交通事故の加害者となってしまうと、被害者への賠償問題や刑事処分、さらには社会的信用の低下など、さまざまな不安に直面します。適切な対応を誤れば、解決までの負担が大きくなる可能性もあります。こうした事態を避けるためには、交通事故加害者の弁護に精通した弁護士へ早期に相談することが重要です。本記事では、交通事故加害者が弁護士に依頼するメリットや、特に依頼すべきケースについて弁護士が分かりやすく解説します。
この記事の監修者
藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
交通事故加害者に生じる責任
自動車の運転によって他者との事故が発生し,被害者がケガをした場合には,加害者に複数の責任が発生し得ます。
通常,交通事故の加害者に生じる責任は,以下の3つです。
①刑事責任
交通事故(人身事故)は,「過失運転致傷」又は「過失運転致死」という犯罪に該当するのが通常です。
そのため,犯罪に対する処分を受ける責任,つまり刑事責任が発生し得ることになります。
刑事責任が生じる場合,刑罰という形で国から被疑者(加害者)に対して科せられます。
②民事上の責任
交通事故が発生すると,加害者から被害者に対して金銭賠償を支払う義務が発生します。
車両の修理費,入通院治療費,休業損害,慰謝料等が代表的です。
このような被害者と加害者との間の金銭面の問題を,一般に民事事件といい,民事事件における加害者の賠償責任が民事責任です。
③行政上の責任
交通事故加害者となる場合には,何らかの交通違反が伴っていることが通常です。
そのため,交通違反に対して自動車免許の違反点数が発生します。
自動車免許の違反点数に関する事件は行政事件に位置付けられますが,免許の違反点数は行政上の責任ということができます。
各責任の内容をまとめると,以下の通りです。
| ①刑事事件 | 国が加害者に対して刑罰を科す |
| ②民事事件 | 被害者が加害者に金銭賠償を請求する |
| ③行政事件 | 加害者の自動車免許に違反点数がつく |

交通事故加害者に強い弁護士に相談するメリット
交通事故を起こしてしまった場合、被害者対応や保険会社との交渉、刑事処分の見通しなど、多くの問題が同時に発生します。こうした状況では、交通事故加害者の弁護に精通した弁護士に早期に相談することが非常に重要です。
弁護士はまず、事故の状況や証拠を正確に整理し、刑事事件化を防ぐための示談交渉や、不起訴処分・減刑を目指すための対応を行います。特に被害者との関係が悪化している場合でも、弁護士が間に入ることで冷静かつ法的に適切な解決が可能となります。
また、保険会社とのやり取りでも弁護士が代理人となることで、過失割合の妥当性や損害賠償額の公平性を専門的に判断してもらえる点も大きなメリットです。自ら対応するよりも、結果として経済的・心理的負担を大幅に軽減できるでしょう。
交通事故加害者に強い弁護士は、刑事・民事の両面から事件を総合的にサポートし、最も望ましい解決へ導きます。
ポイント
・刑事事件化を防ぐ示談交渉や不起訴・減刑を目指す対応が可能
・被害者との直接交渉を避け、冷静で適法な解決が図れる
・保険会社との交渉を代理し、過失割合・損害額の妥当性を確保
・専門知識に基づき、刑事・民事の両面から総合的にサポート
・早期相談により、精神的・経済的負担を大幅に軽減できる
実際に弁護士へ相談する際には、以下の各点に注意しましょう。
弁護士に相談する際の準備
①事故前後の状況をまとめる
交通事故加害者として捜査を受けることになる場合,その前後の状況によって刑事責任の重さや処分の見通しが大きく変わってくる場合があります。そのため,事故の直前直後の状況に関しては,できる限り漏れなく弁護士に共有することが適切です。
弁護士に共有すべき事故前後の状況としては,以下の点が挙げられます。
まとめるべき事故前後の状況
1.事故前の交通違反の有無
→飲酒運転,無免許運転,速度超過など
2.被害者の視認状況に関する事情
→どの時点で被害者を視認できたか,ライトやウインカーの有無はどうだったか等
3.当事者間の優先関係に関する事情
→信号表示など
4.事故後の対応
→その場を離れた事実があるか,誰が警察に通報したか等
②弁護士への要望をまとめる
