交通事故の損益相殺とは?対象になるものとならないものを徹底解説

「交通事故で保険金や給付金を受け取った場合、損益相殺で賠償金が減らされるって本当?」
「損益相殺の仕組みや対象になるものとならないものを詳しく知りたい」

そう思う方もいるのではないでしょうか。

交通事故の損害賠償請求では、被害者が受け取った保険金や給付金があると、損益相殺によって賠償額が調整されることがあり、その有無が最終的な補償金額に大きく影響します。

本記事では、交通事故における損益相殺の基本的な考え方から、対象となる金銭と対象外の金銭の違いなどを詳しく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

交通事故の損益相殺とは

交通事故の損益相殺とは,交通事故によって被害者が利益を得た場合に,その金額を加害者の被害者に対する賠償金額から差し引く制度をいいます。

例えば,交通事故被害者は,加害者の自賠責保険に保険金の請求が可能です。これを被害者請求といいますが,被害者は自賠責保険へ被害者請求をすることで,加害者の賠償とは別に自賠責保険から金銭を受領できます。
例えば,加害者の被害者に支払うべき金額が400万円であり,被害者が先に自賠責保険から上限額の120万円を受領していたとすると,被害者は,受領すべき400万円のうち120万円を既に受領していることになるため,重ねて加害者からも受け取るのは二重取りになってしまいます。
これを防ぐため,120万円を損益相殺し,加害者からは残りの280万円を受領することによって,必要十分な金額である400万円の賠償金が支払われる,ということになります。

交通事故の損益相殺の対象になるもの

損益相殺の対象となるのは,損害に対する補填の意味を持つ金銭給付です。
具体的な例としては,以下のようなものが挙げられます。

①自賠責保険金

被害者が加害者の自賠責保険から自賠責保険金を受領した場合,自賠責保険金相当額は損益相殺の対象になります。
また,加害者に自賠責保険がない場合に自賠責と同等の役割を果たす「政府保障事業」のてん補金も,同じく損益相殺の対象になります。

②人身傷害保険

被害者が,自身の自動車保険に付帯されている人身傷害保険を利用し,人身傷害保険金を受領した場合,その受領した金額は損益相殺の対象になります。

③国民年金・厚生年金の給付

国民年金や厚生年金では,被保険者が一定の障害を負ったときや死亡したときに,年金給付を支払う制度があります。
障害に対する給付は「障害基礎年金」又は「障害厚生年金」,死亡に対する給付は「遺族基礎年金」又は「遺族厚生年金」というものです。
これらの年金が生じた場合,その金額は損益相殺の対象になります。

④労災保険金

通勤中の事故など,労災保険が利用できる場合には,労災保険から療養給付,休業給付,障害給付といった保険金の給付が生じ得ます。これらの給付は,損益相殺の対象です。

⑤介護保険金

交通事故によって要介護認定の対象となった場合,介護保険法に基づいて介護保険金の給付を受けることが可能です。このようにして給付された介護保険金は,損益相殺の対象となります。
もっとも,将来給付されるであろう介護保険金については,その給付が確実でないため,損益相殺の対象にならないとの取り扱いが一般的です。

交通事故の損益相殺の対象にならないもの

損益相殺の対象とならないものは,損害賠償や損害の補填といった意味を持たない金銭給付です。具体的には,以下のようなものが挙げられます。

①生命保険金

生命保険金は,交通事故で被害者が死傷した場合に保険給付が行われます。
もっとも,生命保険はあくまで保険契約をして保険料を支払ったことへの対価であり,交通事故によって生じた損害を補填するための保険金ではないため,損益相殺の対象とはされません。

②搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険とは,自動車事故の際に車に搭乗していた運転者や同乗者がケガを負ったり死亡した場合に,一定の保険金が支払われるという内容の保険です。
搭乗者傷害保険は,事故車両に搭乗していたということを理由に支払われる定額の保険給付であって,損害がいくら発生したかに関係なく生じるものです。そのため,損害の補填をする意味を持たない金銭であり,損益相殺の対象になりません。

③労災保険の特別支給金

労災保険は,各種の給付について,特別支給金という制度を設けています。これは,労働災害を受けた人に対する支援の意味で支払われるものであって,損害を補填する趣旨の金銭ではないため,損益相殺の対象になりません

例えば,通勤中の交通事故で4日以上の休業をした場合,休業日数に応じた休業給付の受領が可能です。休業給付は,給付基礎日額(給料の日額)の6割が支払われます。そして,休業給付が発生する際,給付基礎日額の2割に該当する金額が休業特別支給金として別途支払われます。
この場合,6割の休業給付は損益相殺の対象となりますが,2割の特別支給金は損益相殺の対象外です。そのため,加害者には残りの4割分の請求ができる,という計算になります。

④その他

雇用保険法に基づく失業給付や,身体障害者福祉法に基づく給付なども,損益相殺の対象になりません。

ポイント
損益相殺の対象となるのは,損害に対する補填の意味を持った金銭
労災保険の場合,各種の給付は損益相殺の対象だが,特別支給金は対象外

交通事故の損益相殺で注意すべきポイント

交通事故において保険金や給付金の受領が賠償額へ与える影響は複雑です。ここからは、交通事故の損益相殺で注意すべきポイントを3つご紹介します。

保険会社による過大な減額に注意

交通事故の損益相殺において最も注意すべき点の一つは、保険会社が過大に減額を主張してくる可能性があることです。

保険会社は、被害者が既に受け取った保険金や公的給付の性質を十分に区別せず、賠償額から一律に差し引こうとする場合があります。

しかし、法律上は損益相殺が認められるかどうかは受け取った金銭の趣旨や目的によって判断され、必ずしも全額控除されるとは限りません。

たとえば、労災保険給付は労働者の保護を目的とするため、一定範囲では損益相殺の対象とされない場合があります。

被害者が正当な補償を確保するためには、保険会社の提示額をそのまま受け入れるのではなく、適用根拠を確認し、不当な減額に異議を申し立てることが必要です。

慰謝料は原則として損益相殺の対象外

交通事故で支払われる損害賠償の中でも、慰謝料は精神的苦痛に対する補償であり、原則として損益相殺の対象外とされています。

これは、慰謝料が生活費の補填や治療費の代替ではなく、心の損害を埋めるための金銭だからです。

しかし実務では、保険会社が慰謝料についても他の給付と合わせて減額を提案してくることがあり、被害者にとって不利益な状況が生じやすいといえます。

そのため、慰謝料の性質を正しく理解し、「精神的損害に対する補償は相殺されない」という原則を押さえておくことが重要です。

給付金の種類によって取り扱いが異なる

交通事故の損益相殺においては、受け取った給付金の種類によって扱いが大きく異なる点に注意が必要です。

たとえば、自賠責保険や加害者側の任意保険から支払われる治療費や休業損害補償は、同じ損害を補填する性質を持つため賠償額と重複する部分は差し引かれます。

一方で、労災保険給付や健康保険による療養給付などは、制度の目的が社会保障的性質に基づいているため、全額が損益相殺の対象になるわけではありません。

さらに、生命保険金や傷害保険のように、被害者本人が保険料を支払っていた契約に基づく給付については、原則として損益相殺の対象外とされるのが一般的です。

このように、給付金ごとの目的や性質を見極めなければ、不要な減額に応じてしまう危険があるため、注意が必要です。

交通事故の損益相殺は弁護士に相談すべきか

損益相殺が問題になる交通事故については,特にその金額が大きい場合,弁護士への相談が適切でしょう。それは,金額が大きいほど正確性の検討が望ましいためですが,具体的には以下のような問題が生じ得ます。

①費目拘束

損益相殺には,「費目拘束」というルールがあります。これは,給付を受けた金額が大きかったとしても,給付と異なる費目(損害項目)から損益相殺してはならない,というものです。
例えば,労災保険から療養給付を受領していた場合でも,その療養給付を慰謝料額を差し引くための損益相殺に用いてはならない,ということになります。

これが問題になるのは,主に双方に過失割合が存在する場合です。
例えば,被害者の過失が30%の事故で,治療費が100万円発生していたとすると,被害者が加害者に請求できる治療費は70万円にとどまります。もっとも,療養給付として100万円全額の治療費が支払われており,損益相殺が必要となります。
このとき,治療費の請求額は70万円しかないため,全額を損益相殺としても療養給付が30万円残り,控除しきれませんが,この残った30万円を慰謝料から損益相殺してはならないのです。

費目拘束の例としては,以下のようなものが挙げられます。

費目拘束の具体例

・自賠責保険金は物的損害から控除できない

・労災保険の休業給付や障害給付は,慰謝料から控除できない

・労災保険の遺族給付は,慰謝料から控除できない

・国民年金や厚生年金の遺族年金は,逸失利益からのみ控除できる

個別の事故で費目拘束がどのように生じるかは,弁護士による法的な判断が望ましいところであるため,弁護士への相談を行うようにしましょう。

②損益相殺の対象とする範囲

損益相殺については,その対象とすべきかどうかが必ずしも明確でない場合が少なくありません
例えば,介護保険については,既払いのものが損益相殺の対象となり,将来分は損益相殺の対象とならないことが多い,と解説しました。しかし,将来分が損益相殺の対象になるかどうかについては明確なルールが定められているわけではなく,実際に争われた裁判の傾向からそのように理解されている,というものです。つまり,もともとは損益相殺の対象範囲かどうかが強く争われていた,ということになります。

このように,損益相殺の対象とすべきかどうか必ずしも明確でない給付も存在するため,弁護士への相談がより確実であることは間違いありません。

交通事故の損益相殺に強い弁護士をお探しの方へ

損益相殺は,最終的に受領できる金額に影響するため,事前に十分な理解と確認が必要です。
もっとも,損益相殺が問題になるケースはそれほど多くないため,保険会社や弁護士に相談した,という方でも案内を受けたことのない場合が散見されます。
損益相殺に関しては,交通事故に強い弁護士へのご相談が適切でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【過失相殺完全ガイド】交通事故の過失相殺とは?過失割合は保険会社が決めるもの?どんな基準で決める?争うときの方法は?

●過失相殺ってどういうことですか?

●過失相殺・過失割合は誰が決めるの?

●過失割合・過失相殺の基準は?

●ぶつけられただけなのに過失相殺されるの?

●過失割合・過失相殺はどのように交渉すればいいの?

●過失割合・過失相殺が話し合いで解決しない場合はどうなる?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の過失割合・過失相殺でお困りの方に向けて,過失割合の意味や判断基準,解決方法などを解説します。

過失相殺とは

過失相殺とは,交通事故において双方に過失がある場合に,被害者に対する損害賠償額から被害者の過失割合に応じた金額を減額する処理をいいます。これは,交通事故における損害の公平分担のための制度です。

例えば,加害者80%被害者20%という過失割合の交通事故があった場合,事故に対して加害者が負う責任は80%の限度となるべきであるため,加害者に損害の全てを負担させるのはかえって不公平になってしまいます。そこで,被害者に対する賠償額から20%を差し引き,加害者の負担すべき80%分だけを賠償させることで,被害者と加害者との公平を保つというわけですね。

なお,過失相殺は,交通事故で発生した全ての損害を対象とします。
人身損害だけでも,治療費や通院交通費,慰謝料,休業損害等の損害項目が挙げられますが,その全てを公平に分担する必要があるため,全ての損害項目を対象に過失相殺を行うことになります。

ポイント
過失相殺は,双方の責任に応じた公平分担のための制度
過失相殺が生じる場合,全ての損害について過失相殺を行う

過失割合は誰がどのように決めるのか

①基本的な考え方

過失相殺は,当事者双方に過失がある場合に,その過失割合に応じて行うことになるため,前提となる過失割合を誰がどのように決めるのかが大きな問題になります。
例えば,事故の発生後,加害者の保険会社から過失割合の話をされ,自分に20%の過失があると言われた場合,これに従わなければならないのでしょうか。

結論的には,相手の主張する過失割合が適切な内容であれば,その過失割合に従って解決すべきです。そこで,適切な過失割合であるか,適切な過失割合をどのように判断するのか,ということが次の問題になります。

この点,過失割合は,過去の裁判例の積み重ねを基に類型化されているため,これに沿って計算された過失割合であれば適切であると考えられます。

例えば,横断歩道上の歩行者と四輪車との交通事故は,基本過失割合が歩行者0%とされています。

(別冊判例タイムズNo.38より引用。以下全て同じ)

一方,横断歩道のない直進道路を横断中の歩行者と四輪車との交通事故は,基本過失割合が歩行者20%とされています。

更に,横断歩道から概ね20~30メートル以内の場所を横断中の歩行者と四輪車との交通事故は,基本過失割合が歩行者30%とされています。

これらは,過去の先例を踏まえて類型化された適切な過失割合として裁判実務で採用されているものであり,実際の事故と同じ類型があれば,この基本過失割合を基準とするのが適切であるということになるでしょう。

②交渉を要する場合

もっとも,どの類型に当たるのか,その類型の中で修正要素に該当するものがないか,といった点は,当事者間で言い分に相違のある場合があります。
例えば,歩行者は横断歩道上と主張しているものの,車側が横断歩道から離れた場所を横断していたと主張する場合,基本過失割合は歩行者の主張では0%,車側の主張では30%となり得ます。また,横断歩道上の歩行者は基本的に過失が0%ですが,直前横断に該当すると修正要素として5~15%の過失が生じます。

このような場合は,まず,当事者間で解決内容が決められないか,交渉を行うことが必要になります。交渉の結果,一方が主張を撤回して譲歩することもありますし,双方が歩み寄って中間的な過失割合で解決することもあります。

