痴漢事件は弁護士に依頼するべき?示談や不起訴の獲得方法、自首の要否などを解説

このページでは,痴漢事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

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目次

痴漢事件で弁護士に依頼するべきタイミング

①現場でトラブルになった直後

痴漢事件は,事件の発生した現場でトラブル化し,捜査が開始するきっかけにつながることがほとんどです。そして,事件現場でトラブルになったまさにその時が,弁護士に依頼するメリットの最も大きいタイミングになりやすいでしょう。
痴漢事件が現場でトラブルになった際,まず逮捕されるかという問題が生じます。これは極めて大きな分かれ道ですが,逮捕するかしないかの判断がされるまでにはあまり時間的な猶予がありません。トラブルとなった直後に,速やかに適切な対応を尽くす必要があります。

そのため,痴漢事件が現場でトラブル化した場合には,できるだけ早く弁護士への相談を試みることを強くお勧めします。もっとも,その場で初めて弁護士選びを考える余裕はないので,あらかじめ弁護士選びについて把握しておくことは損のないことだと言えます。

ポイント
痴漢事件が現場でトラブルになった場合,逮捕を回避する必要がある
逮捕の回避は弁護士を通じて行うことが有力

②出頭要請を受けたとき

痴漢事件で捜査の対象となる場合には,後日,警察から出頭要請を受けることが考えられます。この出頭要請は,被疑者に対する取り調べを行うため,警察署への出頭を求める目的であることが通常です。
そのため,出頭要請を受けたときには,その後に行われるであろう取り調べの対応について事前に検討しておく必要があります。想定される質問や質問への回答方法・内容を整理し,取り調べに備えることは非常に重要でしょう。

しかしながら,出頭後の取り調べに対してどのように対応するのが適切かを自分の力で整理するのは容易でありません。取り調べを受けた経験のある人でなければ,取り調べがどのように行われるかを想像することも困難でしょう。
そこで,出頭要請を受けて取り調べの予定が明らかになったタイミングで,弁護士を選ぶことが有力な選択肢になります。適切な弁護士選びができれば,出頭時の対応が万全になるほか,その後の弁護活動も充実したものになるでしょう。

ポイント
出頭要請に応じた場合には取調べが行われる
取り調べ対応やその後の方針については,弁護士との協議が適切

③逮捕されてしまった直後

痴漢事件は,逮捕される可能性が十分にある事件類型です。特に,被害者の身を守るため,現行犯で逮捕されることが多いという特徴も見られるところあり,痴漢事件では逮捕前に弁護士選びをする猶予がないケースも少なくありません。

しかし,逮捕されたとしてもその場で全てが手遅れとなるわけではありません。逮捕後に適切な対応を尽くすことができれば,早期に釈放してもらうことができ,生活への影響を最小限に抑えることが可能です。逮捕されたとしても速やかな釈放の余地が残っている,という点は痴漢事件の大きな特徴の一つとも言えるでしょう。

この点,逮捕直後には弁護士しか被疑者と接見できないことが通常であり,釈放を目指す動きも弁護士を通じて行う必要が生じやすいところです。逮捕直後に適切な弁護士選びができれば,早期釈放の実現できる可能性が大きく高まることは間違いありません。
また,この逮捕直後については,適切な弁護士選びがより重要な局面と考えるのが適切です。逮捕直後に有効な弁護を行うためには,限られた時間の中で速やかに活動方針の選択と具体的な弁護活動を進めなければならないためです。弁護士選びにかけられる時間もまた限られてはしまいますが,弁護士選びを妥協するのは避けるべきでしょう。

ポイント
痴漢事件は逮捕後でも早期釈放されることがある
早期釈放を求める動きは弁護士に依頼して行うのが適切

④示談をしたいとき

痴漢事件は,被害者と示談ができるかどうかによって処分結果が極めて大きく左右されやすい事件類型です。そのため,痴漢事件の解決を目指す場合には示談の検討が必要です。
この点,示談交渉には弁護士が不可欠となります。示談を試みるためには,弁護士を介して捜査機関に連絡し,被害者と弁護士との間での連絡を始めてもらう必要があるためです。

