【商標法違反の不起訴処分】不起訴になる可能性や具体的ケース,不起訴を目指したい場合の手段などを解説

このページでは,商標法違反の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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商標法違反で不起訴を目指す方法

①被害者との示談

商標法違反は,他人の商標を無断で利用するなどする事件です。そのため,事件の被害者は商標に関する権利を持っている人や会社(商標権者)であり,起訴不起訴の判断には商標権者の意向が大きく影響します。
そうすると,不起訴を目指す観点では,被害者である商標権者と示談し,その許しを獲得することが不起訴に大きく近づくと言えるでしょう。

なお,商標権者が誰であるか,商標権者が法人である場合には誰に連絡を試みるべきか,といった具体的な点は,事件の当事者には判断が困難な問題です。示談を目指す場合には,弁護士に依頼し,弁護士を通じて捜査機関担当者に相談してもらうことが適切な方法となります。

ポイント
商標権者を被害者とする犯罪
具体的な連絡方法は弁護士から捜査機関に相談してもらう

②商品の購入者との示談

商標法違反の場合,商標を無断利用した商品が流通し,無断利用を知らない購入者の手元に移っているケースが多く見られます。このとき,適正な商標だと信頼して商品を購入した人は,商標の無断利用によっていわば偽物の商品を掴まされており,実質的な被害者と言えます。
そのため,商品が既に購入されているケースでは,実質的な被害者出る購入者との間で示談を試み,購入者からの許しの獲得を目指す方法が有力です。

購入者との示談は,特に購入者が捜査機関に相談したことが捜査開始のきっかけとなった場合に有力となりやすいところです。商標権者は捜査を求めていないものの,購入者が捜査を求めているという場合,購入者との示談はその後の捜査や処分に大きな影響を及ぼすことが期待できるでしょう。

ポイント
購入者は実質的な被害者
購入者が捜査開始のきっかけとなった場合に有力な手段

③自首

商標法違反の事件は,捜査が開始される前に,積極的な動きで捜査を回避することが非常に難しい事件類型です。捜査開始前の試みとしては,当事者間での解決を目指すことが代表的ですが,商標法違反では誰が相手方当事者であるか分からない,又は誰に対して連絡を試みればいいか分からない,という場合が大半であるためです。
そのため,商標法違反では事前の対処が困難な傾向にあると言えます。

この点,捜査を受ける前にできる数少ない動きの一つが,自首です。捜査が行われる前に,自首によって反省の意思を表明するなどすることで,強い反省の態度を踏まえた不起訴処分の可能性が高くなるでしょう。
また,自首を行うことで,いつ捜査を受けるか分からないという不安を解消することができ,生活への悪影響を最小限に抑える効果も期待できます。

ポイント
商標法違反は,捜査開始前の対処が困難
自首によって強い反省の意思を示すことが可能

④商標法違反の認識がなかった場合

商標法違反の事件では,商標を無断利用した商品の製造者と販売者が異なる場合も数多く見られます。このとき,販売者が商標法違反の事実を知らずに商品を仕入れ,販売をしてしまっていた,というケースも一定数あり得るところです。

商標法違反は故意犯であるため,商標権の侵害を知らずに商品販売した人には成立しません。そのため,商標法違反の事実を知らずに商品を仕入れ,販売してしまったというケースでは,「本物だと信じ込んでおり商標法違反の認識はなかった」との理由で不起訴処分としてもらうことを目指すのが有力です。

なお,商標法違反の認識がなかったかどうかは,客観的な事情を総合して判断されます。判断材料としては,商品の精巧さ,仕入れルートや価格,販売方法や販売価格などが挙げられるでしょう。

ポイント
販売者が商標法違反を知らなかった場合,不起訴になり得る
知らなかったと言えるかどうかは,客観的な事情を総合して判断される

商標法違反で不起訴になる可能性

商標法違反の事件は,犯罪事実が明らかである場合には基本的に起訴される事件類型です。初犯だから,反省しているからという程度の一般的な事情のみで不起訴になることは考えにくいため,不起訴となるには相応の事情が必要になりやすいでしょう。
特に,複数件の商標法違反があるケースや,被害規模が大きいケースでは,それでも不起訴としてよいと言えるだけの根拠が必要とされやすいです。

もっとも,ケースに応じた適切な対応を尽くし,その結果が伴った場合には,不起訴となることも十分に考えられます。
認め事件の場合には,やはり示談や金銭賠償を尽くし,被害者側の損害を埋め合わせる動きが重要です。もともとの事件がそれほど悪質でなく,事後的に被害が回復されたとなれば,不起訴処分は有力になりやすいでしょう。
一方,否認事件の場合には,犯罪事実の立証が困難であるとの具体的な主張が肝要です。どのような主張が,根拠が適切であるかは,個別の内容によるので,弁護士と十分に相談して方針決定することをお勧めします。

ポイント
初犯,反省といった一般的な事情のみでは不起訴になりづらい
事件内容に応じた適切な対処ができれば,結果により不起訴は十分あり得る

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません。

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます。

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

商標法違反で不起訴を目指す場合の注意点

①購入者との示談の効果

商標法違反で不起訴処分を目指す場合,示談の試みが有力ですが,購入者との示談についてはその位置付けや効果について注意が必要です。

商標法違反の被害者は,正確には商標権者であるため,その商品を購入した人は犯罪の直接の被害者ではなく,事実上損害を被った人,という立場にとどまります。そのため,購入者との示談が成立し,購入者から許しが得られたとしても,他の事件で被害者と示談したのと同様に不起訴と直結する効果が期待できるとは限りません。

もっとも,商標権者との示談交渉ができるケースは少ないため,現実的には購入者との示談を試みるほかない場合は多いところです。この場合に,購入者相手の示談以上に有力な手段が考えにくい,というのもまた間違いないところでしょう。

②事業として行っていた場合

商標権を侵害した商品を,事業として仕入れ販売していた場合には,事件の重大性が重く評価され,刑事責任も大きくなりやすい可能性に注意が必要です。

個人がたまたま購入したものを転売したようなケースとは異なり,事業として仕入や販売を繰り返しているケースでは,以下のような理由で刑事責任が重大視されやすい傾向にあります。

・件数や期間が大きくなりやすい
→事件の数が多くなればなるほど,刑事責任は重大になりやすい

・営利目的である
→商標権侵害の行為を営利事業として行うのは,より責任が重く見られやすい

事業として取り扱ってしまっていたケースでは,不起訴を目指すためより慎重な検討・対応をお勧めします。

③余罪の取り扱い

商標法違反の事件は,1件だけという場合はあまりなく,いわゆる余罪が複数あるケースが多く見られます。そのため,余罪が刑事処分にどのような影響を及ぼすのか,という点は大きな心配事になりやすいです。

この点,余罪が具体的に捜査の対象となるのは,被害届などの形で被害者側から被害申告が出されている件に限られるのが通常です。捜査機関は,商標権者や購入者が捜査を求めた事件について,捜査処分するとの取り扱いをすることが一般的でしょう。
そのため,複数の余罪が発覚したときにその全てが刑事処罰の対象になる,というわけではありません。

もっとも,余罪の件数や規模は,刑事処分を決める際の重要な判断要素になることもまた事実です。余罪の数や規模が著しい場合には,それだけ不起訴になりづらくなる可能性に注意が必要でしょう。

④否認事件の注意事項

商標法違反の場合,故意を争う否認事件が相当数見られます。代表的なものは,「商品を仕入れて販売したものの,商標権を侵害した商品であるとは知らなかった」との主張です。

この点,故意を争うケースでは,商標権侵害を知らなかった原因が何か,という点が問題になり得るということに注意しましょう。具体的には,必要な注意を怠ったり,重要な事情を見落としたりしていると,「商標権を侵害していてもよいと思っていた」と判断され,故意ありとみなされてしまう可能性があります。

一例としては,あまりに安価で販売されていた,同じ商品が商標権侵害として問題になっていたなど,商標権侵害の事実が容易に把握できる場合が挙げられます。
なぜ商標権侵害が分からなかったか,という点が追及される可能性を踏まえ,合理的な否認の主張をすることをお勧めします。

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【埼玉大宮で商標法違反事件の弁護士選び】重視すべき基準や選び方などを弁護士が解説

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商標法違反事件で弁護士を選ぶタイミング

①自首を試みるとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。
そのため,自首は,事件の発覚や犯人の特定に時間を要しやすいケースで,特にその時間的な猶予が生じやすいものです。

この点,商標法違反の事件は,違反行為が発覚するまでに時間がかかりやすい,という点に大きな特徴があります。多くの場合,商標法違反に当たる商品の販売などがきっかけになりやすいですが,商品が販売されたからと言って,直ちに違反行為が発覚するわけではないためです。
その意味では,商標法違反の事件は自首の検討が有力になりやすい事件類型と言えます。

もっとも,本当に自首をすべきかどうか,自首をする場合にどのような手順・方法で行うか,という点は,当事者自身での判断が困難なポイントです。自首を試みようと考えるときには,適切な弁護士選びの上で,弁護士とともに検討・行動をするのが適切でしょう。
そのため,自首を試みたいと考えるときは,弁護士選びのタイミングということができます。

ポイント
商標法違反の事件は,自首が有力になりやすい
自首すべきかの判断,自首する場合の方法は,弁護士に委ねることが適切

②捜索を受けたとき

商標法違反の場合,被疑者に対する捜査は捜索から始まることが非常に多く見られます。商標法違反の証拠となる商品が保管されている可能性が高いため,家宅や事業所の捜索を行い,商品の差押えを行うことが優先されやすいのです。
そして,捜索を受けて商品の差し押さえがなされた後,取り調べなどの本格的な捜査が始まることとなります。

そのため,商標法違反の事件で捜索を受けた際には,その後の捜査に対する備えを検討したり,刑事処分を少しでも軽減するための行動に着手したりすることが望ましいと言えます。これらの動きは,弁護士なしでは現実的に困難であるため,弁護士選びを行うべきタイミングということができるでしょう。

ポイント
商標法違反に対する捜査は,捜索から始まるケースが多い
捜索後の捜査に対応するため,弁護士選びを行うべきタイミング

③呼び出しを受けたとき

商標法違反の事件で取り調べを行う場合には,逮捕せず呼び出す方法が用いられるケースも多数見られます。特に,あらかじめ捜索差押えをしている,証拠となる商品が確保できているなど,今後に証拠隠滅される可能性が低いと言える状況であれば,逮捕せず呼び出す形になりやすいでしょう。
そのため,呼び出しを受けたときには,その後に行われる取調べへの対応を事前に検討しておく必要があります。商標法違反の場合には,対象となる行為や証拠が一つしかないというケースはほとんどないため,複数の出来事について,それぞれどのような対応をすべきかを想定することが非常に重要です。

しかしながら,出頭後の取り調べに対してどのように対応するのが適切かを自分の力で整理するのは容易でありません。取り調べを受けた経験のある人でなければ,取り調べがどのように行われるかを想像することも困難でしょう。
そこで,呼び出しを受けて取り調べの予定が明らかになったタイミングで,弁護士を選ぶことが有力な選択肢になります。適切な弁護士選びができれば,出頭時の対応が万全になるほか,その後の弁護活動も充実したものになるでしょう。

ポイント
逮捕せず取調べ目的で呼び出す方法が用いられる場合も多数ある
取り調べに備えるためには,取調べに精通した弁護士選びが適切

④逮捕されたとき

商標法違反事件は,逮捕をされる可能性も十分に考えられる事件類型です。特に,違反行為の数や期間が際立っている場合,違反行為による損害が非常に大きい場合,組織的,計画的な事件である場合など,捜査に慎重を期す必要が大きい事情があるケースでは,被疑者を逮捕勾留の上で捜査することが多くなります。

そのため,逮捕された商標法違反事件では,その後に捜査される内容が多くなりやすく,対応を要するポイントも多くなるのが通常です。そのすべてに適切な判断をすることは非常に難しく,弁護士の助言やサポートを受けながら対応することが望ましいでしょう。
逮捕されてしまったケースでは,家族をはじめとする周囲の人ができるだけ早期に弁護士選びを進め,その後の不利益を最小限に抑えることを目指すのが適切です。

ポイント
逮捕された場合は,特に対応を要する点が多くなりやすい
適切な対応を判断するため,弁護士選びが望ましいタイミング

商標法違反事件の弁護士を選ぶ基準

①商標法違反の弁護に精通しているか

商標法違反の事件は,弁護活動に他の事件類型とは異なる特徴が複数あります。刑事事件の代表的な弁護活動である示談一つを取っても,示談の相手は誰なのか,誰との間であれば示談が可能か,誰と示談をすると処分結果にどのような影響があるか,といった点を検討しなければなりませんが,これは商標法違反の特徴と言えるでしょう。

商標法違反の弁護士を選ぶ際には,商標法違反事件の弁護活動について十分な知識を持っているか,事件類型の特色に精通しているか,といった点を重要な判断基準とすることをお勧めします。

②詳細な聴き取りを円滑に行ってくれるか

商標法違反とされる具体的な事件としては,商標権を侵害した商品を入手し,販売したというケースが非常に多く見られますが,商品の入手方法,販売方法は人により様々です。また,商品の数や取引の回数,得られた利益の大きさなど,事件の全体像を把握しなければ,適切な見通しを持つことも困難です。
そのため,商標法違反事件の弁護活動を行う場合には,事件の詳細な内容をはじめ,経緯などの周辺事情を適切に聴き取ることが不可欠です。

弁護士選びに際しては,弁護士が事件の把握に必要な情報を,円滑に聴き取ってくれるかという点を基準の一つとするのが適切でしょう。聴き取りの円滑さは,商標法違反の事件への経験値を推し量る判断材料にもなります。

③具体的な対応方針を説明してくれるか

商標法違反の場合,弁護活動の方針にいくつかの選択肢があるケースも少なくありません。特に,余罪を含めた複数の事件が問題になりやすいことから,一つの事件だけでなく複数の事件それぞれについて方針を検討する必要があり,それだけに選択肢も多くなりやすい傾向にあります。
もっとも,どの選択肢が客観的に正しいかは不明確であって,結果が出た後でも正しい選択だったかは分からない,というケースは多く見られます。その中で,どのような理由でどのような方針を取っていくのか,という判断が,商標法違反の事件を弁護する弁護士の大きな役割と言えるでしょう。

そのため,商標法違反の弁護士選びに際しては,弁護士が今後の対応方針を詳細に判断してくれるか,その方針を取る理由やメリットは何か,といった点について,十分な説明を受けるようにしましょう。その説明内容を踏まえて,弁護士選びを行うことが有力です。

④弁護士費用の見通しは明確か

商標法違反の事件は,逮捕などの身柄拘束を受けるかどうか,捜査にどの程度の期間を要するか,どのような動きを要するか,といった点を事前に判断することが容易でありません。そして,期間が長く,必要な活動が多くなれば,事前の想定よりも弁護士費用が高くなる可能性はあり得ます。

もっとも,想定される弁護士費用が分からない,という状態で弁護士選びをするわけにはいきません。そのため,弁護士費用については,どのような場合にどの程度の費用となりやすいか,といった形で見通しを把握できることが望ましいでしょう。
裏を返せば,依頼者目線を踏まえてできる限り費用の見通しを明確にしてくれるかどうか,という点は,弁護士選びの重要な判断基準の一つと言えます。

商標法違反事件で弁護士を選ぶ必要

①適切な取り調べ対応のため

刑事事件の捜査では取調べが不可欠です。特に,被疑者への取調べは捜査の中核であって,被疑者からどのような話が引き出せるかによってその後の捜査が決定づけられる事件も少なくありません。

逆に,被疑者の立場にある場合,取調べにどのような対応を取るのが最も有益であるのかを把握していることは非常に重要です。自分が何を話すか,どのように話すかによって,その後の捜査や処分が決定づけられる可能性もあるため,取調べ対応の方法・内容は十分に検討する必要があるでしょう。
特に,商標法違反の場合には,犯罪の故意の有無が問題になるケース,余罪の捜査が生じるケースなど,取り調べへの対応が結果を左右する局面は類型的に多くなりやすいところです。

商標法違反事件に対応する場合には,取調べ対応への重要性を踏まえ,弁護士から適切なサポートを受けるようにしましょう。

②早期釈放のため

商標法違反の事件で逮捕された場合,早期釈放を目指すことは有力な選択肢です。短い拘束期間のみで釈放されることができれば,日常生活への悪影響は最小限に抑えることが可能になります。

もっとも,その具体的な動きは,弁護士以外には困難なものです。接見で必要な話し合いを行ったり,ご家族と連絡を取り合ったり,捜査機関や裁判所に必要なアクションを尽くしたりと,早期釈放に向けて弁護士でしかできないことは多岐に渡ります。
また,商標法違反の事件では,そもそも早期釈放が困難な事件も少なくないため,弁護士に判断を仰ぐなどして,釈放に関する見通しを正しく持つことも不可欠です。

③刑事処分の軽減のため

商標法違反の場合,認め事件であれば,刑事処分を少しでも軽減するための試みを行うことが適切です。漫然と対応していては刑罰を防ぐことが難しい事件類型であり,場合によっては重大な刑罰の対象ともなりかねないため,処分の軽減に向けた弁護活動を依頼することは非常に重要となるでしょう。

