不同意わいせつ事件は弁護士に依頼|逮捕や実刑を防ぐための重要ポイントを詳細解説

このページでは,不同意わいせつ事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

目次

不同意わいせつ事件で弁護士を選ぶタイミング

①自首を試みるとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

不同意わいせつ事件の場合,重大な犯罪類型と評価されやすいことから,刑事処分の軽減を目指して示談を試みることは有力な手段の一つです。自首をした場合としなかった場合とでは,捜査における取り扱いや捜査後の刑事処分の内容が劇的に変わることも珍しくありません。

もっとも,本当に自首をすべきかどうか,自首をする場合にどのような手順・方法で行うか,という点は,当事者自身での判断が困難なポイントです。自首を試みようと考えるときには,適切な弁護士選びの上で,弁護士とともに検討・行動をするのが適切でしょう。
そのため,自首を試みたいと考えるときは,弁護士選びのタイミングということができます。

ポイント
不同意わいせつは重大犯罪のため,自首の試みは有力
適切な自首のためには,弁護士への依頼が適切

②逮捕回避を目指すとき

不同意わいせつ事件は,捜査に際して逮捕されることの多い事件類型です。逮捕をしなければ,事件の証拠が隠滅されたり,被害者や第三者に対する危害が懸念されたりと,より重大な悪影響が生じかねないと考えられているためです。

そのため,不同意わいせつ事件における対応として,逮捕の回避を目指すことは非常に重要なポイントの一つとなります。逮捕を防ぐことができれば,日常生活への影響を最小限に抑えることができ,適切な解決に結びつく可能性が非常に高くなります。

しかしながら,具体的にどのような手段で逮捕を回避するのが適切かは,個別の内容や状況により様々です。場合によっては,弁護士ごとに具体的な案内の内容が異なる可能性すらあります。
そのため,適切な方法で逮捕の回避を目指したい場合には,適切な弁護士選びが必要と言えます。

ポイント
不同意わいせつ罪は逮捕リスクの高い類型
逮捕回避の具体的な手段は,弁護士によっても案内が異なる

③示談を試みるとき

不同意わいせつ事件の処分は,被害者との間で示談が成立したかどうかによって決定的に左右されやすい傾向にあります。被害者側のプライバシーを守る必要もあるため,示談が成立し,被害者が起訴を望まないとの判断に至った不同意わいせつ事件では,現実的には起訴が難しく,不起訴処分となることが見込まれやすいでしょう。

この点,示談交渉には弁護士が不可欠となります。示談を試みるためには,弁護士を介して捜査機関に連絡し,被害者と弁護士との間での連絡を始めてもらう必要があるためです。

示談交渉の流れ

そして,示談の成否やその内容は,担当する弁護士によって様々に変わりやすいものです。示談でどんな合意をするかは自由であるため,無数の選択肢があるのです。
そのため,示談を試みたいときには示談に精通した適任の弁護士を選ぶ必要があります。

④保釈を求めるとき

不同意わいせつ事件では,逮捕・起訴を防ぐことができず,起訴後の対応を尽くすべき場合も少なくありません。起訴後の対応としてまず行うべきであるのが,保釈の請求です。

保釈とは,勾留されている被告人(起訴された人)の身柄を,裁判の間だけ釈放する手続を言います。保釈が認められた場合,保釈保証金(いわゆる保釈金)を納めることで,留置施設から釈放してもらい,帰宅することが許されます。
起訴前には釈放が認められなかったケースでも,起訴後の保釈は広く認められることが珍しくないため,特に認め事件では速やかな保釈が肝要と言えます。

もっとも,保釈を求める手続や,保釈が認められた後の手続は,弁護士なしでは困難です。現実的には,弁護士に保釈を請求してもらい,保釈が認められた後の対応も行ってもらうことが必要になるでしょう。
そのため,保釈を求めるときには弁護士への依頼が必要なタイミングということができます。

ポイント
保釈は,起訴後の勾留から釈放してもらうための手続
保釈請求や保釈許可後の手続には弁護士が必要

不同意わいせつ事件の弁護士を選ぶ基準

①対応の迅速さ

不同意わいせつ事件の弁護活動は,逮捕後,起訴後の対応,示談交渉など,時間的な制約がある中で行わなければならないものが多くなります。そのため,弁護士の対応の迅速さは,時間制限の中で適切な弁護活動を尽くすためには欠かすことができません。

もっとも,弁護士がいつどのような対応をしてくれるかは,個々の弁護士のやり方により様々です。刑事事件のスピード感に合わせた迅速な対応のできる弁護士であれば問題ありませんが,時間制限を軽視したマイペースな弁護活動がなされた場合,活動の時期を逃し,致命的な悪影響につながる可能性も否定できません。

迅速対応を約束してくれるかどうかは,必ず弁護士選びの基準として設けるようにしましょう。

②連絡の綿密さ

不同意わいせつ事件の対応は,事実関係の聴取や示談条件のすり合わせなどに際して,弁護士と依頼者側との綿密な連絡が不可欠です。連携が不十分なまま進めてしまうと,依頼者側の意図や希望に反した内容で弁護活動が進むことになりかねません。

一方で,弁護士と連絡を取る方法や連絡の頻度は,弁護士により様々です。電話をしても常に不通となって折り返しがない,メールへの返信も全くない,といったように,弁護士との連絡が滞るという問題は耳にすることが珍しくありません。

そのため,弁護士とはどのような方法で連絡が取れるか,どのような頻度で連絡が取れるか,という点は,重要な判断基準の一つとするのがよいでしょう。

③過去の解決実績

刑事事件は,過去の先例に沿った判断や運用をされることが一般的です。裁判所は,過去の先例と整合した取り扱いをすることで,公平を保ちながら適切に法律を運用する機関であるためです。