示談交渉の流れ

そして,示談の成否やその内容は,担当する弁護士によって様々に変わりやすいものです。示談でどんな合意をするかは自由であるため,無数の選択肢があるのです。
そのため,示談を試みたいときには示談に精通した適任の弁護士を選ぶ必要があります。

ポイント
痴漢事件は,示談で不起訴を目指すことが有力
示談の試みは弁護士を通じて行うのが適切

痴漢事件で弁護士に依頼する必要

①早期釈放を実現するため

痴漢事件で重要となる早期釈放を目指す場合,具体的な活動は弁護士に委ねざるを得ません。接見で必要な話し合いを行ったり,ご家族と連絡を取り合ったり,捜査機関や裁判所に必要なアクションを尽くしたりと,早期釈放に向けて弁護士でしかできないことは多岐に渡ります。

痴漢事件では早期釈放の可能性が十分にあり,早期釈放の価値が極めて高いことを踏まえると,痴漢事件では弁護士を選ぶ必要が非常に大きいと言えるでしょう。

②不起訴処分を獲得するため

痴漢事件で不起訴処分を獲得するためには,認め事件であれば示談が最も有力な選択肢になります。もっとも,痴漢事件における示談は,弁護士がいなければ試みることもできません。
弁護士に依頼して初めて,示談ができるかどうかのスタートラインに立つことができ,不起訴処分を獲得できる可能性が生じる,という言い方もできるでしょう。

そのため,痴漢事件で不起訴処分を獲得するためには,弁護士を適切に選ぶことが必要です。

③職場への悪影響を防ぐため

痴漢事件をできる限り円滑に,穏やかに解決することができれば,職場や仕事への悪影響を防ぐことも可能です。痴漢事件の具体的な解決方針は弁護士の判断にかかっているため,職場への悪影響を防ぐためには適切な弁護士選びが非常に重要となるでしょう。

痴漢事件の示談

痴漢事件で示談は必要か

痴漢事件の場合,何もせずに刑罰を受け入れるのでない限り,示談は必要であると考えるのが適切です。それは,痴漢事件に対する刑事処分は,示談の有無で決定的に変わるためです。

示談が成立しなければ起訴される事件でも,示談が成立することでほぼ確実に不起訴が見込まれるという場合は珍しくありません。痴漢事件の処分は示談に左右されると言っても過言ではなく,痴漢事件で処分の軽減を試みるのであれば示談以外にないと考えてよいでしょう。
事件によっては,効果のある弁護活動の内容が示談のみであるというケースも非常に多く見られます。

ポイント
痴漢事件では示談が決定的に重要
示談が唯一の弁護活動となる場合も多い

痴漢事件における示談のメリット

痴漢事件は,示談を行う利益が非常に大きい事件類型と言えます。その具体的な理由としては,以下の点が挙げられます。

①前科を防げる

刑事事件では,警察から事件の送致を受けた検察官が,被疑者を起訴するかどうか決めます。そして,検察官に起訴されると,刑罰を受けて前科が残ることになります。
この点,検察官が起訴するか不起訴どうかは,様々な事情を総合的に考慮の上で判断されますが,被害者がいる事件の場合,被害者の意向を反映させることが非常に多く見られます。

痴漢事件は被害者のいる事件類型のため,被害者が起訴を望むか不起訴を望むかという点が,検察官の判断を左右しやすい傾向にあります。そのため,不起訴を目指す場合の最も効果的な手段は,被害者に不起訴を希望してもらうことになるのです。

示談を行うことによって,被害者に不起訴を希望する意思を表明してもらうことができ,検察官の不起訴処分を獲得できる可能性が飛躍的に高くなります。不起訴処分となれば前科はつかないため,前科を防ぐための最も有力な手段は示談ということになるでしょう。

②早期釈放につながる

痴漢事件で逮捕・勾留されている場合,被害者との示談が成立すれば,その身柄拘束は早期に解かれる可能性が非常に高くなります。

そもそも,痴漢事件で逮捕・勾留といった身柄拘束をするのは,事件の捜査や処分(起訴・不起訴の判断)のために逮捕・勾留が必要であるからです。裏を返せば,捜査や処分を検討する必要がなくなれば,逮捕・勾留をしておく必要もなくなるため,早期に釈放されるということになります。

