【盗撮事件の示談を知りたい人のために】示談金相場や示談のメリット,余罪に関する示談などを弁護士がすべて解説

このページでは,盗撮事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。

【このページで分かること】

盗撮事件で示談は必要か
盗撮事件における示談のメリット
盗撮事件で示談をする方法
盗撮事件の示談金相場
盗撮事件の示談内容・条項
余罪の示談について
盗撮事件の示談に必要な費用

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

盗撮事件で示談は必要か

盗撮事件は,基本的に示談が必要であると理解するのが適切です。
一般的な盗撮事件の場合,示談ができているかどうかによって処分が決まると言っても決して過言ではありません。

犯罪事実に争いのない盗撮事件では,特段の事情がなければ起訴されるのが通常です。起訴された場合,無罪でない限り刑罰を受けることになるため,刑罰を受けて前科が付くことになります。
一方,同じ事件で示談が成立した場合,特段の事情がなければ起訴されない方が通常の処理になりやすいです。被害者が起訴を希望していない場合,被害者の意向を押し切って起訴されることはあまりない事件が多い類型と言えるでしょう。

もちろん,示談をしても起訴を防げない事件はありますが,その場合でも示談をしていることによって処罰は一段軽くなるという理解をするのが一般的です。示談がなければ実刑判決の対象となる事件でも,示談があることによって実刑判決にならず済むことは決して珍しくありません。

盗撮事件の対応は,まず示談から検討することを強くお勧めします。

ポイント
盗撮事件は基本的に示談が必要
示談が成立していれば不起訴が見込まれやすい

盗撮事件における示談のメリット

盗撮事件は示談のメリットが非常に大きい事件類型です。具体的なメリットとしては,以下のような点が挙げられます。

①前科を防げる

刑事事件では,警察から事件の送致を受けた検察官が,被疑者を起訴するかどうか決めます。そして,検察官に起訴されると,刑罰を受けて前科が残ることになります。
この点,検察官が起訴するか不起訴どうかは,様々な事情を総合的に考慮の上で判断されますが,被害者がいる事件の場合,被害者の意向を反映させることが非常に多く見られます。

盗撮事件は被害者のいる事件類型のため,被害者が起訴を望むか不起訴を望むかという点が,検察官の判断を左右しやすい傾向にあります。そのため,不起訴を目指す場合の最も効果的な手段は,被害者に不起訴を希望してもらうことになるのです。

示談を行うことによって,被害者に不起訴を希望する意思を表明してもらうことができ,検察官の不起訴処分を獲得できる可能性が飛躍的に高くなります。不起訴処分となれば前科はつかないため,前科を防ぐための最も有力な手段は示談ということになるでしょう。

②早期釈放につながる

盗撮事件で逮捕・勾留されている場合,被害者との示談が成立すれば,その身柄拘束は早期に解かれる可能性が非常に高くなります。

そもそも,盗撮事件で逮捕・勾留といった身柄拘束をするのは,事件の捜査や処分(起訴・不起訴の判断)のために逮捕・勾留が必要であるからです。裏を返せば,捜査や処分を検討する必要がなくなれば,逮捕・勾留をしておく必要もなくなるため,早期に釈放されるということになります。

示談が成立した場合,被害者はそれ以上の捜査や加害者(被疑者)の刑事処罰を希望しなくなるため,捜査機関が捜査を続けたり刑事処罰を検討したりする必要は基本的になくなります。捜査機関の捜査は,被害者の協力がなければ困難なことも多いため,被害者が捜査を希望しないのに無理矢理捜査を続けることは難しい,という面もあります。

そうすると,示談が成立し,被害者が捜査や処罰を希望しないという希望を示せば,逮捕・勾留しておく必要もなくなります。その結果,不要な逮捕・勾留は終了し,早期釈放してもらうことが可能になりやすいでしょう。

③刑罰が軽減する

示談は,盗撮事件で起訴されることが防げない場合,刑罰を受けてしまう場合にも重要な効果を発揮します。

刑罰の重さを最終的に判断するのは裁判所ですが,裁判所が刑罰を判断する際に極めて重要視する事情に,被害者の処罰感情や被害者に対する被害の補填が挙げられます。

処罰感情とは,処罰を希望するかどうかという気持ちを言います。被害者の処罰感情が強いほど,刑罰は重くなる傾向にあります。
また,被害者に対する被害の補填は,被害者に生じた損害がどれだけ回復されているか,という意味で重要な判断要素になります。被害の補填は主に金銭で行われることが一般的ですが,事後的に被害が回復されていれば,その結果重い刑罰を科す必要はなくなる,という理解になるのが通常です。

被害者との間で示談が成立すれば,被害者に処罰感情がないことや,被害の補填がなされたことが明らかになります。そのため,示談は刑罰の軽減に直結する効果を持つということができます。

示談がなければ実刑判決が見込まれるケースでも,示談によって実刑判決を回避できる場合は珍しくありません。示談は,被害者がいる事件で刑罰を軽減するための最も有益な試みと理解してよいでしょう。

④被害者との法律関係が解決する

盗撮事件が起きた場合,被害者と加害者の間には,「被害者が加害者に損害賠償を請求できる」という法律関係が発生します。盗撮行為は,被害者に対する「不法行為」に該当するため,盗撮行為(=不法行為)の被害者は,加害者に対して金銭賠償を請求できる,という関係に立つのです。
しかも,この法律関係は,加害者が刑事処罰を受けたとしてもなくなったり負担が軽くなったりするものではありません。当事者間の法律関係と刑事処罰とは無関係であるためです。

この点,被害者との間で示談が成立した場合,被害者と加害者の間には示談の内容以外に法律関係がない(法律関係が解決した)という約束をすることになります。そのため,示談が成立すれば,その後に加えて被害者から金銭賠償を請求されることはなくなり,法律関係の面でも安心することができます。
なお,当事者間の法律関係が解決したことを約束する示談の条項を,「清算条項」と言います。示談に際して清算条項を盛り込んで解決することで,当事者間の法律関係は示談をもって終了することになります。

ポイント 示談のメリット
前科の回避につながる
身柄拘束からの釈放につながる
刑罰の軽減につながる
当事者間の法律関係が清算できる

盗撮事件で示談をする方法

盗撮事件で捜査を受けている場合,示談をするためには捜査機関(警察や検察)にその旨を申し入れ,捜査機関から被害者に連絡を取ってもらうことが必要です。
もっとも,捜査機関は加害者本人と被害者を引き合わせることをしません。当事者同士で連絡を取らせるのは,被害者にとって不適切である上,二次被害の原因になる可能性がある,と考えるためです。
そのため,盗撮事件で示談を試みるためには,弁護士に依頼の上,弁護士を通じて動くことが必要となります。

具体的な流れは,以下の通りです。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

被疑者の方ご本人は,弁護士にご依頼の後,この流れが進むのをお待ちいただくことになります。
弁護士から各所へ連絡を取った際,捜査機関や被害者から連絡を受け取った際など,流れが進むに応じて適宜報告を受けながら,示談の進捗を把握することが可能です。

ポイント
示談の申し入れは,弁護士から捜査機関へ行う
被疑者は,弁護士に依頼の後,弁護士を通じて状況を把握する

盗撮事件の示談金相場

刑事事件で示談を行う場合,加害者(被疑者)から被害者へ示談金の支払を行うのが通常です。具体的な示談金の金額は当事者間の協議で定められることになりますが,事件類型ごとに大まかな目安はあります。

この点,盗撮事件の場合,概ね30万円ほどとされる例が多く見られる傾向にあります。
ただ,被害者側の意向によってはより大きな金額となることも多数あります。特に,2023年に「性的姿態撮影等処罰法」が施行され,盗撮事件がいわゆる「撮影罪」として厳罰化されたことは広く知られています。そのため,盗撮事件の厳罰傾向を踏まえた示談金額の検討を求められることも一定数あるところです。

被害者との交渉も踏まえた示談金額の目安としては,30~50万円ほどを想定するのが有力でしょう。
具体的な示談金額はこの目安を上回るケースもありますが,金額が変動する要因としては以下のような事項が挙げられます。

盗撮事件における示談金額の変動要因

1.盗撮の場所・方法
→自宅の浴室など,通常衣服をつけないプライベートな場所での撮影は,被害者の精神的苦痛が大きく示談金額の増額要因になります。

2.盗撮の期間・回数
→長期間,複数回の盗撮行為がある場合,示談金額の増額要因になります。

3.被害者の心身への支障
→精神疾患などの原因になっている場合,示談金の増額要因になります。

4.加害者の経済力
→経済力に限界のある場合,示談金の減額要因になります。

盗撮事件の示談内容・条項

【確認条項】

加害者が被害者へいくらの支払を行う必要(義務)があるかを,当事者間で確認する条項です。
当事者間で合意した示談金の金額を,支払う義務のある金額と定めることになります。

【給付条項】

確認された支払の義務をどのように果たす(給付する)のか,という点を定める条項です。
金銭の支払を内容とするのが通常ですが,支払方法が手渡しか振り込みか,手渡しであればいつどこで行うか,振り込みの場合はどの口座か,振込手数料は誰が負担するか(通常は加害者が負担),支払の期限はいつまでか,といった点を定めます。

【清算条項】

示談で定めた内容以外に,当事者間に債権債務関係(法律関係)がないことを確認する条項です。この条項を設けることで,加害者と被害者との法律関係は示談金の支払をもって終了することになります。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)とは「許し」を意味します。宥恕条項は,被害者が加害者を許すことを内容とする条項です。
加害者が示談金の支払を負担して示談を目指すのは,基本的にこの宥恕条項を獲得するためです。宥恕条項があることによって,捜査機関は被害者に処罰感情がないことを把握でき,不起訴処分の根拠とすることが可能になります。

【行動の制約】

示談成立後に一定の行動をしないこと(又はすること)を約束するものです。多くの場合,被害者と加害者が接触しないことを確かにするため,両者を物理的に引き離す目的で盛り込むことが考えられます。

盗撮事件で設けられやすい行動制約の内容としては,以下のものが挙げられます。

盗撮事件における行動制約の例

1.盗撮画像,映像を削除する
2.盗撮に用いた機器を処分する
3.事件が起きた電車の利用をしない・制限する
4.事件が起きた駅の利用をしない・制限する
5.事件発生場所の近辺に立ち入らない
6.勤務先を退職する(職場内での事件など)

なお,示談の内容は「今後一切接触しない」ことを前提にすることが通常であるため,一切接触しないとの約束を補強する意味合いの条項と理解されます。

【違約金】

加害者が示談で定めた約束に違反した場合,約束違反のペナルティとして被害者に金銭(違約金)を支払うという条項です。
主に,行動制約を取り決めた場合に,これを遵守してくれるか被害者が不安である,というケースで設けることが考えられます。
違約金の金額は,特段のルールはありませんが,示談金額をベースに定めることが多く見られます。

この違約金条項は,実際に違約があり金銭を支払う,という形で活用されることはほとんどありません。現実的には,「違約金の約束をできるほど示談条件を守る気持ちが強い」という意思を表明する手段として用いられるものです。

【口外禁止】

事件の内容や示談の内容を,第三者に口外しないと約束する条項です。両当事者のプライバシーを守るために設けることが考えられます。
盗撮事件の場合,口外されてよいと考える加害者はほとんどいないため,弁護士からはほぼすべてのケースで被害者へ口外禁止条項の設定を依頼することになるでしょう。

その他,被害者が複数いて被害者間に交友関係がある場合,示談の内容が共有されてしまうと,他の被害者との示談に悪影響が生じかねないため,被害者間の情報共有を防ぐ目的で設けられることもあります。

余罪の示談について

盗撮事件の場合,現実に発覚し捜査されている事件以外にも,余罪が複数存在することが考えられます。そのため,余罪も含めて示談する必要があるのかは重要な問題になります。

この点,余罪をすべて示談することは決して必要ではありません。余罪が存在したとしても,そのすべてが捜査・処分の対象になるわけではないからです。

余罪がある場合の取り扱いは,基本的に以下のいずれかとなります。

余罪の取り扱い

1.余罪を別途捜査・処分の対象とする
2.余罪があることを踏まえて本罪の処分を判断する(余罪は情状のみの問題になる)

このうち,「1.余罪を別途捜査・処分の対象とする」ケースだと,余罪についても示談が必要となります。余罪の示談をしなければ余罪が起訴される可能性が高いためです。
しかし,「2.余罪があることを踏まえて本罪の処分を判断する(余罪は情状のみの問題になる)」ケースでは,不起訴のために余罪の示談が必要とはされません。余罪そのものを起訴したり不起訴にしたりするわけではないからですね。

この取り扱いの違いは,余罪について被害者が捜査・処分を求めているかによって変わるのが通常です。具体的には,事前に余罪の被害届が出ているかどうかによって左右される傾向にあります。
もっとも,盗撮事件の余罪について,事前に被害届が出ていることはあまりありません。盗撮行為の性質上,余罪が被害者に発覚している可能性が非常に低いため,余罪の被害者は事件を知らず,被害届も出ていないことが大多数です。

余罪に関しては,別途捜査の対象とされたことが分かってから,捜査の対象となった事件について行う方針が適切でしょう。

ポイント 余罪の示談
余罪が情状の問題にとどまるのであれば示談不要
余罪自体が捜査・処分の対象となる場合は示談が必要

盗撮事件の示談に必要な費用

藤垣法律事務所で盗撮事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。

①活動開始時

着手金33万円
実費相当額1万円
合計34万円

34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。

②弁護活動の成果発生時

不起訴処分33万円
示談成立22万円(※)
出張日当・実費実額
※金銭賠償で5.5万円,清算条項締結で5.5万円,宥恕の獲得で11万円

活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します

③示談金

一般的な盗撮事件の場合,30~50万円の示談金が目安として想定されます。

④合計額

上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。

目安となる費用総額(30万円で示談成立+不起訴の場合)

弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:30万円

計:119万円

弁護士費用の例

⑤柔軟な料金設定が可能な場合

弁護士費用は,弁護活動の範囲を限定することで費用額を安く抑えることも可能な場合があります。
盗撮事件では,弁護活動の内容を示談に限定することで,費用額を抑える柔軟な料金設定のご案内ができる可能性もあります。

可能な費用負担に限界がある場合も,一度お問い合わせいただくことをお勧めいたします。弁護士から詳細なご案内を申し上げることが可能です。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【男女トラブルの示談を知りたい人のために】示談金相場,示談が必要な男女トラブルの類型,示談を試みる方法などを解説

このページでは,男女トラブルの示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。

【このページで分かること】

男女トラブルにおける示談のメリット
男女トラブルで示談は必要か
男女トラブルで示談をする方法
男女トラブルの示談金相場
男女トラブルの示談内容・条項
男女トラブルの示談で注意すべきこと
男女トラブルの示談に必要な費用

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

示談が問題になる男女トラブルの類型

男女間の性的な行為に関するトラブルが発生した場合,警察が介入する前に示談をするべきかどうか問題になるケースは少なくありません。このようなトラブルは,一方は相手の同意があると思っていたものの,もう一方は性的な行為に同意していなかった,という形でトラブル化することがほとんどです。

具体的に問題になるトラブルの類型には,以下のようなものが挙げられます。

男女トラブルの主な類型

1.勤務先の関係者間におけるトラブル(セクハラ)
2.飲酒後の男女間におけるトラブル
3.SNSで知り合った男女間のトラブル
4.性的行為の相手が未成年であった場合のトラブル
5.交際中の男女間における別れ話のもつれ

男女トラブルにおける示談のメリット

男女トラブルは,可能な限り警察が介入していない段階で示談をするメリットが非常に大きいと言えるでしょう。具体的なメリットは以下の通りです。

①刑事事件化が防げる

刑事事件で捜査が行われるのは,被害者が捜査機関に捜査を求め,捜査機関がこれに応じた場合,というのがほとんどです。裏を返せば,被害者が捜査機関に捜査を求めなければ,捜査の始まるきっかけ自体が存在しないことになります。
刑事事件として取り扱われなければ,被疑者として捜査を受けることはなく,刑罰を受けることももちろんありません。警察が介入していない段階で示談できれば,捜査が開始しないため,トラブルはその場ですべて解決するということになります。

男女トラブルが警察沙汰になっていない段階では,示談によってその後の対応を一切要することなく解決するため,示談のメリットが極めて大きいと言えるでしょう。

②身柄拘束を防げる

男女トラブルの事件は,内容によって逮捕や勾留といった身柄拘束につながる場合も考えられます。それは,トラブルになる男女間では互いの個人情報を把握していることが多く,トラブルになった男女を放置していると一方が相手に接触しようとする可能性がある,と懸念されるためです。
一方が被害者として声を上げている以上,捜査機関としては被害者とされる人の保護を考えざるを得ません。そして,被害者保護の最も端的な手段が加害者とされる人物の身柄を拘束することになりやすいのです。