弁護士選びに際しては,弁護士に依頼した場合に何を実現したいか,弁護士にどのような弁護活動を求めたいか,という要望を整理しておくことをお勧めします。
交通事故の場合,幸いにも過失犯であることから,それほど重大な刑罰の対象となることは決して多くありません。初犯で実刑判決の対象となってしまうのは,飲酒運転やひき逃げが伴ったケース,死亡事故で落ち度があまりに大きいケース,被害者が多数のケースなど,限定的ということができます。
そうすると,実刑判決さえ避けられれば足りる,という場合,その実現のためにどれほどのコストを費やすべきかは慎重な判断が望ましいでしょう。
一方,交通事故は機械的な処分も少なくありません。そのため,ケースによっては起訴を防ぐ手段がないという場合もあり得るところです。起訴を前提に,公開の裁判で適切な対応をすることを弁護活動の主な目的とする場合も考えられるでしょう。
ただ,この場合,不起訴という要望は実現が困難ということになります。不起訴を唯一の目的に弁護士選びをしているのであれば,起訴を防ぐ手段に乏しいと後から分かった場合,深刻なミスマッチの原因となりかねません。
弁護士への要望を整理することは,適切な弁護士選びをするため非常に重要な準備と言えるでしょう。
そもそも希望できることの選択肢が分からない、という場合には、その点の疑問も含めて弁護士に相談するとよいでしょう。一般的に目指す方針の選択肢やメリット・デメリット等を案内してもらうことが可能です。
③迷いや悩みを言語化する
交通事故加害者となった場合に,弁護士に解決してほしい悩みは,個別のケースや当事者の希望によって様々に異なりやすいものです。取調べ対応に苦慮しているケース,被害者対応が円滑に進んでいないケース,保険未加入のため金銭賠償の方法に悩んでいるケースなど,他の事件類型よりも悩みに幅が生じやすいのも交通事故の特徴の一つでしょう。
そのため,弁護士から希望する案内をしてもらうための前提として,自分が抱えている迷いや悩みを,できるだけ具体的に言語化しておくことをお勧めします。弁護士は,自分から全て網羅的に案内するのでなく,相談者側の疑問に回答する形を取る場合が多いため,準備を怠ってしまうと希望する案内が得られない恐れもあり得るところです。
④予算を決める
弁護士への依頼には,やむを得ず弁護士費用の負担が必要となります。もっとも,具体的な弁護士費用の金額は,それぞれの法律事務所により異なるため,同じ弁護活動に対する弁護士費用が事務所ごとに違う可能性もあり得ます。
そのため,弁護士選びに際しては,その法律事務所の費用を支払うことが可能かを判断するため,予め予算を決めておくことが適切です。予算のイメージを弁護士側と共有することで,予算内で弁護活動ができるかどうかを案内してもらえるほか,弁護士によっては予算内で可能な弁護活動の内容や契約内容を柔軟に案内してもらえる可能性もあります。
弁護士に相談するときの注意点
①保険会社の対応との関係
「被害者との示談は保険会社に任せていいのか」というご質問は,交通事故加害者の立場になった方からのご相談として非常に多く寄せられるものです。この点を正しく把握するためには,まず保険会社の役割を理解することが必要になります。
保険会社の役割は,加害者の代わりに被害者へ支払をするという点にあります。裏を返すと,その支払の限りでのみ,保険会社は加害者の代わりになることができる,という立場にあります。
もっとも,交通事故には金銭の支払の面(=民事事件)のみでなく,刑罰の面(=刑事事件)も同時にあります。保険会社は,民事事件に関する示談は代わりに行ってくれますが,刑事事件に関する対応には介入することができません。
そのため,「被害者との示談は保険会社に任せていいのか」という点への回答としては,「民事事件の面については任せてよい」となるでしょう。保険会社の行う示談が,刑事事件に対する十分なサポートではないというポイントは,十分に注意することをお勧めします。
保険会社は、刑事処分に関与することのできない立場であり、刑事処分に対する関心もないため、刑事手続に対する対応は期待できません。保険に入っているからと丸投げしてしまうことなく、保険でカバーされる範囲はどこまでなのかを十分に整理することが非常に重要です。
②被害者への支払が生じる可能性