示談が成立した場合,被害者はそれ以上の捜査や加害者(被疑者)の刑事処罰を希望しなくなるため,捜査機関が捜査を続けたり刑事処罰を科すか検討したりする必要は基本的になくなります。捜査機関の捜査は,被害者の協力がなければ困難なことも多いため,被害者が捜査を希望しないのに無理矢理捜査を続けることは難しい,という面もあります。

そうすると,示談が成立し,被害者が捜査や処罰を希望しないという希望を示せば,事件の捜査や処分の検討は不要となるため,逮捕・勾留しておく必要もなくなります。その結果,不要な逮捕・勾留は終了し,早期釈放してもらうことが可能になりやすいでしょう。

③刑罰が軽減する

痴漢事件で刑罰を受けることが防げない場合でも,示談は重要な効果を発揮します。
刑罰の重さを最終的に判断するのは裁判所ですが,裁判所が刑罰を判断する際に極めて重要視する事情に,被害者の処罰感情や被害者に対する被害の補填が挙げられます。

処罰感情とは,処罰を希望するかどうかという気持ちを言います。被害者の処罰感情が強いほど,刑罰は重くなる傾向にあります。
また,被害者に対する被害の補填は,被害者に生じた損害がどれだけ回復されているか,という意味で重要な判断要素になります。被害の補填は主に金銭で行われることが一般的ですが,事後的に被害が回復されていれば,その結果重い刑罰を科す必要はなくなる,という理解になるのが通常です。

被害者との間で示談が成立すれば,被害者に処罰感情がないことや,被害の補填がなされたことが明らかになります。そのため,示談は刑罰の軽減に直結する効果を持つということができます。

示談がなければ実刑判決が見込まれるケースでも,示談によって実刑判決を回避できる場合は珍しくありません。示談は,被害者がいる事件で刑罰を軽減するための最も有益な試みと理解してよいでしょう。

④被害者との法律関係が解決する

痴漢事件が起きた場合,被害者と加害者の間には,「被害者が加害者に損害賠償を請求できる」という法律関係が発生します。痴漢行為は,被害者に対する「不法行為」に該当するため,痴漢行為(=不法行為)の被害者は,加害者に対して金銭賠償を請求できる,という関係に立つのです。
しかも,この法律関係は,加害者が刑事処罰を受けたとしてもなくなったり負担が軽くなったりするものではありません。当事者間の法律関係と刑事処罰とは無関係であるためです。

この点,被害者との間で示談が成立した場合,被害者と加害者の間には示談の内容以外に法律関係がない(法律関係が解決した)という約束をすることになります。そのため,示談が成立すれば,その後に加えて被害者から金銭賠償を請求されることはなくなり,法律関係の面でも安心することができます。
なお,当事者間の法律関係が解決したことを約束する示談の条項を,「清算条項」と言います。示談に際して清算条項を盛り込んで解決することで,当事者間の法律関係は示談をもって終了することになります。

ポイント 示談のメリット
前科の回避につながる
身柄拘束からの釈放につながる
刑罰の軽減につながる
当事者間の法律関係が清算できる

痴漢事件の示談金相場

刑事事件で示談を行う場合,加害者(被疑者)から被害者へ示談金の支払を行うのが通常です。具体的な示談金の金額は当事者間の協議で定められることになりますが,事件類型ごとに大まかな目安はあります。

この点,痴漢事件における示談金の目安は,概ね30~50万円とされる例が多く見られます。
事件によってはこの目安を下回るケース,上回るケースいずれもありますが,示談金額とされやすい水準として把握しておいて損はないでしょう。

なお,示談金額が変動する要因としては,以下のような点が挙げられます。

示談金額の変動要因

1.痴漢行為がなされた部位
→衣服の外側より内側の方が大きくなりやすい
→性的な部位に近い方が大きくなりやすい

2.痴漢行為の態様
→軽く触れるよりも強くつかむなどする方が大きくなりやすい

3.痴漢行為がなされた時間の長さ
→長時間に渡るほど大きくなりやすい

4.被害者の心身への支障
→精神疾患などの原因になっている場合,大きくなりやすい

5.従前の関係
→継続的な被害者・加害者の関係があると大きくなりやすい

6.加害者の経済力
→経済力に限界のある場合,金額は小さくなりやすい

痴漢事件の不起訴

痴漢事件で不起訴になる可能性

痴漢事件は,不起訴処分となる可能性が大いにある事件類型ということができるでしょう。認め事件,否認事件のいずれについても,現実に不起訴で解決する例は多数見られます。

