交通事故の訴訟・ADRとは何をする?時間かかるって本当?訴訟やADRを行うのはどんなリスクがある?事故の解決でお悩みの方へ

●交通事故で訴訟をすべき場合について知りたい

●ADRとは何か?訴訟と何が違うか?

●訴訟やADRはどのくらいの期間がかかるか?

●訴訟のリスクやデメリットを知りたい

●交通事故の訴訟は弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の訴訟やADRについてお困りの方に向けて,交通事故で訴訟をすべき場合ADRの手続訴訟やADRのメリット・デメリットなどを解説します。

交通事故で訴訟に至る場合

交通事故の損害賠償に関する問題が訴訟に至る場合は,簡単に言えば交渉不成立との結論になった場合です。そして,交渉不成立と判断するのが被害者側であるか加害者側であるかによって,訴訟の内容に若干の差異が生じます。

示談不成立と判断した側訴訟の内容
被害者損害賠償の請求
加害者債務(一部)不存在の確認

被害者側が交渉を断念して訴訟を行う場合,その希望する請求額を裁判所に認めてもらうことを目指して訴訟提起します。これは,損害賠償請求の訴訟となります。
一方,加害者側が交渉を断念して訴訟を行う場合,加害者側が認める以上の支払は必要ないはずである,という主張を内容とする訴訟になります。これは,債務の不存在確認の訴訟となります。

もっとも,これらは同じ紛争を当事者それぞれの目線で訴訟にしているという違いしかないため,訴訟における争点や解決方法はほとんど同様になるでしょう。

ADRとは

ADR(Alternative Dispute Resolution 代替的紛争解決)とは,裁判外の紛争解決手続を言い,裁判を通じずに交通事故事件を解決するための制度です。
ADRは,示談交渉は難しいものの,訴訟までは希望しないという場合の中間的な解決方法,というべき位置付けの手続です。訴訟とは異なり,担当者が間に入って和解のための仲介を行う制度であるため,ADRを用いた場合には基本的に話し合いによる合意を目指すことになります。

ADRの基本的な流れは以下の通りです。

①法律相談電話又は面談で相談を受け付ける
②和解あっせんADR機関が間に入って和解の協議を行う
③審査和解が成立しない場合,ADR機関が結論を出す

交通事故のADRには,主に「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」の二つがあります。いずれも和解あっせん及び審査の対応が可能です。
なお,審査の結果結論をだすことを「裁定」と言いますが,裁定案を拒否すると訴訟に移行することになります。

訴訟とADRの違い

訴訟とADRは,いずれも交渉が奏功しない場合に紛争解決を目指す手続ですが,以下のような違いが挙げられます。

【項目】【訴訟】【ADR】
手続の形式法律の定めに従う柔軟な取り扱いが可能
関与する人裁判所(裁判官)あっせん担当弁護士
解決のスピード長期間を要しやすい訴訟よりは短期間になりやすい
費用訴訟費用や弁護士費用等が発生申立て無料
公開性公開の法廷における審理非公開の手続
賠償額遅延損害金や弁護士費用を加算遅延損害金や弁護士費用は通常加算しない
強制力法的拘束力があり,履行を強制させられる合意内容の強制力はない

基本的な差異としては,訴訟だと厳格な手続で一定の費用が発生するものの,解決内容に強制力があるADRだと柔軟な手続で費用なく実施できるものの,解決内容に強制力はない,という区別ができるでしょう。

一部例外はありますが,裁判所の判断を求めるときには訴訟,協議の場を求めるときにはADRを利用するのが有力な選択になりやすいです。

訴訟やADRにかかる期間

訴訟もADRも,第三者を交えた紛争解決手続のため,手続に期間を要するものとなります。ただし,一般的には訴訟の方がより長期間を要することになりやすいでしょう。

一般的な解決期間の目安には,以下のような違いがあります。

訴訟ケースによって1年を超えることも多数
ADR3~6か月程度が多い

手続の選択に際しては,長期間の手続を許容できるか,という点も踏まえての検討が望ましいです。

ポイント
ADRは第三者の弁護士が間に入って和解の仲介をする手続
ADRは訴訟より短期間・柔軟・安価な手続だが,賠償額に限りがあり強制力がない
訴訟はケースにより年単位,ADRは3~6か月ほどの期間がかかりやすい

訴訟やADRのメリット

訴訟やADRの最も大きなメリットは,交渉が奏功しなかった場合にも適正な賠償額を受領することが可能である,という点です。

交渉の場合,合意のできる金額や条件は相手方の判断によって左右されます。相手方の主張が明らかに不合理であっても,相手方にその主張を撤回して対応を改める意思がなければ,適正な内容での解決はできません。
この点,訴訟やADRでは,客観的で公正な判断のできる第三者が介入するため,相手方の不合理な主張が原因で適正な結果が獲得できない,ということが生じません。訴訟やADRを利用した場合の結論は,少なくとも客観的に見て不合理でない内容となることがみこまれます。

また,訴訟やADRを用いるメリットとしては,示談交渉よりも賠償金額が大きくなる可能性がある,という点が挙げられます。

交渉では,訴訟などの手続を行っていないことを理由に,訴訟で認められ得る最大額での合意を行うことは通常ありません。これは,訴訟での最大額(いわゆる裁判基準)の金額は裁判で必要な立証を尽くし,裁判所が被害者の主張を全面的に認めた場合に初めて認められる金額であるため,と説明されます。訴訟の負担なく,訴訟での必要な立証を尽くしていない状況下では,裁判で全て立証されたのと同等の金額は支払われない,というわけです。
しかし一方で,現実に訴訟などで必要な立証を尽くせば,裁判基準の全額を支払ってもらうべきということになります。訴訟やADRを行い,賠償金を減額すべき事情がないとの判断に至った場合,示談交渉で獲得できるよりも賠償金額が大きくなるでしょう。

加えて,訴訟に限るメリットですが,賠償金額として遅延損害金と弁護士費用の請求を追加で行うことが可能です。

遅延損害金は,利息に該当するものです。交通事故の損害賠償は,民法上の「不法行為」を根拠にするものですが,不法行為に基づく損害賠償は,不法行為時に賠償義務が生じるため,時間を経るごとに利息が加わり,加害者は利息を加えた金額の賠償を要します。
本稿の執筆時では,法定利率が年3%のため,例えば100万円の損害を1年後に賠償する場合だと,103万円の支払が必要になります。

あわせて,不法行為の損害賠償を訴訟で請求する場合,請求額の10%を弁護士費用として上乗せし請求するのが訴訟手続の一般的な運用とされています。100万円の請求を行う場合だと,10万円を弁護士費用として別途請求することが可能です。

遅延損害金と弁護士費用の請求は,訴訟をした場合にのみ発生するものであるため,訴訟のメリットということができるでしょう。

訴訟やADRのリスク・デメリット

訴訟やADRのリスクとしては,まず,交渉よりも賠償金額が小さくなる可能性が挙げられます。

交渉の際に争点があった場合,その争点に対する見解の違いをどのように金額に反映させるかは,当事者それぞれの判断となります。そのため,被害者に不利益な相手方の主張を金銭換算するといくらになるのかは,相手方が自己判断しているに過ぎません。そして,裁判所は,交渉で相手方が主張した金額に拘束されるわけではありません。

そうすると,訴訟で相手方の主張が裁判所に採用されたとき,それを金額に反映した結果は,相手方が交渉で主張していたよりも更に被害者に不利な金額である可能性があります。例えば,交渉で相手が自分の主張を前提とした提案を100万円としていたとしても,訴訟で相手の主張がそのまま認められた結果の金額が50万円になってしまう,ということは十分に考えられるのです。

また,他のリスクとしては,交渉のときにはなかった新たな争点が生じ得る,という点があります。

示談交渉の際には,円満解決を目指す目的で,言い分の全部又は一部を相手には示さないのが一般的です。言い分をあれもこれも突き付けてしまうと,お話合いでの解決に支障が生じやすいためです。全体の金額が合意できるのであれば,あえて言い分の全てをぶつけ合わない方が早期に穏やかに解決できるのが通常でしょう。

しかし,訴訟に至った後は,互いにそのような配慮はしません。そのため,交渉段階では控えていた言い分でも,訴訟では主張するということが多く見られます。
その結果,訴訟段階で初めて相手がぶつけてきた主張を裁判所が認め,交渉段階では予期しなかった理由で不利益な結果になる可能性も否定できません。

さらに,現実的な問題としては,主張立証の負担が重くのしかかるデメリットもあります。

訴訟やADRは,主張した内容が客観的に認められるか,つまり主張した内容が立証できるか,という問題になります。そのため,交渉段階でそれほど厳密に立証を求められなかった内容であっても,訴訟等では根拠に乏しい曖昧な主張では認められません。
厳密な主張立証の負担が生じた結果,立証を尽くすことができなかった場合には,やはり交渉よりも不利益な結論になってしまう可能性があるでしょう。

ポイント

訴訟やADRのメリット
交渉が奏功しなくても適正な賠償を受け取れる
示談よりも賠償金額が大きくなる可能性がある
訴訟では遅延損害金と弁護士費用を追加請求できる

訴訟やADRのデメリット
交渉よりも賠償金額が小さくなる危険がある
交渉のときに生じなかった争点が生じ得る
主張立証の負担が重い

交通事故の訴訟やADRは弁護士に依頼すべきか

交通事故の訴訟やADRについては,可能であれば弁護士に依頼をしたいところです。それだけ,訴訟やADRは交渉よりも手続負担の重いものであり,ご自身での対応に限界が生じやすいでしょう。
もっとも,訴訟やADRが金銭を請求する手続である以上,弁護士に依頼することで金銭的に利益があるのか,逆に損失が見込まれるのかは,非常に重要な問題です。

そのため,弁護士依頼に関しては,個別の具体的な事情を踏まえて利益が見込まれるか損失が見込まれるか,交通事故に精通した弁護士へ十分に相談することをお勧めいたします。弁護士にご相談いただくことで,あり得る可能性やリスク,具体的な流れなどをご案内することが可能です。

ポイント 訴訟やADRの弁護士依頼
依頼することで利益が見込まれるか損失が見込まれるか,弁護士に相談して確認すべき

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故の訴訟やADRは,どのような対応をするかで結果が劇的に変わる場合が非常に多いものです。
もっとも,個別の事件でどのような対応をすべきかは,内容や争点により様々であるため,交通事故に精通した弁護士へのご相談が肝要です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

交通事故の示談交渉はどのように行う?自分でやるのと弁護士に依頼するのはどう違う?交通事故示談の要点を徹底解説

●交通事故の示談とは具体的に何か?

●交通事故の示談交渉の流れを知りたい

●保険会社の提示を受け入れてよいか?

●自分で示談交渉できるか?

●示談交渉はどんな点に注意すべきか?

●示談交渉で弁護士に依頼するべき場合は?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の示談交渉についてお困りの方に向けて,示談交渉の流れや内容留意すべき点や弁護士に相談するべき場合などを解説します。

交通事故の示談とは

交通事故における示談とは,交通事故被害者の損害賠償額を当事者間の協議で解決することを言います。交通事故の示談は,加害者側の保険会社と被害者(代理人弁護士)の間で行うのが通常です。
示談が成立した場合,加害者側保険会社が一定の金銭を支払い,それ以上には互いに金銭の関係がない(関係が清算された)ことを確認する内容の合意を取り交わし,終了します。

示談による解決の主な特徴としては,以下の点が挙げられます。

【メリット】

①迅速性裁判では数か月~年単位を要することも
②費用裁判手続の費用が発生せず解決できる
③柔軟さ示談内容は双方が合意できる限り自由
④秘密保持裁判は判決内容が公開される

【デメリット】

①譲歩の必要裁判で賠償され得る満額での合意は,保険会社に利益がなく実現困難
②金額の限界裁判をしなければ請求できない金銭もある(弁護士費用・遅延損害金)

もっとも,必ずしも裁判をすれば示談のときより金額が大きくなるというわけではありません
通常,示談交渉に際しては,互いに言い分の全てを相手にぶつけることはせず,円満解決の可能な金額の水準を協議することになりますが,裁判になるとそのような配慮はなくなります。そのため,裁判になると示談のときには出てこなかった争点が生じ,その争点について不利益な判断がなされれば,示談できたはずの金額より裁判の結果の方が小さな金額になってしまうことは十分に考えられます。

具体的なケースで示談での解決が有益かどうかは,交通事故に精通した弁護士への十分なご相談をお勧めします。

示談交渉の流れ

示談のメインとなる人身損害について,交通事故の発生から示談交渉までの流れは,概ね以下の通りです。

①交通事故の発生当事者間の連絡がスタート
②通院実施医師の指示に沿って入通院治療を受ける
③症状固定治療が終了時期に至る
④後遺障害等級認定後遺障害について等級認定を求める(行わない場合は省略)
⑤示談交渉の準備診断書やレセプトなど,示談交渉に必要な資料を取得する
⑥示談交渉の実施損害賠償額について話し合いをする
⑦示談内容の合意賠償金額や支払方法などについて当事者間で合意する
⑧示談書面の取り交わし合意を証するための書面を取り交わす
⑨入金・解決指定口座に入金がなされ,示談は解決となる