そうすると,先例を把握していること,過去に同種の事件を解決した実績があることは,事件の見通しを正確に持つ上で非常に重要な要素となります。弁護士が依頼者側に案内する見通しのほとんどは,過去の経験か過去の裁判例を根拠にしたものです。

そのため,弁護士選びに際しては,その弁護士が不同意わいせつ事件の解決実績を持っているかどうか,という基準を設けることが有益でしょう。

④法律事務所の場所

身柄事件の場合,弁護活動として「接見」が欠かせません。接見は,ご本人が留置されているところに赴き,弁護士とご本人が対面でコミュニケーションを取ることを言います。

この点,法律事務所の所在地と接見するべき場所(警察所等)の場所があまりに遠いと,接見自体が困難になりやすく,接見ができても回数に限りが生じてしまいます。また,接見費用も高額になることが見込まれます。
そのため,法律事務所と接見場所があまりに遠い場合,解決内容の面でも,解決に必要な費用の面でも,特に慎重な検討が必要になると言えます。

弁護士選びに際しては,法律事務所があまりに遠方でないか,地理的な条件のせいで弁護活動に制限が生じてしまわないか,という点を重要な判断基準の一つとするのが有力でしょう。

不同意わいせつ事件で弁護士を選ぶ必要

①不起訴を目指すため

不同意わいせつ事件で不起訴処分を獲得するためには,認め事件であれば示談が最も有力な選択肢になります。もっとも,この示談は,弁護士がいなければ試みることもできません。
弁護士に依頼して初めて,示談ができるかどうかのスタートラインに立つことができ,不起訴処分を獲得できる可能性が生じる,という言い方もできるでしょう。

また,否認事件の場合,不同意わいせつ罪が成立するか,その立証ができるか,という点について,高度に法律的な議論が必要となります。これは,まさに法律家である弁護士を通じて行うべきものであり,不起訴処分を獲得するためには弁護士を選ぶことが必要と考えるのが適切です。

②釈放を目指すため

不同意わいせつ事件で釈放を目指す試みは,具体的には弁護士に動いてもらうことが必要となります。接見によってご本人と方針を共有すること,検察官と適切な意見交換を行うこと,必要に応じて裁判所に法律上の申立てをすることなど,釈放に向けて弁護士でしかできないことは多岐に渡ります。

不同意わいせつ事件は,逮捕の可能性が高い類型の事件であるため,逮捕後に釈放を目指す動きが必要となる場合も多いと言えます。適切な方法で釈放を目指すためには,適切な弁護士選びが必要となるでしょう。

③本人と周囲が連絡を取るため

身柄事件の場合,逮捕勾留されたご本人は,自分で外部と連絡を取ることができません。電話を携帯することも認められないため,連絡を取るための手段は以下のような方法に限られます。

逮捕勾留中に外部と連絡を取る手段

1.手紙の送受
→数日~1週間ほどのタイムラグが避けられない

2.(一般)面会
→時間制限が厳しい。接見禁止の場合は面会自体ができない

3.弁護士の接見
時間的制限なくコミュニケーションが可能

手紙の送受は現実的でなく,面会の時間制限の中で必要な連絡をすべて取ることも難しいため,ご本人と周囲との連絡には弁護士の接見を活用することが不可欠になりやすいでしょう。
身柄事件で必要な連絡を取り合うためには,弁護士への依頼が適切です。

④実刑判決を防ぐため

不同意わいせつ事件は,重大犯罪と位置付けられることも珍しくないため,内容によっては初犯でも実刑判決が懸念されます。不同意わいせつ罪の刑罰としては,「執行猶予」と「実刑」が挙げられるところ,執行猶予となれば刑務所に入る必要がないものの,実刑では刑務所への収容が強いられることになるため,「執行猶予」となるか「実刑」となるかは極めて大きな問題です。

刑事罰の種類

この点,起訴後の刑事裁判で実刑判決を防ぐためには,執行猶予判決が適切であることを様々な根拠から指摘し,執行猶予判決を勝ち取る必要があります。その具体的な活動は,弁護士なしでは対応が難しく,弁護士への依頼が必要不可欠です。
また,弁護士によっても活動内容に差が生じやすいため,実刑判決を防ぐに適した弁護士を選ぶことが肝要です。

不同意わいせつ事件における弁護士選びの準備

①目標の優先順位を決める

刑事事件の処分としては,不起訴処分となることが最も有益であり,身柄拘束をされないことが最も有益であることは間違いありません。
しかしながら,不同意わいせつ事件の場合,事件の重大性や被害者の対応などによっては,最も有益な解決が難しかったり,最も有益な解決のために大きな経済的負担を強いられたりする場合があり得ます。

また,不同意わいせつ事件では,早期釈放が困難な場合も多く,早く釈放をしてほしくて弁護士に依頼したつもりでも,弁護士目線では早期釈放の余地がないと言わざるを得ない,ということが生じ得ます。

そのため,弁護士を選ぶ際には,弁護士に何を実現してほしいのか,という点に優先順位をつけることをお勧めします。
例えば,示談の成立を優先したいのか,とにかく接見を頻度高く充実して行ってほしいのか,無実を立証してほしいのか,ということによって,適した弁護士が変わる可能性もあります。また,優先順位の高い要望が明確であれば,弁護士目線で不可能な要望であった場合に,事前にミスマッチを回避することもできるでしょう。

②予算を決める

弁護士への依頼には,弁護士費用の負担が不可欠です。また,示談を試みる場合には示談金の負担も発生します。
不同意わいせつ事件の場合,身柄拘束が長期化することも珍しくないため,これに対応するための弁護士費用も小さな金額というわけにはいかないのが通常です。また,重大事件である不同意わいせつ罪の場合,示談金も相当な金額になりやすく,被害者の希望によっては更に大きな負担となる可能性もあります。

