、スーパーやコンビニの駐車場であれば、施設管理者に防犯カメラの映像確認を依頼しましょう。警察を通じて依頼すれば開示してもらえる可能性が高まります。

車の色、車種、ナンバーの一部、運転者の特徴など、断片的な情報でも複数集めることで、加害者の特定に至る確率は格段に上がります。

3. 自身の保険会社への連絡

警察への届け出と並行して、ご自身が契約している任意保険会社へ事故の連絡を入れてください。

加害者が逃走している現時点では、修理費用の負担が不明確なため、保険会社のアドバイスを受けることが安心に繋がります。

とくに「弁護士費用特約」が付帯しているかどうかを必ず確認してください。

当て逃げのような少額の物損事故では、弁護士費用が賠償額を上回ってしまう「費用倒れ」が懸念されますが、この特約があれば自己負担なしで弁護士に調査や交渉を依頼できます。

犯人が見つかる前であっても、今後の対応方針をプロと相談しておくことで、精神的な負担も大きく軽減されるはずです。

当て逃げの犯人が見つからない・示談金が払われない時の対処法

警察の捜査を尽くしても加害者が特定できない、あるいは特定できても相手が無保険で支払い能力がないという事態は珍しくありません。

しかし、加害者から直接支払われないからといって、必ずしも全てを自腹で賄わなければならないわけではありません。

被害者が利用できる法的な救済制度や保険の仕組みについて詳しく解説します。

自分の車両保険(無保険車傷害特約など)を使う

加害者が不明な場合、最も現実的な解決策はご自身が加入している「車両保険」を利用することです。

車両保険には、相手がわからない当て逃げでも補償対象となるタイプがあります。これを利用すれば、時価額の範囲内で修理費用をカバーできます。

また、自分や同乗者が怪我を負った場合には「人身傷害補償保険」や「無保険車傷害特約」から支払いを受けることが可能です。

ただし、車両保険を使用すると翌年度のノンフリート等級が3等級下がり、数年間にわたって保険料が増額される点には注意が必要です。

修理代金と、将来的な保険料の増額分を天秤にかけ、どちらが経済的に有利かを保険会社や代理店にシミュレーションしてもらった上で判断することをおすすめします。

政府保障事業の利用(ひき逃げの場合)

加害者が特定できず、かつ被害者が死傷した「ひき逃げ」のケースでは、国が運用する「政府保障事業」による救済を受けられる可能性があります。

これは自賠責保険の対象とならない被害者(加害者不明や無保険車による事故)に対し、国が自賠責保険と同等の限度額内で損害を補填する制度です。

ひき逃げによって怪我を負い、治療費などの負担が重い場合には大きな助けとなります。

ただし、この制度はあくまで「対人賠償(身体への損害)」のみが対象であり、車両の修理代といった「物損」については一切支払われません。

また、健康保険や労災保険、ご自身の保険から既に支払いを受けた分は差し引かれるため、最終的なセーフティネットとしての性格が強い制度であることを理解しておきましょう。

まとめ:当て逃げの示談金相場を正しく把握し早期解決を

当て逃げ被害は、単なる金銭的損害だけでなく「逃げられた」という精神的苦痛が伴うものです。

まずは冷静に警察へ届け出て、客観的な事故の証拠を積み上げることが、解決への唯一の近道となります。

示談金の相場や損害項目を正しく理解し、もし加害者が特定できない場合でも、ご自身の保険や国の制度を賢く活用することで、自己負担を最小限に抑えることが可能です。

交通違反は前科になるか?交通違反で前科を防ぐための方法は?弁護士が詳細解説

●交通違反はどんなものが刑事事件になるか?

●交通反則金とは何か?

●交通違反の手続の流れは?

●交通違反は逮捕されるか?

●交通違反で不起訴になるためにはどうすればいいか?

といった悩みはありませんか?

交通違反をしてしまった場合、「これで前科がついてしまうのではないか」と不安に思う方は少なくありません。実際、すべての交通違反が前科につながるわけではなく、違反の種類や手続きの進み方によって結果は大きく異なります。本記事では、交通違反が前科になるケースとならないケースを整理し、交通違反の前科を防ぐ方法を弁護士が分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

前科になり得る主な交通違反

自動車運転時における交通違反のうち,刑事事件として処罰の対象となるものとしては,以下のケースが挙げられます。

①無免許運転

自動車を運転するための資格(免許)を持たない状態で,公道で運転した場合に成立します。
罰則は,「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされています。

また,無免許運転であることを知りながら同乗した場合,同乗者も刑事処罰の対象になります
この場合の罰則は,「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」とされています。
加えて,無免許運転であることを知りながら自動車を提供した場合も刑事処罰の対象となり,
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。

無免許運転には,免許を取得したことのない場合のほか,免許の取消中,免許の停止中,免許の対象外の車両を運転した場合が含まれます。
なお,眼鏡の着用やAT限定など,運転条件に反した場合には,無免許運転でなく「免許条件違反」となります。

②酒気帯び運転

酒気帯び運転とは,呼気1リットルあたり0.15ミリグラム以上のアルコールを含有した状態で自動車を運転することを言います。
警察が取り締まりにおいて行う呼気検査は,この基準を満たしているかどうかを確認するために行われています。
酒気帯び運転の罰則は,「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされています。

なお,血液1ミリリットル中に0.3ミリグラム以上のアルコールを含んだ状態での運転行為も,同様に酒気帯び運転に該当します。

③酒酔い運転

酒酔い運転とは,アルコールの影響で正常な運転ができないおそれがある状態で運転をすることを言います。
酒気帯び運転よりも悪質な飲酒運転という位置づけですが,呼気や血液中のアルコール濃度は関係しません。
酒酔い運転の刑罰は,「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされています。

酒気帯び運転に該当する場合の典型例としては,直進歩行できない,ろれつが回っていない,周囲の状況を認知できていない,などが挙げられます。
飲酒運転の取り締まりで警察官が運転者を歩行させるのは,この酒酔い運転に該当しないかを確認しているわけですね。

④スピード違反(一般道におけるもの)

スピード違反は,法定速度を超過した速度で走行する交通違反ですが,刑事罰の対象となる速度は一般道と高速道路で異なります。
一般道の場合,制限速度を時速30キロメートル以上超過した場合に,刑事事件として刑事罰の対象となります。
この場合の罰則は,「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

