犯罪被害者が加害者から示談を持ちかけられたらどうするのが適切か?交渉ポイントや注意点を弁護士が徹底網羅

加害者から示談を持ちかけられたらどうすればいいか?

●犯罪被害者が示談に応じるメリットとデメリットが知りたい

●示談の内容にはどのようなものがあるか?

●示談書は作成すべきか?

●犯罪被害の示談交渉は弁護士を依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,犯罪被害についての示談交渉でお困りの方に向けて,示談交渉の内容や方法,示談のメリットデメリットなどを解説します。

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加害者からの示談交渉に際して考えるべきこと

①基本的な流れ

犯罪被害を受けた場合,加害者側(通常は代理人弁護士)から,示談の話を持ち掛けられることが考えられます。具体的な流れは,概ね以下の通りです。

示談交渉の流れ
①弁護士が捜査機関に示談の申し入れを行う
②捜査機関から被害者に意思確認の連絡がなされる
③被害者から捜査機関に返答を行う
④(被害者が了承した場合のみ)弁護士と被害者の連絡先交換
⑤弁護士から被害者に直接の連絡を行う

そのため,被害者にとって最初のステップは捜査機関からの連絡となり,それを了承すると次に加害者の代理人弁護士から連絡が来る,という流れになります。

被害者の方にとっても,経験のない出来事で突然の検討が求められるため,その判断は容易ではないでしょう。ここでは,被害者が加害者側から示談を持ち掛けられた際の注意点を解説します。

②(注意点①)刑事処罰がなくなる可能性がある

加害者側からの示談の申し入れは,刑事処分の軽減,具体的には刑罰を受けない結果になることを目的に行われるのが通常です。示談が成立し,被害者側が刑罰を望まないという意思を表明することで,ほとんどの事件は刑事処分が軽減されることになります。また,事件があまりに重大でなければ,刑罰を全く受けない結果になることも全く珍しくありません。

示談に応じることは,刑事処罰が全くなくなるという意味になりやすい,との理解を前提に,示談に応じるかどうか,示談に応じる場合の条件をどうするか,検討することが適切でしょう。

③(注意点②)終局的な解決を内容とする

当事者間で示談が成立した場合,被害者と加害者の間の法律関係は,示談の内容以外に存在しないという合意になるのが通常です。つまり,示談の内容を守るという条件で,当事者間では終局的に解決することになります。
したがって,示談の成立後に示談金を超える金額の請求をすることはできませんし,追加で何か約束をしてもらうこともできません。

示談に応じる場合には,合意した内容のみで解決となり,その後に重ねての請求ができないということを踏まえておくのが適切でしょう。

犯罪被害者が示談に応じるメリット

刑事事件における示談は,加害者側が自身の刑事処分を軽減させる目的で行うものですが,被害者側にも確かなメリットがあります。そのため,被害者側としては,そのメリットを理解した上で,刑事処罰を受けて欲しいという思いと比較検討するのが適切です。

犯罪被害者が示談に応じることによって生じるメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①手続負担なく金銭賠償が受けられる

【示談しない場合の金銭賠償】

犯罪被害を受けた場合,被害者は加害者に対して金銭賠償を請求する権利を持ちます。加害者の行為は,民法上「不法行為」に該当する違法な行為であり,不法行為の被害者は加害者に対して損害賠償請求権を有する,というのがその根拠です。
もっとも,法律上の権利が認められることと,現実に金銭を獲得できることは別の問題です。具体的には,金銭を獲得するため以下のステップが必要です。

金銭賠償を獲得するためのステップ
1.賠償金額を決定する
2.決定した賠償金額を獲得する

そして,被害者が示談しないで金銭賠償を獲得するためには,以下の手続が必要になります。

金銭賠償を獲得する手続
1.金銭賠償を決定するため,(民事)訴訟を提起する
2.決定した金額を獲得するため,強制執行する

つまり,被害者が示談以外の方法で金銭を獲得するためには,自ら積極的に裁判を試み,裁判所に金額を決定してもらった後,相手の財産から強制的に取り立てることが必要になるのです。
しかし,訴訟を行うのは負担が大きく期間もかかり,容易ではありません。また,そのような訴訟を行って金額が決まったとしても,加害者に財産がなければ強制執行ができず,金銭を回収できないリスクも生じます。
特に加害者の財産状況が分からない場合,このような方法で被害者が金銭の獲得を試みるのはあまり現実的でないことも多く見られます。

【示談の場合の金銭賠償】

示談を行う場合,金銭賠償を獲得するための具体的な手続は,以下のように整理されます。

金銭賠償を獲得する手続
1.金銭賠償を決定するため,示談交渉を行う
2.決定した金額を獲得するため,加害者側から支払ってもらう

つまり,加害者側から持ち掛けられた示談に応じて交渉を行い,合意ができれば加害者側から支払ってもらう,というのみで,金銭賠償が獲得できることになります。
また,この一連の流れの中で,被害者から積極的に行うべきことは特になく,被害者は加害者側からの話に応じて対応すれば足ります。被害者に生じる負担は,示談を行わない場合とは比較にならないほど軽いものということができるでしょう。

また,示談による金銭賠償の獲得には,基本的に金銭回収ができないというリスクがありません。加害者側は,金銭を支払わなければ刑罰の軽減ができないため,処分軽減という目的のためには金銭を支払うことが必須です。
むしろ,加害者側が進んで金銭を支払う状況になるため,回収リスクを恐れる必要がなくなるでしょう。

ポイント 金銭賠償の手続負担
示談以外:訴訟+強制執行が必要
示談:交渉に応じるのみで足りる

②賠償金額に制限がない

示談を行わず,裁判手続で金銭賠償を受領する場合,その金額は,最終的には裁判所が過去の先例を踏まえて決定することになります。そのため,賠償金額は裁判所の判断によって制限され,それ以上の金額を獲得する権利は得られません。

一方,示談の場合,賠償金額は当事者間での交渉により決められるため,特に制限がありません。当事者間で合意さえできれば,裁判所が認める金額より大きな水準であっても問題はありません。
刑事事件で示談を行う場合,被害者が加害者を許す(=刑事処罰を希望しない)という意思表明が含まれる関係で,その対価の意味を含めて金額を大きくするケースが少なくありません。この点を強調する場合には,当事者間で高額の合意を行い,より大きな金額を獲得することもあり得るでしょう。

ただ,逆に当事者間で合意ができない場合,その金額を受領することはできません。加害者に経済力がないなどの理由で,どうしても支払える金額に限りが生じる場合には,低い金額で示談をするか,示談をしないで処罰を希望するか選択しなければならないケースもあり得るところです。

③金銭以外の条件を付けられる

犯罪被害者が加害者に対して有する権利は,不法行為に基づく損害賠償請求権であり,つまり金銭の支払いを求める権利ということになります。そのため,法的には,被害者は加害者に対して金銭を請求することこそできるものの,それ以外の要求をすることはできません。
したがって,裁判手続での請求で得られるのは金銭のみです。

一方,示談の場合,当事者間で合意ができれば金銭以外の条件を設けることも可能です。示談で合意する内容は,法律的に権利や義務のある内容には限られないため,法的には権利も義務もないような要求であっても,示談の条件とすることで相手に約束させられるわけです。
一般的に,犯罪の加害者が負う責任は,刑罰を受ける責任と被害者への金銭賠償の責任という2点ですが,それにとどまらない責任を負わせる手段としても,示談は有力な選択肢になることがあります。

犯罪被害者が示談に応じるデメリット

被害者が加害者の示談に応じる場合のデメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①重い処罰を科してもらうことが困難になる

示談に応じた場合,示談を行ったという事実は加害者の刑事処分を軽減させます。どの程度軽減するか,軽減した結果どのような処分になるかは,個別の事件や示談の内容によりますが,処分結果に対して最も影響の強い事情になる可能性が非常に高いでしょう。

示談に応じるか応じないかという判断は,示談金を受領するか重い刑罰を求めるか,という判断であると考えてもよいかもしれません。

②分割払いの場合に回収リスクが生じる

裁判で決定された賠償金は,加害者が支払わない場合に強制執行が可能です。具体的には,銀行口座の預金を差し押さえたり,給料の一部を差し押さえたり,所有する家や車を金銭に換価したりという方法で,強制的に金銭の回収が可能となります。

しかしながら,示談で合意をした金銭は,支払いが滞ったとしても直ちに強制執行することができません。強制執行をするためには,改めて裁判を提起して裁判所に強制執行を認めてもらう必要が生じます。
示談金が一括払いであれば,示談をした段階で全ての金銭が受領済みのため問題は生じませんが,示談成立後も継続的に支払いが生じる分割払いの場合には問題となることがあります。具体的には,以下の経過をたどる場合です。

回収リスクが生じる場合の流れ
①分割払いで示談成立
②示談を前提とした軽い刑事処分が決まる
③刑事処分後,分割払いが滞る

加害者の立場としては,刑事処分を軽くするために示談を試みたのみであるため,刑事処分が軽くさえなってしまえばそれ以降の支払を行う意欲が低下する可能性がある,ということですね。決して許されることではありませんが,被害者目線では重大な回収リスクとして考慮する必要があります。

そして,被害者がこの回収リスクを避けるための対策としては,以下のような手段が考えられます。

回収リスクの対策
①示談成立時の一括払いを条件とする(最も簡単)
②分割の場合には公正証書を作成する
③連帯保証人を用意させる
④物的担保になるものを用意させる

加害者にとっては,支払以上の負担が生じることになりますが,そもそも分割払い自体が加害者のみに利益のあるお話である以上,分割払いに条件を付けることは大いにあってしかるべきでしょう。

示談するときの主な合意内容

示談する際には,以下のような内容を盛り込むことが考えられます。

①通常設ける合意内容

【確認条項】

示談金額がいくらであるかを確認する条項です。加害者が被害者に対していくらの損害賠償義務があるのかを明確にするため,金銭の支払を伴う示談では必ず明記します。

【給付条項】

示談金の支払(給付)を行う方法に関する条項です。日付,金額,支払方法を特定します。加害者は,給付条項の内容に沿った支払を行うことを約束します。

【清算条項】

示談で定めた内容以外に,当事者間の法律関係(債権債務関係)がないことを明らかにする条項です。示談を取り交わす場合,示談の条件を守ればそれ以上には互いに請求をしないことが前提になるため,清算条項という形で明らかにします。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)とは,被害者の加害者に対する許しを指します。被害者が加害者の刑事処罰を望まないことを明らかにするため,宥恕の旨を明記した条項を設けることが通常です。
刑事事件の示談は,加害者にとって宥恕の獲得が最大の目標になります。

②希望により設けることのある主な合意内容

【接触禁止】

示談成立後に加害者が被害者に接触することを禁止する条項です。示談の内容とすることは必須ではありませんが,被害者が加害者との接触を希望することはほぼないため,基本的にはほとんどの示談で設けることになります。

【行動制限(制約)】

日常生活における行動の制限を設ける条項です。具体的には,以下のようなものが挙げられます。

行動制限の例
・特定の電車利用を制限する
・特定の場所への立ち入りを制限する
・特定の人物への接触を制限する

行動制限は,接触禁止をさらに確実なものとするために設けることが多く見られます。電車内での事件であればその電車を利用しない,施設内の事件であればその施設に出入りしない,といった内容が代表的です。

【口外禁止】

事件や示談に関する内容を周囲に口外しないよう約束する条項です。当事者のプライバシーを守るために設けることが考えられます。
刑事事件の場合,加害者の方が周囲への発覚を恐れる場合も多く,加害者の求めに応じる形で盛り込むことも少なくありません。

【違約金】

示談に定めた条件が守られなかった場合,約束に反したことの責任を金銭で取らせるための条項です。現実に金銭を受領するためというよりは,約束を守らせるための枷の一つとして設けることが一般的でしょう。
また,違約金額に特段のルールはなく,当事者が合意できればどのような金額でも差し支えありません。一般的には,示談金の金額に近い水準や示談金額を踏まえた水準(倍額など)を設けることが多く見られます。

【権利留保】

将来不測の損害が生じた場合には,別途請求をする権利があることを確認する条項です。後遺障害を伴う重大な怪我が生じた事件で,治療が終わる前に示談する場合に設けられる場合が考えられます。
もっとも,刑事事件の示談は,その示談によって当事者間の関係が終了しなければあまり実益がないため,現実に権利留保の条項が設けられることはほとんどないと思われます。

示談書の作成は必要か

示談が成立する際,示談書の作成を行うのが一般的です。示談書を作成する場合は,合意した内容を文面にした上で,相互に署名押印し,各自保管するという流れが通常です。

示談書は,示談の際に法律上必要な書面というわけではありません。示談書がなくても,示談は有効に成立します。
示談書を作成する基本的な目的は,後から紛争の蒸し返しになることを防止する点にあります。書面化してないと,「約束した」「約束してない」という争いが生じる可能性を残しますが,書面化していれば,書面の内容に反するような紛争の蒸し返しは生じる余地がなくなるわけです。
そのため,示談書を作成するケースは,示談に関する紛争の蒸し返しを防止したい場合,ということになるでしょう。

もっとも,刑事事件の示談は,加害者に弁護士が入っている上,加害者側は示談の成立を検察などに示さなければならないため,加害者(弁護士)が示談書の作成を希望するケースがほとんどです。
その場合,加害者の弁護士が示談書の内容を作成し,被害者に示してくることになります。被害者としては,基本的にその内容を確認するのみで足りるでしょう。

なお,被害者目線で書面作成を求めるべき場合としては,加害者側に金銭の支払以上の約束をさせる場合が挙げられます。
法律上,被害者が加害者に請求できるのは金銭のみであるため,金銭以外の約束(電車利用禁止,特定場所の立入禁止等)をさせられるのは,合意がある場合に限られます。この点,加害者側が「約束してない」と言い出すと,約束を守らせることが困難になりかねないため,合意したことについて蒸し返しを防止するため,示談書の作成が有益になるでしょう。

ポイント 示談書の作成
蒸し返し防止したいときには作成すべき
通常は加害者の弁護士が作成を希望する
被害者が示談書作成を求めるべき場合は,金銭以外の約束をさせるとき

犯罪被害の示談交渉は弁護士に依頼すべきか

犯罪被害に遭った場合の加害者の示談交渉は,弁護士への依頼も有益でしょう。弁護士に依頼することによって,示談金額を適切な水準に増額させたり,適切な示談条件を設けたりすることが可能になります。
示談交渉の方法や示談交渉で目指すべき方針が分からない,という場合には,弁護士への依頼をご検討されることをお勧めします。

ただし,一点注意すべき点があります。
それは,経済的にプラスかマイナスかは不明確である,という点です。
弁護士に依頼して示談金の増額した場合,それが弁護士費用よりも大きな金額であれば,弁護士費用を負担してもプラスになりますが,弁護士費用を超える利益が得られるとは限りません。特に,想定される示談金額があまり大きくならない事件では,慎重な検討が必要になりやすいところです。
具体的な判断は,一度弁護士にご相談されてみるとよいでしょう。

犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ

犯罪被害を受けた場合,加害者が刑事処罰の軽減を目指すときには示談の申し入れを受けることが考えられます。
この場合,示談を受けることにも大きなメリットがありますので,示談の検討は有力でしょう。
もっとも,具体的にどのような内容で示談するのがより有益かは,専門的な知識や経験が必要な判断となりますので,犯罪被害の示談に強い弁護士への依頼をお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所は,刑事事件の経験豊富な弁護士が,専門的な知識・経験を踏まえて,犯罪被害にお悩みの方への最善のサポートを提案することができます。
お困りの際はお気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

告訴の意味や方法,告訴と被害届・告発との違い,告訴を選択すべき場合や弁護士依頼すべき場合など,弁護士が徹底解説

●告訴とは何か?被害届とは違うのか?

●告訴と告発は何が違うか?

●告訴を選択するべき場合は?

●告訴を受理してもらえないことがある?

●告訴するとどうなるのか?

●告訴を取り下げることはできるか?

●告訴するときには弁護士に依頼すべきか?

