器物損壊事件で弁護士への依頼が必要な理由とは|示談・不起訴に関する重要ポイントを徹底解説

「器物損壊で被害届を出されたけれど、証拠が不十分なら不起訴になるの?」
「警察に呼ばれたけど、証拠がなければ逮捕されないのでは?」

そう思う方もいるのではないでしょうか。

器物損壊事件では、証拠が不十分な場合、立件や有罪判決に至らない可能性があります。

ただし、証拠が弱くても事情聴取や取調べは行われることが多く、供述内容や追加の証拠収集によって状況が変わる場合も考えられます。

そのため「証拠が不十分だから安心」とは言えず、早めに適切な対応を取ることが重要です。

そこで本記事では、器物破損で警察が動くケースと動かないケースを踏まえ、刑事事件に発展する際の流れや弁護士に依頼するメリットなどについて詳しく解説していきます。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

器物破損は証拠不十分で警察が動かないって本当?

器物損壊は「軽いトラブル」ではなく刑法に規定された犯罪です。

「証拠不十分なら警察は動かない」という断定は誤解で、被害状況・緊急性・入手可能な証拠の見込み等を総合して対応が決まります。

ここからは、警察が動くケースと動かないケースについて詳しく解説します。

警察が動くケース

器物損壊で警察が積極的に動くケースは、犯人特定や犯罪事実の立証の見通しがある場合です。

具体的には、防犯カメラやドライブレコーダーの映像、現場の指紋・足跡などの物的証拠、複数の整合的な目撃証言が揃うと、早期に聴取や照会が進みます。

被害額が高額、店舗や公共物など社会的影響が大きい、連続・常習の疑いがある、危険物の使用や威力業務妨害を伴うなど悪質性が高い場合も優先されます。

加えて、加害者が特定しやすい(近隣トラブル、元交際相手、元従業員など関係性が明確)場面は、事情聴取や任意同行に発展しやすいです。

緊急性がある(再犯の蓋然性が高い、被害の拡大が懸念される)場合は、臨場や現場保存の措置が取られ、関連事件との照合も行われます。

これらの事情が重なると、「証拠不十分」と見なされにくく、実質的な捜査が進むのが通常です。

警察が動かないケース

警察が動かないケースは、犯罪の成立自体が疑わしい場合や立証見込みが低い場合です。

具体的には、自然劣化や通常使用による破損の可能性が高い場合や申告内容が抽象的で時系列が曖昧、相互の物損・口論など民事紛争色が強いと判断されると、助言・記録化にとどまることがあります。

他にも、被害発生から時間が経ち、防犯映像の保存期限を過ぎている、目撃者探索の実効性が低いといった事情も影響します。

ただし、相談受理や後日の被害届提出、追加資料準備の案内が行われ、補強証拠が整えば最初動かなかったとしても捜査に乗るケースも少なくありません。

器物損壊で刑事事件に発展する際の流れ

器物損壊で刑事事件に発展する場合、主に以下の流れで進みます。

  • 被害者による被害届や告訴の提出
  • 警察による事情聴取と現場確認
  • 容疑者の特定と取り調べ
  • 検察への送致と起訴判断
  • 裁判手続きと判決

詳しく解説します。

被害者による被害届や告訴の提出

起点は被害者からの被害届または告訴です。

器物損壊は親告罪であり、告訴された場合に捜査を開始することが一般的です。告訴状は犯罪事実・加害者(推定でも可)・日時場所・手口・被害額などを具体的に特定し、捜査の起点資料としての密度が高いのが特徴です。

被害届は犯罪の発生申告で、受理後に必要に応じて聴取が続きます。

提出時には、損壊部分の写真、修理見積・領収書、時系列メモ、保全した防犯映像、目撃者の連絡先、位置情報ログや通話録音の有無など、客観資料を添付するほど実務上は有利です。

書類は警察署の生活安全課等で受理され、事件性や緊急性に応じて担当が割り振られます。

告訴は受理されれば原則として捜査が進むため、重大性・悪質性が高い場合や紛争性が低い場合に選択されることが多いです。器物損壊罪の場合、加害者に刑罰を科すか、という判断を被害者に委ねる趣旨で親告罪とされています。

警察による事情聴取と現場確認

受理後は、被害者・関係者への事情聴取で時系列と被害の特定が行われ、供述調書が作成される流れです。

並行して臨場・現場確認が実施され、痕跡の有無、侵入手段、接触面の有無、破片の散在状況など、偶発破損との識別に資する要素が確認されます。

カメラ映像の確保は保存期限が短いことが多く、早期の任意提出要請や近隣店舗・自治体カメラへの照会が行われます。

周辺聞き込みで不審者情報や車両ナンバーが拾えると、追跡の実効性が高まり、被害額は修理見積や交換費用の相場で算定され、損壊の程度と悪質性の評価に反映される仕組みです。

同種事案の照合や地理的・時間的な連続性が示唆される場合、広域的な情報連携が図られます。

これらの初動で客観的裏づけが積み上がるほど、以降の特定・立件が現実味を帯びます。

容疑者の特定と取り調べ

特定は、関係性(近隣トラブル、業務上の利害、個人的対立)や、映像・足跡・工具痕・位置情報データなどの客観証拠を総合し、可能性の高い対象から絞り込みます。

任意同行・任意聴取が原則ですが、逃亡・罪証隠滅の恐れや悪質性が高い場合は逮捕へ移行する可能性が高いです。

取調べでは、供述の一貫性、現場状況との整合、動機や経緯、示談意思などが詳細に確認され、供述調書の記載内容は後の判断に直結します。

押収物(衣類、工具、スマートフォン等)の解析・鑑定が行われ、位置情報や通信履歴が時系列の補強に用いられます。

黙秘権・弁護人選任権は保障され、必要に応じて弁護士の助言を受けることが可能です。

供述と客観証拠の齟齬が少ないほど、嫌疑の評価や処分の方向性は早く定まります。示談の進捗は情状として重視されるため、適切な仲介のもとでの交渉が重要です。

検察への送致と起訴判断

警察段階の捜査が一区切りつくと、事件は検察へ送致され、検察官が補充捜査を含め証拠価値と犯情を精査します。

判断要素は、嫌疑の程度(犯人性・故意・損壊事実)、被害額や社会的影響、前科前歴、反省状況、被害回復・示談の有無と内容、再犯可能性などです。

不起訴には「嫌疑不十分」「起訴猶予」等があり、前者は証拠が有罪認定に足りない場合、後者は有罪見込みがあっても諸事情により訴追を見送る場合です。

起訴されると、事案の軽重により略式命令(罰金)か正式公判に振り分けられます。略式は事実関係が明確で情状が軽いケースに多く、書面審理で迅速に終結します。

裁判手続きと判決

正式公判では、公訴事実の立証に必要な証拠が法廷で取り調べられ、被告人側は反対尋問や反証で争点を明確化します。

被害者参加制度や意見陳述が行われる場合、被害の実質や反省・再発防止策の説得力が量刑判断に影響します。

初犯・軽微な損壊で被害弁償が完了している案件は、罰金又は執行猶予付き判決にとどまる例が多いですが、計画性・報復性が強い、悪質な事案とみなされると実刑が考えられるでしょう。

判決確定後は刑の執行が行われ、前科として記録されます。民事上の損害賠償請求は並行・追行可能で、和解や支払計画の履行状況は社会復帰の安定に関わります。

再発防止の誓約、関係修復の努力、生活環境調整は将来の評価にも資する重要な要素です。

器物損壊事件で弁護士に依頼するメリット

①早期釈放のため

器物損壊事件で逮捕された場合,早期釈放を目指す動きを取ることで,身柄拘束の期間を最小限に抑えられる可能性があります。絶対に早期釈放が実現できる,というものではありませんが,特に長期の身柄拘束が必要であると判断されるような事情がなければ,早期釈放も十分考えられる,という点は器物損壊事件の特徴の一つでしょう。

もっとも,実際に早期釈放を目指す場合,弁護士に進めてもらう以外に現実的な手段はないのが通常です。高度に法的な判断を要する手続も含まれやすいため,弁護士を選び,弁護士に早期釈放のための活動を尽くしてもらうのが,最善の動きになるでしょう。

②不起訴処分のため

器物損壊事件で不起訴処分を目指すには,認め事件であれば被害者との示談を成立させること,否認事件であれば犯罪が立証できないとの結論を出してもらうこと,と大別できます。そして,いずれの場合であっても,その具体的な動きは弁護士に行ってもらうことが必要な性質のものです。

個別の事件で不起訴処分を目指す場合には,どのような手段を取るべきかという判断と,その手段を実行することを,いずれも弁護士に依頼することが適切です。それらの動きに適した弁護士選びは,不起訴処分のために必須と言えるでしょう。

③職場関係の悪化を防ぐため

器物損壊事件を起こしてしまった,又は器物損壊事件の捜査を受けている,という事実は,職場での立場や仕事に大きな悪影響を及ぼす場合もあり得ます。扱っている業務の内容によっては,その業務を継続しづらくなるケースも否定できません。

この点,弁護士に依頼し,可能な限り穏便に器物損壊事件を解決することができれば,職場や仕事への影響が生じず,仕事関係の不利益を回避できる可能性が高くなります。事件後の生活に心配を残さないためにも,職場関係の悪化を防ぎたい場合には弁護士への依頼が適切です。

器物損壊事件における弁護士依頼のポイント

器物損壊事件で弁護士を選ぶタイミング

①出頭要請を受けたとき

器物損壊事件の捜査は,警察から電話などで出頭要請を受け,それに応じて警察に出頭する形で始まることが多く見られます。これは,被疑者として取り調べを行い,事件に関する事実関係を把握する目的であることが通常です。

そのため,出頭要請を受けたときには,その後に行われるであろう取り調べを想定し,対応を十分に検討しておくことが必要です。どのような質問をされるか,どのような回答をすべきか,といった点は,事前に整理しておくのが適切なポイントと言えます。
しかしながら,出頭後の取り調べに対する備えを自分で整理することは容易ではありません。刑事事件に接した経験がなければ,取り調べの状況をイメージすることすら困難なことでしょう。

そこで,出頭要請を受けた際には,そのタイミングで弁護士選びを行い,取り調べの備えを万全にしておくことが有益です。適切な弁護士選びができれば,その後の手続の見通しもクリアにできるほか,具体的な弁護活動に関する案内や助言を受けることもできるでしょう。

ポイント
出頭要請は,被疑者として取り調べをする目的であることが通常
取り調べの適切な準備には,弁護士選びが必要

②逮捕されたとき

器物損壊事件は,決して逮捕する前提で取り扱われるような事件類型ではありませんが,ケースや状況によっては,現行犯などで逮捕され,身柄拘束を受ける可能性も否定できません。
もっとも,器物損壊事件は,あまりに悪質な内容である場合,共犯や多数の余罪など捜査に長期間を要する事情がある場合などを除き,それほど長期間の身柄拘束を要するとの判断は多くありません。そのため,逮捕されたとしても,早期釈放によって最低限の拘束期間で済ませられる場合は考えられます。

しかしながら,逮捕後に早期釈放を求める動きは,現実的には弁護士なしではできないのが通常です。具体的にどのような手段で早期釈放を目指すかは,刑事事件の手続に精通した弁護士以外には判断が困難です。
そのため,逮捕直後は弁護士選びが非常に重要な局面と言えるでしょう。この段階での弁護士選びは,時間的猶予の少ないことが多いですが,安易に妥協した選択をすることなく,後悔のない弁護士選びを強くお勧めします。

ポイント
器物損壊事件は,長期の身柄拘束を要しないケースも多い
早期釈放を目指すため,早期の弁護士選びが望ましい

③自首を試みるとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

この点,器物損壊事件は,事件発生から被害者が気付くまでに時間的な幅があることもすくなくありません。また,特殊なケースを除き,事件が発生した段階で犯人が誰であるかは不明であることが多い類型です。そうすると,器物損壊事件の発生後,被害者が気付いて捜査を求め,捜査機関が犯人を特定する,という一連の手順をたどるには,相応の期間を要する場合が多く見られます。
そのため,器物損壊事件を起こした認識がある場合,捜査機関に犯罪事実と犯人を特定される前に自首を行うことは,有力な選択肢の一つです。

もっとも,本当に自首をすべきかどうか,自首をする場合にどのような手順・方法で行うか,という点は,当事者自身での判断が困難なポイントです。自首を試みようと考えるときには,適切な弁護士選びの上で,弁護士とともに検討・行動をするのが適切でしょう。

ポイント
器物損壊事件は,自首をする時間的な猶予が生じやすい

器物損壊事件の弁護士を選ぶ基準

①示談の重要性を案内してくれるか

器物損壊罪は,「親告罪」の一つです。親告罪とは,告訴がなければ起訴されない事件を言いますが,被害者側は,加害者を許している場合には告訴をせず,加害者を許している場合には告訴をするのが通常です。
そうすると,親告罪である器物損壊事件では,被害者と示談が成立し,被害者が加害者を許すとの意思を表明すれば,絶対に起訴されず前科も付かない,ということになります。その点で,器物損壊事件では示談が決定的に重要であって,認め事件の場合には検討が不可欠な問題です。

弁護士としても,器物損壊事件を解決しようと考えれば,示談の重要性を強調して案内することになります。逆に,示談の重要性を十分に案内されなかったという場合には,器物損壊事件に対する基本的な理解に疑問が生じるため,依頼するかは慎重な検討をすべきと言えます。

②専門分野が食い違っていないか

弁護士には,それぞれに専門とする分野や,特に取り扱い事件の多い分野があります。飲食店に和洋中など様々なジャンルがあるように,法律事務所にも様々なジャンルがあると考えて概ね間違いないでしょう。
刑事事件についても,取り扱ってきた件数,取り扱い事件の内容などが,弁護士によって非常に大きく異なりやすいものです。刑事事件の取り扱いがほとんどない,器物損壊事件に接したことがないなど,専門分野が大きく食い違っている場合には,その弁護士の強みが発揮できる事件ではないと考えるべき可能性もあります。

弁護士選びに際しては,専門とする分野が大きく異ならないか,認め事件であれば被害者との示談を行っているか,否認事件であれば否認の弁護経験があるかなど,弁護士の強みとのズレの有無を十分に把握できることが望ましいでしょう。

③見通しについて詳細な説明をしてくれるか

刑事事件の弁護活動は,その後の流れに関する正確な見通しを踏まえて行う必要があります。見通しが悲観的なものであれば,その見通しを好転させる手段の有無や具体的な弁護活動を考え,依頼者側へ案内する必要がありますし,見通しが良好となった場合にはその旨を依頼者の方へ案内するなどして,安心感ある進行に努める必要があります。
そのため,弁護士の重要な対応の一つとして,事件の見通しに関する説明を欠かすことができません。特に,親告罪である器物損壊事件のように,見通しを断言ができる可能性があるものであれば猶更です。

弁護士選びに際しては,弁護士が今後の手続や処分の見通しを十分に説明してくれるか,という点を重要な判断材料とすることが有力です。見通しの説明が十分でない場合,必要な説明が尽くされていないと言わざるを得ませんが,単に説明を欠いているのみならず,見通しが持てていない可能性もあるため,注意が必要です。

④あまりに遠方ではないか

器物損壊事件の場合,認め事件では被害者との協議を試み,否認事件であれば事件現場を実際に確認するなど,実際に足を運んでの弁護活動になることも少なくありません。
もっとも,弁護士の事務所所在地が,相手の住居地やトラブルの発生地から遠い場所にある場合,現実的に弁護士が相手との対面交渉や現場の調査を行うことが難しく,弁護活動に限界が生じる可能性も否定できません。

そのため,弁護士選びに際しては,法律事務所があまりに遠方でないか,地理的な条件のせいで弁護活動に制限が生じてしまわないか,という点を重要な判断基準の一つとするのが有力でしょう。
なお,相手方との対面や現場の調査は,必ず要するというわけではないため,遠方であることのみを理由に弁護士への依頼を断念する必要まではありません。遠方であることに不安を感じる場合は,その点を直接弁護士に相談してみるようにしましょう。

器物損壊事件における弁護士選びの準備

①事件内容を説明する準備

器物損壊事件の適切な解決には,弁護士に事件の内容を十分に説明することが不可欠です。特に,「器物損壊」は具体的にどのような行為だったのか,その結果,どのような損害が生じてしまったのか,という点は,必ず食い違いが生じないよう,詳細に説明することが適切となります。弁護士がこの点の理解を誤ってしまうと,示談の成否や内容に悪影響を及ぼしたり,本来被るべきでない不利益が生じたりする原因になりかねません。

自分にとって不名誉な事実は心理的に説明が難しいものでもありますが,弁護士と適切な信頼関係を築くためにも,詳細を説明できるよう準備することをお勧めします。

②証拠を示す準備

事件の内容について証拠となる物がある場合,その証拠を弁護士に示し,確認してもらえるよう準備することが有益です。事件によっては,口頭で説明するのみでなく,証拠物を示すことでより円滑な法律相談や弁護士のアドバイスにつながることが少なくありません。

器物損壊事件で想定される証拠の例としては,器物損壊行為に用いた物,損壊された状況を撮影した画像などが挙げられます。その他,事件の経緯に関する証拠や事件後の当事者間のやり取りに関する証拠など,周辺事情が分かるものも有益でしょう。

③予算の検討

器物損壊事件について弁護士に依頼する場合,経済的には弁護士費用示談金の大きく2つが発生しやすいところです。
この点,弁護士費用は法律事務所によって異なり,似たような弁護活動でも費用の金額が大きく異なる場合はあり得ます。また,弁護士費用がどのような条件でいくら発生するか,という定め方も,法律事務所によって少しずつ違うことが少なくありません。

弁護士選びに際しては,想定される示談金を踏まえ,弁護士費用を含めた予算の目安を持っておくことをお勧めします。現在は,ホームページ上で詳細に弁護士費用を明示している法律事務所も少なくないため,ご自身なりに費用負担のイメージを持って弁護士選びを行うのも有力です。
また,現実の弁護士費用と予算との開きが小さければ,弁護士への依頼内容を一部削るなど,柔軟な依頼方法で開きを埋めることができる場合もあり得ます。個別のケースに関しては弁護士と十分に相談してみましょう。

④早期の検討

弁護活動は,時期が過ぎてしまうと一切できなくなってしまうものも多くあります。例えば,身柄拘束が続いている場合,身柄拘束の期間が経過した後に遡って拘束をなかったことにするような方法はありません。また,器物損壊罪が親告罪だといっても,起訴された後に告訴を取り消すことはできないため,不起訴を目指す動きは起訴前に行う必要があります。

弁護士選びは,早期であるほど活動の余地が多く残っているため,できるだけ早期の検討を行うことが望ましいでしょう。

器物損壊事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①示談の重要性

器物損壊事件は,告訴がなければ起訴されない(=前科が付かない)親告罪に該当する事件のため,示談によって被害者から告訴しないとの判断を得ることができれば,事件は直ちに解決へ向かうこととなります。認め事件であれば,弁護士への依頼の目的は,基本的に示談に尽きることとなるでしょう。

そのため,弁護士選びに当たっては,弁護士への依頼の目的のほぼ全てが示談に集約される,ということを踏まえておくことをお勧めします。なんとなく弁護士に依頼するのか,示談が目的であることを理解しながら弁護士に依頼するのかは,その内容や結果に大きな影響を及ぼすでしょう。

②円滑な連絡の重要性

弁護士への依頼後は,弁護士と連絡を取り合って解決を目指すことになりますが,その連絡が滞ってしまうことは,結果に致命的な影響を与える可能性があります。連絡が滞る原因は,依頼者にあること,弁護士にあること,その両者にあることのいずれもあり得ます。

この点,自分が注意さえすれば連絡が滞る可能性がなくなる,というわけではないため,弁護士への依頼に際して連絡が円滑に継続できるかは十分に注意することをお勧めします。実際に生じやすい問題としては,単に弁護士の動きが遅い場合のほか,依頼者と弁護士との連絡が互いにとってストレスの大きなものになってしまい,信頼関係が損なわれた結果,連絡が滞りがちになるというものも見受けられます。
その意味では,弁護士との信頼関係を問題なく保てるか,という判断も重要になるでしょう。

③本人が動くこと

器物損壊事件における弁護活動は,当事者本人の意思に沿って行う必要があります。弁護士の試みようとして活動が,本人の意に反するものであることが分かった場合,弁護士はその動きを取ることができません。
また,示談交渉に際しても,示談が当事者間の合意で成立する以上,当事者本人の意向に沿った内容で行うことが不可欠です。本人の意思に反した示談交渉は,結果的に合意に至ることのできない無駄な動きとなってしまいます。

そのため,弁護士選びに際しては,本人が動く必要がある点に注意しましょう。
なお,本人が身柄拘束を受けているなど,本人が動けない場合には,近親者による弁護士選びとなっても問題はありません。その場合は,弁護士が接見を行って直接本人の意思を確認しながら,弁護活動を進めていくことが可能です。

器物損壊事件に関する示談のポイント

器物損壊事件と示談の関係

器物損壊事件は,「親告罪」と呼ばれる犯罪類型です。「親告罪」とは,告訴がなければ起訴できない犯罪を言います。

告訴は,被害者が加害者の刑罰を望む意思表明をいいますが,器物損壊事件で被害者が加害者の刑罰を望まないのであれば,わざわざ国が積極的に刑罰を科すべきでない,という制度になっているのです。そのため,器物損壊事件の処分は,告訴の有無によって決定的に左右されます。

器物損壊事件が捜査されるのは,被害者の告訴があるか,被害者が告訴する見込みであることが大前提となります。そのため,捜査を受けている以上,被害者の告訴はあるものだと考えるべきであり,加害者としては告訴を取り消してもらうことを目指すことが必要となります。

そして,加害者が被害者に告訴の取り消しを依頼するために必要なことが,示談です。告訴の取り消しを内容とする示談を被害者に承諾してもらうことが,告訴の取り消しを獲得するほぼ唯一の手段と言ってよいでしょう。

そのため,器物損壊事件においては,示談が決定的な役割を持っているということができます。

ポイント
器物損壊事件の起訴には告訴が必要
示談で告訴を取り消してもらえれば,起訴される可能性がなくなる

器物損壊事件における示談のメリット

①確実に前科を防げる

器物損壊事件は親告罪であるため,適切な内容の示談が成立すれば確実に不起訴処分となることが可能です。不起訴処分となれば,刑罰は科されないため,前科が付くこともありません。

一般的な刑事事件では,示談によって前科を防げる可能性が大きく上がると指摘できるものは決して少なくありません。しかし,示談をすれば確実に前科を防げる事件というのは,逆にそれほど多くはありません。
示談さえできれば確実に前科が防げるというのは,それだけ大きなメリットであり,器物損壊事件で示談の持つ効果は計り知れないということができるでしょう。

②確実に将来の逮捕を防げる

器物損壊事件で示談が成立すれば,その事件で起訴される可能性がなくなるため,その事件で加害者を逮捕する必要もなくなります。逮捕という手続は,捜査をより円滑に行うために加害者の身柄を拘束するものですが,起訴できない事件を捜査する必要はないので,示談後に逮捕までして捜査を行うことは通常ありません。

示談さえできれば確実に逮捕されなくなるため,器物損壊事件では,示談によって生活の平穏を確実に守ることができる,と言えるでしょう。

③確実に早期釈放される

器物損壊事件で逮捕勾留されている場合,示談が成立すればそれ以上逮捕勾留しておく必要がなくなります。そのため,器物損壊事件では,示談の成立が確認でき次第,速やかに釈放されることとなるのが通常です。

生活への影響を防ぐため,身柄拘束の期間は少しでも短いことが重要です。身柄拘束された器物損壊事件では,迅速な示談によって早期釈放を目指すことが大切な動きになるでしょう。