なお,時速30キロメートル未満の速度超過である場合,交通反則金の対象となるため,交通反則金を支払えば,刑事事件として刑事罰の対象になることはありません。

⑤スピード違反(高速道路におけるもの)

高速道路のスピード違反は,時速40キロメートル以上の速度超過がある場合に,刑事事件として刑事罰の対象となります。
時速40キロメートル未満であれば,交通反則金制度の対象となるため,反則金を支払うことで刑事事件にならず終了することが可能です。

刑事事件となる場合の罰則は,一般道と同じく「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

参照:道路交通法 e-Gov法令検索

交通違反は逮捕されたら前科になるのか

①交通違反における逮捕と前科の関係

逮捕されたからといって必ず前科がつくわけではありません。
前科とは、刑事裁判で有罪判決を受けた経歴を指します。つまり、裁判で有罪が確定しない限り、前科にはなりません。

逮捕と前科の違い

逮捕はあくまで「捜査のための一時的な身柄拘束」であり、罪が確定したことを意味しません。
警察や検察が事実関係を確認し、起訴されるかどうかが次の重要な分岐点となります。

逮捕後のおおまかな流れ

・検察官による起訴・不起訴の判断
 警察から事件が送致された後、検察官が起訴するかどうかを決定します。
・起訴された場合は刑事裁判へ進行
 正式起訴または略式起訴のいずれかの形で裁判が行われます。
・裁判で有罪判決が確定すると前科となる
 罰金刑・執行猶予付き判決・懲役刑など、いずれも有罪が確定すれば前科に該当します。
・不起訴処分・無罪判決の場合は前科にならない
 この場合、法的には罪を犯した経歴として扱われません。

罰金刑も「前科」に含まれる

交通違反などの軽微な事件では、略式起訴により罰金刑が科されるケースが多くあります。
この罰金刑も法律上は有罪の判決(決定)にあたるため、前科には該当します。

前科とは、「刑罰を受けた経歴」と理解するのが最も分かりやすいでしょう。罰金刑も刑罰の一種であるため、罰金刑を受けた経歴は前科に該当することになります。

②交通違反で逮捕されるケースとは

交通違反の事件は,事件類型として決して重大なものとは言い難いため,逮捕されないことも多く見られます。
心当たりのある場合は,事実を認め,真摯に協力する姿勢を示せば,逮捕されることは少ない傾向にあるでしょう。

しかし,以下のような場合には逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

交通事故が伴っている場合

交通違反の結果交通事故が発生している場合,交通違反の程度も著しいことが多く,事件そのものも重大視されることが多いです。
そのため,事件の重大性を踏まえて逮捕に踏み切る場合が見られます。

酩酊状態で会話にならない場合

飲酒運転のケースで,あまりの酩酊状態で会話にならない場合には,逮捕の可能性が高くなりやすいです。
捜査協力が得られるかどうか分からないことはもちろんですが,酩酊状態で運転する行為の違法性が重大であると判断され,逮捕につながることが多く見受けられます。

出頭の求めに全く応じない場合

逮捕をしないのは,出頭を求めたときに出頭をしてくれることが大前提となります。
そのため,警察や検察が取調べなどのために出頭を求めても応じてくれないとなると,逮捕をする必要が生じます。
出頭の求めに応じないメリットは通常ないので,捜査機関から出頭を求められた際には可能な範囲で対応に努めるようにしましょう。

交通違反は、「違反の内容」と「違反行為の結果」が重大であればあるほど逮捕の恐れが大きくなります。重大性があるケースでは、弁護士に相談するなどして逮捕回避を積極的に目指しましょう。

交通違反で切符が切られない場合は前科になるのか

切符が切られない場合、通常の刑事手続の対象となります。
この点、多くのケースでは赤切符が切られるよりも重大な事件とみられていることが多く、前科になることが一般的でしょう。

赤切符が交付されず,通常の刑事手続の対象となる場合,その流れは他の犯罪類型と同様です。
具体的には,以下の流れで進行します。

警察の取調べ等

検察庁への送致

検察での取調べ等

検察官による起訴または不起訴

(起訴された場合)刑事裁判

赤切符が交付されないケースとしては,現行犯でなかった場合現行犯で取り締まられたが事件の程度が重大だった場合の2つが挙げられます。
後者の例としては,時速80キロメートル以上の速度超過があります。交通反則金の対象ではなく,かつ赤切符を交付できるほど軽微でもないため,赤切符を交付せず通常の刑事手続の対象とすることになりやすいです。

交通事故で前科にならない場合

①物損事故の場合

物損事故では基本的に前科が付くことはありません。

物損事故とは

物損事故とは、人の死傷を伴わず、車両や建物・ガードレールなどの「物」だけに損害が生じた交通事故を指します。
このような事故は刑法上の犯罪に該当せず、加害者が刑事責任を負うことは原則としてありません。
そのため、裁判で有罪判決を受けることがない限り、前科が付く心配はないといえます。

適用される責任と手続

物損事故では、主に次のような責任が発生します。

民事上の責任:損害を与えた相手に対する損害賠償義務
行政上の責任:道路交通法に基づく違反点数の加算や反則金の納付

これらはいずれも刑事罰ではなく、前科に該当しません。

前科が付く可能性のある例外的なケース

ただし、以下のような行為を伴う場合は、刑事処分の対象となるおそれがあります。

・事故現場から逃走した場合(当て逃げ)
 → 道路交通法上の「報告義務違反」や「救護義務違反」に該当し、罰則の対象となる。
・事故の報告を怠った場合
 → 警察への届出をしないと「事故報告義務違反」で処罰される可能性がある。
・危険運転や著しい過失があった場合
 → 運転態様が悪質であれば、過失運転致死傷罪などが成立することもある。
・飲酒運転や無免許運転での物損事故
 → 事故そのものが軽くても、交通違反行為によって刑事罰が科され、前科となることがある。

このように、物損事故自体では前科は付かないものの、事故後の行動や違反内容によっては刑事責任を問われる場合がある点に注意が必要です。

適切な対応の重要性

「物損事故なら大丈夫だろう」と油断せず、事故を起こした際は必ず警察へ報告し、相手方とのやり取りも記録に残しておくことが大切です。不適切な対応を取ると、軽微な事故であっても刑事事件化することがあります。

人の乗っていた車との事故でも、人身損害がなければ物損事故に該当します。物損事故に当たるかは、交通事故証明書上「人身事故」とされるか「物件事故」とされるかによって区別されます。

