「窃盗をしてしまったけれど自首した方がいいのか?」
「自首すれば逮捕されない可能性はある?」
そう思う方もいるのではないでしょうか。
窃盗事件において自首は、逮捕回避や刑罰の軽減につながる可能性があります。
ただし、必ずしも不起訴や無罪になるわけではなく、自首のタイミングや被害者との示談の有無が大きな影響を与える点を理解しておくことが重要です。
本記事では、窃盗で自首をした場合の法律上の効果、自首によるメリットやデメリットなどを詳しく解説します。
この記事の監修者

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
窃盗事件における「自首」とは
窃盗事件における「自首」とは、自ら警察や検察といった捜査機関に対して、自分が犯罪を行った事実を申告することを指します。
ここからは、自首に関する基礎知識を解説します。
自首の法律上の定義
自首は刑法第42条に規定されています。
刑法第42条
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
引用:e-Gov法令検索「刑法」
ここで重要なのは「犯罪事実を自ら申告する」という点です。他人に促されたり、すでに警察が捜査を進めている段階では、自首とみなされません。
また、自首の成立には「任意性」が求められます。つまり、本人が自由意思に基づいて罪を認め、申告する必要があるということです。
窃盗事件で自首をした場合、この規定により量刑の判断において減軽が考慮される可能性がありますが、必ずしも自動的に軽くなるわけではなく、裁判官の裁量に委ねられる点も押さえておくべきでしょう。
自首と出頭・任意同行との違い
自首と似た言葉に「出頭」や「任意同行」がありますが、これらは法律上まったく異なる意味を持ちます。
出頭とは、犯人が捜査機関に特定された後で捜査機関に出向く行為です。
つまり、出頭は捜査機関によって主体的に呼ばれているため、自首のように「自ら進んで罪を告白する行為」には当たりません。
また、任意同行とは、警察が現場や事情聴取の場面で「ちょっと署まで来てほしい」と求め、本人が同意して警察署に同行することをいいます。
これも自首とは違い、あくまで警察の求めに応じる形です。
このように、自首は本人の自発的な意思による告白である点で、出頭や任意同行と大きく異なります。
窃盗事件で自首を検討している場合、この違いを理解していないと「自首したつもりが実際は出頭扱い」という誤解を招きかねません。
窃盗で自首した場合のメリット

窃盗で自首をすることには、主に以下のメリットがあります。
- 刑が軽くなる可能性がある
- 示談交渉が進めやすくなる
- 捜査機関からの印象が良くなる
詳しく解説します。
刑が軽くなる可能性がある
自首の大きなメリットは、刑が軽くなる可能性がある点です。刑法第42条は、自首した場合に「その刑を減軽することができる」と規定しています。
これにより、懲役刑であれば執行猶予が付く可能性が高まったり、罰金刑で済んだりする場合もあります。
とくに初犯で被害額が少なく、反省の態度が明確であれば、自首は量刑判断に大きな影響を与える要素となるでしょう。
ただし、減刑は必ず適用されるわけではなく、最終的には裁判官の判断に委ねられます。
つまり、自首をしたからといって自動的に刑が軽くなるわけではない点は理解しておく必要があります。
示談交渉が進めやすくなる
窃盗で自首をすると、被害者への謝罪や賠償の意思を明確に示すことができます。この姿勢は被害者との示談交渉を進める上で大きなプラスに働きます。
被害者にとっては、加害者が逃げ隠れせず自ら責任を認めたという事実が、精神的な安心につながるからです。
実際、示談が成立すれば不起訴処分となる可能性もあり、刑事裁判を回避できるケースもあります。
ただし、示談交渉には専門的な知識が必要であり、弁護士を通じて行うのが一般的です。
自首をしても被害者が示談に応じない場合もあるため、その限界を理解した上で取り組むことが大切です。
捜査機関からの印象が良くなる
窃盗で自首をすることは、捜査機関からの印象を良くする効果も期待できます。
警察や検察にとって、自ら罪を認めて出頭する姿勢は「反省している」と受け取られやすいため、その後の取り調べや処分判断に影響する場合があります。
とくに、同じ窃盗でも逃亡や証拠隠滅を図ったケースに比べて、自首をしたケースは評価が高くなる傾向があるのです。
ただし、印象が良くなること自体が直接的に刑を軽くする根拠になるわけではないため、注意が必要です。
窃盗で自首した場合のデメリット

一方、窃盗で自首した場合のデメリットは主に以下の通りです。
- 必ず刑が軽くなるわけではない
