インターネット上の誹謗中傷について、示談を求められたり、反対に相手に示談を持ちかけたりした場面で、「応じないとどうなるのか」との悩みは生じやすいところです。示談は話し合いによる解決方法であるため、相手が拒否したり、無視したりするケースも珍しくありません。
示談に応じないこと自体が直ちに違法になるわけではありませんが、法的手続に進む可能性は意識しておく必要があります。話し合いで解決できなければ、損害賠償請求や訴訟に進むこともあり、対応を誤ると不利になる場合もあります。
一方で、相手が示談に応じない場合でも、すぐ裁判しかないとは限りません。状況によって取るべき対応は異なるため、法的リスクと選択肢の整理をしたうえで判断することが重要です。感情的に対応するより、見通しを持って進めることが解決につながりやすくなります。「示談を無視するとどうなるのか」「拒否されたら何をすべきか」といった疑問は、立場を問わず生じやすいものです。この記事では、被害者と加害者それぞれの視点も踏まえながら、示談に応じない場合のリスクと対応のポイントをわかりやすく整理します。
この記事の監修者
藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
誹謗中傷の示談に応じないとどうなる?結論と取るべき対応を簡潔に整理
誹謗中傷について示談に応じない場合、直ちに不利益が生じるとまではいえませんが、そのまま何も起きないとも限りません。示談はあくまで話し合いによる解決ですが、まとまらなければ別の法的手続に進むことがあります。
特に理解しておきたいのは、示談に応じない場合でも紛争自体がなくなるわけではないという点です。相手が請求を諦めるとは限らず、交渉が決裂すれば訴訟などに移行する可能性があります。示談を断ることと、責任を免れることは同じではありません。
被害を受けた側として相手が示談に応じない場合は、証拠を整理したうえで請求を継続するのか、裁判を視野に入れるのかを検討することになります。一方、請求を受けた側として示談に応じない場合は、拒否によってどのようなリスクがあるかを見極める必要があります。
もっとも、応じるかどうかは状況に応じた判断が必要です。請求内容や金額が不合理であれば、安易に合意しないほうがよい場合もあります。逆に、早期解決を図るために示談が合理的なケースもあります。
相手からの請求を無視して放置すると、交渉で調整できたはずの問題が大きくなることがあります。内容証明が届いたり、訴訟提起に進んだりして初めて対応を考えると、不利になり得るため注意が必要です。そのため、重要なのは「応じる・応じない」の二択で考えるのではなく、どの対応が自分にとって法的リスクを抑えやすいかという視点で判断することです。必要に応じて示談交渉を行い、難しい場合は裁判対応も見据えて整理することが重要になります。
誹謗中傷の示談とは?裁判との違いをわかりやすく整理
誹謗中傷に関する「示談」とは、裁判ではなく当事者どうしの話し合いで解決を図る方法をいいます。投稿の削除、謝罪、慰謝料の支払いなどについて合意し、紛争を終わらせる形が一般的です。
まず押さえたいのは、示談は当事者間で柔軟な解決ができる手続であるという点です。裁判のように判決で結論が決まるのではなく、双方が合意できる条件を調整できるため、早期解決につながる場合があります。
誹謗中傷の事案では、金銭の支払いだけでなく、投稿削除や再発防止の約束などが示談内容に含まれることもあります。公開の法廷で争うより、当事者間で解決したいと考えて示談が選ばれることも少なくありません。
一方、裁判は法的な判断と強制力を伴う手続である点が示談との大きな違いです。話し合いがまとまらない場合、損害賠償請求訴訟などに進み、裁判所が判断することになります。判決が出れば、場合によっては強制執行につながることもあります。
費用や時間の面でも違いがあります。示談は比較的早く解決できる可能性がありますが、裁判は長期化することもあります。ただし、相手がまったく譲歩しない場合には、裁判で解決したほうが適切なケースもあります。そのため、重要なのは、示談と裁判にはそれぞれ向いている場面があると理解することです。示談に応じるか、訴訟も視野に入れるかは、請求内容や相手方の態度、解決したい内容によって検討することになります。
裁判を行うのは双方に大きな負担やリスクがあるため、示談での解決には互いにとって相応のメリットがあると言えます。事実関係に大きな争いがなければ、基本的には示談で解決したいところです。
誹謗中傷の示談に応じないことは可能?無視・拒否の法的位置づけ
誹謗中傷について示談を求められた場合、「応じなければならないのか」と気になる方もいるかもしれません。この点、示談は当事者間の任意の話し合いであるため、応じるかどうかは基本的に当事者の判断によります。
まず前提として、示談に応じないこと自体は直ちに違法とはいえません。相手から示談を持ちかけられたからといって、必ず合意しなければならないわけではなく、内容に納得できなければ応じない判断をすること自体はあり得ます。
たとえば、請求額が不当に高い、投稿内容について法的責任に争いがある、提示された条件が一方的であるといった場合、安易に示談することが適切でないケースもあります。そのため、示談を断ること自体と、責任を認めること・認めないことは分けて考える必要があります。