自動車保険(特に任意保険)に加入している場合,被害者の損害に対する支払は基本的に保険会社が行ってくれます。そのため,加害者自身が被害者に支払を行う必要は基本的にありません。
ただ,刑事処分をより軽微にすることを目指すため,被害者の許しを獲得しようとする場合,双方の希望によっては別途金銭を支払うケースもあり得ます。被害者としては,加害者を許しても特段のメリットはないため,加害者側が許しの獲得を強く希望する場合,対価を支払うことを合意する場合があるのです。
この点,当事者間で許しの対価として支払いを行う場合には,その支払が「金銭賠償(=保険会社が行うべき支払)とは別のものである」ということを明確にする必要があります。金銭賠償の一部と評価されてしまうと,保険会社からは支払ができなくなってしまう場合もあり得るため,十分な注意をお勧めします。
③被害者側への接触方法
多くの刑事事件では,当事者が直接連絡を取ったり接触したりすることは望ましくありません。加害者側が被害者側への接触を図る際には,弁護士を窓口にし,弁護士限りで被害者側への連絡を試みるのが適切とされています。
しかし,交通事故の場合には,当事者間で直接連絡先を交換する運用が広く行われています。その理由としては,過失犯であって当事者間のトラブルが生じにくいという点や,金銭賠償のために連絡を取り合うことが不可欠であるという点が挙げられます。
そのため,交通事故で加害者側が被害者側へ接触する場合,当事者自身も動く必要が生じやすいことに注意することが望ましいでしょう。保険会社や弁護士に依頼したからあとは任せてよい,という発想にならないよう気を付けたいところです。
加害者からの誠意ある謝罪やお見舞い等の対応が、解決を大きく近づける結果につながることも数多くあるのが、交通事故の特徴の一つです。謝意や誠意は、被害者側に確実に届くよう伝える努力を尽くしたいところです。
交通事故加害者に強い弁護士を選ぶ際のポイント
①交通事故加害者の弁護に精通しているか
交通事故加害者の刑事事件は,特に被害者側とのやり取りに特徴があります。そのため,他の事件類型と同じように被害者側への対応を行おうとすると,被害者側の悪感情を招くなど,当事者間の解決にとって不利益な状況となりかねません。
そのため,交通事故加害者の弁護士を選ぶ場合には,特に被害者側への対応方法に関して,交通事故の刑事弁護に精通しているかどうか,という点を重要な基準としましょう。判断方法としては,実際に被害者側への対応方針を質問し,どれだけ具体的な回答・案内が出てくるかを判断材料とすることが一案です。
②見通しの説明が具体的か
交通事故の刑事処分に関する見通しは,対応に精通した弁護士であればある程度の確度を持って想定できるケースも少なくありません。事故態様や被害結果,被害者側の意向など,様々な事情を考慮し,先例や経験に当てはめることで,一定の見通しを設けることも十分に可能であることが多いでしょう。
逆に,処分見通しが持てない場合,必要な前提知識や経験値に不足のある可能性が考えられます。もちろん,ピンポイントで見通しを立てることは困難ですが,処分が変わる条件ごとに場合分けをするなどして,あり得る処分の幅を具体的に案内してくれるかは,重要な判断基準とすることをお勧めします。
③弁護士と滞りなく連絡する手段があるか
交通事故の場合,被害者,加害者,保険会社,弁護士と複数の人物が関わり,そのそれぞれが連絡を取り合う可能性があります。この点,弁護士と加害者側の連絡が滞ってしまうと,やり取り全体に滞りが生じ,結果として事件解決が遠のいてしまいかねません。
また,加害者側との連絡が滞ってしまう弁護士は,多くの場合それ以外の相手との連絡も滞ってしまいがちです。万一,被害者との連絡がうまくできず,被害者側の感情面に悪影響が生じてしまうと,刑事処分にも大きなマイナスとなることが見込まれます。
そのため,弁護士選びに際しては,弁護士と滞りなく連絡を取る手段があるか,弁護士が円滑な連絡を取ってくれる人か,という点を判断基準の一つにするとよいでしょう。連絡の取り方や頻度は,完全に各弁護士の判断にかかっているため,この点は弁護士の個性や性格による面も少なくありません。
弁護士への連絡をしたいと思っても、「忙しいのではないか」と遠慮してしまうかもしれませんが、過度に遠慮する必要はありません。また、LINEやメールなど、電話以外の連絡手段を確保しておくことも有益になりやすいです。