ポイント 示談のメリット

器物損壊事件は告訴がなければ起訴できない
→確実に前科が防げる
→確実に示談後の逮捕が防げる
→確実に早期釈放がなされる

器物損壊事件で示談をする方法

器物損壊事件で示談を試みる場合には,弁護士へ依頼し,弁護士に示談交渉を試みてもらうことが必要です。

被害者への連絡は,まず捜査機関の担当者を通じて行ってもらうことになりますが,捜査機関は当事者間の直接の連絡は承諾してくれないため,自分で捜査機関に依頼しても,被害者への連絡は断られてしまいます。
そのため,捜査機関から被害者に連絡してもらうためには,弁護士に依頼の上,弁護士を間に挟む方法で行うことが必要になるのです。

依頼を受けた弁護士は,捜査機関担当者に連絡し,示談希望の旨を被害者に伝えてもらうよう依頼します。捜査機関が被害者の意向を確認し,被害者が連絡先の交換に了承すれば,弁護士に被害者の連絡先が伝えられ,弁護士と被害者との連絡が開始できることになります。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

器物損壊事件の示談金相場

器物損壊事件の示談金は,損壊してしまった財産の価値によって変化するのが通常です。基本的には,損壊された財産の価格にいくらかの迷惑料・慰謝料を上乗せする形で示談金額とすることになりやすいでしょう。

この点,特に高価な財産ではない場合,示談金の相場としては10万円前後が目安になるところです。
ただし,当事者間のトラブルが単純な器物損壊事件ではない場合,例えば,継続的に争いが生じていた間柄で,一方がエスカレートして器物損壊事件を起こしてしまったような場合には,被害者側の感情面が非常に強い可能性があり,示談金は大きくなることが見込まれます。

ポイント
示談金は損壊された財産の価格+迷惑料・慰謝料
財産がそれほど高価でなければ,10万円前後が目安

器物損壊事件の示談で注意すべきこと

①示談が困難なケース

器物損壊事件では,損壊された財産の所有者が被害者となるため,その所有者から告訴の取り消しを獲得する必要があります。
もっとも,所有者は個人だけでなく,企業などの法人や,公共の財産を管理している国・自治体である場合もあり得ます。そして,個人以外が被害者の場合,示談が困難な可能性が高い傾向にあります。

法人や公的な機関は,告訴の取り消しなど,刑事事件の加害者を許すという行動を一律で断っていることが一般的です。一律の対応方針を設けなければ,対応の負担が過大になってしまうためであると思われます。
そうすると,企業の看板を壊してしまって法人が被害者であるとか,道路標識を壊して国又は自治体が被害者であるといった場合には,被害者から告訴の取り消しを獲得することが難しいことが多くなるでしょう。

その場合は,被害弁償として損害を補填するための金銭を支払うことをまずは目指すのが賢明です。器物損壊罪は財産に対する犯罪ですので,財産への損害を金銭で埋め合わせることは,その犯罪の責任を軽減させてくれます。
また,刑事責任があってもなくても,加害者は被害者側に金銭賠償をする義務を負っているため,金銭賠償の問題が紛争化することを未然に防ぐ効果も生じるでしょう。

②示談金が高額になりやすいケース

器物損壊事件の示談金は,損壊された財産の価値によって異なるため,財産の価値が高いほど,示談金も高額にならざるを得ないところです。

具体的に,財産の価値が高いため示談金が高額になるケースとしては,以下のような類型が考えられます。

示談金が高額になるケース

1.損壊された財産の価格が客観的に高い
2.損壊された財産の価値が被害者にとって高い(思い入れが強い)

このうち,「1.損壊された財産の価格が客観的に高い」場合は,その客観的な価値に応じた金額とすべきことが明らかであるため,金額は高いながらも複雑な問題ではありません。しかし,「2.損壊された財産の価値が被害者にとって高い(思い入れが強い)」場合は,示談金の定め方そのものが不明確にならざるを得ず,当事者間で適正な示談金額の認識に相違が生じることも珍しくありません。

具体的にどのような落としどころを目指すかは,個別の内容に応じて弁護士に相談するのが適切ですが,被害者が客観的な価値以上にその財産を大事にしている可能性を想定しておく,ということは大切でしょう。事前に想定できていれば,実際にそのような問題になった場合にも適切に対処・検討することが可能になります。

ポイント

個人以外が被害者の場合,告訴の獲得は難しい
→金銭の支払で経済的な補填を尽くすことを目指す

被害者にとっては客観的な価値以上に大切な財産である場合も
→事前にその可能性を踏まえておくことが有益

器物損壊事件の不起訴に関するポイント

器物損壊事件で不起訴を目指す方法

①告訴の取り消し

器物損壊罪は,「親告罪」と呼ばれる犯罪類型に当たります。親告罪とは,告訴がなければ公訴提起(起訴)ができない犯罪をいいます。裏を返せば,起訴されるのは告訴がある場合のみであるため,告訴がないか,出された告訴が取り消された場合には,確実に不起訴となることが見込まれます。

器物損壊事件で捜査が行われる場合,通常は被害者側の希望で捜査が開始されるため,告訴が出されている状態であることが一般的です。そのため,告訴がない状態とするためには,当事者間での解決を目指し,被害者から告訴の取り消しを行ってもらうことが最も端的な手段になるでしょう。

被害者と加害者との間で示談が成立する場合には,示談内容に告訴の取り消しを含めることで,当事者間での解決と刑事事件の解決を同時に行う運用が一般的です。

ポイント
器物損壊罪は,告訴がない場合確実に不起訴となる
示談によって告訴の取り消しを目指す

②被害弁償

器物損壊事件は,被害者の財産を損壊してしまう事件類型であるため,被害者に金銭的な損害が生じていることが通常です。そして,刑事処分を考慮するに当たっては,被害者の損害が加害者によって補填されているか,という点が重要な判断材料の一つになります。なぜなら,経済的な損害を与えたことが刑事責任の根拠となっている以上,その損害が後から埋め合わせされれば,刑事責任の根拠が大きく失われるためです。

そのため,器物損壊事件で不起訴処分を目指す場合,被害者に生じてしまった経済的な損害を補填するため,被害弁償を試みる動きが有力でしょう。被害者の損害の全てを補填することができれば,刑事処分の必要性は大きく減少することが期待できます。

なお,被害弁償は被害者との示談の内容として行われることが多く,同時に告訴の取り消しがなされれば最も有益ではあります。被害弁償を行う以上は,告訴の取り消しを目指したいところですが,告訴の取り消しには至らなくても,被害弁償を行うこと自体の意味は小さくありません。

ポイント
経済的な損害が補填されている場合,刑事責任は大きく減少する
被害弁償と同時に告訴の取り消しをしてもらえればベスト

③否認事件の場合

否認事件では,犯罪の立証ができないことを理由とした不起訴(嫌疑不十分又は嫌疑なし)を目指すことが有力です。

器物損壊事件の場合,否認事件として問題になりやすい争点としては,以下のような点が挙げられます。

器物損壊事件の否認事件における主な争点

犯人性
→自分が行った行為ではない,という内容で,誰が犯人であるかが争点になります。主に,複数人が関わるトラブルがきっかけになった場合など,器物損壊の被害が起きたことは間違いないものの誰が行ったか分からない,というケースで問題になりやすいでしょう。

故意
わざと行ったのか,過失で起きてしまったことなのか,という争点です。内心の問題は,客観的な事情から判断することになるため,器物損壊の具体的な内容,前後の経緯などから,「故意に行ったのでなければ説明が付かない」と言えるかどうかが判断の対象になるでしょう。

器物損壊事件で不起訴になる可能性

器物損壊事件は,不起訴になる可能性が十分に考えられる事件類型です。
器物損壊罪は親告罪とされていますが,それは類型的に比較的軽微であるため,起訴するかどうかの判断は被害者の意思を尊重して行ってよい,という趣旨によるものです。つまり,法律が器物損壊罪を比較的軽微な類型と評価していることになります。
事件類型が比較的軽微である以上,不起訴になる可能性も類型的に高い傾向にあると言えるでしょう。

この点,特に不起訴の可能性が高くなる事情としては,以下のような点が挙げられます。

器物損壊事件で不起訴の可能性が高くなる場合

1.被害者が起訴を望んでいない

2.被害が小さい

3.金銭賠償をしている

4.経緯に酌むべき事情がある

【1.被害者が起訴を望んでいない】

器物損壊事件は,起訴するかどうかの判断に際して被害者の心情を考慮することの多い事件類型です。そのため,被害者が起訴を望んでいないと言える場合には,不起訴の可能性が高くなります。

なお,被害者が起訴を望んでいない,という事実が告訴の取り消し(又は告訴しない)という形で表明されている場合,確実に不起訴となります。起訴を望まない意向が最も強い形で示されているケースと言ってよいでしょう。

【2.被害が小さい】

被害規模が著しく小さい場合,事件の程度を踏まえて不起訴処分とされる可能性が高くなります。器物損壊事件は,もともと軽微な事件と評価されやすいため,その中でも特に軽微な場合には不起訴処分に直結する可能性があり得るでしょう。

被害の大きさは,基本的には被害金額の大きさを基準に判断することになります。その他,損壊の程度,損壊行為の内容などが判断材料になるでしょう。

【3.金銭賠償をしている】

加害者が被害者に金銭賠償をしている場合,その点を踏まえて不起訴処分とされる可能性が高くなります。
器物損壊事件は,被害者の財産に損害を与えたことが刑罰の主な理由とされており,その損害が金銭賠償によって回復されていれば,刑罰を科す必要が減少するためです。

なお,金銭賠償を行う場合には,当事者間でのやり取りを避け,弁護士に依頼して弁護士を窓口にすることをお勧めします。

【4.経緯に酌むべき事情がある】

事件の経緯に酌むべき事情があり,器物損壊事件を起こしてしまったことに同情すべき点がある場合,不起訴処分の可能性が高くなるでしょう。一例としては,被害者側から理不尽な言動を受け,感情を逆撫でされた,といった場合が考えられます。

もっとも,経緯に酌むべき事情があるからと言って必ず不起訴が近づくわけではありません。経緯と器物損壊事件の内容を比較して,加害者に同情すべき事情があるかどうかを判断することになるでしょう。

器物損壊事件で不起訴を目指す場合の注意点

①被害者と接触する方法

器物損壊事件で不起訴を目指すには,被害者との間で解決することが最も効果の大きい手段です。適切な解決ができれば確実に不起訴となるため,被害者との接触を図ることは非常に重要な問題となります。

この点,被害者と接触するには,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にして行う必要がある点に注意が必要です。被疑者の連絡先は,警察等の捜査機関を通じて聞き出す必要がありますが,捜査機関は,弁護士以外に被害者の連絡先を伝えることは拒否する運用のため,弁護士の存在が不可欠となります。

また,その後の示談交渉も弁護士を通じて行うことが必要となるため,被害者との接触は弁護士に依頼して行う,ということを把握しておきましょう。

②経済的負担

不起訴処分を目指す場合,複数の経済的負担が生じ得ます。代表的なものは,弁護士費用と示談金の2点でしょう。

この点,不起訴処分を目指さない場合には,弁護士費用も示談金も生じない形で対応することは不可能ではありません。また,不起訴を目指さなかった結果,罰金刑の対象になったとしても,その罰金額は弁護士費用や示談金より小さくなることが通常です。
そのため,基本的に不起訴を目指す動きを取る方が経済的負担が大きくなる,という点には注意しておくことをお勧めします。

不起訴処分を獲得し前科が付かない結果となることは,金銭には代えられない利益ではあるため,金銭面を優先するか,不起訴処分を優先するか,という判断になるということもできるでしょう。

③目指す時期

不起訴処分を目指す場合,その時期は早ければ早い方が有益です。

まず,不起訴を目指すことができるのは,起訴される前までです。不起訴を目指したいと思っても,その時点で既に起訴されてしまっていれば,不起訴になる可能性はなくなります。
また,不起訴を目指す手段としては,被害者との示談が最も有力ですが,示談成立のためには被害者が示談に応じる意向でなければなりません。そして,被害者が示談に応じる意向となるかどうかは,専ら感情的な判断にもなり得るため,被害者の感情面に配慮する意味で,できるだけ早くお詫びの意思を表明していくことが重要になるでしょう。

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傷害事件における自首のメリットや弁護士依頼の要否,注意すべき点などを解説

このページでは,傷害事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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傷害事件で自首をするべき場合

①被害者が重傷を負っている場合

自首を検討するべき場合の代表例は,事件が重大で刑事責任が重く評価されやすいケースです。自首は,逮捕や起訴の回避を目指す手段として有効なものですが,事件が重大であって刑事責任が重い場合は,特に逮捕や起訴の恐れが大きい傾向にあります。そのため,被害者が重傷を負っている傷害事件では,刑事責任が重く,自首を検討するメリットが類型的に大きいと言えるでしょう。

また,傷害事件の捜査は,基本的に被害者が捜査機関に相談等したことをきっかけに開始されます。逆に,被害者が声を上げなければ,捜査が始まるきっかけも生じないことになります。
この点,被害者が重傷を負った傷害事件の場合,被害者が事後に何のアクションも取らないことは考えにくいところです。そのため,捜査が開始される可能性が非常に高く,自首の検討が必要になりやすいでしょう。

ポイント
刑事責任が重く,逮捕や起訴の恐れが大きい
被害者が捜査を求める可能性が高い

②加害者を特定する証拠が十分にある場合

自首は,自分が加害者であると特定される可能性が高い場合に,先手を打つ形で行うことが非常に有益です。なぜなら,自首をしてもしなくても加害者が特定される状況であれば,先に自首をしても不利益がない一方,自首せずに捜査を受ける場合と比較して大きなメリットが期待できるからです。不利益がなくメリットが大きいのであれば,積極的に検討するべきことは間違いありません。

そのため,事件の加害者を特定する証拠が十分にあると思われるケースでは,積極的な自首の検討が有力です。傷害事件で生じやすい証拠としては,被害者側の記憶(特に被害者が知人である場合),目撃者,公共の場所における防犯映像などが挙げられます。

ポイント
先手を打って自首をしても不利益がなく,大きな効果が期待できるケースに当たる

③周囲への発覚を防ぎたい場合

自首をすることで,刑事事件の捜査は被疑者(=加害者)に配慮した方法で行われることになりやすいです。例えば,突然制服を着た複数の警察官が訪れたり,逮捕や捜索などの強制的な捜査が行われたりといった,周囲に事件の存在が知られるような方法はできるだけ回避してくれるケースが多い傾向にあります。
これは,自首をした被疑者であれば,穏やかな方法であっても捜査協力が期待できるため,周囲への発覚を防ぎたいという被疑者の希望に配慮した動きです。

逆に,周囲への発覚を防ぎたい,という希望が非常に大きい場合には,捜査機関の配慮を期待する意味も含めて自首を行うことが有力な手段と言えます。自首に込めた誠意や協力姿勢が伝われば,いたずらに周囲へ知られるような動きは控えてくれることが多いでしょう。

ポイント
自首した事件の捜査は,加害者に配慮した方法で行われやすい

④当事者間での示談交渉が困難な場合

傷害事件は,当事者間で解決すればその後に捜査が開始されることは通常ありません。そのため,当事者間で示談などをし,円満な解決に至れば,その後に捜査が始まることを考える必要はなく,捜査に備えた自首を検討する必要もないと言えるでしょう。
裏を返せば,当事者間での示談交渉が困難なケースでは,いつ被害者が捜査機関に被害申告をして捜査が始まることになるのか分からない,非常に不安定な状況にならざるを得ません。

そのため,当事者間で示談交渉ができる状況になく,不安定な状況を少しでも早く脱する必要がある場合には,自首の検討が有力です。適切に自首ができれば,刑事事件の進捗や見通しが分からない,という事態を避けることができるでしょう。

ポイント
当事者間で解決できれば自首は不要
示談交渉困難で不安定な状況にある場合,自首の検討が有力

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

傷害事件の自首は弁護士に依頼すべきか

傷害事件の自首について検討する際や,実際に自首を進める際には,弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら行うことが適切です。弁護士への依頼によって,以下のようなメリットが見込まれます。

①逮捕の可能性が低くなる

自首は,逮捕を防ぐことが大きな目的の一つですが,弁護士に依頼し,適切な方法で自首を進めることによって,逮捕の可能性はより低くなることが期待できます。弁護士に依頼した場合,弁護士が窓口となって捜査機関とやり取りすることで,自首の趣旨や申告したい犯罪事実を正しく把握してもらうことができるため,自首が円滑になり,その効果も十分に生じることが見込まれるでしょう。

自首は大きなリスクを背負った重大な行動であり,その効果を最大限にできる方法を取らないことは背負ったリスクに見合わない結果を招きかねません。そのため,自首を行う以上はできる限りの手段を尽くす,という発想を大切にすることをお勧めします。

②取調べへの備えができる

自首は,あくまで捜査の出発点であり,自首後には捜査機関による捜査が始まることとなります。そして,捜査が行われる際に主要な動きとなるのが取調べです。
一般的に,自首を行った場合には,出頭した当日又は次回の出頭時に,捜査機関担当者から取り調べを受けることが見込まれます。取調べは警察署内の密室などで行われ,弁護士など第三者の立ち会いはできないことが通常です。

そのため,取り調べが始まってから対処を検討することはできず,事前の備えが不可欠ですが,弁護士に依頼することで,将来の取調べに対する備えもあわせて案内してもらうことが可能になります。
刑事手続や取調べの運用に精通した弁護士であれば,取調べの流れや取るべき対応や話すべき内容など,包括的なアドバイスをしてもらうことができるでしょう。事前に取調べの備えができれば,自首への不安も最小限に抑えられます。

③手続や処分の見込みが分かる

自首は,その後の手続の流れや処分見込みが分かっていれば格段に行いやすくなります。自首した後自分がどうなってしまうのか,自首するのとしないのとで刑事処分がどのように変わるのか,という点が全く分からないまま,闇雲に自首をするのは難しいですが,見通しが持てていれば,リスクの大きな自首も心理的負担小さく行うことが可能になるでしょう。

この点,弁護士に依頼して自首を進めれば,自首後の手続の流れについて案内を受けてもらいながら対応することが可能です。また,自首を踏まえた処分見込みを専門的な知識経験を踏まえてアドバイスしてもらえるため,希望する解決に向けた取り組みが容易になります。

④自首後の弁護活動が迅速にできる

傷害事件で自首を行った場合には,被害者との示談交渉など,その後の弁護活動を適切に行ってもらうことで,自首の効果がより高く発揮されます。自首の主な目的である逮捕回避や不起訴処分の獲得は,被害者との示談が成立することでより確実になり,希望した結果の実現に大きく近づくでしょう。

この点,自首の段階から弁護士に依頼し,弁護士と協同する体制を設けておくことで,自首後の弁護活動を速やかに始めることができます。また,加害者が自首をした事実は,被害者の感情面にもプラスの影響を及ぼしやすく,示談成立の可能性は自首のないケースよりも高くなりやすいでしょう。

傷害事件で自首をする場合の注意点

①自首が相手方の意向に反する可能性

自首は,加害者が自分の判断で警察等の捜査を求める行動です。そのため,被害者の意向を確認することなく捜査が開始され,その後に捜査機関が被害者へ捜査協力を求める可能性もあります。

この点,自首による捜査の開始が被害者側の意向に反してしまう可能性があることは,事前に十分留意しておくのが適切でしょう。
被害者が特に捜査機関への相談などを行っていない場合,被害者は捜査機関の関与を希望していない可能性があります。その理由は,対応が面倒である,当事者間での解決を希望しているなど様々ですが,自首が被害者の意向に反している場合,自首が適切な動きではなかった,という結論になり得るでしょう。

②時期が遅れると自首が成立しない

自首は,捜査機関にとって犯罪事実か犯人の両方が発覚している状況では成立しません。そのため,被害者の申出をきっかけに捜査が開始され,犯罪事実と犯人が特定された後では,自ら警察への出頭を試みても法的には自首と評価されず,自首のメリットを十分に得られない可能性があります。

傷害事件の場合,被害者が警察に被害申告をする可能性が比較的高く,犯人を特定する証拠が得られやすいケースも少なくないため,検討に長期間をかけてしまっていると,自首ができない状態に陥ってしまう恐れがあります。
自首の検討は,できるだけ早期に行うことをお勧めします。

③自首すれば不起訴になるわけではない

自首の大きな目的の一つは不起訴処分です。刑事事件は,捜査を遂げた検察によって起訴又は不起訴の処分がなされますが,起訴されれば前科がつき,不起訴となれば前科が付かないため,極めて大きな分岐点になります。

この点,自首によって不起訴処分の可能性が高くなることは間違いありませんが,自首をすれば直ちに不起訴になる,というものではない点には注意が必要です。自首は,不起訴の判断を促す事情の一つに過ぎず,自首しても起訴され前科が付く可能性はあります。
特に,事件の重大性が著しいケースでは,自首という事情があっても事件の重大性の方が重く評価され,不起訴処分が逃れられない場合が多くなりやすいでしょう。

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【傷害事件での呼び出し】警察が呼び出す目的や流れ,逮捕される可能性や逮捕を防ぐ手段などを詳細解説

このページでは,傷害事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
傷害事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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傷害事件で呼び出された場合の対応法

①心当たりのある場合

疑われている行為に心当たりのある場合は,犯罪事実に争いのない事件となり,認め事件と呼ばれます。認め事件では,犯罪が成立するかどうかは問題にならないため,犯罪行為があったことを前提に,その処分が重くなるか軽くなるか,という判断になります。
そのため,心当たりのある場合には,その後の処分ができるだけ軽くなるような対応に努めるのが最も適切と言えるでしょう。

具体的には,最初から一貫して自身の行為を認め,深い反省の意思を示すとともに,真摯な捜査協力を行うことが望ましいと言えます。認め事件で処分が軽くなるかどうかは,いわゆる情状酌量をしてもらえるかという問題になるため,深い反省を有利な情状として考慮してもらうことを目指すのが最も有効です。

突然呼び出しを受けてしまうと,認めることにリスクを感じてしまい,反射的に心当たりがないなどの返答をしがちですが,反省は一貫して示すことが非常に重要です。反省の意思が最初から一貫している,と評価してもらうため,呼び出しへの最初の対応は大きなポイントになるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けた段階から,一貫して反省の意思を示し続けることが重要

②相手に落ち度があると考える場合

傷害事件の場合,互いに感情的になって不適切な行為をしている場合も多いため,事件の原因などについて相手に落ち度があると考えるケースもあり得るところです。相手が暴言を吐いてきた,挑発してきたなど,「相手が不適切な行為をしなければ事件は起きなかったのに」という思いになる場合もあるでしょう。
その他,相手も手を出してきた,相手に迷惑をかけられてきた経緯があるなど,相手の落ち度を指摘したいケースが増えやすいのも,傷害事件の特徴と言えます。

もっとも,呼び出しを受けた際に相手の落ち度を強く指摘するのか,という点は,慎重な判断が望ましいです。呼び出しを行う警察は,まず犯罪事実を認めているか認めていないか,という基準で事件を区別し,その区別に沿って取り扱いを進めていくのが通常です。そのため,犯罪事実を認めるか認めないか,という点に関係しない事情は,あまり聞く意思を持っていないことが多く見られます。
相手に落ち度があると考える場合でも,それが犯罪の成否に影響しない事柄であれば,呼び出しをした警察にとって必要な情報ではなく,伝えてもその後の流れが好転することが考えにくいものです。正当防衛の主張であるなど,犯罪の成否に関係する主張以外は,あまり強く述べていくべき状況ではないかもしれません。

相手の落ち度に関する言い分は,主張するべきタイミングや方法を慎重に判断することが望ましいものです。感情的な主張になってしまわないよう,弁護士に依頼するなどして十分に検討することをお勧めします。

