大切にしていた車に傷をつけられ、そのまま立ち去られてしまう「当て逃げ」。
犯人に対する憤りはもちろん、「修理代は自腹になるのか」「いくらくらい請求できるのか」という不安で頭がいっぱいになっているのではないでしょうか。
適切な対応を誤れば、解決までの負担が大きくなる可能性もあります。こうした事態を避けるためには、交通事故加害者の弁護に精通した弁護士へ早期に相談することが重要です。
本記事では、交通事故加害者が弁護士に依頼するメリットや、特に依頼すべきケースについて弁護士が分かりやすく解説します。
この記事の監修者
藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
当て逃げの示談金相場はいくら?

当て逃げにおける示談金の相場は、一概に「一律◯◯円」と決まっているわけではありません。なぜなら、当て逃げは原則として「物損事故」として扱われ、賠償額は「発生した実損害の合計」によって算出されるからです。
一般的には数万円から数十万円程度になることが多いですが、高級車の破損や、営業車が使えなくなったことによる損失が含まれる場合は、100万円を超えるケースも存在します。
- 小規模な接触: 3万〜10万円(バンパーの擦り傷など)
- 中規模な破損: 10万〜30万円(ドアの交換、複数のパネルの板金)
- 大規模な損壊: 50万円以上(フレームの歪み、エンジン系統への波及)
このように、損害の程度によって金額は大きく変動します。
当て逃げの示談金相場を左右する5つの損害項目

当て逃げ被害で請求できる示談金の内訳は、主に以下の5つの項目で構成されます。それぞれの内容を正しく理解することが、適正な賠償を受けるための第一歩です。
1. 車両の修理費用
最も基本となる項目です。事故によって壊れた箇所を元に戻すために必要な費用が請求可能です。
ただし、修理費が事故当時の車両の時価額を超える場合は「経済的全損」とみなされ、時価額までしか支払われないことがある点に注意が必要です。
2. 代車使用料
修理期間中に車が使えないことで、代車を借りる必要がある場合に認められます。
代車の必要性が認められる必要があり、通常は修理にかかる相当期間(1〜2週間程度)のレンタカー費用が目安となります。
3. 評価損(格落ち損害)
修理をしても事故歴が残ることで、車の転売価値が下がってしまう損害のことです。
新車登録から日が浅い場合や、高級車の場合に認められやすく、修理費の20〜30%程度が相場となることが多いです。
4. 休業損害
被害者がタクシーや運送業などの営業車を当て逃げされた場合、修理期間中に得られたはずの利益を請求できます。
一般の自家用車の場合は「休業損害」として認められることは珍しいでしょう。
5. 迷惑料や謝罪金
原則として、物損事故では「慰謝料」は認められません。
しかし、加害者側が誠意として「示談金」に上乗せして支払う場合や、被害者が精神的に強い衝撃を受けた例外的なケースでは、調整金として含まれることがあります。
被害者が当て逃げされた時に踏むべき3つの手順

当て逃げ被害に遭った際、パニックにならずに以下の手順を踏むことが、後の示談交渉で有利に働きます。
ここからは、被害者が当て逃げされた時に踏むべき3つの手順を詳しく解説します。
1. 警察への届け出と事故証明書の取得
当て逃げ被害に気づいたら、たとえ数時間後であっても必ず警察へ届け出てください。 なぜなら、警察へ届け出なければ公的な書類である「交通事故証明書」が発行されないからです。
この証明書がないと、後に加害者が判明した際に損害賠償を請求したり、ご自身の車両保険を使用したりすることができません。
現場に警察官を呼び、実況見分を行ってもらうことで、事故の客観的な状況が記録されます。 「大した傷じゃないから」と自己判断せず、必ず道路交通法上の報告義務を果たすことが、法的な権利を守る第一歩となります。
2. ドライブレコーダーや防犯カメラの回収 証拠確保の重要性。
警察の捜査を待つだけでなく、自ら証拠を確保する姿勢が極めて重要です。 当て逃げは「逃げ得」を許さないためのスピード勝負となります。
ご自身の車にドライブレコーダーが搭載されている場合は、上書き保存されないようにすぐにSDカードを抜き取り、パソコン等にバックアップを取ってください。
また、スーパーやコンビニの駐車場であれば、施設管理者に防犯カメラの映像確認を依頼しましょう。警察を通じて依頼すれば開示してもらえる可能性が高まります。
車の色、車種、ナンバーの一部、運転者の特徴など、断片的な情報でも複数集めることで、加害者の特定に至る確率は格段に上がります。
3. 自身の保険会社への連絡
警察への届け出と並行して、ご自身が契約している任意保険会社へ事故の連絡を入れてください。
加害者が逃走している現時点では、修理費用の負担が不明確なため、保険会社のアドバイスを受けることが安心に繋がります。
とくに「弁護士費用特約」が付帯しているかどうかを必ず確認してください。
当て逃げのような少額の物損事故では、弁護士費用が賠償額を上回ってしまう「費用倒れ」が懸念されますが、この特約があれば自己負担なしで弁護士に調査や交渉を依頼できます。
犯人が見つかる前であっても、今後の対応方針をプロと相談しておくことで、精神的な負担も大きく軽減されるはずです。
当て逃げの犯人が見つからない・示談金が払われない時の対処法

警察の捜査を尽くしても加害者が特定できない、あるいは特定できても相手が無保険で支払い能力がないという事態は珍しくありません。
しかし、加害者から直接支払われないからといって、必ずしも全てを自腹で賄わなければならないわけではありません。
被害者が利用できる法的な救済制度や保険の仕組みについて詳しく解説します。
自分の車両保険(無保険車傷害特約など)を使う
加害者が不明な場合、最も現実的な解決策はご自身が加入している「車両保険」を利用することです。
車両保険には、相手がわからない当て逃げでも補償対象となるタイプがあります。これを利用すれば、時価額の範囲内で修理費用をカバーできます。
また、自分や同乗者が怪我を負った場合には「人身傷害補償保険」や「無保険車傷害特約」から支払いを受けることが可能です。
ただし、車両保険を使用すると翌年度のノンフリート等級が3等級下がり、数年間にわたって保険料が増額される点には注意が必要です。
修理代金と、将来的な保険料の増額分を天秤にかけ、どちらが経済的に有利かを保険会社や代理店にシミュレーションしてもらった上で判断することをおすすめします。
政府保障事業の利用(ひき逃げの場合)
加害者が特定できず、かつ被害者が死傷した「ひき逃げ」のケースでは、国が運用する「政府保障事業」による救済を受けられる可能性があります。
これは自賠責保険の対象とならない被害者(加害者不明や無保険車による事故)に対し、国が自賠責保険と同等の限度額内で損害を補填する制度です。
ひき逃げによって怪我を負い、治療費などの負担が重い場合には大きな助けとなります。
ただし、この制度はあくまで「対人賠償(身体への損害)」のみが対象であり、車両の修理代といった「物損」については一切支払われません。
また、健康保険や労災保険、ご自身の保険から既に支払いを受けた分は差し引かれるため、最終的なセーフティネットとしての性格が強い制度であることを理解しておきましょう。
まとめ:当て逃げの示談金相場を正しく把握し早期解決を
当て逃げ被害は、単なる金銭的損害だけでなく「逃げられた」という精神的苦痛が伴うものです。
まずは冷静に警察へ届け出て、客観的な事故の証拠を積み上げることが、解決への唯一の近道となります。
示談金の相場や損害項目を正しく理解し、もし加害者が特定できない場合でも、ご自身の保険や国の制度を賢く活用することで、自己負担を最小限に抑えることが可能です。










