【特殊詐欺事件の不起訴処分】不起訴になるケースや不起訴になった場合の効果,特殊詐欺事件特有の注意事項などを解説

このページでは,特殊詐欺事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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特殊詐欺事件で不起訴を目指す方法

①被害者との示談

特殊詐欺事件は、不特定多数の被害者から計画的に金品を騙し取る詐欺事件を指すのが一般的です。特殊詐欺事件には、必ず具体的な被害者が存在するため、不起訴を目指すに当たっては被害者との示談を試みる手段が非常に有力となるでしょう。

刑事事件における示談は、一定の金銭を支払うことと引き換えに、加害者の刑事処罰を希望しない(加害者を許す)という内容の合意となるのが通常です。被害者が加害者の刑事処罰を希望しなければ、不起訴になる可能性は飛躍的に高くなります。

被害者としては、加害者から示談の話が来なければ騙し取られた金銭を取り戻すことは難しいため、損害を回復する唯一の手段として示談に応じるメリットが生じるケースも少なくありません。特殊詐欺事件では、被害者が経済的な救済を受けることが難しくなりやすいため、示談は被害者にとっても有益な解決になり得る点で、非常に有力な試みと言えるでしょう。

ポイント
被害者が刑事処罰を希望しなければ、不起訴の可能性が飛躍的に高まる
示談は、被害者にとって経済的な救済を受ける唯一の手段になり得る

②役割が大きくないことの主張

特殊詐欺事件は、単独で行われることはほとんどなく、組織的、計画的事件であることが通常です。そして、組織的な犯罪では、共犯者間の役割の差を踏まえて刑事処分が判断される傾向にあります。主導的な役割を果たした人物に対する刑罰は重く、従属的な役割にとどまった人物への刑罰は比較的軽く判断されることが通常です。

そのため、不起訴のような軽微な処分を求める場合には、事件に対する自身の役割が大きくないことを主張することも有力な方針になり得ます。例えば、ただ指示を受けて金品を受け取っただけである、金品の運搬に一部関与しただけであるなど、詐欺そのものの計画や実行に加担していない場合については、その役割が大きくないと評価されやすいでしょう。

ポイント
組織的事件では、役割の大きさで共犯者間に処分の差が生じる
詐欺そのものの計画や実行に加担していない場合、役割が大きくないと判断されやすい

③否認事件の場合

特殊詐欺事件における否認事件としては、犯罪の故意がないとの主張が一定数あります。特に、「闇バイト」という言葉で話題になったように、SNSを通じてアルバイトに応募し、知らず知らずのうちに特殊詐欺事件へ関与してしまうことになった場合、犯罪に関わったことの認識がなく、故意が問題になりやすいところです。

この点、犯罪の故意が立証できない場合、刑事処罰を科すことができないため、捜査機関としては不起訴処分とすることになります。裏を返せば、犯罪の故意が立証できない、との判断を促す方法で不起訴処分を目指すのは有力な方針の一つと言えるでしょう。

特殊詐欺事件で故意がないと判断されるためには、「詐欺事件に関与していると知らなかった」だけではなく、「詐欺事件に関与していたとしても構わない、とは思っていなかった」と評価されることが必要です。「詐欺事件に関与していたとしても構わない」と考えていた場合、詐欺事件への関与を知っていた場合と同様、故意があるとの取り扱いになってしまうことに注意しましょう。

ポイント
特殊詐欺事件の場合、犯罪の故意がないと主張するケースは一定数あり得る
詐欺事件に関与していたとしても構わない、という場合も故意あり

特殊詐欺事件で不起訴になる可能性

特殊詐欺事件の場合、犯罪の立証が可能である以上は起訴することが一般的です。初犯である、反省しているなどといった理由で不起訴にしてもらえる可能性は非常に低いと考える必要があるでしょう。それだけ、特殊詐欺事件は重大事件として取り扱われています。
例外的に、被害者が加害者のことを特に許している場合は、被害者の意向を汲んで不起訴処分とする可能性も低くありませんが、大きな経済的被害を受けた被害者が加害者側を安易に許すことは考えにくいです。そのため、被害者の許しを得るための積極的な努力は不可欠でしょう。

特殊詐欺事件で不起訴が困難になりやすい具体的な理由としては、以下の点が挙げられます。

特殊詐欺事件で不起訴が困難な理由

1.悪質な事件類型である

2.被害規模が大きい

3.組織的犯罪である

4.社会的影響が大きい

【1.悪質な事件類型である】

特殊詐欺事件は、一般的に判断能力が高くない高齢者をターゲットに、虚偽のストーリーを作り上げて被害者を誤解させ、多額の金銭を騙し取ろうとする事件類型です。計画性が非常に高く、「魔が差した」という程度の動機で行われる可能性が考えにくい内容であることから、悪質な事件類型と評価されることが一般的です。

刑事事件では、突発的で衝動的な事件よりも、計画的な事件の方が、刑事処分が重くされる傾向にあります。なぜなら、犯罪行為をしようという意思がより強く、そのような悪質な意思決定に対しては十分な刑罰を科して悔い改めさせる必要が大きくなるためです。

特殊詐欺事件の場合、計画性から悪質な意思決定があったと評価されやすいため、不起訴が困難な傾向にあります。

【2.被害規模が大きい】

特殊詐欺事件は、被害者に多額の金銭を振り込ませたり、手渡しさせたり、キャッシュカードそのものを騙し取って残高を全て引き出したりといった手口が取られるため、被害の規模が大きくなりやすい事件類型です。詐欺のような財産に対する犯罪(財産犯)では、被害規模が大きければ大きいほど、その犯罪行為に対する処罰も重くなりやすい傾向にあります。

特に、1件のみでなく複数件に関わっている場合、事件数の分だけ被害規模も大きくなっていくため、刑事処分もより重いものになりやすく、不起訴が難しい要因となるでしょう。

【3.組織的犯罪である】

特殊詐欺事件は、一定の人数で組織的に行われることが通常です。この点、刑事事件では、単独で実行するものより組織的に犯罪を成功させようとするものの方が、刑事処分が重くなりやすい傾向にあります。

組織的な犯罪は、その背後に反社会的勢力が関与しているケースも少なくありませんが、反社会的勢力と関係ある組織である場合には、刑事処分がより重くなりやすいところです。犯罪の立証が困難な場合を除き、不起訴処分は難しくなるでしょう。

【4.社会的影響が大きい】

特殊詐欺事件は、広く行われた結果社会問題になるなど、社会的影響力が非常に大きな傾向にあります。特に、被害者となる危険があるのみならず、SNS上での「闇バイト」として加害者として関与してしまう恐れもあることから、事件に対する国民の理解を促す必要が大きいと考えられているところです。

そのため、特殊詐欺事件の場合、安易に不起訴などの軽い処分とすることで社会の秩序が乱れる結果にならないよう、相応に重い刑事処罰を科して社会に知らしめることが重要視されやすいでしょう。

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません。

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます。

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

特殊詐欺事件で不起訴を目指す場合の注意点

①示談で不起訴を目指すのが困難な場合

特殊詐欺事件では、示談を行う方法で不起訴を目指そうとしても、結果に結びつかないことが珍しくありません。特に、事件が複数ある場合には注意が必要です。

被害者複数、事件複数という場合、個別の事件ごとに起訴不起訴が判断されます。そうすると、被害者のうち一人だけでも示談に至らなければ、その件は起訴されてしまい、ほかの事件で示談ができていたとしても不起訴の目標が実現できない結果とならざるを得ません。
また、被害者全員との示談に乗り出した後に一人だけ示談できないことが明らかになった場合、ほかの被害者に対する示談の試みをなかったことにするわけにもいきません。そのため、不起訴が実現できないと分かりながらも、応じてくれた被害者との示談を進める必要が生じることになります。

②経済的負担

特殊詐欺事件は、被害規模が1件当たり百万円単位などと大きくなりやすい類型です。そのため、特殊詐欺事件で示談を目指そうとすると、それだけ大きな経済的負担を覚悟する必要がある点には注意したいところです。

一般的に、受け子(被害者から金品を受け取る役割)や出し子(被害者の口座から金銭を引き出す役割)といった末端の立場である場合、その役割に対する報酬は大きくありません。被害の規模と比較すれば、そのごく一部にとどまることが通常です。
しかしながら、被害者との関係では、被害全額を賠償する義務を負っているため、示談を目指すのであれば基本的に被害者の損害を全て埋め合わせることが必要となります。少なくとも、自分の受け取った報酬を吐き出すのみで足りる問題ではありません。

そうすると、事件を通じて得た利益とは比較にならない金額の経済的負担を想定する必要が生じることになります。特殊詐欺事件で不起訴を目指す場合は、経済的負担を十分に考慮しながら進めることをお勧めします。

③末端の役割であれば不起訴になるか

特殊詐欺事件の場合、組織内での役割が刑事処分に大きく影響します。当然ながら、最も末端の役割と言える立場であれば、組織内では最も処分が軽微になりやすいでしょう。

しかしながら、末端の役割であるため処分が軽微になる、と言っても、決して不起訴処分が見込まれるわけではない点には注意が必要です。
特殊詐欺事件は、そもそもの事件規模が大きく、悪質な類型と考えられています。そのため、いかに末端の役割であっても、不起訴とされるまで軽い評価になるわけではありません。

特殊詐欺事件では、「初犯だから」「末端の役割だから」という理由で安易に不起訴処分とされることは考えにくいため、不起訴を目指す場合にはより積極的な努力が必要になるでしょう。

④手続に要する期間

特殊詐欺事件の場合、逮捕勾留といった身柄拘束の上で捜査されることが一般的です。捜査に伴う逮捕勾留の期間は、逮捕から勾留までが72時間以内、勾留が合計で20日以内(勾留10日間、勾留延長が最大10日間)となるため、最長で23日以内の手続になるところです。

もっとも、特殊詐欺事件では余罪が多いため、この逮捕勾留が事件の数だけ繰り返される傾向にあります。仮に5件の捜査が行われれば、それだけで100日を超える身柄拘束が想定されることになります。
しかも、事件が起訴された後も、特に保釈されない限り、裁判が終わるまで身柄拘束は続きます。起訴後、裁判が終わるまでの期間は数か月となりやすいでしょう。

そのため、特殊詐欺事件では、事件の数だけ逮捕勾留が繰り返された後、起訴されて裁判が終わるまでの数か月間も勾留され続けるなど、長期間を要しやすい可能性に注意が必要です。

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【埼玉大宮で特殊詐欺事件の弁護士選び】依頼に適した弁護士の条件とは?判断基準や注意事項を解説

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特殊詐欺事件で弁護士を選ぶタイミング

①逮捕されたとき

特殊詐欺事件は,逮捕される可能性の非常に高い事件類型です。その理由としては,事件が重大で悪質と評価されやすいこと,組織的犯罪のため,共犯者間での証拠隠滅がなされやすいことなどが挙げられます。
基本的に,特殊詐欺事件に関わる犯罪行為があったとみなされた場合,逮捕を想定する方が望ましいと言ってもよいでしょう。

もっとも,逮捕は被疑者に対する捜査の初期段階です。逮捕後,取り調べなどの捜査を尽くすことで,被疑者の処分を判断する材料を獲得していくことになります。被疑者の立場としては,逮捕後の対応によって,その後の処分が大きく変わりやすいということでもあります。

そのため,特殊詐欺事件では,逮捕を想定した上で,逮捕されたときにはその後の捜査への対応のために弁護士選びを適切に行いたいところです。円滑な弁護士選びができれば,その後の流れが大きく変わりやすいでしょう。

ポイント
特殊詐欺事件は逮捕の可能性が高い事件類型
逮捕後の対応によって,最終的な処分が変わりやすい

②起訴されたとき

重大事件である特殊詐欺事件では,犯罪事実が明らかであれば起訴することが通常です。反省を深めているという理由で不起訴になることは,基本的にはないでしょう。
そのため,特殊詐欺事件の捜査を受けている場合には,否認事件でない限り,起訴されることを想定し,起訴後の方針も考えておくことが不可欠です。

この点,起訴された際には,保釈を請求したり,刑事裁判(公判)の対応方針を検討したりする必要がありますが,これらは弁護士なしでは困難な動きです。逆に,適切な弁護士に依頼できていれば,速やかな保釈の手続で釈放してもらうことができ,その後の公判でも不利益を最小限に抑えるような対応を取ることができるでしょう。
特に,特殊詐欺事件の場合,初犯でも実刑判決となることが決して珍しくないため,事件の重大性を踏まえると,公判でどのような対応ができるかは非常に重要な問題と言えます。

特殊詐欺事件で起訴された場合には,その後の動きを円滑で適切なものとするため,弁護士選びを十分に行うべきでしょう。

ポイント
特殊詐欺事件は,その重大性のため起訴されやすい
公判での対応次第で,実刑判決の回避も可能になり得る

③示談したいとき

特殊詐欺事件では,詐欺被害者の意向が刑事処分に大きく反映されやすい傾向にあります。被害者が起訴を望まなければ不起訴処分に,被害者が実刑判決を望まなければ執行猶予判決に,というように,被害者が重い処分を希望しない場合には,相応に軽微な処分が期待できる可能性も高くなります。
そのため,被害者と示談を行い,被害者から許しを得ることは,非常に優先順位の高い試みと言えるでしょう。

もっとも,示談の試みは弁護士に依頼する形で行うほかないのが実情です。通常,当事者間に連絡を取り合う手段がないため,捜査機関を通じて被害者に連絡を取ってもらうことになりますが,捜査機関が被害者に連絡を入れてくれるのは,弁護士が窓口に入っている場合に限られます。当事者同士の直接の連絡は,トラブルの原因になりやすいため認めてもらえないのです。

示談交渉の流れ

そのため,特殊詐欺事件で示談をしたい場合には,示談の試みに適した弁護士選びを行い,弁護士を通じて進めるのが適切でしょう。

ポイント
詐欺被害者の意向が刑事処分に大きく反映されやすい
特殊詐欺事件の示談は,弁護士が窓口に入ることが必要

④自首したいとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自首の大きなメリットは,逮捕を回避しやすくなることや刑事処分が軽減されやすいことですが,特殊詐欺事件の場合,逮捕の恐れが大きく,実刑判決等の思い処分も懸念されやすいため,自首が大きな効果を発揮する場合は少なくないでしょう。

もっとも,自首は,犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。捜査が進んでしまった後では自首が成立せず,メリットが十分に生まれない恐れもあり得るところです。

そのため,本当に自首をすべきかどうか,自首をする場合にどのような手順・方法で行うか,という点を十分に検討する手段として,適切な弁護士選びが非常に重要となるでしょう。
また,自首を実際に行う場合にも,弁護士とともに進めることで,円滑な自首が容易になります。

ポイント
自首により,逮捕回避や処分軽減の効果が期待できる
自首すべきか,方法をどうするかは,弁護士による検討が適切

特殊詐欺事件の弁護士を選ぶ基準

①迅速な接見が可能か

逮捕勾留がなされやすい特殊詐欺事件では,弁護士による接見が不可欠です。勾留中に「接見等禁止」の処分がなされると,弁護士以外は面会すらできなくなってしまうため,弁護士が唯一の相談相手となることも珍しくありません。

特に,逮捕直後の初回の接見は,できる限り迅速に行うことが望ましいものです。刑事事件の処分結果は,逮捕直後の初期対応によって大きく左右されやすく,初期対応を誤った後に弁護士が接見を行っても,手遅れになりかねないためです。

そのため,弁護士を選ぶ際には,弁護士が速やかに接見を行い,初期対応に関する打ち合わせやアドバイスを十分にしてくれるか,という点を重要な判断基準とするのが適切でしょう。
迅速な接見ができるかどうかは,弁護士のスケジュールだけでなく,弁護士の活動方針にも影響を受けることがあるため,弁護方針として速やかな接見を予定してくれているかは確認したいところです。

②具体的な弁護方針があるか

特殊詐欺事件の場合,弁護方針に複数の選択肢があり得ます。特に,事件が一つだけでなく複数の余罪を含めた対応を要する場合や,犯罪を立証できるかどうか不明確であると思われる場合には,個別の内容・状況を踏まえた慎重な判断が求められます。

例えば,示談一つを取っても,一般的な刑事事件ではすぐに示談交渉を試みて示談の成立を目指すのが基本ですが,余罪の複数ある特殊詐欺事件では,1件だけ示談が成立してもそれ以上に示談金の負担ができなくなってしまうと,トータルとしてはメリットに乏しい結果となる恐れもあります。そのため,即時に示談を試みるかは難しい問題になり得ます。
また,取り調べへの対応に関しても,どのような内容を話すべきか,認否の方針をどうすべきかは,共犯者の状況,余罪の有無,証拠関係などを推測しながら検討しなければならず,判断は容易ではありません。

そのため,特殊詐欺事件の弁護方針をどうするべきかは,弁護士によっても見解の分かれる可能性がある点と言えるでしょう。どの方針が正解であったかは結果が出なければ分かりませんが,少なくとも,弁護士の方針が具体的・合理的なものと言えるかは,弁護士選びに際して注意するべき基準と言えるでしょう。