また,示談交渉を実施するときの大まかな流れは,以下の通りです。

【弁護士がいる場合】

①既発生の損害を確認医療機関に支払われた治療費,既に被害者へ支払われた金銭の内容や額を確認する
②弁護士による損害計算弁護士にて請求金額を計算する
③弁護士が相手保険に請求弁護士が相手保険に請求内容を示す
④相手保険の対案保険会社が合意内容の対案を示す
⑤示談交渉合意に至るまで協議を続ける
⑥示談成立口頭で合意を確認した後,保険会社と弁護士の間で書面を取り交わし解決

【弁護士がいない場合】

①保険会社による賠償額提示賠償額の明細を添えて書面で提示されることが一般的
②被害者側の返答承諾すれば示談成立,承諾しない場合は交渉継続
③示談交渉合意に至るまで協議を続ける
④示談成立保険会社と被害者の間で書面を取り交わし解決

相手保険の提示は妥当か

被害者が相手保険会社から損害賠償額の提示を受けた際,「提示金額が妥当か」というご相談が弁護士に寄せられることは非常に多いところです。

結論から言うと,基本的には,保険会社の被害者への提示金額が弁護士の目指す金額と同水準ということはありません。この点の十分な理解のためには,まず自賠責保険と任意保険の関係について把握する必要があります。

自動車保険には,主に自賠責保険と任意保険がありますが,両者の位置付けは以下のように区別できます。

【保険の種類】【加入の要否】【補償の範囲】
自賠責保険法律上強制加入法律等で定められた最低限の補償
任意保険加入するかは任意自賠責保険を超える損害の補償

任意保険は,自賠責保険が行う最低限の補償ではカバーしきれない損害を,加害者本人に代わって支払うべき立場にある,ということになります。そのため,任意保険の立場としては,自賠責の補償でカバーしきれない部分が存在しなければ,自社負担で支払う金銭が必要がなく,最も得である,という結論になります。

以上の経緯から,任意保険会社が被害者の方に提示する損害賠償額は,自賠責保険で補償される金額と同額であることが非常に多く見られます。この金額は,法律等で定められた最低限の補償額でしかないため,基本的には弁護士が交渉で目指す水準との間に開きのあることが通常でしょう。
これに対して,保険会社の提示と弁護士の目標水準に差のないケースもあり得ます。代表例としては,以下のようなものが挙げられます。

1.被害者側に相当程度の過失がある場合
2.通院日数が非常に少ない場合
3.保険会社が特に配慮して金額提示等をしていた場合

なお,保険会社は,被害者との間で示談を取り交わした場合,自社で被害者に支払をした後,自賠責保険に保険金の支払を請求します。被害者に支払う金額と自賠責から受領できる金額が同じであれば,賠償の負担は差引ゼロになる,という寸法です。

ポイント
保険会社の提示が弁護士の目指す金額水準であることは基本的にない
自賠責保険の金額を提示金額とすることが多い
過失がある場合などは目標金額に近いこともある
任意保険は,被害者に支払った後に自賠責保険から回収する方法で補填する

自力で保険会社と示談交渉を行うことは可能か

弁護士に示談交渉を委任する場合,どうしても弁護士費用の問題が生じます。そのため,弁護士に頼らず自力で慰謝料の交渉をする選択肢を検討することもあるかもしれません。

しかしながら,弁護士に依頼せず自力で保険会社と交渉しても,その交渉はあまり奏功しないのが通常です。これは,示談交渉に関する保険会社の運用によるものです。

保険会社は,弁護士の有無で賠償金額の計算方法を変える運用をするのが一般的です。具体的には,弁護士がいない場合には自賠責保険の補償額を念頭に金額提示し,一方で弁護士がいる場合にはいわゆる裁判基準(弁護士基準)と言われる水準を念頭に計算する,というのが保険会社の基本的な運用になっています。
そのため,弁護士に依頼せず自力で交渉を試みても,保険会社の運用上,どうしても相手保険の対応に限界が生じやすく,交渉が奏功しない結果になってしまうのです。
保険会社と慰謝料の交渉を試みる場合には,弁護士への依頼が必須であると理解するのが適切でしょう。

なお,弁護士が保険会社と慰謝料の交渉を行う場合,裁判で認められ得る最大額の80~90%を目指すというのが一般的な運用とされています。この金額と相手保険の提示内容との差額が,弁護士の交渉による増額ということになります。

ポイント
自力交渉は保険会社の運用上困難
弁護士の慰謝料交渉は裁判で認められ得る最大額の80~90%を目指すのが一般的

示談交渉の際に注意すべき項目

①物損の主な示談項目

①修理費修理工場と保険会社の間で協定を行い,金額を定める
②代車費用修理に必要な期間中,代車を借りるための費用
③評価損新車で車両の価値に損害が生じた場合の損害
④休車損害車両が利用できないため得られなくなった利益(収入)

【全損の場合のみ】

①車両時価額車種・年式・走行距離を基準に計算する
②買替諸費用全損のため新たに車両を購入した場合,購入に伴って支出を余儀なくされた費用(※)
※主な買替諸費用としては,登録費用,車庫証明費用,納車費用,リサイクル費用などが挙げられます。

項目のうち,代車費用についてその期間が,評価損についてその有無が,それぞれ問題になることが多く見られます。

代車費用は,基本的に2~4週間程度を目安にすることが多く見られます。現実にそれ以上の期間がかかった場合にどうするか,という争点が生じやすい傾向にあるところです。トラブル回避のためには,自分の保険で代車特約が利用できないか,確認することも有益です。
評価損については,修理歴がついたから必ず発生するわけではなく,基本的に新車にしか生じないとされています。具体的には,登録からの期間,走行距離,車種(高価な方が生じやすい)等が判断基準になるでしょう。評価損の金額は,修理費の10~30%ほどとみなす例が多く見られます。

また,全損とは,車両の修理費が時価額を上回ってしまうことを言います。車両の損害は,車両そのものの価値を超えることはないため,修理費が時価額を上回ってしまうと,修理費全額は支払われず,時価額までの支払となります
全損の場合には,時価額がいくらか,という問題が生じやすいところです。相手保険の主張する金額が低い,と考える場合は,中古車市場における同種車両の販売価格を確認し,これを基準に金額の主張をするのが有力でしょう。

なお,全損の場合,時価額に加えて買替諸費用の支払も受けられるのが一般的です。ただし,買替諸費用が発生するのは現実的に買い替えた場合に限られます。

ポイント 物損で問題になりやすい項目
代車費用の期間
評価損の有無
車両時価額がいくらか

②人身の主な示談項目

①治療費治療に要した実費が対象となる
②入院雑費入院中に発生する生活関係費
③通院交通費通院に要した交通費。自家用車や公共交通機関が基本
④休業損害休業を要した場合に「日額×日数」分が発生する
⑤傷害慰謝料入院期間,通院期間,実通院日数を基準に計算する

【付添看護を要した場合】

①入院付添費入院時に付き添いを要した場合に発生
②通院付添費通院時に付き添いを要した場合に発生

【後遺障害等級認定された場合】

①後遺障害慰謝料後遺障害等級に応じて発生
②逸失利益後遺障害に伴う労働能力の低下により生じた収入減少
③将来介護費介護を要する後遺障害に対して発生


主に争点の生じやすい項目と交渉方法としては,以下のものが挙げられます。

【項目】【争点】【交渉方法等】
通院交通費タクシー利用医師からタクシー通院の指示をもらう

事前に相手保険と相談する
休業損害①休業の必要な期間医師から休業の指示をもらう

休業の事情や内容を事前に保険会社と共有し,承諾を得る
休業損害②自営業者の基礎収入額・休業の必要確定申告書や事故直前の収入額に関する資料を提出する

休業を要する事情を丁寧に説明する
傷害慰謝料対象期間症状固定時期について医師の指示をもらう

保険会社と事前に交渉する
逸失利益①対象期間の長さ後遺障害が仕事に影響を及ぼす具体的な内容を説明する
逸失利益②対象期間(定年後)定年後の再雇用予定などを示す
将来介護費日額どのような介護が必要か,どのような医師の指示があったかを示す(職業付添人を要する方が金額が高くなりやすい)

示談が成立しやすいケース・しづらいケース

交通事故の示談は,争点になる項目が少ないほど示談が成立しやすくなります。特に,争点が慰謝料額のみである場合は,合意に至り,示談が成立しやすくなると言えるでしょう。

一方,当事者間の主張に隔たりが大きい場合は,示談の成立がしづらい傾向にあります。代表例が過失割合に関する争いでしょう。双方がともに被害者であると主張しているなど,過失割合に関する主張が大きく異なっていると,個別の損害項目の交渉に入ることもできず,その結果示談の成立も困難になりやすいところです。

ポイント
慰謝料のみの交渉は特に示談が成立しやすい
過失割合の主張に差が大きいと示談の成立が困難

示談交渉の余地がないケース

代表例が自損事故の場合です。自損事故では,自分の人身傷害保険に対応してもらい,人身傷害保険金を受領するのが通常ですが,人身傷害保険金の慰謝料などは,約款で金額が全て定められており,交渉の余地がありません。いわゆる自賠責基準・裁判基準といったものもないため,注意しましょう。

もっとも,後遺障害等級が何級に認定されるか,後遺障害等級が認定された場合の逸失利益がいくらか,という点については,弁護士に依頼したり交渉してもらったりする余地があり得ます。具体的な判断については弁護士に相談してみることをお勧めします。

ポイント
自損事故は慰謝料の交渉余地がない
後遺障害等級に関する弁護活動の余地はあり得る

弁護士への相談・依頼が有力な場合

弁護士に示談交渉の相談や依頼を行う場合,弁護士への依頼によって弁護士費用を超える利益が得られるのであれば,依頼が有益と言えます。具体的には,以下のような場合に弁護士への依頼が有益になりやすいでしょう。

①過失がない場合

過失がある場合,損害の一部が自己負担になります。その影響で,弁護士への依頼によって得られる利益が目減りしてしまう可能性が生じます。
過失がなければ,過失による利益の目減りが生じないため,弁護士への依頼が有益になりやすいと言えます。

②受傷の程度が大きい場合

骨折を伴っているなど,受傷の程度が大きい場合,損害賠償額も大きくなりやすい傾向にあります。そのため,弁護士への依頼により増額し得る幅も大きくなりやすく,弁護士への依頼が有益になることが多いでしょう。

③後遺障害等級が認定された場合

後遺障害等級が認定されると,後遺障害に対する慰謝料や逸失利益といった損害が新たに発生します。それらの金額は大きなものになりやすいため,弁護士依頼による増額幅も大きくなりやすく,弁護士依頼が有益になるのが通常です。

④弁護士費用特約の利用ができる場合

弁護士費用特約が利用できれば,弁護士依頼による費用を保険会社に支払ってもらうことができます。そのため,弁護士依頼による利益が特に大きくなくても,弁護士への依頼が有益になりやすいでしょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故の示談交渉は,弁護士の有無で結果が大きく変わる可能性があります。
もっとも,実際にご自身のケースで結果が変わるのか,どのように変わる可能性があるのかを判断することは難しく,具体的な検討は交通事故に強い弁護士へのご相談が

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

後遺障害等級の認定方法は?基準は?デメリットはある?弁護士の要否も詳細解説【交通事故】

●後遺障害等級とは何か?

●後遺障害等級はどのように認定されるのか?

●後遺障害等級認定されるとどんな支払があるのか?

●後遺障害等級認定の基準は何か?

●適切な等級認定を受けるためにはどうするべきか?

●後遺障害等級認定を受けるデメリットはあるか?

