痴漢事件で警察沙汰になった場合、「会社にばれてしまうのではないか」と不安を抱く方は少なくありません。逮捕されればすぐに勤務先へ連絡が入るのか、解雇や懲戒処分を受けてしまうのか、仕事を続けられるのか――こうした問題は、刑事手続そのものとは別に、生活や将来に直結する重大な関心事です。
実際には、痴漢事件が必ず会社に知られるわけではなく、発覚するかどうかは一定のパターンやきっかけによって左右されます。本記事では、痴漢事件が会社にばれる主な経路や、仕事への影響、リスクを抑えるために重要な初動対応について、弁護士の視点から整理して解説します。
この記事の監修者
藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
痴漢事件が会社にばれる主なパターン
痴漢事件が会社に知られるかどうかは、「逮捕されたか」だけで決まるものではありません。実務上は、いくつかの典型的な経路を通じて勤務先に発覚するケースが多く見られます。ここでは、弁護士の立場から、実際に多いパターンを整理します。
家族・同居人から会社に伝わるケース
もっとも多いのが、家族や同居人を経由して会社に知られるケースです。
身柄を拘束された場合や、取調べ・手続対応で急に帰宅できなくなった場合、本人に代わって家族が会社へ連絡を入れることがあります。その際、欠勤理由を十分に説明できず、「警察に呼ばれている」「事件に関わっている」などと伝わってしまうことで、会社側が事情を察知することがあります。
逮捕・書類送検が報道されるケース
事件の内容や状況によっては、新聞やインターネットニュースで報道されることがあります。
実名報道がなされた場合はもちろん、匿名であっても、年齢や職業、居住地などの情報から、職場の関係者が本人だと気づくケースもあります。特に地域性の強い事件では、勤務先に知られるリスクが高まります。
痴漢事件が報道の対象になる可能性が生じるタイミングは、逮捕当日又は翌日が代表的です。書類送検段階で報道対象になるのは、著名人の事件や内容が際立った事件など、特定のケースに限定されやすいでしょう。
無断欠勤・長期欠勤から発覚するケース
身柄拘束の有無にかかわらず、無断欠勤や不自然な長期欠勤が続くことで、会社から事情を確認され、結果的に事件が発覚することもあります。
就業規則上、欠勤理由の説明を求められる場面は多く、説明の仕方によっては、痴漢事件に関与していることが推測されてしまうことがあります。
被害者や第三者から会社に連絡が入るケース
比較的まれではありますが、被害者や第三者が勤務先を把握しており、会社に直接連絡を入れるケースもあります。
通勤経路や職場近くでの事件、同僚・取引先が関係者であった場合などには、会社に情報が伝わる可能性が否定できません。
警察から会社に直接連絡が入ることはある?
原則として、警察が捜査の一環として会社に直接連絡を入れることは通常ありません。
ただし、任意の事情聴取への出頭調整や、身元確認が必要な特殊な事情がある場合には、例外的に連絡が行われる可能性もあります。そのため、「警察は絶対に会社に連絡しない」と断言できるわけではない点には注意が必要です。
会社で起きた事件である、当事者が会社の同僚であるなど、会社の関係する事件である場合、捜査上の必要から会社に連絡される場合は一定数あります。
「逮捕=会社にばれる」わけではない理由
痴漢事件について、「逮捕された時点で会社に必ず知られてしまう」と考えている方も少なくありません。しかし、逮捕と会社への発覚は、法的にも実務的にも別の問題です。ここでは、その理由を整理します。
まず、刑事事件の捜査は個人に対して行われるものであり、原則として警察や検察が本人の勤務先へ事件内容を通知する制度はありません。前述のとおり、警察が会社に直接連絡を入れるのは例外的な場面に限られています。
また、逮捕されたとしても、短期間で釈放されるケースや、当初から身柄拘束を伴わない在宅事件として扱われるケースもあります。このような場合、欠勤や生活上の不自然さが生じなければ、会社側が事件を把握するきっかけ自体が存在しないこともあります。
重要なのは、会社が事件を知るのは「逮捕されたから」ではなく、
欠勤、報道、第三者からの連絡など、外部に表れる事情があった場合だという点です。言い換えれば、会社にばれるかどうかは、刑事手続そのものよりも、周囲にどのような影響が及ぶかによって左右されます。そのため、痴漢事件では、刑事上の対応とあわせて、仕事や生活への影響を最小限に抑える視点で初動を考えることが重要になります。この点を誤ると、結果として会社に知られるリスクが高まってしまうことがあります。
捜査機関は逮捕した事実を同居家族に電話等で通知することが一般的ですが、会社に通知することはあまり見られません。
会社にばれた場合に想定される仕事への影響
痴漢事件が会社に知られた場合、直ちに解雇されるとは限りませんが、勤務先から何らかの対応や判断がなされる可能性は否定できません。ここでは、実務上想定される仕事への影響を整理します。
懲戒処分を受ける可能性
会社に痴漢事件の事実が伝わった場合、就業規則に基づく懲戒処分が検討されることがあります。
懲戒処分の内容は、懲戒解雇に限られず、諭旨解雇、降格、減給、出勤停止など、段階的に定められているのが一般的です。
多くの会社では、「会社の信用を著しく損なう行為」や「社員としての品位を欠く行為」を懲戒事由として定めています。痴漢事件は業務外で起きたものであっても、その内容や影響次第では、こうした規定に該当すると判断されることがあります。
懲戒処分は、その根拠が就業規則に定めてある場合に限り可能です。公務員の方の場合、処分方針が公表されているケースも多数見られます。
逮捕段階や不起訴でも処分されることはある?