③弁護士との連絡が滞らないか

特殊詐欺事件では,弁護士から連絡を受ける以外に状況を把握する手段のない場合が非常に多く見られます。そのため,依頼者側にとって,弁護士との連絡が滞りなくできるかどうかはとても重要なポイントとなります。

もっとも,弁護士の連絡方法や頻度は,個々の弁護士の判断に委ねられます。依頼者目線では連絡が少ないと思っても,弁護士がそのやり方を変えようとしなければ,円滑な連絡は実現できません。

そのため,弁護士とはどのような方法で連絡が取れるか,どのような頻度で連絡が取れるか,という点は,弁護士選びの重要な基準とするのが良いでしょう。なお,法律事務所によっては,事務職員が窓口になって弁護士が直接には対応しない運用であるケースも考えられます。そのような運用が希望に合わない場合は,依頼後の連絡方法を具体的に確認することも有益です。

④事務所が遠すぎないか

特殊詐欺事件の場合,弁護士が警察署や拘置所へ足を運び,複数回の接見を行うことが必要になりやすいです。そのため,弁護士の事務所が接見場所とあまりに遠い場合には,弁護活動に限界の生じる可能性があり得ます。
また,事件を捜査する警察署は,被害者の生活圏に近いことが多く見られます。そのため,被害者への接触を試みる場合にも,やはり弁護士が足を運ぶ必要があるため,同様の問題が生じるでしょう。

そのため,特に身柄事件の場合には,弁護士の事務所があまりに遠方でないか,という点を判断基準の一つとすることをお勧めします。なお,遠方である場合にどのような影響があるかは,弁護士に直接確認の上,弁護士の案内を求めるのが望ましいでしょう。

特殊詐欺事件で弁護士を選ぶ必要

①実刑判決を防ぐため

特殊詐欺事件は,起訴され刑罰を受けることが避けられない場合も少なくありません。そして,刑罰を受ける場合,実刑判決(=直ちに刑務所へ収容することを命じる判決)の対象となることも十分に考えられますが,実刑判決は社会生活を続けられないことを意味するため,不利益が非常に大きく,何としても避けたい場合がほとんどでしょう。

そのため,特殊詐欺事件の多くでは刑罰の軽減に向けた動きが必要となりますが,具体的な方法や内容は個別の事情を踏まえて決定する必要があるため,弁護士の専門的な判断が不可欠です。実刑判決を避けられる見込みがどのくらいか,手段を尽くすとそれがどの程度変わるのか,尽くすべき手段は何か,といった点については,弁護士の判断を仰ぐことが適切でしょう。

②早期釈放のため

特殊詐欺事件の場合,逮捕後にすぐ釈放されるということはあまり期待できません。身柄拘束を続ける必要性が非常に高い事件類型のため,安易に釈放を期待することは適切とは言い難いです。
もっとも,特殊詐欺事件でも釈放を目指すことのできるタイミングは存在します。代表的なものが起訴後の保釈でしょう。起訴後は,起訴前とは異なり捜査が終了しているため,捜査の妨害を防ぐために身柄拘束を続ける必要が小さくなります。そのため,認め事件であれば,起訴後に保釈してもらえることは特に珍しくありません。

この点,保釈による釈放が早期にできるかどうかは,早期に弁護士が動いているかによって大きく変わります。弁護士選びに手間取っていると,それだけ釈放時期が遅れてしまうことになりかねないため,早期釈放に向けて弁護士を速やかに選ぶことが適切です。

③適切な取り調べ対応のため

余罪を含む複数の事件が捜査される特殊詐欺事件では,慎重な取り調べ対応が必要です。取調べに対してどこまでの話をするのかは,事件ごと,状況ごとの検討が不可欠ですが,余罪が絡みやすい特殊詐欺事件では,事件間の関係や想定される証拠なども踏まえて判断する必要があるため,対応方針を決めるのも容易なことではありません。

特殊詐欺事件で最も有益な取調べ対応を行うためには,やはり専門的な知識・経験を持つ弁護士に依頼し,弁護士から適宜助言を得つつ進めることが望ましいでしょう。
なお,取り調べへの対応方針は,できるだけ早く,可能であれば最初の段階で決定しておくことが望ましいため,弁護士選びもそれだけ早期に行うことが有益と言えます。

特殊詐欺事件における弁護士選びの準備

①事件の概要をまとめる

特殊詐欺事件は,複数の当事者が登場し,それぞれが色々な行動を取っているため,第三者に事件の概要を把握してもらうことが簡単ではありません。特に,末端の立場で事件の一部にしか関与していなかったり,事件がかなり前のことであったりすると,突然聞かれてもすぐには分からない,という事態に陥りがちです。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士に事件の概要や自身の行為を把握してもらえるよう,事前にまとめておくことをお勧めします。この際,自分が覚えていることと覚えていないことをしっかり区別することも重要です。また,自分の記憶なのか,後になって知ったことなのか,という区別も適切にできるとよいでしょう。

②自分の立場や役割をまとめる

特殊詐欺事件は,複数の人物が関わる共犯事件であることが通常です。そして,共犯事件について見通しを持つためには,個々の人物の立場や役割が非常に大きな問題となります。基本的に,中心的な立場であるほど,犯罪の成立に重要な役割を果たしているほど,刑事責任は重くなります。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士に正確な見通しを立ててもらうためにも,自分の立場や役割を正しく伝えられるよう,まとめておくことが有益です。
なお,特殊詐欺事件の場合,いわゆる「闇バイト」を行ったような人物の場合,犯罪の故意が争点になるケースが少なくありませんが,故意があるかどうか,という点の結論には,その人物の立場や役割が大きな影響を及ぼす可能性もあります。立場や役割は,犯罪に当たるかどうかを左右するケースもあるため,非常に重要な問題と言えるでしょう。

③必要に応じて接見を依頼する

弁護士選びに際しては,事件の内容を把握した上で,それを弁護士に伝えることが不可欠ですが,当事者本人が逮捕勾留されており,ご家族などが弁護士選びをしている場合,事件の内容が分からないということも珍しくありません。また,事件の内容を把握しようと思っても,弁護士以外は面会ができない取り扱い(接見禁止)とされている場合が多く,事件の内容が詳しくは分からないまま弁護士選びをしなければならないこともあり得ます。

事件の内容が分からないケースでは,まず弁護士に接見を依頼し,本人から直接事件の内容を聴き取ってもらうことも有力な行動です。弁護士であれば,制限なく被疑者と接見ができるため,事件の内容や現在の状況を適切に把握することも可能となります。

接見の依頼は,一定の費用が発生することが通常ですが,接見のみの依頼を比較的安価に受けている法律事務所もあるため,まずは接見を依頼する,という方針も一案でしょう。

特殊詐欺事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①身柄事件の距離やスケジュール

特殊詐欺事件は,逮捕勾留を伴う身柄事件であることが多いですが,身柄事件の場合,弁護士が実際に移動して対応しなければならない業務も増えるため,移動の距離や弁護士のスケジュール面は注意しておくことが有益です。
特に,逮捕直後に速やかな接見が可能か,接見禁止の場合に,依頼者に代わって接見を行いコミュニケーションを取ってくれるか,といった点は,その後の進行に大きな影響を及ぼしやすいでしょう。

なお,余罪のある身柄事件では,捜査される事件が変わる際に身柄拘束の場所も変わる場合があります。特殊詐欺事件は,様々な場所で発生しやすいという特徴があり,事後的に遠方の事件であることが分かる場合も否定できません。
距離面の問題が後から発覚した場合には,その段階で弁護士と十分な相談を行うのが良いでしょう。

②費用が大きくなる可能性

特殊詐欺事件の場合,身柄拘束の期間が非常に長くなったり,取り扱う事件数が多くなったりと,弁護士費用が高額になりやすい特徴も少なくありません。そのため,弁護士費用がある程度大きな金額になる可能性にはあらかじめ注意しておくことが適切でしょう。
弁護士費用の大まかな目安は,事前に弁護士から案内してもらうこともできますが,弁護士としても想定に限界があるため,あくまで目安と理解し,余裕を持った準備が望ましいところです。

また,特殊詐欺事件は被害金額が大きくなりやすいため,示談や被害弁償を試みる場合,その金銭負担が相当な規模になることも珍しくありません。場合によっては,すべての事件の全ての被害を弁償することは難しく,一定額を被害者ごとに案分して支払う,という形を取らざるを得ないケースもあります。

特殊詐欺事件の示談方法

特殊詐欺事件では,弁護士費用と被害弁償のいずれも,金額が大きくなり得る可能性に注意しておくことが望ましいでしょう。

③弁護士を信頼できることの重要性

特殊詐欺事件の多くは,事件の内容や現在の状況について,弁護士から情報収集せざるを得ないものです。当事者本人との面会ができなければ,基本的には本人と接見をした弁護士から情報を得るほかないでしょう。
また,処分の見通しが厳しいものになる場合,それも弁護士から案内を受けることになります。もっとも,依頼者目線では,見通しが厳しくなった理由がやむを得ないものなのか,弁護活動によるものなのかという区別はできません。

そうすると,弁護士に依頼する際には,弁護士への全面的な信頼を前提に,弁護士に判断の全てを委ねるくらいの発想を持つ必要があります。結果が伴わなかった場合でも,「この弁護士に行ってもらってもダメならやむを得ない」と整理するしかなく,そのように整理できないと解決困難なトラブルの原因にもなりかねません。

弁護士選びにおいては,弁護士を信頼できるかどうか,という点が非常に重要であることを押さえておきましょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
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建造物侵入事件では自首するべき?自首すれば逮捕や起訴は防げる?家族や会社にはバレない?

このページでは,建造物侵入事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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建造物侵入事件で自首をするべき場合

①現場で姿を見られている場合

建造物侵入事件で自首が有力になるのは,事件の捜査が行われ,自身が加害者(犯人)として特定されることが見込まれる場合です。そして,建造物侵入事件で加害者が特定されやすいケースの代表例が,事件現場で他人に姿を見られている場合と言えます。
特に,被害者に目撃されている場合,被害者が警察等の捜査を求めない可能性は非常に低いため,捜査が開始され,犯人の特定に至りやすい状況と考えられるでしょう。

そのため,事件の現場で姿を見られている場合には,後の捜査を想定し,自首を行うことが非常に有力です。

また,現場から離れたところで姿を見られた,事件が発覚した後に人とすれ違った,といった場合も,類似の捜査リスクがあり得る状況と言えます。自身が犯人と特定される可能性がうかがわれる場合には,自首を検討することをお勧めします。

ポイント
加害者が特定されやすいため自首が有力
特に被害者に目撃された場合,捜査されない可能性が低い

②侵入行為が被害者側に知られている場合

建造物が商業施設であるなど,不特定多数者の出入りを想定した場所である場合,侵入被害があったことを広く告知している場合があります。そのように,侵入行為が被害者側に知られていることが明らかであるときには,自首が有力です。

被害者側が事件の発生を告知している場合,既に警察等に相談の上,刑事事件の捜査が開始されている可能性が高く見込まれます。そのため,事件が発覚しないまま,捜査されないまま終了することが考えにくく,後の捜査に備えた自首の検討が望ましい状況と言えるでしょう。

ポイント
商業施設などは,被害を広く告知している場合がある
被害を告知している段階では,捜査が始まっている可能性が高い

③反省の意思を積極的に示したい場合

建造物侵入事件は,最終的な刑事処分に対して反省の意思が影響するケースも多く見られます。特に,事件の内容・程度があまりに重大とは言えない場合であれば,深い反省を理由に不起訴処分とされることも考えられるところです。

この点,反省の意思を積極的に示したい場合の有力な方法が,自首です。自首は,深い反省のない人が行うことの考えにくい行動であるため,自首したという事実を深い反省の根拠と理解してもらえることが見込まれるでしょう。
また,反省の意思を示したい場合には,自首後の捜査対応にも気を配ることが適切です。真摯な捜査協力の姿勢があることで,反省の意思はより強く伝わることが期待できます。

ポイント
建造物侵入事件は,深い反省を理由に不起訴処分とされることもある
自首やその後の捜査協力を通じて,反省の意思を表明することが有力

④被害者側への接触が困難な場合

建造物侵入事件の場合,被害者と連絡を取り合うなどでき,当事者間の合意で事件解決できるのであれば,それが最も端的な解決策です。当事者間で解決した後に自首をする必要は基本的にないと言えます。
逆に,被害者と連絡を取り合う関係にないなど,当事者間の接触が困難な場合には,事件解決を目指す手段が事実上ないと言わざるを得ないケースも多数あります。そして,このような場合に有力な手段が自首です。

被害者側と接触ができないケースでは,自首以外に刑事処分の軽減を目指す積極的な選択肢がない,ということも珍しくありません。そのため,まずは自分にできる唯一の行動として,自首を検討することが望ましいでしょう。
また,自首をすれば,その後に被害者との解決を目指せる可能性が生じることもあり得ます。自首をきっかけに当事者間の解決へと至れば,同じく最も端的な解決につながりやすいでしょう。

ポイント
当事者間の解決が難しい場合,自首が唯一の手段である場合も
自首をきっかけに当事者間の解決ができるケースもあり得る

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

建造物侵入事件の自首は弁護士に依頼すべきか

建造物侵入事件で自首を検討する際には,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士の専門的な判断を踏まえるかどうかによって,結果は大きく変わりやすいところです。

弁護士への依頼によって,具体的には以下のようなメリットが見込まれます。

①個別の内容を踏まえた自首のメリットが分かる

建造物侵入事件では,自首が必要か不要か,自首にどのくらいのメリットがあるか,という点が個別のケースによって大きく異なる傾向にあります。特に,事件が発覚しているか不明である,犯人を特定する証拠の有無があるか不明である,といった場合には,自首に踏み切るか慎重な判断が望ましいです。また,自首の有無によってあまり結果が変わらない場合には,自首のデメリットも十分に理解した上で検討することが適切でしょう。

この点,弁護士に依頼することで,個別の事件内容や状況を踏まえた本件での自首のメリットを,正確に理解することが可能です。自首の判断に必要な材料を円滑に得られるため,適切な検討が容易になるでしょう。

②自首を行う際の負担が小さくなる

自首の試みは,当事者にとって大きな精神的負担を伴うものです。自らの犯罪行為を,捜査する警察などに自発的に申告するものである以上,一定の負担からは避けられません。もっとも,そのような精神的負担を理由に自首の判断を躊躇してしまうと,自首の機会を逃し,不利益な結果を招く原因になり得ます。

この点,弁護士に依頼することで,弁護士が主な対応を代わりに行ってくれるため,自首に伴う負担は大きく軽減することが見込まれます。また,自首の際に自分でするべき内容や範囲が明確になるため,適切な方法で自首を進めることも可能になります。

③逮捕の回避につながりやすくなる

自首を行う際の最初の目的は,逮捕の回避であることが大多数です。建造物侵入事件を起こしてしまい,放置していると逮捕のリスクが高いと考えられる場合に,自首することで積極的に逮捕の回避を目指す,という流れが一般的でしょう。
そのため,自首を行うに当たっては,自首により逮捕の回避が実現できるか,という点が非常に重要なポイントとなります。

この点,弁護士に依頼して自首を行うことで,逮捕の回避に適したやり方での自首が進められるため,自首による逮捕回避の効果がより高くなることが期待できます。また,弁護士が捜査機関と協議を試みながら,逮捕しないとの判断をより積極的に促すことも可能です。

④自首後の流れが事前に分かる

自首は,重要な分岐点であることは間違いないものの,捜査手続全体との関係ではあくまで出発点にとどまります。そのため,自首を行うに際しては,自首後に捜査が継続することを念頭に,その後の流れにも対応できるよう備えておくことが必要です。自首後の手続への対応が不適切だと,結果的に自首の効果が不十分なものとなってしまう恐れがあります。

この点,弁護士に依頼すれば,刑事手続の全体像や自首後の流れを具体的に把握することが可能です。また,手続の各局面において適切な対応方法について助言を受けることができ,対応を誤る心配もなくなるでしょう。

建造物侵入事件で自首をする場合の注意点

①動き出しが遅い場合のリスク

自首は,捜査機関に対して犯罪事実又は犯人が発覚していない段階で行うことが必要です。捜査が進行し,犯罪事実と犯人が特定されてしまうと,自首をする余地がなくなってしまいます。

建造物侵入事件の場合,現行犯で発覚したケースを除いて,事件が現に捜査されているかどうかを把握することは容易ではありません。そのため,当事者目線では捜査されていないと思っていたとしても,現実には捜査が大きく進んでおり,自首のできるタイムリミットが近づいている可能性は十分に考えられます。

自首の動き出しが遅れると,自首のタイミングを逃してしまうという可能性には十分に注意したいところです。

②捜査を誘発する可能性

建造物侵入事件は,被害者に知られないように行われる事件であるため,結果的に被害者が知らない状態であるという可能性もあります。この場合,被害者が捜査機関に相談することもないため,捜査が始まらないまま時間が経過している,ということになるでしょう。