この点,刑事処分の軽減のため,具体的にどのような試みを行うのかは,個別の事件を踏まえた専門的な判断が必要となります。また,弁護活動によってどのような刑事処分が見込まれるのか,という見通しを持つことも不可欠です。
これらの判断や見通しは,弁護士に委ねることが最も適切であるため,処分軽減を目指す場合には弁護士選びが必要と言えます。

④家族や周囲との連携のため

身柄事件の場合,逮捕勾留されたご本人は,自分で外部と連絡を取ることができません。電話を携帯することも認められないため,連絡を取るための手段は以下のような方法に限られます。

逮捕勾留中に外部と連絡を取る手段

1.手紙の送受
→数日~1週間ほどのタイムラグが避けられない

2.(一般)面会
→時間制限が厳しい。接見禁止の場合は面会自体ができない

3.弁護士の接見
→時間的制限なくコミュニケーションが可能

手紙の送受は現実的でなく,面会の時間制限の中で必要な連絡をすべて取ることも難しいため,ご本人と周囲との連絡には弁護士の接見を活用することが不可欠になりやすいでしょう。
身柄事件で必要な連絡を取り合うためには,弁護士への依頼が適切です。

商標法違反事件における弁護士選びの準備

①事件内容や経緯をまとめる

弁護士から適切な案内を受けるためには,弁護士に事件の内容を正確に把握してもらうことが不可欠です。弁護士から十分な案内が受けられないと,弁護士選びも適切にはできないため,弁護士に正しい情報を伝えることは弁護士選びの第一歩と言えるでしょう。

この点,商標法違反の事件では,具体的にどのような行動を取ったのか,ということに加え,その行動を取った際にはどのような認識だったか,という内心の問題も重要になります。そして,行動した際の内心(特に,商標法違反の認識があったかどうか)を裏付けるための事情として,事前の経緯も大きな問題になりやすいところです。
そのため,弁護士選びに際しては,事件の内容や経緯をできる限りまとめ,どの時点でどのような認識であったか,という点が明らかにできるようにしておくことをお勧めします。

②証拠になる物をまとめる

事件の証拠となり得る物が手元にある場合,弁護士への相談に際して弁護士に示せるよう準備しておくことが有益です。

商標法違反の事件は,主に企業ロゴなどを不正に用いた商品の入手・販売が問題になりやすいところですが,実際にどのような商品が問題となっているのか,という点を把握するには,関連する証拠を共有することが最も端的であり確実です。
想定される証拠としては,商品の現物のほか,その商品を入手した時の情報,商品を販売した時の情報(インターネット上に掲載した情報など)が挙げられるでしょう。

③弁護士に求めたいことをまとめる

弁護士を選ぶ際,何のために,何を目指して弁護士に依頼するのか,という点を明確にしておくことが必要です。相談の目的に関して弁護士とズレが生じると,弁護士からの案内も目的から外れたものになってしまい,結果として弁護士選びが円滑にできないためです。

もちろん,弁護士側も法律相談の目的を想像することはできるため,理解が大きくズレることは多くありませんが,その目的が自分にとってどれだけ重要なものか,という詳細なニュアンスの面は,どうしても弁護士側の想像では補いきれないものです。
弁護士選びを実のあるものにするためにも,弁護士選びの目的は明確に表現できるようにしましょう。

商標法違反事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①弁護士との相性の重要性

商標法違反の事件では,依頼する弁護士との相性は非常に重要なポイントとなることが多く,この点を軽視しないよう注意することが適切です。

商標法違反の場合,事件の性質上,どのような動きを取ればどのような成果が得られるか(刑事処分がどの程度軽減するか等)という点を明確に見通すことが困難です。そもそも,活動方針が最も有益な結果につながるかどうか,つまり方針の判断が適切なのかどうかという点も,分からないまま進めざるを得ないことが多いでしょう。

そうすると,最善の結果が得られなかった場合に,どうしても「事前の判断や方針が誤っていたのではないか」との発想になりがちですが,そのような思いになる原因の多くが,弁護士への不信感です。
弁護士への信頼が確かであれば,結果が伴わなかった場合にやむを得ないと考えやすいですが,弁護士と相性が悪く,今一つ信頼できないと感じている場合には,弁護士の判断に原因があるのではないか,とのトラブルに発展しやすい傾向にあります。

このようなトラブルに至っても,依頼者自身が得をする可能性はないため,事前に弁護士との相性を重要なポイントと理解し,弁護士に全幅の信頼を寄せられるか慎重に検討することが適切でしょう。

②示談を試みる場合の経済的負担

商標法違反のケースでは,商品の購入者または商標権者(多くの場合は企業)との間で示談を試みることが有力な活動方針になります。示談が成立した場合には,刑事処分が多かれ少なかれ軽減することが見込まれるでしょう。

そのため,弁護士に依頼する際には,示談を試みる可能性を想定の上,示談のための経済的負担を背負うことができるか,という点に注意することが望ましいでしょう。
また,示談のためにどの程度の経済的負担が可能か,という水準をあらかじめ見積もっておけば,思わぬ金銭負担に悩むことも事前に回避できます。

③法律相談の時間制限

弁護士への法律相談は,30分以内,又は1時間以内といった形で時間を区切って行われるのが通常です。その時間内で,必要な情報を伝え,弁護士から案内を受け,弁護士選びの検討を行う必要があります。
もっとも,その時間は決して長くはありません。無意識に相談時間を浪費してしまうと,肝心の弁護士選びに必要な話が聞けないまま相談が終了してしまう可能性もあるでしょう。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士への法律相談に時間的な制限があることを踏まえ,弁護士選びの基準や聞きたいことなどを可能な限り整理して法律相談に臨むことをお勧めします。そのようなスタンスは,法律相談をより有益な内容とする結果にもつながるでしょう。

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器物損壊事件で自首をするべき場合やメリットデメリットなどを詳細解説

このページでは,器物損壊事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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器物損壊事件で自首をするべき場合

①現行犯で発覚している場合

自首をするべきケースの代表例は,自分が犯人と特定され,何もしなくても自分に対する捜査がなされやすい,という場合です。自首の最大のリスクは,「自首さえしなければ捜査を受けなかったのに,自ら自首したばかりに捜査を受けることになってしまった」という結果となることですが,自首をしなくても自分が犯人と特定されてしまう状況であれば,その最大のリスクがないということになるため,自首のメリットの方が大きいと考えやすくなります。

この点,器物損壊事件は,加害行為のあった直後,現行犯で事件が発覚することも少なくありません。そして,現行犯で発覚した場合には,直ちに警察の捜査が開始されることが見込まれやすいものです。しかも,証拠の多くは失われず残っており,犯人の特定に至る可能性は非常に高いと言ってよいでしょう。

そうすると,現行犯で発覚した器物損壊事件の場合,自首してもしなくても犯人が特定されやすいため,自首のリスクよりもメリットを優先すべき状況である,と考えるのが合理的です。このようなケースでは,積極的な自首の検討をお勧めします。

ポイント
自首のリスクは,自首が原因で捜査を受ける結果になること
現行犯で発覚した場合,自首せずとも犯人が特定されやすい

②被害者との間で解決したい場合

器物損壊事件は,被害者との解決が極めて重要です。被害者と適切な解決ができれば,それで直ちに刑事手続も解決に至る,と言っても過言ではありません。
もっとも,被害者と知人等の関係にある場合を除き,直接被害者に接触する手段はないのが通常です。そのため,被害者との解決を目指すには,捜査機関の力を借り,捜査機関に間に入ってもらうことが必要です。

この時,有力な手段が自首です。自首をした上で捜査を始めてもらい,捜査機関に被害者との解決希望の旨を伝えることで,捜査機関に間に入ってもらうことができます。
なお,実際の被害者とのやり取りは,自分で行うのでなく,弁護士を通じて行うことが求められます。そのため,弁護士への依頼とセットで動くのが良いでしょう。

ポイント
被害者と連絡を取るには,捜査機関に間に入ってもらう必要がある
弁護士への依頼とセットで進めるのが適切

③日常生活への支障を防ぎたい場合

刑事事件で捜査を受けると,様々な局面で日常生活に悪影響が生じる可能性が懸念されます。捜査協力に時間を割かれることのスケジュール面への影響はもちろんですが,それ以上に,捜査を受けたという事実が周囲に知られることの悪影響が非常に大きくなりがちです。
刑事事件の被疑者となることは,非常に不名誉であって周囲の信頼を損なう恐れがあるため,できる限り周囲に知られないことが望ましいでしょう。

この点,自首を行うことで,捜査機関に周囲へ知られないよう配慮した方法での捜査をしてもらうことが期待しやすくなります。捜査機関としても,円滑な協力が得られるならば,殊更に周囲に知られるような捜査手法を取る必要はない,との判断になりやすいところです。

ポイント
事件や捜査を周囲に知られると,日常生活への支障が懸念される
自首した場合,捜査方法を配慮してもらいやすくなる

④反省の意思を表明したい場合

刑事事件の処分軽減を図るためには,反省の意思をできるだけ明確に表明していくことが重要です。重大犯罪の場合,元々の刑事責任が大きすぎるため,反省が処分に与える影響には限りがありますが,比較的軽微と評価される器物損壊事件の場合,反省の意思を加味して処分に反映してもらえるケースが多くなる傾向が見られます。

この点,反省の意思を最も強く表明できる手段が自首です。自首は,自分から大きなリスクを負うため,強い反省の意思がないと実行できない動きだと理解されるのが通常です。「自首するくらいに反省を深めている」と認めてもらうことができれば,自首を理由に処分が大きく軽減されることも十分に考えられるでしょう。

ポイント
器物損壊事件では,深い反省の意思が刑事処分に反映され得る
自首は,反省の深さを最も強く行動に示せる手段

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

器物損壊事件の自首は弁護士に依頼すべきか

器物損壊事件の自首については,弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら進めることをお勧めします。弁護士への依頼によって,以下のようなメリットが見込まれるでしょう。

①器物損壊事件に該当するかが分かる

器物損壊事件は,その意味が抽象的であるため,事件の内容によっては器物損壊罪が成立するかどうか,という点の判断が難しいケースも少なくありません。犯罪行為となる「損壊」とは,「対象物の効用を害する一切の行為」と定義されますが,その意味を明確に理解し,個別の事件に当てはめて犯罪に当たるかを判断するのは容易ではないでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,高度に法的な判断を自分でする必要なく,器物損壊罪に該当するかどうかを弁護士に確認してもらうことができます。自首は,犯罪に当たる行為をした場合に行うべき行動であるため,犯罪に当たるかどうかの理解は非常に重要な前提となります。

②自首すべき状況であるかが分かる

自首は,自分から犯罪事実を申告して,自分に対する捜査を求めるという意思表明であるため,その必要がない場合に行うべきかは慎重な判断をしたいところです。そのため,自首の必要があるかどうか,自首すべき状況なのかは,重要なポイントになりますが,個別事件についてその判断を行うことは当事者には極めて難しいでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,自首をしない場合の不利益と自首をした場合の効果を比較しながら,自首すべき状況であるかどうかについて適切なアドバイスを受けることができるでしょう。自分が自首をするメリットデメリットが明確に分かれば,自首の判断も後悔なくすることが可能です。

③取り調べの対応方法が分かる

自首後には,警察での取り調べが見込まれます。そして,取り調べに対してどのような対応をするかによって,その後の捜査や自分への取り扱いが変わることになるでしょう。そのため,自首を行う際には,自首後の取り調べに対する準備も欠かすことができません。

この点,弁護士に依頼することで,自首後に行われる取調べの流れや内容の説明を受けることができ,取り調べの対応を適切に備えることができるでしょう。自首後に何が起きるかを想定しておくことができれば,適切に対処できる可能性が大きく上がるでしょう。

④弁護活動を速やかに行ってもらえる

自首を行った場合,その後に弁護活動をしてもらうことで,逮捕回避や刑事処罰の回避といった自首の目的をより実現に近づける可能性が高まります。その意味で,自首をするのであればその後に弁護活動を依頼することも検討する方が適切です。

この点,自首の段階から弁護士に依頼しておくことで,自首の後速やかに弁護活動を開始してもらうことが可能です。特に,身柄拘束された場合,釈放を求める弁護活動は少しでも速やかに進めるのが望ましいため,弁護士が付いているメリットが大きくなりやすいでしょう。

器物損壊事件で自首をする場合の注意点

①捜査の出発点であること

自首は,捜査機関にとってはあくまで捜査を開始するきっかけにとどまります。自首を踏まえて捜査を始めるという意味では,刑事手続のスタートラインと言ってもよいでしょう。

自首が大きな決断であって,自首をする本人にとって負担ある手続であることは間違いありません。しかしながら,刑事手続全体を見ると,その後の方がはるかに長いため,自首後にも気を抜かず,適切な対応を続けられるよう注意しましょう。
自首後に適切な対応を続けることが,決断した自首の効果を最大限に高める方法でもあります。

②示談の試みとセットで行うこと

器物損壊事件の場合,自首を試みるのであれば,自首後に被害者との示談を試みることもセットで進めるのが適切です。逆に,自首をしておきながら被害者との示談は全く試みない,というのは合理的でないため,あらかじめ注意したいところです。

親告罪である器物損壊罪は,示談によって告訴がなくなれば確実に不起訴となります。自首という手段で深い反省の意思を示し,それが被害者に伝わっているのであれば,その状況を活かして示談を目指さない手はないでしょう。自首に込められた反省の意思が被害者にも理解してもらえれば,示談成立の可能性は飛躍的に上がるはずです。

③捜査を誘発する結果になり得ること

自首のリスクとして,いわゆる「やぶ蛇」となる可能性があります。特に,被害者が事件に気付いていなかったなど,自首以外に捜査の始まるきっかけがなかった場合,自首が捜査を誘発する結果になる恐れは否定できません。

このリスクは,自首に必ず付きまとうものであり,リスクの高さを推測することはできても確実に回避することは困難です。自首は「捜査されない可能性を自ら捨てる」動きであることを念頭に,一種の割り切りをしておくことも重要です。

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【器物損壊事件での呼び出し】適切な対応方法は?任意なら応じる義務はない?弁護士への依頼は必要?弁護士解説

このページでは,器物損壊事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
器物損壊事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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器物損壊事件で呼び出された場合の対応法

①初めて呼び出しを受けた場合

初めて呼び出しを受けたときの基本的な対応方針としては,まず連絡を無視しない,ということが非常に重要です。

器物損壊事件で呼び出しの連絡が来た,という場合,捜査機関の方針としては,呼び出しに応答してくれるのであれば,比較的穏やかな手続で進めるつもりである可能性が高いでしょう。そのため,捜査機関の期待通りに応答し,連絡が円滑に取れる人物だと分かってもらえれば,逮捕などの大きな不利益は回避しやすくなります。

一方,呼び出しを無視してしまうと,捜査機関から見て呼び出しに応じてくれる人なのかが分かりません。呼び出しに応じてくれれば穏やかな手続でよかったのに,呼び出しを無視したばかりに逮捕などの強制的な手続を取らざるを得ない,と判断されてしまうと,その不利益は極めて大きくなります。

そのため,まずは呼び出しに対して無視せず応じる,留守番電話に担当者名や用件が録音されていれば折り返しなどの対応をするなど,呼び出しへの応答がしてくれる人物だと分かってもらうためのリアクションを取るようにしましょう。

ポイント
無視しないことが最重要
呼び出しの連絡に応じていれば,穏やかな手続で進むことが通常

②2回目以降の呼び出しを受けた場合

1回目の呼び出しで話を聞かれるなどした後,2回目以降に呼び出しが行われるのは,供述調書などの書面を作成する目的であることが一般的です。1回目の呼び出しで供述調書を作成するケースもありますが,1回目に供述調書が作成されなかったケースでは,2回目以降の呼び出しは調書作成の目的であると考えて基本的に間違いないでしょう。

供述調書の作成に当たっては,作成時に求められる署名押印の意味を把握しておくことが重要です。
供述調書への署名押印は,調書の内容が自分の発言と一致することのお墨付きという意味合いのものです。調書の作成者は捜査担当者であり,自分の発言を他人が文字起こししているため,その文字起こしに誤りがないことを署名押印という方法で明らかにしているのです。

そのため,署名押印を求められた際には,内容に間違いがなければ応じる,という方針が合理的です。内容に一部誤りがあれば,訂正を求めることができるため,誤りのない供述調書にしてもらいましょう。

ポイント
供述調書の作成目的であることが一般的
署名押印は,内容に間違いがないことのお墨付きの意味

③事件の記憶がない場合

器物損壊事件の場合,事件当時の記憶がなく,自分が加害行為をしてしまったかどうか分からない,というケースも散見されます。代表例が,深酒で泥酔状態になってしまった後,路上や店舗などで加害行為をした,と言われているケースです。

この点,事件の記憶がない場合には,記憶がないことを前提とはしつつ,疑われている加害行為を認めるか認めないか,という点をできるだけ早期にはっきりさせることをお勧めします。特に,自分がしたことで間違いないであろうという場合,「覚えていない」とだけ答えてしまうと,「自分がしたとは認めていない」という意味で解釈されることは踏まえておきたいところです。