- 逮捕・勾留される可能性は残る
詳しく解説します。
必ず刑が軽くなるわけではない
自首をすると刑が軽くなる可能性はありますが、必ずそうなるわけではありません。
刑法第42条では「減軽することができる」と規定されていますが、裁判所が必ず適用する義務はありません。
つまり、被害額が大きかったり、繰り返し犯行を重ねていたりすれば、自首をしても刑が重く科されることがあります。
また、自首をしたとしても、被害者が強く処罰を求めている場合や、社会的影響が大きい事件では、裁判所は厳しい判断を下す傾向にあるのです。
逮捕・勾留される可能性は残る
窃盗で自首をしたとしても、逮捕や勾留される可能性は完全にはなくなりません。
とくに、被害額が高額である場合や、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断された場合には、捜査機関は身柄を拘束することがあります。
自首は「自ら出頭した」という事情として有利に働くことはありますが、それだけで逮捕を免れる保証にはなりません。
また、勾留が続くと最大で20日間以上も身柄を拘束されることがあり、その間は社会生活に大きな支障が生じます。
仕事や学業に影響が及ぶことは避けられず、社会的信用の低下にもつながってしまうでしょう。
窃盗で自首したときの手続きの流れ
窃盗で自首したときの手続きの流れは、主に以下の通りです。
- 1.警察署に出頭する
- 2.取り調べを受ける
- 3.検察に送致される
- 4.起訴・不起訴の判断がなされる
詳しく解説します。
警察署に出頭する
自首をするには、警察署に自ら出頭することです。受付で自首の意思を伝えると、担当の警察官に案内され、事件の内容や経緯を聞かれることになります。
この段階では、本人の身元確認や犯行に関する基本的な説明が求められます。
重要なのは、自首をする際には「正直に詳細を説明する」ことです。虚偽の申告や曖昧な供述は、後の手続きで不利に働く可能性があります。
また、弁護士に同席してもらうことも可能であり、法律的に適切な手続きを踏むためには専門家のサポートを受けることが望ましいといえるでしょう。
取り調べを受ける
自首をした後は、警察による取り調べを受けることになります。ここでは、犯行の動機や経緯、被害の状況について詳細に質問されます。
供述内容は調書として記録され、後の裁判や処分判断に用いられるため、事実を正確に伝えることが重要です。
取り調べの中では、自首をした経緯や反省の意思も確認されます。この時点で被害弁償や示談の意思を明確に示しておくと、処遇にプラスの影響を与える可能性があります。
ただし、取り調べは長時間に及ぶことも多く、精神的な負担が大きいため、弁護士を依頼してアドバイスを受けることがおすすめです。
検察に送致される
警察での取り調べが終了すると、事件は検察に送致されます。
検察官は、警察から送られた供述調書や証拠をもとに、事件の性質や社会的影響、被害の程度などを総合的に判断します。
ここで検察官が重視するのは、自首の有無や被害者との示談の進展状況です。被害者への賠償が進んでいる場合や、真摯な反省が認められる場合には、不起訴処分の可能性も高まります。
起訴・不起訴の判断がなされる
最終的に検察は、事件を起訴するか不起訴とするかを判断します。不起訴処分になれば、刑事裁判にかけられることはなく、処罰を免れることができます。
示談が成立している場合や、被害額が小さい場合、自首によって真摯な反省が認められた場合などは、不起訴の可能性が高まるでしょう。
一方で、社会的に重大な影響を及ぼす事件や、繰り返しの犯行で悪質性が高いと判断されれば、起訴され刑事裁判に進むことになります。
侵入窃盗事件で逮捕される可能性
侵入窃盗事件は,逮捕の可能性が非常に高い事件類型と言えます。捜査を行い,被疑者が特定できたとなれば,逮捕をする方が通常です。
侵入窃盗事件で被疑者を逮捕する場合,以下のような理由があることが考えられます。
侵入窃盗事件で逮捕する理由
1.行為の違法性が高い
2.被害が重大である
3.事件の再発を防ぐ必要が大きい
4.重大な刑罰が見込まれやすい
【1.行為の違法性が高い】
侵入窃盗事件は,被害者の自宅など,そのプライバシーが保護されるべき場所に侵入した上で,保管している金品を窃取するという内容であり,その行為の違法性は高いものと理解されます。少なくとも,「思わず行ってしまった」「魔が差した」といった理由で起きる事件ではなく,実行するには犯罪行為に及ぶ明確な意思を持ち続けていることが必要であるため,実行することの悪質性,違法性が重く評価されやすいのです。
