交通事故の休業損害とは?算出基準や職業別の計算方法

交通事故によるけがで仕事を休むことになると、「減った給料は補償されるのか」「休業中の生活費をどうすればよいのか」と不安を感じる方も多いでしょう。こうした収入の減少に対する賠償が休業損害です。ただし、その計算方法や必要な証明書類は、会社員、自営業者、家事従事者など、仕事や生活の状況によって異なります。

本記事では、休業損害の算出基準と職業別の計算方法・必要書類、請求から支払いまでの流れ、弁護士への相談が役立つ場面を解説します。事故前の収入や休業の必要性を十分に証明できないと、実際の損害より低い金額で算定されるおそれがあるため、請求に向けた準備を早めに進めることが大切です。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

交通事故の休業損害とは?

休業損害とは、交通事故によるけがで働けなくなったために生じた収入の減少などの損害です。例えば、会社員が入院のために欠勤して給与を減らされた場合や、自営業者がけがで営業できず収入を失った場合が該当します。治療費や慰謝料とは別の賠償項目であり、治療費が支払われていても、休業による損害が生じていれば別途請求の対象になります。

対象となるのは、給与が減った場合だけではありません。事故による治療や療養のために有給休暇を使用した場合も、休業損害の対象になります。また、家族のために家事を担っている人は、現金収入がなくても、けがで家事ができなくなったことについて休業損害を請求できます。家事労働にも経済的な価値があるためです。

ただし、仕事を休んだという事実だけで、その全期間が賠償対象になるわけではありません。判断されるのは、事故によるけがや治療のために休業する必要があったかという点です。同じけがでも、重い物を運ぶ仕事と座って行う仕事では、働けない期間が異なります。そのため、症状や医師の指示に加え、具体的な仕事内容と、仕事のどの動作ができなかったのかを明らかにする必要があります。

請求に当たっては、事故前の収入と事故後の休業・減収を裏付ける資料が必要です。勤務先が作成する休業損害証明書や収入に関する資料に加え、診断書などによって休業とけがとの関係を説明することになります。保険会社へ伝える際も、単に「痛くて休んだ」とするより、仕事内容と症状を具体的に説明する方が、休業の必要性を判断してもらいやすくなります。

休業損害は、治療中(症状固定前)に生じた収入減少等を指します。症状固定後にも収入減少を強いられる可能性はありますが、その点は逸失利益の問題になります。逸失利益は、後遺障害等級が認定された場合に限り、その等級に応じて請求ができます。

交通事故の休業損害の計算方法を決める算出基準

自賠責保険基準(原則日額6,100円)

自賠責保険では、休業損害を原則として日額6,100円×認められた休業日数で算定します。例えば、対象となる休業日数が20日であれば、休業損害は12万2,000円です。ただし、実際に仕事を休んだ日がすべて認められるとは限らず、けがの程度や治療経過などを踏まえて、休業の必要性が判断されます。

日額6,100円は、一律の上限ではありません。収入に関する資料などによって、1日当たりの損害が6,100円を超えることを証明できれば、日額1万9,000円を限度として実額で算定されます。例えば、1日当たり1万円の損害と20日間の休業が認められれば、休業損害は20万円になります。収入が高い人でも、裏付けとなる資料を提出しなければ、その収入を反映した算定は受けられません。

また、自賠責保険の傷害による損害の支払限度額は、被害者1人につき治療費・休業損害・慰謝料などを合わせて120万円です。休業損害だけで120万円まで支払われるわけではなく、治療費などで限度額に達すれば、自賠責保険から追加の支払いは受けられません。ただし、この限度額は加害者が負う損害賠償責任の上限ではなく、超過する損害についても、加害者やその任意保険会社への請求が対象となります。

弁護士基準・裁判所基準(適正な満額補償)

弁護士基準・裁判所基準では、自賠責保険の日額や支払限度額に拘束されず、事故によって実際に生じた損害を算定します。基本となるのは「1日当たりの基礎収入×認められた休業日数」という考え方ですが、基礎収入の求め方は職業によって異なります。家事従事者についても、家事労働の経済的価値と、けがによって家事ができなくなった程度・期間を踏まえて算定します。