そのため,事前に負担できる金額の上限を大まかに決めておくことをお勧めします。

予算が明らかであれば,示談金額に線引きを設けることもでき,予算を超えた示談金の合意をする恐れはなくなります。また,弁護活動に必要な費用が予算を超えそうであれば,より安価な費用で活動できる弁護士を探すべき,との判断も可能になります。

③早期に相談する

不同意わいせつ事件では,特に身柄事件の場合,法律上の時間制限があるため早期の動き出しが非常に重要です。起訴されたものが後から不起訴になることはないため,処分された後に動き出すのでは手遅れにもなってしまいます。

また,示談を試みる場合でも,早期に動き出した場合と動き出しが遅れた場合とでは,被害者側の受け止め方が異なり,示談の成功率に影響を及ぼすケースが見られます。少しでも早く動き出し,真摯な姿勢を示す方が,示談に対して有益であることは間違いありません。

不同意わいせつ事件の弁護士選びに際しては,まず早期に動き出すことを重視してみてください。

不同意わいせつ事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①弁護士との相性の重要性

不同意わいせつ事件では,釈放してほしくても釈放されない,示談したくてもなかなか示談が成立しないなど,焦りを感じる状況になることが珍しくありません。これは,事件の性質上やむを得ないこともであります。

もっとも,依頼者目線では現実に何が起きているか分からないため,全ては依頼した弁護士を通じて教えてもらうほかありません。弁護士の報告内容を心から信頼し,弁護士の活動方針を心から信頼する以外にはない,と言っても過言ではないでしょう。

そして,弁護士の動きを心から信頼できるためには,弁護士との相性や弁護士への信頼感が非常に重要となります。今一つ信頼できないと感じる弁護士が相手だと,「本当に最善の活動をしてくれたのか」「本当に現状はやむを得ないものなのか」という疑念が生じやすくなってもやむを得ません。

弁護活動は必ずしも結果が伴うものでないことを念頭に,心から信頼できる,相性の良い弁護士を選ぶことは非常に大切でしょう。

②土日の対応が必要になり得る

身柄事件の場合,手続によっては土日祝日でも対応が必要なことがあります。例えば,金曜日に逮捕された事件の場合,その後に勾留されるかどうかは土曜日か日曜日に判断されることになりやすく,土日だからといって待ってくれることはありません。

そのため,個別事件の状況に応じて,土日祝日の対応が必要になると見込まれるケースでは,弁護士が土日祝日でも対応可能かどうか,という点を事前に確認することが適切でしょう。
依頼者としては,土日の手続も対応してくれると思っていても,弁護士は土日の手続に対応できない前提で案内をしている場合があります。その点のミスマッチは深刻な問題になりかねないため,事前に注意しておくことをお勧めします。

不同意わいせつ事件の逮捕

不同意わいせつ事件で逮捕される可能性

不同意わいせつ事件は,逮捕の可能性が非常に高い事件類型ということができます。捜査機関が被疑者を特定した場合,逮捕した上で被疑者に対する捜査を行うことが数多く見られるところです。
その理由としては,以下のような点が挙げられます。

不同意わいせつ事件における逮捕の理由

1.事件の重大性

2.被害者保護

3.余罪の可能性

【1.事件の重大性】

不同意わいせつ事件は,類型的に重大な事件と評価されやすいものです。そして,重大な事件類型の場合,刑事処分も重大なものになりやすいことから,捜査段階では逃亡や証拠隠滅の恐れがより強く懸念される傾向にあります。

そのため,重大事件と評価できる不同意わいせつ事件では,被疑者が逃亡をしたり,必要な証拠を隠滅したりと,捜査に支障が生じる行動がなされることを防ぐため,逮捕をする可能性が高くなります。

【2.被害者保護】

不同意わいせつ事件の捜査は,被害者による被害申告をきっかけとして開始されることがほとんどです。そのため,加害者が捜査を受けることとなれば,被害者が捜査機関に被害申告をしたことが加害者にも分かることとなります。

そうすると,加害者によっては,報復的な行動として被害者に何らかの危害を加えようとする恐れが考えられます。不同意わいせつ事件の場合,被害者の生活圏などを加害者が把握している場合も少なくないため,待ち伏せや尾行などによって被害者への接触を図ることも不可能でないケースが多いでしょう。

加害者による危害や接触から被害者を保護するため,加害者を逮捕して物理的に切り離す措置が取られやすい傾向にあります。

【3.余罪の可能性】

路上などで見知らぬ被害者へのわいせつ行為に及ぶ事件の場合,不特定多数の被害者に対する余罪の可能性が懸念されます。そのため,一つの事件で逮捕せず捜査を進めていると,余罪に関する重要な証拠が隠滅されてしまう可能性が懸念されます。

そこで,余罪が想定される事件の場合は,被疑者を逮捕し,証拠隠滅の機会を奪った上で余罪を含めた捜査を行うことが多く見られるところです。

ポイント
不同意わいせつ事件は逮捕の可能性が高い事件類型

不同意わいせつ事件で逮捕を避ける方法

①示談の試み

被害者側と連絡を取る手段があるなど,被害者への接触の余地がある場合は,示談の試みによって逮捕を回避する方法が有力です。示談が成立すれば,加害者を起訴する可能性が現実的になくなるため,その事件で加害者を逮捕する必要はほとんどないと言えるでしょう。また,示談が成立までは至らなかったとしても,示談交渉中であって示談の成立が見込まれるという場合には,捜査機関がその間に割って入ってまで逮捕を行うことは多くありません。
示談は,逮捕を避ける意味でも非常に重要な意味を持ちます。

ただし,示談を試みる場合は,決して当事者間での直接のやり取りとはせず,弁護士などの代理人を挟んでのやり取りとするように注意しましょう。当事者間で直接示談交渉を試みようとすると,接触を図る行為が被害者への危害の恐れと評価され,逮捕を誘発する結果にもなりかねません。