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告訴とは

告訴とは,以下のように定義されています。

告訴とは
被害者その他一定の者が,捜査機関に対して,犯罪事実を申告し犯人の訴追を求める意思表示

①告訴できる人(主体)
主な告訴権者は,以下の通りです。

主な告訴権者
・被害者
・被害者の法定代理人(親権者・後見人)
・被害者死亡の場合はその親族(配偶者・直系親族・兄弟姉妹)

②告訴の内容

・犯罪事実を申告すること
・犯人の訴追を求めること

告訴と被害届の違い

告訴と被害届は,いずれも捜査機関に犯罪事実を申告する手続ですが,以下のような違いが挙げられます。

①申告する内容

被害届は,捜査機関に犯罪の事実を申告するものですが,それ以上に何かを求める意思表明が含まれた手続ではありません。文字通り,被害を届けるのみの手続となります。

一方,告訴の場合,犯罪事実を申告するとともに犯人の訴追(処罰)を求める意思表示が含まれます。犯人の処罰を求めない告訴はあり得ず,告訴がある以上は被害者が処罰を希望していると理解されます。

②捜査義務の有無

捜査機関が告訴を受理した場合,捜査を開始しなければなりません。警察等に捜査を尽くす義務が発生するとされている点で,告訴により捜査義務が生じると言われます。

一方,被害届にはそのような定めがなく,被害届を受理した後に捜査を行うかどうかは捜査機関の判断となります。少なくとも法的には,被害届の受理後に捜査を開始しなかったとしても問題ないということになります。

③処分結果の通知義務の有無

告訴された事件について,検察官が起訴又は不起訴の処分をした場合,検察官から告訴人にその処分結果が通知されます。検察官がこの通知をしなければならないという点で,告訴には処分結果の通知義務があると言われます。
また,告訴人がその理由の通知を求めた場合には,理由を告げる義務も発生します。

一方,被害届については,処分結果の通知に関する定めはありません。現実的には何らかの形で通知する方が通常ではありますが,通知がなかった場合でも法的な問題はないことになります。

④親告罪における処分

親告罪とは,起訴をするために告訴を要する事件をいいます。
代表例は器物損壊罪や名誉棄損罪ですが,被害者が起訴を望まない限り起訴する必要のない事件や,被害者の意向に反して起訴した場合に被害者のプライバシーなどを侵害する可能性がある事件では,告訴がなければ起訴ができないとのルールが定められています。

告訴がなければ親告罪の起訴はできませんが,被害届がなくても親告罪の起訴は可能です。

⑤期間制限

告訴については,期間制限の生じることがあります。
具体的には,親告罪(告訴がなければ起訴できない事件)の場合,原則として「犯人を知った日から六箇月」以内に告訴を行う必要があります。
なお,非親告罪については,告訴期間の制限はありません。

一方,被害届には提出期限の定めはありません。被害届というもの自体が法律に定められた書面ではないため,その提出期限も特に決まっていない,ということになります。

ポイント 被害届と告訴の違い
内容:告訴には犯人の訴追を求める意思表示が含まれる
捜査義務:告訴にのみ捜査義務がある
通知義務:告訴にのみ起訴不起訴の通知義務がある
親告罪:起訴するためには告訴が必要。被害届は不要
期間制限:親告罪の告訴に期限がある。被害届にはない

告訴と告発の違い

告発とは,以下のように定義されています。

告発とは
告訴権者や犯人でない第三者が,捜査機関に対して犯罪の事実を申告し,犯人の訴追を求める意思表示

企業による犯罪について,その従業員が公益保護のために行う場合などが代表例です。

告訴と告発には,以下のような共通点と相違点があります。

【共通点】

①犯罪事実の申告と犯人の訴追を求める意思表示であること
②捜査機関に捜査義務が発生すること
③起訴不起訴処分の通知義務が発生すること

【相違点】

①行う主体
告訴:被害者や法定代理人,遺族
告発:被害者及び犯人を除く第三者

②親告罪の取り扱い
告訴:なければ起訴不可
告発:なくても起訴可

告訴を選択すべき場合

被害者が捜査機関に犯罪事実を申告する場合,被害届を提出するか告訴を行うか,という選択肢が生じますが,告訴を選択すべき場合としては以下のケースが挙げられます。

①捜査機関に放置されている場合

被害届を提出しても捜査義務は発生しないため,捜査機関に十分な捜査がなされないまま,放置されたような状態が継続する可能性もあります。捜査機関側にも多忙などの事情があり,事件の優先順位を設ける必要がありますが,内部的に優先順位が低くされた結果,被害者目線では事件が放置されているように映ることが多数見られます。

このような場合には,捜査の優先順位を改めてもらい,多忙な捜査機関に放置されないようにするため,捜査義務のある告訴を選択することが有力な選択肢になるでしょう。

②処罰を求める意思をより強く表明したい場合

事件の最終的な処分には,被害者の処罰感情(加害者の処罰を希望するかどうかの気持ち)が強く反映される傾向にあります。被害者が加害者を処罰しないよう希望すれば,加害者は処罰されない可能性が非常に高くなり,逆に処罰を希望する場合には加害者が処罰される可能性が高くなります。

そのため,被害者の立場としては,処罰感情をより明確にするため,加害者の処罰を求める意思を強く表明することが有力な手段となり得ます。
告訴は,被害届と異なり犯人の訴追を求める意思表示を内容とするものであり,一般的に被害届よりも強い処罰感情の表明と理解されるものです。より強く処罰感情を示したい場合には,告訴を選択することが有益でしょうお。

③親告罪の場合

親告罪では,告訴をしなければ加害者が起訴される可能性がありません。そのため,被害届では不十分であり,告訴を選択する必要があります。
もっとも,親告罪であれば,捜査機関から告訴に関する案内がなされるのが通常です。捜査機関の案内に沿って対応すれば,問題の生じることは考えにくいところです。

④弁護士に依頼する場合

告訴を選択する場合の問題としては,その手続の煩雑さ,面倒さが挙げられます。被害届と異なり,より積極的に動く必要のある手続のため,比較的負担の大きな手続となることから,これを避けるために被害届を選択する場合があり得るでしょう。
また,警察の立場では,いずれの方法でも捜査を行うつもりである場合,被害届を選択してくれた方が法的な義務や負担がなく動きやすいため,警察は被害者に対して被害届を選択するよう促すことが多いと思われます。

もっとも,弁護士に対応を依頼する場合には,負担のある手続や警察とのやり取りを弁護士に任せられるため,心配なく告訴を選択することができます。捜査機関の対応を求めるという意味では,告訴が被害届に劣る要素はないので,負担なく告訴が選択できるのであればその方が適切でしょう。

ポイント 告訴を選択するメリット
捜査の放置を防げる
処罰感情をより明確に表明できる
親告罪を起訴してもらえる
弁護士に依頼すれば負担がなくなる

告訴を受理してもらえない場合

告訴は,被害届と比べて受理のハードルが高い傾向にあり,特に弁護士に依頼せず自分で行う場合には,受理を拒まれる場合が少なくありません。
告訴の受理が拒まれるケースとしては,以下のものが考えられます。

①犯罪が成立しない場合

明らかに犯罪が成立しない内容であると,告訴が受理されないことが見込まれます。

もっとも,内容が軽微である,証拠がないなど,「処罰に至らない可能性ある」というのみでは,告訴を不受理とするのは問題があるでしょう。処罰されるかどうかは,告訴を受理する段階で判断する事柄ではなく,捜査を尽くした結果,検察庁や裁判所で判断されるべきものであるためです。

②金銭問題(民事事件)の交渉道具とする場合

形式は犯罪捜査を求めているように見えても,実際は当事者の金銭問題の交渉道具にするための告訴である場合には,告訴が受理されないことがあり得ます。
警察は個人間の紛争には介入しないという,「民事不介入」の原則がその根拠になるところです。

もっとも,金銭問題の交渉道具としての告訴かどうかは,第三者から容易に判断できるものではないため,このような理由での告訴の不受理は不適切である場合も少なくないでしょう。
例えば,金額以外の示談条件は合意したが加害者が金額面で歩み寄ってくれない,という経緯での告訴など,交渉道具であることが明らかな場合には,告訴を受理しない対応も不合理とは言い難いところです。もっとも,そのような事情がないにもかかわらず「個人の争いだから民事不介入」とするのは不当である可能性が高いでしょう。

なお,被害者が加害者に金銭を請求したいと考えていたとしても,それによって告訴が受理されなくなるわけではありません。捜査や処罰を求める意思と,金銭賠償を求める意思は十分に両立し得るためです。

③当事者間で示談見込みの場合

犯罪事実の存在する可能性のあるものの,当事者間で示談が見込まれる状況にある場合,加害者の訴追を求める意思があるか不明確であるとの理由で告訴の受理を控えられることがあり得ます。

この場合,実際に示談が見込まれる状況なのか,示談でなく捜査や処罰を求めたいのか,という点を事前に明確にすることが望ましいでしょう。また,示談という言葉は一人歩きしやすいため,あまり安易に「示談予定」「示談中」などという言葉を捜査機関に告げない方が望ましいでしょう。

④犯罪事実の特定が困難な場合

犯人や犯罪の内容が特定できず,犯罪事実の特定に至らない場合です。犯罪であるかどうかわからない内容については,告訴の受理が困難であると判断されることがあり得ます。

このような問題は,事件が法的に整理できていないことに原因のある場合が多く,被害者本人が行う場合に特有のものです。つまり,被害者は事件内容をありったけ伝えたものの,捜査機関との間で話が整理できず,どの部分がどんな犯罪に当たるのか分からない,という場合に生じやすいところです。

事件の内容や経緯が複雑で,簡潔な説明が困難な場合には,事件を法的に整理して伝えることが適切です。具体的な対応は弁護士に依頼するのが円滑でしょう。

ポイント 告訴不受理の主なケース
犯罪に当たらない
金銭交渉の道具に過ぎない
既に示談が見込まれている
犯罪に当たる事実が特定できない

告訴を取り下げられるか

一度行った告訴は,告訴の取消という手続で取り下げることが可能です。

告訴を取り消した場合,告訴がなかったのと同じ状況になるため,親告罪では起訴される可能性がなくなり,非親告罪でも犯人の処罰を求める意思がなかったという扱いになります。

この点,告訴の取消について注意すべき点としては,以下の事項が挙げられます。

①取消の時期

告訴の取消は公訴提起(起訴)前に限られます。告訴の取消は,処罰を求める意思が後から消滅した,ということをその後の手続に反映するための処理ですが,起訴されてしまうと,告訴の取消を反映して不起訴にすることができなくなるためです。

②取消の回数

刑事訴訟法上,告訴の取消がされた場合,同一の事件でさらに告訴することができません。そのため,告訴の取消は,再度の告訴ができないことを前提に判断するのが適切です。

なお,再度の告訴ができないという刑事訴訟法の定めは,親告罪に対するものと理解されています。そのため,非親告罪であれば再度の告訴も不可能ではないと考えられます。もっとも,現実的には困難であることがほとんどなので,やはり再度の告訴はできないとの前提で検討すべきでしょう。

告訴は弁護士に依頼すべきか

告訴は,捜査機関に法律上の義務を負わせる手続でもあるため,被害者の方自身が容易に行えるものではありません。警察から求められて行う場合は別ですが,自ら積極的に告訴を試みる場合,必要な説明やできる限りの証拠の提出は,被害者側の負担と判断で行う必要があり,適切な対応には専門的な判断が必要になるでしょう。

また,告訴は行うことがゴールでなく,行ってからがむしろスタートであるとも言えます。告訴はあくまで犯罪被害からの救済を受けるための最初の動きであって,最終的に希望の結果に至るためには,その後も継続的な対応を要します。加害者の刑事処罰や加害者からの金銭賠償など,個別の対応も含めて弁護士への依頼が適切でしょう。

犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ

告訴は,被害届と並んで犯罪被害者が警察の捜査を求めるときに取り得る手段ですが,捜査機関に法的な義務が生じる手続のため,警察側も安易には受け付けられないという事情があります。
そのため,告訴を行う場合には,警察をしっかり味方に付けられるよう,適切な方法・内容で行うべきであり,必要に応じて弁護士と一緒に行うことをお勧めいたします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所は,刑事事件の経験豊富な弁護士が,専門的な知識・経験を踏まえて,犯罪被害にお悩みの方への最善のサポートを提案することができます。
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被害届って法的にどんな意味?被害届の提出の流れは?提出後はどうなる?受理してもらえないことがあるのはなぜ?被害者目線の徹底解説

●被害届とは何か?

●犯罪被害を受けた人が被害届を出すにはどうすればいいか?

●被害届を受理してくれないのはどういう場合か?

●被害届を提出した後の流れは?

●一度出した被害届は後からなかったことにできるか?

●被害届を出したい場合は弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,犯罪被害を受けた場合の被害届の提出についてお困りの方に向けて,被害届の意味や提出方法,提出前後の流れなどを解説します。

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被害届とは

①被害届の法的根拠

被害届とは,犯罪被害に遭った人が警察に対してその被害を報告するための文書です。警察が犯罪捜査を行う場合,この被害届の受理をきっかけに開始されることが非常に多く見られます。その意味で,被害届は刑事手続に関して非常に重要な地位にあるということができるでしょう。

もっとも,被害届というものについて法律の定めは特にありません。つまり,被害届という書面は法律にルールや根拠のある書面ではない,ということになります。
被害届については,犯罪捜査規範61条に以下のような定めがあります。

犯罪捜査規範61条
1項
警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
2項
前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第6号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。

犯罪捜査規範とは,警察官が犯罪の捜査を行う際の基本的な指針やルールを定めた規範を言います。警察の捜査活動が適正に行われるようにするために、具体的な手続きや方法、倫理的な基準などを詳細に定めた規範ですが,あくまで警察の内部的な規則に過ぎません。そのため,国民がこの内部規則に基づいて「被害届」と呼ばれる書面の受理を要求することはできません。
要するに,被害届は,警察に受理する義務がなく,国民が警察に受理を求める権利もない性質のものである,という理解になるところです。

②被害届を提出したときの効果

被害届については,法律の定めがないため,被害届を受理した場合の取り扱い方法についても特段のルールはありません。捜査を始める義務も,捜査を始めるときの手続に関する規則もなく,被害届を受理した後にどうするかは警察の判断にならざるを得ません。

もっとも,現実的には,合理的な内容の被害届を受理した場合には,警察署の担当課にて捜査が開始されるのが通常であるため,被害届の提出を行うことには十分な意味があると考えてよいでしょう。

ポイント
被害届という書面に関する法律の定めはない
被害届が提出された場合に法律上の効果が発生するわけでもない
もっとも,現実的には被害届の受理により捜査が開始される

被害届を提出する方法

①提出時期

被害届の提出時期に関するルールは特にありませんが,提出は犯罪被害を受けたあと早ければ早いほど望ましいでしょう。

被害届を受けた警察が捜査を行う際,犯罪事実や犯人を特定するための証拠が手に入るかは非常に大きな問題となります。この点,犯罪被害から時間が経過してしまっていると,既に証拠が散逸してしまっていて,捜査に必要な証拠の獲得が困難になってしまう可能性も否定できません。
また,重要な証拠の一つが被害者自身の供述(お話)ですが,時間が経てば経つほど記憶の詳細は薄れ,不明確になってしまうのが通常です。そのため,自分の供述がより重要な証拠価値を持つためにも,できるだけ早い動きが適切です。

②提出先

基本的には,事件が発生した場所を管轄する警察署に提出するのが適切でしょう。

場所については,犯罪捜査規範におけるルール上は管轄警察署でなくても構いませんが,現実にその捜査を行う警察署が管轄警察署になることを踏まえると,管轄の警察署へ直接提出をする方が端的であり,確実です。管轄のない警察署での提出を試みた場合,被害届の受理を拒まれる可能性も否定できません。
犯罪捜査規範を踏まえれば,管轄がないことを理由に被害届の受理を断ることはできないので,誤りを指摘すれば被害届の受理が見込まれますが,自ら進んでそのようなやり取りをするメリットはあまりないでしょう。
管轄のない警察署へ提出した場合,その後に管轄警察署への捜査協力も発生するため,二度手間になるという問題点もあります。

また,警察官がいれば,警察署でなく交番に提出する選択肢もあり得ますが,基本的には交番への提出でなく警察署への提出が適切でしょう。
交番は人員や捜査の体制に限りがあるため,事件の内容や規模によっては具体的に捜査を行うことが困難である場合も考えられます。捜査を行うことができない場合に被害届を受理することも難しいというお話になりやすいので,交番への提出は避ける方が合理的でしょう。

③提出内容

一般的には,被害者が警察に口頭で被害の申告を行い,その内容を警察にある被害届の書式に記載する方法で被害届とすることが大多数です。
被害届の書式は,犯罪捜査規範に定められたものがあり,そちらを用いるのが通常です。

被害届の書式

被害届の記載事項としては,以下のものが挙げられます。

・被害者の住居,職業,氏名,年齢
・被害の年月日時
・被害の場所
・被害の模様(詳細な内容)
・被害金品(品名・数量・時価・特徴・所有者)
・犯人の住居,氏名又は通称,人相,着衣,特徴等
・遺留品その他参考となるべき事項

被害届の提出を試みる場合は,これらの事項をできる限り伝えられるようにした上で,警察署に相談するのが適切です。

④提出者

被害届の提出者に関する制限はありませんが,基本的には被害者本人が提出すべきでしょう。

被害届を受理した場合,警察は犯罪捜査を開始することになりますが,被害者の供述を聞くことができなければ捜査が進まないため,現実的に被害届の受理が困難になってしまいます。被害者本人が提出し,事情や内容を直接説明するのが円滑です。

なお,被害者が幼い場合や死亡している場合など,被害者本人が被害を説明できない事情があるケースでは,親権者や遺族などの関係者(代理人)による提出も差し支えないでしょう。

ポイント 被害届の提出
被害届の提出時期はできるだけ早く
被害届の提出先は「事件発生場所を管轄する」「警察署」が望ましい
被害届の提出内容は,被害届の様式に沿うのが通常
提出者は基本的に被害者本人

被害届を受理してもらえない場合

捜査機関の内部規則である犯罪捜査規範には,以下のような定めがあります。

犯罪捜査規範61条1項
警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。

しかしながら,現実的に被害届の受理を拒まれる場合はあり得るところです。被害届を受理してもらえない場合の具体的な理由としては,以下のようなものが挙げられます。

①犯罪被害に該当するかが明確でない場合

被害届は,犯罪による被害の届出であることが必要です。そのため,被害届の内容となっている事項が犯罪でない場合は,被害届が受理されない可能性が生じるでしょう。

②金銭請求の道具として被害届を利用しようとしている場合

被害者が加害者に対する金銭請求(損害賠償請求)を目的としている場合,加害者への心理的圧迫の手段として被害届を利用する可能性が考えられます。被害届は,犯罪の事実を申告して捜査を求めるためのものであるため,金銭請求や金額交渉の手段でしかないと思われる被害届は受理されない可能性があります。

③専ら警察官の裁量的判断である場合

多忙である,管轄違いである,被害者の言い分だけでは証拠不足である等,警察官が独自の理由で被害届の受理を拒む場合も考えられます。
これらは,被害届を受理しない理由とはなりません。多忙である場合はもちろん,管轄違いであっても受理するのが犯罪捜査規範の定めですし,捜査はまさに証拠を収集するものであるのですから,証拠不足を理由に捜査しないという対応に合理性はありません。