③交渉で解決しない場合

過失割合の主張が激しく対立し,交渉での解決ができない場合は,訴訟での解決が必要になります。当事者間での話し合いが奏功しないため,裁判所に判断をしてもらう必要がある,というわけですね。

過失割合は,全ての損害額に影響を及ぼす根本的な争点であるため,この点の主張に開きがある場合には交渉での解決が難しくなりやすい傾向にあります。一般的には,10~20%ほどの開きであれば双方に歩み寄っての解決が十分に見込まれますが,50%を超えるなど被害者・加害者の立場が逆転してしまうほどの開きがあると,交渉で解決できる水準をすり合わせるのは非常に困難になりやすいでしょう。

ポイント 過失割合の決め方
事故類型ごとに過去の裁判例に沿った過失割合を用いるのが通常
言い分に争いがある場合は,まず交渉を行う
主張の開きが大きい場合は,訴訟を要することも

過失割合の判断基準

過失割合については,事故類型ごとに基本過失割合が定められていますが,事故類型の特定は以下の手順で行います。

①交通手段による区別

まずは,当事者双方の交通手段によって類型が分けられます。具体的には,歩行者,四輪車,単車,自転車といったものが挙げられます。

なお,四輪車か単車であるかは,当事者双方が四輪車又は単車である場合には区別しますが,もう一方の当事者が歩行者又は自転車である場合には区別しません。
例えば,対向車の右直事故である場合,過失割合は以下の通りです。

四輪車同士の場合 直進車:右折車=20:80 
単車直進,四輪車右折の場合 直進車:右折車=15:85
四輪車直進,単車右折の場合 直進車:右折車=30:70

このように,四輪車か単車かによって過失割合に差異が生じます。

一方,直進の自転車と右折の四輪車による右直事故は,基本過失割合が以下の通り15:85とされます。そして,これは右折車が四輪車でなく単車であっても同様です。

②進行方向による区別

次に,それぞれの進行方向を特定します。
具体的には,直進か右折か左折か,という区別と,対向車なのか右や左から来たのか,という区別を行うのが一般的です。

例えば,四輪車同士で直進車と右折車の事故を前提とすると,対向車であれば先ほど紹介した通り直進車:右折車=20:80となります。

これが,対向車でなく右や左から来た場合だと,以下のように過失割合が変動します。

右折車が左方車の場合 直進車:右折車=40:60
右折車が右方車の場合 直進車:右折車=30:70

③道路状況による区別

加えて,事故現場の道路状況による区別を行います。
具体的には,直進道路上か,十字路交差点上か,丁字路交差点かといった道路の形状と,信号の有無(ある場合は信号表示)一時停止規制や優先道路に該当するかといった道路の優先関係を基準に道路状況を区別します。

例えば,直進四輪車同士による信号のない十字路での出会い頭事故である場合,優先関係によって以下のような基本過失割合の差異が生じます。

優先関係がない場合 左方車:右方者=40:60
一方が広路の場合※ 広路車:狭路車=30:70
一時停止規制あり 規制あり:規制なし=20:80
優先関係あり 優先車:劣後車=10:90
(双方が同程度の速度である場合(各図左側の過失割合)を想定)

※広路が狭路の幅員の概ね1.5倍以上ある場合に広路・狭路の関係にあると評価されやすい

過失割合の交渉方法

過失割合の交渉は,両当事者が本件に該当すると考える基本過失割合及び過失の修正要素を判断することから始まります。双方が同じ事故類型だと理解していれば,主張する基本過失割合や修正要素は一致するはずであり,それ以上の交渉は必要になりません。

駐車場などの路外から道路に進入した右折車と直進車との基本過失割合は20:80となりますが,互いにその理解が共通していれば,基本過失割合の争いが生じることはありません。

しかし,事故態様の理解が食い違う場合,それが過失割合に関する主張の差異となって現れます。例えば,上記の例で基本過失割合は20:80となることに争いはないが,右折車が頭出しで待機していたと主張する場合,これは「頭を出して待機」に該当し10%の修正が生じる修正要素のため,右折車側の主張する過失割合は30:70となります。
このとき,直進車の主張(20:80)と右折車の主張(30:70)に差異が生じ,合意をするには交渉の必要が生じます。

具体的な交渉の方法は,双方の主張に根拠があるか,という基準で行うのが一般的です。上記の頭出し待機の主張であれば,具体的にどのような位置でどの程度の時間待機していたのか,その証拠となるドライブレコーダー映像などがあるか,という点が問題になりやすいでしょう。

このような流れで,双方が合意可能な過失割合を協議・検討し,交渉での合意を目指していくことになります。

ポイント 過失割合の交渉方法
①基本過失割合及び修正要素の特定
②双方の見解に差異がある場合,根拠の有無を基準に交渉し,合意を目指す

過失割合が交渉で解決しない場合の対応

過失割合の主張が両当事者の間であまりにかけ離れている場合,交渉では解決しない可能性が見込まれます。この場合は,相手の言い分に沿った金額で合意するのでない限り,訴訟を提起して裁判所の判断を仰ぐ必要が生じます。
過失割合の争いは,個別の損害項目全てに影響する根本的な争いになるため,これが合意できないとなると訴訟での解決を要する可能性が非常に高くなります。特に,双方が自分を被害者側と認識しているなど,被害者・加害者の別が逆転しているケースでは,交渉での合意は現実的に難しいことが多いでしょう。

なお,交渉での合意が困難な場合としては,以下のようなケースが挙げられます。

ここでは,進路変更後に後続車から追突された,という例で見てみましょう。

①事故態様の理解が食い違っている場合
事故態様そのものの理解が食い違っている場合,それを踏まえた過失割合の理解も食い違うことになります。
今回の例では,一方は追突事故と主張するが,もう一方は側面同士が接触した事故だと主張する場合が挙げられます。

②事故態様の評価が食い違っている場合
事実関係は同じ理解をしているものの,その評価の仕方(類型へのあてはめ方)について主張が食い違う場合もあります。
今回の例では,一方は追突事故と主張し,もう一方は進路変更車と後続車との事故と主張するケースがあり得るところです。追突事故では追突された側の過失はゼロですが,進路変更車と後続車との事故であれば追突された側が70%の過失になります。

過失割合の差異

追突事故の場合  0:100
進路変更車の場合 70:30

③少なくとも一方が根拠に基づかない主張をする場合
一方が根拠に基づかない主張をしていると,それが修正されない限り合理的な過失割合での合意は困難になります。この場合は,弁護士や保険会社などが間に入って主張を修正してくれるのでなければ,訴訟で裁判所に正してもらう必要が生じるでしょう。

交通事故の過失割合・過失相殺に強い弁護士をお探しの方へ

過失割合は,判断の基準に明確なルールが定められており,ルールに沿った請求を行うことが必要です。
逆に,相手保険会社の主張がルールに沿ったものでない場合,きちんと反論しなければ,不当な過失割合で解決してしまうことにもなりかねません。
過失割合・過失相殺について疑問がある場合は,交通事故に強い弁護士へのご相談が適切でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

交通事故の付添介護費とは?種類別の金額目安や認められるケースなどを徹底解説

「交通事故で入院中に家族が付き添った場合、その費用って補償してもらえるの?」と思う方もいるのではないでしょうか。

付添看護費は、事故による怪我や症状の程度によって必要性が認められる場合に、相手方や保険会社から賠償の対象として請求できる費用です。

事前に知識を持っておくことで請求の機会を逃さず、適切な補償を受けやすくなります。

そこで本記事では、付添看護費の種類や金額、認められるケースなどを詳しく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

付添看護費とは

交通事故における付添看護費とは,交通事故被害者が治療を受けている間,主に入通院に際して他者の付添が必要となる場合に,その付添のために発生する費用です。

付添看護費が認められるかどうかは、被害者の年齢やけがの程度、治療内容などによって判断されます。

また、付添人が職業的な看護師であるか家族であるかによって、認められる金額や計算方法に違いが生じるのも特徴です。

付添看護費の種類と金額

付添看護費は大きく分けて以下3つに分けられます。

  • 入院付添費
  • 通院付添費
  • 自宅付添費

それぞれの状況に応じて金額の目安や認められる条件が異なるため、ここからは金額の目安についても詳しく解説します。

入院付添費

入院付添費は、交通事故で被害者が入院する際に、家族や職業看護人が付き添う場合に発生する費用です。

入院中は食事、排せつ、移動などの基本的な生活動作が制限されることがあり、そのサポートが必要とされるため付添看護費が認められやすい傾向にあります。

家族が付き添った場合は、職業看護人を雇用した場合に準じた額が日額で算定されることが多いです。

自賠責基準では,1日につき4,200円と定められています。

裁判基準では,近親者が付き添いをした場合に,1日につき6,500円が認められるのが基本的な運用です。

通院付添費

通院付添費は、被害者が自力で病院に行くことが難しい場合に認められる費用です。

たとえば、子供や高齢者が治療のために通院する際に、家族が送り迎えや院内でのサポートを行う場合が該当します。

この場合も、必要性の有無が判断の基準です。通院の度に付添が必要であったことを示すためには、通院記録や診断書、医師のコメントが重要な証拠となります。

自賠責基準では,近親者の付添1日につき2,100円と定められています。

裁判基準では,症状や年齢を踏まえて近親者の付添を要する場合,1日につき3,300円を原則として認められます。

自宅付添費

自宅付添費は、退院後に在宅療養を行う場合や、事故の影響で自宅での生活に介助が必要なケースで認められる費用です。

たとえば、骨折で日常生活に制限が残っている場合や、歩行・排せつ・入浴に介助が必要な場合に該当します。

しかし、入院や通院時の付き添いと異なり、自宅での介護的なサポートは必要性の立証が難しいのが現状です。

裁判例においても、自宅付添費が認められるのは被害者が高齢であったり、障害が重度であったりと、付添が不可欠と判断できる場合に限られる傾向があります。

自賠責基準の場合,自宅の看護と通院看護が同様に扱われるため,通院付添費と同じく近親者の付添1日につき2,100円と定められています。

裁判基準の場合,具体的な金額はケースによりますが,自宅における近親者の付添は概ね1日につき8,000円ほどを上限額の目安に認める運用が多く見られます。

付添看護費が認められる場合

付添看護費は誰でも請求できるわけではなく、一定の条件を満たす場合にのみ認められます。

主に認められるケースは、以下のとおりです。

  • 被害者が12才以下の子供の場合
  • 被害者が高齢者の場合

詳しく解説します。

被害者が12才以下の子供の場合

小さな子供は自分で身の回りの世話を十分に行えないため、入院や通院に際しては保護者などの付き添いが必要です。

そのため、交通事故で12歳以下の子供が入院する場合、ほとんどのケースで付添看護費が認められます。

とくに乳幼児や小学校低学年の子供では、食事や排せつ、医療処置において親のサポートが欠かせないため、家族が付き添ったこと自体が合理的と判断されやすいのです。

金額としては、入院時には日額6,500円〜8,000円程度、通院時には1回あたり2,000円〜3,000円程度が目安とされます。

ただし、付き添いが常に必要とは限らず、子供の年齢や怪我の程度に応じて判断されます。

被害者が高齢者の場合

高齢者の場合も、付添看護費が認められる可能性が高いとされています。

加齢に伴い身体機能が低下していることが多く、事故による怪我の治療過程で日常生活動作に支障が出やすいためです。

とくに、歩行や排せつ、入浴などに介助が必要とされる場合や、認知症などで意思疎通に困難がある場合には、家族や看護人の付き添いが不可欠と判断されます。

入院時には日額6,500円〜8,000円、自宅療養であれば4,000円〜6,000円程度が目安とされます。

ただし、医師から「付添が必要」との指示がなければ認められない場合も多く、診断書や医師のコメントを用意することが重要です。

交通事故の付き添いに関するよくある質問

付添看護費の請求に関しては、実務上さまざまな疑問が生じることがあります。

ここからは、交通事故の付き添いに関するよくある質問の回答をいたします。

家族全員で付き添った場合でも付添看護費は請求できますか?

基本的に、付添看護費として認められるのは一人分の費用です。家族が複数人で交代して付き添った場合でも、その合計が複数人分として認められることはありません。

たとえば、父母が交代で子供に付き添った場合には、あくまで1人分の日額として算定されます。

ただし、病状が非常に重く、複数人の付き添いが不可欠と判断される特殊なケースでは例外的に複数人分が認められる可能性もありますが、これは稀です。

入院している病院まで親が行く場合は行くまでの交通費は請求できますか?

病院までの交通費は、基本的には「付添看護費」とは別の費用として扱われます。

ただし、被害者の容体や家族の状況を踏まえ、面会が妥当と判断される場合には、駆けつけにかかった費用が補償対象となる可能性があります。

とくに、被害者が危険な状態にあるときや、家族の付き添いや声かけが回復に寄与したと考えられるときには、お見舞いの必要性が認められやすくなるでしょう。

子供の付添看護料は12歳以上でも付添費が認められることはありますか?