●後遺障害等級認定については弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,後遺障害等級認定の手続や判断基準後遺障害等級認定を獲得するためにするべきこと弁護士依頼の要否などを解説します。

後遺障害等級認定とは

交通事故で後遺障害が残った場合,これに対する金銭賠償を受けるためには,特定の後遺障害等級に該当するとの認定を受ける必要があります。交通事故によって負った怪我や病気の後遺症が残った場合に,その障害の程度を評価して等級を付与する制度を,「後遺障害等級認定」といいます。

後遺障害等級認定は,交通事故被害者が被った後遺障害の程度を客観的に評価し,これに基づいて適切な賠償を行うために実施されるものです。後遺障害等級が認定された場合,その等級に応じて慰謝料や逸失利益といった金銭賠償の対象となります。

被害者本人が後遺障害の存在を主張したとしても,それを個別に金銭換算することはできないため,等級という一定のハードルを設けるのが後遺障害等級認定の制度となります。どこまでのハードルを越えたか,つまりどの等級に認定されたかによって,賠償額の計算基準が決まり,後遺障害の程度や内容に応じた適正な金銭賠償が可能になります。

後遺障害等級認定の方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

後遺障害等級認定された場合の支払

後遺障害等級が認定された場合の,被害者への基本的な支払内容は以下の通りです。

①慰謝料

慰謝料とは,精神的苦痛に対する賠償を指します。後遺障害等級の対象になる症状が残存したことに対する精神的苦痛を金銭換算したものがが,後遺障害慰謝料です。
慰謝料の金額は等級によって異なります。等級ごとの後遺障害慰謝料額は,以下の通りです。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

②逸失利益

後遺障害の逸失利益とは,後遺障害が生じたことによって労働能力が低下した結果,減少する収入額に応じた賠償を指します。
後遺障害等級が認定される場合,等級に応じて労働能力が一定程度減少したものと評価され,労働能力が低下した分だけ将来の収入が減少するものとみなします。その収入減少を逸失利益といい,後遺障害等級が認定された場合には賠償の対象となります。

具体的な計算方法については,こちらの関連記事をご参照ください。

適切な等級認定を受ける方法

望ましい後遺障害等級認定を受けるためには,目指す等級認定の基準に着目し,その基準を満たすことが分かる内容で診断書等の作成を受けることが適切です。

後遺障害等級の中には,測定値のみで結論の出るものもありますが,その判断に用いられる測定値が漫然と測定したものなのか,認定基準を踏まえて測定したものなのかによって,測定値そのものも変化する可能性があり,当然ながら認定結果にも影響し得ます。
また,症状固定前の入通院段階から,主治医の先生に必要な事項を診断書等に記載していただいておく,カルテに残しておいていただくなど,等級認定に備えた記録化,証拠化は非常に重要な意味を持つことも珍しくありません。

特に重大な受傷が生じてしまったケースの場合,等級認定によって極めて大きな金額の変化が生じる可能性もあるため,早期に交通事故に精通した弁護士へのご相談をお勧めします。

後遺障害等級認定のデメリット

後遺障害等級認定に関する疑問として,認定を受けることのデメリットを懸念される場合が散見されます。何らかの障害者とみなされることで,社会生活上の不利益を被るのではないか,という意味ですね。

しかしながら,そのような不利益やデメリットというものは特段ありません。後遺障害等級によって社会生活上の何らかのレッテルを貼られるものではなく,後遺障害等級は単純に交通事故の損害賠償額の基準となるもの,という位置づけにとどまります。

「後遺障害」という語句に特別な懸念をされることなく,後遺障害等級認定を目指して差し支えないでしょう。

後遺障害等級認定を弁護士に依頼すべき場合

後遺障害等級認定は,交通事故の中でも最も大きく損害賠償額に影響し得る性質のものということができます。しかし,その内容は一見では複雑にも映り,日頃から交通事故に携わる立場にないと適切に対処することは容易ではありません。損害賠償額に甚大な影響を及ぼす後遺障害等級認定については,基本的に弁護士への依頼が適切でしょう。

もっとも,弁護士費用の方が高くつく事態,いわゆる費用倒れは避ける必要があります。この点,費用倒れを避けやすいケースとしては,以下の場合が挙げられます。

①お怪我の規模が大きい場合
②ご自身に過失がない場合
③弁護士費用特約がある場合

これらは代表例ですが,他にも弁護士依頼が有益である場合も考えられますので,具体的なケースについては弁護士への相談を実施することをお勧めいたします。

ポイント
適切な等級認定を受けたい:あらかじめ等級認定基準に着目して入通院や検査等を受ける
後遺障害等級のデメリット:特にない
弁護士への依頼:費用倒れが避けられる見込みがあれば積極的に

後遺障害1級の認定基準

1級の認定基準一覧

要介護(別表第1)

要介護1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
要介護1級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

その他の後遺障害(別表第2)

1号両眼が失明したもの
2号咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3号両上肢をひじ関節以上で失つたもの
4号両上肢の用を全廃したもの
5両下肢をひざ関節以上で失つたもの
6号両下肢の用を全廃したもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害1級】主な症状や認定基準,賠償金額の具体的計算などを弁護士が解説

後遺障害2級の認定基準

2級の認定基準一覧

要介護(別表第1)

要介護2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
要介護2級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

その他の後遺障害(別表第2)

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になつたもの
2号両眼の視力が0.02以下になつたもの
3号両上肢を手関節以上で失つたもの
4号両下肢を足関節以上で失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害2級】認定されるケースの症状は?認定された場合の補償金額は?

後遺障害3級の認定基準

3級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの
2号咀嚼又は言語の機能を廃したもの
3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5号両手の手指の全部を失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害3級】該当する症状の程度から請求可能な金額まで一挙解説

後遺障害4級の認定基準

4級の認定基準一覧

1号両眼の視力が0.06以下になつたもの
2号咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3号両耳の聴力を全く失つたもの
4号一上肢をひじ関節以上で失つたもの
5号一下肢をひざ関節以上で失つたもの
6号両手の手指の全部の用を廃したもの
7号両足をリスフラン関節以上で失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害4級】主な症状や賠償金の相場などを弁護士が詳細解説

後遺障害5級の認定基準

5級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの
2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4号一上肢を手関節以上で失つたもの
5号一下肢を足関節以上で失つたもの
6号一上肢の用を全廃したもの
7号一下肢の用を全廃したもの
8号両足の足指の全部を失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害5級】認定される類型や内容は?慰謝料などの金額は?

後遺障害6級の認定基準

6級の認定基準一覧

1号両眼の視力が0.1以下になつたもの
2号咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3号両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
4号一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
5号脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6号一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7号一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8号一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害6級】対象となる症状の類型や具体的基準,慰謝料額などを詳細解説

後遺障害7級の認定基準

7級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になつたもの
2号両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
3号一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5号胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6号一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
7号一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
8号一足をリスフラン関節以上で失つたもの
9号一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11号両足の足指の全部の用を廃したもの
12号外貌に著しい醜状を残すもの
13号両側の睾丸を失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害7級】等級認定基準の具体的な内容を詳細に解説

後遺障害8級の認定基準

8級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になつたもの
2号脊柱に運動障害を残すもの
3号一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの
4号一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
5号一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
6号一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
7号一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
8号一上肢に偽関節を残すもの
9号一下肢に偽関節を残すもの
10一足の足指の全部を失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害8級】対象となる各部位の症状は?認定された場合の慰謝料額は?

後遺障害9級の認定基準

9級の認定基準一覧

1号両眼の視力が0.6以下になつたもの
2号一眼の視力が0.06以下になつたもの
3号両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの
4号両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
5号鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの
6号咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
7号両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
8号一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
9号一耳の聴力を全く失つたもの
10神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12号一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
13号一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
14号一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
15一足の足指の全部の用を廃したもの
16号外貌に相当程度の醜状を残すもの
17号生殖器に著しい障害を残すもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害9級】具体的な認定対象や補償金額の計算方法を徹底解説

後遺障害10級の認定基準

10級の認定基準一覧

1号一眼の視力が0.1以下になつたもの
2号正面を見た場合に複視の症状を残すもの
3号咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
4号十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5号両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
6号一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
7号一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
8号一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
9号一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
10一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
11号一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害10級】具体的な症状から慰謝料,逸失利益の金額まで

後遺障害11級の認定基準

11級の認定基準一覧

1号両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2号両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4号十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5号両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
6号一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
7号脊柱に変形を残すもの
8号一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
9号一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
10胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害11級】認定対象となる症状の一覧から補償される金額まで

後遺障害12級の認定基準

12級の認定基準一覧

1号1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2号1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4号1耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5号鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
8号長管骨に変形を残すもの
9号一手のこ指を失ったもの
101手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
111足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
12号1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14号外貌に醜状を残すもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害12級】認定の基準,対象となる症状や慰謝料額を徹底解説

後遺障害13級の認定基準

13級の認定基準一覧

1号一眼の視力が0.6以下になつたもの
2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
3号一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4号両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
5号五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
6号一手のこ指の用を廃したもの
7号一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
8号一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
9号一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
10一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
11胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害13級】具体的な認定基準は?慰謝料や逸失利益の金額は?

後遺障害14級の認定基準

14級の認定基準一覧

1号一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2号三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3号一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
4号上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5号下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6号一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
7号一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
8号一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
9号局部に神経症状を残すもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害14級】認定対象となる症状や慰謝料額を一挙解説

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

後遺障害等級認定は,その有無や内容で受け取る金額の規模が大きく変わるため,適切な賠償を受領するために極めて重要なものです。
もっとも,その認定基準は多岐に渡り,ご自身の症状が基準を満たしているのか,基準を満たすためにはどう対応すべきか,判断することは容易でありません。
後遺障害等級認定に関しては,交通事故に精通した弁護士へのご相談が非常に有益です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

症状固定と言われたらどうなる?症状別に目安の期間まで徹底解説

「症状固定になると慰謝料や損害賠償にどう影響するのか知りたい」と思う方もいるのではないでしょうか。

症状固定とは、治療を続けてもこれ以上の改善が見込めないと判断された状態を指し、この時点から後遺障害認定や損害賠償の請求内容が大きく変わってきます。

本記事では、症状固定の定義を踏まえ、交通事故から症状固定までの目安の期間や弁護士への相談がおすすめな理由を詳しく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

症状固定とは

症状固定とは,交通事故によって生じた怪我などの治療を行った結果,それ以上の改善が見込まれなくなった状態をいいます。言い換えれば,治療の効果が全て出尽くし,後は時間の経過による緩解を期待するのみになった状態を指します。

交通事故の治療は,症状固定となるまでの期間を対象とします。そして,症状固定の具体的な時期は,医師の医学的な判断に基づいて行われるのが原則です。

この点,骨折した箇所の骨が癒合したなど,客観的に治療経過が分かる場合であれば,主治医の判断を明確に行いやすいところですが,レントゲンやMRIなどに症状の原因が現れない自覚症状のみのお怪我である場合には,医学的な判断が困難なことも少なくありません。
そのように,医師が症状固定時期を判断することが困難な場合には,事故の規模や治療内容,症状経過などを踏まえて,当事者間で症状固定時期を協議することが一般的です。

なお,症状固定後に残存した症状については,後遺障害等級に該当するかという問題になります。後遺障害等級認定が獲得できれば,その等級に応じた賠償という形で,症状に対する金銭的補償がなされます。

症状固定と言われたら何が変わるのか

①治療の継続

交通事故の治療期間は,症状固定までの間となります。したがって,加害者側の保険会社が治療費の支払を行う期間も,症状固定までの間に限られることとなります。
また,交通事故の慰謝料は治療期間に応じての計算となりますが,その慰謝料の対象となる治療期間も同じく症状固定までの期間となります。

症状固定後に治療の継続を希望する場合,自費通院は可能です。一般的には,健康保険を利用の上,自己負担額を支払っての通院を行うことが多いでしょう。

ポイント
交通事故における治療期間は症状固定までの間
症状固定後は健康保険を用いた自費通院が可能

②休業損害

休業損害とは,事故に伴って休業を強いられたことによる損害を言います。通常,収入の日額を算出し,休業した日数を乗じて計算することになります。
この点,休業損害の対象となる休業日は,症状固定までの期間中の日であることが前提となります。症状固定後は,事故による受傷が原因で休業したとしても,休業損害の対象とはなりません。症状固定後に残った症状が収入減少につながった場合,その部分は後遺障害に対する賠償の問題になります。

なお,休業損害の対象期間は症状固定までの期間となりますが,症状固定までの全期間が休業損害の対象となるわけではない点に注意が必要です。
これは,休業損害が,休業の必要がある場合にのみ発生するものであるためです。一般的に,事故から時間が経つほど症状が緩和し,労働能力も回復するため,事故直後は休業の必要が大きく,症状固定に近い時期ほど休業の必要がないと判断されやすい傾向にあります。

ポイント
休業損害の対象日:症状固定前+休業の必要性がある日
休業の必要は事故直後ほど大きく症状固定に近いほど小さい傾向

③後遺障害

後遺障害とは,症状固定時に一定の障害や機能低下が残ってしまった状態のことを言います。症状固定時に残ってしまった障害は,治療によっては改善しないため,恒久的に残り,症状固定後の生活に諸々の影響を及ぼすことになります。

後遺障害については,後遺障害等級が認定された場合に,その等級に応じた慰謝料や逸失利益の対象となります。症状固定時に何らかの症状が残っていたとしても,そのすべてについて後遺障害としての金銭賠償されるわけではなく,等級の認定手続を経て,具体的な認定を受けることが必要となります。
後遺障害等級には,重いものから1~14級の各等級があり,それぞれ該当する条件が定められているため,後遺障害について金銭賠償を獲得するためには,これらの条件を満たしていると認めてもらう必要があります。

