盗撮事件では、示談の進め方によってその後の処分が大きく変わる可能性があります。とくに、不起訴となるか、前科が付くかといった結果に直結する重要な要素であるため、早い段階で正しく理解しておくことが欠かせません。

もっとも、示談といっても単にお金を支払えばよいものではなく、タイミングや進め方、被害者との交渉のあり方によって結果が左右される点に注意が必要です。対応を誤ると、示談が成立しないだけでなく、かえって不利な事情として評価されることもあります。

また、示談が成立すればすべて解決するわけではなく、事件の内容や経緯によっては処分に一定の影響にとどまる場合もあるため、過度な期待は禁物です。そのため、示談の意味や効果を正確に理解したうえで、適切な判断を行うことが重要になります。本記事では、盗撮事件における示談について、不起訴や前科への影響、適切なタイミング、実務上の流れや注意点を解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

盗撮事件では示談が重要|処分に与える影響と早期対応のポイント

盗撮事件においては、示談が成立するかどうかが処分の方向性に大きく影響します。とくに、検察官が起訴・不起訴を判断する際には、被害者の処罰感情や被害回復の状況が重要な要素となるため、示談の有無は実務上極めて重視される事情といえます。

刑事事件では本来、処罰の可否は国家が判断しますが、盗撮のように被害者の存在する事案では、被害者の意思が処分判断に具体的に反映されやすい構造になっています。そのため、示談により被害者の処罰感情が緩和されている場合には、不起訴となる方向で評価される可能性が高まるのが実務上の一般的な運用です。

もっとも、示談は成立すれば常に同じ効果を持つわけではなく、成立した時期によって影響の範囲が明確に異なります。捜査段階で成立している場合には、不起訴判断に直接影響し得ますが、起訴後に示談が成立しても起訴が取り消されることはなく、不起訴になることはありません。この場合、示談は主として量刑判断において考慮され、罰金額や執行猶予の有無に影響する事情として扱われます。

さらに、示談は単なる金銭の支払いにとどまらず、被疑者がどのように謝罪し、どの程度被害回復に努めたかを示す事情として、検察官の処分判断において評価される要素でもあります。したがって、金銭の提示だけでなく、事件の経緯を踏まえた説明や再発防止の意思を適切に示すことが、被害者の処罰感情の緩和や示談成立の可否に影響し、その結果として不起訴判断にもつながり得るという関係にあります。このように、盗撮事件における示談は、不起訴の可否から量刑判断に至るまで広く影響を及ぼす要素であり、成立時期や対応の内容によって評価が大きく変わります。早い段階から適切に対応することが、その後の見通しを左右するといえます。

盗撮事件の場合、示談をほぼ唯一の理由に不起訴処分とされるケースも決して珍しくありません。示談の有無は決定的な判断材料になり得ます。

盗撮の示談とは何か|刑事手続との関係をわかりやすく整理

盗撮事件における示談とは、被疑者と被害者との間で、謝罪や金銭の支払いなどを通じて被害の解決を図る合意をいいます。刑事事件であっても、被害者の存在する事案ではこのような合意が成立することがあり、刑事手続とは別に行われる「民事的な解決」として位置づけられます。

もっとも、示談は単なる私的な取り決めにとどまらず、刑事処分の判断に具体的に影響を及ぼし得る事情です。検察官は、起訴するかどうかを判断する際に、証拠関係だけでなく、被害の回復状況や被害者の処罰感情を踏まえて総合的に判断します。たとえば、示談が成立し、被害者が被害弁償を受けたうえで処罰を求めない意思を示している場合には、起訴の必要性が低いと評価され、不起訴となる方向で考慮されることがあります。

また、示談の内容としては、一般に、謝罪の意思の表明、示談金の支払い、今後の請求をしない旨の合意(清算条項)、事件内容を外部に漏らさない旨の合意(守秘条項)などが盛り込まれます。これらの条項によって、被害者との間で紛争が終局的に解決された状態が形成され、刑事手続においても「被害回復が図られている」と評価される基礎となります。

さらに重要なのは、示談は通常、被害者が加害者を許す意思(宥恕)を示すことと結びついている点です。宥恕が明確に示されている場合には、検察官にとっても、処罰の必要性を再検討する要素となります。反対に、金銭の支払いがあっても宥恕の意思が示されていない場合には、処分への影響は限定的にとどまることがあります。