原則として、12歳以下の子供には付添看護費が認められやすいですが、12歳を超えていてもケースによっては請求が可能です。

たとえば、中学生であっても事故による怪我が重く、食事や排せつに介助が必要な場合や、精神的に不安が強く付き添いが不可欠と判断される場合には付添看護費が認められることがあります。

交通事故の看護費・介護費に強い弁護士をお探しの方へ

付添看護費や将来介護費は,問題になるケースが割合的に少ないため,漫然と請求をしても支払いを拒まれる場合が少なくありません。
看護費・介護費の請求は,費用が支払われるべきであること,その金額は請求する金額であるべきことなどを,個別の事件に応じて丁寧に指摘し,交渉を行っていく必要があります。
もっとも,現実に介護の対応をされながらご自身で行うことは非常に困難なものであるため,請求をご希望の場合には弁護士へのご相談をお勧めいたします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

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交通事故で逸失利益が請求できる場合とは?その計算方法は?弁護士に依頼するとなぜ増額する?弁護士がすべて解説

●逸失利益の意味を知りたい

●逸失利益はどんなときに請求できるか

●逸失利益の計算方法が知りたい

●弁護士が逸失利益を増額させる仕組みが知りたい

●逸失利益については弁護士に依頼すべきか知りたい

といった悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の逸失利益についてお困りの方に向けて,逸失利益とは何か逸失利益はいくら請求できるか逸失利益の対応は弁護士に依頼するべきかなどを解説します。

逸失利益の意味

逸失利益とは,交通事故がなければ得られたはずの収入が得られなくなった分の損害をいいます。
例えば,交通事故前には500万円の年収があった場合,交通事故によって全く仕事ができない状態になってしまうと,事故後の年収はゼロですが,このケースは年間500万円の逸失利益が発生することになります。
また,同じく年収500万円の人が14級の後遺障害等級認定を受けた場合,その後の年収は5%減少するとみなされるのが交通事故の運用となっています。そのため,14級の後遺障害になったケースでは年間25万円の逸失利益が発生することになります。

逸失利益が請求できる場合

逸失利益が発生するのは,大きく分けて後遺障害が残った場合と死亡事故の場合の二通りです。
これらの場合には,交通事故がなければ得られたはずの収入が事故によって得られなくなるため,逸失利益が発生することになります。

ポイント
逸失利益は,交通事故が原因で得られなくなった収入
逸失利益が請求できるのは,後遺障害が残った場合と死亡事故の場合

後遺障害逸失利益の計算方法

逸失利益は,収入のうちどの程度の割合が,どの程度の期間失われるか,という計算方法で算出されます。
簡略化すると,「収入の減額分」×「減額期間」となるところです。
例えば,年間100万円の減額が30年続くのであれば,100万円×30=3000万円という具合ですね。

もっとも,将来の減額分も一括で支払われることに配慮する必要があるため,具体的な金額は以下の計算式で計算されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

以下,各項目の内容について解説します。

①基礎収入

逸失利益により減額してしまう前の収入額を指します。計算の基礎となる収入というべきものです。
通常,基礎収入には事故前年の収入を採用します。事故前年と同程度の収入が将来に渡って得られた可能性が高いとみなし,逸失利益を計算するというわけですね。

事故前年の収入を確認するための資料は,給与所得者の場合は勤務先の源泉徴収票,事業所得者の場合は確定申告書や所得証明書が挙げられます。その他,事故直前から仕事を開始した場合などは,事故直前の収入額をもとに年収を概算する方法を取ることもあります。

②労働能力喪失率

後遺障害によって労働能力が低下した割合を指します。労働能力が低下した割合に応じて,収入額も減少するとみなし,逸失利益を計算します。

労働能力喪失率は後遺障害等級によって決まりますが,具体的な喪失率は以下の通りです。

1級100%
2級100%
3級100%
4級92%
5級79%
6級67%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
11級20%
12級14%
13級9%
14級5%

例えば,1級は労働能力喪失率が100%となるため,基礎収入額の100%,つまり全額が収入額の減少とみなされます。また,14級は労働能力喪失率が5%のため,基礎収入額の5%が収入額の減少とみなされることになります。

このように,「基礎収入」×「労働能力喪失率」によって後遺障害による年収の減額分を計算することができます。

③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

労働能力喪失期間 

労働能力喪失期間とは,労働能力の低下が生じる期間を指します。逸失利益の計算では,私たちが労働能力を有するのは67歳までとみなされるのが一般的であるため,労働能力喪失期間は,原則として以下の期間となります。

労働能力喪失期間
=67歳-症状固定時の年齢

症状固定時に30歳であれば37年,50歳であれば17年ということになります。

もっとも,症状固定時に67歳の間近であったり,67歳以上であったりすると,上記の計算式では適切な期間を割り出すことができません。そのため,「67歳-症状固定時の年齢」と平均余命の半分を比較し,後者の方が長い場合には後者を労働能力喪失期間とします。
そのため,厳密な計算式は以下の通りとなります。

労働能力喪失期間
=「67歳-症状固定時の年齢」か「平均余命の半分」のいずれか長い方

ライプニッツ係数

「年収の減少分」と「労働能力喪失期間(年数)」が分かれば,これらをかけ合わせれば逸失利益が計算できるように思えます。
例えば,年収500万円,労働能力の喪失10%,喪失期間5年であれば,以下の計算で逸失利益が出せそうです。

500万円×10%×5年
=50万円×5年
=250万円

これは,毎年50万円ずつ,5回に分けて受領するのであれば,適正額である可能性が高いでしょう。
しかし,症状固定後に一括で250万円を受領するとなると,利息の分だけもらい過ぎているという問題が生じます。

法律上,金銭は利息を生むものと理解されています。本稿執筆時の法定利率は年3%であるため,100万円は1年後に利息3%を含む103万円の価値になっている,というのが法律の理解です。
そのため,将来受け取るはずだったものを今受け取る場合,受け取った時点から本来受け取るはずだった時点までの利息の分だけ,早く受け取った方が得をしているという考え方になるのです。

そのため,一括で支払う場合,この期間の利息(中間利息)を差し引いた金額を支払うのが適切ということになりますが,この中間利息を差し引くために用いられる数字が「ライプニッツ係数」です。

ライプニッツ係数は,利息と年数によって定められますが,年利3%を前提とした5年のライプニッツ係数は「4.5797」です。これは,年利3%の場合に5年分を一括受領するのであれば,4.5797年分を受領すると5年後にちょうど5年分の金額になっている,という意味になります。
したがって,年収500万円,労働能力の喪失10%,喪失期間5年であれば,中間利息を考慮した逸失利益の金額は以下の通りになります。

500万円×10%×5年ライプニッツ
=50万円×4.5797
=2,289,850円

まとめ

逸失利益は,「収入の減額分」×「減額期間」で計算される
収入の減額は,「基礎収入」×「労働能力喪失率」
減額期間は「労働能力喪失期間」
一括でお金を受け取ると利息の分だけ得をしてしまうため,利息分を差し引いて計算するための数値が「ライプニッツ係数」

死亡逸失利益の計算方法

①基本的な計算方法

死亡逸失利益の場合も,基本的な考え方は後遺障害逸失利益と同じです。
つまり,ベースになるのは以下の計算式です。

逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

しかし,死亡の場合にはこの計算式をそのまま採用することはできません。それは,死亡事故だと死亡後には生活費が発生せずに済んでいるためです。
交通事故による損害額を計算する場合,交通事故によって得られた利益があれば,これは差し引かなければなりません。死亡逸失利益は,死亡後に得られなくなってしまった収入を指すものですが,死亡後は同時に生活費の負担がなくなるので,その生活費の分は交通事故による利益として差し引かなければならないのです。

具体的な死亡逸失利益の計算においては,「生活費控除」という形で行われます。生活費控除は,基礎収入のうち一定の割合は生活費として費消されていたはずであるとみなし,基礎収入から一定額を割り引く方法で計算されます。

例えば,独身男性の場合だと生活費控除率は50%とされます。基礎収入の50%は生活費で消えていたはずであるから,逸失利益としては支払わない,という考え方になるのですね。
したがって,40歳で年収500万円の独身男性が死亡した場合の死亡逸失利益は,以下の通り算出されます。

死亡逸失利益(40歳年収500万円の独身男性)
=500万円×50%×(労働能力喪失率=100%)×27年ライプニッツ※

※67-40=27年のため

なお,主な生活費控除率は以下の通りです。

①一家の支柱 被扶養者1人:40%
②一家の支柱 被扶養者2人以上:30%
③女性(主婦・独身・幼児等):30%
④男性(独身・幼児等):50%

ポイント

死亡逸失利益の計算では,死亡後に生活費が発生しなくなった点を考慮する必要がある
生活費が発生しなかった分を逸失利益から差し引くため,「生活費控除」がなされる

②基礎収入における特徴

死亡逸失利益の基礎収入における特徴に,年金収入も基礎収入の対象となることが挙げられます。
死亡すると年金の受給は終了してしまうため,死亡事故の場合は年金も「事故がなければ得られたはずの収入」に該当するのです。

後遺障害の場合は,年金が支払われ続けるため,このような問題は生じません。死亡事故に特有の問題ということができるでしょう。
また,年金収入者はほかの収入がない状況である場合が多いため,年金収入者の逸失利益は,基本的に死亡事故の場合にのみ発生すると考えられます。

③労働能力喪失率における特徴

死亡事故の場合,死亡後に労働できる可能性がないため,労働能力喪失率は必ず100%になります。そのため,死亡事故で労働能力喪失率,労働能力喪失期間という発想を取ることはありません。

以上を踏まえ,死亡事故の逸失利益は,死亡しなければ就労できたはずの期間について,得られたはずの収入から生活費を除いた金額を計算する,ということになります。これを計算式にすると以下の通りです。

死亡逸失利益
=「基礎収入」×(1-生活費控除率)×「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」

なお,就労可能年数は,後遺障害における労働能力喪失期間と基本的に同内容です。

また,年金収入の場合は,その終期は生涯を遂げた時期となるため,平均余命まで健在であったとみなし,以下の通り計算します。

死亡逸失利益(年金)
=「基礎収入=年金収入額」×(1-生活費控除率)×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

ポイント
死亡事故の基礎収入には年金収入が含まれる
死亡逸失利益の計算式は,「基礎収入」×(1-生活費控除率)×「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」
年金収入の場合は「年金収入額」×(1-生活費控除率)×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

弁護士への依頼で逸失利益が増加する仕組み

弁護士に逸失利益の交渉を依頼すると金額が増加することには,いくつかの理由があります。

①自賠責基準と裁判基準の差額

交通事故の損害賠償には,自賠責基準と裁判基準があります。
保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に被害者へ賠償額を提示し,弁護士が入ると裁判基準を念頭においた金額計算に切り替える運用をしています。

ここでは,以下の具体的な例に沿って見てみましょう。

【例】
年収500万円,50歳,後遺障害10級の場合

【自賠責基準の逸失利益】

自賠責保険の場合,慰謝料と逸失利益を合計した金額の上限が等級ごとに定められており,計算結果が上限を超える場合,上限額の支払となります。
慰謝料と逸失利益の合計は,基本的に上限額を超過するため,上限額が支払われるものと理解して問題ないでしょう。

この点,後遺障害10級の上限額は461万円,うち慰謝料は190万円となっております。そのため,自賠責保険から支払われる逸失利益は以下の通りです。

自賠責保険の逸失利益(年収500万円,50歳,後遺障害10級)
=10級の上限額-10級の自賠責慰謝料
=461万円-190万円
271万円

任意保険会社の立場としては,自賠責保険から出る金額のみを支払って解決できるのであれば,自社の負担がなくなるため,この金額での解決が最も有益ということになります。
そのため,任意保険会社が自社に最も有利な提案を行う場合,逸失利益を271万円として提示する可能性が想定されます

【裁判基準の逸失利益】

裁判基準の逸失利益は,以下の計算式で算出されます。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

この点,基礎収入は年収額の500万円,労働能力喪失率は10級の場合27%,労働能力喪失期間は50歳から67歳までの17年であり,17年のライプニッツ係数は13.1661となります(年利3%を前提とした場合)。

そのため,裁判基準の逸失利益を単純計算すると,以下の通りになります。

後遺障害逸失利益(年収500万円,50歳,後遺障害10級)
=500万円×0.27×13.1661
17,774,235円

この金額は,実に自賠責基準の6.5倍以上です。
あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

②労働能力喪失期間に関する保険会社の取り扱い

後遺障害の逸失利益に関しては,労働能力喪失期間が問題になるケースが多数見られます。
例えば,最も件数の多い14級9号の場合,労働能力喪失期間は概ね5年以内とされるのが一般的ですが,現実の解決に際して5年とするのかより短い期間とするのか,という点が争点になりやすい状況にあります。

この点,保険会社は,弁護士のいない場合,逸失利益を2~3年として金額提示することが非常に多く見られます。逸失利益を5年以内とする,といった運用を把握していない当事者の方だと,2~3年の提示が妥当であるかも判断は難しく,言われるまま合意することもあり得るでしょう。

しかしながら,喪失期間5年とした場合の逸失利益は,喪失期間2年の場合の約2.4倍になります。そのため,保険会社の提示通りに合意すると,逸失利益が2倍以上になる可能性を手放す結果になりかねないのです。

この場合,弁護士に依頼し,弁護士を通じて喪失期間5年とすることを念頭にした示談交渉を行うことで,逸失利益は大きく増加する可能性が生じることになります。

ポイント 弁護士への依頼で逸失利益が増える理由
自賠責基準と裁判基準の差額
労働能力喪失期間に関する交渉

逸失利益は弁護士に依頼すべきか

逸失利益の問題は,基本的に弁護士への依頼が適切でしょう。
逸失利益が発生しているということは,死亡又は後遺障害が存在するほどの重大事故であり,損害の規模が非常に大きいため,弁護士に依頼することによる増額の余地も大きい場合がほとんどです。