このような場合に自首をするのは,自首が捜査のきっかけとなってしまい,自ら捜査を誘発することになってしまうため,あらかじめ注意することをお勧めします。自首を行う以上は,ある程度捜査を誘発するリスクも受け入れた上で試みる必要があるでしょうか。

③不起訴が約束されるわけではない

自首は,その事件が不起訴処分となる可能性を大きく高める行動です。そのため,実際に自首を行う場合にも,不起訴を最終的な目標としていることが少なくないでしょう。

もっとも,建造物侵入事件の場合,自首をしても不起訴が約束されるわけではなく,自首してもなお起訴される可能性が残る点には十分な注意が必要です。特に,事件の内容が悪質と評価されるケースでは,元々の刑事責任が重いため,自首によってそれが軽減されても不起訴には至らない,という可能性が大いに考えられます。

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【建造物侵入事件での呼び出し】逮捕されてしまうのか?出頭した方がいいのか?よくある疑問を弁護士が解説

このページでは,建造物侵入事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
建造物侵入事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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建造物侵入事件で呼び出された場合の対応法

①現行犯で取り締まりを受けた事件

現行犯で取り締まりを受けた建造物侵入事件では,現行犯の際に確認した内容を書面にするため,後日呼び出されることが見込まれます。呼び出した後は,事件の内容等を改めて口頭で確認し,「供述調書」という書面にすることが一般的です。

このようなケースでは,多くの場合事件の内容を争うことが難しいため,呼び出された際の質問への回答は,現行犯で確認された内容のとおりとするほかないのが通常です。被害者や目撃者,捜査機関などが現認した内容と矛盾する話はメリットがないため,ありのまま回答し,真摯な姿勢を見せるのが望ましいでしょう。

ただし,自分の記憶と反することまで認める姿勢を取る必要はありません。記憶と異なる話が出てきた場合には,自身の記憶する内容を明確に述べ,事実を明らかにするよう努めましょう。

ポイント
現認されているため,基本的に争う余地に乏しい
現行犯時の内容を確認する取り調べが一般的

②初めて呼び出しを受ける事件

建造物侵入事件で初めて呼び出しを受ける場合には,まず疑われている内容を把握し,認めるべき内容か認めるべきでない内容かを区別することが第一歩です。認めるべきか認めるべきでないかは,方針が180度変わるため極めて重要な判断になります。

もっとも,呼び出しの電話や出頭した後の会話において,警察官が疑いの内容をはっきりと告げてくれるケースはそれほど多くありません。疑いの内容は重要な捜査情報であって,安易には告げない警察官が多い傾向にあります。特に,疑いを認めない態度である場合には顕著に見られるところです。
そのため,疑いの内容として聴き取れる情報は断片的で限りあるものになりやすいことを念頭に,数少ない情報を聞き漏らさないよう努めることが有益でしょう。

ポイント
疑いの内容を把握し,認めるべきか認めないべきかを判断する
捜査機関からは断片的な情報しか得られにくい

③内容が記憶と異なる事件

事件の内容が一部記憶と異なる場合には,その相違点が犯罪の成否に影響するかどうか,という点が非常に重要となります。つまり,疑いの内容通りであれば犯罪が成立するものの,自分の記憶通りであれば犯罪が成立しない,という場合には,どちらが事実であるか,ということが極めて大きな問題となります。

そのため,まずは内容が記憶と異なる点を整理し,その相違がどのような争点に影響する問題なのかを把握したいところです。もし,犯罪の成否に影響しない内容であれば,その点を強調するあまり対応を誤ることは避ける必要がありますし,犯罪の成否に影響する内容であれば,争点であることをできるだけ早く明らかにし,慎重な犯罪捜査を求めることが適切です。

ポイント
犯罪の成否に影響する内容かを区別する

④全く心当たりのない事件

建造物侵入事件を疑われているものの,その内容に全く心当たりがないという場合,心当たりのない理由を明確にするとともに,疑いに対する認否の方針を明確にすることが重要です。

心当たりのない理由は,以下のいずれかであることが大多数です。

心当たりのない主な理由

・疑いと矛盾する記憶がある

・覚えていない

この点,疑いと矛盾する記憶がある場合には,その旨を毅然と述べ,否認の方針を取るべきです。自分の行っていない犯罪の責任を背負う必要は全くありません。
一方,覚えていないという場合には注意が必要です。例えば,「泥酔状態で全く覚えていないものの,自分が行ったと思われる」という場合に,ただ「覚えていない」と告げるのは,認めていないという態度となってしまい,考えと行動が整合しない結果となってしまいます。

記憶がないケースでは,そこで終わるのではなく,認めるかどうかの判断まで具体的に検討することが望ましいでしょう。

ポイント
心当たりのない理由を明確にする
認めるか否認するかを明確にする

建造物侵入事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

建造物侵入事件では,呼び出しに応じた際に逮捕されるという流れを辿ることは基本的に考えにくいです。逮捕を予定する事件であれば,呼び出すことなく不意打ち的に逮捕する方が証拠隠滅を予防できる点で有効であるため,あえて呼び出す方法は取られにくいでしょう。

もっとも,呼び出しに対する対応を誤ってしまうと,逮捕を招く結果となる場合は少なくありません。具体的には,以下のような場合に逮捕のリスクが高くなるでしょう。

呼び出し後に逮捕され得るケース

1.十分な応答が期待できない場合

2.捜査に対する妨害行為があった場合

3.被疑者遠方の場合

【1.十分な応答が期待できない場合】

呼び出しを行ったものの,満足に応答が得られず出頭の予定もまともに立てられない場合,呼び出しの方法では捜査協力が期待できないため,強制的に捜査する目的で逮捕される可能性が高くなります。

また,呼び出しの連絡を受けて出頭日時を決めたものの,その日時に出頭しなかった(予定をすっぽかした)という場合にも,同様に任意の捜査協力が期待できないとの判断につながりやすく,逮捕リスクが上昇しやすいでしょう。

【2.捜査に対する妨害行為があった場合】

捜査に対する妨害行為が確認された場合,逮捕しなければ更に捜査が妨害され,犯罪の立証に支障を来たす可能性があるため,逮捕の可能性が高くなりやすいところです。例えば,呼び出しの内容や捜査状況を知った後,それらを踏まえて必要になるであろう証拠を処分したような場合が挙げられます。

証拠隠滅行為自体は,他の人を巻き込まず個人で行う限りは犯罪ではありません。しかしながら,証拠隠滅行為が逮捕の原因になるかどうかは別の話であるため,注意が必要です。

【3.被疑者遠方の場合】

被疑者が遠方のため,呼び出しに応じて出頭してもらうことが期待できない場合には,逮捕の可能性が高くなり得ます。もっとも,遠方であるというのみの理由で逮捕に至るケースはそれほど多くありません。一般的には,遠方であることに加え,遠方であることを理由に捜査協力をしてくれないとの事情が見受けられる場合に限られやすいでしょう。

建造物侵入事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①取調べのため

建造物侵入事件の捜査では,取調べが非常に重要な位置づけとなります。犯罪の性質上,加害者しか知り得ない事項が非常に多いため,取調べを通じてそれらを把握することが,犯罪捜査の上で大きなポイントとなりやすいのです。
そのため,警察が呼び出す際には取調べ目的であることが最も多いでしょう。

取調べ目的での呼び出しは,捜査の比較的初期段階であることが通例です。まず呼び出しを行い,取調べをしてから,取調べの内容を踏まえて捜査方針を検討する,という流れが多く見られます。
初めて警察から電話があった,という場合には取調べ目的である可能性が高いと思われます。

②現場の実況見分を行うため

建造物侵入事件では,捜査の手段として事件現場の実況見分を行うことが多く見られます。実況見分とは,現場の状況や位置関係などを確認するための捜査で,多くの場合写真撮影をして「実況見分調書」又は「写真撮影報告書」といった捜査資料の作成を目的に行われます。

実況見分を行うための呼び出しは,取調べをある程度行った後であることが多く見られます。取調べの内容を,実況見分を通じて再度確認し,事件の明確化を図る動きが取られやすいでしょう。

③押収物を還付するため

建造物侵入事件の場合,犯罪事実の特定に必要な物的証拠が押収されることも少なくありません。当日の着衣,侵入に用いた道具,共犯者との連絡に用いた携帯端末など,事件の内容によって具体的な押収物は様々です。
そして,押収物に関する捜査が終了すると,押収物は還付(返還)されますが,還付のため呼び出しを受けることもあり得るところです。

還付目的の呼び出しは,捜査の終盤であることが通常です。押収物が捜査に必要なくなった,と判断できなければならないので,捜査はおおむね終了した段階である場合が多いでしょう。

④写真撮影・指紋採取等のため

刑事事件の運用上,被疑者として取り扱った人物の写真撮影や指紋採取,DNA型の採取などを行い,情報として保管することが広くなされています。そのため,写真撮影や指紋採取などのために呼び出される場合もあり得るでしょう。

このような呼び出しは,捜査の終了段階であることが通常です。捜査が一通り終了した後に,これらの個人情報の収集を行う流れが一般的です。

建造物侵入事件の呼び出しに応じたときの注意点

①建造物侵入罪に当たる行為を理解する

建造物侵入罪は,その対象となる範囲が必ずしも明確ではありません。同じ場所への出入りでも,状況や目的が異なれば建造物侵入罪に当たったり当たらなかったりすることは珍しくないところです。
そのため,どのような行為が建造物侵入罪に該当するのか,自分の行為は建造物侵入罪に該当するのか,という点は,法律の問題として正確に理解することをお勧めします。

具体的な判断は,弁護士の専門的な見解を仰ぐことが最も合理的です。自身で安易な判断をしないよう注意しましょう。

②対応方針の判断基準

呼び出しへの対応方針を決める基本的な基準は,認めるか認めないか,という点です。認める場合と認めない場合とでは,方針が真逆になることも多いため,認否を最初にはっきりさせることを強くお勧めします。

また,認める場合にも,求める結果や避けたいこと,主張したい内容の有無などによって,対応方針は枝分かれしていきます。この点の判断基準も,基本的には「全面的に認める」のか「一部だけ認めない」のか,といった点になりやすいため,認否を詳細に,具体的に検討することは非常に重要となります。

③身元引受人の要否

建造物侵入事件で呼び出された後,逮捕されずにいわゆる在宅事件として捜査を受ける際,身元引受人を求められる運用が広く用いられています。そのため,呼び出しを受けた段階で,今後身元引受人が必要となる可能性に注意することが望ましいでしょう。

身元引受人として適任なのは,基本的に同居家族です。呼び出しに応じた日の帰りに,警察から同居家族に電話連絡がなされ,身元引受の依頼が行われる,という流れが多いでしょう。
そのため,同居家族への発覚を避けたい場合には,事前に予防する対策が必要となります。一例として,事前に弁護士に依頼し,弁護士に身元引受人となってもらうことは有力な方法です。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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住居侵入罪の概要や緊急逮捕される可能性|逮捕後の流れや自首のポイントまで解説

「住居侵入で緊急逮捕されるケースってどんな状況?」
「逮捕されたらその後どうなるの?」

このような疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。

住居侵入は刑法で処罰対象となり、状況によっては現行犯や緊急逮捕に至ることがあります。

逮捕後は警察・検察による取り調べが行われ、勾留や起訴の可能性もあるため、該当する行為をしてしまった方は、まず事前に流れを理解しておくことが重要です。

本記事では、住居侵入罪の基礎知識を踏まえ、緊急逮捕に至る具体的なケースや逮捕後の手続きの流れなどを詳しく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

住居侵入罪とは

住居侵入罪とは、他人の意思に反してその占有する住居や建物などに立ち入る行為を処罰する犯罪であり、刑法第130条に規定されています。

刑法第130条

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
引用:e-Gov法令検索「刑法」

ここでは、その基本的な内容を確認していきましょう。

刑罰内容

刑罰内容は、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」と定められており、罪の重さは状況や侵入の態様によって変わります。

たとえば、悪意をもって侵入した場合や、その行為に他の犯罪(窃盗や暴行など)が結びついている場合には、裁判においてより重く処罰される可能性が高まります。

逆に初犯であり深刻な被害が生じていない場合には、略式命令による罰金刑で処理されるケースも少なくありません。

さらに、刑罰の判断には「侵入の経緯」や「被害者との関係性」も考慮されます。

実際に逮捕された後の処遇は、取り調べや検察の判断次第で大きく変わるため、刑罰内容を正しく理解しておくことは重要です。

住居侵入罪が成立する要件

住居侵入罪が成立するには、いくつかの要件を満たす必要があります。第一に「住居等への侵入行為」が存在することです。

ここでの「侵入」とは、物理的に建物内に入ることに限らず、住人の意思に反して立ち入ること全般を指します。

たとえば、オートロックのマンションに無断で入り込む行為や、退去を求められても居座り続ける行為も含まれます。

第二に「正当な理由がないこと」が必要です。宅配業者や警察官が職務で住居に立ち入る場合は、当然ながら正当な理由が認められ、罪にはなりません。

一方で、個人的な興味や好奇心だけで立ち入った場合は、たとえ短時間でも住居侵入罪が成立します。

第三に「住人の承諾がないこと」が前提となりますが、明示的な拒絶がなくても、住人の意思に反していると認められれば成立します。

住居侵入事件で緊急逮捕される可能性

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

住居侵入事件で緊急逮捕以外の逮捕方法

現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

緊急逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

緊急逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

住居侵入事件で逮捕を避ける方法

①被害者への謝罪や賠償

建造物侵入事件で逮捕される場合,被害者が警察などに捜査を求めることで捜査が始まり,被害者の求めで捜査を行った警察によって逮捕される,という流れが通常です。裏を返せば,被害者が捜査を求めなかった場合,警察が捜査を始めることもなく,逮捕にも至らない,という流れになることが見込まれます。

そのため,被害者への謝罪や金銭賠償によって,被害者が捜査を求めない,との判断をすることがあれば,それは最も端的な逮捕回避の方法と言えます。捜査の開始自体を未然に防ぐこともできるため,刑事罰を受けたり前科が付いたりすることもなくなります。

②自首

建造物侵入事件では,当事者間で直接連絡を取れる状況や関係にない場合も多いため,被害者との解決を事前に図るのが困難な場合も少なくありません。このように被害者へのアプローチが難しい場合に有力な試みが自首です。
自首は,自らの犯罪行為を捜査機関に告げ,自分への捜査を求める動きです。そのため,自首後に捜査妨害が生じるとは考えにくく,逮捕の必要性が低いと判断される大きな材料となり得ます。

なお,自首は犯罪事実又は犯人が捜査機関に知られていない段階で行うことが必要です。時期が遅れると自首が成立しない可能性もあるため,極力速やかな検討と行動が有力と言えます。

③適切な取調べ対応

既に警察の取り調べを受けている事件では,取調べに対して適切な対応を尽くすことによって逮捕の回避を目指す動きも有力です。

取調べは,捜査の中核となるものであり,取調べが円滑に進むかどうかは捜査の進行にとって極めて重要な問題となります。そのため,被疑者の真摯な協力によって取調べが円滑に進行する場合,被疑者を逮捕しなくても捜査に支障はない(=逮捕は必要ない)との判断を得られやすくなるのです。

具体的な取調べ対応としては,質問に対して回答を拒否せずありのまま答える,求められた証拠物の提供などには迅速に応じる,といった動きが有力でしょう。

住居侵入事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

建造物侵入事件の逮捕については,弁護士に依頼の上,弁護士の専門的な見解を仰ぎながら検討・判断することが適切です。逮捕されるかどうかは非常に重要な問題であるため,取るべき手段は逃さず実行することをお勧めします。
弁護士への依頼によって,具体的には以下のようなメリットが見込まれます。

①事件の重大性を判断してもらえる

建造物侵入事件が逮捕されるかどうかは,事件の重大性が非常に大きな基準となりやすいところです。事件が重大であれば逮捕するが,それほど重大でなければ逮捕しない,と言っても過言ではありません。そのため,事件の重大性を正しく把握することは,対応の第一歩と言えます。

この点,弁護士に依頼することで,事件の重大性がどの程度か,それが逮捕の有無にどのような判断を及ぼすか,といった見通しを,正確に理解することができます。また,事件の重大性に応じた対処法についても,弁護士の助言を受けることができるでしょう。

②逮捕を防ぐために必要な動きを判断してもらえる

逮捕を防ぐためにどのような動きが必要か,どのような動きが有益か,という点は,具体的な事件の内容や状況によって大きく異なります。自分の力で一般論だけを収集できても,それが自分の事件に当てはまるのか分からなければ,現実に適切な動きを取ることは困難です。

この点,弁護士に依頼することで,個別の事件を踏まえた逮捕回避策を具体的に検討してもらうことが可能です。また,実際にそれらの行動を起こす際にも,弁護士とともに進めることで適切に行うことができるでしょう。

③被害者との解決を目指すことができる

建造物侵入事件は,具体的な被害者が存在する事件です。そのため,被害者がどのような意向であるか,という点は逮捕の有無に大きな影響を及ぼします。特に,被害者との間で解決済みである場合,その後に逮捕される可能性は現実的になくなるため,被害者との解決は極めて重要なポイントと言えます。

