痴漢は逮捕されるか?痴漢で逮捕されたらどうなるか?適切な対処法を弁護士が解説

痴漢で逮捕されると、取調べや勾留、さらには起訴や前科につながる可能性があり、生活や仕事に大きな影響を及ぼします。「痴漢は本当に逮捕されるのか」「逮捕されたらどうなるのか」と不安に感じる方も少なくありません。本記事では、痴漢で逮捕されるケースや逮捕後の流れを弁護士が解説し、適切な対処法を分かりやすく紹介します。痴漢の逮捕について、万が一に備えて知っておくべきポイントを押さえ、早期解決につなげましょう。

目次

痴漢は逮捕されるか?

痴漢事件は,逮捕される可能性が十分にある事件類型です

痴漢事件の代表例としては,走行する電車内や,駅構内,商業施設内などの階段・エスカレーター等で,被害者の臀部に触るものが挙げられます。これらは,各都道府県の迷惑防止条例に違反する行為として罰則の対象とされ,俗に痴漢事件と呼ばれます。
この痴漢事件は,現行犯で問題になることが多く,逮捕される場合も現行犯逮捕が非常に多い類型です。事件が現行犯で問題になった場合,被害者の保護や被疑者の逃亡防止のため,その場で逮捕の形を取るメリットが大きくなりやすいのです。

痴漢は現行犯逮捕しかされないか?

痴漢事件の逮捕は現行犯逮捕が最も代表的ですが、後日逮捕されるケースも一定程度見られます。
痴漢事件で後日逮捕される場合、犯罪事実を特定するだけの証拠が存在することが通常です。具体的には、防犯カメラの映像や目撃者、被害者の詳細な供述などが挙げられるでしょう。
被害者が警察に被害届を提出した後、必要な証拠が揃った際には、必要に応じて後日逮捕する可能性はあり得るところです。

痴漢は何罪で逮捕されるか?

一般的に痴漢事件といわれるものは,概ね以下の二つが挙げられます。

①各都道府県の迷惑行為防止条例違反

 衣服の上から臀部を触る行為の場合に該当することが多い
 刑罰の重さは,各都道府県の条例によって異なるが,概ね以下の通り

 懲役 6月以下~1年以下
 罰金 50万円以下~100万円以下

②不同意わいせつ罪

 衣服の下から身体に触れる行為や,背後から乳房を鷲掴みにする行為の場合に該当することが多い
 刑罰は「6月以上10年以下の懲役」。罰金刑の定めがないため,罰金で終了することがない
 2023年7月13日の刑法改正で,「強制わいせつ罪」が「不同意わいせつ罪」となった。

参考:性犯罪関係の法改正等 Q&A

比較すると,迷惑行為防止条例違反よりも不同意わいせつ罪の方がより重大(悪質)な事件である,との区別がなされています。

痴漢で逮捕された後の流れは?

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

痴漢で逮捕された場合のリスク

① 前科が付く可能性

痴漢で逮捕された場合、最も深刻なリスクの一つが、前科が付く可能性です。
前科は、刑罰を受けた経歴のことを言い、逮捕後の捜査の結果、検察官が起訴し、裁判所が犯罪事実を認めると前科が付くことになります。痴漢事件の場合、各都道府県の迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪といった罪名で起訴され、有罪の判決等が確定すると前科が付きます。

前科が付くことで生じる具体的な影響は以下の通りです。

・就職や転職時の身元調査で不利になる可能性
・海外渡航時のビザ申請に影響する場合
・特定の職業(教員、公務員など)への就職が困難になるリスク
・社会的信用の失墜

この点、不起訴処分であれば刑罰を受けることはないため、前科は付きません。
そのため、痴漢で逮捕された際は、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、不起訴処分を目指すことが重要になります。
適切な弁護活動により、前科を回避できる可能性が高まるでしょう。