被疑者を逮捕するかどうかは,逃亡や証拠隠滅の恐れを基準に判断されますが,違法性の高い行為に及んだ被疑者の場合,規範意識が低いと評価され,逃亡や証拠隠滅の危険が類型的に大きいと判断される傾向にあります。そのため,行為の違法性を踏まえて逮捕する可能性が高くなります。
【2.被害が重大である】
侵入窃盗事件では,被害者の経済的な損害はもちろん,自宅等に侵入されたことによる精神的苦痛が大きく,被害者に生じた損害は重大なものと理解されています。被害者としては,なぜ侵入されたか,何が盗まれたかを把握できないまま,いつ再度の被害に遭うか分からない不安な時間を強いられることになります。
そのため,侵入窃盗事件の被疑者を特定した場合には,被害者保護の観点から被疑者を逮捕し,被疑者と被害者を物理的に切り離す取り扱いがなされる傾向にあります。
【3.事件の再発を防ぐ必要が大きい】
侵入窃盗事件は,1回だけで終わるのでなく,同一の場所で繰り返し行われることが多く見られます。加害者が侵入方法を確保した場合,同じ方法で複数回に渡って侵入を試み,その都度金品を窃取することになりやすい事件類型と言えます。
そのため,侵入窃盗事件の捜査における重要な目的の一つが「被害の再発を食い止めること」であり,確実に再発を防ぐ手段として逮捕が選択されることになりやすい傾向にあります。
【4.重大な刑罰が見込まれやすい】
違法性や損害の大きな事件である侵入窃盗は,加害者に対する刑罰が相応に重大なものとなりやすいところです。公開の裁判(公判)が行われた上で,場合によって実刑判決を含む重い処罰の対象となることも考えられます。
刑事事件の捜査に当たっては,見込まれる刑罰が重大であればあるほど,被疑者の逃亡や証拠隠滅が懸念される,との理解が一般的です。そのため,逃亡や証拠隠滅を防止する目的で,逮捕が選択される可能性が高くなります。
逮捕の流れ
逮捕の種類・方法
法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。
①現行犯逮捕
現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。
典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。
ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。
なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。
準現行犯逮捕が可能な場合
1.犯人として追いかけられている
2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている
3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある
4.身元を確認されて逃走しようとした
ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能
②通常逮捕(後日逮捕)
通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。
裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。
通常逮捕の要件
1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。
2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。
通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。
ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要
③緊急逮捕
緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。
緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。
緊急逮捕の要件
1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う
緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。
緊急逮捕と現行犯逮捕の違い
現行犯逮捕 | 緊急逮捕 | |
逮捕状 | 不要 | 逮捕後に請求が必要 |
一般人の逮捕 | 可能 | 不可能 |
逮捕後の流れ
逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。
逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。
ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される
逮捕による不利益
逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。
①社会生活を継続できない
逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。
また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。
②仕事への影響
逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。
また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。
③家族への影響
逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。
このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。
④報道の恐れ
刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。
万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。
⑤前科が付く可能性
逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。
侵入窃盗事件で逮捕を避ける方法
①自首の試み
侵入窃盗事件の加害者となってしまった場合,事件発覚前など捜査を受けていない段階であれば,逮捕回避の手段として自首を行うことは有力です。
自首は,捜査機関に対して犯罪事実を自ら申告し,捜査や処分を求めることを言いますが,自らの侵入窃盗を捜査機関に申告する加害者の場合,その後に逃亡や証拠隠滅を図る可能性は低いと評価されるのが一般的です。自発的に捜査や処分を求めておきながら,その後に刑事責任を逃れる行動に出るのは不合理であるためです。
ただし,法的に自首が成立するのは,捜査機関に犯罪事実又は犯人が発覚していない場合のみです。捜査機関が犯罪事実を把握しており,捜査によって犯人を特定した後であると,自ら出頭しても自首には当たらなくなってしまうため,できるだけ早期の検討が望ましいところです。
②積極的な捜査協力
認め事件,否認事件のいずれについても,捜査協力の姿勢を見せることは逮捕の可能性を引き下げる結果につながりやすい行動です。
逮捕は,捜査の妨害を防ぎながら円滑に証拠収集を図る手段であるため,捜査が妨害される恐れがどの程度あるか,という点は,逮捕をするかどうかの重要な判断基準となります。そのため,積極的な捜査協力を尽くしている場合には,逮捕をしなくても捜査の妨害は見込まれづらく,逮捕の必要性も低いと判断されやすくなるのです。
具体的な捜査協力としては,以下のような対応が有力でしょう。
捜査協力の内容
1.出頭の求めに応じる
→出頭を求められた際に,出頭日時の調整に積極的に応じる
2.不要な黙秘を控える
→質問にはできる限り回答し,情報を伏せようとしていないことを表明する
3.証拠物の提出に応じる
→物品の提出を求められた場合には,自ら持参などする
③示談の試み
侵入窃盗事件における逮捕の判断は,被害者への配慮の面が非常に大きいものです。裏を返せば,被害者への配慮を要しない場合には,逮捕の必要性も小さくなるということができます。
この点,被害者の配慮を要しない場合の代表例が,当事者間ですでに解決しているケースです。当事者間で損害が補填されている,事件の再発がないと見込まれる,被害者が加害者の刑事処罰を希望しない,といった状況であれば,逮捕をしてまで被害者保護を図る必要はないとの判断が通常でしょう。
そのため,当事者間での解決を目指すために示談の試みをするのは有力な手段でしょう。示談が成立し,当事者間で事件が解決した場合には,逮捕回避につながるほか,最終的な刑事処分においても不起訴をはじめとする軽微な取り扱いが見込まれやすくなります。
侵入窃盗事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか
侵入窃盗事件の逮捕に関する対応は,可能な限り弁護士に依頼し,弁護士を通じての対応を行うことを強くお勧めします。
侵入窃盗事件は,基本的に逮捕が見込まれやすい事件類型です。侵入窃盗事件の被疑者は,逮捕されやすい状況にあると言えるでしょう。そのため,逮捕の回避を目指す場合には,漫然と対応していては不十分であり,積極的に適切な行動を尽くす必要があります。