この点,男女トラブルで示談が成立した場合,被害者とされる方を保護するためにもう一方の身柄を拘束する必要はなくなります。当事者間での接触は,自分に不利益のないように解決する目的で行われるのが通常ですが,示談によって当事者間で解決している以上,解決目的で相手に接触する必要がなくなっているためです。

トラブルの内容が悪質と評価される可能性のある場合は,それだけ身柄拘束の危険も大きくなるため,示談によって身柄拘束を防ぐメリットが生じやすいでしょう。

③前科を防げる

刑事事件では,警察から事件の送致を受けた検察官が,被疑者を起訴するかどうか決めます。そして,検察官に起訴されると,刑罰を受けて前科が残ることになります。
この点,検察官が起訴するか不起訴どうかは,様々な事情を総合的に考慮の上で判断されますが,被害者がいる事件の場合,被害者の意向を反映させることが非常に多く見られます。

男女トラブルは当事者の一方が被害者となる事件類型のため,被害者が起訴を望むか不起訴を望むかという点が,検察官の判断を左右しやすい傾向にあります。そのため,不起訴によって前科を防ぐ場合,最も効果的な手段は被害者に不起訴を希望してもらうことです。

示談を行うことによって,被害者に不起訴を希望する意思を表明してもらうことができ,検察官の不起訴処分を獲得できる可能性が飛躍的に高くなります。不起訴処分となれば前科はつかないため,前科を防ぐための最も有力な手段は示談ということになるでしょう。

④トラブルの負担から早期に解放される

男女トラブルは,その内容によっては職場や家族,友人など,周囲の関係に大きな悪影響を及ぼすことがあり得ます。そうすると,トラブルが続いていることの負担は,思いのほか重く,多岐に渡る恐れが否定できません。
この際,平穏な生活を取り戻すためには,当事者間でトラブルを解決するほかありませんが,早期にトラブル解決する手段は示談のみです。

当事者間で示談が成立すれば,速やかにトラブルが解決でき,トラブルに伴う周囲への悪影響を気にする必要がなくなるでしょう。

ポイント 示談のメリット
刑事事件化が防げる
前科が防げる
身柄拘束が防げる
周囲への悪影響が防げる

男女トラブルで示談は必要か

男女トラブルに見舞われた場合,示談が必要かどうかは,指摘されている行為に心当たりがあるかどうかによるでしょう。

トラブルの内容に心当たりがない場合,基本的に示談の必要はありません。当事者間で解決を急ぐのではなく,相手による事実無根の主張を徹底的に争うことが適切です。示談の試みは,相手に対する一定の謝罪を前提にした動きとなりやすいため,謝罪するような関係にないのであれば,示談を行うべきではないということになります。

一方,トラブルの内容に心当たりがある場合は,示談による解決が極めて重要であり,解決には示談が必要と考えるのが適切です。示談できれば即時に事件解決となる一方,示談ができなければ多くの不利益が生じうるため,示談ができるかによってその後の生活が決定的に左右されると言っても過言ではありません。

なお,トラブルが起きたことには争いがないものの,当事者間の言い分に食い違いがある,という場合も,示談が必要になりやすいでしょう。
男女トラブルでは,何らかの言い分の食い違いが生じている場合が大半です。そして,この言い分の食い違いは,最終的にはどちらの言い分がより信用できるか,という基準で判断されることが一般的な処理となります。
そうすると,言い分の食い違いがある場合に示談で解決できないと,自分の言い分を信用してもらうために数々の負担を負わなければなりません。しかも,その負担は言い分が信用できないと判断されるリスクを背負いながらのものであり,負担に伴う精神的苦痛も軽視できません。

言い分の食い違いを深刻な争いにしたくない場合にも,示談は非常に重要な役割を持つことになるでしょう。

ポイント
心当たりがなければ示談は不要
心当たりがある事件では示談すべき
言い分に食い違いがある場合も示談が適切

男女トラブルで示談をする方法

警察が介入していない男女トラブルで示談をする場合,相手方への連絡方法は自分で確保する必要があります。

既に警察が介入しており,刑事事件として捜査されている事件であれば,弁護士が捜査機関に依頼し,捜査機関から被害者に連絡を入れてもらうことが通常です。しかし,刑事事件化を防いで解決する場合にはこの方法を取ることができません。
そのため,弁護士に依頼の上,弁護士から直接相手に連絡を取ってもらうことが適切な方法となります。

相手との連絡方法を確保する手段としては,以下のようなものが挙げられます。

示談の際の連絡方法

1.相手の電話番号,メールアドレス,SNSアカウントに連絡する
2.共通の知人・相手の家族・職場関係者などを通じて連絡する
3.相手の住所に書面を送る

具体的なケースで適切な連絡方法は個別の状況によりますが,何らかの連絡方法が確保できた状態であることが必要です。
そのため,相手との連絡手段がなくなってしまう前に,できるだけ早く弁護士に依頼することが適切でしょう。

なお,相手への連絡方法が全くない,という場合には自ら捜査機関に介入してもらうという選択も一案です。警察に出頭の上でいわゆる「自首」を行い,警察に事件の捜査と被害者への連絡を依頼する,ということですね。
ただし,自首を行うことは,相手が希望していない場合に不利益が大きく,「余計なこと」になってしまう恐れも少なくありません。具体的な方針については,必ず弁護士に相談するようにしましょう。

男女トラブルの示談金相場

男女トラブルの示談金は,その具体的な内容によって大きく異なりやすいところです。事件類型ごとの金額の目安としては,以下のような整理ができるでしょう。

男女トラブルにおける示談金の目安

1.相手の承諾なく身体に触った
30~50万円程度

2.無理に性行為を迫ったが,性行為には至らなかった
100万円前後

3.無理に性行為を迫り,挿入行為に至った
200~300万円程度

男女トラブルの示談内容

男女トラブルで示談を行う場合の基本的な合意内容としては,以下のようなものが挙げられます。

【確認条項】

加害者が被害者へいくらの支払を行う必要(義務)があるかを,当事者間で確認する条項です。
当事者間で合意した示談金の金額を,支払う義務のある金額と定めることになります。

【給付条項】

確認された支払の義務をどのように果たす(給付する)のか,という点を定める条項です。
金銭の支払を内容とするのが通常ですが,支払方法が手渡しか振り込みか,手渡しであればいつどこで行うか,振り込みの場合はどの口座か,振込手数料は誰が負担するか(通常は加害者が負担),支払の期限はいつまでか,といった点を定めます。

【清算条項】

示談で定めた内容以外に,当事者間に債権債務関係(法律関係)がないことを確認する条項です。この条項を設けることで,加害者と被害者との法律関係は示談金の支払をもって終了することになります。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)とは「許し」を意味します。宥恕条項は,被害者が加害者を許すことを内容とする条項です。
加害者が示談金の支払を負担して示談を目指すのは,基本的にこの宥恕条項を獲得するためです。警察未介入の男女トラブルでは,宥恕を獲得することで被害者による刑事事件化を防ぐことになるため,宥恕が得られるかどうかは極めて重要となります。

【接触禁止】

男女トラブルでは,示談後に互いが接触しないことを約束する内容を設けることが通常です。対面はもちろん,電話,メールなど,いかなる方法でも相手への接触を試みない,という合意をすることになります。

【一定の場所の出入禁止】

トラブルの現場が,被害者にとって日頃出入りする場所である場合,加害者がその場所に出入りしないことを約束することが多く見られます。
また,加害者が被害者の自宅を把握している場合,被害者の自宅やその近辺に立ち入らないことを約束する条項を設けることも少なくありません。

【口外禁止】

事件や示談の内容を第三者に口外しないことを定めるのが一般的です。
男女トラブルは,第三者に伝わる不利益が非常に大きい場合も多いため,互いに口外を禁止することで,示談成立後に情報が漏れることを防ぐのが重要となります。
また,警察介入前の男女トラブルである場合,特段の事情がない限り警察にも伝えないことを約束の内容に含めることが多いでしょう。

男女トラブルの示談で注意すべきこと

男女トラブルは,互いの言い分が大きく食い違っていることが非常に多く見られます。代表的な食い違いとしては,「一方は相手が性行為に了承していると思っていたが,もう一方は性行為に了承していなかった」というものが挙げられるでしょう。
そのため,男女トラブルの示談に際しては,言い分の食い違いをどのように解決するか,という点が重要な事項となりやすいです。この点,一般的には以下のような方法が考えられます。

主張の食い違いを解決して示談する方法

1.客観的な根拠を獲得し,一方の主張が誤りだと立証する
→正しい言い分の方を前提に,示談条件を検討する

2.どちらの言い分が正しいかを棚上げにしたまま解決する
→言い分が食い違うことを前提に,それでも示談できる条件を交渉する

現実的には,言い分の異なる男女トラブルで客観的な証拠を獲得することは困難なので,「2.どちらの言い分が正しいかを棚上げにしたまま解決する」を選択せざるを得ないことが大多数でしょう。

この場合,金額などの条件は被害者側の言い分を前提とした内容にすることが一般的です。
示談は,基本的に「示談したい」と希望する側が条件を譲歩し,相手に了承してもらうことを目指すものです。そして,男女トラブルの場合,示談を希望する側は加害者とされる側であるため,加害者側が条件を譲歩しなければ話はまとまりづらいことになります。
被害者の立場からすれば,示談を申し入れてきた相手が以下の二通りの条件を示してきた場合,どちらの方が了承する余地があるかは明白でしょう。

主張が食い違う場合における示談条件提示の方法

1.言い分は食い違っているが,被害者の言い分に沿った金額での解決を提案する
2.言い分が食い違っているため,被害者の言い分を無視した金額での解決を提案する

言い分の異なる男女トラブルの示談では,相手の言い分が正しいと認める必要はないが,示談条件は相手の言い分が正しい場合の内容であることが必要である,と考えるのが適切でしょう。

男女トラブルの示談に必要な費用

藤垣法律事務所で警察未介入の男女トラブルに関する示談を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。

①活動開始時

着手金33万円
実費相当額1万円
合計34万円

34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。

②弁護活動の成果発生時

示談成立22万円(※)
出張日当・実費実額
※金銭賠償で5.5万円,清算条項締結で5.5万円,宥恕の獲得で11万円

示談が成立した場合に限り,22万円(実費日当を除く)の費用が発生します。

③示談金

事件類型により異なりますが,相手の了承なく身体に触った場合に30~50万円程度性行為を迫り性器に触れるなどした場合に100万円前後の示談金が発生し得るところです。

④合計額

上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。

目安となる費用総額(50万円で示談成立の場合)

弁護士費用:34万円+22万円=56万円
示談金:50万円

計:106万円

なお,この弁護士費用は刑事事件化しなかった場合を前提としたものです。刑事事件化し,捜査対応などを要した場合には別途弁護士費用が発生します。

弁護士費用の例

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【痴漢事件の示談を知りたい人のために】方法や示談金相場,示談のメリットなどを弁護士が徹底解説

このページでは,痴漢事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。

【このページで分かること】

痴漢事件における示談のメリット
痴漢事件で示談は必要か
痴漢事件で示談をする方法
痴漢事件の示談金相場
痴漢事件の示談内容・条項
痴漢事件の示談で注意すべきこと
痴漢事件の示談に必要な費用

QRコード又はアカウントリンクから
友達登録の上、ご相談ください。

<営業時間内即日対応>

営業時間外もお受付可能
友だち追加

痴漢事件における示談のメリット

痴漢事件は,示談を行う利益が非常に大きい事件類型と言えます。その具体的な理由としては,以下の点が挙げられます。

①前科を防げる

刑事事件では,警察から事件の送致を受けた検察官が,被疑者を起訴するかどうか決めます。そして,検察官に起訴されると,刑罰を受けて前科が残ることになります。
この点,検察官が起訴するか不起訴どうかは,様々な事情を総合的に考慮の上で判断されますが,被害者がいる事件の場合,被害者の意向を反映させることが非常に多く見られます。

痴漢事件は被害者のいる事件類型のため,被害者が起訴を望むか不起訴を望むかという点が,検察官の判断を左右しやすい傾向にあります。そのため,不起訴を目指す場合の最も効果的な手段は,被害者に不起訴を希望してもらうことになるのです。

示談を行うことによって,被害者に不起訴を希望する意思を表明してもらうことができ,検察官の不起訴処分を獲得できる可能性が飛躍的に高くなります。不起訴処分となれば前科はつかないため,前科を防ぐための最も有力な手段は示談ということになるでしょう。

②早期釈放につながる

痴漢事件で逮捕・勾留されている場合,被害者との示談が成立すれば,その身柄拘束は早期に解かれる可能性が非常に高くなります。

そもそも,痴漢事件で逮捕・勾留といった身柄拘束をするのは,事件の捜査や処分(起訴・不起訴の判断)のために逮捕・勾留が必要であるからです。裏を返せば,捜査や処分を検討する必要がなくなれば,逮捕・勾留をしておく必要もなくなるため,早期に釈放されるということになります。

示談が成立した場合,被害者はそれ以上の捜査や加害者(被疑者)の刑事処罰を希望しなくなるため,捜査機関が捜査を続けたり刑事処罰を科すか検討したりする必要は基本的になくなります。捜査機関の捜査は,被害者の協力がなければ困難なことも多いため,被害者が捜査を希望しないのに無理矢理捜査を続けることは難しい,という面もあります。

そうすると,示談が成立し,被害者が捜査や処罰を希望しないという希望を示せば,事件の捜査や処分の検討は不要となるため,逮捕・勾留しておく必要もなくなります。その結果,不要な逮捕・勾留は終了し,早期釈放してもらうことが可能になりやすいでしょう。

③刑罰が軽減する

痴漢事件で刑罰を受けることが防げない場合でも,示談は重要な効果を発揮します。
刑罰の重さを最終的に判断するのは裁判所ですが,裁判所が刑罰を判断する際に極めて重要視する事情に,被害者の処罰感情や被害者に対する被害の補填が挙げられます。

処罰感情とは,処罰を希望するかどうかという気持ちを言います。被害者の処罰感情が強いほど,刑罰は重くなる傾向にあります。
また,被害者に対する被害の補填は,被害者に生じた損害がどれだけ回復されているか,という意味で重要な判断要素になります。被害の補填は主に金銭で行われることが一般的ですが,事後的に被害が回復されていれば,その結果重い刑罰を科す必要はなくなる,という理解になるのが通常です。

被害者との間で示談が成立すれば,被害者に処罰感情がないことや,被害の補填がなされたことが明らかになります。そのため,示談は刑罰の軽減に直結する効果を持つということができます。

示談がなければ実刑判決が見込まれるケースでも,示談によって実刑判決を回避できる場合は珍しくありません。示談は,被害者がいる事件で刑罰を軽減するための最も有益な試みと理解してよいでしょう。

④被害者との法律関係が解決する

痴漢事件が起きた場合,被害者と加害者の間には,「被害者が加害者に損害賠償を請求できる」という法律関係が発生します。痴漢行為は,被害者に対する「不法行為」に該当するため,痴漢行為(=不法行為)の被害者は,加害者に対して金銭賠償を請求できる,という関係に立つのです。
しかも,この法律関係は,加害者が刑事処罰を受けたとしてもなくなったり負担が軽くなったりするものではありません。当事者間の法律関係と刑事処罰とは無関係であるためです。

この点,被害者との間で示談が成立した場合,被害者と加害者の間には示談の内容以外に法律関係がない(法律関係が解決した)という約束をすることになります。そのため,示談が成立すれば,その後に加えて被害者から金銭賠償を請求されることはなくなり,法律関係の面でも安心することができます。
なお,当事者間の法律関係が解決したことを約束する示談の条項を,「清算条項」と言います。示談に際して清算条項を盛り込んで解決することで,当事者間の法律関係は示談をもって終了することになります。

ポイント 示談のメリット
前科の回避につながる
身柄拘束からの釈放につながる
刑罰の軽減につながる
当事者間の法律関係が清算できる

痴漢事件で示談は必要か

痴漢事件の場合,何もせずに刑罰を受け入れるのでない限り,示談は必要であると考えるのが適切です。それは,痴漢事件に対する刑事処分は,示談の有無で決定的に変わるためです。