②不起訴になった場合

不起訴処分となった場合、前科は付きません。
検察官が起訴を行わないと判断した時点で、刑事手続は終了し、裁判で有罪判決を受けることがないためです。

不起訴処分とは

不起訴処分とは、捜査の結果として「裁判にかける必要がない」と検察官が判断した場合に出される処分です。
「交通違反をしてしまった」「事故を起こしてしまった」と不安を感じる方も多いですが、
不起訴処分は前科とは全く異なるものであり、法的には有罪経歴にはなりません。

不起訴処分の主な種類

不起訴処分には、次の3つの類型があります。

・嫌疑なし:犯罪の事実そのものが認められない場合
・嫌疑不十分:証拠が不十分で有罪立証ができない場合
・起訴猶予:犯罪の成立は認められるが、情状などを考慮して起訴を見送る場合

特に「起訴猶予」は、初犯や軽微な事故・違反で、被害者との示談や反省の態度が見られる場合に選択されることが多く、
実務上も交通事故で最も多い不起訴理由の一つです。

前歴と前科の違い

不起訴処分となった場合でも、警察や検察には「前歴」として記録が残ることがあります。
ただし、前歴は捜査上の内部資料に過ぎず、前科のように法的な不利益が生じるものではありません。
そのため、不起訴処分を受けたとしても、一般的に就職・資格取得・免許更新などに影響することはほとんどありません。

不起訴処分の獲得は、刑事事件の最大の目標と言っても過言ではありません。交通違反の場合、軽微なものでは不起訴処分を目指せる場合も少なくないため、弁護士への相談など十分な検討をお勧めします。

交通違反で前科を防ぐ方法

①弁護士に相談

交通事故や交通違反で前科を避けたい場合、最も確実な方法は弁護士への早期相談です。
弁護士は専門的な法律知識と実務経験をもとに、あなたの状況を的確に分析し、前科を回避するための最善策を具体的に提示してくれます。

「自分で対応できるかもしれない」「大したことではないだろう」と考えてしまう方も少なくありませんが、
実際には、交通違反や人身事故の処理は複雑で、初動を誤ると前科につながるリスクが高まります。
特に人身事故や飲酒運転など、刑事責任が問われるおそれのあるケースでは、専門家の助力が不可欠です。

弁護士に相談することで、次のようなサポートを受けることができます。
事故や違反の経緯をもとにした法的評価と見通しの説明、不起訴処分を目指すための戦略立案、
被害者との示談交渉の支援、そして検察官との交渉における専門的な対応などです。
これらはいずれも、前科を防ぐうえで極めて重要な役割を果たします。

特に、逮捕や送検が行われた場合には、起訴されるまでの時間が限られており、
弁護士が早期に介入することで不起訴や略式処分に導ける可能性が高まります。
早ければ早いほど、弁護活動の効果を最大限に発揮できるでしょう。

現状と見通しを把握することは、交通違反で前科を防ぐための第一歩です。交通違反の刑事処分に精通した弁護士に相談できれば、見込まれる処分も精度高く案内してもらうことが可能です。

②弁護活動を依頼

弁護士に依頼して本格的な弁護活動を行うことで、前科を回避できる可能性が大幅に高まります。
単なる相談だけでなく、実際に弁護人として活動してもらうことも十分に検討しましょう。

弁護活動の内容は、認め事件であるか否認事件であるかによって、以下のように異なります。

認め事件の場合

犯罪事実を争わない場合,起訴か不起訴かという点は情状面のみの問題となります。
つまり,検察官が大目に見る場合には不起訴となる可能性があり,大目に見てもらえないと起訴される,ということですね。

そして,検察官に大目に見てもらえるかどうかの判断材料としては,以下のような事情が考えられます。

反省状況
深い反省が認められているかどうかという点です。もっとも,反省していれば不起訴になるのではなく,反省が見られない場合は起訴に傾きやすい,との理解が適切でしょう。

再発防止
事件の原因を特定し,その原因が二度生じないような対策を取ることで,再発防止に努めている場合には,不起訴を検討する判断材料になり得ます。交通違反の場合,今後自動車を運転しない,というのが最も大きな再発防止策ですが,現実的に難しい場合には,原因を踏まえた具体的な再発防止策を検討することが望ましいでしょう。

贖罪の行動
罪を償うことを目的とした行動をしている場合には,それを踏まえて不起訴の検討がなされる場合もあります。
代表的なものとしては,贖罪寄附が挙げられます。罪を償う目的で金銭を寄付する行為です。
交通違反の場合,交通事故被害者の支援を行う基金などに寄付を行うことで,贖罪の気持ちを行動に表す動きが一例と考えられます。
なお,贖罪の行動は,それをしたことで劇的に結果が変わるという性質のものではなく,起訴不起訴の判断が微妙な場合に最後の一押しとなり得る,という位置づけと理解するべきでしょう。

否認事件の場合

否認事件の場合,不起訴になるかどうかは,検察官が犯罪事実を立証できると判断するかどうかによって決まることになります。
検察官としては,起訴した場合に,裁判所に犯罪事実を認めてもらえなければ無罪となってしまうため,無罪の恐れがある場合には起訴できないと判断するのが一般的です。
そのため,検察官に対して犯罪事実が立証し得ないことを説得的に主張することが適切でしょう。

交通事故や交通違反の前科に関するよくある質問

①交通違反の前科は生活に影響しない?

交通違反の前科は、決して無関係とはいえません。
「前科があっても普通に暮らせる」と考える方もいますが、実際には就職・資格・海外渡航など、人生の重要な局面で一定の制約を受ける可能性があります。

まず、就職活動においては、履歴書の賞罰欄に前科を記載すべき場合があります。
特に、運送業・警備業・金融機関など、信頼性や安全性が重視される職種では、採用審査の際に前科の有無が考慮されることがあります。
過去に罰金刑などの軽微な前科であっても、採用判断に影響する場合があるため注意が必要です。

また、資格取得や業務継続にも影響が及ぶことがあります。
弁護士、公認会計士、税理士、医師などの国家資格では、一定の犯罪歴があると欠格事由に該当し、登録や業務が制限される場合があります。
すでに資格を持っている人でも、刑事罰の内容によっては業務停止や資格剥奪などの懲戒処分を受けることもあります。

さらに、海外渡航やビザの取得にも影響する可能性があります。
アメリカやカナダなど一部の国では、前科があると入国を拒否されたり、ビザの審査が厳格化されたりするケースがあります。
ビザ申請時に前科の申告を求められる国も多く、虚偽申告をすると今後の入国が禁止されることもあります。

もっとも、全ての交通違反の前科が重大な制限につながるわけではありません。
軽微な違反や略式罰金程度であれば、日常生活に支障をきたすことはほとんどなく、通常の社会生活を送る上で大きな問題となるケースは少ないでしょう。
ただし、飲酒運転やひき逃げなど悪質な交通犯罪の場合は、刑罰が重く社会的信用の回復にも時間を要するため、慎重な対応が求められます。

②交通違反の前科は消えるか?