認めるかどうかの判断材料としては,周囲の人や捜査担当者から当時の話を聞き,その内容を総合することが有効です。泥酔状態で記憶がない場合には,酔いが覚めた後に冷静な対応を尽くすことで,不利益を最小限に抑える結果につながりやすいでしょう。

ポイント
認めるかどうかをできるだけ早くハッキリさせる
覚えていないとの回答は,認めないという意味で理解される

④否認事件の場合

疑われている犯罪行為をしていない,という否認事件の場合には,まずその争点を自分の中で明確に把握することが非常に重要です。

一口に否認事件と言っても,その具体的な内容は争点によって様々です。器物損壊事件では,自分が行ったものではない(=犯人性の否認),わざとおこなったことではない(=故意の否認)などが代表的な争点ですが,いずれが争点であるかによって,適切な対応方法や注意すべき点が大きく異なります。犯人性が争点であるのに,「わざとやったわけではない」と述べるのは,むしろ不利益を招くでしょう。

また,争点を把握した後は,できればその争点について法的な判断を行うときの基準や根拠になるものを理解しておきたいところです。この点は,高度に法律的な問題となるため,弁護士への相談をお勧めします。

ポイント
争点を明確に把握する
争点の判断基準や根拠を理解する

器物損壊事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

器物損壊事件の場合,呼び出しに応じたことをきっかけに逮捕されるという流れは基本的に考えにくいでしょう。呼び出しに対してあまりに不合理な対応をしない限りは,逮捕しないとの判断をすることが通常です。
器物損壊事件で逮捕をするのであれば,呼び出しを行うのではなく,予告をしないまま突然自宅等に訪れ,逮捕状を示して逮捕(=通常逮捕)をすることが一般的と言えます。逃亡や証拠隠滅を防ぐ手段として,その方が優れているためです。

ただし,例外的に,呼び出し後に逮捕の判断に至る場合もあり得ます。一例としては,犯人でないと思っていた人を呼んだ(又は犯人がだれか分からない状態で呼んだ)後,呼び出した相手が犯人であると特定できるだけの新事情が発覚した場合が挙げられます。
この場合,事件の程度などから「犯人が特定できれば逮捕する」との捜査方針だったときには,呼び出した人物を犯人だと特定でき次第,逮捕に踏み切る可能性があり得ます。

ポイント
基本的には考えにくい
呼び出し後に犯人と特定された場合には例外的にあり得る

器物損壊事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①事件直後

器物損壊事件は,被害者や目撃者の面前で行われた場合,現行犯で問題になり,警察が関与する流れとなることが一般的です。そして,現行犯で問題になったケースでは,事件から間もないタイミングで呼び出しを受け,取り調べを受けることが見込まれやすいでしょう。

また,事件直後に,事件現場へ警察が駆け付けた際には,そのまま警察署への動向を求められる形になることも多く見られます。

②加害者を特定したとき

被害者などによる事件の把握が現行犯でなかった場合には,被害者が捜査機関に捜査を求め,捜査機関によって加害者の特定が試みられる,という流れになりやすいです。このようなケースでは,加害者として特定された段階で,警察が呼び出しを行うことが想定されるでしょう。

呼び出しのタイミングは,加害者として特定されてから間もない時期であることが一般的です。警察担当者のスケジュールに問題がない限り,期間を空けるメリットはないため,特定され次第の呼び出しとなるでしょう。
また,捜査開始から加害者特定までの期間は,ケースや証拠関係によって様々ですが,概ね1~6か月程度が目安になりやすい傾向が見られます。

③関係者から事情を聴取した後

複数の関係者や目撃者がいた場合,それらの人物から事情を聴取した後に呼び出されるケースもあり得ます。これは,特に被害者と加害者の言い分に相違が見られる場合,第三者の話を踏まえて再度呼び出す,という流れで行われやすい動きです。

呼び出しの時期は特定が困難ですが,必要な第三者からの聴取の後,それほど間を空けずに行われることが一般的です。

④被害弁償を促すとき

器物損壊事件は,被害者の財産に対して損害を与えるという内容です。そのため,事件の解決としては,被害者の経済的な損害が補填される,という結果になることが最も望ましいと言えるでしょう。
捜査機関としても,被害弁償による損害の補填を促したい,と考えることは少なくないため,その旨を加害者側に伝える目的で呼び出すケースがあり得ます。

このような呼び出しは,一通りの取調べが終わった後の終盤の時期になされることが多いでしょう。捜査を尽くした段階で,「被害弁償ができれば,互いにとってより望ましい結果に近づくであろう」と判断した場合に,加害者側へ助け舟を出す意味も込めて行われる傾向にあります。

器物損壊事件の呼び出しに応じたときの注意点

①被害者との解決を目指す重要性

器物損壊事件の場合,被害者との解決の有無が最終的な結果を決定的に左右します。被害者と適切な解決ができていれば,確実に不起訴処分となり,前科が付かない結果を獲得できるため,器物損壊事件では何よりも被害者との解決を目指すことが重要です。

器物損壊事件について呼び出しを受けた場合,目先の対応や警察に出頭した際の不安が先行しがちですが,被害者との解決の重要性と比較すれば比較的小さな悩み事にとどまると言ってよいでしょう。特に,心当たりのある事件について呼び出しを受けた際には,とにかく被害者との解決が目指せないか,弁護士に相談するなどして方法を検討することに注力することをお勧めします。

②反省の深さを示す努力の重要性

器物損壊事件は,比較的軽微な事件類型と理解されています。そのため,他の重大な事件類型よりも,不起訴処分にしてもらえるケースが多い傾向にもあります。

より重大な事件類型では,どれだけ反省の意思を表明してもそれだけで不起訴になることは考えにくいですが,器物損壊事件の場合,その内容によっては反省の深さが不起訴処分に直結するケースもあり得ます。そのため,呼び出しに応じた際,どれだけ反省の深さが示せるか,という点が,他の事件類型よりも重要度の高いポイントとなることに注意すべきです。

もちろん,どの事件類型でも反省の意思を示すことは重要なポイントですが,特に結論に結びつくケースが多いことを踏まえ,意識的に努めることが望ましいでしょう。

③警察の呼び出しと検察の呼び出しとの区別

呼び出しを受ける場合,警察からの呼び出しなのか検察からの呼び出しなのか,という点は適切に区別することをお勧めします。

警察は,事件の捜査を一通り行うと,検察庁に事件を送致します。そして,送致を受けた検察庁が,起訴するか不起訴するかの判断を行い,それにより事件の捜査が終了する,という流れを辿ります。
そのため,警察署からの呼び出しは比較的初期の段階,検察庁からの呼び出しは比較的終盤の段階である,との理解が可能です。それのみならず,場合によっては検察庁での呼び出し段階では起訴不起訴の処分が事実上決まっているケースも少なくありません。

処分の軽減を目指したい場合,検察庁の呼び出しに応じた後では時期遅れになってしまっている可能性があるため,十分に注意しましょう。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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【器物損壊事件の逮捕】逮捕をされるケースの特徴や逮捕回避のための具体的方法を弁護士が解説

このページでは,器物損壊事件の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

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器物損壊事件で逮捕される可能性

器物損壊事件は,決して逮捕の可能性が高い事件類型ではありません。比較的軽微な事件と理解されている上,損害の内容が器物(=財産)の損壊のみであることから,証拠隠滅や被害者の生命身体への危険が生じにくいためです。

もっとも,器物損壊事件であっても,事件の内容や状況によって逮捕が選択されるケースも十分に考えられるところです。具体的には,以下のような場合に逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

器物損壊事件で逮捕の可能性が高くなるケース

1.事件当時,現場でトラブルになっている

2.被害規模が大きい

3.態様が悪質である

4.同種事件が複数発生している

【1.事件当時,現場でトラブルになっている】

事件当時,加害者が現場で暴れているなど大きなトラブルになっている場合,被害の拡大や被害者の心身への危害が懸念されるため,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。

この場合,事件現場でのトラブル拡大を防止する必要性が高いため,その場で速やかに行うことのできる現行犯逮捕が選択されやすいでしょう。

【2.被害規模が大きい】

損害の規模が非常に大きく,器物損壊事件の中でも重大な部類と評価される事件では,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

特に,強い悪意がなければ被害を与えられないような物品を対象としている場合や,大きな経済的被害を生じさせようという意思が明らかな事件である場合は,被害規模の大きさと刑事責任の重さが直結しやすく,重大事件であることを踏まえた逮捕が選択されやすい傾向にあります。

【3.内容が悪質である】

加害行為の内容が特に悪質であると評価される場合,事件の重大性を踏まえて逮捕が選択される可能性は高くなりやすいです。

器物損壊事件の場合は,一般的に単独での突発的な事件が想定されているため,複数人での事件や組織的な事件,計画的な事件は,悪質と判断されやすいでしょう。また,加害行為のために入手した凶器を用いている,加害行為が執拗である(損壊するのにに必要な程度を超えている)など,行為の内容そのものに悪質性が見受けられるケースも,同様の恐れがあります。

【4.同種事件が複数発生している】

同種事件を複数行ってしまっており,いわゆる余罪が多数あるケースでは,余罪を含めた全容解明のため,証拠隠滅を防ぐ目的での逮捕がなされやすくなるでしょう。

この点は,複数の事件が同一人物によるものと考えられる場合に問題となりますが,同一人物の事件であるかどうかの判断は,時期や場所,犯行方法に共通性があるかどうかを重要な基準とすることが一般的です。

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

器物損壊事件で逮捕を避ける方法

①示談

器物損壊事件の場合,被害者との間で示談が成立し,被害者が告訴を取り消すとの判断に至れば,その後に逮捕される可能性がなくなります。そのため,逮捕を避ける方法として,示談の試みは非常に重要です。

また,器物損壊事件の場合,適切な内容で示談が成立すれば,逮捕が避けられるだけではなく,起訴も確実に避けることが可能です。起訴されなければ,前科が付かず事件が終了するため,最終的な結論としても最も望ましいと言ってよいでしょう。

②自首

器物損壊事件が捜査される前段階や,捜査が開始されていても自分が加害者であると特定されていない時期であれば,自首を行うことで逮捕を避ける方法も有力です。
一般的に,器物損壊事件の当事者間が連絡を取り合える関係であることは多くないため,示談の試みが現実的にできず,自首以外に検討の余地がないことも少なくはないでしょう。

自首した場合には,警察等の捜査機関にとって,加害者が自分の犯罪行為を認めて捜査して欲しいとの意思であることが明らかになります。そのため,捜査への妨害を防ぐための逮捕が必要ない,との判断をしてもらいやすくなるでしょう。

③呼び出しへの対応

器物損壊事件について,警察などから呼び出しを受けた場合には,できる限り捜査協力の姿勢を示し,逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを理解してもらうのも有力な方法です。

呼び出しをすれば積極的な協力をしてくれる,と分かれば,逮捕をしてまで強制的に捜査協力をさせる必要はなく,逮捕まではしなくてよい,との判断を引き出しやすくなります。

器物損壊事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

器物損壊事件の逮捕に関して対応する場合は,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士への依頼によって,以下のような利点が期待できます。

①逮捕が懸念される状況であるか判断できる

器物損壊事件は,決して逮捕の可能性が高い事件類型というわけではありません。そのため,現実に逮捕の懸念が大きくないのであれば,逮捕を恐れるあまり動き方を誤ってしまう方が大きなデメリットを招く結果になる場合も多いところです。

この点,弁護士に依頼し,弁護士の専門的な判断を仰ぐことで,本件では逮捕が懸念される状況か,正確な判断が可能になります。逮捕が懸念される状況であれば,逮捕を避けるための方策を優先的に検討すべきですし,逆に逮捕の懸念がそれほどない状況だと分かれば,他の対応に時間を割くことが容易になるでしょう。
また,逮捕に関する見通しが分かることで,精神的な負担が軽減でき,大きな安心につながる効果も見込まれます。

②事件に応じた適切な対応方法が分かる

逮捕を避ける方法は,事件の内容や状況によって個別に異なります。そのため,事件や状況に合った対応を取ることが非常に重要なところです。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕を避けるために本件で必要な動きが分かり,方針の選択に悩む必要がなくなります。また,実際の動きも弁護士主導で行うことができるため,対応の負担も軽減されるでしょう。

③当事者間の解決を試みることができる

器物損壊事件では,当事者間での解決が逮捕回避にとって極めて重要なポイントになりやすいです。当事者間で解決できれば,その後に逮捕されることはないと言ってよいでしょう。

もっとも,当事者間での解決は,弁護士を窓口にしなければ試みられないのが通常です。当事者同士がやり取りするのではなく,加害者の代理をする弁護士が,被害者と連絡を取り合う必要があります。
また,解決内容をどうすべきか,という点についても,専門的な知識経験を持つ弁護士の見解を仰ぐことで,合理的な判断が容易になるでしょう。

器物損壊事件の逮捕に関する注意点

①現行犯逮捕の場合

器物損壊事件では,事件現場でトラブルやパニックが生じてしまっていると,その場を収める方法として現行犯逮捕が行われる場合もあります。そして,現行犯逮捕はその場で直ちに行われることになるため,事前に逮捕を防ぐ余地がなく,予防策を講じることが困難である点に注意をする必要があるでしょう。

②弁護士への依頼時期

弁護士への依頼を検討されている方から,適切な依頼のタイミングはいつか,というご質問をお受けすることは非常に多くあります。
この点,器物損壊事件で弁護士に依頼する時期は,早ければ早いほど望ましいと言えるでしょう。逆に,意図的に依頼の時期を遅らせるメリットはない,という点には注意することが望ましいです。

器物損壊事件では,告訴の有無が処分を決定づける材料になりますが,それはあくまで起訴不起訴が判断されるまでです。そのため,起訴された後に告訴がなくなっても,遡って不起訴にはならず,時機を逸してしまうことになります。

依頼先の弁護士を決めた際には,早期に依頼し,活動に着手してもらいましょう。

③記憶がない事件

器物損壊事件の場合,泥酔などの影響で事件の記憶がないケースも一定数見られます。飲酒してなければ行っていなかったであろう加害行為を,泥酔状態になった影響で無意識に行ってしまった,という場合がこれに当たります。

この際,認めるか否認するかは難しい問題になりやすいですが,周囲の話から起きた出来事が間違いないのであれば,基本的には認める方針が合理的でしょう。否認の方が逮捕リスクは高くなるため,記憶がない場合に否認するかどうかは慎重な判断が適切です。

また,「記憶がない」という発言だけにとどまってしまうのも控えるべきです。記憶がないとの返答は否認と理解されるため,認める方針を取りたい場合には不合理な動き方となってしまいます。

④逮捕後の考え方

器物損壊事件で逮捕が避けられなかった場合,逮捕後の考え方を正しく持っているかどうかによってその後の流れが大きく変わる可能性があります。具体的には,早期釈放の可能性が十分にあることを念頭に,早期釈放を目指す動きを取ることが非常に重要です。

逮捕後に身柄拘束が続くか,早期に釈放してもらえるかは,その後の生活を決定づける可能性もある重大な分岐点です。動き方ひとつで釈放されるかどうかが変わるケースも大いにあるため,逮捕後には早期釈放を目指せるかどうか,できるだけ早期に弁護士へ相談することをお勧めします。

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【器物損壊事件の不起訴処分】不起訴処分となるケースは?不起訴を目指す具体的方法は?器物損壊事件解決の必須事項

このページでは,器物損壊事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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器物損壊事件で不起訴を目指す方法

①告訴の取り消し

器物損壊罪は,「親告罪」と呼ばれる犯罪類型に当たります。親告罪とは,告訴がなければ公訴提起(起訴)ができない犯罪をいいます。裏を返せば,起訴されるのは告訴がある場合のみであるため,告訴がないか,出された告訴が取り消された場合には,確実に不起訴となることが見込まれます。

器物損壊事件で捜査が行われる場合,通常は被害者側の希望で捜査が開始されるため,告訴が出されている状態であることが一般的です。そのため,告訴がない状態とするためには,当事者間での解決を目指し,被害者から告訴の取り消しを行ってもらうことが最も端的な手段になるでしょう。

被害者と加害者との間で示談が成立する場合には,示談内容に告訴の取り消しを含めることで,当事者間での解決と刑事事件の解決を同時に行う運用が一般的です。

ポイント
器物損壊罪は,告訴がない場合確実に不起訴となる
示談によって告訴の取り消しを目指す

②被害弁償

器物損壊事件は,被害者の財産を損壊してしまう事件類型であるため,被害者に金銭的な損害が生じていることが通常です。そして,刑事処分を考慮するに当たっては,被害者の損害が加害者によって補填されているか,という点が重要な判断材料の一つになります。なぜなら,経済的な損害を与えたことが刑事責任の根拠となっている以上,その損害が後から埋め合わせされれば,刑事責任の根拠が大きく失われるためです。