交通事故加害者が弁護士に依頼するべき場合
①逮捕を防ぎたい場合
交通事故は,事後に適切な対応を尽くせば,逮捕されずに手続が進むことも多い類型です。
弁護士からは,ケースに応じてどのような対応をするのが適切か,逮捕を防ぐために他に取れる手立ては何か,といった点をご案内の上,事件に応じた逮捕回避の方策を弁護活動に反映させることが可能です。
②謝罪や示談をしたい場合
交通事故では,加害者と被害者が直接の連絡を取れる場合が多いですが,当事者間で宥恕(許し)に関するお話合いをすることはあまり現実的ではありません。
弁護士に弁護活動を依頼した場合,弁護士が窓口になって謝罪の申し入れをしたり,弁護士から宥恕に関するご相談を行ったりすることで,被害者との示談を円滑に試みることが可能です。
③起訴を防ぎたい場合
交通事故の事件には,弁護活動次第で起訴にも不起訴にもなる,という場合が多数見られます。
他の事件類型の中には,起訴を避ける手段がほとんどないものもあるため,活動次第で不起訴になり得るというのは交通事故の大きな特徴といえます。
弁護士に依頼された場合,刑事処分の正確な見込みを踏まえて,起訴を防ぐための弁護活動についてご案内を申し上げることが可能です。
④被害結果が重大な場合
死亡事故や重い後遺障害を伴う交通事故では、加害者が負う法的・社会的な責任は非常に大きくなります。
一瞬の不注意であっても、結果が重大であれば、刑事・民事の両面で厳しい責任を問われる可能性があります。
こうした重大事故では、次のような場面で専門的な法的対応が求められます。
・取調べや勾留段階での刑事弁護
・被害者遺族との示談交渉や謝罪の調整
・保険会社との折衝・対応方針の整理
・損害賠償請求訴訟への対応
特に死亡事故では、遺族の感情面への配慮と法的な交渉を両立させる必要があり、本人や家族だけでの対応は極めて困難です。
弁護士が介入することで、冷静な交渉が可能となり、刑事処分の軽減や円満な示談成立の可能性を高めることができます。
交通事故加害者に対する処分は、事故の重大さを重要な判断材料とすることが一般的です。重大な事故の場合は、できるだけ早く弁護士への依頼を検討することをお勧めします。
⑤被害者側との対応に限界がある場合
交通事故の加害者となった場合、被害者本人やその家族と直接やり取りをしなければならない場面があります。
しかし、感情的な対立や複雑な金銭交渉が絡むと、個人の対応では限界を感じるケースも少なくありません。
被害者対応が難航しやすい典型的なケース
・被害者や遺族が強い感情を抱いており、冷静な話し合いができない場合
・損害賠償額や補償内容について、双方の主張が大きく食い違っている場合
・過失割合の判断をめぐり、争いが長期化している場合
・被害者側に弁護士が就いており、専門的な法的知識を前提とした交渉が必要な場合
このような状況では、相手方とのやり取りが精神的にも大きな負担となり、不適切な発言や対応が新たなトラブルを招くおそれもあります。この点、弁護士が関与することで、被害者側との直接接触を避けつつ、法的根拠に基づいた冷静で公正な話し合いが可能になります。
交通事故の刑事処分には、被害者側の処罰感情(処罰を希望するかどうか)が非常に大きな影響を及ぼします。当然ながら、被害者が加害者に対する刑罰を希望しない方が軽減しやすい傾向にあり、不起訴処分の決定打になることも珍しくありません。
⑥自動車保険に加入していない場合
自動車保険に加入していない状態で交通事故を起こしてしまうと、加害者が負う経済的負担は非常に大きなものになります。
通常であれば任意保険会社が被害者への賠償や示談交渉を代行しますが、保険に未加入の場合は、すべての責任を自分自身で負う必要があります。
弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉や賠償額の算定を法的根拠に基づいて適切に進めることができます。
また、支払いが困難な場合には、分割払いの提案や減額交渉などを通じて現実的な解決を図ることも可能です。
刑事処分に発展するおそれがあるケースでも、早期に弁護活動を行うことで、処分の軽減を目指せる場合があります。
⑦刑罰に対する不安がある場合
