痴漢事件では、行為の態様によっては罰金刑が科される可能性があります。とくに電車内などで衣服の上から身体に触れるような痴漢行為は、各都道府県の迷惑防止条例違反として処罰され、罰金刑になるケースも少なくありません。もっとも、すべての痴漢が罰金で終わるわけではなく、行為の内容や悪質性によっては不同意わいせつ罪が成立し、罰金ではなく拘禁刑が科される場合もあります。
また、実際に痴漢事件が起きた場合、「罰金はいくらになるのか」「初犯でも罰金になるのか」「どのような場合に罰金で済むのか」といった点は、多くの方が気になるポイントです。さらに、罰金刑が科されるまでには、警察による捜査や検察官の判断を経て、略式起訴・略式命令といった手続によって罰金額が決まるのが一般的です。こうした刑事手続の流れを知らないまま対応してしまうと、不利な結果につながる可能性もあります。この記事では、痴漢事件で科される罰金の相場や初犯の場合の金額の目安、罰金になるケースと懲役刑になるケースの違い、罰金が決まるまでの手続きの流れなどについて、法律の基本的な考え方を踏まえて整理します。あわせて、罰金刑でも前科がつくのか、罰金を回避できる可能性があるのかといった点についても、実務の一般的な取扱いをもとに分かりやすく解説します。
なお、痴漢事件の刑罰に関する傾向や判断基準については、以下の記事もご参照ください。
痴漢の刑罰とは?罰金・拘禁刑の基準と重くなるケース
この記事の監修者
藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
痴漢の罰金はいくら?初犯の相場と金額の目安
痴漢事件で罰金刑が科される場合、その多くは迷惑防止条例違反として処理されます。迷惑防止条例は各都道府県が定める条例ですが、電車内など公共の場所で人の身体に触れる痴漢行為などを処罰対象とし、罰金刑または拘禁刑が科される可能性があります。実際の刑罰は事案の内容や悪質性、前科の有無などを踏まえて判断されますが、比較的軽度と評価された痴漢事件では罰金刑となるケースも少なくありません。
痴漢の罰金の目安
迷惑防止条例違反の痴漢事件では、罰金額はおおむね20万円〜50万円程度の範囲で決まることが多いとされています。もっとも、条例上の上限は都道府県によって異なり、一般的には50万円以下の罰金と定められていることが多いです。実際の罰金額は、行為の態様や事件の経緯などを踏まえ、略式手続によって決定されます。
初犯の場合の罰金相場
初犯で比較的軽微な痴漢行為と評価された場合、30万円前後の罰金となる例が多いとされています。例えば、衣服の上から短時間身体に触れた程度であり、前科や前歴がなく、被害の程度が大きくないと判断された場合には、この程度の罰金額にとどまるケースもあります。ただし、初犯であっても行為が執拗であったり、被害が大きい場合には、より高額の罰金が科される可能性もあります。
再犯の場合の罰金
同種の前科や前歴がある場合、罰金額が高くなる傾向があります。再犯と評価される場合には、40万円〜50万円程度の罰金が科されることもあり、事案によっては罰金ではなく拘禁刑が検討される可能性もあります。前歴や前科があるかどうかは、量刑を判断するうえで重要な要素となります。
罰金が高くなる事情
痴漢事件の罰金額は、次のような事情によって高くなることがあります。
- 行為が執拗であった場合
- 被害者が強い精神的苦痛を受けたと評価される場合
- 複数回にわたり痴漢行為をしていた場合
- 同種事件の前歴・前科がある場合
このように、痴漢事件の罰金額は単に行為の有無だけで決まるわけではなく、行為態様や被害の程度、前歴・前科の有無など複数の事情を踏まえて総合的に判断されます。
どのような痴漢が罰金になる?迷惑防止条例との関係
痴漢行為の多くは、各都道府県の迷惑防止条例違反として処罰されます。迷惑防止条例は、公共の場所や公共交通機関などで人に不安や迷惑を与える行為を禁止する条例であり、電車内などで身体に触れる痴漢行為も処罰の対象とされています。条例の内容は都道府県ごとに多少の違いがありますが、一般的には、公共の場所で人の身体に触れるなどの卑わいな行為をした場合、拘禁刑または罰金刑が科される可能性があります。
とくに、行為の態様が比較的軽度である場合には、迷惑防止条例違反として処理され、罰金刑となるケースが多いとされています。もっとも、行為が悪質である場合や被害の程度が大きい場合には、迷惑防止条例ではなく刑法の不同意わいせつ罪が成立し、罰金ではなく拘禁刑が科される可能性もあります。