もっとも、示談を拒否しても法的責任の問題が消えるわけではない点には注意が必要です。相手に請求根拠がある場合、示談がまとまらなければ訴訟など別の手続に進む可能性があります。「断れば終わる」と考えるのは適切ではありません。
また、「拒否」と「無視」は同じではありません。示談条件に応じない意思を示して交渉することと、請求自体を放置することでは意味合いが異なります。無視を続けると、交渉の余地を狭めてしまう場合もあります。そのため重要なのは、応じない場合でも理由と対応方針を整理して判断することです。単に拒否するのではなく、条件調整を求める余地があるのか、争うべき事案なのかを見極めることが、不要な不利益を避けることにつながります。
示談自体を希望しないのか、示談条件が了承の困難なものなのか、という点は、大きな違いです。しっかりと整理して相手にも把握してもらうことが重要でしょう。
示談を無視・拒否されたらどうする?正しい対応の流れと次の一手
相手に示談を持ちかけても無視されたり、拒否されたりすると、どう進めればよいか迷うことがあります。ただ、応じてもらえないからといって、それで対応が終わるわけではありません。状況に応じて次の対応を検討していくことになります。
まず重要なのは、証拠を整理したうえで請求内容を明確にすることです。投稿内容や投稿日時、スクリーンショット、相手とのやり取り、被害状況などを整理しておくことで、交渉継続にもその後の法的手続にも対応しやすくなります。
相手が返答していないだけなのか、明確に拒否しているのかを見極めることも重要です。単なる無視であれば、連絡手段や伝え方を変えることで交渉が進む場合もあります。拒否と即断して強硬な対応に進む前に、状況確認をしておくことには意味があります。
交渉が進まない場合には、内容証明郵便を用いて請求内容や回答期限を明確に伝える方法を検討する場面もあります。相手に対応を促す契機となる場合もありますし、その後の対応方針を整理する材料にもなり得ます。
もっとも、請求を重ねればよいというものではありません。同じ要求を感情的に繰り返すと、かえって交渉が硬直することもあります。相手の反応を見ながら、交渉を続けるか、別の手段へ進むかを判断する視点が必要です。
その判断で重要になるのが、訴訟へ進むべきかの見極めです。被害の大きさ、証拠の内容、請求額とのバランス、回収可能性などによって、裁判を選ぶ合理性は変わります。示談が不成立でも、必ず訴訟が適切とは限りません。
一方で、相手が悪質に無視を続ける場合や、交渉による解決が見込めない場合には、裁判手続を視野に入れる必要が出てくることもあります。話し合いで解決できない場合に法的手続へ進むこと自体は、不自然な流れではありません。
また、初動で避けたいのは、放置や感情的な対立の深刻化です。無視されたことに反応して強い表現で追及したり、法的根拠が曖昧な請求をしたりすると、かえって不利になることもあります。冷静な対応を維持することが重要です。
次の一手は、交渉継続・通知による働きかけ・訴訟検討を状況ごとに選ぶ発想が重要です。判断に迷う場合には、早い段階で見通しを整理しておくことで、解決の選択肢を広く持ちやすくなります。
なぜ示談に応じないのか?よくある理由とケース別の対処法
示談に応じてもらえない場合、単に「相手が悪意で拒否している」とは限りません。理由によって対応の考え方は変わるため、まずはなぜ応じないのかを整理してみることが重要です。
相手が示談に応じない理由としてまずあり得るのは、請求内容や条件に納得していないケースです。たとえば示談金額が高いと受け止められていたり、謝罪文の内容や条件に負担を感じていたりして、合意に至らないことがあります。この場合、条件調整で解決できる余地があることもあります。
また、自分に法的責任はないと考えているため、示談に応じないケースもあります。投稿が違法ではないと認識していたり、損害が生じていないと争っていたりする場合です。このような場合には、責任の認識にずれがある可能性もあるため、感情的な押し引きでは解決しにくいことがあります。
単純に無視されているように見えても、実際には対応を先送りしているだけという場合もあります。請求への向き合い方が消極的で、放置されているケースです。この場合、連絡方法や交渉の進め方によって動くこともあります。
一方で、相手に支払能力の問題があり、示談に応じたくても応じにくい場合もあります。支払いが難しいことが拒否の背景にあるケースでは、一括払いにこだわるより、条件調整を検討したほうが現実的なこともあります。
このように理由によって対応は変わります。条件面が争点なら交渉余地を探る、責任そのものを争うなら証拠関係を整理する、無視が続くなら別の働きかけを検討する、といった見極めが必要です。
重要なのは、「応じない」という結果だけを見て対応を決めないことです。拒否の理由に応じて対応を分ける視点を持つことで、無用な対立を避けながら解決できる可能性があります。
もっとも、理由によっては交渉での解決が難しく、訴訟など別の手続を検討すべき場面もあります。特に悪質な拒否や責任の全面否認がある場合には、交渉継続にこだわらない判断が必要になることもあります。
相手が示談に応じない場面では、「なぜ応じないのか」を見誤ると対応もずれやすくなります。まず背景を整理し、それに応じて次の対応を考えることが、適切な解決につながりやすくなります。