交通事故を起こしてしまった場合、多くの方が「刑事罰を受けるのではないか」「逮捕されるのではないか」といった強い不安を抱くでしょう。
交通事故は民事上の損害賠償責任だけでなく、刑事責任を問われる可能性がある行為であり、その結果は事故の態様や被害の程度によって大きく異なります。
交通事故における主な刑事罰
・過失運転致死傷罪
→ 7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金
・危険運転致死傷罪
→ 被害者が負傷した場合は15年以下の懲役、死亡した場合は1年以上の有期懲役
・道路交通法違反(信号無視・速度超過など)
→ 罰金刑や免許停止・取消などの行政処分
刑罰への不安を抱えたときは、できるだけ早く弁護士に相談し、今後の見通しと取るべき対応を整理することが、冷静な解決への第一歩となります。
交通事故加害者が弁護士に依頼するべきタイミング
①事故直後
交通事故の場合,事故直後に加害者自身が警察を呼ぶなどし,必要な手続を尽くす必要があります。これは,交通事故が発生した際に,自動車運転者には警察へ報告する義務が生じるためです。
そうすると,交通事故では,基本的にすべての事件が発生直後から警察による取り扱いの対象となります。つまり,事故直後の段階から,既に将来的な刑事処分を見据えた対応の必要が生じているというわけです。
しかも,事故直後の手続では,現場の実況見分を合わせて行うケースもありますが,実況見分は加害者の責任の程度に関する重要な証拠となるものです。実況見分に際しては,個別のケースに応じて生じ得る争点を整理した上で,不要な不利益を招かない対応が必要となります。
そのため,交通事故加害者の場合には,事故直後の時点で弁護士を選び,順次進む手続に対して適切な対処を取っていくことが不可欠です。事故直後は,弁護士に依頼をするべき重要なタイミングと言えるでしょう。
ポイント
交通事故の場合,事故直後に警察を呼ぶことになる
早期に実況見分が行われ,重要な証拠となり得る
②被害者側と連絡を取るとき
交通事故の場合,金銭賠償が必要となるため,継続的に被害者側と連絡を取り合うことになる,という点に特徴があります。自動車保険に加入している場合は,保険会社にやり取りの多くを委ねることができますが,保険会社への引継ぎまでは,どうしても当事者間で連絡を取ることになります。
また,保険会社が対応を始めた後でも,保険会社が対応できない点については当事者間で解決する必要があります。保険会社は,当事者の代わりに被害者への金銭賠償を行ってくれますが,金銭面の問題以外には介入することができないため,この点はやはり当事者間での直接の連絡を要します。
被害者側との連絡は,その心情に配慮するため,細心の注意を払って行う必要がありますが,加害者という立場で適切な応対を判断し,続けるのは,非常に大きな負担を伴うものです。
そのため,被害者側との連絡に際しては,適切な弁護士を選び,専門性ある弁護士から指示や助言を受ける形で進めることを強くお勧めします。被害者側との連絡が円滑にできれば,最終的な事件解決にとっても非常に有益な効果が期待できるでしょう。
ポイント
交通事故は,当事者間での連絡を要する点に特徴がある
被害者側への連絡に細心の注意を払うため,事前に弁護士選びを行いたい
③取調べを受ける前
交通事故では,当日に事故の処理をした後,後日に改めて取調べを受ける流れが非常に多く見られます。そして,最終的な刑事処分の検討は,その取調べの内容を踏まえて行われるため,取調べでの応答がどのようなものであったかは,刑事処分に直結するケースもあります。
もっとも,どのような取調べ対応が適切であるかは,個別具体的な内容によって異なってくるため,加害者自身が正確に把握することの困難なものです。刑事事件の専門家に判断を仰ぎ,刑事処分のために有益な対応を尽くすことを強くお勧めします。
取調べを受ける前のタイミングは,万全の回答を準備するために弁護士を選ぶべき時期と言えるでしょう。
ポイント
取調べ内容が最終的な刑事処分の結果に直結するケースもある
適切な取調べ対応の具体的内容は,個別の事件によって異なる
④起訴された後