例えば、1日当たり2万円の収入を失い、30日間の休業が必要だったと認められれば、休業損害は60万円です。自賠責保険の日額上限である1万9,000円を超えていても、そのことだけを理由に減額されるわけではありません。ただし、請求した金額がそのまま認められるのではなく、基礎収入と休業の必要性・期間を資料で裏付けることが必要です。被害者にも事故の過失があれば、原則として過失割合に応じた減額も行われます。

保険会社の提示額が低い場合には、単に「弁護士基準へ変更する」と求めるだけでは、増額の根拠として十分ではありません。基礎収入が低く算定されているのか、休業日数が短く認定されているのかを確認し、それぞれの判断を支える資料を提出して交渉することになります。収入と休業日数について争いがなければ、弁護士が関与しても休業損害額が変わらない場合があります。

いずれの場合も、計算の根拠になる資料や考え方に大きな違いはありません。基本的には、計算基準が若干異なる、という程度の理解でよいでしょう。

【職業別】休業損害の計算方法と必要な証明書類

①会社員・給与所得者の場合

会社員の休業損害は、事故前の給与から1日当たりの収入を求め、賠償対象となる休業日数を掛けて計算します。一般的な計算式は、「事故前3か月間の給与合計÷90日×休業日数」です。給与には、原則として税金や社会保険料を差し引く前の額を用います。例えば、事故前3か月間の給与合計が90万円で、20日間の休業が認められた場合、休業損害は20万円です。

欠勤中も給与が全額支払われ、有給休暇も使っていなければ、その給与について休業損害は発生しません。一方、事故による欠勤で賞与が減った場合は、賞与の減額分も請求できます。残業代も、事故前の支給実績などから、事故がなければ得られた額を判断します。繁忙期に残業代が増える仕事などでは、直前3か月の給与だけで収入を適切に算定できるか、より長い期間の支給実績も踏まえて判断する必要があります。

主な証明書類は、休業損害証明書、源泉徴収票、給与明細です。休業損害証明書は勤務先に作成してもらい、欠勤日、有給休暇を使った日、休業中に支払われた給与などを記載します。賞与の減額分を請求する場合は、賞与明細とともに、事故による欠勤が減額の理由であることや、減額の計算方法が分かる勤務先の証明が必要です。

②主婦・家事従事者の場合

家族のために家事を担っている人は、一般に賃金センサスの女性労働者の全年齢平均賃金を使って休業損害を計算します。基本的な計算式は、「平均年収÷365日×家事に支障が生じた日数×支障の割合」です。男性でも、家族のために家事を担っていれば対象になります。一方、自分の身の回りの家事だけを行っている場合は、通常、家事従事者としての休業損害は認められません。

令和7年の女性労働者の全年齢平均年収は、学歴計・産業計・企業規模計で437万700円(約438万円)です。例えば、年収438万円なら日額は1万2,000円となり、30日間、家事の50%ができなかった場合の休業損害は18万円です。ただし、通院した日数ではなく、実際に家事ができなかった期間と程度で判断します。料理や掃除、育児など、事故前に担っていた家事のうち何ができなくなったかを確認し、回復に応じて支障の割合を下げて算定することもあります。

証明には、住民票、診断書、家事への支障を記録したメモなどを用います。住民票は家族構成を示す資料ですが、それだけでは本人が家事を担っていたことや、事故後の支障まで証明できません。事故前に担当していた家事、けがでできなくなった動作、家族に代わってもらった家事を具体的に記録しておくことが望ましいでしょう。仕事と家事を兼ねている場合は、原則として実収入と女性平均賃金の高い方を基礎に算定し、給与の休業損害と家事の休業損害を単純に合算することはできません。

③自営業・個人事業主の場合

自営業者の休業損害は、原則として事故前年の所得を基に計算します。基本的な計算式は、「事故前年の所得÷365日×休業日数」です。売上全額ではなく、売上から必要経費を差し引いた所得を用います。例えば、年間所得が365万円で、30日間の休業が認められた場合、休業損害は30万円です。休業中も一部の仕事を続けて収入を得ていた場合は、実際に失った収入に応じて算定します。

