痴漢で家族が逮捕された場合の対応と流れ|弁護士解説

家族が痴漢の疑いで逮捕されたと知らされたとき、多くの方が突然の出来事に戸惑いを覚えます。警察からの連絡を受けた直後は、状況を十分に把握できないまま、対応を考えなければならない場面も少なくありません。

このような状況では、「本人と連絡を取ることはできるのか」「このまま勾留されるのか」「前科がついてしまう可能性はあるのか」といった点が、家族としてまず気になる問題になります。これらは、逮捕後の手続やその後の処分に直接関わるため、早い段階で正確に理解しておくことが重要です。

痴漢事件は、逮捕後の初動対応によって、身柄拘束の長期化を防げるか、あるいは不起訴となるかといった結果が左右されることがあります。一方で、家族としてできる対応と、慎重であるべき対応とを正しく区別しなければ、不利な状況を招いてしまうおそれもあります。

本記事では、痴漢事件で家族が逮捕された場合を想定し、逮捕後の基本的な流れ、家族が取るべき対応や注意点、そして弁護士が果たす役割について、刑事事件の実務に基づいて解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

目次

痴漢事件で逮捕された場合の基本的な流れ

痴漢事件で家族が逮捕された場合、まず押さえておくべきなのは、逮捕後の刑事手続が、法律で定められた順序と時間の枠組みの中で進むという点です。逮捕はあくまで捜査の初期段階にすぎず、この後に身柄拘束が続くかどうかは、限られた時間の中で段階的に判断されます。

特に重要なのが、逮捕から72時間以内に、勾留されるか釈放されるかが決まるという点です。この初期段階での対応によって、その後の身柄拘束の有無や長さが大きく変わる可能性があります。

痴漢事件は現行犯逮捕から始まることが多い

痴漢事件の多くは、駅や電車内などで被害の申告がなされ、その場で現行犯逮捕されるケースです。現行犯逮捕の場合、被害届が正式に提出される前であっても、警察の判断により身柄を拘束されることがあります。

この段階では、本人が容疑を認めているか否かにかかわらず警察署に連行され、取調べが始まります。家族が事態を把握するのは、警察から逮捕の連絡を受けた時点になるのが一般的です。

逮捕後72時間以内に行われる手続

逮捕後、警察は原則として48時間以内に事件を検察官に送致するかどうかを判断します。その後、検察官がさらに24時間以内に勾留請求を行うかを決定するため、逮捕から最大72時間以内に、身柄を引き続き拘束する必要があるかどうかが判断されます。

この期間内に勾留が認められた場合、裁判官の判断により、原則10日間の勾留が開始されます。一方で、勾留が認められなければ、この段階で釈放される可能性もあります。

勾留される場合とされない場合の違い

勾留が認められるかどうかは、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかといった点を基準に判断されます。痴漢事件では、住居や職業が安定しているか家族による監督や生活環境の見通しが立つかといった事情が考慮されることもあります。そのため、逮捕直後の段階で、本人の生活状況や家族の支援体制を整理し、弁護士を通じて適切に伝えることが、勾留を防ぐために重要になる場合があります。家族がこの流れを理解しておくことで、次に取るべき対応を冷静に判断しやすくなります。

痴漢事件の場合、安定した生活環境や監督者が整っていれば勾留されず釈放につながることも相当数あり得ます。それらを適切な形で表明するためには、弁護士に対応を依頼する方が望ましいでしょう。

家族は本人と連絡・面会できるのか

家族が痴漢の疑いで逮捕された場合、「本人と連絡を取れるのか」「面会はできるのか」という点は、最初に直面する現実的な問題です。しかし、逮捕直後は、家族であっても自由に面会や連絡ができるわけではありません

逮捕直後は家族が面会できないことが多い

逮捕後、警察署に身柄を拘束されている間は、家族による面会が制限されるのが原則です。これは、捜査の初期段階において、証拠隠滅や口裏合わせを防ぐ目的があるためです。

そのため、配偶者や親、兄弟姉妹といった近親者であっても、逮捕直後に面会を断られるケースは珍しくありません。電話やメールなどの連絡手段についても、原則として自由に利用できない状況になります。