被害者との示談の余地があり得るケースでは,速やかに代理人を通じて被害者との示談交渉を試みるのが有益でしょう。

②自首

不同意わいせつ事件では,被害者が誰か分からないなど,事前に被害者との示談による解決を図ることが困難なケースも少なくありません。示談の試みが困難な場合,逮捕を避ける手段としては自首が有力です。

自首は,捜査機関に対して自らの犯罪事実を申告し,捜査や処分を求める意思表明を言います。そして,自分から罪を犯してしまった人がその後に逃亡や証拠隠滅を図るとは考えにくいため,自首が成立した事件では逮捕の可能性が大きく低下することが一般的です。
自首は,被害者が捜査機関に被害申告をしていないケースだと,いわゆる「やぶ蛇」のリスクもある行為ですが,不同意わいせつ事件の場合,被害者が捜査機関に何の相談もしていないことはそれほど多くないため,自首の試みは有益な結果になりやすい傾向にあるでしょう。

③捜査への対応

逮捕されない状態で,呼び出しなどによる捜査が行われている場合,適切に対処することで逮捕の回避につなげられる可能性が高まります。具体的には,捜査協力の姿勢を示すよう努めることが重要になるでしょう。

逮捕せず,呼び出しなどの手段で任意の捜査を行う場合,捜査機関としては,「捜査協力をしてくれれば逮捕までは必要ない」と考えている可能性が高く見込まれます。そのため,捜査機関の期待通りに捜査協力が得られれば,逮捕をしないまま手続が進むことになりやすいでしょう。
一方,任意であるからと呼び出しを拒んだり,取調べなどへの非協力的な姿勢を見せたりすると,逮捕が必要であるとの判断をされかねず,自ら逮捕のリスクを高める結果になる恐れがあります。

逮捕なく任意の捜査がなされている場合には,協力姿勢を見せることで逮捕の回避を目指すことをお勧めします。

不同意わいせつ事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

不同意わいせつ事件での逮捕に関しては,弁護士への依頼が非常に重要となりやすいでしょう。

逮捕を防ぐ試みの代表例は被害者との示談ですが,ほとんどの場合,示談は弁護士を通じて行うことが必要となります。早期に弁護士へ依頼し,早期に示談交渉を尽くすことが,逮捕を防ぐ最も重要な動きになるでしょう。

また,逮捕が必要か,逮捕後に釈放されるべきでないか,といった点について,弁護士と捜査機関との間で協議等を行うことも少なくありません。特に,逮捕前の段階で任意の捜査が行われている状況であれば,その後に逮捕をする必要がないことを弁護士が具体的に説明し,逮捕の判断を控えてもらえる可能性は低くないでしょう。
逮捕後に関しても,釈放に向けた動きやその見込みについて,弁護士から適切な案内を受けることで,正しい見通しを持っての対処が可能になります。

ポイント
示談による逮捕回避には弁護士が必要
逮捕の要否について弁護士が捜査機関と協議を試みることも

不同意わいせつ事件の逮捕に関する注意点

①逮捕の回避が困難な可能性

不同意わいせつ事件の場合,捜査の開始後,被疑者に対する最初のアクションが逮捕というケースも少なくありません。この場合,逮捕前には自分が捜査の対象となっていることを把握する手段に乏しく,逮捕によってはじめて捜査されていたことを知る,ということになりやすいでしょう。
そのため,自分から自首をしない限り,逮捕前に逮捕回避を目指す動きを取ることは困難である可能性に注意が必要です。

また,自首を試みたケースでも,既に被疑者の逮捕を前提に動いているなど,逮捕の判断を覆すことが難しい場合があり得ます。不同意わいせつ事件の重大性を踏まえ,自首を考慮してもなお逮捕すべき,との判断に至る可能性には注意が必要でしょう。

②余罪による再逮捕の可能性

不同意わいせつ事件の捜査では,類似の余罪をあわせて捜査することが珍しくありません。同一犯の事件と思われる余罪について被害申告などがなされていれば,捜査の対象となることが一般的でしょう。

そして,余罪についても自分が犯人であると特定された場合,既になされた逮捕勾留の終了後,その余罪で再逮捕される可能性があります。余罪で再度逮捕されると,逮捕及び勾留が繰り返されることになり,事件の数だけ身柄拘束の期間が長引く恐れも否定できません。

余罪が想定される事件では,複数回の逮捕勾留によって身柄拘束が長期化する可能性に注意をすることが望ましいでしょう。

③早期釈放が困難となる可能性

刑事事件では,逮捕の後,最大72時間のうちに「勾留」という10日間の身柄拘束を行うかが判断されます。また,勾留された場合には,その終了後,さらに最大10日間の「勾留延長」を行うか,という判断が行われます。勾留延長までが全て行われた場合,22~23日ほどの身柄拘束を受けることとなります。

この点,勾留や勾留延長を行わない,という判断になれば,その時点で釈放されるため,早期釈放を目指す場合には勾留や勾留延長の回避を試みる手段が有力です。
しかしながら,不同意わいせつ事件の場合,逮捕されたケースでその後の勾留や勾留延長が認められないことは少ない傾向にあります。そのため,勾留や勾留延長を防ぐことによる早期釈放は,困難な可能性が高いことに注意することが望ましいでしょう。

不同意わいせつ事件の不起訴

不同意わいせつ事件で不起訴を目指す方法

①認め事件

犯罪事実が間違いなく,認め事件である不同意わいせつ事件の場合,不起訴を目指すためには示談が適切です。

不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は,犯罪事実の存在が明らかであれば,起訴するのが通常と言えます。被害者側の心情を踏まえた場合,これらの重大事件で起訴をしないというのは難しいケースが多いところです。
もっとも,裏を返せば,被害者側の心情を踏まえて不起訴とすべき場合は,不起訴になる可能性が高まります。
被害者と示談が成立しており,被害者側が起訴を望まない意思を表明している場合,不起訴処分となることが見込まれやすいでしょう。