開業直後や事業拡大の途中で事故に遭った場合は、前年の所得だけでは事故当時の収入を反映できないため、事故直前の売上や経費、受注実績を示す必要があります。また、休業中も支払わなければならなかった店舗家賃などは、事業の維持・存続に必要な費用であれば、損害として請求できます。その際は、費用の内容と支払額を明らかにし、所得を基に計算した損害と同じ費用を二重に計上しないことが必要です。

主な証明書類は、確定申告書の控え、青色申告決算書や収支内訳書、帳簿です。請求書や入出金の記録は収入額を、取引先との契約書や注文の取消記録は休業によって失った仕事を示す資料になります。確定申告をしていなくても請求は可能ですが、帳簿や取引記録などから所得を証明する必要があります。売上だけを示しても、経費を差し引いた所得が分からなければ、請求額の根拠としては不十分です。

④パート・アルバイト・学生の場合

パート・アルバイトも、事故前の給与と休業による減収を基に休業損害を計算します。勤務日数が少ない場合やシフトが変動する場合は、事故がなければ働いていた日数と時間が判断の基礎になります。直前3か月の給与を90日で割る方法では減収額を適切に算定できないときは、勤務予定や従前の勤務実績を基に計算します。例えば、時給1,200円、1日5時間の勤務を10日分休んだ場合、失った給与は6万円です。

主な証明書類は、休業損害証明書、給与明細、シフト表、雇用契約書です。勤務予定が決まっていればシフト表を提出し、未確定であれば事故前の勤務実績や勤務先の証明によって、予定されていた勤務日数を示します。学生がアルバイトを休んだ場合も、失った給与について請求でき、学生であることを理由に対象から外れることはありません。

アルバイトなどの収入がない学生は、学校を休んだだけでは、通常、休業損害は認められません。ただし、事故によって卒業が遅れ、就職予定日から働けなくなった場合は、その間に得られなかった収入を請求できます。内定通知書や予定給与が分かる書類に加え、事故による欠席と卒業の遅れとの関係を示す学校の資料などが必要です。就職が遅れた期間のすべてを請求できるとは限らず、事故が原因で働けなかった期間を具体的に示す必要があります。

いずれの立場であっても、休業を要した日数と収入の金額を具体的に示すことが非常に重要です。

休業損害はいつもらえる?請求から支給までのステップ

休業による損害を証明する書類をそろえる

休業損害は、治療が終わる前でも、それまでに発生した分の支払いを求めることができます。相手方の任意保険会社が対応している場合は、休業中の生活費を確保するため、毎月の休業分を請求して支払ってもらう方法があります。ただし、請求すれば必ず毎月支払われるわけではなく、保険会社が事故との関係や損害額を確認できる資料を提出する必要があります。

まず、保険会社に請求に必要な書類と提出する期間の区切りを確認しておくことが望ましいでしょう。会社員なら勤務先に休業損害証明書の作成を依頼し、収入に関する資料とともに提出します。毎月請求する場合は、月ごとの休業日と給与の減額が分かるようにする必要があります。記載漏れや資料の不足があると追加提出を求められ、その分、支払いが遅れます。

保険会社へ請求して金額と支払時期を確認する

書類を提出すると、保険会社は事故前の収入、休業日数、けがによって仕事を休む必要があったかを確認します。支払いまでの日数は、資料の内容や争いの有無によって異なり、提出から何日以内という一律の目安はありません。生活費の不足が迫っている場合は、希望する支払時期を伝え、追加資料の有無と審査の進み具合を確認することが適切です。

保険会社から金額を提示されたら、1日当たりの収入と認められた休業日数を確認する必要があります。請求額より低ければ、どの部分を減らしたのか、その理由を尋ねると争点が明確になります。例えば、休業日数が短く認定された場合は、仕事内容や症状、医師の指示を示して、対象外とされた期間も休業が必要だった理由を説明することになります。

なお、治療中の支払いに応じてもらえない場合は、相手方の自賠責保険へ直接請求する方法もあります。ただし、自賠責保険の支払限度額や既に受け取った金額との調整があるため、任意保険会社からの支払いとの関係を確認して請求する必要があります。