交通違反で前科が付いてしまった場合、「この記録は一生残るのではないか」と不安に感じる方も多いでしょう。
結論から言えば、前科の記録自体は法的には完全に消えることはありません。
しかし、時間の経過とともに社会的な影響は大きく軽減され、実生活で支障をきたすことはほとんどなくなっていきます。

前科に関する記録は、検察庁や裁判所によって保管され、法的には永久的に保存されます。
そのため、行政機関などが調べれば確認可能ですが、一般の企業や個人が閲覧できるものではありません。
つまり、前科の記録は残っても、日常生活で問題となることはほとんどないのが実際のところです。

もっとも、前科の効力や社会的影響は、一定期間の経過によって自然に緩和されていきます。
たとえば、罰金刑の場合は刑法34条の2により、刑の言渡しから5年が経過するとその効力が失われます。
また、執行猶予付き判決の場合は、猶予期間が満了すれば刑の効力がなくなり、形式的には前科としての扱いも軽くなります。
これらの期間を経過すれば、資格制限などの法的な不利益も解除される仕組みになっています。

参照:刑法 – e-Gov 法令検索

③前科と前歴の違いは?

前科と前歴は似ているようで、法的にはまったく異なる概念です。
前科とは、刑事裁判で有罪判決を受けた経歴を指します。罰金刑・懲役刑・執行猶予付き判決など、いずれかの刑が確定した場合に前科が付きます。
一方、前歴とは、警察や検察などの捜査機関に事件として扱われた経歴のことを指します。逮捕や書類送検を受けた場合だけでなく、任意で事情聴取を受けた場合など、正式な起訴や有罪判決に至らなかったケースも含まれます。

このように、前歴はあくまで捜査段階での経歴を示すものであり、処罰を受けたことを意味するものではありません。
そのため、前歴があっても「犯罪者」として扱われることはなく、法的にも不利益が生じることはありません。

たとえば交通違反の場合、青切符による反則金の支払いは刑事手続に該当しないため、前科にも前歴にもなりません。
しかし、赤切符を交付され、略式起訴のうえ罰金刑が確定すると、それは前科にあたります。
この違いは、裁判を経て有罪判決が確定したかどうかにあります。

整理すると、次のように区別できます。

・前歴:警察や検察に事件として扱われた経歴(逮捕・送検・事情聴取などを含む)。
    起訴されず、不起訴処分となった場合も含まれる。
・前科:起訴され、裁判で有罪の裁判が確定した経歴。

交通違反のような比較的軽い事案であっても、対応を誤ると前科に発展する場合があります。
前科を避けるためには、違反の重大性を正しく理解し、早期に弁護士へ相談して適切な対応を取ることが重要です。

交通違反の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

交通違反の事件は,交通反則金制度や三者即日処理など,独自の手続もある点が他の事件類型にない特色です。そのため,交通違反の事件処理に精通していないと,正しい見通しを持って対処することは困難です。
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交通事故加害者に強い弁護士へ依頼するメリットとは?特に依頼するべきケースとは?弁護士解説

交通事故の加害者となってしまうと、被害者への賠償問題や刑事処分、さらには社会的信用の低下など、さまざまな不安に直面します。適切な対応を誤れば、解決までの負担が大きくなる可能性もあります。こうした事態を避けるためには、交通事故加害者の弁護に精通した弁護士へ早期に相談することが重要です。本記事では、交通事故加害者が弁護士に依頼するメリットや、特に依頼すべきケースについて弁護士が分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

交通事故加害者に生じる責任

自動車の運転によって他者との事故が発生し,被害者がケガをした場合には,加害者に複数の責任が発生し得ます。
通常,交通事故の加害者に生じる責任は,以下の3つです。

①刑事責任

交通事故(人身事故)は,「過失運転致傷」又は「過失運転致死」という犯罪に該当するのが通常です。
そのため,犯罪に対する処分を受ける責任,つまり刑事責任が発生し得ることになります。
刑事責任が生じる場合,刑罰という形で国から被疑者(加害者)に対して科せられます。

②民事上の責任

交通事故が発生すると,加害者から被害者に対して金銭賠償を支払う義務が発生します。
車両の修理費,入通院治療費,休業損害,慰謝料等が代表的です。
このような被害者と加害者との間の金銭面の問題を,一般に民事事件といい,民事事件における加害者の賠償責任が民事責任です。

③行政上の責任

交通事故加害者となる場合には,何らかの交通違反が伴っていることが通常です。
そのため,交通違反に対して自動車免許の違反点数が発生します。
自動車免許の違反点数に関する事件は行政事件に位置付けられますが,免許の違反点数は行政上の責任ということができます。

各責任の内容をまとめると,以下の通りです。

①刑事事件国が加害者に対して刑罰を科す
②民事事件被害者が加害者に金銭賠償を請求する
③行政事件加害者の自動車免許に違反点数がつく

交通事故加害者に強い弁護士に相談するメリット

交通事故を起こしてしまった場合、被害者対応や保険会社との交渉、刑事処分の見通しなど、多くの問題が同時に発生します。こうした状況では、交通事故加害者の弁護に精通した弁護士に早期に相談することが非常に重要です。

弁護士はまず、事故の状況や証拠を正確に整理し、刑事事件化を防ぐための示談交渉や、不起訴処分・減刑を目指すための対応を行います。特に被害者との関係が悪化している場合でも、弁護士が間に入ることで冷静かつ法的に適切な解決が可能となります。

また、保険会社とのやり取りでも弁護士が代理人となることで、過失割合の妥当性損害賠償額の公平性を専門的に判断してもらえる点も大きなメリットです。自ら対応するよりも、結果として経済的・心理的負担を大幅に軽減できるでしょう。