迷惑防止条例違反になる痴漢
迷惑防止条例では、公共の場所や公共交通機関などにおいて、人の身体に触れるなどして卑わいな行為をすることが禁止されています。電車や駅構内、エスカレーターなど、人が密集しやすい場所での痴漢行為は典型的な処罰対象となります。こうした行為が認められた場合、事案の内容に応じて罰金刑が科される可能性があります。
衣服の上から触る痴漢
痴漢事件の中でも比較的多いのが、衣服の上から身体を触るタイプの痴漢行為です。例えば、満員電車の中で被害者の臀部や太ももなどに触れる行為は、迷惑防止条例違反として処罰されることがあります。こうした行為は短時間であっても成立する可能性があり、実際の事件でも罰金刑となる例が少なくありません。
電車内の痴漢
痴漢事件の多くは、電車内や駅構内といった公共交通機関の中で発生します。満員電車などで身体が接触しやすい状況ではありますが、故意に身体に触れる行為が認められれば、迷惑防止条例違反として処罰の対象になります。被害者の申告や周囲の状況、防犯カメラの映像などが証拠として用いられることもあります。
下半身の押し付け
身体に触れる行為だけでなく、下半身を押し付ける行為なども迷惑防止条例違反として処罰されることがあります。例えば、電車内で被害者の身体に意図的に下半身を押し付けるような行為は、痴漢として摘発されることがあります。このような行為も事案の内容によっては罰金刑となる可能性があります。このように、痴漢行為が迷惑防止条例違反として処理される場合には、比較的軽度の事案であれば罰金刑となることが多いとされています。ただし、行為が執拗であったり、被害の程度が大きい場合には、後述するように刑法の不同意わいせつ罪が成立し、罰金では済まない可能性もあります。
罰金では済まない場合もある?拘禁刑になる痴漢
痴漢行為のすべてが罰金で処理されるわけではありません。行為の態様や悪質性によっては、迷惑防止条例違反ではなく、刑法の不同意わいせつ罪が成立し、罰金ではなく拘禁刑が科される可能性があります。したがって、「痴漢=罰金で済む」と考えるのは必ずしも正確ではなく、事案の内容によってはより重い刑罰が科される場合もあります。
不同意わいせつ罪が成立するケース
刑法の不同意わいせつ罪は、相手の同意なくわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。痴漢行為であっても、身体の敏感な部分を執拗に触るなど、性的な行為としての程度が強い場合には、この罪が成立する可能性があります。
不同意わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑と定められており、罰金刑は設けられていません。そのため、迷惑防止条例違反として処理される場合とは異なり、有罪となれば拘禁刑が科される可能性がある点に注意が必要です。
悪質性が高い痴漢
次のような事情がある場合には、迷惑防止条例違反ではなく、不同意わいせつ罪として扱われる可能性があります。
- 身体の敏感な部位を執拗に触る行為
- 長時間にわたり繰り返し痴漢行為を行う場合
- 被害者の抵抗を無視して行為を続けた場合
- 被害が重大と評価される場合
このように、痴漢行為であっても行為の内容や悪質性によっては、罰金ではなく拘禁刑の対象となる可能性があります。そのため、痴漢事件では、行為の態様や被害の程度などが重要な判断要素となり、個別の事情に応じて処分が決まることになります。
不同意わいせつ罪は、法定刑として罰金刑が定められていないため、罰金刑にとどまる可能性がありません。起訴された場合には罰金刑より重い刑罰の対象となります。
痴漢事件で罰金が決まるまでの流れ(略式起訴とは)
痴漢事件で罰金刑が科される場合、多くは略式手続によって処理されます。略式手続とは、公開の裁判を行わず、書面審理によって罰金刑などを科す手続のことです。痴漢事件では、迷惑防止条例違反として処理される比較的軽微な事案であれば、この略式手続によって罰金額が決まるケースが少なくありません。
警察による捜査
痴漢事件が発覚すると、まずは警察による捜査が行われます。被害者や目撃者から事情を聞くほか、電車内の防犯カメラ映像や周囲の状況などが確認されることもあります。被疑者に対しても事情聴取が行われ、行為の有無や当時の状況などについて供述が求められます。