そのため,器物損壊事件で不起訴処分を目指す場合,被害者に生じてしまった経済的な損害を補填するため,被害弁償を試みる動きが有力でしょう。被害者の損害の全てを補填することができれば,刑事処分の必要性は大きく減少することが期待できます。

なお,被害弁償は被害者との示談の内容として行われることが多く,同時に告訴の取り消しがなされれば最も有益ではあります。被害弁償を行う以上は,告訴の取り消しを目指したいところですが,告訴の取り消しには至らなくても,被害弁償を行うこと自体の意味は小さくありません。

ポイント
経済的な損害が補填されている場合,刑事責任は大きく減少する
被害弁償と同時に告訴の取り消しをしてもらえればベスト

③否認事件の場合

否認事件では,犯罪の立証ができないことを理由とした不起訴(嫌疑不十分又は嫌疑なし)を目指すことが有力です。

器物損壊事件の場合,否認事件として問題になりやすい争点としては,以下のような点が挙げられます。

器物損壊事件の否認事件における主な争点

・犯人性
→自分が行った行為ではない,という内容で,誰が犯人であるかが争点になります。主に,複数人が関わるトラブルがきっかけになった場合など,器物損壊の被害が起きたことは間違いないものの誰が行ったか分からない,というケースで問題になりやすいでしょう。

・故意
→わざと行ったのか,過失で起きてしまったことなのか,という争点です。内心の問題は,客観的な事情から判断することになるため,器物損壊の具体的な内容,前後の経緯などから,「故意に行ったのでなければ説明が付かない」と言えるかどうかが判断の対象になるでしょう。

器物損壊事件で不起訴になる可能性

器物損壊事件は,不起訴になる可能性が十分に考えられる事件類型です。
器物損壊罪は親告罪とされていますが,それは類型的に比較的軽微であるため,起訴するかどうかの判断は被害者の意思を尊重して行ってよい,という趣旨によるものです。つまり,法律が器物損壊罪を比較的軽微な類型と評価していることになります。
事件類型が比較的軽微である以上,不起訴になる可能性も類型的に高い傾向にあると言えるでしょう。

この点,特に不起訴の可能性が高くなる事情としては,以下のような点が挙げられます。

器物損壊事件で不起訴の可能性が高くなる場合

1.被害者が起訴を望んでいない

2.被害が小さい

3.金銭賠償をしている

4.経緯に酌むべき事情がある

【1.被害者が起訴を望んでいない】

器物損壊事件は,起訴するかどうかの判断に際して被害者の心情を考慮することの多い事件類型です。そのため,被害者が起訴を望んでいないと言える場合には,不起訴の可能性が高くなります。

なお,被害者が起訴を望んでいない,という事実が告訴の取り消し(又は告訴しない)という形で表明されている場合,確実に不起訴となります。起訴を望まない意向が最も強い形で示されているケースと言ってよいでしょう。

【2.被害が小さい】

被害規模が著しく小さい場合,事件の程度を踏まえて不起訴処分とされる可能性が高くなります。器物損壊事件は,もともと軽微な事件と評価されやすいため,その中でも特に軽微な場合には不起訴処分に直結する可能性があり得るでしょう。

被害の大きさは,基本的には被害金額の大きさを基準に判断することになります。その他,損壊の程度,損壊行為の内容などが判断材料になるでしょう。

【3.金銭賠償をしている】

加害者が被害者に金銭賠償をしている場合,その点を踏まえて不起訴処分とされる可能性が高くなります。
器物損壊事件は,被害者の財産に損害を与えたことが刑罰の主な理由とされており,その損害が金銭賠償によって回復されていれば,刑罰を科す必要が減少するためです。

なお,金銭賠償を行う場合には,当事者間でのやり取りを避け,弁護士に依頼して弁護士を窓口にすることをお勧めします。

【4.経緯に酌むべき事情がある】

事件の経緯に酌むべき事情があり,器物損壊事件を起こしてしまったことに同情すべき点がある場合,不起訴処分の可能性が高くなるでしょう。一例としては,被害者側から理不尽な言動を受け,感情を逆撫でされた,といった場合が考えられます。

もっとも,経緯に酌むべき事情があるからと言って必ず不起訴が近づくわけではありません。経緯と器物損壊事件の内容を比較して,加害者に同情すべき事情があるかどうかを判断することになるでしょう。

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません。

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます。

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

器物損壊事件で不起訴を目指す場合の注意点

①被害者と接触する方法

器物損壊事件で不起訴を目指すには,被害者との間で解決することが最も効果の大きい手段です。適切な解決ができれば確実に不起訴となるため,被害者との接触を図ることは非常に重要な問題となります。

この点,被害者と接触するには,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にして行う必要がある点に注意が必要です。被疑者の連絡先は,警察等の捜査機関を通じて聞き出す必要がありますが,捜査機関は,弁護士以外に被害者の連絡先を伝えることは拒否する運用のため,弁護士の存在が不可欠となります。

また,その後の示談交渉も弁護士を通じて行うことが必要となるため,被害者との接触は弁護士に依頼して行う,ということを把握しておきましょう。

②経済的負担

不起訴処分を目指す場合,複数の経済的負担が生じ得ます。代表的なものは,弁護士費用と示談金の2点でしょう。

この点,不起訴処分を目指さない場合には,弁護士費用も示談金も生じない形で対応することは不可能ではありません。また,不起訴を目指さなかった結果,罰金刑の対象になったとしても,その罰金額は弁護士費用や示談金より小さくなることが通常です。
そのため,基本的に不起訴を目指す動きを取る方が経済的負担が大きくなる,という点には注意しておくことをお勧めします。

不起訴処分を獲得し前科が付かない結果となることは,金銭には代えられない利益ではあるため,金銭面を優先するか,不起訴処分を優先するか,という判断になるということもできるでしょう。

③目指す時期

不起訴処分を目指す場合,その時期は早ければ早い方が有益です。

まず,不起訴を目指すことができるのは,起訴される前までです。不起訴を目指したいと思っても,その時点で既に起訴されてしまっていれば,不起訴になる可能性はなくなります。
また,不起訴を目指す手段としては,被害者との示談が最も有力ですが,示談成立のためには被害者が示談に応じる意向でなければなりません。そして,被害者が示談に応じる意向となるかどうかは,専ら感情的な判断にもなり得るため,被害者の感情面に配慮する意味で,できるだけ早くお詫びの意思を表明していくことが重要になるでしょう。

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器物損壊事件で弁護士への依頼が必要な理由とは|示談・不起訴に関する重要ポイントを徹底解説

「器物損壊で被害届を出されたけれど、証拠が不十分なら不起訴になるの?」
「警察に呼ばれたけど、証拠がなければ逮捕されないのでは?」

そう思う方もいるのではないでしょうか。

器物損壊事件では、証拠が不十分な場合、立件や有罪判決に至らない可能性があります。

ただし、証拠が弱くても事情聴取や取調べは行われることが多く、供述内容や追加の証拠収集によって状況が変わる場合も考えられます。

そのため「証拠が不十分だから安心」とは言えず、早めに適切な対応を取ることが重要です。

そこで本記事では、器物破損で警察が動くケースと動かないケースを踏まえ、刑事事件に発展する際の流れや弁護士に依頼するメリットなどについて詳しく解説していきます。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

器物破損は証拠不十分で警察が動かないって本当?

器物損壊は「軽いトラブル」ではなく刑法に規定された犯罪です。

「証拠不十分なら警察は動かない」という断定は誤解で、被害状況・緊急性・入手可能な証拠の見込み等を総合して対応が決まります。

ここからは、警察が動くケースと動かないケースについて詳しく解説します。

警察が動くケース

器物損壊で警察が積極的に動くケースは、犯人特定や犯罪事実の立証の見通しがある場合です。

具体的には、防犯カメラやドライブレコーダーの映像、現場の指紋・足跡などの物的証拠、複数の整合的な目撃証言が揃うと、早期に聴取や照会が進みます。

被害額が高額、店舗や公共物など社会的影響が大きい、連続・常習の疑いがある、危険物の使用や威力業務妨害を伴うなど悪質性が高い場合も優先されます。

加えて、加害者が特定しやすい(近隣トラブル、元交際相手、元従業員など関係性が明確)場面は、事情聴取や任意同行に発展しやすいです。

緊急性がある(再犯の蓋然性が高い、被害の拡大が懸念される)場合は、臨場や現場保存の措置が取られ、関連事件との照合も行われます。

これらの事情が重なると、「証拠不十分」と見なされにくく、実質的な捜査が進むのが通常です。

警察が動かないケース

警察が動かないケースは、犯罪の成立自体が疑わしい場合や立証見込みが低い場合です。

具体的には、自然劣化や通常使用による破損の可能性が高い場合や申告内容が抽象的で時系列が曖昧、相互の物損・口論など民事紛争色が強いと判断されると、助言・記録化にとどまることがあります。

他にも、被害発生から時間が経ち、防犯映像の保存期限を過ぎている、目撃者探索の実効性が低いといった事情も影響します。

ただし、相談受理や後日の被害届提出、追加資料準備の案内が行われ、補強証拠が整えば最初動かなかったとしても捜査に乗るケースも少なくありません。

器物損壊で刑事事件に発展する際の流れ

器物損壊で刑事事件に発展する場合、主に以下の流れで進みます。

  • 被害者による被害届や告訴の提出
  • 警察による事情聴取と現場確認
  • 容疑者の特定と取り調べ
  • 検察への送致と起訴判断
  • 裁判手続きと判決

詳しく解説します。

被害者による被害届や告訴の提出

起点は被害者からの被害届または告訴です。

器物損壊は親告罪であり、告訴された場合に捜査を開始することが一般的です。告訴状は犯罪事実・加害者(推定でも可)・日時場所・手口・被害額などを具体的に特定し、捜査の起点資料としての密度が高いのが特徴です。

被害届は犯罪の発生申告で、受理後に必要に応じて聴取が続きます。

提出時には、損壊部分の写真、修理見積・領収書、時系列メモ、保全した防犯映像、目撃者の連絡先、位置情報ログや通話録音の有無など、客観資料を添付するほど実務上は有利です。

書類は警察署の生活安全課等で受理され、事件性や緊急性に応じて担当が割り振られます。

告訴は受理されれば原則として捜査が進むため、重大性・悪質性が高い場合や紛争性が低い場合に選択されることが多いです。器物損壊罪の場合、加害者に刑罰を科すか、という判断を被害者に委ねる趣旨で親告罪とされています。

警察による事情聴取と現場確認

受理後は、被害者・関係者への事情聴取で時系列と被害の特定が行われ、供述調書が作成される流れです。

並行して臨場・現場確認が実施され、痕跡の有無、侵入手段、接触面の有無、破片の散在状況など、偶発破損との識別に資する要素が確認されます。

カメラ映像の確保は保存期限が短いことが多く、早期の任意提出要請や近隣店舗・自治体カメラへの照会が行われます。

周辺聞き込みで不審者情報や車両ナンバーが拾えると、追跡の実効性が高まり、被害額は修理見積や交換費用の相場で算定され、損壊の程度と悪質性の評価に反映される仕組みです。

同種事案の照合や地理的・時間的な連続性が示唆される場合、広域的な情報連携が図られます。

これらの初動で客観的裏づけが積み上がるほど、以降の特定・立件が現実味を帯びます。

容疑者の特定と取り調べ

特定は、関係性(近隣トラブル、業務上の利害、個人的対立)や、映像・足跡・工具痕・位置情報データなどの客観証拠を総合し、可能性の高い対象から絞り込みます。

任意同行・任意聴取が原則ですが、逃亡・罪証隠滅の恐れや悪質性が高い場合は逮捕へ移行する可能性が高いです。

取調べでは、供述の一貫性、現場状況との整合、動機や経緯、示談意思などが詳細に確認され、供述調書の記載内容は後の判断に直結します。

押収物(衣類、工具、スマートフォン等)の解析・鑑定が行われ、位置情報や通信履歴が時系列の補強に用いられます。

黙秘権・弁護人選任権は保障され、必要に応じて弁護士の助言を受けることが可能です。

供述と客観証拠の齟齬が少ないほど、嫌疑の評価や処分の方向性は早く定まります。示談の進捗は情状として重視されるため、適切な仲介のもとでの交渉が重要です。

検察への送致と起訴判断

警察段階の捜査が一区切りつくと、事件は検察へ送致され、検察官が補充捜査を含め証拠価値と犯情を精査します。

判断要素は、嫌疑の程度(犯人性・故意・損壊事実)、被害額や社会的影響、前科前歴、反省状況、被害回復・示談の有無と内容、再犯可能性などです。

不起訴には「嫌疑不十分」「起訴猶予」等があり、前者は証拠が有罪認定に足りない場合、後者は有罪見込みがあっても諸事情により訴追を見送る場合です。

起訴されると、事案の軽重により略式命令(罰金)か正式公判に振り分けられます。略式は事実関係が明確で情状が軽いケースに多く、書面審理で迅速に終結します。

裁判手続きと判決

正式公判では、公訴事実の立証に必要な証拠が法廷で取り調べられ、被告人側は反対尋問や反証で争点を明確化します。

被害者参加制度や意見陳述が行われる場合、被害の実質や反省・再発防止策の説得力が量刑判断に影響します。

初犯・軽微な損壊で被害弁償が完了している案件は、罰金又は執行猶予付き判決にとどまる例が多いですが、計画性・報復性が強い、悪質な事案とみなされると実刑が考えられるでしょう。

判決確定後は刑の執行が行われ、前科として記録されます。民事上の損害賠償請求は並行・追行可能で、和解や支払計画の履行状況は社会復帰の安定に関わります。

再発防止の誓約、関係修復の努力、生活環境調整は将来の評価にも資する重要な要素です。

器物損壊事件で弁護士に依頼するメリット

①早期釈放のため

器物損壊事件で逮捕された場合,早期釈放を目指す動きを取ることで,身柄拘束の期間を最小限に抑えられる可能性があります。絶対に早期釈放が実現できる,というものではありませんが,特に長期の身柄拘束が必要であると判断されるような事情がなければ,早期釈放も十分考えられる,という点は器物損壊事件の特徴の一つでしょう。

もっとも,実際に早期釈放を目指す場合,弁護士に進めてもらう以外に現実的な手段はないのが通常です。高度に法的な判断を要する手続も含まれやすいため,弁護士を選び,弁護士に早期釈放のための活動を尽くしてもらうのが,最善の動きになるでしょう。

②不起訴処分のため

器物損壊事件で不起訴処分を目指すには,認め事件であれば被害者との示談を成立させること,否認事件であれば犯罪が立証できないとの結論を出してもらうこと,と大別できます。そして,いずれの場合であっても,その具体的な動きは弁護士に行ってもらうことが必要な性質のものです。

個別の事件で不起訴処分を目指す場合には,どのような手段を取るべきかという判断と,その手段を実行することを,いずれも弁護士に依頼することが適切です。それらの動きに適した弁護士選びは,不起訴処分のために必須と言えるでしょう。

③職場関係の悪化を防ぐため

器物損壊事件を起こしてしまった,又は器物損壊事件の捜査を受けている,という事実は,職場での立場や仕事に大きな悪影響を及ぼす場合もあり得ます。扱っている業務の内容によっては,その業務を継続しづらくなるケースも否定できません。

この点,弁護士に依頼し,可能な限り穏便に器物損壊事件を解決することができれば,職場や仕事への影響が生じず,仕事関係の不利益を回避できる可能性が高くなります。事件後の生活に心配を残さないためにも,職場関係の悪化を防ぎたい場合には弁護士への依頼が適切です。

器物損壊事件における弁護士依頼のポイント

器物損壊事件で弁護士を選ぶタイミング

①出頭要請を受けたとき

器物損壊事件の捜査は,警察から電話などで出頭要請を受け,それに応じて警察に出頭する形で始まることが多く見られます。これは,被疑者として取り調べを行い,事件に関する事実関係を把握する目的であることが通常です。

そのため,出頭要請を受けたときには,その後に行われるであろう取り調べを想定し,対応を十分に検討しておくことが必要です。どのような質問をされるか,どのような回答をすべきか,といった点は,事前に整理しておくのが適切なポイントと言えます。
しかしながら,出頭後の取り調べに対する備えを自分で整理することは容易ではありません。刑事事件に接した経験がなければ,取り調べの状況をイメージすることすら困難なことでしょう。

そこで,出頭要請を受けた際には,そのタイミングで弁護士選びを行い,取り調べの備えを万全にしておくことが有益です。適切な弁護士選びができれば,その後の手続の見通しもクリアにできるほか,具体的な弁護活動に関する案内や助言を受けることもできるでしょう。

ポイント
出頭要請は,被疑者として取り調べをする目的であることが通常
取り調べの適切な準備には,弁護士選びが必要

②逮捕されたとき

器物損壊事件は,決して逮捕する前提で取り扱われるような事件類型ではありませんが,ケースや状況によっては,現行犯などで逮捕され,身柄拘束を受ける可能性も否定できません。
もっとも,器物損壊事件は,あまりに悪質な内容である場合,共犯や多数の余罪など捜査に長期間を要する事情がある場合などを除き,それほど長期間の身柄拘束を要するとの判断は多くありません。そのため,逮捕されたとしても,早期釈放によって最低限の拘束期間で済ませられる場合は考えられます。