交通事故加害者に強い弁護士は、刑事・民事の両面から事件を総合的にサポートし、最も望ましい解決へ導きます。

ポイント
刑事事件化を防ぐ示談交渉不起訴・減刑を目指す対応が可能
・被害者との直接交渉を避け、冷静で適法な解決が図れる
保険会社との交渉を代理し、過失割合・損害額の妥当性を確保
・専門知識に基づき、刑事・民事の両面から総合的にサポート
・早期相談により、精神的・経済的負担を大幅に軽減できる

実際に弁護士へ相談する際には、以下の各点に注意しましょう。

弁護士に相談する際の準備

①事故前後の状況をまとめる

交通事故加害者として捜査を受けることになる場合,その前後の状況によって刑事責任の重さや処分の見通しが大きく変わってくる場合があります。そのため,事故の直前直後の状況に関しては,できる限り漏れなく弁護士に共有することが適切です。
弁護士に共有すべき事故前後の状況としては,以下の点が挙げられます。

まとめるべき事故前後の状況

1.事故前の交通違反の有無
→飲酒運転,無免許運転,速度超過など

2.被害者の視認状況に関する事情
→どの時点で被害者を視認できたか,ライトやウインカーの有無はどうだったか等

3.当事者間の優先関係に関する事情
→信号表示など

4.事故後の対応
→その場を離れた事実があるか,誰が警察に通報したか等

②弁護士への要望をまとめる

弁護士選びに際しては,弁護士に依頼した場合に何を実現したいか,弁護士にどのような弁護活動を求めたいか,という要望を整理しておくことをお勧めします。

交通事故の場合,幸いにも過失犯であることから,それほど重大な刑罰の対象となることは決して多くありません。初犯で実刑判決の対象となってしまうのは,飲酒運転やひき逃げが伴ったケース,死亡事故で落ち度があまりに大きいケース,被害者が多数のケースなど,限定的ということができます。
そうすると,実刑判決さえ避けられれば足りる,という場合,その実現のためにどれほどのコストを費やすべきかは慎重な判断が望ましいでしょう。

一方,交通事故は機械的な処分も少なくありません。そのため,ケースによっては起訴を防ぐ手段がないという場合もあり得るところです。起訴を前提に,公開の裁判で適切な対応をすることを弁護活動の主な目的とする場合も考えられるでしょう。
ただ,この場合,不起訴という要望は実現が困難ということになります。不起訴を唯一の目的に弁護士選びをしているのであれば,起訴を防ぐ手段に乏しいと後から分かった場合,深刻なミスマッチの原因となりかねません。

弁護士への要望を整理することは,適切な弁護士選びをするため非常に重要な準備と言えるでしょう。

そもそも希望できることの選択肢が分からない、という場合には、その点の疑問も含めて弁護士に相談するとよいでしょう。一般的に目指す方針の選択肢やメリット・デメリット等を案内してもらうことが可能です。

③迷いや悩みを言語化する

交通事故加害者となった場合に,弁護士に解決してほしい悩みは,個別のケースや当事者の希望によって様々に異なりやすいものです。取調べ対応に苦慮しているケース,被害者対応が円滑に進んでいないケース,保険未加入のため金銭賠償の方法に悩んでいるケースなど,他の事件類型よりも悩みに幅が生じやすいのも交通事故の特徴の一つでしょう。

そのため,弁護士から希望する案内をしてもらうための前提として,自分が抱えている迷いや悩みを,できるだけ具体的に言語化しておくことをお勧めします。弁護士は,自分から全て網羅的に案内するのでなく,相談者側の疑問に回答する形を取る場合が多いため,準備を怠ってしまうと希望する案内が得られない恐れもあり得るところです。

④予算を決める

弁護士への依頼には,やむを得ず弁護士費用の負担が必要となります。もっとも,具体的な弁護士費用の金額は,それぞれの法律事務所により異なるため,同じ弁護活動に対する弁護士費用が事務所ごとに違う可能性もあり得ます。

そのため,弁護士選びに際しては,その法律事務所の費用を支払うことが可能かを判断するため,予め予算を決めておくことが適切です。予算のイメージを弁護士側と共有することで,予算内で弁護活動ができるかどうかを案内してもらえるほか,弁護士によっては予算内で可能な弁護活動の内容や契約内容を柔軟に案内してもらえる可能性もあります。

弁護士に相談するときの注意点

①保険会社の対応との関係

「被害者との示談は保険会社に任せていいのか」というご質問は,交通事故加害者の立場になった方からのご相談として非常に多く寄せられるものです。この点を正しく把握するためには,まず保険会社の役割を理解することが必要になります。

保険会社の役割は,加害者の代わりに被害者へ支払をするという点にあります。裏を返すと,その支払の限りでのみ,保険会社は加害者の代わりになることができる,という立場にあります。
もっとも,交通事故には金銭の支払の面(=民事事件)のみでなく,刑罰の面(=刑事事件)も同時にあります。保険会社は,民事事件に関する示談は代わりに行ってくれますが,刑事事件に関する対応には介入することができません。

そのため,「被害者との示談は保険会社に任せていいのか」という点への回答としては,「民事事件の面については任せてよい」となるでしょう。保険会社の行う示談が,刑事事件に対する十分なサポートではないというポイントは,十分に注意することをお勧めします。

保険会社は、刑事処分に関与することのできない立場であり、刑事処分に対する関心もないため、刑事手続に対する対応は期待できません。保険に入っているからと丸投げしてしまうことなく、保険でカバーされる範囲はどこまでなのかを十分に整理することが非常に重要です。

②被害者への支払が生じる可能性

自動車保険(特に任意保険)に加入している場合,被害者の損害に対する支払は基本的に保険会社が行ってくれます。そのため,加害者自身が被害者に支払を行う必要は基本的にありません。
ただ,刑事処分をより軽微にすることを目指すため,被害者の許しを獲得しようとする場合,双方の希望によっては別途金銭を支払うケースもあり得ます。被害者としては,加害者を許しても特段のメリットはないため,加害者側が許しの獲得を強く希望する場合,対価を支払うことを合意する場合があるのです。

この点,当事者間で許しの対価として支払いを行う場合には,その支払が「金銭賠償(=保険会社が行うべき支払)とは別のものである」ということを明確にする必要があります。金銭賠償の一部と評価されてしまうと,保険会社からは支払ができなくなってしまう場合もあり得るため,十分な注意をお勧めします。

③被害者側への接触方法

多くの刑事事件では,当事者が直接連絡を取ったり接触したりすることは望ましくありません。加害者側が被害者側への接触を図る際には,弁護士を窓口にし,弁護士限りで被害者側への連絡を試みるのが適切とされています。