もっとも,いわゆる費用倒れのリスクが気になることも少なくないと思います。この場合,逸失利益について既に金額提示をお受けになっているのであれば,その内容をお示しいただきながら弁護士にご相談されるのが有力でしょう。
保険会社の提示内容を踏まえて弁護士にご相談いただければ,具体的な増額の可能性や弁護士費用との兼ね合いも含めて弁護士からのご案内が可能です。

交通事故の逸失利益に強い弁護士をお探しの方へ

逸失利益は,後遺障害に関する損害の中でも,金額・位置付けともに最大の問題になる項目です。
また,その金額は,就労や収入に関する個別の事情が反映されやすいため,交渉は専門家を通じて適切な方法で行うべきでしょう。
逸失利益が生じるほど重大な損害が発生している事件であれば,一度は弁護士にご相談されることをお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

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後遺障害慰謝料の計算方法|算出基準や弁護士依頼のメリットまで解説

後遺障害慰謝料は、交通事故で後遺症が残った精神的苦痛に対する賠償金です。

金額は、後遺障害等級ごとに定められた基準に基づいて計算され、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの算出方法によって大きく変わります。

あらかじめ計算方法を理解しておくことで、不当に低い金額での示談を避け、正当な賠償を受けやすくなるでしょう。

そこで本記事では、後遺障害慰謝料の計算方法や算出基準、弁護士依頼のメリットなどを詳しく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

後遺障害慰謝料の計算方法

後遺障害慰謝料は,後遺障害等級ごとにその金額が定められています。
後遺障害慰謝料の計算基準には,大きく分けて自賠責基準と裁判基準があり,自賠責基準よりも裁判基準の方が高い金額が定められています。等級ごとの具体的な金額は以下の通りです。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

後遺障害慰謝料の算出基準

後遺障害慰謝料は基準によって金額が大きく変わります。主な算出基準は、以下の通りです。

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準(裁判所基準)

詳しく解説します。

自賠責基準

自賠責基準は、自動車損害賠償保障法に基づく公的な最低補償ラインで、後遺障害等級ごとに定められた定額表を用いて算定されます。

被害者がまず受けられる金額としての役割があり、迅速な支払いや最低限の補償を目的とするため、他の基準に比べて最も低く抑えられることが普通です。

また、認定や請求には所定の手続きや書類(後遺障害診断書や画像等の提出)が必要で、等級認定が得られなければ支給されない点にも注意が必要です。

任意保険基準

任意保険基準は各保険会社が内部で定める基準で、自賠責基準より高い水準を想定するものの、弁護士基準には及ばないことが多いです。

示談交渉の段階では保険会社側がこの基準を基に提示額を決めるため、被害者が専門家を介さず交渉すると任意保険基準での妥結に留まるケースが多く見られます。

また、各社の社内運用や担当者の裁量によって算定額が変わるため、具体的な金額は一律ではありません。

弁護士基準(裁判所基準)

弁護士基準は、裁判例や損害賠償算定の実務基準に基づき算出される水準で、三つの基準の中で最も高額になることが一般的です。

実際の裁判で認められた判例や、弁護士が交渉で用いる判例表を参考に等級や症状の程度を詳細に評価し、被害者の実損や精神的苦痛を広く反映させます。

結果として、弁護士に依頼して弁護士基準で交渉することが、金額面で有利になるケースが多いです。

後遺障害等級の認定を得るためのポイント

後遺障害等級の認定は慰謝料額を左右する重要な要素です。後遺障害等級の認定を得るためには、主に以下4つのことが必要です。

  • 後遺症の症状を客観的に記録・保存する
  • 適切な医師に診断書を作成してもらう
  • 画像検査や検査結果などの医学的証拠を揃える
  • 後遺症が自賠責の等級基準に当てはまる

詳しく解説します。

後遺症の症状を客観的に記録・保存する

後遺症の主張を裏付けるためには、症状の発生時刻や頻度、日常生活での具体的な制限などを継続的に記録することが重要です。

診察時には症状の詳細を口頭だけで済ませず、メモやスマホ動画、写真、痛みの程度を示すスケール(VASなど)を用いて客観的に残すと説得力が増します。

さらに、通院履歴や処方履歴、リハビリの記録など医療機関の記録と照合できる形で保存しておくと、自賠責や審査機関への提出書類としても有効です。

適切な医師に診断書を作成してもらう

後遺障害認定に用いる診断書は形式や記載内容が認定結果に直結するため、後遺障害の実態を正確に把握している専門医に作成してもらうことが望ましいです。

可能であれば事故直後から同じ医師に継続して診てもらい、症状の推移や治療結果を一貫して記載してもらうと診断書の信頼性が高まります。

また、診断書には主観的訴えだけでなく具体的な所見、検査数値、日常生活の制限などを詳細に記載してもらうよう依頼することが重要です。

画像検査や検査結果などの医学的証拠を揃える​​

MRI、CT、X線、神経伝導検査、筋電図、血液検査など、症状に応じた客観的検査を適宜実施し、その結果を保存しておくことが後遺障害認定の要です。

特に器質的変化が認められる場合は画像所見が強い証拠となり、神経・筋の障害では機能検査の数値が評価に直結します。

検査は事故前後の比較や専門医による報告書があるとより有利で、検査結果の報告書や画像データそのものを提出できるようにしておきましょう。

後遺症が自賠責の等級基準に当てはまる

自賠責による等級認定は具体的な基準表(症状の種類と程度)に照らして判断されるため、自分の後遺症がどの等級に該当しうるかをあらかじめ把握しておくことが重要です。

単に「痛みが残った」だけでは等級に該当しないことがあり、機能障害や可動域制限、感覚障害の程度を客観的に示すデータが必要です。

等級表の要件に合わせて診断書や検査結果を整えることで、認定可能性を高められます。

後遺障害の損害について弁護士に依頼すべき場合

後遺障害等級が認定された場合には,そうでない場合に比べて損害額が大きく増加するため,基本的に弁護士への相談が適切でしょう。中でも,特に弁護士委任が有力になりやすい場合としては,以下のようなケースが挙げられます。

①後遺障害等級がより上位の場合

後遺障害等級が上位であるほど,その損害額も大きくなります。損害額の大きさは,弁護士に依頼した場合の増額幅の大きさに直結するため,後遺障害等級が上位であるほど弁護士への依頼が有力になりやすいでしょう。

②過失がない又は小さい場合

過失がないか,あったとしても10%程度など小さい場合には,弁護士への依頼によって増額した分が過失相殺によって差し引かれないため,弁護士依頼の利益が大きくなりやすいところです。そのため,過失が小さければ小さいほど弁護士への依頼が有力になるでしょう。

③弁護士費用特約が利用できる場合

弁護士費用特約が利用できれば,弁護士への依頼に必要な費用の負担が大きく軽減されます。法律事務所によっては弁護士費用の負担がゼロになることも珍しくないため,そのような弁護士への依頼ができれば,費用倒れのリスクなく弁護士に依頼ができるでしょう。

交通事故の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ

後遺障害の損害は,金額が非常に大きくなりやすいため,適切な対応ができた場合とできなかった場合の金額面への影響もまた大きくなる傾向にあります。
加えて,他の損害項目にはない独自の争点もあり,解決を図るためには後遺障害に強い弁護士へのご相談をお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

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交通事故の休業損害はいくらもらえる?正しい計算方法を知りたい,問題点や対処法を知りたい人に弁護士が分かりやすく解説

●交通事故が原因で休業した場合の損害は補償されるか?

●休業損害の金額や計算方法が知りたい

●休業損害の請求方法が知りたい

●会社員と自営業ではどう違うか?

●休業損害を支払わないと言われたらどうすればいいか?

●主婦の場合,休業損害はどうなるのか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の休業損害についてお困りの方に向けて,休業損害の内容・金額・請求方法休業損害で争いが生じた場合の解決方法などを解説します。

交通事故の休業損害とは

休業損害とは,交通事故によって被害者が仕事を休業せざるを得なくなってしまった場合に,その期間中に得られるはずだった収入の補償をいいます。休業損害は,被害者の生活を維持するために重要な補償であり,治療期間中の生活にも直接の影響を及ぼすものであるため,早期に適切な請求を行う必要のある項目です。

休業損害の計算方法

休業損害は,「(収入の日額)×(休業日数)」で計算されます。具体的な計算方法は被害者の立場によって異なります。具体的には以下の通りです。

①会社員(給与所得者)の場合

【日額】
事故前3か月分の給与を90で割る方法で算出するのが原則です。
交通事故の時点で3か月以上の就業継続がない場合は,上記の方法で計算ができないため,別途収入額の根拠を用いて計算します。具体的には,雇用契約書や事故直前の賃金台帳,給与明細などを用いて,事故当時の給与額を特定することがあります。

【日数】
現実に休業した日数が対象日数となります。有給休暇であっても,有給の日数が減少してしまっている限り,対象となります。
もっとも,休業したにもかかわらず収入減少がない場合,その日については損害が生じていないことになるため,休業損害の対象日数には含まれません。

②自営業(事業所得者)の場合

【日額】
事故前年分の確定申告書における申告所得を基準に,365で割る方法で日額を算出するのが原則です。
開業後間もない場合など,事故前年分の確定申告書が存在しない場合には,事故直前の収入額に関する根拠資料を用いて個別に計算します。各種契約書,入出金が分かる帳簿や預金通帳の履歴など,収入減少を相手保険が理解できるよう,可能な限り詳細に説明することが適切です。

【日数】
実際に休業を要した日数が対象日数となります。
もっとも,休業した日数を客観的に証明できる人や方法があまり存在しないため,一定の期間における実通院日数を休業日数とみなす方法を用いることが多く見られます
また,実通院日数以上に休業したとの主張をしたい場合は,その根拠を具体的に示すことが必要になります。

③主婦(家事従事者)の場合

【日額】
女性の平均年収を基準に,365で割る方法にて日額を算出するのが原則です。
平均年収は,いわゆる賃金センサス(「賃金構造基本統計調査」の結果)を基に計算するのが一般的です。

【日数】
休業日数の特定や立証ができないため,一定の日数を事故による休業日数とみなす方法で計算するのが通常です。一例としては以下のような方法があります。

①一定期間の実通院日数を休業日数とみなす方法

②休業の程度を段階的に低減させる計算方法
例:事故後1か月は50%の休業,翌月は30%の休業など

ポイント
休業損害の計算は「日額×日数」
計算方法は,会社員・自営業者・主婦それぞれの立場で異なる

自賠責基準の金額計算における特徴

自賠責基準は,独自の計算方法が明確に決まっています。場合によっては,自賠責基準の休業損害額を踏まえて金額交渉することもあるため,計算方法の特徴は押さえておくのが適切でしょう。
立場ごとの計算方法は以下の通りです。

①会社員(給与所得者)の場合

休業損害証明書を用いて,以下の通り計算します。

【日額】(事故前3か月分の給与額合計)÷90
【日数】休業損害証明書上の休業日数

②自営業(事業所得者)の場合

事故前年分の確定申告書を用いて,以下の通り計算します。

【日額】申告所得額÷365(日額が6,100円に満たない場合は,6,100円)
【日数】実通院日数

③主婦(家事従事者)の場合

【日額】6,100円
【日数】実通院日数

休業損害を請求する方法

基本的なステップは以下の通りです。

【①会社員(給与所得者)の場合】

①相手保険への連絡休業損害が発生したことをできるだけ速やかに共有
②必要書類の取得相手保険から休業損害証明書の書式などを送付してもらう
③勤務先への依頼休業損害証明書の記載と事故前年分の源泉徴収票の発行を依頼する
④相手保険に提出勤務先又は自分から相手保険に郵送する
⑤内容の確認相手保険にて書面の内容を確認し,金額計算する
⑥支払相手保険から自分の指定口座に振り込む方法で支払われる

【②自営業(事業所得者)の場合】

①相手保険への連絡休業損害が発生したことをできるだけ速やかに共有
②書類の提出事故前年分の確定申告書を相手保険に郵送する
③追加提出休業の日額や日数について特に主張立証したいことがある場合は,積極的な提出が必要
④内容の確認相手保険が内容を確認し,金額計算する
⑤支払相手保険から自分の指定口座に振り込む方法で支払われる※
※実通院日数を基準に休業日数を計算する場合,通院終了後の支払が一般的

【③主婦(家事従事者)の場合】

①相手保険への連絡主婦であることを相手保険に通知
②必要書類の取得家族構成を通知するための書面などを送付してもらう
③書類への記載等家族構成の記載や,必要に応じて住民票等の取得をする
④相手保険に提出書類一式を相手保険に郵送する
⑤内容の確認相手保険が内容を確認し,金額計算する
⑥支払相手保険から自分の指定口座に振り込む方法で支払われる※
※通院終了後の支払が一般的

会社員の場合に注意すべきこと

会社員の場合,休業損害証明書で客観的に計算できそうですが,自賠責基準に従って計算するのみだと日額の計算で損をする可能性がある点に注意をするべきでしょう。

自賠責基準の計算方法をおさらいすると,以下の通りです。

【日額】(事故前3か月分の給与額合計)÷90

要するに,1か月=30日,3か月=90日を前提に,3か月分の給与を単純に日割りするということになります。
しかし,この手段だと,仕事が休みの日も含めた日数で割り算をしてしまっており,計算方法によっては金額が小さくなってしまいかねません。

例えば,1か月の稼働が25日,月の給与額が30万円という場合,1日休んだ場合の休業損害は,自賠責基準だと以下の通りです。

【自賠責基準の日額】(30万円÷30日)=1万円

そして,25日全てを休んだ場合,合計の金額は以下の通りです。

(1万円×25日)=25万円

しかしながら,これは実際の給与額30万円より5万円小さくなってしまっています
このような計算が起きるのは,日額を計算するときには休みの日を算入しているにもかかわらず,日数を計算するときに休みの日を無視しているために生じているのです。