ポイント
後遺障害は,症状固定時に残ってしまった症状の問題
賠償を獲得するには,後遺障害等級認定を受けることが必要

交通事故から症状固定までの目安の期間

交通事故後に「症状固定」と診断される時期は、負傷の種類や治療状況によって異なります。

ここからは、交通事故から症状固定までの目安の期間を種類別にご紹介します。

むちうちの症状固定までの期間

むちうちは交通事故による代表的な負傷のひとつで、首周辺の筋肉や靭帯が損傷することで痛みやしびれが長引くのが特徴です。

一般的に、むちうちの治療は3か月から6か月ほどが目安とされますが、慢性的に症状が残る場合には1年以上通院が続くこともあります。

症状固定と判断されるのは、通院を続けても首の可動域や痛みが大きく改善しなくなった時点です。

この判断は医師の診断に基づきますが、患者本人の自覚症状や日常生活への支障の有無も考慮されます。

むちうちの症状固定は後遺障害等級認定に直結するため、診断時の記録や治療経過を丁寧に残しておくことが大切です。

打撲の症状固定までの期間

打撲は比較的軽度の怪我と見なされる傾向があり、1ヶ月~3ヶ月が症状固定が目安です。

しかし、内出血が広範囲に及んだり、神経や筋肉へのダメージが深刻な場合には回復が長引くケースもあります。

とくに関節や背中など、負担のかかりやすい部位の打撲は慢性化しやすいため、医師が一定期間治療を継続した上で症状固定と判断することになります。

打撲でも後遺症が残る場合があるため、安易に軽く考えず、医師の診断を受け続けることが重要です。

骨折の症状固定までの期間

骨折は損傷の程度や部位によって治癒のスピードが大きく異なります。

単純な骨折であれば数か月で完治することもありますが、複雑骨折や関節に及ぶ骨折では半年から1年以上治療が続くことも少なくありません。

骨が癒合しても関節の可動域制限や筋力低下が残るケースがあり、これ以上のリハビリをしても改善が見込めないと判断された時点で症状固定とされます。

骨折後の症状固定は後遺障害等級の認定に直結しやすく、例えば歩行に支障が残る場合などは高い等級が認められる可能性があります。

症状固定に至るまでのリハビリ記録や診断書をしっかりと準備しておくことが賠償請求において重要です。

高次脳機能障害までの期間

交通事故による頭部外傷から生じる高次脳機能障害は、最も症状固定の判断が難しいケースのひとつです。

記憶障害、注意力の低下、感情のコントロール不良など、見た目では分かりにくい症状が多いため、長期間にわたる医療観察が必要となります。

一般的には1年以上の経過観察が行われ、医師や専門機関が症状の変化を確認したうえで症状固定の判断が下されます。

高次脳機能障害は後遺障害等級の中でも認定が難しく、診断書やリハビリ経過の詳細な記録が必要です。

また、家族や周囲の証言も重要な資料となるため、日常生活の変化を丁寧に記録しておくことが望ましいです。

症状固定と言われたら弁護士への相談がおすすめな理由

症状固定と診断された段階から、被害者は保険会社との本格的な賠償交渉に進むことになります。

ここからは、しかし、適切な補償を受けるためには専門的な知識と十分な準備が必要となるため、弁護士への相談がおすすめです。

ここからは、弁護士への相談がおすすめな理由を詳しく解説します。

適切な後遺障害等級認定を受けやすくなる

後遺障害等級認定は賠償金額に直結する重要な手続きですが、申請が複雑であり、必要な医療記録や証拠が不足していると適切な等級が認められないことがあります。

弁護士に相談すれば、症状固定後の診断書の作成段階からサポートを受けられ、認定に必要な資料を適切に揃えることができます。

特にむちうちや高次脳機能障害のように、目に見えにくい症状は正しい評価がされにくいため、弁護士のサポートが有効です。

被害者に有利な形で後遺障害等級を獲得できれば、慰謝料や逸失利益の算定額も大きく変わる可能性があります。

慰謝料や賠償金の増額交渉を有利に進められる

保険会社は自社の支払いを抑えるために、提示する慰謝料や賠償金の金額を低く設定する傾向があります。

被害者本人がそのまま受け入れてしまうと、本来受け取れるべき正当な金額を得られない可能性もあるでしょう。

弁護士に依頼すれば、過去の判例や基準額に基づいて交渉を行ってくれるため、増額の可能性が高まります。

とくに交通事故に強い弁護士であれば、専門的な知識と経験を活かして粘り強く交渉を進めてくれるため、被害者の権利を守る大きな力となります。

手続きや交渉の負担を減らせる

交通事故後の手続きは、保険会社とのやり取り、診断書や資料の収集、示談交渉など多岐にわたり、精神的にも大きな負担です。

症状固定が告げられた後は、後遺障害等級の申請や損害賠償の請求といった重要な段階に入るため、さらに複雑さが増します。

弁護士に依頼すれば、これらの手続きを代理して行ってくれるため、被害者は治療や生活再建に集中できます。

煩雑な事務作業や交渉を専門家に任せられることは、大きな安心につながるでしょう。

保険会社による打ち切りとは

一般的に保険会社の「打ち切り」と呼ばれるものは,保険会社が自己判断で治療費の支払を終了することを言います。
治療費の支払を終了する時期は症状固定時ですが,この症状固定時期を保険会社が独自に判断し,その時期以降は治療費を支払わないという動きを取った場合に,打ち切りが生じます。

打ち切りは,被害者側と加害者の保険会社側との間で症状固定時期の判断が食い違う場合に生じるものです。
被害者側はまだ症状固定時期にはないと考え,保険会社に治療費の支払継続を求めるものの,保険会社は既に症状固定であると判断するためその支払を拒む,という流れが一般的でしょう。

打ち切りが生じるのは,症状固定時期の客観的な判断が困難な事件の場合であることがほとんどです。具体的には,むち打ちなど,レントゲンやMRIといった画像から客観的に受傷内容や症状が特定できない場合が挙げられます。
客観的には症状固定時期が分からないため,車両の損傷から推測される事故の規模などを基に,過去の先例を踏まえて検討せざるを得ず,当事者間で主張に開きが生じやすいのです。

ポイント
打ち切りは相手保険が症状固定と判断した場合に行われる
症状固定時期が客観的に判断できない場合に生じやすい

通院継続したいのに打ち切られた場合の対応

保険会社が打ち切りをしたものの,通院を継続したい場合,保険会社に治療費を支払ってもらうには,保険会社に打ち切りの判断を改めてもらう必要があります
打ち切りに対する具体的な対応としては,以下のようなものが挙げられます。

①医師の所見を確認する

症状固定かどうか,言い換えれば治療による改善の見込みがあるかどうかは,基本的に医学的な判断の対象です。保険会社も,従うべき医学的意見があれば,これに沿った対応を行うのが通常です。
そのため,主治医の先生に所見を確認し,治療継続のご指示をいただけるかどうか,その意見を仰ぐのは有力な手段でしょう。主治医の先生から根拠を添えて通院継続の具体的なご指示をいただくことができれば,保険会社に検討を改めてもらうための重要な判断材料になります。

ただし,「痛みがあれば来てください」というような消極的な案内にとどまる場合だと,保険会社の打ち切りの判断に影響を及ぼすことは考えにくいです。症状固定かどうかは,治療による改善が見込まれるかどうかという問題のため,治療による改善が見込まれることを前提とした積極的なご指示が必要になるでしょう。

②保険会社との協議を試みる

保険会社が打ち切りの判断をする場合,被害者側と交渉の余地がないと考え,交渉を諦めた結果として行うことが一般的です。そのため,保険会社に交渉の余地があると理解してもらえれば,両者合意の上で改めて症状固定時期を定めることも不可能ではありません。
保険会社としても,一方的に打ち切ってしまうと解決が遠のき,場合によって被害者から訴訟が提起されるのを待つしかなくなる可能性もあるため,もし円満に症状固定時期が合意できるのであればその方が有益だと考えるのが通常でしょう。

このような協議を行う場合,双方の主張の中間的な落としどころを目指す方針で行うのが合理的です。具体的には,保険会社の打ち切り時期から2週間程度であれば,円満解決を前提に保険会社側も治療費の支払継続を承諾することが多く見られます。

個別の協議に関しては,交通事故の対応に精通した弁護士へのご相談をお勧めします。

③自費通院に切り替え,後に請求を試みる

交渉が奏功する見込みがない場合,とりあえず自費通院を行い,後から保険会社との交渉を試みるか検討することも一案です。一般的には,健康保険を利用の上,自己負担分の負担をする形で通院継続することが可能です。

自費通院に切り替えた場合,その後に治療費などを請求する方法としては,まず相手の自賠責保険に保険金の請求を行うのが有力でしょう。
自賠責保険は,相手の任意保険とは別に被害者への最低補償を行う保険であり,任意保険は自賠責保険の判断を尊重する運用をしています。そのため,打ち切り後の治療費を含めた請求を自賠責保険に行い,自賠責保険が請求通りに治療費を支払った場合は,任意保険も打ち切り後の自費通院期間を症状固定前と判断することになるのが通常です。
この場合,相手保険から支払われる慰謝料などの対象期間は,自費通院期間を含んだものになり,被害者側の主張に沿った金銭賠償を受けることが可能になるでしょう。

④症状が残っているかどうかは基準にならないことに注意

相手保険から打ち切りの主張があった場合,まだ痛みがあることを理由に打ち切りへの反対意見を述べたくなるところですが,これは不適切であることに注意が必要です。
打ち切るかどうか,つまり症状固定かどうかは,痛みなどの症状が残っていることと直接関係しません。痛みが残っていても,それが治療によって改善しない段階であれば,まさに症状固定と判断すべき状況であるからです。

そのため,打ち切りの主張に対してまだ痛みがあると反論をしても,打ち切りの判断を覆す理由になる可能性はほとんどありません。痛みがあることを前提に,それが治療によって改善する余地があるのか,あるならばどんな治療をどの程度の期間行うのが適切か,というのがここでの問題点になります。

ポイント 打ち切りへの対応
医師の所見を確認
短期間であれば保険会社に交渉の余地も
隔たりが大きければ自費通院後の請求も
痛みが残っているとの主張は効果薄

症状固定の目安や基準

症状固定となる期間は,受傷内容によって様々に異なりますが,一般的な目安や考え方の基準は以下の通りです。

①客観的な異常所見がないむち打ち等

事故車両の損傷状況などから分かる事故の規模を基準に判断しますが,一般的なむち打ちの場合には概ね3~6か月ほどを目安とする例が多く見られます。

②骨折を伴う受傷

一般的には,骨癒合の後,経過観察期間を経た段階で症状固定とすることが見込まれます。代表的なケースでは,以下のような流れが考えられます。

①受傷直後プレートなどを挿入する手術
②約1年後プレートの除去
③数か月程度リハビリや経過観察
④経過観察後症状固定

もっとも,個別の事故における具体的な期間は,受傷の程度や治療経過によって大きく変化しやすいでしょう。

③傷跡など外形に関するもの

外形に関する治療は,その外形が変化しなくなった段階で症状固定となります。
そのため,症状固定までの期間は非常に短くなることも少なくありません。

なお,傷跡が残る怪我のために神経症状が続く,関節可動域を広げるためのリハビリを要する,といった場合はこの限りではありません。それらの症状が治療によって改善しなくなった段階が症状固定となります。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

症状固定は,交通事故に関する損害賠償の分野特有の概念であり,その詳細な理解は容易でありません。また,保険会社から症状固定を案内されても,主治医の先生は症状固定という考え方を持たない場合も多く,被害者の方が保険会社と医療機関の板挟みになってしまうケースも多数見られます。
症状固定に関わる問題については,交通事故に長けた弁護士へのご相談やご依頼が有力になりやすいでしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

治療中には何に気を付けるべき?保険会社から送られた書面はどうすればいい?弁護士に依頼する方がいい?弁護士が徹底解説

●交通事故被害の通院時に注意すべきことは?

●入院中に生じた負担はどのように請求できるか?

●仕事の休業が生じた場合に必要な手続は?

●治療中に対応が必要になることは何があるか?

●通院はいつ終了してよいか?

●入通院中に弁護士へ相談するメリットはあるか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故に伴う入通院治療中の対応でお困りの方に向けて,入通院治療時に注意すべきこと必要な対応などを解説します。

通院した際に注意するべきこと

通院時には,医師の問診を受けるのが通常ですが,その際には,可能な限り自覚症状を伝えて把握してもらい,自覚症状を記録してもらうようにしましょう。
その理由は,概ね以下の通りです。

①事故と症状との因果関係を明確にするため
交通事故では,被害者に生じた症状と交通事故との因果関係が問題になることがあります。特に,事故から相当期間が経った後に初めて記録された自覚症状があると,その症状は事故との因果関係がないとの判断になるケースも少なくありません。
交通事故の受傷は,基本的に時間が経ってから自覚症状が出現する性質のものではないため,事故後に他の要因で自覚症状が出てきたと考えられてしまうのです。

そのため,事故直後から同じ症状は継続しており,決して事故から長期間経った後に初めて症状が出たわけではない,ということを記録してもらいましょう。そうすることで,症状と交通事故との因果関係を明確にすることが可能になります。

②治療期間が争いになった場合の資料とするため
交通事故の治療は,症状が固定した段階で終了となりますが,その具体的な時期はしばしば争いになります。特にレントゲンやMRIなどの画像で異常が見られず,自覚症状のみというケースでは,客観的に症状固定の時期を判断することも難しく,保険会社の匙加減で終了時期が判断されることも珍しくありません。保険会社が自社の判断で症状固定とみなし,治療費の支払を終了することは,「打ち切り」と呼ばれることがあります。

この打ち切りのお話が出てきた際,自覚症状の経過や推移が医師によって十分に把握,記録されていれば,打ち切り時期が不適切であることの根拠資料となる可能性があるでしょう。具体的には,症状がまだ固定しておらず,治療によってよくなる見込みがあること,そのためにはどのような治療をどのくらいの期間行うのが妥当と見込まれるか,といった点が明確であれば,保険会社に再考を促しやすくなります。