痴漢事件が捜査・処分の対象となるのは主に現行犯で,現行犯では犯罪事実の明らかな場合が多いため,痴漢事件の大多数は認め事件になりやすいところです。そのため,痴漢事件における不起訴の可能性は,被害者との示談の可能性と大きな関係があります。

この点,痴漢事件では,被害者にとっても示談が少なからず有益な場合が多く,被害者の感情面を理由に拒絶されるのでなければ,示談での解決を見込むべきケースが少なくありません。
痴漢事件は,示談で不起訴になる可能性が十分にある事件と言えるでしょう。

ポイント
痴漢事件は,示談で不起訴になる可能性が大いにある

痴漢事件で不起訴を目指す方法

①認め事件の場合

認め事件とは,犯罪の疑いを認めて争わない事件を言います。自分が犯人であり,自分が疑われている通りの犯罪行為をした,という場合です。

痴漢事件は,認めであれば起訴することが通常です。漫然と対応しているだけでは,「初犯だから」という理由で不起訴になることはないと考えるべきでしょう。

この点,痴漢事件に関しては,被害者の宥恕(許し)があることで不起訴となる可能性が飛躍的に上がります。事実上,「宥恕=不起訴」と考えることのできる場合も少なくありません。
そのため,被害者の宥恕を得られるかどうかが非常に重要ですが,宥恕を獲得するための具体的な手段は示談に尽きます。示談交渉を試み,被害者に応じてもらうことができた場合に,示談の内容として宥恕が獲得できるのです。

そのため,認め事件で不起訴を目指す場合にはとにかく示談を目指すのが有益でしょう。

②否認事件の場合

否認事件とは,犯罪の疑いを認めず,自分に犯罪が成立するかどうかを争う事件を言います。自分は無関係である,自分がした行為は疑われているような内容ではない,などと主張する場合が代表例です。

痴漢事件で否認の場合,示談による解決はあまり望ましくないのが通常です。示談が成立して被害者の宥恕が得られれば,認め事件と同じく不起訴になりやすいことに間違いはありませんが,犯罪行為をしていないにもかかわらず被害者への謝罪や示談金の支払を行うのは,解決方法として有益とは言い難いためです。

否認事件の場合は,起訴不起訴の判断を行う検察官に,犯罪事実が立証できないから不起訴にする,との判断をしてもらうことが適切な方法になります。検察官は,犯罪が立証できれば起訴する(できる),犯罪が立証できなければ起訴しない(できない)という基準で判断することになるため,検察官が犯罪事実を立証できないと判断すれば,不起訴処分に直結します。

痴漢事件の場合には,犯罪立証のための客観的な証拠に乏しいことが多いため,被害者や目撃者の供述が最重要な証拠となるのが一般的です。そのため,否認事件で不起訴を目指す場合には,「被害者や目撃者の供述では犯罪の立証ができない」と検察に判断してもらうことを目指すべきでしょう。

ポイント
認め事件では示談を目指す
否認事件では,被害者や目撃者の供述では犯罪立証できないとの判断を目指す

痴漢事件で不起訴を目指すときのポイント

①余罪があると不起訴が困難になり得る

起訴不起訴の判断結果は,複数の事件があれば事件ごとに行われます。そのため,一つの事件で示談ができても,不起訴になるのはその1件のみであり,余罪があれば別途不起訴を目指す必要があります。
事件が複数あれば,それだけ示談を拒否される可能性も高くならざるを得ない上,経済的に全件で示談を行うことが難しい場合も生じ得ます。そうすると,余罪があって捜査処分の対象となる事件が多い場合,不起訴が困難になる可能性に注意が必要でしょう。