しかしながら,逮捕後に早期釈放を求める動きは,現実的には弁護士なしではできないのが通常です。具体的にどのような手段で早期釈放を目指すかは,刑事事件の手続に精通した弁護士以外には判断が困難です。
そのため,逮捕直後は弁護士選びが非常に重要な局面と言えるでしょう。この段階での弁護士選びは,時間的猶予の少ないことが多いですが,安易に妥協した選択をすることなく,後悔のない弁護士選びを強くお勧めします。

ポイント
器物損壊事件は,長期の身柄拘束を要しないケースも多い
早期釈放を目指すため,早期の弁護士選びが望ましい

③自首を試みるとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

この点,器物損壊事件は,事件発生から被害者が気付くまでに時間的な幅があることもすくなくありません。また,特殊なケースを除き,事件が発生した段階で犯人が誰であるかは不明であることが多い類型です。そうすると,器物損壊事件の発生後,被害者が気付いて捜査を求め,捜査機関が犯人を特定する,という一連の手順をたどるには,相応の期間を要する場合が多く見られます。
そのため,器物損壊事件を起こした認識がある場合,捜査機関に犯罪事実と犯人を特定される前に自首を行うことは,有力な選択肢の一つです。

もっとも,本当に自首をすべきかどうか,自首をする場合にどのような手順・方法で行うか,という点は,当事者自身での判断が困難なポイントです。自首を試みようと考えるときには,適切な弁護士選びの上で,弁護士とともに検討・行動をするのが適切でしょう。

ポイント
器物損壊事件は,自首をする時間的な猶予が生じやすい

器物損壊事件の弁護士を選ぶ基準

①示談の重要性を案内してくれるか

器物損壊罪は,「親告罪」の一つです。親告罪とは,告訴がなければ起訴されない事件を言いますが,被害者側は,加害者を許している場合には告訴をせず,加害者を許している場合には告訴をするのが通常です。
そうすると,親告罪である器物損壊事件では,被害者と示談が成立し,被害者が加害者を許すとの意思を表明すれば,絶対に起訴されず前科も付かない,ということになります。その点で,器物損壊事件では示談が決定的に重要であって,認め事件の場合には検討が不可欠な問題です。

弁護士としても,器物損壊事件を解決しようと考えれば,示談の重要性を強調して案内することになります。逆に,示談の重要性を十分に案内されなかったという場合には,器物損壊事件に対する基本的な理解に疑問が生じるため,依頼するかは慎重な検討をすべきと言えます。

②専門分野が食い違っていないか

弁護士には,それぞれに専門とする分野や,特に取り扱い事件の多い分野があります。飲食店に和洋中など様々なジャンルがあるように,法律事務所にも様々なジャンルがあると考えて概ね間違いないでしょう。
刑事事件についても,取り扱ってきた件数,取り扱い事件の内容などが,弁護士によって非常に大きく異なりやすいものです。刑事事件の取り扱いがほとんどない,器物損壊事件に接したことがないなど,専門分野が大きく食い違っている場合には,その弁護士の強みが発揮できる事件ではないと考えるべき可能性もあります。

弁護士選びに際しては,専門とする分野が大きく異ならないか,認め事件であれば被害者との示談を行っているか,否認事件であれば否認の弁護経験があるかなど,弁護士の強みとのズレの有無を十分に把握できることが望ましいでしょう。

③見通しについて詳細な説明をしてくれるか

刑事事件の弁護活動は,その後の流れに関する正確な見通しを踏まえて行う必要があります。見通しが悲観的なものであれば,その見通しを好転させる手段の有無や具体的な弁護活動を考え,依頼者側へ案内する必要がありますし,見通しが良好となった場合にはその旨を依頼者の方へ案内するなどして,安心感ある進行に努める必要があります。
そのため,弁護士の重要な対応の一つとして,事件の見通しに関する説明を欠かすことができません。特に,親告罪である器物損壊事件のように,見通しを断言ができる可能性があるものであれば猶更です。

弁護士選びに際しては,弁護士が今後の手続や処分の見通しを十分に説明してくれるか,という点を重要な判断材料とすることが有力です。見通しの説明が十分でない場合,必要な説明が尽くされていないと言わざるを得ませんが,単に説明を欠いているのみならず,見通しが持てていない可能性もあるため,注意が必要です。

④あまりに遠方ではないか

器物損壊事件の場合,認め事件では被害者との協議を試み,否認事件であれば事件現場を実際に確認するなど,実際に足を運んでの弁護活動になることも少なくありません。
もっとも,弁護士の事務所所在地が,相手の住居地やトラブルの発生地から遠い場所にある場合,現実的に弁護士が相手との対面交渉や現場の調査を行うことが難しく,弁護活動に限界が生じる可能性も否定できません。

そのため,弁護士選びに際しては,法律事務所があまりに遠方でないか,地理的な条件のせいで弁護活動に制限が生じてしまわないか,という点を重要な判断基準の一つとするのが有力でしょう。
なお,相手方との対面や現場の調査は,必ず要するというわけではないため,遠方であることのみを理由に弁護士への依頼を断念する必要まではありません。遠方であることに不安を感じる場合は,その点を直接弁護士に相談してみるようにしましょう。

器物損壊事件における弁護士選びの準備

①事件内容を説明する準備

器物損壊事件の適切な解決には,弁護士に事件の内容を十分に説明することが不可欠です。特に,「器物損壊」は具体的にどのような行為だったのか,その結果,どのような損害が生じてしまったのか,という点は,必ず食い違いが生じないよう,詳細に説明することが適切となります。弁護士がこの点の理解を誤ってしまうと,示談の成否や内容に悪影響を及ぼしたり,本来被るべきでない不利益が生じたりする原因になりかねません。

自分にとって不名誉な事実は心理的に説明が難しいものでもありますが,弁護士と適切な信頼関係を築くためにも,詳細を説明できるよう準備することをお勧めします。

②証拠を示す準備

事件の内容について証拠となる物がある場合,その証拠を弁護士に示し,確認してもらえるよう準備することが有益です。事件によっては,口頭で説明するのみでなく,証拠物を示すことでより円滑な法律相談や弁護士のアドバイスにつながることが少なくありません。

器物損壊事件で想定される証拠の例としては,器物損壊行為に用いた物,損壊された状況を撮影した画像などが挙げられます。その他,事件の経緯に関する証拠や事件後の当事者間のやり取りに関する証拠など,周辺事情が分かるものも有益でしょう。

③予算の検討

器物損壊事件について弁護士に依頼する場合,経済的には弁護士費用と示談金の大きく2つが発生しやすいところです。
この点,弁護士費用は法律事務所によって異なり,似たような弁護活動でも費用の金額が大きく異なる場合はあり得ます。また,弁護士費用がどのような条件でいくら発生するか,という定め方も,法律事務所によって少しずつ違うことが少なくありません。

弁護士選びに際しては,想定される示談金を踏まえ,弁護士費用を含めた予算の目安を持っておくことをお勧めします。現在は,ホームページ上で詳細に弁護士費用を明示している法律事務所も少なくないため,ご自身なりに費用負担のイメージを持って弁護士選びを行うのも有力です。
また,現実の弁護士費用と予算との開きが小さければ,弁護士への依頼内容を一部削るなど,柔軟な依頼方法で開きを埋めることができる場合もあり得ます。個別のケースに関しては弁護士と十分に相談してみましょう。

④早期の検討

弁護活動は,時期が過ぎてしまうと一切できなくなってしまうものも多くあります。例えば,身柄拘束が続いている場合,身柄拘束の期間が経過した後に遡って拘束をなかったことにするような方法はありません。また,器物損壊罪が親告罪だといっても,起訴された後に告訴を取り消すことはできないため,不起訴を目指す動きは起訴前に行う必要があります。

弁護士選びは,早期であるほど活動の余地が多く残っているため,できるだけ早期の検討を行うことが望ましいでしょう。

器物損壊事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①示談の重要性

器物損壊事件は,告訴がなければ起訴されない(=前科が付かない)親告罪に該当する事件のため,示談によって被害者から告訴しないとの判断を得ることができれば,事件は直ちに解決へ向かうこととなります。認め事件であれば,弁護士への依頼の目的は,基本的に示談に尽きることとなるでしょう。

そのため,弁護士選びに当たっては,弁護士への依頼の目的のほぼ全てが示談に集約される,ということを踏まえておくことをお勧めします。なんとなく弁護士に依頼するのか,示談が目的であることを理解しながら弁護士に依頼するのかは,その内容や結果に大きな影響を及ぼすでしょう。

②円滑な連絡の重要性

弁護士への依頼後は,弁護士と連絡を取り合って解決を目指すことになりますが,その連絡が滞ってしまうことは,結果に致命的な影響を与える可能性があります。連絡が滞る原因は,依頼者にあること,弁護士にあること,その両者にあることのいずれもあり得ます。

この点,自分が注意さえすれば連絡が滞る可能性がなくなる,というわけではないため,弁護士への依頼に際して連絡が円滑に継続できるかは十分に注意することをお勧めします。実際に生じやすい問題としては,単に弁護士の動きが遅い場合のほか,依頼者と弁護士との連絡が互いにとってストレスの大きなものになってしまい,信頼関係が損なわれた結果,連絡が滞りがちになるというものも見受けられます。
その意味では,弁護士との信頼関係を問題なく保てるか,という判断も重要になるでしょう。

③本人が動くこと

器物損壊事件における弁護活動は,当事者本人の意思に沿って行う必要があります。弁護士の試みようとして活動が,本人の意に反するものであることが分かった場合,弁護士はその動きを取ることができません。
また,示談交渉に際しても,示談が当事者間の合意で成立する以上,当事者本人の意向に沿った内容で行うことが不可欠です。本人の意思に反した示談交渉は,結果的に合意に至ることのできない無駄な動きとなってしまいます。

そのため,弁護士選びに際しては,本人が動く必要がある点に注意しましょう。
なお,本人が身柄拘束を受けているなど,本人が動けない場合には,近親者による弁護士選びとなっても問題はありません。その場合は,弁護士が接見を行って直接本人の意思を確認しながら,弁護活動を進めていくことが可能です。

器物損壊事件に関する示談のポイント

器物損壊事件と示談の関係

器物損壊事件は,「親告罪」と呼ばれる犯罪類型です。「親告罪」とは,告訴がなければ起訴できない犯罪を言います。

告訴は,被害者が加害者の刑罰を望む意思表明をいいますが,器物損壊事件で被害者が加害者の刑罰を望まないのであれば,わざわざ国が積極的に刑罰を科すべきでない,という制度になっているのです。そのため,器物損壊事件の処分は,告訴の有無によって決定的に左右されます。

器物損壊事件が捜査されるのは,被害者の告訴があるか,被害者が告訴する見込みであることが大前提となります。そのため,捜査を受けている以上,被害者の告訴はあるものだと考えるべきであり,加害者としては告訴を取り消してもらうことを目指すことが必要となります。

そして,加害者が被害者に告訴の取り消しを依頼するために必要なことが,示談です。告訴の取り消しを内容とする示談を被害者に承諾してもらうことが,告訴の取り消しを獲得するほぼ唯一の手段と言ってよいでしょう。

そのため,器物損壊事件においては,示談が決定的な役割を持っているということができます。

ポイント
器物損壊事件の起訴には告訴が必要
示談で告訴を取り消してもらえれば,起訴される可能性がなくなる

器物損壊事件における示談のメリット

①確実に前科を防げる

器物損壊事件は親告罪であるため,適切な内容の示談が成立すれば確実に不起訴処分となることが可能です。不起訴処分となれば,刑罰は科されないため,前科が付くこともありません。

一般的な刑事事件では,示談によって前科を防げる可能性が大きく上がると指摘できるものは決して少なくありません。しかし,示談をすれば確実に前科を防げる事件というのは,逆にそれほど多くはありません。
示談さえできれば確実に前科が防げるというのは,それだけ大きなメリットであり,器物損壊事件で示談の持つ効果は計り知れないということができるでしょう。

②確実に将来の逮捕を防げる

器物損壊事件で示談が成立すれば,その事件で起訴される可能性がなくなるため,その事件で加害者を逮捕する必要もなくなります。逮捕という手続は,捜査をより円滑に行うために加害者の身柄を拘束するものですが,起訴できない事件を捜査する必要はないので,示談後に逮捕までして捜査を行うことは通常ありません。

示談さえできれば確実に逮捕されなくなるため,器物損壊事件では,示談によって生活の平穏を確実に守ることができる,と言えるでしょう。

③確実に早期釈放される

器物損壊事件で逮捕勾留されている場合,示談が成立すればそれ以上逮捕勾留しておく必要がなくなります。そのため,器物損壊事件では,示談の成立が確認でき次第,速やかに釈放されることとなるのが通常です。

生活への影響を防ぐため,身柄拘束の期間は少しでも短いことが重要です。身柄拘束された器物損壊事件では,迅速な示談によって早期釈放を目指すことが大切な動きになるでしょう。

ポイント 示談のメリット

器物損壊事件は告訴がなければ起訴できない
→確実に前科が防げる
→確実に示談後の逮捕が防げる
→確実に早期釈放がなされる

器物損壊事件で示談をする方法

器物損壊事件で示談を試みる場合には,弁護士へ依頼し,弁護士に示談交渉を試みてもらうことが必要です。

被害者への連絡は,まず捜査機関の担当者を通じて行ってもらうことになりますが,捜査機関は当事者間の直接の連絡は承諾してくれないため,自分で捜査機関に依頼しても,被害者への連絡は断られてしまいます。
そのため,捜査機関から被害者に連絡してもらうためには,弁護士に依頼の上,弁護士を間に挟む方法で行うことが必要になるのです。

依頼を受けた弁護士は,捜査機関担当者に連絡し,示談希望の旨を被害者に伝えてもらうよう依頼します。捜査機関が被害者の意向を確認し,被害者が連絡先の交換に了承すれば,弁護士に被害者の連絡先が伝えられ,弁護士と被害者との連絡が開始できることになります。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

器物損壊事件の示談金相場

器物損壊事件の示談金は,損壊してしまった財産の価値によって変化するのが通常です。基本的には,損壊された財産の価格にいくらかの迷惑料・慰謝料を上乗せする形で示談金額とすることになりやすいでしょう。

この点,特に高価な財産ではない場合,示談金の相場としては10万円前後が目安になるところです。
ただし,当事者間のトラブルが単純な器物損壊事件ではない場合,例えば,継続的に争いが生じていた間柄で,一方がエスカレートして器物損壊事件を起こしてしまったような場合には,被害者側の感情面が非常に強い可能性があり,示談金は大きくなることが見込まれます。

ポイント
示談金は損壊された財産の価格+迷惑料・慰謝料
財産がそれほど高価でなければ,10万円前後が目安

器物損壊事件の示談で注意すべきこと

①示談が困難なケース

器物損壊事件では,損壊された財産の所有者が被害者となるため,その所有者から告訴の取り消しを獲得する必要があります。
もっとも,所有者は個人だけでなく,企業などの法人や,公共の財産を管理している国・自治体である場合もあり得ます。そして,個人以外が被害者の場合,示談が困難な可能性が高い傾向にあります。

法人や公的な機関は,告訴の取り消しなど,刑事事件の加害者を許すという行動を一律で断っていることが一般的です。一律の対応方針を設けなければ,対応の負担が過大になってしまうためであると思われます。
そうすると,企業の看板を壊してしまって法人が被害者であるとか,道路標識を壊して国又は自治体が被害者であるといった場合には,被害者から告訴の取り消しを獲得することが難しいことが多くなるでしょう。

その場合は,被害弁償として損害を補填するための金銭を支払うことをまずは目指すのが賢明です。器物損壊罪は財産に対する犯罪ですので,財産への損害を金銭で埋め合わせることは,その犯罪の責任を軽減させてくれます。
また,刑事責任があってもなくても,加害者は被害者側に金銭賠償をする義務を負っているため,金銭賠償の問題が紛争化することを未然に防ぐ効果も生じるでしょう。

②示談金が高額になりやすいケース

器物損壊事件の示談金は,損壊された財産の価値によって異なるため,財産の価値が高いほど,示談金も高額にならざるを得ないところです。

具体的に,財産の価値が高いため示談金が高額になるケースとしては,以下のような類型が考えられます。

示談金が高額になるケース

1.損壊された財産の価格が客観的に高い
2.損壊された財産の価値が被害者にとって高い(思い入れが強い)

このうち,「1.損壊された財産の価格が客観的に高い」場合は,その客観的な価値に応じた金額とすべきことが明らかであるため,金額は高いながらも複雑な問題ではありません。しかし,「2.損壊された財産の価値が被害者にとって高い(思い入れが強い)」場合は,示談金の定め方そのものが不明確にならざるを得ず,当事者間で適正な示談金額の認識に相違が生じることも珍しくありません。

具体的にどのような落としどころを目指すかは,個別の内容に応じて弁護士に相談するのが適切ですが,被害者が客観的な価値以上にその財産を大事にしている可能性を想定しておく,ということは大切でしょう。事前に想定できていれば,実際にそのような問題になった場合にも適切に対処・検討することが可能になります。