示談が成立しなければ起訴される事件でも,示談が成立することでほぼ確実に不起訴が見込まれるという場合は珍しくありません。痴漢事件の処分は示談に左右されると言っても過言ではなく,痴漢事件で処分の軽減を試みるのであれば示談以外にないと考えてよいでしょう。
事件によっては,効果のある弁護活動の内容が示談のみであるというケースも非常に多く見られます。

ポイント
痴漢事件では示談が決定的に重要
示談が唯一の弁護活動となる場合も多い

痴漢事件で示談をする方法

痴漢事件で捜査を受けている場合,示談をするためには捜査機関(警察や検察)にその旨を申し入れ,捜査機関から被害者に連絡を取ってもらうことが必要です。
もっとも,捜査機関は加害者本人と被害者を引き合わせることをしません。当事者同士で連絡を取らせるのは,被害者にとって不適切である上,二次被害の原因になる可能性がある,と考えるためです。
そのため,痴漢事件で示談を試みるためには,弁護士に依頼の上,弁護士を通じて動くことが必要となります。

具体的な流れは,以下の通りです。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

被疑者の方ご本人は,弁護士にご依頼の後,この流れが進むのをお待ちいただくことになります。
弁護士から各所へ連絡を取った際,捜査機関や被害者から連絡を受け取った際など,流れが進むに応じて適宜報告を受けながら,示談の進捗を把握することが可能です。

ポイント
示談の申し入れは,弁護士から捜査機関へ行う
被疑者は,弁護士に依頼の後,弁護士を通じて状況を把握する

痴漢事件の示談金相場

刑事事件で示談を行う場合,加害者(被疑者)から被害者へ示談金の支払を行うのが通常です。具体的な示談金の金額は当事者間の協議で定められることになりますが,事件類型ごとに大まかな目安はあります。

この点,痴漢事件における示談金の目安は,概ね30~50万円とされる例が多く見られます。
事件によってはこの目安を下回るケース,上回るケースいずれもありますが,示談金額とされやすい水準として把握しておいて損はないでしょう。

なお,示談金額が変動する要因としては,以下のような点が挙げられます。

示談金額の変動要因

1.痴漢行為がなされた部位
→衣服の外側より内側の方が大きくなりやすい
→性的な部位に近い方が大きくなりやすい

2.痴漢行為の態様
→軽く触れるよりも強くつかむなどする方が大きくなりやすい

3.痴漢行為がなされた時間の長さ
→長時間に渡るほど大きくなりやすい

4.被害者の心身への支障
→精神疾患などの原因になっている場合,大きくなりやすい

5.従前の関係
→継続的な被害者・加害者の関係があると大きくなりやすい

6.加害者の経済力
→経済力に限界のある場合,金額は小さくなりやすい

痴漢事件の示談内容

痴漢事件で示談を行う場合,以下のような内容を盛り込むことが考えられます。

①確実に盛り込む内容

【確認条項】

加害者が被害者へいくらの支払を行う必要(義務)があるかを,当事者間で確認する条項です。
当事者間で合意した示談金の金額を,支払う義務のある金額と定めることになります。

【給付条項】

確認された支払の義務をどのように果たす(給付する)のか,という点を定める条項です。
金銭の支払を内容とするのが通常ですが,支払方法が手渡しか振り込みか,手渡しであればいつどこで行うか,振り込みの場合はどの口座か,振込手数料は誰が負担するか(通常は加害者が負担),支払の期限はいつまでか,といった点を定めます。

【清算条項】

示談で定めた内容以外に,当事者間に債権債務関係(法律関係)がないことを確認する条項です。この条項を設けることで,加害者と被害者との法律関係は示談金の支払をもって終了することになります。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)とは「許し」を意味します。宥恕条項は,被害者が加害者を許すことを内容とする条項です。
加害者が示談金の支払を負担して示談を目指すのは,基本的にこの宥恕条項を獲得するためです。宥恕条項があることによって,捜査機関は被害者に処罰感情がないことを把握でき,不起訴処分の根拠とすることが可能になります。

②当事者の希望で盛り込む条項

【行動の制約】

示談成立後に一定の行動をしないこと(又はすること)を約束するものです。多くの場合,被害者と加害者が接触しないことを確かにするため,両者を物理的に引き離す目的で盛り込むことが考えられます。

痴漢事件で設けられやすい行動制約の内容としては,以下のものが挙げられます。

痴漢事件における行動制約の例

1.事件が起きた電車の利用をしない・制限する
2.事件が起きた駅の利用をしない・制限する
3.事件発生場所の近辺に立ち入らない
4.一定期間内に転居をする
5.勤務先を退職する(職場内での事件など)

なお,示談の内容は「今後一切接触しない」ことを前提にすることが通常であるため,一切接触しないとの約束を補強する意味合いの条項と理解されます。

【違約金】

加害者が示談で定めた約束に違反した場合,約束違反のペナルティとして被害者に金銭(違約金)を支払うという条項です。
主に,行動制約を取り決めた場合に,これを遵守してくれるか被害者が不安である,というケースで設けることが考えられます。
違約金の金額は,特段のルールはありませんが,示談金額をベースに定めることが多く見られます。

この違約金条項は,実際に違約があり金銭を支払う,という形で活用されることはほとんどありません。現実的には,「違約金の約束をできるほど示談条件を守る気持ちが強い」という意思を表明する手段として用いられるものです。

【口外禁止】

事件の内容や示談の内容を,第三者に口外しないと約束する条項です。両当事者のプライバシーを守るために設けることが考えられます。
痴漢事件の場合,口外されてよいと考える加害者はほとんどいないため,弁護士からはほぼすべてのケースで被害者へ口外禁止条項の設定を依頼することになるでしょう。

その他,被害者が複数いて被害者間に交友関係がある場合,示談の内容が共有されてしまうと,他の被害者との示談に悪影響が生じかねないため,被害者間の情報共有を防ぐ目的で設けられることもあります。

痴漢事件の示談に必要な費用

藤垣法律事務所で痴漢事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。

①活動開始時

着手金33万円
実費相当額1万円
合計34万円

34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。

②弁護活動の成果発生時

不起訴処分33万円
示談成立22万円(※)
出張日当・実費実額
※金銭賠償で5.5万円,清算条項締結で5.5万円,宥恕の獲得で11万円

活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。

③示談金

痴漢事件の場合,30~50万円の示談金が目安として想定されます。

④合計額

上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。

目安となる費用総額(30万円で示談成立+不起訴の場合)

弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:30万円

計:119万円

弁護士費用の例

⑤柔軟な料金設定が可能な場合

弁護士費用は,弁護活動の範囲を限定することで費用額を安く抑えることも可能な場合があります。
痴漢事件は,弁護活動の範囲を限定しやすい類型に当たるため,個別のケースによっては弁護士からより柔軟な料金設定のご案内ができることも考えられるでしょう。一例として,弁護活動を示談のみに限定することで,不起訴報酬を発生させない形での弁護活動は有力な場合もあります。

可能な費用負担に限界がある場合も,一度お問い合わせいただくことをお勧めいたします。弁護士から詳細なご案内を申し上げることが可能です。

弁護士費用の例

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

刑事事件を起こすと国家資格を失う?逮捕されたら?起訴されたら?弁護士に依頼すると回避できる?弁護士がすべて解説

●逮捕されると国家資格に影響があるか?

●不起訴になれば国家資格への影響はないか?

●どんな刑罰を受けると国家資格がなくなってしまうか?

●自分の国家資格について確認する方法が知りたい

●国家資格がある場合の刑事事件は弁護士に依頼すべきか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,刑事事件の国家資格への影響についてお困りの方に向けて,刑事事件と国家資格の関係や,国家資格への影響を避ける方法などを解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

逮捕と国家資格の関係

刑事事件の国家資格に対する影響は,それぞれの資格に関する法律で定められていますが,逮捕されたことを理由に国家資格を失う定めはないため,逮捕されても国家資格に影響の生じることはありません。
そのため,国家資格との関係では,逮捕されるかどうかよりも,最終的にどのような処分を受けるのかという点が重要な基準になります。

不起訴処分の場合の国家資格への影響

刑事事件では,捜査機関が捜査を遂げた後,検察官において起訴又は不起訴の処分がなされます。起訴された場合には,裁判所で刑罰を科すかどうかの判断に移りますが,不起訴の場合にはその判断に移ることなく手続が終了します。そのため,不起訴処分になれば刑罰をうけることはありません。

そして,国家資格に関する法律は,資格者が一定の刑罰を受けたことを要件に国家資格への影響が生じるとの定めになっています。そのため,不起訴処分になったケースであれば,国家資格への影響が生じることはありません

ただし,懲戒処分の可能性に注意が必要となる場合はあります。公務員はその代表例ですが,刑罰を受けなかったとしても,職務に支障を来すような非違行為があれば,別途懲戒処分の対象となるリスクは否定できません。
懲戒処分を受ける場合,最も重大なものは懲戒免職,つまり職を失うという処分になるため,この場合には不起訴処分であっても仕事への影響が出てしまうことになります。
もっとも,懲戒処分は刑事処分の重さに比例して重くなるのが通常であるため,不起訴処分となったにもかかわらず懲戒処分で職を失うというのは,非常に例外的な場合に限られるでしょう。

ポイント
逮捕で国家資格に影響が生じることはない
不起訴処分で国家資格に影響が生じることはない
懲戒処分の対象になる可能性は否定できないが,非常に例外的

刑罰の程度と国家資格との関係

刑罰を受けた場合,国家資格に影響の生じる可能性がありますが,どの程度の刑罰によってどの程度の影響が生じるかは,それぞれの資格によって異なります。というのは,国家資格の場合,その資格を得られる条件や資格を失うケースなどについて,個別の法律にそれぞれ定められているためです。
そのため,具体的なケースで国家資格にどのような影響が見込まれるかは,個別に確認する必要がありますが,具体的なチェックポイントや確認手順を以下解説します。

国家資格と刑罰との関係 チェックポイント①対象になる刑罰の程度

まず,どのくらい重い刑罰であれば資格に影響を及ぼすのか,という点をチェックする必要があります。よくある定め方としては,以下のようなものがあります。

①罰金以上の刑対象:罰金刑,執行猶予,実刑
②拘禁刑以上の刑対象:執行猶予,実刑
拘禁刑以上の刑
特定の犯罪類型では罰金以上の刑
基本的な対象は執行猶予、実刑
職務に関係する事件では罰金以上も対象

特に,その国家資格が罰金刑でも影響の生じるものなのか,特定の犯罪類型の場合だけ罰金刑が対象になるものなのか,など,罰金刑が絡むかどうかは大きな区別の目安になるでしょう。

国家資格と刑罰との関係 チェックポイント②絶対と相対

国家資格に影響を与える場合,懸念されるのは資格を失うことですが,「絶対に失う」か「失うことがある」のかは資格により異なり,チェックが必要です。

チェックポイントとしては,こちらの方がより重要です。
絶対に失うのであれば是が非でも刑罰を避ける必要がありますし,失うことがあるという定めであれば,必ずしも刑罰を避けなければならない,というわけではなくなります。この差異は非常に重大です。

なお,「絶対に失う」という場合を「絶対的」欠格事由「失うことがある」という場合を「相対的」欠格事由といいます。
絶対的か相対的か,という区別は確実にチェックするようにしましょう。

ポイント
対象となる刑罰は,罰金以上・禁固以上・特定の犯罪類型のみ罰金以上とする場合のいずれかが多い
刑罰の国家資格への影響には「絶対的」と「相対的」がある

国家資格と刑罰との関係 確認手順

法律を読む機会がないと,条文が羅列される中で必要な情報を確認することは容易ではありません。そこで,以下では国家資格と刑罰の関係について,個別の資格に関する定めを確認するための基本的な手順を解説します。

①自分の国家資格と関係する法律を見つける

まずは,該当する法律を特定する必要があります。もっとも,医師であれば医師法,弁護士であれば弁護士法など,その特定自体は特に難しくないことが多いでしょう。一般的には,その資格の名称が法令名に含まれていることが多く見られます。

中には,保育士について児童福祉法に定められているなど,資格の名称と法令名が一致しない例もありますが,業務に関係のない名称の法令であることはないと考えてよいでしょう。

②資格が与えられない場合の定めを見つける

国家資格に関する法律には,資格が与えられない場合に関する定めが設けられています。
資格が与えられない要件に該当してしまっていれば,もし受験に合格などしても,資格を取得することができません。

例えば,医師法では,4条に以下のような定めがあります。

次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者

医師の場合,上記4つ場合のいずれかに当たると,他の条件を満たしていても免許を与えられないことがあることになります。

③資格を失う場合も同じルールであることを確認する

国家資格に関する法律では,資格を失う場合の定めを設けるとき,資格が与えられない場合の定めを流用するのが一般的です。資格を与えられないのか失うのかは,資格を得た前後の違いしかないため,そのルールは概ね共通します。
そのため,資格が与えられない場合の定めを確認できた場合には,資格を失う場合も同じルールであることを確認するのが円滑です。

同じく医師の場合を例に挙げると,医師法7条1項に以下のような定めがあります。

医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の医業の停止
三 免許の取消し

若干付け加えられてはいますが,基本的には4条のいずれかに該当する場合に免許取り消しを含む処分をすることができる,というルールになっています。4条は免許が与えられない場合の定めなので,免許を取り消すときのルールも概ね共通していることが分かります。

ポイント 確認手順
①該当する法律を特定
②資格が与えられない場合の定めを確認
③資格を失う場合も同じルールを用いていることを確認

刑罰による国家資格の影響一覧

資格制限の生じる刑罰の程度とその効果を基準に分類し,以下に一覧にして紹介します。
(厳密には資格に該当しないものも含みます)

①「罰金刑以上」で「相対的に」資格を失う場合

【対象資格】【制限の内容】
医師取消又は3年以内の停止
歯科医師取消又は期間を定めて停止
獣医師取消又は期間を定めて停止
保健師・助産師・看護師取消又は3年以内の停止
薬剤師取消又は3年以内の停止

②「拘禁刑以上」で「絶対的に」資格を失う場合

【対象資格】【対象期間】
公認会計士刑の執行終了後3年までの間
司法書士刑の執行終了後3年までの間
行政書士刑の執行終了後3年までの間
社会保険労務士刑の執行終了後3年までの間
税理士(※)刑の執行終了後5年までの間
国家公務員刑の執行終了までの間
地方公務員刑の執行終了までの間
教員・校長刑の執行終了後3年までの間
保育士刑の執行終了後2年までの間
建築士刑の執行終了後5年までの間
宅地建物取引業者刑の執行終了後5年までの間
宅地建物取引士刑の執行終了後5年までの間
建設業の許可刑の執行終了後5年までの間
土地家屋調査士刑の執行終了後5年までの間
不動産鑑定士刑の執行終了後3年までの間
中小企業診断士刑の執行終了後3年までの間
業務管理主任者刑の執行終了後2年までの間
取締役・監査役・執行役刑の執行終了までの間
※国税関係法令,地方税関係法令,税理士法の違反の場合

③「拘禁刑以上」で「相対的に」資格を失う場合

【対象資格】【対象期間】
古物商許可(※)執行後5年までの間
通関業許可(※)執行後3年までの間
警備業者・警備員(※※)執行後5年までの間
特定保険募集人(※※※)執行後3年までの間
※ 許可前では「絶対的」に不許可となる
※※ 開始段階では「絶対的」にできない
※※※ 登録前では「絶対的」に登録拒否

④特定の事件類型に限り「罰金刑以上」で「絶対的に」資格を失う場合

【対象資格】【対象となる法令】【対象期間】
税理士国税・地方税関係法令,税理士法執行後3年までの間
社会保険労務士労働社会保険諸法令執行後3年までの間
建築士建築士法又は建築に関する罪執行後5年までの間
古物商許可(※)窃盗・背任・占有離脱物横領・盗品等罪執行後5年までの間
※許可前では「絶対的」に不許可

国家資格がある場合の刑事事件は弁護士に依頼すべきか

国家資格がある場合の刑事事件は,その刑事処分の重さが直接資格に影響を及ぼす恐れが大きくあります。そのため,弁護士に依頼し,できる限り刑事処罰の回避や軽減を目指すのが適切でしょう。

また,自分の資格が失われる可能性があるのか,失われるのはどのような場合なのかは,やはり自身での確認が困難ではあるので,弁護士に依頼し,専門的なアドバイスを受けながら方針を決めるのが適切です。方針を誤れば,結果的に国家資格への影響が生じ,動いた意味がないという事態にもなりかねません。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

国家資格がある場合,資格の内容によっては刑事処分を若干軽減するだけでは問題解決にならない場合があります。
刑事処分の見通しは,刑事手続の初期段階で立てる必要があるので,国家資格への影響も初期段階で検討しなければなりません。
個別の資格に応じた具体的な対応については,刑事事件に精通した弁護士への相談・依頼が適切でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

従業員が逮捕された場合何ができる?状況を把握する方法や処分軽減のための対応法、会社への影響などを弁護士が解説

●従業員が逮捕されたが,何をしてあげられるか?