そのため,認め事件では,まず被害者との示談を最優先に試み,被害者側から起訴を望まない意思を表明してもらうことを目指すことをお勧めします。
示談が成立していない場合や,示談の試みをしなかった場合は,不起訴となることはほとんど期待できません。また,示談以外に不起訴を獲得する効果的な方法はないと考えても間違いないでしょう。

ポイント
認め事件は示談の成否で不起訴になるかが決まる
示談以上に効果的な手段はない

②否認事件

否認事件の場合,捜査機関による捜査の結果,犯罪事実が立証できない,との判断に至ってもらうことが目標になります。
起訴不起訴を判断する検察庁では,犯罪事実が立証できると考えれば起訴し,立証できない可能性があると考えれば不起訴にすることが通常です。

一口に否認事件と言っても,具体的にどの点が争いになるかはケースにより様々です。代表的な争点としては,以下のようなものが挙げられます。

不同意わいせつ事件の代表的な争点

1.犯人性(人違い)
2.同意の有無
3.年齢の認識
4.責任能力

【1.犯人性(人違い)】

自分は犯人とは別人である,という場合です。犯人を特定する証拠としては,被害者や目撃者の供述,現場や付近の撮影画像・映像などが考えられますが,それらの証拠から自分が犯人であるとは立証できない,という結論を目指すことになります。

【2.同意の有無】

不同意わいせつ罪は,わいせつ行為に対する被害者の同意があれば原則として成立しません。そのため,相手が性行為に同意があったことを主張し,これを覆す立証は困難であるとの結論に至ることを目指します。

【3.年齢の認識】

不同意わいせつ罪は,相手が16歳未満の場合,相手に同意があっても成立します。16歳未満の場合,性的行為に同意する能力がある年齢(性交同意年齢)にないとされているためです。
もっとも,相手が年齢を偽っていたなど,16歳未満でないと信じていた場合には,犯罪の故意がないため犯罪は成立しません。そのため,年齢の認識が立証できるかどうかは大きな問題になりやすい点です。

年齢の認識が争点になる場合は,自分が相手の年齢を16歳未満ではないと信じており,信じたことに合理的な理由がある,との結論を目指すことになります。

【4.責任能力】

責任能力とは,物事の是非善悪を区別した上で,それに従って行動を制御する能力を言います。責任能力がない人の犯罪行為は,処罰ができないため不起訴とすることになります。
不同意わいせつ事件が起きた事実は確かであるものの,深い泥酔状態であったなど,責任能力がない場合には,不起訴を目指すことが有力です。

もっとも,酔っていたから責任能力がない,と判断されるほど安易なものではありません。飲酒で酔った,という程度で責任能力が問題になることはほとんどないため,深刻な酩酊状態である場合に限られるものと理解するのが適切でしょう。

不同意わいせつ事件で不起訴になる可能性

①認め事件

認め事件の場合には,不起訴となる可能性は示談の成否にかかっていることが大多数です。不同意わいせつ事件で起訴するか不起訴にするかを判断する最も重要な基準の一つが,被害者の意向であるためです。

不同意わいせつ事件の場合,被害者が起訴を望まないにもかかわらず,被害者の意思に反して検察が起訴をすることは考えにくいでしょう。起訴後の手続に被害者の協力が得られなくなる恐れもある上,被害者のプライバシーを保護する観点でも適切な起訴とは言えません。
そのため,認め事件の場合には,被害者との示談が成立している限り,不起訴となる可能性が非常に高いということができるでしょう。

②否認事件

否認事件の場合でも不起訴となる可能性は十分にあります。刑事事件は,起訴された事件のほぼすべてが有罪判決となることが広く知られていますが,裏を返せば有罪判決が確実に見込まれる事件以外は不起訴処分とする運用でもあります。
そのため,否認事件では,犯罪の立証が難しく,有罪判決が確実に見込まれるか分からない,という判断に至れば,不起訴となることは大いに考えられます。

特に,不同意わいせつ事件の場合,犯罪事実を裏付ける客観的証拠に乏しいケースが少なくありません。客観的証拠に乏しい場合,それだけ犯罪の立証が困難になりやすいことを意味するため,否認事件で不起訴となる可能性も高くなると言えるでしょう。

ポイント
認め事件は示談の成否にかかっている
否認事件は,客観的証拠に乏しい場合不起訴の可能性が高くなりやすい

不同意わいせつ事件で不起訴を目指す場合の注意点

①示談交渉には弁護士が必要

認め事件の場合,不起訴が獲得できるかは被害者との示談にかかっていますが,実際に示談を試みる場合には,弁護士に依頼をし,弁護士を通じて試みることが必要です。不同意わいせつ事件では,事件の性質上,当事者同士を直接引き合わせたり,連絡先を直接交換させたりと,接触の機会を与えるわけにはいかないため,当事者間での直接の示談は捜査機関から禁じられることが一般的です。

弁護士に依頼をした場合,弁護士は,捜査機関担当者に示談希望の旨を申し入れ,捜査機関から被害者の意向を確認してもらいます。確認の結果,被害者が示談交渉を受け入れる意向であった場合,弁護士と被害者との間で連絡先を交換し,示談交渉を開始することが通常です。

示談交渉に際しては,弁護士への委任を要することに注意しましょう。

②余罪によって不起訴が困難になる可能性

不同意わいせつ事件では,同種の余罪が一定数発覚する可能性もあります。事件現場や事件の内容が類似したものがあると,捜査機関は同一犯の可能性を踏まえて捜査を行うことが多いためです。
そして,不同意わいせつ事件の余罪が発覚し,自分がその犯人であると特定された場合,余罪についても同じく捜査・処分の対象となることが見込まれます。