逮捕する事件は、比較的前科が付きやすい事件であることが多く見られます。そのため、逮捕された場合には前科を回避する試みが非常に有力になりやすいでしょう。

② 解雇される可能性

痴漢で逮捕された場合、職場での処分は非常に見込まれやすくなります。
通常、逮捕されたこと自体が懲戒処分の対象となっているケースはそれほど多くありませんが、痴漢事件はその性質上、職場での懲戒処分の対象となりやすい傾向にあります。

この点、勤務先に発覚しなければ悪影響は生じませんが、逮捕された場合には勤務先に伏せ続けることも容易ではありません。逮捕により身柄を拘束されれば、無断欠勤が続くことになってしまうためです。

痴漢事件での逮捕が解雇リスクを高める場合としては、以下が挙げられます。

・報道により事件が公になった場合
・会社の信用や業務に悪影響を与えると判断された場合
・顧客との接触がある職種の場合
・公務員や教職員など社会的責任が重い職業の場合

特に上場企業や公的機関では、コンプライアンス重視の観点から厳しい処分が下される傾向にあります。
解雇を避けるためには、早期の示談成立や不起訴処分の獲得が重要な対策となるでしょう。

公務員の場合、起訴されて刑罰が付くと強制的に失職するケースもあります。
公務員の解雇と刑事事件の関係については、以下の記事もご参照ください。

公務員が刑事事件を起こすと職場にバレる?起訴されると失職する?前科がついた場合は?制度の詳細や弁護活動を解説します

③ 報道される可能性

痴漢事件では、報道される可能性が存在します。特に逮捕された場合、実名報道のリスクが高まるでしょう。

報道される条件として、以下の要素が影響します。

・被疑者の社会的地位や職業
・事件の悪質性や社会的影響
・報道機関の判断基準

一般的に、公務員や教師、会社役員などの社会的地位が高い職業の方は報道されやすい傾向にあります。
また、常習性が疑われる場合や被害が深刻な事案では、報道リスクが増大するでしょう。

報道されると、職場や家族、近隣住民に事実が知られ、社会復帰が困難になる恐れがあります。
ただし、すべての痴漢事件が報道されるわけではありません。軽微な事案や初犯の場合は、報道されない可能性も十分にあります。

報道リスクを最小限に抑えるためには、早期の弁護士相談が重要です。適切な対応を通じて、報道される可能性が大幅に減らせるケースも少なくないでしょう。

痴漢の逮捕を防ぎたい場合には弁護士に依頼すべきか

痴漢事件で逮捕を防ぎたい場合には,弁護士への依頼が非常に有力です。

逮捕は,強制的に人の身体を拘束する手続であるため,そのルールや要件が厳格に定められています。そのため,逮捕を回避するためには,逮捕に関する法律の定めを把握した上での対応が適切となります。また,全ての逮捕が法律の定めに沿って行われているわけではなく,厳密には違法の可能性がある逮捕もなされ得るため,違法な逮捕行為を許さない対応も必要です。
しかし,これらの対応は弁護士なしでは困難と言わざるを得ません。当事者が自分で適切に判断して行動に移すというのは,現実的でないのみならず負担が大きくなり過ぎる懸念もあります。

痴漢事件の逮捕に関して適切な動きを取るためには,対応に精通した弁護士に依頼することをお勧めします。

痴漢で逮捕された後に弁護士へ依頼するメリット

① 勾留を防ぎ、早期釈放してもらえる

痴漢で逮捕された場合、勾留される可能性が高く、最大20日間身柄を拘束されるリスクがあります。
しかし、弁護士に依頼することで勾留を防ぎ、早期釈放を実現できる可能性が大幅に向上するでしょう。

弁護士は逮捕直後から検察官や裁判官に対して、勾留の必要性がないことを積極的に主張します。
具体的には、住所が明確で逃亡の恐れがないこと、証拠隠滅の可能性が低いこと、社会復帰への意欲があることなどを丁寧に説明。
これらの主張により、勾留請求を却下させたり、勾留決定を取り消させたりできる可能性が高まります。