逮捕直後、勾留されるまでの間は、ご家族に面会の権利がありません。そのため、面会できるかどうかは警察側の裁量になることが多いですが、安易に面会を認めるような裁量的判断は期待できないことが多く見られます。

家族面会と弁護士による接見の違い

家族の面会が制限される一方で、弁護士は「接見交通権」に基づき、逮捕直後から本人と面会することができます。これは法律で保障された権利であり、警察や検察が制限することはできません。

弁護士による接見では、

・現在の身柄状況の説明
・取調べに対する基本的な対応方針
・今後の見通し

などについて、周囲に聞かれることなく話をすることが可能です。家族が直接本人と連絡を取れない状況では、弁護士を通じて状況を把握することが、現実的な手段となります。

弁護士の接見は、時間帯を問わず可能である、第三者の立ち会いなくできる、という点にも大きな特徴があります。秘密を守りながら必要な協議ができます。

弁護士が初回接見で行う対応

初回接見では、弁護士が本人から事情を聴き取るだけでなく、不用意な供述を避けるための助言や、今後の取調べに対する基本的な考え方を伝えます。また、家族に伝えるべき内容があれば、本人の了承を得たうえで家族に状況を説明することもあります。

痴漢事件では、逮捕直後の供述内容が、その後の勾留判断や処分に影響することも少なくありません。そのため、家族が直接本人に指示や助言をしようとするのではなく、弁護士を介して対応することが、結果的に本人を守ることにつながります。

家族が最初に行うべき対応

家族が痴漢の疑いで逮捕された場合、感情的になって動いてしまうと、かえって不利な状況を招くおそれがあります。重要なのは、逮捕直後の段階で、家族として適切な対応を冷静に進めることです。

できるだけ早く弁護士に相談する

まず優先すべきなのは、刑事事件、とくに痴漢事件の対応経験がある弁護士に相談することです。逮捕直後は、勾留されるかどうかが短時間で判断されるため、早期に弁護士が関与できるかどうかが結果に大きく影響します。

弁護士に相談することで、

・現在の身柄状況や今後の見通し
・家族として取るべき行動
・してはいけない対応

について、具体的な助言を受けることができます。

弁護士へ相談することの大きなメリットの一つが、今後の見通しを持つことができるという点です。そのためにも、できるだけ痴漢事件の刑事弁護に精通した弁護士に早めの相談を試みましょう。

身柄拘束を前提とした準備を進める

逮捕後、勾留が検討される段階では、本人が逃亡や証拠隠滅を行うおそれがないことを示す事情が重要になります。そのため、家族としては、以下のような点を整理しておくことが有用です。

・本人の住所や生活状況
・勤務先や通学先、日常の行動範囲
・家族による監督や支援が可能であること

これらの情報は、弁護士を通じて整理・提出することで、勾留を防ぐための資料として活用される場合があります。

勾留するかどうかの判断に際しては、日常生活の中で具体的に逃亡や証拠隠滅の可能性があるか、という点は非常に大きな要素です。特に、痴漢事件の罪証隠滅に関しては、その現実的可能性の有無が重要視されやすい傾向にあります。

示談が可能かどうかを早期に見極める

痴漢事件では、被害者との示談が成立するかどうかが、処分の見通しに大きく影響することがあります。ただし、示談交渉は、家族が直接行うべきものではありません。被害者への直接連絡は、トラブルや不利な証拠につながるおそれがあるため、示談の可否や進め方については、必ず弁護士を通じて判断・対応することが重要です。早い段階で示談の可能性を見極めることで、今後の方針を立てやすくなります。

痴漢事件で家族が注意すべき行動

家族が痴漢の疑いで逮捕された場合、善意から行った行動であっても、結果として本人に不利な影響を及ぼすことがあります。この項では、家族として特に注意すべき行動を整理します。

家族が取調べや供述に関与しないこと

逮捕後、本人は警察や検察による取調べを受けますが、その供述内容について家族が指示や助言を行うことは避ける必要があります。供述の内容や方針は、事件の状況や証拠関係を踏まえて慎重に判断されるべきものであり、家族が独自に関与すると、供述の信用性が問題となるおそれがあります。

取調べへの対応については、弁護士が本人と直接接見したうえで整理することが前提となります。家族としては、本人の供述に介入するのではなく、弁護士の活動を支える立場に徹することが重要です。