ポイント
犯罪の成否に影響しない場合,主張の時期や方法は慎重に検討するのが適切

③相手が怪我するほどの内容ではないと考える場合

傷害事件は,加害者が被害者に暴行を加えた結果,被害者が傷害を負った場合に成立する犯罪類型です。そのため,暴行をしても被害者に怪我が生じなかった場合や,被害者が怪我をしているもののそれは暴行とは無関係の原因で生じたものである場合などは,傷害罪は成立せず,傷害事件として扱うことが不適切である,ということになります。
そのため,実際の出来事や自身の記憶を踏まえて,相手に傷害結果が生じるのは考え難いという場合には,その旨の主張を行うのも有力な選択肢と言えます。

ただし,この場合には,法的にどのような主張になるかは十分に理解しておくことが適切です。暴行を加えたものの傷害結果が生じなかった,という場合には,傷害罪は成立しないものの暴行罪は成立することになるのが通常です。つまり,犯罪に当たることは争わないものの,より軽微な犯罪であるとの主張になるため,認め事件で重要な反省の意思を示すことは忘れないようにする必要があります。

なお,主張の内容によっては,暴行罪すら成立せず「自分の行為は犯罪でない」という意味の主張になる場合もあり得ますが,高度な法律の理解が必要な問題になるので,必ず弁護士の見解を仰いだ上で主張するようにしましょう。

ポイント
傷害罪でなくより軽微な暴行罪にとどまるとの主張
認め事件に変わりないことは忘れないよう注意する

④全く心当たりがない場合

疑われている傷害事件に全く心当たりがない場合,捜査に対しては否認(認めない)の立場を取ることになります。そのため,まずは否認事件であることを明らかにし,捜査機関に把握してもらうように努めましょう。

刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,必要な捜査やその後の取り扱いが大きく変わります。否認事件の場合,被疑者が認めなくてもなお犯罪が証明できる,という場合でなければ刑事処罰はできないため,一般的に犯罪立証のハードルが高く,より慎重な捜査が必要とされる傾向にあります。
そのため,否認事件では,犯罪立証の高いハードルを越えることが必要である,ということを捜査機関に認識してもらい,できれば「犯罪立証が困難である」との判断を早期に行ってもらうことが有力な対応と言えるでしょう。

また,自分に心当たりのないことを裏付ける事情などがある場合,その内容は積極的に示していくことが適切です。否認の主張が信用できるとの判断を引き出しやすく,より早期の解決が期待しやすくなります。

ポイント
否認の立場を早期に表明する
主張を裏付ける事情がある場合は,積極的に示す

傷害事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

傷害事件で呼び出しを受けた場合,呼び出しに応じて出頭した際に逮捕される,という流れはあまりありません。傷害事件は,逮捕目的で呼び出しを行うケースが少ない事件類型と言うことができるでしょう。
もっとも,傷害事件は事件の程度が非常に幅広く,そのすべてを一律に取り扱うことは困難です。傷害事件の中でも,事件の重大性や悪質性が特に大きい場合には,呼び出しの際に逮捕される可能性も否定できません。

具体的には,以下のような場合が挙げられるでしょう。

傷害事件で呼び出し後に逮捕されやすいケース

①殺意がある可能性を疑われている

傷害事件として取り扱ってはいるものの,殺意があったのではないかと疑われている場合,殺意を裏付ける証拠が発見されたなどの事情によっては,呼び出しの後に逮捕される可能性が考えられます。
殺人罪又は殺人未遂罪は,犯罪の中でも特に重大な類型であり,その重さは当然ながら傷害罪を大きく上回るものです。刑事事件では,事件が重大であればあるほど逮捕の可能性が高くなるため,傷害罪にとどまらず殺人罪や殺人未遂罪の可能性がある場合は,特に逮捕リスクが高くなるのです。

②被害結果が非常に重い

被害者の傷害結果が非常に重く,傷害事件の中でも特に重大と評価される場合には,逮捕の可能性が高くなります。特に,死亡結果に近いほどの深刻な被害が生じている場合,殺意がある場合と同様に殺人事件又は殺人未遂事件類似の内容として,逮捕リスクが上がりやすいでしょう。

また,たまたま重大な被害結果になってしまったのではなく,意図して重大な傷害結果を招こうとし,実際にその通り重大な結果となった場合には,より逮捕の可能性が高くなりやすいと言えます。呼び出し後の取り調べなどを踏まえて,暴行の意図がはっきりと確認できた場合には,それを踏まえて逮捕に踏み切るケースもあり得ます。

③呼び出しへの対応が不適切である

捜査機関が呼び出しを行うのは,呼び出しに対して適切に応じてくれることが大前提となります。出頭して欲しいと求めれば来てくれる,物の提出を求めたいと言えば提出してくれるなど,捜査協力をしてくれるのであれば,逮捕までは必要ないと考えているわけです。

逆に,呼び出しに対して不適切な対応に終始し,捜査協力の意思が見られない場合には,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。呼び出しを無視し続ける,合理的な理由なく拒否し続けるなど,逮捕なしでは出頭や取調べへの協力が期待できないと理解されるケースでは,特に逮捕が懸念されます。

傷害事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①取調べのため

傷害事件における警察の呼び出しは,基本的に被疑者を取り調べる目的で行われるものです。自分が起こしてしまった(又は起こしたと疑われている)事件で,初めて呼び出しを受けたときは,取調べ目的と考えて間違いないことがほとんどでしょう。

取調べ目的での呼び出しは,捜査機関が事件を把握した後,比較的早期の段階で行われることが一般的です。特に,客観的な証拠に乏しく当事者の言い分以外には証拠がない場合には,相手の話を聞いた後速やかに呼び出しが行われることも少なくありません。

②事件の再現を試みるため

傷害事件の捜査の一環として,事件当時の状況を再現し,写真に収めるなどの捜査が行われることも多数あります。これは,説明内容を文字だけにしたのでは第三者の理解が難しい場合に,事件の内容を明らかにする最適な証拠を作成する目的で行われるものです。
再現に際しては,当事者のいずれか一方が立ち会い,相手を模した人形や捜査官を相手に,当時の状況を身振り手振りで表現することが通常です。その内容を写真撮影し,警察にて「写真撮影報告書」という捜査資料を作成することが,基本的なゴールとなるでしょう。

事件の再現は,一通りの話を聞いた後に行われるものとなるため,取り調べの後に実施されるのが通常でしょう。必要な取調べの後,数週間~1か月程度の間隔を空けて実施されるケースが一定数見られます。

③証拠品の提出を求めるため

傷害事件では,事件の内容や結果を裏付ける証拠が存在するケースもあるため,証拠品の提出を求める目的で呼び出されることがあります。考えられる証拠としては,暴行に用いられた凶器,事件当時の着衣や靴,傷害結果が記載された診断書などが挙げられるでしょう。

証拠品の提出は,呼び出しの中でも比較的終盤で求められることが多く見られます。最後の取調べの後1週間~1か月程度を目安に呼び出されることが考えられるでしょう。

傷害事件の呼び出しに応じたときの注意点

①経緯に言い分があるとき

ケンカのような態様で生じた傷害事件は,互いに感情的になっており,その経緯を見ると双方に落ち度があると思われることも少なくありません。そのため,呼び出しに応じて話をする際には,経緯に関する言い分を主張したくなるところですが,主張の方法や内容は慎重に検討することをお勧めします。

まず,「取り調べを受けるのは納得いかない」と言わんばかりに,経緯に関する言い分を強く主張することはあまり適切ではありません。経緯に酌むべき事情があったとしても,それは犯罪事実がなかったという意味にはならないため,経緯の主張は,犯罪行為に対する反省と両立する形で行うべきです。

刑事事件の取り扱いは,犯罪事実があるかどうか(認め事件か否認事件か),という区別が前提となる以上,その取り扱いに適した対応が有益です。決して経緯を主張する場がないというわけではありませんので,適切な時期に適切な方法で主張できるよう,弁護士のアドバイスを受けながら対応していくことをお勧めします。

②互いに暴行があった場合の取り扱い

傷害事件では,互いに相手への暴行をしており,互いに被害を受けている場合もありますが,この場合の取り扱いは,互いに傷害事件の加害者である,というものになります。相手から暴行を受けたからと言って,自分の暴行が犯罪でなくなる,というものではない点に注意が必要です。

もっとも,この場合には,相手も刑罰を受けるリスクを背負っている,という点に特徴があります。喧嘩別れに終わった場合,双方が刑罰を受ける結果にもなりかねないため,互いにとって示談のメリットが大きい状況ということもできるでしょう。
その意味では,当事者間で何らかの解決を目指すことがより望ましいケースであると考えられます。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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傷害事件で逮捕される場合と逮捕されない場合の違いは?逮捕後の流れは?

傷害事件は被害者のケガの程度や事件の状況によって、逮捕される場合と逮捕されない場合があります。「初犯でも逮捕されるのか」「逮捕後はどうなるのか」と不安に感じる方も多いでしょう。傷害で逮捕されると、取調べや勾留などの刑事手続きが進み、仕事や生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、傷害事件の逮捕について、逮捕されるケースとされないケースの違い、さらに逮捕後の流れについて分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害事件で逮捕された場合の流れ

傷害事件で逮捕されると、まず警察が身柄を確保して事情を聞きます。
その後、事件は検察に引き継がれ、検察官が「身柄をさらに拘束する必要があるか」「起訴すべきかどうか」を判断します。
必要な場合には裁判所の判断を経て勾留され、最終的に検察官が起訴するか、不起訴にするかを決めます。

段階期間の目安主な内容
① 逮捕~48時間以内警察が身柄を拘束し、事情聴取や証拠収集を行う。弁護士との面会は原則自由。
② 送検(検察への引き渡し)逮捕から48時間以内警察が事件を検察官に送致。検察官が勾留請求の要否を判断する。
③ 勾留請求・裁判官の判断送検後24時間以内検察官が裁判官に勾留を請求し、裁判官が許可するかどうかを決める。
④ 勾留期間中の取調べ原則10日間(必要に応じて延長10日以内)勾留が認められると、被疑者は裁判官の決定により10日間身柄を拘束。やむを得ない事情がある場合には、裁判官の判断で10日以内の延長が許可されることもある。
⑤ 起訴・不起訴の判断勾留期間中または終了時検察官が、証拠や被害者の意見、示談の有無などを考慮して処分を決定。
⑥ 釈放・保釈随時不起訴処分や勾留却下などにより釈放されることもある。

(1)逮捕から送検まで

逮捕後、警察で取り調べが行われ、証拠がそろえば48時間以内に検察官へ送致されます。
この間、家族との面会は制限される一方で、弁護士との接見は原則自由です。

(2)勾留決定とその影響

検察官が「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断すれば、裁判官に勾留を請求します。
勾留が認められると、警察署などに最大10日間拘束され、さらに必要に応じて10日間延長されます。

(3)起訴・不起訴の分かれ道

勾留期間中に、検察官は事件の性質、被害者との示談状況、被疑者の反省などを踏まえ、起訴するか否かを決めます。
被害者との示談成立や被害弁償がある場合は、不起訴になるケースも少なくありません。

(4)弁護士による早期対応の重要性

早期に弁護士が介入し、被害者との連絡・示談交渉・意見書の提出を行うことで、勾留回避や不起訴処分の可能性を高めることができます。

主なポイントは以下のとおりです。
・逮捕後48時間以内に送検され、検察官が勾留請求を検討
・勾留は裁判官の決定によって10日間
・延長は裁判官が許可する場合に限り10日以内
・弁護士の早期関与が、勾留回避や不起訴の鍵になる

傷害事件では現行犯逮捕か後日逮捕か

(1)逮捕の種類や手続

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

(2)現行犯逮捕で逮捕される可能性とタイミング

傷害事件では、現行犯逮捕が行われるケースが少なくありません。
一例として、次のような状況では現行犯逮捕となることが多くあります。

・けんかの最中や直後に、警察が通報を受けて駆けつけた場合
・被害者がその場で「殴られた」と通報し、加害者が逃げずに現場にいる場合
・防犯カメラや周囲の人の目前で暴行を加えた場合

現行犯逮捕は、「まさに犯行中」または「犯行直後」であることが条件です。
また、「犯罪の直後に行為者と疑うに足りる状況がある場合」(刑事訴訟法212条2項)は
準現行犯逮捕として扱われ、現行犯逮捕と同様に令状不要で逮捕が可能です。

もっとも、(準)現行犯逮捕されたとしても、その後の手続(送検・勾留・起訴など)は通常逮捕と同様に進みます。
つまり、「すぐに逮捕されたから処分が重くなる」というわけではありません。
その後の取調べや示談の状況が、処分の軽重に影響します。

ポイント
・傷害事件は、目撃者や被害者がいることが多く、現行犯逮捕の可能性が高い
・犯行直後であれば「準現行犯」として逮捕される場合もある
・現行犯逮捕は令状不要で迅速に行われるが、その後の手続は通常逮捕と同じ
・逮捕後の対応(弁護士依頼・示談など)が、処分結果を左右する

(3)逮捕の可能性が高いケース

傷害事件は,逮捕される可能性が十分に考えられる事件類型です。被害者の身体に危害が加えられているため,犯罪行為の危険性を踏まえると,被害者保護や証拠隠滅防止のために逮捕の必要性が高いと判断されるケースは少なくありません。

もっとも,傷害事件には大小様々なものがあり,逮捕の可能性も一律に判断することはできません。そのため,傷害事件で逮捕の可能性が高いのはどのような場合か,という点を把握しておくことは有益でしょう。

傷害事件で逮捕の可能性が高い場合

1.被害結果が大きい場合

2.暴行内容の危険性が大きい場合

3.現行犯で取り締まりを受けた場合

4.相手が弱い立場の場合

【1.被害結果が大きい場合】

被害者の傷害結果の大きさは,傷害事件の重大性を判断する際の非常に大きな材料になります。軽傷であるか重傷であるか,場合によっては命の危険があったかどうか,といった点は,刑事責任の重大性に直結します。

一般的に,刑事責任が重大な事件であるほど,見込まれる処分も重いものになるため,加害者が逃亡や証拠隠滅を図る恐れが大きいと理解されます。そして,逃亡や証拠隠滅を図る恐れが大きいほど,逮捕をする必要性も高くなります。逮捕は,まさに逃亡や証拠隠滅を防ぐための強制的な措置であるためです。

そのため,被害結果が大きい傷害事件では,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

【2.暴行内容の危険性が大きい場合】

結果的に被害が大きくなかったとしても,暴行の内容が非常に危険である場合には,やはり刑事責任が重くなりやすいため,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。一例としては,凶器を振り回したものの被害者にはうまく当たらなかった場合や,周囲が止めに入らなければもっと重大な被害を負わせてしまっていたであろう場合が挙げられるでしょう。

また,暴行の内容があまりに危険である場合には,そのような危険な行為を実行してしまう人物だ,という点を踏まえ,被害の拡大を予防する目的で逮捕をすることも多く見られます。特に,危険な行為を躊躇なく行っている場合や,無差別に行っている場合には,逮捕の可能性はより高くなると考えられます。

【3.現行犯で取り締まりを受けた場合】

現行犯で取り締まりをされた傷害事件の場合,その現場でのトラブルの深刻化を防ぐため,一方を逮捕するケースが多く見られます。
代表例としては,路上や飲食店などで泥酔者同士の喧嘩が起きた場合などが挙げられるでしょう。泥酔状態でコミュニケーションもうまく取れない状況では,逮捕以外の手段で加害者を制止させる方法がなく,その場を収める最も有効な手段として,逮捕が選択されることも少なくありません。

また,現行犯の場合には現行犯逮捕が可能ですが,逮捕状がなくても,誰でも行うことができる点で,逮捕を行うハードルが低いという特徴もあります。周囲の人が現行犯で取り押さえた後,駆け付けた警察官に引き渡すことで,自然と逮捕が成立してしまうこともあり得ます。

【4.相手が弱い立場の場合】

当事者間の立場に上下関係や筋力などの差があり,被害者が弱い立場にある場合には,被害者保護のために逮捕が選択される可能性が高くなり得ます。
逮捕は,証拠隠滅を大きな目的の一つとする手続ですが,被害者という人も重要な証拠です。この場合の逮捕は,被害者という証拠が隠滅されないことを目的に行われることになります。

特に,当事者間が容易に連絡を取り合える関係であるなど,加害者から被害者に対して何らかの圧力がかかりやすい事情がある場合には,特に被害者保護をする必要性が高く,逮捕に至るケースが増えるでしょう。

傷害事件で逮捕されたときのデメリット

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

傷害事件の逮捕を避ける方法

①当事者間での解決を目指す

傷害事件は,基本的には当事者個人間のトラブルであるため,当事者自身で解決されているのであれば,それ以上に捜査をすることはあまりありません。刑事手続の進み具合によっては,当事者間で解決しても直ちに手続が終わらないこともありますが,少なくとも当事者間で解決した後に逮捕されることは考えにくいでしょう。

そのため,逮捕を避ける手段としては,当事者間との解決が非常に有力と言えます。共通の知人が間を取り持ってくれる,当事者同士で連絡を取り合う手段がある,といった場合には,直接話し合うこともあってよいでしょう。もっとも,傷害事件の解決を当事者同士で直接行うことは,トラブルの深刻化につながる恐れもあるため,弁護士に間に入ってもらい,弁護士を通じてやり取りを試みる方が望ましいところです。

②自ら捜査機関に出頭する

逮捕をする必要性が高いケースの一つが,逮捕しなければ出頭してもらえない,捜査協力をしてもらえない,という恐れのある場合です。最悪の場合,被疑者に逃亡されて行方が分からなくなってしまうと,捜査が進められなくなってしまうため,その恐れが高いと考えるときには,逮捕が有力な選択肢になります。

一方で,加害者が自ら捜査機関に出頭し,自分のしてしまった行為を真摯に話すなどした場合には,捜査協力をしてもらえない可能性や逃亡されてしまう可能性は基本的にないと評価されます。自分から出頭していることと逃亡などは,行動として矛盾するためです。

そのため,逮捕を避ける手段の一つとして,自ら進んで捜査機関(警察や検察)に出頭し,自分の事件に対する取り調べなどを求める動きは有力でしょう。手続の状況によっては,いわゆる自首が成立し,法的にもプラスの効果が生じることも期待できます。

被害者と接触が難しく、かつ捜査されていることが明らかに見込まれる場合、自ら出頭する方法が有力になりやすいです。

③金銭賠償を行う

傷害事件の被害者には,具体的な金銭的被害の生じていることが通常です。怪我を治療するための通院費,仕事ができなかった場合の休業損害,精神的苦痛に対する慰謝料などが代表例です。

この点,被害者に生じた損害に対して,金銭賠償を行って埋め合わせたケースでは,その後に逮捕されるケースは少なくなるのが通常です。この場合,加害者が被害者に対するお詫びの意思を持っていることが明らかであり,現実に被害者の損害が一定程度補填されているため,逮捕のような強制力の強い取り扱いまでする必要はない,と評価されやすいためです。

できれば,金銭の支払だけでなく当事者間で解決した,という形が取れる方が望ましいですが,解決までは至らない場合,金銭賠償だけでも行っておくことは非常に有益と言えます。

刑事事件の取り扱いに際しては、被害者の損害を後から補填できたか、という点が重要な判断基準になります。傷害事件の被害者に生じた心身の損害を金銭で補填することは、この点で大きな影響をもたらします。

傷害事件で呼び出しを受けた場合の対処法

①心当たりのある場合

疑われている行為に心当たりのある場合は,犯罪事実に争いのない事件となり,認め事件と呼ばれます。認め事件では,犯罪が成立するかどうかは問題にならないため,犯罪行為があったことを前提に,その処分が重くなるか軽くなるか,という判断になります。
そのため,心当たりのある場合には,その後の処分ができるだけ軽くなるような対応に努めるのが最も適切と言えるでしょう。

具体的には,最初から一貫して自身の行為を認め,深い反省の意思を示すとともに,真摯な捜査協力を行うことが望ましいと言えます。認め事件で処分が軽くなるかどうかは,いわゆる情状酌量をしてもらえるかという問題になるため,深い反省を有利な情状として考慮してもらうことを目指すのが最も有効です。

突然呼び出しを受けてしまうと,認めることにリスクを感じてしまい,反射的に心当たりがないなどの返答をしがちですが,反省は一貫して示すことが非常に重要です。反省の意思が最初から一貫している,と評価してもらうため,呼び出しへの最初の対応は大きなポイントになるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けた段階から,一貫して反省の意思を示し続けることが重要

②相手に落ち度があると考える場合

傷害事件の場合,互いに感情的になって不適切な行為をしている場合も多いため,事件の原因などについて相手に落ち度があると考えるケースもあり得るところです。相手が暴言を吐いてきた,挑発してきたなど,「相手が不適切な行為をしなければ事件は起きなかったのに」という思いになる場合もあるでしょう。
その他,相手も手を出してきた,相手に迷惑をかけられてきた経緯があるなど,相手の落ち度を指摘したいケースが増えやすいのも,傷害事件の特徴と言えます。

もっとも,呼び出しを受けた際に相手の落ち度を強く指摘するのか,という点は,慎重な判断が望ましいです。呼び出しを行う警察は,まず犯罪事実を認めているか認めていないか,という基準で事件を区別し,その区別に沿って取り扱いを進めていくのが通常です。そのため,犯罪事実を認めるか認めないか,という点に関係しない事情は,あまり聞く意思を持っていないことが多く見られます。
相手に落ち度があると考える場合でも,それが犯罪の成否に影響しない事柄であれば,呼び出しをした警察にとって必要な情報ではなく,伝えてもその後の流れが好転することが考えにくいものです。正当防衛の主張であるなど,犯罪の成否に関係する主張以外は,あまり強く述べていくべき状況ではないかもしれません。

相手の落ち度に関する言い分は,主張するべきタイミングや方法を慎重に判断することが望ましいものです。感情的な主張になってしまわないよう,弁護士に依頼するなどして十分に検討することをお勧めします。

傷害事件の場合、経緯に理不尽な出来事があったというケースも少なくありません。しかし、その経緯を最初から強く主張するより、まず傷害行為を真摯に認めるステップを踏む方が結果的に得をすることも多いです。

③相手が怪我するほどの内容ではないと考える場合

傷害事件は,加害者が被害者に暴行を加えた結果,被害者が傷害を負った場合に成立する犯罪類型です。そのため,暴行をしても被害者に怪我が生じなかった場合や,被害者が怪我をしているもののそれは暴行とは無関係の原因で生じたものである場合などは,傷害罪は成立せず,傷害事件として扱うことが不適切である,ということになります。
そのため,実際の出来事や自身の記憶を踏まえて,相手に傷害結果が生じるのは考え難いという場合には,その旨の主張を行うのも有力な選択肢と言えます。

ただし,この場合には,法的にどのような主張になるかは十分に理解しておくことが適切です。暴行を加えたものの傷害結果が生じなかった,という場合には,傷害罪は成立しないものの暴行罪は成立することになるのが通常です。つまり,犯罪に当たることは争わないものの,より軽微な犯罪であるとの主張になるため,認め事件で重要な反省の意思を示すことは忘れないようにする必要があります。

なお,主張の内容によっては,暴行罪すら成立せず「自分の行為は犯罪でない」という意味の主張になる場合もあり得ますが,高度な法律の理解が必要な問題になるので,必ず弁護士の見解を仰いだ上で主張するようにしましょう。

ポイント
傷害罪でなくより軽微な暴行罪にとどまるとの主張
認め事件に変わりないことは忘れないよう注意する

④全く心当たりがない場合

疑われている傷害事件に全く心当たりがない場合,捜査に対しては否認(認めない)の立場を取ることになります。そのため,まずは否認事件であることを明らかにし,捜査機関に把握してもらうように努めましょう。

刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,必要な捜査やその後の取り扱いが大きく変わります。否認事件の場合,被疑者が認めなくてもなお犯罪が証明できる,という場合でなければ刑事処罰はできないため,一般的に犯罪立証のハードルが高く,より慎重な捜査が必要とされる傾向にあります。
そのため,否認事件では,犯罪立証の高いハードルを越えることが必要である,ということを捜査機関に認識してもらい,できれば「犯罪立証が困難である」との判断を早期に行ってもらうことが有力な対応と言えるでしょう。