誹謗中傷の場合、被害者に損害が生じるか、どの程度生じるかが非常に曖昧になりやすいため、その点の認識に深い溝があると示談には至りにくい傾向にあります。
誹謗中傷の示談に応じないとどうなる?リスクと裁判の見通しを解説
示談に応じない場合に生じ得るリスク
誹謗中傷について示談に応じない場合、まず意識しておきたいのは、示談を断ること自体と、法的な問題がなくなることは別だという点です。示談を拒否しても紛争そのものが消えるわけではありません。請求に理由がある場合には、別の手続に進む可能性があります。
加害者側の視点では、交渉で解決できた可能性が失われ、訴訟対応の負担が生じることがあります。事案によっては、交渉段階より条件調整が難しくなる可能性もあり、安易な放置は慎重であるべきです。
また、請求内容を十分検討しないまま無視を続けると、交渉による解決機会を失うリスクもあります。早い段階なら調整できた内容でも、対立が深まると解決コストが高まることがあります。
裁判に進んだ場合の見通し
示談が成立しない場合、訴訟など裁判手続が選択肢になることがあります。もっとも、示談がまとまらなければ必ず裁判になるわけではなく、被害の程度や証拠状況などによって判断されます。
裁判になった場合には、投稿の違法性や損害の有無が争点になりやすいと考えられます。示談と異なり、法的評価で結論が示される点が特徴です。
また、訴訟には時間や費用もかかり得ます。こうした負担も踏まえ、相手方が訴訟に進むか、交渉継続を選ぶかはケースによって異なります。そのため、「拒否したら必ず裁判」と単純化して捉えるのは適切ではありません。
リスクを大きくしないために意識したいこと
示談に応じない場合でも、いたずらにリスクを大きくしないための視点は重要です。放置ではなく見通しを持って対応することが、不要な不利益の回避につながりやすくなります。
請求内容に争いがあるなら根拠を整理する、条件が問題なら交渉余地を検討するなど、「応じるか否か」だけでなく対応の選択肢で考えることが重要です。
被害者側で相手が応じない場合も同様で、すぐ強硬手段に進むのではなく、交渉継続と法的措置のどちらが適切かを見極める必要があります。示談拒否が直ちに重大な不利益に直結するわけではありませんが、法的リスクを軽視しない判断姿勢は重要です。状況に応じて見通しを持ち、必要なら早めに対応方針を整理することが、結果として解決につながりやすくなります。
誹謗中傷の慰謝料はいくら?相場と金額が変わるポイント
誹謗中傷の示談で慰謝料を考える場合、金額は事案によって変わりますが、一般に数十万円程度が問題になるケースは少なくありません。内容や被害状況によってはこれより低い場合もあれば、高くなる場合もあります。慰謝料は数十万円単位で検討されることがある、という大まかな目安は持っておいてよいでしょう。
もっとも、金額は投稿内容や悪質性によって変わります。虚偽の事実を広く拡散したケースと、単発の軽度な投稿では評価が同じとは限りません。継続性、拡散性、社会的信用への影響などによって増減し得ます。悪質性や被害の程度が金額に影響しやすいことは理解しておきたいところです。
また、相手から提示された示談金が「相場」とは限りません。請求額は高めに提示されることもあり、交渉で調整される場合もあります。そのため、高額請求が来たからといって直ちにその条件で応じるべきとは限りません。逆に、被害者側でも相場感から大きく離れた請求は交渉を難しくし得ます。
さらに、示談では金銭だけでなく、投稿削除や謝罪なども含めて解決条件を調整することがあります。解決条件は慰謝料だけで決まるわけではないため、金額だけで有利不利を判断しない視点も重要です。
そのため、「相場はいくらか」という問いには一定の目安はありつつも、最終的には個別事情で決まるという理解が重要です。金額だけで判断せず、事案全体を踏まえて検討することが、適切な示談判断につながります。
どのタイミングで弁護士に相談すべき?依頼するメリットも解説
誹謗中傷の示談では、「どの段階で弁護士に相談すべきか」と迷うことがあります。もっとも、紛争が深刻化してからでなければ相談できないわけではありません。相手との交渉が進まない、請求内容が妥当かわからない、高額な示談金を求められているといった場合は、相談を検討すべきタイミングといえます。被害者側でも、交渉を続けるべきか法的措置を取るべきか迷う場合には、見通しを整理する意味があります。
弁護士に依頼するメリットとしては、交渉条件や請求内容を法的観点から整理しやすくなる点が挙げられます。また、当事者どうしでは感情的な対立が深まりやすい場面でも、第三者が入ることで交渉が進みやすくなる場合があります。第三者を介することで解決しやすくなることがあるのは、示談事案で意識しておきたい点です。訴訟に進むべきかも含め、対応の選択肢を整理しやすくなる場合もあります。もっとも、すべての事案で直ちに依頼が必要というわけではありません。重要なのは、深刻化する前に相談を選択肢に入れることです。早い段階で見通しを確認することが、結果として不要なリスクを避け、適切な解決につながることもあります。
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