しかし,交通事故の場合には,当事者間で直接連絡先を交換する運用が広く行われています。その理由としては,過失犯であって当事者間のトラブルが生じにくいという点や,金銭賠償のために連絡を取り合うことが不可欠であるという点が挙げられます。

そのため,交通事故で加害者側が被害者側へ接触する場合,当事者自身も動く必要が生じやすいことに注意することが望ましいでしょう。保険会社や弁護士に依頼したからあとは任せてよい,という発想にならないよう気を付けたいところです。

加害者からの誠意ある謝罪やお見舞い等の対応が、解決を大きく近づける結果につながることも数多くあるのが、交通事故の特徴の一つです。謝意や誠意は、被害者側に確実に届くよう伝える努力を尽くしたいところです。

交通事故加害者に強い弁護士を選ぶ際のポイント

①交通事故加害者の弁護に精通しているか

交通事故加害者の刑事事件は,特に被害者側とのやり取りに特徴があります。そのため,他の事件類型と同じように被害者側への対応を行おうとすると,被害者側の悪感情を招くなど,当事者間の解決にとって不利益な状況となりかねません。

そのため,交通事故加害者の弁護士を選ぶ場合には,特に被害者側への対応方法に関して,交通事故の刑事弁護に精通しているかどうか,という点を重要な基準としましょう。判断方法としては,実際に被害者側への対応方針を質問し,どれだけ具体的な回答・案内が出てくるかを判断材料とすることが一案です。

②見通しの説明が具体的か

交通事故の刑事処分に関する見通しは,対応に精通した弁護士であればある程度の確度を持って想定できるケースも少なくありません。事故態様や被害結果,被害者側の意向など,様々な事情を考慮し,先例や経験に当てはめることで,一定の見通しを設けることも十分に可能であることが多いでしょう。

逆に,処分見通しが持てない場合,必要な前提知識や経験値に不足のある可能性が考えられます。もちろん,ピンポイントで見通しを立てることは困難ですが,処分が変わる条件ごとに場合分けをするなどして,あり得る処分の幅を具体的に案内してくれるかは,重要な判断基準とすることをお勧めします。

③弁護士と滞りなく連絡する手段があるか

交通事故の場合,被害者,加害者,保険会社,弁護士と複数の人物が関わり,そのそれぞれが連絡を取り合う可能性があります。この点,弁護士と加害者側の連絡が滞ってしまうと,やり取り全体に滞りが生じ,結果として事件解決が遠のいてしまいかねません。
また,加害者側との連絡が滞ってしまう弁護士は,多くの場合それ以外の相手との連絡も滞ってしまいがちです。万一,被害者との連絡がうまくできず,被害者側の感情面に悪影響が生じてしまうと,刑事処分にも大きなマイナスとなることが見込まれます。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士と滞りなく連絡を取る手段があるか,弁護士が円滑な連絡を取ってくれる人か,という点を判断基準の一つにするとよいでしょう。連絡の取り方や頻度は,完全に各弁護士の判断にかかっているため,この点は弁護士の個性や性格による面も少なくありません。

弁護士への連絡をしたいと思っても、「忙しいのではないか」と遠慮してしまうかもしれませんが、過度に遠慮する必要はありません。また、LINEやメールなど、電話以外の連絡手段を確保しておくことも有益になりやすいです。

交通事故加害者が弁護士に依頼するべき場合

①逮捕を防ぎたい場合

交通事故は,事後に適切な対応を尽くせば,逮捕されずに手続が進むことも多い類型です。
弁護士からは,ケースに応じてどのような対応をするのが適切か,逮捕を防ぐために他に取れる手立ては何か,といった点をご案内の上,事件に応じた逮捕回避の方策を弁護活動に反映させることが可能です。

②謝罪や示談をしたい場合

交通事故では,加害者と被害者が直接の連絡を取れる場合が多いですが,当事者間で宥恕(許し)に関するお話合いをすることはあまり現実的ではありません。
弁護士に弁護活動を依頼した場合,弁護士が窓口になって謝罪の申し入れをしたり,弁護士から宥恕に関するご相談を行ったりすることで,被害者との示談を円滑に試みることが可能です。

③起訴を防ぎたい場合

交通事故の事件には,弁護活動次第で起訴にも不起訴にもなる,という場合が多数見られます。
他の事件類型の中には,起訴を避ける手段がほとんどないものもあるため,活動次第で不起訴になり得るというのは交通事故の大きな特徴といえます。
弁護士に依頼された場合,刑事処分の正確な見込みを踏まえて,起訴を防ぐための弁護活動についてご案内を申し上げることが可能です。

④被害結果が重大な場合

死亡事故や重い後遺障害を伴う交通事故では、加害者が負う法的・社会的な責任は非常に大きくなります。
一瞬の不注意であっても、結果が重大であれば、刑事・民事の両面で厳しい責任を問われる可能性があります。

こうした重大事故では、次のような場面で専門的な法的対応が求められます。

・取調べや勾留段階での刑事弁護
・被害者遺族との示談交渉や謝罪の調整
・保険会社との折衝・対応方針の整理
・損害賠償請求訴訟への対応

特に死亡事故では、遺族の感情面への配慮と法的な交渉を両立させる必要があり、本人や家族だけでの対応は極めて困難です。
弁護士が介入することで、冷静な交渉が可能となり、刑事処分の軽減や円満な示談成立の可能性を高めることができます。

交通事故加害者に対する処分は、事故の重大さを重要な判断材料とすることが一般的です。重大な事故の場合は、できるだけ早く弁護士への依頼を検討することをお勧めします。

⑤被害者側との対応に限界がある場合

交通事故の加害者となった場合、被害者本人やその家族と直接やり取りをしなければならない場面があります。
しかし、感情的な対立や複雑な金銭交渉が絡むと、個人の対応では限界を感じるケースも少なくありません。

被害者対応が難航しやすい典型的なケース

・被害者や遺族が強い感情を抱いており、冷静な話し合いができない場合
・損害賠償額や補償内容について、双方の主張が大きく食い違っている場合
・過失割合の判断をめぐり、争いが長期化している場合
・被害者側に弁護士が就いており、専門的な法的知識を前提とした交渉が必要な場合

このような状況では、相手方とのやり取りが精神的にも大きな負担となり、不適切な発言や対応が新たなトラブルを招くおそれもあります。この点、弁護士が関与することで、被害者側との直接接触を避けつつ、法的根拠に基づいた冷静で公正な話し合いが可能になります。