ただし、示談が成立したとしても、それだけで刑事責任がなくなるわけではありません。あくまで処分判断における一事情として考慮されるにとどまり、行為の態様や悪質性、余罪の有無などによっては、示談があっても起訴される可能性はあります。この点は、示談の効果を理解するうえで重要です。このように、盗撮事件における示談は、民事的な合意でありながら、検察官の起訴判断やその後の処分に具体的に影響を及ぼす制度であり、その仕組みと限界を正確に理解しておくことが、適切な対応を検討する前提となります。

盗撮の示談はいつまでに必要か|タイミングで変わる結果と注意点

盗撮事件における示談は、成立する時期によって処分への影響が大きく異なります。結論として、より有利な結果を目指すのであれば、できる限り早い段階で示談を成立させることが重要です。

まず、被害者との接触が可能であり、まだ警察に発覚していない段階で示談が成立した場合には、被害届や告訴が行われず、刑事事件として扱われないまま終結する可能性があります。この段階では、そもそも捜査が開始されないため、前科の問題が生じることもありません。

もっとも、発覚前の段階では、被害者の氏名や連絡先が分からないことが多く、そもそも示談交渉を開始できないケースが少なくありません。また、被害者に直接連絡を取ろうとした場合でも、突然の接触が被害者に強い不安や恐怖を与え、かえって警察への相談や被害申告につながるおそれがあります。さらに、状況によっては、接触の態様によっては新たなトラブルと評価される可能性もあるため、方法を誤るとリスクが高まります。

次に、警察による捜査が開始された後、検察官が起訴・不起訴を判断するまでの段階(いわゆる捜査段階)で示談が成立した場合には、不起訴となる可能性に直接影響します。この時点で被害回復が図られ、被害者の処罰感情が緩和されていれば、起訴の必要性が低いと評価されるためです。

特に、逮捕されている場合には、勾留期間内(最大20日程度)に処分が決まることが多く、この期間内に示談を成立させられるかが重要な分岐点となります。

一方で、起訴後に示談が成立しても、不起訴になることはありません。この段階では事件はすでに裁判に付されているため、示談の効果は量刑に限られ、罰金額や執行猶予の有無といった点に影響するにとどまります。このように、盗撮事件における示談は、発覚前であれば事件化の回避、捜査段階であれば不起訴判断、起訴後であれば量刑判断と、成立時期によってその意味が明確に異なります。したがって、手続の進行状況を踏まえ、適切な方法とタイミングで対応することが重要です。

示談するとどうなる?不起訴・前科への影響と判断の考え方

示談が不起訴に与える影響

盗撮事件において示談が成立した場合、最も直接的に影響するのは不起訴になる可能性です。検察官は、起訴するかどうかを判断する際に、被害回復の状況や被害者の処罰感情を重視するため、示談により被害者が処罰を求めない意思(宥恕)を示している場合には、起訴の必要性が低いと評価されやすくなります。

実務上は、示談が成立している場合、起訴猶予処分となるケースが多く見られます。これは、犯罪自体は成立しているものの、被害回復が図られていることなどを理由に、刑事処分を科さないと判断されるものです。

また、示談が不起訴につながるかどうかは一律ではなく、成立した時期や内容、事件の性質によって判断が分かれます。たとえば、捜査段階の早い時期に成立し、被害回復が十分に図られている場合には、不起訴となる可能性が高まります。他方で、成立が遅い場合や被害回復が不十分な場合には、示談が成立していても起訴されることがあります。

示談しても不起訴にならないケース

もっとも、示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありません。たとえば、犯行態様が悪質である場合、常習性が認められる場合、余罪がある場合などには、示談が成立していても起訴されることがあります。

また、被害者が形式的には示談に応じていても、処罰感情が強く残っている場合や、被害回復が十分でない場合には、示談の成立が起訴判断に大きく影響しないこともあります。

示談と前科の関係

前科との関係では、不起訴となった場合には前科は付きません。したがって、示談が成立し、それが不起訴判断につながれば、結果として前科を回避できることになります。

一方で、起訴された場合には、有罪判決が確定すれば前科が付くことになります。ただし、この場合でも示談が成立していれば、罰金刑で済む、執行猶予が付くといった形で、処分の重さに影響する可能性があります。