合理的な理由に乏しく,専ら警察官の裁量的判断で被害届が受理されなかった場合には,弁護士に依頼するなどして警察の対応を改めてもらうのが適切でしょう。

被害届提出後の流れ

①警察による捜査

被害届が提出されると,まず捜査が行われます。
もっとも,捜査の始まるタイミングや方法・内容はケースにより,また警察の担当課・担当官にもよるところです。

この点では,事件が放置されないかを特に注視するとよいでしょう。
被害届を提出しても犯罪捜査を行う義務が生じないため,犯罪捜査が行われないままズルズルと時間だけが経過していく可能性も否定できません。その場合には,捜査義務の発生する告訴の手段も含め,より慎重に対応を検討していくのが望ましいです。

また,捜査が開始された後は,事情聴取や実況見分といった捜査への協力を求められることが見込まれます。協力の義務はありませんが,捜査に不可欠な協力であるため,可能な範囲で協力するのが適切でしょう。

②検察への送致

警察が捜査を行った上で,被疑者や犯罪事実を特定すると,その内容を検察庁に送致します。逮捕した状態で送る場合はその身柄が,逮捕をしない状態(在宅事件)で送る場合は書類だけが(書類送検),それぞれ送致されます。

送致を受けた検察庁では,さらに捜査を尽くし,事件の処分を検討します。その過程で,被害者も担当検察官から話を聞かれるなどすることが見込まれます。

③起訴又は不起訴

検察官は,捜査を尽くした結果,被疑者を起訴するか不起訴にするか決めます。
起訴した場合は,裁判所による刑罰の判断の対象となり,不起訴となった場合には刑罰なく事件の手続が終了します。

④裁判

検察官が起訴した事件は,裁判所によって刑罰を判断する対象になります。
事件によっては,被害者も裁判所に出頭の上,証人尋問を受ける可能性があり得ます。もっとも,被害者が裁判に出る必要があるのは,否認事件などの限られた場合のみです。

被害届の取り下げ

被害届については,事後的な取下げを受け付ける運用がされています。被害届の取下げがなされると,被害者が加害者の処罰を求めないという意思であると理解されるため,加害者が刑事処分を受ける可能性は非常に低くなるでしょう。

なお,被害届の取下げは特に法律等に定めがないため,法的には被害届の取下げという手続は存在しません。実際の運用としては,被害者が被害届を出した後,そこで示した捜査や処罰の希望を撤回する意思表明の手段として,便宜上,被害届の取下げという形が取られています。

被害届を出したい場合には弁護士に依頼すべきか

被害届は,弁護士に依頼せず,被害者が自ら警察に相談して提出し,受理してもらうことも可能です。

もっとも,被害者が自分だけで警察に相談し,必要な対応を尽くし,適切に被害届を受理してもらうことは決して容易ではありません。特に,内容や経緯が複雑な事件や,客観的証拠が明確でない事件など,警察が円滑に対応できない可能性のある事情があるケースでは,被害届の提出に精通した弁護士への依頼が適切でしょう。

また,被害届が受理されなかった場合,断った警察の対応が適切だったのか,不適切で誤りを正してもらうべきなのか,という点は,法律の専門家による判断が望ましいところです。被害届の受理に難色を示された場合には,弁護士に相談等の上で適切な対処をするのが適切でしょう。

犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ

犯罪被害を受けた場合には,警察に捜査を依頼することが必要不可欠ですが,捜査を求めるための最も代表的な手段が被害届の提出です。
もっとも,被害届を提出しようと思っても,やり方を誤ると警察の協力を十分に得られない可能性があるため,弁護士に相談するなどして適切な方法で行うのが適切でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所は,刑事事件の経験豊富な弁護士が,専門的な知識・経験を踏まえて,犯罪被害にお悩みの方への最善のサポートを提案することができます。
お困りの際はお気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

【交通事故】後遺障害認定の基準は?後遺障害認定を得る方法は?後遺障害認定に対する金額は?部位別に詳細解説

交通事故などで負ったケガが治った後も、痛みや機能障害などが残る場合、「後遺障害」として認定される可能性があります。後遺障害に該当するかどうかは、賠償金額を大きく左右する非常に重要なポイントですが、その認定基準や手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。
また、部位や症状ごとに評価のポイントも異なるため、適切な等級認定を受けるには慎重な準備が欠かせません。

この記事では、後遺障害認定の基準や取得方法、認定されることで受け取れる可能性のある賠償金額について、部位別の基準も含めて詳細解説します。

後遺障害認定とは

後遺障害認定とは、交通事故でケガをした後、治療を続けても完全には治らず、痛みやしびれ、関節の動かしにくさなどの症状が体に残ってしまった場合に、その障害を公的に「後遺障害」として認めてもらうための制度です。認定は自賠責保険の基準に基づいて行われ、症状の重さに応じて1級から14級までの等級が決まります。この等級は、その後に受け取れる保険金や損害賠償の金額に大きく影響します。

後遺障害認定は弁護士への依頼が適切

後遺障害認定には、事前認定又は被害者請求という二つの方法があります。この点、積極的に後遺障害認定を目指す場合には、弁護士に依頼をして被害者請求を行ってもらうことが望ましいでしょう。

【後遺障害認定を獲得する2つの手続】

1.事前認定
対人賠償保険(被害者の人身損害を賠償する加害者側の保険)が,自賠責保険会社に提出する際の方法です。自社の賠償額を算定するため,事前に後遺障害等級認定を求める手続のため,事前認定と呼ばれます。

2.被害者請求
被害者側が,対人賠償保険を通さずに自ら自賠責保険会社に提出する際の方法です。
被害者が自ら自賠責保険会社への請求を行うため,被害者請求と呼ばれます。

3.両者の違い
両者の主な違いは,以下の通りです。

項目【事前認定】【被害者請求】
提出する人対人賠償保険被害者自身
提出書面必要書類一式必要書類以外も提出可
提出物の収集保険会社が行う被害者自身が行う

被害者請求では、必要最小限の書類のみならず、後遺障害認定のため有益と思われる資料を加えて提出できる、という点に大きな特徴があります。この被害者請求は、弁護士に依頼しなくても行うこと自体は可能ですが、以下の各点を踏まえると弁護士に依頼することが有益です。

被害者請求を弁護士に依頼すべき理由

・どのような資料を収集・提出するべきかを専門的に判断してもらえる
・提出書類の取得や整理を代わりにやってもらえる
・通院中や診断書作成時のアドバイスも受けられる
・後遺障害認定の後の金額交渉も依頼できる

後遺障害認定された場合の賠償金

後遺障害等級が認定された場合の,被害者への基本的な支払内容は以下の通りです。

①慰謝料

慰謝料とは,精神的苦痛に対する賠償を指します。後遺障害等級の対象になる症状が残存したことに対する精神的苦痛を金銭換算したものがが,後遺障害慰謝料です。
慰謝料の金額は等級によって異なります。等級ごとの後遺障害慰謝料額は,以下の通りです。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

②逸失利益

後遺障害の逸失利益とは,後遺障害が生じたことによって労働能力が低下した結果,減少する収入額に応じた賠償を指します。
後遺障害等級が認定される場合,等級に応じて労働能力が一定程度減少したものと評価され,労働能力が低下した分だけ将来の収入が減少するものとみなします。その収入減少を逸失利益といい,後遺障害等級が認定された場合には賠償の対象となります。

具体的な計算方法については,こちらの関連記事をご参照ください

むち打ちに関する後遺障害認定基準

むち打ちに対する後遺障害等級は,等級認定基準との関係では「神経症状」というものに位置付けられます。これは,交通事故の外傷によって神経系統に異常を来した結果,痛みや痺れといった神経への症状が残存する後遺障害を一般的に指すものです。

具体的な等級とその認定基準は,以下の通りです。

等級認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

後遺障害等級は,1級から14級まであり,1級が最も上位の(=重い)後遺障害です。神経症状については,12級の方がより上位の後遺障害等級となります。

また,それぞれの認定基準を満たしているかどうかの具体的な考え方は,以下の通りです。

12級13号症状が医学的に証明できる場合
(画像所見などの他覚的所見によって客観的に認められる場合)
14級9号症状が医学的に説明できる場合
(他覚的所見はないものの,受傷内容や治療経過を踏まえると症状の存在が医学的に推定できる場合)

したがって,画像所見など,第三者が客観的に確認できる所見がある場合は12級の認定される可能性があり,そのような客観的な所見がない場合は14級の認定を目指すことになります。

むち打ちに関する後遺障害認定については、以下の記事でも詳細に解説しています。
https://www.fujigakilaw.com/koutsu47/

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脊柱に関する後遺障害認定の種類と基準

【変形障害】

圧迫骨折や破裂骨折に伴って脊柱部の変形が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい変形を残すもの
8級脊柱に中程度の変形を残すもの
11級脊柱に変形を残すもの

具体的基準

脊柱に著しい変形を残すもの(6級)
1.複数の椎体の圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体1個分以上低くなっている場合
2.圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体2分の1個分以上低くなっており、かつ、コブ法による側彎度が50度以上ある場合

脊柱に中程度の変形を残すもの(8級)
1.圧迫骨折で前方椎体高の合計が後方椎体高の合計より椎体2分の1個分以上低くなっている場合
2.側彎度が50度以上となっている場合
3.環椎(第一頚椎)または軸椎(第二頚椎)の変形・固定により次のいずれかに当てはまる場合
a.60度以上の回旋位となっている
b.50度以上の屈曲位となっている
c.60度以上の伸展位になっている
d.側屈位となっており、矯正位(頭部を真っ直ぐにした姿勢)で頭蓋底部と軸椎下面の平行線の交わる角度が30度以上となっている

脊柱に変形を残すもの(11級)
1.圧迫骨折が生じ、そのことがエックス線写真等で確認できる場合
2.脊椎固定術が行われた場合
3.3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けた場合

【運動障害】

圧迫骨折などの結果,脊柱部の運動機能に制限が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級脊柱に運動障害を残すもの

具体的基準

脊柱に著しい運動障害を残すもの(6級)
次のいずれかにより頚部および胸腰部が強直したもの
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

脊柱に運動障害を残すもの(8級)
次のいずれかにより頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
①頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,そのことがX線写真等により確認できるもの
②頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

【荷重障害】

脊柱を支える筋肉や組織の変化に伴い,荷重機能に制限が生じる後遺障害です。

等級基準
6級脊柱に著しい荷重障害を残すもの(運動障害に準じて取り扱う)
8級脊柱に荷重障害を残すもの(運動障害に準じて取り扱う)

具体的基準

6級:頚部および腰部の両方の保持に困難があり,常に硬性補装具を必要とする場合
8級:頚部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とする場合

【がある場合は12級の認定される可能性があり,そのような客観的な所見がない場合は14級の認定を目指すことになります。

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脳に関する後遺障害認定の種類と基準

脳の損傷に関する後遺障害等級としては,以下のようなものが挙げられます。

脳の損傷に関する後遺障害等級の主な類型
①高次脳機能障害
②外傷性てんかん
③遷延性意識障害
④神経症状(脳挫傷痕に関するもの)

【高次脳機能障害】

頭部外傷の影響で,認知機能,行動制御能力,記憶能力などに制限の生じる後遺障害です。

等級基準
1級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

【外傷性てんかん】

脳の中枢神経が損傷したことにより,神経細胞に異常が生じ,発作が発生する障害です。発作の頻度や程度に応じた後遺障害等級の定めがあります。

等級基準具体的な要件
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの1ヶ月に1回以上の発作があり、かつその発作が転倒する発作等(※)であるもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの
12級局部に頑固な神経症状を残すもの発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波(きょくは)を認めるもの
※転倒する発作:①意識障害の有無を問わず転倒する発作,又は②意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作

【遷延性意識障害】

遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)とは,脳挫傷の影響で意識が戻らない状態,いわゆる植物状態になった場合です。

具体的には,治療にもかかわらず以下の6つの症状が3か月以上続いた場合,遷延性意識障害の診断対象になるとされています。

①自力で移動できない
②自力で食事ができない
③糞・尿の失禁がある
④言葉を発せても意味のある発語ができない
⑤意思疎通がほとんどできない
⑥眼球が動いたとしても何も認識できない

等級基準
1級(要介護)神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

【脳挫傷痕】

MRI等で脳挫傷痕の存在が認められ,頭痛や神経痛等の症状を引き起こす場合です。

等級基準
12級局部に頑固な神経症状を残すもの

脳の後遺障害認定に関しては、以下の記事でも詳細に解説しています。
交通事故で脳の後遺障害認定はどうなる?高次脳機能障害が認定されるためのポイントや進め方を詳細解説

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醜状障害に関する後遺障害認定の種類と基準

醜状障害は,人の目につく人体の露出面に,目立つ傷跡が残った場合の後遺障害をいいます。醜状の具体的な内容としては,瘢痕や線状痕,組織の陥没,色素沈着による変色などが挙げられます。

また,醜状障害が認定される部位としては,以下のものが挙げられます。

醜状障害の対象部位
①外貌(頭部・顔面部・頸部)
②上肢又は下肢の露出面
③日常露出しない部位(胸部・腹部・背部・臀部)

醜状障害が後遺障害等級に認定されるかどうかは,自賠責の損害調査を行う「損害保険料率算出機構」によって判断されます。実際には,全国各地の自賠責損害調査事務所において,管轄地域の後遺障害等級認定を行うことになります。

調査事務所では,診断書上に記録された醜状の内容や程度,当該部位の撮影写真,さらには面談を行って目視したときの状態などを踏まえ,後遺障害等級に該当するかを判断します。もっとも,具体的にどこまでの調査を行うのかは,基本的に調査事務所側の判断となっています。

ポイント
醜状障害は人体の露出面における傷跡が後遺障害とされるもの
醜状障害の主な対象部位は,外貌(頭部・顔面部・頸部)と上下肢
醜状障害の判断は,診断書・写真・面談等を通じて行う

【外貌】

外貌の醜状に関する後遺障害等級には,以下のものがあります。

等級基準
7級12号外貌に著しい醜状を残すもの
9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの
12級14号外貌に醜状を残すもの

この中では,7級が最も上位の後遺障害等級であり,醜状の程度も最も著しい場合となります。
そして,具体的な認定基準は,等級ごと及び部位ごとに定められており,その内容は以下の通りです。

7級12号「外貌に著しい醜状を残すもの」

部位基準
頭部手のひら大(指の部分を含まず)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
顔面部鶏卵大面以上の瘢痕、又は10円銅貨代以上の組織陥没
頚部手のひら大以上の瘢痕

9級16号「外貌に相当程度の醜状を残すもの」

部位基準
顔面部5cm以上の線状痕で、人目につく程度のもの

12級14号 外貌に醜状を残すもの

部位基準
頭部鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
顔面部10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
頚部鶏卵大面以上の瘢痕

なお,瘢痕の大きさや線状痕の長さを確認する際には,以下の点に注意を要します。

①人目につくことが必要
→眉や髪で隠れる部分は醜状として扱われません。また,アゴの下で正面から見えない部分も対象外となります。これらの部分を除いた長さや面積を計測します。

②2つ以上の傷跡がある場合の判断方法
→複数の傷跡は,それらが一体となっている場合,一体となっている面積や長さを合算した数値で等級が判断されます。

③事故時に生じたものでない醜状の取り扱い
→治療中に生じた手術痕や,やけど等の治療後に生じた色素沈着なども,醜状障害の対象に含まれます。

ポイント 外貌醜状
等級は7級,9級,12級
それぞれ,頭部・顔面部・頸部の醜状が対象になり得る

【上肢下肢】

上下肢の場合,その露出面が対象になります。露出面とは以下の通りです。

「露出面」とは
上肢 肩関節から先(指先まで)
下肢 股関節から先(足の背部まで)

そして,上下肢の露出面に関する後遺障害等級には,いかのものがあります。

等級基準
14級4号上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
14級5号下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

また,上下肢の露出面における醜状障害がさらに重い場合は,以下の等級に該当する場合があります。

等級基準
12級相当・上肢の露出面に手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕を残し、特に著しい醜状であると判断されるもの

・下肢の露出面に手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕を残し、特に著しい醜状であると判断されるもの

なお,「手のひらの大きさを相当程度超える瘢痕」とは,手のひらの3倍程度以上の大きさの瘢痕を指すとされています。

ポイント 上下肢露出面の醜状
手のひら大の場合,14級
手のひらの3倍以上の場合,12級相当

【日常露出しない部位】

日常露出しない部位(=胸部・腹部・背部・臀部)については,その全面積の4分の1程度を超える場合,後遺障害等級に該当する可能性があります。具体的な基準は以下の通りです。

等級基準
12級相当全面積の1/2程度を超える瘢痕
14級相当全面積の1/4程度を超える瘢痕
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上肢・手指に関する後遺障害認定の種類と基準

上肢とは肩や腕のことを指します。交通事故の結果,骨折や脱臼が生じるなどすると,治療を尽くしても事故前の状態には戻らず,後遺障害の対象となることがあります。

上肢及び手指の後遺障害としては,以下のものが挙げられます。

上肢の後遺障害

欠損障害上肢の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害関節(肩関節・肘関節・手関節)の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
変形障害上肢の骨折部が曲がったまま癒合するなどした結果,変形が生じたことに関する後遺障害

手指の後遺障害

欠損障害手指の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害①手指の関節の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
②手指の一部を失ったうち,欠損障害に該当しないものに関する後遺障害

【上肢の欠損障害】

①両上肢を失った場合

等級基準
1級3号両上肢をひじ関節以上で失ったもの
2級3号両上肢を手関節以上で失ったもの

②1上肢を失った場合

等級基準
4級4号1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5級4号1上肢を手関節以上で失ったもの

③具体的な認定基準

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.肩関節において、肩甲骨と上腕骨とを離断したもの
2.肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
3.ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの

「上肢を手関節以上失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.ひじ関節と手関節との間で切断したもの
2.手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