日額の計算に際して休みを算入するのであれば,日数を計算する際にも休みを算入するのが適切です。具体的には,連続した休業中の休日は,休業日数に算入する必要があります。
上記の例では,稼働した25日でなく,その休業中の休日5日も含めた30日を対象日数とすることで,適正な金額計算が可能になるわけです。

一方,1日だけ休んだ場合には,日数の計算で休みを無視しているので,日額の計算でも休みを無視すると適切な計算が可能になります。
具体的には,収入額を稼働日数で割ることが適切です。上記の例では以下の通りになります。

【稼働日数を基準にした日額】(30万円÷25日)=12,000円

以上の通り,自賠責基準の計算結果より,実際には金額が大きくなるべき場合があることには注意をしたいところです。

自営業の場合に注意すべきこと

自営業の休業損害は,休業損害の中で最も争点が生じやすいケースと言えます。争点になりやすい具体的な事項としては,以下の点が挙げられます。

①休業の必要

自営業の場合,休業があったことや休業の必要があったことを証明してくれる第三者がいないため,そもそも休業の必要があったか,という問題が生じる場合があります。

この場合,まずは医学的な休業の指示を受けるのが望ましいでしょう。指示が受けられる場合は,指示書や診断書といった形式で書面化するのが適切です。
医師の指示が得られない場合は,業務の内容やお怪我の業務への支障,休業を要する業務の範囲やその理由などを,できる限り具体的に相手保険会社へ説明し,理解を求めることが重要になります。

②休業日数

一定の休業が必要である場合,その必要な休業日数がどの程度であるかが問題になることもあります。休業が必要としても,1日だけで足りるか1カ月必要であるかなど,具体的な期間は見解に相違が生じやすいところです。

この点,やはり可能であれば医師の指示があると望ましいでしょう。例えば,骨折で骨癒合が不十分である場合には,業務に耐えられる程度の骨癒合が得られるまでは休業を指示してもらう,といった場合があり得るところです。
一方,それが難しい場合には,相手保険会社との粘り強い協議が必要になるところです。自営業の休業損害では自分で主張立証を尽くす必要があることを念頭に,できる限り丁寧な説明や根拠の提出に努めるのが望ましいでしょう。

③日額

自営業の休業損害日額については,固定経費を収入に含めて計算することが適切です。
固定経費とは,休業があってもなくても発生する経費をいい,具体的には地代家賃,租税公課,損害保険料,減価償却費といったものが挙げられます。

そもそも,経費を除いて(収入でなく所得の金額を基準に)日額を計算するのは,休業することによって経費も発生しなくなるからです。そうであれば,休業によっても変わらず発生する経費は,日額の計算に含めるべきことになります。

この固定経費がいくらであるかは,確定申告書だけでは分からないので,別途収支内訳書(青色申告の場合は青色申告決算書)を提出するのが適切です。

主婦の場合に注意すべきこと

主婦の休業については,以下のような場合が問題になりやすいです。

①休業日数

主婦の場合,休業の客観的な立証が困難である上,休業自体もあいまいになりやすいため,休業日数が何日であるかが問題になりやすいでしょう。
この点,自賠責基準では実通院日数を機械的に休業日数としますが,主婦休損の計算時に実通院日数を休業日数としなければならない,というルールはありません。自賠責保険金額をそのまま受領するのであれば,自賠責基準に沿った計算で足りますが,以下のような場合には日数計算を検討しなおす必要があります

①自賠責の上限を超えてしまう場合
自賠責基準の休業損害がそのまま支払われるわけではないため,相手保険が自賠責基準の計算に従うことが考えにくくなります。

②日額を裁判基準で請求する場合
→主婦の休業損害の日額は,自賠責保険の場合には6,100円ですが,裁判基準で用いられる賃金センサスを参考にするとより大きな金額になります。一例として,令和5年の場合,以下の金額となります。

3,996,500円÷365≒10,949円

そのため,日額を賃金センサスに改め,「10,949円×実通院日数」の休業損害を請求したいところですが,日額を改めたときに休業日数を実通院日数のままにしなければならない,というルールは存在しないため,日数計算を検討しなおす必要が生じます。

②兼業の場合の処理

兼業主婦の場合,勤労時間が概ね週30時間未満のパート勤務であれば,主婦の休業損害が支払われる対象になります。一方,フルタイム勤務の場合,主婦の休業損害の対象とされることはあまりありません。
週30時間未満のパートタイマーであれば,主婦の休業損害の方が金額の大きい場合が通常であるため,主婦を念頭に置いた休業損害の計算が有益になるでしょう。

ただ,短時間のパートタイマーであっても,そのパート勤務の休業がない(又はわずかしかない)場合には,主婦としての休業もあまり必要がなかった,との判断で休業損害の有無や金額に争いの生じる場合があります

休業損害が支払われない場合

休業損害は,文字通り休業による損害であるため,事故によって休業の損害が発生した場合に限り支払いがなされます。休業損害が支払われない場合としては,以下のようなケースが挙げられます。

①収入減少がない

休業しても収入減少がない場合には,休業による損害がなく,休業損害は支払われません。代表例としては,会社役員や会社代表者が挙げられます。年俸などの報酬制を取っており,休業しても収入額に影響がなければ,休業損害の支払は生じないことになります。

もっとも,会社役員や会社代表者であっても,その報酬の中に勤労の対価の性質を持つ部分があり,その部分が減少する場合には,休業損害が発生します。

②因果関係がない

事故後に休業したものの,休業と事故との間に因果関係がない場合には,休業損害は支払われません。
例えば,事故前から元々休む予定であった,仕事ができる状態であったのに独断で休業した,といった場合が挙げられます。

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休業損害は,請求方法や請求時の提出資料に注意すれば,円滑に適切な金額を受領することは決して難しくありません。
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交通事故の慰謝料とは?具体的な計算方法は?弁護士はなぜ増額させられる?弁護士に慰謝料交渉を依頼すべき場合も解説

●交通事故の慰謝料とは何のお金か?

●交通事故の慰謝料にはどんなものがあるか?

●慰謝料の相場を知りたい

●慰謝料の計算方法を知りたい

●弁護士に依頼すると慰謝料が増額するのはなぜか?

●交通事故の慰謝料交渉は弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の慰謝料に関してお困りの方に向けて,交通事故の慰謝料相場や計算方法弁護士に依頼すべきかどうかなどを解説します。

慰謝料とは

慰謝料は,精神的苦痛を金銭換算したものを言います。慰謝料自体は,交通事故に限ったものではなく,加害者が被害者に精神的苦痛を与えた出来事の全てに発生し得るものです。例えば,離婚の際に発生する慰謝料は,離婚の原因を作った人が配偶者に与えた精神的苦痛を金銭換算したもの,ということができます。
交通事故の場合は,事故による受傷の苦痛,入通院の負担を強いられる苦痛などが,慰謝料の対象となるところです。

交通事故における慰謝料は,精神的苦痛を金銭換算する方法として客観的な基準を設けています。具体的には,①入通院期間や実通院日数②後遺障害等級に応じた計算となります。

ポイント
慰謝料=精神的苦痛に対する賠償

交通事故における慰謝料の種類

交通事故における慰謝料には,以下の2種類があります。

①傷害慰謝料(入通院慰謝料)
交通事故によって受傷したことや入通院を強いられたことへの精神的苦痛を金銭換算したものを,「傷害慰謝料(又は入通院慰謝料)」といいます。
傷害慰謝料は,入通院を要した期間や実通院日数を基準に計算します。入院や通院の期間が長いほど,慰謝料額は大きくなりますが,実通院日数があまりに少ない場合には,それを踏まえて慰謝料額を小さくすることがあります。

②後遺障害慰謝料
交通事故の受傷について治療を尽くしたものの,将来に渡って後遺障害が残存してしまった場合,その精神的苦痛を金銭換算したものが「後遺障害慰謝料」です。
後遺障害慰謝料は,1級から14級までの後遺障害等級を基準に計算します。同じ等級の中でも,腕,足,頭など,複数の部位に関する複数の後遺障害が定められていますが,等級が同じであればその内容が異なっていても後遺障害慰謝料は同額です。

慰謝料の計算方法

①計算方法の種類

慰謝料の計算方法には,「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判基準」の3通りがあります。これらの基本的な違いは,以下の通りです。

自賠責基準自賠責保険から支払われる慰謝料額を定める基準
任意保険基準任意保険会社内部における慰謝料の計算基準
裁判基準裁判所が慰謝料額を計算するときの基準

一般的には,自賠責基準が最も小さく,裁判基準が最も大きい傾向にあります。
もっとも,自賠責保険は被害者の過失が7割未満であれば金額に反映させないというルールがあるため,過失の程度によっては自賠責基準が他の基準より金額が大きくなる場合もあり得ます。

ポイント
交通事故の慰謝料は傷害慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類
慰謝料の計算方法は自賠責基準・任意保険基準・裁判基準の3種類

②傷害慰謝料

自賠責基準の計算方法

①対象日数「総治療期間」と「実通院日数×2」のいずれか小さい日数
②日額1日4,300円
③計算方法①対象日数×②日額=自賠責基準の金額

(例1)
総治療期間(通院期間)120日 実通院日数30日の場合

①対象日数:「総治療期間」120日>「実通院日数×2」60日のため小さい方の60日
②日額:1日4,300円
③計算方法:60×4,300=258,000円

(例2)
総治療期間(通院期間)60日 実通院日数40日の場合

①対象日数:「総治療期間」60日<「実通院日数×2」80日のため小さい方の60日
②日額:1日4,300円
③計算方法:60×4,300=258,000円

(例3)
総治療期間180日 実通院日数100日の場合


①対象日数:「総治療期間」180日>「実通院日数×2」100日のため小さい方の180日
②日額:1日4,300円
③計算方法:180×4,300=774,000円

もっとも,現実に自賠責保険からこの金額が支払われるかどうかはケースによります。それは,自賠責保険には上限額があるためです。

自賠責保険金は,治療費や通院交通費など,傷害部分の合計金額に120万円の上限があります。単純計算で120万円を超える場合,120万円までしか支払われないことになります。
実通院日数が100日というケースだと,治療費や交通費の合計額が42万6000円を超えることも決して少なくはないため,上限の120万円を超過する可能性があります。仮に慰謝料以外の合計が50万円発生していれば,慰謝料は最大でも70万円の支払になります。

上記はあくまで単純計算の結果であり,実際に支払われる金額は他の損害額によるということに注意しましょう。

任意保険基準の計算方法

任意保険基準は,入通院期間を基準に,保険会社の内部で採用されている計算方法を用いて計算されます。
任意保険基準の代表的な金額は,以下の通りです。なお,1月=30日とみなして計算します。

任意保険基準の慰謝料(一例)

(例1)
総治療期間120日 実通院日数30日の場合

通院期間120日=4月のため,478,000円

(例2)
総治療期間60日 実通院日数40日の場合

通院期間60日=2月のため,252,000円

ただし,自賠責基準258,000円がこれより大きいため,自賠責保険から満額の慰謝料が支払われる限り,実際の支払額は258,000円となります

(例3)
総治療期間180日 実通院日数100日の場合


通院期間180日=6月のため,642,000円

自賠責保険金が642,000円を上回る場合,実際の支払額は自賠責保険金額となります。慰謝料以外の金額の合計が(120万円-642,000円=)558,000円より小さい場合,自賠責慰謝料が642,000円より大きくなるため,実際の支払額は自賠責保険金額となります。

裁判基準の計算方法

裁判基準では,任意保険基準と同様,入通院期間を基準に計算しますが,その金額は任意保険基準より大きくなるのが通常です。
また,裁判基準の場合,他覚症状のないむち打ち(=軽傷)の場合(別表Ⅱ)とそうでない(=重傷)場合(別表Ⅰ)の二種類があり,重傷に用いられる別表Ⅰの方が金額が大きく定められています。

具体的な金額は以下の通りです。なお,1月=30日とみなして計算します。

裁判基準の慰謝料 別表Ⅰ(重傷)

裁判基準の慰謝料 別表Ⅱ(軽傷)

(例1)
総治療期間120日 実通院日数30日の場合

通院期間120日=4月のため,以下の通り
裁判基準(別表Ⅰ)90万円
裁判基準(別表Ⅱ)67万円

(例2)
総治療期間60日 実通院日数40日の場合

通院期間60日=2月のため,以下の通り
裁判基準(別表Ⅰ)52万円
裁判基準(別表Ⅱ)36万円

(例3)
総治療期間180日 実通院日数100日の場合


通院期間180日=6月のため,以下の通り
裁判基準(別表Ⅰ)116万円
裁判基準(別表Ⅱ)89万円

(注)
1月に満たない期間がある場合,30日=1月を前提に日割り計算をします。
例えば,むち打ちで通院期間36日である場合,1月+(1月と2月の間が)6日となり,慰謝料金額は以下の通り計算できます。
19万円+(36万円-19万円)÷30×6=224,000円

まとめ

(例1)
総治療期間120日 実通院日数30日の場合
自賠責基準    258,000円
任意保険基準   478,000円
裁判基準(別表Ⅰ)90万円
裁判基準(別表Ⅱ)67万円

(例2)
総治療期間60日 実通院日数40日の場合
自賠責基準    258,000円
任意保険基準   252,000円(実際の支払額は258,000円)
裁判基準(別表Ⅰ)52万円
裁判基準(別表Ⅱ)36万円