この点,弁護士に依頼することで,被害者との解決を具体的に目指すことが可能になります。通常,弁護士を窓口にしなければ被害者側への接触は難しいため,弁護士の存在は当事者間の解決に不可欠と言えるでしょう。

住居侵入事件で緊急逮捕に関する注意点

①現行犯逮捕の可能性

建造物侵入事件は,現行犯で発覚した場合,直ちに現行犯逮捕されるケースが多く見られます。事件の性質上,犯人が逃亡しやすく,逃亡後に必要な証拠を隠滅されてしまうと,証拠収集が困難になりやすいためです。

この点,現行犯逮捕となってしまうと,逮捕を回避する余地が事実上存在しないことが考えられる点には注意が必要です。逮捕の回避が困難な場合には,速やかに早期釈放を目指す方針に転換することが有力であるため,逮捕を受けて頭が真っ白になってしまわないよう,ご家族の方などが少しでも早く弁護士に相談することをお勧めします。

②逮捕後の拘束期間

建造物侵入事件の場合,逮捕後の拘束期間に複数の可能性があります。2~3日のうちに釈放され,いわゆる在宅事件に切り替わりやすいケースもあれば,20日間の勾留が避けられないケースも珍しくはありません。
これらのケースの違いは,建造物侵入事件に精通した弁護士であれば区別・判断が可能ですが,そうでないとなかなか見通すことはできないでしょう。

逮捕された場合には,本件が早期釈放の見込まれるケースか,20日勾留が見込まれるケースか,できるだけ正確に把握できるよう注意したいところです。見通しによって対応方針が変わるため,非常に重要なポイントと言えます。

③逮捕と前科の関係

逮捕は非常に重大な出来事ではありますが,逮捕されたからと言って前科が付くわけではありません。前科は,刑罰を受けた経歴を指すもので,事件が起訴され刑罰の対象となったときに付きますが,逮捕は起訴するかどうかを決める捜査手続の一つにとどまります。つまり,逮捕などをして捜査した結果,起訴されるかどうかが決まり,起訴された場合にのみ前科が付くのです。

そのため,逮捕された場合であっても,前科が付くと決めつけることなく,前科を避けるための手段をできる限り講じるよう注意することをお勧めします。具体的な対応は,弁護士に相談し,アドバイスを受けましょう。

住居侵入事件で警察から呼び出しを受けたときのポイント

住居侵入事件で呼び出された場合の対応法

①現行犯で取り締まりを受けた事件

現行犯で取り締まりを受けた建造物侵入事件では,現行犯の際に確認した内容を書面にするため,後日呼び出されることが見込まれます。呼び出した後は,事件の内容等を改めて口頭で確認し,「供述調書」という書面にすることが一般的です。

このようなケースでは,多くの場合事件の内容を争うことが難しいため,呼び出された際の質問への回答は,現行犯で確認された内容のとおりとするほかないのが通常です。被害者や目撃者,捜査機関などが現認した内容と矛盾する話はメリットがないため,ありのまま回答し,真摯な姿勢を見せるのが望ましいでしょう。

ただし,自分の記憶と反することまで認める姿勢を取る必要はありません。記憶と異なる話が出てきた場合には,自身の記憶する内容を明確に述べ,事実を明らかにするよう努めましょう。

ポイント
現認されているため,基本的に争う余地に乏しい
現行犯時の内容を確認する取り調べが一般的

②初めて呼び出しを受ける事件

建造物侵入事件で初めて呼び出しを受ける場合には,まず疑われている内容を把握し,認めるべき内容か認めるべきでない内容かを区別することが第一歩です。認めるべきか認めるべきでないかは,方針が180度変わるため極めて重要な判断になります。

もっとも,呼び出しの電話や出頭した後の会話において,警察官が疑いの内容をはっきりと告げてくれるケースはそれほど多くありません。疑いの内容は重要な捜査情報であって,安易には告げない警察官が多い傾向にあります。特に,疑いを認めない態度である場合には顕著に見られるところです。
そのため,疑いの内容として聴き取れる情報は断片的で限りあるものになりやすいことを念頭に,数少ない情報を聞き漏らさないよう努めることが有益でしょう。

ポイント
疑いの内容を把握し,認めるべきか認めないべきかを判断する
捜査機関からは断片的な情報しか得られにくい

③内容が記憶と異なる事件

事件の内容が一部記憶と異なる場合には,その相違点が犯罪の成否に影響するかどうか,という点が非常に重要となります。つまり,疑いの内容通りであれば犯罪が成立するものの,自分の記憶通りであれば犯罪が成立しない,という場合には,どちらが事実であるか,ということが極めて大きな問題となります。

そのため,まずは内容が記憶と異なる点を整理し,その相違がどのような争点に影響する問題なのかを把握したいところです。もし,犯罪の成否に影響しない内容であれば,その点を強調するあまり対応を誤ることは避ける必要がありますし,犯罪の成否に影響する内容であれば,争点であることをできるだけ早く明らかにし,慎重な犯罪捜査を求めることが適切です。

ポイント
犯罪の成否に影響する内容かを区別する

④全く心当たりのない事件

建造物侵入事件を疑われているものの,その内容に全く心当たりがないという場合,心当たりのない理由を明確にするとともに,疑いに対する認否の方針を明確にすることが重要です。

心当たりのない理由は,以下のいずれかであることが大多数です。

心当たりのない主な理由

・疑いと矛盾する記憶がある

・覚えていない

この点,疑いと矛盾する記憶がある場合には,その旨を毅然と述べ,否認の方針を取るべきです。自分の行っていない犯罪の責任を背負う必要は全くありません。
一方,覚えていないという場合には注意が必要です。例えば,「泥酔状態で全く覚えていないものの,自分が行ったと思われる」という場合に,ただ「覚えていない」と告げるのは,認めていないという態度となってしまい,考えと行動が整合しない結果となってしまいます。

記憶がないケースでは,そこで終わるのではなく,認めるかどうかの判断まで具体的に検討することが望ましいでしょう。

ポイント
心当たりのない理由を明確にする
認めるか否認するかを明確にする

住居侵入事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

建造物侵入事件では,呼び出しに応じた際に逮捕されるという流れを辿ることは基本的に考えにくいです。逮捕を予定する事件であれば,呼び出すことなく不意打ち的に逮捕する方が証拠隠滅を予防できる点で有効であるため,あえて呼び出す方法は取られにくいでしょう。

もっとも,呼び出しに対する対応を誤ってしまうと,逮捕を招く結果となる場合は少なくありません。具体的には,以下のような場合に逮捕のリスクが高くなるでしょう。

呼び出し後に逮捕され得るケース

1.十分な応答が期待できない場合

2.捜査に対する妨害行為があった場合

3.被疑者遠方の場合

【1.十分な応答が期待できない場合】

呼び出しを行ったものの,満足に応答が得られず出頭の予定もまともに立てられない場合,呼び出しの方法では捜査協力が期待できないため,強制的に捜査する目的で逮捕される可能性が高くなります。

また,呼び出しの連絡を受けて出頭日時を決めたものの,その日時に出頭しなかった(予定をすっぽかした)という場合にも,同様に任意の捜査協力が期待できないとの判断につながりやすく,逮捕リスクが上昇しやすいでしょう。

【2.捜査に対する妨害行為があった場合】

捜査に対する妨害行為が確認された場合,逮捕しなければ更に捜査が妨害され,犯罪の立証に支障を来たす可能性があるため,逮捕の可能性が高くなりやすいところです。例えば,呼び出しの内容や捜査状況を知った後,それらを踏まえて必要になるであろう証拠を処分したような場合が挙げられます。

証拠隠滅行為自体は,他の人を巻き込まず個人で行う限りは犯罪ではありません。しかしながら,証拠隠滅行為が逮捕の原因になるかどうかは別の話であるため,注意が必要です。

【3.被疑者遠方の場合】

被疑者が遠方のため,呼び出しに応じて出頭してもらうことが期待できない場合には,逮捕の可能性が高くなり得ます。もっとも,遠方であるというのみの理由で逮捕に至るケースはそれほど多くありません。一般的には,遠方であることに加え,遠方であることを理由に捜査協力をしてくれないとの事情が見受けられる場合に限られやすいでしょう。

建造物侵入事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①取調べのため

建造物侵入事件の捜査では,取調べが非常に重要な位置づけとなります。犯罪の性質上,加害者しか知り得ない事項が非常に多いため,取調べを通じてそれらを把握することが,犯罪捜査の上で大きなポイントとなりやすいのです。
そのため,警察が呼び出す際には取調べ目的であることが最も多いでしょう。

取調べ目的での呼び出しは,捜査の比較的初期段階であることが通例です。まず呼び出しを行い,取調べをしてから,取調べの内容を踏まえて捜査方針を検討する,という流れが多く見られます。
初めて警察から電話があった,という場合には取調べ目的である可能性が高いと思われます。

②現場の実況見分を行うため

建造物侵入事件では,捜査の手段として事件現場の実況見分を行うことが多く見られます。実況見分とは,現場の状況や位置関係などを確認するための捜査で,多くの場合写真撮影をして「実況見分調書」又は「写真撮影報告書」といった捜査資料の作成を目的に行われます。

実況見分を行うための呼び出しは,取調べをある程度行った後であることが多く見られます。取調べの内容を,実況見分を通じて再度確認し,事件の明確化を図る動きが取られやすいでしょう。

③押収物を還付するため

建造物侵入事件の場合,犯罪事実の特定に必要な物的証拠が押収されることも少なくありません。当日の着衣,侵入に用いた道具,共犯者との連絡に用いた携帯端末など,事件の内容によって具体的な押収物は様々です。
そして,押収物に関する捜査が終了すると,押収物は還付(返還)されますが,還付のため呼び出しを受けることもあり得るところです。

還付目的の呼び出しは,捜査の終盤であることが通常です。押収物が捜査に必要なくなった,と判断できなければならないので,捜査はおおむね終了した段階である場合が多いでしょう。

④写真撮影・指紋採取等のため

刑事事件の運用上,被疑者として取り扱った人物の写真撮影や指紋採取,DNA型の採取などを行い,情報として保管することが広くなされています。そのため,写真撮影や指紋採取などのために呼び出される場合もあり得るでしょう。

このような呼び出しは,捜査の終了段階であることが通常です。捜査が一通り終了した後に,これらの個人情報の収集を行う流れが一般的です。

住居侵入事件の呼び出しに応じたときの注意点

①建造物侵入罪に当たる行為を理解する

建造物侵入罪は,その対象となる範囲が必ずしも明確ではありません。同じ場所への出入りでも,状況や目的が異なれば建造物侵入罪に当たったり当たらなかったりすることは珍しくないところです。
そのため,どのような行為が建造物侵入罪に該当するのか,自分の行為は建造物侵入罪に該当するのか,という点は,法律の問題として正確に理解することをお勧めします。

具体的な判断は,弁護士の専門的な見解を仰ぐことが最も合理的です。自身で安易な判断をしないよう注意しましょう。

②対応方針の判断基準

呼び出しへの対応方針を決める基本的な基準は,認めるか認めないか,という点です。認める場合と認めない場合とでは,方針が真逆になることも多いため,認否を最初にはっきりさせることを強くお勧めします。

また,認める場合にも,求める結果や避けたいこと,主張したい内容の有無などによって,対応方針は枝分かれしていきます。この点の判断基準も,基本的には「全面的に認める」のか「一部だけ認めない」のか,といった点になりやすいため,認否を詳細に,具体的に検討することは非常に重要となります。

③身元引受人の要否

建造物侵入事件で呼び出された後,逮捕されずにいわゆる在宅事件として捜査を受ける際,身元引受人を求められる運用が広く用いられています。そのため,呼び出しを受けた段階で,今後身元引受人が必要となる可能性に注意することが望ましいでしょう。

身元引受人として適任なのは,基本的に同居家族です。呼び出しに応じた日の帰りに,警察から同居家族に電話連絡がなされ,身元引受の依頼が行われる,という流れが多いでしょう。
そのため,同居家族への発覚を避けたい場合には,事前に予防する対策が必要となります。一例として,事前に弁護士に依頼し,弁護士に身元引受人となってもらうことは有力な方法です。

住居侵入事件における自首のコツ

住居侵入事件で自首をするべき場合

①現場で姿を見られている場合

建造物侵入事件で自首が有力になるのは,事件の捜査が行われ,自身が加害者(犯人)として特定されることが見込まれる場合です。そして,建造物侵入事件で加害者が特定されやすいケースの代表例が,事件現場で他人に姿を見られている場合と言えます。
特に,被害者に目撃されている場合,被害者が警察等の捜査を求めない可能性は非常に低いため,捜査が開始され,犯人の特定に至りやすい状況と考えられるでしょう。

そのため,事件の現場で姿を見られている場合には,後の捜査を想定し,自首を行うことが非常に有力です。

また,現場から離れたところで姿を見られた,事件が発覚した後に人とすれ違った,といった場合も,類似の捜査リスクがあり得る状況と言えます。自身が犯人と特定される可能性がうかがわれる場合には,自首を検討することをお勧めします。

ポイント
加害者が特定されやすいため自首が有力
特に被害者に目撃された場合,捜査されない可能性が低い

②侵入行為が被害者側に知られている場合

建造物が商業施設であるなど,不特定多数者の出入りを想定した場所である場合,侵入被害があったことを広く告知している場合があります。そのように,侵入行為が被害者側に知られていることが明らかであるときには,自首が有力です。

被害者側が事件の発生を告知している場合,既に警察等に相談の上,刑事事件の捜査が開始されている可能性が高く見込まれます。そのため,事件が発覚しないまま,捜査されないまま終了することが考えにくく,後の捜査に備えた自首の検討が望ましい状況と言えるでしょう。

ポイント
商業施設などは,被害を広く告知している場合がある
被害を告知している段階では,捜査が始まっている可能性が高い

③反省の意思を積極的に示したい場合

建造物侵入事件は,最終的な刑事処分に対して反省の意思が影響するケースも多く見られます。特に,事件の内容・程度があまりに重大とは言えない場合であれば,深い反省を理由に不起訴処分とされることも考えられるところです。

この点,反省の意思を積極的に示したい場合の有力な方法が,自首です。自首は,深い反省のない人が行うことの考えにくい行動であるため,自首したという事実を深い反省の根拠と理解してもらえることが見込まれるでしょう。
また,反省の意思を示したい場合には,自首後の捜査対応にも気を配ることが適切です。真摯な捜査協力の姿勢があることで,反省の意思はより強く伝わることが期待できます。

ポイント
建造物侵入事件は,深い反省を理由に不起訴処分とされることもある
自首やその後の捜査協力を通じて,反省の意思を表明することが有力

④被害者側への接触が困難な場合

建造物侵入事件の場合,被害者と連絡を取り合うなどでき,当事者間の合意で事件解決できるのであれば,それが最も端的な解決策です。当事者間で解決した後に自首をする必要は基本的にないと言えます。
逆に,被害者と連絡を取り合う関係にないなど,当事者間の接触が困難な場合には,事件解決を目指す手段が事実上ないと言わざるを得ないケースも多数あります。そして,このような場合に有力な手段が自首です。

被害者側と接触ができないケースでは,自首以外に刑事処分の軽減を目指す積極的な選択肢がない,ということも珍しくありません。そのため,まずは自分にできる唯一の行動として,自首を検討することが望ましいでしょう。
また,自首をすれば,その後に被害者との解決を目指せる可能性が生じることもあり得ます。自首をきっかけに当事者間の解決へと至れば,同じく最も端的な解決につながりやすいでしょう。

ポイント
当事者間の解決が難しい場合,自首が唯一の手段である場合も
自首をきっかけに当事者間の解決ができるケースもあり得る

住居侵入事件の自首は弁護士に依頼すべきか

建造物侵入事件で自首を検討する際には,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士の専門的な判断を踏まえるかどうかによって,結果は大きく変わりやすいところです。

弁護士への依頼によって,具体的には以下のようなメリットが見込まれます。

①個別の内容を踏まえた自首のメリットが分かる

建造物侵入事件では,自首が必要か不要か,自首にどのくらいのメリットがあるか,という点が個別のケースによって大きく異なる傾向にあります。特に,事件が発覚しているか不明である,犯人を特定する証拠の有無があるか不明である,といった場合には,自首に踏み切るか慎重な判断が望ましいです。また,自首の有無によってあまり結果が変わらない場合には,自首のデメリットも十分に理解した上で検討することが適切でしょう。

この点,弁護士に依頼することで,個別の事件内容や状況を踏まえた本件での自首のメリットを,正確に理解することが可能です。自首の判断に必要な材料を円滑に得られるため,適切な検討が容易になるでしょう。

②自首を行う際の負担が小さくなる

自首の試みは,当事者にとって大きな精神的負担を伴うものです。自らの犯罪行為を,捜査する警察などに自発的に申告するものである以上,一定の負担からは避けられません。もっとも,そのような精神的負担を理由に自首の判断を躊躇してしまうと,自首の機会を逃し,不利益な結果を招く原因になり得ます。

この点,弁護士に依頼することで,弁護士が主な対応を代わりに行ってくれるため,自首に伴う負担は大きく軽減することが見込まれます。また,自首の際に自分でするべき内容や範囲が明確になるため,適切な方法で自首を進めることも可能になります。