【上肢の機能障害】

①上肢の用を全廃したもの

等級基準
1級4号両上肢の用を全廃したもの
5級6号1上肢の用を全廃したもの

「上肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

三大関節(肩関節・肘関節・手関節)の全てが強直(※)している
かつ
手指の全部の用を廃している

※関節が可動性を失い,動かなくなった状態

②関節の用を廃したもの

等級基準
6級6号1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

③関節の機能に著しい障害を残すもの

等級基準
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
2.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2分の1以下に制限されていないもの

④関節の機能に障害を残すもの

等級基準
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「関節の機能に障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合

⑤可動域の測定方法

【主要運動】

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
上肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
肩関節①屈曲(前方拳上)180度
肩関節②外転(側方拳上)180度
肘関節屈曲・伸展(※)145度・5度(合計150度)
手関節屈曲(掌屈)・伸展(背屈)(※)90度・70度(合計160度)
※肘関節と手関節は,「屈曲+伸展」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

肩関節の運動

肘関節の運動

【参考運動を用いる場合】

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
肩関節①伸展(後方拳上)50度
肩関節②外旋・内旋60度・80度(合計140度)
手関節①橈屈25度
手関節②尺屈55度

【上肢の変形障害】

①偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

 偽関節とは,骨折した部位が変形癒合し,関節でない部分が曲がって関節のようになってしまった状態を指します。関節のようだが関節ではない,ニセの関節というべきものです。

 偽関節に関する後遺障害は2つの種類があり,硬性補装具を必要とするかどうかにより区別されます。硬性補装具を要する場合,以下の等級に該当します。

等級基準
7級9号1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの
2.橈骨及び尺骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの

②偽関節を残すもの

等級基準
8級8号1上肢に偽関節を残すもの

「偽関節を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
2.橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
3.橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

③長管骨に変形を残すもの

等級基準
12級8号長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
2.橈骨及び尺骨の両方に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
3.上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの
4.橈骨又は尺骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、硬性補装具を必要としないもの
5.上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
6.上腕骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
7.橈骨又は尺骨(骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少したもの
8.上腕骨が50度以上、外旋又は内旋で変形癒合しているもの

(「障害認定必携」より引用 再掲)

【手指の欠損障害】

①「手指を失ったもの」

等級基準
3級5号両手の手指の全部を失ったもの
6級8号1手の5の手指またはおや指を含み4の手指を失ったもの
7級6号1手のおや指を含み3の手指またはおや指以外の4の手指を失ったもの
8級3号1手のおや指を含み2の手指またはおや指以外の3の手指を失ったもの
9級12号1手のおや指またはおや指以外の2の手指を失ったもの
11級8号1手のひとさし指、なか指またはくすり指を失ったもの
12級9号1手のこ指を失ったもの

「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。

1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

②「手指の一部を失ったもの」

等級基準
13級7号1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
14級6号1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

1指骨の一部を失っていること(遊離骨片の状態を含む)がX線写真より確認できるものを指します。

【手指の機能障害】

①「手指の用を廃したもの」

等級基準
4級6号両手の手指の全部の用を廃したもの
7級7号1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
8級4号1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
9級13号1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
10級7号1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
12級10号1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
13級6号1手のこ指の用を廃したもの

「手指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.中手指節関節又は近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が1/2以下に制限されるもの
3.親指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が1/2以下に制限されるもの
4.手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚完全に脱失したもの

(「障害認定必携」より引用 再掲)

②「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」

等級基準
14級7号1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.遠位指節間関節が強直したもの
2.屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないもの又はこれに近い状態にあるもの

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下肢・足指に関する後遺障害認定の種類と基準

下肢は,人体の股関節より下の部位をいい,具体的には大腿骨,下腿(脛骨及び腓骨),足根骨,中足骨で構成されます。交通事故の結果,骨折や脱臼が生じるなどした場合に,治療を尽くしても事故前の状態には戻らず,後遺障害の対象となることがあります。

下肢及び足指の後遺障害としては,以下のものが挙げられます。

下肢の後遺障害

欠損障害下肢の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害関節(股関節、膝関節、足関節)の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
変形障害下肢の骨折部が曲がったまま癒合するなどした結果,変形が生じたことに関する後遺障害
短縮障害下肢(股から足までの間)の長さが短くなったことに関する後遺障害

足指の後遺障害

欠損障害足指の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害①足指の関節の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
②足指の一部を失ったうち,欠損障害に該当しないものに関する後遺障害

【下肢の欠損障害】

①両下肢を失った場合

等級基準
1級5号両下肢をひざ関節以上で失ったもの
2級4号両下肢を足関節以上で失ったもの
4級7号両足をリスフラン関節以上で失ったもの

②1下肢を失った場合

等級基準
4級5号1下肢をひざ関節以上で失ったもの
5級5号1下肢を足関節以上で失ったもの
7級8号1足をリスフラン関節以上で失ったもの

③具体的な認定基準

「下肢をひざ関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.股関節おいて、寛骨と大腿骨とを離断したもの
2.股関節とひざ関節との間において切断したもの
3.ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの

「下肢を足関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.ひざ関節と足関節との間で切断したもの
2.足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの

「リスフラン関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.足根骨(腓骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨)において切断したもの
2.リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離団したもの

(「障害認定必携」より引用)

【下肢の機能障害】

①下肢の用を全廃したもの

等級基準
1級6号両下肢の用を全廃したもの
5級7号1下肢の用を全廃したもの

「下肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

3大関節(股関節、ひざ関節、及び足関節)の全てが強直(※)した場合
(3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直した場合も含まれる)

※「強直」:関節が全く可動しない場合,又はこれに近い状態(※※)である場合
※※「これに近い状態」:自動の可動域が10%以下になった場合

②関節の用を廃したもの

等級基準
6級7号1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級7号1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

③関節の機能に著しい障害を残すもの

等級基準
10級11号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
2.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されていないもの

④関節の機能に障害を残すもの

等級基準
12級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「関節の機能に障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合

⑤動揺関節

動揺関節とは,骨折部の癒合不全や靭帯の断裂などが原因となって,関節の安定性が失われてしまったために,関節がグラグラして安定しなかったり,本来曲がらない方向に曲がってしまったりと,異常な関節運動の起きる状態を言います。膝関節の靭帯損傷に際して発生する場合が多く見られます。
自賠責保険の後遺障害等級認定基準には設けられていないものの,労災保険の認定基準に準じ,関節機能障害の一種として認定される運用となっています。

等級基準
8級7号相当
(用廃)
常に硬性補装具を必要とするもの
10級11号相当
(著しい障害)
時々硬性補装具を必要とするもの
12級7号相当
(障害)
重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの

⑥可動域の測定方法

【主要運動】

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
下肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
股関節①屈曲・伸展125度・15度(合計140度)
股関節②外転・内転145度・20度(合計65度)
ひざ関節屈曲・伸展130度・0度(合計130度)
足関節屈曲(底屈)・伸展(背屈)45度・20度(合計65度)
「屈曲+伸展」「外転+内転」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

股関節の主要運動

足関節の主要運動

【参考運動を用いる場合】

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
股関節外旋・内旋45度・45度(合計90度)

【下肢の変形障害】

①偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

 偽関節とは,骨折した部位が変形癒合し,関節でない部分が曲がって関節のようになってしまった状態を指します。関節のようだが関節ではない,ニセの関節というべきものです。

 偽関節に関する後遺障害は2つの種類があり,硬性補装具を必要とするかどうかにより区別されます。硬性補装具を要する場合,以下の等級に該当します。

等級基準
7級10号1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの
2.脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残し,常に硬性補装具を必要とするもの
3.脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残し,常に硬性補装具を必要とするもの

②偽関節を残すもの

等級基準
8級9号1下肢に偽関節を残すもの

「偽関節を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.大腿骨の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
2.脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
3.脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

③長管骨に変形を残すもの

等級基準
12級8号長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.大腿骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
2.脛骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
3.大腿骨の骨端部に癒合不全を残すもの
4.脛骨の骨端部に癒合不全を残すもの
5.腓骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもの
6.大腿骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
7.脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
8.大腿骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
9.脛骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
10.大腿骨が外旋45度以上(=股関節の内旋が0度を超えて可動できない)又は、内旋30度以上(=股関節の外旋が15度を超えて可動できない)で変形癒合しているもの

【下肢の短縮障害】

等級基準
8級5号1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

下肢の短縮は,上前腸骨棘と下腿内果下端の間の長さを健側の下肢と比較して等級認定を行います。

【足指の欠損障害】

等級基準
5級8号両足の足指の全部を失ったもの
8級10号1足の足指の全部を失ったもの
9級14号1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
10級9号1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
12級11号1足の第2の足指を失ったもの
第2の足指を含み2の足指を失ったもの
第3の足指以下の第3の足指を失ったもの
13級9号1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

「足指を失ったもの」とは,足指を中足指節関節から失ったことを指します。つまり,足指をすべて失った場合を指すことになります。

(「障害認定必携」より引用)

【足指の機能障害】

等級基準
7級11号両足の足指の全部の用を廃したもの
9級15号1足の足指の全部の用を廃したもの
11級9号1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
12級12号1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13級10号1足の第2の足指の用を廃したもの
第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの
第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
14級8号1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

「足指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.親指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.親指以外の足指について、中節骨又は基節骨で切断したもの
3.親指以外の足指について、遠位指節間関節又は近位指節間関節で離断したもの
4.親指の中足指節間関節又は指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
5.親指以外の足指の中足指節間関節又は近位指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの

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眼に関する後遺障害認定の種類と基準

眼球の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

視力障害視力の低下に関する後遺障害
調節機能障害ピントを合わせる機能に関する後遺障害
運動障害眼球の動きに制限が生じたり,複視が生じたりする後遺障害
視野障害視野の広さに制限が生じる後遺障害

まぶしさを調節する機能に障害(外傷性散瞳)が生じる場合,別途後遺障害等級が認定されることがあります。

また,まぶたに関する後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

欠損障害まぶたの全部又は一部を失ったことに関する後遺障害
運動障害まぶたの開閉をするための運動機能に制限が生じる後遺障害

【視力障害】

失明及び視力低下が生じた場合に認められる後遺障害です。
視力障害に関する具体的な後遺障害等級は,以下の通りです。

①両眼の視力障害

等級基準
1級1号両眼が失明したもの
2級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
2級2号両眼の視力が0.02以下になったもの
3級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
4級1号両眼の視力が0.06以下になったもの
5級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
6級1号両眼の視力が0.1以下になったもの
7級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
9級1号両眼の視力が0.6以下になったもの

②1眼の視力障害

等級基準
8級1号1眼が失明し又は1眼の視力が0.02以下になったもの
9級2号1眼の視力が0.06以下になったもの
10級1号1眼の視力が0.1以下になったもの
13級1号1眼の視力が0.6以下になったもの

③注意事項

【失明について】

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

・光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
・手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

【視力について】

後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【両眼に障害がある場合の等級】

両眼に視力の障害がある場合,1眼ごとの視力障害とどちらを認定すべきかが問題となりますが,この点のルールは以下の通りです。

両眼に障害がある場合
①両眼の視力障害に関する等級で認定し,1眼ごとの等級を併合することはしない
②両眼の等級よりもいずれか1眼の等級の方が上位である場合,1眼のみに障害があるものとみなしてより上位の等級を認定する

(例1)
右が0.1,左が0.02の場合
両眼:6級1号
1眼:8級1号(左について)
→6級1号が認定される(①のルールにより)

(例2)
右が0.6,左が0.02の場合
両眼:9級1号
1眼:8級1号(左について)
→8級1号が認定される(②のルールにより)

したがって,両眼の等級が原則であり,1眼のみの方がこれより上位の場合には例外的に1眼の等級を認定する,ということになります。

【調節機能障害】

等級基準
11級1号両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
12級1号1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

「著しい調節機能障害」とは以下の場合を指します。

著しい調節機能障害
眼の調節力が損傷を受けなかった方の他眼に比して2分の1以下に減じたもの

(注意事項)
①両眼とも損傷を受けた場合,損傷していない眼の調節機能に異常がある場合は,年齢別の調整力と比較する
②以下のいずれかに当たる場合は障害認定されない
・損傷していない眼の調整力が1.5D以下であるとき
・55歳以上であるとき

5歳ごとの年齢別の調整力

年齢(歳)調整力(ジオプトリー(D))
159.7
209.0
257.6
306.3
355.3
404.4
453.1
502.2
551.5
601.35

【運動障害】

眼球の運動を維持する筋肉(眼筋)の一個又は数個が麻痺することにより,眼球が偏ってしまうことがあります。
この偏りによる注視野の減少や複視に関する障害が,運動障害です。

等級基準
10級2号正面を見た場合に複視の症状を残すもの
11級1号両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
12級1号1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
13級2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

「眼球に著しい運動障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

「眼球に著しい運動障害を残すもの」
=眼球の注視野が2分の1以下に減じたもの

注視野とは
頭部を固定した状態で眼球を動かして直視できる範囲
平均値は単眼視で各方面50度,両眼視で各方面45度とされています。

「複視」は,1つの物体が2つに見えることをいい,以下の全てを満たす場合を指します。

「複視を残すもの」

1.本人が複視のあることを自覚していること
2.眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること
3.ヘススクリーンテストにより患側の像が健側に比して5度以上離れた位置にあること

なお,10級と13級の差異は以下の通りです。
「正面を見た場合に複視の症状を残すもの」(10級)
→正面視で複視が中心の位置にあること
「正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの」(13級)
→それ以外の場合

【視野障害】

等級基準
9級3号両眼に半盲症、視野狭窄、又は視野変状を残すもの
13級3号1眼に半盲症、視野狭窄、又は視野変状を残すもの

「半盲症」とは

「半盲症」とは
視野の右半分又は左半分が欠損し,見えなくなってしまう症状をいいます。以下のような種類があります。
同側半盲:両眼の同じ側で半盲が生じる場合
異名半盲:両眼のそれぞれ反対側で半盲が生じる場合

また,視野の上半分または下半分が欠損する場合もあり,「水平半盲」といいます。

「視野狭窄」とは

「視野狭窄」とは
視野が狭くなる症状をいいます。以下のような種類があります。
同心性狭窄:中心部分ははっきり見えるが,周辺部分が見えない
不規則狭窄:視野の一部分が規則性のない形で狭くなる

「視野変状」とは

「視野変状」とは
半盲症や視野狭窄のほか,視野に異常が生じることをいいます。具体的には以下の内容があります。
暗転:視野の中に暗くて見えない部分が生じるもの
視野欠損:視野の一部が見えなくなる状態

【散瞳】

散瞳とは,瞳孔の動きに異常が生じた結果,まぶしさを感じてしまうものをいいます。
瞳孔は,光の刺激を受けると小さくなり,眼に取り込む光の量を調節する機能を有します。これを対光反射と言いますが,対光反射に異常が生じると瞳孔が開いた状態(=散瞳)となり,光の刺激を弱めることができずまぶしさを感じてしまいます。

外傷性散瞳に関する後遺障害等級は,以下の通りです。

【両眼】

等級基準
11級相当両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
12級相当両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの

【1眼】

等級基準
12級相当1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
14級相当1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの

【まぶたの欠損障害】

等級基準
9級4号両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
11級3号1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
13級4号両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
14級1号1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

【具体的基準】

「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは
まぶたを閉じた場合に角膜(眼球の色がある部分を覆う膜)を完全に覆えない程度のもの

「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは
まぶたを閉じた場合に、角膜を完全に覆うことができるものの、球結膜(白目)が露出してしまう場合

「まつげはげを残すもの」とは
まつげの生えている周縁の2分の1以上にわたってまつげはげを残すもの

【まぶたの運動障害】

等級基準
11級2号両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
12級2号1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

【具体的基準】

「まぶたに著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。
①まぶたを開けた時にまぶたが完全に瞳孔(黒目)を覆ってしまうもの
②まぶたを閉じたときに角膜(眼球の色がある部分を覆う膜)を完全に覆えないもの

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耳に関する後遺障害認定の種類と基準

耳の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

機能障害聴力の喪失・低下に関する後遺障害
欠損障害耳の大部分を失ったことに関する後遺障害
耳鳴り耳の中でのみ雑音が生じることに関する後遺障害
耳漏外傷により耳漏(分泌物)がある場合の後遺障害

【聴力障害】

聴力障害は,「純音聴力レベル」の平均値及び「明瞭度」の最高値を基準に判断されます。

「純音聴力レベル」とは
音波の基本的なもの(=純音)に対する聴こえ方の程度。音が聴こえるかどうか

「明瞭度」とは
言語の音声(語音)に対する聴こえ方の程度。言葉を聞き取れるかどうか

具体的な等級及び認定基準は以下の通りです。

等級基準
4級3号両耳の聴力を全く失ったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの
6級3号両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベル80dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの
6級4号1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
7級2号両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの
7級3号1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
9級7号両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
9級8号1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
10級5号両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
11級5号両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のもの

【一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係】

【両耳聴力と最高明瞭度の関係】

【欠損障害】

等級基準
12級4号1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

「耳殻の大部分の欠損」とは,以下の場合を指します。

「耳殻の大部分の欠損」
耳殻の軟骨部の2分の1以上を欠損したもの

ここで「耳殻」とは,耳のうち外に張り出て飛び出している部分をいいます。
一般的に「耳」と呼ぶ楕円形の部位全体を指します。

なお,耳殻の欠損障害が醜状障害にも該当する場合,いずれか上位の等級が認定されます。

【耳鳴り】

等級基準
12級相当難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるもの
14級相当難聴に伴い常時耳鳴りのあることが合理的に説明できるもの

【具体的基準】

「難聴に伴い」とは(12級)
①耳鳴りが存在すると思われる純音聴力レベルが,他の純音聴力レベルと比べて低下している場合
②平均純音レベルが40dB未満(=聴力の後遺障害等級)に満たなくてもよい