②被害者や目撃者の供述内容は確認できない

否認事件では,被害者や目撃者の供述によって犯罪が立証できるか,という点が非常に重要なポイントとなりますが,肝心の供述内容を事前に確認する手段は法的にはありません。
事件が起訴され,裁判所への証拠として提出されることになれば,供述内容を供述調書の形で確認することができますが,あくまで起訴された後の話にとどまります。被害者や目撃者の供述は重要な捜査情報のため,起訴前の段階で捜査機関から提供してもらうことは極めて困難と言わざるを得ないでしょう。

そのため,否認事件で不起訴を目指す場合,被害者や目撃者の供述内容はこちらで想定する形を取るほかありません。「想定される供述内容がすべて信用できない=供述内容が信用できる可能性はない」という主張が代表的な方法になるでしょう。

痴漢事件と自首

痴漢事件で自首をするべき場合

①現行犯で問題になったケース

痴漢事件は,被害者に発覚しない可能性の考えにくい事件類型であるため,現行犯のタイミングで当事者間のトラブルになっている場合が少なくありません。そして,その事件直後のトラブルから逃れた後である,という場合は自首を検討する必要性が高いと考えられるでしょう。

痴漢事件で捜査されるのは,被害者から捜査機関に被害申告があった場合というのがほとんどです。現実的には,被害者が捜査を希望してアクションを起こせば捜査が始まり,そうでなければ捜査が始まらない,ということが大多数でしょう。
この点,現行犯のタイミングで当事者間のトラブルになっているケースでは,被害者側に声を上げる意思が見受けられるため,被害者が捜査を希望する可能性が高い傾向にあります。そうすると,やがて捜査が開始され,自分が被疑者として特定されることが強く懸念されます。

そのため,現行犯で問題になった痴漢事件では,自首をすることでより大きな不利益を避ける動きが有益になると言えるでしょう。

ポイント
痴漢事件が捜査されるかは被害者の動きによる
現行犯で当事者間のトラブルになった痴漢事件は捜査されやすい

②自分が犯人と特定される見込みがある

痴漢事件の場合,突発的な出来事でもあることから,犯罪や犯人を立証するための証拠が多数残っているということはあまりありません。一般的に想定される証拠としては,以下のようなものが挙げられるでしょう。

痴漢事件の一般的な証拠

・被害者
・目撃者
・現場付近の映像・画像
・駅の入退場記録
・類似事件(余罪)の証拠

この点,一般的に想定される証拠を踏まえて,自分が犯人と特定されることが見込まれる場合は,自首の検討が適切になりやすいでしょう。
例えば,明らかに防犯映像が記録されている場所で事件や事件直後のトラブルが起きた場合,目撃者に面識のある人物が含まれていた場合などは,犯人=自分と結びつく十分なきっかけがあるため,特定される見込みがあるケースということができます。

自分が犯人と特定され,捜査を受けた後では,もはや自首はできず自首のメリットを得ることもできなくなってしまうため,極力早期に自首の検討を行うことが一案です。

ポイント
犯人の特定に至りやすい証拠があるケースでは,自首の検討が有力

③否認事件で自首すべきか

否認事件ではあるものの,自分が疑われている状況にあるため,捜査を受けるより前に自分から自首をする,という動きは考えられるでしょうか。

結論的には,否認事件で自首をするメリットがない,と考えるのが適切でしょう。自首はあくまで自分の犯罪行為を捜査機関に告げる意味合いの行動であるため,否認事件にはなじみません。

もっとも,否認事件ながら自分が疑われているという場合に,先回りをして警察に問い合わせたり相談したりすることはあってよいでしょう。現実にどのような取り扱いを受けられるかは警察の対応にもよりますが,ケースによってはむしろ被害者として警察に捜査を依頼する余地もあるかもしれません。

ポイント
否認事件での自首は不適切

痴漢事件の自首は弁護士に依頼すべきか

痴漢事件の自首は,弁護士への依頼が有益なケースということができるでしょう。具体的には以下のようなメリットが挙げられます。

①逮捕回避の可能性が高まる

自首の基本的な目的は逮捕の回避ですが,同じ自首を試みたとしても,やり方が異なれば逮捕回避の効果がどれだけ期待できるかも変わってきます。
弁護士に依頼することで,逮捕回避によりつながりやすい適切な方法での自首が可能になり,逮捕を回避できる可能性が高くなるでしょう。