●従業員の事件について,内容や状況を把握することはできるか?

●従業員のために自分が弁護士を選ぶことはできるか?

●従業員の刑事処分を軽くするためにできることはあるか?

●従業員を雇用し続けると意思表明するのは従業員に有利になるか?

●従業員に前科がついた場合,会社にとって不利益はあるか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,自社の従業員が刑事事件の当事者となった場合の対応でお困りの方に向けて,従業員のためにできること弁護士への依頼に関する注意点などを解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

従業員が逮捕された場合に状況を把握する方法

①弁護士接見の重要性

従業員が逮捕された場合,被疑者である従業員の関係者に対して捜査機関から十分な情報が提供されることは期待できません。そのため,状況を把握するためには従業員本人から聴取する必要が生じます。
もっとも,特に逮捕直後には面会することも困難であり,警察が特に許可しない限り直接聴取することはできません。

そのため,弁護士に依頼し,弁護士に接見をしてもらう方法で,本人から事情を聴取するのが適切な手段となります。弁護士であれば曜日や時間帯を問わず接見を行い,従業員の方から話をお聞きすることが可能です。あわせて,弁護士が専門的な見地から今後の対応などについて助言をし,適切な対応を促すこともできるでしょう。

②従業員家族との連携

従業員の家族には,警察から連絡が入り,何らかの内容が告げられている場合も多いです。そのため,状況や内容を把握するための手段としては,従業員家族との連携も非常に重要でしょう。
その後の動きに際しても,ご家族と一緒に進めることによって,より円滑な対応ができる局面の増えることが見込まれます。

③報道を通じた確認は適切か

従業員の事件が報道された場合,その報道内容を通じて事件の内容を把握することも考えられます。
しかしながら,報道を通じた事件の把握には注意すべき点があります。

まず,報道される事件の内容が事実関係を網羅したものではない,ということです。
報道は,紙面や文字数の制限,その時点で得られる情報の限りなどがあり,どうしても事件の一部分を強調したものにならざるを得ません。そのため,報道のみで情報の把握を試みようとすると,事件の理解に不十分なところが生じやすいでしょう。

また,被疑者の認否に関する報道内容が正確でない可能性がある,という点も挙げられます。
報道においては,被疑者の認否が簡潔に報じられますが,その内容は被疑者の実際の認否を正しく反映したものでないことが少なくありません。実際に,報道で「容疑を否認している」と報じられていた事件の接見を行った際,実際は被疑者が全面的に認めていたという場合もあるため,直接本人の言い分を聴取しないかぎりは鵜呑みにしない方が適切でしょう。

従業員のために弁護士への依頼ができるか

①弁護人の選任ができるか

従業員のためを考える場合,従業員の弁護を行う弁護人を会社関係者の判断で選任したい,と考えるケースはあると思います。
しかし,法律上,会社関係者に従業員の弁護人を選任する権利はありません。弁護人選任権者は,被疑者・被告人,その法定代理人,補佐人,配偶者,直系の親族及び兄弟姉妹と定められているためです。弁護人を選任できるのは,基本的に本人とその家族に限られるという理解でも差し支えないでしょう。

②従業員のために弁護士へ依頼ができるか

もっとも,会社関係者が従業員のために弁護士をつけるのは,従業員にとっても有益なことが多いでしょう。特に,刑事事件の弁護活動には期間制限が付きまとうため,刑事事件で弁護人を選任するのは少しでも早いに越したことがありません。

そこで,先に会社関係者が従業員のために弁護士へ依頼(弁護士と契約)してしまう,という方法は非常に有力です。あくまで会社の人と弁護士が契約する,というのみなので,法律で制限されるものではありません。依頼後,弁護士が従業員の方と接見し,その意思を確認することができれば,本人から弁護士を弁護人として選任してもらうことができ,弁護活動に着手することができるでしょう。

【流れまとめ】

①弁護士との契約従業員のための契約だが,契約者はあくまで会社関係者と弁護士
②従業員に接見弁護士が従業員と接見し,弁護人選任の意思を確認
③従業員による選任弁護人選任権のある従業員が,弁護士を弁護人に選任
④弁護士の活動開始弁護人に選任されれば,弁護活動に着手することができる

従業員の刑事処分を軽くする方法

①会社関係者の働きで従業員の処分が軽減する場合

従業員の刑事処分を判断する際には,その従業員が今後どれだけ安定した生活を送る見込みであるか,周囲に理解者のある環境があるか,という点が考慮の対象になります。なぜなら,それらの事情は従業員の再犯可能性に重大な影響を及ぼすからです。
刑事処分後,不安定な生活を強いられる人の場合,犯罪に及ぶ際の心理的な障壁が低くなりやすく,犯罪の歯止めに欠けるとの理解がなされる傾向にあります。また,周囲に理解のある監督者がいない場合,やはり犯罪を食い止めることが難しく,再犯可能性が高いと判断されやすくなります。

そのため,会社関係者が今後も従業員との関係を継続する予定であることや,従業員の更生のために協力する意向であることなどが明らかになれば,従業員の刑事処分は軽減する可能性があります。
刑事処分後も従業員への協力を続ける予定である場合には,その旨を適切な相手に適切な方法で表明するのが望ましいでしょう。

②具体的な対応方法

【捜査段階】
→捜査の終了時に,検察によって起訴又は不起訴の判断が行われることとなります。そのため,判断を行う検察官に対し,不起訴処分を促す事情の一つとして会社関係者の協力体制を示すのが適切です。

【公判段階(起訴後)】
→公判では,検察官と弁護人がそれぞれ提出する証拠を踏まえて,裁判官が判決の内容を検討します。そのため,公判期日において,その裁判手続の中で提出する証拠として裁判所に示すのが適切です。

【提出物】
→基本的には内容を書面化することが適切です。具体例は以下の通りです。
・陳述書や上申書(会社関係者の話を書面化したもの)
・電話聴取書や報告書(弁護士が聞いた内容を書面化したもの)
・会社関係者の署名

従業員が刑罰を受けた場合の会社への影響

刑事責任は専ら個人責任であるため,従業員が刑罰を受けても会社に法律的な影響が生じることは基本的にありません。企業イメージの悪化や業務の混乱・停滞といった影響は懸念されますが,会社が法律的に不利益を被ることはないと理解してよいでしょう。

もっとも,従業員が資格を利用した仕事をしている場合,その資格に影響が生じることで業務への影響が生じることは考えられます。特に建築関係で影響の生じるケースが散見されますが,土地建物関係を例とすると,以下のようなものが挙げられます。

①建築士拘禁刑以上の刑又は建築に関する罪の罰金刑で免許取消
②宅地建物取引業者拘禁刑以上の刑で免許取消
③宅地建物取引士拘禁刑以上の刑で登録削除
④建設業拘禁刑以上の刑で許可取消
⑤土地家屋調査士拘禁刑以上の刑で登録取消
⑥不動産鑑定士拘禁刑以上の刑で登録削除

従業員がこれらの資格制限の対象となった場合,従業員の業務に制限が生じる結果,会社業務への影響が避けられず生じることがあり得ます。

従業員の刑事事件で弁護士を依頼すべきか

①ご家族との連携ができる場合

ご家族と連絡が取れ,その意向が確認できる場合には,会社関係者の方と従業員家族との間で方針や希望が合致しているか十分に協議することをお勧めします。それぞれが別に弁護士への依頼を検討しており,二つの依頼が競合してしまうと,かえって弁護活動の遅滞が生じ,従業員の不利益になってしまうためです。

また,弁護士探しや弁護士への依頼,依頼後の連絡窓口をするのは誰か,という点も十分に調整の上,情報共有ができる段取りをご家族との間で取っておくのが適切です。関係する人数が増えるほど情報共有が不足しがちですが,関係者すべてが弁護士と直接連絡を取るのも現実的でないため,弁護士とのやり取りや関係者間での情報共有の方法は明確にするのが有益でしょう。

②ご家族との連携ができない場合

ご家族と連絡が取れる間柄にないなど,連携が困難な場合には,まず弁護士と従業員本人の接見を実施し,ご本人の意向を確認するのが適切でしょう。多くの場合,従業員本人が拒否の意向を示すことは考えにくいですが,念のためご本人の意向を確認の上,確認ができ次第弁護活動に着手する,という流れが円滑です。

また,もし会社関係者の方と従業員本人の面会が可能な状況であれば,留置施設での面会を実施し,弁護士に依頼したいとの気持ちをお伝えの上,事前に従業員の了承を得ておくことも有力です。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

従業員が刑事事件の当事者となった場合,事業への影響が生じるだけでなく,従業員との関係によっては力になってあげられないかと悩みが生じる方もおられるかと思います。
従業員本人やその家族と一枚岩になることができれば,勤務先の方のお力添えは非常に心強いものであり,本人の刑事処分にとっても大変有益でしょう。
具体的な対応方法については,刑事事件に精通した弁護士への相談・依頼を検討してみてください。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

未成年の刑事事件の特徴は?どんな処分をされるのか?逮捕される?前科は?将来の影響を防ぎたい方への徹底解説

●未成年の場合,刑事事件の取り扱いはどうなるのか?

●取り扱いが変わるのは18歳か?20歳か?

●未成年は何歳から逮捕されるか?

●未成年が逮捕された場合,早く釈放してもらえないか?

●少年院とは何か?少年鑑別所とは何か?

●未成年の事件は弁護士に依頼すべきか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,未成年に対する刑事事件(少年事件)についてお困りの方に向けて,少年事件の制度や年齢別の取り扱い手続や処分(処遇)の内容などを解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

未成年と成人の刑事事件の違い

①制度の違い概要

未成年が行った刑事事件は,「少年事件」といい,成人と異なる手続の対象となります。
少年事件と成人の刑事事件は,その制度の目的が異なるため,手続にも様々な違いがあります。

成人の刑事事件は,犯罪に対して刑罰を行う手続であるのに対し,少年事件は,少年がどうすれば更生できるのかを検討するための手続です。そのため,少年事件では刑罰が科されず,代えて少年の更生に必要な「保護処分」がなされることとなります。
保護処分としては,少年院に収容して更生を図る「少年院送致」や,保護観察所・保護司による監督を通じて更生を図る「保護観察」が代表的ですが,いずれも犯罪に対する制裁でなく,非行からの立ち直りに向けた措置であるという特徴があります。

②共通点

未成年と成人では,刑事事件に対する手続が異なりますが,手続の共通点もあります。
具体的には,事件が捜査されている間の取り扱いは,未成年と成人との間で基本的に相違はありません。

厳密には,未成年の場合のみ少年鑑別所での勾留ができるといった違いもありますが,逮捕や勾留,勾留中の捜査など,基本的な枠組みは同様です。
未成年と成人との違いが鮮明に現れるのは,犯罪捜査が一段落した後の手続ということになるでしょう。

何歳までが成人と区別されるか

少年事件の対象となる年齢は,20歳未満とされています。近年,成人年齢が20歳から18歳となる法改正もありましたが,少年事件の対象年齢に変更は生じていません。
そのため,少年事件の対象となる「少年」は,20歳未満の男女を指します。

ポイント
20歳未満は少年事件の対象になる
少年事件は刑罰を科すのでなく更生を図るための手続
捜査されている間の取り扱いは,成人の事件と基本的に同じ

18歳以上の場合の特例

もっとも,成人年齢が18歳へ引き下げられたことに伴い,18歳以上20歳未満の少年については,取り扱いに新たな定めが設けられました。
少年が18歳又は19歳の場合,「特定少年」とされ,主に以下のような違いが生じます。

①原則逆送事件の拡大

逆送とは,成人の刑事事件と同じ扱いを受けること,と理解して差し支えありません。
少年でありながら,成人のように刑罰の対象になることを指します。
少年事件でも,「原則逆送事件」に該当すると,原則として成人と同じように刑罰を受けることになるのです。

特定少年の場合は,他の少年よりも原則逆送事件の範囲が広くなっています。具体的な要件は以下の通りです。

・罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき
・故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪の事件
・死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪の事件

特徴的なのは,家庭裁判所が「刑事処分を相当と認めるとき」に可能である点と,「短期1年以上」の罪の事件でも原則逆送となっていることです。
特定少年以外では,「16歳以上」かつ「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件」のみが原則逆送事件とされているため,その範囲は大きく広がっていることが分かります。

②実名報道の一部解禁

少年については,少年法で実名報道が禁止されていますが,特定少年については,逆送後にその事件で起訴された場合に実名報道の禁止がありません。

なお,起訴後に実名報道の禁止がなくなるのは,「公判請求」された場合のみです。公判請求は,公開の法廷で正式な刑事裁判を行う内容の起訴をいいます。
公判請求と対になるのは「略式請求」で,こちらは公判を省略する内容の起訴です。略式請求の場合は,引き続き実名報道は禁じられます。

③保護観察や少年院送致の期間

通常,保護観察や少年院送致を行う場合,期間を定めずに処分されていましたが,特定少年の保護処分は期間の定めをあわせて行う必要があります。具体的な内容は以下の通りです。

・6月の保護観察
・2年の保護観察
・3年以内の少年院送致

また,特定少年の場合,「犯罪の軽重」を考慮して処分を決めることとされたため,重大な犯罪であるほど少年院送致になりやすく,その期間も長くなりやすいとのルールになりました。

④不定期刑の不適用

少年事件が逆送され,刑罰の対象になる場合,「不定期刑」を科すのが原則です。「●年以上●年以下の拘禁刑」というように,刑罰の期間に幅を設け,少年の更生が見られた場合に刑罰を軽減させる目的があります。

しかし,特定少年の場合にはこの不定期刑が適用されないため,言い渡される刑罰は成人と同じものになります。

未成年は何歳から逮捕されるか

少年の犯罪行為が確認された場合,捜査機関が逮捕を行うのは,少年が14歳以上の場合です。
法律上,刑事責任を負うのが14歳以上とされているため,捜査(逮捕を含む)を行う対象も14歳以上とされています。
なお,14歳以上で犯罪行為に及んだ少年を「犯罪少年」と言います。犯罪少年は逮捕されることがあります。

一方,14歳未満の場合,刑事手続の対象とはなりませんが,児童福祉法に基づいて児童相談所が保護措置を取ることになります。
保護措置としては,一時保護,保護者指導,施設入所といったものがありますが,刑事事件として捜査を受けることはありません。
なお,14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年を「触法少年」と言います。触法少年の行為は犯罪にならないため,触法少年は逮捕されません。

ポイント
14歳未満は逮捕されない
14歳以上は逮捕され得る
18歳,19歳は「特定少年」とされ取り扱いが成人と近くなる

未成年の刑事事件の特徴 ①起訴・不起訴がない

少年事件の場合,警察や検察で捜査が遂げられた後,原則として全ての事件が家庭裁判所に送致されます。その後,家庭裁判所における審判の対象となり,保護処分がなされます。
そのため,検察庁が捜査を遂げた段階で,少年を起訴することはできず,逆に不起訴とすることもできません(逆送された場合を除く)。

これは,刑罰を科せられないという意味で有益であることは間違いありません。ただ一方で,成人であれば不起訴で終了したであろう事件でも,少年の場合には家庭裁判所で審判を受けなければならない可能性がある,という意味でもあります。刑罰を科す必要がなくなっても,更生の必要がないということにはならないわけですね。

未成年の刑事事件の特徴 ②処分は家庭裁判所が決定する

少年事件の最終的な処分は,家庭裁判所によって決定されます。家庭裁判所による少年への処分としては,以下のようなものが挙げられます。

①保護観察
概要: 少年を家庭や社会の中で更生させるために,保護観察官が指導監督を行います。
目的: 少年が社会生活を送りながら更生できるよう支援すること。
期間: 原則として20歳まで。短期の場合は6か月程度で解除が検討される。

②児童自立支援施設送致
概要: 少年が家庭や社会から離れて生活することが必要と判断された場合,児童自立支援施設に入所させる。
目的: 生活指導や職業訓練を通じて,少年の自立を支援すること。
期間: 少年の状況に応じて施設に収容される期間が決まる。

③児童養護施設送致
概要: 家庭環境が悪い少年に対し,適切な養護と生活指導を提供するために児童養護施設に入所させる。
目的: 安定した環境での生活を提供し,少年の健全な成長を支援すること。
期間: 少年の状況に応じて施設に収容される期間が決まる。