また,逮捕の回避を目指す場合も,逮捕後に早期の釈放を目指す場合も,具体的な対応方法をどうすべきかは個別の状況,内容等によって様々に変わります。具体的な判断は専門性のある弁護士に仰ぐことで,適切な対応を尽くせるよう万全の体制を設けることが有益です。
侵入窃盗事件の逮捕に関する注意点
①逮捕が回避できない可能性
侵入窃盗事件の場合,逮捕の回避を目指しても,結果的に逮捕がなされてしまうことは珍しくありません。それだけ,侵入窃盗事件は重大な事件類型であり,逮捕の可能性が大きいと評価されやすいものです。
そのため,侵入窃盗事件で逮捕回避を目指す場合には,結果が伴わない可能性をあらかじめ踏まえておくことが望ましいところです。
もっとも,逮捕がなされたとしても,逮捕回避を目指す動きが無駄であるということではありません。多くの場合,逮捕回避のための行動は,最終的な刑事処分の軽減につながりやすい行動でもあるため,自身にとって有益な行動である,ということは間違いありません。
②逮捕後の拘束期間が長い可能性
侵入窃盗事件は,逮捕された場合に早期釈放が難しく,身柄拘束の期間が長期化しやすい事件類型です。
逮捕されると,最大72時間以内に「勾留」という身柄拘束の手続に移行するかが判断されます。勾留が決定されると10日間の身柄拘束がなされ,さらに「勾留延長」となると加えて最大10日間の身柄拘束が生じます。

侵入窃盗事件の場合,勾留及び勾留延長が必要となりやすいため,合計20日間の勾留を想定しなければならないケースが多いでしょう。また,余罪がある場合には,余罪で再度逮捕され,20日間の勾留が繰り返されるケースもあります。その場合には,より長期の身柄拘束も考えられるため,注意が必要です。
侵入窃盗で警察から呼び出しを受けたときのポイント
呼び出された場合の対応法
①基本的な考え方
侵入窃盗事件の場合,被疑者から話を聞きだす方法として呼び出しが行われることは多くありません。侵入窃盗事件では,被疑者が特定できたのであれば逮捕をし,身柄拘束をした状態で取り調べを行う取り扱いが非常に多いためです。
そのため,侵入窃盗事件で呼び出しを受けている状況は,どちらかと言えば例外的であり,被疑者としては有益な取り扱いを受けている,という理解ができるところです。
侵入窃盗事件の被疑者とされているにもかかわらず呼び出されている,という場合,その有益な取り扱いを自ら失わないような対応を心掛ける,という考え方が望ましいでしょう。捜査機関が呼び出しを行う場合,逮捕をせず在宅捜査を進める可能性を残していることになるので,逮捕されない可能性がより高まる対応を目指したいところです。
ポイント
侵入窃盗事件の場合,被疑者の特定後は逮捕が一般的
呼び出しをするという取り扱いは被疑者にとって有益な状況
②認め事件の場合
認め事件の場合には,認めるスタンスを明らかにしたうえで,可能な限り逃亡や罪証隠滅が懸念されないように努めることが重要です。具体的には,出頭を求められれば応じる,証拠物の提出を求められれば積極的に提出する,取調べには可能な限りの情報提供をする,といった対応が適切でしょう。
捜査機関から,逃亡や罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうことができれば,逮捕を防ぐことのできる可能性が高くなります。
ポイント
逃亡や罪証隠滅の恐れがない,との判断を目指す
③否認事件の場合
否認事件で呼び出しを受けている場合,被疑者を明確に特定するだけの証拠がない状況である,という可能性が想定されます。物的証拠が確かでないため,犯人の可能性がある人物や事件の情報を知っている可能性のある人物からとりあえず話を聞く,という動きです。
そうすると,呼び出しを行う捜査機関としては,呼び出した際に自白が引き出せないか,という考えであることが少なくないでしょう。
そのため,まずは否認の態度を明確にし,逮捕するだけの証拠はないとの判断を促すのが有効です。ただ否認するのでなく,その裏付けとなり得ることをできる限り伝えられると,より望ましいでしょう。
また,前提として呼び出しに一度は応じることが適切です。否認事件の場合,呼び出される筋合いはない,という発想になることも無理はありませんが,出頭を拒否し続けるのは逮捕の可能性を自ら高める結果になりかねないため,あまり適切な対応とは言い難いところです。
ポイント
被疑者を特定する証拠に乏しい可能性が見込まれる
記憶に反した自白は厳禁
侵入窃盗事件の呼び出しに応じると逮捕されるか