「著しい耳鳴り」とは(12級)
耳鳴りに係る検査により耳鳴りが存在すると医学的に評価できる場合

「常時耳鳴りのあること」とは(14級)
耳鳴りが常時存在するものの,昼間外部の音によって耳鳴りが遮蔽されるため自覚症状が無く,夜間のみ耳鳴りの自覚症状を有する場合

「合理的に説明できるもの」とは(14級)
耳鳴りの自訴があり、かつ、耳鳴りのあることが騒音暴露歴や音響外傷等から合理的に説明できること

【耳漏】

外傷による耳漏が生じ,手術で治療をしてもなお残った場合には,後遺障害等級認定の対象となります。

等級基準
12級相当常時耳漏があるもの
14級相当その他の耳漏があるもの
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鼻に関する後遺障害認定の種類と基準

鼻の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

欠損障害鼻を失ったことに関する後遺障害
機能障害呼吸困難となったこと,嗅覚がなくなったことに関する後遺障害

【欠損障害】

鼻の後遺障害等級は,以下の1つのみが定められています。

等級基準
9級5号鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの

等級認定のためには,①鼻の欠損と②著しい機能障害の両方について基準を満たす必要があります。

①鼻の欠損

「鼻を欠損し」たとは,以下の場合を指します。

「鼻を欠損し」たとは
鼻軟骨部の全部又は大部分の欠損をしたこと

鼻は,上部に鼻骨と呼ばれる骨であり,鼻骨の下に軟骨部があります。軟骨部は,一般的に鼻と呼ぶ三角錐の形に隆起した部位を指すものと理解して差し支えないでしょう。
したがって,鼻の三角錐形の部分が全部又は大部分欠損した場合に,欠損障害に該当し得ることになります。

②著しい機能障害

鼻呼吸困難,または嗅覚脱失をいいます。

嗅覚の障害については,「嗅覚脱失」と「嗅覚減退」が挙げられますが,これらは「T&Tオルファクトメータ」(嗅覚測定用の基準臭)による検査で認知域値(においを判別・表現できる最低濃度)を測定し,判定されます。具体的な基準は以下の通りです。

「嗅覚脱失」認知域値5.6以上
「嗅覚減退」認知域値2.6以上5.5以下

このうち,著しい機能障害に位置付けられるのは「嗅覚脱失」となります。

ポイント
鼻の後遺障害等級として明記されているのは,欠損+著しい機能障害のみ
欠損は軟骨部の全部又は大部分を失ったこと
著しい機能障害は鼻呼吸困難又は嗅覚脱失

【外貌醜状障害】

①鼻の欠損との関係

鼻の欠損が生じる場合,同時に外貌の醜状障害に該当することが考えられます。その場合,欠損障害と醜状障害のいずれか上位の等級が認定されます。上位の等級のみが認定され,併合されないことに注意が必要です。

例えば,鼻を欠損して著しい機能障害が生じた場合,9級5号に認定されますが,同時に外貌の醜状障害として7級12号に該当する場合,上位の7級が認定されます。

②鼻の欠損に至らない場合

鼻の欠損(=全部又は大部分の欠損)には至らない程度の一部欠損は,別途醜状障害の対象となるかどうかの問題となります。醜状障害の基準を満たせば,12級14号の認定可能性があります。

【機能障害】

鼻の欠損を伴わない機能障害は,以下の等級に該当する可能性があります。

等級基準
12級相当嗅覚脱失
鼻呼吸困難
14級相当嗅覚減退

「嗅覚脱失」及び「嗅覚減退」の基準は,上記と同様です。

「嗅覚脱失」とは
T&Tオルファクトメーターによる検査の認定域値5.6以上
「嗅覚減退」とは
T&Tオルファクトメーターによる検査の認定域値2.6以上5.5以下

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口に関する後遺障害認定の種類と基準

口に関する後遺障害には,以下の種類があります。

そしゃく機能障害口を開けたり物を噛んだりする能力に制限が生じる後遺障害
言語機能障害発声できる音に制限が生じる後遺障害
歯牙障害歯が欠損したことに関する後遺障害
味覚障害味覚を感じられなくなったことに関する後遺障害

【そしゃく障害】

①認定基準

【そしゃくと言語の両方に障害がある場合】

等級基準
1級2号そしゃく及び言語の機能を廃したもの
4級2号そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

【そしゃく又は言語の一方に障害がある場合】

等級基準
3級2号そしゃく又は言語の機能を廃したもの
6級2号そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
10級3号そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

②そしゃく機能の判断方法

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
・画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

③各基準の具体的内容

「そしゃく機能を廃したもの」
=流動食以外は摂取できないもの

「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」
=粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの

「そしゃく機能に障害を残すもの」
=以下のいずれかの場合
①固形食物の中にそしゃくができないものがあること(※)
②そしゃくが十分にできないものがあり,そのことが医学的に確認できる場合(※※)

(※)ごはん,煮魚,ハム等はそしゃくできるが,たくあん,らっきょう,ピーナッツ等の一定の固さの食物中にそしゃくできないものがあるなど
(※※)不正咬合,顎関節の障害,開口障害など,そしゃくできないものがあることの原因が医学的に確認できる場合

【言語障害】

①認定基準

【そしゃくと言語の両方に障害がある場合】

等級基準
1級2号そしゃく及び言語の機能を廃したもの
4級2号そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

【そしゃく又は言語の一方に障害がある場合】

等級基準
3級2号そしゃく又は言語の機能を廃したもの
6級2号そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
10級3号そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

②言語機能の判断方法

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
①口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
②歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
③口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
④喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

③各基準の具体的内容

「言語の機能を廃したもの」
=4種の語音(口唇音,歯舌音,口蓋音,喉頭音)のうち,3種以上の発音不能のもの

「言語の機能に著しい障害を残すもの」
=4種の語音のうち,2種の発音不能のもの又は綴音機能(語音を一定の順序に連結すること)に障害があるため,言語のみを用いては意思を疎通することができないもの

「言語の機能に障害を残すもの」
4種の語音のうち,1種の発音不能のもの

【歯牙障害】

①認定基準

等級基準
10級4号14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
11級4号10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
12級3号7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
13級4号5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
14級2号3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

②歯牙障害の判断方法

歯牙障害は,歯科補綴を加えた歯の数によって等級が認定されます。

「歯科補綴を加えたもの」とは
=現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴

「著しく欠損した」とは
歯冠部(歯肉より露出している部分)の体積の4分の3以上を欠損したもの

「補綴」とは
歯が喪失したり欠損したりしたところを,クラウン(歯全体を覆う被せ物)や入れ歯などの人工物で補うこと

【留意事項】
①認定対象になる歯の条件
→認定対象となる歯は,永久歯を指します。乳歯や含まれず,いわゆる親知らずも含まれません。ただし,乳歯が欠損したことで永久歯の萌出が見込めない場合は含まれます。

②喪失した歯の数より補綴した義歯の数が多い場合
→喪失した歯牙が大きい場合や歯間が広かった場合など,喪失した歯の数よりも多くの補綴を要した場合,等級の認定は喪失した歯の数によって判断されます。

(例)4本を喪失したが,5本の補綴をした場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③ブリッジなどで失った歯以外を切除した場合
→交通事故で失った歯の補綴に際して,ブリッジを設ける目的などで他の歯を切除した場合,歯冠部の4分の3以上切除していれば,歯科補綴を加えた本数に含みます。

(例)交通事故で2本喪失したところ,両側2本の歯にブリッジを施した場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③歯牙障害に関する診断書

歯牙障害については,歯科用の後遺障害診断書を用いて主治医の記載を依頼します。

【味覚障害】

①判断基準

等級基準
12級相当味覚脱失
14級相当味覚減退

②判断方法

味覚については,基本4味質(甘味,塩味,酸味,苦味)を感じる能力を基準に判断します。

「味覚脱失」とは
=頭部,顎周囲組織の損傷,舌の損傷によって基本4味質すべてが認知できない場合

「味覚減退」とは
=頭部,顎周囲組織の損傷,舌の損傷によって基本4味質のうち1味質以上を認知できない場合

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内臓に関する後遺障害認定の種類と基準

内臓の後遺障害は,基本的に「胸腹部臓器の機能障害」に関する等級の問題となります。

その後遺障害等級の種類は以下の通りです。

等級基準
要介護1級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
要介護2級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級4号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級3号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級5号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級11号胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの
11級10号胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
13級11号胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

個別の臓器について,どのような基準を満たせばどのような等級に該当するかは,それぞれ定められているため,以下詳細を解説します。

【呼吸器】

肺などの呼吸器に関する後遺障害等級については,以下の3種類の検査方法による測定値を基準とするのが通常です。

【呼吸機能に関する検査】

①動脈酸素分圧と動脈炭酸ガス分圧の検査
②スパイロメトリーの検査+呼吸困難の程度
③運動負荷試験

原則として①の検査結果を基準にしますが,②③の検査結果による等級が①による等級よりも上位の場合,上位の等級が認定されます。

①動脈酸素分圧と動脈炭酸ガス分圧の検査

動脈から血を採取し,酸素や二酸化炭素のガス濃度を測定する検査です。
動脈血酸素分圧が低いほど,酸素の濃度が低く,障害が重大であることを意味します。

動脈酸素分圧ごとの後遺障害等級

【動脈酸素分圧50Torr以下の場合の等級】

等級基準
要介護1級2号呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの
要介護2級2号呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの
3級4号上記のいずれにも該当しないもの

【動脈酸素分圧50Torr~60Torrの場合の等級】

等級基準
要介護1級2号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外(※)+呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの
要介護2級2号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外+呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの
3級4号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外+上記のいずれにも該当しないもの
5級3号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内のもの

(※)動脈炭酸ガス分圧の限界値範囲は,37Torr~43Torrの間にあることを指します。限界値範囲外の場合,肺の換気機能に異常の生じていることが見込まれます。

【動脈酸素分圧60Torr~70Torrの場合の等級】

等級基準
7級5号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外
9級11号上記の基準に該当しないもの

【動脈酸素分圧70Torrを超える場合の等級】

等級基準
11級10号動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないもの

要介護の基準

「常時介護が必要なもの」とは
=生活全般において介護が必要な状態にあること

「随時介護が必要なもの」とは
=日常生活の一部の動作について介護や看視,声かけが必要な状態のこと

②スパイロメトリーの検査+呼吸困難の程度

スパイロメトリーとは,肺活量などを測定する検査です。
具体的には,以下の検査の結果を基準に後遺障害等級認定がなされます。

「%1秒量」
=最初の1秒間に吐き出した空気量
「%肺活量」
=平均的な肺活量と比べて何%の肺活量があるか

これらの検査結果と呼吸困難の程度の組み合わせにより,後遺障害等級が区別されます。

等級と認定基準一覧

【%1秒量35以下又は%肺活量40以下の場合】

①呼吸困難が高度

等級基準
要介護1級2号呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの
要介護2級2号呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの
3級4号上記のいずれにも該当しないもの

②呼吸困難が中等度

等級基準
7級5号中等度の呼吸困難が認められるもの

③呼吸困難が軽度

等級基準
11級10号軽度の呼吸困難が認められるもの

【%1秒量35~55又は%肺活量40~60の場合】

①呼吸困難が高度又は中等度

等級基準
7級5号中高度または中等度の呼吸困難が認められるもの

②呼吸困難が軽度

等級基準
11級10号軽度の呼吸困難が認められるもの

【%1秒量55~70又は%肺活量60~80の場合】

等級基準
11級10号高度、中等度または軽度の呼吸困難が認められるもの

呼吸困難の程度に関する判断基準

高度呼吸困難のため、連続しておおむね100m以上歩けないもの
中等度呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同じように歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行ができるもの
軽度呼吸困難のため、健常者と同じようには階段の昇降ができないもの

③運動負荷試験

運動負荷試験とは
=実際に運動をして心肺機能を確認する検査
(例)一定時間の歩行試験等

他の検査では後遺障害等級に該当しないものの,呼吸機能低下や呼吸困難があり,運動負荷試験の結果で明らかに呼吸機能障害があると認められる場合,11級10号の認定可能性があります。
もっとも,運動負荷試験での等級認定は,他の検査では後遺障害等級に該当しない場合のものであるため,認定は容易でない傾向にあります。主治医等による医学的意見やその根拠をより積極的に示すことが望ましいでしょう。

【循環器】

主に心臓の機能に障害が生じた場合,後遺障害等級認定の可能性が生じます。
具体的な機能障害としては,以下の内容が挙げられます。

循環器の機能障害
①心機能が低下したもの
②除細動器又はペースメーカーを植え込んだもの
③房室弁又は大動脈弁を置換したもの
④大動脈に解離を残すもの

①心機能が低下したもの

等級基準
9級11号心機能の低下による運動耐容能の低下が中程度であるもの
11級10号心機能の低下による運動耐容能の低下が軽度であるもの

「運動耐容能」とは
=運動の負荷に耐えることのできる能力をいい,どの程度の運動強度に耐えられるかによって区別をします。
運動・作業強度の指標には「METs」(メッツ)という単位を用い,この値が大きいほど運動強度が大きいものとなります。

「運動耐容能の低下が中程度であるもの」とは(9級)
=おおむね6METs(メッツ)を超える強度の身体活動が制限されるもの
(例)
平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないものの、平地を急いで歩く、平地を健康な人と同じ程度で階段を上るという身体活動が制限されるもの

「運動耐容能の低下が軽度であるもの」とは(11級)
=おおむね8METs(メッツ)を超える強度の身体活動が制限されるもの
(例)
平地で急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上るという身体活動に支障がないものの、それ以上に激しいか、急激な身体活動が制限されるもの

②除細動器又はペースメーカーを植え込んだもの

等級基準
7級5号除細動器を植え込んだもの
9級11号ペースメーカーを植え込んだもの

③房室弁又は大動脈弁を置換したもの

人工弁に置換する手術を行った場合,後遺障害等級に該当します。

等級基準
9級11号継続的に抗凝血薬療法を行うもの
11級10号上記に該当しないもの

④大動脈に解離を残すもの

大動脈は,心臓から出た血液が通る人体の中で最も太い血管ですが,その大動脈に亀裂が入った結果,血管壁の内膜が裂けてしまった状態を大動脈解離と言います。
大動脈解離が起きると,血管が裂けたことで新しい血管の通り道(偽腔)が生まれますが,偽腔の血流が止まっていない状態を「偽腔開存型」と言います。

等級基準
11級10号偽腔開存型の解離を残すもの

【腹部臓器】

腹部臓器は多数ありますが,臓器ごとにその機能低下の程度に応じた等級認定の可能性があります。

①食道の障害

等級基準
9級11号食道の狭さくによる通過障害を残すもの

以下のいずれにも該当する場合を指します。

「食道の狭さくによる通過障害を残すもの」とは
1.通過障害の自覚症状があること
2.消化管造影検査により,食道の狭さくによる造影剤のうっ滞が認められること

②胃の障害

等級基準
7級5号消化吸収障害、ダンピング症候群、胃切除術後逆流性食道炎のいずれもが認められるもの
9級11号消化吸収障害及びダンピング症候群が認められるもの

消化吸収障害及び胃切除術後逆流性食道炎が認められるもの
11級10号消化吸収障害、ダンピング症候群、胃切除術後逆流性食道炎のいずれかが認められるもの
13級11号噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失したもの

「消化吸収障害」とは

以下のいずれかに該当するもの
1.胃の全部を亡失したこと
2.噴門部または幽門部を含む胃の一部を亡失し、低体重等(※)が認められること
(※)①BMI20以下又は②事故前からBMI20以下の場合は体重が10%以上減少

「ダンピング症候群」とは

以下のいずれにも該当するもの
1.胃の全部または幽門部を含む胃の一部を亡失した
2.早期ダンピング症候群に起因する症状(※)または晩期ダンピング症候群に起因する症状(※※)が認められること
(※)食後30分以内に出現するめまい,起立不能等
(※※)食後2時間後から3時間後に出現する全身脱力感,めまい等


「胃切除術後逆流性食道炎」とは

以下のいずれにも該当するもの
1.胃の全部又は噴門部を含む胃の一部を亡失したこと
2.胃切除術後逆流性食道炎に起因する自覚症状(胸焼け,胸痛,嚥下困難等)があること
3.内視鏡検査により食道にの胃切除術後逆流性食道炎に起因する所見(びらん,潰瘍等)が認められること

③小腸の障害

小腸を大量に切除したもの

等級基準
9級11号残存する空腸および回腸の長さが100センチメートル以下となったもの
11級10号残存する空腸および回腸の長さが100センチメートルを超え300センチメートル未満であり,消化吸収障害(低体重等)が認められるもの

人工肛門を造設したもの

等級基準
5級3号小腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができないもの
7級5号人工肛門を造設したうち,上記に該当しないもの

小腸皮膚瘻を残すもの

等級基準
5級3号瘻孔から小腸内容の全部または大部分が漏出し,小腸皮膚瘻周辺に著しいびらんが生じ、パウチなどの装着ができないもの(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)
7級5号瘻孔から小腸内容の全部または大部分が漏出するが,5級3号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの

瘻孔から漏出する小腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上で,パウチなどによる維持管理が困難であるもの
9級11号瘻孔から漏出する小腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上だが,7級5号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの
11級10号瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸内容が漏出する程度のもの

小腸の狭さくを残すもの

等級基準
11級10号小腸に狭さくを残すもの

「小腸に狭さくを残すもの」とは

次のいずれにも該当するもの
1.1か月に1回程度,腹痛,腹部膨満感,嘔気,嘔吐などの症状が認められること
2.単純エックス線像においてケルクリングひだ像が認められること