合意した休業損害の支払いを受ける

保険会社と支払額を確認し、必要な手続を終えると、指定した口座へ振り込まれます。治療中に休業損害だけを先に受け取る場合は、今回の支払いがどの期間の休業損害に当たるかを確認しておくことが必要です。先に受け取った金額は、最終的な損害賠償額から差し引かれますが、それだけで以後の休業損害や慰謝料の請求が終了するわけではありません。

一方、最終的な示談書に署名する場合は、休業損害以外の賠償項目も含めて請求を終える内容になっていないかを確認する必要があります。治療が続いているのに、今後の請求を放棄する示談をすると、その後に発生した損害の追加請求が難しくなります。支払いを受けるために示された書面が、一部の損害の受領確認なのか、事故全体を解決する示談書なのかを区別することが大切です。

相手保険が対応している場合、早い段階で必要な書式や請求方法を案内してもらえることが多いでしょう。

交通事故の休業損害を適正額に増額させるためには弁護士に相談が必要

保険会社から提示された休業損害が実際の損害より少ないと感じた場合は、減額の理由と、それに対する反論の根拠を明らかにする必要があります。弁護士に相談すれば、保険会社の計算内容と収入・休業に関する資料を照合し、増額を求められる部分を確認できます。例えば、給与の一部が基礎収入に含まれていない場合と、休業期間の一部が認められていない場合では、提出すべき資料や交渉の内容が異なります。

特に、休業の必要性や期間について争いがある場合は、欠勤した事実を示すだけでは十分ではありません。保険会社から「その症状なら仕事に戻れたはずだ」と指摘されたときは、仕事内容とけがによる制限を結び付けて説明する必要があります。弁護士は、診断書や診療記録、勤務先の資料などを基に、どの動作ができず、いつまで仕事を休む必要があったのかを整理して交渉します。

家事従事者や自営業者では、会社員のように給与の減額だけで損害を示せないため、家事への支障や事業の減収を裏付ける資料の選び方が請求額を左右します。家事従事者なら、保険会社が認めた支障の割合が実際の生活状況に合っているか、自営業者なら、所得の算定や休業中の固定費に見落としがないかを確認します。弁護士への相談は、本人だけでは説明しにくい損害を、具体的な資料に基づく請求にまとめるためにも役立ちます。

交渉で折り合わない場合は、示談あっせんなどの裁判外の紛争解決手続や訴訟も選択肢になります。弁護士は、証拠から見込まれる認定額、解決までの期間、費用を踏まえて対応方法を助言します。ただし、依頼すれば必ず増額されるわけではありません。相談時には提示額と計算の内訳を示し、増額の見込みと弁護士費用を確認することが適切です。弁護士費用特約を利用できるかについても、加入先の保険会社に確認しておくとよいでしょう。

【まとめ】交通事故の休業損害は早めの準備と適正な基準請求がカギ

交通事故の休業損害を適正額で請求するには、事故前の収入と、けがによって仕事や家事ができなかった期間・程度を証明する必要があります。仕事を休んだ日数や通院日数だけで金額が決まるわけではありません。会社員は勤務先の証明、自営業者は所得や取引の資料、家事従事者は家事への支障の記録など、立場に応じた準備が必要です。

休業中の収入が減って生活費に困る場合は、治療終了を待たず、それまでの休業損害の支払いを保険会社へ求める方法があります。必要書類や支払時期を早めに確認し、最終的な示談とは区別して請求することが適切です。保険会社の提示額が低いと感じたときは、計算の内訳と減額の理由を確認する必要があります。

基礎収入や休業期間について争いがある場合は、示談に応じる前に弁護士へ相談することが望ましいでしょう。提示額と手元の資料を確認してもらうことで、追加すべき証拠や増額を求める根拠が明確になります。弁護士費用も踏まえ、交渉を続けるか、ほかの解決手続を利用するかを判断することが大切です。

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交通事故の休業損害はいくらもらえる?正しい計算方法を知りたい,問題点や対処法を知りたい人に弁護士が分かりやすく解説

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●会社員と自営業ではどう違うか?

●休業損害を支払わないと言われたらどうすればいいか?