侵入窃盗事件は逮捕の可能性が高い事件類型であるため,呼び出しに応じて出頭した際に逮捕される,という流れは否定できません。もっともこれは,呼び出しに応じたことが逮捕の原因になる,というわけではありません。
呼び出しに応じた際に逮捕されるのは,事前に逮捕を決めていた,という場合であるため,呼び出しに応じるかどうかにかかわらず逮捕されていたと考えるのが適切です。ただ,逮捕を予定しているのであれば,呼び出すのでなく自宅などに直接訪れて逮捕を執行することが一般的でしょう。呼び出しによって捜査していることを知らせてしまうと,逃亡や証拠隠滅のきっかけになりかねないためです。
そのため,呼び出しを受けている状況では,逮捕するかどうかが未定であることが多いでしょう。裏を返せば,呼び出しへの対応次第で逮捕されるかどうかは大きく変わりやすい状況である,ということもできます。
ポイント
逮捕するかどうか決まっていないことが見込まれる
呼び出しへの対応如何で逮捕の可能性が変わりやすい
侵入窃盗事件で警察が呼び出すタイミングや方法
①広く情報収集を行うため
特に被疑者が特定できていない侵入窃盗事件では,何らかの情報を持っているであろう人物を対象に広く情報収集を試みる捜査が行われやすいところです。いわゆる「聞き込み」というものです。
被疑者と扱うつもりではなく,何かを目撃していたり聞いていたりしないか,ということを調べるための捜査手法であるので,この場合の捜査機関の対応は非常に穏やかであることが多いでしょう。呼び出しの連絡を行う段階で,被疑者とは見ていないこと,捜査協力をお願いしたいという趣旨であることなどを,一通り明らかにしてくれる事が一般的です。
また,呼び出しは出頭の負担を求める動きになってしまうため,呼び出すのでなく捜査機関の方が訪問する形を取ることも少なくないでしょう。
②取り調べを行うため
被疑者が特定された段階では,被疑者の取調べを行う目的で呼び出されることが考えられます。この場合には,呼び出しの連絡段階で捜査機関からの積極的な情報提供が行われることはなく,端的に心当たりがないか問われる程度であることが通常でしょう。連絡を寄越してきた趣旨・目的や,呼び出しの際に協力を求めたいことなどを明らかにしてくれる,という動きも期待できないことが一般的です。
呼び出しのタイミングは,被疑者特定のための捜査を一通り行った後であることが見込まれやすいでしょう。もっとも,被疑者が特定できたとなれば,その後あまり期間を空けず呼び出すことが想定されやすいところです。
侵入窃盗事件の呼び出しに応じたときの注意点
①逮捕リスク
侵入窃盗事件は,もともと逮捕の恐れが大きい事件類型であるため,呼び出しに応じた際の対応が不適切であると,他の事件よりも強く逮捕リスクが懸念されます。
そのため,侵入窃盗事件の場合,逮捕を誘発しない対応の仕方をより慎重に選択すべきことを注意して臨むようにしましょう。
具体的には,むやみに捜査機関への敵対姿勢を示さないことが適切です。敵対姿勢を見せていると,捜査協力をしてくれるとの信頼が十分に得られにくくなるため,逮捕などの強制捜査を招く可能性が高くなります。
供述内容が認めであっても否認であっても,対応自体はいたって冷静に,理性的に行うことが合理的です。
②取調べへの対応方針
取調べを受ける際には,基本的な方針として罪証隠滅の恐れがあると疑われないようにすることを目指すようにしましょう。
侵入窃盗事件の場合,現行犯で発覚するのでなく,各種の証拠から後日発覚することが多い傾向にあります。そのため,被疑者の手元に証拠が残っている場合,その証拠が処分されるなどして発見できなくなってしまう可能性が懸念されます。
具体的な証拠としては,以下のようなものが挙げられます。
被疑者の手元に残っていると疑われる主な証拠
1.盗品
2.侵入行為に用いた物(カギなど)
3.当時の衣服や靴
4.交通手段に関する証拠(車両,公共交通機関の利用履歴など)
取調べに際しては,捜査機関から証拠の隠滅を疑われないよう,適切な情報提供や物品の提出等に努めるのが望ましいでしょう。
③余罪の取り扱い
余罪がある場合,呼び出されたときに話すべきか,どこまで話すべきかが難しい問題になることも少なくありません。
この点,同じ場所で行った余罪については,発覚を防ぐことが難しい点に注意するのが適切でしょう。なぜなら,同じ場所での余罪がある場合,実際に取り締まりを受けた事件より前の余罪が発覚したことをきっかけに,捜査が開始された可能性が高いためです。
そうすると,捜査機関では既に余罪に関する十分な捜査を行っており,余罪の嫌疑も固めた状態である可能性が高く見込まれます。少なくとも,余罪があることを前提に捜査を進めていることがほとんどでしょう。
もっとも,複数の余罪があってどれが捜査機関に把握されているか分からない等,具体的な回答方針に悩むことは大いに考えられます。個別の対応については,弁護士との十分な協議を強くお勧めします。