そのため,余罪が発覚した場合,1件が不起訴になったとしても,余罪である他の事件が起訴されてしまい,全体としては不起訴となることが困難な場合も考えられることに注意が必要です。
余罪が発覚し,全てが認め事件である場合,全体として不起訴となるためには全ての事件で示談を成立させることが必要となりやすいでしょう。もっとも,すべての被害者が示談交渉を受け入れてくれるとは限らないため,1件でも示談交渉を断られた場合には,他の事件で示談したにもかかわらず起訴されることが見込まれます。

③否認事件での立証方法

否認事件の場合,両当事者の言い分が大きく食い違っており,どちらの言い分がより信用できるか,という問題になりやすいところです。そして,被害者とされる相手の言い分が十分に信用できると判断された場合,相手の供述を証拠として犯罪が立証されたと評価される場合はあり得ます。

供述が信用できるかどうかを判断する一般的な基準としては,以下のような点が挙げられます。

供述が信用できるかの主な判断基準

1.他の証拠と整合すること
→物証や他の人の供述と一致する内容である

2.正しく記憶していると評価できること
→位置関係や明るさなど,視覚的な条件が良い
→年齢や能力の面で正しく記憶できるといえる
→記憶しやすい特徴的な内容である

3.内容の具体性・迫真性があること
→実際に体験した人でないと話せない

4.内容の一貫性があること
→以前の話と内容が変わっていない

以上のように,当事者双方の言い分が信用できるかを様々な基準で検討し,犯罪が立証されるかを判断するケースがあります。言い分の信用性が問題になる場合は,それらの判断基準を意識しながらの対応が適切でしょう。

不同意わいせつ事件で呼び出しを受けた場合

不同意わいせつ事件で呼び出された場合の対応法

①可能な限りの回答に努める

不同意わいせつ事件で呼び出しを受けた場合,事件の内容について事情を聴かれることが一般的です。そのため,事件の内容についてどのような回答を行うのか,ということは事前に適切な備えをしておくことが適切でしょう。

この点,問われたことには可能な限りの回答に努めることが望ましいです。問われたことに可能な限りの回答を尽くすことで,隠しごとをしていない,捜査への協力姿勢がある,といった理解をしてもらうことができ,逮捕の回避につながることが期待できるためです。

基本的にはすべての問いに対してありのままの回答を尽くすスタンスで差し支えありません。ただ場合によっては,あえて自分から話すべきではないことや,回答を工夫した方がいいこともあります。回答の具体的な内容が判断しかねるという場合には,弁護士への十分なご相談が適切でしょう。

ポイント
回答に努める姿勢により,逮捕の可能性が低下しやすい

②認否を明らかにする

不同意わいせつ事件は,一方当事者の主張のみを踏まえて捜査が開始されている場合も多く見られます。この場合,相手が事実でない内容の主張をしていると思われることもあり得るところです。
もちろん,相手の事実でない主張を踏まえて捜査が行われているのであれば,呼び出しに対しては,疑いの内容が事実でないことを早期に表明することが適切です。その意味で,自身の認否を明らかにすることは重要な対応の一つと言えます。

認め事件の場合,被害者の主張する犯罪事実が存在するという前提で捜査が進みますが,否認事件ではそうはいきません。否認事件の場合,一方の主張する犯罪事実が本当に存在するのか,その証拠はあるのか,ということを慎重に吟味する捜査が不可欠となります。
否認事件である場合には,その旨を捜査機関に把握してもらい,少なくとも相手の言い分のみを根拠に捜査を行うことは危険である,と理解してもらうことが賢明でしょう。捜査方針に影響するのみならず,最終的な刑事処分に決定的な影響を及ぼすことも珍しくはありません。

ポイント
否認事件の場合,早期に否認であることを捜査機関に把握させる
被害者の主張のみを根拠とすることは不適切であると理解させる

③特に弁護士へ相談すべきケース

呼び出しを受けた段階で,弁護士に対応方法を相談することは非常に有力です。呼び出し後,早期に適切な対応ができれば,その後の手続に際して有益であることは間違いないでしょう。

この点,特に弁護士へ相談や依頼をすべきケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

特に弁護士へ相談すべき場合

1.認め事件の場合
→認め事件では,弁護士を通じて速やかに示談を試みるなど,弁護士に動きを依頼すべき事柄が多くなりやすいため,呼び出しを受けた段階で弁護士に相談や依頼をし,適切な弁護活動を開始してもらうメリットが大きいでしょう。

2.余罪の捜査が懸念される場合
→余罪があってその捜査が懸念される場合,捜査は長期化しやすく,刑事処分は重くなりやすい傾向にあります。そのため,呼び出しを受けた段階で速やかに弁護士を交え,短期間での解決や処分軽減のための弁護活動を依頼するメリットが大きくなりやすいでしょう。

呼び出しを受けているということは,その事件について捜査が具体的に開始されていることを意味します。捜査に対してどのような対応を取るべきかは,専門家である弁護士と十分に相談することを強くお勧めします。

不同意わいせつ事件の呼出に応じると逮捕されるか

不同意わいせつ事件の場合,呼び出しに応じると逮捕をされる,という関係にあることはあまり多くありません。逮捕目的で呼び出しを行うことが多くはない事件類型であるためです。

不同意わいせつ事件では,当事者間に密接な関係がある場合を除き,加害者側が被害者側の動向を把握することが困難です。そのため,加害者側にとって,被害者側が捜査機関に相談しているのか,捜査がどのような進捗状況かを把握している,という場合は少ないのが通常と言えます。
そうすると,逮捕をしたい=逃亡や証拠隠滅が懸念される事件の場合,呼び出しによってみすみす逃亡や証拠隠滅の機会を与えるのは得策とは理解されないことが一般的です。不同意わいせつ事件で逮捕をするのであれば,被疑者に捜査中であることを把握される前に,不意打ち的に逮捕を試みる方が合理的と考えられます。