②自首をすべき状況かが分かる

自分の中では自首をするべきだと思っていたとしても,客観的には自首が得策とは言い難いケースがあります。当事者の立場にいると,どうしても偏った見方にならざるを得ない上,専門的な知識や経験に基づく判断は困難であるためです。
特に,痴漢事件では,客観的証拠があまり多くならないため,現行犯以外での捜査は容易でなく,事件を客観的に見ると自首を要する状況とは言えない,という場合が少なくありません。

そのため,痴漢事件の自首を検討する場合は,まず刑事事件の知識や経験ある弁護士に相談することで,自首をすべき状況かどうかを確認するのが有力です。弁護士の見通しを踏まえ,本当に自首すべき状況かどうかを知った上で,自首を検討することが可能になるでしょう。

③自首後の弁護活動が迅速にできる

刑事事件は,自首をして終わりではありません。むしろ,自首は捜査のスタートラインであって,自首の内容を踏まえて捜査が開始されることになります。そうすると,自首を行うときには,自首をした後に始まる捜査や,その後の最終的な処分のことも考えておかなければなりません。

この点,弁護士に依頼をすることで,自首の後迅速に弁護活動を始めてもらうことが可能になります。痴漢事件では,被害者との示談が非常に重要ですが,自首とともに示談の試みを開始することで,示談交渉という大切な弁護活動へとスムーズに移ることができます。
また,自首をすることで被害者の感情が和らげば,示談の成功率も高くなるため,自首のメリットがより大きくなっていくことになるでしょう。

痴漢事件の弁護士を選ぶ基準

①迅速な対応ができるかどうか

痴漢事件の解決は,とにかく活動のスピードに左右されることが少なくありません。特に身柄事件の場合には,対応が迅速かどうかによって釈放時期が大きく異なることも非常に多く見られます。
一方で,弁護士がいつどのような対応をしてくれるかは,個々の弁護士のやり方により様々です。刑事事件のスピード感に合わせた迅速な対応のできる弁護士であれば問題ありませんが,万一弁護活動がタイミングを逃したものになってしまうと決定的な悪影響につながる可能性も生じてしまいます。

迅速対応を約束してくれるかどうかは,必ず弁護士選びの基準として設けるようにしましょう。

②痴漢事件の手続や特徴に精通しているか

痴漢事件は,取り扱いに特有の傾向があり,その傾向を踏まえて弁護活動を進めることが非常に有力な動き方になります。そのため,弁護士が痴漢事件に特有の傾向に精通しているかどうかは,弁護活動の方針を直接左右する重要なポイントになるでしょう。

弁護士からの案内が一般的・抽象的な事項にとどまるのか,痴漢事件の特徴を踏まえて踏み込んだ内容のものになるのかは,弁護士選びの基準として重視することをお勧めします。

③解決実績があるか

刑事事件は,過去の先例に沿った判断や運用をされることが一般的です。過去の先例に反した取り扱いがあると,公平が損なわれてしまうためです。
そのため,同種事件の解決実績があることは,事件の正確な見通しを持つ上で非常に大切ということができるでしょう。

弁護士選びに際しては,その弁護士が痴漢事件の解決実績を持っているかどうかを判断基準の一つにすると有益でしょう。

④納得できる説明をしてくれるか

弁護士と依頼者との関係は,信頼関係を土台にすることで初めて成り立つものです。なぜなら,弁護士による案内や弁護士が決めた方針,弁護士が実現した結果などが適切かどうかは,依頼者自身が内容を評価して判断できる性質のものではないからです。
弁護活動が法律の専門家しか行えないものである以上,依頼者としては「弁護士が正しいと言ったから正しい」という評価をせざるを得ません。

そうすると,依頼者が弁護士を選ぶ基準として,その弁護士の判断に信頼を置けるかどうか,という点が極めて重要になってきます。弁護士の判断を信頼できるからこそ,「弁護士が正しいと言ったから正しい」という考え方ができるのです。
そのため,弁護士選びの際には,弁護士の判断やその根拠となる説明に心から納得できるか,という点を基準に設けるとよいでしょう。最初の説明に対する納得は,最終的な結果に対する納得にも直接つながるほど重要なものです。