(例3)
総治療期間180日 実通院日数100日の場合
自賠責基準    774,000円※
任意保険基準   642,000円
裁判基準(別表Ⅰ)116万円
裁判基準(別表Ⅱ)89万円

※総額が上限である120万円を超える場合,実際の支払額はより小さくなる

ポイント
・自賠責は「総治療期間」又は「実通院日数×2」×4,300円
・自賠責保険の上限額120万円に注意
・任意保険基準は,入通院期間を基準に保険会社内部の計算方法にて計算する。自賠責保険金額を下回る場合は自賠責保険金額を採用する。
・裁判基準は,同じく入通院期間を基準に計算するが,最も金額の大きな計算方法であるのが通常。

③後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は,後遺障害等級によって決まります。

後遺障害等級は,自賠責保険の手続によって認定されますが,ある等級が認定された場合,まず自賠責保険から自動的に定額の慰謝料が支払われます。自賠責保険の金額では足りない部分がある場合,差額は加害者(又は保険会社)からの支払いとなります。

後遺障害慰謝料の金額も,裁判基準が最も大きいのが通常です。等級ごとの比較は以下の通りです。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

弁護士依頼で慰謝料が増額する理由

保険会社は,弁護士がいない場合,被害者の方には自賠責基準を念頭に置いた賠償額の提示を行うのが一般的です。自賠責基準の金額は自賠責保険から支払われるため,その金額のみで解決できれば自社の負担がなくなるからです。被害者の方が自賠責基準で合意してくれることに期待して,低い水準の提示を行っているというわけですね。

しかし,弁護士が入ると保険会社の対応は大きく変化します。弁護士が入った段階で自賠責基準での解決は困難であることが明らかになるため,保険会社は裁判基準を念頭においた金額計算に方針を変更するのです。保険会社が弁護士の有無で慰謝料の計算基準を変える運用をしていることから,弁護士が入って慰謝料を請求すると増額する,という寸法です。

一般的に,弁護士が保険会社と交渉を行う場合に目標とする慰謝料の水準は,裁判で認められ得る最大額(=裁判基準)の80~90%ほどとされることが多く見られます。裁判基準満額の金額は,あくまで裁判により裁判所が認めることのできる最大額であるため,裁判での立証を経ない交渉段階では満額で解決する可能性は低いところです。

ポイント 保険会社の対応
弁護士依頼前:自賠責基準を念頭に計算
弁護士依頼後;裁判基準を念頭に計算

自賠責基準と裁判基準の差額が,弁護士依頼により慰謝料が増額する理由

慰謝料交渉を弁護士に依頼すべき場合

慰謝料の交渉を弁護士に依頼すべきであるのは,弁護士への依頼によって最終的な獲得金額が大きくなる場合です。

弁護士に依頼すると,以下のようなプラスとマイナスがあります。

【プラス】
弁護士が交渉をしたことによる慰謝料の増額分

【マイナス】
弁護士に支払う費用(いわゆる弁護士費用)

そのため,プラスの方がマイナスより大きければ,弁護士に依頼すべき場合と言えるでしょう。

具体的には以下のようなケースが挙げられます。

①長期の治療を要した場合

裁判基準の慰謝料は,治療期間が長いほど大きな金額になります。そして,自賠責基準と裁判基準の差額も大きくなりやすい傾向にあります。
そのため,長期の治療を要した場合は,弁護士依頼によるプラスの部分が大きくなり,弁護士に依頼すべき場合に当たりやすいと言えるでしょう。

②受傷の程度が大きい場合

裁判基準の慰謝料には,骨折など他覚所見がある場合と,むち打ちなど他覚所見のない(=自覚症状のみである)場合の二種類があります。そして,他覚所見がある場合の方が,重傷と理解されるため,慰謝料も大きい金額になります。
そのため,他覚所見のあるような受傷の大きい事故である場合,弁護士依頼によるプラスの部分が大きくなり,弁護士に依頼すべき場合に当たりやすいでしょう。

③過失がない場合

自賠責基準の慰謝料は,7割以上の過失がない限り減額されない運用となっています。一方,裁判基準の慰謝料は1割の過失でも過失相殺を行う運用です。そのため,過失があるケースだと,過失分の減少がない自賠責基準と過失で減少がある裁判基準の差額は小さくなります。
逆に,過失がない事故の場合,自賠責基準と裁判基準の差額が小さくなる要因がないため,弁護士依頼によるプラスの部分が大きくなり,弁護士に依頼すべき場合に当たりやすいと言えるでしょう。

④弁護士費用特約が利用可能である場合

弁護士費用特約は,交通事故被害者が加害者への損害賠償を請求する際,弁護士委任に必要な弁護士費用を賄ってくれる保険のサービスです。弁護士費用特約が利用できる場合,弁護士費用の負担によるマイナスが小さくなるため,弁護士に依頼すべき場合に当たりやすいでしょう。

交通事故の慰謝料に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故の慰謝料は,弁護士への依頼で最も大きく変わりやすいものと言えます。
逆に,弁護士に交渉を依頼しなかった場合,本来受領できるはずの慰謝料が受け取れず,一度合意してしまえば適正な慰謝料を受け取る機会を失ってしまいます。
交通事故の慰謝料については,金額の妥当性を弁護士にご相談されることをお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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交通事故の訴訟・ADRとは何をする?時間かかるって本当?訴訟やADRを行うのはどんなリスクがある?事故の解決でお悩みの方へ

●交通事故で訴訟をすべき場合について知りたい

●ADRとは何か?訴訟と何が違うか?

●訴訟やADRはどのくらいの期間がかかるか?

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このページでは,交通事故の訴訟やADRについてお困りの方に向けて,交通事故で訴訟をすべき場合ADRの手続訴訟やADRのメリット・デメリットなどを解説します。

交通事故で訴訟に至る場合

交通事故の損害賠償に関する問題が訴訟に至る場合は,簡単に言えば交渉不成立との結論になった場合です。そして,交渉不成立と判断するのが被害者側であるか加害者側であるかによって,訴訟の内容に若干の差異が生じます。

示談不成立と判断した側訴訟の内容
被害者損害賠償の請求
加害者債務(一部)不存在の確認

被害者側が交渉を断念して訴訟を行う場合,その希望する請求額を裁判所に認めてもらうことを目指して訴訟提起します。これは,損害賠償請求の訴訟となります。
一方,加害者側が交渉を断念して訴訟を行う場合,加害者側が認める以上の支払は必要ないはずである,という主張を内容とする訴訟になります。これは,債務の不存在確認の訴訟となります。

もっとも,これらは同じ紛争を当事者それぞれの目線で訴訟にしているという違いしかないため,訴訟における争点や解決方法はほとんど同様になるでしょう。

ADRとは

ADR(Alternative Dispute Resolution 代替的紛争解決)とは,裁判外の紛争解決手続を言い,裁判を通じずに交通事故事件を解決するための制度です。
ADRは,示談交渉は難しいものの,訴訟までは希望しないという場合の中間的な解決方法,というべき位置付けの手続です。訴訟とは異なり,担当者が間に入って和解のための仲介を行う制度であるため,ADRを用いた場合には基本的に話し合いによる合意を目指すことになります。

ADRの基本的な流れは以下の通りです。

①法律相談電話又は面談で相談を受け付ける
②和解あっせんADR機関が間に入って和解の協議を行う
③審査和解が成立しない場合,ADR機関が結論を出す

交通事故のADRには,主に「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」の二つがあります。いずれも和解あっせん及び審査の対応が可能です。
なお,審査の結果結論をだすことを「裁定」と言いますが,裁定案を拒否すると訴訟に移行することになります。

訴訟とADRの違い

訴訟とADRは,いずれも交渉が奏功しない場合に紛争解決を目指す手続ですが,以下のような違いが挙げられます。

【項目】【訴訟】【ADR】
手続の形式法律の定めに従う柔軟な取り扱いが可能
関与する人裁判所(裁判官)あっせん担当弁護士
解決のスピード長期間を要しやすい訴訟よりは短期間になりやすい
費用訴訟費用や弁護士費用等が発生申立て無料
公開性公開の法廷における審理非公開の手続
賠償額遅延損害金や弁護士費用を加算遅延損害金や弁護士費用は通常加算しない
強制力法的拘束力があり,履行を強制させられる合意内容の強制力はない

基本的な差異としては,訴訟だと厳格な手続で一定の費用が発生するものの,解決内容に強制力があるADRだと柔軟な手続で費用なく実施できるものの,解決内容に強制力はない,という区別ができるでしょう。

一部例外はありますが,裁判所の判断を求めるときには訴訟,協議の場を求めるときにはADRを利用するのが有力な選択になりやすいです。

訴訟やADRにかかる期間

訴訟もADRも,第三者を交えた紛争解決手続のため,手続に期間を要するものとなります。ただし,一般的には訴訟の方がより長期間を要することになりやすいでしょう。

一般的な解決期間の目安には,以下のような違いがあります。

訴訟ケースによって1年を超えることも多数
ADR3~6か月程度が多い

手続の選択に際しては,長期間の手続を許容できるか,という点も踏まえての検討が望ましいです。

ポイント
ADRは第三者の弁護士が間に入って和解の仲介をする手続
ADRは訴訟より短期間・柔軟・安価な手続だが,賠償額に限りがあり強制力がない
訴訟はケースにより年単位,ADRは3~6か月ほどの期間がかかりやすい

訴訟やADRのメリット

訴訟やADRの最も大きなメリットは,交渉が奏功しなかった場合にも適正な賠償額を受領することが可能である,という点です。

交渉の場合,合意のできる金額や条件は相手方の判断によって左右されます。相手方の主張が明らかに不合理であっても,相手方にその主張を撤回して対応を改める意思がなければ,適正な内容での解決はできません。
この点,訴訟やADRでは,客観的で公正な判断のできる第三者が介入するため,相手方の不合理な主張が原因で適正な結果が獲得できない,ということが生じません。訴訟やADRを利用した場合の結論は,少なくとも客観的に見て不合理でない内容となることがみこまれます。

また,訴訟やADRを用いるメリットとしては,示談交渉よりも賠償金額が大きくなる可能性がある,という点が挙げられます。

交渉では,訴訟などの手続を行っていないことを理由に,訴訟で認められ得る最大額での合意を行うことは通常ありません。これは,訴訟での最大額(いわゆる裁判基準)の金額は裁判で必要な立証を尽くし,裁判所が被害者の主張を全面的に認めた場合に初めて認められる金額であるため,と説明されます。訴訟の負担なく,訴訟での必要な立証を尽くしていない状況下では,裁判で全て立証されたのと同等の金額は支払われない,というわけです。
しかし一方で,現実に訴訟などで必要な立証を尽くせば,裁判基準の全額を支払ってもらうべきということになります。訴訟やADRを行い,賠償金を減額すべき事情がないとの判断に至った場合,示談交渉で獲得できるよりも賠償金額が大きくなるでしょう。

加えて,訴訟に限るメリットですが,賠償金額として遅延損害金と弁護士費用の請求を追加で行うことが可能です。

遅延損害金は,利息に該当するものです。交通事故の損害賠償は,民法上の「不法行為」を根拠にするものですが,不法行為に基づく損害賠償は,不法行為時に賠償義務が生じるため,時間を経るごとに利息が加わり,加害者は利息を加えた金額の賠償を要します。
本稿の執筆時では,法定利率が年3%のため,例えば100万円の損害を1年後に賠償する場合だと,103万円の支払が必要になります。

あわせて,不法行為の損害賠償を訴訟で請求する場合,請求額の10%を弁護士費用として上乗せし請求するのが訴訟手続の一般的な運用とされています。100万円の請求を行う場合だと,10万円を弁護士費用として別途請求することが可能です。

遅延損害金と弁護士費用の請求は,訴訟をした場合にのみ発生するものであるため,訴訟のメリットということができるでしょう。

訴訟やADRのリスク・デメリット

訴訟やADRのリスクとしては,まず,交渉よりも賠償金額が小さくなる可能性が挙げられます。

交渉の際に争点があった場合,その争点に対する見解の違いをどのように金額に反映させるかは,当事者それぞれの判断となります。そのため,被害者に不利益な相手方の主張を金銭換算するといくらになるのかは,相手方が自己判断しているに過ぎません。そして,裁判所は,交渉で相手方が主張した金額に拘束されるわけではありません。

そうすると,訴訟で相手方の主張が裁判所に採用されたとき,それを金額に反映した結果は,相手方が交渉で主張していたよりも更に被害者に不利な金額である可能性があります。例えば,交渉で相手が自分の主張を前提とした提案を100万円としていたとしても,訴訟で相手の主張がそのまま認められた結果の金額が50万円になってしまう,ということは十分に考えられるのです。

また,他のリスクとしては,交渉のときにはなかった新たな争点が生じ得る,という点があります。

示談交渉の際には,円満解決を目指す目的で,言い分の全部又は一部を相手には示さないのが一般的です。言い分をあれもこれも突き付けてしまうと,お話合いでの解決に支障が生じやすいためです。全体の金額が合意できるのであれば,あえて言い分の全てをぶつけ合わない方が早期に穏やかに解決できるのが通常でしょう。

しかし,訴訟に至った後は,互いにそのような配慮はしません。そのため,交渉段階では控えていた言い分でも,訴訟では主張するということが多く見られます。
その結果,訴訟段階で初めて相手がぶつけてきた主張を裁判所が認め,交渉段階では予期しなかった理由で不利益な結果になる可能性も否定できません。