また,自分に心当たりのないことを裏付ける事情などがある場合,その内容は積極的に示していくことが適切です。否認の主張が信用できるとの判断を引き出しやすく,より早期の解決が期待しやすくなります。

ポイント
否認の立場を早期に表明する
主張を裏付ける事情がある場合は,積極的に示す

傷害事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

傷害事件で呼び出しを受けた場合,呼び出しに応じて出頭した際に逮捕される,という流れはあまりありません。傷害事件は,逮捕目的で呼び出しを行うケースが少ない事件類型と言うことができるでしょう。
もっとも,傷害事件は事件の程度が非常に幅広く,そのすべてを一律に取り扱うことは困難です。傷害事件の中でも,事件の重大性や悪質性が特に大きい場合には,呼び出しの際に逮捕される可能性も否定できません。

具体的には,以下のような場合が挙げられるでしょう。

傷害事件で呼び出し後に逮捕されやすいケース

①殺意がある可能性を疑われている

傷害事件として取り扱ってはいるものの,殺意があったのではないかと疑われている場合,殺意を裏付ける証拠が発見されたなどの事情によっては,呼び出しの後に逮捕される可能性が考えられます。
殺人罪又は殺人未遂罪は,犯罪の中でも特に重大な類型であり,その重さは当然ながら傷害罪を大きく上回るものです。刑事事件では,事件が重大であればあるほど逮捕の可能性が高くなるため,傷害罪にとどまらず殺人罪や殺人未遂罪の可能性がある場合は,特に逮捕リスクが高くなるのです。

殺意の有無は、傷害行為の危険の大きさを主な基準とすることが一般的です。刃物やけん銃で急所を狙った場合などが代表例ですが、実際の行為が被害者の生命に影響し得るケースでは、殺意があると判断されやすいでしょう。

②被害結果が非常に重い

被害者の傷害結果が非常に重く,傷害事件の中でも特に重大と評価される場合には,逮捕の可能性が高くなります。特に,死亡結果に近いほどの深刻な被害が生じている場合,殺意がある場合と同様に殺人事件又は殺人未遂事件類似の内容として,逮捕リスクが上がりやすいでしょう。

また,たまたま重大な被害結果になってしまったのではなく,意図して重大な傷害結果を招こうとし,実際にその通り重大な結果となった場合には,より逮捕の可能性が高くなりやすいと言えます。呼び出し後の取り調べなどを踏まえて,暴行の意図がはっきりと確認できた場合には,それを踏まえて逮捕に踏み切るケースもあり得ます。

③呼び出しへの対応が不適切である

捜査機関が呼び出しを行うのは,呼び出しに対して適切に応じてくれることが大前提となります。出頭して欲しいと求めれば来てくれる,物の提出を求めたいと言えば提出してくれるなど,捜査協力をしてくれるのであれば,逮捕までは必要ないと考えているわけです。

逆に,呼び出しに対して不適切な対応に終始し,捜査協力の意思が見られない場合には,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。呼び出しを無視し続ける,合理的な理由なく拒否し続けるなど,逮捕なしでは出頭や取調べへの協力が期待できないと理解されるケースでは,特に逮捕が懸念されます。

傷害事件の逮捕に関するよくある質問

(1)傷害事件の逮捕については弁護士に依頼するべきか

傷害事件の逮捕について対応をする場合には,弁護士に依頼し,弁護士の法的な判断を仰ぎながら進めることが適切です。弁護士に依頼した場合,以下のような利点が見込まれます。

①逮捕が懸念される状況か分かる

逮捕への対策をどの程度講じるかは,現状でどの程度逮捕が懸念されるか,という点により大きく変わります。逮捕が強く懸念される場合には,まず逮捕を避けることに全力を注ぐべきですが,一方で逮捕の危険がそれほどないならば,その分の労力や負担を他に充てる方が,最終的な結果はより望ましいものになる可能性が高いでしょう。
そのため,逮捕に関する対処は,正確な現状把握が出発点となります。

この点,弁護士に依頼することで,現在逮捕が懸念される状況かどうか,という点について,専門的な判断を仰ぐことが可能です。あわせて,個別の状況に応じた適切な対応方法についても,弁護士から助言を受けたり弁護士に進めてもらったりすることができるでしょう。

②速やかに示談を目指せる

傷害事件で逮捕を防ぐ手段として,示談は非常に強力な効果があります。示談が成立した傷害事件では,その後に逮捕されることはないと言っても過言ではありません。
もっとも,傷害事件では,示談を試みるために弁護士への依頼が必要となります。弁護士に依頼し,弁護士を窓口とすることで,初めて示談の試みが可能になるのが通常です。

裏を返すと,早期に弁護士に依頼している場合,早期に示談を目指す動きに着手でき,結果的に逮捕を回避しやすくなる可能性が高まるでしょう。もし示談自体が早期に決着できなくても,示談交渉を開始している,というだけで逮捕が防げる場合は少なくありません。

③不適切な逮捕を抑止できる

傷害事件の場合,当事者間の感情的な対立が非常に激しいため,被害者側が加害者の逮捕を強く求める場合は多くなりがちです。このとき,取り扱う警察官としては,本来は逮捕まで必要ないケースであっても,被害者の強い主張を受けて逮捕する,という選択になってしまうことが少なくありません。
しかしながら,本来逮捕まで必要ないにもかかわらず,被害者が強く主張したから逮捕するというのは,適切な逮捕とは言い難いでしょう。逮捕は非常に強力な手続であるため,本当に逮捕が必要かどうかは慎重に判断されるべきです。

この点,弁護士に依頼をしているケースでは,弁護士が目を光らせることで,不適切な逮捕の判断を抑止する効果を期待できます。また,万一不適切な逮捕が行われた場合には,不服申し立ての手続を講じるなどして,早期釈放を目指すことも可能です。

(2)逮捕された場合は不起訴にならないか

逮捕された場合,事件が重い取り扱いを受けていることが明らかになりますが,だからといって事件が起訴されるとは限りません。逮捕は,あくまで捜査をする際の手段の一つに過ぎず,捜査を終えた後に起訴するか不起訴にするかは全く別の問題です。

そのため,万一逮捕されてしまった場合でも,起訴されず前科が付かない可能性は十分に残っている,ということには注意しておくのが良いでしょう。逮捕されたことで全てに悲観的になってしまうのではなく,逮捕後でも最良の結果を目指すことが,結果に大きな違いをもたらします。

(3)傷害事件で逮捕されたとき家族ができることはあるか

家族の行動も、事件の結果を左右する重要な要素です。

まず、速やかに弁護士へ依頼し、接見を通じて本人の状況を確認します。
そのうえで、

・示談金や被害弁償の準備
・謝罪文や反省文の作成サポート
・勤務先・学校への連絡や社会的信用の維持

といった支援を行うことが大切です。

これらの対応は、被疑者が真摯に反省していることを示す資料となり、不起訴や執行猶予など処分の軽減につながる可能性があります。
家族の協力が、被疑者の再出発を支える大きな力になります。

(4)傷害事件で前科がつくのはどんな場合か

起訴され、有罪の裁判(正式裁判または略式命令)が確定した場合に前科がつきます。
不起訴や無罪の場合は、前科は残りません。
軽微な事件で示談が成立しているケースでは、不起訴となり前科を回避できることも数多くあります。

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傷害事件で不起訴処分となるには?具体的方法を徹底解説|示談や自首を検討すべき場合とは

このページでは,傷害事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。
示談や自首の方法やメリットについても紹介しているので、不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

傷害事件で不起訴を目指す方法

①被害者の宥恕を獲得する

傷害事件では,被害者の宥恕(ゆうじょ)が獲得できた場合,不起訴になる可能性が飛躍的に上がります。宥恕とは許しのことで,多くの場合は被害届の取り下げや告訴の取り消しといった方法で表明されることになります。
つまり,被害者と示談が成立し,被害届の取り下げなどがなされれば,不起訴に大きく近づくと考えてよいでしょう。

傷害事件は,基本的には一人の被害者のみに対する犯罪行為です。事件によって法的な利益を侵害されているのはその被害者だけであるため,被害者本人が宥恕を明らかにしているのであれば,起訴して刑罰を科す必要はほとんどなくなることになります。
そのため,被害者の宥恕が獲得できることは,不起訴を目指す方法の代表例ということができるでしょう。事件によっては,被害者の宥恕があれば不起訴,なければ起訴,という判断になるケースも非常に多く見られるほどです。

ポイント
宥恕の有無が起訴不起訴を決めることも非常に多い

②被害者へ損害賠償を行う

傷害事件は,加害者による暴行の結果被害者が傷害を負った,という事件類型です。そうすると,被害者には,負った傷害に対する治療のために費用が発生するほか,肉体的・精神的苦痛,仕事の休業を要した場合の休業損害等,金銭的な損害の発生が見込まれます。
刑事事件の処分は,被害者に発生してしまった被害をどれだけ補填できているか,という点が重要な判断基準となりやすいため,このような被害者の金銭的な損害に対して支払を行い,埋め合わせを行うことは不起訴処分を目指す方法の一つと言えます。

この点,多くの場合,損害賠償は示談(及び宥恕)とセットで行われることになります。加害者から積極的な金銭賠償がなされなければ,被害者が示談に応じるメリットはないため,被害者が示談に応じるのは,加害者による損害賠償が前提となる場合がほとんどです。被害者としては,特にアクションを起こさなくても相当額の損害賠償が受け取れることを条件に,引き換えとして宥恕する(=許す),という形を取ることが通常でしょう。

なお,宥恕はないものの損害賠償は行う,というケースもあり得ます。被害者が宥恕を拒否しているときには,損害賠償だけでも実施することで,可能な限り刑事処分の軽減を目指すべき場合もあり得るでしょう。
宥恕が獲得できている場合には及ばないものの,不起訴処分の可能性を高める効果が期待できることは間違いありません。

ポイント
被害者の損害を補填できているかどうかは,判断基準の一つ
示談及び宥恕とセットになりやすい

③否認事件の場合

否認事件の場合には,主張すべき争点を明確にした上で,争点に応じた適切な主張を行っていく必要があります。

傷害事件の否認事件で生じやすい争点としては,疑われている行為をしていない,というものが挙げられます。被害者は「こんなことをされた」と言っているものの,それは事実とは異なるという場合です。
他には,自分の行為と傷害結果(ケガなど)は無関係である共犯者だと疑われているが共犯者ではない,といったポイントが争点になることも一定数あり得るでしょう。
いずれの場合にも,自分の主張の根拠を指摘しながら,自分の主張が真実であることを粘り強く表明していくことが適切です。

この点,傷害事件の場合に注意すべき主張が正当防衛です。特に,喧嘩のような態様であった場合に,「相手が先に手を出してきたからこちらも応戦した」との主張を,正当防衛の意味で行うことには注意が必要でしょう。
正当防衛は,防衛のためにやむを得ない行為をした場合にしか成立しないため,互いに相手を傷つけようとする喧嘩の場合,基本的に正当防衛とは評価されません。相手から先に手を出してきたとしても,直ちに正当防衛となるわけではないことは踏まえておくのが良いでしょう。

ポイント
争点に応じて自分の主張の根拠を粘り強く主張する
喧嘩の場合,正当防衛の主張は難しいことが多い

傷害事件で不起訴になる可能性

傷害事件の場合,疑われている犯罪事実に間違いがなければ,基本的に起訴されることが見込まれやすいです。もっとも,手段を尽くすことで,結果が伴えば不起訴処分になることも決して珍しくはありません。

事後的な対応としては,やはり被害者との示談が非常に有力です。被害者と示談が成立し,被害者の許しが得られていれば,不起訴になる可能性は極めて大きくなりやすいでしょう。
ただ,感情的な対立が激しい傷害事件では,示談や被害者の許しが難しい場合も少なくはありません。示談以外に,不起訴の可能性が高くなる事情としては,以下のようなものが挙げられます。

不起訴になる可能性が高い傷害事件の内容

1.被害が小さい

2.暴行の内容が悪質でない

3.暴行の経緯に事情がある

【1.被害が小さい】

傷害事件によって生じた被害が非常に小さい場合,刑事責任の程度も比例して小さくなるため,不起訴になる可能性が高くなります。
一口に傷害事件と言っても,傷害結果の程度は様々です。第三者が見ても分からない程度の打撲や捻挫と,手術を要するような骨折とでは,全く重みが異なると考える方がむしろ自然と言えます。

また,被害の程度があまりに小さい場合,傷害事件というよりも暴行事件と同様であると考えるべきケースもあり得ます。暴行事件は,暴行したものの傷害結果(被害)が生じなかった,という事件類型で,傷害事件よりも軽微なものと理解されています。
暴行事件は,傷害事件と比較して不起訴の可能性が高い類型であるため,暴行事件類似と評価される場合には,不起訴の可能性が高くなるでしょう。

【2.暴行の内容が悪質でない】

加害者のしてしまった暴行の内容がどれほど悪質か,という点は,刑事責任の大きさに影響を及ぼしやすい事情です。相手に被害の生じる恐れがどれほど大きいか,どの程度重大な被害が生じる可能性のある行為か,といったポイントが,行為の悪質さを判断する基準になりやすいでしょう。

この点,大きな区別として設けられやすいのが,凶器の有無です。凶器を用いた傷害事件は,暴行の悪質さが非常に大きく,不起訴処分となることは難しいと言えます。一方,凶器を用いない素手素足での傷害事件は,具体的な暴行の内容によっては悪質さがさほどでなく,不起訴の可能性が高くなるケースがあり得ます。

【3.暴行の経緯に事情がある】

傷害事件は,加害者が強く興奮した結果起きてしまうことが少なくありません。そして,加害者が興奮するに至った経緯には,色々なケースがありますが,被害者の言動が原因で加害者が感情的になってしまったという傷害事件も多く見られます。

この点,被害者の言動が原因であるなど,加害者が暴行に及んだ経緯に事情が見られる場合には,これを踏まえて不起訴処分となることもあり得ます。経緯に事情がある,というだけで不起訴処分になることは考えにくいですが,その経緯の具体的内容や暴行の程度などを踏まえ,加害者に酌むべき事情があると評価される可能性は十分にあるでしょう。

不起訴の種類や得られる効果

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

傷害事件の示談に関する重要ポイント

傷害事件で示談は必要か

傷害事件では,円滑な解決のために示談が必要であると理解するのが適切です。

傷害事件とは,他人に暴行を加えた結果,傷害結果を負わせる事件を言います。殴ってケガをした,という場合はもちろん,大音量で睡眠障害に陥らせる場合なども含むもので,広く「他人の生理的機能に障害を与えること」があれば傷害罪に該当します。

そうすると,傷害事件の場合,必ず相手になる被害者が存在し,被害者には何らかの具体的なダメージが生じているということになります。そして,傷害事件に対する処分は,被害者に対するダメージがどの程度のものか,加害者がダメージをどのくらい補填したのか,していないのか,といった点が考慮されるものとなります。

この点,加害者が被害者のダメージを補填する最も有効な手段が,示談です。示談金の支払で経済的に被害者の損害を埋め合わせるとともに,その内容を被害者も納得(合意)しているとなれば,被害者のダメージは大部分が補填されたという理解になることが一般的でしょう。

そのため,傷害事件の処分は,示談が直接の影響を大きく及ぼす性質のものであり,傷害事件では示談が必要と理解するべきところです。

ポイント
傷害事件は被害者に具体的な損害が生じている
加害者が損害を補填したかどうかが処分に大きく影響する
損害を補填する最も有効な手段が示談

傷害事件における示談のメリット

①逮捕を防ぐことができる

傷害事件は,逮捕されることが比較的多い事件類型です。傷害事件は,当事者間に強い感情的な対立があるか,加害者が一方的に被害者への強い感情を抱いているか,という経緯で起きることが通常ですが,そのような状況を放置すると,トラブルが再発したり深刻化したりする恐れが大きいと考えられます。
そのため,当事者を物理的に引き離し,二次被害を防ぎながら捜査をする,という方針が取られやすいのです。
逮捕された場合,最大72時間の身柄拘束の後,勾留が決定されればさらに10日間,勾留延長となれば加えて最大10日間という,長期間の身柄拘束も懸念されます。20日を超える身柄拘束となれば,日常生活への影響は避けられません。

逮捕から起訴までの流れ

この点,示談が成立した傷害事件で逮捕を行うことは通常考えにくいということができます。示談が成立している以上,当事者を物理的に引き離さなくてもトラブルが再発したり深刻化したりする可能性がないためです。

傷害事件が逮捕の恐れもある事件類型であることを踏まえ,早期の示談を試みることが有益でしょう。

②刑事裁判を防ぐことができる

傷害事件の場合,犯罪の立証ができないケースを除いて,基本的に起訴することが通常です。被害者に暴行し,傷害結果を負わせた以上,その責任を刑罰という形で取らせる運用が一般的とされます。
起訴されてしまうと,刑事裁判を受け,無罪にならない限り裁判所から刑罰を受けることになります。こうなれば,前科(=刑罰を受けた経歴)が付くことは避けられません。前科に伴う数々の不利益が,その後の生活に悪影響を及ぼす可能性も高くなってしまいます。

この点,傷害事件で示談が成立した場合,刑事裁判には至らない方が多数です。傷害事件は,特定の被害者に対する事件であるため,その被害者が刑事裁判を希望しない以上,刑事裁判を行う必要がない,との判断になりやすいのです。

刑事裁判を受けるのは,その手続に応じる負担自体も決して軽くはないため,刑事裁判を防げることのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

③金銭問題が解決できる

傷害事件が起きた当事者間では,刑罰の問題と同時に金銭問題も発生します。被害者に具体的な傷害結果が生じている以上,治療費もかかりますし,精神的苦痛に対する慰謝料も想定されるところです。
そして,この金銭問題は,加害者が刑罰を受けたとしても解決するものではありません。刑罰の問題(刑事事件)と金銭問題(民事事件)は独立した別々のものであるため,刑罰を受けた上で,さらに金銭を請求されるという可能性も十分に存在します。

この点,傷害事件の示談は,傷害事件によって被害者が受けた損害についての金銭的解決もあわせて行う内容になります。示談を取り交わした後には,互いに金銭を請求しない(請求する権利がない),という合意をするため,示談後に被害者から金銭請求を受ける可能性がなくなるのです。

傷害事件では,金銭問題が必ずついてくるため,示談によって金銭問題も同時に解決できることは大きなメリットでしょう。

ポイント 示談のメリット

傷害事件は逮捕の恐れが小さくない
→示談をすれば逮捕を防げる

傷害事件は基本的に起訴される
→示談すれば起訴を回避でき,刑事裁判を防げる

傷害事件では金銭問題が同時に生じる
→示談によって金銭問題を含めた解決ができる

傷害事件で示談をする方法

傷害事件で示談を試みる場合,まずは弁護士に依頼することが必要です。示談は,自分で直接行うのではなく,代理人となる弁護士を窓口にして行うことになります。
一応,両当事者が了承すれば,当事者間で直接示談交渉を行うことも不可能ではありません。しかし,傷害事件では被害者側が加害者と直接示談交渉したいと希望するとは考え難く,当事者が直接交渉を行うのはトラブルの原因になりかねないので,当事者間の直接交渉は基本的には不適切と考えるのが合理的でしょう。

弁護士が依頼を受けた場合,警察や検察の捜査担当者に問い合わせ,示談を希望したい旨を被害者に伝えてもらうよう依頼します。捜査担当者が被害者の意思を確認し,被害者が了承すれば,連絡先を交換するなどして直接のやり取りに移行することが可能となります。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

なお,捜査機関が間を取り持つのは,加害者が弁護士に依頼し,弁護士から動きを取った場合のみです。捜査機関は,トラブル回避のため当事者同士を引き合わせることは拒否するので,その意味でも弁護士に依頼することが必要になります。

傷害事件の示談金相場

傷害事件の示談金は,暴行の具体的な内容や被害者に生じた傷害結果などによって大きく左右されます。
そのため,具体的な金額水準は個別のケースによりますが,最も代表的である「素手素足の暴行により加療2週間程度の打撲を負わせた」というような例では,20~30万円程度が有力な目安になりやすいでしょう。

ただし,これはあくまで暴行の内容や傷害結果を限定した場合の目安にとどまります。特に,重大な傷害結果が生じてしまった場合は,百万円単位の示談金が発生することも考えられるため,個別事件における金額の目安は弁護士に相談することお勧めします。

一般に,示談金額を左右する事情としては,以下のような点が挙げられます。

示談金額を左右する事情

1.暴行の内容
→凶器を用いている場合,身体生命の危険が大きな暴行の場合には,高額になりやすい

2.傷害結果
→傷害が重い場合や,後遺障害が残る場合には,高額になりやすい

3.被害者の業務への影響
→被害者の収入額に直接の影響が生じている場合,その分高額になりやすい

傷害事件における自首の考え方

傷害事件で自首をするべき場合

①被害者が重傷を負っている場合

自首を検討するべき場合の代表例は,事件が重大で刑事責任が重く評価されやすいケースです。自首は,逮捕や起訴の回避を目指す手段として有効なものですが,事件が重大であって刑事責任が重い場合は,特に逮捕や起訴の恐れが大きい傾向にあります。そのため,被害者が重傷を負っている傷害事件では,刑事責任が重く,自首を検討するメリットが類型的に大きいと言えるでしょう。

また,傷害事件の捜査は,基本的に被害者が捜査機関に相談等したことをきっかけに開始されます。逆に,被害者が声を上げなければ,捜査が始まるきっかけも生じないことになります。
この点,被害者が重傷を負った傷害事件の場合,被害者が事後に何のアクションも取らないことは考えにくいところです。そのため,捜査が開始される可能性が非常に高く,自首の検討が必要になりやすいでしょう。

ポイント
刑事責任が重く,逮捕や起訴の恐れが大きい
被害者が捜査を求める可能性が高い

②加害者を特定する証拠が十分にある場合

自首は,自分が加害者であると特定される可能性が高い場合に,先手を打つ形で行うことが非常に有益です。なぜなら,自首をしてもしなくても加害者が特定される状況であれば,先に自首をしても不利益がない一方,自首せずに捜査を受ける場合と比較して大きなメリットが期待できるからです。不利益がなくメリットが大きいのであれば,積極的に検討するべきことは間違いありません。

そのため,事件の加害者を特定する証拠が十分にあると思われるケースでは,積極的な自首の検討が有力です。傷害事件で生じやすい証拠としては,被害者側の記憶(特に被害者が知人である場合),目撃者,公共の場所における防犯映像などが挙げられます。

ポイント
先手を打って自首をしても不利益がなく,大きな効果が期待できるケースに当たる

③周囲への発覚を防ぎたい場合

自首をすることで,刑事事件の捜査は被疑者(=加害者)に配慮した方法で行われることになりやすいです。例えば,突然制服を着た複数の警察官が訪れたり,逮捕や捜索などの強制的な捜査が行われたりといった,周囲に事件の存在が知られるような方法はできるだけ回避してくれるケースが多い傾向にあります。
これは,自首をした被疑者であれば,穏やかな方法であっても捜査協力が期待できるため,周囲への発覚を防ぎたいという被疑者の希望に配慮した動きです。

逆に,周囲への発覚を防ぎたい,という希望が非常に大きい場合には,捜査機関の配慮を期待する意味も含めて自首を行うことが有力な手段と言えます。自首に込めた誠意や協力姿勢が伝われば,いたずらに周囲へ知られるような動きは控えてくれることが多いでしょう。