ポイント 弁護士選びの基準
弁護活動のスピード
痴漢事件特有の傾向に対する理解
過去の解決実績・経験
説明の納得感

痴漢事件における弁護士選びの準備

①事件の内容をできる限りまとめる

弁護士選びを適切に行うためには,相談相手の弁護士に事件の内容を正確に把握してもらうことが必要となります。そのため,事件の具体的内容は整理して伝えられるようまとめることが有益でしょう。

弁護士が事件の内容の一部を把握しているかいないかで,アドバイスの内容が大きく変わる場合も否定できません。弁護士に誤解が生じることを防ぐため,起きた出来事を漏れなく伝える用意をしておくとよいでしょう。

②弁護士選びの目的を決める

弁護士を選ぶ際,何のために,何を目指して弁護士に依頼するのか,という点を明確にしておくことが必要です。相談の目的に関して弁護士とズレが生じると,弁護士からの案内も目的から外れたものになってしまい,結果として弁護士選びが円滑にできないためです。

もちろん,弁護士側も法律相談の目的を想像することはできるため,理解が大きくズレることは多くありませんが,その目的が自分にとってどれだけ重要なものか,という詳細なニュアンスの面は,どうしても弁護士側の想像では補いきれないものです。
弁護士選びを実のあるものにするためにも,弁護士選びの目的は明確に表現できるようにしましょう。

③予算を決める

弁護士への依頼には費用が発生しますが,弁護士費用は法律事務所によって異なり,同じ弁護士への依頼でも依頼内容によって異なります。当然ながら,弁護士への依頼内容が多いほど弁護士費用は高額になりやすく,逆もまた然りです。
また,示談を試みる場合には,弁護士費用に加えて示談金が経済的な負担となります。弁護士費用だけを支払えても,示談金が支払えないと示談はできないため,示談金の負担も事前の想定が必要です。

そのため,弁護士選びに際しては,あらかじめ予算の範囲を明確に決めておくのが有益でしょう。現在は,ホームページ上で詳細に弁護士費用を明示している法律事務所も少なくないため,ご自身なりに費用負担のイメージを持って弁護士選びを行うのも有力です。
また,現実の弁護士費用と予算との開きが限定的であれば,弁護士への依頼内容を一部削るなど,柔軟な依頼方法で開きを埋めることができる場合もあり得ます。個別のケースに関しては弁護士と十分に相談してみましょう。

痴漢事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①弁護士との相性

依頼者も弁護士も人である以上,相性の問題を避けて通ることはできません。依頼者目線では,相性が良くないと感じながら弁護士に依頼するメリットはないと考えるべきでしょう。

この点は,最善の解決に至ればそれほど大きな問題にはなりません。しかしながら,弁護活動は事前に最善の結果になるとお約束することが不可能であり,どうしても結果が伴わない場合があります。示談を試みたものの被害者に拒否された,全部無罪を主張したものの一部の主張が認められなかった,といった場合が代表例でしょう。

そして,弁護士との相性を軽視することは,最善の結果でなかった場合に大きな問題となります。弁護士が最善の活動をしてくれたのか,結果はやむを得ないものだったのか,という点について疑念が生じやすくなるためです。
弁護士との相性が良く,弁護士の活動を心底信頼できれば,心から「やむを得なかった」と納得しやすいですが,相性が悪いと感じている場合にはそうもいかないことが多くなりがちです。

弁護士との相性を率直にどう感じるか,という点は,弁護士選びに際して軽視しないことが適切でしょう。

②弁護士と事件管轄地の距離

刑事事件は,基本的に事件の発生場所を管轄する捜査機関が担当します。そのため,弁護士が弁護活動を行う場合には,管轄のある警察や検察とやり取りをすることが通常です。
この点,弁護士にとって遠方の事件だと,弁護活動に限界が生じやすいのみならず,弁護士費用が大きくなりやすいというデメリットが避けられません。特に身柄事件の場合,弁護士が定期的に接見を行う必要があることから,デメリットがより大きくなる可能性を想定する必要があるでしょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

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