③逮捕の回避につながりやすくなる

自首を行う際の最初の目的は,逮捕の回避であることが大多数です。建造物侵入事件を起こしてしまい,放置していると逮捕のリスクが高いと考えられる場合に,自首することで積極的に逮捕の回避を目指す,という流れが一般的でしょう。
そのため,自首を行うに当たっては,自首により逮捕の回避が実現できるか,という点が非常に重要なポイントとなります。

この点,弁護士に依頼して自首を行うことで,逮捕の回避に適したやり方での自首が進められるため,自首による逮捕回避の効果がより高くなることが期待できます。また,弁護士が捜査機関と協議を試みながら,逮捕しないとの判断をより積極的に促すことも可能です。

④自首後の流れが事前に分かる

自首は,重要な分岐点であることは間違いないものの,捜査手続全体との関係ではあくまで出発点にとどまります。そのため,自首を行うに際しては,自首後に捜査が継続することを念頭に,その後の流れにも対応できるよう備えておくことが必要です。自首後の手続への対応が不適切だと,結果的に自首の効果が不十分なものとなってしまう恐れがあります。

この点,弁護士に依頼すれば,刑事手続の全体像や自首後の流れを具体的に把握することが可能です。また,手続の各局面において適切な対応方法について助言を受けることができ,対応を誤る心配もなくなるでしょう。

住居侵入事件で自首をする場合の注意点

①動き出しが遅い場合のリスク

自首は,捜査機関に対して犯罪事実又は犯人が発覚していない段階で行うことが必要です。捜査が進行し,犯罪事実と犯人が特定されてしまうと,自首をする余地がなくなってしまいます。

建造物侵入事件の場合,現行犯で発覚したケースを除いて,事件が現に捜査されているかどうかを把握することは容易ではありません。そのため,当事者目線では捜査されていないと思っていたとしても,現実には捜査が大きく進んでおり,自首のできるタイムリミットが近づいている可能性は十分に考えられます。

自首の動き出しが遅れると,自首のタイミングを逃してしまうという可能性には十分に注意したいところです。

②捜査を誘発する可能性

建造物侵入事件は,被害者に知られないように行われる事件であるため,結果的に被害者が知らない状態であるという可能性もあります。この場合,被害者が捜査機関に相談することもないため,捜査が始まらないまま時間が経過している,ということになるでしょう。

このような場合に自首をするのは,自首が捜査のきっかけとなってしまい,自ら捜査を誘発することになってしまうため,あらかじめ注意することをお勧めします。自首を行う以上は,ある程度捜査を誘発するリスクも受け入れた上で試みる必要があるでしょうか。

③不起訴が約束されるわけではない

自首は,その事件が不起訴処分となる可能性を大きく高める行動です。そのため,実際に自首を行う場合にも,不起訴を最終的な目標としていることが少なくないでしょう。

もっとも,建造物侵入事件の場合,自首をしても不起訴が約束されるわけではなく,自首してもなお起訴される可能性が残る点には十分な注意が必要です。特に,事件の内容が悪質と評価されるケースでは,元々の刑事責任が重いため,自首によってそれが軽減されても不起訴には至らない,という可能性が大いに考えられます。

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【建造物侵入事件の不起訴処分】不起訴となる可能性や不起訴を目指す際の注意事項などを詳細解説

このページでは,建造物侵入事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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建造物侵入事件で不起訴を目指す方法

①被害者との示談

建造物侵入事件では,被害者である建造物の管理者との間で示談を目指すことが不起訴に至るための非常に有力な方法です。建造物侵入事件の刑事処分は,被害者の意向を大きく反映したものになるため,被害者が起訴を望まないケースでは,不起訴処分とされることが多くなる傾向にあります。

被害者との示談は,侵入行為によって被害者に生じた損害を金銭等で賠償し,賠償と引き換えにする形で被害者の宥恕(ゆうじょ=許し)を獲得する,という内容になるのが通常です。被害者による宥恕が,刑事処分においては極めて重要な意味を持つため,示談は宥恕の獲得を目指す行動だと言っても過言ではないでしょう。
被害者の宥恕がある場合,被害者が加害者の起訴を希望していないと理解されるため,不起訴が見込まれやすくなります。

ポイント
被害者が起訴を望まない場合,不起訴になりやすい
示談により宥恕の獲得を目指すのが重要

②捜査機関への自首

被害者との間で解決することが難しい場合,自分の行動で刑事処分の軽減を目指せる手段としては自首が有力です。自首は,捜査機関に対し,自ら進んで犯罪事実を申告し,捜査や処分を求める行為であるため,深い反省の意思が認められやすくなり,反省状況を踏まえた不起訴処分の可能性が高くなります。

建造物侵入事件の場合,被害者が誰かを特定できない場合や,被害者が分かっても接触する方法に乏しい場合が少なくありません。その場合,自首以外に積極的な行動の選択肢がない,ということも多いため,自首が有力になるでしょう。

ポイント
自首により深い反省の意思を踏まえた不起訴処分の可能性が高くなる
自首以外に積極的な行動の選択肢がない場合も多い

③否認事件の場合

建造物侵入事件で疑いの内容を否認するケースでは,犯罪の立証ができないことを理由とした不起訴処分を目指すことが適切です。具体的にどのような場合で犯罪の立証ができないと判断されるか,という点は個別の内容によりますが,建造物侵入事件で生じやすい争点としては,以下のような例が挙げられます。

否認の建造物侵入事件で生じやすい争点

・犯人性
→侵入した人物が誰か,という点

・故意
→建造物侵入行為を行った意思があるか,という点

・被害者の承諾
→建造物の管理者が侵入を認めたか,という点

具体的な争点に対してどのような対応が適切かは,専門的な判断が不可欠であるため,弁護士に相談,依頼などし,法的な見解を仰ぐことをお勧めします。

ポイント
犯罪の立証ができないことを理由にした不起訴処分を目指す
具体的な対応方針は弁護士の判断を仰ぐ

建造物侵入事件で不起訴になる可能性

建造物侵入事件は,不起訴処分となる可能性も十分に考えられる事件類型です。刑事事件の中では,決して重大な事件というわけではないため,比較的軽微と評価される事件では,より不起訴の余地が大きいと言えるでしょう。

不起訴になるかどうかは,事件そのものの内容と,事件後の対応の両面を踏まえて判断されますが,事件そのものの内容として不起訴の可能性が高くなりやすい場合としては,以下のケースが挙げられます。

建造物侵入事件で不起訴の可能性が高くなるケース

1.不特定多数者が出入りできる場所への侵入

2.侵入後に別の犯罪行為がない

3.侵入の動機が悪質でない

4.1回きりの事件

【1.不特定多数者が出入りできる場所への侵入】

侵入場所が不特定多数者の出入りできるところであった場合,侵入行為の重大性は比較的軽微と判断されるのが通常です。立ち入ることのできる人が少ない場所であればあるほど,侵入行為による被害者の損害が大きいと評価されるためです。

【2.侵入後に別の犯罪行為がない】

建造物への侵入後,窃盗やわいせつ行為といった別の犯罪行為を行っている場合,事件の重大性は飛躍的に大きくなるため,不起訴の可能性は低くなりやすいです。逆に,侵入行為はあったもののその後に別の犯罪行為を何もしていない,という場合は,比較的軽微な事件と理解されやすく,不起訴の可能性が高くなり得ます。

【3.侵入の動機が悪質でない】

侵入行為に至った動機が,同情の余地のない身勝手なものなのか,当事者の判断としてはやむを得ない面のあるものか,という点は,刑事責任の重さに大きく影響することが通常です。
確かに侵入行為はあったものの,その動機が悪質でなく,同情すべき事情も認められる場合には,刑事責任は比較的軽微と評価され,不起訴の可能性が高くなります。

【4.1回きりの事件】

建造物侵入事件は,複数件発生しているケースが比較的多い事件類型です。特に,同一の建造物に複数回侵入するケースが散見されるため,侵入が1回のみか複数回かという点は,事件の重大さに大きく影響し得るところです。
1回きりの建造物侵入事件である場合,事件の重大さが限定的であるとの理解がされやすく,不起訴の可能性が高くなる傾向にあると言えます。

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません。

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます。

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

建造物侵入事件で不起訴を目指す場合の注意点

①形式的な被害者と実質的な被害者

建造物侵入事件の場合,法律上の被害者は建造物の管理権限を持つ人です。ビルであればオーナー,店舗であれば運営会社などが代表的でしょう。

もっとも,事件の内容によっては,法律上の形式的な被害者と実質的な被害者が異なるケースも多く見られます。例えば,建造物のお手洗いに入った後,窃盗事件や盗撮事件などを起こした,という場合,窃盗や盗撮目的での立入は建造物侵入罪に該当する可能性が高いものの,事件全体を見ると実質的な被害者は窃盗や盗撮の被害に遭った人物です。この場合,形式的な被害者である建造物の管理権者とのみ解決を目指してもあまり有益ではなく,実質的な被害者との解決を目指すことが望ましいと言えます。

形式的な被害者としても,実質的な被害者の方と解決してくれればそれでよい,と考えている場合が多いため,実質的な被害者へのアプローチを優先することを強くお勧めします。

②余罪と不起訴の関係

建造物侵入事件では,余罪のあることも一定数見られます。そして,余罪の存在は,以下のような形で起訴不起訴の判断に影響し得ます。

・余罪自体が起訴される
→本罪が不起訴となっても,それとは別に余罪が起訴され,全体として不起訴が実現できない

・余罪があることを踏まえて本罪が起訴される
→本罪の刑事責任の重さを考慮する材料として,余罪のあることが加味され,本罪が起訴される

余罪自体が処分の対象になるのか,余罪を踏まえて本罪の処分が変わるのか,という違いと言えます。
どちらであるかによって,不起訴を目指す具体的な方法は大きく変わる可能性があるため,余罪がある場合には弁護士の法的な判断を仰ぐのが賢明です。

③共犯事件の場合

建造物侵入事件の場合,単独犯でなくいわゆる共犯の事件も一定数見られますが,共犯事件のケースでは,個々の役割が刑事処分に大きな影響を及ぼす,という点に注意することが重要です。

共犯事件では,共犯者間の役割の違いによって,起訴不起訴の判断が分かれやすい傾向にあります。主導的な役割を担っている方が起訴されやすく,周辺,末端の位置づけにある方が不起訴とされやすい,というのが基本的な考え方です。

そのため,共犯事件で不起訴を目指す場合には,実際の役割以上に中心的存在だったと評価されることのないよう,自身の立ち位置を正確に把握してもらうことが重要になるでしょう。

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【埼玉大宮で建造物侵入事件の弁護士選び】円滑解決に有益な弁護士はどんな基準で選べばいいのか,弁護士が解説

このページでは,建造物侵入事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

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建造物侵入事件で弁護士を選ぶタイミング

①逮捕されたとき

建造物侵入事件は,特に侵入行為が現行犯で発覚した場合に,逮捕の対象となる可能性が高い事件類型です。逮捕されると,短い場合には1~3日程度,長い場合には1件当たり20日以上の身柄拘束を受ける可能性があります。
逮捕後の身柄拘束が長くなるかどうかは,個別の事件により異なりますが,建造物侵入事件では,その程度があまりに大きいものでなければ,短い期間で釈放されるケースも決して少なくはありません。そのため,早期釈放の試みを尽くすことは,逮捕後の非常に重要な動きと言えます。

しかしながら,逮捕後に釈放を目指すための具体的な動きは,弁護士なしでは困難なものです。逮捕直後には弁護士しか被疑者と接見できないことが通常であるため,本人とのコミュニケーションも弁護士に限られる上,釈放を求めるための法的な手段も,刑事手続に精通した弁護士でなければ実行することは難しいでしょう。

そのため,建造物侵入事件で逮捕されたときには,早期釈放を目指すためにも,速やかに弁護士を選ぶことが望ましいと言えます。

ポイント
建造物侵入事件は,逮捕後に早期釈放される場合も少なくない

②出頭要請を受けたとき

建造物侵入事件の捜査は,後日に警察から出頭要請を受ける形で行われる場合も多く見られます。この出頭要請は,事件の被疑者に対する取り調べを行う目的で,警察署への出頭を求めるため行われるものです。
そのため,出頭要請を受けたときには,その後に見込まれる取調べに備え,対応方針を十分に検討しておく必要があります。

しかしながら,出頭後の取り調べに対してどのように対応するのが適切かを自分の力で整理するのは容易でありません。取り調べを受けた経験のある人でなければ,取り調べがどのように行われるかを想像することも困難でしょう。
そこで,出頭要請を受けて取り調べの予定が明らかになったタイミングで,弁護士を選ぶことが有力な選択肢になります。適切な弁護士選びができれば,出頭時の対応が万全になるほか,その後の弁護活動も充実したものになるでしょう。

ポイント
警察の出頭要請は,警察署で取り調べを行う目的で行われる

③起訴されたとき

建造物侵入事件で起訴された場合,公開の法廷での裁判(公判)の対象となる可能性があります。公判が行われるケースでは,公判で提出された証拠や当事者の話などを踏まえ,裁判所が判決の内容を決めることとなります。

建造物侵入罪に対する判決は,否認事件の場合を除き,「罰金」,「執行猶予」,「実刑」のいずれかとなります。罰金刑は,一定額の金銭の支払いを命じる刑罰,執行猶予は,今回に限り刑務所に入らなくてよい(次回は実刑判決が見込まれる)という趣旨の刑罰,実刑は,直ちに刑務所に入ることを命じる刑罰です。

刑事罰の種類

公判でどのような刑罰を受けるか,特に実刑判決となるかどうかは,その後の生活に直接影響を及ぼす極めて重大な問題です。もっとも,具体的にどのようにして実刑判決を防ぐのか,実際に実刑判決を防ぐことができるのか,という判断は,高度に法的なものであり,弁護士なしでは困難と言わざるを得ません。

そのため,起訴されたときには,公判への対応に万全を期すため,適切な弁護士選びを行うべきでしょう。

ポイント
起訴後の刑罰は,罰金,執行猶予,実刑のいずれか
実刑判決を防げるかどうかが極めて重要

④自首したいとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

この点,建造物侵入事件の場合,現行犯で発覚したケースでは自首の余地がない状況になりやすいですが,現行犯で発覚していないときには,まだ犯罪事実や犯人が捜査機関に知られておらず,自首が有力な選択肢になり得ます。

もっとも,自首は大きなリスクを背負う行為であるため,本当に自首する方が有益なのかは,慎重な判断が必要です。また,実際に自首をする場合には,その効果を最大限に発揮させるため,適切な方法で進める必要があります。このような自首に関する動きを誤らないためには,弁護士の存在が非常に重要となりやすく,弁護士の見解を仰ぎながら進めることが有効です。

自首を検討する際には,対応に適した弁護士選びが望ましいでしょう。

ポイント
現行犯で発覚していない場合,自首が有力な選択肢になり得る
もっとも,自首はリスクが大きいため,弁護士の見解を仰ぐことが適切

建造物侵入事件の弁護士を選ぶ基準

①迅速な対応ができるか

建造物侵入事件を円滑に解決するためには,迅速な対応が必要となりやすいものです。例えば,身柄拘束を受けている場合には,迅速に対応するかどうかで釈放時期が大きく変わりやすく,被害者への謝罪や示談を目指す場合には,迅速に被害者対応ができれば被害者側の寛大な判断につながりやすくもなります。

しかしながら,弁護士がどのようなスピード感で対応してくれるかは,個々の弁護士の判断によります。特に,刑事事件の流れにあまり精通していない場合,その他の事件と同じ感覚で進めようとすると,動きが時期遅れになってしまうリスクも否定できません。

刑事事件の流れを踏まえ,適切なスピードで対応をしてくれるかどうか,という点は,弁護士選びの重要な基準として設けるようにしましょう。

②弁護士と連絡を取る手段があるか

弁護士と連絡を取る方法や連絡の頻度は,弁護士により様々です。特に,「弁護士と連絡したくても連絡が取れない」という問題は,セカンドオピニオンとして相談をお受けする場合に最も多く寄せられるお話の一つです。
電話をしても常に不通となって折り返しがない,メールへの返信も全くない,といったように,弁護士との連絡が滞るという問題は生じてしまいがちです。

そのため,弁護士とはどのような方法で連絡が取れるか,どのような頻度で連絡が取れるか,という点を重要な判断基準の一つとすることは,事件解決のために有力でしょう。

なお,法律事務所によっては,事務職員が窓口になって弁護士が直接には対応しない運用であるケースも考えられます。そのような運用が希望に合わない場合は,依頼後の連絡方法を具体的に確認することも有益でしょう。

③弁護士費用に不透明な点はないか

弁護士費用は,法律事務所によってその定め方や金額が様々です。一般的な弁護士費用の設定は,弁護活動に着手する際に生じる「着手金」と,成果が伴った場合に生じる「成功報酬」がメインですが,着手金と一口に言っても,どの業務に着手する場合にいくらの着手金が発生するのかは,法律事務所ごとの設定によります。また,成功報酬についても,どの成果に対していくらの報酬が生じるのかは,決して一律ではありません。