示談の効果を左右する判断要素

示談の影響は一律ではなく、不起訴となるかどうかの判断は個別事情によって決まります。具体的には、次のような事情が考慮されます。

  • 示談が成立した時期(捜査段階か、起訴後か)
  • 被害回復の程度(十分な賠償がなされているか)
  • 被害者の処罰感情(宥恕の有無)
  • 犯行の態様や悪質性
  • 前歴・余罪の有無

これらの事情を踏まえて、示談が不起訴に結びつくか、あるいは量刑にとどまるかが判断されることになります。

このように、盗撮事件における示談は、不起訴の可否や前科の有無に直結する重要な事情である一方、その効果は個別事情によって左右されるため、具体的な状況に応じた見通しの検討が重要となります。

なお、盗撮事件の示談金相場に関する注意点は、以下の記事もご参照ください。
盗撮の示談金の相場は?金額の決まり方と判断ポイント

示談しないとどうなる?起訴・処分への影響とリスクを整理

盗撮事件において示談が成立していない場合、起訴される可能性が高まる方向に働きます。検察官は、起訴するかどうかを判断する際に、被害回復の状況や被害者の処罰感情を考慮しますが、示談が成立していない場合には、被害が回復されておらず、処罰の必要性が高いと評価されやすいためです。

とくに、被害者が処罰を強く求めている場合には、その意思が処分判断に影響し、正式起訴に至る可能性が高くなる傾向があります。示談が成立していれば起訴猶予となり得た事案であっても、示談がないことで起訴に至るケースは実務上少なくありません。

また、起訴された場合には、その後の裁判において有罪判決が言い渡される可能性があり、罰金刑や拘禁刑(執行猶予を含む)が科されることで前科が付くことになります。盗撮事件では、初犯であっても罰金刑となる例は多く、事案によっては執行猶予付きの拘禁刑となることもあります。

さらに、示談が成立していない状態は、量刑判断においても不利に働きます。裁判所は、被害回復の有無や被害者の感情を考慮して刑の重さを決定するため、被害回復が図られていない場合には、同種事案と比較して重い処分が選択される可能性があります。

加えて、示談が成立していない場合には、被害者との間で紛争が解決していない状態が続くため、刑事手続とは別に損害賠償請求を受ける可能性もあります。示談が成立していれば一括して解決できるはずの問題が、刑事と民事に分かれて長期化する点も実務上の負担となります。

示談が成立していないことにより、被害者の供述が維持されやすく、証拠関係が争われにくくなるという側面もあります。被害者が処罰を求め続ける場合には、捜査機関に対して協力的な姿勢が維持されることが多く、結果として起訴に至る可能性に影響することがあります。このように、盗撮事件において示談が成立していない場合には、起訴される可能性の上昇、前科が付くリスク、量刑上の不利益、民事責任の追及、手続の長期化といった複数の不利益が生じ得るため、示談の有無が結果に与える影響は大きいといえます。

盗撮事件で示談を進めるべきか|判断に迷ったときの考え方

盗撮事件においては、示談を進めるかどうかは「事実関係を認めるか」と「証拠の状況」によって大きく分かれます。この2点を基準に考えると、判断の方向性を整理しやすくなります。

まず、自分の行為を認めている場合や、証拠関係から有罪となる可能性が高い場合には、示談を進める合理性が高いといえます。被害者に対する謝罪と被害回復を行うことで、処罰感情の緩和につながり、不起訴や量刑の軽減といった結果に結びつく可能性があるためです。特に、撮影データが押収されている、現行犯で発覚しているなど、客観的証拠が明確な場合には、示談によって不利益の軽減を図る必要性が高くなります。

このような場合には、できるだけ早い段階で示談交渉を開始し、捜査段階での成立を目指すことが現実的な対応となります。示談の成立時期によって結果への影響が変わるため、対応が遅れるほど選択肢が狭まる点にも注意が必要です。

これに対して、事実関係を争う場合や、証拠が十分でない場合には、示談の進め方に注意が必要です。示談は通常、一定の事実を前提に謝罪や賠償を行うものであるため、無条件に応じると、結果として不利な事情を認めたと評価されるおそれがあります。そのため、否認する場合には、示談を行うかどうかだけでなく、「どの範囲の事実を前提とするか」を整理したうえで進める必要があります。