もっとも,呼び出されたからその後逮捕されない,というわけではありません。呼び出しに対して不適切な対応を取っていれば,別途逮捕のリスクが上がる可能性は十分にあります。

不同意わいせつ事件の呼び出しに応じたときの注意点

①無視をしない

不同意わいせつ事件で呼び出しを受けたとき,最も避けるべき行動が「無視すること」です。無視することにメリットはないと考えるのが賢明でしょう。

呼び出しに対して無視をするのは,捜査機関との間に不要な対立関係を作ることになりかねません。その結果,逮捕の原因になったり,その後の捜査が厳しいものになったりする可能性が高いでしょう。

特に否認事件の場合,呼び出されること自体が納得できないとの思いから呼び出しに対して消極的な対応をしてしまいがちです。確かに,否認事件で呼び出しへの対応に時間を割かれるのは不合理な面が否めませんが,一度応じる態度を見せるだけでもその後の取り扱いが大きく変わるものです。
全面的に無視することは控え,可能な範囲で対応をするようにしましょう。

②むやみに拒否しない

呼び出しは,任意の対応を求めるものであって強制力がありません。そのため,法的には拒否をすることも可能であり,拒否したことによる法律上のペナルティは存在しません。
もっとも,特段の理由なく拒否をするのはかえって不利益につながりやすくなるため,控えることが賢明でしょう。

もちろん,優先すべき予定や事情があるため,呼び出しへの対応が後にならざるを得ない,ということは問題ないでしょう。しかし,明らかに感情的な理由で呼び出しを拒否している場合,捜査機関がより躍起になって捜査を行う要因にもなりかねません。そうなれば,出頭時の取調べも圧力の強いものになりやすく,最悪の場合には逮捕の原因につながるケースも否定できないところです。

呼び出しに対しては,少なくとも感情面の理由で拒否していると理解されることは避けるようにしましょう。

③黙秘の注意点

呼び出しに応じて出頭し,取調べを受けた際,黙秘をする選択肢もあります。黙秘は,文字通り黙ることで,捜査機関の問いに対して一切の回答をしないという対応を指します。
黙秘は法律上認められた権利であり,黙秘を選択すること自体には問題はありません。

しかしながら,黙秘が自分にとって有益な選択であるか,黙秘をすることでかえって損をしていないかは十分に注意することが適切です。
例えば,否認事件で自分が犯人でない根拠がある場合,黙秘するよりもその根拠をしっかりと述べる方が有益であると考えられます。また,認めるべき状況,内容の事件で無理に黙秘をしても,反省が見られないという評価につながるだけで終わりかねません。

黙秘を選択する場合は,自分にとってプラスの選択であるかを慎重に検討するようにしましょう。

不同意わいせつ事件の自首

不同意わいせつ事件で自首をするべき場合

①逮捕が想定される事件内容の場合

不同意わいせつ事件は,捜査に際して逮捕される場合が非常に多い事件類型です。特に,以下のようなケースでは逮捕を伴う捜査が想定されやすいでしょう。

逮捕が想定されやすい主なケース

1.同種事件の再発が懸念される
→夜間の路上で面識のない相手に行われたわいせつ事件など

2.わいせつ行為(=被害)の程度が著しい
→着衣の中に手を差し入れているなど

3.同一の被害者に対する繰り返し
→一人の被害者に狙いを定めて複数回行われた事件など

4.被害者の同意があり得ない
→交際関係がない,被害者の同意を推測させる事情がないなど

このように,特に逮捕が見込まれる事件内容の場合,逮捕を回避する手段として自首を行うべきであると考えられます。自首は,逮捕が懸念される事件で先手を打って行うことで,逮捕を防止する結果を期待してなされることが主な活用法になります。

ポイント
不同意わいせつ事件は逮捕される場合が多い
逮捕が懸念されやすい内容の場合には,先手を打って自首し,逮捕回避を目指す

②反省の意思を強く表明したい場合

不同意わいせつ事件の刑事処分は,重大なものになることも珍しくありません。特に,不同意わいせつ罪には罰金刑の定めがないため,刑罰の中で最も軽微な罰金刑の対象となる可能性が法的にない,という点に大きな特徴があります。
この場合,刑罰の内容は「執行猶予」又は「実刑」となりますが,執行猶予は刑務所に入る必要がなく,実刑は刑務所への収容を強いられる,という極めて大きな差があるため,何としても執行猶予を目指したい,という動き方になるケースはとても多いでしょう。

この点,執行猶予と実刑を区別する判断基準の一つとして,反省の有無や程度という点が挙げられます。当然ながら,深い反省が見られる場合の方が,執行猶予を獲得できる可能性が高くなります。
そして,深い反省を積極的に表明したい場合の有力な手段が,自首です。自首をしている場合,真摯に反省を深めていると評価してもらえる可能性が非常に高くなり,実刑を回避して執行猶予を獲得するための非常に大きな材料となることが見込まれやすいでしょう。

ポイント
不同意わいせつ事件の刑罰は,執行猶予か実刑。罰金がない。
自首により深い反省を示すことで,執行猶予が実現しやすくなる

③事件が捜査されていると分かった場合

自首の大きな目的は,逮捕の回避や刑事処分の軽減ですが,これらは事件の捜査が開始されていることが前提となります。捜査が行われていなければ,逮捕される余地はなく,刑事処分を受ける可能性もありません。

一方,不同意わいせつ事件の場合,捜査が開始されているとなれば,被疑者が特定され次第逮捕されやすく,犯罪事実が立証されれば刑事処分を覚悟する必要があります。そのため,自分の不同意わいせつ事件について,捜査機関による捜査が行われていると分かった場合,自首の検討が非常に重要となるでしょう。