③後遺障害等級の認定を目指す場合の資料とするため
後遺障害等級認定に際しては,自覚症状の経過を判断材料とすることも珍しくありません。あるタイミングで症状が治った,と指摘されていれば,後遺障害が残存しているとの判断は非常になされやすいでしょう。
この点,事故直後から症状固定までの間における自覚症状の経過が具体的に記録されており,症状固定時にどのような自覚症状が残存しているのかが明確であれば,これを踏まえた後遺障害等級認定の可能性が高くなるでしょう。特に,必要な治療を全て尽くしたものの,頑固な症状が重く残り続けてしまっている,という場合,症状固定時に重い症状が残っていることの裏付けとなり,後遺障害等級認定の根拠となることが考えられます。

ポイント
通院時には自覚症状を確実に伝え,記録してもらう
理由:①事故と受傷との因果関係②治療継続の必要性③後遺障害の残存 の根拠となり得るため

入院中の負担が生じた場合の対応

入院中には,入院先で生活を送るための実費が発生します。日用品代,栄養剤代,テレビカード代,新聞代などが典型例ですが,これらの費用は,基本的に「入院雑費」として損害に計上されることとなります。
入院雑費は,いわゆる裁判基準だと入院1日あたり1,500円となっており,実際に1,500円発生しているかにかかわらず損害賠償の対象となるのが基本的な運用です。

この点,入院中の負担として問題になりやすいものには,以下のようなものもあります。

①家族の休業損害

入院中の被害者のために,家族が仕事を休業して病院へ行った場合,その家族の休業損害が賠償の対象になるのか,という点です。
心情的には,家族のために仕事を休んで駆け付けた場合にそのマイナスを補填してほしい,と感じるところですが,法的にはその必要性が問題になりやすいところです。

まず,医師の付添指示がある,症状の性質上付添が必要である,という場合には,入院中の付添費として支払の対象になることが見込まれやすいです。休業してまで入院先に付き添う必要のあることが客観的にわかるためですね。

一方,客観的には付添いの要否が不明確な場合,保険会社との協議の問題になるでしょう。一般的には,事前に相談の上,期間や回数を区切って行うのであれば,円滑に支払われることが多い傾向にあります。事前相談なく後から漫然と請求しても,要求通りに支払われる性質のものでないことは押さえておきましょう。

②お見舞い交通費

お見舞い時の交通費は,必要かつ合理的な範囲であれば交通事故の損害に含む,というのが基本的な運用です。実際のケースでは,できる限り事前に相手保険と個別の相談を行い,その了承を得た上で請求するのが適切でしょう。

この点も,やはり無尽蔵に認められる性質のものではないため,最後に漫然と請求すれば足りるというわけでないことに注意が必要でしょう。

③個室差額ベッド代

被害者の希望で個室で入院した場合,個室の方が複数人部屋よりも費用が高いため,複数人部屋を使っていれば生じたであろう金額との差額が発生します。これは,交通事故の損害に含まれず,加害者側の保険に請求できないことが通常です

もっとも,病院都合で個室になった場合や,受傷内容や治療の性質上個室とせざるを得ない場合など,被害者の希望と関係なく個室を利用した場合には,個室代も含めた金額が損害額となるでしょう。

ポイント
入院中の出費は主に入院雑費の対象
お見舞いや付き添いの費用は必要かつ合理的な範囲で請求可能
個室差額ベッド代は自己都合だと請求不可

仕事の休業が生じた場合の対処

交通事故に伴って仕事の休業が生じた場合,休業損害の請求が必要です。休業を強いられると生活費に直結しますので,早期に適切な請求を行いましょう。
その請求方法は,会社員と自営業の場合で異なります。

①会社員の場合

「休業損害証明書」及び「事故前年分の源泉徴収票」の提出を要するのが通常です。休業損害証明書は,保険会社に書式があり,これを用いてご勤務先に記載していただくことになります。
そのため,相手保険会社から休業損害証明書の書式を送ってもらい,勤務先に休業損害証明書への記載と源泉徴収票の用意をしてもらうのがスムーズでしょう。

【休業損害証明書の書式例】

②自営業者の場合

「事故前年分の確定申告書」の提出を要するのが通常です。また,収入減少の金額として主張したい内容がある場合は,その内容が分かる資料をできる限り詳細に提出するのが適切です。
事業の開始から間もないなど,確定申告の実績がない場合には,事故直前の収入額が分かる資料などを個別に提出し,保険会社の検討を求める必要が生じます。

会社員のように休業を証明してくれる人がいないため,より丁寧で粘り強い説明を行う必要が生じることもあります。

治療中の期間に対応を要する事項

交通事故の損害賠償は,基本的に通院終了後に行うこととなります。それは,通院が終了しないと慰謝料などの損害額が確定しないためです。
もっとも,治療期間中に対応したり解決したりするべきことも複数あります。主なものは以下の通りです。

①物損の解決

物的損害は,通院が終了しなくても損害額が確定するため,通院終了前に解決するのが一般的です。
一般的な物損の内容は以下の通りです。

①車両修理費修理見積りを取り,その金額を基準に損害額を計算します。
②車両時価額全損の場合,①修理費でなく時価額が車両損害額です。車種や年式を基準に計算します。
③レッカー代事故車両を運搬するのに要した実費が対象となります。
④代車費用事故車両の修理中,全損時の新車取得前など,車両が利用できない間に代車を利用した費用です。概ね2~4週間程度を対象に実額が支払われるのが一般的です。
⑤携行品損害携帯電話や衣服,ヘルメットなど,事故により損傷した物品の損害が該当します。通常,物品の写真と購入時期及び購入価格を保険会社と共有し,物品の現在価格を基準に計算します。

②同意書

交通事故において保険会社とやり取りする「同意書」は,保険会社が医療機関との間で自分の情報をやり取りすることを同意する,という意味の書面です。
医療機関の有する個人情報を保険会社が取得するためには,患者の同意が必要であるため,その同意を同意書という形で取り付けるのです。

同意書への署名押印を求められた場合,自分で医療機関から診断書を取り付けるような例外的な場合を除いて応じるのが適切でしょう。対応を拒否した場合,保険会社が医療機関とやり取りできず,被害者自身が医療機関と必要なやり取りをしない限り治療費が支払われない可能性もあり得ます。

③健康保険利用の手続

交通事故の入通院においても健康保険を利用するケースがあります。このとき,健康保険の利用に必要な手続に「第三者行為による傷病届」という届け出がありますが,これは,健康保険を利用する段階で極力速やかに提出するのが適切です。

多くの場合,ご加入の健康保険組合等から必要書面が受領できるため,相手保険に記載してもらうべき事項を記載してもらった上,自身の情報も記入して提出するのが円滑でしょう。

ポイント
物損は入通院中の解決が通常
同意書の作成には応じるのが適切
健康保険利用の場合は早めに書面提出を

自己判断による通院終了のメリット

通院の終了時期について,自己判断で終えていいのか,という点は疑問として生じやすいところです。

この点,早期解決という面では自己判断で通院を終了するのも決して不合理ではありません。通院自体が時間的拘束や負担を伴う行為であり,通院が終了しない限り交通事故の解決はできないため,早期終了を優先するという判断もあり得るでしょう。

もっとも,通院期間を自ら短縮することになるため,賠償金額は小さくなることが否めません。自己判断で通院終了をご検討の場合は,具体的にどのようなメリット・デメリットが生じるかも含め,弁護士にご相談されると有益でしょう。

入通院中に弁護士相談するメリット

交通事故の賠償額計算が通院終了後になる関係で,弁護士が賠償額を増額させるために役割を発揮するタイミングも通院終了後となります。
もっとも,入通院中に弁護士相談することは決して無駄でなく,入通院中の弁護士相談には以下のようなメリットが挙げられます。

①窓口対応を弁護士に委ねられる

弁護士に速やかに依頼する場合,弁護士が相手保険との連絡窓口となり,連絡の全てを受けることが可能です。そのため,電話連絡などに応じるご負担の軽減につながります。

②事前に見通しを確認できる

弁護士に相談し,入通院中でわかる限りの見通しを把握することで,その後の対応がより容易になります。また,現状で把握すべきこと,把握する必要のないことを区別・整理できれば,解決のための検討の負担は大きく軽減するでしょう。

③今後の弁護士依頼が円滑になる

弁護士相談を実施し,具体的な相談や助言などがなされていれば,その後具体的な依頼を希望することとなったときの手続はより円滑になります。また,事前に信頼関係の築ける弁護士を見つけられれば,依頼時の弁護士探しの負担は大きく軽減できるでしょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故の入通院治療中は,ケースによって必要となる対応の内容や量が様々です。特に,お怪我の程度が大きい事故であるほど,必要なご対応も多くなりやすい傾向にあります。
それらのご対応は,多くの場合相手保険会社から案内を受けることになりますが,保険会社が被害者に有益な案内をしてくれるわけではないため,案内の内容を十分に理解して対応する必要があります。
交通事故に強い弁護士に依頼すれば,適切な対応を任せることができ,安心して治療に専念できるでしょう。

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交通事故が起きたら何をする必要がある?何を確認すべき?弁護士に依頼するべき場合は?事故直後に損をしない方法

●交通事故の被害に遭ったが,まずどうすればいいか?

●病院にはいつ行くのがいいか?

●相手とはどんな連絡を取るべきか?

●警察への届け出はどうするべきか?

●交通事故の示談はいつするのか?

●弁護士に相談すべきタイミングはいつか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の被害に遭った直後の対応でお困りの方に向けて,交通事故の被害者がするべき対応弁護士への相談時期などを解説します。

警察への連絡

まず事故現場で行うことは,警察(及び救急)への連絡です。事故によっては警察への連絡が自分の義務であるケースも考えられます。
もっとも,受傷の内容や程度によっては,自分で行うことが難しい場合もあり得ます。そのときには,事故の相手や周囲の目撃者など,連絡が可能な人に対応してもらうのが適切です。

連絡の際は,110番通報の上,警察に事故の旨を伝えるとともに,概ね以下の情報を簡潔に伝えましょう。

①事故の場所事故が発生した正確な場所(住所や目印など)
②事故の状況事故の規模や被害の程度(車両の損傷、負傷者の有無など)
③関係者の情報事故に関与した車両や運転者、目撃者の情報
④自身の情報通報者の氏名と連絡先

相手の情報を確認する

当事者双方が会話の可能な状態であれば,相手の氏名や連絡先等の情報を確認するようにしましょう。被害事故の場合,相手の自動車保険会社に対応してもらう必要がありますが,その前提として相手本人に保険会社への連絡等を行ってもらわなければならないため,相手と連絡が取れる状態にあることは非常に重要です。

相手の自動車保険の有無を確認する

相手がいわゆる任意保険に入っているかどうかは,今後の金銭的な補償をどのように受けることができるか,という意味で極めて重要な確認事項になります。

相手が任意保険に入っていれば,基本的にはその保険会社の対応を受けることで足りる一方,任意保険がなければ,相手本人に支払能力がない限り相手からの金銭賠償が期待できません。そのため,もし相手が任意保険に入っていない場合は,自身の保険を含め,より慎重な確認が必要となりやすいところです。

また,相手が任意保険に入っている場合は,その場で任意保険会社への事故報告も行ってもらうのがより円滑でしょう

医療機関への通院時期

医療機関への通院時期は,交通事故の後早ければ早いほど有益であると言えるでしょう。その主な理由としては,以下の各点が挙げられます。

①慰謝料額への影響
交通事故の慰謝料(精神的苦痛に対する賠償)は,通院期間や実通院日数を基準に計算しますが,慰謝料計算における通院期間の始期は,最初の通院日とされるのが一般的です。そのため,最初の通院日が早ければ早いほど,それだけ慰謝料計算に用いられる通院期間が長くなります。
また,事故から長期間経過した後に始めて通院した場合,受傷の程度が限定的であると評価され,通院期間を短く打ち切られるケースがあります。そうなると,通院期間を基準に計算する慰謝料額も必然的に小さくなるため,慰謝料額への悪影響が生じます。

②事故と受傷との因果関係
事故から日数が経過した後に始めて通院すると,診断された受傷内容と交通事故との因果関係が問題視されるケースがあります。事故直後だと,事故以外に受傷の原因は考えにくいですが,事故から期間が経つと,事故以外に様々な要因の入り込む余地が生まれるためです。事故とは別の機会に怪我をした可能性が日を追うごとに高くなっていくわけですね。

事故と受傷との間に因果関係がない,との結論になると,事故相手(及び保険会社)からの賠償額はゼロになります。事故によって受傷はなかったとの理解になるためです。これは極めて大きな不利益であり,このような事態は可能な限り防ぐのが賢明でしょう。

なお,一般的には,事故から2週間以上経過して初回の通院がなされた場合,その診断内容は事故との因果関係がないと理解されやすい傾向にあります。その期間内に通院すべきなのはもちろんですが,その期間内であれば安心というわけではないため,やはりできるだけ速やかに通院すべきです。

③怪我や苦痛の軽減
通院の本来の目的ではありますが,事故直後が最も苦痛の大きい時期であるため,苦痛を和らげるためにも早期の通院が重要になります。
万一,通院が遅れたことによって症状が重くなったという場合には,その重くなった部分は自己負担となる可能性もあります。早期に通院して苦痛の軽減を図ることにデメリットはないでしょう。