また、被害者の特定状況も重要な要素です。被害者が特定されておらず、連絡先も分からない場合には、そもそも示談交渉を開始することができません。他方で、警察や弁護士を通じて接触が可能な場合には、被害者の意向を確認したうえで進めることになります。

さらに、示談の可否は被害者の意思に左右される点も踏まえる必要があります。被害者が示談を拒否している場合には、加害者側から一方的に進めることはできず、無理な接触はかえってトラブルを拡大させるおそれがあります。

このように、盗撮事件における示談は、①事実を認めるか、②証拠の状況、③被害者が特定されているか、④被害者が応じる意思を有しているかといった具体的事情によって判断が分かれます。これらを踏まえ、示談によってどのような結果が見込めるか、またどの段階で動くべきかを具体的に検討することが重要です。

なお、家族に対する盗撮事件の場合の注意点については、以下の記事もご参照ください。
家族の盗撮は犯罪?家庭内でも処罰される条件と対応

認めの盗撮事件である場合、基本的に示談を目指すデメリットはなく、目指さないことに利点もないと言えるでしょう。一方、否認事件では、示談を目指す選択肢もないではありませんが、示談の対象になる事件の内容を慎重に確認することが必要です。

示談が成立しにくいケースとは|注意すべき典型パターン

盗撮事件において示談が成立するかどうかは、主に次のような事情によって左右されます。

  • 被害者の処罰感情が強いか
  • 犯行態様が悪質であるか(計画性・継続性など)
  • 余罪があるか、被害者が複数いるか
  • 被害者が特定されているか、連絡が可能か
  • 交渉の進め方が適切か

これらの事情によっては、示談の成立が難しくなる場合があります。

まず、被害者が強い処罰感情を有している場合には、示談が成立しにくくなります。たとえば、被害状況に強い恐怖や不快感を覚えている場合や、撮影対象や状況が悪質である場合には、金銭的な補償を受けても許す意思を持たないことがあります。このような場合には、加害者側が条件を提示しても合意に至らない可能性が高くなります。

次に、犯行態様が悪質である場合も、示談が成立しにくい要因となります。具体的には、長期間にわたって繰り返し行われていた場合や、計画的に撮影が行われていた場合などは、被害の重大性が高いと評価されやすく、被害者の処罰感情も強くなりやすい傾向があります。

また、余罪がある場合や複数の被害者が存在する場合には、示談交渉自体が複雑になります。すべての被害者との間で合意を成立させる必要があり、一部でも示談が成立しない場合には、処分への影響も限定されることがあります。

さらに、被害者が特定されていない場合や連絡が取れない場合には、そもそも示談交渉を開始することができません。このような場合には、示談による解決を図ること自体が困難となります。

加えて、交渉の進め方に問題がある場合にも、示談が成立しないことがあります。たとえば、加害者本人が直接連絡を取ることで被害者に不安を与えたり、謝罪の内容が不十分であったりすると、被害者の感情が悪化し、合意に至らない結果となることがあります。盗撮事件において示談が成立するかどうかは、複数の具体的事情が重なって判断されるものであり、個別の状況に応じた見通しを持つことが重要です。

被害者側が示談交渉の土俵に乗らないと決めた場合(いわゆる接触拒否)が、盗撮事件で示談に至りにくい代表的ケースです。

盗撮の示談の進み方|実務での流れと各段階のポイント

盗撮事件における示談は、一定の手順に沿って進められます。全体像としては、被害者との接触方法の確保から始まり、条件交渉を経て示談書を作成し、成立に至るという流れになります。各段階での対応によって結果が左右されるため、具体的な進み方を把握しておくことが重要です。

被害者との連絡手段の確保

示談交渉を行うためには、被害者と連絡を取る手段を確保することが前提となります。ただし、加害者本人が直接連絡を取ると、被害者に恐怖や不安を与えるおそれがあるため、通常は警察や検察を通じて意思確認を行うか、弁護士が代理人として連絡を取る方法がとられます。

実務では、弁護士が受任したうえで、捜査機関を通じて被害者に対し「示談の意向があるか」「連絡先を開示してよいか」を確認し、同意が得られた場合に限って交渉が開始されます。この段階で、被害者が示談に応じる意思を有しているかどうかが明確になります。