事件が捜査されていることを早期に把握するのは容易ではありませんが,把握できた場合には,その機会を有効に活かすため自首を検討するのが適切です。

不同意わいせつ事件の自首は弁護士に依頼すべきか

不同意わいせつ事件で自首を試みる際は,弁護士に依頼し,弁護士と協同して進めることが望ましいでしょう。具体的な理由としては,以下の点が挙げられます。

①逮捕回避の可能性が高くなる

自首は,逮捕を回避することがその重要な目的の一つです。特に,不同意わいせつ事件は逮捕の恐れが大きくなりやすいため,自首によって逮捕を防ぐ利益が大きな事件類型ということもできます。
もっとも,自首の方法を誤れば,自首による逮捕回避の効果は十分に発揮されず,せっかく自首をしたにもかかわらず不利益の方が際立つ結果にもなりかねません。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕回避のために適切な方法で自首を進めることが可能になります。その結果,自首による逮捕回避の可能性がより高くなるということができるでしょう。
自首はリスクも大きい行動であるため,そのメリットを十分に受けられるよう,万全の方法で行うことを強くお勧めします。

②自首後の手続の流れを把握できる

自首を行う場合の懸念点として,自首をした後に自分がどうなるのか,どのような取り扱いを受けるのか,という点が挙げられます。自首をした場合に自分が受ける取り扱いを想像できないと,自首に踏み切ることも容易ではありません。

この点,弁護士に依頼した場合には,自首後の手続の流れについても弁護士から詳細に案内を得ることが可能です。あわせて,自首後の手続に際してどのような対応を取るのが適切か,という点についても,弁護士の専門的な見解を踏まえて適切な判断をすることが容易になります。
弁護士に依頼をすれば,自首前後を含めた手続の全体像を把握した上で,はっきりと目標やゴールをイメージしながら進めることが可能になるでしょう。

③適切な自首の方法が分かる

自首を行うにあたって,どのような内容を話すべきかという点は判断の難しい点です。何を話して,何を話さないのか,という判断は,法律の専門家である弁護士の意見を仰いだ上で行うことが適切です。
特に,複数の不同意わいせつ事件に関与しており,いわゆる余罪が存在する場合には,どの事件について話をするのか,どこまで具体的な話をするのか,という問題がより複雑になります。むやみに余罪を伏せようとしても,証拠隠滅の恐れがあると判断されれば自首の効果は半減しますし,言わなくていいことまで話してしまうと,不要だったはずの捜査まで招く可能性があります。

弁護士に依頼し,弁護士の意見を踏まえて自首を行うことで,適切な方法・内容で自首を行うことが可能になるでしょう。また,警察との必要な事前連絡などを弁護士に代わってもらうことで,やり取りの負担を軽減しつつ適切な自首をすることにもつながります。

④示談に着手できる

不同意わいせつ事件で自首をする場合,その後には示談の試みを行うのが適切です。
被害者との間で示談が成立し,被害者の許しが得られるか,という点は,不同意わいせつ罪の刑事処分の結果に決定的な影響を及ぼしやすいためです。

この点,弁護士に依頼をすることで,弁護士を通じて示談の試みに速やかに着手することが可能です。弁護士がいなければ示談交渉自体を試みることができないため,示談を目指せるかどうか,という点は弁護士の有無による非常に大きな差異と言えるでしょう。

自首を試みる場合であれば,セットで被害者への示談を目指すことが有益です。いずれにしても弁護士を要する以上,早期に弁護士へ依頼し,少しでも早く示談に着手するのが適切と言えます。

不同意わいせつ事件で自首をする場合の注意点

①逮捕が避けられない可能性

不同意わいせつ事件は,逮捕のリスクがつきまといやすい事件類型であり,自首を試みたから確実に逮捕が避けられる,というものではありません。特に重大事件と評価される内容であれば,自首をしてもしなくても逮捕は避けられない,という可能性はあり得ます。
そのため,不同意わいせつ事件の自首では,逮捕を避けられない可能性に留意することが適切でしょう。

もっとも,逮捕を避けられないから自首に意味が無い,というのは間違いです。仮に逮捕を避けられなかったとしても,身柄拘束の期間を短くする要因になる可能性もありますし,最終的な刑事処分を軽減させる効果を期待することもできます。
逮捕が見込まれる状況であったとしても,自首が有力な手段であることは間違いないでしょう。

②起訴が避けられない可能性

不同意わいせつ事件の場合,その重大性を踏まえ,自首をした場合でも不起訴処分には至らず,起訴が避けられない可能性に注意が必要です。
特に,被害者から示談が拒否され,被害者との間で示談が成立しなかった場合には,不起訴処分が困難になりやすいところです。示談を拒否する被害者としては,起訴を望むという心情であることが見込まれるため,やむを得ないところでもあります。

もっとも,示談が成立した場合に,その後起訴されるということは通常ありません。そのため,自首によって被害者側にも誠意を示し,示談成立の足掛かりにするという方針は非常に有力でしょう。
その意味でも,不同意わいせつ事件の起訴を避ける手段として自首の試みは有力と言えます。

③準備すべきもの

不同意わいせつ事件で自首を行う場合は,以下のような準備が望ましいところです。

1.取り調べ対応の準備

自首後は取調べの実施が見込まれるため,取調べに際して話すべき内容や伝えるべきことは十分に準備し,適切な取り調べ対応を尽くすことが適切です。

2.逮捕に備えた物品の準備

自首を行っても逮捕が避けられなかった場合に備え,現金や着替えの準備を念のため行っておくことが適切です。
現金は,留置施設内で洗面用具や食料品などを購入するために必要となりやすいものです。また,留置施設では洗濯の頻度に限りがあるため,着替えの用意が望ましいでしょう。

なお,着替えについては,留置施設内での自傷・他傷を防ぐために詳細なルールが定められていることも多いので,実際に用意する着衣をどうするかは弁護士と十分に相談することをお勧めいたします。

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