ポイント

個人以外が被害者の場合,告訴の獲得は難しい
→金銭の支払で経済的な補填を尽くすことを目指す

被害者にとっては客観的な価値以上に大切な財産である場合も
→事前にその可能性を踏まえておくことが有益

器物損壊事件の不起訴に関するポイント

器物損壊事件で不起訴を目指す方法

①告訴の取り消し

器物損壊罪は,「親告罪」と呼ばれる犯罪類型に当たります。親告罪とは,告訴がなければ公訴提起(起訴)ができない犯罪をいいます。裏を返せば,起訴されるのは告訴がある場合のみであるため,告訴がないか,出された告訴が取り消された場合には,確実に不起訴となることが見込まれます。

器物損壊事件で捜査が行われる場合,通常は被害者側の希望で捜査が開始されるため,告訴が出されている状態であることが一般的です。そのため,告訴がない状態とするためには,当事者間での解決を目指し,被害者から告訴の取り消しを行ってもらうことが最も端的な手段になるでしょう。

被害者と加害者との間で示談が成立する場合には,示談内容に告訴の取り消しを含めることで,当事者間での解決と刑事事件の解決を同時に行う運用が一般的です。

ポイント
器物損壊罪は,告訴がない場合確実に不起訴となる
示談によって告訴の取り消しを目指す

②被害弁償

器物損壊事件は,被害者の財産を損壊してしまう事件類型であるため,被害者に金銭的な損害が生じていることが通常です。そして,刑事処分を考慮するに当たっては,被害者の損害が加害者によって補填されているか,という点が重要な判断材料の一つになります。なぜなら,経済的な損害を与えたことが刑事責任の根拠となっている以上,その損害が後から埋め合わせされれば,刑事責任の根拠が大きく失われるためです。

そのため,器物損壊事件で不起訴処分を目指す場合,被害者に生じてしまった経済的な損害を補填するため,被害弁償を試みる動きが有力でしょう。被害者の損害の全てを補填することができれば,刑事処分の必要性は大きく減少することが期待できます。

なお,被害弁償は被害者との示談の内容として行われることが多く,同時に告訴の取り消しがなされれば最も有益ではあります。被害弁償を行う以上は,告訴の取り消しを目指したいところですが,告訴の取り消しには至らなくても,被害弁償を行うこと自体の意味は小さくありません。

ポイント
経済的な損害が補填されている場合,刑事責任は大きく減少する
被害弁償と同時に告訴の取り消しをしてもらえればベスト

③否認事件の場合

否認事件では,犯罪の立証ができないことを理由とした不起訴(嫌疑不十分又は嫌疑なし)を目指すことが有力です。

器物損壊事件の場合,否認事件として問題になりやすい争点としては,以下のような点が挙げられます。

器物損壊事件の否認事件における主な争点

・犯人性
→自分が行った行為ではない,という内容で,誰が犯人であるかが争点になります。主に,複数人が関わるトラブルがきっかけになった場合など,器物損壊の被害が起きたことは間違いないものの誰が行ったか分からない,というケースで問題になりやすいでしょう。

・故意
→わざと行ったのか,過失で起きてしまったことなのか,という争点です。内心の問題は,客観的な事情から判断することになるため,器物損壊の具体的な内容,前後の経緯などから,「故意に行ったのでなければ説明が付かない」と言えるかどうかが判断の対象になるでしょう。

器物損壊事件で不起訴になる可能性

器物損壊事件は,不起訴になる可能性が十分に考えられる事件類型です。
器物損壊罪は親告罪とされていますが,それは類型的に比較的軽微であるため,起訴するかどうかの判断は被害者の意思を尊重して行ってよい,という趣旨によるものです。つまり,法律が器物損壊罪を比較的軽微な類型と評価していることになります。
事件類型が比較的軽微である以上,不起訴になる可能性も類型的に高い傾向にあると言えるでしょう。

この点,特に不起訴の可能性が高くなる事情としては,以下のような点が挙げられます。

器物損壊事件で不起訴の可能性が高くなる場合

1.被害者が起訴を望んでいない

2.被害が小さい

3.金銭賠償をしている

4.経緯に酌むべき事情がある

【1.被害者が起訴を望んでいない】

器物損壊事件は,起訴するかどうかの判断に際して被害者の心情を考慮することの多い事件類型です。そのため,被害者が起訴を望んでいないと言える場合には,不起訴の可能性が高くなります。

なお,被害者が起訴を望んでいない,という事実が告訴の取り消し(又は告訴しない)という形で表明されている場合,確実に不起訴となります。起訴を望まない意向が最も強い形で示されているケースと言ってよいでしょう。

【2.被害が小さい】

被害規模が著しく小さい場合,事件の程度を踏まえて不起訴処分とされる可能性が高くなります。器物損壊事件は,もともと軽微な事件と評価されやすいため,その中でも特に軽微な場合には不起訴処分に直結する可能性があり得るでしょう。

被害の大きさは,基本的には被害金額の大きさを基準に判断することになります。その他,損壊の程度,損壊行為の内容などが判断材料になるでしょう。

【3.金銭賠償をしている】

加害者が被害者に金銭賠償をしている場合,その点を踏まえて不起訴処分とされる可能性が高くなります。
器物損壊事件は,被害者の財産に損害を与えたことが刑罰の主な理由とされており,その損害が金銭賠償によって回復されていれば,刑罰を科す必要が減少するためです。

なお,金銭賠償を行う場合には,当事者間でのやり取りを避け,弁護士に依頼して弁護士を窓口にすることをお勧めします。

【4.経緯に酌むべき事情がある】

事件の経緯に酌むべき事情があり,器物損壊事件を起こしてしまったことに同情すべき点がある場合,不起訴処分の可能性が高くなるでしょう。一例としては,被害者側から理不尽な言動を受け,感情を逆撫でされた,といった場合が考えられます。

もっとも,経緯に酌むべき事情があるからと言って必ず不起訴が近づくわけではありません。経緯と器物損壊事件の内容を比較して,加害者に同情すべき事情があるかどうかを判断することになるでしょう。

器物損壊事件で不起訴を目指す場合の注意点

①被害者と接触する方法

器物損壊事件で不起訴を目指すには,被害者との間で解決することが最も効果の大きい手段です。適切な解決ができれば確実に不起訴となるため,被害者との接触を図ることは非常に重要な問題となります。

この点,被害者と接触するには,弁護士に依頼し,弁護士を窓口にして行う必要がある点に注意が必要です。被疑者の連絡先は,警察等の捜査機関を通じて聞き出す必要がありますが,捜査機関は,弁護士以外に被害者の連絡先を伝えることは拒否する運用のため,弁護士の存在が不可欠となります。

また,その後の示談交渉も弁護士を通じて行うことが必要となるため,被害者との接触は弁護士に依頼して行う,ということを把握しておきましょう。

②経済的負担

不起訴処分を目指す場合,複数の経済的負担が生じ得ます。代表的なものは,弁護士費用と示談金の2点でしょう。

この点,不起訴処分を目指さない場合には,弁護士費用も示談金も生じない形で対応することは不可能ではありません。また,不起訴を目指さなかった結果,罰金刑の対象になったとしても,その罰金額は弁護士費用や示談金より小さくなることが通常です。
そのため,基本的に不起訴を目指す動きを取る方が経済的負担が大きくなる,という点には注意しておくことをお勧めします。

不起訴処分を獲得し前科が付かない結果となることは,金銭には代えられない利益ではあるため,金銭面を優先するか,不起訴処分を優先するか,という判断になるということもできるでしょう。

③目指す時期

不起訴処分を目指す場合,その時期は早ければ早い方が有益です。

まず,不起訴を目指すことができるのは,起訴される前までです。不起訴を目指したいと思っても,その時点で既に起訴されてしまっていれば,不起訴になる可能性はなくなります。
また,不起訴を目指す手段としては,被害者との示談が最も有力ですが,示談成立のためには被害者が示談に応じる意向でなければなりません。そして,被害者が示談に応じる意向となるかどうかは,専ら感情的な判断にもなり得るため,被害者の感情面に配慮する意味で,できるだけ早くお詫びの意思を表明していくことが重要になるでしょう。

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傷害事件における自首のメリットや弁護士依頼の要否,注意すべき点などを解説

このページでは,傷害事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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傷害事件で自首をするべき場合

①被害者が重傷を負っている場合

自首を検討するべき場合の代表例は,事件が重大で刑事責任が重く評価されやすいケースです。自首は,逮捕や起訴の回避を目指す手段として有効なものですが,事件が重大であって刑事責任が重い場合は,特に逮捕や起訴の恐れが大きい傾向にあります。そのため,被害者が重傷を負っている傷害事件では,刑事責任が重く,自首を検討するメリットが類型的に大きいと言えるでしょう。

また,傷害事件の捜査は,基本的に被害者が捜査機関に相談等したことをきっかけに開始されます。逆に,被害者が声を上げなければ,捜査が始まるきっかけも生じないことになります。
この点,被害者が重傷を負った傷害事件の場合,被害者が事後に何のアクションも取らないことは考えにくいところです。そのため,捜査が開始される可能性が非常に高く,自首の検討が必要になりやすいでしょう。

ポイント
刑事責任が重く,逮捕や起訴の恐れが大きい
被害者が捜査を求める可能性が高い

②加害者を特定する証拠が十分にある場合

自首は,自分が加害者であると特定される可能性が高い場合に,先手を打つ形で行うことが非常に有益です。なぜなら,自首をしてもしなくても加害者が特定される状況であれば,先に自首をしても不利益がない一方,自首せずに捜査を受ける場合と比較して大きなメリットが期待できるからです。不利益がなくメリットが大きいのであれば,積極的に検討するべきことは間違いありません。

そのため,事件の加害者を特定する証拠が十分にあると思われるケースでは,積極的な自首の検討が有力です。傷害事件で生じやすい証拠としては,被害者側の記憶(特に被害者が知人である場合),目撃者,公共の場所における防犯映像などが挙げられます。

ポイント
先手を打って自首をしても不利益がなく,大きな効果が期待できるケースに当たる

③周囲への発覚を防ぎたい場合

自首をすることで,刑事事件の捜査は被疑者(=加害者)に配慮した方法で行われることになりやすいです。例えば,突然制服を着た複数の警察官が訪れたり,逮捕や捜索などの強制的な捜査が行われたりといった,周囲に事件の存在が知られるような方法はできるだけ回避してくれるケースが多い傾向にあります。
これは,自首をした被疑者であれば,穏やかな方法であっても捜査協力が期待できるため,周囲への発覚を防ぎたいという被疑者の希望に配慮した動きです。

逆に,周囲への発覚を防ぎたい,という希望が非常に大きい場合には,捜査機関の配慮を期待する意味も含めて自首を行うことが有力な手段と言えます。自首に込めた誠意や協力姿勢が伝われば,いたずらに周囲へ知られるような動きは控えてくれることが多いでしょう。

ポイント
自首した事件の捜査は,加害者に配慮した方法で行われやすい

④当事者間での示談交渉が困難な場合

傷害事件は,当事者間で解決すればその後に捜査が開始されることは通常ありません。そのため,当事者間で示談などをし,円満な解決に至れば,その後に捜査が始まることを考える必要はなく,捜査に備えた自首を検討する必要もないと言えるでしょう。
裏を返せば,当事者間での示談交渉が困難なケースでは,いつ被害者が捜査機関に被害申告をして捜査が始まることになるのか分からない,非常に不安定な状況にならざるを得ません。

そのため,当事者間で示談交渉ができる状況になく,不安定な状況を少しでも早く脱する必要がある場合には,自首の検討が有力です。適切に自首ができれば,刑事事件の進捗や見通しが分からない,という事態を避けることができるでしょう。

ポイント
当事者間で解決できれば自首は不要
示談交渉困難で不安定な状況にある場合,自首の検討が有力

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

傷害事件の自首は弁護士に依頼すべきか

傷害事件の自首について検討する際や,実際に自首を進める際には,弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら行うことが適切です。弁護士への依頼によって,以下のようなメリットが見込まれます。

①逮捕の可能性が低くなる

自首は,逮捕を防ぐことが大きな目的の一つですが,弁護士に依頼し,適切な方法で自首を進めることによって,逮捕の可能性はより低くなることが期待できます。弁護士に依頼した場合,弁護士が窓口となって捜査機関とやり取りすることで,自首の趣旨や申告したい犯罪事実を正しく把握してもらうことができるため,自首が円滑になり,その効果も十分に生じることが見込まれるでしょう。

自首は大きなリスクを背負った重大な行動であり,その効果を最大限にできる方法を取らないことは背負ったリスクに見合わない結果を招きかねません。そのため,自首を行う以上はできる限りの手段を尽くす,という発想を大切にすることをお勧めします。

②取調べへの備えができる

自首は,あくまで捜査の出発点であり,自首後には捜査機関による捜査が始まることとなります。そして,捜査が行われる際に主要な動きとなるのが取調べです。
一般的に,自首を行った場合には,出頭した当日又は次回の出頭時に,捜査機関担当者から取り調べを受けることが見込まれます。取調べは警察署内の密室などで行われ,弁護士など第三者の立ち会いはできないことが通常です。

そのため,取り調べが始まってから対処を検討することはできず,事前の備えが不可欠ですが,弁護士に依頼することで,将来の取調べに対する備えもあわせて案内してもらうことが可能になります。
刑事手続や取調べの運用に精通した弁護士であれば,取調べの流れや取るべき対応や話すべき内容など,包括的なアドバイスをしてもらうことができるでしょう。事前に取調べの備えができれば,自首への不安も最小限に抑えられます。

③手続や処分の見込みが分かる

自首は,その後の手続の流れや処分見込みが分かっていれば格段に行いやすくなります。自首した後自分がどうなってしまうのか,自首するのとしないのとで刑事処分がどのように変わるのか,という点が全く分からないまま,闇雲に自首をするのは難しいですが,見通しが持てていれば,リスクの大きな自首も心理的負担小さく行うことが可能になるでしょう。

この点,弁護士に依頼して自首を進めれば,自首後の手続の流れについて案内を受けてもらいながら対応することが可能です。また,自首を踏まえた処分見込みを専門的な知識経験を踏まえてアドバイスしてもらえるため,希望する解決に向けた取り組みが容易になります。

④自首後の弁護活動が迅速にできる

傷害事件で自首を行った場合には,被害者との示談交渉など,その後の弁護活動を適切に行ってもらうことで,自首の効果がより高く発揮されます。自首の主な目的である逮捕回避や不起訴処分の獲得は,被害者との示談が成立することでより確実になり,希望した結果の実現に大きく近づくでしょう。

この点,自首の段階から弁護士に依頼し,弁護士と協同する体制を設けておくことで,自首後の弁護活動を速やかに始めることができます。また,加害者が自首をした事実は,被害者の感情面にもプラスの影響を及ぼしやすく,示談成立の可能性は自首のないケースよりも高くなりやすいでしょう。

傷害事件で自首をする場合の注意点

①自首が相手方の意向に反する可能性

自首は,加害者が自分の判断で警察等の捜査を求める行動です。そのため,被害者の意向を確認することなく捜査が開始され,その後に捜査機関が被害者へ捜査協力を求める可能性もあります。

この点,自首による捜査の開始が被害者側の意向に反してしまう可能性があることは,事前に十分留意しておくのが適切でしょう。
被害者が特に捜査機関への相談などを行っていない場合,被害者は捜査機関の関与を希望していない可能性があります。その理由は,対応が面倒である,当事者間での解決を希望しているなど様々ですが,自首が被害者の意向に反している場合,自首が適切な動きではなかった,という結論になり得るでしょう。

②時期が遅れると自首が成立しない

自首は,捜査機関にとって犯罪事実か犯人の両方が発覚している状況では成立しません。そのため,被害者の申出をきっかけに捜査が開始され,犯罪事実と犯人が特定された後では,自ら警察への出頭を試みても法的には自首と評価されず,自首のメリットを十分に得られない可能性があります。

傷害事件の場合,被害者が警察に被害申告をする可能性が比較的高く,犯人を特定する証拠が得られやすいケースも少なくないため,検討に長期間をかけてしまっていると,自首ができない状態に陥ってしまう恐れがあります。
自首の検討は,できるだけ早期に行うことをお勧めします。

③自首すれば不起訴になるわけではない

自首の大きな目的の一つは不起訴処分です。刑事事件は,捜査を遂げた検察によって起訴又は不起訴の処分がなされますが,起訴されれば前科がつき,不起訴となれば前科が付かないため,極めて大きな分岐点になります。

この点,自首によって不起訴処分の可能性が高くなることは間違いありませんが,自首をすれば直ちに不起訴になる,というものではない点には注意が必要です。自首は,不起訴の判断を促す事情の一つに過ぎず,自首しても起訴され前科が付く可能性はあります。
特に,事件の重大性が著しいケースでは,自首という事情があっても事件の重大性の方が重く評価され,不起訴処分が逃れられない場合が多くなりやすいでしょう。

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【傷害事件での呼び出し】警察が呼び出す目的や流れ,逮捕される可能性や逮捕を防ぐ手段などを詳細解説