さらに,現実的な問題としては,主張立証の負担が重くのしかかるデメリットもあります。

訴訟やADRは,主張した内容が客観的に認められるか,つまり主張した内容が立証できるか,という問題になります。そのため,交渉段階でそれほど厳密に立証を求められなかった内容であっても,訴訟等では根拠に乏しい曖昧な主張では認められません。
厳密な主張立証の負担が生じた結果,立証を尽くすことができなかった場合には,やはり交渉よりも不利益な結論になってしまう可能性があるでしょう。

ポイント

訴訟やADRのメリット
交渉が奏功しなくても適正な賠償を受け取れる
示談よりも賠償金額が大きくなる可能性がある
訴訟では遅延損害金と弁護士費用を追加請求できる

訴訟やADRのデメリット
交渉よりも賠償金額が小さくなる危険がある
交渉のときに生じなかった争点が生じ得る
主張立証の負担が重い

交通事故の訴訟やADRは弁護士に依頼すべきか

交通事故の訴訟やADRについては,可能であれば弁護士に依頼をしたいところです。それだけ,訴訟やADRは交渉よりも手続負担の重いものであり,ご自身での対応に限界が生じやすいでしょう。
もっとも,訴訟やADRが金銭を請求する手続である以上,弁護士に依頼することで金銭的に利益があるのか,逆に損失が見込まれるのかは,非常に重要な問題です。

そのため,弁護士依頼に関しては,個別の具体的な事情を踏まえて利益が見込まれるか損失が見込まれるか,交通事故に精通した弁護士へ十分に相談することをお勧めいたします。弁護士にご相談いただくことで,あり得る可能性やリスク,具体的な流れなどをご案内することが可能です。

ポイント 訴訟やADRの弁護士依頼
依頼することで利益が見込まれるか損失が見込まれるか,弁護士に相談して確認すべき

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故の訴訟やADRは,どのような対応をするかで結果が劇的に変わる場合が非常に多いものです。
もっとも,個別の事件でどのような対応をすべきかは,内容や争点により様々であるため,交通事故に精通した弁護士へのご相談が肝要です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

交通事故の示談交渉はどのように行う?自分でやるのと弁護士に依頼するのはどう違う?交通事故示談の要点を徹底解説

●交通事故の示談とは具体的に何か?

●交通事故の示談交渉の流れを知りたい

●保険会社の提示を受け入れてよいか?

●自分で示談交渉できるか?

●示談交渉はどんな点に注意すべきか?

●示談交渉で弁護士に依頼するべき場合は?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の示談交渉についてお困りの方に向けて,示談交渉の流れや内容留意すべき点や弁護士に相談するべき場合などを解説します。

交通事故の示談とは

交通事故における示談とは,交通事故被害者の損害賠償額を当事者間の協議で解決することを言います。交通事故の示談は,加害者側の保険会社と被害者(代理人弁護士)の間で行うのが通常です。
示談が成立した場合,加害者側保険会社が一定の金銭を支払い,それ以上には互いに金銭の関係がない(関係が清算された)ことを確認する内容の合意を取り交わし,終了します。

示談による解決の主な特徴としては,以下の点が挙げられます。

【メリット】

①迅速性裁判では数か月~年単位を要することも
②費用裁判手続の費用が発生せず解決できる
③柔軟さ示談内容は双方が合意できる限り自由
④秘密保持裁判は判決内容が公開される

【デメリット】

①譲歩の必要裁判で賠償され得る満額での合意は,保険会社に利益がなく実現困難
②金額の限界裁判をしなければ請求できない金銭もある(弁護士費用・遅延損害金)

もっとも,必ずしも裁判をすれば示談のときより金額が大きくなるというわけではありません
通常,示談交渉に際しては,互いに言い分の全てを相手にぶつけることはせず,円満解決の可能な金額の水準を協議することになりますが,裁判になるとそのような配慮はなくなります。そのため,裁判になると示談のときには出てこなかった争点が生じ,その争点について不利益な判断がなされれば,示談できたはずの金額より裁判の結果の方が小さな金額になってしまうことは十分に考えられます。

具体的なケースで示談での解決が有益かどうかは,交通事故に精通した弁護士への十分なご相談をお勧めします。

示談交渉の流れ

示談のメインとなる人身損害について,交通事故の発生から示談交渉までの流れは,概ね以下の通りです。

①交通事故の発生当事者間の連絡がスタート
②通院実施医師の指示に沿って入通院治療を受ける
③症状固定治療が終了時期に至る
④後遺障害等級認定後遺障害について等級認定を求める(行わない場合は省略)
⑤示談交渉の準備診断書やレセプトなど,示談交渉に必要な資料を取得する
⑥示談交渉の実施損害賠償額について話し合いをする
⑦示談内容の合意賠償金額や支払方法などについて当事者間で合意する
⑧示談書面の取り交わし合意を証するための書面を取り交わす
⑨入金・解決指定口座に入金がなされ,示談は解決となる

また,示談交渉を実施するときの大まかな流れは,以下の通りです。

【弁護士がいる場合】

①既発生の損害を確認医療機関に支払われた治療費,既に被害者へ支払われた金銭の内容や額を確認する
②弁護士による損害計算弁護士にて請求金額を計算する
③弁護士が相手保険に請求弁護士が相手保険に請求内容を示す
④相手保険の対案保険会社が合意内容の対案を示す
⑤示談交渉合意に至るまで協議を続ける
⑥示談成立口頭で合意を確認した後,保険会社と弁護士の間で書面を取り交わし解決

【弁護士がいない場合】

①保険会社による賠償額提示賠償額の明細を添えて書面で提示されることが一般的
②被害者側の返答承諾すれば示談成立,承諾しない場合は交渉継続
③示談交渉合意に至るまで協議を続ける
④示談成立保険会社と被害者の間で書面を取り交わし解決

相手保険の提示は妥当か

被害者が相手保険会社から損害賠償額の提示を受けた際,「提示金額が妥当か」というご相談が弁護士に寄せられることは非常に多いところです。

結論から言うと,基本的には,保険会社の被害者への提示金額が弁護士の目指す金額と同水準ということはありません。この点の十分な理解のためには,まず自賠責保険と任意保険の関係について把握する必要があります。

自動車保険には,主に自賠責保険と任意保険がありますが,両者の位置付けは以下のように区別できます。

【保険の種類】【加入の要否】【補償の範囲】
自賠責保険法律上強制加入法律等で定められた最低限の補償
任意保険加入するかは任意自賠責保険を超える損害の補償

任意保険は,自賠責保険が行う最低限の補償ではカバーしきれない損害を,加害者本人に代わって支払うべき立場にある,ということになります。そのため,任意保険の立場としては,自賠責の補償でカバーしきれない部分が存在しなければ,自社負担で支払う金銭が必要がなく,最も得である,という結論になります。

以上の経緯から,任意保険会社が被害者の方に提示する損害賠償額は,自賠責保険で補償される金額と同額であることが非常に多く見られます。この金額は,法律等で定められた最低限の補償額でしかないため,基本的には弁護士が交渉で目指す水準との間に開きのあることが通常でしょう。
これに対して,保険会社の提示と弁護士の目標水準に差のないケースもあり得ます。代表例としては,以下のようなものが挙げられます。

1.被害者側に相当程度の過失がある場合
2.通院日数が非常に少ない場合
3.保険会社が特に配慮して金額提示等をしていた場合

なお,保険会社は,被害者との間で示談を取り交わした場合,自社で被害者に支払をした後,自賠責保険に保険金の支払を請求します。被害者に支払う金額と自賠責から受領できる金額が同じであれば,賠償の負担は差引ゼロになる,という寸法です。

ポイント
保険会社の提示が弁護士の目指す金額水準であることは基本的にない
自賠責保険の金額を提示金額とすることが多い
過失がある場合などは目標金額に近いこともある
任意保険は,被害者に支払った後に自賠責保険から回収する方法で補填する

自力で保険会社と示談交渉を行うことは可能か

弁護士に示談交渉を委任する場合,どうしても弁護士費用の問題が生じます。そのため,弁護士に頼らず自力で慰謝料の交渉をする選択肢を検討することもあるかもしれません。

しかしながら,弁護士に依頼せず自力で保険会社と交渉しても,その交渉はあまり奏功しないのが通常です。これは,示談交渉に関する保険会社の運用によるものです。

保険会社は,弁護士の有無で賠償金額の計算方法を変える運用をするのが一般的です。具体的には,弁護士がいない場合には自賠責保険の補償額を念頭に金額提示し,一方で弁護士がいる場合にはいわゆる裁判基準(弁護士基準)と言われる水準を念頭に計算する,というのが保険会社の基本的な運用になっています。
そのため,弁護士に依頼せず自力で交渉を試みても,保険会社の運用上,どうしても相手保険の対応に限界が生じやすく,交渉が奏功しない結果になってしまうのです。
保険会社と慰謝料の交渉を試みる場合には,弁護士への依頼が必須であると理解するのが適切でしょう。

なお,弁護士が保険会社と慰謝料の交渉を行う場合,裁判で認められ得る最大額の80~90%を目指すというのが一般的な運用とされています。この金額と相手保険の提示内容との差額が,弁護士の交渉による増額ということになります。

ポイント
自力交渉は保険会社の運用上困難
弁護士の慰謝料交渉は裁判で認められ得る最大額の80~90%を目指すのが一般的

示談交渉の際に注意すべき項目

①物損の主な示談項目

①修理費修理工場と保険会社の間で協定を行い,金額を定める
②代車費用修理に必要な期間中,代車を借りるための費用
③評価損新車で車両の価値に損害が生じた場合の損害
④休車損害車両が利用できないため得られなくなった利益(収入)

【全損の場合のみ】

①車両時価額車種・年式・走行距離を基準に計算する
②買替諸費用全損のため新たに車両を購入した場合,購入に伴って支出を余儀なくされた費用(※)
※主な買替諸費用としては,登録費用,車庫証明費用,納車費用,リサイクル費用などが挙げられます。

項目のうち,代車費用についてその期間が,評価損についてその有無が,それぞれ問題になることが多く見られます。

代車費用は,基本的に2~4週間程度を目安にすることが多く見られます。現実にそれ以上の期間がかかった場合にどうするか,という争点が生じやすい傾向にあるところです。トラブル回避のためには,自分の保険で代車特約が利用できないか,確認することも有益です。
評価損については,修理歴がついたから必ず発生するわけではなく,基本的に新車にしか生じないとされています。具体的には,登録からの期間,走行距離,車種(高価な方が生じやすい)等が判断基準になるでしょう。評価損の金額は,修理費の10~30%ほどとみなす例が多く見られます。

また,全損とは,車両の修理費が時価額を上回ってしまうことを言います。車両の損害は,車両そのものの価値を超えることはないため,修理費が時価額を上回ってしまうと,修理費全額は支払われず,時価額までの支払となります
全損の場合には,時価額がいくらか,という問題が生じやすいところです。相手保険の主張する金額が低い,と考える場合は,中古車市場における同種車両の販売価格を確認し,これを基準に金額の主張をするのが有力でしょう。

なお,全損の場合,時価額に加えて買替諸費用の支払も受けられるのが一般的です。ただし,買替諸費用が発生するのは現実的に買い替えた場合に限られます。

ポイント 物損で問題になりやすい項目
代車費用の期間
評価損の有無
車両時価額がいくらか

②人身の主な示談項目

①治療費治療に要した実費が対象となる
②入院雑費入院中に発生する生活関係費
③通院交通費通院に要した交通費。自家用車や公共交通機関が基本
④休業損害休業を要した場合に「日額×日数」分が発生する
⑤傷害慰謝料入院期間,通院期間,実通院日数を基準に計算する

【付添看護を要した場合】

①入院付添費入院時に付き添いを要した場合に発生
②通院付添費通院時に付き添いを要した場合に発生

【後遺障害等級認定された場合】

①後遺障害慰謝料後遺障害等級に応じて発生
②逸失利益後遺障害に伴う労働能力の低下により生じた収入減少
③将来介護費介護を要する後遺障害に対して発生


主に争点の生じやすい項目と交渉方法としては,以下のものが挙げられます。

【項目】【争点】【交渉方法等】
通院交通費タクシー利用医師からタクシー通院の指示をもらう

事前に相手保険と相談する
休業損害①休業の必要な期間医師から休業の指示をもらう

休業の事情や内容を事前に保険会社と共有し,承諾を得る
休業損害②自営業者の基礎収入額・休業の必要確定申告書や事故直前の収入額に関する資料を提出する

休業を要する事情を丁寧に説明する
傷害慰謝料対象期間症状固定時期について医師の指示をもらう

保険会社と事前に交渉する
逸失利益①対象期間の長さ後遺障害が仕事に影響を及ぼす具体的な内容を説明する
逸失利益②対象期間(定年後)定年後の再雇用予定などを示す
将来介護費日額どのような介護が必要か,どのような医師の指示があったかを示す(職業付添人を要する方が金額が高くなりやすい)

示談が成立しやすいケース・しづらいケース

交通事故の示談は,争点になる項目が少ないほど示談が成立しやすくなります。特に,争点が慰謝料額のみである場合は,合意に至り,示談が成立しやすくなると言えるでしょう。

一方,当事者間の主張に隔たりが大きい場合は,示談の成立がしづらい傾向にあります。代表例が過失割合に関する争いでしょう。双方がともに被害者であると主張しているなど,過失割合に関する主張が大きく異なっていると,個別の損害項目の交渉に入ることもできず,その結果示談の成立も困難になりやすいところです。