捜査の結果、犯罪の疑いがあると判断された場合には、事件は検察官に送致されます。送致とは、警察が捜査結果を検察官に引き継ぎ、起訴するかどうかの判断を求める手続のことをいいます。
略式起訴とは
検察官は、警察から送致された事件の内容を検討し、起訴するかどうかを判断します。痴漢事件で罰金刑が相当と考えられる場合には、略式起訴という方法で裁判所に事件が送られることがあります。
略式起訴は、正式な裁判を行う代わりに、書面審理によって罰金刑などを科すことを求める手続です。ただし、この手続を利用するためには、被疑者本人の同意が必要とされています。
略式命令で罰金が決まる
略式起訴が行われると、裁判所は提出された書面をもとに審理を行い、罰金刑が相当と判断した場合には略式命令を出します。略式命令とは、公開の法廷で裁判を行うことなく、書面審理によって罰金刑などを命じる裁判のことです。
略式命令によって罰金刑が言い渡されると、指定された期限までに罰金を納付する必要があります。罰金刑も有罪判決の一種であり、刑事事件としての前科が残る可能性がある点には注意が必要です。
このように、痴漢事件で罰金刑が科される場合には、警察の捜査、検察官の判断、裁判所による略式命令という流れを経て、最終的な罰金額が決まることになります。
痴漢の罰金でも前科はつく?有罪の裁判の影響
痴漢事件で罰金刑が科された場合、それは有罪の裁判に当たります。そのため、「罰金だから軽い処分」と考えられることもありますが、刑事手続の上では罰金刑も正式な刑罰であり、前科がつく可能性がある点に注意が必要です。
罰金刑は有罪の裁判
刑事事件では、裁判所が有罪と判断した場合に刑罰が科されます。罰金刑は比較的軽い刑罰と位置づけられていますが、刑事裁判によって科される正式な刑罰の一つです。痴漢事件では、迷惑防止条例違反として処理される場合に、略式手続によって罰金刑が科されることがあります。
略式手続では公開の法廷で審理が行われるわけではありませんが、裁判所が略式命令を出すことによって罰金刑が確定します。略式命令による罰金刑であっても、有罪の裁判である点は変わりません。
前科がつく影響
罰金刑が確定すると、刑事事件としての前科が付くことになります。前科とは、刑事裁判で有罪の裁判を受けた経歴を指す言葉であり、罰金刑もこれに含まれます。
もっとも、前科は一般に公開されるものではなく、日常生活の中で直ちに第三者に知られるものではありません。しかし、将来同種の事件が起きた場合には、前回の処分が量刑判断の際に考慮される可能性があります。また、職業によっては、刑事事件の有罪の裁判が一定の影響を及ぼすこともあります。このように、痴漢事件で罰金刑が科された場合でも、刑事処分としての前科が残る可能性がある点には注意が必要です。そのため、痴漢事件では、罰金刑に至る前の段階でどのような対応を取るかが重要になることがあります。
国家資格のある職業に就いている場合は、前科の影響の有無は個別に確認しておくことが望ましいです。資格によっては具体的な影響の生じる可能性もあり得ます。
罰金と示談金は違う?痴漢事件でよくある誤解
痴漢事件では、罰金と示談金が混同されることがあります。しかし、両者は性質がまったく異なるものであり、支払う相手や目的も違います。
罰金は国に支払う刑罰
罰金は、刑事裁判によって科される刑罰の一つです。痴漢事件では、迷惑防止条例違反などが成立した場合に、裁判所が罰金刑を科すことがあります。罰金は国に納付するものであり、被害者に支払われるものではありません。
また、罰金刑が科される場合には、警察の捜査や検察官の判断を経て、略式手続などによって罰金額が決まります。罰金を納付することで刑罰としての義務は履行されますが、罰金を支払ったからといって被害者に対する損害賠償が済んだことにはなりません。
示談金は被害者への賠償
これに対して、示談金は被害者との間で合意する損害賠償金です。痴漢事件では、被害者が受けた精神的苦痛などに対する慰謝料として、加害者が金銭を支払うことがあります。示談金は刑罰ではなく、当事者間の合意によって支払われる民事上の賠償金です。もっとも、痴漢事件では示談が成立することによって、検察官が起訴を見送る判断をする場合もあります。そのため、示談は刑事処分に影響を与えることがありますが、罰金と示談金は性質の異なるものであり、別の問題として整理する必要があります。