そのため,弁護士選びの際には,弁護士費用がどのような場合にいくら発生するか,正しく理解しておくことが不可欠です。内容が不透明であったり,複雑過ぎて分からなかったりといった問題がないか,十分に確認しておくことをお勧めします。

④事務所があまりに遠方でないか

建造物侵入事件の場合,基本的にはその建造物の場所を基準に警察署の管轄が決まり,検察庁や裁判所も,同じ場所を管轄するところが担当することになります。また,被害者である建造物の管理者は,その建造物からあまり遠くない場所にいることが一般的です。
そのため,弁護士の事務所が事件現場からあまりに遠方であると,各所への移動や被害者側への接触が円滑にできない可能性もあるため,あらかじめ注意しておくことが望ましいでしょう。

もっとも,弁護士が頻繁に足を運ぶのでなければ,必ずしも遠方であることが具体的なデメリットにつながるわけではありません。この点は,弁護活動の方針にもよるため,想定される弁護活動とセットで検討することが有力です。

建造物侵入事件で弁護士を選ぶ必要

①早期釈放のため

建造物侵入事件では,早期釈放が重要になるケースも多いですが,早期釈放を目指す場合の具体的な動きは,弁護士に委ねざるを得ません。接見で必要な話し合いを行ったり,ご家族と連絡を取り合ったり,捜査機関や裁判所に必要なアクションを尽くしたりと,早期釈放に向けて弁護士でしかできないことは多岐に渡ります。

早期釈放できるか,長期間の身柄拘束を強いられるかは,釈放後や刑事手続が終わった後の生活を決定的に左右する可能性すらあるため,非常に重要なポイントと言えます。不利益を最小限に抑えるため,早期釈放に向けた弁護士選びは必要不可欠と考えてよいでしょう。

②不起訴処分のため

建造物侵入事件は,個別の内容によって不起訴処分が期待できる場合も珍しくはありません。例えば,認め事件の場合には,比較的軽微な内容であることや被害者との示談が成立していることが,不起訴処分に向けた大きな判断材料になり得るでしょう。

もっとも,事件がなぜ軽微と言えるのかは,法的な判断を要する問題のため,弁護士に説得的な主張をしてもらう必要があります。また,示談に関しても,弁護士が間に入って,弁護士と被害者との間で協議してもらう必要があるため,弁護士の存在が不可欠です。

このように,不起訴処分を目指すための活動は,弁護士なしでは難しく,不起訴処分に向けては弁護士選びが重要となります。

③適切な取り調べ対応のため

刑事事件の捜査では取調べが不可欠です。特に,被疑者への取調べは捜査の中核であって,被疑者からどのような話が引き出せるかによってその後の捜査が決定づけられる事件も少なくありません。

逆に,被疑者の立場にある場合,取調べにどのような対応を取るのが最も有益であるのかを把握していることは非常に重要です。自分が何を話すか,どのように話すかによって,その後の捜査や処分が決定づけられる可能性もあるため,取調べ対応の方法・内容は十分に検討する必要があるでしょう。

この点,個別の事件に応じてどのような取調べ対応をすべきかは,弁護士の法的な判断を仰ぐことが適切です。そのため,取調べ対応に万全を期すためには,弁護士選びが重要なポイントとなるでしょう。

建造物侵入事件における弁護士選びの準備

①弁護士への説明の準備

弁護士選びの前提として,事件の内容を弁護士に十分説明できなければなりません。弁護士が内容を誤解してしまっていると,適切な案内やサポートはできず,弁護士選びは成功しづらいでしょう。

この点,建造物侵入事件では,記憶の有無が問題になる場合も少なくありません。典型例が,泥酔状態で通常しないような行動に出てしまったというケースです。
このようなときには,まず弁護士に対して記憶している内容と記憶していない部分を詳細に伝え,それを踏まえた案内をしてもらうようにしましょう。特に,事件当時の記憶なのか,後から言われて知ったことなのか,という区別は明確にすることをお勧めします。

②相談目的の検討

弁護士を選ぶ際,何のために,何を目指して弁護士に依頼するのか,という点を明確にしておくことが必要です。相談の目的に関して弁護士とズレが生じると,弁護士からの案内も目的から外れたものになってしまい,結果として弁護士選びが円滑にできないためです。

もちろん,弁護士側も法律相談の目的を想像することはできるため,理解が大きくズレることは多くありませんが,その目的が自分にとってどれだけ重要なものか,という詳細なニュアンスの面は,どうしても弁護士側の想像では補いきれないものです。
弁護士選びを実のあるものにするためにも,弁護士選びの目的は明確に表現できるようにしましょう。

③予算の検討

弁護士への依頼には弁護士費用が発生しますが,弁護士費用は法律事務所によって異なり,同じ弁護士への依頼でも依頼内容によって異なります。当然ながら,弁護士への依頼内容が多いほど弁護士費用は高額になりやすく,逆もまた然りです。
また,示談を試みる場合には,弁護士費用に加えて示談金が経済的な負担となります。弁護士費用だけを支払えても,示談金が支払えないと示談はできないため,示談金の負担も事前の想定が必要です。

そのため,弁護士選びに際しては,あらかじめ予算の範囲を明確に決めておくのが有益でしょう。現在は,ホームページ上で詳細に弁護士費用を明示している法律事務所も少なくないため,ご自身なりに費用負担のイメージを持って弁護士選びを行うのも有力です。
また,現実の弁護士費用と予算との開きが限定的であれば,弁護士への依頼内容を一部削るなど,柔軟な依頼方法で開きを埋めることができる場合もあり得ます。個別のケースに関しては弁護士と十分に相談してみましょう。

建造物侵入事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①土日祝日の対応

身柄拘束を受けている建造物侵入事件では,できるだけ速やかに弁護活動を開始することが適切ですが,逮捕の時期によっては,土日祝日に対応を要するケースもあり得ます。例えば,金曜日に逮捕された事件の場合,その後に勾留されるかどうかは土曜日か日曜日に判断されることになりやすく,土日だからといって待ってくれることはありません。

そのため,個別事件の状況に応じて,土日祝日の対応が必要になると見込まれるケースでは,弁護士が土日祝日でも対応可能かどうか,という点を事前に確認することが適切でしょう。
依頼者としては,土日祝日も対応してくれると思っていても,弁護士は土日祝日の手続に対応できない前提で案内をしている場合があります。その点のミスマッチは深刻な問題になりかねないため,事前に注意しておくことをお勧めします。

②経済的負担の予測が困難な場合

弁護士への依頼に際しては,経済的な負担として弁護士費用と示談金が想定されますが,弁護士費用と示談金のそれぞれについて,事前の金額予測が難しい場合がある点には十分に注意が必要です。

弁護士費用に関しては,事前の想定に反して長期間の身柄拘束がなされた場合に,金額が大きくなりやすい傾向にあります。例えば,当初は余罪がないという前提で考えていたものの,後になってから余罪が発覚し,余罪も含めて複数回の逮捕勾留が行われると,身柄拘束の期間は事前の想定を大きく超えることになります。

また,示談金については,侵入後に被害者の財産を壊してしまった等,別の損害が生じていることが分かった場合に金額が大きくなり得ます。特に,お店などの施設に侵入し,金銭的な価値の高い商品や備品を壊してしまったケースでは,その財産の価値に応じた賠償が必要になりやすいでしょう。

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住居侵入事件で自首が成立するためには?弁護士には依頼するべきか?

このページでは,住居侵入事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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住居侵入事件で自首をするべき場合

①侵入行為が被害者に発覚している場合

住居侵入事件の捜査は,事件が被害者に発覚した後,被害者からの被害申告などをきっかけに始まることが通常です。そのため,住居侵入事件の場合,被害者に発覚していれば捜査が行われやすく,被害者に発覚していなければ捜査は行われづらいと言えます。
そして,住居侵入事件で捜査が行われると,逮捕の可能性が十分にあるため,捜査され得る状況であれば,あらかじめ自首をして逮捕を回避する動きが有力となります。

そうすると,侵入行為が被害者に発覚してしまっている事件では,被害者の動きによって捜査が開始され,逮捕に至ることが十分に見込まれるため,自首の検討が有力になりやすいと考えられます。
特に,被害者と鉢合わせになって逃走した,という場合には,今後に渡っても逃亡の恐れがある,という理由で逮捕の可能性が高くなりやすいため,積極的な自首の検討が有力でしょう。

ポイント
被害者に発覚している事件が捜査される
逮捕回避を目指すための示談が有力

②捜査の開始を知った場合

住居侵入事件の場合,捜査の開始時にはまだ加害者が分かってない,というケースは珍しくありません。事件の性質上,被害があったことは明らかだが加害者が分からない,という状態であることが相当数あるためです。
そうすると,捜査が開始されてから加害者が特定されるまでには一定の期間が生じやすく,その間に自首を試みる余地が残っている,ということになります。

捜査が開始されている以上,自首をするしないにかかわらず,事件は捜査機関が把握するに至っています。そのため,自首が裏目に出てしまうリスクは低く,逆に自首のメリットを大きく得られやすい状況ということができるでしょう。
何らかの経緯で捜査の開始を知った場合には,捜査によって加害者が特定される前に,自発的な自首を進める手段が有力になります。

ポイント
捜査の開始時に加害者が分かっていない,という場合も多い
捜査開始後,加害者特定前の自首は有力

③余罪がある場合

住居侵入事件では,事件が1回きりではなく,複数回起きているケースも少なくありません。特に,同一の住居に対して,長期間に渡り複数回の侵入行為があった,という場合は多く見られるところです。
この点,現に捜査を受けている事件以外の事件(=余罪)がある場合,その数が多ければ多いほど,刑事処分は重くなる傾向にあります。起こしている事件が多いほど,事件が悪質であり,生じた被害や加害者の責任は重いとの評価になるためです。

余罪があって重い刑罰が懸念される場合には,処分の軽減を目指す手段として自首を検討することが有力です。刑事処分の判断は,加害者の反省状況を大きな材料の一つとすることになりますが,自首は深い反省があることの裏付けとみなされやすく,刑罰の軽減につながる可能性が高いでしょう。

ポイント
同一住居に対する複数の侵入事件が生じやすい
自首によって処分の軽減を目指す手段が特に有力な状況

④当事者間での解決が困難な場合

住居侵入事件の場合,被害者が犯罪捜査や刑事処罰を希望しなければ,捜査を行わないことが通常です。現実に被害を受けた人物が捜査を求めていない以上,被害者のプライバシーを掘り起こしてまで捜査を強行する必要性に乏しいためです。
そのため,当事者間で問題解決に至っているのであれば,捜査を懸念する必要はあまりなく,自首を検討する必要もないとの判断が適切でしょう。

一方,住居侵入事件では,当事者間で協議するなどして解決を図ることが困難なケースも数多く見られます。特に,当事者間に深い交友関係がない場合には,円滑に当事者間で解決するのは現実的ではないでしょう。
このように当事者間での解決が困難な場合には,自首のほかに処分の軽減を目指す手段がないため,自首の検討が非常に有力となります。自首ができれば,最悪の事態を免れられる可能性が飛躍的に高くなるでしょう。

ポイント
当事者間で解決できれば,自首の必要はあまりない
住居侵入事件の場合,当事者間での解決は困難な場合が多い

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

住居侵入事件の自首は弁護士に依頼すべきか

住居侵入事件の自首に関しては,弁護士への依頼を強くお勧めします。刑事手続や住居侵入事件の取り扱いに精通した弁護士に依頼をすることで,自首に関する判断や行動を誤ることなく進められるでしょう。
弁護士への依頼によって,具体的には以下のようなメリットが見込まれます。

①逮捕の可能性が低下する

自首は,逮捕の回避を目指すのが最初の目的です。自首しなければ逮捕の危険が大きいため,自首することでできる限りその可能性を下げ,逮捕を防ぐ結果を目指す,というのが自首をするときの基本的なモチベーションになるでしょう。
もっとも,自首の方法を誤ってしまえば,逮捕回避の効果が十分に見込まれず,逮捕を防ぐという目的の実現につながらない恐れも否定できません。

この点,弁護士に依頼することで,適切な方法,内容で自首を進めることができるため,逮捕の可能性はより大きく低下することが期待できます。また,弁護士が逮捕するかどうかという点について捜査機関に掛け合い,協議を試みることも可能です。

②自首が有効な状況か分かる

刑事事件で自首すべきかどうか,自首が有効な手段であるかどうかは,非常に判断の難しい問題です。必要な情報がほとんどない中,経験則などを踏まえて推測せざるを得ませんが,過去の経験がない当事者は,当然ながら経験則を踏まえた判断ができず,困難さは更に増すでしょう。

この点,刑事事件の対応に精通した弁護士に依頼することで,知識や経験をもとに状況をできる限り把握し,自首が有効であるかどうか,適切な判断をしてもらうことが可能です。なぜ自首が有効であるか,なぜ自首をすべきかを把握しながら自首を進めることで,より円滑な対応が進めやすくなる効果も期待できます。

③被害者への対応を開始できる

住居侵入事件で自首をする場合,被害者への謝罪や賠償,示談といった試みは,あわせて行うことが適切です。なぜなら,自首は逮捕回避や処分軽減を目的に行うものですが,逮捕回避や処分軽減に最も有効な動きが,被害者側へのアプローチであるためです。被害者の宥恕(ゆうじょ=許し)を得ることができれば,自首よりも更に大きな効果が期待できます。

この点,弁護士に依頼することで,弁護士が窓口となる形で被害者への対応を速やかに開始できます。自首は,被害者の心情面にプラスの影響を与えることが多く,被害者が示談に応じる可能性が高くなる動きでもあるため,被害者への対応は自首の効果を最大限に生かすための行動とも言えるでしょう。

④逮捕後の釈放を目指すことができる

住居侵入事件は,逮捕されるケースも少なくないため,自首を検討する際にも逮捕を想定しておく必要があります。事件の内容や件数などを踏まえ,逮捕リスクが高いケースでは,逮捕後の動きを考えているかどうかによってその後の流れが大きく変わることも珍しくありません。

この点,弁護士に依頼することで,万一逮捕された場合に釈放を目指す方法や見込みを具体的に検討し,釈放に向けた弁護活動を行ってもらうことが可能です。また,釈放までにどのくらいの期間を要するか,どのような条件で釈放されるか,といった見通しが分かることで,その後の手続にも適切な対処が可能になりやすいでしょう。

住居侵入事件で自首をする場合の注意点

①自首が間に合わない可能性

自首は,犯罪事実及び犯人の両方が捜査機関に発覚した後では,行うことができません。捜査が行われていない段階や,犯人が特定できていない段階であれば,自首の余地が残りますが,捜査が進行してしまった後になると自首が成立しなくなってしまう可能性があるため,注意が必要です。

この点,捜査の進捗状況を踏まえた判断ができれば最も望ましいですが,現実に捜査状況を把握することは困難です。自首を検討する際には,自首が成立する状況か分からないことを承知の上で,できるだけ早期に判断することをお勧めします。

②逮捕が避けられない可能性

自首は,逮捕の可能性を大きく低下させる動きではありますが,自首をしたから逮捕されない,というわけではありません。自首をしても逮捕が避けられない場合がある,という点は十分に注意することが望ましいです。

特に,捜査機関が被疑者を逮捕する前提で捜査を進めていた場合,その後に自首をしても逮捕の判断は変わらず,結局逮捕されてしまう,という流れは多く見られます。ただ,捜査機関が逮捕する前提かどうかは,事前に把握することができないため,その可能性を想定しながら自首の検討を行うことが適切でしょう。

③起訴され前科が付く可能性

自首をした場合,刑事責任は大きく減少し,処分も大きく軽減する可能性が高く見込まれます。最も大きく軽減した場合,不起訴処分となり,刑罰を受けない結果となることも相当数見られるところです。
不起訴処分の獲得が,自首を試みる最大の目的の一つでしょう。

もっとも,自首をしたからといって全て不起訴処分になるものではありません。自首をしても,起訴は避けられず,刑罰が一定程度軽減するにとどまる,という可能性は十分にあるため,事前に注意することをお勧めします。

④余罪の取り扱い

余罪がある場合,一つの事件で自首すると決めた際に,余罪をどう取り扱うか,という点は非常に判断の難しい問題です。全てをさらけ出してしまうか,余罪については一切言及しないか,一部の余罪に限り自ら述べるか,選択肢は数多くあります。

この点,余罪を伏せて自首を試みた場合,後で余罪が発覚すると,余罪に関しては自首の効果が及ばない,との判断が通常です。自首の影響は事件ごとに変わるため,余罪は自首を含めた事件ごとに検討する,という点に十分注意しましょう。

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【住居侵入事件での呼び出し】警察が呼び出すのはなぜ?どのように対応するべき?