ポイント
慰謝料のみの交渉は特に示談が成立しやすい
過失割合の主張に差が大きいと示談の成立が困難

示談交渉の余地がないケース

代表例が自損事故の場合です。自損事故では,自分の人身傷害保険に対応してもらい,人身傷害保険金を受領するのが通常ですが,人身傷害保険金の慰謝料などは,約款で金額が全て定められており,交渉の余地がありません。いわゆる自賠責基準・裁判基準といったものもないため,注意しましょう。

もっとも,後遺障害等級が何級に認定されるか,後遺障害等級が認定された場合の逸失利益がいくらか,という点については,弁護士に依頼したり交渉してもらったりする余地があり得ます。具体的な判断については弁護士に相談してみることをお勧めします。

ポイント
自損事故は慰謝料の交渉余地がない
後遺障害等級に関する弁護活動の余地はあり得る

弁護士への相談・依頼が有力な場合

弁護士に示談交渉の相談や依頼を行う場合,弁護士への依頼によって弁護士費用を超える利益が得られるのであれば,依頼が有益と言えます。具体的には,以下のような場合に弁護士への依頼が有益になりやすいでしょう。

①過失がない場合

過失がある場合,損害の一部が自己負担になります。その影響で,弁護士への依頼によって得られる利益が目減りしてしまう可能性が生じます。
過失がなければ,過失による利益の目減りが生じないため,弁護士への依頼が有益になりやすいと言えます。

②受傷の程度が大きい場合

骨折を伴っているなど,受傷の程度が大きい場合,損害賠償額も大きくなりやすい傾向にあります。そのため,弁護士への依頼により増額し得る幅も大きくなりやすく,弁護士への依頼が有益になることが多いでしょう。

③後遺障害等級が認定された場合

後遺障害等級が認定されると,後遺障害に対する慰謝料や逸失利益といった損害が新たに発生します。それらの金額は大きなものになりやすいため,弁護士依頼による増額幅も大きくなりやすく,弁護士依頼が有益になるのが通常です。

④弁護士費用特約の利用ができる場合

弁護士費用特約が利用できれば,弁護士依頼による費用を保険会社に支払ってもらうことができます。そのため,弁護士依頼による利益が特に大きくなくても,弁護士への依頼が有益になりやすいでしょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故の示談交渉は,弁護士の有無で結果が大きく変わる可能性があります。
もっとも,実際にご自身のケースで結果が変わるのか,どのように変わる可能性があるのかを判断することは難しく,具体的な検討は交通事故に強い弁護士へのご相談が

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

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後遺障害等級の認定方法は?基準は?デメリットはある?弁護士の要否も詳細解説【交通事故】

●後遺障害等級とは何か?

●後遺障害等級はどのように認定されるのか?

●後遺障害等級認定されるとどんな支払があるのか?

●後遺障害等級認定の基準は何か?

●適切な等級認定を受けるためにはどうするべきか?

●後遺障害等級認定を受けるデメリットはあるか?

●後遺障害等級認定については弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,後遺障害等級認定の手続や判断基準後遺障害等級認定を獲得するためにするべきこと弁護士依頼の要否などを解説します。

後遺障害等級認定とは

交通事故で後遺障害が残った場合,これに対する金銭賠償を受けるためには,特定の後遺障害等級に該当するとの認定を受ける必要があります。交通事故によって負った怪我や病気の後遺症が残った場合に,その障害の程度を評価して等級を付与する制度を,「後遺障害等級認定」といいます。

後遺障害等級認定は,交通事故被害者が被った後遺障害の程度を客観的に評価し,これに基づいて適切な賠償を行うために実施されるものです。後遺障害等級が認定された場合,その等級に応じて慰謝料や逸失利益といった金銭賠償の対象となります。

被害者本人が後遺障害の存在を主張したとしても,それを個別に金銭換算することはできないため,等級という一定のハードルを設けるのが後遺障害等級認定の制度となります。どこまでのハードルを越えたか,つまりどの等級に認定されたかによって,賠償額の計算基準が決まり,後遺障害の程度や内容に応じた適正な金銭賠償が可能になります。

後遺障害等級認定の方法

①手続の方法

認定手続は,加害者の自賠責保険会社に所定の書類を提出する方法で行われますが,被害者側と加害者側のどちらが提出するかによって,大きく二通りの手続があります。

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

②手続の流れ

後遺障害等級認定の基本的な流れは,以下の通りです。

【事前認定の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③後遺障害診断書の提出相手保険に後遺障害診断書を提出します。
④事前認定の実施相手保険による自賠責保険への提出を待ちます。
⑤後遺障害等級の結果通知相手保険に結果の通知があり,相手保険から被害者側に知らされます。


【被害者請求の場合】

①症状固定の判断医師の診断などで症状固定時期に至ったことを確認します。
②後遺障害診断書の作成主治医の先生へ,後遺障害診断書の作成を依頼します。所定の書式があるため,書式を持参の上で医師の診察や検査を受けるのが一般的です。
③申請書類の準備治療期間中の診断書やレセプト,交通事故証明書などの必要書類を取得し,申請書類に必要事項を記載します。
④被害者請求の実施必要書類を自賠責保険会社に提出し,被害者請求を実施します。
⑤後遺障害等級の結果通知申請者である被害者又は代理人に直接通知されます。

後遺障害等級認定された場合の支払

後遺障害等級が認定された場合の,被害者への基本的な支払内容は以下の通りです。

①慰謝料

慰謝料とは,精神的苦痛に対する賠償を指します。後遺障害等級の対象になる症状が残存したことに対する精神的苦痛を金銭換算したものがが,後遺障害慰謝料です。
慰謝料の金額は等級によって異なります。等級ごとの後遺障害慰謝料額は,以下の通りです。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

②逸失利益

後遺障害の逸失利益とは,後遺障害が生じたことによって労働能力が低下した結果,減少する収入額に応じた賠償を指します。
後遺障害等級が認定される場合,等級に応じて労働能力が一定程度減少したものと評価され,労働能力が低下した分だけ将来の収入が減少するものとみなします。その収入減少を逸失利益といい,後遺障害等級が認定された場合には賠償の対象となります。

具体的な計算方法については,こちらの関連記事をご参照ください。

適切な等級認定を受ける方法

望ましい後遺障害等級認定を受けるためには,目指す等級認定の基準に着目し,その基準を満たすことが分かる内容で診断書等の作成を受けることが適切です。

後遺障害等級の中には,測定値のみで結論の出るものもありますが,その判断に用いられる測定値が漫然と測定したものなのか,認定基準を踏まえて測定したものなのかによって,測定値そのものも変化する可能性があり,当然ながら認定結果にも影響し得ます。
また,症状固定前の入通院段階から,主治医の先生に必要な事項を診断書等に記載していただいておく,カルテに残しておいていただくなど,等級認定に備えた記録化,証拠化は非常に重要な意味を持つことも珍しくありません。

特に重大な受傷が生じてしまったケースの場合,等級認定によって極めて大きな金額の変化が生じる可能性もあるため,早期に交通事故に精通した弁護士へのご相談をお勧めします。

後遺障害等級認定のデメリット

後遺障害等級認定に関する疑問として,認定を受けることのデメリットを懸念される場合が散見されます。何らかの障害者とみなされることで,社会生活上の不利益を被るのではないか,という意味ですね。

しかしながら,そのような不利益やデメリットというものは特段ありません。後遺障害等級によって社会生活上の何らかのレッテルを貼られるものではなく,後遺障害等級は単純に交通事故の損害賠償額の基準となるもの,という位置づけにとどまります。

「後遺障害」という語句に特別な懸念をされることなく,後遺障害等級認定を目指して差し支えないでしょう。

後遺障害等級認定を弁護士に依頼すべき場合

後遺障害等級認定は,交通事故の中でも最も大きく損害賠償額に影響し得る性質のものということができます。しかし,その内容は一見では複雑にも映り,日頃から交通事故に携わる立場にないと適切に対処することは容易ではありません。損害賠償額に甚大な影響を及ぼす後遺障害等級認定については,基本的に弁護士への依頼が適切でしょう。

もっとも,弁護士費用の方が高くつく事態,いわゆる費用倒れは避ける必要があります。この点,費用倒れを避けやすいケースとしては,以下の場合が挙げられます。

①お怪我の規模が大きい場合
②ご自身に過失がない場合
③弁護士費用特約がある場合

これらは代表例ですが,他にも弁護士依頼が有益である場合も考えられますので,具体的なケースについては弁護士への相談を実施することをお勧めいたします。

ポイント
適切な等級認定を受けたい:あらかじめ等級認定基準に着目して入通院や検査等を受ける
後遺障害等級のデメリット:特にない
弁護士への依頼:費用倒れが避けられる見込みがあれば積極的に

後遺障害1級の認定基準

1級の認定基準一覧

要介護(別表第1)

要介護1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
要介護1級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

その他の後遺障害(別表第2)

1号両眼が失明したもの
2号咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3号両上肢をひじ関節以上で失つたもの
4号両上肢の用を全廃したもの
5両下肢をひざ関節以上で失つたもの
6号両下肢の用を全廃したもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害1級】主な症状や認定基準,賠償金額の具体的計算などを弁護士が解説

後遺障害2級の認定基準

2級の認定基準一覧

要介護(別表第1)

要介護2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
要介護2級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

その他の後遺障害(別表第2)

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になつたもの
2号両眼の視力が0.02以下になつたもの
3号両上肢を手関節以上で失つたもの
4号両下肢を足関節以上で失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害2級】認定されるケースの症状は?認定された場合の補償金額は?

後遺障害3級の認定基準

3級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの
2号咀嚼又は言語の機能を廃したもの
3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5号両手の手指の全部を失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害3級】該当する症状の程度から請求可能な金額まで一挙解説

後遺障害4級の認定基準

4級の認定基準一覧

1号両眼の視力が0.06以下になつたもの
2号咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3号両耳の聴力を全く失つたもの
4号一上肢をひじ関節以上で失つたもの
5号一下肢をひざ関節以上で失つたもの
6号両手の手指の全部の用を廃したもの
7号両足をリスフラン関節以上で失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害4級】主な症状や賠償金の相場などを弁護士が詳細解説

後遺障害5級の認定基準

5級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの
2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4号一上肢を手関節以上で失つたもの
5号一下肢を足関節以上で失つたもの
6号一上肢の用を全廃したもの
7号一下肢の用を全廃したもの
8号両足の足指の全部を失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害5級】認定される類型や内容は?慰謝料などの金額は?

後遺障害6級の認定基準

6級の認定基準一覧

1号両眼の視力が0.1以下になつたもの
2号咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3号両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
4号一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
5号脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6号一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7号一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8号一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害6級】対象となる症状の類型や具体的基準,慰謝料額などを詳細解説

後遺障害7級の認定基準

7級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になつたもの
2号両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
3号一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5号胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6号一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
7号一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
8号一足をリスフラン関節以上で失つたもの
9号一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11号両足の足指の全部の用を廃したもの
12号外貌に著しい醜状を残すもの
13号両側の睾丸を失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害7級】等級認定基準の具体的な内容を詳細に解説

後遺障害8級の認定基準

8級の認定基準一覧

1号一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になつたもの
2号脊柱に運動障害を残すもの
3号一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの
4号一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
5号一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
6号一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
7号一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
8号一上肢に偽関節を残すもの
9号一下肢に偽関節を残すもの
10一足の足指の全部を失つたもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害8級】対象となる各部位の症状は?認定された場合の慰謝料額は?

後遺障害9級の認定基準

9級の認定基準一覧

1号両眼の視力が0.6以下になつたもの
2号一眼の視力が0.06以下になつたもの
3号両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの
4号両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
5号鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの
6号咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
7号両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
8号一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
9号一耳の聴力を全く失つたもの
10神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12号一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
13号一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
14号一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
15一足の足指の全部の用を廃したもの
16号外貌に相当程度の醜状を残すもの
17号生殖器に著しい障害を残すもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害9級】具体的な認定対象や補償金額の計算方法を徹底解説

後遺障害10級の認定基準

10級の認定基準一覧

1号一眼の視力が0.1以下になつたもの
2号正面を見た場合に複視の症状を残すもの
3号咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
4号十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5号両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
6号一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
7号一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
8号一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
9号一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
10一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
11号一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害10級】具体的な症状から慰謝料,逸失利益の金額まで

後遺障害11級の認定基準

11級の認定基準一覧

1号両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2号両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4号十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5号両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
6号一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
7号脊柱に変形を残すもの
8号一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
9号一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
10胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害11級】認定対象となる症状の一覧から補償される金額まで

後遺障害12級の認定基準

12級の認定基準一覧

1号1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2号1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4号1耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5号鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
8号長管骨に変形を残すもの
9号一手のこ指を失ったもの
101手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
111足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
12号1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14号外貌に醜状を残すもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害12級】認定の基準,対象となる症状や慰謝料額を徹底解説

後遺障害13級の認定基準

13級の認定基準一覧

1号一眼の視力が0.6以下になつたもの
2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
3号一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4号両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
5号五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
6号一手のこ指の用を廃したもの
7号一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
8号一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
9号一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
10一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
11胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害13級】具体的な認定基準は?慰謝料や逸失利益の金額は?

後遺障害14級の認定基準

14級の認定基準一覧

1号一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2号三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3号一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
4号上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5号下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6号一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
7号一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
8号一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
9号局部に神経症状を残すもの

各号の具体的な認定基準については、以下の記事で詳細に解説しています。
【後遺障害14級】認定対象となる症状や慰謝料額を一挙解説

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