示談条件の交渉

被害者が示談に応じる意思を示した場合には、具体的な条件についての交渉に入ります。主な検討事項は次のとおりです。

  • 示談金の額
  • 謝罪の方法(書面か、面会を伴うか)
  • 今後の請求をしない旨の合意(清算条項)
  • 宥恕の有無(処罰を求めない意思を示すか)

これらは事案ごとに異なり、被害の内容や被害者の意向によって調整されます。特に、宥恕の有無は不起訴判断に影響する重要な要素であるため、どのような内容で合意するかが重要になります。

示談書の作成と締結

条件面で合意に至った場合には、合意内容を示談書として書面化します。示談書には、示談金の額や支払方法、清算条項、守秘に関する合意などが明記されます。

とくに、後日の紛争を防ぐ観点から、「本件に関して今後一切の請求をしない」旨の条項や、示談内容を第三者に開示しない旨の条項を明確に定めることが一般的です。また、宥恕がある場合には、その旨を明示的に記載します。

示談成立と処分への反映

示談書の締結と示談金の支払いが完了すると、示談は成立したと評価されます。その内容は、弁護士を通じて検察官に報告され、起訴・不起訴の判断や量刑判断の資料として扱われます。

一方で、交渉の途中で条件面の隔たりが大きい場合には、提示額の見直しや条件の再調整を行いながら複数回の交渉が行われることもあります。初期の提示内容や対応の仕方によって、その後の交渉の進みやすさが左右されるため、最初の段階から適切な方針で進めることが重要です。

盗撮事件の示談は、連絡手段の確保から条件交渉、書面化、成立に至るまで段階的に進み、それぞれの場面での対応が結果に影響します。流れを理解したうえで対応することで、不要なトラブルを避けながら進めることが可能となります。

示談交渉で注意すべきポイント|失敗しやすい場面と対応方法

盗撮事件における示談交渉は、単に条件を提示すれば成立するものではなく、交渉の進め方を誤ると成立しないだけでなく、不利な事情として評価される可能性があります。とくに初期対応の内容は、その後の交渉全体に影響するため、注意すべきポイントを具体的に押さえておくことが重要です。

本人による直接交渉を避ける

まず、加害者本人が被害者に直接連絡を取ることは避けるべきです。突然の連絡は被害者に強い不安や恐怖を与えるおそれがあり、示談に応じる意思があった場合でも拒否に転じる可能性があります。また、接触の態様によっては、トラブルの拡大や新たな問題につながるおそれもあります。

実務では、弁護士が代理人として連絡を取り、被害者の意思を確認しながら交渉を進めるのが一般的です。適切なルートで接触すること自体が、示談成立の前提条件となります。

金額提示のタイミングと方法

次に、示談金の提示方法にも注意が必要です。初期段階で一方的に金額を提示すると、被害者に「金銭で解決しようとしている」という印象を与え、感情を悪化させることがあります。そのため、まずは被害者の意向を確認し、どのような解決を望んでいるのかを把握したうえで条件を検討することが重要です。

また、金額が著しく低い場合には交渉が打ち切られる可能性がある一方で、過度に高額な提示も交渉の基準を固定化させるおそれがあります。相場感や事案の内容を踏まえた適切な水準で提示することが必要です。

謝罪の内容と方法

示談交渉では、金銭だけでなく謝罪の内容や方法も重要な要素となります。形式的な謝罪ではなく、どのような経緯で行為に至ったのか、どのように反省しているのかを具体的に示すことが求められます。

謝罪文を作成する場合には、被害者の感情に配慮した表現とし、責任を曖昧にする記載や言い訳と受け取られる内容は避ける必要があります。謝罪の質が示談成立に影響する場面は少なくありません。

なお、盗撮事件における謝罪文の重要な注意点などについては、以下の記事もご参照ください。
盗撮の謝罪文の書き方|例文・注意点と示談への影響

交渉の継続と条件調整

示談交渉は、一度のやり取りで成立するとは限らず、複数回の交渉を経て条件が調整されることが一般的です。その過程では、被害者の意向を踏まえながら、金額や条件の見直しが行われることがあります。

盗撮事件の場合、基本的に当事者同士の直接の交渉は避ける必要があります。現実的にも、捜査機関が当事者同士の連絡先交換を促したり認めたりすることはないので、特に連絡ができる間柄でない限り、弁護士を通じて試みる必要があります。