ポイント
自首した事件の捜査は,加害者に配慮した方法で行われやすい

④当事者間での示談交渉が困難な場合

傷害事件は,当事者間で解決すればその後に捜査が開始されることは通常ありません。そのため,当事者間で示談などをし,円満な解決に至れば,その後に捜査が始まることを考える必要はなく,捜査に備えた自首を検討する必要もないと言えるでしょう。
裏を返せば,当事者間での示談交渉が困難なケースでは,いつ被害者が捜査機関に被害申告をして捜査が始まることになるのか分からない,非常に不安定な状況にならざるを得ません。

そのため,当事者間で示談交渉ができる状況になく,不安定な状況を少しでも早く脱する必要がある場合には,自首の検討が有力です。適切に自首ができれば,刑事事件の進捗や見通しが分からない,という事態を避けることができるでしょう。

ポイント
当事者間で解決できれば自首は不要
示談交渉困難で不安定な状況にある場合,自首の検討が有力

傷害事件の自首は弁護士に依頼すべきか

傷害事件の自首について検討する際や,実際に自首を進める際には,弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら行うことが適切です。弁護士への依頼によって,以下のようなメリットが見込まれます。

①逮捕の可能性が低くなる

自首は,逮捕を防ぐことが大きな目的の一つですが,弁護士に依頼し,適切な方法で自首を進めることによって,逮捕の可能性はより低くなることが期待できます。弁護士に依頼した場合,弁護士が窓口となって捜査機関とやり取りすることで,自首の趣旨や申告したい犯罪事実を正しく把握してもらうことができるため,自首が円滑になり,その効果も十分に生じることが見込まれるでしょう。

自首は大きなリスクを背負った重大な行動であり,その効果を最大限にできる方法を取らないことは背負ったリスクに見合わない結果を招きかねません。そのため,自首を行う以上はできる限りの手段を尽くす,という発想を大切にすることをお勧めします。

②取調べへの備えができる

自首は,あくまで捜査の出発点であり,自首後には捜査機関による捜査が始まることとなります。そして,捜査が行われる際に主要な動きとなるのが取調べです。
一般的に,自首を行った場合には,出頭した当日又は次回の出頭時に,捜査機関担当者から取り調べを受けることが見込まれます。取調べは警察署内の密室などで行われ,弁護士など第三者の立ち会いはできないことが通常です。

そのため,取り調べが始まってから対処を検討することはできず,事前の備えが不可欠ですが,弁護士に依頼することで,将来の取調べに対する備えもあわせて案内してもらうことが可能になります。
刑事手続や取調べの運用に精通した弁護士であれば,取調べの流れや取るべき対応や話すべき内容など,包括的なアドバイスをしてもらうことができるでしょう。事前に取調べの備えができれば,自首への不安も最小限に抑えられます。

③手続や処分の見込みが分かる

自首は,その後の手続の流れや処分見込みが分かっていれば格段に行いやすくなります。自首した後自分がどうなってしまうのか,自首するのとしないのとで刑事処分がどのように変わるのか,という点が全く分からないまま,闇雲に自首をするのは難しいですが,見通しが持てていれば,リスクの大きな自首も心理的負担小さく行うことが可能になるでしょう。

この点,弁護士に依頼して自首を進めれば,自首後の手続の流れについて案内を受けてもらいながら対応することが可能です。また,自首を踏まえた処分見込みを専門的な知識経験を踏まえてアドバイスしてもらえるため,希望する解決に向けた取り組みが容易になります。

④自首後の弁護活動が迅速にできる

傷害事件で自首を行った場合には,被害者との示談交渉など,その後の弁護活動を適切に行ってもらうことで,自首の効果がより高く発揮されます。自首の主な目的である逮捕回避や不起訴処分の獲得は,被害者との示談が成立することでより確実になり,希望した結果の実現に大きく近づくでしょう。

この点,自首の段階から弁護士に依頼し,弁護士と協同する体制を設けておくことで,自首後の弁護活動を速やかに始めることができます。また,加害者が自首をした事実は,被害者の感情面にもプラスの影響を及ぼしやすく,示談成立の可能性は自首のないケースよりも高くなりやすいでしょう。

傷害事件で自首をする場合の注意点

①自首が相手方の意向に反する可能性

自首は,加害者が自分の判断で警察等の捜査を求める行動です。そのため,被害者の意向を確認することなく捜査が開始され,その後に捜査機関が被害者へ捜査協力を求める可能性もあります。

この点,自首による捜査の開始が被害者側の意向に反してしまう可能性があることは,事前に十分留意しておくのが適切でしょう。
被害者が特に捜査機関への相談などを行っていない場合,被害者は捜査機関の関与を希望していない可能性があります。その理由は,対応が面倒である,当事者間での解決を希望しているなど様々ですが,自首が被害者の意向に反している場合,自首が適切な動きではなかった,という結論になり得るでしょう。

②時期が遅れると自首が成立しない

自首は,捜査機関にとって犯罪事実か犯人の両方が発覚している状況では成立しません。そのため,被害者の申出をきっかけに捜査が開始され,犯罪事実と犯人が特定された後では,自ら警察への出頭を試みても法的には自首と評価されず,自首のメリットを十分に得られない可能性があります。

傷害事件の場合,被害者が警察に被害申告をする可能性が比較的高く,犯人を特定する証拠が得られやすいケースも少なくないため,検討に長期間をかけてしまっていると,自首ができない状態に陥ってしまう恐れがあります。
自首の検討は,できるだけ早期に行うことをお勧めします。

③自首すれば不起訴になるわけではない

自首の大きな目的の一つは不起訴処分です。刑事事件は,捜査を遂げた検察によって起訴又は不起訴の処分がなされますが,起訴されれば前科がつき,不起訴となれば前科が付かないため,極めて大きな分岐点になります。

この点,自首によって不起訴処分の可能性が高くなることは間違いありませんが,自首をすれば直ちに不起訴になる,というものではない点には注意が必要です。自首は,不起訴の判断を促す事情の一つに過ぎず,自首しても起訴され前科が付く可能性はあります。
特に,事件の重大性が著しいケースでは,自首という事情があっても事件の重大性の方が重く評価され,不起訴処分が逃れられない場合が多くなりやすいでしょう。

傷害事件で不起訴を目指す場合の注意点

①示談の位置づけ

傷害事件で不起訴を目指す場合には,複数の手段や方針があり得ますが,犯罪事実を争わない認め事件の場合には,示談の重要度が特に高いという点に注意しておくことが望ましいでしょう。
反省している,初犯である,といった事情も,刑罰を軽減する方向で考慮されるポイントではありますが,その影響力は示談には遠く及びません。初犯で反省している,というだけで不起訴になる傷害事件は多くありませんが,示談が成立したというだけで不起訴になる傷害事件は非常に多く見られるところです。

認め事件の場合には,示談と他のポイントとでは重要度が全く違う可能性が高いため,その点をあらかじめ踏まえた上で方針を検討することが望ましいでしょう。

②不起訴と金銭賠償の関係

不起訴処分となった場合,その段階で捜査が終わり,事件が裁判所で裁かれることもないため,刑事手続は直ちに終了します。もっとも,不起訴処分になったからと言って金銭賠償が必要なくなるわけではない,という点には注意が必要です。

犯罪に対する捜査や刑罰の問題を「刑事事件」,当事者間の法律関係に関する問題を「民事事件」と言いますが,不起訴処分によって終了するのは刑事事件の面のみです。当事者間の法律関係が不起訴処分によってなくなるわけではないため,不起訴処分の後でも,被害者から金銭の支払いを求められるなど,民事事件の面で対応をしなければならない可能性はあり得ます。

なお,被害者との間で示談を行う場合,基本的には民事事件の面も解決した,という形を取ることになります。もっとも,示談によって民事事件の面も解決できるかは,示談の内容によるため,弁護士に依頼の上で適切な内容の示談を取り付けてもらうのが望ましいでしょう。

③否認事件における相手方の言い分

傷害事件は,当事者間で主張の内容が隔たっていることの多い事件類型です。互いの主張が矛盾していて,何が真実であるかが分からない,という場合が多く見られるのも,傷害事件の特徴の一つです。

特に,否認事件の場合にはこの特徴が顕著に見られます。互いが何をしたのか,されたのか,という点について,当事者間の言い分が真っ向から対立してしまうことは珍しくないため,その可能性にはあらかじめ注意することが望ましいでしょう。

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【傷害事件の弁護士選び】判断基準や必要な準備,注意点などを詳細解説

このページでは,傷害事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

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傷害事件で弁護士を選ぶタイミング

①呼び出しを受けたとき

傷害事件の捜査を受ける場合には,警察から電話などで呼び出しを受け,それに応じて警察に出頭する形で始まることが多く見られます。これは,被疑者として取り調べを行い,事件に関する事実関係を把握する目的であることが通常です。

そのため,呼び出しを受けた際には,その後に行われるであろう取り調べを想定し,取り調べへの対応を十分に検討しておくことが必要です。どのような質問をされるか,どのような方針で,内容で回答すべきか,といった点は,事前に整理しておくのが適切なポイントと言えます。
しかしながら,出頭後の取り調べに対する備えを自分で整理することは容易ではありません。刑事事件に接した経験がなければ,取り調べの状況をイメージすることすら困難なことでしょう。

そこで,呼び出しを受けた際には,そのタイミングで弁護士選びを行い,取り調べの備えを万全にしておくことが有益です。適切な弁護士選びができれば,その後の手続の見通しもクリアにできるほか,具体的な弁護活動に関する案内や助言を受けることもできるでしょう。

ポイント
呼び出しは,被疑者として取り調べをする目的であることが通常
取り調べの適切な準備には,弁護士選びが必要

②逮捕されたとき

傷害事件は,逮捕されることも十分にあり得る事件類型です。特に,事件発生直後のトラブルから被害者を保護する必要があるなど,緊急性の高い状況では,速やかに現行犯逮捕されてしまうことも決して珍しくありません。

もっとも,逮捕されたとしてもそれで手続の行方が決まるわけではありません。逮捕はあくまで捜査の出発点であり,その後に身柄拘束を続けるかどうかは別の問題であるためです。逮捕後に適切な対応を尽くすことができれば,早期釈放となり,生活への影響を最小限に抑えられるケースも多くあります。

しかしながら,逮捕後に早期釈放を求める動きは,現実的には弁護士なしではできないのが通常です。逮捕直後の段階では,原則として被疑者と接見できる人が弁護士だけである上,具体的にどのような手立てで早期釈放を目指すかは,手続に精通した弁護士以外には判断が困難であるためです。
そのため,逮捕直後は弁護士選びが非常に重要な局面と言えるでしょう。この段階での弁護士選びは,時間的猶予の少ないことが多いですが,安易に妥協した選択をすることなく,後悔のない弁護士選びを強くお勧めします。

ポイント
傷害事件では,逮捕後の早期釈放が可能なケースもあり得る
弁護士選びの時間的猶予は少ないことが多い

③示談を試みるとき

傷害事件は,示談の有無が刑事処分の結果に直接影響しやすい事件類型です。そのため,傷害事件について十分な対応をしたいと考える場合,示談を避けて通ることはできません。
裏を返せば,示談が成立し,当事者間での解決さえできれば,それ以外の条件を要することなく傷害事件が解決を見るケースも非常に多いところです。否認事件の場合を除き,傷害事件ではできる限り示談を目指すことが望ましいと言えます。

この点,示談交渉には弁護士の存在が不可欠です。示談を試みる一般的な方法は,弁護士を介して捜査機関に連絡し,被害者と弁護士との間で連絡が取り合えるか,被害者の意向を確認することから始まるのが一般的な流れとなります。

示談交渉の流れ

そして,示談の成否やその内容は,担当する弁護士によって様々に変わりやすいものです。示談における合意内容は当事者間の自由であり,無数の選択肢があるため,示談交渉の巧拙が示談の内容に直結することも珍しくありません。
そのため,示談を試みたいときには示談に精通した適任の弁護士を選ぶ必要があるでしょう。

ポイント
傷害事件の結果は,示談の有無で大きく変わる
示談の成否やその内容は,弁護士によって様々に変わる

④起訴されたとき

傷害事件が起訴され,公開の法廷での裁判(公判)を受けることになった際には,速やかな弁護士選びが適切です。

公判は,法廷で提出される証拠や当事者の発言などを踏まえて,裁判所が判決を決めるための手続となります。そのため,どのような証拠を提出すべきか,どのような発言をすべきか,といったことを事前に検討し,綿密な準備を行うことが適切です。
また,提出すべき証拠をどのように収集(又は作成)するか,といった検討も要するため,結果や見込みから逆算して適切な用意を進められる弁護士の存在が不可欠と言えるでしょう。

また,身柄拘束されたまま起訴された場合には,保釈という手続で釈放してもらうことも要検討のポイントですが,保釈を進める際にも弁護士の存在が必要となります。法律上の手続から釈放後の動きまで,適切な案内のできる弁護士を選ぶことができるかは,保釈に大きな影響を及ぼします。

ポイント
公判の準備には,適切な準備のできる弁護士が不可欠
身柄拘束されている場合には,保釈の対応をしてもらうことも必要

傷害事件の弁護士を選ぶ基準

①傷害事件の示談に精通しているか

傷害事件では,弁護士を通じて試みる示談の結果や内容が,その後を大きく左右することになります。そのため,弁護士選びに際しては,示談への影響を重視しないわけにはいきません。

この点,傷害事件の示談は,他の事件類型にはない特徴が複数あります。代表的な特徴の一つが,「当事者相互の主張に隔たりが大きくなりやすい」という点です。
起きた出来事の内容一つを取っても,同じトラブルの話をしているとは思えないほど当事者間の言い分に開きがあることは少なくありません。特にケンカのような態様で起きた傷害事件は,互いに感情的になって視野が狭くなっているケースも多く,話が大きく食い違うことになりやすいものです。

このような傷害事件の特徴は,示談の条件に大きな影響を及ぼします。特に,いわゆる示談金の金額については,どちらの言い分を基準に検討するかによってその水準が変わりやすい上,被害者側からは感情を乗せた高額の請求がなされやすくもなるでしょう。
そのようなポイントを事前に踏まえて示談に臨めるか,想定不十分なまま行き当たりばったりの対応に終始するかは,示談交渉を行う個々の弁護士によって大きく異なるでしょう。

②解決実績があるか

刑事事件は,過去の先例に沿った判断や運用をされることが一般的です。裁判所は,過去の先例と整合した取り扱いをすることで,公平を保ちながら適切に法律を運用する機関であるためです。

そうすると,先例を把握していること,過去に同種の事件を解決した実績があることは,事件の見通しを正確に持つ上で非常に重要な要素となります。弁護士が依頼者側に案内する見通しのほとんどは,過去の経験か過去の裁判例を根拠にしたものです。特に,同種事件を解決した実績があることは,より具体的で正確な判断をするために極めて重要な材料と言えます。

そのため,弁護士選びに際しては,その弁護士が同種事件の解決実績を持っているかどうか,という点を基準にすることが有力でしょう。

③迅速な対応ができるか

傷害事件の弁護活動は,迅速さを要する場合が少なくありません。身柄事件で釈放を目指す場合はその代表例ですが,他にも早期の示談を試みるべき場合や証拠の確保に努めるべき場合など,対応の迅速さが大きな影響を及ぼす局面が多く見られやすい傾向にあります。
弁護士の業務の中でも,多くの場面で迅速さが求められるのは刑事事件の特徴の一つと言えるでしょう。

一方で,弁護士がいつどのような対応をしてくれるかは,個々の弁護士のやり方により様々です。刑事事件のスピード感に合わせた迅速な対応のできる弁護士であれば問題ありませんが,万一弁護活動がタイミングを逃したものになってしまうと決定的な悪影響につながる可能性も生じます。

弁護士の活動に迅速さが期待できるかどうかは,重要な弁護士選びの基準とされることをお勧めします。

④聴き取り能力は十分か

傷害事件は,その経緯や実際になされた行為などを具体的に把握した上で,個別の事情を踏まえた解決方針を立てる必要があります。また,示談交渉を試みる際には,当事者間で言い分の食い違いが大きくなりやすいことを踏まえ,双方から十分な聴き取りを行い,言い分の相違点を正しく理解しなければ,円滑な協議が難しくなります。示談交渉においては,被害者側の感情面に配慮する趣旨でも,弁護士が被害者の話を冷静に聴き取り,その主張に耳を傾けられるかは,大きな意味を持つことが多いでしょう。

そのため,弁護士選びの際には,その弁護士の聴き取り能力を十分に確認することが適切です。あわせて,示談交渉を依頼する際には,聴き取りを行う弁護士が相手に与える印象も判断材料の一つとすることが有益でしょう。

傷害事件で弁護士を選ぶ必要

①示談交渉のため

傷害事件において,極めて重要であるものの弁護士がいなければ難しい動きの代表例は,やはり示談交渉です。示談が成立すれば,事実上は直ちに解決できると言える事件も非常に多いため,示談交渉は傷害事件に対する弁護活動の中核となりやすいものと言えます。

傷害事件のように,当事者間で直接連絡を取ったり交渉をしたりすることが適切でない事件では,弁護士がいなければ示談交渉に着手すること自体ができません。示談を目指すスタートラインに立つことも,示談を無事ゴールに到達させることも,弁護士選びなしでは困難でしょう。

②早期釈放のため

逮捕された傷害事件では,早期釈放を目指すことで,身柄拘束の期間を最小限に抑えられる可能性があり得ます。もちろん,現実に早期釈放ができるかは,個別の事件の内容や,釈放を促すことのできる材料の有無にもより異なりますが,早期釈放を目指す動きを取ることができるのは,現実的には弁護士のみです。
その意味では,弁護士がいれば早期釈放できるとは限らないものの,早期釈放を積極的に試みることができるのは弁護士がいる場合に限られる,ということができるでしょう。

なお,早期釈放を目指す手段はいくつかありますが,その中には時期が遅れると試みる余地のない手段もあります。早期釈放を目指すための弁護士選びは,時間との勝負にもなることに注意が望ましいでしょう。

③不起訴処分のため

不起訴処分を実現するための具体的な方法は,個別の事件によって異なります。特に,認め事件と否認事件とでは大きな差異があり,否認事件の中でも争点次第で様々に枝分かれするものです。

もっとも,特定の事件で不起訴処分を目指す方法を正しく決めるのは,弁護士以外には困難なことです。法的な知識や経験が必要となる上,必要となる証拠の有無や収集方法にも考えを巡らせることが不可欠であるため,当事者自身での判断は難しく,非常に危険とも言えるでしょう。
また,不起訴処分のための動きを実際に行うに当たっても,弁護士選びが必要です。弁護士を通じて行うことが多数あるため,適切な動きを取ってくれる弁護士を選ぶことが非常に重要となるでしょう。

傷害事件における弁護士選びの準備

①経緯をまとめる

弁護士選びの際には,弁護士への法律相談が必要ですが,法律相談の中で弁護士から適切な案内を受けるためには,その弁護士に事件の内容を正しく把握してもらうことが重要となります。
特に,傷害事件の場合,行ってしまった(又は疑われている)行為そのものだけでなく,その結果に至るまでの経緯も,大切な判断材料となることが少なくありません。何の前触れもなく突然に傷害事件が発生することは考えにくいため,何らかのきっかけがあるケースがほとんどですが,そのきっかけがどのようなものか,という点が結論に影響を及ぼし得ます。

弁護士が事件の内容の一部を把握しているかいないかで,アドバイスの内容が大きく変わる場合も否定できません。弁護士に誤解が生じることを防ぐため,起きた出来事を漏れなく伝える用意をしておくとよいでしょう。

②解消したい悩みをまとめる

弁護士選びをしているということは,弁護士選びによって解決したい何らかの悩みや迷いがあるはずです。「弁護士に依頼するような事件なのか」「弁護士に依頼することで何かが変わるのか」「弁護士が変わると結果も変わるのか」「経済的に不安である」など,具体的な悩みの内容は,人により様々です。場合によっては,「何に迷うべきかも分からない」ということすらあり得るでしょう。

弁護士選びは,抱えている悩みや迷いの解消に最も適した弁護士を選ぶことが重要です。「悩みを解消してくれそう」という信頼感があるかないかだけでも,その後の動きに大きな影響を及ぼすでしょう。
そのため,弁護士選びに際しては,自分が弁護士選びによって解消したいと考えている悩みを,できる限り整理して,弁護士に言葉で伝えられるようにすることをお勧めします。

③依頼時の予算を決める

弁護士への依頼には費用が発生しますが,弁護士費用は法律事務所によって異なり,同じ弁護士への依頼でも依頼内容によって異なります。当然ながら,弁護士への依頼内容が多いほど弁護士費用は高額になりやすく,逆もまた然りです。
また,示談を試みる場合には,弁護士費用に加えて示談金が経済的な負担となります。弁護士費用だけを支払えても,示談金が支払えないと示談はできないため,示談金の負担も事前の想定が必要です。

そのため,弁護士選びに際しては,あらかじめ予算の範囲を明確に決めておくのが有益でしょう。現在は,ホームページ上で詳細に弁護士費用を明示している法律事務所も少なくないため,ご自身なりに費用負担のイメージを持って弁護士選びを行うのも有力です。
また,現実の弁護士費用と予算との開きが限定的であれば,弁護士への依頼内容を一部削るなど,柔軟な依頼方法で開きを埋めることができる場合もあり得ます。個別のケースに関しては弁護士と十分に相談してみましょう。

④早期に相談する

弁護活動の内容が同じでも,その時期が早いか遅いかによって,結果が変わってしまうことは珍しくありません。基本的に全ての弁護活動において,早い方が遅いよりも有益な結果に至りやすいものです。
示談一つを取っても,事件直後に謝罪の意思を示すのか,数か月経過した後に初めて謝罪の意思を示すのかは,被害者側への影響に大きな違いが生まれるでしょう。

そのため,事件解決に当たっては,できるだけ早い段階で弁護士選びを行うことをお勧めします。早期に動き出せば,弁護士にできることがそれだけ多く残っている可能性も高くなり,希望する解決に近づきやすくなるでしょう。

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暴行事件で自首する場合の適切な方法は?自首が必要かはどうやって判断すべきか?