ポイント
通院時期は事故後早ければ早いほど望ましい
→慰謝料額が大きくなる
→因果関係の争いを防げる
→苦痛が軽減する

警察への届出を人身事故にすべき場合

警察への事故の届出には,「物件事故」と「人身事故」の二つがあります。
この点,交通事故で受傷したケースの全てについて人身事故の届けが必要というわけではなく,怪我があった場合にも物件事故での届出が可能です。現実に,怪我がありながら物件事故の届出とし,怪我の損害も含めて解決していることは非常に多く見られます。

では,どのような場合に人身事故とすべきか,という点に疑問が生じますが,基本的には以下のような考え方が有力でしょう。

①加害者の刑事処罰を希望する場合

人身事故の届出を行う基本的な意味は,加害者に対する刑事手続を希望する,というものです。加害者の刑事処罰を希望する場合には,人身事故とするのが適切です。

刑罰との関係では,純粋な物損事故が起きたとしても犯罪ではなく,交通事故の結果被害者が受傷した場合に初めて「過失運転致傷」という犯罪に該当することとなります。そのため,人身事故の届出によって,「本件は過失運転致傷が成立する事故です」という申し出がなされた場合に限り,事故加害者に対する刑事手続が進行することになります。

なお,交通事故では,双方に一定程度の過失がある,というケースが少なくありません。その場合,人身事故の届出をして刑事手続を希望すると,刑事処罰を科すかの検討は双方について生じることになり得ます。
現実に処罰を受けるという意味ではありませんが,自分の過失がゼロでない場合は,自分の過失も刑事手続の対象になり得ることを踏まえておくのがよいかもしれません。

②過失割合に争いがある場合

過失割合に争いがあるケースでは,事故の発生状況を捜査してもらうため,人身事故の届出が適切になりやすいです。

人身事故の届出を行うと,事故に関する警察の捜査が行われますが,その代表的なものが「実況見分」です。実況見分は,事故現場の道路状況や事故の発生状況を,立会人の説明を踏まえて書面化したものです。
過失割合に争いがある場合には,自分の主張する事故状況を書面に残すため,人身事故の届出を行った上で実況見分を行ってもらうのが有力でしょう。もちろん,実況見分を行ったから直ちに主張した通りの過失割合が実現する,というわけではありませんが,紛争の蒸し返しは一定程度防ぐことができるでしょう。

③慰謝料増額の効果があるか

よくある疑問に,「将来の慰謝料増額のために人身事故の届出を行うべきか」というものがありますが,結論的には慰謝料額と事故の届出の間に直接の関係はありません。少なくとも,事故の届出が人身事故だから増額する,物件事故だから減額する,という取り扱いは存在しないと理解してよいでしょう。

現実的な問題としては,怪我をしたものの物件事故で届け出る場合,怪我がそれほど大きくないことが通常であるため,結果的に通院も長期に渡らず,慰謝料等の損害額も大きくはならないことは多い傾向にあるでしょう。もっとも,金額が大きくならないのは物件事故の届出を行ったからではなく,そもそもの事故の規模や受傷の程度に原因があるため,同じ事故で人身事故の届出をすれば違った,というわけではありません。

ポイント 人身事故の意味
加害者の刑事処罰を求める手続
実況見分を行った記録が残る
慰謝料額と直接の関係はない

自身の加入保険を確認する

交通事故が発生した場合,自分の加入保険の内容も適切に確認しておくことが有益です。自分に過失がある場合はもちろん,ない場合であっても,利用できるサービスを逃さないよう必要な確認を行うことをお勧めします。主な確認項目としては,以下のものが挙げられます。

①対人対物賠償保険(過失がある場合)

相手の人的・物的損害に対する支払を行うための保険です。
自身に過失がある場合には,その過失分の支払を行う可能性があるため,保険を利用するのとしないのとどちらが有益かも含め,ご加入保険との十分なご相談が適切です。

②人身傷害保険・車両保険

自分の人身損害をカバーしてくれるのが人身傷害保険,自分の物的損害をカバーしてくれるのが車両保険です。
被害事故でも,相手の任意保険がないなど,相手からの賠償があまり期待できない場合には,これらの保険の利用が有益なケースが考えられます。
また,車両保険の契約内容によっては,被害事故でも利用する方が受け取れる金額が大きくなる場合もあるため,具体的なところは事故に応じてご加入保険にご確認されるのが適切でしょう。

③無保険車傷害保険

相手に任意保険がない事故で,死亡又は後遺障害を伴う重大な怪我を負ったとき,ご加入保険が相手の代わりになって支払いを行ってくれるという保険の特約です。

相手からの賠償が期待できない場合に自分の人身損害を補償してくれる保険には人身傷害保険がありますが,人身傷害保険との違いは補償される金額や計算方法にあります
人身傷害保険は,その支払金額が全て約款で定められているため,保険会社が事前で定めた通りの金額以外に支払われる余地がありません。一方,無保険車傷害保険は,基本的に加害者が支払うべき金額と同等の補償がなされることになります。通常,人身傷害保険の金額は,加害者が賠償すべき金額(=無保険車傷害保険の金額)より小さいため,無保険車傷害保険が利用できる場合は,そちらの方がより多くの補償が受けられることになります。

④搭乗者傷害保険

事故車両の運転者や同乗者に対して,主に一時金を支払う内容の保険です。
金額は保険契約時に設定することになり,契約車両に搭乗していれば比較的緩やかな条件で支払われます。
もっとも,搭乗者傷害保険だけで損害をカバーするという性質のものではなく,お見舞金に近い位置付けの補償と考えるのが適切でしょう。

⑤弁護士費用特約

交通事故被害者が加害者側に金銭を請求する際,弁護士に依頼する手段が有力ですが,その弁護士費用を支払うという保険の特約です。支払われる弁護士費用の水準は,あらかじめ保険の約款で定められています。
弁護士への依頼が極めて容易になりやすいため,事故被害の場合には十分な確認をお勧めします。

ポイント 自分の保険の役割
相手への支払:対人対物賠償
自分への補償:人身傷害保険・車両保険・無保険車傷害保険
一時金・お見舞金:搭乗者傷害保険
金銭請求時の弁護士費用:弁護士費用特約

事故態様の証拠を確保すべき場合と内容

交通事故の態様,つまりどんな事故だったのか,という点は,過失割合に影響を与える要素になります。そのため,過失割合に争いがある場合には,事故態様を明らかにするためその証拠を確保するのが望ましいでしょう。

事故態様は,主に以下のような事情を基準に判断します。

【事故態様を区別する主な要素】

①乗り物の別歩行者,自転車,四輪車,単車など
②事故現場の状況直進道路上・十字路・丁字路,駐車場内,横断歩道上など
③双方の進行方向直進,右左折など
④道路の優先関係一方に一時停止規制がある,一方が優先道路である,道路幅が大きく異なる等

そのため,これらの要素が分かるように証拠化するのが適切でしょう。

そして,事故態様の証拠として最も有力な証拠になりやすいのは,ドライブレコーダーなどの客観的な映像・画像です。自動車乗車時には,極力ドライブレコーダーを取り付けるのが有益でしょう。
ドライブレコーダー以外には,付近の防犯映像や目撃者のお話などが考えられます。ただ,これらは必ずしも存在するわけではなく,当事者が頼りにできる証拠とはなりづらいところがあります。

事故直後に示談を持ち掛けられた場合の対応

交通事故の被害に遭った際,事故直後に加害者から示談を持ちかけられることがあり得ます。一定額の金銭を支払うことで関係を終了させる,という内容であることが一般的です。
これに応じることで,早期に一定の金銭が獲得でき,面倒なやり取りも必要なく関係が終了するため,有益なお話とも思えます。

しかしながら,弁護士の立場からは,このような解決方法はお勧めされません。主な理由は以下の通りです。

①金額が適正か判断できない
交通事故の損害額は,必要な通院が終了しなければ計算できません。そのため,事故直後に取り決めた金額が,実際の損害をカバーできるものか判断することは困難です。

②法的に解決できたか判断できない
当事者間での合意は,法的に漏れのない解決ができているか非常に怪しい傾向にあります。解決内容に不利益な内容の漏れがあれば,その場で解決したつもりであっても,後から紛争を蒸し返される可能性が否定できません。

③事故直後に一時金で終わらせようとする行動自体が適切でない
→交通事故の場合,被害者側はその後も身体的苦痛などを被り続けるため,その場で全てが解決できる性質のものではありません。それにもかかわらず,直後に一時金の取り決めのみで解決を図るというのは,加害者側の一方的な希望でしかなく,被害者側の事情を考慮しない点でそもそも不適切であると言えるでしょう。

ポイント
示談は治療終了後に行うのが適切

弁護士に依頼すべき場合

弁護士に依頼する利益が特に大きい場合としては,以下のようなケースが挙げられます。

①弁護士費用特約の利用ができる場合

弁護士への依頼は,弁護士費用との兼ね合いを考慮する必要がありますが,弁護士費用特約が利用できる場合であれば,基本的に弁護士費用の負担なく弁護士に依頼できるため,弁護士の活動による増額をそのまま自身の利益とすることが可能です。
弁護士費用特約がまさにその役割を発揮するタイミングでもあるので,極力速やかに弁護士への依頼を検討するようにしましょう。

なお,弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼する場合は,その弁護士が弁護士費用特約以上の金額を請求しないか,という点は十分な確認をお勧めします。弁護士費用の設定は弁護士次第ですので,必ずしも弁護士費用特約が支払えば自己負担がゼロとは限りません。

②受傷の程度が大きい場合

交通事故における弁護士への依頼は,費用倒れの可能性を考慮して行う必要があります。発生する費用が得られる利益を下回ることを費用倒れと言いますが,弁護士費用の方が弁護士の活動で得られたプラスより大きくなってしまうと,弁護士に依頼する実益はなくなってしまいます。

この点,受傷の程度が大きい場合,最終的な損害賠償額も大きくなりやすいため,費用倒れの可能性が非常に低くなります。特に,後遺障害等級が認定されるほどの規模になれば,費用倒れは懸念されづらくなるでしょう。
また,損害の規模が大きくなるほど,弁護士に依頼した場合の増額幅も大きくなりやすいため,弁護士依頼のメリットがより大きくなる傾向にあります。

③明らかに自分の過失がない場合

追突被害,相手のセンターオーバー,歩行者で横断歩道上の事故であったなど,明らかに自身の過失がない事故の場合も,費用倒れになる可能性が低い傾向にあります。
ただし,弁護士費用特約利用時を除いて,依頼者の利益は「弁護士の活動で増額した金額」-「弁護士費用」の差額になるため,どれだけの増額が見込まれるかにもよる面があります。金額的規模が小さな事故だと,費用倒れの可能性は必ずしも否定できないため,具体的には交通事故に強い弁護士へのご相談をお勧めします。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故は突然発生するため,事前に備えや対処をしておくことが非常に困難です。
また,事故の被害に遭った後は,身体的・精神的な苦痛が伴うため,ご自身で十分な対応を行うことも難しいケースが少なくありません。
交通事故の被害に遭った場合には,交通事故に強い弁護士へのご相談が非常に有益でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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交通事故加害者に強い弁護士へ依頼するメリットとは?特に依頼するべきケースとは?弁護士解説

交通事故の加害者となってしまうと、被害者への賠償問題や刑事処分、さらには社会的信用の低下など、さまざまな不安に直面します。適切な対応を誤れば、解決までの負担が大きくなる可能性もあります。こうした事態を避けるためには、交通事故加害者の弁護に精通した弁護士へ早期に相談することが重要です。本記事では、交通事故加害者が弁護士に依頼するメリットや、特に依頼すべきケースについて弁護士が分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

交通事故加害者に生じる責任

自動車の運転によって他者との事故が発生し,被害者がケガをした場合には,加害者に複数の責任が発生し得ます。
通常,交通事故の加害者に生じる責任は,以下の3つです。

①刑事責任

交通事故(人身事故)は,「過失運転致傷」又は「過失運転致死」という犯罪に該当するのが通常です。
そのため,犯罪に対する処分を受ける責任,つまり刑事責任が発生し得ることになります。
刑事責任が生じる場合,刑罰という形で国から被疑者(加害者)に対して科せられます。

②民事上の責任

交通事故が発生すると,加害者から被害者に対して金銭賠償を支払う義務が発生します。
車両の修理費,入通院治療費,休業損害,慰謝料等が代表的です。
このような被害者と加害者との間の金銭面の問題を,一般に民事事件といい,民事事件における加害者の賠償責任が民事責任です。

③行政上の責任

交通事故加害者となる場合には,何らかの交通違反が伴っていることが通常です。
そのため,交通違反に対して自動車免許の違反点数が発生します。
自動車免許の違反点数に関する事件は行政事件に位置付けられますが,免許の違反点数は行政上の責任ということができます。

各責任の内容をまとめると,以下の通りです。

①刑事事件国が加害者に対して刑罰を科す
②民事事件被害者が加害者に金銭賠償を請求する
③行政事件加害者の自動車免許に違反点数がつく

交通事故加害者に強い弁護士に相談するメリット

交通事故を起こしてしまった場合、被害者対応や保険会社との交渉、刑事処分の見通しなど、多くの問題が同時に発生します。こうした状況では、交通事故加害者の弁護に精通した弁護士に早期に相談することが非常に重要です。