侵入窃盗事件における自首のコツ
侵入窃盗事件で自首をするべき場合
①被疑者を特定できる証拠がある場合
自首は,被疑者が特定されるものと見込まれる場合に,事前に行うことで逮捕回避や処分軽減を目指す目的で利用することが通常です。そのため,自首をするべき場合の代表例は,放置していても自分が被疑者と特定され,逮捕されてしまう場合,ということになるでしょう。
この点,侵入窃盗事件では,被疑者を特定すれば,その被疑者を逮捕しながら捜査を行うことが非常に多く見られます。そうすると,侵入窃盗事件の場合,自分が被疑者と特定されることは,ほぼイコール自分の逮捕が見込まれること,という理解が可能です。
そのため,侵入窃盗事件で自分が被疑者と特定できる証拠があるケースでは,積極的に自首を検討するべきと言えるでしょう。証拠の具体例としては,現場又は付近の撮影画像・映像,周辺の目撃者等が挙げられます。
ポイント
侵入窃盗事件は,被疑者を特定できれば逮捕することが多い
被疑者の特定が見込まれる場合は,自首による逮捕回避が有益
②捜査が行われていると分かった場合
侵入窃盗事件の場合,事件が起きても全てが捜査されているとは限りません。通常,侵入窃盗事件は被害者が自身の被害を把握したときに捜査機関へ相談等し,捜査の開始へとつながるものですが,逆に被害者が侵入窃盗被害を把握していない場合,捜査が始まるきっかけは生じず,捜査がなされないままである,ということも考えられます。
自首は,非常に有利な効果をもたらしやすい行動ですが,一方で「捜査が行われていないのに自首をしてしまうかもしれない」というリスクを背負う行動でもあります。裏を返せば,このリスクがない場合,自首がより有益な手段になると言えるでしょう。
自身の侵入窃盗事件について捜査が行われていると分かった場合は,「捜査が行われていないのに自首をしてしまうかもしれない」というリスクはない状況と言えるため,自首を積極的に検討することが有効です。
ポイント
自首は捜査が行われていない場合のリスクを背負った行動
③当事者間で示談交渉できる間柄にない場合
侵入窃盗事件は,具体的な被害者に対する犯罪行為であるため,被害者が捜査を希望すれば捜査が行われ,被害者が加害者の処罰を希望すれば処罰される,という結果になりやすい類型の事件です。一方,被害者が捜査を望んでいなければ,捜査機関が無理矢理捜査を行うことは考えにくく,被害者が加害者の処罰を望んでいないのに処罰されるということも考えにくいでしょう。
そのため,侵入窃盗事件は,当事者間の示談によって解決できれば,加害者側にとって最も望ましいところです。示談が成立すれば,その後に逮捕されたり処罰を受けたりする可能性は現実的になくなるでしょう。
逆に,被害者との交友関係がないなど,当事者間で示談交渉ができない間柄の場合,早期に示談交渉で解決する手段に乏しいため,他の手段で逮捕や処罰の回避を目指さなければなりません。この場合の具体的な手段としては,自首以外にないのが通常であり,自首を検討する必要性が高い局面と言えます。
ポイント
侵入窃盗事件は,示談ができれば逮捕や処罰がなされづらい
被害者と示談交渉ができない関係の場合,自首が有力に
侵入窃盗事件の自首は弁護士に依頼すべきか
侵入窃盗事件の自首について検討する場合には,弁護士に相談・依頼をし,弁護士の専門的な見解を仰ぐことが適切です。また,実際に自首を試みる場合にも,弁護士と協同して行うことを強くお勧めします。
弁護士に依頼することの具体的なメリットとしては,以下の点が挙げられます。
①自首すべき状況か判断できる
侵入窃盗事件は,重大な刑事処罰のあり得る事件類型のため,捜査が行われていないのに勇み足で自首を行ってしまった場合の不利益が大きくなりやすいという懸念があります。自分の自首が原因で捜査・処分を受けてしまう,いわゆる「やぶ蛇」の結果になると,自ら自身に対する刑罰を招くことにもなりかねません。
そのため,侵入窃盗事件の自首を検討する際には,本当に自首が必要な状況か,自首をする場合としない場合のリスクはどの程度の状況か,ということを慎重に判断しなければなりませんが,当事者本人が判断することは非常に困難です。客観的に検討すること自体が難しい上に,刑事事件の専門的な知識や経験がないと判断の尺度も設けられないためです。
この点,弁護士に依頼を行うことで,実際に自首すべき状況かどうかを弁護士が客観的,専門的に判断することが可能になるでしょう。自首を行うかどうかの重要な判断材料が得られるはずです。
②自首の意思を正確に伝えられる