●主婦の場合,休業損害はどうなるのか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の休業損害についてお困りの方に向けて,休業損害の内容・金額・請求方法,休業損害で争いが生じた場合の解決方法などを解説します。

交通事故の休業損害とは

休業損害とは,交通事故によって被害者が仕事を休業せざるを得なくなってしまった場合に,その期間中に得られるはずだった収入の補償をいいます。休業損害は,被害者の生活を維持するために重要な補償であり,治療期間中の生活にも直接の影響を及ぼすものであるため,早期に適切な請求を行う必要のある項目です。

休業損害の計算方法

休業損害は,「(収入の日額)×(休業日数)」で計算されます。具体的な計算方法は被害者の立場によって異なります。具体的には以下の通りです。

①会社員(給与所得者)の場合

【日額】
事故前3か月分の給与を90で割る方法で算出するのが原則です。
交通事故の時点で3か月以上の就業継続がない場合は,上記の方法で計算ができないため,別途収入額の根拠を用いて計算します。具体的には,雇用契約書や事故直前の賃金台帳,給与明細などを用いて,事故当時の給与額を特定することがあります。

【日数】
現実に休業した日数が対象日数となります。有給休暇であっても,有給の日数が減少してしまっている限り,対象となります。
もっとも,休業したにもかかわらず収入減少がない場合,その日については損害が生じていないことになるため,休業損害の対象日数には含まれません。

②自営業(事業所得者)の場合

【日額】
事故前年分の確定申告書における申告所得を基準に,365で割る方法で日額を算出するのが原則です。
開業後間もない場合など,事故前年分の確定申告書が存在しない場合には,事故直前の収入額に関する根拠資料を用いて個別に計算します。各種契約書,入出金が分かる帳簿や預金通帳の履歴など,収入減少を相手保険が理解できるよう,可能な限り詳細に説明することが適切です。

【日数】
実際に休業を要した日数が対象日数となります。
もっとも,休業した日数を客観的に証明できる人や方法があまり存在しないため,一定の期間における実通院日数を休業日数とみなす方法を用いることが多く見られます。
また,実通院日数以上に休業したとの主張をしたい場合は,その根拠を具体的に示すことが必要になります。

③主婦(家事従事者)の場合

【日額】
女性の平均年収を基準に,365で割る方法にて日額を算出するのが原則です。
平均年収は,いわゆる賃金センサス(「賃金構造基本統計調査」の結果)を基に計算するのが一般的です。

【日数】
休業日数の特定や立証ができないため,一定の日数を事故による休業日数とみなす方法で計算するのが通常です。一例としては以下のような方法があります。

①一定期間の実通院日数を休業日数とみなす方法

②休業の程度を段階的に低減させる計算方法
例:事故後1か月は50%の休業,翌月は30%の休業など

ポイント
休業損害の計算は「日額×日数」
計算方法は,会社員・自営業者・主婦それぞれの立場で異なる

自賠責基準の金額計算における特徴

自賠責基準は,独自の計算方法が明確に決まっています。場合によっては,自賠責基準の休業損害額を踏まえて金額交渉することもあるため,計算方法の特徴は押さえておくのが適切でしょう。
立場ごとの計算方法は以下の通りです。

①会社員(給与所得者)の場合

休業損害証明書を用いて,以下の通り計算します。

【日額】(事故前3か月分の給与額合計)÷90
【日数】休業損害証明書上の休業日数

②自営業(事業所得者)の場合

事故前年分の確定申告書を用いて,以下の通り計算します。

【日額】申告所得額÷365(日額が6,100円に満たない場合は,6,100円)
【日数】実通院日数

③主婦(家事従事者)の場合

【日額】6,100円
【日数】実通院日数

休業損害を請求する方法

基本的なステップは以下の通りです。

【①会社員(給与所得者)の場合】

①相手保険への連絡休業損害が発生したことをできるだけ速やかに共有
②必要書類の取得相手保険から休業損害証明書の書式などを送付してもらう
③勤務先への依頼休業損害証明書の記載と事故前年分の源泉徴収票の発行を依頼する
④相手保険に提出勤務先又は自分から相手保険に郵送する
⑤内容の確認相手保険にて書面の内容を確認し,金額計算する
⑥支払相手保険から自分の指定口座に振り込む方法で支払われる