このページでは,傷害事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
傷害事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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傷害事件で呼び出された場合の対応法

①心当たりのある場合

疑われている行為に心当たりのある場合は,犯罪事実に争いのない事件となり,認め事件と呼ばれます。認め事件では,犯罪が成立するかどうかは問題にならないため,犯罪行為があったことを前提に,その処分が重くなるか軽くなるか,という判断になります。
そのため,心当たりのある場合には,その後の処分ができるだけ軽くなるような対応に努めるのが最も適切と言えるでしょう。

具体的には,最初から一貫して自身の行為を認め,深い反省の意思を示すとともに,真摯な捜査協力を行うことが望ましいと言えます。認め事件で処分が軽くなるかどうかは,いわゆる情状酌量をしてもらえるかという問題になるため,深い反省を有利な情状として考慮してもらうことを目指すのが最も有効です。

突然呼び出しを受けてしまうと,認めることにリスクを感じてしまい,反射的に心当たりがないなどの返答をしがちですが,反省は一貫して示すことが非常に重要です。反省の意思が最初から一貫している,と評価してもらうため,呼び出しへの最初の対応は大きなポイントになるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けた段階から,一貫して反省の意思を示し続けることが重要

②相手に落ち度があると考える場合

傷害事件の場合,互いに感情的になって不適切な行為をしている場合も多いため,事件の原因などについて相手に落ち度があると考えるケースもあり得るところです。相手が暴言を吐いてきた,挑発してきたなど,「相手が不適切な行為をしなければ事件は起きなかったのに」という思いになる場合もあるでしょう。
その他,相手も手を出してきた,相手に迷惑をかけられてきた経緯があるなど,相手の落ち度を指摘したいケースが増えやすいのも,傷害事件の特徴と言えます。

もっとも,呼び出しを受けた際に相手の落ち度を強く指摘するのか,という点は,慎重な判断が望ましいです。呼び出しを行う警察は,まず犯罪事実を認めているか認めていないか,という基準で事件を区別し,その区別に沿って取り扱いを進めていくのが通常です。そのため,犯罪事実を認めるか認めないか,という点に関係しない事情は,あまり聞く意思を持っていないことが多く見られます。
相手に落ち度があると考える場合でも,それが犯罪の成否に影響しない事柄であれば,呼び出しをした警察にとって必要な情報ではなく,伝えてもその後の流れが好転することが考えにくいものです。正当防衛の主張であるなど,犯罪の成否に関係する主張以外は,あまり強く述べていくべき状況ではないかもしれません。

相手の落ち度に関する言い分は,主張するべきタイミングや方法を慎重に判断することが望ましいものです。感情的な主張になってしまわないよう,弁護士に依頼するなどして十分に検討することをお勧めします。

ポイント
犯罪の成否に影響しない場合,主張の時期や方法は慎重に検討するのが適切

③相手が怪我するほどの内容ではないと考える場合

傷害事件は,加害者が被害者に暴行を加えた結果,被害者が傷害を負った場合に成立する犯罪類型です。そのため,暴行をしても被害者に怪我が生じなかった場合や,被害者が怪我をしているもののそれは暴行とは無関係の原因で生じたものである場合などは,傷害罪は成立せず,傷害事件として扱うことが不適切である,ということになります。
そのため,実際の出来事や自身の記憶を踏まえて,相手に傷害結果が生じるのは考え難いという場合には,その旨の主張を行うのも有力な選択肢と言えます。

ただし,この場合には,法的にどのような主張になるかは十分に理解しておくことが適切です。暴行を加えたものの傷害結果が生じなかった,という場合には,傷害罪は成立しないものの暴行罪は成立することになるのが通常です。つまり,犯罪に当たることは争わないものの,より軽微な犯罪であるとの主張になるため,認め事件で重要な反省の意思を示すことは忘れないようにする必要があります。

なお,主張の内容によっては,暴行罪すら成立せず「自分の行為は犯罪でない」という意味の主張になる場合もあり得ますが,高度な法律の理解が必要な問題になるので,必ず弁護士の見解を仰いだ上で主張するようにしましょう。

ポイント
傷害罪でなくより軽微な暴行罪にとどまるとの主張
認め事件に変わりないことは忘れないよう注意する

④全く心当たりがない場合

疑われている傷害事件に全く心当たりがない場合,捜査に対しては否認(認めない)の立場を取ることになります。そのため,まずは否認事件であることを明らかにし,捜査機関に把握してもらうように努めましょう。

刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,必要な捜査やその後の取り扱いが大きく変わります。否認事件の場合,被疑者が認めなくてもなお犯罪が証明できる,という場合でなければ刑事処罰はできないため,一般的に犯罪立証のハードルが高く,より慎重な捜査が必要とされる傾向にあります。
そのため,否認事件では,犯罪立証の高いハードルを越えることが必要である,ということを捜査機関に認識してもらい,できれば「犯罪立証が困難である」との判断を早期に行ってもらうことが有力な対応と言えるでしょう。

また,自分に心当たりのないことを裏付ける事情などがある場合,その内容は積極的に示していくことが適切です。否認の主張が信用できるとの判断を引き出しやすく,より早期の解決が期待しやすくなります。

ポイント
否認の立場を早期に表明する
主張を裏付ける事情がある場合は,積極的に示す

傷害事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

傷害事件で呼び出しを受けた場合,呼び出しに応じて出頭した際に逮捕される,という流れはあまりありません。傷害事件は,逮捕目的で呼び出しを行うケースが少ない事件類型と言うことができるでしょう。
もっとも,傷害事件は事件の程度が非常に幅広く,そのすべてを一律に取り扱うことは困難です。傷害事件の中でも,事件の重大性や悪質性が特に大きい場合には,呼び出しの際に逮捕される可能性も否定できません。

具体的には,以下のような場合が挙げられるでしょう。

傷害事件で呼び出し後に逮捕されやすいケース

①殺意がある可能性を疑われている

傷害事件として取り扱ってはいるものの,殺意があったのではないかと疑われている場合,殺意を裏付ける証拠が発見されたなどの事情によっては,呼び出しの後に逮捕される可能性が考えられます。
殺人罪又は殺人未遂罪は,犯罪の中でも特に重大な類型であり,その重さは当然ながら傷害罪を大きく上回るものです。刑事事件では,事件が重大であればあるほど逮捕の可能性が高くなるため,傷害罪にとどまらず殺人罪や殺人未遂罪の可能性がある場合は,特に逮捕リスクが高くなるのです。

②被害結果が非常に重い

被害者の傷害結果が非常に重く,傷害事件の中でも特に重大と評価される場合には,逮捕の可能性が高くなります。特に,死亡結果に近いほどの深刻な被害が生じている場合,殺意がある場合と同様に殺人事件又は殺人未遂事件類似の内容として,逮捕リスクが上がりやすいでしょう。

また,たまたま重大な被害結果になってしまったのではなく,意図して重大な傷害結果を招こうとし,実際にその通り重大な結果となった場合には,より逮捕の可能性が高くなりやすいと言えます。呼び出し後の取り調べなどを踏まえて,暴行の意図がはっきりと確認できた場合には,それを踏まえて逮捕に踏み切るケースもあり得ます。

③呼び出しへの対応が不適切である

捜査機関が呼び出しを行うのは,呼び出しに対して適切に応じてくれることが大前提となります。出頭して欲しいと求めれば来てくれる,物の提出を求めたいと言えば提出してくれるなど,捜査協力をしてくれるのであれば,逮捕までは必要ないと考えているわけです。

逆に,呼び出しに対して不適切な対応に終始し,捜査協力の意思が見られない場合には,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。呼び出しを無視し続ける,合理的な理由なく拒否し続けるなど,逮捕なしでは出頭や取調べへの協力が期待できないと理解されるケースでは,特に逮捕が懸念されます。

傷害事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①取調べのため

傷害事件における警察の呼び出しは,基本的に被疑者を取り調べる目的で行われるものです。自分が起こしてしまった(又は起こしたと疑われている)事件で,初めて呼び出しを受けたときは,取調べ目的と考えて間違いないことがほとんどでしょう。

取調べ目的での呼び出しは,捜査機関が事件を把握した後,比較的早期の段階で行われることが一般的です。特に,客観的な証拠に乏しく当事者の言い分以外には証拠がない場合には,相手の話を聞いた後速やかに呼び出しが行われることも少なくありません。

②事件の再現を試みるため

傷害事件の捜査の一環として,事件当時の状況を再現し,写真に収めるなどの捜査が行われることも多数あります。これは,説明内容を文字だけにしたのでは第三者の理解が難しい場合に,事件の内容を明らかにする最適な証拠を作成する目的で行われるものです。
再現に際しては,当事者のいずれか一方が立ち会い,相手を模した人形や捜査官を相手に,当時の状況を身振り手振りで表現することが通常です。その内容を写真撮影し,警察にて「写真撮影報告書」という捜査資料を作成することが,基本的なゴールとなるでしょう。

事件の再現は,一通りの話を聞いた後に行われるものとなるため,取り調べの後に実施されるのが通常でしょう。必要な取調べの後,数週間~1か月程度の間隔を空けて実施されるケースが一定数見られます。

③証拠品の提出を求めるため

傷害事件では,事件の内容や結果を裏付ける証拠が存在するケースもあるため,証拠品の提出を求める目的で呼び出されることがあります。考えられる証拠としては,暴行に用いられた凶器,事件当時の着衣や靴,傷害結果が記載された診断書などが挙げられるでしょう。

証拠品の提出は,呼び出しの中でも比較的終盤で求められることが多く見られます。最後の取調べの後1週間~1か月程度を目安に呼び出されることが考えられるでしょう。

傷害事件の呼び出しに応じたときの注意点

①経緯に言い分があるとき

ケンカのような態様で生じた傷害事件は,互いに感情的になっており,その経緯を見ると双方に落ち度があると思われることも少なくありません。そのため,呼び出しに応じて話をする際には,経緯に関する言い分を主張したくなるところですが,主張の方法や内容は慎重に検討することをお勧めします。

まず,「取り調べを受けるのは納得いかない」と言わんばかりに,経緯に関する言い分を強く主張することはあまり適切ではありません。経緯に酌むべき事情があったとしても,それは犯罪事実がなかったという意味にはならないため,経緯の主張は,犯罪行為に対する反省と両立する形で行うべきです。

刑事事件の取り扱いは,犯罪事実があるかどうか(認め事件か否認事件か),という区別が前提となる以上,その取り扱いに適した対応が有益です。決して経緯を主張する場がないというわけではありませんので,適切な時期に適切な方法で主張できるよう,弁護士のアドバイスを受けながら対応していくことをお勧めします。

②互いに暴行があった場合の取り扱い

傷害事件では,互いに相手への暴行をしており,互いに被害を受けている場合もありますが,この場合の取り扱いは,互いに傷害事件の加害者である,というものになります。相手から暴行を受けたからと言って,自分の暴行が犯罪でなくなる,というものではない点に注意が必要です。

もっとも,この場合には,相手も刑罰を受けるリスクを背負っている,という点に特徴があります。喧嘩別れに終わった場合,双方が刑罰を受ける結果にもなりかねないため,互いにとって示談のメリットが大きい状況ということもできるでしょう。
その意味では,当事者間で何らかの解決を目指すことがより望ましいケースであると考えられます。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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傷害事件で逮捕される場合と逮捕されない場合の違いは?逮捕後の流れは?

傷害事件は被害者のケガの程度や事件の状況によって、逮捕される場合と逮捕されない場合があります。「初犯でも逮捕されるのか」「逮捕後はどうなるのか」と不安に感じる方も多いでしょう。傷害で逮捕されると、取調べや勾留などの刑事手続きが進み、仕事や生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、傷害事件の逮捕について、逮捕されるケースとされないケースの違い、さらに逮捕後の流れについて分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害事件で逮捕された場合の流れ

傷害事件で逮捕されると、まず警察が身柄を確保して事情を聞きます。
その後、事件は検察に引き継がれ、検察官が「身柄をさらに拘束する必要があるか」「起訴すべきかどうか」を判断します。
必要な場合には裁判所の判断を経て勾留され、最終的に検察官が起訴するか、不起訴にするかを決めます。

段階期間の目安主な内容
① 逮捕~48時間以内警察が身柄を拘束し、事情聴取や証拠収集を行う。弁護士との面会は原則自由。
② 送検(検察への引き渡し)逮捕から48時間以内警察が事件を検察官に送致。検察官が勾留請求の要否を判断する。
③ 勾留請求・裁判官の判断送検後24時間以内検察官が裁判官に勾留を請求し、裁判官が許可するかどうかを決める。
④ 勾留期間中の取調べ原則10日間(必要に応じて延長10日以内)勾留が認められると、被疑者は裁判官の決定により10日間身柄を拘束。やむを得ない事情がある場合には、裁判官の判断で10日以内の延長が許可されることもある。
⑤ 起訴・不起訴の判断勾留期間中または終了時検察官が、証拠や被害者の意見、示談の有無などを考慮して処分を決定。
⑥ 釈放・保釈随時不起訴処分や勾留却下などにより釈放されることもある。

(1)逮捕から送検まで

逮捕後、警察で取り調べが行われ、証拠がそろえば48時間以内に検察官へ送致されます。
この間、家族との面会は制限される一方で、弁護士との接見は原則自由です。

(2)勾留決定とその影響

検察官が「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断すれば、裁判官に勾留を請求します。
勾留が認められると、警察署などに最大10日間拘束され、さらに必要に応じて10日間延長されます。

(3)起訴・不起訴の分かれ道

勾留期間中に、検察官は事件の性質、被害者との示談状況、被疑者の反省などを踏まえ、起訴するか否かを決めます。
被害者との示談成立や被害弁償がある場合は、不起訴になるケースも少なくありません。

(4)弁護士による早期対応の重要性

早期に弁護士が介入し、被害者との連絡・示談交渉・意見書の提出を行うことで、勾留回避や不起訴処分の可能性を高めることができます。

主なポイントは以下のとおりです。
・逮捕後48時間以内に送検され、検察官が勾留請求を検討
・勾留は裁判官の決定によって10日間
・延長は裁判官が許可する場合に限り10日以内
・弁護士の早期関与が、勾留回避や不起訴の鍵になる

傷害事件では現行犯逮捕か後日逮捕か

(1)逮捕の種類や手続

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

(2)現行犯逮捕で逮捕される可能性とタイミング

傷害事件では、現行犯逮捕が行われるケースが少なくありません。
一例として、次のような状況では現行犯逮捕となることが多くあります。

・けんかの最中や直後に、警察が通報を受けて駆けつけた場合
・被害者がその場で「殴られた」と通報し、加害者が逃げずに現場にいる場合
・防犯カメラや周囲の人の目前で暴行を加えた場合

現行犯逮捕は、「まさに犯行中」または「犯行直後」であることが条件です。
また、「犯罪の直後に行為者と疑うに足りる状況がある場合」(刑事訴訟法212条2項)は
準現行犯逮捕として扱われ、現行犯逮捕と同様に令状不要で逮捕が可能です。

もっとも、(準)現行犯逮捕されたとしても、その後の手続(送検・勾留・起訴など)は通常逮捕と同様に進みます。
つまり、「すぐに逮捕されたから処分が重くなる」というわけではありません。
その後の取調べや示談の状況が、処分の軽重に影響します。

ポイント
・傷害事件は、目撃者や被害者がいることが多く、現行犯逮捕の可能性が高い
・犯行直後であれば「準現行犯」として逮捕される場合もある
・現行犯逮捕は令状不要で迅速に行われるが、その後の手続は通常逮捕と同じ
・逮捕後の対応(弁護士依頼・示談など)が、処分結果を左右する

(3)逮捕の可能性が高いケース

傷害事件は,逮捕される可能性が十分に考えられる事件類型です。被害者の身体に危害が加えられているため,犯罪行為の危険性を踏まえると,被害者保護や証拠隠滅防止のために逮捕の必要性が高いと判断されるケースは少なくありません。

もっとも,傷害事件には大小様々なものがあり,逮捕の可能性も一律に判断することはできません。そのため,傷害事件で逮捕の可能性が高いのはどのような場合か,という点を把握しておくことは有益でしょう。

傷害事件で逮捕の可能性が高い場合

1.被害結果が大きい場合

2.暴行内容の危険性が大きい場合

3.現行犯で取り締まりを受けた場合

4.相手が弱い立場の場合

【1.被害結果が大きい場合】

被害者の傷害結果の大きさは,傷害事件の重大性を判断する際の非常に大きな材料になります。軽傷であるか重傷であるか,場合によっては命の危険があったかどうか,といった点は,刑事責任の重大性に直結します。

一般的に,刑事責任が重大な事件であるほど,見込まれる処分も重いものになるため,加害者が逃亡や証拠隠滅を図る恐れが大きいと理解されます。そして,逃亡や証拠隠滅を図る恐れが大きいほど,逮捕をする必要性も高くなります。逮捕は,まさに逃亡や証拠隠滅を防ぐための強制的な措置であるためです。