示談書の作成ポイント|記載内容と注意点

盗撮事件における示談では、口頭の合意だけでなく、合意内容を書面として明確に残すことが不可欠です。示談書の内容が不十分であると、後日紛争が再燃したり、刑事処分への影響が限定される可能性があるため、記載内容には注意が必要です。

示談書に記載すべき基本事項

示談書には、まず**当事者の特定(氏名・住所)や事件の特定(いつ・どこで・どのような行為があったか)**を明記します。そのうえで、合意内容として以下の事項を記載するのが一般的です。

  • 示談金の額および支払方法(支払期限・振込方法など)
  • 謝罪の意思およびその内容
  • 今後の請求を行わない旨の合意(清算条項)
  • 示談内容を第三者に開示しない旨(守秘条項)

これらを具体的に記載することで、合意内容の解釈をめぐる争いを防ぐことができます。

宥恕条項の重要性

刑事事件においては、被害者が処罰を求めない意思(宥恕)を示しているかどうかが処分判断に影響するため、その有無を明確にすることが重要です。

示談書においては、「被害者は加害者の処罰を求めない」旨の条項を設けることで、宥恕の意思を明確に示すことができます。これにより、不起訴判断において有利な事情として評価される可能性があります。

清算条項と紛争防止

示談書には、本件に関して今後一切の請求を行わない旨の清算条項を設けるのが通常です。この条項がない場合、示談金の支払い後に追加の請求がなされるリスクが残るため、紛争防止の観点から重要です。

また、清算条項の対象範囲についても、「本件に関する一切の損害」など、どこまで含むのかを明確にする必要があります。

記載内容の不備によるリスク

示談書の内容が不明確であったり、必要な条項が欠けている場合には、示談の効力自体が争われる可能性や、想定していた効果が得られない可能性があります。たとえば、宥恕条項がない場合には、示談が成立していても処罰感情が緩和されたと評価されにくくなることがあります。

また、支払方法や期限が曖昧であると、履行をめぐるトラブルが生じるおそれもあります。

書面化によって効果が明確になる

示談は、書面として適切に整理することで、はじめてその効果が明確になります。誰が何を約束し、どの範囲で解決したのかを明示することで、後日の紛争を防ぐとともに、刑事手続においても適切に評価されることになります。示談書の作成にあたっては、形式だけでなく内容の適切性が重要であり、具体的事情に応じた条項設計が求められます。

示談書は示談が成立するための条件ではありませんが、蒸し返し防止を図るための重要な手段です。被害者側にとっても、加害者が蒸し返す意思を持っていないと安心してもらえる点で有益なものと言えます。

示談は弁護士に依頼すべきか|依頼するメリットと限界

盗撮事件の示談において弁護士に依頼するかどうかは、主に次のような点から判断されます。

  • 被害者と適切に接触できるか
  • 交渉を適切に進められるか(条件提示・対応方法)
  • 示談書を正確に作成できるか
  • 示談内容を検察官に適切に反映できるか
  • 費用と結果のバランスをどう考えるか

これらを踏まえると、示談の成否や内容に影響する場面が多く、実務上は弁護士を介して進められるケースが少なくありません。

まず、弁護士に依頼することで被害者との接触が可能になる点が大きなメリットです。加害者本人が直接連絡を取ることは適切でない場合が多く、捜査機関を通じて連絡先の開示を受ける際にも、弁護士が代理人として介入することが前提となることがあります。そのため、示談交渉を開始できるかどうかに関わる重要な要素となります。

次に、交渉の進め方を適切にコントロールできる点もメリットです。示談では、金額の提示方法や謝罪の内容によって結果が左右されるため、事案の内容や相場感を踏まえた対応が求められます。弁護士が関与することで、被害者の感情に配慮しつつ、過不足のない条件設定が可能になります。

また、示談書の作成においても専門的な対応が可能です。宥恕条項や清算条項の有無、文言の設計によっては、刑事処分への影響や後日の紛争リスクが変わるため、内容の適切性が重要になります。

さらに、弁護士が関与している場合には、示談成立後にその内容を検察官へ適切に報告することができるため、処分判断への反映という点でも実務上のメリットがあります。

他方で、弁護士に依頼したとしても、必ず示談が成立するわけではありません。被害者が示談を拒否している場合や、条件面で大きな隔たりがある場合には、交渉が成立しないこともあります。また、弁護士費用が発生する点も考慮が必要です。