このページでは,暴行事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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暴行事件で自首をするべき場合

①現場から逃走してしまった場合

暴行事件が現行犯で問題となった際に,現場から逃亡する方法でその場を逃れた場合には,自首の検討が有力な状況と言えます。

現場から逃走した場合には,その後に被害者が警察に被害申告する可能性が非常に高くなります。そして,被害申告を受けた警察としては,加害者が現場から逃走してしまったという事実を踏まえ,再び逃亡される危険を防ぐために,加害者を特定次第逮捕することが有力な選択肢となります。
そのため,逮捕を防ぐためには,逃亡の可能性がない,ということを捜査機関に理解してもらう必要があり,逃亡しないとのメッセージを明確に発信する具体的な手段が自首です。

逆に,現場から逃走してしまった状況下では,自首以外の手段で逮捕を防ぐ積極的な動きを取ることは難しい場合が多数です。このケースでは,自首の効果が特に高いということができるでしょう。

ポイント
加害者が現場から逃走した場合,捜査機関にとって逮捕が有力な選択肢になる
逮捕の必要がないことを理解してもらうには,自首が有力な行動

②相手と音信不通になった場合

暴行事件の場合,当事者間で円満な解決ができれば,自首までは必要のないことが通常です。自首の主な目的は,逮捕や刑罰を回避する点にありますが,当事者間で解決ができた場合にはそれのみで逮捕や刑罰が防げることが一般的であるため,重ねて自首を行う必要まではないと言えます。
そのため,当事者間が元々知人などの間柄であったり,共通の知人がいて橋渡し役になってくれたりと,当事者間の解決ができる状況にある場合は,まず示談などの円満な解決を目指すことが適切でしょう。

一方,当事者間で円満解決する手段がない場合には,自首が有力な行動になります。特に,ある時期までは連絡が取り合えていたにもかかわらず,急に音信不通になってしまった,という場合には,相手が円満な解決を諦めて捜査機関に捜査を求める方針を取ることとした可能性が高い状況であるため,捜査が行われる前に先手を打って自首することで,不利益を最小限に抑える方針が有力と言えるでしょう。

ポイント
当事者間で解決ができれば,自首までは必要のないことが通常
相手と音信不通になった場合,当事者間での解決が期待できないため自首が有力

③継続的なトラブルである場合

当事者間に継続的なトラブルが生じており,その一部が暴行事件という形で現れたという場合,警察の捜査に際しては,トラブルの深刻化を防ぐための慎重な判断が必要になります。
特に,暴行事件の発生までは互いに暴力を振るうまでは至っていなかった,という場合,暴行事件を皮切りに互いの暴力的行為がエスカレートしてしまう可能性が懸念されるため,逮捕の必要性が高い,との評価につながりやすい傾向にあります。

そのため,当事者間のトラブルが継続的にある場合には,暴行事件を過小評価することなく,将来の捜査に備えた自首の検討が有力です。
また,自首をした場合には,その後にトラブルが起きないことも非常に重要となります。被害者の立場になることは避けられませんが,自分が加害者と評価されかねないようなトラブルは決して引き起こさないように注意しましょう。

ポイント
暴行事件を皮切りにトラブルがエスカレートすると懸念されやすい
自首後にはトラブルを再発させないことも重要

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

暴行事件の自首は弁護士に依頼すべきか

暴行事件の自首を検討する場合には,必ず弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら進めることを強くお勧めします。また,実際に自首を行う場合にも,弁護士に依頼の上で,弁護士が主導する形で試みることが有益でしょう。

弁護士への依頼には,以下のようなメリットが見込まれます。

①犯罪に当たるかが判断できる

自首は,当然ながら犯罪行為をしてしまった際に行うべきものです。犯罪行為をしていないにもかかわらず自首をしようとすれば,その動き自体が無駄となるのみならず,より悪質な別の犯罪を隠そうとしているのではないか,などという疑いを持たれるきっかけにもなりかねません。
そのため,自首を検討する際には,自分の行為が犯罪に当たるかどうか,という点の正確な理解が必要不可欠と言えます。

この点,弁護士に依頼することで,自分の不安視している行動が犯罪に当たるか,弁護士に法的な判断をしてもらうことが可能です。特に,暴行罪は対象となる行為の幅が広く,犯罪に該当するかどうかの判断が容易でないものも多いため,検討の初期段階で法的な整理をしておくことは非常に有益でしょう。

②逮捕が回避しやすくなる

自首の最大の目的の一つが,逮捕の回避です。自首をしなければ逮捕される恐れがある場合,ケースや状況によっては自首が唯一の逮捕回避策となることも少なくありません。そのため,自首を行うのであれば,逮捕の回避につながる形で行うことが非常に重要となります。
しかしながら,自首のやり方を誤ってしまうと,せっかく自首をしたにもかかわらず逮捕を防ぐ効果が十分に発揮されない結果となる恐れもあり得ます。大きなリスクを背負った行為をする以上,その方法は万全にするのが適切です。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕回避の効果を最大限に高めるための進め方や対応の仕方を知ることができ,自首による逮捕回避がより見込みやすくなります。また,弁護士が捜査機関と協議を試みるなど,弁護士が別途逮捕を防ぐための弁護活動をしてくれるため,相乗効果も期待できるでしょう。

③自首後の弁護活動が迅速にできる

自首を行った後は,捜査が行われ,最終的な刑事処分を受けるまでの手続が進むことになります。そのため,自首をするのであれば,自首後の手続にも無関心でいるわけにはいきません。

この点,自首後の弁護活動も行ってもらう内容で弁護士に依頼すれば,自首をした後速やかに,必要な弁護活動を開始してもらうことができます。暴行事件の場合,被害者への対応など迅速に行うべき弁護活動も多いため,速やかに動き出せることのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

④早期釈放を目指すことができる

捜査機関の判断によっては,逮捕を回避できない場合も考えられますが,暴行事件の場合には,ケースによって逮捕後の早期釈放が十分に期待できる可能性も低くはありません。もっとも,積極的に法律上の不服申立てを行う必要があるなど,弁護士がいなければ早期釈放を目指す行動自体ができない恐れもあり得ます。

この点,弁護士に依頼しておくことで,万一逮捕されてしまった場合でも早期釈放を目指すための動きを尽くしてもらうことが可能です。逮捕されたケースであっても,最短で釈放してもらうことができれば,日常生活への悪影響は最小限に抑えられるでしょう。

暴行事件で自首をする場合の注意点

①早期に行う必要がある場合

自首は,捜査機関が「犯罪事実」と「犯人」の両方又は一方を把握していない場合にのみ成立する手続です。捜査機関にとって,犯罪事実も犯人も分かっている状況だと,自分から積極的に出頭しても自首と評価してもらえる可能性はありません。

暴行事件の場合,当事者同士が知り合いであるケースも少なくありませんが,そのように相手の個人情報を知っている間柄だと,捜査機関による「犯人」の特定が短期間で可能になります。極論すれば,被害者が捜査機関に被害申告をしたと同時に,犯人が誰であるかも分かることになるでしょう。

そうすると,暴行事件の自首は,被害者が警察等に相談するより前に,早期に行う必要がある場合も少なくない点に注意が必要です。自首の決断は容易ではありませんが,見えないタイムリミットが迫っている可能性にも気を付けておくことが望ましいと言えます。

②自首後に示談を試みるべき場合

自首をした場合,その後に示談を試みるべき場合は少なくありません。基本的に,被害者が誰であるか明らかな場合には,自首後速やかに示談を試みるのが適切でしょう。

自首の目的は,最終的には刑事処分を少しでも軽くすることであるのが通常です。そして,暴行事件で刑事処分が軽くなる最大の要因は,認め事件であれば被害者との解決(示談)であることがほとんどです。そうすると,刑事処分を軽くするための手段として自首をしておきながら,更に効果が見込まれる示談を試みないというのは,合理的な動き方とは言い難いでしょう。

自首をした暴行事件では,基本的に示談を試みるべきものだ,という理解をしても間違いないと考えます。

③捜査の初期段階であること

自首は,あくまで捜査の初期段階であり,自首をきっかけとして刑事手続がスタートすることになります。被疑者本人にとっては,自首が非常に大きな分岐点であり,心理的負担の大きな行動であることも確かですが,手続全体との関係ではスタートラインを切ったばかりです。

そのため,自首をした場合には,その後に刑事手続が始まる初期段階であることに十分注意の上,自首に満足したり,自首後の対応を疎かにしたりすることのないよう,真摯な対応を続けるようにしましょう。自首の効果が十分に発揮されるかどうかは,その後の動き方にもかかっています。

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【暴行事件での呼び出し】逮捕を防ぐ方法や出頭時の正しい対応方法などを詳細解説

このページでは,暴行事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
暴行事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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暴行事件で呼び出された場合の対応法

①基本的な方針

暴行事件で呼び出しを受けた場合,まずは呼び出しに応じることを前提に対応するようにしましょう。内容や言い分によっては,呼び出しに応じることが割に合わない,または納得できないといった思いになることは十分に考えられると思います。しかしながら,呼び出し自体に一切応じないとのスタンスは,かえって自分に不利益をもたらす可能性があって適切とは言えません。

言い分がある場合には,呼び出しに応じた上で,出頭した際に述べることが最も適切です。もっとも,呼び出しに応じるタイミングを捜査機関の希望に合わせる必要まではありません。自身のスケジュールと調整できる範囲内で,まずは呼び出しに応じることを方針の第一歩としましょう。

ポイント
呼び出し自体には応じる方が賢明
言い分は出頭した際に述べる

②内容に反論がない場合

疑いの内容に間違いがなく,反論すべき内容がない場合には,まず反省の意思を前面に示し,捜査協力のスタンスを明確にすることが適切です。

内容面に争いがないケースでは,反省状況等の情状面がその後の進行や結果を大きく左右します。その中でも,呼び出しを受けた段階で行うことのできる情状面の行動が,反省と捜査協力の意思表明です。呼び出しを受けたその時から反省の意思を示すとともに,取り調べなどの捜査を全面的に受け入れる姿勢を見せるのが,初期段階で可能な最善の対応と言えるでしょう。

また,呼び出しに応じて出頭した際には,事実をありのままに述べ,捜査機関の把握している事実関係とズレのない話を尽くすことも重要です。捜査機関の認識と整合する内容の話を一貫できれば,捜査が円滑に進行する上,反省の意思を表明する手段の一つにすることもできるでしょう。

ポイント
反省の意思と捜査協力のスタンスを示す
事実をありのまま述べ,捜査機関の認識と整合する話を尽くす

③していない行為を疑われている場合

自分がしていない行為を疑われているケースでは,まずその事実を明確に表明することを優先しましょう。刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,その後の捜査が大きく変わるため,本件は否認事件である,という事実を正しく把握してもらうことが第一歩となります。

認め事件とは異なり,否認事件の場合には,被疑者の自白なしで犯罪の立証をしなければなりません。被疑者の自白がある認め事件では,自白を裏付ける証拠や自白と整合する証拠が重要な位置づけとなりますが,否認事件ではそもそも自白がないため,自白以外の証拠のみで犯罪を立証するほかないのです。
また,被疑者が「実際はこうであった」と別の事実を主張している場合,被疑者の主張が真実でないとの確信に至らなければ,犯罪の立証には至りません。否認事件では,証拠の量及び質の両面で,犯罪の立証が容易でないと言えます。

してもいない行為を疑われて呼び出しを受けた場合には,否認の意思をはっきりさせることで,「本件の立証は容易ではない」と捜査機関に認識してもらうことが適切でしょう。

ポイント
否認事件は,犯罪の立証が容易でない
否認事件であることを早期に把握してもらうことが適切

④経緯に言い分がある場合

事件の内容そのものには争いがないが,事件の経緯に言い分がある,という場合,その言い分を伝える時期や方法・内容は慎重に検討することが望ましいでしょう。

経緯に言い分がある事件は,認め事件か否認事件かで言えば認め事件に該当します。認め事件である以上は,反省状況が重要なポイントとなることには変わりありません。
一方で,経緯に関する言い分は,表現を誤ると「反省がない」との評価につながってしまう恐れがあります。自分にとって有益と思う主張をしたにもかかわらず,その結果が自分にとって不利益となってしまうのは不合理と言わざるを得ないでしょう。

経緯に言い分がある事件で呼び出しを受けた場合には,まず認め事件であることを前提に反省の意思を示す方針を優先すべきです。経緯を伝える機会や方法はそれ以降にも複数あるため,呼び出しを受けた段階で強引に伝えようとする必要はありません。

ポイント
経緯の言い分を述べようとするあまり,反省がないとの評価を受けるのは不合理
まずは事件を認め,反省の意思を表明することを優先すべき

暴行事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①現行犯で取り締まりを行った後

現行犯で取り締まりを受けた場合には,その後に改めて呼び出し,話を聞いたり供述調書を作成したりすることが考えられます。

この場合の呼び出しは,現行犯で取り締まりをしてからそれほど期間を空けずに行われることが一般的です。捜査機関のスケジュールにもよりますが,現行犯での取り締まり後1週間~1か月程度の間には行われることが多いでしょう。

②被害届が提出された後

被害者から被害届が提出されると,警察は捜査を開始することになるため,被害届の提出後には,捜査の一環として呼び出しを受けることが考えられます。

呼び出しの時期は,被害者にとって加害者が特定できているかどうかによって大きく異なりやすいところです。被害者が加害者を特定できている場合には,被害届の提出後,間もないタイミングで呼び出されることが多いでしょう。被害者にとって加害者が特定できない場合は,加害者の特定が必要となるため,呼び出しの時期は捜査の進捗によるところです。

③写真撮影や指紋採取のため

警察における捜査の一環として,写真撮影や指紋採取,DNA型鑑定のための検体採取などが広く行われています。これらの個人情報は,将来の別件での捜査に用いることなどを想定し,捜査機関内部で保管することが想定されているものです。

そのため,呼び出しを受ける際には,これらの写真撮影や指紋採取等の目的であることも考えられるでしょう。このような呼び出しは,警察での捜査が終了する際に行われることが多く見られます。一通りの取調べ等が終了した後であることが一般的でしょう。

暴行事件の呼び出しに応じたときの注意点

①冷静な対処を心掛ける

暴行事件の場合,まずはとにかく冷静な対応に努めることが非常に大切な考え方となります。主張の内容が全く同じであっても,冷静に対処しているか感情的になってしまっているかによって,結果に大きな差が生じてしまう可能性は低くありません。

暴行事件では,互いに相手への悪感情を持っていることが一般的であるため,捜査機関が相手に肩入れをしているような態度を見せれば,それだけで冷静さを失ってしまうケースが散見されます。しかし,冷静さを失うことは損しか生まないと言い切ってもよいでしょう。
常に冷静な対処を心掛けることで,円滑な進行を促すことが賢明です。

②出頭拒否のリスク

呼び出しに応じて出頭するかどうかは,強制ではなく任意です。そのため,出頭を求められても拒否することが可能であり,出頭拒否自体に法的な問題はありません。

もっとも,出頭拒否は捜査機関への協力を一切しないという強いメッセージとなるため,そのやり方を誤ってしまうと大きなリスクが付きまとうことになります。中でも,出頭拒否によって逮捕を招いてしまうことは,最も避けるべき事態と言えるでしょう。

出頭拒否に対して直ちに逮捕することは法的に問題がありますが,出頭拒否を判断材料の一つにして,総合的な判断の結果逮捕する,ということは違法とは言い難いものです。そのため,出頭拒否を選択する場合には,それが逮捕のリスクをどれほど抱える対応なのか,という点を慎重に検討することをお勧めします。

③弁護士への依頼時期

弁護士への依頼を検討する場合,その時期は早ければ早いほど有益であることが一般的です。どこかのタイミングまで弁護士への依頼を保留する方が効果的である,といった事情は通常ありません。
特に,被害者との示談を目指す事件では,被害者の感情面に配慮するためにも,できるだけ早期に行動に移し,被害者側にも極力早く謝罪の意思を知ってもらうことが有益です。

また,事件によっては,検察庁での呼び出しを受けた際に,担当検事から弁護士への依頼を勧められることもあり得ます。暴行事件は,当事者間で解決する方が望ましいトラブルと理解されやすいため,弁護士に依頼して当事者間での解決を目指すべきでないか,との助言もなされ得るのです。
その場合は,当事者間での解決が刑事処分の軽減につながる,とのメッセージでもあるため,できるだけ早期に,積極的に弁護士への依頼を検討することをお勧めします。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

暴行事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

暴行事件での呼び出しに応じた場合,そのまま逮捕されることは基本的に考えにくいと言えます。逮捕する予定であれば,逮捕状を持って被疑者の自宅を訪れる方が端的であり,わざわざ呼び出して出頭を求めるのは合理的な手段とは言えません。単純にロスが生じることに加え,呼び出している間に証拠隠滅されてしまうリスクも抱えるため,捜査方法として採用するメリットに乏しいです。

もっとも,呼び出しが行われる事件であれば逮捕されない,とは限りません。呼び出しへの対応を誤ってしまえば,それが逮捕のきっかけになる可能性は十分に考えられるためです。

逮捕のきっかけになり得る対応としては,以下のような例が挙げられます。

逮捕につながりかねない対応の例

1.相手方当事者に連絡を試みること

2.感情的に拒絶すること

3.捜査機関に危害を加える旨の言動

【1.相手方当事者に連絡を試みること】

呼び出しを受けることに納得がいかない,などの理由で相手の当事者と話を付けようと試みる行為は,逮捕につながりかねない危険な動きと言えます。

捜査機関は,被害者と主張する相手方当事者から捜査を求められて動いていることが通常です。そして,被害者側の希望としては,加害者と今後関わりたくない,との意向であることが一般的です。
そのため,捜査機関の呼び出しがきっかけになって加害者が被害者に接触を試みる結果となるのは,捜査機関としては避けなければならず,その可能性が見受けられるならば予防策を講じる,という判断になることは大いにあり得ます。

そのため,相手方当事者に連絡を試みる動きに出ることは,当事者間の接触を防ぐための逮捕を誘発する行為になりかねないのです。

【2.感情的に拒絶すること】

暴行事件は,当事者間の感情的な対立が背景にあることも多く,事件を思い起こす度に感情的になってしまうこともある程度やむを得ません。もっとも,呼び出しをしてきた警察官にその感情をぶつけたり,感情のままに呼び出しを拒絶してしまったりすることは得策ではありません。

警察による呼び出しは,「呼び出せば応じてくれるはずだ」という判断がその前提にあります。呼び出せば応じてくれる以上,呼び出し以上に強力な手段を用いる必要がない,と考えているからこそ,呼び出しているのです。
しかし,呼び出しに対して感情的なリアクションを見せたり,拒絶の姿勢を見せたりすると,「呼び出せば応じてくれるはずだ」という前提は崩れてしまいます。呼び出してもまともな話ができず,出頭にも応じてくれないとなると,確実に出頭してもらうために逮捕する,という選択にもなりかねません。

【3.捜査機関に危害を加える旨の言動】

捜査機関から一方的に呼び出されることは,特に否認事件の場合には不快にも感じられますが,だからといって捜査機関と対立するような言動に及ぶことは不利益しかありません。特に,捜査機関に対して何らかの危害を加える内容の言動をすることは,捜査の妨害や現実の危害を防ぐための逮捕を誘発してしまう可能性があります。

捜査機関に対する不満や不快などの感情を抱いた際には,一度落ち着いて冷静な対応に努めるよう心がけましょう。また,「捜査機関も仕事でしょうがなく呼び出しているんだ」というように相手の立場を想像することができれば,捜査機関とむやみに対立する言動をする意欲は生じにくいでしょう。

暴行事件の逮捕

暴行事件で逮捕される可能性

暴行事件の場合,逮捕の可能性は十分に考えられます

暴行は,結果的に被害者が怪我などの傷害を受けなかったという事件類型であり,その分事件の重大性は大きくないケースが少なくありません。そして,逮捕するかどうかは事件の重大性を大きな判断基準の一つとするため,暴行事件は逮捕の可能性が低くなり得る事件類型と言えるでしょう。

しかしながら,暴行事件では,むしろ逮捕されやすい条件が揃ってしまうケースも多い点に特徴があり,漫然と対応していると逮捕の恐れが大きくなりかねません。そのため,逮捕されやすい条件を踏まえておき,個別の対応に活かすことが重要となります。

暴行事件で逮捕されやすいケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

暴行事件で逮捕されやすいケース

1.現行犯での対応を要する場合

2.当事者間の争いが深刻な場合

3.暴行の内容が悪質な場合

【1.現行犯での対応を要する場合】

暴行事件は,現行犯で問題になることが非常に多い事件類型です。そして,暴行事件が現行犯で取り扱われる場合,その場の紛争を収める目的も兼ねて,当事者の一方を逮捕することが非常に多く見られます。

逮捕は,逃亡また証拠隠滅の可能性が高い場合に用いられる捜査手続ですが,現行犯でトラブルになっている暴行事件だと,被害者(の話)という最も重要な証拠が,その後の暴行行為などによって押さえつけられ,捜査の妨げになる可能性があると判断される傾向にあります。

そのため,現行犯で捜査が開始され,当事者間に激しい感情対立が見られる場合には,逮捕されやすいと言えるでしょう。

【2.当事者間の争いが深刻な場合】

当事者間に継続的な紛争があり,その紛争が根深く深刻なケースでは,当事者を引き離すために逮捕される可能性が高い傾向にあります。

継続的に争う関係にある当事者間では,一度暴行事件が起きると,その後さらにエスカレートした事態がいつ生じるか分からない,という不安が付きまとうことになります。現在起きているのは暴行事件だけであっても,継続的に積み重なった紛争の火種がいつより大きな事件に発展してもおかしくない,と評価されるわけです。

そのため,暴行事件の段階で捜査をより厳格に行い,その後のトラブルの深刻化を防ぐ目的で,逮捕を伴う強制的な捜査を行う可能性が高くなります。

【3.暴行の内容が悪質な場合】

暴行事件と一口に言っても,その具体的な暴行の内容は様々です。例えば,素手による暴行に限ったとしても,はたく,押すといったものから,握りこぶしで思い切り殴りつける行為まで,強度や危険性に大きな幅があり得ます。

この点,暴行の程度がより危険である場合には,事件の悪質性を踏まえて逮捕の判断がなされやすいと言えます。悪質な暴行がなされていると,その後の再発を防ぐ必要性が非常に高くなるため,強制的に再発や二次被害を避けるための手段として,逮捕が用いられやすくなるのです。

暴行事件で逮捕を避ける方法

①当事者間での解決を目指す

暴行事件の場合,当事者間で事件が解決していれば,その後に逮捕される可能性は現実的になくなります。暴行事件の捜査は,ほとんどが被害者の被害申告をきっかけに開始されるものであって,被害者が解決したと考える以上,捜査の始まるきっかけが生じないためです。
また,捜査の開始後であっても,被害者が解決したとの意向であれば,その後に逮捕の必要があるとは判断されず,逮捕には至らないことが通常です。

そのため,逮捕の回避を目指す場合には,まず当事者間での解決が目指せないか,検討することが有力でしょう。直接連絡を取り合う方法があったり,間に入ってくれる第三者がいたりすれば,直接の協議も一案です。一方,連絡を取りあう手段がない場合には,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にする形で解決を試みることが望ましいでしょう。

②現行犯逮捕を防ぐ

逮捕の種類が複数ある中で,最も容易に行うことができるのは現行犯逮捕です。現行犯逮捕は,裁判所から逮捕状の発付を受けることなく実行できる逮捕手続であり,かつ捜査機関に限らず誰でもできることから,そのハードルは非常に低くなりやすい傾向にあります。

裏を返せば,逮捕を避けるためには,最も容易に行われ得る現行犯逮捕を防ぐことが重要な手段になります。特に,暴行事件を含むトラブルが現場で警察沙汰になったような場合,周囲の私人が現行犯逮捕し,そのまま警察に引き渡すことで法的に逮捕が正当化されてしまう場合が非常に多いため,そのような流れを一度断ち切り,現行犯逮捕が成立しない状態を作り出すことが有力でしょう。

具体的な手段としては,一度その場を離れて再度連絡を取り合うことにする,といったように,事件と逮捕が時間的・場所的に近い状態とならないように意識することが有力です。

③自首を検討する

現に捜査されていないため当事者間での解決手段がなく,現行犯逮捕される状態にもないという場合,積極的な逮捕回避策には限界がありますが,その際,逮捕を防ぐ手段として有力になってくるのが自首です。

自首は,自分に対する捜査が行われる前に,積極的に自身の犯罪行為を申告することで,自分に対する捜査や処罰を求める行動です。そして,自分から積極的に犯罪の情報を示していくことから,逃亡や罪証隠滅の可能性は低く,逮捕の回避につながりやすいという利点があります。

暴行事件が捜査されているかどうか分からず,逮捕の不安を払拭する手段がない場合には,自首を検討することをお勧めします。

暴行事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

暴行事件の逮捕に関して適切な対応を尽くしたい場合には,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士への依頼によって,具体的には以下のようなメリットが生じるでしょう。

①逮捕を避けるために何をすべきか分かる

暴行事件の場合,逮捕の可能性やその回避に必要な手段が様々に異なります。そのため,逮捕の回避を試みようとしても,見通しや手段を誤ってしまえば,せっかくの行動が結果につながらない,という事態が生じかねません。

この点,弁護士に依頼することで,個別の事件内容を踏まえた逮捕の可能性の高さや,現実に逮捕を避けるための手段などを,専門的な見地から適切に判断してもらうことが可能です。事前の判断が適切であることは,最終的な結果を直接大きく左右するため,そのメリットの大きさは極めて大きいと言えます。

②弁護士に必要な対応を主導してもらえる

逮捕を防ぐために必要な対応が分かったとしても,その対応を自分で十分に行うのは困難であることが少なくありません。例えば,当事者間での解決が望ましいとしても,当事者間で直接話し合いができるかと言えばそうでないことがほとんどです。また,自首が望ましい場合であっても,自首するにはどうすればいいか事前に分かっている人はほとんどいないでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,必要な対応を主導して進めてもらうことができ,対応を誤る恐れがなくなります。また,対応の負担も劇的に軽減することとなるため,実際の動きに踏み出す心理的負担も大きく異なるでしょう。

③早期釈放を目指すことができる

暴行事件で逮捕されてしまった場合には,早期釈放を目指すことが次の検討事項となります。暴行事件は,逮捕後に早期釈放が実現されるケースも決して少なくはない事件類型であるため,逮捕されたことで落胆してしまうのでなく,不利益を最小限に抑える試みへと速やかにシフトすることが肝要です。

この点,弁護士に依頼することで,早期釈放を目指すための具体的な手段を講じてもらうことが可能です。適切な弁護士に依頼することができれば,スピーディーに対応を進めてもらうことができ,早期釈放によって生活への悪影響を避けられる可能性が高まるでしょう。

暴行事件の逮捕に関する注意点

①事件直後に逮捕される可能性

暴行事件では,事件直後に警察沙汰になり,そのまま逮捕される可能性が低くない点に注意が必要です。事件直後のタイミングでは,誰でも逮捕状なく現行犯逮捕ができてしまうため,逮捕した本人ですら自覚しないまま,法的には逮捕されていた,という事態に至る可能性も十分にあります。

事件直後においては,特に現行犯逮捕の可能性に注意して,これを避けることを目指すのが望ましいところです。

②当事者間の言い分に争いがある場合

暴行事件の場合,当事者双方に何らかの言い分があり,その言い分が互いに対立しているケースも珍しくありません。そして,当事者の言い分の争いある暴行事件が逮捕の対象となった場合,早期釈放が難しく,身柄拘束が長期化しやすい可能性に注意が必要です。

言い分に争いがある場合,事実関係の捜査にはやむを得ず時間がかかります。その間,逮捕した被疑者を釈放するわけにいかないとなれば,捜査に時間がかかっている間は身柄拘束を受けざるを得ず,その分長期化の恐れがあるのです。

③同居家族を被害者とする事件の場合

暴行事件は,同居家族との間で生じる場合もありますが,同居家族を被害者とする暴行事件の場合,帰宅するとしてどこへ帰宅するのか,という点は適切な調整が不可欠なポイントになります。

まず,事件が解決しないうちに同居を再開させることは不可欠と考えられるのが通常です。そのため,漫然と釈放を求めても,互いの住居地がしっかりと調整できていなければ,身柄拘束の継続が必要との判断になりやすいでしょう。
多くの場合は,一時的に他の親族の自宅へ行く,ホテルやマンスリーマンションを利用する,といった手段で,当事者双方を物理的に切り離す手段が有力です。これらの具体的手段をどうするかは,逮捕を防ごうとする段階で事前に検討し,準備しておくべきである,ということに注意しましょう。

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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【暴行事件の逮捕】初犯でも逮捕されるか?逮捕されたらどうすべきか?