早期釈放が実現すれば、職場への影響を最小限に抑えることが可能です。
家族との時間も確保でき、精神的な負担も軽減されるでしょう。

弁護士による迅速な対応は、勾留阻止の成功率を大きく左右します。
逮捕後72時間以内の初期対応が特に重要で、この期間内に適切な弁護活動を行うことで早期釈放の可能性が高まります。

痴漢事件は、特に勾留を阻止する動きの重要度が高い事件類型です。迅速・適切な対応で早期釈放を実現できる場合は少なくないため、速やかに弁護士へ相談することが有力でしょう。

② 不起訴処分を獲得し、前科を回避できる

痴漢事件で逮捕された場合、最も重要なのは不起訴処分を獲得して前科を回避することです。
弁護士に依頼することで、この目標を達成できる可能性が大幅に高まります。

不起訴処分とは、検察官が起訴しないと判断することを指します。
不起訴になれば前科は付かず、将来への影響を最小限に抑えられるでしょう。

弁護士は以下の方法で不起訴処分の獲得に向けて活動します。

・被害者との示談交渉
・検察官への意見書提出
・反省文や謝罪文の作成支援
・再犯防止策の提案

特に示談成立は不起訴処分において極めて重要な要素です。
被害者が処罰を望まない意思を示すことで、検察官の判断に大きな影響を与えます。

不起訴処分の獲得を目指す方法は、認める事件か否認する事件かによって大きく異なります。否認する事件の場合、犯罪の立証が困難との判断を促すことで不起訴処分の獲得を目指すことが有力です。

③ 適切な取調べ対応が可能になり、不利な調書を作成させない

痴漢事件で逮捕された場合、取調べでの対応が最終的な処分を大きく左右します。

弁護士に依頼する大きなのメリットの一つは、適切な取調べ対応の指導を受けられることでしょう。
警察や検察の取調べでは、事実と異なる内容や不利な供述を含む調書の作成を求められる場合があります。この時に適切な対応ができるかどうかで、重要な証拠である調書の有無や内容が大きく変わってくるでしょう。

弁護士は以下のような具体的なアドバイスを提供します。

・事実に反する内容への署名拒否の方法
・曖昧な表現を避けた正確な供述の仕方
・黙秘権の適切な行使タイミング
・調書の内容確認時のチェックポイント

特に痴漢事件では、被害者との間で言い分の食い違いが生じやすく、調書の内容が起訴不起訴の判断に大きく影響します。不適切な調書が作成されると、後の裁判で不利な証拠として使用される危険性が高まります。

特に否認事件では、弁護士の指導により、事実に基づいた適切な供述ができれば、不起訴処分の可能性が大幅に向上するでしょう。

痴漢事件で逮捕を避ける方法

①現行犯逮捕を避ける場合

痴漢事件では,まず事件現場における現行犯逮捕を避ける必要があります。ひとたび適法な現行犯逮捕が成立してしまえば,その後に身柄を拘束し続けることが正当化できてしまい,ズルズルと釈放から遠ざかってしまうためです。
逆に,最初の段階で適法な現行犯逮捕ができなければ,その後の逮捕は通常逮捕とならざるを得ません。もっとも,逮捕状が必要である点や一般私人にはできない点など,現行犯逮捕にはない複数のハードルが生じるため,逮捕の可能性が大きく下がりやすいと言えるでしょう。

この点,現行犯逮捕を避けるには,とにかく現場にとどまり続けないことが適切です。現行犯逮捕は,犯行と逮捕の間に時間的・場所的なズレがない場合でなければ行うことができないため,現場を離れ,時間を空けることができれば,現行犯逮捕は不可能となります。
ただし,現場を離れる際に別の犯罪に当たる行為をしてしまったり,逃亡の恐れが高いと評価される方法を取ったりするのは逆効果です。「痴漢事件の被疑者が線路に降りて逃走した」というニュースを目にすることもありますが,これはかえって逮捕の可能性を自ら高めてしまっていると言わざるを得ません。