交通事故では,過失の程度や被害結果の程度が大きい場合,起訴されて公開の裁判(公判)を受ける流れになる場合も否定できません。特に,以下のような場合には起訴の上で公開裁判の対象となりやすいでしょう。
公開裁判の対象となりやすい交通事故
1.被害者に過失のない事故
→横断歩道歩行中,加害者のセンターオーバー・追突など
2.被害者が死亡した事故
→被害結果が最も大きい類型
この点,公開裁判の対象となる場合には,公開の法廷でどのように対応すべきか,事前に準備をする必要があります。適切な準備を怠ってしまうと,裁判所の判決に重大な悪影響が生じる可能性も十分に考えられるところです。
そのため,起訴された後,公開裁判を控える時期には,必ず弁護士選びを行い,適切な弁護士のサポートを受けるようにしましょう。
交通事故加害者の弁護士依頼に関するよくある質問
逮捕されてしまうのか
交通事故加害者の場合,逮捕される可能性は否定できません。その背景には,交通事故が発生すると,自動車運転者には警察に報告をする義務が生じるため,基本的に現行犯で事件が発覚する,という点があります。現行犯で取り締まる際には,逃亡や証拠隠滅の可能性を直ちに詳細に確認することが難しいため,確認不足による不利益を避けるため,逮捕に踏み切るという例が散見されます。
もっとも,これは交通事故のケースで逮捕の可能性が高い,という意味ではなく,個別事件における逮捕の可能性はそれぞれの事情によって大きく変わります。それほど重大ではない交通事故であれば,逮捕されない方が通常とも言えるでしょう。
なお,一般的に逮捕の可能性が高くなるケースとしては,以下のような場合が挙げられます。
交通事故で逮捕の可能性が高くなるケース
1.被害結果が重い
→死亡事故など,被害結果が重大である場合
2.重大な交通違反がある
→酒気帯び運転,無免許運転,極端な速度超過など,重大な交通違反を伴う場合
3.現行犯で逃亡が懸念される
→事故直後に当事者間でトラブルが起きた,その場を去ろうとした,という場合
警察に呼びされた場合どのように対応すべきか
①基本的な考え方
交通事故加害者となった件について,捜査機関から呼び出しを受けた場合,基本的には「呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じない」と理解をしておくことが適切です。
交通事故は,不注意で起きてしまった過失犯であるため,特段の事情がなければそれほど加害者の不利益が大きな手続(長期の身柄拘束など)を用いることはありません。特に,事故直後にしっかりと事故処理の対応を尽くしていれば,その後の呼び出しに応じている限り不測の不利益は生じないことが通常でしょう。
このような考え方を持っておくことは,自身の不安な感情を適切にコントロールする意味でも非常に重要です。交通事故は,刑事事件の中でも件数が非常に多い分野のため,手続が進むのを待つ期間が長く,手続全体も長期化しがちです。そのため,手続がなかなか終わらない中で自身をコントロールする必要がありますが,「呼ばれたときに適切に応じればよい」と割り切ることができれば,長期化による精神的負担は最小限に抑えることが可能になります。
ポイント
呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じ難い
交通事故の刑事手続は長期化しやすい
②反省内容の表明
交通事故加害者に対する呼び出しの際に確認されやすい点の一つが,反省状況です。その背景には,交通事故は,故意でなく過失(=注意義務違反)によって起きたものである,という点があります。
故意に起こした事件の場合,認め事件であれば反省の意思を表明しないことは稀です。故意に起こした犯罪行為に反省しない余地が考えにくいためです。一方,過失犯の場合,自分の過失をどのように評価しているかによって,反省を深めているケースもあれば,捜査を受けていることが不服であると考えているケースもあり得ます。
そうすると,捜査機関の目線では反省すべき過失があるのに,加害者本人が「自分にそれほどの落ち度はない」とのスタンスだと,捜査機関の理解との間に大きなギャップが生まれ,不利益な刑事処分につながる可能性もあり得ます。
そのため,自身の過失として指摘されている内容を冷静に確認し,反省すべき内容であればその反省を明確に表明していくことが適切な対応となります。
ポイント