懲戒処分が問題となるのは、有罪判決が確定した場合に限られるわけではありません。
実務上は、逮捕された事実や、事件の内容が社内に広く知られたこと自体を理由に、何らかの処分が検討されるケースも見られます。
もっとも、刑事手続の結果や本人の説明内容、会社への影響の程度によって判断は大きく異なります。必ずしも、不起訴であれば処分されない、逮捕されただけで解雇される、という単純な関係にはありません。
捜査機関が捜査を遂げた結果の判断と、会社による懲戒処分時の判断が一致している必要はありません。ただ、会社が独自に「犯罪事実あり」と判断するには相応の根拠が必要になるでしょう。
無断欠勤や業務支障による処分リスク
痴漢行為そのものよりも、無断欠勤や長期欠勤によって業務に支障が生じたことを理由に、懲戒や評価上の不利益を受けるケースもあります。
身柄拘束や取調べ対応が続く中で、適切な連絡や説明ができなかった場合、事件とは別の問題として処分の対象となることがあります。このように、会社にばれた場合の影響は、事件内容だけでなく、その後の対応や勤務状況によって左右される点に注意が必要です。
会社にばれる可能性を下げるために重要な初動対応
痴漢事件では、会社に知られるかどうかは偶然で決まるものではありません。事件発生直後の対応によって、仕事への影響が変わることがあります。とくに、欠勤や生活上の不自然さが生じると、それをきっかけに会社へ事情が伝わるケースが少なくありません。
身柄拘束を避けることの重要性
会社発覚の大きな要因の一つが、身柄拘束による欠勤です。
勾留されると、数日から長期間にわたり出社できなくなり、欠勤理由の説明が難しくなります。その結果、家族や会社を通じて事件が知られてしまうケースも見られます。
そのため、痴漢事件では、可能な限り早期に身柄拘束を避ける対応が重要になります。初動対応が遅れると、勾留や長期欠勤につながり、会社にばれるリスクが高まってしまいます。
裏を返すと、身柄拘束を避けることができれば、痴漢事件が会社にバレる可能性はかなり大きく低下するでしょう。
示談と不起訴が会社発覚リスクに与える影響
被害者との示談が成立し、不起訴となった場合には、報道や追加的な刑事手続が生じる可能性が低くなり、結果として事件が外部に広く知られにくくなる場合があります。ただし、不起訴であっても、すでに会社に知られていれば影響を完全に避けることはできません。
示談交渉はタイミングが重要であり、初動対応の一環として検討する必要があります。状況によっては、対応の遅れが、会社発覚のリスクを高めてしまうこともあります。
会社への説明が必要になった場合の注意点
すでに会社から事情を尋ねられている場合や、説明を避けられない状況では、安易な虚偽説明は避けるべきです。
説明内容によっては、後に事実と食い違いが生じ、信用問題として不利に働くおそれがあります。
どこまで説明するか、どのような表現が適切かは、状況によって異なります。刑事手続との関係も踏まえ、慎重に対応方針を検討することが重要です。
どの段階でどこまでの内容を会社に告げるべきか、という点は、一律には申し上げにくい問題です。個別の事情や状況を踏まえて専門性ある弁護士の判断を仰ぐことが適切でしょう。
痴漢事件で仕事を守るために弁護士ができること
痴漢事件では、刑事手続への対応とあわせて、仕事や職場への影響を見据えた対応が求められます。対応を誤ると、事件そのものとは別に、欠勤や説明の仕方をきっかけとして、会社との関係が悪化してしまうこともあります。
弁護士に相談することで、取調べや身柄拘束への対応だけでなく、会社に知られるリスクを意識した初動方針を立てることが可能になります。身柄拘束を避けるための対応、示談交渉の進め方、会社への説明が必要となった場合の考え方などを、刑事手続との関係を踏まえて検討することができます。
また、会社に事件が伝わった場合でも、事実関係や手続の進行状況を踏まえた対応を取ることで、不必要に不利な扱いを受けることを防げるケースもあります。刑事事件と職場対応を切り分けて考えるのではなく、全体を見通した対応が重要になります。
痴漢事件では、早い段階で専門家に相談し、仕事への影響を最小限に抑える視点を持って対応を進めることが、結果として大きな差につながります。
まとめ|痴漢事件と会社への影響は初動で大きく変わる
痴漢事件では、会社に知られるかどうかや、仕事への影響が、必ずしも事件の内容だけで決まるわけではありません。欠勤や説明の仕方、周囲への伝わり方など、事件発生直後の対応が、その後の状況を左右することがあります。
会社に発覚する経路には一定の傾向があり、身柄拘束や報道、第三者を介した情報の伝達など、対応次第で回避できる要因も少なくありません。その一方で、初動を誤ると、刑事手続とは別に、職場での立場や評価に影響が及ぶおそれもあります。
痴漢事件では、刑事手続への対応とあわせて、仕事や職場への影響を見据えた視点を持つことが重要です。早い段階で状況を整理し、適切な対応方針を検討することが、結果としてリスクを抑えることにつながります。
会社に知られるかどうかは、逮捕の有無だけで決まるものではありません。痴漢で逮捕された場合にどの段階で影響が生じやすいのか、全体像を整理して考えることが重要です。
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