本人とご家族の間で証拠隠滅をしている可能性が疑われてしまうと、釈放されづらくなる、本人のお話が信用されづらくなるなど、多くの不利益が生じかねません。対応方針の検討は、必ず弁護士への相談の形で行いましょう。

家族が被害者や警察に直接連絡しないこと

痴漢事件では、早期解決を望むあまり、家族が被害者や警察に直接連絡を取ろうとするケースがあります。しかし、被害者への直接連絡は、示談交渉をかえって困難にしたり、誤解や新たなトラブルを生じさせたりするおそれがあります。

また、警察に対して家族が説明や要望を行っても、捜査の進行に影響を与えることは基本的にありません。必要な連絡や交渉がある場合には、必ず弁護士を通じて行うことが適切です。

職場・学校・周囲への連絡は慎重に行うこと

逮捕された事実を、職場や学校、周囲の人にどのように伝えるかについても慎重な判断が求められます。状況が十分に整理されていない段階で情報を共有すると、不正確な情報が広がり、本人の社会生活に長期的な影響を及ぼすおそれがあります。

やむを得ず連絡が必要な場合であっても、伝える内容や範囲、タイミングについては、弁護士に相談したうえで判断することが望ましいでしょう。家族としては、必要最小限の対応にとどめる姿勢が重要です。

痴漢事件で前科がつく可能性と家族への影響

家族が痴漢の疑いで逮捕された場合、「前科がついてしまうのか」という点は、多くの方が強い不安を感じる問題です。ただし、逮捕されたからといって、直ちに前科がつくわけではありません。前科がつくかどうかは、その後の刑事手続の結果によって決まります。

不起訴・起訴・略式手続の違い

刑事事件では、捜査の結果を踏まえて、検察官が起訴するか、不起訴とするかを判断します。
不起訴処分となった場合には、裁判は行われず、前科がつくことはありません

一方、起訴された場合には裁判が行われ、有罪判決が確定すると前科がつくことになります。無罪判決となった場合には前科はつきませんが、執行猶予が付いた場合であっても、有罪判決である以上、前科は残る点には注意が必要です。

また、痴漢事件では、正式な裁判を経ずに罰金刑を科す略式手続が選択されることもあります。この場合でも、罰金刑が確定すれば前科が残ることになります。

勾留や起訴による仕事・学校への影響

勾留されると、一定期間、身柄を拘束されるため、仕事や学校を休まざるを得なくなることがあります。その結果、欠勤や欠席が長期化し、職場や学校との関係に影響が生じることも考えられます。

また、起訴された場合には、裁判への出廷が必要となり、日常生活への影響が長期に及ぶ可能性があります。こうした影響をできる限り抑えるためには、早い段階で身柄解放や不起訴を目指す対応が重要になります。

家族が受ける心理的・社会的な影響

痴漢事件では、本人だけでなく、家族も精神的な負担を抱えることになります。周囲の目を気にしたり、将来への不安を感じたりするなど、家族の日常生活にも影響が及ぶケースは少なくありません。そのため、家族としては、事件の見通しや今後の流れを正しく理解したうえで、一人で抱え込まず、弁護士から具体的な説明を受けながら対応することが重要です。状況を整理することで、冷静な判断がしやすくなります。

痴漢事件において弁護士が行う主な対応

痴漢事件では、逮捕後の対応が早い段階から求められるため、弁護士がどの段階でどのような役割を果たすのかを理解しておくことが重要です。弁護士の対応は、単に裁判に備えるだけでなく、逮捕直後からの身柄対応や処分の見通しに直結する活動を含みます。

身柄拘束を防ぐための対応(勾留阻止・早期釈放)

逮捕後、検察官によって勾留請求が行われるかどうかが検討される段階では、身柄拘束を継続する必要がないことを示す活動が重要になります。弁護士は、本人の生活状況や家族の支援体制などを整理し、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを具体的に示す資料や意見を提出します。

また、すでに勾留が決定した場合であっても、勾留に対する不服申立てや、早期の釈放を目指した対応を行うことがあります。こうした身柄対応は、逮捕直後から継続的に検討されます。