④大腸の障害

大腸を大量に切除したもの

等級基準
11級10号結腸のすべてを切除するなど大腸のほとんどを切除したもの

人工肛門を造設したもの

等級基準
5級3号大腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ,パウチなどの装着ができないもの
7級5号人工肛門を造設したうち,上記に該当しないもの

大腸皮膚瘻を残すもの

等級基準
5級3号瘻孔から大腸内容の全部または大部分が漏出し,大腸皮膚瘻周辺に著しいびらんが生じ、パウチなどの装着ができないもの(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)
7級5号瘻孔から大腸内容の全部または大部分が漏出するが,5級3号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの

瘻孔から漏出する大腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上で,パウチなどによる維持管理が困難であるもの
9級11号瘻孔から漏出する大腸内容がおおむね1日100ミリリットル以上だが,7級5号(=パウチなどによる維持管理が困難であるもの)に該当しないもの
11級10号瘻孔から少量ではあるが明らかに大腸内容が漏出する程度のもの

大腸の狭さくを残すもの

等級基準
11級10号大腸に狭さくを残すもの

「大腸に狭さくを残すもの」とは

=次のいずれにも該当するもの
1.1か月に1回程度,腹痛,腹部膨満感などの症状が認められること
2.単純エックス線像において貯留した大量のガスにより結腸膨起像が相当区間認められること

便秘を残すもの

等級基準
9級11号用手摘便を要すると認められるもの
11級10号上記の基準に該当しないもの

便秘とは

=次のいずれにも該当するもの
1.排便反射を支配する神経の損傷がMRIやCTなどにより確認できること
2.排便回数が週2回以下の頻度であって,恒常的に硬便であると認められること

便失禁を残すもの

等級基準
7級5号完全便失禁を残すもの
9級11号常時おむつの装着が必要であるが,7級5号の基準に該当しないもの
11級10号常時おむつの装着が必要ではないものの,明らかに便失禁があると認められるもの

⑤肝臓の障害

等級基準
9級11号肝硬変
(ウイルスの持続感染が認められ,かつ,AST・ALTが持続的に低値であるものに限る)
11級10号慢性肝炎
(ウイルスの持続感染が認められ,かつ,AST・ALTが持続的に低値であるものに限る)

⑥胆のうの障害

等級基準
13級11号胆のうを失ったもの

⑦すい臓の障害

等級基準
9級11号外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの
11級10号外分泌機能の障害と内分泌機能の障害のいずれかが認められるもの
12級13号軽微な膵液瘻を残したために皮膚に疼痛等が生じるもの(局部の神経症状)
14級9号軽微な膵液瘻を残したために皮膚に疼痛等が生じるもの(局部の神経症状)

外分泌機能:膵液(消化液)を腸に送り出す機能

「外分泌機能の障害」とは

次のいずれにも該当するもの
1.上腹部痛,脂肪便,頻回の下痢などの外分泌機能の低下による症状が認められること
2.BT-PABA(PFD)試験で異常低値(70%未満)を示すこと
3.ふん便中キモトリプシン活性で異常低値(24U/g未満)を示すこと
4.アミラーゼまたはエラスターゼの異常低値を認めるもの

内分泌機能:ホルモンを血液中に送り出す機能

「内分泌機能の障害」とは

次のいずれにも該当するもの
1.異なる日に行った経口糖負荷試験で境界型または糖尿病型であることが2回以上確認されること
2.空腹時血漿中のC-ペプチド(CPR)が0.5ng/ml以下(インスリン異常低値)であること
3.Ⅱ型糖尿病に該当しないこと

⑧ひ臓の障害

等級基準
13級11号ひ臓を失ったもの

⑨腹部臓器周辺のヘルニア

腹壁瘢痕ヘルニア,腹壁ヘルニア,鼠径ヘルニア又は内ヘルニアを残す場合,以下の後遺障害等級認定が考えられます。
もっとも,手術を行うことが通常であり,通常は多くは手術によりヘルニア内容の脱出は認めなくなることから,手術を試みたものの完治できない場合などが対象となります。

等級基準
9級11号常時ヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの

立位をしたときにヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの
11級10号重激な業務に従事した場合など腹圧が強くかかるときにヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの

【泌尿器】

①腎臓の障害

腎臓に関する後遺障害の等級は,以下の2点を踏まえて判断されます。

腎臓の後遺障害等級認定 基準となる要素
1.腎臓を失ったかどうか
2.GFR値(腎臓が血液をろ過して尿を作った量の値)

具体的な等級及び基準

【一側の腎臓を失ったもの】

等級基準
7級5号GFR値が30ml/分を超え50ml/分以下のもの
9級11号GFR値が50ml/分を超え70ml/分以下のもの
11級10号GFR値が70ml/分を超え90ml/分以下のもの
13級11号GFR値が90ml/分を超えるもの

【腎臓を失っていないもの】

等級基準
9級11号GFR値が30ml/分を超え50ml/分以下のもの
11級10号GFR値が50ml/分を超え70ml/分以下のもの
13級11号GFR値が70ml/分を超え90ml/分以下のもの

②尿管,膀胱及び尿道の障害

尿路変向術を行ったもの

等級基準
5級3号非尿禁制型尿路変向術を行ったもので,尿が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ,パッド等の装着ができないもの
7級5号非尿禁制型尿路変向術を行ったもので上記に該当しないもの

禁制型尿リザボアの術式を行ったもの
9級11号尿禁制型尿路変向術(禁制型尿リザボアおよび外尿道口形成術を除く)を行ったもの
11級10号外尿道口形成術を行ったもの

尿道カテーテルを留置したもの

排尿障害を残すもの

等級基準
9級11号膀胱の機能障害により残尿が100ミリリットル以上であるもの
11級10号膀胱の機能障害により残尿が50ミリリットル以上100ミリリットル未満であるもの

尿道狭さくのため糸状ブジーを必要とするもの
14級尿道狭さくのため,「シャリエ式」尿道ブジー第20番が辛うじて通り、時々拡張術を行う必要があるもの

畜尿障害を残すもの

等級基準
7級5号持続性尿失禁を残すもの

切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,終日パッド等を装着し,かつパッドをしばしば交換しなければならないもの
9級11号切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,常時パッド等を装着しなければならないが、パッドの交換までは要しないもの
11級10号切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため,常時パッド等の装着は要しないが、下着が少しぬれるもの

頻尿を残すもの

「頻尿」とは

次のいずれにも該当するもの
1.器質的病変による膀胱容量の減少または膀胱・尿道の支配神経の損傷が認められること
2.日中8回以上の排尿が認められること
3.多飲などの他の原因が認められないこと

【生殖器】

①生殖機能を完全に喪失したもの

等級基準
7級13号両側の睾丸を失ったもの
7級【男性】
 常態として精液中に精子が存在しないもの
【女性】
 両側の卵巣を失ったもの
 常態として卵子が形成されないもの

②生殖機能に著しい障害を残すもの

等級基準
9級17号【男性】
 陰茎の大部分を欠損したもの
 勃起障害を残すもの
 射精障害を残すもの
【女性】
 膣口狭さくを残すもの
 両側の卵巣に閉塞・癒着を残すもの(※)
 頸管に閉塞を残すもの(※)
 子宮を失ったもの(※)
(※)画像所見により認められるものに限る

「陰茎の大部分を欠損したもの」とは

陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの

「勃起障害を残すもの」とは

以下のいずれかに該当するもの
1.夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことがリジスキャンによる夜間陰茎勃起検査により証明されること
2.支配神経の損傷など,勃起障害の原因となりうる所見が,神経系検査か血管系検査のいずれかにより認められること

「射精障害を残すもの」とは

次のいずれかに該当するもの
1.尿道または射精管が断裂していること
2.両側の下腹神経の断裂により当該神経の機能が失われていること
3.膀胱頚部の機能が失われていること

「膣口狭さくを残すもの」とは

陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの

③生殖機能に障害を残すもの

等級基準
11級10号狭骨盤または比較的狭骨盤が認められるもの

産科的真結合線が10.5cm未満または入口部横径が11.5cm未満のもの が該当する

④生殖機能に軽微な障害を残すもの

等級基準
13級【男性】
 一側の睾丸を失ったもの(睾丸の亡失に準ずべき程度の萎縮を含む)
【女性】
 一個の卵巣を失ったもの

後遺障害認定に強い弁護士をお探しの方へ

後遺障害認定は、交通事故に関する金銭的補償の内容を決定的に左右するため、極めて重要な問題です。
将来の生活を守るためにも,十分な後遺障害等級認定と損害賠償を獲得する必要がありますので,その手段として弁護士への相談やご依頼は積極的にご検討されることをお勧めします。

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口の後遺障害にはどんなものがある?物が噛めなくなったら?発声が難しくなったら?歯を失ったら?弁護士が徹底解説

●口の後遺障害にはどのようなものがあるか?

●口の後遺障害の判断基準は?

●そしゃく機能の程度はどのように決まるのか?

●後遺障害等級が認定された場合にはいくら請求できるか?

●口の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,口の後遺障害についてお困りの方に向けて,口の後遺障害等級として問題になる項目やその判断基準,口の後遺障害等級が認定された場合の請求内容などを解説します。

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口に関する後遺障害の種類

口に関する後遺障害には,以下の種類があります。

そしゃく機能障害口を開けたり物を噛んだりする能力に制限が生じる後遺障害
言語機能障害発声できる音に制限が生じる後遺障害
歯牙障害歯が欠損したことに関する後遺障害
味覚障害味覚を感じられなくなったことに関する後遺障害

後遺障害等級の判断基準(そしゃく障害)

①認定基準

【そしゃくと言語の両方に障害がある場合】

等級基準
1級2号そしゃく及び言語の機能を廃したもの
4級2号そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

【そしゃく又は言語の一方に障害がある場合】

等級基準
3級2号そしゃく又は言語の機能を廃したもの
6級2号そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
10級3号そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

②そしゃく機能の判断方法

そしゃく機能の障害については,以下の点を基準に総合的に判断します。

上下咬合咬合(こうごう かみ合わせの意)のズレなど
排列状態歯並びのズレや不足など
下顎の開閉運動歯をかみしめることができる程度など

これらの判断に当たっては,以下のような点を考慮します。

そしゃく機能の判断要素
・画像所見(他覚的所見)があること
・他覚的所見と対応するそしゃく状況があること

そしゃく状況に関しては,「そしゃく状況報告書」を踏まえた判断が一般的です。そしゃく状況報告書とは,被害者やその家族が,食べられる食材の内容や程度を記載するものです。

③各基準の具体的内容

「そしゃく機能を廃したもの」
=流動食以外は摂取できないもの

「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」
=粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの

「そしゃく機能に障害を残すもの」
=以下のいずれかの場合
①固形食物の中にそしゃくができないものがあること(※)
②そしゃくが十分にできないものがあり,そのことが医学的に確認できる場合(※※)

(※)ごはん,煮魚,ハム等はそしゃくできるが,たくあん,らっきょう,ピーナッツ等の一定の固さの食物中にそしゃくできないものがあるなど
(※※)不正咬合,顎関節の障害,開口障害など,そしゃくできないものがあることの原因が医学的に確認できる場合

後遺障害等級の判断基準(言語障害)

①認定基準

【そしゃくと言語の両方に障害がある場合】

等級基準
1級2号そしゃく及び言語の機能を廃したもの
4級2号そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
9級6号そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの

【そしゃく又は言語の一方に障害がある場合】

等級基準
3級2号そしゃく又は言語の機能を廃したもの
6級2号そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
10級3号そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの

②言語機能の判断方法

言語機能の障害は,語音(特に子音)の発音にどの程度の制限が生じたかを基準に判断されます。

子音は,以下の4種類に分けることができます。

子音の4種類
①口唇音(ま行音,ぱ行音,ば行音,わ行音,ふ)
②歯舌音(な行音,た行音,だ行音,ら行音,さ行音,しゅ,し,ざ行音,じゅ)
③口蓋音(か行音,が行音,や行音,ひ,にゅ,ぎゅ,ん)
④喉頭音(は行音)

これら4種類の子音それぞれについて,発音不能なものがあるか,何種類あるか,といった点を踏まえ,言語機能の障害の程度を判断します。

③各基準の具体的内容

「言語の機能を廃したもの」
=4種の語音(口唇音,歯舌音,口蓋音,喉頭音)のうち,3種以上の発音不能のもの

「言語の機能に著しい障害を残すもの」
=4種の語音のうち,2種の発音不能のもの又は綴音機能(語音を一定の順序に連結すること)に障害があるため,言語のみを用いては意思を疎通することができないもの

「言語の機能に障害を残すもの」
4種の語音のうち,1種の発音不能のもの

後遺障害等級の判断基準(歯牙障害)

①認定基準

等級基準
10級4号14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
11級4号10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
12級3号7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
13級4号5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
14級2号3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

②歯牙障害の判断方法

歯牙障害は,歯科補綴を加えた歯の数によって等級が認定されます。

「歯科補綴を加えたもの」とは
=現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴

「著しく欠損した」とは
歯冠部(歯肉より露出している部分)の体積の4分の3以上を欠損したもの

「補綴」とは
歯が喪失したり欠損したりしたところを,クラウン(歯全体を覆う被せ物)や入れ歯などの人工物で補うこと

【留意事項】
①認定対象になる歯の条件
→認定対象となる歯は,永久歯を指します。乳歯や含まれず,いわゆる親知らずも含まれません。ただし,乳歯が欠損したことで永久歯の萌出が見込めない場合は含まれます。

②喪失した歯の数より補綴した義歯の数が多い場合
→喪失した歯牙が大きい場合や歯間が広かった場合など,喪失した歯の数よりも多くの補綴を要した場合,等級の認定は喪失した歯の数によって判断されます。

(例)4本を喪失したが,5本の補綴をした場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③ブリッジなどで失った歯以外を切除した場合
→交通事故で失った歯の補綴に際して,ブリッジを設ける目的などで他の歯を切除した場合,歯冠部の4分の3以上切除していれば,歯科補綴を加えた本数に含みます。

(例)交通事故で2本喪失したところ,両側2本の歯にブリッジを施した場合,4本の歯科補綴として14級2号を認定する

③歯牙障害に関する診断書

歯牙障害については,歯科用の後遺障害診断書を用いて主治医の記載を依頼します。

後遺障害等級の判断基準(味覚障害)

①判断基準

等級基準
12級相当味覚脱失
14級相当味覚減退

②判断方法

味覚については,基本4味質(甘味,塩味,酸味,苦味)を感じる能力を基準に判断します。

「味覚脱失」とは
=頭部,顎周囲組織の損傷,舌の損傷によって基本4味質すべてが認知できない場合

「味覚減退」とは
=頭部,顎周囲組織の損傷,舌の損傷によって基本4味質のうち1味質以上を認知できない場合

後遺障害に対する損害賠償額

後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。

ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。

【ケース】
症状固定時40歳,年収500万円,7歯以上に対し歯科補綴を加えたものとして12級3号認定

①自賠責基準

①後遺障害慰謝料
=94万円

②後遺障害逸失利益
=130万円

③合計
=224万円

②裁判基準

①後遺障害慰謝料
=290万円

②後遺障害逸失利益
=500万円×14%×18.3270(27年ライプ)
=12,828,900円

③合計
=15,728,900円

③差額

15,728,900円-224万円
=13,488,900円(約7.0倍)

あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

口の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

口の後遺障害に関しては,そしゃくについて被害者自ら状態を申告する書面の作成が必要になったり,歯科補綴に関して独自の後遺障害診断書が必要になったりと,他類型の後遺障害にはない対応が必要になりやすいところです。また,それらの対応は,後遺障害等級の結果に直結するものであるため,対応を誤ることは大きな不利益につながってしまいます。

そのため,口の後遺障害に関しては,適切な対応の上で適切な等級認定を受け,さらには適正額の賠償を受領するために,弁護士への依頼が適切でしょう。

口の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ

口の後遺障害は,そしゃくや言語など,生活への支障が極めて大きくなりやすいものが多く,適切な損害賠償を受ける必要性がとても高い分野です。
そのため,口の後遺障害が問題になる場合は,できる限り速やかに,交通事故に長けた弁護士に相談の上,その後の進め方を検討するのが適切です。

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交通事故で鼻を欠損したときの後遺障害は?嗅覚や鼻呼吸に問題が生じたときは?どんなとき何級になる?弁護士依頼の要否も解説

●鼻の後遺障害にはどのようなものがあるか?

●鼻の後遺障害の判断基準は?

●嗅覚はどのように判断されるのか?

●後遺障害等級が認定された場合にはいくら請求できるか?