痴漢で罰金を回避できる可能性(不起訴になるケース)
痴漢事件では、必ずしもすべての事件が起訴されるわけではありません。検察官は、捜査の結果を踏まえて起訴するかどうかを判断します。そのため、事件の内容や証拠関係などによっては、起訴されず不起訴となる可能性もあります。不起訴となった場合には、刑事裁判は行われず、罰金刑が科されることもありません。
示談成立による不起訴
痴漢事件では、被害者との示談が成立することが不起訴判断に影響するケースが数多く見られます。被害者が処罰を求めない意思を示している場合や、被害が回復されたと評価される場合には、検察官が起訴を見送る判断をすることがあります。
もっとも、示談が成立した場合でも、必ず不起訴になるとは限りません。事件の内容や行為の悪質性などによっては、示談が成立していても起訴される可能性があります。ただし、実務上は、示談の成立が起訴・不起訴の判断において一定の事情として考慮されることがあります。
証拠関係による不起訴
痴漢事件では、証拠関係によって不起訴となる場合もあります。例えば、行為の存在を裏付ける証拠が十分でない場合や、供述の信用性に疑問がある場合などには、犯罪の成立を立証することが難しいとして不起訴となることがあります。このように、痴漢事件では、被害者との示談の成立や証拠関係などの事情によって、起訴されず不起訴となる可能性があります。不起訴となった場合には、刑事裁判が行われないため、罰金刑が科されることもありません。
痴漢は、類型的に罰金刑の回避できる可能性が低くない事件と言えます。早期に専門家へ相談するなどして、罰金を回避できる可能性や手段を十分に検討することが有益でしょう。
痴漢の罰金に関するよくある質問
痴漢の罰金はその場で支払うのですか
痴漢事件の罰金は、その場で支払うものではありません。罰金刑が科される場合には、警察の捜査や検察官の判断を経て、裁判所による略式命令などによって罰金額が決まります。罰金刑が確定した後、指定された方法や期限に従って納付することになります。
罰金が払えない場合はどうなりますか
罰金刑が科されたにもかかわらず罰金を納付できない場合には、労役場留置と呼ばれる制度によって、一定期間身体を拘束される可能性があります。労役場留置とは、罰金を納付できない場合に、その代わりとして一定期間施設に留置される制度です。留置される期間は罰金額などに応じて決まります。
初犯でも罰金になることはありますか
初犯であっても、痴漢行為が認められれば罰金刑が科されることがあります。迷惑防止条例違反として処理される場合には、初犯でも罰金刑となるケースは少なくありません。ただし、事件の内容や被害の程度、示談の成立などの事情によっては、不起訴となる可能性もあります。
罰金を支払えば事件は終わりますか
罰金刑を納付すれば、その刑罰としての義務は履行されたことになります。しかし、罰金刑が確定した場合には刑事事件として前科が付くことになります。また、民事上の問題として被害者との間で損害賠償が問題となることもあります。
まとめ
痴漢事件では、行為の内容や悪質性によって適用される犯罪や刑罰が異なります。比較的軽度と評価される痴漢行為の場合には、迷惑防止条例違反として罰金刑が科されることがあります。罰金額は事案によって異なりますが、一般的には30万円前後が一つの目安とされることが多く、前歴や行為の態様などによって金額が判断されます。
もっとも、痴漢行為であっても、身体の敏感な部分を執拗に触るなど行為の悪質性が高い場合には、刑法の不同意わいせつ罪が成立し、罰金ではなく拘禁刑が科される可能性もあります。そのため、痴漢事件では行為の態様や被害の程度などが重要な判断要素となり、個別の事情に応じて処分が決まることになります。
また、罰金刑は比較的軽い処分と受け止められることもありますが、罰金刑も刑事裁判による有罪の裁判であり、確定すれば前科が付くことになります。さらに、痴漢事件では罰金とは別に、被害者との間で示談金などの問題が生じることもあります。このように、痴漢事件では罰金の金額だけでなく、適用される犯罪や刑事手続の流れ、前科の影響などを含めて理解することが重要です。事件の内容によっては、不起訴となる場合や罰金以外の処分が検討される場合もあるため、状況に応じた適切な対応が求められることになります。
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