そのため,被害結果が大きい傷害事件では,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

【2.暴行内容の危険性が大きい場合】

結果的に被害が大きくなかったとしても,暴行の内容が非常に危険である場合には,やはり刑事責任が重くなりやすいため,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。一例としては,凶器を振り回したものの被害者にはうまく当たらなかった場合や,周囲が止めに入らなければもっと重大な被害を負わせてしまっていたであろう場合が挙げられるでしょう。

また,暴行の内容があまりに危険である場合には,そのような危険な行為を実行してしまう人物だ,という点を踏まえ,被害の拡大を予防する目的で逮捕をすることも多く見られます。特に,危険な行為を躊躇なく行っている場合や,無差別に行っている場合には,逮捕の可能性はより高くなると考えられます。

【3.現行犯で取り締まりを受けた場合】

現行犯で取り締まりをされた傷害事件の場合,その現場でのトラブルの深刻化を防ぐため,一方を逮捕するケースが多く見られます。
代表例としては,路上や飲食店などで泥酔者同士の喧嘩が起きた場合などが挙げられるでしょう。泥酔状態でコミュニケーションもうまく取れない状況では,逮捕以外の手段で加害者を制止させる方法がなく,その場を収める最も有効な手段として,逮捕が選択されることも少なくありません。

また,現行犯の場合には現行犯逮捕が可能ですが,逮捕状がなくても,誰でも行うことができる点で,逮捕を行うハードルが低いという特徴もあります。周囲の人が現行犯で取り押さえた後,駆け付けた警察官に引き渡すことで,自然と逮捕が成立してしまうこともあり得ます。

【4.相手が弱い立場の場合】

当事者間の立場に上下関係や筋力などの差があり,被害者が弱い立場にある場合には,被害者保護のために逮捕が選択される可能性が高くなり得ます。
逮捕は,証拠隠滅を大きな目的の一つとする手続ですが,被害者という人も重要な証拠です。この場合の逮捕は,被害者という証拠が隠滅されないことを目的に行われることになります。

特に,当事者間が容易に連絡を取り合える関係であるなど,加害者から被害者に対して何らかの圧力がかかりやすい事情がある場合には,特に被害者保護をする必要性が高く,逮捕に至るケースが増えるでしょう。

傷害事件で逮捕されたときのデメリット

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

傷害事件の逮捕を避ける方法

①当事者間での解決を目指す

傷害事件は,基本的には当事者個人間のトラブルであるため,当事者自身で解決されているのであれば,それ以上に捜査をすることはあまりありません。刑事手続の進み具合によっては,当事者間で解決しても直ちに手続が終わらないこともありますが,少なくとも当事者間で解決した後に逮捕されることは考えにくいでしょう。

そのため,逮捕を避ける手段としては,当事者間との解決が非常に有力と言えます。共通の知人が間を取り持ってくれる,当事者同士で連絡を取り合う手段がある,といった場合には,直接話し合うこともあってよいでしょう。もっとも,傷害事件の解決を当事者同士で直接行うことは,トラブルの深刻化につながる恐れもあるため,弁護士に間に入ってもらい,弁護士を通じてやり取りを試みる方が望ましいところです。

②自ら捜査機関に出頭する

逮捕をする必要性が高いケースの一つが,逮捕しなければ出頭してもらえない,捜査協力をしてもらえない,という恐れのある場合です。最悪の場合,被疑者に逃亡されて行方が分からなくなってしまうと,捜査が進められなくなってしまうため,その恐れが高いと考えるときには,逮捕が有力な選択肢になります。

一方で,加害者が自ら捜査機関に出頭し,自分のしてしまった行為を真摯に話すなどした場合には,捜査協力をしてもらえない可能性や逃亡されてしまう可能性は基本的にないと評価されます。自分から出頭していることと逃亡などは,行動として矛盾するためです。

そのため,逮捕を避ける手段の一つとして,自ら進んで捜査機関(警察や検察)に出頭し,自分の事件に対する取り調べなどを求める動きは有力でしょう。手続の状況によっては,いわゆる自首が成立し,法的にもプラスの効果が生じることも期待できます。

被害者と接触が難しく、かつ捜査されていることが明らかに見込まれる場合、自ら出頭する方法が有力になりやすいです。

③金銭賠償を行う

傷害事件の被害者には,具体的な金銭的被害の生じていることが通常です。怪我を治療するための通院費,仕事ができなかった場合の休業損害,精神的苦痛に対する慰謝料などが代表例です。

この点,被害者に生じた損害に対して,金銭賠償を行って埋め合わせたケースでは,その後に逮捕されるケースは少なくなるのが通常です。この場合,加害者が被害者に対するお詫びの意思を持っていることが明らかであり,現実に被害者の損害が一定程度補填されているため,逮捕のような強制力の強い取り扱いまでする必要はない,と評価されやすいためです。

できれば,金銭の支払だけでなく当事者間で解決した,という形が取れる方が望ましいですが,解決までは至らない場合,金銭賠償だけでも行っておくことは非常に有益と言えます。

刑事事件の取り扱いに際しては、被害者の損害を後から補填できたか、という点が重要な判断基準になります。傷害事件の被害者に生じた心身の損害を金銭で補填することは、この点で大きな影響をもたらします。

傷害事件で呼び出しを受けた場合の対処法

①心当たりのある場合

疑われている行為に心当たりのある場合は,犯罪事実に争いのない事件となり,認め事件と呼ばれます。認め事件では,犯罪が成立するかどうかは問題にならないため,犯罪行為があったことを前提に,その処分が重くなるか軽くなるか,という判断になります。
そのため,心当たりのある場合には,その後の処分ができるだけ軽くなるような対応に努めるのが最も適切と言えるでしょう。

具体的には,最初から一貫して自身の行為を認め,深い反省の意思を示すとともに,真摯な捜査協力を行うことが望ましいと言えます。認め事件で処分が軽くなるかどうかは,いわゆる情状酌量をしてもらえるかという問題になるため,深い反省を有利な情状として考慮してもらうことを目指すのが最も有効です。

突然呼び出しを受けてしまうと,認めることにリスクを感じてしまい,反射的に心当たりがないなどの返答をしがちですが,反省は一貫して示すことが非常に重要です。反省の意思が最初から一貫している,と評価してもらうため,呼び出しへの最初の対応は大きなポイントになるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けた段階から,一貫して反省の意思を示し続けることが重要

②相手に落ち度があると考える場合

傷害事件の場合,互いに感情的になって不適切な行為をしている場合も多いため,事件の原因などについて相手に落ち度があると考えるケースもあり得るところです。相手が暴言を吐いてきた,挑発してきたなど,「相手が不適切な行為をしなければ事件は起きなかったのに」という思いになる場合もあるでしょう。
その他,相手も手を出してきた,相手に迷惑をかけられてきた経緯があるなど,相手の落ち度を指摘したいケースが増えやすいのも,傷害事件の特徴と言えます。

もっとも,呼び出しを受けた際に相手の落ち度を強く指摘するのか,という点は,慎重な判断が望ましいです。呼び出しを行う警察は,まず犯罪事実を認めているか認めていないか,という基準で事件を区別し,その区別に沿って取り扱いを進めていくのが通常です。そのため,犯罪事実を認めるか認めないか,という点に関係しない事情は,あまり聞く意思を持っていないことが多く見られます。
相手に落ち度があると考える場合でも,それが犯罪の成否に影響しない事柄であれば,呼び出しをした警察にとって必要な情報ではなく,伝えてもその後の流れが好転することが考えにくいものです。正当防衛の主張であるなど,犯罪の成否に関係する主張以外は,あまり強く述べていくべき状況ではないかもしれません。

相手の落ち度に関する言い分は,主張するべきタイミングや方法を慎重に判断することが望ましいものです。感情的な主張になってしまわないよう,弁護士に依頼するなどして十分に検討することをお勧めします。

傷害事件の場合、経緯に理不尽な出来事があったというケースも少なくありません。しかし、その経緯を最初から強く主張するより、まず傷害行為を真摯に認めるステップを踏む方が結果的に得をすることも多いです。

③相手が怪我するほどの内容ではないと考える場合

傷害事件は,加害者が被害者に暴行を加えた結果,被害者が傷害を負った場合に成立する犯罪類型です。そのため,暴行をしても被害者に怪我が生じなかった場合や,被害者が怪我をしているもののそれは暴行とは無関係の原因で生じたものである場合などは,傷害罪は成立せず,傷害事件として扱うことが不適切である,ということになります。
そのため,実際の出来事や自身の記憶を踏まえて,相手に傷害結果が生じるのは考え難いという場合には,その旨の主張を行うのも有力な選択肢と言えます。

ただし,この場合には,法的にどのような主張になるかは十分に理解しておくことが適切です。暴行を加えたものの傷害結果が生じなかった,という場合には,傷害罪は成立しないものの暴行罪は成立することになるのが通常です。つまり,犯罪に当たることは争わないものの,より軽微な犯罪であるとの主張になるため,認め事件で重要な反省の意思を示すことは忘れないようにする必要があります。

なお,主張の内容によっては,暴行罪すら成立せず「自分の行為は犯罪でない」という意味の主張になる場合もあり得ますが,高度な法律の理解が必要な問題になるので,必ず弁護士の見解を仰いだ上で主張するようにしましょう。

ポイント
傷害罪でなくより軽微な暴行罪にとどまるとの主張
認め事件に変わりないことは忘れないよう注意する

④全く心当たりがない場合

疑われている傷害事件に全く心当たりがない場合,捜査に対しては否認(認めない)の立場を取ることになります。そのため,まずは否認事件であることを明らかにし,捜査機関に把握してもらうように努めましょう。

刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,必要な捜査やその後の取り扱いが大きく変わります。否認事件の場合,被疑者が認めなくてもなお犯罪が証明できる,という場合でなければ刑事処罰はできないため,一般的に犯罪立証のハードルが高く,より慎重な捜査が必要とされる傾向にあります。
そのため,否認事件では,犯罪立証の高いハードルを越えることが必要である,ということを捜査機関に認識してもらい,できれば「犯罪立証が困難である」との判断を早期に行ってもらうことが有力な対応と言えるでしょう。

また,自分に心当たりのないことを裏付ける事情などがある場合,その内容は積極的に示していくことが適切です。否認の主張が信用できるとの判断を引き出しやすく,より早期の解決が期待しやすくなります。

ポイント
否認の立場を早期に表明する
主張を裏付ける事情がある場合は,積極的に示す

傷害事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

傷害事件で呼び出しを受けた場合,呼び出しに応じて出頭した際に逮捕される,という流れはあまりありません。傷害事件は,逮捕目的で呼び出しを行うケースが少ない事件類型と言うことができるでしょう。
もっとも,傷害事件は事件の程度が非常に幅広く,そのすべてを一律に取り扱うことは困難です。傷害事件の中でも,事件の重大性や悪質性が特に大きい場合には,呼び出しの際に逮捕される可能性も否定できません。

具体的には,以下のような場合が挙げられるでしょう。

傷害事件で呼び出し後に逮捕されやすいケース

①殺意がある可能性を疑われている

傷害事件として取り扱ってはいるものの,殺意があったのではないかと疑われている場合,殺意を裏付ける証拠が発見されたなどの事情によっては,呼び出しの後に逮捕される可能性が考えられます。
殺人罪又は殺人未遂罪は,犯罪の中でも特に重大な類型であり,その重さは当然ながら傷害罪を大きく上回るものです。刑事事件では,事件が重大であればあるほど逮捕の可能性が高くなるため,傷害罪にとどまらず殺人罪や殺人未遂罪の可能性がある場合は,特に逮捕リスクが高くなるのです。

殺意の有無は、傷害行為の危険の大きさを主な基準とすることが一般的です。刃物やけん銃で急所を狙った場合などが代表例ですが、実際の行為が被害者の生命に影響し得るケースでは、殺意があると判断されやすいでしょう。

②被害結果が非常に重い

被害者の傷害結果が非常に重く,傷害事件の中でも特に重大と評価される場合には,逮捕の可能性が高くなります。特に,死亡結果に近いほどの深刻な被害が生じている場合,殺意がある場合と同様に殺人事件又は殺人未遂事件類似の内容として,逮捕リスクが上がりやすいでしょう。

また,たまたま重大な被害結果になってしまったのではなく,意図して重大な傷害結果を招こうとし,実際にその通り重大な結果となった場合には,より逮捕の可能性が高くなりやすいと言えます。呼び出し後の取り調べなどを踏まえて,暴行の意図がはっきりと確認できた場合には,それを踏まえて逮捕に踏み切るケースもあり得ます。

③呼び出しへの対応が不適切である

捜査機関が呼び出しを行うのは,呼び出しに対して適切に応じてくれることが大前提となります。出頭して欲しいと求めれば来てくれる,物の提出を求めたいと言えば提出してくれるなど,捜査協力をしてくれるのであれば,逮捕までは必要ないと考えているわけです。

逆に,呼び出しに対して不適切な対応に終始し,捜査協力の意思が見られない場合には,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。呼び出しを無視し続ける,合理的な理由なく拒否し続けるなど,逮捕なしでは出頭や取調べへの協力が期待できないと理解されるケースでは,特に逮捕が懸念されます。

傷害事件の逮捕に関するよくある質問

(1)傷害事件の逮捕については弁護士に依頼するべきか

傷害事件の逮捕について対応をする場合には,弁護士に依頼し,弁護士の法的な判断を仰ぎながら進めることが適切です。弁護士に依頼した場合,以下のような利点が見込まれます。

①逮捕が懸念される状況か分かる

逮捕への対策をどの程度講じるかは,現状でどの程度逮捕が懸念されるか,という点により大きく変わります。逮捕が強く懸念される場合には,まず逮捕を避けることに全力を注ぐべきですが,一方で逮捕の危険がそれほどないならば,その分の労力や負担を他に充てる方が,最終的な結果はより望ましいものになる可能性が高いでしょう。
そのため,逮捕に関する対処は,正確な現状把握が出発点となります。

この点,弁護士に依頼することで,現在逮捕が懸念される状況かどうか,という点について,専門的な判断を仰ぐことが可能です。あわせて,個別の状況に応じた適切な対応方法についても,弁護士から助言を受けたり弁護士に進めてもらったりすることができるでしょう。

②速やかに示談を目指せる

傷害事件で逮捕を防ぐ手段として,示談は非常に強力な効果があります。示談が成立した傷害事件では,その後に逮捕されることはないと言っても過言ではありません。
もっとも,傷害事件では,示談を試みるために弁護士への依頼が必要となります。弁護士に依頼し,弁護士を窓口とすることで,初めて示談の試みが可能になるのが通常です。

裏を返すと,早期に弁護士に依頼している場合,早期に示談を目指す動きに着手でき,結果的に逮捕を回避しやすくなる可能性が高まるでしょう。もし示談自体が早期に決着できなくても,示談交渉を開始している,というだけで逮捕が防げる場合は少なくありません。

③不適切な逮捕を抑止できる

傷害事件の場合,当事者間の感情的な対立が非常に激しいため,被害者側が加害者の逮捕を強く求める場合は多くなりがちです。このとき,取り扱う警察官としては,本来は逮捕まで必要ないケースであっても,被害者の強い主張を受けて逮捕する,という選択になってしまうことが少なくありません。
しかしながら,本来逮捕まで必要ないにもかかわらず,被害者が強く主張したから逮捕するというのは,適切な逮捕とは言い難いでしょう。逮捕は非常に強力な手続であるため,本当に逮捕が必要かどうかは慎重に判断されるべきです。

この点,弁護士に依頼をしているケースでは,弁護士が目を光らせることで,不適切な逮捕の判断を抑止する効果を期待できます。また,万一不適切な逮捕が行われた場合には,不服申し立ての手続を講じるなどして,早期釈放を目指すことも可能です。

(2)逮捕された場合は不起訴にならないか

逮捕された場合,事件が重い取り扱いを受けていることが明らかになりますが,だからといって事件が起訴されるとは限りません。逮捕は,あくまで捜査をする際の手段の一つに過ぎず,捜査を終えた後に起訴するか不起訴にするかは全く別の問題です。

そのため,万一逮捕されてしまった場合でも,起訴されず前科が付かない可能性は十分に残っている,ということには注意しておくのが良いでしょう。逮捕されたことで全てに悲観的になってしまうのではなく,逮捕後でも最良の結果を目指すことが,結果に大きな違いをもたらします。

(3)傷害事件で逮捕されたとき家族ができることはあるか

家族の行動も、事件の結果を左右する重要な要素です。

まず、速やかに弁護士へ依頼し、接見を通じて本人の状況を確認します。
そのうえで、

・示談金や被害弁償の準備
・謝罪文や反省文の作成サポート
・勤務先・学校への連絡や社会的信用の維持

といった支援を行うことが大切です。

これらの対応は、被疑者が真摯に反省していることを示す資料となり、不起訴や執行猶予など処分の軽減につながる可能性があります。
家族の協力が、被疑者の再出発を支える大きな力になります。

(4)傷害事件で前科がつくのはどんな場合か

起訴され、有罪の裁判(正式裁判または略式命令)が確定した場合に前科がつきます。
不起訴や無罪の場合は、前科は残りません。
軽微な事件で示談が成立しているケースでは、不起訴となり前科を回避できることも数多くあります。

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