【②自営業(事業所得者)の場合】

①相手保険への連絡休業損害が発生したことをできるだけ速やかに共有
②書類の提出事故前年分の確定申告書を相手保険に郵送する
③追加提出休業の日額や日数について特に主張立証したいことがある場合は,積極的な提出が必要
④内容の確認相手保険が内容を確認し,金額計算する
⑤支払相手保険から自分の指定口座に振り込む方法で支払われる※
※実通院日数を基準に休業日数を計算する場合,通院終了後の支払が一般的

【③主婦(家事従事者)の場合】

①相手保険への連絡主婦であることを相手保険に通知
②必要書類の取得家族構成を通知するための書面などを送付してもらう
③書類への記載等家族構成の記載や,必要に応じて住民票等の取得をする
④相手保険に提出書類一式を相手保険に郵送する
⑤内容の確認相手保険が内容を確認し,金額計算する
⑥支払相手保険から自分の指定口座に振り込む方法で支払われる※
※通院終了後の支払が一般的

会社員の場合に注意すべきこと

会社員の場合,休業損害証明書で客観的に計算できそうですが,自賠責基準に従って計算するのみだと日額の計算で損をする可能性がある点に注意をするべきでしょう。

自賠責基準の計算方法をおさらいすると,以下の通りです。

【日額】(事故前3か月分の給与額合計)÷90

要するに,1か月=30日,3か月=90日を前提に,3か月分の給与を単純に日割りするということになります。
しかし,この手段だと,仕事が休みの日も含めた日数で割り算をしてしまっており,計算方法によっては金額が小さくなってしまいかねません。

例えば,1か月の稼働が25日,月の給与額が30万円という場合,1日休んだ場合の休業損害は,自賠責基準だと以下の通りです。

【自賠責基準の日額】(30万円÷30日)=1万円

そして,25日全てを休んだ場合,合計の金額は以下の通りです。

(1万円×25日)=25万円

しかしながら,これは実際の給与額30万円より5万円小さくなってしまっています。
このような計算が起きるのは,日額を計算するときには休みの日を算入しているにもかかわらず,日数を計算するときに休みの日を無視しているために生じているのです。

日額の計算に際して休みを算入するのであれば,日数を計算する際にも休みを算入するのが適切です。具体的には,連続した休業中の休日は,休業日数に算入する必要があります。
上記の例では,稼働した25日でなく,その休業中の休日5日も含めた30日を対象日数とすることで,適正な金額計算が可能になるわけです。

一方,1日だけ休んだ場合には,日数の計算で休みを無視しているので,日額の計算でも休みを無視すると適切な計算が可能になります。
具体的には,収入額を稼働日数で割ることが適切です。上記の例では以下の通りになります。

【稼働日数を基準にした日額】(30万円÷25日)=12,000円

以上の通り,自賠責基準の計算結果より,実際には金額が大きくなるべき場合があることには注意をしたいところです。

自営業の場合に注意すべきこと

自営業の休業損害は,休業損害の中で最も争点が生じやすいケースと言えます。争点になりやすい具体的な事項としては,以下の点が挙げられます。

①休業の必要

自営業の場合,休業があったことや休業の必要があったことを証明してくれる第三者がいないため,そもそも休業の必要があったか,という問題が生じる場合があります。

この場合,まずは医学的な休業の指示を受けるのが望ましいでしょう。指示が受けられる場合は,指示書や診断書といった形式で書面化するのが適切です。
医師の指示が得られない場合は,業務の内容やお怪我の業務への支障,休業を要する業務の範囲やその理由などを,できる限り具体的に相手保険会社へ説明し,理解を求めることが重要になります。

②休業日数

一定の休業が必要である場合,その必要な休業日数がどの程度であるかが問題になることもあります。休業が必要としても,1日だけで足りるか1カ月必要であるかなど,具体的な期間は見解に相違が生じやすいところです。

この点,やはり可能であれば医師の指示があると望ましいでしょう。例えば,骨折で骨癒合が不十分である場合には,業務に耐えられる程度の骨癒合が得られるまでは休業を指示してもらう,といった場合があり得るところです。
一方,それが難しい場合には,相手保険会社との粘り強い協議が必要になるところです。自営業の休業損害では自分で主張立証を尽くす必要があることを念頭に,できる限り丁寧な説明や根拠の提出に努めるのが望ましいでしょう。