弁護士はまず、事故の状況や証拠を正確に整理し、刑事事件化を防ぐための示談交渉や、不起訴処分・減刑を目指すための対応を行います。特に被害者との関係が悪化している場合でも、弁護士が間に入ることで冷静かつ法的に適切な解決が可能となります。

また、保険会社とのやり取りでも弁護士が代理人となることで、過失割合の妥当性損害賠償額の公平性を専門的に判断してもらえる点も大きなメリットです。自ら対応するよりも、結果として経済的・心理的負担を大幅に軽減できるでしょう。

交通事故加害者に強い弁護士は、刑事・民事の両面から事件を総合的にサポートし、最も望ましい解決へ導きます。

ポイント
刑事事件化を防ぐ示談交渉不起訴・減刑を目指す対応が可能
・被害者との直接交渉を避け、冷静で適法な解決が図れる
保険会社との交渉を代理し、過失割合・損害額の妥当性を確保
・専門知識に基づき、刑事・民事の両面から総合的にサポート
・早期相談により、精神的・経済的負担を大幅に軽減できる

実際に弁護士へ相談する際には、以下の各点に注意しましょう。

弁護士に相談する際の準備

①事故前後の状況をまとめる

交通事故加害者として捜査を受けることになる場合,その前後の状況によって刑事責任の重さや処分の見通しが大きく変わってくる場合があります。そのため,事故の直前直後の状況に関しては,できる限り漏れなく弁護士に共有することが適切です。
弁護士に共有すべき事故前後の状況としては,以下の点が挙げられます。

まとめるべき事故前後の状況

1.事故前の交通違反の有無
→飲酒運転,無免許運転,速度超過など

2.被害者の視認状況に関する事情
→どの時点で被害者を視認できたか,ライトやウインカーの有無はどうだったか等

3.当事者間の優先関係に関する事情
→信号表示など

4.事故後の対応
→その場を離れた事実があるか,誰が警察に通報したか等

②弁護士への要望をまとめる

弁護士選びに際しては,弁護士に依頼した場合に何を実現したいか,弁護士にどのような弁護活動を求めたいか,という要望を整理しておくことをお勧めします。

交通事故の場合,幸いにも過失犯であることから,それほど重大な刑罰の対象となることは決して多くありません。初犯で実刑判決の対象となってしまうのは,飲酒運転やひき逃げが伴ったケース,死亡事故で落ち度があまりに大きいケース,被害者が多数のケースなど,限定的ということができます。
そうすると,実刑判決さえ避けられれば足りる,という場合,その実現のためにどれほどのコストを費やすべきかは慎重な判断が望ましいでしょう。

一方,交通事故は機械的な処分も少なくありません。そのため,ケースによっては起訴を防ぐ手段がないという場合もあり得るところです。起訴を前提に,公開の裁判で適切な対応をすることを弁護活動の主な目的とする場合も考えられるでしょう。
ただ,この場合,不起訴という要望は実現が困難ということになります。不起訴を唯一の目的に弁護士選びをしているのであれば,起訴を防ぐ手段に乏しいと後から分かった場合,深刻なミスマッチの原因となりかねません。

弁護士への要望を整理することは,適切な弁護士選びをするため非常に重要な準備と言えるでしょう。

そもそも希望できることの選択肢が分からない、という場合には、その点の疑問も含めて弁護士に相談するとよいでしょう。一般的に目指す方針の選択肢やメリット・デメリット等を案内してもらうことが可能です。

③迷いや悩みを言語化する

交通事故加害者となった場合に,弁護士に解決してほしい悩みは,個別のケースや当事者の希望によって様々に異なりやすいものです。取調べ対応に苦慮しているケース,被害者対応が円滑に進んでいないケース,保険未加入のため金銭賠償の方法に悩んでいるケースなど,他の事件類型よりも悩みに幅が生じやすいのも交通事故の特徴の一つでしょう。

そのため,弁護士から希望する案内をしてもらうための前提として,自分が抱えている迷いや悩みを,できるだけ具体的に言語化しておくことをお勧めします。弁護士は,自分から全て網羅的に案内するのでなく,相談者側の疑問に回答する形を取る場合が多いため,準備を怠ってしまうと希望する案内が得られない恐れもあり得るところです。

④予算を決める

弁護士への依頼には,やむを得ず弁護士費用の負担が必要となります。もっとも,具体的な弁護士費用の金額は,それぞれの法律事務所により異なるため,同じ弁護活動に対する弁護士費用が事務所ごとに違う可能性もあり得ます。

そのため,弁護士選びに際しては,その法律事務所の費用を支払うことが可能かを判断するため,予め予算を決めておくことが適切です。予算のイメージを弁護士側と共有することで,予算内で弁護活動ができるかどうかを案内してもらえるほか,弁護士によっては予算内で可能な弁護活動の内容や契約内容を柔軟に案内してもらえる可能性もあります。

弁護士に相談するときの注意点

①保険会社の対応との関係

「被害者との示談は保険会社に任せていいのか」というご質問は,交通事故加害者の立場になった方からのご相談として非常に多く寄せられるものです。この点を正しく把握するためには,まず保険会社の役割を理解することが必要になります。

保険会社の役割は,加害者の代わりに被害者へ支払をするという点にあります。裏を返すと,その支払の限りでのみ,保険会社は加害者の代わりになることができる,という立場にあります。
もっとも,交通事故には金銭の支払の面(=民事事件)のみでなく,刑罰の面(=刑事事件)も同時にあります。保険会社は,民事事件に関する示談は代わりに行ってくれますが,刑事事件に関する対応には介入することができません。

そのため,「被害者との示談は保険会社に任せていいのか」という点への回答としては,「民事事件の面については任せてよい」となるでしょう。保険会社の行う示談が,刑事事件に対する十分なサポートではないというポイントは,十分に注意することをお勧めします。

保険会社は、刑事処分に関与することのできない立場であり、刑事処分に対する関心もないため、刑事手続に対する対応は期待できません。保険に入っているからと丸投げしてしまうことなく、保険でカバーされる範囲はどこまでなのかを十分に整理することが非常に重要です。

②被害者への支払が生じる可能性

自動車保険(特に任意保険)に加入している場合,被害者の損害に対する支払は基本的に保険会社が行ってくれます。そのため,加害者自身が被害者に支払を行う必要は基本的にありません。
ただ,刑事処分をより軽微にすることを目指すため,被害者の許しを獲得しようとする場合,双方の希望によっては別途金銭を支払うケースもあり得ます。被害者としては,加害者を許しても特段のメリットはないため,加害者側が許しの獲得を強く希望する場合,対価を支払うことを合意する場合があるのです。

この点,当事者間で許しの対価として支払いを行う場合には,その支払が「金銭賠償(=保険会社が行うべき支払)とは別のものである」ということを明確にする必要があります。金銭賠償の一部と評価されてしまうと,保険会社からは支払ができなくなってしまう場合もあり得るため,十分な注意をお勧めします。

③被害者側への接触方法

多くの刑事事件では,当事者が直接連絡を取ったり接触したりすることは望ましくありません。加害者側が被害者側への接触を図る際には,弁護士を窓口にし,弁護士限りで被害者側への連絡を試みるのが適切とされています。

しかし,交通事故の場合には,当事者間で直接連絡先を交換する運用が広く行われています。その理由としては,過失犯であって当事者間のトラブルが生じにくいという点や,金銭賠償のために連絡を取り合うことが不可欠であるという点が挙げられます。

そのため,交通事故で加害者側が被害者側へ接触する場合,当事者自身も動く必要が生じやすいことに注意することが望ましいでしょう。保険会社や弁護士に依頼したからあとは任せてよい,という発想にならないよう気を付けたいところです。

加害者からの誠意ある謝罪やお見舞い等の対応が、解決を大きく近づける結果につながることも数多くあるのが、交通事故の特徴の一つです。謝意や誠意は、被害者側に確実に届くよう伝える努力を尽くしたいところです。

交通事故加害者に強い弁護士を選ぶ際のポイント

①交通事故加害者の弁護に精通しているか

交通事故加害者の刑事事件は,特に被害者側とのやり取りに特徴があります。そのため,他の事件類型と同じように被害者側への対応を行おうとすると,被害者側の悪感情を招くなど,当事者間の解決にとって不利益な状況となりかねません。

そのため,交通事故加害者の弁護士を選ぶ場合には,特に被害者側への対応方法に関して,交通事故の刑事弁護に精通しているかどうか,という点を重要な基準としましょう。判断方法としては,実際に被害者側への対応方針を質問し,どれだけ具体的な回答・案内が出てくるかを判断材料とすることが一案です。

②見通しの説明が具体的か

交通事故の刑事処分に関する見通しは,対応に精通した弁護士であればある程度の確度を持って想定できるケースも少なくありません。事故態様や被害結果,被害者側の意向など,様々な事情を考慮し,先例や経験に当てはめることで,一定の見通しを設けることも十分に可能であることが多いでしょう。

逆に,処分見通しが持てない場合,必要な前提知識や経験値に不足のある可能性が考えられます。もちろん,ピンポイントで見通しを立てることは困難ですが,処分が変わる条件ごとに場合分けをするなどして,あり得る処分の幅を具体的に案内してくれるかは,重要な判断基準とすることをお勧めします。

③弁護士と滞りなく連絡する手段があるか

交通事故の場合,被害者,加害者,保険会社,弁護士と複数の人物が関わり,そのそれぞれが連絡を取り合う可能性があります。この点,弁護士と加害者側の連絡が滞ってしまうと,やり取り全体に滞りが生じ,結果として事件解決が遠のいてしまいかねません。
また,加害者側との連絡が滞ってしまう弁護士は,多くの場合それ以外の相手との連絡も滞ってしまいがちです。万一,被害者との連絡がうまくできず,被害者側の感情面に悪影響が生じてしまうと,刑事処分にも大きなマイナスとなることが見込まれます。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士と滞りなく連絡を取る手段があるか,弁護士が円滑な連絡を取ってくれる人か,という点を判断基準の一つにするとよいでしょう。連絡の取り方や頻度は,完全に各弁護士の判断にかかっているため,この点は弁護士の個性や性格による面も少なくありません。

弁護士への連絡をしたいと思っても、「忙しいのではないか」と遠慮してしまうかもしれませんが、過度に遠慮する必要はありません。また、LINEやメールなど、電話以外の連絡手段を確保しておくことも有益になりやすいです。

交通事故加害者が弁護士に依頼するべき場合

①逮捕を防ぎたい場合

交通事故は,事後に適切な対応を尽くせば,逮捕されずに手続が進むことも多い類型です。
弁護士からは,ケースに応じてどのような対応をするのが適切か,逮捕を防ぐために他に取れる手立ては何か,といった点をご案内の上,事件に応じた逮捕回避の方策を弁護活動に反映させることが可能です。

②謝罪や示談をしたい場合

交通事故では,加害者と被害者が直接の連絡を取れる場合が多いですが,当事者間で宥恕(許し)に関するお話合いをすることはあまり現実的ではありません。
弁護士に弁護活動を依頼した場合,弁護士が窓口になって謝罪の申し入れをしたり,弁護士から宥恕に関するご相談を行ったりすることで,被害者との示談を円滑に試みることが可能です。

③起訴を防ぎたい場合

交通事故の事件には,弁護活動次第で起訴にも不起訴にもなる,という場合が多数見られます。
他の事件類型の中には,起訴を避ける手段がほとんどないものもあるため,活動次第で不起訴になり得るというのは交通事故の大きな特徴といえます。
弁護士に依頼された場合,刑事処分の正確な見込みを踏まえて,起訴を防ぐための弁護活動についてご案内を申し上げることが可能です。

④被害結果が重大な場合

死亡事故や重い後遺障害を伴う交通事故では、加害者が負う法的・社会的な責任は非常に大きくなります。
一瞬の不注意であっても、結果が重大であれば、刑事・民事の両面で厳しい責任を問われる可能性があります。

こうした重大事故では、次のような場面で専門的な法的対応が求められます。

・取調べや勾留段階での刑事弁護
・被害者遺族との示談交渉や謝罪の調整
・保険会社との折衝・対応方針の整理
・損害賠償請求訴訟への対応

特に死亡事故では、遺族の感情面への配慮と法的な交渉を両立させる必要があり、本人や家族だけでの対応は極めて困難です。
弁護士が介入することで、冷静な交渉が可能となり、刑事処分の軽減や円満な示談成立の可能性を高めることができます。

交通事故加害者に対する処分は、事故の重大さを重要な判断材料とすることが一般的です。重大な事故の場合は、できるだけ早く弁護士への依頼を検討することをお勧めします。

⑤被害者側との対応に限界がある場合

交通事故の加害者となった場合、被害者本人やその家族と直接やり取りをしなければならない場面があります。
しかし、感情的な対立や複雑な金銭交渉が絡むと、個人の対応では限界を感じるケースも少なくありません。