交通事故の刑事処分には、被害者側の処罰感情(処罰を希望するかどうか)が非常に大きな影響を及ぼします。当然ながら、被害者が加害者に対する刑罰を希望しない方が軽減しやすい傾向にあり、不起訴処分の決定打になることも珍しくありません。

⑥自動車保険に加入していない場合

自動車保険に加入していない状態で交通事故を起こしてしまうと、加害者が負う経済的負担は非常に大きなものになります。
通常であれば任意保険会社が被害者への賠償や示談交渉を代行しますが、保険に未加入の場合は、すべての責任を自分自身で負う必要があります。

弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉や賠償額の算定を法的根拠に基づいて適切に進めることができます。
また、支払いが困難な場合には、分割払いの提案や減額交渉などを通じて現実的な解決を図ることも可能です。
刑事処分に発展するおそれがあるケースでも、早期に弁護活動を行うことで、処分の軽減を目指せる場合があります。

⑦刑罰に対する不安がある場合

交通事故を起こしてしまった場合、多くの方が「刑事罰を受けるのではないか」「逮捕されるのではないか」といった強い不安を抱くでしょう。
交通事故は民事上の損害賠償責任だけでなく、刑事責任を問われる可能性がある行為であり、その結果は事故の態様や被害の程度によって大きく異なります。

交通事故における主な刑事罰

・過失運転致死傷罪
→ 7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金
・危険運転致死傷罪
→ 被害者が負傷した場合は15年以下の懲役、死亡した場合は1年以上の有期懲役
・道路交通法違反(信号無視・速度超過など)
→ 罰金刑や免許停止・取消などの行政処分

刑罰への不安を抱えたときは、できるだけ早く弁護士に相談し、今後の見通しと取るべき対応を整理することが、冷静な解決への第一歩となります。

交通事故加害者が弁護士に依頼するべきタイミング

①事故直後

交通事故の場合,事故直後に加害者自身が警察を呼ぶなどし,必要な手続を尽くす必要があります。これは,交通事故が発生した際に,自動車運転者には警察へ報告する義務が生じるためです。
そうすると,交通事故では,基本的にすべての事件が発生直後から警察による取り扱いの対象となります。つまり,事故直後の段階から,既に将来的な刑事処分を見据えた対応の必要が生じているというわけです。

しかも,事故直後の手続では,現場の実況見分を合わせて行うケースもありますが,実況見分は加害者の責任の程度に関する重要な証拠となるものです。実況見分に際しては,個別のケースに応じて生じ得る争点を整理した上で,不要な不利益を招かない対応が必要となります。

そのため,交通事故加害者の場合には,事故直後の時点で弁護士を選び,順次進む手続に対して適切な対処を取っていくことが不可欠です。事故直後は,弁護士に依頼をするべき重要なタイミングと言えるでしょう。

ポイント
交通事故の場合,事故直後に警察を呼ぶことになる
早期に実況見分が行われ,重要な証拠となり得る

②被害者側と連絡を取るとき

交通事故の場合,金銭賠償が必要となるため,継続的に被害者側と連絡を取り合うことになる,という点に特徴があります。自動車保険に加入している場合は,保険会社にやり取りの多くを委ねることができますが,保険会社への引継ぎまでは,どうしても当事者間で連絡を取ることになります。
また,保険会社が対応を始めた後でも,保険会社が対応できない点については当事者間で解決する必要があります。保険会社は,当事者の代わりに被害者への金銭賠償を行ってくれますが,金銭面の問題以外には介入することができないため,この点はやはり当事者間での直接の連絡を要します。

被害者側との連絡は,その心情に配慮するため,細心の注意を払って行う必要がありますが,加害者という立場で適切な応対を判断し,続けるのは,非常に大きな負担を伴うものです。
そのため,被害者側との連絡に際しては,適切な弁護士を選び,専門性ある弁護士から指示や助言を受ける形で進めることを強くお勧めします。被害者側との連絡が円滑にできれば,最終的な事件解決にとっても非常に有益な効果が期待できるでしょう。

ポイント
交通事故は,当事者間での連絡を要する点に特徴がある
被害者側への連絡に細心の注意を払うため,事前に弁護士選びを行いたい

③取調べを受ける前

交通事故では,当日に事故の処理をした後,後日に改めて取調べを受ける流れが非常に多く見られます。そして,最終的な刑事処分の検討は,その取調べの内容を踏まえて行われるため,取調べでの応答がどのようなものであったかは,刑事処分に直結するケースもあります。

もっとも,どのような取調べ対応が適切であるかは,個別具体的な内容によって異なってくるため,加害者自身が正確に把握することの困難なものです。刑事事件の専門家に判断を仰ぎ,刑事処分のために有益な対応を尽くすことを強くお勧めします。
取調べを受ける前のタイミングは,万全の回答を準備するために弁護士を選ぶべき時期と言えるでしょう。

ポイント
取調べ内容が最終的な刑事処分の結果に直結するケースもある
適切な取調べ対応の具体的内容は,個別の事件によって異なる

④起訴された後

交通事故では,過失の程度や被害結果の程度が大きい場合,起訴されて公開の裁判(公判)を受ける流れになる場合も否定できません。特に,以下のような場合には起訴の上で公開裁判の対象となりやすいでしょう。

公開裁判の対象となりやすい交通事故

1.被害者に過失のない事故
→横断歩道歩行中,加害者のセンターオーバー・追突など

2.被害者が死亡した事故
→被害結果が最も大きい類型

この点,公開裁判の対象となる場合には,公開の法廷でどのように対応すべきか,事前に準備をする必要があります。適切な準備を怠ってしまうと,裁判所の判決に重大な悪影響が生じる可能性も十分に考えられるところです。
そのため,起訴された後,公開裁判を控える時期には,必ず弁護士選びを行い,適切な弁護士のサポートを受けるようにしましょう。

交通事故加害者の弁護士依頼に関するよくある質問

逮捕されてしまうのか

交通事故加害者の場合,逮捕される可能性は否定できません。その背景には,交通事故が発生すると,自動車運転者には警察に報告をする義務が生じるため,基本的に現行犯で事件が発覚する,という点があります。現行犯で取り締まる際には,逃亡や証拠隠滅の可能性を直ちに詳細に確認することが難しいため,確認不足による不利益を避けるため,逮捕に踏み切るという例が散見されます。