④少年院送致
概要: 重度の非行や犯罪行為を行った少年に対し,更生と再教育を目的として少年院に収容する。
目的: 専門的な教育や訓練を通じて,少年の更生を図ること。
期間: 少年の更生状況に応じて決定される。標準期間は1年程度。

⑤試験観察
概要: 一定期間,家庭裁判所の観察下に置き,少年が更生するかどうかを見極める。
目的: 少年が再び非行を犯さず,社会生活を送れるかどうかを判断すること。
期間: 数ヶ月程度が一般的。

⑥その他の措置
家庭裁判所の指導
→保護者に対して少年の監督や教育の方法について指導が行われることもあります。
福祉機関との連携
→少年の状況に応じて,福祉機関や医療機関との連携が図られ,必要な支援が提供されます。

⑦一般的な運用
基本的には,保護観察とするか少年院送致とするか,という判断になります。
どちらにするかの判断が難しいケースでは,試験観察として一定期間保護観察類似の状況に置き,試験観察中の経過を踏まえて保護観察で足りるかを判断することがあります。

未成年の刑事事件の特徴 ③裁判でなく審判が行われる

少年事件は,「審判」という手続で処分が決定されるのが一般的です。
この審判は,成人の受ける裁判(公判)とは多くの面で異なるものですが,代表的な相違は以下の通りです。

①非公開であること

少年審判は非公開の場で行われます。これは,少年のプライバシーを保護することで,更生の機会を確保するための制度であるとされています。
成人の公判が原則として公開されていることとは非常に大きな違いと言えます。

②調査の上で行われること

少年審判は,家庭裁判所における「調査」の上で,調査の結果を踏まえて行われます
調査は,家庭裁判所の調査官が中心となって,少年の家庭環境や内面の問題点などを把握するための手続です。調査官は,少年とコミュニケーションを取ったり,家族と面談を行ったりしながら,審判においてどのような保護処分を行うべきか検討し,裁判官に進言します。

調査官は,審判の場にも立ち会い,少年への指導を兼ねた質問を行うなどすることもあります。裁判官の判断は,調査官の意見を強く尊重する傾向にあるため,調査官の存在は少年審判において非常に重要です。

③教育的配慮がなされること

少年審判は,少年の更生のため最良の処分を決定するものであるため,少年に対する教育的配慮の上で行われます。裁判官や調査官は,少年から期待する回答が得られなかったり,少年の理解が不足していたりする場合には,粘り強く質問や説明を繰り返すことで少年の理解や反省を促すこともあります。

④保護者が同席すること

少年審判では,親権者等の保護者による同席が一般的です。保護処分の検討には,処分後の少年の環境が非常に重要な判断要素となるため,保護者に対しても事件の受け止めや今後の監督方針などが質問されます。
出席者は同居する親であることが通常ですが,その他,雇用を継続する予定の雇用主や,少年と関わりの深い教員の出席が有益なケースもあり得るところです。

未成年の刑事事件の特徴 ④処分の判断基準は「要保護性」

①要保護性とは

少年審判における保護処分は,「要保護性」を基準に判断するものとされています。
要保護性とは,少年の更生を実現するために外部からはどれだけ手を出す必要があるか(保護の必要があるか)という程度を言います。要保護性が高い場合は,少年院送致などの保護処分が必要になり,要保護性がない場合は,特段の処分なく少年や家族に委ねても構わない,という結論になるでしょう。

②要保護性の判断基準

要保護性の判断要素としては,以下のようなものが挙げられます。

非行の内容と状況
→非行の種類として,少年が犯した非行や犯罪の内容,その重大性や継続性が判断基準となります。また,犯行時の状況として,非行を行った際の状況や背景,計画性の有無なども考慮されます。

少年の性格や行動特性
→性格評価として,少年の性格,行動特性,精神状態などが調査されます。攻撃性や衝動性,反社会的行動の傾向などが評価の対象となります。また,更生の可能性に関し,少年が反省しているか,更生の意欲があるかなども重要な要素です。

家庭環境と生活環境
→家庭の状況として,少年の家庭環境,親の監護能力,家庭内の問題(例えば,虐待や家庭内暴力の有無)などが評価されます。また,学校生活や地域社会での関係,友人関係など,日常生活の環境も考慮されます。

過去の非行歴
→少年が過去にどのような非行を行っていたか,その頻度や内容が判断材料となります。また,過去に保護処分を受けたことがあるか,その後の経過なども重要です。

③要保護性の判断方法

要保護性に関する調査は,主に調査官が行い,その結果を裁判官が確認する方法で判断されます。調査官は,要保護性の有無について裁判官に意見を提出し,裁判官はそれを尊重するので,調査官に要保護性がないとの意見を出してもらうことができれば,それだけ軽微な処分が見込まれることになります。

ポイント
少年の刑事事件は起訴不起訴の対象とならず,少年審判の対象になる
少年審判は家庭裁判所にて必要な調査の上で行われる。判断の基準は要保護性

少年院とは・少年鑑別所とは

①少年院

少年院は,非行や犯罪を犯した少年を収容し,更生と教育を行う施設です。施設に収容の上,学習教育,職業訓練,生活指導,矯正教育などのプログラムを提供することで,少年の更生を図ります。
少年院には,以下のような種類があります。

第1種少年院(従来の初等・中等少年院)心身に著しい障害がない概ね12歳以上23歳未満の者が対象
第2種少年院(従来の特別少年院)心身に著しい障害がなく,犯罪傾向が進んだ概ね16歳以上23歳未満の者が対象
※第1種よりも事件の重大性や再非行の恐れが大きい
第3種少年院(従来の医療少年院)心身に著しい障害がある概ね12歳以上26歳未満の者が対象
第4種少年院刑の執行を受ける者が対象
第5種少年院特定少年のうち,2年間の保護観察処分を取り消された者が対象

②少年鑑別所

少年鑑別所とは,少年の心身の状態や生活状況を鑑別するための施設です。
通常,被疑者として勾留された後,家庭裁判所に送致された段階で,少年鑑別所に移され,収容が継続します。少年鑑別所での鑑別結果も,調査官の意見や裁判官の保護処分に影響します。
基本的に,少年事件が家庭裁判所に送致された後,審判が行われるまでの間,少年が収容される施設と理解して差し支えないでしょう。

主な特徴は以下の通りです。

【鑑別の内容】

心理鑑別心理検査や面接を通じて,少年の性格,精神状態,非行の原因などを評価します。
身体鑑別少年の身体的健康状態を確認するための健康診断や医学的評価が行われます。
生活環境調査少年の家庭環境や生活状況を調査し,非行に至る背景や更生のために必要な環境要因を評価します。


【鑑別技官の存在】
鑑別技官(専門職)は,少年の心身の状態や生活環境を科学的に評価し,家庭裁判所に対して鑑別結果を報告します。鑑別技官には,心理学,医学,教育学などの専門知識を持つ職員が含まれます。

【生活環境】

規則正しい生活少年鑑別所では,規則正しい生活が求められます。日課表に基づいて,学習や運動,面談などが行われます。
教育プログラム鑑別期間中,少年は基礎的な学習や生活指導を受けます。特に,鑑別の結果に基づいた個別指導が行われることもあります。

【収容期間】
原則として4週間とされ,概ね4週目に少年審判が行われる傾向にあります。
審判の結果,保護観察処分や不処分になると,審判が終了次第帰宅することができます。

未成年の事件は弁護士に依頼すべきか

少年事件は,審判というあまり馴染みのない手続の対象となる上,審判に向けた環境調整や更生の試みは早期に開始する必要があります。それらの対応は,手続に精通した弁護士への依頼が適切です。

また,少年の場合,成人よりも変化に富んでおり,事件直後と審判終了時では別人のように成熟するケースも少なくありません。そのような少年に対する処分は,必然的に軽微なものとなりやすいです。審判に向けて少年の成熟を促すため,少年事件に精通した弁護士への依頼が適切でしょう。
もっとも,これは周囲の適切な協力を前提とするものであって,少年がひとりでに変化していくわけではありません。具体的な協力の内容や方法は,事件や少年により様々ですので,あわせて弁護士へのご相談をお勧めいたします。

加えて,被害者のいる事件で被害者との示談を試みる場合にも弁護士が必須です。被害者との示談は最終的な処分にも多大な影響を及ぼしますので,この点でも弁護士に依頼するべきということができるでしょう。

未成年の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

未成年が当事者となった刑事事件は,成人とは異なる手続の対象になります。処分の内容や判断基準も異なり,必然的に必要な弁護活動も異なってきますので,未成年の刑事事件(少年事件)に精通した弁護士への相談・依頼が適切でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

公務員が刑事事件を起こすと職場にバレる?起訴されると失職する?前科がついた場合は?制度の詳細や弁護活動を解説します

●公務員が被疑者の場合,取り扱いに特徴はあるか?

●公務員の事件は職場にバレてしまうのか?

●公務員が逮捕されると職を失ってしまうのか?

●公務員が起訴されると職を失ってしまうのか?

●弁護士に依頼することで失職を防げるか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,公務員の刑事事件についてお困りの方に向けて,公務員が被疑者・被告人となった場合の特徴や,公務員の仕事への影響などを解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

公務員が被疑者の場合の特徴 ①報道の対象になりやすい

公務員が被疑者となる刑事事件は,報道されやすいという特徴があります。刑事事件が報道される場合,逮捕された事件について,逮捕の直後に行われるのが一般的ですが,全てが報道されているわけではなく,報道の対象とすべき事件を取捨選択するのが基本的な運用です。

公務員の刑事事件が報道されやすい主な理由としては,以下の点が挙げられます。

①公務員の社会的責任
公務員は公共の利益のために働く立場にあり,高い倫理基準や責任が求められます。そのため,刑事事件に関与することは社会的な関心を引きやすく,報道価値が高いと見なされます。

②公共の信頼
公務員の不祥事は,政府機関や公共サービスに対する信頼を損なう可能性があります。メディアは公共の利益を守るために,このような事件を積極的に報道し,透明性と説明責任を確保しようとします。

③報道の役割
報道機関は公共の知る権利を守る役割を果たしています。公務員の刑事事件は公共の利益に関わるため,報道機関はこれを伝える義務があると判断することが多いです。

④市民の関心
市民は,公務員の行動が自分たちの生活に直接影響を与えるため,公務員の刑事事件には高い関心を持っています。この関心が報道機関の報道方針に影響を与えることがあります。

公務員が被疑者の場合の特徴 ②職場への通知がなされやすい

公務員の刑事事件は,職場である国や自治体への通知が見込まれやすいです。その主な理由としては,以下の各点が挙げられます。

①報道機関による報道
公務員の刑事事件は報道されやすく,報道を通じて事件が広く知られるため,職場の同僚や上司にも知られるきっかけとなることが多く見られます。

②警察からの通知
公務員が刑事事件に関与した場合,警察や検察は通常,所属する行政機関に通知します。これは,所属機関が適切な対応を取るために必要な手続とされることが一般的です。

③内部調査
公務員が刑事事件に関与した場合,所属する機関は内部調査を行うことがあります。この調査により,事件の詳細が職場内で共有されることになります。

④行政手続
公務員が刑事事件に関与した場合,懲戒処分などの行政手続が行われることがあります。この過程で,職場内で事件に関する情報が共有されることが多いです。

⑤職務上の影響
公務員の刑事事件は,その職務遂行能力に直接的な影響を及ぼす可能性があります。そのため,職場は迅速に対応する必要があり,事件に関する情報が共有されます。

公務員が刑事事件で受ける処分 ①休職させられることがある

公務員の場合,刑事事件の影響で仕事を休職させられる場合があります。
本人の意に反して休職させるこの制度を「起訴休職」と言い,国家公務員,地方公務員いずれにも存在するルールです。

①休職させられるケース

「起訴休職」という制度名の通り,起訴された場合に用いられる制度ですが,起訴された場合の全てに当てはまるわけではありません。
前提として,起訴のやり方には,大きく以下の二通りがあります。

公判請求公開の裁判を求める方法。公判を開いた上で,裁判所が判決を言い渡すことになります。
略式請求公判を省略し,書面の交付のみで裁判を行う方法。罰金の場合に限り行うことができます。

起訴する場合の手続は,公判請求するのが原則であり,例外的に軽微な処理で済ませる場合に略式請求を行う,という運用がなされています。

このうち,起訴休職の対象となるのは,公判請求をされた場合に限られます。略式請求は起訴休職の対象にはなりません。
そもそも,略式請求の場合には,起訴後ただちに裁判所の決定が出ることもある上,起訴された事実が分かるのが裁判所の決定後であることも多いため,現実的にも休職の措置を取ることは難しいでしょう。

②休職させられる理由

公務員が刑事事件の被告となることで職務の遂行に支障をきたす恐れがあることへの備えや,公務員としての信用を保持する目的があるとされています。
公務員が公共の利益のために業務を行う立場であること,その業務への国民の信頼が前提となることが,制度の背景にあります。

公務員が起訴されたという事実に着目した制度なので,起訴された事件の内容にかかわらず,公判請求された段階で起訴休職とされることになります。

③休職の期間

休職を要する期間は,起訴された日から判決が確定する日までとされています。
つまり,公判の手続が終了したと確認が取れるまでの間は,休職を強いられることになるのが通常です。

④休職中の給与

原則
休職期間中,給与を受けてはならないのが原則です。
起訴休職中の公務員は,職印としての身分を保有するものの,職務には従事しないため,職務の対価である給与も受けてはならない,ということになります。

特別の定め(国家公務員)
→国家公務員については,「一般職の職員の給与に関する法律」によって,起訴休職中にも,給与及び各種手当について60%以内の金額を支給することができると定められています。
一般的には,60%の金額を支給することが多いようです。

特別の定め(地方公務員)
→地方公務員の場合,各自治体の条例によって制度が定められることになりますが,国家公務員と同じく60%までの支給が可能であるとのルールになっていることが一般的です。

公務員が刑事事件で受ける処分 ②失職する場合

①失職の根拠となる制度

公務員の刑事事件では,法律上のルールとして直ちに失職する結果となる場合があります。これを「当然失職」と言います。
国家公務員については,国家公務員法に,地方公務員については地方公務員法に,それぞれ定めがなされています(ただし,地方公務員の場合は各自治体の条例で例外を定めることが可能です)。

当然失職の対象となるのは,拘禁刑以上の刑になった場合です。これは執行猶予付きの判決も含みます。
刑罰には,軽いものから罰金,執行猶予,実刑の概ね3種類あるところ,罰金以外は当然失職の対象であることになります。そして,罰金の場合は略式請求,執行猶予又は実刑の場合には公判請求されるのが通常であるため,公判請求された段階で休職,判決が確定した段階で失職,という流れをたどることが多く見られます。

②失職の理由

当然失職が生じるのは,公務員の欠格条項に関係しています欠格とは,その資格を欠いていることをいい,つまりは公務員になる資格を欠いているのはどういう場合かを定めたのが欠格条項です。

この点,公務員の欠格条項には,「拘禁刑以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」というものがあります。これは,「実刑や執行猶予の刑になると公務員になる資格がありませんよ」という意味です。

そのため,公務員になった後,実刑や執行猶予の刑罰を受けた場合,事後的に公務員となる資格がなくなったこととなるため,失職に至るというわけですね。
当然失職は,公務員の職務倫理や法的遵守が厳しく求められることを反映した措置であると言えます。

公務員が刑事事件で受ける処分 ③懲戒処分を受ける場合

当然失職の対象とならない場合,具体的には罰金刑や不起訴処分にとどまった場合については,別途懲戒処分の対象になるかどうかが問題になります。
刑事事件の対象となる行為は,「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」に該当するため,国家公務員法及び地方公務員法に基づく懲戒処分の対象になることがあり得るのです。

①懲戒処分の種類

免職 職を解かれる最も重い処分。
停職一定期間の職務停止。期間中は給与が支給されません。
減給給与を減額する処分。一定期間、給与の一部が差し引かれます。
戒告書面での厳重注意。職務には影響しませんが、記録が残ります。

なお,懲戒免職の場合,退職手当法により退職の全部又は一部が不支給となるのが通常です。そのため,経済的にも非常に不利益の大きな処分となります。

②懲戒処分の判断基準

国家公務員の場合には,人事院が懲戒処分の指針を公表していますが,そこで示されている判断材料は以下の通りです。

・非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
・故意又は過失の度合いはどの程度であったか
・非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
・他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
・過去に非違行為を行っているか
・日頃の勤務態度や非違行為後の対応等

刑事事件との関係では,刑事処分の重さと懲戒処分の重さが比例する傾向にあります。
重大な懲戒処分を避ける意味でも,刑事事件への対応は適切に行うべきでしょう。

ポイント 公務員の特徴
逮捕直後に報道されやすい
職場に事件が発覚しやすい
公判請求されると起訴休職の対象になる
執行猶予以上の刑罰を受けると当然失職の対象になる
当然失職の対象外である場合は,懲戒処分を受けるかが問題になる

公務員の事件で弁護士に依頼すべき場合

①刑事処分の軽減を目指す場合

公務員の刑事事件では,公務員としての地位への影響も生じるため,刑事処分の軽減を目指す必要性が他の場合よりも非常に高い,という点に特徴があります。
もっとも,刑事事件の処分を軽減させるのに必要な動きは,自分だけで取るのが非常に困難です。弁護士に依頼の上,具体的な活動方針や内容を十分に相談して実行に移すのが適切でしょう。

②懲戒処分の軽減を目指す場合

不起訴処分や罰金刑にとどまった場合,当然に失職することはありませんが,懲戒処分を受ける可能性は否定できません。このとき,懲戒処分は裁量的な判断の対象になるため,その裁量の範囲内でできるだけ軽い処分にもらうよう試みることが適切でしょう。
弁護士に依頼した場合は,刑事処分を可能な限り軽くすることはもちろん,懲戒処分の判断に際しても意見書を提出するなどし,法律家及び弁護人の立場から処分の軽減を促す活動が可能です。

③職務への影響を防ぎたい場合

特に,逮捕や勾留といった身柄拘束の対象になる場合には,職務や職場関係者に大きな影響を及ぼすことが避けられません。中でも,刑事事件の内容や状況が職場にどう伝わるか,という点は,非常に重大な問題となりやすいところです。
弁護士に依頼した場合,弁護士から適宜適切な情報提供を行うなどしながら,職務や職場関係者に対する影響を最小限に抑える弁護活動が可能です。

公務員の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

公務員の方は,公共の利益を代表する立場にあることから,刑事事件の被疑者・被告人となった場合には民間の方とは違う不利益を受ける可能性があります。
もっとも,必ず不利益な処分を受けるわけではなく,刑事事件に強い弁護士に依頼をして適切な対応をしてもらえれば,処分を避けられることも少なくはありません。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

風俗トラブルで問題になるケース・対処を誤るリスク・刑事処罰の可能性などを専門家が徹底解説

●風俗トラブルはどのような場合に起きるか?