暴行事件は身近なトラブルから発展することも多く、「初犯でも逮捕されるのか」「逮捕後はどうなるのか」と不安に感じる方は少なくありません。暴行で逮捕されると、取調べや勾留といった刑事手続が進み、仕事や生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。本記事では、暴行で逮捕されるケースや逮捕後の流れを整理し、逮捕された際に取るべき適切な対応について分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

暴行とは

① 暴行の定義

「暴行」とは、人の身体に対して不法な有形力を行使する行為をいいます。これは刑法208条に定められており、実際に傷害の結果を生じていなくても成立します。たとえば、殴る・蹴る・突き飛ばすといった行為はもちろん、物を投げつける、至近距離で脅すように物を振りかざすなど、身体に対する力の行使と評価できる行為も暴行にあたる場合があります。

暴行罪の成立には、相手にけがを負わせる結果までは必要とされません。したがって、被害者が実際に痛みを感じなかったとしても、客観的に危険な有形力の行使があれば暴行が成立する可能性があります。

また、暴行罪は「公然わいせつ罪」や「脅迫罪」などと異なり、行為の結果ではなく行為そのものに重きを置く犯罪類型です。暴行の程度や態様によっては、傷害罪(刑法204条に発展することもあり、どの範囲までが「暴行」にあたるかは、事案ごとの判断が求められます。

② 暴行と傷害の違い

暴行罪と傷害罪は、基本的に「けが(傷害)の結果が生じたかどうか」で区別されます。

まず、暴行罪(刑法208条)は、相手の身体に対して不法に有形力を行使する行為そのものを処罰するものであり、けがなどの結果がなくても成立します。たとえば、相手を突き飛ばす、胸ぐらをつかんで揺さぶる、物を投げつけるといった行為がこれに当たる場合があります。

これに対して、傷害罪(刑法204条)は、暴行などの結果として身体の生理的機能に障害が生じた場合に成立します。出血・腫れ・打撲などの外傷はもちろん、強い精神的ショックによる不眠など、身体の正常な機能に支障をきたす状態も含まれます。

したがって、暴行の結果としてけがを負わせた場合は、暴行罪ではなく傷害罪が成立します。
ただし、実際の事件では「どの程度の被害をもって傷害といえるか」が問題となることがあり、結果の有無だけでなく、行為の危険性や被害の程度などを総合的に考慮して判断されます。

なお、現在の法定刑は次のとおりです。

・暴行罪(刑法208条):2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料
・傷害罪(刑法204条):15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

このように、傷害の結果を伴うかどうかが両者を分ける基本的な基準であり、結果の重大性に応じて処罰の重さも異なります。

実際の運用としては、傷害結果の根拠があるかどうかによって暴行罪と傷害罪が区別されます。多くの場合は診断書が提出されるかどうかによりやすいでしょう。

③ 暴行の時効

刑事事件には、一定の期間が経過すると起訴できなくなる「公訴時効」が定められています。
これは、時間の経過によって証拠や記憶が薄れるなど、刑事責任の追及が適切でなくなることを考慮した制度です。

暴行罪の公訴時効期間は、刑の重さ(法定刑の上限)によって決まります。
刑事訴訟法第250条では、次のように規定されています。

刑事訴訟法第250条(抜粋)公訴時効期間
死刑に当たる罪30年
無期の拘禁刑に当たる罪20年
長期15年以上の拘禁刑に当たる罪15年
長期10年以上15年未満の拘禁刑に当たる罪10年
長期5年以上10年未満の拘禁刑に当たる罪7年
長期5年未満の拘禁刑、罰金、拘留または科料に当たる罪3年

暴行罪(刑法208条)の法定刑は「2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料」であるため、
上表の「長期5年未満の拘禁刑等に当たる罪」に該当し、公訴時効は3年です。

つまり、暴行の行為から3年が経過すれば、原則としてその行為について起訴されることはありません。
ただし、被疑者が国外に逃亡している場合などは時効が一時的に停止することがあります(刑事訴訟法255条)。

暴行の結果としてけがを負わせた場合は傷害罪(時効7年)、死亡させた場合は傷害致死罪(時効10年)が成立するため、結果の重大性に応じて時効期間も長期化することがあります。

暴行で逮捕されるケース

(1)暴行で逮捕される可能性

暴行事件の場合,逮捕の可能性は十分に考えられます

暴行は,結果的に被害者が怪我などの傷害を受けなかったという事件類型であり,その分事件の重大性は大きくないケースが少なくありません。そして,逮捕するかどうかは事件の重大性を大きな判断基準の一つとするため,暴行事件は逮捕の可能性が低くなり得る事件類型と言えるでしょう。

しかしながら,暴行事件では,むしろ逮捕されやすい条件が揃ってしまうケースも多い点に特徴があり,漫然と対応していると逮捕の恐れが大きくなりかねません。そのため,逮捕されやすい条件を踏まえておき,個別の対応に活かすことが重要となります。

暴行事件で逮捕されやすいケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

暴行事件で逮捕されやすいケース

1.現行犯での対応を要する場合

2.当事者間の争いが深刻な場合

3.暴行の内容が悪質な場合

【1.現行犯での対応を要する場合】

暴行事件は,現行犯で問題になることが非常に多い事件類型です。そして,暴行事件が現行犯で取り扱われる場合,その場の紛争を収める目的も兼ねて,当事者の一方を逮捕することが非常に多く見られます。

逮捕は,逃亡また証拠隠滅の可能性が高い場合に用いられる捜査手続ですが,現行犯でトラブルになっている暴行事件だと,被害者(の話)という最も重要な証拠が,その後の暴行行為などによって押さえつけられ,捜査の妨げになる可能性があると判断される傾向にあります。

そのため,現行犯で捜査が開始され,当事者間に激しい感情対立が見られる場合には,逮捕されやすいと言えるでしょう。

現行犯の現場で不適切な対応を取ってしまうと、現行犯での逮捕リスクが飛躍的に上がります。まずは一度落ち着いて、弁護士への相談を含めた対応方針の検討を行うようにしましょう。

【2.当事者間の争いが深刻な場合】

当事者間に継続的な紛争があり,その紛争が根深く深刻なケースでは,当事者を引き離すために逮捕される可能性が高い傾向にあります。

継続的に争う関係にある当事者間では,一度暴行事件が起きると,その後さらにエスカレートした事態がいつ生じるか分からない,という不安が付きまとうことになります。現在起きているのは暴行事件だけであっても,継続的に積み重なった紛争の火種がいつより大きな事件に発展してもおかしくない,と評価されるわけです。

そのため,暴行事件の段階で捜査をより厳格に行い,その後のトラブルの深刻化を防ぐ目的で,逮捕を伴う強制的な捜査を行う可能性が高くなります。

【3.暴行の内容が悪質な場合】

暴行事件と一口に言っても,その具体的な暴行の内容は様々です。例えば,素手による暴行に限ったとしても,はたく,押すといったものから,握りこぶしで思い切り殴りつける行為まで,強度や危険性に大きな幅があり得ます。

この点,暴行の程度がより危険である場合には,事件の悪質性を踏まえて逮捕の判断がなされやすいと言えます。悪質な暴行がなされていると,その後の再発を防ぐ必要性が非常に高くなるため,強制的に再発や二次被害を避けるための手段として,逮捕が用いられやすくなるのです。

暴行の悪質さは、どれほど重大な結果を招く可能性があったか、という点が大きな判断基準になりやすいです。実際に結果が生じていなくても、極めて重大な結果を招き得る暴行があった場合、その悪質さは重く判断されるでしょう。

暴行における逮捕の方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

暴行で逮捕されたときの流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

暴行で逮捕されたときのデメリット

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

暴行で逮捕されないようにする方法

①当事者間での解決を目指す

暴行事件の場合,当事者間で事件が解決していれば,その後に逮捕される可能性は現実的になくなります。暴行事件の捜査は,ほとんどが被害者の被害申告をきっかけに開始されるものであって,被害者が解決したと考える以上,捜査の始まるきっかけが生じないためです。
また,捜査の開始後であっても,被害者が解決したとの意向であれば,その後に逮捕の必要があるとは判断されず,逮捕には至らないことが通常です。

そのため,逮捕の回避を目指す場合には,まず当事者間での解決が目指せないか,検討することが有力でしょう。直接連絡を取り合う方法があったり,間に入ってくれる第三者がいたりすれば,直接の協議も一案です。一方,連絡を取りあう手段がない場合には,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にする形で解決を試みることが望ましいでしょう。

暴行事件で逮捕を防ぎたい場合、当事者間で解決ができるのであれば最優先に目指すのが適切です。被害者のいる事件では、被害者の意向が非常に大きく反映されるためです。

②現行犯逮捕を防ぐ

逮捕の種類が複数ある中で,最も容易に行うことができるのは現行犯逮捕です。現行犯逮捕は,裁判所から逮捕状の発付を受けることなく実行できる逮捕手続であり,かつ捜査機関に限らず誰でもできることから,そのハードルは非常に低くなりやすい傾向にあります。

裏を返せば,逮捕を避けるためには,最も容易に行われ得る現行犯逮捕を防ぐことが重要な手段になります。特に,暴行事件を含むトラブルが現場で警察沙汰になったような場合,周囲の私人が現行犯逮捕し,そのまま警察に引き渡すことで法的に逮捕が正当化されてしまう場合が非常に多いため,そのような流れを一度断ち切り,現行犯逮捕が成立しない状態を作り出すことが有力でしょう。

具体的な手段としては,一度その場を離れて再度連絡を取り合うことにする,といったように,事件と逮捕が時間的・場所的に近い状態とならないように意識することが有力です。

③自首を検討する

現に捜査されていないため当事者間での解決手段がなく,現行犯逮捕される状態にもないという場合,積極的な逮捕回避策には限界がありますが,その際,逮捕を防ぐ手段として有力になってくるのが自首です。

自首は,自分に対する捜査が行われる前に,積極的に自身の犯罪行為を申告することで,自分に対する捜査や処罰を求める行動です。そして,自分から積極的に犯罪の情報を示していくことから,逃亡や罪証隠滅の可能性は低く,逮捕の回避につながりやすいという利点があります。

暴行事件が捜査されているかどうか分からず,逮捕の不安を払拭する手段がない場合には,自首を検討することをお勧めします。

自首は、逮捕を防ぐために有効な手段の一つですが、自ら捜査を招くというリスクもあります。
暴行事件の場合、被害者側が特に動いていない限り捜査されていない可能性が高いため、自首のリスクを踏まえた検討が望ましいでしょう。

暴行で警察に呼び出された場合の対処法

① 基本的な方針

暴行事件で呼び出しを受けた場合,まずは呼び出しに応じることを前提に対応するようにしましょう。内容や言い分によっては,呼び出しに応じることが割に合わない,または納得できないといった思いになることは十分に考えられると思います。しかしながら,呼び出し自体に一切応じないとのスタンスは,かえって自分に不利益をもたらす可能性があって適切とは言えません。

言い分がある場合には,呼び出しに応じた上で,出頭した際に述べることが最も適切です。もっとも,呼び出しに応じるタイミングを捜査機関の希望に合わせる必要まではありません。自身のスケジュールと調整できる範囲内で,まずは呼び出しに応じることを方針の第一歩としましょう。

ポイント
呼び出し自体には応じる方が賢明
言い分は出頭した際に述べる

② 内容に反論がない場合

疑いの内容に間違いがなく,反論すべき内容がない場合には,まず反省の意思を前面に示し,捜査協力のスタンスを明確にすることが適切です。

内容面に争いがないケースでは,反省状況等の情状面がその後の進行や結果を大きく左右します。その中でも,呼び出しを受けた段階で行うことのできる情状面の行動が,反省と捜査協力の意思表明です。呼び出しを受けたその時から反省の意思を示すとともに,取り調べなどの捜査を全面的に受け入れる姿勢を見せるのが,初期段階で可能な最善の対応と言えるでしょう。

また,呼び出しに応じて出頭した際には,事実をありのままに述べ,捜査機関の把握している事実関係とズレのない話を尽くすことも重要です。捜査機関の認識と整合する内容の話を一貫できれば,捜査が円滑に進行する上,反省の意思を表明する手段の一つにすることもできるでしょう。

ポイント
反省の意思と捜査協力のスタンスを示す
事実をありのまま述べ,捜査機関の認識と整合する話を尽くす

③ していない行為を疑われている場合

自分がしていない行為を疑われているケースでは,まずその事実を明確に表明することを優先しましょう。刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,その後の捜査が大きく変わるため,本件は否認事件である,という事実を正しく把握してもらうことが第一歩となります。

認め事件とは異なり,否認事件の場合には,被疑者の自白なしで犯罪の立証をしなければなりません。被疑者の自白がある認め事件では,自白を裏付ける証拠や自白と整合する証拠が重要な位置づけとなりますが,否認事件ではそもそも自白がないため,自白以外の証拠のみで犯罪を立証するほかないのです。
また,被疑者が「実際はこうであった」と別の事実を主張している場合,被疑者の主張が真実でないとの確信に至らなければ,犯罪の立証には至りません。否認事件では,証拠の量及び質の両面で,犯罪の立証が容易でないと言えます。

してもいない行為を疑われて呼び出しを受けた場合には,否認の意思をはっきりさせることで,「本件の立証は容易ではない」と捜査機関に認識してもらうことが適切でしょう。

ポイント
否認事件は,犯罪の立証が容易でない
否認事件であることを早期に把握してもらうことが適切

④ 経緯に言い分がある場合

事件の内容そのものには争いがないが,事件の経緯に言い分がある,という場合,その言い分を伝える時期や方法・内容は慎重に検討することが望ましいでしょう。

経緯に言い分がある事件は,認め事件か否認事件かで言えば認め事件に該当します。認め事件である以上は,反省状況が重要なポイントとなることには変わりありません。
一方で,経緯に関する言い分は,表現を誤ると「反省がない」との評価につながってしまう恐れがあります。自分にとって有益と思う主張をしたにもかかわらず,その結果が自分にとって不利益となってしまうのは不合理と言わざるを得ないでしょう。

経緯に言い分がある事件で呼び出しを受けた場合には,まず認め事件であることを前提に反省の意思を示す方針を優先すべきです。経緯を伝える機会や方法はそれ以降にも複数あるため,呼び出しを受けた段階で強引に伝えようとする必要はありません。

ポイント
経緯の言い分を述べようとするあまり,反省がないとの評価を受けるのは不合理
まずは事件を認め,反省の意思を表明することを優先すべき

暴行の呼び出し後に逮捕されないための注意点

① 冷静な対処を心掛ける

暴行事件の場合,まずはとにかく冷静な対応に努めることが非常に大切な考え方となります。主張の内容が全く同じであっても,冷静に対処しているか感情的になってしまっているかによって,結果に大きな差が生じてしまう可能性は低くありません。

暴行事件では,互いに相手への悪感情を持っていることが一般的であるため,捜査機関が相手に肩入れをしているような態度を見せれば,それだけで冷静さを失ってしまうケースが散見されます。しかし,冷静さを失うことは損しか生まないと言い切ってもよいでしょう。
常に冷静な対処を心掛けることで,円滑な進行を促すことが賢明です。

② 出頭拒否のリスク

呼び出しに応じて出頭するかどうかは,強制ではなく任意です。そのため,出頭を求められても拒否することが可能であり,出頭拒否自体に法的な問題はありません。

もっとも,出頭拒否は捜査機関への協力を一切しないという強いメッセージとなるため,そのやり方を誤ってしまうと大きなリスクが付きまとうことになります。中でも,出頭拒否によって逮捕を招いてしまうことは,最も避けるべき事態と言えるでしょう。

出頭拒否に対して直ちに逮捕することは法的に問題がありますが,出頭拒否を判断材料の一つにして,総合的な判断の結果逮捕する,ということは違法とは言い難いものです。そのため,出頭拒否を選択する場合には,それが逮捕のリスクをどれほど抱える対応なのか,という点を慎重に検討することをお勧めします。

呼び出しに対する出頭の義務がないことはその通りです。しかし、実際に出頭を拒むのが有益かどうかは別の検討が必要な問題です。
呼び出しを受けた場合に応じるかどうかは、専門知識を踏まえた比較検討が必要になるため、弁護士への相談も含め慎重に検討しましょう。

③ 弁護士への依頼時期

弁護士への依頼を検討する場合,その時期は早ければ早いほど有益であることが一般的です。どこかのタイミングまで弁護士への依頼を保留する方が効果的である,といった事情は通常ありません。
特に,被害者との示談を目指す事件では,被害者の感情面に配慮するためにも,できるだけ早期に行動に移し,被害者側にも極力早く謝罪の意思を知ってもらうことが有益です。

また,事件によっては,検察庁での呼び出しを受けた際に,担当検事から弁護士への依頼を勧められることもあり得ます。暴行事件は,当事者間で解決する方が望ましいトラブルと理解されやすいため,弁護士に依頼して当事者間での解決を目指すべきでないか,との助言もなされ得るのです。
その場合は,当事者間での解決が刑事処分の軽減につながる,とのメッセージでもあるため,できるだけ早期に,積極的に弁護士への依頼を検討することをお勧めします。

暴行で逮捕されると実名報道されるのか

暴行罪で逮捕された場合、必ずしもすべてのケースで実名報道されるわけではありません。

報道されるかどうかは、事件の重大性、社会的関心の高さ、そして警察による発表の有無という3つの要素が大きく関係しています。

報道を避けるために弁護士が警察へ働きかけるポイント

警察がメディアに対して情報を公開することを「広報」と呼びますが、すべての逮捕案件を広報するわけではありません。

一般的に、凶器を使用したものや被害者が重傷を負ったもの、公務員や著名人による犯行などが実名報道の対象となりやすい傾向にあります。

報道のタイミングは、通常は逮捕直後から数日以内に集中するため、この極めて短い期間にどれだけ迅速な対応ができるかが運命を分けます。

前科がつくと仕事や就職にどう響くのか

一度インターネット上で実名が報じられると、情報の拡散を完全に止めることは困難です。

勤務先に知られれば、たとえ後に不起訴となったとしても、社内での評価低下や退職勧奨につながる恐れがあります。

また、家族や子供が学校や近隣で誹謗中傷を受けるなど、取り返しのつかない二次被害が生じるリスクも否定できません。

これらの社会的制裁を避けるためには、法的手段による「情報のコントロール」が必要です。

暴行の逮捕に関するよくある質問

① 暴行事件では逮捕を覚悟すべきか

暴行があっても、決して逮捕が想定される事件ばかりではありません。
暴行事件の逮捕は、行為の悪質性や被害の程度、被害者との関係、逃亡・証拠隠滅のおそれなどを総合的に考慮して判断されます。
たとえば、軽い接触や一時的な口論の延長など、社会的に軽微なケースでは、任意の事情聴取にとどまり、逮捕されないことも多いです。

② 被害者が「許す」と言えば逮捕されないか

被害者の意向は考慮されますが、それだけで逮捕が避けられるわけではありません。
被害者が示談や謝罪を受け入れている場合、逮捕や勾留の必要性が低いと判断されることはあります。
しかし、暴行の態様が悪質である場合や、複数回にわたる暴行、通報によって現行犯逮捕された場合などでは、被害者が許していても逮捕される可能性もあり得ます。

③ 逮捕された場合はどれくらい身柄が拘束されるか

原則として、警察による逮捕後は最大72時間(3日間)身柄が拘束されます。
その後、検察官が勾留を請求し、裁判官が認めると、さらに最大10日間、延長されると最長20日間の勾留が可能です。
ただし、弁護士が早期に介入し、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを主張することで、勾留を回避できる場合もあります。

④ 暴行事件は示談をすれば不起訴になるか

被害者との示談成立は、不起訴処分を得るうえで非常に重要な要素です。
特に初犯で被害が軽微な場合、真摯な謝罪と示談が成立すれば、検察官が起訴を見送る(不起訴の判断をする)可能性が非常に高くなります。
一方で、再犯や計画的な暴行、社会的影響の大きい事件では、示談があっても起訴されることがあります。

⑤ 暴行していない場合でも弁護士は必要か

暴行を否認している場合こそ、弁護士の関与が重要です。
防犯カメラ映像や証言など、事実関係の確認には専門的な視点が必要であり、誤認逮捕や不当な供述調書を防ぐためにも、弁護士が早期に介入して捜査対応をサポートすることが望まれます。

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暴行事件で不起訴獲得の可能性や実現方法,示談や自首の影響などを詳細解説

このページでは,暴行事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。
示談や自首の方法やメリットについても紹介しているので、不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

暴行事件で不起訴を目指す方法

①当事者間での解決を試みる

暴行事件は,当事者間で解決している場合,不起訴となることが通常です。刑事事件では,様々な事情を踏まえて起訴不起訴の判断がなされますが,暴行事件の場合には,その中でも当事者間で解決されたか,という点が非常に重大視されやすい傾向にあります。当事者間で解決していれば不起訴,していなければ起訴,という判断になる事件も全く珍しくはありません。