このページでは,住居侵入事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
住居侵入事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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住居侵入事件で呼び出された場合の対応法

①現行犯で取り締まりを受けた事件

住居侵入事件が現行犯で発覚し,取り締まりを受けた場合には,その後捜査のために呼び出しを受けることが考えられます。このような場合には,基本的に反省や後悔の意思を前提に,誠意ある捜査協力を尽くすことが有力でしょう。

現行犯で取り締まりを受けているケースでは,事件が現認されているため,内容を争う余地に乏しいことが通常です。事件の内容を認める前提であれば,いわゆる情状面で有益な効果を期待する意味で,可能な限り真摯な対応に努めることが賢明と言えます。

ただし,現行犯で取り締まりを受けたものの,被害者側の勘違いなどであらぬ疑いをかけられている部分もある,という状況であれば,適切な対応は異なります。あらぬ疑いをかけられている部分がある場合は,正しい点と誤っている点を具体的に指摘の上,正しい点は真摯に反省し,誤っている点は毅然と否定する,と区別した対応をするべきでしょう。

ポイント
内容を認める前提であるため,可能な限り真摯な対応に努めるべき
あらぬ疑いをかけられている部分があれば,その点は区別して毅然と否定する

②初めて呼び出しを受ける事件

それまで捜査を受けたことがなく,初めて呼び出しを受ける事件では,まず疑いの内容を正しく把握することが賢明です。また,複数の出来事で疑いが生じている場合は,そのそれぞれについて心当たりがあるかないか,正しく判断する必要があります。
疑いの内容を正しく把握し,心当たりの有無が確認できれば,適切に認め,又は否認する対応が可能になります。

また,警察署等への出頭を求められる際には,できるだけ日程調整し,出頭に応じる姿勢を見せるようにしましょう。警察側の求める日時の出頭に全て応じる必要はありませんが,全く応じる気がない態度を見せるメリットにも乏しいところです。

ポイント
疑いの内容と心当たりの有無を正しく把握する
出頭には応じる姿勢を見せる

③身に覚えがない事件

身に覚えのない住居侵入事件で呼び出された場合には,まず「自分には心当たりがない」という事実を警察側に把握してもらうための対応をしましょう。刑事事件の捜査は,認め事件か否認事件かによってその後の流れが異なり,否認事件の場合には犯罪が立証できるか慎重な判断が必要となります。そのため,本件は否認事件であって,慎重な犯罪立証が求められるケースだ,と把握してもらうことが有効です。

あわせて,なぜ身に覚えがないのか,自分の中で整理することも不可欠です。人違いで疑われているのか,泥酔などの影響で記憶がない状況なのかなど,身に覚えがない理由によって取るべき対応も異なってくるため,正しく整理の上,できれば専門性ある弁護士に相談することをお勧めします。

ポイント
心当たりのない事件である,ということを捜査機関に把握してもらう
身に覚えのない理由を確認する

住居侵入事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

住居侵入事件の場合,呼び出しに応じたことをきっかけに逮捕される,という流れは考えにくいところです。逮捕するつもりで呼び出す,という取り扱いは非常に少ないと言ってよいでしょう。

もっとも,呼び出しに対する対応が不適切である場合には,呼び出しを巡るやり取りが逮捕の原因になる可能性は考えられます。具体的には,以下のようなケースが挙げられるでしょう。

呼び出しへの対応が逮捕の原因になるケース

1.呼び出しへの応答がない

2.呼び出された日時に出頭しない

3.話の内容が明らかに不合理である

4.証拠隠滅の態度が見られる

【1.呼び出しへの応答がない】

呼び出しの連絡を試みたものの,応答もなく折り返しもない,という状況の場合,呼び出しをしても効果がないとの判断になりかねません。そうすると,逮捕して強制的に連れてくる必要があるとみなされやすく,逮捕の原因になり得ます。

【2.呼び出された日時に出頭しない】

呼び出しの連絡を受けて出頭日時を決めたものの,その日時をすっぽかすなどして出頭しない場合,同じく呼び出しても出頭が期待できないとの判断になりかねません。一度だけであれば直ちに逮捕とはならないケースが多いですが,度重なると最終手段としての逮捕が選択される原因になるでしょう。

【3.話の内容が明らかに不合理である】

呼び出しに応じて出頭し,取調べが行われたものの,受け答えの内容が明らかに不合理である場合には,捜査に対する妨害の恐れが大きいと判断され,逮捕につながる可能性があります。
具体的には,内容が支離滅裂である,話が二転三転する,会話のキャッチボールが成立しない,といった場合が挙げられるでしょう。

【4.証拠隠滅の態度が見られる】

呼び出しの時や出頭時のやり取りから,証拠隠滅の態度が見受けられる場合には,今後の証拠隠滅を防ぐために逮捕される原因になり得るでしょう。
例えば,証拠の話になると急に回答を拒み始める,明らかに虚偽であるのに証拠を持っていないと述べる,といった場合が挙げられます。

住居侵入事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①情報提供を求める場合

住居侵入事件では,捜査機関に必要な情報が揃っていないため,事件や被疑者を特定するための情報提供を求められる場合があります。情報提供を求める連絡であるかどうかは,呼び出しを行う警察側の話や態度などから,比較的容易に判断することができるでしょう。

このような呼び出しは,捜査の初期段階で行われることが一般的です。事件の発生又は被害者による被害の把握から,それほど期間を空けずに実施されるケースが多いでしょう。

②加害者として特定された場合

自分が加害者として特定された場合には,取調べ目的での呼び出しが想定されます。取調べは,被疑者に対する捜査の第一歩であり,認否などを具体的に確認するための重要なステップです。

加害者として特定されたときには,その後比較的速やかに呼び出されることが一般的です。事件発生からの期間はケースによって大きく異なりますが,概ね1~6か月程度の間が一つの目安と言えるでしょう。

③供述調書を作成する場合

捜査機関は,取調べを行った後,その内容を「供述調書」という書面にするのが通常です。取調べによって聴き取った話を証拠化し,捜査機関内部の報告やその後の刑事処分に活用するのが基本的な運用とされます。
そのため,話を聞かれた後,内容を調書化する目的で呼び出されることは少なくないでしょう。

供述調書作成のための呼び出しは,ある程度話を聴き取った後であることが一般的です。直近の呼び出し後1週間~1か月程度は目安でしょうか。
なお,取調べの後速やかにその内容を供述調書にするケースもあります。その場合は,別途供述調書作成のための呼び出しが行われることはありません。

④個人情報の収集保管をする場合

刑事手続の一般的な取り扱いとして,被疑者の写真,指紋,DNA型といった個人情報を保管する運用が広く定着しています。これは,捜査機関内部でデータベース化することで,将来の犯罪捜査に活用することが想定されたものです。
そのため,写真や指紋などの個人情報を収集目的で呼び出される場合も考えられるところです。

このような呼び出しは,捜査の終盤に行われることが一般的です。事件の内容に関する取り調べが一通り終わった後であることが多く,個人情報の収集によって呼び出し終了,となるケースが多数でしょう。

住居侵入事件の呼び出しに応じたときの注意点

①記憶がない場合の対応方法

住居侵入事件では,呼び出された事件の記憶がない,というケースも相当数見られます。このうち,特徴的に多いのは泥酔状態であったため記憶がない,というものです。

この点,泥酔のため記憶がないケースでは,単に記憶がないというのみでなく認否を明確にするのが適切である,という点に注意することをお勧めします。「記憶がない」との回答は,疑いを認めていないため否認の意味で理解されるのが通常であるため,「酔っぱらって覚えていないが自分が行ったことに間違いないと思う」というスタンスである場合,意図が正しく伝わらない恐れがあります。

記憶がないケースでは,もう一歩踏み込んで「認めるか認めないか」という点を明確にするのが適切でしょう。

②共犯事件の場合

共犯事件の場合,通常は共犯者の全てが取り調べを受けることになります。そして,共犯事件では共犯者間で供述内容が整合するか矛盾するか,という点が大きなポイントになりやすいところです。

そのため,共犯事件では,基本的にありのままの事実を述べ,共犯者間で言い分が食い違わないよう努めることが適切でしょう。共犯者のためであっても,むやみに虚偽の話や黙秘を乱用することはお勧めできません。
最悪の場合,共犯者に責任を擦り付けられた場合,自分の話が(一部虚偽であったため)信用できない,と判断される危険もあります。

③余罪の取り扱い

住居侵入事件は,1件だけでなく余罪が複数ある場合も一定数見られます。そのため,捜査機関も余罪の存在を想定しており,余罪も含めた捜査をしていることが少なくありません。

この点,基本的に同一の被害者に対する事件の余罪は,同一の手続で捜査される可能性が高い,という点に注意しておくことをお勧めします。同一の被害者に対する余罪は,虚偽の話や黙秘によって隠そうとするメリットに乏しいことが多く見られます。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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住居侵入で逮捕される可能性は?初犯でも逮捕される?逮捕を防ぐ方法は?

このページでは,住居侵入の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

住居侵入事件で逮捕される可能性

住居侵入事件は,逮捕の可能性が十分に考えられる事件類型です。侵入行為によって,被害者の心身に重大な損害が生じやすいため,再発を防ぎ被害者を保護する意味も含め,逮捕を伴った捜査が選択されることは少なくありません。

ただし,必ず逮捕されるとも限らず,具体的な見通しは個別のケースによるところです。一般的に,以下のようなケースでは逮捕の可能性が高いと言えるでしょう。

住居侵入事件で逮捕の可能性が高いケース

1.現行犯でトラブルになった場合

2.侵入後に別の犯罪行為があった場合

3.侵入行為が複数回あった場合

4.被害者に危害の及ぶ恐れがある場合

【1.現行犯でトラブルになった場合】

現行犯の際に被害者と鉢合わせになるなどし,トラブルになった後逃走した,というケースでは,逮捕の可能性が高い傾向にあります。その理由としては,現実に逃走しているため今後の逃亡が懸念されること,被害者の外貌を把握しており,被害者に危害の及ぶ恐れがあることなどが挙げられます。

【2.侵入後に別の犯罪行為があった場合】

住居侵入の後,窃盗やわいせつ行為など,別の犯罪が行われているケースでは,逮捕の可能性が高くなりやすいところです。別の犯罪が起きている場合,その事件の刑事責任はより重くなるため,逮捕の必要性が高い,との理解が一般的です。

【3.侵入行為が複数回あった場合】

同一の住居への侵入行為が複数回ある場合,その被害者に対する被害の拡大を食い止めるため,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。
また,加害者が住居への侵入場所を確保している可能性が高く,侵入方法に関する証拠を収集する必要性が高いため,逮捕することで証拠隠滅の機会を奪う意味合いもあります。

【4.被害者に危害の及ぶ恐れがある場合】

加害者と被害者との間に過去トラブルがあった,面識のある可能性が高いなど,今後,被害者に対する危害の恐れが大きいと思われるケースでは,被害者保護の観点から逮捕の可能性が高くなりやすいです。
被害者は,被害状況を最も正確に述べることのできる重要な証拠(人証:証拠となる人のこと)の一つです。被害者に対する危害は,まさに重大な証拠隠滅行為と言えます。

逮捕の種類や流れ

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

住居侵入事件で逮捕を避ける方法

①被害者との解決

住居侵入事件では,被害者と加害者との間で解決している場合,その後に捜査が行われることは通常ありません。そして,捜査が行われないということは,捜査の手段である逮捕も行われない,ということになります。

具体的な被害者がいる事件である以上,根本的な解決は被害者との間で図るのが最も適切です。当事者間で解決の余地がある場合には,できるだけ解決を目指したいところです。

②自首

特に被害者との解決が困難なケースでは,捜査を受ける前に自首をし,自ら捜査機関に足を運ぶ手段も有力です。加害者が自ら足を運んでくれる場合,逮捕をしてまで強制的に連れてくる必要はないため,逮捕の必要性が大きく低下すると言えるでしょう。

なお,自首は,捜査機関に犯罪事実又は犯人が発覚していない段階で,自ら捜査機関に犯罪行為を述べる行動を言います。犯罪事実と犯人が発覚した後では自首が成立しないため,できるだけ早い時期に行うことが有益です。

③捜査協力

既に捜査を受けている状況の場合,行われる捜査に対して適切な対応を尽くすことで,逮捕の回避が期待できる場合も少なくありません。具体的には,必要に応じて求められた捜査協力を尽くし,証拠の提出などを行うことが有力です。

逮捕は,逃亡や証拠隠滅を防ぐ目的で行われることが一般的であり,逆に逃亡や証拠隠滅の恐れがなければあえて逮捕することは多くありません。積極的な捜査協力によって,逃亡や証拠隠滅の恐れがないとの判断を引き出すことができれば,逮捕を避ける大きな原動力になり得るでしょう。

住居侵入事件の逮捕は弁護士に依頼すべきか

住居侵入事件の逮捕について対応を検討する際は,弁護士に依頼し,その専門的な判断を踏まえて行動するのが適切でしょう。弁護士への依頼によって,以下のような効果が期待できます。

①逮捕が懸念される状況か分かる

逮捕を避けるためにどのような行動を取るかは,逮捕がどの程度懸念されるか,という見通しを前提に判断すべき事柄です。捜査機関が逮捕を想定しているのにそれに気づかず手段を尽くさないと,逮捕回避の機会を逃してしまいかねませんし,逆に捜査機関が逮捕を考えていないのに執拗に逮捕を恐れた動きを取っていると,不要な疑いや捜査を受けるきっかけになり得ます。

この点,弁護士に依頼することで,現状で逮捕が懸念されるかどうか,という点について法的な知識経験を踏まえた判断をしてもらうことが可能です。逮捕可能性の見通しを正しく持つことができれば,逮捕回避の動きも正しく進めることができるでしょう。

②逮捕を防ぐための弁護活動をしてもらえる

逮捕を防ぎたい,逮捕を防ぐために手段を尽くしたい,と考えた場合でも,現実にその手段を自分が講じることは容易ではありません。内容によっては,自分自身で行うことができず,弁護士に行ってもらうほかないものも少なくありません。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕を防ぐために行うべき動きを進めるなど,適切な弁護活動をしてもらうことが可能です。また,いつ,どの動きを,どのように取ればいいか,という点も弁護士が判断してくれるため,動きを誤る恐れなく逮捕回避を目指せるでしょう。

③手続の流れや見込みを事前に把握できる

刑事事件の手続は,法律や運用に精通していないと見通しの判断が困難です。逆に,刑事手続に関する法律や捜査機関の運用に通じている弁護士などは,今後の手続がどのように流れていくか,どのような結果が見込まれるか,という点の見通しを正確に持つことが可能です。

そのため,刑事事件に精通した弁護士に依頼すれば,今後の手続の流れを把握でき,処分などの見込みを正しく見定めることが可能になるでしょう。ある程度の見通しを持つことができれば,今後に対する不安も最小限に抑えることができます。

住居侵入事件の逮捕に関する注意点

①逮捕を避ける手段に乏しい場合

住居侵入事件の場合,逮捕前に捜査機関から逮捕を示唆するような動きを取るケースはあまり見られません。そのため,逮捕は被疑者にとって突然行われることになり,事前に避ける手段を講じる余地がない可能性には注意が必要となります。

ただし,事前に逮捕を示唆する動きがなくても,事件の発生から逮捕までには相当な期間のあることが通常です。その期間の中で,自首などの試みにより逮捕を回避する余地はあり得るところであるため,捜査を受けていない状況でも逮捕を避ける試みをすべきでないか,という点を弁護士に相談してみることは有力でしょう。

②逮捕時期

住居侵入事件は,逮捕がなされる場合の逮捕時期を具体的に特定することが困難な傾向にあります。その理由としては,以下の点が挙げられます。

住居侵入事件の逮捕時期が特定困難な理由

・被害者が被害を把握する時期が不明
→被害者が侵入行為をいつ知るのか,という点が,完全に被害者側次第である

・加害者を特定できるまでの期間が不明
→捜査の開始後,加害者が特定できるかどうか,特定にどの程度の期間を要するかは,証拠関係に大きな影響を受ける

・捜査機関のスケジュールが不明
→警察が多忙であるほど期間を要しやすく,速やかな逮捕が少なくなりやすい

住居侵入事件では,事件の進捗等によって逮捕時期に様々な可能性がある点に注意が必要です。

③逮捕後の釈放時期

住居侵入事件の場合,逮捕された場合の釈放時期に様々な可能性があるため,釈放時期の特定が困難になりやすい点に注意が必要となります。

最も軽微なケースでは,逮捕1~2日後,勾留されずに釈放される場合があり得ます。勾留されない事件では,いわゆる在宅事件に切り替わり,時々出頭を求められる流れとなります。
一方,複数の事件で逮捕勾留が繰り返されると,釈放まで数か月を要する長丁場になる可能性もあり得ます。この間,手段を尽くしても釈放してもらうのは困難であるのが通常です。

具体的な釈放時期の見込みについては,手続に精通した弁護士に判断してもらうことをお勧めします。

住居侵入事件で警察から呼び出しを受けた場合のポイント

呼び出しへの対応法

①現行犯で取り締まりを受けた事件

住居侵入事件が現行犯で発覚し,取り締まりを受けた場合には,その後捜査のために呼び出しを受けることが考えられます。このような場合には,基本的に反省や後悔の意思を前提に,誠意ある捜査協力を尽くすことが有力でしょう。