盗撮事件の弁護士費用に関しては以下の記事もご参照ください。
盗撮の弁護士費用はいくら?相場・内訳と総額の目安

盗撮事件で弁護士に無料相談する場合の重要ポイントについては、以下の記事もご参照ください。
盗撮で弁護士に無料相談する方法|流れ・注意点・選び方

盗撮事件の場合、示談を目指す=弁護士への依頼、と整理しても間違いはないでしょう。

まとめ|盗撮の示談は結果に直結する重要な対応

盗撮事件における示談は、単なる金銭的な解決ではなく、不起訴となるか、前科が付くかといった結果に直結する重要な対応です。被害回復の有無や被害者の処罰感情は、検察官の起訴判断や裁判所の量刑判断において重視されるため、示談が成立するかどうかによって結論が大きく分かれることがあります。

とくに、捜査段階で示談が成立しているかどうかは、不起訴となる可能性に影響する重要な事情です。早期に被害回復が図られ、被害者が処罰を求めない意思を示している場合には、起訴の必要性が低いと評価されやすくなります。他方で、示談が成立していない場合には、起訴や量刑において不利に働く可能性があるため、対応の有無が結果に与える影響は小さくありません。

もっとも、示談はすべての事案で成立するものではなく、被害者の意思や事件の内容、交渉の進め方によって結果が左右されるため、見通しを踏まえた対応が求められます。また、事実関係を争う場合には、示談の進め方が防御方針と矛盾しないように整理する必要があります。

さらに、示談交渉は、接触方法、条件設定、書面化といった各段階での対応によって結果が変わるため、適切な手順と内容で進めることが重要です。とくに、被害者への配慮を欠いた対応や不適切な条件提示は、交渉の失敗につながるおそれがあります。盗撮事件における示談は、結果を左右する実務上の重要な対応であり、個別事情に応じた適切な判断と進め方が求められるものです。状況に応じて、どの段階で何を行うべきかを整理し、適切に対応することが重要といえます。

よくある質問|盗撮の示談で悩みやすいポイント

示談が成立すれば必ず不起訴になりますか

必ず不起訴になるわけではありません。示談は起訴・不起訴の判断において重要な事情とされますが、最終的には犯行の内容や悪質性、前歴・余罪の有無なども含めて判断されます。したがって、示談が成立していても起訴される場合はあります。

もっとも、被害回復が図られ、被害者が処罰を求めない意思(宥恕)を示している場合には、起訴の必要性が低いと評価されやすく、不起訴(起訴猶予)となる可能性は高まります。


示談金はいくらくらいが相場ですか

示談金の額は、事案の内容や被害の程度、被害者の意向によって大きく異なります。そのため、一律の金額が決まっているわけではありません。

一般的には、被害の内容、撮影の態様、回数、データの有無などを踏まえて個別に決まります。相場感は一定程度存在するものの、個別事情によって上下するため、具体的な金額は事案ごとに検討する必要があります。


示談はいつまでに成立させるべきですか

できるだけ早い段階で成立させることが望ましいといえます。とくに捜査段階で成立している場合には、不起訴判断に影響する可能性があります。

一方で、起訴後であっても示談が成立すれば、量刑判断において有利に考慮されることがあります。したがって、どの段階であっても示談の成立自体には意味がありますが、早いほど影響が大きいと整理できます。


被害者と直接連絡を取ってもよいですか

原則として避けるべきです。加害者本人からの直接連絡は、被害者に不安や恐怖を与えるおそれがあり、示談交渉が困難になる原因となります。

実務では、警察や検察を通じて意思確認を行うか、弁護士が代理人として連絡を取る方法が一般的です。適切な方法で接触することが、示談成立の前提となります。


示談を断られた場合はどうなりますか

被害者が示談を拒否している場合には、示談を成立させることはできません。その場合でも、刑事手続は進行し、起訴・不起訴や量刑は他の事情を踏まえて判断されます。

もっとも、示談が成立していない場合には、被害回復が図られていないと評価されるため、処分において不利に働く可能性があります。そのため、示談が難しい場合でも、どのような対応をとるかを検討することが重要です。

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