痴漢事件は、早期釈放の可能性が高い場合もあり得る事件類型です。家族が逮捕された場合、まずは早期の釈放が実現できないか、弁護士に相談してみることが有益になりやすいです。

示談交渉による不起訴を目指す対応

痴漢事件では、被害者との示談が成立するかどうかが、不起訴となるか、起訴されるかの判断に影響することがあります。弁護士は、被害者の意向を慎重に確認しながら、適切な方法で示談交渉を進めます。

示談交渉では、単に金銭の支払いを行うだけでなく、被害者への謝罪の伝え方や、再発防止策の整理なども重要な要素となります。家族が直接関与するのではなく、弁護士が間に入ることで、不要なトラブルを避けながら交渉を進めることが可能になります。

痴漢事件では、逮捕されたとしても示談を行うことで不起訴に至る場合は多く見られます。具体的な示談交渉の進行方法については、弁護士の判断を仰ぐことをお勧めします。

否認事件や証拠が争点となる場合の対応

本人が痴漢の事実を否認している場合や、防犯カメラ映像などの証拠が争点となる場合には、事実関係や証拠の精査が重要になります。弁護士は、取調べの内容や証拠の収集方法に問題がないかを確認し、適切な防御方針を検討します。このようなケースでは、逮捕直後の供述内容がその後の判断に影響することもあるため、早い段階から弁護士が関与し、対応方針を整理することが重要になります。

痴漢で家族が逮捕された場合によくある質問

痴漢事件で家族が逮捕された場合、限られた情報の中で対応を迫られることが多く、共通した疑問を抱くケースが少なくありません。ここでは、家族からよく寄せられる質問について、一般的な考え方を整理します。

家族は差し入れをすることができますか

逮捕後の差し入れについては、自由に行えるとは限らず、一定の制限が設けられることがあります。差し入れが可能かどうかや、その範囲については、捜査の段階や事件の状況などにより扱いが異なる場合があります。

そのため、差し入れを検討する際には、状況を踏まえながら慎重に判断することが重要です。弁護士が関与している場合には、弁護士を通じて状況を把握することで、混乱を避けやすくなります

会社や学校にはいつ連絡すべきですか

逮捕された事実について、会社や学校へ連絡すべきかどうか、また、いつどのように伝えるべきかは、一概に判断できるものではありません。逮捕直後の段階では、今後の見通しが定まっていないことも多く、早い時点で詳細を伝えることで、かえって不利益が生じる可能性もあります。

やむを得ず連絡が必要な場合であっても、伝える内容や範囲は慎重に検討する必要があります。具体的な対応については、事件の状況に応じて判断することが望ましく、弁護士の助言を踏まえて対応することで、不要な影響を抑えやすくなります。

余罪がある場合はどうなりますか

取調べの過程で、今回の事件以外の行為についても捜査の対象となる、いわゆる余罪が問題となることがあります。余罪が疑われる場合には、捜査が長期化したり、手続が複雑になったりする可能性があります。

このような場合には、供述の進め方や今後の対応が重要になるため、早い段階で弁護士の助言を受けることが有用です。家族としては、状況を正確に把握し、弁護士の方針に沿って対応することが求められます。

まとめ

痴漢事件で家族が逮捕された場合、突然の出来事に直面し、冷静な判断が難しくなることも少なくありません。しかし、逮捕後の手続には一定の流れがあり、家族として取るべき対応や注意すべき行動も整理することができます。

特に、
・逮捕から勾留に至るまでの基本的な流れ
・家族が連絡や面会を行える範囲
・家族が関与すべきでない行動
・前科がつくかどうかの分岐点
といった点を正しく理解しておくことは、その後の対応を考えるうえで重要です。

痴漢事件は、逮捕後の初期段階での対応が、その後の身柄拘束や処分の見通しに影響することがあります。一方で、家族が善意で行った行動が、結果的に不利に働いてしまうおそれがある点にも注意が必要です。

そのため、家族としては、事実関係や手続の見通しを整理しながら、弁護士の助言を踏まえて冷静に対応することが、本人にとっても家族にとっても重要になります。状況を正しく理解することが、次の判断につながります。

家族が逮捕された場合でも、手続全体の流れを把握しておくことが重要です。痴漢で逮捕された場合の判断構造や全体像については、こちらの解説をご参照ください。

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