もっとも,これは交通事故のケースで逮捕の可能性が高い,という意味ではなく,個別事件における逮捕の可能性はそれぞれの事情によって大きく変わります。それほど重大ではない交通事故であれば,逮捕されない方が通常とも言えるでしょう。
なお,一般的に逮捕の可能性が高くなるケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

交通事故で逮捕の可能性が高くなるケース

1.被害結果が重い
→死亡事故など,被害結果が重大である場合

2.重大な交通違反がある
→酒気帯び運転,無免許運転,極端な速度超過など,重大な交通違反を伴う場合

3.現行犯で逃亡が懸念される
→事故直後に当事者間でトラブルが起きた,その場を去ろうとした,という場合

警察に呼びされた場合どのように対応すべきか

①基本的な考え方

交通事故加害者となった件について,捜査機関から呼び出しを受けた場合,基本的には「呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じない」と理解をしておくことが適切です。

交通事故は,不注意で起きてしまった過失犯であるため,特段の事情がなければそれほど加害者の不利益が大きな手続(長期の身柄拘束など)を用いることはありません。特に,事故直後にしっかりと事故処理の対応を尽くしていれば,その後の呼び出しに応じている限り不測の不利益は生じないことが通常でしょう。

このような考え方を持っておくことは,自身の不安な感情を適切にコントロールする意味でも非常に重要です。交通事故は,刑事事件の中でも件数が非常に多い分野のため,手続が進むのを待つ期間が長く,手続全体も長期化しがちです。そのため,手続がなかなか終わらない中で自身をコントロールする必要がありますが,「呼ばれたときに適切に応じればよい」と割り切ることができれば,長期化による精神的負担は最小限に抑えることが可能になります。

ポイント
呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じ難い
交通事故の刑事手続は長期化しやすい

②反省内容の表明

交通事故加害者に対する呼び出しの際に確認されやすい点の一つが,反省状況です。その背景には,交通事故は,故意でなく過失(=注意義務違反)によって起きたものである,という点があります。

故意に起こした事件の場合,認め事件であれば反省の意思を表明しないことは稀です。故意に起こした犯罪行為に反省しない余地が考えにくいためです。一方,過失犯の場合,自分の過失をどのように評価しているかによって,反省を深めているケースもあれば,捜査を受けていることが不服であると考えているケースもあり得ます。
そうすると,捜査機関の目線では反省すべき過失があるのに,加害者本人が「自分にそれほどの落ち度はない」とのスタンスだと,捜査機関の理解との間に大きなギャップが生まれ,不利益な刑事処分につながる可能性もあり得ます。

そのため,自身の過失として指摘されている内容を冷静に確認し,反省すべき内容であればその反省を明確に表明していくことが適切な対応となります。

ポイント
反省すべきケースで反省が見られないと,大きな不利益につながる

③保険会社による対応状況の把握

呼び出しを受けた場合,警察署等で取り調べを受けることが見込まれますが,その際には被害者との間での解決状況についても確認されることが一般的です。そのため,自動車保険に加入している場合は,保険会社と被害者との間のやり取りの進捗をある程度把握しておくようにしましょう。

保険会社の対応状況を把握することは,以下のようなメリットにつながります。

保険会社の対応状況を把握するメリット

1.捜査機関に解決見込みありと理解してもらえる
→対応が順調に進んでいれば,当事者間の金銭的解決を前提にしてもらえる

2.十分な被害者対応をしているとの評価が得られる
→被害者対応を積極的に尽くそうとしている態度があるとの評価につながる

3.被害者側の感情面に有益な効果が期待できる
→加害者が状況把握に努めていると被害者に伝われば,被害者側の感情面の緩和につながる

不起訴になることはあるか

交通事故の場合,不起訴となる可能性は十分に考えられます。もちろん,ケースによっては不起訴処分の見込みが現実的にない場合もありますが,一般的な交通事故であれば,不起訴処分を目指す努力は十分に結果を左右し得ると考えてよいでしょう。

交通事故で不起訴の可能性が十分に考えられる大きな理由の一つが,過失犯であるという点です。交通事故は,わざと引き起こしているわけではなく,加害者自身も希望しないまま,不注意で起きてしまうものであるため,刑事責任は故意犯に比べて小さく評価されることが一般的です。起訴不起訴の判断は,事件ごとの刑事責任の重さを重要な基準とするため,交通事故が過失犯であることによる責任の小ささは,不起訴処分の可能性を高くする事情と言えます。

一方,過失犯であっても,刑事責任が重く評価されざるを得ない場合には,安易に不起訴を見込むわけにはいきません。交通事故の場合,被害者側に全く落ち度がない場合や,被害者に深刻な損害を与えた場合には,刑事責任が重大であると評価され,不起訴処分の可能性は低下しやすいでしょう。

ポイント
不起訴の可能性は,刑事責任の重さに大きく左右される
過失犯である交通事故は,故意犯よりも刑事責任が小さく評価されやすい

慰謝料を請求された場合はどうするべきか

交通事故の加害者として慰謝料を請求された場合は、まず冷静に対応することが大切です。焦って支払ったり、感情的に応じたりすると、不利な条件で示談してしまうおそれがあります。
具体的には、以下の点に留意しましょう。

1.請求内容を確認する
請求書に記載された金額や根拠を丁寧に確認しましょう。慰謝料は治療期間や過失割合などで変動するため、内容を理解せず支払うのは避けるべきです。

2.保険会社へ連絡する
任意保険に加入している場合は、すぐに保険会社へ報告を。多くの場合、交渉や支払いを代行してくれます。ただし、保険が適用されない部分については個別対応が必要です。

3.証拠を整理・保全する
事故状況の写真、ドライブレコーダー映像、診断書などを早めに整理・保管しておきましょう。

慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があり、弁護士基準がもっとも高額です。被害者が弁護士を立てて高額請求してくることもあります。

こうした場合、弁護士に相談することで請求金額の妥当性を判断し、減額交渉や示談対応を任せることができます。過失割合の整理や保険会社との調整もスムーズに進むため、慰謝料請求を受けた際は早期に専門家へ相談することが円満解決の近道です。

交通事故の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故は故意のない過失犯であるため,事件そのものの責任は決して大きくないことも少なくありません。
しかし,事後の対応を誤ってしまう場合も多く,それが本来科せられる必要のない責任や負担につながりやすい分野でもあります。
適切な対応の検討は,交通事故の刑事弁護に精通した弁護士へのご相談が有益です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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