そのため,逮捕を避けるためには,できる限り穏やかな方法でその場を立ち去る,ということを最初の目標にするのが望ましいでしょう。逃亡と評価され得る形は取らず,一方でその場にとどまることは断る,という方針で,まずは現場での現行犯逮捕を避けるのが得策です。

ポイント
現行犯逮捕は犯行と逮捕の場所にズレがあると困難
現行犯逮捕を避けるためにはできるだけ穏やかにその場を立ち去る

②現行犯逮捕されなかった後の場合

事件直後に警察が駆け付け,その後に帰されたなど,現行犯逮捕されなかった場合は,いわゆる後日逮捕(=通常逮捕)を回避することが必要です。
この点,通常逮捕されるのは,被疑者に逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合であるため,自分に逃亡の意思も罪証隠滅の意思もない,ということを捜査機関に理解してもらうことが重要になってきます。

具体的には,警察との間で取り調べの予定を設けていればその予定に沿って出頭するなど,可能な限りの捜査協力を行うスタンスが適切でしょう。捜査協力の態度と逃亡・証拠隠滅は,被疑者の動きとして両立しづらいものであるため,捜査協力の姿勢を適切に見せていくことができれば,通常逮捕の可能性は低下しやすいと言えます。

また,具体的な捜査協力の予定を設けていない場合には,自ら捜査機関の担当者に問い合わせ,取調べなどの捜査に関する日程調整を希望したいことを申し入れるのも一案です。そこで実際に日時が決められるかどうかにかかわらず,捜査協力の態度を示すことは可能です。

ポイント
後日逮捕を避けるには,逮捕しなくても逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断してもらうのことが有益
捜査協力のスタンスを示すことが重要な手段に

③事件発覚前に逮捕を避ける場合

痴漢事件が捜査機関に発覚する前の段階では,後に被害者などが捜査機関に捜査を求めた場合の逮捕を避けることが必要です。痴漢事件は,被害者に発覚していないという場合が考えにくいため,被害者から後日にでも捜査機関に相談などし,捜査が開始されるという可能性は残り続けます。

この点,被害者による捜査機関への被害申告が考えられる場合には,その前に自分から捜査機関に出頭する方法が有力です。つまり,自首によって逮捕の回避を目指すというわけですね。
自首した人物がその後に逃亡や証拠隠滅をする可能性は低いと理解されるのが通常です。そのため,捜査機関から求められて初めて出頭するのではなく,その前に自分から自首ができれば,逮捕の可能性は非常に低くなるということができるでしょう。

ポイント
痴漢事件は,後日でも被害者が捜査機関に捜査を求める場合があり得る
捜査機関に呼び出される前に自首すれば,逮捕の可能性は大きく低下する

痴漢事件の逮捕に関する注意点

①逮捕を避ける時間的余裕がない場合

痴漢事件の逮捕は現行犯逮捕が多数ですが,現行犯逮捕は事件直後に行われるため,これを避ける時間的余裕がない場合も少なくありません。逮捕までの間に弁護士への依頼を行う,というのも現実的に困難な場合が多いので,事前の回避策を講じられない可能性には注意しておくことが望ましいでしょう。

②逮捕後の釈放も同様に重要

痴漢事件の現行犯逮捕を避ける時間的余裕がない場合など,逮捕を回避できなかったケースでは,逮捕後に少しでも早く釈放されることを目指すのが重要です。
痴漢事件では,逮捕されてもその後早期に釈放される場合が少なくありません。逮捕後に速やかな釈放が獲得できれば,生活への影響は逮捕されなかった場合と同じくらいに小さく収まる可能性が高いでしょう。

痴漢事件の場合,逮捕後に釈放を目指す動きは,逮捕を防ぐ動きに匹敵するほど重要なものである,ということは踏まえておくことが適切です。

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