●風俗トラブルが起きた場合、どう対処すべきか?

●風俗トラブルはどんな犯罪になるか?

●風俗トラブルは逮捕されるか?

●風俗トラブルは自分でお店と解決しても問題ないか?

●風俗トラブルは弁護士に依頼するべきか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,風俗トラブルが起きた場合の対処法や、風俗トラブルで弁護士に依頼すべき場合などについて、詳細に解説します。

藤垣法律事務所 – お問い合わせ
✉️ 24時間365日受付中!
Mail Icon 無料相談はこちら
📞 平日9:00~18:00
友だち追加
LINE相談はこちらから

風俗トラブルとして問題になるケース

風俗店のサービス利用時における利用客側とお店側のトラブルを,俗に風俗トラブルということがありますが,風俗トラブルとして問題になる代表的なケースは,以下の通りです。

①本番(挿入)行為に関するトラブル

デリバリーヘルスなどの風俗店は,サービス中の本番行為(性器の挿入)を禁止しています。もし風俗店がそのサービスの一環として本番行為を行ってしまうと,風俗店は売春防止法に違反する犯罪行為(いわゆる管理売春)になるため,風俗店がサービスとして本番行為を許容することはありません。

そのため,風俗サービスの利用中に本番行為があると,担当のキャスト(店員)及び風俗店との間でトラブル化することがあります。

②撮影行為に関するトラブル

風俗サービス中は,キャストが着衣をつけず,乳房や性器などを露出していることが一般的ですが,その状況を無断で撮影した場合,トラブル化することが見込まれます。

撮影行為は,風俗店が通常禁止しているのみでなく,キャスト自身もこれを許容していることが考えにくいため,撮影の事実が発覚した場合には基本的にトラブル化すると理解するのが適切でしょう。

③サービス中の強要行為に関するトラブル

風俗サービス中に,キャストが許容しない行為を強要し,その強要行為がトラブル化するケースも考えられます。
具体例としては,プレイの一環としてキャストの首を絞めた,キャストの性器や肛門に異物を挿入した,キャストの身体に液体をかけた,といったものが挙げられます。

これらの行為は,双方の合意で行われるのであればトラブルにはならないのが通常ですが,利用客側においてキャストの合意があるものと誤解して行い,トラブル化することが散見されます。

本番行為の法律的な位置付けについて

風俗店における挿入行為を俗に「本番行為」と言いますが,その法的な位置付けには非常にあいまいなところがあります。

まず,風俗店のサービスとして本番行為を提供することは,売春防止法に違反する犯罪行為であり,風俗店側が刑事罰の対象になってしまいます。そのため,お店が表立って本番行為を許容することはないでしょう。風俗店も禁止行為としていることが一般的です。
風俗サービス中の本番行為が違法でないことの根拠は,当事者双方の合意があるためです。当事者双方が合意し,自由な意思で本番行為をしているのであれば,そのような本番行為を法律で規制する筋合いにはないということになります。あわせて,キャストが自己判断でした本番行為については,風俗店も黙認するのが通常です。

ところが,当事者双方の合意があるという前提が崩れると,トラブル化してしまいます。
利用客側の合意がない,ということは通常考えにくいですが,キャスト側の合意がない場合には,風俗店の禁止行為に該当するのみでなく,不同意性交等罪に該当する犯罪行為となる可能性も浮上します。

風俗トラブルの代表例である本番トラブルは,利用客は合意あり(=お店の禁止行為でも犯罪行為でもない)と思っていたのに,キャストや風俗店は合意なし(=お店の禁止行為であり犯罪行為である)と主張している,などと見解に相違のあることで生じるのが一般的です。

風俗トラブルの適切な対処と誤ったときのリスク

風俗トラブルが表面化する一般的な流れは,キャストが店側にトラブルの申告(連絡)をし,風俗店の関係者が現場に駆け付ける,ということが多く見られます。代表的なデリバリーヘルスの例では,性的サービスの後,キャストが利用客のシャワー中に店へ連絡し,利用客が部屋を離れる前に店舗関係者が部屋に向かってトラブル解決を迫る,という流れが多いところです。
なお,そこでのトラブル解決は,金銭的解決を指すことが通常です。風俗店のトラブル対応は,金銭的な満足を得られるかどうかを基準とすることが一般的です。

このような風俗トラブルに見舞われた際の適切な対処としては,その場で結論を出したり支払ったりせず,速やかに弁護士へ相談・依頼をすることです。その具体的な理由は,以下の通りです。

①心理的圧迫の影響で多額の支払をしてしまう危険がある

風俗店関係者からは,「女の子がショックを受けている」「犯罪だから警察に突き出すこともできる」などと真偽の不明な文句で心理的圧迫を受け,金銭賠償を強要されることが多く見られます。突然そのような話をされ,正常な判断も難しい中で対応した場合,十分な交渉も検討もできないまま,風俗店側に求められた多額の支払を行ってしまう危険が非常に大きいでしょう。

②トラブルの解決が約束されないままになってしまう

風俗店は,風俗トラブルについて金銭を受領した場合,その内容を自社又は店舗の独自の書式で作成した何らかの書面にすることが多く見られます。もっとも,その書面は,法律的な意味での紛争解決を内容としているわけではなく,記載内容も作成方法も不十分であることがほとんどであり,風俗店側の内部処理くらいの意味合いしかありません。

そのため,せっかく金銭を支払って風俗店と解決したとしても,それ以上の賠償義務があるかないか不明確な上,今後さらに金銭を請求しないとの確約もない,という状態になってしまいます。法的には何も解決しないまま,支払った金銭の負担だけが残るということになりかねません。

③キャストとの間では紛争解決ができない

風俗店の試みるトラブル解決は,あくまで風俗店と利用客の間でのものであり,キャストと利用客との解決を内容とするものではありません。そのため,風俗店と事実上解決できたとしても,その後になってキャストが自分への金銭賠償等を請求してきた場合,これを回避する手立ては存在しないことになります。
紛争全体の解決を図るためには,風俗店と利用客,キャストと利用客それぞれの解決が必要となりますが,それを実現するためには,その場で結論を出さず弁護士に依頼することが不可欠でしょう。

④個人情報を風俗店に保管されてしまう

風俗店は,風俗トラブルが発生したときの運用として,利用客の身分証の写しを取るなど,その個人情報を保管しようとすることが一般的です。もちろん,これに応じる法的な義務はありませんが,現実的にはその場を収めるために応じることが非常に多いでしょう。

この点,自分で風俗店と解決を図った場合,保管された個人情報はそのままになってしまい,これを破棄・処分などすることの約束を取り付けることは困難です。紛争解決した後に相手の個人情報を保管しておく理由は特段ありませんから,風俗店に個人情報を確保されたままの状態が非常に不適切であることは間違いありません。

ポイント
本番行為は両者の合意があるから合法
トラブル化した場合は金銭的解決が問題になりやすい
その場で解決しようとすると適切な解決は困難。弁護士への依頼が得策

風俗トラブルは犯罪になるか

風俗トラブルとして問題になる行為は,犯罪に該当する行為であることも少なくありません。そのため,風俗トラブルの事件が犯罪として捜査・処罰されるかどうかは大きな問題になります。
ここでは,主な類型ごとに,風俗トラブルがどのような犯罪になり得るか解説します。

①本番トラブル

本番トラブルは,キャストの同意なく挿入行為に及んだという問題であるため,「不同意性交等罪」に該当する可能性があります。これは,かつて強姦罪とされていた事件類型です。

もっとも,風俗店での本番トラブルと,そうでない状況での不同意性交等罪では,取り扱いに違いの生じることが少なくありません。風俗店は,そもそも性的な行為・サービスを行うためのものであり,キャストと利用客の間では何らかの性的行為を行う合意がなされていると考えざるを得ません。その場合,キャストと利用客との間でどこまでの行為について合意がなされたのかが必ずしも明確でない,という特徴があるのです。

上記で解説の通り,当事者が合意をして本番行為に及ぶのであれば,犯罪ではありませんし警察が関与する筋合いもありません。そのため,本番トラブルが問題になった場合,捜査をする警察としては,本番行為の合意がなかった(利用客も合意がないと把握していた)と言えるのかは,慎重に検討する必要のある問題になります。

②盗撮トラブル

盗撮トラブルは,「性的姿態等撮影罪」(いわゆる撮影罪)に該当する可能性が高く見込まれます。風俗サービス中,衣服をつけない状態でいるキャストを撮影する行為には,基本的に撮影罪が成立することになるでしょう。

撮影行為は,本番行為と異なり明らかにその合意がないことがほとんどです。風俗店もキャストも,撮影行為の了承をしているとは考え難く,利用客もそれを承知の上で見つからないような方法で撮影を試みるのが通常であるため,撮影罪が成立するか不明確である,というケースは少数派でしょう。

③強要トラブル

強要トラブルは,その内容によって「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪」「強要罪」等の犯罪に該当する可能性があります。一般的な区別は以下の通りです。

不同意性交等罪性器に物を挿入する行為,口腔性交,肛門性交
不同意わいせつ罪性交等に該当しないが,キャストの同意なく行われたわいせつ行為
強要罪わいせつ行為でないが,キャストの意思に反した行為を強いること

風俗トラブルと逮捕

風俗トラブルの場合,風俗店側が警察を呼ぶなどして警察が関与する場合も少なくありませんが,その場合でも逮捕まで至る可能性は決して高いわけではありません。
特に,本番トラブルの場合だと,利用客側はキャストが本番行為に合意していると誤解していたことがほとんどなので,犯罪が成立する可能性は低く,キャストやお店の主張のみを根拠に逮捕することは容易ではありません。

もっとも,内容があまりに過激である場合,トラブルが度重なっていて悪意がないとは考えにくい場合など,特に十分な捜査を要すると判断される場合には,逮捕に至る可能性も否定はできません。

風俗トラブルは自分で解決してもよいか

風俗トラブルは,その場で風俗店関係者から解決を迫られることが多いため,これに応じる形で自分で解決することも不可能というわけではありません。しかし,やはり自分で風俗店側と解決を図ることは,法的にはお勧めできません。

自分で解決を図ることの致命的な問題は,法的には何ら解決されていない状態のままになる,ということです。風俗店側が客の利益になるような示談書などを作成することはありませんので,それ以上の金銭債務がないのか,お店やキャストが他言しないのか,警察を巻き込まないのか,といった点については,全く手つかずになってしまいます。

風俗店やキャストがそれ以上の動きを取らなければ,現実に問題となることはありませんが,裏を返せば,風俗店やキャストが後から金銭請求をしてきたり警察に被害届を出したりしても全く問題ない,ということです。
そのリスクを抱える前提で解決や支払を行うのは,適切とは言い難いでしょう。

ポイント
風俗トラブルは逮捕される可能性が高くはない
自分で解決を図ると,法的には解決されていないままとなる危険がある

風俗トラブルで弁護士に依頼すべき場合

①金銭請求されている場合

風俗トラブルは,金銭的解決を求められるのがほとんどです。風俗店によっては,恐喝罪などの対象になることを恐れて明言を避けてくることもありますが,基本的に風俗店は全て金銭的解決を図ろうとしていると理解しても誤りではないでしょう。
そのため,風俗トラブルでは金銭面の交渉が不可欠であり,これを行うには風俗トラブルに精通した弁護士への依頼が適切です。

②周囲への発覚を防ぎたい場合

風俗トラブルは,内容の性質上,家族や職場関係者など周囲に発覚する不利益が大きいものです。そのため,周囲に発覚することなく,秘密裏に解決したいということは多いでしょう。
弁護士に依頼した場合,弁護士がすべての窓口になりますので,周囲に事態が発覚する恐れは基本的になくなります。

③個人情報を保管されている場合

風俗トラブルの際には,風俗店に身分証の写しを取られるなど,個人情報を保管されることが多く,個人情報の流出や悪用を不安に感じる場合もあるでしょう。もっとも,自分から風俗店に個人情報の処分を求めることも容易ではありません。
弁護士に依頼した場合には,トラブル解決にあわせて個人情報の処分についても合意を取り付けることで,個人情報に関する不安を解消することが可能です。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

風俗トラブルは、その場でお店とのトラブルに発展するケースが多く、スピーディーな対応が必要になりやすい事件類型です。
また、お店との話し合いになりやすいですが、正確な見通しを持った弁護士と対応することで、話し合いを適切な方向に促すことが可能になるでしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

お問い合わせ

法律相談のご希望はお気軽にお問い合わせください
※お電話はタップで発信できます。メールは問い合わせフォームにアクセスできます。

口座譲渡はどんな犯罪なのか?口座譲渡は逮捕されるか?起訴されるか?口座が凍結されたら自首すべきか?弁護士が詳細解説

●キャッシュカードと暗証番号を渡してしまった…

●口座の譲渡はどんな犯罪になるのか?

●口座が凍結されてしまったらどうすればいいか?

●口座譲渡で逮捕されてしまうか?

●口座譲渡は初犯でも起訴されるか?