●鼻の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,鼻の後遺障害についてお困りの方に向けて,鼻の後遺障害等級の項目や判断基準,弁護士に依頼するメリットの有無などを解説します。

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鼻に関する後遺障害の種類

鼻の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

欠損障害鼻を失ったことに関する後遺障害
機能障害呼吸困難となったこと,嗅覚がなくなったことに関する後遺障害

後遺障害等級の判断基準(欠損障害)

鼻の後遺障害等級は,以下の1つのみが定められています。

等級基準
9級5号鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの

等級認定のためには,①鼻の欠損と②著しい機能障害の両方について基準を満たす必要があります。

①鼻の欠損

「鼻を欠損し」たとは,以下の場合を指します。

「鼻を欠損し」たとは
鼻軟骨部の全部又は大部分の欠損をしたこと

鼻は,上部に鼻骨と呼ばれる骨であり,鼻骨の下に軟骨部があります。軟骨部は,一般的に鼻と呼ぶ三角錐の形に隆起した部位を指すものと理解して差し支えないでしょう。
したがって,鼻の三角錐形の部分が全部又は大部分欠損した場合に,欠損障害に該当し得ることになります。

②著しい機能障害

鼻呼吸困難,または嗅覚脱失をいいます。

嗅覚の障害については,「嗅覚脱失」と「嗅覚減退」が挙げられますが,これらは「T&Tオルファクトメータ」(嗅覚測定用の基準臭)による検査で認知域値(においを判別・表現できる最低濃度)を測定し,判定されます。具体的な基準は以下の通りです。

「嗅覚脱失」認知域値5.6以上
「嗅覚減退」認知域値2.6以上5.5以下

このうち,著しい機能障害に位置付けられるのは「嗅覚脱失」となります。

ポイント
鼻の後遺障害等級として明記されているのは,欠損+著しい機能障害のみ
欠損は軟骨部の全部又は大部分を失ったこと
著しい機能障害は鼻呼吸困難又は嗅覚脱失

後遺障害等級の判断基準(外貌醜状障害)

①鼻の欠損との関係

鼻の欠損が生じる場合,同時に外貌の醜状障害に該当することが考えられます。その場合,欠損障害と醜状障害のいずれか上位の等級が認定されます。上位の等級のみが認定され,併合されないことに注意が必要です。

例えば,鼻を欠損して著しい機能障害が生じた場合,9級5号に認定されますが,同時に外貌の醜状障害として7級12号に該当する場合,上位の7級が認定されます。

②鼻の欠損に至らない場合

鼻の欠損(=全部又は大部分の欠損)には至らない程度の一部欠損は,別途醜状障害の対象となるかどうかの問題となります。醜状障害の基準を満たせば,12級14号の認定可能性があります。

後遺障害等級の判断基準(機能障害)

鼻の欠損を伴わない機能障害は,以下の等級に該当する可能性があります。

等級基準
12級相当嗅覚脱失
鼻呼吸困難
14級相当嗅覚減退

「嗅覚脱失」及び「嗅覚減退」の基準は,上記と同様です。

「嗅覚脱失」とは
T&Tオルファクトメーターによる検査の認定域値5.6以上
「嗅覚減退」とは
T&Tオルファクトメーターによる検査の認定域値2.6以上5.5以下

後遺障害に対する損害賠償額

後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。

ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。

【ケース】
症状固定時50歳,年収400万円,「鼻の欠損及び著しい機能障害」により9級5号認定

①自賠責基準

①後遺障害慰謝料
=249万円

②後遺障害逸失利益
=367万円

③合計
=616万円

②裁判基準

①後遺障害慰謝料
=690万円

②後遺障害逸失利益
=400万円×35%×13.1661(17年ライプ)
=18,432,540円

③合計
=25,332,540円

③差額

25,332,540円-616万円
=19,172,540円(約4.1倍)

あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

鼻の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

鼻の後遺障害等級は,欠損を伴う場合と伴わない場合で認定基準が異なり,場合分けの必要性が高い類型です。そのため,ケースに適した場合分けを誤ると,等級認定の見込みにも誤りが生じ,結果的に十分な損害賠償の獲得に至らない可能性が生じてしまいます。

また,「鼻の欠損」や「鼻呼吸困難」など,必ずしも認定基準が数値等で明確にならないものもあるため,具体的な対応に際しては弁護士への相談・依頼が望ましいでしょう。

鼻の後遺障害に交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

鼻に関する後遺障害は,主に嗅覚について問題になることが多く見受けられます。
この点,嗅覚の後遺障害は判断基準が明確に定められているため,この基準を踏まえた対応や申請が重要となります。
後遺障害の手続に際しては,交通事故に精通した弁護士へのご相談が有力です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

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耳の後遺障害の種類は?聴力がどの程度悪くなると後遺障害?耳鳴りがある場合はどうなる?類型ごとの認定基準を弁護士が解説

●耳の後遺障害にはどのようなものがあるか?

●耳の後遺障害の判断基準は?

●聴力はどのように決まるのか?

●後遺障害等級が認定された場合にはいくら請求できるか?

●耳の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,耳の後遺障害についてお困りの方に向けて,耳の後遺障害等級の判断基準や検査方法,後遺障害となった場合の請求内容などを解説します。

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耳に関する後遺障害の種類

耳の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

機能障害聴力の喪失・低下に関する後遺障害
欠損障害耳の大部分を失ったことに関する後遺障害
耳鳴り耳の中でのみ雑音が生じることに関する後遺障害
耳漏外傷により耳漏(分泌物)がある場合の後遺障害

後遺障害等級の判断基準(聴力障害)

聴力障害は,「純音聴力レベル」の平均値及び「明瞭度」の最高値を基準に判断されます。

「純音聴力レベル」とは
音波の基本的なもの(=純音)に対する聴こえ方の程度。音が聴こえるかどうか

「明瞭度」とは
言語の音声(語音)に対する聴こえ方の程度。言葉を聞き取れるかどうか

具体的な等級及び認定基準は以下の通りです。

等級基準
4級3号両耳の聴力を全く失ったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの
6級3号両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベル80dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの
6級4号1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
7級2号両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの
7級3号1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
9級7号両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
9級8号1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
10級5号両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
①両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
②両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
11級5号両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のもの

【一耳の聴力ともう一耳の聴力の関係】

【両耳聴力と最高明瞭度の関係】

後遺障害等級の判断基準(欠損障害)

等級基準
12級4号1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

「耳殻の大部分の欠損」とは,以下の場合を指します。

「耳殻の大部分の欠損」
耳殻の軟骨部の2分の1以上を欠損したもの

ここで「耳殻」とは,耳のうち外に張り出て飛び出している部分をいいます。
一般的に「耳」と呼ぶ楕円形の部位全体を指します。

なお,耳殻の欠損障害が醜状障害にも該当する場合,いずれか上位の等級が認定されます。

後遺障害等級の判断基準(耳鳴り)

等級基準
12級相当難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるもの
14級相当難聴に伴い常時耳鳴りのあることが合理的に説明できるもの

【具体的基準】

「難聴に伴い」とは(12級)
①耳鳴りが存在すると思われる純音聴力レベルが,他の純音聴力レベルと比べて低下している場合
②平均純音レベルが40dB未満(=聴力の後遺障害等級)に満たなくてもよい

「著しい耳鳴り」とは(12級)
耳鳴りに係る検査により耳鳴りが存在すると医学的に評価できる場合

「常時耳鳴りのあること」とは(14級)
耳鳴りが常時存在するものの,昼間外部の音によって耳鳴りが遮蔽されるため自覚症状が無く,夜間のみ耳鳴りの自覚症状を有する場合

「合理的に説明できるもの」とは(14級)
耳鳴りの自訴があり、かつ、耳鳴りのあることが騒音暴露歴や音響外傷等から合理的に説明できること

後遺障害等級の判断基準(耳漏)

外傷による耳漏が生じ,手術で治療をしてもなお残った場合には,後遺障害等級認定の対象となります。

等級基準
12級相当常時耳漏があるもの
14級相当その他の耳漏があるもの

後遺障害に対する損害賠償額

後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。

ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。

【ケース】
症状固定時40歳,年収500万円,1耳の聴力を失ったもの(平均純音レベル90dB以上のもの)として9級9号認定

①自賠責基準

①後遺障害慰謝料
=249万円

②後遺障害逸失利益
=367万円

③合計
=616万円

②裁判基準

①後遺障害慰謝料
=690万円

②後遺障害逸失利益
=500万円×35%×18.3270(27年ライプ)
=32,072,250円

③合計
=38,972,250円

③差額

38,972,250円-616万円
=32,812,250円(約6.3倍)

あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

耳の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

耳の後遺障害は,特に聴力障害の認定基準が一見して複雑であり,検査の際に認定基準を踏まえて進めることが容易ではありません。重大な後遺障害等級に該当する場合も少なくないため,十分な等級の獲得と金銭賠償の受領を図るためには,弁護士への依頼が非常に有力でしょう。

耳の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ

耳に関する後遺障害は,頭部や顔面の受傷に際して発生することが多く,脳・顔面等の後遺障害と同時に問題となることが少なくありません。
この場合,他の後遺障害が大きな問題になるあまり,耳の後遺障害への必要な対応がなされず,不利益につながってしまうことも散見されます。
耳の後遺障害が懸念される場合は,交通事故に強い弁護士へのご相談が有力です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

眼の後遺障害の種類は?視力がどれほど下がったら後遺障害?視力以外の異常はどうなる?弁護士が詳細解説

●眼球の後遺障害にはどのようなものがあるか?

●まぶたの後遺障害にはどのようなものがあるか?

●眼の後遺障害の判断基準は?

●後遺障害等級が認定された場合,何が請求できるか?

●後遺障害等級の認定に問題が生じる場合は?

●眼の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,眼の後遺障害についてお困りの方に向けて,眼の後遺障害等級の認定基準や,認定手続の方法・内容,認定された場合の損害賠償額などを解説します。

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眼球の後遺障害の種類

眼球の後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

視力障害視力の低下に関する後遺障害
調節機能障害ピントを合わせる機能に関する後遺障害
運動障害眼球の動きに制限が生じたり,複視が生じたりする後遺障害
視野障害視野の広さに制限が生じる後遺障害

また,まぶしさを調節する機能に障害(外傷性散瞳)が生じる場合,別途後遺障害等級が認定されることがあります。

まぶたの後遺障害の種類

まぶたに関する後遺障害には,以下の種類が挙げられます。

欠損障害まぶたの全部又は一部を失ったことに関する後遺障害
運動障害まぶたの開閉をするための運動機能に制限が生じる後遺障害

後遺障害等級の判断基準(視力障害)

失明及び視力低下が生じた場合に認められる後遺障害です。
視力障害に関する具体的な後遺障害等級は,以下の通りです。

①両眼の視力障害

等級基準
1級1号両眼が失明したもの
2級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
2級2号両眼の視力が0.02以下になったもの
3級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
4級1号両眼の視力が0.06以下になったもの
5級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
6級1号両眼の視力が0.1以下になったもの
7級1号1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
9級1号両眼の視力が0.6以下になったもの

②1眼の視力障害

等級基準
8級1号1眼が失明し又は1眼の視力が0.02以下になったもの
9級2号1眼の視力が0.06以下になったもの
10級1号1眼の視力が0.1以下になったもの
13級1号1眼の視力が0.6以下になったもの

③注意事項

【失明について】

失明とは以下のいずれかの場合をいいます。

「失明」とは
①眼球を失ったもの
②明暗が分からないもの
③明暗がようやく分かる程度のもの

明暗が分かるかどうかは,以下の2つの能力を基準に判断します。

・光覚弁
→暗室にて,面前でペンライト等の照明を点滅させたとき,明暗が弁別できる能力
・手動弁
→面前で手の平を上下左右にゆっくり動かしたとき,動きの方向を弁別できる能力

【視力について】

後遺障害等級の対象とする視力は,矯正視力を指します。そのため,眼鏡やコンタクトレンズなどを着用した状態の視力を基準に判断されます。

【両眼に障害がある場合の等級】

両眼に視力の障害がある場合,1眼ごとの視力障害とどちらを認定すべきかが問題となりますが,この点のルールは以下の通りです。

両眼に障害がある場合
①両眼の視力障害に関する等級で認定し,1眼ごとの等級を併合することはしない
②両眼の等級よりもいずれか1眼の等級の方が上位である場合,1眼のみに障害があるものとみなしてより上位の等級を認定する

(例1)
右が0.1,左が0.02の場合
両眼:6級1号
1眼:8級1号(左について)
→6級1号が認定される(①のルールにより)

(例2)
右が0.6,左が0.02の場合
両眼:9級1号
1眼:8級1号(左について)
→8級1号が認定される(②のルールにより)

したがって,両眼の等級が原則であり,1眼のみの方がこれより上位の場合には例外的に1眼の等級を認定する,ということになります。

後遺障害等級の判断基準(調節機能障害)

等級基準
11級1号両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
12級1号1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

「著しい調節機能障害」とは以下の場合を指します。

著しい調節機能障害
眼の調節力が損傷を受けなかった方の他眼に比して2分の1以下に減じたもの

(注意事項)
①両眼とも損傷を受けた場合,損傷していない眼の調節機能に異常がある場合は,年齢別の調整力と比較する
②以下のいずれかに当たる場合は障害認定されない
・損傷していない眼の調整力が1.5D以下であるとき
・55歳以上であるとき

5歳ごとの年齢別の調整力

年齢(歳)調整力(ジオプトリー(D))
159.7
209.0
257.6
306.3
355.3
404.4
453.1
502.2
551.5
601.35

後遺障害等級の判断基準(運動障害)

眼球の運動を維持する筋肉(眼筋)の一個又は数個が麻痺することにより,眼球が偏ってしまうことがあります。
この偏りによる注視野の減少や複視に関する障害が,運動障害です。

等級基準
10級2号正面を見た場合に複視の症状を残すもの
11級1号両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
12級1号1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
13級2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

「眼球に著しい運動障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

「眼球に著しい運動障害を残すもの」
=眼球の注視野が2分の1以下に減じたもの

注視野とは
頭部を固定した状態で眼球を動かして直視できる範囲
平均値は単眼視で各方面50度,両眼視で各方面45度とされています。

「複視」は,1つの物体が2つに見えることをいい,以下の全てを満たす場合を指します。

「複視を残すもの」

1.本人が複視のあることを自覚していること
2.眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること
3.ヘススクリーンテストにより患側の像が健側に比して5度以上離れた位置にあること

なお,10級と13級の差異は以下の通りです。
「正面を見た場合に複視の症状を残すもの」(10級)
→正面視で複視が中心の位置にあること
「正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの」(13級)
→それ以外の場合

後遺障害等級の判断基準(視野障害)

等級基準
9級3号両眼に半盲症、視野狭窄、又は視野変状を残すもの
13級3号1眼に半盲症、視野狭窄、又は視野変状を残すもの

「半盲症」とは

「半盲症」とは
視野の右半分又は左半分が欠損し,見えなくなってしまう症状をいいます。以下のような種類があります。
同側半盲:両眼の同じ側で半盲が生じる場合
異名半盲:両眼のそれぞれ反対側で半盲が生じる場合

また,視野の上半分または下半分が欠損する場合もあり,「水平半盲」といいます。

「視野狭窄」とは

「視野狭窄」とは
視野が狭くなる症状をいいます。以下のような種類があります。
同心性狭窄:中心部分ははっきり見えるが,周辺部分が見えない
不規則狭窄:視野の一部分が規則性のない形で狭くなる

「視野変状」とは

「視野変状」とは
半盲症や視野狭窄のほか,視野に異常が生じることをいいます。具体的には以下の内容があります。
暗転:視野の中に暗くて見えない部分が生じるもの
視野欠損:視野の一部が見えなくなる状態

後遺障害等級の判断基準(散瞳)

散瞳とは,瞳孔の動きに異常が生じた結果,まぶしさを感じてしまうものをいいます。
瞳孔は,光の刺激を受けると小さくなり,眼に取り込む光の量を調節する機能を有します。これを対光反射と言いますが,対光反射に異常が生じると瞳孔が開いた状態(=散瞳)となり,光の刺激を弱めることができずまぶしさを感じてしまいます。

外傷性散瞳に関する後遺障害等級は,以下の通りです。

【両眼】

等級基準
11級相当両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
12級相当両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの

【1眼】

等級基準
12級相当1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
14級相当1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの

後遺障害等級の判断基準(まぶたの欠損障害)

等級基準
9級4号両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
11級3号1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
13級4号両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
14級1号1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

【具体的基準】

「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは
まぶたを閉じた場合に角膜(眼球の色がある部分を覆う膜)を完全に覆えない程度のもの

「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは
まぶたを閉じた場合に、角膜を完全に覆うことができるものの、球結膜(白目)が露出してしまう場合

「まつげはげを残すもの」とは
まつげの生えている周縁の2分の1以上にわたってまつげはげを残すもの

後遺障害等級の判断基準(まぶたの運動障害)

等級基準
11級2号両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
12級2号1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

【具体的基準】

「まぶたに著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。
①まぶたを開けた時にまぶたが完全に瞳孔(黒目)を覆ってしまうもの
②まぶたを閉じたときに角膜(眼球の色がある部分を覆う膜)を完全に覆えないもの

後遺障害に対する損害賠償額

後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。

ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。

【ケース】
症状固定時40歳,年収400万円,1眼の視力障害(0.06以下)で9級2号認定

①自賠責基準

①後遺障害慰謝料
=249万円

②後遺障害逸失利益
=367万円

③合計
=616万円

②裁判基準

①後遺障害慰謝料
=690万円

②後遺障害逸失利益
=400万円×35%×18.3270(27年ライプ)
=25,657,800円

③合計
=32,557,800円

③差額

32,557,800円-616万円
=26,397,800円(約5.3倍)

あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

眼の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

眼やまぶたの後遺障害は,その認定基準や検査の内容が一般的になじみの浅い内容であることが多く,被害者の方が自分で等級認定を目指すことは非常に困難が伴いやすいでしょう。また,等級認定の基準が客観的な数値で明確に定められているものも多く,事前に認定基準を踏まえながら治療や検査に臨むことが有益になりやすい類型でもあります。

そのため,弁護士に依頼の上,弁護士と協同して後遺障害等級認定を目指すことで,適切な等級の獲得と金銭賠償の受領に至る可能性が高くなるでしょう。眼やまぶたの後遺障害については,弁護士への依頼をお勧めいたします。

眼の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ

眼の後遺障害は,対象になるケースが決して多くないため,受傷内容によっては交通事故との関係が争点になることも考えられます。
もっとも,後遺障害の程度によっては,将来に渡って非常に大きな制限を強いられるものであるため,交通事故に精通した弁護士を通じて十分な対応を取ることが適切です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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下肢・足指の後遺障害の種類は?認定基準は?認定された場合の賠償額は?交通事故弁護士による増額のシミュレーションも

●下肢・足指の後遺障害にはどのようなものがあるか?

●下肢・足指の後遺障害の判断基準は?