被害者対応が難航しやすい典型的なケース

・被害者や遺族が強い感情を抱いており、冷静な話し合いができない場合
・損害賠償額や補償内容について、双方の主張が大きく食い違っている場合
・過失割合の判断をめぐり、争いが長期化している場合
・被害者側に弁護士が就いており、専門的な法的知識を前提とした交渉が必要な場合

このような状況では、相手方とのやり取りが精神的にも大きな負担となり、不適切な発言や対応が新たなトラブルを招くおそれもあります。この点、弁護士が関与することで、被害者側との直接接触を避けつつ、法的根拠に基づいた冷静で公正な話し合いが可能になります。

交通事故の刑事処分には、被害者側の処罰感情(処罰を希望するかどうか)が非常に大きな影響を及ぼします。当然ながら、被害者が加害者に対する刑罰を希望しない方が軽減しやすい傾向にあり、不起訴処分の決定打になることも珍しくありません。

⑥自動車保険に加入していない場合

自動車保険に加入していない状態で交通事故を起こしてしまうと、加害者が負う経済的負担は非常に大きなものになります。
通常であれば任意保険会社が被害者への賠償や示談交渉を代行しますが、保険に未加入の場合は、すべての責任を自分自身で負う必要があります。

弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉や賠償額の算定を法的根拠に基づいて適切に進めることができます。
また、支払いが困難な場合には、分割払いの提案や減額交渉などを通じて現実的な解決を図ることも可能です。
刑事処分に発展するおそれがあるケースでも、早期に弁護活動を行うことで、処分の軽減を目指せる場合があります。

⑦刑罰に対する不安がある場合

交通事故を起こしてしまった場合、多くの方が「刑事罰を受けるのではないか」「逮捕されるのではないか」といった強い不安を抱くでしょう。
交通事故は民事上の損害賠償責任だけでなく、刑事責任を問われる可能性がある行為であり、その結果は事故の態様や被害の程度によって大きく異なります。

交通事故における主な刑事罰

・過失運転致死傷罪
→ 7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金
・危険運転致死傷罪
→ 被害者が負傷した場合は15年以下の懲役、死亡した場合は1年以上の有期懲役
・道路交通法違反(信号無視・速度超過など)
→ 罰金刑や免許停止・取消などの行政処分

刑罰への不安を抱えたときは、できるだけ早く弁護士に相談し、今後の見通しと取るべき対応を整理することが、冷静な解決への第一歩となります。

交通事故加害者が弁護士に依頼するべきタイミング

①事故直後

交通事故の場合,事故直後に加害者自身が警察を呼ぶなどし,必要な手続を尽くす必要があります。これは,交通事故が発生した際に,自動車運転者には警察へ報告する義務が生じるためです。
そうすると,交通事故では,基本的にすべての事件が発生直後から警察による取り扱いの対象となります。つまり,事故直後の段階から,既に将来的な刑事処分を見据えた対応の必要が生じているというわけです。

しかも,事故直後の手続では,現場の実況見分を合わせて行うケースもありますが,実況見分は加害者の責任の程度に関する重要な証拠となるものです。実況見分に際しては,個別のケースに応じて生じ得る争点を整理した上で,不要な不利益を招かない対応が必要となります。

そのため,交通事故加害者の場合には,事故直後の時点で弁護士を選び,順次進む手続に対して適切な対処を取っていくことが不可欠です。事故直後は,弁護士に依頼をするべき重要なタイミングと言えるでしょう。

ポイント
交通事故の場合,事故直後に警察を呼ぶことになる
早期に実況見分が行われ,重要な証拠となり得る

②被害者側と連絡を取るとき

交通事故の場合,金銭賠償が必要となるため,継続的に被害者側と連絡を取り合うことになる,という点に特徴があります。自動車保険に加入している場合は,保険会社にやり取りの多くを委ねることができますが,保険会社への引継ぎまでは,どうしても当事者間で連絡を取ることになります。
また,保険会社が対応を始めた後でも,保険会社が対応できない点については当事者間で解決する必要があります。保険会社は,当事者の代わりに被害者への金銭賠償を行ってくれますが,金銭面の問題以外には介入することができないため,この点はやはり当事者間での直接の連絡を要します。

被害者側との連絡は,その心情に配慮するため,細心の注意を払って行う必要がありますが,加害者という立場で適切な応対を判断し,続けるのは,非常に大きな負担を伴うものです。
そのため,被害者側との連絡に際しては,適切な弁護士を選び,専門性ある弁護士から指示や助言を受ける形で進めることを強くお勧めします。被害者側との連絡が円滑にできれば,最終的な事件解決にとっても非常に有益な効果が期待できるでしょう。

ポイント
交通事故は,当事者間での連絡を要する点に特徴がある
被害者側への連絡に細心の注意を払うため,事前に弁護士選びを行いたい

③取調べを受ける前

交通事故では,当日に事故の処理をした後,後日に改めて取調べを受ける流れが非常に多く見られます。そして,最終的な刑事処分の検討は,その取調べの内容を踏まえて行われるため,取調べでの応答がどのようなものであったかは,刑事処分に直結するケースもあります。

もっとも,どのような取調べ対応が適切であるかは,個別具体的な内容によって異なってくるため,加害者自身が正確に把握することの困難なものです。刑事事件の専門家に判断を仰ぎ,刑事処分のために有益な対応を尽くすことを強くお勧めします。
取調べを受ける前のタイミングは,万全の回答を準備するために弁護士を選ぶべき時期と言えるでしょう。

ポイント
取調べ内容が最終的な刑事処分の結果に直結するケースもある
適切な取調べ対応の具体的内容は,個別の事件によって異なる

④起訴された後

交通事故では,過失の程度や被害結果の程度が大きい場合,起訴されて公開の裁判(公判)を受ける流れになる場合も否定できません。特に,以下のような場合には起訴の上で公開裁判の対象となりやすいでしょう。

公開裁判の対象となりやすい交通事故

1.被害者に過失のない事故
→横断歩道歩行中,加害者のセンターオーバー・追突など

2.被害者が死亡した事故
→被害結果が最も大きい類型

この点,公開裁判の対象となる場合には,公開の法廷でどのように対応すべきか,事前に準備をする必要があります。適切な準備を怠ってしまうと,裁判所の判決に重大な悪影響が生じる可能性も十分に考えられるところです。
そのため,起訴された後,公開裁判を控える時期には,必ず弁護士選びを行い,適切な弁護士のサポートを受けるようにしましょう。

交通事故加害者の弁護士依頼に関するよくある質問

逮捕されてしまうのか

交通事故加害者の場合,逮捕される可能性は否定できません。その背景には,交通事故が発生すると,自動車運転者には警察に報告をする義務が生じるため,基本的に現行犯で事件が発覚する,という点があります。現行犯で取り締まる際には,逃亡や証拠隠滅の可能性を直ちに詳細に確認することが難しいため,確認不足による不利益を避けるため,逮捕に踏み切るという例が散見されます。

もっとも,これは交通事故のケースで逮捕の可能性が高い,という意味ではなく,個別事件における逮捕の可能性はそれぞれの事情によって大きく変わります。それほど重大ではない交通事故であれば,逮捕されない方が通常とも言えるでしょう。
なお,一般的に逮捕の可能性が高くなるケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

交通事故で逮捕の可能性が高くなるケース

1.被害結果が重い
→死亡事故など,被害結果が重大である場合

2.重大な交通違反がある
→酒気帯び運転,無免許運転,極端な速度超過など,重大な交通違反を伴う場合

3.現行犯で逃亡が懸念される
→事故直後に当事者間でトラブルが起きた,その場を去ろうとした,という場合

警察に呼びされた場合どのように対応すべきか

①基本的な考え方

交通事故加害者となった件について,捜査機関から呼び出しを受けた場合,基本的には「呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じない」と理解をしておくことが適切です。

交通事故は,不注意で起きてしまった過失犯であるため,特段の事情がなければそれほど加害者の不利益が大きな手続(長期の身柄拘束など)を用いることはありません。特に,事故直後にしっかりと事故処理の対応を尽くしていれば,その後の呼び出しに応じている限り不測の不利益は生じないことが通常でしょう。

このような考え方を持っておくことは,自身の不安な感情を適切にコントロールする意味でも非常に重要です。交通事故は,刑事事件の中でも件数が非常に多い分野のため,手続が進むのを待つ期間が長く,手続全体も長期化しがちです。そのため,手続がなかなか終わらない中で自身をコントロールする必要がありますが,「呼ばれたときに適切に応じればよい」と割り切ることができれば,長期化による精神的負担は最小限に抑えることが可能になります。

ポイント
呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じ難い
交通事故の刑事手続は長期化しやすい

②反省内容の表明

交通事故加害者に対する呼び出しの際に確認されやすい点の一つが,反省状況です。その背景には,交通事故は,故意でなく過失(=注意義務違反)によって起きたものである,という点があります。

故意に起こした事件の場合,認め事件であれば反省の意思を表明しないことは稀です。故意に起こした犯罪行為に反省しない余地が考えにくいためです。一方,過失犯の場合,自分の過失をどのように評価しているかによって,反省を深めているケースもあれば,捜査を受けていることが不服であると考えているケースもあり得ます。
そうすると,捜査機関の目線では反省すべき過失があるのに,加害者本人が「自分にそれほどの落ち度はない」とのスタンスだと,捜査機関の理解との間に大きなギャップが生まれ,不利益な刑事処分につながる可能性もあり得ます。

そのため,自身の過失として指摘されている内容を冷静に確認し,反省すべき内容であればその反省を明確に表明していくことが適切な対応となります。

ポイント
反省すべきケースで反省が見られないと,大きな不利益につながる

③保険会社による対応状況の把握

呼び出しを受けた場合,警察署等で取り調べを受けることが見込まれますが,その際には被害者との間での解決状況についても確認されることが一般的です。そのため,自動車保険に加入している場合は,保険会社と被害者との間のやり取りの進捗をある程度把握しておくようにしましょう。

保険会社の対応状況を把握することは,以下のようなメリットにつながります。

保険会社の対応状況を把握するメリット

1.捜査機関に解決見込みありと理解してもらえる
→対応が順調に進んでいれば,当事者間の金銭的解決を前提にしてもらえる

2.十分な被害者対応をしているとの評価が得られる
→被害者対応を積極的に尽くそうとしている態度があるとの評価につながる

3.被害者側の感情面に有益な効果が期待できる
→加害者が状況把握に努めていると被害者に伝われば,被害者側の感情面の緩和につながる

不起訴になることはあるか

交通事故の場合,不起訴となる可能性は十分に考えられます。もちろん,ケースによっては不起訴処分の見込みが現実的にない場合もありますが,一般的な交通事故であれば,不起訴処分を目指す努力は十分に結果を左右し得ると考えてよいでしょう。

交通事故で不起訴の可能性が十分に考えられる大きな理由の一つが,過失犯であるという点です。交通事故は,わざと引き起こしているわけではなく,加害者自身も希望しないまま,不注意で起きてしまうものであるため,刑事責任は故意犯に比べて小さく評価されることが一般的です。起訴不起訴の判断は,事件ごとの刑事責任の重さを重要な基準とするため,交通事故が過失犯であることによる責任の小ささは,不起訴処分の可能性を高くする事情と言えます。

一方,過失犯であっても,刑事責任が重く評価されざるを得ない場合には,安易に不起訴を見込むわけにはいきません。交通事故の場合,被害者側に全く落ち度がない場合や,被害者に深刻な損害を与えた場合には,刑事責任が重大であると評価され,不起訴処分の可能性は低下しやすいでしょう。

ポイント
不起訴の可能性は,刑事責任の重さに大きく左右される
過失犯である交通事故は,故意犯よりも刑事責任が小さく評価されやすい

慰謝料を請求された場合はどうするべきか

交通事故の加害者として慰謝料を請求された場合は、まず冷静に対応することが大切です。焦って支払ったり、感情的に応じたりすると、不利な条件で示談してしまうおそれがあります。
具体的には、以下の点に留意しましょう。

1.請求内容を確認する
請求書に記載された金額や根拠を丁寧に確認しましょう。慰謝料は治療期間や過失割合などで変動するため、内容を理解せず支払うのは避けるべきです。

2.保険会社へ連絡する
任意保険に加入している場合は、すぐに保険会社へ報告を。多くの場合、交渉や支払いを代行してくれます。ただし、保険が適用されない部分については個別対応が必要です。

3.証拠を整理・保全する
事故状況の写真、ドライブレコーダー映像、診断書などを早めに整理・保管しておきましょう。

慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があり、弁護士基準がもっとも高額です。被害者が弁護士を立てて高額請求してくることもあります。

こうした場合、弁護士に相談することで請求金額の妥当性を判断し、減額交渉や示談対応を任せることができます。過失割合の整理や保険会社との調整もスムーズに進むため、慰謝料請求を受けた際は早期に専門家へ相談することが円満解決の近道です。

交通事故の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故は故意のない過失犯であるため,事件そのものの責任は決して大きくないことも少なくありません。
しかし,事後の対応を誤ってしまう場合も多く,それが本来科せられる必要のない責任や負担につながりやすい分野でもあります。
適切な対応の検討は,交通事故の刑事弁護に精通した弁護士へのご相談が有益です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所