現行犯で取り締まりを受けているケースでは,事件が現認されているため,内容を争う余地に乏しいことが通常です。事件の内容を認める前提であれば,いわゆる情状面で有益な効果を期待する意味で,可能な限り真摯な対応に努めることが賢明と言えます。

ただし,現行犯で取り締まりを受けたものの,被害者側の勘違いなどであらぬ疑いをかけられている部分もある,という状況であれば,適切な対応は異なります。あらぬ疑いをかけられている部分がある場合は,正しい点と誤っている点を具体的に指摘の上,正しい点は真摯に反省し,誤っている点は毅然と否定する,と区別した対応をするべきでしょう。

ポイント
内容を認める前提であるため,可能な限り真摯な対応に努めるべき
あらぬ疑いをかけられている部分があれば,その点は区別して毅然と否定する

②初めて呼び出しを受ける事件

それまで捜査を受けたことがなく,初めて呼び出しを受ける事件では,まず疑いの内容を正しく把握することが賢明です。また,複数の出来事で疑いが生じている場合は,そのそれぞれについて心当たりがあるかないか,正しく判断する必要があります。
疑いの内容を正しく把握し,心当たりの有無が確認できれば,適切に認め,又は否認する対応が可能になります。

また,警察署等への出頭を求められる際には,できるだけ日程調整し,出頭に応じる姿勢を見せるようにしましょう。警察側の求める日時の出頭に全て応じる必要はありませんが,全く応じる気がない態度を見せるメリットにも乏しいところです。

ポイント
疑いの内容と心当たりの有無を正しく把握する
出頭には応じる姿勢を見せる

③身に覚えがない事件

身に覚えのない住居侵入事件で呼び出された場合には,まず「自分には心当たりがない」という事実を警察側に把握してもらうための対応をしましょう。刑事事件の捜査は,認め事件か否認事件かによってその後の流れが異なり,否認事件の場合には犯罪が立証できるか慎重な判断が必要となります。そのため,本件は否認事件であって,慎重な犯罪立証が求められるケースだ,と把握してもらうことが有効です。

あわせて,なぜ身に覚えがないのか,自分の中で整理することも不可欠です。人違いで疑われているのか,泥酔などの影響で記憶がない状況なのかなど,身に覚えがない理由によって取るべき対応も異なってくるため,正しく整理の上,できれば専門性ある弁護士に相談することをお勧めします。

ポイント
心当たりのない事件である,ということを捜査機関に把握してもらう
身に覚えのない理由を確認する

住居侵入事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

住居侵入事件の場合,呼び出しに応じたことをきっかけに逮捕される,という流れは考えにくいところです。逮捕するつもりで呼び出す,という取り扱いは非常に少ないと言ってよいでしょう。

もっとも,呼び出しに対する対応が不適切である場合には,呼び出しを巡るやり取りが逮捕の原因になる可能性は考えられます。具体的には,以下のようなケースが挙げられるでしょう。

呼び出しへの対応が逮捕の原因になるケース

1.呼び出しへの応答がない

2.呼び出された日時に出頭しない

3.話の内容が明らかに不合理である

4.証拠隠滅の態度が見られる

【1.呼び出しへの応答がない】

呼び出しの連絡を試みたものの,応答もなく折り返しもない,という状況の場合,呼び出しをしても効果がないとの判断になりかねません。そうすると,逮捕して強制的に連れてくる必要があるとみなされやすく,逮捕の原因になり得ます。

【2.呼び出された日時に出頭しない】

呼び出しの連絡を受けて出頭日時を決めたものの,その日時をすっぽかすなどして出頭しない場合,同じく呼び出しても出頭が期待できないとの判断になりかねません。一度だけであれば直ちに逮捕とはならないケースが多いですが,度重なると最終手段としての逮捕が選択される原因になるでしょう。

【3.話の内容が明らかに不合理である】

呼び出しに応じて出頭し,取調べが行われたものの,受け答えの内容が明らかに不合理である場合には,捜査に対する妨害の恐れが大きいと判断され,逮捕につながる可能性があります。
具体的には,内容が支離滅裂である,話が二転三転する,会話のキャッチボールが成立しない,といった場合が挙げられるでしょう。

【4.証拠隠滅の態度が見られる】

呼び出しの時や出頭時のやり取りから,証拠隠滅の態度が見受けられる場合には,今後の証拠隠滅を防ぐために逮捕される原因になり得るでしょう。
例えば,証拠の話になると急に回答を拒み始める,明らかに虚偽であるのに証拠を持っていないと述べる,といった場合が挙げられます。

住居侵入事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①情報提供を求める場合

住居侵入事件では,捜査機関に必要な情報が揃っていないため,事件や被疑者を特定するための情報提供を求められる場合があります。情報提供を求める連絡であるかどうかは,呼び出しを行う警察側の話や態度などから,比較的容易に判断することができるでしょう。

このような呼び出しは,捜査の初期段階で行われることが一般的です。事件の発生又は被害者による被害の把握から,それほど期間を空けずに実施されるケースが多いでしょう。

②加害者として特定された場合

自分が加害者として特定された場合には,取調べ目的での呼び出しが想定されます。取調べは,被疑者に対する捜査の第一歩であり,認否などを具体的に確認するための重要なステップです。

加害者として特定されたときには,その後比較的速やかに呼び出されることが一般的です。事件発生からの期間はケースによって大きく異なりますが,概ね1~6か月程度の間が一つの目安と言えるでしょう。

③供述調書を作成する場合

捜査機関は,取調べを行った後,その内容を「供述調書」という書面にするのが通常です。取調べによって聴き取った話を証拠化し,捜査機関内部の報告やその後の刑事処分に活用するのが基本的な運用とされます。
そのため,話を聞かれた後,内容を調書化する目的で呼び出されることは少なくないでしょう。

供述調書作成のための呼び出しは,ある程度話を聴き取った後であることが一般的です。直近の呼び出し後1週間~1か月程度は目安でしょうか。
なお,取調べの後速やかにその内容を供述調書にするケースもあります。その場合は,別途供述調書作成のための呼び出しが行われることはありません。

④個人情報の収集保管をする場合

刑事手続の一般的な取り扱いとして,被疑者の写真,指紋,DNA型といった個人情報を保管する運用が広く定着しています。これは,捜査機関内部でデータベース化することで,将来の犯罪捜査に活用することが想定されたものです。
そのため,写真や指紋などの個人情報を収集目的で呼び出される場合も考えられるところです。

このような呼び出しは,捜査の終盤に行われることが一般的です。事件の内容に関する取り調べが一通り終わった後であることが多く,個人情報の収集によって呼び出し終了,となるケースが多数でしょう。

呼び出しに応じたときの注意点

①記憶がない場合の対応方法

住居侵入事件では,呼び出された事件の記憶がない,というケースも相当数見られます。このうち,特徴的に多いのは泥酔状態であったため記憶がない,というものです。

この点,泥酔のため記憶がないケースでは,単に記憶がないというのみでなく認否を明確にするのが適切である,という点に注意することをお勧めします。「記憶がない」との回答は,疑いを認めていないため否認の意味で理解されるのが通常であるため,「酔っぱらって覚えていないが自分が行ったことに間違いないと思う」というスタンスである場合,意図が正しく伝わらない恐れがあります。

記憶がないケースでは,もう一歩踏み込んで「認めるか認めないか」という点を明確にするのが適切でしょう。

②共犯事件の場合

共犯事件の場合,通常は共犯者の全てが取り調べを受けることになります。そして,共犯事件では共犯者間で供述内容が整合するか矛盾するか,という点が大きなポイントになりやすいところです。

そのため,共犯事件では,基本的にありのままの事実を述べ,共犯者間で言い分が食い違わないよう努めることが適切でしょう。共犯者のためであっても,むやみに虚偽の話や黙秘を乱用することはお勧めできません。
最悪の場合,共犯者に責任を擦り付けられた場合,自分の話が(一部虚偽であったため)信用できない,と判断される危険もあります。

住居侵入事件における自首のコツ

住居侵入事件で自首をするべき場合

①侵入行為が被害者に発覚している場合

住居侵入事件の捜査は,事件が被害者に発覚した後,被害者からの被害申告などをきっかけに始まることが通常です。そのため,住居侵入事件の場合,被害者に発覚していれば捜査が行われやすく,被害者に発覚していなければ捜査は行われづらいと言えます。
そして,住居侵入事件で捜査が行われると,逮捕の可能性が十分にあるため,捜査され得る状況であれば,あらかじめ自首をして逮捕を回避する動きが有力となります。

そうすると,侵入行為が被害者に発覚してしまっている事件では,被害者の動きによって捜査が開始され,逮捕に至ることが十分に見込まれるため,自首の検討が有力になりやすいと考えられます。
特に,被害者と鉢合わせになって逃走した,という場合には,今後に渡っても逃亡の恐れがある,という理由で逮捕の可能性が高くなりやすいため,積極的な自首の検討が有力でしょう。

ポイント
被害者に発覚している事件が捜査される
逮捕回避を目指すための示談が有力

②捜査の開始を知った場合

住居侵入事件の場合,捜査の開始時にはまだ加害者が分かってない,というケースは珍しくありません。事件の性質上,被害があったことは明らかだが加害者が分からない,という状態であることが相当数あるためです。
そうすると,捜査が開始されてから加害者が特定されるまでには一定の期間が生じやすく,その間に自首を試みる余地が残っている,ということになります。

捜査が開始されている以上,自首をするしないにかかわらず,事件は捜査機関が把握するに至っています。そのため,自首が裏目に出てしまうリスクは低く,逆に自首のメリットを大きく得られやすい状況ということができるでしょう。
何らかの経緯で捜査の開始を知った場合には,捜査によって加害者が特定される前に,自発的な自首を進める手段が有力になります。

ポイント
捜査の開始時に加害者が分かっていない,という場合も多い
捜査開始後,加害者特定前の自首は有力

③余罪がある場合

住居侵入事件では,事件が1回きりではなく,複数回起きているケースも少なくありません。特に,同一の住居に対して,長期間に渡り複数回の侵入行為があった,という場合は多く見られるところです。
この点,現に捜査を受けている事件以外の事件(=余罪)がある場合,その数が多ければ多いほど,刑事処分は重くなる傾向にあります。起こしている事件が多いほど,事件が悪質であり,生じた被害や加害者の責任は重いとの評価になるためです。

余罪があって重い刑罰が懸念される場合には,処分の軽減を目指す手段として自首を検討することが有力です。刑事処分の判断は,加害者の反省状況を大きな材料の一つとすることになりますが,自首は深い反省があることの裏付けとみなされやすく,刑罰の軽減につながる可能性が高いでしょう。

ポイント
同一住居に対する複数の侵入事件が生じやすい
自首によって処分の軽減を目指す手段が特に有力な状況

④当事者間での解決が困難な場合

住居侵入事件の場合,被害者が犯罪捜査や刑事処罰を希望しなければ,捜査を行わないことが通常です。現実に被害を受けた人物が捜査を求めていない以上,被害者のプライバシーを掘り起こしてまで捜査を強行する必要性に乏しいためです。
そのため,当事者間で問題解決に至っているのであれば,捜査を懸念する必要はあまりなく,自首を検討する必要もないとの判断が適切でしょう。

一方,住居侵入事件では,当事者間で協議するなどして解決を図ることが困難なケースも数多く見られます。特に,当事者間に深い交友関係がない場合には,円滑に当事者間で解決するのは現実的ではないでしょう。
このように当事者間での解決が困難な場合には,自首のほかに処分の軽減を目指す手段がないため,自首の検討が非常に有力となります。自首ができれば,最悪の事態を免れられる可能性が飛躍的に高くなるでしょう。

ポイント
当事者間で解決できれば,自首の必要はあまりない
住居侵入事件の場合,当事者間での解決は困難な場合が多い

住居侵入事件の自首は弁護士に依頼すべきか

住居侵入事件の自首に関しては,弁護士への依頼を強くお勧めします。刑事手続や住居侵入事件の取り扱いに精通した弁護士に依頼をすることで,自首に関する判断や行動を誤ることなく進められるでしょう。
弁護士への依頼によって,具体的には以下のようなメリットが見込まれます。

①逮捕の可能性が低下する

自首は,逮捕の回避を目指すのが最初の目的です。自首しなければ逮捕の危険が大きいため,自首することでできる限りその可能性を下げ,逮捕を防ぐ結果を目指す,というのが自首をするときの基本的なモチベーションになるでしょう。
もっとも,自首の方法を誤ってしまえば,逮捕回避の効果が十分に見込まれず,逮捕を防ぐという目的の実現につながらない恐れも否定できません。

この点,弁護士に依頼することで,適切な方法,内容で自首を進めることができるため,逮捕の可能性はより大きく低下することが期待できます。また,弁護士が逮捕するかどうかという点について捜査機関に掛け合い,協議を試みることも可能です。

②自首が有効な状況か分かる

刑事事件で自首すべきかどうか,自首が有効な手段であるかどうかは,非常に判断の難しい問題です。必要な情報がほとんどない中,経験則などを踏まえて推測せざるを得ませんが,過去の経験がない当事者は,当然ながら経験則を踏まえた判断ができず,困難さは更に増すでしょう。

この点,刑事事件の対応に精通した弁護士に依頼することで,知識や経験をもとに状況をできる限り把握し,自首が有効であるかどうか,適切な判断をしてもらうことが可能です。なぜ自首が有効であるか,なぜ自首をすべきかを把握しながら自首を進めることで,より円滑な対応が進めやすくなる効果も期待できます。

③被害者への対応を開始できる

住居侵入事件で自首をする場合,被害者への謝罪や賠償,示談といった試みは,あわせて行うことが適切です。なぜなら,自首は逮捕回避や処分軽減を目的に行うものですが,逮捕回避や処分軽減に最も有効な動きが,被害者側へのアプローチであるためです。被害者の宥恕(ゆうじょ=許し)を得ることができれば,自首よりも更に大きな効果が期待できます。

この点,弁護士に依頼することで,弁護士が窓口となる形で被害者への対応を速やかに開始できます。自首は,被害者の心情面にプラスの影響を与えることが多く,被害者が示談に応じる可能性が高くなる動きでもあるため,被害者への対応は自首の効果を最大限に生かすための行動とも言えるでしょう。

④逮捕後の釈放を目指すことができる

住居侵入事件は,逮捕されるケースも少なくないため,自首を検討する際にも逮捕を想定しておく必要があります。事件の内容や件数などを踏まえ,逮捕リスクが高いケースでは,逮捕後の動きを考えているかどうかによってその後の流れが大きく変わることも珍しくありません。

この点,弁護士に依頼することで,万一逮捕された場合に釈放を目指す方法や見込みを具体的に検討し,釈放に向けた弁護活動を行ってもらうことが可能です。また,釈放までにどのくらいの期間を要するか,どのような条件で釈放されるか,といった見通しが分かることで,その後の手続にも適切な対処が可能になりやすいでしょう。

住居侵入事件で自首をする場合の注意点

①自首が間に合わない可能性

自首は,犯罪事実及び犯人の両方が捜査機関に発覚した後では,行うことができません。捜査が行われていない段階や,犯人が特定できていない段階であれば,自首の余地が残りますが,捜査が進行してしまった後になると自首が成立しなくなってしまう可能性があるため,注意が必要です。

この点,捜査の進捗状況を踏まえた判断ができれば最も望ましいですが,現実に捜査状況を把握することは困難です。自首を検討する際には,自首が成立する状況か分からないことを承知の上で,できるだけ早期に判断することをお勧めします。

②逮捕が避けられない可能性

自首は,逮捕の可能性を大きく低下させる動きではありますが,自首をしたから逮捕されない,というわけではありません。自首をしても逮捕が避けられない場合がある,という点は十分に注意することが望ましいです。

特に,捜査機関が被疑者を逮捕する前提で捜査を進めていた場合,その後に自首をしても逮捕の判断は変わらず,結局逮捕されてしまう,という流れは多く見られます。ただ,捜査機関が逮捕する前提かどうかは,事前に把握することができないため,その可能性を想定しながら自首の検討を行うことが適切でしょう。

③起訴され前科が付く可能性

自首をした場合,刑事責任は大きく減少し,処分も大きく軽減する可能性が高く見込まれます。最も大きく軽減した場合,不起訴処分となり,刑罰を受けない結果となることも相当数見られるところです。
不起訴処分の獲得が,自首を試みる最大の目的の一つでしょう。

もっとも,自首をしたからといって全て不起訴処分になるものではありません。自首をしても,起訴は避けられず,刑罰が一定程度軽減するにとどまる,という可能性は十分にあるため,事前に注意することをお勧めします。

④余罪の取り扱い

余罪がある場合,一つの事件で自首すると決めた際に,余罪をどう取り扱うか,という点は非常に判断の難しい問題です。全てをさらけ出してしまうか,余罪については一切言及しないか,一部の余罪に限り自ら述べるか,選択肢は数多くあります。

この点,余罪を伏せて自首を試みた場合,後で余罪が発覚すると,余罪に関しては自首の効果が及ばない,との判断が通常です。自首の影響は事件ごとに変わるため,余罪は自首を含めた事件ごとに検討する,という点に十分注意しましょう。

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