自首を行う場合に,その意図や目的,伝えたい内容等が正しく捜査機関に把握してもらえず,意図しない不利益を被るケースは意外に少なくありません。特に,当事者本人のみで自首を試みるとなると,逮捕などへの不安から話すべきことを自分なりに選びながら話そうとするあまり,捜査機関から「重要な証拠を隠そうとしている」という疑いを抱かれる場合も一定数見られます。
実際には誠意を持って自首を試みているにもかかわらず,重要な証拠隠滅の隠れ蓑として自首を利用している,との疑いを持たれてしまうことは,極めて重大な不利益につながりかねず,是が非でも避けるべきでしょう。
この点,弁護士に依頼し,弁護士が主導する形で自首を行えば,自首の趣旨を弁護士から正確に伝えてもらうことができ,自首のメリットを確実に得られる結果につながります。また,自首に必要な捜査機関とのやり取りはすべて弁護士が行うため,時間的,心理的負担を大きく軽減することも可能でしょう。
③速やかに弁護活動を開始できる
自首は,行う人にとっては非常に重要な出来事ですが,刑事事件の手続全体との関係ではスタートラインにとどまります。自首の位置づけは,職務質問などと同じくあくまで捜査が始まるきっかけであり,実際の捜査はその後に継続していくものです。
そのため,自首を行う場合には,その後に捜査が行われ,捜査が終われば刑事処分の検討がなされる,ということをあらかじめ視野に入れておく必要があるでしょう。
この点,自首を行う段階から弁護士に依頼することで,自首後の捜査や刑事処分に向けた弁護活動を,最も早い段階から開始できます。自首による処分の軽減を期待するのであれば,自首を行うのみでなく,その後の弁護活動も処分の軽減を目指したものにするべきです。
侵入窃盗事件で自首をする場合の注意点
①逮捕が回避できるとは限らない
侵入窃盗事件は,類型的に重大性が大きいことを踏まえ,逮捕される可能性が非常に高い事件類型です。そのため,自首を行ったからと言って直ちに逮捕されなくなるとは限らない,という点には注意が必要でしょう。
自首を行ってもなお逮捕が避けられないケースとしては,以下のような場合が挙げられます。
自首しても逮捕が防げないケース
1.捜査機関が既に逮捕の方針を固めていた場合
2.事件の重大性があまりに顕著である場合
3.余罪や前科の関係で重い処罰が見込まれる場合
もちろん,自首を行うことで逮捕の回避につながるケースもあり得ますが,逮捕されないことを前提に自首する,というものでないことは理解しておくのが適切です。
②不起訴処分が約束されるわけではない
自首は,刑事処分の軽減を目指す試みである以上,自首を行う場合には不起訴処分となることを目的にしているのが通常でしょう。実際,自首を行ったケースでは,自首を理由に不起訴処分とされる例も多く見られます。
しかし,侵入窃盗事件では,そもそもの刑事責任が大きいため,自首によってある程度軽減されても不起訴処分とはならない,という可能性が大いにあり得ます。自首を試みる際にはあらかじめ注意することが適切でしょう。
逆に,自らが刑罰を受ける可能性も了承した上で,それでもなお自首をする,という態度の方が,深い反省が認められるとの評価になるため,結果的に不起訴処分の可能性が高まりやすいとも言えます。いずれにしても,不起訴処分が約束された状況にないことは正確に理解しておくことをお勧めします。
③逮捕時の備え
逮捕の可能性が高い侵入窃盗事件では,自首を行った場合にそのまま逮捕される可能性への備えもあらかじめ行っておくのが適切です。具体的には,留置施設に持ち込む物品の用意をしておくと,逮捕時の有効な備えになるでしょう。
留置施設に持ち込む物品の例としては,以下のものが挙げられます。
留置施設に持ち込む物品の例
1.現金(1万円程度)
2.着替え(上下着衣,下着,靴下)
3.本
なお,着替えや本については,留置施設内で利用できるものに詳細なルールがあります。ルールに反した物品は利用できないため,具体的なルールを依頼する弁護士に確認の上,準備することをお勧めします。
④示談を試みることの重要性
侵入窃盗事件は,被害者と示談ができるかどうかによって結果が劇的に変わることになりやすい類型です。これは,自首を行った場合でも違いはありません。そのため,自首を試みる場合には,その後に示談を試みることもセットとすることが基本,と考えるのがよいでしょう。
自首を行った場合,加害者側の深い反省の意思は行動として表明されており,被害者側もその事実を把握することになります。そのため,自首をしなかったケースよりも被害者側から示談の了承が得られる可能性は高く,その意味でも示談を行うことの重要性は非常に大きいと言えるでしょう。
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