●下肢・足指の機能障害はどのように判断するか?

●等級が認定された場合にはいくら請求できるか?

●下肢・足指の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,下肢の後遺障害についてお困りの方に向けて,下肢の後遺障害に関する判断基準,等級認定された場合の賠償額などを解説します。

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下肢・足指の後遺障害の種類

下肢は,人体の股関節より下の部位をいい,具体的には大腿骨,下腿(脛骨及び腓骨),足根骨,中足骨で構成されます。交通事故の結果,骨折や脱臼が生じるなどした場合に,治療を尽くしても事故前の状態には戻らず,後遺障害の対象となることがあります。

下肢及び足指の後遺障害としては,以下のものが挙げられます。

下肢の後遺障害

欠損障害下肢の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害関節(股関節、膝関節、足関節)の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
変形障害下肢の骨折部が曲がったまま癒合するなどした結果,変形が生じたことに関する後遺障害
短縮障害下肢(股から足までの間)の長さが短くなったことに関する後遺障害

足指の後遺障害

欠損障害足指の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害①足指の関節の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
②足指の一部を失ったうち,欠損障害に該当しないものに関する後遺障害

後遺障害等級の判断基準(下肢の欠損障害)

①両下肢を失った場合

等級基準
1級5号両下肢をひざ関節以上で失ったもの
2級4号両下肢を足関節以上で失ったもの
4級7号両足をリスフラン関節以上で失ったもの

②1下肢を失った場合

等級基準
4級5号1下肢をひざ関節以上で失ったもの
5級5号1下肢を足関節以上で失ったもの
7級8号1足をリスフラン関節以上で失ったもの

③具体的な認定基準

「下肢をひざ関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.股関節おいて、寛骨と大腿骨とを離断したもの
2.股関節とひざ関節との間において切断したもの
3.ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの

「下肢を足関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.ひざ関節と足関節との間で切断したもの
2.足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの

「リスフラン関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.足根骨(腓骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨)において切断したもの
2.リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離団したもの

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害等級の判断基準(下肢の機能障害)

①下肢の用を全廃したもの

等級基準
1級6号両下肢の用を全廃したもの
5級7号1下肢の用を全廃したもの

「下肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

3大関節(股関節、ひざ関節、及び足関節)の全てが強直(※)した場合
(3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直した場合も含まれる)

※「強直」:関節が全く可動しない場合,又はこれに近い状態(※※)である場合
※※「これに近い状態」:自動の可動域が10%以下になった場合

②関節の用を廃したもの

等級基準
6級7号1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級7号1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

③関節の機能に著しい障害を残すもの

等級基準
10級11号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
2.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されていないもの

④関節の機能に障害を残すもの

等級基準
12級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「関節の機能に障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合

⑤動揺関節

動揺関節とは,骨折部の癒合不全や靭帯の断裂などが原因となって,関節の安定性が失われてしまったために,関節がグラグラして安定しなかったり,本来曲がらない方向に曲がってしまったりと,異常な関節運動の起きる状態を言います。膝関節の靭帯損傷に際して発生する場合が多く見られます。
自賠責保険の後遺障害等級認定基準には設けられていないものの,労災保険の認定基準に準じ,関節機能障害の一種として認定される運用となっています。

等級基準
8級7号相当
(用廃)
常に硬性補装具を必要とするもの
10級11号相当
(著しい障害)
時々硬性補装具を必要とするもの
12級7号相当
(障害)
重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの

⑥可動域の測定方法

【主要運動】

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
下肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
股関節①屈曲・伸展125度・15度(合計140度)
股関節②外転・内転145度・20度(合計65度)
ひざ関節屈曲・伸展130度・0度(合計130度)
足関節屈曲(底屈)・伸展(背屈)45度・20度(合計65度)
「屈曲+伸展」「外転+内転」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

股関節の主要運動

足関節の主要運動

【参考運動を用いる場合】

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
股関節外旋・内旋45度・45度(合計90度)

後遺障害等級の判断基準(下肢の変形障害)

①偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

 偽関節とは,骨折した部位が変形癒合し,関節でない部分が曲がって関節のようになってしまった状態を指します。関節のようだが関節ではない,ニセの関節というべきものです。

 偽関節に関する後遺障害は2つの種類があり,硬性補装具を必要とするかどうかにより区別されます。硬性補装具を要する場合,以下の等級に該当します。

等級基準
7級10号1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの
2.脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残し,常に硬性補装具を必要とするもの
3.脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残し,常に硬性補装具を必要とするもの

②偽関節を残すもの

等級基準
8級9号1下肢に偽関節を残すもの

「偽関節を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.大腿骨の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
2.脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
3.脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

③長管骨に変形を残すもの

等級基準
12級8号長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.大腿骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
2.脛骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
3.大腿骨の骨端部に癒合不全を残すもの
4.脛骨の骨端部に癒合不全を残すもの
5.腓骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもの
6.大腿骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
7.脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
8.大腿骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
9.脛骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
10.大腿骨が外旋45度以上(=股関節の内旋が0度を超えて可動できない)又は、内旋30度以上(=股関節の外旋が15度を超えて可動できない)で変形癒合しているもの

後遺障害等級の判断基準(下肢の短縮障害)

等級基準
8級5号1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

下肢の短縮は,上前腸骨棘と下腿内果下端の間の長さを健側の下肢と比較して等級認定を行います。

後遺障害等級の判断基準(足指の欠損障害)

等級基準
5級8号両足の足指の全部を失ったもの
8級10号1足の足指の全部を失ったもの
9級14号1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
10級9号1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
12級11号1足の第2の足指を失ったもの
第2の足指を含み2の足指を失ったもの
第3の足指以下の第3の足指を失ったもの
13級9号1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

「足指を失ったもの」とは,足指を中足指節関節から失ったことを指します。つまり,足指をすべて失った場合を指すことになります。

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害等級の判断基準(足指の機能障害)

等級基準
7級11号両足の足指の全部の用を廃したもの
9級15号1足の足指の全部の用を廃したもの
11級9号1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
12級12号1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13級10号1足の第2の足指の用を廃したもの
第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの
第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
14級8号1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

「足指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.親指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.親指以外の足指について、中節骨又は基節骨で切断したもの
3.親指以外の足指について、遠位指節間関節又は近位指節間関節で離断したもの
4.親指の中足指節間関節又は指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの
5.親指以外の足指の中足指節間関節又は近位指節間関節の可動域が1/2以下に制限されるもの

後遺障害に対する損害賠償額

後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。

ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。

【ケース】
症状固定時50歳,年収500万円,下肢の関節機能障害で10級11号認定

①自賠責基準

①後遺障害慰謝料
=190万円

②後遺障害逸失利益
=271万円

③合計
=461万円

②裁判基準

①後遺障害慰謝料
=550万円

②後遺障害逸失利益
=500万円×27%×13.1661(17年ライプ)
=17,774,235円

③合計
=23,274,235円

③差額

23,274,235円-461万円
=18,664,235円(約5倍)

あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

下肢・足指の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

下肢や足指の後遺障害は,申請時の検査内容・診断内容が結果に直結することが多く見られる類型です。特に機能障害は,基本的に後遺障害診断書上の関節可動域の測定値をほぼ唯一の基準にして判断されるものであるため,申請を行う前に,さらには可動域の測定を行う前に,どのような等級の獲得を目指していくのかを明確にして手続を進める必要があります。

これらの進め方や判断に関しては,交通事故に精通した弁護士に依頼をするのが最も確実でしょう。弁護士に依頼し,適切な方針で適切な対応をしてもらうことにより,障害の程度を正確に反映した等級認定や賠償の獲得が可能になります。

②金額交渉に際しての弁護士依頼

具体例で紹介した通り,同じ後遺障害等級認定が得られた場合でも,その具体的な損害賠償額は弁護士の有無で大きく異なります。保険会社は,弁護士の有無で計算を異にする運用をしているため,十分な損害賠償額を獲得するためには弁護士への依頼が必要と考えてよいでしょう。

下肢・足指の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ

下肢・足指に後遺障害が残るケースは,重大な事故である場合が多く,今後の生活のためにも十分な損害賠償を獲得することが非常に重要です。
そして,後遺障害等級認定および金額交渉に際しては,交通事故に精通した弁護士の対応が大変有益になりやすいので,交通事故に長けた弁護士へのご相談・ご依頼をお勧めいたします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

交通事故で上肢・手指の後遺障害を知りたい方へ,類型ごとの判断基準や認定後の賠償額を徹底解説。弁護士依頼のメリットも紹介

●上肢・手指の後遺障害にはどのようなものがあるか?

●上肢・手指の後遺障害の判断基準は?

●上肢・手指の機能障害はどのように判断するか?

●等級が認定された場合にはいくら請求できるか?

●上肢・手指の後遺障害については弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,上肢の後遺障害についてお困りの方に向けて,上肢の後遺障害に関する判断基準,等級認定された場合の賠償額などを解説します。

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上肢・手指の後遺障害の種類

上肢とは肩や腕のことを指します。交通事故の結果,骨折や脱臼が生じるなどすると,治療を尽くしても事故前の状態には戻らず,後遺障害の対象となることがあります。

上肢及び手指の後遺障害としては,以下のものが挙げられます。

上肢の後遺障害

欠損障害上肢の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害関節(肩関節・肘関節・手関節)の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
変形障害上肢の骨折部が曲がったまま癒合するなどした結果,変形が生じたことに関する後遺障害

手指の後遺障害

欠損障害手指の一部分を失ったことに関する後遺障害
機能障害①手指の関節の動きに制限が生じたことに関する後遺障害
②手指の一部を失ったうち,欠損障害に該当しないものに関する後遺障害

後遺障害等級の判断基準(上肢の欠損障害)

①両上肢を失った場合

等級基準
1級3号両上肢をひじ関節以上で失ったもの
2級3号両上肢を手関節以上で失ったもの

②1上肢を失った場合

等級基準
4級4号1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5級4号1上肢を手関節以上で失ったもの

③具体的な認定基準

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.肩関節において、肩甲骨と上腕骨とを離断したもの
2.肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
3.ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの

「上肢を手関節以上失ったもの」

以下のいずれかの場合
1.ひじ関節と手関節との間で切断したもの
2.手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

後遺障害等級の判断基準(上肢の機能障害)

①上肢の用を全廃したもの

等級基準
1級4号両上肢の用を全廃したもの
5級6号1上肢の用を全廃したもの

「上肢の用を全廃したもの」とは,以下の場合を指します。

三大関節(肩関節・肘関節・手関節)の全てが強直(※)している
かつ
手指の全部の用を廃している

※関節が可動性を失い,動かなくなった状態

②関節の用を廃したもの

等級基準
6級6号1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

「関節の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節が強直したもの
2.関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(※)にあるもの
3.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

※「これに近い状態」とは,自動の可動域が10%程度以下になった場合を指します。
(例)健側の可動域が150度の場合,患側の可動域が15度以下であれば関節の用廃となる

③関節の機能に著しい障害を残すもの

等級基準
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
2.人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2分の1以下に制限されていないもの

④関節の機能に障害を残すもの

等級基準
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「関節の機能に障害を残すもの」とは,以下の場合を指します。

関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合

⑤可動域の測定方法

 【主要運動】

関節可動域は,関節ごとに定められる主要運動の測定値を比較します。
上肢の三大関節の主要運動は,以下の通りです。

関節主要運動参考可動域角度
肩関節①屈曲(前方拳上)180度
肩関節②外転(側方拳上)180度
肘関節屈曲・伸展(※)145度・5度(合計150度)
手関節屈曲(掌屈)・伸展(背屈)(※)90度・70度(合計160度)
※肘関節と手関節は,「屈曲+伸展」の合計値を比較

なお,左右いずれも可動域制限が生じている場合,参考可動域との比較を行います。

肩関節の運動

肘関節の運動

 【参考運動を用いる場合】

関節の運動には,主要運動のほかに参考運動があります。
可動域制限を判断する場合に参考運動を用いるのは,主要運動の可動域が基準をわずかに(=機能障害は5度,著しい機能障害は10度)上回る場合とされます。

関節参考運動参考可動域角度
肩関節①伸展(後方拳上)50度
肩関節②外旋・内旋60度・80度(合計140度)
手関節①橈屈25度
手関節②尺屈55度

後遺障害等級の判断基準(上肢の変形障害)

①偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

 偽関節とは,骨折した部位が変形癒合し,関節でない部分が曲がって関節のようになってしまった状態を指します。関節のようだが関節ではない,ニセの関節というべきものです。

 偽関節に関する後遺障害は2つの種類があり,硬性補装具を必要とするかどうかにより区別されます。硬性補装具を要する場合,以下の等級に該当します。

等級基準
7級9号1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの
2.橈骨及び尺骨の骨幹部又は骨幹端部にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの

②偽関節を残すもの

等級基準
8級8号1上肢に偽関節を残すもの

「偽関節を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
2.橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すが硬性補装具を必要とはしないもの
3.橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

③長管骨に変形を残すもの

等級基準
12級8号長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残すもの」とは,以下のいずれかに該当する場合を指します。

1.上腕骨に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
2.橈骨及び尺骨の両方に変形を残し、外見から想定できる程度のもの(=15度以上屈曲して不正癒合したもの)
3.上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの
4.橈骨又は尺骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残し、硬性補装具を必要としないもの
5.上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
6.上腕骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
7.橈骨又は尺骨(骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少したもの
8.上腕骨が50度以上、外旋又は内旋で変形癒合しているもの

(「障害認定必携」より引用 再掲)

後遺障害等級の判断基準(手指の欠損障害)

①「手指を失ったもの」

等級基準
3級5号両手の手指の全部を失ったもの
6級8号1手の5の手指またはおや指を含み4の手指を失ったもの
7級6号1手のおや指を含み3の手指またはおや指以外の4の手指を失ったもの
8級3号1手のおや指を含み2の手指またはおや指以外の3の手指を失ったもの
9級12号1手のおや指またはおや指以外の2の手指を失ったもの
11級8号1手のひとさし指、なか指またはくすり指を失ったもの
12級9号1手のこ指を失ったもの

「手指を失ったもの」とは,以下の場合を指します。

1.手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
2.親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節において、基節骨と中節骨が離断したもの

(「障害認定必携」より引用)

②「手指の一部を失ったもの」

等級基準
13級7号1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
14級6号1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

1指骨の一部を失っていること(遊離骨片の状態を含む)がX線写真より確認できるものを指します。

後遺障害等級の判断基準(手指の機能障害)

①「手指の用を廃したもの」

等級基準
4級6号両手の手指の全部の用を廃したもの
7級7号1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
8級4号1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
9級13号1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
10級7号1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
12級10号1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
13級6号1手のこ指の用を廃したもの

「手指の用を廃したもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
2.中手指節関節又は近位指節間関節(親指については指節間関節)の可動域が1/2以下に制限されるもの
3.親指について、橈側外転又は掌側外転のいずれかの可動域が1/2以下に制限されるもの
4.手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚完全に脱失したもの

(「障害認定必携」より引用 再掲)

②「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」

等級基準
14級7号1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」とは,以下のいずれかの場合を指します。

1.遠位指節間関節が強直したもの
2.屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないもの又はこれに近い状態にあるもの

後遺障害に対する損害賠償額

後遺障害等級が認定された場合,主に後遺障害に対する慰謝料及び逸失利益が発生します。
もっとも,その金額は一律ではなく,計算基準や計算方法によって大きく異なります。保険会社は,弁護士がいない場合には自賠責基準を念頭に金額提示を行い,弁護士が入った場合には裁判基準を念頭に計算するのが通常です。

ここでは,弁護士の有無による損害賠償額の差異に関する一例として,以下のケースを題材に各基準の計算を紹介します。

【ケース】
症状固定時50歳,年収500万円,上肢の関節機能障害で10級10号認定

①自賠責基準

①後遺障害慰謝料
=190万円

②後遺障害逸失利益
=271万円

③合計
=461万円

②裁判基準

①後遺障害慰謝料
=550万円

②後遺障害逸失利益
=500万円×27%×13.1661(17年ライプ)
=17,774,235円

③合計
=23,274,235円

③差額

23,274,235円-461万円
=18,664,235円(約5倍)

あくまで単純計算の結果であるため,現実にこの金額が受領できるかは別問題ですが,少なくとも弁護士への依頼によって大きく増額する余地のあることが分かります。

上肢・手指の後遺障害は弁護士に依頼すべきか

①等級認定に際しての弁護士依頼

上肢や手指の後遺障害は,申請時の検査内容・診断内容が結果に直結することが多く見られる類型です。特に機能障害は,基本的に後遺障害診断書上の関節可動域の測定値をほぼ唯一の基準にして判断されるものであるため,申請を行う前に,さらには可動域の測定を行う前に,どのような等級の獲得を目指していくのかを明確にして手続を進める必要があります。

これらの進め方や判断に関しては,交通事故に精通した弁護士に依頼をするのが最も確実でしょう。弁護士に依頼し,適切な方針で適切な対応をしてもらうことにより,障害の程度を正確に反映した等級認定や賠償の獲得が可能になります。

②金額交渉に際しての弁護士依頼

具体例で紹介した通り,同じ後遺障害等級認定が得られた場合でも,その具体的な損害賠償額は弁護士の有無で大きく異なります。保険会社は,弁護士の有無で計算を異にする運用をしているため,十分な損害賠償額を獲得するためには弁護士への依頼が必要と考えてよいでしょう。

上肢・手指の後遺障害に強い弁護士をお探しの方へ

上肢・手指の後遺障害は,生活上の行動に直接影響するため,適切な等級認定と金銭賠償を獲得する必要が非常に大きいと言えます。
しかし,等級認定基準や賠償額を正確に把握して,その内容に沿って必要な対応を行うのは容易でなく,交通事故に精通した弁護士へのご相談が適切でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

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