反省すべきケースで反省が見られないと,大きな不利益につながる
③保険会社による対応状況の把握
呼び出しを受けた場合,警察署等で取り調べを受けることが見込まれますが,その際には被害者との間での解決状況についても確認されることが一般的です。そのため,自動車保険に加入している場合は,保険会社と被害者との間のやり取りの進捗をある程度把握しておくようにしましょう。
保険会社の対応状況を把握することは,以下のようなメリットにつながります。
保険会社の対応状況を把握するメリット
1.捜査機関に解決見込みありと理解してもらえる
→対応が順調に進んでいれば,当事者間の金銭的解決を前提にしてもらえる
2.十分な被害者対応をしているとの評価が得られる
→被害者対応を積極的に尽くそうとしている態度があるとの評価につながる
3.被害者側の感情面に有益な効果が期待できる
→加害者が状況把握に努めていると被害者に伝われば,被害者側の感情面の緩和につながる
不起訴になることはあるか
交通事故の場合,不起訴となる可能性は十分に考えられます。もちろん,ケースによっては不起訴処分の見込みが現実的にない場合もありますが,一般的な交通事故であれば,不起訴処分を目指す努力は十分に結果を左右し得ると考えてよいでしょう。
交通事故で不起訴の可能性が十分に考えられる大きな理由の一つが,過失犯であるという点です。交通事故は,わざと引き起こしているわけではなく,加害者自身も希望しないまま,不注意で起きてしまうものであるため,刑事責任は故意犯に比べて小さく評価されることが一般的です。起訴不起訴の判断は,事件ごとの刑事責任の重さを重要な基準とするため,交通事故が過失犯であることによる責任の小ささは,不起訴処分の可能性を高くする事情と言えます。
一方,過失犯であっても,刑事責任が重く評価されざるを得ない場合には,安易に不起訴を見込むわけにはいきません。交通事故の場合,被害者側に全く落ち度がない場合や,被害者に深刻な損害を与えた場合には,刑事責任が重大であると評価され,不起訴処分の可能性は低下しやすいでしょう。
ポイント
不起訴の可能性は,刑事責任の重さに大きく左右される
過失犯である交通事故は,故意犯よりも刑事責任が小さく評価されやすい
慰謝料を請求された場合はどうするべきか
交通事故の加害者として慰謝料を請求された場合は、まず冷静に対応することが大切です。焦って支払ったり、感情的に応じたりすると、不利な条件で示談してしまうおそれがあります。
具体的には、以下の点に留意しましょう。
1.請求内容を確認する
請求書に記載された金額や根拠を丁寧に確認しましょう。慰謝料は治療期間や過失割合などで変動するため、内容を理解せず支払うのは避けるべきです。
2.保険会社へ連絡する
任意保険に加入している場合は、すぐに保険会社へ報告を。多くの場合、交渉や支払いを代行してくれます。ただし、保険が適用されない部分については個別対応が必要です。
3.証拠を整理・保全する
事故状況の写真、ドライブレコーダー映像、診断書などを早めに整理・保管しておきましょう。
慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があり、弁護士基準がもっとも高額です。被害者が弁護士を立てて高額請求してくることもあります。
こうした場合、弁護士に相談することで請求金額の妥当性を判断し、減額交渉や示談対応を任せることができます。過失割合の整理や保険会社との調整もスムーズに進むため、慰謝料請求を受けた際は早期に専門家へ相談することが円満解決の近道です。
交通事故の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ
交通事故は故意のない過失犯であるため,事件そのものの責任は決して大きくないことも少なくありません。
しかし,事後の対応を誤ってしまう場合も多く,それが本来科せられる必要のない責任や負担につながりやすい分野でもあります。
適切な対応の検討は,交通事故の刑事弁護に精通した弁護士へのご相談が有益です。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。
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