●口座譲渡の事件では弁護士に何を依頼できるか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,口座譲渡についてお困りの方に向けて,口座譲渡がどんな犯罪になるか口座譲渡で弁護士に相談すべきかなど解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

口座譲渡はどんな犯罪か

自身の銀行口座を他人に譲渡する行為は,「犯罪収益移転防止法」に違反する犯罪行為です。犯罪収益移転防止法は,正式名称を「犯罪による収益の移転防止に関する法律」といい,いわゆるマネーロンダリングを防ぐために設けられた法規制です。

譲渡された口座は,ほとんどの場合,詐欺事件等の被害者が振込を行う場合の振込先口座になります。被害者からの振込先口座を無関係の第三者の口座とすることで,詐欺事件の犯人が特定されることを防ぐ手法で,組織的詐欺事件の常套手段とも言えます。
そのため,口座の譲渡が詐欺被害を助長し,被害者の金銭の追跡を困難にすることから,犯罪収益移転防止法により禁じられているのです。

なお,譲渡するための口座を新規に開設した場合,その開設行為は金融機関に対する詐欺罪に該当する可能性もあります
金融機関は,譲渡目的の口座開設を認めていないため,譲渡目的でないと騙して口座を開設させた,とみなされるからです。

参照:犯罪による収益の移転防止に関する法律 e-Gov法令検索

口座譲渡の刑罰

口座の譲渡に対する刑事罰の内容は,以下の通りです。
1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金,又はその併科

また,業として(反復継続して)口座譲渡行った場合には,刑罰が以下のように加重されます。
3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金,又はその併科

口座譲渡に対する刑罰は,拘禁刑と罰金刑の併科が可能であることが特徴です。
一般的に,拘禁刑は罰金刑より重く,重い懲役刑を科すか,軽い罰金刑とするかの選択となりますが,併科が可能な場合,重い拘禁刑を科しつつ罰金も同時に科すことが可能です。

犯罪収益移転防止法の違反行為が経済的な収益を生み出す可能性を踏まえ,得られた収益を吐き出させる可能性を広げる意味があるとされています。

ポイント
口座譲渡は犯罪収益移転防止法違反となる犯罪行為
口座譲渡の刑罰は拘禁刑と罰金刑の併科が可能

口座譲渡が事件化する場合の流れ

口座の譲渡が発覚する最も典型的なケースは,その口座を用いた詐欺被害が生じ,詐欺事件に関する捜査や金融機関の対応の過程で口座が譲渡されたものだと分かる,という流れです。

口座が詐欺事件に用いられる場合,捜査の着手時点で詐欺事件の客観的な根拠となり得るのは,通話時の発信者情報と振込先の口座情報程度であることが非常に多いため,捜査機関としては,電話や口座の名義が主犯の人物とは異なることを想定しながらも,それらの名義をたどらざるを得ないのが通常です。
警察が口座名義人とコンタクトを取り,口座が詐欺事件に用いられた経緯を確認する中で,口座譲渡の事実が判明していきます。

また,その口座に犯罪収益が入金されていると疑われる場合,金融機関が取引停止措置(いわゆる口座凍結)を行い,犯罪収益が散逸しないように対応することが一般的です。そして,取引停止措置がなされた場合,その旨が金融機関から口座名義人に通知されることになります。口座凍結された名義人は,警察に出頭・相談するなどの対応を取りますが,その中で口座譲渡の事実が明るみになるケースも多数見られます。

その他には,複数の飛ばし口座を用いて多くの詐欺事件を犯していた組織がいる場合,他の口座を用いた詐欺事件の捜査がきっかけとなって,芋づる式にひと通りの飛ばし口座が特定され,あわせて口座譲渡の事実が判明する,というケースもあります。
このようなケースは,犯罪被害者の被害申告がなされておらず,事態が一定期間放置されている可能性が高いため,事件の発生から口座譲渡の事件化までに相当程度の期間が空くことも少なくありません。

口座譲渡と逮捕

口座譲渡の事件は,決して逮捕を前提とした捜査が行われるわけではありません。

その口座を利用した詐欺事件の共犯者であれば,逮捕が非常に見込まれやすく,長期間の身柄拘束が想定されやすいですが,口座を譲渡した人物が詐欺事件の共犯者である可能性が低いことは,捜査機関もあらかじめ織り込み済みであることがほとんどです。
そして,口座の譲渡そのものは,組織的詐欺ほどの重大事件とはされておらず,被疑者本人が犯罪事実を認めていればそれほど証拠関係が複雑な類型でもないことが多いため,逃亡や証拠隠滅のために被疑者を逮捕することは決して必要とはされていないのが現在の運用です。

もっとも,逮捕をしない捜査手法を在宅事件といいますが,在宅事件とするのは被疑者が自ら出頭などの捜査協力をしてくれることが大前提です。出頭の求めになかなか応じず,持参や提出を求められた証拠も出し渋るようだと,在宅事件とする前提が崩れてしまい,逮捕の必要が大きくなりやすいでしょう。

特に,口座譲渡の場合,金融機関の判断による口座凍結がなされやすい,という特徴がありますが,口座凍結をした金融機関は,口座名義人に最寄警察署への出頭を勧めることが一般的です。このような金融機関の案内にはできる限り従い,捜査協力の姿勢を示すことは怠らないようにしましょう。
警察への連絡や出頭に不安を感じる場合は,弁護士に依頼の上,弁護士とともに行うことも可能ですので,できるだけ早く弁護士にご相談されることをお勧めします。

ポイント
口座譲渡はその口座を用いた詐欺事件がきっかけで捜査の対象になりやすい
口座譲渡に対する捜査は決して逮捕を前提とするわけではない

口座譲渡の刑事処分

①口座譲渡の起訴・不起訴

口座譲渡の事件は,犯罪事実の存在が明らかである限り,起訴されることが多い犯罪類型です。
事件によっては,犯罪事実の存在が明らかであっても反省状況を踏まえて不起訴(起訴猶予)とされるケースはあります。しかし,口座譲渡の場合に反省状況のみで不起訴処分となる例はあまり見られません。不起訴処分を目指すためには,より積極的な努力を要するでしょう。
具体的には,以下のような動きが挙げられます。

示談
詐欺事件の被害者との間で示談を行い,被害者の許しを獲得するのは有力な手段です。詐欺事件の被害者は,厳密には口座譲渡の被害者ではありませんが,口座譲渡によって実質的な被害を被った人物であるため,示談ができることによって処分の軽減につながりやすいでしょう。

自首
→口座を譲渡した後,それが犯罪事実であると分かった場合,捜査を受けるよりも前に自ら警察に出頭し,犯罪事実を話して捜査を受ける動きは有力です。自首に該当するのは,捜査機関が犯罪事実を把握していなかった場合には限られますが,自首が成立するかどうかにかかわらず,自ら出頭したという事実が刑事処分を軽減させる非常に大きな事情になることは間違いありません。

②口座譲渡の具体的な刑罰

口座譲渡の事件が起訴された場合,刑罰が科せられることになりますが,その刑罰の内容としては罰金刑となることが多数見られます。
一般的には,金銭を対価に個人が他者に口座譲渡したような代表的事例だと,40~50万円ほどの罰金刑となるケースが多く見られるようです。

もっとも,件数が多かったり,他者の口座譲渡にも関与していたりと,より悪質な態様の場合には,罰金にはとどまらず,懲役刑の対象となることも否定はできません。

口座譲渡で弁護士に相談すべき場合

①口座譲渡した行為が犯罪だと気づいたとき

口座譲渡をしてしまった後,自身でネット検索などをして犯罪だと気が付いたときには,できる限り早く弁護士に相談,依頼を行うようにしましょう。
譲渡した口座がどれほどの重大事件に利用されるのか分かりませんし,そのままの状態で放置しておくメリットもありません。

弁護士にご相談いただくと,今後の不利益を最小限に抑えるための対応方法や弁護士依頼のメリットなど,適切な動き方について案内を受けることが可能です。

②口座が詐欺事件に用いられたと分かったとき

口座に不正な入金があった,銀行から口座凍結の連絡があったなど,自身の口座が詐欺事件に用いられたと分かったときにも,できるだけ早く弁護士への相談,依頼を検討しましょう。
実際に詐欺の被害に遭った被害者がおり,その被害者は警察に相談をする可能性が高く見込まれます。警察から捜査されるより前に,先回りをして適切な対応を取ることで,逮捕を回避したり,刑事処分を最小限に抑えたりすることも可能です。

③出頭時の逮捕を避けたいとき

口座譲渡の事件では,自ら警察署に問い合わせたり,警察に出頭したりする必要の生じることが多いです。その際,出頭した先でそのまま逮捕されるリスクも否定できません。
自身からの連絡や出頭を控えているケースでは,弁護士に相談・依頼し,弁護士を通じて捜査機関に対処することで,出頭時の逮捕の可能性を大きく低下させることが可能になります。

④処分の軽減や不起訴を目指したいとき

口座譲渡は,起訴されることの多い犯罪類型であるため,特に不起訴を目指したい場合には,弁護士に相談・依頼の上,不起訴になる余地はあるか,不起訴を目指す場合にはどのような対応が有力か,可能な限り検討し,実行するようにしましょう。

口座譲渡の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

口座譲渡の事件は,放置してしまうとより重大な詐欺事件につながる可能性が非常に高いため,早期の対応が非常に重要となります。
早期に適切な対応を取ることによって,逮捕や刑罰を避けられる場合もありますので,口座譲渡の事件に精通した弁護士へ少しでも早くご相談されることをお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

特殊詐欺に加担したら弁護士に相談!相談する際のポイントを徹底解説

「家族が特殊詐欺に関わってしまったかもしれない…どうすればいい?」
「もしかして自分がやっていることって特殊詐欺かもしれない…」

そんな不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。

特殊詐欺のトラブルは、早い段階で弁護士に相談することが何よりも重要です。

弁護士が介入することで、逮捕や起訴を回避できる可能性が高まり、被害者の場合も返金交渉や損害賠償請求をスムーズに進められます。

本記事では、特殊詐欺の種類を踏まえた上で、関与してしまった場合の対応や弁護士に相談する際のポイントなどを詳しく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

特殊詐欺とは

特殊詐欺とは,電話やインターネットを利用して他人を騙し,金銭を詐取する詐欺の総称です。具体的な手口としては,オレオレ詐欺,振り込め詐欺,還付金詐欺などが含まれます。これらの詐欺は,高度に計画されたものであり,しばしば組織的に行われます。

特殊詐欺の主な種類と内容は,以下の通りです。

オレオレ詐欺犯人が被害者に電話をかけ、自分を家族(息子、孫など)と偽り、事故や借金のトラブルを装って金銭を要求します。
振り込め詐欺犯人が公的機関や金融機関の職員を装い、被害者に架空の未払い金や架空の投資話を持ちかけ、金銭を振り込ませる手口です。
還付金詐欺犯人が市役所や税務署の職員を装い、還付金があると偽って被害者にATMで操作を指示し、逆に犯人の口座に金銭を振り込ませます。
架空請求詐欺犯人が電話やメールで架空の請求書や督促状を送り、未払い料金の支払いを要求します。
金融商品詐欺犯人が高利回りの投資話や安全な投資商品を持ちかけ、被害者から金銭を集めますが、実際にはそのような商品や投資先は存在しません。

特殊詐欺の用語や基礎知識

①受け子

受け子とは、特殊詐欺の一環として、詐欺グループの指示を受けて被害者から現金やキャッシュカードを受け取る役割を担う人物を指します。受け子は詐欺行為の現場に直接関与し、金銭を詐取するための重要な役割を果たします。

受け子になる人々は、報酬を得ることを目的に参加することが多いです。特に学生や失業者、借金を抱えた人々が狙われやすいです。
また,そのきっかけとしては,インターネットの求人広告やSNS、掲示板などで「簡単に稼げる仕事」などの甘い言葉で勧誘されることが多いです。受け子になる人々は、最初は仕事の詳細を知らされず、実際の詐欺行為に関与する段階でその違法性に気づくことが多いです。

②出し子

出し子とは、特殊詐欺において詐欺グループの指示を受け、被害者から詐取した現金を銀行口座から引き出す役割を担う人物を指します。出し子は詐欺の後半のプロセスに関与し、詐取した資金を実際に現金化する重要な役割を果たします。

出し子になる人の特徴や出し子になる経緯は,受け子とほぼ同様です。すなわち,経済的に困窮した人が,SNSなどで簡単に稼げる仕事として見つけ,仕事をするうちに犯罪行為に巻き込まれていくケースが非常に多く見られます。

③飛ばし

特殊詐欺における「飛ばし」とは、詐欺グループが自分たちの追跡を困難にするために使用する手法の一つで、携帯電話や銀行口座などの名義を他人名義(第三者名義)にすることをいいます。犯人をたどるきっかけになりやすい物的証拠を他人名義にすることで,警察や被害者からの追跡を避けることを目的としています。

飛ばしの例としては,携帯電話や銀行口座,キャッシュカードなどが挙げられます。

携帯電話の飛ばし
他人名義の携帯電話を使用して詐欺の連絡を行います。
偽名や他人の個人情報を使って契約された携帯電話を利用するため、追跡が難しくなります。
これにより、詐欺の発覚時に実際の詐欺師の身元が特定されにくくなります。

銀行口座の飛ばし
他人名義の銀行口座を使って被害者から金銭を振り込ませます。
このような口座は「口座売買」によって取得されることが多く、不正に他人の情報を使って開設されたものが多いです。
被害者が金銭を振り込んでも、実際の詐欺グループの身元にたどり着くのが難しくなります。

クレジットカードの飛ばし
他人名義のクレジットカードを使用して、詐欺に関連する支払いを行います。

④キャッシュカードすり替え詐欺(窃盗)

近年急増した事件類型に,「キャッシュカードすり替え詐欺」があります。これは、被害者のキャッシュカードを巧妙にすり替え、被害者の銀行口座から不正に現金を引き出す手口です。この詐欺は、詐欺師が被害者の信頼を得て、キャッシュカードとその暗証番号を入手するために様々な手段を用いるため、特に高齢者を狙うケースが多く見られます。

手口の一例としては,以下のような流れで行われます。

接触と信頼獲得金融機関の職員や警察官を装い、電話や直接訪問で被害者に接触します。「カードが不正に使用されている」などの理由を告げ、信頼を得ます。
暗証番号の取得キャッシュカードの確認などと称して,キャッシュカードと暗証番号のメモを一緒に封筒に入れるよう指示することなどが多く見られます。
すり替えキャッシュカードを一度被害者の見えないところに持ち出し,あらかじめ用意した他のカード(ショッピング施設のポイントカードなど)とすり替えます。被害者には封筒をそのまま返却したように装い,さらに安全のため決して封筒を開けないように,などと告げることで,すり替えの発覚を防ぎます。
不正引き出し本物のキャッシュカードと暗証番号を入手した後、すぐにATMや銀行窓口で被害者の口座から現金を引き出します。

なお,この類型は,被害者側が騙されてキャッシュカードを譲渡したわけでなく,返却を前提にただ預けただけなので,法的には詐欺罪ではなく窃盗罪と分類されることも一つの特徴です。

ポイント
特殊詐欺は,受け子や出し子といった人物に実動させ,飛ばしの携帯電話や口座を用いることで犯人特定を防ごうとする
キャッシュカードすり替えの手口にも注意。法的には詐欺罪でなく窃盗罪となる。

特殊詐欺の逮捕・勾留

特殊詐欺の事件で捜査の対象となる場合,逮捕されることが非常に多く見られます。
逮捕するかどうかは,逃亡の恐れと証拠隠滅の恐れを基準に判断しますが,特殊詐欺の場合にはいずれの恐れも大きいと考えられるためです。

特殊詐欺の場合,犯罪そのものが重大な内容であるため,重い刑罰を逃れる目的で逃亡する可能性が強く懸念されます。また,詐欺行為によって経済的利益を受けている可能性や関係者に身元の不安定な者が多い可能性を考慮すると,逃亡が比較的容易な立場にある可能性もうかがわれます。
加えて,事件の性質上,複数名の関与がほぼ確実に存在するため,共犯者間の口裏合わせや証拠隠滅(連絡内容・物証等)がなされやすく,証拠隠滅を防ぐためにも逮捕が必要と判断されやすいです。

逮捕された後は,引き続いて勾留もなされることが一般的です。
逮捕時のみならず,捜査中は常に逃亡や証拠隠滅の恐れが大きい状況にあるため,逮捕だけをして勾留せず釈放するというのは,かなり少数ということができるでしょう。
また,勾留の際には,接見禁止の対象となることも多いです。接見禁止とは,勾留中,弁護士以外との面会を禁止する内容の処分をいいます。共犯者間での証拠隠滅を防ぐ目的で,勾留の決定に際して行われることがあります。

特殊詐欺事件の場合,被疑者となった人は逮捕及び勾留が非常になされやすい立場にあると考えるのが適切でしょう。

特殊詐欺の刑罰

特殊詐欺で起訴された場合の刑罰は,実刑判決となることが少なくありません。
組織の中では末端とされる受け子や出し子といった立場であっても,事件の内容や規模,件数などによっては初犯で実刑判決の対象となることも決して珍しくはないでしょう。
そのため,特殊詐欺の事件では,実刑判決を回避するための試みをどうするか,十分に検討されることをお勧めします。

具体的には弁護士へのご相談やご依頼が適切ですが,一般論としては,やはり経済的な被害の補填をすることが最も重要な動きであると言って差し支えないところです。
特殊詐欺の事件は,詐欺罪等のいわゆる財産犯(財産を対象とした犯罪)であるため,財産の被害に対して刑罰が科されることになります。そのとき,財産への被害が埋め合わせられていれば,刑罰の判断基準となる被害の大きさも減少していることになり,刑罰は軽減するのが通常です。