③日額

自営業の休業損害日額については,固定経費を収入に含めて計算することが適切です。
固定経費とは,休業があってもなくても発生する経費をいい,具体的には地代家賃,租税公課,損害保険料,減価償却費といったものが挙げられます。

そもそも,経費を除いて(収入でなく所得の金額を基準に)日額を計算するのは,休業することによって経費も発生しなくなるからです。そうであれば,休業によっても変わらず発生する経費は,日額の計算に含めるべきことになります。

この固定経費がいくらであるかは,確定申告書だけでは分からないので,別途収支内訳書(青色申告の場合は青色申告決算書)を提出するのが適切です。

主婦の場合に注意すべきこと

主婦の休業については,以下のような場合が問題になりやすいです。

①休業日数

主婦の場合,休業の客観的な立証が困難である上,休業自体もあいまいになりやすいため,休業日数が何日であるかが問題になりやすいでしょう。
この点,自賠責基準では実通院日数を機械的に休業日数としますが,主婦休損の計算時に実通院日数を休業日数としなければならない,というルールはありません。自賠責保険金額をそのまま受領するのであれば,自賠責基準に沿った計算で足りますが,以下のような場合には日数計算を検討しなおす必要があります。

①自賠責の上限を超えてしまう場合
→自賠責基準の休業損害がそのまま支払われるわけではないため,相手保険が自賠責基準の計算に従うことが考えにくくなります。

②日額を裁判基準で請求する場合
→主婦の休業損害の日額は,自賠責保険の場合には6,100円ですが,裁判基準で用いられる賃金センサスを参考にするとより大きな金額になります。一例として,令和5年の場合,以下の金額となります。

3,996,500円÷365≒10,949円

そのため,日額を賃金センサスに改め,「10,949円×実通院日数」の休業損害を請求したいところですが,日額を改めたときに休業日数を実通院日数のままにしなければならない,というルールは存在しないため,日数計算を検討しなおす必要が生じます。

②兼業の場合の処理

兼業主婦の場合,勤労時間が概ね週30時間未満のパート勤務であれば,主婦の休業損害が支払われる対象になります。一方,フルタイム勤務の場合,主婦の休業損害の対象とされることはあまりありません。
週30時間未満のパートタイマーであれば,主婦の休業損害の方が金額の大きい場合が通常であるため,主婦を念頭に置いた休業損害の計算が有益になるでしょう。

ただ,短時間のパートタイマーであっても,そのパート勤務の休業がない(又はわずかしかない)場合には,主婦としての休業もあまり必要がなかった,との判断で休業損害の有無や金額に争いの生じる場合があります。

休業損害が支払われない場合

休業損害は,文字通り休業による損害であるため,事故によって休業の損害が発生した場合に限り支払いがなされます。休業損害が支払われない場合としては,以下のようなケースが挙げられます。

①収入減少がない

休業しても収入減少がない場合には,休業による損害がなく,休業損害は支払われません。代表例としては,会社役員や会社代表者が挙げられます。年俸などの報酬制を取っており,休業しても収入額に影響がなければ,休業損害の支払は生じないことになります。

もっとも,会社役員や会社代表者であっても,その報酬の中に勤労の対価の性質を持つ部分があり,その部分が減少する場合には,休業損害が発生します。

②因果関係がない

事故後に休業したものの,休業と事故との間に因果関係がない場合には,休業損害は支払われません。
例えば,事故前から元々休む予定であった,仕事ができる状態であったのに独断で休業した,といった場合が挙げられます。

交通事故の休業損害に強い弁護士をお探しの方へ

休業損害は,請求方法や請求時の提出資料に注意すれば,円滑に適切な金額を受領することは決して難しくありません。
しかし,実際に適切な請求をできる人は多くなく,保険会社との間で迅速な解決ができていないケースが多数見受けられます。
休業損害について保険会社の取り扱いに問題が生じている場合は,一度弁護士にご相談するのが望ましいでしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

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