そのため,暴行事件で不起訴を目指す場合には,まず当事者間での解決を試みることが最も有力な手段と言えます。具体的には,被害者との間で示談を目指すことが一般的ですが,示談が成立し,被害者が不起訴を希望するとの判断に至れば,不起訴が見込まれやすくなるでしょう。

また,警察などによる捜査前の段階では,当事者間で解決することにより,捜査が開始されない形でトラブルを収束することも可能です。この場合,起訴・不起訴という判断自体がなされないため,厳密には不起訴ではありませんが,捜査への対応を要しない点では不起訴処分よりも有益な早期解決と言えるでしょう。

ポイント
当事者間で解決していれば不起訴処分となるのが通常
捜査開始前に解決できれば,捜査自体が開始されない

②経緯を踏まえた判断を促す

暴行事件の中には,暴行行為そのものよりも暴行に至った経緯の方を重大視するべきケースも少なくありません。暴行事件は,当事者間の感情的な対立が原因となりやすいですが,感情的な対立を作ったのが被害者側である場合,その点を考慮しないで起訴するのは不合理と言わざるを得ない事件も多く見られます。

そのため,事件の背景に酌むべき経緯があり,その経緯を踏まえて不起訴の判断を求める,という動きは,不起訴を目指す有力な手段の一つと言えるでしょう。
もっとも,どのような経緯があれば不起訴とすべき事情と言えるのかは,具体的な経緯の内容や,暴行行為の内容等によって様々です。闇雲に経緯を主張することは逆効果になりかねないため,経緯を踏まえた判断を求めたいという場合は,その主張が合理的であるか,必ず弁護士の見解を仰ぐようにしましょう。可能であれば,弁護士に依頼し,弁護士を通じて経緯を主張してもらうことが適切です。

ポイント
経緯や暴行行為の内容によっては,不起訴の判断を促すべき場合もある
個別の事件で経緯を主張すべきかは,弁護士の見解を仰ぐことが適切

③行為や結果の程度が限定的である場合

他人の身体に危害を加える事件としては,暴行事件と傷害事件があります。この点,暴行と傷害の区別は,傷害結果(怪我など)が発生していなければ暴行,傷害結果が発生していれば傷害,という基準で行われます。
そうすると,暴行事件は,他人に暴行を加えた事件の中では,比較的軽微な事件類型と言うことができます。暴行行為が傷害結果を引き起こさなかった,ということが,暴行事件の前提となっているためです。

そして,暴行事件にも様々な内容のものがあり,ケースによっては暴行の程度を踏まえて不起訴処分を求めるべき場合もあり得ます。危険な行為をしたものの結果的に傷害結果が生じなかっただけなのか,暴行行為の危険性自体がほとんどなかったのか,という点は,起訴不起訴の判断に際して非常に大きな事情となります。

そのため,暴行行為や結果を踏まえ,事件の程度があまりに限定的であると言える場合には,その点を踏まえて不起訴処分とすることを求める動きが有力となるでしょう。もっとも,個別具体的な判断は,法的な知識や経験がなければ困難であるため,弁護士の専門的な見解を仰いだ上で検討することをお勧めします。

ポイント
暴行事件は,暴行したものの傷害結果が生じなかったという事件類型
暴行行為の危険性がない場合は,不起訴処分を求める動きが有力

暴行事件で不起訴になる可能性

暴行事件は,適切な事後対応を行うことで,ケースによっては不起訴となる可能性が十分に考えられる事件類型です。もっとも,暴行をしてしまったことが明らかである場合など,漫然と捜査に応じているだけでは不起訴が期待できないケースも少なくありません。
そのため,不起訴を目指すために有力な事後対応を具体的に理解しておくことが重要です。

不起訴を目指すための事後対応

【1.被害者側の許しを獲得すること】

認め事件の場合,被害者が加害者を許しているかどうか,という点が起訴不起訴の判断に極めて大きな影響を及ぼします。被害者が許しているとの意思表明さえあれば,それだけで不起訴処分にしてもらえるというケースも数多く見られるところです。

そのため,暴行行為をしてしまった事実が間違いなく,いわゆる情状に訴える必要がある場合には,まず何より被害者側の許しを獲得することが重要な事後対応となるでしょう。具体的には,被害者との示談を目指すことが考えられますが,特に当事者間で連絡を取り合うことができる場合を除いては,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にして交渉を試みる手段が有力です。

【2.反省の意思を具体的な行動に移すこと】

暴行事件で不起訴処分とするかどうか,という判断に際しては,被疑者(加害者)がどれだけ反省しているか,という事情も重要な判断材料になります。もっとも,反省を口にしていればよいかと言えば,そう簡単な話ではありません。暴行行為を認めているのであれば,反省していることは当然であり,反省の意思を示してもマイナス評価を防ぐ程度の意味しかないためです。

反省を不起訴処分に結び付けたい場合には,単に反省の意思を表明するだけではなく,その意思を具体的な行動に移すことが望ましいでしょう。行動に移す場合の具体的な手段はケースによりますが,第三者に迷惑をかけてしまっていればその第三者への謝罪や賠償を試みる,お酒が原因になっていれば断酒したり酒の危険性を勉強したりするなど,事件の内容に応じた行動を検討することが有力でしょう。

【3.否認事件で主張の根拠を明確にすること】

否認の暴行事件では,当事者双方の言い分が大きく食い違い,どちらの言い分が真実に近いのか判断の困難な場合も少なくありません。この点,当事者間で言い分が大きく場合には,言い分の信用性を基準にどちらが正しいと言えるか判断することが通常です。

言い分の信用性を判断するための要素は数多くありますが,中でも根拠のある言い分であるかどうかは,非常に重要な判断要素となります。物的証拠と一致する言い分である,他の関係者の話と一致する言い分であるなど,証拠と整合していることが分かれば,言い分の信用性は劇的に高くなるでしょう。

そのため,否認事件の場合には,自身の主張の根拠を明確にし,その根拠を捜査機関に把握してもらう動きが有力です。はっきりとした言い分や根拠がある場合には,意図的に隠しておくようなことはせず,積極的に情報提供をして判断に反映してもらう方針が適切でしょう。

不起訴の意味や効果

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

暴行事件で示談を目指す場合のポイント

暴行事件における示談のメリット

暴行事件で示談をすることには,以下のように多数のメリットがあります。

①前科の回避

暴行事件では,犯罪事実の存在が明らかであれば,被害者が特に許している場合を除いて起訴されることが一般的です。起訴された場合には,刑罰を受けることになるため,前科(刑罰を受けた経歴)が付いてしまいます。

この点,起訴を防いで前科が付かないようにするための最も有力な手段が,示談です。示談が成立する場合,被害者が加害者を許すという意思を表明することになるため,被害者が許した事実を踏まえて不起訴になる可能性が非常に高くなります。

被害者が許すのは,基本的に示談が成立した場合のみです。暴行事件で捜査が行われるのは,被害者が捜査や処罰を求めているからであるため,何もしなければ被害者は許さないままとなってしまいます。
示談は,被害者の許しを通じて前科を防ぐ唯一の手段として,大きなメリットのある行動と言えるでしょう。

ポイント
示談のない暴行事件は起訴されるのが一般的
示談をすれば,不起訴の可能性が非常に高くなる

②逮捕の回避

暴行事件は,被害者の身体に危害の生じる恐れが高い類型であるため,被害者を危険から守るために加害者を逮捕することが多いものでもあります。当事者間の感情的なトラブルであることも多いことから,事件の大小にかかわらず加害者を逮捕して物理的に引き離す,という取り扱いになることも少なくありません。
そして,逮捕をされると,同居家族や仕事の関係者に具体的な影響が生じかねない上,刑事施設に収容されることで重大な精神的苦痛を強いられることになります。逮捕のデメリットは極めて大きなものです。

この点,示談の成立した暴行事件は,その後に逮捕されることがほとんどないということができるでしょう。示談が成立している以上,その後に逮捕をして被害者を加害者から守る必要がないためです。

逮捕を防ぎ,円滑に事件を解決するための手段として,示談のメリットは非常に大きいと考えてよいでしょう。

ポイント
暴行事件は逮捕される場合が多い
示談が成立すれば,逮捕の必要はほとんどなくなる

③早期釈放

暴行事件で既に逮捕や勾留という身柄拘束をされている場合,早期釈放の手段として示談は非常に有力です。

逮捕をされた場合,まず最長72時間拘束された後,10日間の勾留,さらには最長10日間の勾留延長と,20日を超える期間の身柄拘束を強いられる可能性も否定できません。勾留延長までがすべて行われてしまう場合,加害者の生活はそれまでとは一変しているでしょう。
一方,少しでも早期に釈放されれば,それだけ生活への悪影響も小さく済むことが多いはずです。

この点,逮捕の後に示談が成立した場合,勾留をするか,さらには勾留延長をするか,という局面において,釈放の判断を促す非常に大きな材料になります。逮捕後に勾留されず釈放された場合は,最長72時間の身柄拘束で済むことになるため,生活への影響も最小限に抑えられるでしょう。

逮捕から起訴までの流れ

④被害者との解決

暴行事件は,犯罪であるという側面のみでなく,当事者間の法律問題(民事事件)の側面も持つトラブルです。具体的には,被害者が加害者に対して,精神的苦痛への慰謝料などを金銭で支払うよう請求することが可能とされます。
そして,この金銭請求の権利は,加害者が刑罰を受けても影響されません。そのため,加害者としては,刑罰を受けた上でさらに被害者から金銭を請求される可能性もあり得ます。

この点,示談が成立した場合,被害者との法律問題も同時に解決することとなります。そのため,示談成立後に被害者から金銭を請求される可能性はなくなり,当事者間でのトラブル解決にもつながるでしょう。

ポイント
被害者から金銭を請求される可能性がある
示談が成立すれば,被害者からの金銭請求もなくなる

暴行事件で示談は必要か

暴行事件の場合,疑われている内容に間違いがなければ,処分軽減のためには示談が必要と考えるべきです。
事件の内容が間違いない場合(認め事件の場合),処分の重さは被害者の意向を反映する形で決められます。被害者が処罰を望めば処罰が科されやすく,逆に被害者が処罰しないことを望めば処罰が科されづらくなるのです。

そのため,被害者に処罰を望まない意思を表明してもらうために,その唯一の手段である示談を行う必要がある,ということになります。

一方,疑われている内容が事実でない,という場合(否認事件の場合)には,示談を行うかどうかに慎重な判断が望ましいでしょう。

示談の基本的な内容は,被害者への謝罪と賠償です。これを受けた被害者が加害者を許すことで,示談が刑事処分の軽減につながるというわけです。
そのため,被害者への謝罪と賠償を行うべきでない場合,謝罪と賠償を内容とする示談を行うのは不合理です。最悪の場合,疑いが事実でない,という主張の信用性に悪影響を及ぼす可能性もあります。疑いが事実でないのに被害者への謝罪と賠償をするのは矛盾するからですね。

ただし,否認事件であっても,解決を急ぐ目的で示談を行うことはあり得ます。その場合は,示談の内容に配慮する必要があるため,必ず専門家の意見を仰ぐようにしましょう。

ポイント
認め事件では示談が必要
否認事件では示談するか慎重な判断をすべき

暴行事件で示談をする方法

暴行事件における示談は,捜査機関(警察や検察)から被害者に連絡を入れてもらう方法で試みることが一般的です。捜査機関担当者が被害者に示談への意向を確認し,示談交渉を了承する場合には連絡先の交換に至る,という流れが通常です。

しかし,捜査機関がこのような取り扱いをするのは,加害者が弁護士を通じて示談を試みる場合に限られます。弁護士を間に挟まない限り,示談交渉を開始することはできません。
暴行事件の場合,当事者間に大きな感情的対立の生じていることが多いため,捜査機関は当事者を直接引き合わせることはできないと考えます。そのため,弁護士を窓口にすることを条件に,示談交渉を認めるという運用をしているのです。

弁護士が示談交渉を試みる場合の主な流れは,以下の通りです。

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

示談交渉の流れ

暴行事件の示談金相場

暴行事件の示談金は,概ね10~30万円ほどが目安になりやすいでしょう。
暴行事件は,被害者がケガをしていないことが前提であるため,被害者がケガをしている傷害事件などと比べて,示談金は低額になる傾向があります。

個別の示談金は当事者間の協議で決定しますが,示談金額に影響する事情としては以下のような点が挙げられます。

示談金に影響する事情

1.暴行の経緯
→被害者に落ち度がなければ増額要因に,被害者にも落ち度があれば減額要因になる

2.暴行の内容
→危険性の高い行為であれば増額要因に,けがをする可能性のない行為であれば減額要因になる

3.ケガのなかった理由
→被害者が回避した結果であれば増額要因に,加害者の行為が原因であれば減額要因になる

暴行事件は自首するメリットがあるか

暴行事件で自首をするべき場合

①現場から逃走してしまった場合

暴行事件が現行犯で問題となった際に,現場から逃亡する方法でその場を逃れた場合には,自首の検討が有力な状況と言えます。

現場から逃走した場合には,その後に被害者が警察に被害申告する可能性が非常に高くなります。そして,被害申告を受けた警察としては,加害者が現場から逃走してしまったという事実を踏まえ,再び逃亡される危険を防ぐために,加害者を特定次第逮捕することが有力な選択肢となります。
そのため,逮捕を防ぐためには,逃亡の可能性がない,ということを捜査機関に理解してもらう必要があり,逃亡しないとのメッセージを明確に発信する具体的な手段が自首です。

逆に,現場から逃走してしまった状況下では,自首以外の手段で逮捕を防ぐ積極的な動きを取ることは難しい場合が多数です。このケースでは,自首の効果が特に高いということができるでしょう。

ポイント
加害者が現場から逃走した場合,捜査機関にとって逮捕が有力な選択肢になる
逮捕の必要がないことを理解してもらうには,自首が有力な行動

②相手と音信不通になった場合

暴行事件の場合,当事者間で円満な解決ができれば,自首までは必要のないことが通常です。自首の主な目的は,逮捕や刑罰を回避する点にありますが,当事者間で解決ができた場合にはそれのみで逮捕や刑罰が防げることが一般的であるため,重ねて自首を行う必要まではないと言えます。
そのため,当事者間が元々知人などの間柄であったり,共通の知人がいて橋渡し役になってくれたりと,当事者間の解決ができる状況にある場合は,まず示談などの円満な解決を目指すことが適切でしょう。

一方,当事者間で円満解決する手段がない場合には,自首が有力な行動になります。特に,ある時期までは連絡が取り合えていたにもかかわらず,急に音信不通になってしまった,という場合には,相手が円満な解決を諦めて捜査機関に捜査を求める方針を取ることとした可能性が高い状況であるため,捜査が行われる前に先手を打って自首することで,不利益を最小限に抑える方針が有力と言えるでしょう。

ポイント
当事者間で解決ができれば,自首までは必要のないことが通常
相手と音信不通になった場合,当事者間での解決が期待できないため自首が有力

③継続的なトラブルである場合

当事者間に継続的なトラブルが生じており,その一部が暴行事件という形で現れたという場合,警察の捜査に際しては,トラブルの深刻化を防ぐための慎重な判断が必要になります。
特に,暴行事件の発生までは互いに暴力を振るうまでは至っていなかった,という場合,暴行事件を皮切りに互いの暴力的行為がエスカレートしてしまう可能性が懸念されるため,逮捕の必要性が高い,との評価につながりやすい傾向にあります。

そのため,当事者間のトラブルが継続的にある場合には,暴行事件を過小評価することなく,将来の捜査に備えた自首の検討が有力です。
また,自首をした場合には,その後にトラブルが起きないことも非常に重要となります。被害者の立場になることは避けられませんが,自分が加害者と評価されかねないようなトラブルは決して引き起こさないように注意しましょう。

ポイント
暴行事件を皮切りにトラブルがエスカレートすると懸念されやすい
自首後にはトラブルを再発させないことも重要

暴行事件の自首は弁護士に依頼すべきか

暴行事件の自首を検討する場合には,必ず弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら進めることを強くお勧めします。また,実際に自首を行う場合にも,弁護士に依頼の上で,弁護士が主導する形で試みることが有益でしょう。

弁護士への依頼には,以下のようなメリットが見込まれます。

①犯罪に当たるかが判断できる

自首は,当然ながら犯罪行為をしてしまった際に行うべきものです。犯罪行為をしていないにもかかわらず自首をしようとすれば,その動き自体が無駄となるのみならず,より悪質な別の犯罪を隠そうとしているのではないか,などという疑いを持たれるきっかけにもなりかねません。
そのため,自首を検討する際には,自分の行為が犯罪に当たるかどうか,という点の正確な理解が必要不可欠と言えます。

この点,弁護士に依頼することで,自分の不安視している行動が犯罪に当たるか,弁護士に法的な判断をしてもらうことが可能です。特に,暴行罪は対象となる行為の幅が広く,犯罪に該当するかどうかの判断が容易でないものも多いため,検討の初期段階で法的な整理をしておくことは非常に有益でしょう。

②逮捕が回避しやすくなる

自首の最大の目的の一つが,逮捕の回避です。自首をしなければ逮捕される恐れがある場合,ケースや状況によっては自首が唯一の逮捕回避策となることも少なくありません。そのため,自首を行うのであれば,逮捕の回避につながる形で行うことが非常に重要となります。
しかしながら,自首のやり方を誤ってしまうと,せっかく自首をしたにもかかわらず逮捕を防ぐ効果が十分に発揮されない結果となる恐れもあり得ます。大きなリスクを背負った行為をする以上,その方法は万全にするのが適切です。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕回避の効果を最大限に高めるための進め方や対応の仕方を知ることができ,自首による逮捕回避がより見込みやすくなります。また,弁護士が捜査機関と協議を試みるなど,弁護士が別途逮捕を防ぐための弁護活動をしてくれるため,相乗効果も期待できるでしょう。

③自首後の弁護活動が迅速にできる

自首を行った後は,捜査が行われ,最終的な刑事処分を受けるまでの手続が進むことになります。そのため,自首をするのであれば,自首後の手続にも無関心でいるわけにはいきません。

この点,自首後の弁護活動も行ってもらう内容で弁護士に依頼すれば,自首をした後速やかに,必要な弁護活動を開始してもらうことができます。暴行事件の場合,被害者への対応など迅速に行うべき弁護活動も多いため,速やかに動き出せることのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

④早期釈放を目指すことができる

捜査機関の判断によっては,逮捕を回避できない場合も考えられますが,暴行事件の場合には,ケースによって逮捕後の早期釈放が十分に期待できる可能性も低くはありません。もっとも,積極的に法律上の不服申立てを行う必要があるなど,弁護士がいなければ早期釈放を目指す行動自体ができない恐れもあり得ます。

この点,弁護士に依頼しておくことで,万一逮捕されてしまった場合でも早期釈放を目指すための動きを尽くしてもらうことが可能です。逮捕されたケースであっても,最短で釈放してもらうことができれば,日常生活への悪影響は最小限に抑えられるでしょう。

暴行事件で自首をする場合の注意点

①早期に行う必要がある場合

自首は,捜査機関が「犯罪事実」と「犯人」の両方又は一方を把握していない場合にのみ成立する手続です。捜査機関にとって,犯罪事実も犯人も分かっている状況だと,自分から積極的に出頭しても自首と評価してもらえる可能性はありません。

暴行事件の場合,当事者同士が知り合いであるケースも少なくありませんが,そのように相手の個人情報を知っている間柄だと,捜査機関による「犯人」の特定が短期間で可能になります。極論すれば,被害者が捜査機関に被害申告をしたと同時に,犯人が誰であるかも分かることになるでしょう。

そうすると,暴行事件の自首は,被害者が警察等に相談するより前に,早期に行う必要がある場合も少なくない点に注意が必要です。自首の決断は容易ではありませんが,見えないタイムリミットが迫っている可能性にも気を付けておくことが望ましいと言えます。

②自首後に示談を試みるべき場合

自首をした場合,その後に示談を試みるべき場合は少なくありません。基本的に,被害者が誰であるか明らかな場合には,自首後速やかに示談を試みるのが適切でしょう。

自首の目的は,最終的には刑事処分を少しでも軽くすることであるのが通常です。そして,暴行事件で刑事処分が軽くなる最大の要因は,認め事件であれば被害者との解決(示談)であることがほとんどです。そうすると,刑事処分を軽くするための手段として自首をしておきながら,更に効果が見込まれる示談を試みないというのは,合理的な動き方とは言い難いでしょう。

自首をした暴行事件では,基本的に示談を試みるべきものだ,という理解をしても間違いないと考えます。

③捜査の初期段階であること

自首は,あくまで捜査の初期段階であり,自首をきっかけとして刑事手続がスタートすることになります。被疑者本人にとっては,自首が非常に大きな分岐点であり,心理的負担の大きな行動であることも確かですが,手続全体との関係ではスタートラインを切ったばかりです。

そのため,自首をした場合には,その後に刑事手続が始まる初期段階であることに十分注意の上,自首に満足したり,自首後の対応を疎かにしたりすることのないよう,真摯な対応を続けるようにしましょう。自首の効果が十分に発揮されるかどうかは,その後の動き方にもかかっています。

暴行事件で不起訴を目指す場合の注意点

①被害者から接触を拒否される可能性

暴行事件で不起訴を目指す場合,被害者との間で解決を目指すことが非常に有力な手段となりますが,被害者と解決するには被害者の了承が不可欠です。加害者側が解決を試みたいと考えたとしても,被害者側に話し合いや解決の意思がなければ,当事者間で解決のための合意をすることは困難となってしまいます。

被害者に話し合いや解決の意思があるかどうかは,専ら被害者の感情的な判断にならざるを得ません。この点,暴行事件の場合だと,当事者間の感情的な対立が激しく,被害者がどうしても解決を目指す気持ちになれないというケースが多くなりがちです。
もちろん,当事者間で解決を目指す方が被害者にとってもメリットある話であることは多いですが,仮に不合理な判断だったとしても,被害者が話し合いたくないと思えば,話し合いは実現の可能性がありません。

暴行事件の場合,被害者の感情的な判断から接触を拒否される可能性に注意が必要となるでしょう。

②相手に怪我がないとの主張

暴行事件では,事件が軽微であることを不起訴とするべき事情の一つとして主張する場合があり得ます。もっとも,被害者に怪我がない,との主張は,必ずしも奏功しない可能性に注意が必要です。

そもそも,暴行事件は,暴行をしたものの相手が怪我などをしなかった場合に成立する犯罪です。暴行事件である以上,相手は怪我していないことが前提であるため,相手が怪我しなかったとの主張が有効であるケースは非常に限られやすいでしょう。
この点,暴行自体が絶対に怪我をする可能性のないほど軽い行為だった場合には,その点を不起訴処分を目指す材料として主張することがあってもよいでしょう。結果的に怪我をしなかったのみならず,怪我をする余地のない程度の行為だったということができれば,事件はそれだけ軽微であったとの評価につながる可能性が高いためです。

③共犯事件の場合

暴行事件は,一対一だけでなく,一対複数,複数対複数など,多数の人物が関わっているケースも少なくありません。そして,複数の加害者が存在する共犯事件の場合,共犯者間で処分の結果に差の生じる可能性も決して低くはありません。

この点,共犯事件における刑事処分は,それぞれの役割の大きさを基準に区別されることが一般的です。主犯格であったのか,従属的な立場であったのか,ほとんど傍観者のような存在だったのか,といった役割に関する事情が,処分の重さに直接重大な影響を及ぼすのです。
また,共犯事件では足の引っ張り合いに注意が必要となり得ます。自分の役割が小さいほど有益であるとの思いから,他の共犯者の役割を誇張して主張するなど,責任のなすりつけ合いにつながるケースも多数見られます。

共犯事件では,それぞれが果たした役割の大きさが不起訴処分の可否に大きな影響を及ぼすことを意識したいところです。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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