特殊詐欺で起訴されるケースにおいては,被害の一部であったとしても,できる限りの金銭賠償を行い,被害者の財産的な損害を補填することが非常に重要となります。

ポイント
特殊詐欺事件は,犯罪事実が明らかであれば起訴されるのが通常
示談ができれば不起訴が見込まれるが,起訴前に全件の示談を行うのは非常に困難
刑罰は実刑判決も十分に考えられる。軽減のためには被害弁償を行うのが適切

特殊詐欺に関与してしまった場合の対応

特殊詐欺の場合,高額なアルバイトと称して募集するところに応募し,実際に働いてみたら詐欺事件だった,ということが少なくありません。受け子など末端の関係者だと,最初は詐欺だと知らなかったというケースの方が多いかもしれません。
そのため,万一特殊詐欺事件に関与してしまった場合の対応を整理しておくことは有用でしょう。

①直ちに関与をやめる
特殊詐欺の事件は,関与した件数が増えることによって,勾留期間が長く,最終的な処罰が重くなりやすいものです。そのため,直ちに詐欺行為への関与をやめ,自ら傷口を広げないようにしましょう。

②警察への連絡・出頭を試みる
被害者が警察に相談をするより前に,自ら警察に出頭し,自首を行うことで,逮捕の可能性は大きく下がります。また,事件への関与がさほどでもなければ,自首を踏まえて不起訴処分の対象となることも考えられます。
そのため,自身が詐欺事件に関与したと思われる場合には,できるだけ早く警察への連絡や出頭を試みるようにしましょう。

③被害弁償を試みる
自ら被害者に金銭賠償を申し入れることは,処分の軽減を目指すため非常に有力です。
この場合,決して被害全額が賠償できる必要はありません。被害者としても,自ら支払いを申し入れた人がいて,その人が組織の末端の立場でしかないことが分かれば,全額の賠償がなくてもその人だけを許すことは十分に考えられます。

特殊詐欺の共犯の種類

特殊詐欺の共犯には、主に以下3つの種類があります。

  • 共同正犯
  • 共謀共同正犯
  • 幇助犯

詳しく解説します。

共同正犯

共同正犯とは、複数人が協力して同じ犯罪を実行した場合に適用される共犯形態です。

刑法第60条では「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と定められています。

つまり、誰が実際に手を下したかにかかわらず、犯行全体に関与した者全員が正犯と同等の刑事責任を負うことになるのです。

特殊詐欺の場合、電話をかけてだます役、現金を受け取る役、口座を管理する役などがそれぞれの役割を果たしていても、組織全体で1つの犯罪を実行したとみなされれば、全員が共同正犯とされます。

共謀共同正犯

共謀共同正犯とは、実際に犯罪行為を行わなくても、他者と「犯行の意思を共有し、実行を合意した」段階で成立する共犯形態です。

刑法上の明文規定はありませんが、判例によって確立された概念で、特殊詐欺事件では非常に多く適用されています。

たとえば、自分は現場にいなくても、仲間内のグループチャットや口頭で「こうやってだまそう」と話し合い、その内容を了承した場合、すでに共謀共同正犯として責任を問われる可能性があります。

特殊詐欺においては、上位の指示役やリクルーターが実行グループに犯行を指示しただけでも、共謀共同正犯に該当するケースが少なくありません。

実際に被害者と接触していない人物でも、犯罪計画を共有していれば同等の責任を負うため、共謀の有無が捜査や裁判の大きな争点となります。

幇助犯

幇助犯とは、犯罪の実行を手助けした場合に成立する共犯です。刑法第62条に「正犯を幇助した者は従犯とする」と規定されています。

幇助とは、直接的に実行行為を行わなくても、犯行が容易になるよう支援した行為です。

特殊詐欺事件では、犯罪に使う口座を提供したり、被害者をだますための電話をかける道具を貸したりする行為が幇助に該当する可能性があります。

つまり、「自分はだますつもりがなかった」「お金をもらっただけ」といった場合でも、結果的に詐欺の実行を助けたと認定されれば、刑事責任を負うことになるのです。

特殊詐欺で弁護士に依頼するときのポイント

特殊詐欺事件で弁護士を選ぶタイミング

①逮捕されたとき

特殊詐欺事件は,逮捕される可能性の非常に高い事件類型です。その理由としては,事件が重大で悪質と評価されやすいこと,組織的犯罪のため,共犯者間での証拠隠滅がなされやすいことなどが挙げられます。
基本的に,特殊詐欺事件に関わる犯罪行為があったとみなされた場合,逮捕を想定する方が望ましいと言ってもよいでしょう。

もっとも,逮捕は被疑者に対する捜査の初期段階です。逮捕後,取り調べなどの捜査を尽くすことで,被疑者の処分を判断する材料を獲得していくことになります。被疑者の立場としては,逮捕後の対応によって,その後の処分が大きく変わりやすいということでもあります。

そのため,特殊詐欺事件では,逮捕を想定した上で,逮捕されたときにはその後の捜査への対応のために弁護士選びを適切に行いたいところです。円滑な弁護士選びができれば,その後の流れが大きく変わりやすいでしょう。

ポイント
特殊詐欺事件は逮捕の可能性が高い事件類型
逮捕後の対応によって,最終的な処分が変わりやすい

②起訴されたとき

重大事件である特殊詐欺事件では,犯罪事実が明らかであれば起訴することが通常です。反省を深めているという理由で不起訴になることは,基本的にはないでしょう。
そのため,特殊詐欺事件の捜査を受けている場合には,否認事件でない限り,起訴されることを想定し,起訴後の方針も考えておくことが不可欠です。

この点,起訴された際には,保釈を請求したり,刑事裁判(公判)の対応方針を検討したりする必要がありますが,これらは弁護士なしでは困難な動きです。逆に,適切な弁護士に依頼できていれば,速やかな保釈の手続で釈放してもらうことができ,その後の公判でも不利益を最小限に抑えるような対応を取ることができるでしょう。
特に,特殊詐欺事件の場合,初犯でも実刑判決となることが決して珍しくないため,事件の重大性を踏まえると,公判でどのような対応ができるかは非常に重要な問題と言えます。

特殊詐欺事件で起訴された場合には,その後の動きを円滑で適切なものとするため,弁護士選びを十分に行うべきでしょう。

ポイント
特殊詐欺事件は,その重大性のため起訴されやすい
公判での対応次第で,実刑判決の回避も可能になり得る

③示談したいとき

特殊詐欺事件では,詐欺被害者の意向が刑事処分に大きく反映されやすい傾向にあります。被害者が起訴を望まなければ不起訴処分に,被害者が実刑判決を望まなければ執行猶予判決に,というように,被害者が重い処分を希望しない場合には,相応に軽微な処分が期待できる可能性も高くなります。
そのため,被害者と示談を行い,被害者から許しを得ることは,非常に優先順位の高い試みと言えるでしょう。

もっとも,示談の試みは弁護士に依頼する形で行うほかないのが実情です。通常,当事者間に連絡を取り合う手段がないため,捜査機関を通じて被害者に連絡を取ってもらうことになりますが,捜査機関が被害者に連絡を入れてくれるのは,弁護士が窓口に入っている場合に限られます。当事者同士の直接の連絡は,トラブルの原因になりやすいため認めてもらえないのです。

そのため,特殊詐欺事件で示談をしたい場合には,示談の試みに適した弁護士選びを行い,弁護士を通じて進めるのが適切でしょう。

ポイント
詐欺被害者の意向が刑事処分に大きく反映されやすい
特殊詐欺事件の示談は,弁護士が窓口に入ることが必要

④自首したいとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自首の大きなメリットは,逮捕を回避しやすくなることや刑事処分が軽減されやすいことですが,特殊詐欺事件の場合,逮捕の恐れが大きく,実刑判決等の思い処分も懸念されやすいため,自首が大きな効果を発揮する場合は少なくないでしょう。

もっとも,自首は,犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。捜査が進んでしまった後では自首が成立せず,メリットが十分に生まれない恐れもあり得るところです。

そのため,本当に自首をすべきかどうか,自首をする場合にどのような手順・方法で行うか,という点を十分に検討する手段として,適切な弁護士選びが非常に重要となるでしょう。
また,自首を実際に行う場合にも,弁護士とともに進めることで,円滑な自首が容易になります。

ポイント
自首により,逮捕回避や処分軽減の効果が期待できる
自首すべきか,方法をどうするかは,弁護士による検討が適切

特殊詐欺事件の弁護士を選ぶ基準

①迅速な接見が可能か

逮捕勾留がなされやすい特殊詐欺事件では,弁護士による接見が不可欠です。勾留中に「接見等禁止」の処分がなされると,弁護士以外は面会すらできなくなってしまうため,弁護士が唯一の相談相手となることも珍しくありません。

特に,逮捕直後の初回の接見は,できる限り迅速に行うことが望ましいものです。刑事事件の処分結果は,逮捕直後の初期対応によって大きく左右されやすく,初期対応を誤った後に弁護士が接見を行っても,手遅れになりかねないためです。

そのため,弁護士を選ぶ際には,弁護士が速やかに接見を行い,初期対応に関する打ち合わせやアドバイスを十分にしてくれるか,という点を重要な判断基準とするのが適切でしょう。
迅速な接見ができるかどうかは,弁護士のスケジュールだけでなく,弁護士の活動方針にも影響を受けることがあるため,弁護方針として速やかな接見を予定してくれているかは確認したいところです。

②具体的な弁護方針があるか

特殊詐欺事件の場合,弁護方針に複数の選択肢があり得ます。特に,事件が一つだけでなく複数の余罪を含めた対応を要する場合や,犯罪を立証できるかどうか不明確であると思われる場合には,個別の内容・状況を踏まえた慎重な判断が求められます。

例えば,示談一つを取っても,一般的な刑事事件ではすぐに示談交渉を試みて示談の成立を目指すのが基本ですが,余罪の複数ある特殊詐欺事件では,1件だけ示談が成立してもそれ以上に示談金の負担ができなくなってしまうと,トータルとしてはメリットに乏しい結果となる恐れもあります。そのため,即時に示談を試みるかは難しい問題になり得ます。
また,取り調べへの対応に関しても,どのような内容を話すべきか,認否の方針をどうすべきかは,共犯者の状況,余罪の有無,証拠関係などを推測しながら検討しなければならず,判断は容易ではありません。

そのため,特殊詐欺事件の弁護方針をどうするべきかは,弁護士によっても見解の分かれる可能性がある点と言えるでしょう。どの方針が正解であったかは結果が出なければ分かりませんが,少なくとも,弁護士の方針が具体的・合理的なものと言えるかは,弁護士選びに際して注意するべき基準と言えるでしょう。

③弁護士との連絡が滞らないか

特殊詐欺事件では,弁護士から連絡を受ける以外に状況を把握する手段のない場合が非常に多く見られます。そのため,依頼者側にとって,弁護士との連絡が滞りなくできるかどうかはとても重要なポイントとなります。

もっとも,弁護士の連絡方法や頻度は,個々の弁護士の判断に委ねられます。依頼者目線では連絡が少ないと思っても,弁護士がそのやり方を変えようとしなければ,円滑な連絡は実現できません。

そのため,弁護士とはどのような方法で連絡が取れるか,どのような頻度で連絡が取れるか,という点は,弁護士選びの重要な基準とするのが良いでしょう。なお,法律事務所によっては,事務職員が窓口になって弁護士が直接には対応しない運用であるケースも考えられます。そのような運用が希望に合わない場合は,依頼後の連絡方法を具体的に確認することも有益です。

④事務所が遠すぎないか

特殊詐欺事件の場合,弁護士が警察署や拘置所へ足を運び,複数回の接見を行うことが必要になりやすいです。そのため,弁護士の事務所が接見場所とあまりに遠い場合には,弁護活動に限界の生じる可能性があり得ます。
また,事件を捜査する警察署は,被害者の生活圏に近いことが多く見られます。そのため,被害者への接触を試みる場合にも,やはり弁護士が足を運ぶ必要があるため,同様の問題が生じるでしょう。

そのため,特に身柄事件の場合には,弁護士の事務所があまりに遠方でないか,という点を判断基準の一つとすることをお勧めします。なお,遠方である場合にどのような影響があるかは,弁護士に直接確認の上,弁護士の案内を求めるのが望ましいでしょう。

特殊詐欺事件で弁護士を選ぶ必要

①実刑判決を防ぐため

特殊詐欺事件は,起訴され刑罰を受けることが避けられない場合も少なくありません。そして,刑罰を受ける場合,実刑判決(=直ちに刑務所へ収容することを命じる判決)の対象となることも十分に考えられますが,実刑判決は社会生活を続けられないことを意味するため,不利益が非常に大きく,何としても避けたい場合がほとんどでしょう。

そのため,特殊詐欺事件の多くでは刑罰の軽減に向けた動きが必要となりますが,具体的な方法や内容は個別の事情を踏まえて決定する必要があるため,弁護士の専門的な判断が不可欠です。実刑判決を避けられる見込みがどのくらいか,手段を尽くすとそれがどの程度変わるのか,尽くすべき手段は何か,といった点については,弁護士の判断を仰ぐことが適切でしょう。

②早期釈放のため

特殊詐欺事件の場合,逮捕後にすぐ釈放されるということはあまり期待できません。身柄拘束を続ける必要性が非常に高い事件類型のため,安易に釈放を期待することは適切とは言い難いです。
もっとも,特殊詐欺事件でも釈放を目指すことのできるタイミングは存在します。代表的なものが起訴後の保釈でしょう。起訴後は,起訴前とは異なり捜査が終了しているため,捜査の妨害を防ぐために身柄拘束を続ける必要が小さくなります。そのため,認め事件であれば,起訴後に保釈してもらえることは特に珍しくありません。

この点,保釈による釈放が早期にできるかどうかは,早期に弁護士が動いているかによって大きく変わります。弁護士選びに手間取っていると,それだけ釈放時期が遅れてしまうことになりかねないため,早期釈放に向けて弁護士を速やかに選ぶことが適切です。

③適切な取り調べ対応のため

余罪を含む複数の事件が捜査される特殊詐欺事件では,慎重な取り調べ対応が必要です。取調べに対してどこまでの話をするのかは,事件ごと,状況ごとの検討が不可欠ですが,余罪が絡みやすい特殊詐欺事件では,事件間の関係や想定される証拠なども踏まえて判断する必要があるため,対応方針を決めるのも容易なことではありません。

特殊詐欺事件で最も有益な取調べ対応を行うためには,やはり専門的な知識・経験を持つ弁護士に依頼し,弁護士から適宜助言を得つつ進めることが望ましいでしょう。

弁護活動の一般的な方針

①認め事件の場合

認め事件での弁護活動は,被害者への金銭賠償や示談の試みに尽きるでしょう。
被害者に対するアクションは,弁護士を挟む方法でしか行うことができないため,弁護士に依頼し,弁護士限りで被害者と接触することを目指す必要があります。
弁護士からは,加害者の汲むべき事情なども踏まえ,可能な限り被害者側のお許しを獲得するための試みを行います。

②余罪の発覚を防ぐ場合

自分の関与した事件の一部のみ発覚しており,余罪が発覚していない場合,余罪の発覚を防ぐことが有益になりやすいです。このときは,取調べに対する対応をどうするかが非常に重要となり,その点を弁護士に判断してもらうのが適切です。
一般的には,発覚していない余罪についてのみ黙秘をし,自分からは情報提供しない対応が有力です。もっとも,むやみに黙秘をし過ぎるのは,捜査の長期化につながりやすく,発覚した事件の情状面にも影響することがありますので,具体的な方針は弁護士と十分に協議をしましょう。

③否認事件の場合

身に覚えがない場合には,弁護士を通じて犯罪事実が存在しないことを強く主張してもらうようにしましょう。
特殊詐欺のように複数名が関与する事件の場合,関係者間で足の引っ張り合いが生じるケースもあります。自分の処分を軽くするために他の関係者にとって不利益な供述をすることを,引っ張り込みなどと言います。
また,否認事件の場合も,取り調べへの対応方針は非常に重要です。話すのか話さないのか,話すとしてどこまでのことを話すのかは,個別の事件に応じて弁護士の専門的な判断を仰ぐのが適切でしょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

特殊詐欺の事件は,漫然と対応していると実刑判決を受けて刑務所に入ることも珍しくない重大な事件類型です。
また,組織的な事件であることから,弁護士がいなければ状況を把握することの難しい場合も多く,弁護士を通じて対処すべきことも多いため,弁護士に依頼する必要が生じやすいと言えるでしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所